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やる夫は異世界の戦士になるようです92

2016/03/22
01:26

5494 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:02:34 ID:bN2FFR7Q0

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5496 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:19:39 ID:bN2FFR7Q0

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　　　　　　　　　　　　　　　　〉: : : : : : : : : :ノ　　　　　　　　　まーなまぬるーく見てくれたら嬉しいかな。
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　.　｀ﾄ : : : : : : : : : : : _,-‐'｀iヽ _
　　　 i: 丶: : : : : :,-‐'´__,-‐'´: : : ｀ヽ　　　　　　　それじゃ、いってみよー。
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　　　　　　　　　ヽ: : : : : : : : : : : : : ヽ

5497 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:19:50 ID:bN2FFR7Q0

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アンゼロットの口は堅く閉ざされ、何も語ろうともしなかった。

「やる夫は、みんなと一緒にいたいです」

そう、力強く言った。
まぎれもない本心だった。

結局、兵士である以上、誰もが明日も知れない身だ。
その中で、一人だけ死から逃れるために剣を誰かに押し付ける気はない。

ここまで、数々の幸運と助けで生きてこられた。
ならば、それを全うしたい。

「あなたは、死を望んでいるのですか？」

「そりゃ、生きてたいですよ。まだまだ一杯、見たいことやしたいことが残ってます。
ただ、心残りがあるまま、安全な場所で無為に日々を過ごすよりも、
戦場でみんなの傍に立ちたいってだけです」
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5498 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:20:01 ID:bN2FFR7Q0

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　　　　　 i'　　 ,'　　　　l、　　 |　l| |　l､| 　|　　 |
　　　　　　　 |l 　 |　　| ｣ム　　|ﾍﾅ7メ､|　 |　　 |
　　　　　　　 || |　ヽ.　|ﾊ|=､ヽ、l 彳うﾐ､|　 |　　 |　　　　　　……はあ、これ以上は言っても無駄なようですね。
　　　　　　　　 |ﾊ､ヽ从l 化ﾘ　 `　ゞ‐'　| 　|ヽ　 l
　　　　　　　　　ヽﾄトゝ　　、　　　 | 　ﾚ' 　 l　　　　　　まったく、意思が弱いようでいて、変なところで頑固なんですから。
　　　　　　　　　　　　|　i、　 r_，　　 |　 | 　　!
　　　　　　　　　　　　|　| ＞、　　 , イ | 　| 　　l
　　　　　　　　　　　｜ | 　/ｿ）T,.,_,.､jｰ|　 |　　　|
　　　　　　　　　/j　|＿l | ﾚ',ｲﾑﾄr )| 　|.,.．-┴..、
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アンゼロットは短い溜息を吐きながら、眉をひそめた。
心配してくれている彼女の提案は嬉しいが、受けるわけにはいかない。

「詳しい話はまた、オルフェオに到着してから話しましょう。
今ここで話しても、任務に支障をきたすでしょうから。
ただ、前回のように、決して一人で敵兵の群れに突っ込んだりしてはいけませんよ。」

この言葉を境に、アンゼロットはやる夫の体の件には触れなくなった。
駄々をこねる子供に折れる親にも似た、諦観と優しさがない交ぜになった目を
している。

これまでずっと、ひたすら我慢ばかりしてきたのだ。
少しくらい我を出したってばちは当たらないだろう。
命がいつまで持つか分からないこの世界では、なおさらだ。

どう生きるかを決める時間は、そう長くはない。
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5499 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:20:12 ID:bN2FFR7Q0

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5501 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:40:14 ID:bN2FFR7Q0

