以下の内容はhttp://jibunyoumatome.blog.fc2.com/blog-entry-2066.htmlより取得しました。


【真・女神転生デビルサマナー】雇われサマナーキル夫8

411: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:51:32 ID:PRimjMIw0

┌─────────────────┐
│                         .│
│   第八話『Nobody knows hero』   ....│
│                         .│
└─────────────────┘

412: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:54:58 ID:PRimjMIw0

         、、,......,_.,.,,,...                   ,,,.;-;;¨`'ー‐-.,..
        (、 ;;.,.;: ";: ,-'                    .:;,, :::.,,-'゙゚~^´
         "`~`'ー~


                          ( ;;;;(
          .                 ) ;;;;)    ( ;;;;(
 "`''''''ー――---------- ,..................,,,,,,,,,,,,/;;/   __,.,,,,,,,) ;;;;)....................,---------‐―'''''''`"
   . : ..: .:. ::. :..:.. ::.:..: .:.: : .::.:. :....日l;;,´EロェΠュ:: /;;/ .  .: . : . :. . :.  : .  .  .:  .. .. .
  . . .  :. . . .. .  .: . : . :. . :. . :. : . . :. r呂::ロロ::ロュllΠュェ品l;;,´:ロ::Π.: .:  : :: . :. :. .: :.:.  :. :..:  :. . ;:
  :: .: : : :: : : ::  : :: : . ... : :: . :. :. .: :.:.  :. 呂:Π目ェロE| ̄|::Π  ::. :: : :: . :. :. . : :.:. :. :..: :. . ;:. .;: .
  : :  : :: : :: : : :: . :. :. . : :.:. :. :.. .:. :. :..: :. . ;: .| | ::;;: ;:;: ;:;  : :; :;; ::; :;:  ;;: ::;;: ;:;: ;:;  :
 ;:;: ;:;  : :; :;; ::; :;:  ;;: ::;;: ;:;: ;:; ::;;:   ,!. !, .', '. ', .'' ,.'' .,' , ',' .', '.', .'',.''.,' ,','.','.',.'',.''., ',', '.','.',
   ::;;: ;:;: ;:;  : :; :;; ::; :;:  ;;:::;;: ;: .:.  ,i  .i, ;. ;.: .::; :., ::. :, :,; ., .: :, :,; .,.: :, :,; .,.:
  .','.',.'',.''.,',','.','.',.'',.''.,',','.','.',.'',.''.,',','.','.',','..',','.   ,l   .l, . ... .,;: ;:. .... .,:,.,..... . ..,,,,, .、
  ;. ;.: .::; :., ::. :, :,; .,~.: :, :,; .,.: :, :,; .,.: ;. ;.: .::; : ノ    !、  ;: ..., '' ;;:  ; : . ' : ' ;;, ,,;
  ... .,;: ;:. .... .,:,.,..... . ..,,,,, .、 ,. ... ... .,;: ;  /     `i、  ,, ;.;" " `:;; :;:" ".'';;;"
 . ;: ..., '' ;;:  ; : . ' : ' ;;, ,,;. ;: ...,. ;: .. , /       \ ."~ ;: ; ;: ;: """,   ."~
 ,, ;.;" .;. ".'';;;" ~, .;"’ .:.:".'';;;"  ,;'´          `';, ;;: : ; "' ; ~ ;;: ; ; "' ; ~ ;;: ; ; ~


╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
十年前、俺の住んでいた町が毒ガスの散布による大混乱に陥った。
ガイア教団とかいう宗教団体のテロだったと聞いたことがあるが、
真偽は分からない。

その時のことはよく覚えていない。
ただ、ぼんやりと覚えているのは、炎の熱さと焦げた匂い、
そして聞き慣れた誰かの悲鳴だけ。

生き残った俺は、ふと思った。
なぜ俺は生きているのか。
なぜ俺の命だけが生きることを許されたのか。

それはきっと、使うためだ。

誰かのために、この命を使う。そうすれば、いつか、きっと――――
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

413: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:55:09 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

414: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:56:51 ID:PRimjMIw0

         ,ノ : : : : : : : : : : `ー: : : ::..:::. ::::`、
           レ : : : : : : : : : : : : : ::. ::..::..::::..:::、;!
         l ;i: :.: :i; :ヾ,;,_ヾ-、ヾ`、::..:. ::::::::::i,
         レヾ!::ト、!`ー,r‐'''´   ヾ::;r'´ヾ::i
           `、! _,r' ,ri´ ̄ !   V,ノ ,'.,!:!
              ` 、  ヾi_,ノ     ,,,ノ`、!             ……なんだ、これ。
               .i       u ,/'.,  `、
                  .ノ__  _,.    /  ;   `
                   `ヽ、  ,,/   ;    `.、
                    ̄ _,ゝ  ;    __,,,y'`ヾ
                    _,r''´;r'′ '  ,r''´:.:.:.:.:.:.:.::::`、
                   _,r'´:;':.:/-、 ,r‐-,/.:.:.:.:.:.:.:.:._;;::.-`、:`、
                 i:.:.::::;'.:.i    ./:.:.:.:.:.:.:.:.:.;'.:.:.:.::::::`、:.i
                   .l:';.::;/ヾ'、_,,//ヾ:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.::::`、'i
                .!:.Y  `ー ''´   .`、:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::ヾi
                   i;.:.!      .::'::.., .`、.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::`、
                    i:.l        ::::::':...,ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::ヾ
                i;!:.         ...::`、:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::`、
                  !:::       .:::::::::  ヾ:`:、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
                     l::      ..::::::   .,'::::`、:.:`:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::`、
                   .l.          ..::;':: ..:::`、:.:.:`:.、:.:.:.:.:.:.:.:::`、
                 `、:.       ..:::;':: ..::::::::::`、:.:.:.:.`:.:.:.:.:.:.:::::`、

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
手紙と共に送られてきた荷物の中身は、おかしな機械だった。
ベルトがついていることから、どうやら腕か足に巻き付けて使用するものらしい。

手紙の内容はこうだ。

「君は僕を覚えていないだろうが、僕は君を覚えている。
僕はとある組織を裏切った。その組織は、僕と接点のある君を狙いに行くかもしれない。
その時は、これを使うといい。これが君の身を守ってくれるはずだ」

全く持って身に覚えのない、不気味な手紙だった。
新手の宗教かと疑いもしたが、その鈍色の機械を見ていると、不思議な気分に
させられた。妙に懐かしいような、そんな気分だ。

そのせいか、捨てるに捨てられず、気が付けばその機械を通学用の鞄に
放り込んでいた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

415: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:57:08 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

416: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:57:54 ID:PRimjMIw0

                       _____
                ,. '" ̄: . : . : . : . `ヽ、
                 /: . : . : . : . : . : . : . : . : .\
               / :/.::: : . : . : . : . : . : .:.:.    \
                 / :i.:: . //:/.:/:.i:.i     ヽ : . : . :ヽ
             ,':. :.i:.: . i.:i:.i :.i .:i: ヾヽ:.: . : ..:i . : .i : . :',
               i:.:.:.:.:i: . : i. iハ:ハ .ト、ハ:ヾ::.. : .;}.:i . i: .:i:} i
                | : .:.:.|: . : i. |,.X弋!弋 ヽト、:.:.ムリ:イ:.:.ノハ:}
                !:i:.:./.|:.: . :i. lィ弍朴、 ` リ V左ルイ:/:ノ 'リ
            |:i.:.:{.{ !: . : i.圦''k=i_,.    ´|;'r} }从イ        おはようございます、先輩。
             |:i:.: \!:. .::i: l ` ̄    、┴''‐ハリ |
              |:!.:.:.:.:.:i:.: . : i. l       /  ノ:.リ .}
              リ .:.:.:.:.:!:.:: .:.:i .l    ー ‐   .イ :.リ /
             ,':.:.:.:.:.:/i.:i.:: :.:i.个 、     /: :i: :},/
              /:.:.:.:.:./.:.i.:i: .:.:.i:.:l  ` ーァイ:: i. : .:V
          /:.:.:.:.:./.:;,rl :!.:.:.:.i:.:ト、.  /、:.i:.:.:i. : : .|
            /:.:.:_;;ノ-'" !:.i!.:.:.:ト::l >ヒ}:.:!:.:.:!:.:.: :ヽ
     rー--、ム<ヽ.    !:.!i::.:.:| !!./:ノ }:}\::.i.:.:.:.: .:.\
    /  .::  ヽ:.ヾヽ.  ヽ!ヽ:.:| リ /  .|:|   ̄TTー、: :ヽ
   ./        \:ヾヽ  ! ゙ヽ!//   ヾヽ  |::|   \:}





            ,.。 *''":.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:V:}
      _,.ィ升:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/_
       マ:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:≧=‐
      -=孑ァ:./:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
        {/-彳:.;′:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\{`
      //レ.Ⅳ:.:./}:./}:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.、:.:.:.:.ヽ
       ´ |:/|,亥',:/ /イ |ハ:.:.:}:.:.、:.:.:.:.:、:.:.:.:.:.:.:.V:.:.:.:.、
       ′| 劣  丈≧zz}:.:.ハ:.:.}:.:.:.:.:.}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.       おはよう、桜。
           '. 必    二,,_⌒゙}ヾ从.:/:.:.ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.}
         |..:丿   ''" ん心、   }イ:.:./:.::.:.ノ:.:.:.:.:.i:.:. }       藤ねえは?
           「       、乂_ソ 〉  }:.:./⌒Y:.:N:.:.:.:从リ
.       ∧        ̄      }/)::: . }:.:.:.:.: /         「昨日やり忘れた仕事があるそうなので、早めに学校に行ってる、
         ∧ヽ、           _.::: /:.:.}从{
                       ,.r一'´:.:.:.:/            だそうですよ」
         人    __,.。 *''":::  }从从ト、
            _  ̄ |:::::::::::::::/       ..ノ:|、__        そっか。じゃ、朝飯作るか。
         |:i:~"''~、、__ /__,. -‐'' "´:i:i:i}:i:i:i:i:i:i:i
            }:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:iノ:i:i:i:i:i:i:i:
          ):i"''~、、:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i/:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
       ,.。*'"i:i:i:i:i:i:i:i:i:iうぅo。i:i:i:i:i:i:i‐=≦i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
  _,.。 *''"i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i
≦i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:
i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i