【大陸歴725年1月10日～23日】
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　　　　　　　　　　　　,　　　　　　　　　　　 _,r＾i ￣,｀'ゞ　゛､　　r',r‐'~,､r'~{､
　　　　　､ ,r'､ｰ'￣'~´ヽ,-､　　　　　　　　　,.□ｰ' △.｀ﾌ/ ｀´'"　{´ _ _　~r '´　 ,.,ii/
　　 ,､；r´ ｀ｰ､ｺ　.▲　　 .｀'ヽ__ ｰ　　　 ,く゛ﾊ　　　　 { .○...,- {, {　r｡　 'ヽ　 {,､,､　｡
　　=~, { ､.　 [Fossil Mountains]　　r-'´~"ｰ,　ヽ　　Erinus . ‐{　 '´｀　　 'ｰ,　　｀'~'ﾆ'
　　 "r'~´ ●　　　　 ■　　　　　 .｀r.───┐ . □　　　　 ..{　　　　　　　　ﾊ　　 ☆."{；
　　 ;´ 　 .■　　　 .★.■　　　　　　　　　　 .└──────┐ ―'´~´´ ｀ｰ'　　　　　｀ｰ’､
　　　｀~ｰ｡､　　　　　.■　　　 .▲　　　　　　　　　　　　　 .│　　□　　　 .□ ○ 　 △..{,
　　　　　　゛､ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│ 　　　　　　　 ,r,　　　ヽ　､
　　　 ,､　ﾍﾍヽ　　　　　　　　　 Mobius 　　　　 .■│　　　　　　　　ヽﾊ　　　 "ｰ"゛
.　　 ’；｀'　　 .~　'ｰ‐'i▲,､　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│　　　　　　　　　　 i' }　　　　r‐'
.　　　 ” ,.､ ’　　　　 },　{｀ｰ,　 ,. --､　　　　　　　　　　　　　　 .│　　　　　　　　 {｀>='､='､>□ '
　　　　　~´　　　　　　 ~　　{　く,　　 'ｰ､　 . [Leze Desert] 　 .│　　　　　　　　　}
　　　　　　　 _,､　　　　　ヽ､}　；;　 ,}　　　　　　　　　　　 .│　　.□　　　　 .ﾚ
　　　　　　　 L}　　＝　　 " ゛　　　r'　　　　　　　　　 [Round.┌────.'~
　　　　　　　　；r＾ﾍ｀{　　　；,r-v'　■　　　 .▲　┌─▽..─┘　　 ■../
　　　　　　　　　　｡~"ヽ｀ｰ=　　'.● -､　　　　 ,r-､_ .│ 　　　 ..table] ..,.r'´
　　　　　　　　　　　　　　{ﾆ}´　　 "　　　｀ー'｀'´　　　￣'￣,ヽ　　　　 .j´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 rﾊ'ｰ' !､.Aradia .,{,
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　　　　　　　　　　　　　　　　；~’　　　　　　 ’ ´　’ 'ｰ'r-'´　　　　　　　　､8､,
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戦乱の大陸は未知の状況を迎え、混沌としていた。

百年の時を経て研ぎ澄ました牙を剥いた小国アラディア。
それを抑え込もうとするメビウスとエリヌス。

時代の流れが止まり、絶えず血が流れるこの世界において、
それはアラディア出現以来の変化といえた。
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5502 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 22:54:06 ID:bN2FFR7Q0 [7/12]

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　　　　　　　　　 {兀兀} 皿皿|ﾆﾆ|ー｢[[[[|.| ｌl|　l|| lll | 　 | ﾛﾛﾛ　[[| ⅣⅣｌ |
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一月六日、エリヌス領南東部にてサプフィール城塞攻防戦が起こった。
アラディアの攻撃部隊はサプフィール城塞を壊滅させるが、エリヌス精鋭部隊との
戦闘で全体の半数近い死傷者を出し、撤退。

結果としては、痛み分けに近いものとなった。

一方、一月八日にメビウス領レゼ砂漠にて三個旅団規模のアラディアの軍勢と
一個師団規模のメビウス軍が衝突した。
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5503 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 23:00:18 ID:bN2FFR7Q0 [8/12]

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　　　　 l/ミｖ彡爻爻.＼　　　 .＼／　　　 ,.x≦!V|／ｨ彡イ彡仝_人夾ノ人爻人爻人ノ.∨　＼人＼
　　　　 ∧Ⅳ｀'＜爻爻 .＼　　　　　 .,.x≦圭ⅳ´iii -=ﾆ　二　彡仝人人爻爻爻人人ﾉ|∨ 　｀＜人＼
｀'＜、　.∧Ⅳ　　 l＼爻爻.戈三＞､／圭圭:Y´　//-=ﾆ　二　イ .＜￣＼人人人人人ノ　＼　　｀＜ミ＼
　　　ヽ∧Ⅳ　　　 jIII|＼爻爻爻爻ｽ｀ヽ圭圭.!≧.iii ー= 　二　イ　./　＼//＼￣￣￣　　　　∧　　　　｀ヾﾐ＼
.　　　 |ﾘV　　　 Ⅷi　＼爻爻爻爻ｽ|圭圭.|》.//　ー　 ==ニ　 _ノ　　 .∨//＼　　　　　 .∧　　　　　　∨＼
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　　　　　　　　　　｀'＜　　　＿.￣二＞=イ　// 　ー=二二二/＿___ 　　 .∨////＼
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メビウス軍から離反したラーズグリーズ隊、そして後方のブリュンヒルド隊の
存在もあり、序盤こそ優位に戦闘を進めていたアラディア軍だったが、
徐々に数の力に押され、最後には前衛の防衛線を突破された。