417: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:58:07 ID:PRimjMIw0

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
合鍵で入ってきた、後輩の遠坂桜を出迎える。
去年怪我をしたときに、家事の手伝いということで我が家を訪れて以来、
彼女は後見人役の藤村大河という教師と共に、この家の住人と化していた。

自分には両親がいない。正確には、いた、というべきか。
十年前のテロで、二人とも亡くなった。その時、自分はある人に助けられ、
衛宮の姓とこの家、そして少なくない財産をもらった。

その人のことはほとんど覚えていない。最初に出会ったきり、彼はありったけの
生きていくうえで必要になりそうなものを自分に残し、「仕事があるから」と
行方をくらましてしまったのだ。

だが、自分はその人を父と思っている。
あの人がいたからこそ、今の自分があるのだから。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

418: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:58:22 ID:PRimjMIw0

                 ̄` _
             /          ̄`ヽ
                /
         /   / /            :..
.        '   /               i
         |  i|:| |         } ⌒\ {
         |  l|:| {     /  / / /}  __≧K〕
         |  l|从{八   /} /} /j/∧ // Y‘,
         |  ||r示示\{ ィ抖示ミ 彡' Y} i | 〉       ……さて、それじゃいただきましょう。
         |  || 上り    上:::り  fニ }L{_|,/
         |:  八//      //   r:::ノ ノ | | |        あら、先輩。自分の分の箸、忘れてますよ?
         |:   へ  ′_,     r―イ :| | |
         |:   |:i         / |   | | | |        「おっと、サンキュ、桜」
         |:   |:|  |>ー ´    |_  | L{T´
         |:.   从  〔冖}__.....-‐=  ̄ }_:|   |
       __|:. // {ー' 「| }::}     //\ |
      /:⌒|:. //  |  r':::| |::|          /`ーァー
.     /   |/}/  |/:::{/{く:::ヽ.  /   /   /    |
    /   (   /:::::/个:::::::::\/   / /     |
    /     /::::::// :|::::::\:::::\ / /       |

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
自分には何のとりえもない。特別な力など何もない。
だけど、何もないならないなりに、精一杯やっていくつもりだった。

理想の自分に、少しでも近づくために。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

419: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:58:41 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

420: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:58:56 ID:PRimjMIw0

                      ノ} _
                ヽー.....、r',; :::.ヽ- 、`ヽ
              ,.  -┴-  、l/__ :::ノ : . \:ハ
.          _ / : : : : : : : : : : : : : : `丶フ: V
         //{ : : : : : : : : : : :l:r 、 : ヽ:へ \ '.
.         _/,.イi!;;;;;V : :/ l: : :l: : :lハ^^ヽ: : .Vハ::.ヽ'.
    ,. - /. : ヽi!;;;;;/. : :l: :l: : :l: :l: lハ   Yト、Vトi\:::.'.\
.    ヾミ/. : : : : Y^ ー ァl: :l: : :l : lヽトlハ  ,.N l:V:!ヽ:` ー \
.     l : : : : : : Yi,;;;;l;;〉: lヽ: :!ヽl::l\ ヽィj「i.l: 〉l ::ト、:::. : : : .丶
.      l:. : : : : : : Yi,/,;}ハ l ,.ヽト'´N  ヽ.以 lイlリ\:::.\::. :: : : : . . . .
.      l::::.. : : : : : |, -ミ{ Ν,.ィf乏丶、  、  l∧  \:::.\::::.... : : : : : : : : ̄       おはよう、桜。
.     l:::/,:... : : : |{ i >、,ヘri乂ソ     ′/.:::::\:.、 `_ー ニ=---z-ァ=ニ二
      V /,:::::::. : |lヘーミハ ゞ'∧.ハ_   t7 /ヽ:::::l:...` ー 、:. :.`ヽ`¨¨´           今日も通い妻ごくろうさま。
        V /,::::::::..:|l::::K⌒ヽ 「 「 yiヘ,_" イ::::/:):::!::::::::.. : Yト、: lハ
.       V /,:::::::::..l::::l::l >、 ヽト、ヽ〉l \スノく::::::l::::::::::::. jノ :}/ !             「ね、姉さんっ」
.         V /,: : ::::.∨l/.: :.丶、`ヽ  ! ノ.: ゚.:。:Y^ ー-=ニ∠ ノ_
         |ヽl : : .\:Vl、 .: .: .: __ー<´:. :. :. :. :. :l :. :. :. :. :. :. :. :. :. :.ヽ
         |:::l \ : : .\ヽ :. :. : :. :. :. : ̄\>_、_ :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. :. .
         |:::l::八\: : : ` ミニ=‐-==ニ>'´ ̄`ヽ:`ヽ:. :. :.__ :. :. :. :. :. '.
         |://. : \\::... : : : : : : : : : ̄二¬=-ァ=ニ二 : :-. 、: .ヽ、:. :. : l
        j//. : : : : :ヽ >t‐----------‐ ''" ̄ ̄  丶- 、\:. \、.ノ
     /://. : : : : ::::::::::ゝー-  __ :. :. ̄ ""'' - 、:. :. .\ : : :\:: 〉
    / :/. : : /. : : : ::::::// >、:. :. :. :. :. :`  、:. \:. :. :. :. :. :.ヽYi:. :Vlミ=-
   . : /. : : : :/ . :.:::/.://.:::::::::>、:. :. :. :. :. :. :. :.丶、:. :. :. :. :. :. :}ハヽVl:〉
  :/. : : : :/..:::::イ.::::://.:::::::::::::::::.ヽ:. :. :. :. :. :. :. :.'゙:丶:. :. :. :. ri丿:r}V{
  : ..:::::::/.:::,.イ:::::!::::::l::l::::::/ : : : ri{i,:. :. :. :. :. :. :. :. :. :.ヽ:. :. : Vl、:.ヽ::丶、_
  .:::::::::::::::::/ l::::::l:::::::ヽ!::〈 : : : : : ,Vl '}i, :. :. :. :. :. :. :. :. :. l\:. :.ヾミ=- ` ー‐

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
桜と一緒に登校すると、正門で桜の姉である遠坂凛と遭遇した。
この姉妹は学校では有名な美人姉妹で、仲も良かった。

「また、桜の朝練見に来たのか、遠坂」

「妹の頑張ってる姿が気になるだけよ。悪い?」

「いや、いいことだと思うよ」

美しい姉妹愛に、つい頬を綻ばす。
すると、なぜか遠坂凛はそっぽを向いてしまった。

「桜、そろそろ行かないと朝練遅れるわよ」

「はい、姉さん。それじゃ、またお昼に」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

421: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:59:10 ID:PRimjMIw0

           ___ _ゝ==ヘ、  ___
           >.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`´.:.:<.
         < ̄:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.
        / ̄.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ゝ
       /:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾゝ
        ̄/:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|′
         !/!:.:!:.:/ハ:.|:.ト、:.ト、:.|ヾ|ヘ!ヽ!:.:.:.:ヾ!
         ∨レヘL_」ヘ!ヾ}、,りrt≦二リr‐:.!
            rラにテ!     ヒ少 レゝ }
            !ヘ ゞ=′    ` ̄´ ソノ            さて、と。
           ヾヘ  ′      /リ
               \ ´  ̄  /  |
               \__ / /  |
             「::::||::|  「| ̄ ̄ ̄ ̄|
           __,,、r┤:::||┘ |:|_:_:::::::::::::¬ ̄`ー...、,,_
     rー..'':::"´:::::::::\::::|| 、 _|:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`::ーr、
      i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::||   |:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::i
    i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::||ヘノ;;|:|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::ト、
     l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::||ヾ/!:!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::/::::::::::::!::!
     l::::::',::|::::::::::::::::::::::::::||   |:|::::::______:::::::::::::|:::/::::::::::::::!:::|
     |::::::::',|::::::::::::::::::::::::::||   !:!::::::` ̄ ̄ ̄´::::::::::::!:/::::::::::::::::!::::i

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
その後は、いつも通りの日常だ。
授業を受け、昼食を遠坂凛と桜と一緒に屋上で済ませ、授業が終われば
自分の仕事をこなす。

仕事といっても、生徒会などに所属しているわけではない。
ただ、自分にできることを引き受けているだけだ。
昔から機械いじりは得意だったので、壊れたストーブの修理などを請け負っていた。
業者ほど本格的な修理はできないが、簡単な修理ならいくらでもできる。

他にも、学園祭のビラ配りや、通学路の清掃など、色々だ。

塵も積もればなんとやら、こうした地道な努力が、いつか結果に結び付くと信じて。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

422: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 21:59:42 ID:PRimjMIw0

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ、
:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ':::-‐::::::::::::::::::`ニ=‐   ,
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ_  ´
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:;ゝ
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ::::::::::::::::ヽ::l,
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ::::::::::::::::}
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::/
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;:::::!:::ト
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;rィ )::/:;ィ|::/
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;ィ/ /,ィ'/'',r'/'
:!::;:::::::::;;:::::::::;::::::;ィ' }! |/ ' /            いっけね、買い物忘れてた。
'Vl;ィ〃//' "´   `'′ /
           /      ノ
         /   ,. '´
-.、    { / 、_/
:::::::`ヽ.、 '〈
‐-、:::::::::::`:ー-、
  |::::::::::::::::::::::`ヽ、_
   l:::::::::::::::::::::::::::::::::`::‐:..、
   l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;:>=‐-...、
    l::::::::::::::::::::::::::::::/´::::::::::::::::::::::ヽ
    l::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
     l:::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
下校する頃には、既に時刻は午後の七時を回っていた。

帰宅し、制服から私服へと着替えた時、ふと思い出した。
食材を買ってくるのを忘れていた。

財布やら何やらをポケットに詰め込み、ついでにあの機械も袖の下に忍ばせる。
試しに左腕に装着してみると、ぴったりのサイズだった。

まるでヒーローの変身道具だな、と思った時、不思議な高揚感があった。

そうだ。自分は正義の味方に憧れていた。それは子供の頃から変わらない。

十年前、テロに巻き込まれて入院していた日、自分と養子縁組を組むための
了承を得に来た父は、こんなことを漏らした。

「僕はね、正義の味方になりたかったんだ」

だからこそ、彼は自分を助けたのかもしれない。瓦礫の山から救い出して
くれたのかもしれない。

自分も、と思った。自分も、正義の味方になれたなら。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

423: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:00:33 ID:PRimjMIw0

   .:.:.:.:.    |.:./  |ノ|.:.:.:.: .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |   |   |
_ :; :...... _|/   | |.:.:.:.:.:.: ____:;:; |   |   |
 :.:\、/゛⌒.. |:.`   |ノ|.:.: .:イ   イ 〕 |   |   |                        x────────
......./^\____| ,   | |イ   イ _   |..:;|   |   |                          // ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 ;:;:;...... ::. :. |    :.:|ノ| ̄ ̄| Y´}!ヽ |..:;|   |   |                            / ^────────
.:.:.:.:.:.:.  __   |:.:.:..... | |    |〕|ヽiレ'} |..:;|   |   |                            ̄| ┌──────‐
;;; ' 、 -';;/ : |.;.;...... |ノ|    |〕|ィiト、| |..:;|   |   |                        /| r、 │ |
__/ヽ;;;;;;L.:   |  :.:, . | |    |从 |i^リ |..:;|   |   |                  /  |┤ \| |───────
7、ィ;;;;;/-i|..:.:.:|    ;|ノ{    |    ̄/ |   |   |              r──‐ァ.i  、イ 丶   | |i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|
─‐イ /lil|.:.:.:.|: .: .:. 乂二)  |   // |   |   |               乂__.:.:/::::レ≪ ̄ ̄\ | |i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|
 ̄]lll|/  lil| , . |: .: .: ..:...」___L// / |   |   |       /ハ、   y^.:..く.......|        〈二二二二二二二二二
_〕ll| _/ii|.:;;;''|.:.: : :..:イニニニニニニ」 /-_-|   |   |         〈.:.:.:.:ヽ_ /^ヘ=-{::::::|         | |───────
i!ii!i|ll|i!i!i!i| | : : | .: /:_:〕 ニニニニニ イ _-_-_|,,__|   |_____,」‐‐「^7.:.:.:/ .:.: \|         | |
i!i!ii|ll| 、ィ7i|__|/_:_:_ ヘ三三二/ _‐_-_-|_:_:_:.}   }_:_:_:_:__,/^^^}! /.:./:/.: .:.:.: |         | |───────
 ̄ 「|イN|i!|_:_:_|_:_:_:_/  ̄ ̄ ̄ _-_-_-_- |:_:_:V  ∧:_:_:/.:.:.:./:.:.:l:.:.:.:.`ヽ:.:.:/.:.:..:.:.: :|         | |i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|
ニ〕ll|.   |ll|_:_:_|_:_/:_-_-_-_-_-_-_-_-_-_''|:_:∨ ∧_:_:ノ:.:./:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.∨.:/: :.:.:.|         | |i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|
_〕ll|、/.ll|─┘'-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-|_ 7⌒〕_:_:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:.ヽ::.:∨.:.\:.:.|        〈二二二二二二二二二
i!ii!i|ll|i!i!i!|l!|_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ ̄ゝイ  ̄{.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:. :.:.:.ヽ:.}:.:.:. :..ヽ|         | |───────
i!ii!i|ll|i!i!i!ア-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-八.:. :.:.:.,/:.:.:.:.:.:./: :.:.:.:. /^ ̄ ̄ |,_____,| |
i!ii!i|ll、ィl「-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_\.:.:.:.:.:.:.:.:/:. 〉.:./_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-| |───────
¨ ̄-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_->ー───'^_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_| |i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|
_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_ | |i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|i|
_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_‐〈二二二二二二二二二
_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-
_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-_-

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
買い物に行く途中、鞄の中から振動を感じた。
何かと思い、鞄の中を覗いてみると、あの機械の画面が発光していた。

取り出し、画面を見てみる。
エネミーソナーという文字と、赤い信号のようなものが映っていた。
いくら英語に疎い自分にも、エネミーの意味くらい分かる。

敵? 一体何の敵だというのだ。
馬鹿馬鹿しくなりつつも、特定の方角を向くと信号が赤くなることに気づき、
その方向へと歩を進める自分を嗤った。

辿り着いた先は薄暗い路地裏だった。
なんとなく空気が変わった気がし、身構える。
樹海や、暗い谷の底に放り込まれたような心地がした。

周囲を警戒しつつ、路地裏の奥へと進んでいく。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

424: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:00:57 ID:PRimjMIw0

;;;;;|.!;;;;;;|l;;;;;;;;;;;;;;;;i、! l;;;;;;r‐i;;;;;;! !;;;;゙|;;;;;;;;;;/ |;;l゙};|!;;;! !;;;;;;;;;;||;;;;;;;;ll;;;;;li;;;;;∥;.!,!;;;;;;;;;;;;i!|;;;;;; ネ;;;;;;"/.|;;;;;;;;ili.!;;;";i;;;;
;;;;;}l;;;;/.|;;;;;;;;;;;;;;;|i.! .!;;;;;| l;;;;;;! l;;;;;|!ノ.!;;;;.! |;/,!;|.!;;.l|;;;;;;;;;;| !;;;;;;l゙|;;;.!|;;;;l゙|;;;;!.!;;;;;;;;;;;.! |;;;;;;;";;;;;;;l゙ .l;;;;;;iリ;||;;;;;;l!;;;
;;;;;.!.l;;;l゙ |;;;;;;;;;;;;;/.|;.l .|;;;;| .|;;;;;;!.|;;;;;;! .|;;;;;} !;|,!;;;l !;;;lv、;;;;;l !;;;,! .!;l|/;;;;|:!;;;|.l;;;;;;;;;;;;| .|;;;;;;;;;;;;.;;;;|, ,!;;;;;|.!;||;;;;;;ミ;;;
;;;;;/.l;;,! .|;;;;;/l,;;;{ .!;;.! !;;;.! |;;;;;;| |;;;;;;l  ,!;;;! !;l.!;;;;}!;;.! .|;;;;;l゙ !;l  '".|;;;;;[|!;;l |;;;;;;;;;;;;.! .l;;;;|L;;;l|;;;;'ヘ;;;/!;,l!;;;;;;;;;;;;
;;;/ l;;l .:!;;r;{ .!;;.! |_;l゙|;;;;} |;;;;;l゙.l;;;;;;;.! !;;;;{ .゙.!;;;;;l l;;;} |;;;;;| .!,!   l;;;;;;;|:ゞ .!;;;;;;、;;;;} l;;;|.|;;;;.!.!;;;;;;;;;;;l゙|;;l";;;;;;;;;l
;;;| .|;;} |;;;;;} .!;;.!  !;;;;| .|;;;/ .!;;;;;;;;.l..!;;;;} !;;;;;.!.!;;;} .!;;;;;.! /.!   !;;;,;;;;|  .|;;;;/ .!;;".!;;.! !;;;;.! l;;;;;;;;;l |;;./ ;;;;;;;;|
;;;! |";| |;;;;;;.! |;;;;!  .|;;;;;|  l;;l゙ /;;;;;;;]、゙";;;;! |;;;;;;.!.!;;;l ,!.!!;;}/;;.!  !;;;l゙''"  .|;;;} !;;! !;;;! |;;;;;}/.i|;;;;| .!;,ll;、;;_;;;;}
;;;.! l;;;;l.!;;;;;;;! |;;;|  .ト;;;;;.!  !.! .!;;;;;;;;;! l;;;;;;;! l;;;;;;゙l.|;;;.!l;.!.!;;|.l;;;;;|  !;;;!   l;;;;|  l;;.!.!;;,! .!;;;;|l゙/l;;;;,! :!;.!T` !;;;.!
;;;;.! !;;;||;;;;;;;| ,!;;l  l;;;;;;;} !;! l;;;;;;;;;;! l;;;;;l゙ ゝ./ .l;;;,!!;! l;;.!|;;;;;.!  |;;;;|   !;;;l゙  .!;;|`゛ .l;;;;;;/ .!;;;;! .|;;{  .!;;;;|
;;;、| l;;;〔;;;;;;;! |;;,!  |;;;;;;;| l;,!.!;;;;;;;;;;|  !;;;;.!    `. l;}.|;;;゙;;;;;;} .|;;;;!   .|;;;;|  |;;;|  !;;;;;| l;;;;,! .|;;.!  .l゙;;;;|
;;;;゙;| !;;;;;;;;;;;! .!;;l  .!;;;;;;l ,!,!.|;;;;;;;;;;.!  !;;;;;.!     .彳|;;;;;;;;;;;l  .!; !   .|;;;;}  .|;;;.!  .|;;;;;;l !;;;} .|;;}  |;;;;;l
、;;;;;| :!;;;;;;;;;;;l .|;;.l  ヽノ゛./.! .l;;;;;;;;;;}  |;;;;;|      !;| |;;;i.l;;;;;}  ″   |;;;;|  l;;;;,!  |;;;;;;;| .ゞゞ |;;;l  .|;;;;;|
l;;;;;/ l、;;;;;;;;}.!;;.!    .l゙;.! |;;;;;;;;;;|  .|;;;;.!      !;| |;;;| `'"      .|;;;;|  |;;;;l゙  !;;;;;;.!   l;;;,!  .!;;;;;!
.゙‐'  l、;;;;;|゛.|;;;.!    .i!;;l゙ .|;;;;;;;;;,!  .|,,/      .|;;! l;;;|        ヽ!  l;;;;.!  l;;;;;;;l゙   /;;;,!  ゙ー'゙
     !;;;;;l l;;;;l    l;;;l゙  .l.;;;;;;;,!          l;;! .!;/              !;;;;l  .!;;;;;;}   ,!;;;;l
     .゙'i;;.! l;;/   .l;;;;l   `'''″          !;|                |;;;;|  l゙;;;;;;;!   .l;;;;,!
      `'゙ .!;;.!、  l;;;;|                |;.!                ゙''"  .!;;;;;;;l   `"
        l;;;;l   ゙''"                  l;;;!                 l;;;;;l゙
        `'"                   :!;;.!                 `''"
                             !./