結局、撃退には成功したものの、アラディア軍の被害は決して少なくはなかった。
今後の戦線維持に影響をきたすほど甚大なものではなかったが、
それでも被害には変わりなく、アラディアの兵力は削られゆく一方だった。
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5504 名前：安価のやる夫だお[sage] 投稿日：2016/03/06(日) 23:01:05 ID:2bNSMhmM0 [2/2]
人数で負けてるのが痛い

5505 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 23:06:07 ID:bN2FFR7Q0 [9/12]

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メビウス、エリヌス両軍からしても、脅威としてのアラディアの存在が大きくなって
きたことからか、旧敵よりも忌まわしい偽神の軍へと攻撃を集中させている
傾向がみられるようになってきた。

アラディアが踏み出した戦争終結への一歩は、既に戻れないものとなっていた。
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5506 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 23:06:18 ID:bN2FFR7Q0 [10/12]

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　　　　　〃´　,ｲ／:.:.:.:.:.:／　　',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:/／　 |:.:.:.:.:.:.:.:|ヽ
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首都への帰り道は、決して快適とは言えなかったが、穏やかな時間が流れていた。
サプフィール城塞での絶望的な状況と、銃声も怒号もない静かな丘陵地帯の
道のりのギャップが、いつもよりも強い安心感をもたらしたのだろう。

何よりも、自分たちの生まれ育った国へと帰るための旅というのが大きかった。
手放しに喜べる戦果ではなかったが、目の上のたんこぶだったサプフィール城塞
を落とせただけでも良い方だろう。決して、逃げ帰るわけではない。
そう思いたかった。
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5507 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 23:08:52 ID:bN2FFR7Q0 [11/12]

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時折、空が機嫌を悪くし、猛吹雪を起こすことがあった。
いくら鉄で作られた馬とはいえ、エリヌスの雪には敵わず、その時は大人しく
鉄馬車の中で毛布を被りながら、吹雪の勢いが収まるのを待った。

幸い、フライア村で補給を受けられたおかげで、食糧難や物資不足に陥ることは
なかったが、それでも歩みが止まるのは痛手だった。

酷い日は朝から晩まで吹雪が止まず、近場で手ごろな巨岩などを見つけては、
そこで風を凌ぎながら夜明けを待った。
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5508 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/06(日) 23:13:44 ID:bN2FFR7Q0

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',三三三三三三三＞=--＜ﾐ∨
.〉-――'''.:¨¨￣.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
,'.:.:.:.:.:.:.:.∨.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼:ﾊ.::.:.:.:.ﾊ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:{∨.:.:.:＼.:＼＼:ヽ',.:.:.:.:.:;
.:.:.:.:.:{.:.:.:.! ∨.:.:!､:ヽ:__＼__:ヽ.:.:.:.:.ｌ
:.:.:.:.:八.:十'"ヾ,{　＼＼.:.:＼:ヾ,:.:.:!　　　　　　　　　まあ、今って一番寒い時期だからね。
乂{:∧.ィ示ぅﾐ＼　ｨぅ示ｱ}.:＼;.:'
. ﾍﾄ::从. ゞ= '　　　　ゞ- '/,ｲ.:.:;ヽ,　　　　　　　　　暖を取りながら地道に行くしかないよ。
.　 ∨.:.ﾍ,""　　'　　""ノｲ.:.:./ 　＼
　　 ∨.:.:ゝ､.　　‐‐　. イ.:|.:.:/　　　　　　　　　　　「へえ、ラピスも寒く感じるんだ」
　　　∨.:.:{.:イi｀ ¨ ´　ノ　!:/ {`}´}.、
　,r‐{`!＼ゝ,,ｘ:≠`X三三ﾐ　 { } }:::',　　　　　　　　さすがにね。
./::::::( | )　巛"´/:∧＼　}::}　{ | }:::::',
':::::::::{ .! }　∨∨::::!{}::ｋﾐ=:::!　) ! {::::::',
:::::::::::{ | }.　 ∨イ::|{,!::{　`-'　 } .! {::::八
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冬のロシアやカナダは、こんな様子なのだろうか。
明らかに氷点下を下回っている空気は露出している肌を突き刺し、
容赦なく凍り付かせようとしていた。