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
暗がりに目を凝らす。
黒に近い赤色の空間が、そこにあった。

そこら中に転がった手足。
粘質の咀嚼音。
およそこの世のものとは思えない生物が、人を喰らっていた。

息を呑み、その場に座り込む。
現実とは思えなかった。それと同時に、自分は懐かしくも忌まわしい感覚を
思い出していた。十年前のテロの日。その時の、死の予感だ。

怪物が赤く光る眼をこちらへと向ける。
瞳孔はなく、血の塊のような目をしていたが、確かにこちらを
捉えているのが分かった。

自分もあそこの死体のようになるというのか。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

425: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:01:22 ID:PRimjMIw0

   `           i";;;,/ /      /;;;;;;;;;;;;/                   il l′         _..-";;;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,.
           l /  ."、    / ;;;;;;;;;;/               _    ,,i!!″     .,..r'";;;;;;;;;;;;;;;;;;.,,,r‐ー'″
          /./    l「    .../ ;;;;;;;;; /              ,,il″   .´     .,,./ ゙;;;;;;;;;;;;;;;;;_ン'"
     .,i''l   .,〃    .〃 /  ./ ;;;;;;;;;./    .,.     _ /″           _/;;;;;;;;;;;;;;;;;,./ ´        _ン'
    ,lゾ  .〃   .,〃 ./  ,i";;;;;;;;./     ./     ,r'./     .,    ._/;;;;;;;;;;;;;;,,,./ ゛       . _,,-へ.iii
   .〃   ./l   、〃 ,ir / ;;;;;;; /    .,〃    .,ノン′  .,,ir'"  _/丶;;;;;;,ン'″    ,, ;;二二r‐''''、;;;;;;;.
   〃  .,ノ~;/  .,/./ .,ノ/ / ;;;;;;;;;;;;l  .,.. |″    ,i'ン"   ,ii'" .,..-'";;;;;;;;;;;,/゛  _,,,,,__ ,ir!'"       `'''″
  .il″ / ;;;;;/ ,ノ゙''゙,i彡'゙i/'";;;;;;;;;;;;;;;;;゙‐''"./     ,-/'" ,.. ;;/!"._./ ";;;;;;;;;;;.,./ _..-、., />'"゛
. ,i|′ ,/;;;;;;;;l゙./ ;;;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'|  ,.il!ン''/...-彡 '',゙..-'";;;;;;;;;,..;;二―'",,/'!'"
// ./;;;;;;;;;iレ゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; / .,. |/‐ンン'∠゙‐'゙´;;;;;;;;;;;;,i;;iU゙‐'''^゙゙''″         _..i
/r'";;;;;;;;;;; 〃;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;>'";;゙´,iテ '´;;;;´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;フ"      _,,,...i;;;;iv=ゞ´
;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:'“;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; /   __..;;メ`-ー'"゛            _,,.. -ー'''''゙゙''゙ ̄,゙/
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i 彡‐''゙,゙.. /               ,..-''゙´;;,,..、;;;;;;;;;;;___,,,,,,,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,./ '´             _..- ._,,./ ;;;;_,,./   .゙'''゙゙゙´ ,,-''"
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,./ ″   ._,,,,_,,,..;;ニニ!゙彡''彡-‐'"゛        ‐‐‐'"
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;./ ._,, ー'''゙゙´;;;_.. ;;ニ`- ゙゙゙̄‐'"゛
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_.. `-'''''"
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;iiijj⊇....--‐',゙,゙,,
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,,..r‐ '" ̄゛ . _..yrー''“''''"    . _,,.. -;;ニニコニ;;r‐
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_..-‐'' 二ニ  ―ニニ`-'”'"゛     .,_iiir=`-''''"´

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
嫌だ。まだ死ねない。
まだ何もしていない。

声にならない叫びを上げながら、後ずさりする。

まだ、この身は何も成してはいないのに。

視界が赤く染まる。自分の血飛沫かと思ったが、違った。
気づくと、そこには人外の存在ではなく、極めて人間に近い女性が立っていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

426: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:01:33 ID:PRimjMIw0

          _____.|┃┃
.         /       |┃┃
     /        |┃┃
    /   (●) (●)|┃┃
.   |.  (トェェェェェェェェイ|┃┃        おっ、なんだ若えの!
.     \ \ェェェェェ/|┃┃
    /          .|┃┃        先に片づけちまったのか?
    / i       (.二つ┃
   { ミi      (.二⊃┃
   l ミii         ト、二)┃
   | ミソ      :..`ト-'. ┃

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
そして、その様子をとにかく人相の悪い男が覗いていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

427: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:01:51 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

428: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:02:22 ID:PRimjMIw0

                     _  _
              /: : : : `´: : : `ヽ
             /: : : : : : : : : : : : : : : ,
            ': : : : : : : ヽ〃: : : : : : :',
           ,: : : : : : r- 、: :>、: : : : : i:,
          ,: : : : : : / てゞっ  ,: : : : :l: ,
             .: : !: : : :,  <斗ヘ ',: : : : l: : ,
            . : : |: : : ,ニニ.=.ニニi : : : :!: : ,
         ' : : :|: : : !ニニ===ニニl : : : l : : ,        …………。
            ': : .:.:!: : ::トー'´ ̄i`ゝー彳 : ,;: : : ,
          ,: : .:.:.|: : :l.ヽ  _ _  イ:.!: : ,::,: : : ,
        ,: : .:.:.:.l: : l:.:r{≧、 _ イ-、:.i: : i::::,: : : ,
        , : :.:.:.:.:.l: : l>ミ三三≧シ、l: : !::::,: : : ,
         />― ´i: : !   、       !: :!≧‐- 。
      〃       l: :lー‐- ∨ /,  -‐!: !     `ヽ
      i   、   l: l    `  ′  l: l       i
      ,.!   ヽ/  !:l   ヽ  〃   ',:! ヽ /   l
    /: !     /> t:i ̄ ` ヽ∨-=≦ ̄li`ヽム.     l',
   ./: : l___./ >‐.!l‐= <_   _>≦三!≧、 i__i: ,
   /: : .:{_o_i/ニニ,'二二二三ニニニニ',ニニヽo  }: ,
  ': : .:.:.:{_o_lニニ.'!ニニニニニニニニニi:,ニニi ̄ ̄j: : :,
  , : :.:.:.:.:{ニニム.二/:;ニニニニニニニニニl:',ニ,「o ̄}: : : ,
 , : .:.:.:.:.:.iニニ∧/: ;ニニニニニニニニニl: ,彡ニニi:::: : : :,
. : : .:.:.:.:.:.:{.  ̄ ̄,': :,ニニニニニニニニニニ|: iニニニl:::::: : : ,
,: : .:.:.:.:.:.:.:iニニニ,: : ;二二二二ニ二二二二|: :!____}:::: : : : ,
: : .:.:.:.:.:.:.:jニニニi: :; iニニニニ二ニニニニニ|: :lニニニ!:::::: : : : ,
: :.:.:.:.:.:.:.:.l二ニニl: :;: lニニニニ二ニニニニニ|: :lニニニ!::::::: : : : ,
【鬼女メデューサ Lv39】

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
先程の人相の悪い男は、加賀喜留夫と名乗った。
私立探偵を営んでいるらしく、丁寧に名刺まで渡された。

その隣にいるのは、白いドレスに身を包んだ異国の少女だった。
右目は薔薇を模した眼帯で隠れており、白金色の髪を腰まで伸ばしていた。

対する自分の隣には、先ほど現れた謎の女性が直立不動の姿勢で立っていた。
メデューサ、と名乗った彼女は、一見すると長身のモデルのような女性だった。
だが、明らかに何かが違う。目の前の少女もそうだ。

彼女たちからは人間とは違う何かを感じる。

「生体マグネタイトは吸収されてないみたいだし、大丈夫そうだな」

加賀喜留夫は、一通り事情を自分から聞き出した後、検査器具のようなものを
自分の腕に巻いて様子を見ていた。

「大丈夫って、何が」

「お前はまだ、後戻りできるってこった。見たんだろ? あの化け物……悪魔を。
こいつも、お前の隣のそいつも、悪魔だ。俺は悪魔を使って悪魔を討つ仕事を
している。見たところ、既にその悪魔とは契約が済んじまってるみてえだけどな、
俺なら、というより、俺の仲魔なら打ち消せる」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

429: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:05:14 ID:PRimjMIw0

     ____
   /     \
  /         \
/     (●) (●)\       全部忘れろ。それで明日からいつも通りに過ごせ。
|    (トェェェェェェェェイ) |
.〉     ∩ノ ⊃  /        俺が責任もって、お前を日常に帰してやる。
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
加賀喜留夫が言うには、自分はまだ引き返せるらしい。
人を喰らう異形たちが潜む世界から、今までどおりの世界に。
桜の顔が脳裏を過ぎる。答えは決まっていた。

「俺は――」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

430: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:05:52 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

431: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:06:16 ID:PRimjMIw0

  /              \    \ゝ
  ア´         ヽ \ ヽ   i     ヽ\
 〃           ヽゝ‐-ヽ}>v} {  |  \}
 {       ヽ   ハ}  〃 __ ヽ f⌒∨ }
 レ   l   {ヽ  }\{ }' //ィ乏心〉 }/{ ノ} |
  |/{ .|   ト ∨    '‐´ 乂_ツ    〉 / N
.   ∨{ N⌒゛¬ヽ       ¨´     } {          ……というわけで、これからよろしくな。
    }ハヽヽ   , =               爪 リ
        {ヽ'´     i            ハ/           俺は衛宮士郎だ。
       \'     ` _,  -┐     / } ∨
         ヽ    ヽ  /    / .|_ヽ-―
              >      ̄     <      \__
                >  _ イ               ヽ
                /    _  ´ ̄      \
                | |_/-‐
                >イ ̄    ´ ̄`

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
家に連れ帰ってきたメデューサを居間へと案内する。

「よかったのですか」

「ああ。これでいいんだ。俺は、サマナーになる」

「まあ、私もあのまま放り出されるよりかは助かりますが」

そう言うと、メデューサは軽く口角を上げた。

結局、自分はメデューサを手放さない選択肢を選んだ。
このCOMPを使って、悪魔を使役し、悪魔と対峙する道を選んだのだ。

第一、人知れず人間を喰らう怪物の存在を知って、はいそうですかで済ませられない。
自分にできることがあるのなら、やらせてほしい。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

432: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:07:08 ID:PRimjMIw0

                                l゙:.:.:l゙:.:.:.:.:.:.:.l゙::::::::::::::゙゙゙゙゙゙゙゙::::::::::::|:.:.:.:.:.:l:.:.:.
                                  l:.:.:.l゙:.:.:.:.:.:.:.;! 、:::::::: !三三!::::::::::;|:.:.:.:.:.:l:.:.:
                                  ,!:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:iヽ `'''"  ., `"'''"´|:.:.:.:.:.:l:.:.
                               l:.:.:.:,l:.:.:.:.:.:.:.;!:..\.  __,  /l:.:.:.:.:.:.l:.:.
                              l:.:.:.:.!:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:.:}ヽ、.   ..‐.!:.:.:.l:.:.:.:.:.:.l:.:
                              l:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.:.:.:,!:.:.:.:.:.l'''"┌'''"゙´::::|:.:.:.:l:.:.:.:.:.:l:.
                             l:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:._:./、 :;;_|__';;;:::::::::ミ、:.:.:!:.:.:.:.:.l:.
                             l:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:./'"゛          `'-l:.:.:.:.:.l
                            l_;::-‐/:.:.:.:.:.:.:./                 l:.:.:.:.:l
                           ,/   /:.:.:.:.:.:.:./-..,,,,,__,, -ー    - 、..,,,,,,,...l:.:.:.:.
                          l゙    /:.:.:.:.:.:.:./                    l:.:.:.
                            ,イ.   /:.:.:.:.:.:.:/                  !、:.
                         / .l   /:.:.:.:.:.:./         、 /         .l:.
                        /:.:.:.:|   !:.:.:.:.:.:.:ilン‐''''''''''''''''''― 、儿,,,,.. -―'''¬―‐'
                         /:.:.:.:.:.:;!  /:.:.:.:.:.:iイ ,..-‐''''''''¬ー- ..,,,,,__,,,,,,.... --.... ...
                       ,,/:.:.:.:.:.:/:.:! l:.:.:.:.:,i" l":::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::
                     //:.:.:.:.:.:/:.:.:.|/:.:.:.:.:,i―l::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::
                   /;/:.:.:.:.:./:.:.:.:./:.:.:.:.〃',i .!、::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::::::
                     /;/:.:.:.:.:.:./:.:.:.:./:.:.:.:/;;=ニ二ヽ::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::
                   /:.:/.:.:.:.:.:.:./.:.:.:.:/:.:.:.;〃" ./゙';; ヽ::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::
                 /:.:.:./:.:.:.:.:.:ノ:.:.:.:./:.:.:.ノ.l ._..-┴'''i`-!`゙'- ___;;;::::::::::::::;;;;;;;;;;;;ir‐''''''''';;l./
             /:.:.:.ノ':.:.:.:./:.:.:.:.:/:.:.:./:.:.:゙〔:::::::::::: ;iソ,゙.l    !゙''!!-、::_;; -‐''゙~:l l''"゛ .|


╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
メデューサいわく、「あるサマナーと衛宮士郎を守護する約束の下、
契約を交わした」とのことで、彼女自身に目的意識などはなく、
強いていうなら自分を守ることが目的らしい。
ちなみに、そのサマナーの名前は「聞くのを忘れた」そうだ。

「時に士郎? そろそろ、対価の話にいきたいのですが」

「ああ……そうだよな。悪魔だもんな。命とか魂とか……」

「そういったものを要求していた時代もありましたが、今はそうでもありません。
主流といえばマッカ……魔界の通貨ですね。他にも生体マグネタイトや宝石
を要求するのが一般的ですが……私が欲しいのは、血です」

「血?」

「はい、新鮮な」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋


434: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:07:55 ID:PRimjMIw0

:V:.:.:.:/:.:./ レ′  ∨ |/   ij   \;}      \;,}  \:.:}:.:.:.:r-キ
:.:V:./:.:.:/   彡´ ̄ ̄ミh。.,__ _    }:. _jI斗''"´⌒`ミ  }:j!:.:.:.ム
:.:.:`:.:.:.:.}      ,. ―-ミ_`ー一'"   .ノ``-彡-―ミ、   ハ:.:.:.} ``
:.:.:.:.:.:.:.:.}    〃γ芹ミ ゞ        彳γ芹ミ ヾ}  }:.:.ト:.:|
:.:.:.:.:.:.:.:{    〈{  {::::rぅ::}           に )::::}  / .}:ハ:|``
:.:.:.:.:.:.:.ハ     ` 乂:::::ノ    U   {:.  ゝ乂::ノ_    !ハ;!
:.:/⌒ヾ:.:}     `冖'^  \\\\\}:.\\  ̄ \\\}        なっ、ちょっ、おまっ……!
:.| ::::ハヾ;!  \\\\\\\\\\j::\\\\\\| |
寸 :::::}  \\\\\\\\\\\/:::\\\\\\j |
.八 ::::ゝ   U                          从
  .\ ー- 、         ,. ---―- 、        .|/
   }:.≧ト- 、        /-====ー /        J
   从:.:.:.:.:.|.\      〈:::::::::::::::::::::: V      ./
    从:.: !.  \.     ゞ----一''"    ./
      };,;|    \              /
        .|      个s。.          /
        .|      :::::::≧s。..    / |

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「血、というのは正確ではありませんね。血を飲むというのは手段であって、
目的はそれに含まれる精気です。だから、まあ、こちらでも構わないのですが」

メデューサの視線が自分の股間に注がれているのに気づき、はっとなる。

「嫌ですか」

「嫌というか、お前、男女がそういうことになるのは、こう、順序ってもんが」

「ヤマトナデシコというやつですね、分かりますとも。
大丈夫です、ちゃんと血で済ませますので」

言うが早いか、メデューサはぐいと背中に腕を回すと、顔を寄せてきた。
半分以上アイマスクのようなもので隠れているとはいえ、これほどの美女に
近寄られて狼狽えない男はいない。

そうこうしているうちに、メデューサが首筋に歯を突き立ててきた。
痛みに呻くが、すぐに別の間隔に意識を持っていかれる。
歯と一緒に首に触れている唇の感触に、全神経が反応していた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

435: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:08:33 ID:PRimjMIw0

:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:/:.:.{:.:.:.:.:.:/!:.:, ヘ:.:.:.:.:.:.:./乂} \:.:.:.|   ,メ:.:.:}、:.:.:.、:.:.:.:.:.\
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:{:.:.:.:,{:.:./\:.:./ ∨  \:.:.Ⅳ    ヾソ  ,/ Ⅵ \:ム:.:.トミ:.:ム
:.:.:.:.:.:.{:.:.} |:.:/ |√~"''~、、_   ヾソ        ,ィi{,.ィizzzzx  }ソ.:.:ハ ⌒ヾ
:.:.:.:.:.:.:V ∨ し  ,.ィizzzzz≧=‐--一     ゞ彳     ヾt、.|:.:.:}:.:|
:.:.:.:.:.:. |     ィi㌢     ヾt、          {i{        }i} |:.:.ハ!
:.:.:.:.、:.:|  U .   {i{           }i}  三ニニ三  {h、     ji} |:./
:.:.:.:.:{:.:|     {i{           }i}           `ゞtzzzzz彳|l|l|          「ふう……ごちそうさまです」
:.Ⅵ:.Ⅵ     ゞt、      ,ィf'′             |l|l  |l| ∨
:.:.Ⅵ:.:.|    |l|l| `ゞtzzzzz㌢´            ヽ
:.:.:.Ⅵ从       |l|l|                 j!     u   ∨
'⌒ヾ:.{                                    |
⌒:... ヾ       J      u                    |
 :::::::}                               _       从
 :::::(                   _,,.. -‐ '' "´:::::::::::::|    /
  :::::ヽ             _、+''"~::::::::::::::::::::::::::..。。 *''゚   /
、  :::::::|            {::::::::::::::_,,.. -‐ '' "´         /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
メデューサの食事が終わると、全身を気怠さが覆った。
精気を吸われるというのは、こういうことらしい。

こんな調子でやっていけるのかは不安だったが、とにかく、自分はサマナーとなった。

これで少しは、正義の味方らしくなれるだろうか。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

436: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:08:47 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

437: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:11:45 ID:PRimjMIw0

     ./
     / ',
     ,'  ',
    ,'   ' 、     ,-~'i
   i'     i'    i /ヽ,
   i     i'     `ヽ;;;;;;'、
.    ',    ',      ヽ;;;;;'i
    ',    ',         Y;;;;'、__.,
     ',     ',         i::::;,-、/ i
      ',     ',       ノ ( '''',;) X'i
      ',     ',     ヽX\ | X',
       ',    ',      ヽX.丶!X ,',
       ',   ,   ',       .丶 X' XX',
        ',  ';;,,  ',      ヽ.XXXX',
         ',  ';;',  ',       '、XXXX',
          ',  ';;;;', 丶、     '、XXXX',
        ',  ';, _ヽ::::/      '、XXXX',
          i ,_ヾソ/:::i        .'、XXXX',
.         ' ‐ - 、;;;;;;;',       iXXXXX',
           ヾ;;;;;;',         lXXXXX',
            ヾ;;;;';,        lXXXXX,
             ヽ;;''`y    ,l XXXX,'
                  Y:::ソ    ヽXXX ,'
                  '''       ∨XX,'
                      ∨∨
                            ∨