アラディアの冬では涼しい顔をしていたラピスも、エリヌスではそうもいかず、
身を縮こまらせながらふるふると震えていた。

一方ナノハは、「わたしって体温高めなんだー」などとよく分からない自慢を始め、
ラピスを外套の中にすっぽりと入れてけたけたと笑っていたりしていた。
やる夫もその温もりに預かりたかったところではあったが、さすがに自重した。
この時ほど、自分が男性であったことを呪ったことはなかっただろう。
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5514 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/13(日) 21:35:34 ID:iLBaJYNg0

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ -=＝=- _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ．-=＝／．_　　　　　 `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　｀､
　　　　　　　　　　　　　　　　　, '　　　　　　　　　　　　' ,
　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　　　　　　　　　　.',
　　　　　　　　　　　　　 ,' /　　　　　　　　　　　　　 !.i
　　　　　　　　　　　　 ,' ,'　　　　　　　　　　　ﾑ.,' | | |
　　　　　　　　　　　　　　　ｉ .ｉ　　　　　　　　　　　ﾑ,'　! l ｉ
　　　　　　　　　　　　　　　| ｉ　　　　　　　　　　 .ﾑ,' ｉｉ !il
　　　　　　　　　　　　　　　| ｉ　　　　　　　　　　ﾑ,'　ｉｉil ｌ　　　　　　　　　寒い……寒すぎます……
　　　　　　　　　　　　　　　! ｉ　　　　　　　　　ﾑ,' _ ｉｉ
　　　　　　　　　　　　　　ﾘ .ｉ　　{　　　!　　　ﾑ,' /;:￣ヽ　　　　　　　　　暖炉とふかふかのスツールの幻影が見えてきました……
　　　　　　　　　　　　　　/　.ｉ　　{　　 ,'　　 .ﾑ,' ,':;:;:;:;:;:;:ｉ
　　　　　　　　　　　　　 ,'　　.ｉ　 .ｉ　　,'　　ﾑ,'　ｉ;:;:;:;:;:;;:;!
　　　　　　　　　　 /　　　ｉ　ｉ　 ,'　　ﾑ,'　ｉ:;:;:;:;:;:;:,'
　　　　　　　　　　　 , :' /　　　　ｉ .,'　　　　 .ｉ;::;:;:;:;:,'
　　　　　　　　　　／　/　　　　　.ｉ　　　　　',　　',;:;:;:;:ｉ
　　　　　　　　／　／　　　　　　　　　　　　',　　ｉ;:;:;:|
　　　　　　　／ .／　 / .., :′,'　 ,'　　　',　　 ',　 .ｉ:;:;:|
　　　　　／ .／　　 ,' ..,'　　ﾑ　ﾑ　　　!.',　　 ',　ｉ;:;:|
　　　　, :′, :′　　,'　,'　　.ﾑ　ﾑ　　　ｉ .',　　ｉ　.ｉ:;:|
　　　/　／,'　　　 .,'　,'　　ﾑ　ﾑ　　　 .ｉ　.ｉ　　.ｉ　.ｉ;:|
.　　/　,'　,'　　　 .,'　,'ｉ　　ﾑ　ﾑ　　　　ｉ　ｉ　　ｉ　 i;:|
　 /　.,'　.ｉ　　　 .,'　,' ｉ　　ﾑ　ﾑ　　　　ｉ　ｉ　　ｉ　ｉヽ､
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やはり、アンゼロットはあまり体が頑丈な方ではないらしく、唇を青くしながら
らしくもない弱音を鉄馬車の隅で垂れ流していた。

人数配置の関係上、やる夫とアンゼロットは一緒の馬車だったので、
その姿をよく見ることになった。

最初は、あのアンゼロットが、と密かに面白がっていたが、途中から
放っておけなくなり、ナノハの真似をして自分の外套に彼女を招き入れた。
というよりも、自分が被せた。
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5515 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/13(日) 21:35:44 ID:iLBaJYNg0