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
翌朝、加賀喜留夫がアタッシュケースを下げて家にやってきた。
住所は伝えてあったから、来ること自体には驚きはなかったが、
その荷物に驚かされることになった。

「干将と莫邪。夫婦剣ってやつだ。本物じゃねえが、名のある刀工に打たせ、
由緒正しい家系の巫女の爪と髪も使用されてる。つまりは魔力を持っている。
こいつを握って戦えば、加護である程度筋力や耐久力も上昇する」

加賀喜留夫が差し出してきたのは、白と黒の双剣だった。
素人目から見ても分かる、見事な一対の剣だった。
螺鈿のような煌めきを放っており、刃は美しい銀色をしていた。

「それからこれ、魔眼殺しの眼鏡。非戦闘時にメデューサにかけさせてやってくれ。
こいつをつけていれば、メデューサの石化の魔眼も封じられる。
その布きれじゃ不便だろう」

渡された眼鏡は、どうも普通のものにしか見えなかったが、加賀喜留夫いわく
特別製らしい。隣のメイヴと名乗る女性が刺々しい目で加賀喜留夫を見ている
ところからして、貴重なものなのだろう。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

438: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:13:41 ID:PRimjMIw0

                  __、/イ≦ ̄ ̄<≪、、
               __.... イ⌒: : : : : : : : : : : : :⌒ミ=ー
                 ⌒>: : : : : : : : : : : }: : : : : : : : : : :`ヾ
              ノ: : : : /: :/:从: :ノイ: :.i : : : :.j: : : ヽ、
              /: : : :.从/!/ハ/__  ヽ八ヘ: /: : : :Y
                イ: : : : :j ヽ´ ̄ ̄¨`ヾ、、 jハイ:/リ
             У⌒Ⅵ    x===ュ、 `" =≠j/リ
             ヽ{て リ    , , , ,     xrv′       ありがとう、加賀さん。
                   iヘ、j               、, , j
                从У!       ___   "  ;         俺、今日から頑張るよ。
               Ⅵ 、    ヽ  _`ソ /
                ′ \       /           「頑張るって、何をだよ」
                /  :      、_     /
                  /   :      / ̄              まずは町内のパトロールでもしようと思うんだ。
    ____  -<`ヽ     :       ;
   .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',   :     /                 エネミーソナーで悪魔を探知できるんだろ?
  .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',   ヽ.   j\、、
  .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_ .... .へ\ー 、:\ ノ   Y.> ..            それで人を襲ってる悪魔を見つけたら、戦う。
  .:.:.:.:.:.:.:.:..<´        ヽ\    へ j:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ.
                   ` 、ヽ     / ;ヘ:.:.:.:.:.:.:.:.:∧

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「ちょっと待て。俺は自衛用にそいつを持ってきたんだぞ?
それに、何もお前がそこまでする必要ねえだろうが。何の得もないだろ」

「損得の問題じゃない。誰かが殺されるかもしれなくて、俺が防げるなら、
防ぎたいんだ」

「要するに、市民を守りたいってのか?」

「まあ、そうだけど」

加賀喜留夫は怪訝そうな目をして、メイヴを見やった。
メイヴが首を振る。すると、加賀喜留夫も納得したように頷いた。
アイコンタクト一つでここまでコミュニケーションがとれるとは、
相当長い付き合いなのだろう。

「分かった。ただし、簡単な稽古をつけさせてもらう。
悪魔と対峙する際の心構え、予備知識、その他諸々だ」

「頼むよ」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

439: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:14:27 ID:PRimjMIw0

   |  {    |     ハ   '  乂込りイ、`ヽ
   |   '  |  ミ、 i   |ハ ゞ=彡ノ/z i
   |   ヽ .!   ハ:}|i: ! {  '  i  ゞ=ソ i:!
.i   |   ハ:{.  r=彡|{|ノi  |. | ヽ  八
:|   ! >ー从_}{ i ! |.川 i{ `ヽ |   !  ハ 、  ゙
   |{ / ーヽメ 八ハ!{ !ノj_z_j   |  .'{  ヽ
ハ  人ハr=ミ ハ ハ   ノ从 7Zマ.く_ ' | {八
  / }込八irくイ_ノ ノ    i.i゙;;;}j ' ハk , ! i  ヽ
 { :{ゞ=ミ_ノ/    ,  ゞー" / ノ/  |i ゝ          お互い、サマナーで苦労しそうね?
.八 ∧   '' j:i ''     ノ   "″,イ./{  八 `ー
.  ヽ∧   八{_ノ、_       ./rーミ八   `ー -
   \ヽ.      ̄ ´  イハ  }vー 、`ー -
 `ヽ  \>     . ィ´,⌒´     ノ `ヽ
ハ  \  ヽハ≧=彡} `ヽ      `ヽ ハ
  丶.  \   }、 { /           ノ   }
   \   ヽ ノ iト、∨           \  '





                        _ ,............ _ _
                    ,..:.:::´::::::::::::::::::::::::::::`::'::-.、
                    /,.:'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::__:::::::::>.、
                 ,.:':::::::::::.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::: ̄::`>、`ー―..、
                  /:::::::.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:::::::::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧::_/:i
                   / ::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/<:::::::::j
                    / :::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::イ⌒ヽ:::::,′
                  ,' ::/:.:.:.:.:.:.:.:.:./>-/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/イ:::::::::}:/
                 ,'::/:.:.:.:.:.:./`ヾ>/:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::/ ヽ.ハ:::::::/
                  /:/:.:.:.:.:.:.(   ゝヽ/:.:.:.:.:.::::::::::::::::::/r─‐ュ:::::::::/
             /:/:.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽゝ /:.:.:.:.:::::::::::::::::/:::::{==ノ ::::::/       ええ、正直先が思いやられます。
               //::.:.:.:.:.:.:.:.::::::ヽ_,7:.:.:.:.:::::::::::::::/::::,、>‐、/ ::::::/
                /:′:.:.:.:.:.:.:.:::::::::://:.:.:::::::::::::::/ヽ''"     ∨:::,′
           /:::::.:.:.:.:.:.:.:::::::::::://:.:.:::::::::::::::/   、__ , <´:::;'
             /:::::::.:.:.:.:.:.:.::::::;;;,く/:.:::::::::::::::::/    /´ ̄`)::::::;
            ./:::::::.:.:.:.:.:.::::::::/:.:.:.:j:.:.::::::::::::::/`ヽ、..._V  `ー ユ::l
           /::::.:.:.:.:.::::::::>く:.:.:.:.;':.::::::::::::::/r=ュー‐|     ユ::l
        />'"´ ̄ ̄   ヾ、i:::::::::::::::/{{::::::}}  |     l ハ'

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
それから、加賀喜留夫に色々なことを教わった。
悪魔の性質や種類、交渉の仕方など、加賀喜留夫は丁寧に解説してくれた。

最後に一つ、念押しされたことがあった。
「悪魔も人間と同じだ。いい奴もいれば悪い奴もいる。だから、悪魔ってだけで
刃を向けることだけは絶対にするな」

それは分かっていた。少なくとも、メデューサに関しては、悪い悪魔とは
思えなかったからだ。

こうして、自分の学生とデビルサマナーの二重生活が始まった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

440: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:14:42 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

441: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:17:56 ID:PRimjMIw0

                   .._
                  ,.-‐ ゝヽ'´- .._
               、.. -‐''   ,.‐-´`丶 "、
               >,.   (.,-'`-     丶、
              ヽー,.'   / / ̄_      ` .
              〉,/,    ゙'! i'´,..>___,.    丶.
               {,;'j ;.{ヾ,: `/´ ̄////,`ーi   丶.
               ` ゙'l;i`,////,..--' "" '‐ヽ...__ 丶          人に何かを教えるのは苦手なもんでな……
                   </,'/ ̄\////∧///////,ヾヽ丶
              ,.-‐''"´   ヽ. \'///∧////////゙/ヽ ヽ        実戦形式でいいなら教えるぜ。
             /         ゙ . ヽ////////////i//,'i ;
               / ゙.           ゙   ∨//,'i///////l//,'レ
          _/.   ゙.   ::      ゙  ∨/,'|//////,'!//,_!
           { ̄     ゙.   :       ゙.   V/,l//////,'!‐'"
         / \       ゙.  :       ゙   V,!//////,'
       / 、   ヽ.     ゙   !     、  ゙   V//////
     / .  丶、 丶   ゙  l     ヽ.   ゙   V///,/
    ,'l i      \  \  ゙ l      ゙   ゙   V///
.     i l !  i    、丶  ヽ : ゙ !       ゙   ゙.   V,/
    ! l.!  i!     ヽ \. 、! ;!  ヽ      ヽ  ゙.   Y
.   l l.!  !     ゙. ヽ`ヾ:' ゙_ ヾ     、.ヽ ゙.  }`ヽ
.    i.l.!. '⌒゙. ..._-‐'',゙- ゙r  ト..._  \     `丶 ゙  ;'.\|
   l.;' _! ゙.  _..Y´_ヽ. (ノ;. !.._`.._`ー――‐--__-‐/ ヽ i
    |;.r'  ヽィ´,......._ ヽ、 l l..._ー -―――-_..}.、 ヽ l
   !、゙ー ._゙/ '゙, - ) }゙ .|. !ー-------------―一{ヾ、 ゙ l;
     ̄ ̄ ヾl i.丶-'_.ノ l!.| iヽ        /  ,;'   }i,!ヽ  '、
           i l ` "´,. .!| |l ゙.ヽ    ,..'  //   .l,'i. .ヽ.  、
.           l |` -' /  .! : ゙、゙ー "   / ./   ! .l,',!.ヾ .  、
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
昼間はいつも通り学校で授業を受け、夕方になると加賀喜留夫に稽古を
つけてもらっていた。

加賀喜留夫の召喚した悪魔、ヨシツネの稽古が一番実りがあった。
源平合戦の源義経と同じ名前のこの悪魔は、「宮本武蔵は俺よりだいぶ後の
時代の人間なんだがな」といいつつ、竹刀で二刀流をやってくれた。
本来、剣道での二刀流というのは、左に短めの竹刀を、右に普通の竹刀を
持つものだが、今回は置いておくとしよう。

ヨシツネがやってみせたのは、右の太刀を後ろに、左の小太刀を
前に構える形だった。

打ち合いにおいては、左の小太刀で受け、流し、払い、右の太刀で
胴や面を狙ってくるスタイルだった。

いわば左はジャブのようなもので、左の太刀で隙を作りつつ、右の太刀で
一本を取りに来る形だった。一本、と言いはしたものの、実際は脇腹やら
目やら脳天やらへの打突や薙ぎが多く、何度か冷汗をかかされた。

「二刀の利点っていうのは、現代の戯画みたいな連続した打ち込みじゃなく、
二刀あるからこその防御の仕方にあると俺は思ってる。でも、お前には
向いてなさそうだな」

ヨシツネはしばらく打ち合いを続けたあと、こう言った。

「まあ、好きにやってみろ。所詮俺も我流だしな。そこの旦那の格闘術やら
短刀やらだって我流だ。結局、自分に合ったやり方が一番ってこった。
無理に俺のやり方に合わせる必要なんざどこにもねえよ」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

442: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:18:16 ID:PRimjMIw0

                                  ___ト ., ト、
                                   __,.>::::::::::::::::::::::⌒ア
                                    >:::::::::::::::::::::::::::::::::::≧
      ト、                           <::::::::::::::ハ:::::::\:::::::::::::::\
      | \                        厶ィ:::|:::\:|> ^ ∨:::::::::从
      l.   \                       |:::::|\l_/仗ア  V⌒Y {ヽ          思ってたより軽いな……
      |    ∧                          }'^仍       (ノ/リ`
      l  i|   l                           ∧` __   ,'´ マ{           「ちげえよ、お前の筋力が強化されてんだ」
.       i  ∧ ∧                         ヽ`ー ´  イ :! ∨   _,. - ミ
.      ∨ ∧ ∧                       ハ_,. <:::/ |  〉7¨ !////ム
       ∨ ∧ ∧             ト、           ∧/  ,:  //  .|//////\
.        ∨ ∧ ∧             マ:iト .,       ,.イ./ハ / .//   |////////,> 、
         ∨ ∧ ∧            マXX≧s。.,_ r ´ 〈〈-、 /´ /     |////////////iト .,
.          ∨ ∧\ヘ、               マXXXXXXム   \__,/        マ////////\////` 、
             寸 ヘ \ヽ              寸XXXXXX,\           ` ̄` <////マ/////,> .,_
                寸 V⌒ム             寸XXXXXX \             |  ` </v/> ´///
              寸乂ン{<_          , \XXXXXXX` 、              |      .〈////////
              V_彡'く へ マ≧=-  _   ////` マXXXXXXXiト         l      .l////////
               ゝ L/ヽ  }///////////\///////` <XXXXXX> .,_     |       l////////

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
実際にあの双剣を握って、ヨシツネと真剣で打ち合いもした。
ヨシツネの剣術は、はっきり言って滅茶苦茶だった。
柄で突く、服を掴む、刀を投げるなどやりたい放題だった。

対して、自分はとにかくがむしゃらに両腕を振り回すだけだった。
剣道の経験はないわけではないので、そこそこは扱えると思っていたのだが、
甘かった。

加賀喜留夫にも相手してもらったのだが、ヨシツネと同じくらい滅茶苦茶だった。
「普段だと砂蹴り上げたり唾吐いたり石投げたりするけれどね。
石は石でもメギドの石だけど」
メイヴがぽつりと漏らす。自分が想像していたより、ずっとサマナーというのは
ダーティーなものらしい。自分にはとても真似できそうにない。

それからというもの、加賀喜留夫は度々夜中に我が家を訪れた。
「昼間に来たら、ほら、色々と迷惑だろ?」加賀喜留夫は申し訳なさそうに、
そう言った。確かに、桜に見られたら色々と怪しまれるだろう。

加賀喜留夫は家に来るたび、武器や道具、他にも何かと役に立つであろう
と見繕ってきたものを持ってきてくれた。

掌に収まるほどの小さな拳銃や、払魔の札などを、全部ただで貰ってしまった。
もちろん、ありがたくいただいた。これから自分がやることは命がけの行為なのだ。
貰い物だろうと、使えるものは全て使うつもりでいかねば。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

443: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:19:22 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

444: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:21:18 ID:PRimjMIw0

-: : : : : : : : : : \: : : |__,
: : : : : : : : : : : : :.} : : /
/: : : : : : : : : : : : : : : : \
.: : : : : : : : : : : : : :. :. :.7⌒
: : : : : : : : : : : : :,ハ:.ト.:.:.\
.: :. :. :.|.:.:ハ.:.:i.:.イ( リ 7/;-`
:.彡i:/}:∧ノ/!,' ヾ ,,xヘ i≧、
ゞ´ハ{r'ヤ気ミヘ, ,r炒 ニニニ≧=-======- _
ヽ`, ゞ `=´   ヽ  ;ニニニニニニニニニニニニ≧= = ==-_
`"::::..    __,´ /ニニニニニニニニニニニニ/ニニニニニニ≧
\  > ( __ _ソ ,ィニニニニニニニニニニニニ<ニニニニニニニニニヘ
ニ∧    > --´ ゞ、ニニニニニニニニニニ=ニニニニニニニ/ニニミ=、_ _r'ZZ7
ニニニヽ`ー  ´ ,// `Y´ ̄ ̄ ̄ ̄´ Ⅵニニニニニ | /` Y :: :. ヽ////
ニ/"ヽニ\_ _  /ニ/  ノ             //丶ニレ   ::. : :. |''"´
/   丶ニニ`ニニ/  /           xf√レ (:::ヽ ヘ   i | _j,,ィ
       ̄`¨´   /        _ィ>''"´弋,, )_ノ//} __j-´"
             ∠___ -‐≦二マ_ _-=≦////>、__ノ
_____ -=≦二ニ////////////////////> ''"´
////////////////////////////> ''"´
///////////////////////> ''"´
≧////////////> ''"´ ̄´
 ` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
それからは、戦いが続く日々を過ごした。
夜の街を歩き、エネミーソナーを頼りに悪魔を見つけ、人を襲っていれば
これを斃す。これを何度も、何度も、何度も、何度も繰り返した。
気が遠くなりそうな戦いだったが、それでも付き合ってくれたメデューサには
感謝しかなかった。

だが、その日々も長くは続かなかった。

毎日、夜に出歩いていることが桜に気づかれたのだ。
それ以来、桜は必死に自分に夜出歩くことをやめるよう何度も懇願してきた。
自分の目から、ただならぬことをしていると気取ったのかもしれない。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

445: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:21:40 ID:PRimjMIw0


      |i!i!i!:;:;:!i!i!:;:;:;.: i!i!::圭::::::/
       |::::::::::::;!i!i!i!::::::圭圭_/
      └┌――#彳 ̄ ゝ
       /  ̄ };;;i!i!i!{ ̄ ̄,
        /i!i!    | }i!{    |
      { .:i!i!;':  ト }i!{     |
      人 i!    | `ヽ}i!{   |
     }i!i!ヽi    |  ',/ i!  |
     /}i!!{   >,,.ハ  i }i! | |
    i i!i! /  ヽ  レ !i! / !
    /´´i!i/   { /  i!i!/ )
   i  iノ    /i´゙   /   /
  丶ー′,: ''"゙´}i!{ /  / ,'
        (...,,,_...-'"i!i!!  / ,′
       _...- '"´ i!i!_....ノ ,'
    l´  }i!{...-イ}i!{    /
   ∨''"゙/  / }i!{ /
      !/"~  }i!!{/
      (_...,,'-"ν  
               
          λ
          (i!!)

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
ある日、手傷を負って帰ってくると、門扉のところで桜が待っていた。
メデューサは回復手段を持たないため、仕方なく血を垂らしながら
家まで戻ってくると、涙ながらに桜が抱き着いてきた。

「どうして……どうしてそんなにぼろぼろになって……一体何をしているんですか?
何が先輩をそこまでさせるんですか?」

何も返せなかった。
ただ、自分は、こうしなければならないのだとしか言葉が思いつかなかった。

あの日生き残った時から、衛宮士郎の心は未だに、あの炎の海の中にあった。
衛宮士郎は過去に生きており、現在を生きていなかった。
その心の中にあるのはただ一つの言葉。

許してくれ。
皆を差し置いて生き残った自分を許してくれ。
皆を助けられなかった自分を許してくれ。
せめて、贖いの道を往くことを許してくれ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

446: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:25:18 ID:PRimjMIw0

                     _  _
              /: : : : `´: : : `ヽ
             /: : : : : : : : : : : : : : : ,
            ': : : : : : : ヽ〃: : : : : : :',
           ,: : : : : : r- 、: :>、: : : : : i:,
          ,: : : : : : / てゞっ  ,: : : : :l: ,
             .: : !: : : :,  <斗ヘ ',: : : : l: : ,
            . : : |: : : ,ニニ.=.ニニi : : : :!: : ,
         ' : : :|: : : !ニニ===ニニl : : : l : : ,        …………。
            ': : .:.:!: : ::トー'´ ̄i`ゝー彳 : ,;: : : ,
          ,: : .:.:.|: : :l.ヽ  _ _  イ:.!: : ,::,: : : ,
        ,: : .:.:.:.l: : l:.:r{≧、 _ イ-、:.i: : i::::,: : : ,
        , : :.:.:.:.:.l: : l>ミ三三≧シ、l: : !::::,: : : ,
         />― ´i: : !   、       !: :!≧‐- 。
      〃       l: :lー‐- ∨ /,  -‐!: !     `ヽ
      i   、   l: l    `  ′  l: l       i
      ,.!   ヽ/  !:l   ヽ  〃   ',:! ヽ /   l
    /: !     /> t:i ̄ ` ヽ∨-=≦ ̄li`ヽム.     l',
   ./: : l___./ >‐.!l‐= <_   _>≦三!≧、 i__i: ,
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
そのためなら何でもしよう。
自分に払える対価なら如何なる犠牲も厭わない。