　　　　, ‐, ニニニｘ､
　　　/／　　　　　｀ヽ.i 　 , ｘ-――‐-ｘ､
　　 /　　　　　　　＿ ,i! ´　　　　　　　　｀丶､
　　　　　　　 , x≦　　｀ヽ　　　　　　　　ヽ
　　　　　,x≦　　　　　　　　　､　　　　　　　ヽ
　　　　/　,　　　　　　　､　　　ヽ　　　､　　　　､　ヽ
　　　./　 /　　　i　　　ヽ.　　　　　　　　　　ヽ　ヽ
　　/　 /　 ! 　 .!　　　　　}　　　 }　　　 i 　　　.i　.i
　　' 　./ 　 !　　! 　 i　　　|　　|　 .| 　　　.} 　　　.l　!
　　!　∧ 　 !　　,ゝ-t　　 |　　} 　.}　　　　| 　　　 |　!　　　　　　　　　ついに乱心されましたか？
　　' /|.∧　ヽ　Kl _ヽ!ヽ|　 i 　 i　　!､　　 | 　　　 |　i
　　!'　!'　ﾊ　ﾊ! イ叨　 ! ./! ./　,´｀! 　　　.i 　　　 i　.i　　　　　　　　　「いや、寒そうだったんで、つい」
　　　.ﾚ'|　∨　! 弋ﾝ〟.!/ .!/　/ｲ!/　　　 | 　　　 i .∧
　　　　|/.　　ﾉ　　　　./ 　! ./_ﾝ´|　　　　 | 　　　 | .i∧　　　　　　　　まあ、いいでしょう。それなりに暖かいことですし。
　　　　　　　　､　　　　i　　　iヾ,　.|　　　　 |　　　　 | .i ∧
　　　　　　　ヽっ　 | 　 _r冂￣|　　　　 | 　　　　∧i＿ヽ　　　　　　　……変な気を起こしたらちょん切りますよ？
　　　　　　　　　　lヽ_,ｘ＜´￣￣: ∧ 　　 ∧ 　　　ﾊ: : ｀ヽ
　　　　　　　　　　|／: : : : i: : : : : : ﾊ　　　ﾊ　　　　ﾊ: : : : ｀､　　　　　「冗談ですよね？」
　　　　　　／ : : : : : : ! : : : : : : |　　　　 |　　　　|: : : : : :ﾊ
　　　　　　　　/ i: : : : : : : :| : : : : : : :i.　　　 i　　　　　 !: : : : : :ハ　　　　ええ、二割ほどは。
　　　　　　　ハヽ: : : : : : | : : : : : : :| 　　　.i　　　　　!: : : : : : :ﾊ
　　　　　　 / : : : : ＼i: : / !: :/ : : : : |　　　 .i　　　　　!: : : : : : : |

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隣り合ったアンゼロットの体は、細身の猫のようだった。
華奢な胴体は、強く抱けば音を立てて折れてしまいそうな気がして、
彼女の存在がいかに儚げなものかを物語っているようにも感じられた。

だが、それ以上にわずか数枚の布を挟んで自分の体に伝わってくる
彼女の体温の方が、やる夫には刺激的で、平常心を揺るがした。
最初こそ親切心だったのだが、段々と変な気分になってきたので、
何も考えないように目を瞑った。

暗い鉄馬車の中で過ごすアンゼロットの時間は、沈黙も多かったが、
居心地は悪くなかった。

アンゼロットは終始皮肉と冗談ばかり言っていたが、あれこれ言いつつも
自分の隣にいてくれた。
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5516 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/13(日) 21:43:11 ID:iLBaJYNg0

　　　　　　　〃/　　　　　　　　　　　　　 }　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　 / /　　　　　　　 i　　　　　　 i　　　}　　　　　　　 |　　　　 ,
　　　　　　 '　′　　　　　　　　 l　{　　　　　　i 　　 |　　　　　　　　 |　　　　　 ′
　　　　　　ｌ　|　　　　　　　　　 |　'　　　　　　i　|　　|　l 　 }　　　　 |
　　　　　　|　|　　　　　　{　　　 ∧ ﾍ　　　　　ﾑrﾋ　７"{｢￣|　　　　 |
　　　　　　|　| /　　　　 |　　 {/ __'　｛　　　 '_jﾉ _厶ﾆL _ |　　　　 |
　　　　　　|　|'{　　　　　 |　ィ'{｢　__｀j八　　 / ノ ;ノ乙心jﾉ| 　 /　　 r: ､　　　　　　　　　「……あの、嫌だったら離れてもいいですよ？」
　　　　　　 |　.　　　 {　 , 　 l　ｧァぅ,　ﾊ　/　　 ‘;::::ﾀ刈　|.　/　　 ′ |
　　　　　　 {.　',　　 ∧　'.　 |〈{ {:::hﾑ　 ∨　　　ｰ '' ”　| /　　　ﾙ ) 从　　 i　　　　黙ってなさい。あなたは暖炉です。
.　　　　　　　　 ‘.　/ ,ハ　ヽﾑ　弋:㌣　　　　　　　　　　　j/ 　　ﾊ　/　 }　　　i
　　　　　　　　 )' /　　Ｖ{　ハ　　　〈　　　　　　　 / 　　厶ｨ´　　　　　 i　　　　呼吸する暖炉です。暖炉は喋りません。
　　　　　　　　　 /　　　　　＼　',　　　　 __　　　　　 , 　　　　′│　　　　 !
　　　　　　　　　　　　　　　 /　人　　　｀´　　　／　　　 .′/ | 　　　　 !　　　　「せめて人間扱いしてください……」
　　　　　　　　　　　　　　 /　 /　　＞　.　　　　　／　　　 /}丁厂　　 ! 　　 l
　　　　　　　　　　　　　　/　 /　／　　　＞-=''"￣｀丶、／ j　j　 ′　 i　　　│
.　　　　　　　　　　　　 /　　　〃　　／..:::::::::::::::::::::::::::::..＼ﾘ　j　′ 　 ! 　　 |
　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　　/..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..ヽ　j/　　　 i　　　│
.　　　　　　　　　 /　　　 /　　　/.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∨　　　　ｉ　　　 |

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食事は、なるべく一人で済ませた。
旅の途中の数少ない娯楽である食事の最中は、皆明るい表情をするものの、
自分がその中に混じるのは無理だった。味のしないものを黙々と齧り、嚥下する
のは、やはり苦痛だ。退屈で、虚しい。

そんな自分を、アンゼロットが哀しげな眼差しで見つめてくるのも辛かった。

ひょっとしたら、感覚もいずれ戻るのではないかと期待もしてみたが、やはり
だめだった。右腕は動くが、感覚がないので、自分の肩から別の生き物を
生やしているような気分だった。

左目が見えないというのも、意外と不便だということを知った。
よく、フィクションで隻眼の登場人物が出てくるが、彼らも苦労しているのだろう。
左側が見えないために、左を見る際は一々首をひねらなければならない。
これは戦場でも命取りになりそうだ。
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5517 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/13(日) 21:51:08 ID:iLBaJYNg0

　　　　　　　　　／l　　　　／|
　　　　　　　　　 | ./　　　　.| ./
　　　　ｰ=二｀ヽi/-─‐- ､_l/-
　　　　∠-,rｰ￣ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.'､:.｀ヽ　　　　　　　あー、寒かったあ……
　　　　　/.:/.:,..:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:l
　　　　ゝ/,/.:.:.:,ｲ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;:.:.:.:|　　　　　　　鼻水凍るかと思ったよ。
　　　　　 'ｲ:.:.:.:.ﾄ､.:.:.:'＞､-==-ゝ､:i
　　　　　_{:.:.:.:.:,!ﾉ-'´｀ヽ＿_＿ __＼
　　　_,.-':.,.-イ´　　｀ ´r:';ﾆ-‐＝‐ `ヽ､
　　(_r'' ´(＿|＿_ 　　 /／　　　　　　　　＼
　　　｀　　　　　　｀ー　|　　　＿ /ヽ ,＿＿ヽ
　　　　　　　　　　　　　|　／　　ヽ　'`ー─ '
　　　　　　　　　　　　　ヽ'　`ー-‐′
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エリヌス領から離れてくると、少しずつ寒さも和らいできた。

吹雪に見舞われることもなくなり、鴉が飛ばせるようになると、
アンゼロットたち支援魔導士は途端に忙しくなった。
恐らく、オルフェオかどこかの駐屯地と念話をしているのだろう。

これまでの報告や連絡などを考えると、忙しくなるのもやむなしといったところだ。
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5518 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/13(日) 22:02:21 ID:iLBaJYNg0

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鉄の馬は粛々と歩を進め、太陽の下を目指した。
祖国に帰れる安堵感が、兵士たちの表情からは窺い知れた。
中には、家族がオルフェオにいる者もいるだろう。
異国の戦地に放り込まれた後での、家族との再会は、何物にも代えがたいはずだ。
やる夫は家族を持ったことはなかったが、家族とはどういうことかをナノハたちに
教えてもらったので、その存在の大切さは知っていた。

オルフェオに帰還した後は、態勢を整え、またエリヌス領へと戻らねばならない。
だが、更なる戦いのための旅路だったとしても、ひと時の安らぎだったとしても、
やる夫たちにとって、この旅は希望に満ちたものだった。
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5519 名前： ◆x0SRSoJXe.[] 投稿日：2016/03/13(日) 22:02:46 ID:iLBaJYNg0

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