そう思っていた。
そう思って、生きてきた。

その日が、来るまでは。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

447: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:25:44 ID:PRimjMIw0

'''-、゙゙ア'"             {,゙二、,,-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;r‐┘ : :lニ;;.    
  ...l′   :l";二゙''''┐       ,l´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ-'''''-、           ['l、
._...   _.  ´ ,〉;;;;;;゙'ー、,  . _,._..ミ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;7            `゙"
;;;l゙   .ヽ;; ̄ ̄;;;;;;;;;;;;;;;;;.!  .l、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.!                     _,,
.、!、   .,i┘;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ^'''"   ,|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,..;>ー'゙゙゙゙゙ヽ             ゙‐' |.l
..l;;;;゙ゝy レ;;;;广'L;;_..コ    l;;;;ン'ッ;;;;;;;;;;.,,.;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./  `''、_;;;;;;;;|        .,,,     . l、;゙¬.
. ゙'''''″ .ミ、;;;;゙''''l:゙'"  ` .、  `''" : l.;;;;;;;;;;l゙ ゙'<;,v、;;;;;;;;;;/'    .`''''"        !;;゙''┐    .゙'ー'"
    ,-シ、;;_ノ   . _, `    .tナ‐' ̄″ ∥ .`'―ー!llt;;. .'          !、;;;丿
;/  ,r./  l;/    '!┘            リ'i                       ´   ,,、   ,、
,! ./  ,i";;{_                  =!.!.l               ,i''';     .|;;;;゙゙''''''";;.l、
!     ゙L;;;;;゙>                    マ , 、,,,           `''".ィ;;-一'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
..,i¬―''>.l..、/゙    i'゙゙~゙゙゙'-|!!ゝ         i'''j  .!、,,;l,゙,,r‐ー、        `''-、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ィ
: };;;;;;;;;;;'\_ ゛   .〈;;i ゝ、;;;;;;;;;.ア   ,......、   ,iミ;;/  ,r'''";;;;;;;;;;;;;} ._.. ;;i       .};;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;、
.l゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!    .,ン-. : '!''L,l゙    l.;;;;;;゙ゝ、,i''";;;;; ! !;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; l!´二..,,,_,..--'''";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゛
.;;‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;| l゙;l ,!;;;;/   .|'ヘ,    `''''''i_;;;;;;;;;i;;,゙  l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,! ゙'―'''''''^゙゙゙゙゙゙'l,,_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
..!、_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙!-゙;|,`''″  .,/;;;;;ゝ..r‐┐   i";;;;;;;;i┘  ゝ、;____,,/´        : ,ii;;,゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
 .ィ";;;;;;;;;;;;;;;;;,,、;;;;;.! ---'''゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; !   .〔;;;;;;;;;;;;ヽ :lニ二'゙'';;.    .,.. -ニ=''"゛ ./;/''''i;;;;;;;;;;;;;;;;
.ー'゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∨;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/    l;;;;;;;;;;;;;;;ヽ,  ヽ!      "'"     ..   . l-x,;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.;v ..,,,,、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙'―- -ヘ;;;;;;;;;;;;;;;;;゙'---、                "  .'|゙゙''、
.l´|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.ン- /     ゝ-..、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;¬';;ナ'             l7   l
;;;;;;.,,_.;;;;;;;;;;;;;/             |;;;;;;;;;;i¬ー-,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;{´                    !

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
それから二日経った日、いつものように悪魔を斃し、家に戻ってくると、
家の戸が開き放たれていた。

桜が閉め忘れたのかと思ったが、すぐにそうではないと分かった。
廊下に点々と続く血の跡。それが何が起きたかを如実に表していた。

急いで血の跡を辿り居間まで行くと、倒れ伏す桜と、見知らぬ男がいた。
男は拳銃を握りしめ、こちらを振り返るや否や銃口を向けてきた。

「てめえか! 人の獲物を食い荒らしてる新人っていうのは!
てめえのせいで商売あがったりだ!」

怒鳴り散らす男の声など耳に入ってこなかった。
血の池の中で倒れている桜の姿だけが、目を通して脳に焼き付いていた。
瞬間、自分の腹の奥に熱いものを感じた。

剣を抜き、男に斬りかかる。
だが、刃が届く寸前に、男の仲魔と思しき悪魔が自分を吹き飛ばした。
燃えるような橙色をした、双頭の獣だった。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

448: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:30:48 ID:PRimjMIw0

.:/;,;,;_;-",r'´;,;,;,:.:.:,;.:.:.:.:.:,;,;,;,;,;,;.:.:,;,;,;,;,;,;/;;::::::;;;;;;;;r'''7;;:;;;;::;;;;;:::;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::;;l.:.:.!;.;.:.i    r'’ i'´!_/l
',;,;,/ ,r'´:.;,;.:.:.;,:.:.:.:.:.:.;,;,;,;,;,:.:.:.;,;,;,;,;,;,;,;/:::;:::::;;;;;;;;; /;,;,;,l;:;;;;;;:::::::;;;:::;;;;;;;;;;;;;;;イ´ !:.:.!;.:.! ,r‐''i  ,! ヽ,/
//:.;,:.:.:.;,:.:.:.:.:.:.;,;,;,;,;,;.:.:.;,;,;,;,;,;,;,;,;,/:::::;:;;;;;;;;;/;,;,;,;,;,!;;;;;;:;;::::::::;;;;;;:::;;;; /¨ヽ  !:.ヽ;!'l:.:.:.:ヽ`┬''’
./:.;,:.:.:.:.:.:.;.:.:.:.;,;,;,;,;,:.:.:,;,;,;/;,;,;,;,;;/:::;;::;;;;;;/;,;,;,;,;,;,;,;,!;;;;;;;:::;::::;;;;;;;;;;;;;;;!-‐ 〈_,,,-''ヽ:ヽ:ヽ:.:__;/
:.;,:.:.:.:.:.:.;,:.:.:.:,;,;,;,;,:.:.:,;,;,/;,;,;,;,/:ヽ:::;;::;;/;,;,;,;,:.;,;,;,;,;,;l;;;;;::;;;;:::::::;::::::::::;;ヾ;;;;;;;;::::::;;;;ヽ:ヽ/
.:.:.:.:.:,;,:.:.:.:,;,;,;,;,:.:,;,;r'7’;,;,;,;,;_;!:.:.:./:ヽ i’;,:.:,;,:.:.;,;,;,;,;,;,;l;;;;;;;;;::::::::::::::::;;;:::::::;ヾ;;;;;;;;;_;;-''ヾヽ _____
:.:.:,;,:.:.:.:,;,;,;,;.:.;,;//;,;,;,;,r'´:::ヽ<:.:.:.:.:/:.:,;,:.:.:,;,;,;,;.:./l;;;;;;;:::::::::::::::::::::;;;::::::::::;;`ー -,r‐‐‐ヾ、l:.:.:.:.i‐-- ,,,__
,;,;.:.:.:.;,;,;,;.:,;,//;,;,;,;,;r' 〈:::::::::::;;;`!''´:.:,;.:.:.:.;,;,;:./  l;;;;;;;::::::::::::::::::::::::;;;;;:::;;;:::/    ト、:.:.:l:::::::::::::::: ̄¨'''''‐-,,,_
:.:.:.:,;,;,;,:.;,;/ ,/;,;,;,;,;,;,;/ , ヽ-''''´,!;.:.:.;,:.:.:.:.:,;.:.:/    l;;;;;;;;::::::::::::::::::;;:::::::::::::/       l:ヾ、:.!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::¨'''‐,,,_
.:.:,;,;,;.;,;,/ /;,;,;,;,;,;,;,;/, '/! /! /:.:.:,:.:.:.:.:,;.:.:/      !;;;::::::;;;;;:::::::;;;::::::::::/         !:.:ヾヾ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`.、
:,;,;.:,;,;/ /;,;,;,;,;,;.:,;∠-"//;,;,l,/.:.:.;:.:.:.:.;,:.:./        l;;;;:::::::::;;;:::;;;;;;;;;;/         !:.:.:.:.lヾヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::ヽ
,;,;,;,/ /;,;,;,;,;,;,:.;,;.::.:.:.:.:.´:,;,;,;,;.:.:.:.:,:.:.:.:.;,:.:/       ヽ;;;;;;;;;;;::::;;;;;;/ー‐‐--、--┬‐‐‐ l;,;,__;,!::ヾ:ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;!
;,;/ /;,;,;,;,;,;,:.;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:,;,;,;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;.:/            ヽ;;;;;;;;;;;/    i'''i¨¨¨ ̄/`ー --::;;;___ヾ:ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
/ /;,;,;,;,;,;,:.;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:,;,;,;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;.:/             ヽ;/      l:::l::::::::;r'’:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._;,!:.:ヾ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐''’
./;,;,;,;,;,;,:.:,;,;.:.:.:.:.:.:.:.:.;,;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,:/                  `ヽ、    ,レ!:::::::!:.:.:.:.:.:.;r‐'''¨ ̄  l:.:.:ヽ
';,;,;,;,;,;.:.:,;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:,;,;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,:/                      ヽ、 /:.:l::::::::!.:.:.:.:.:/::`ヽ、    l:.:.:ヽ
,;,;,;,;,;.:.:,;,;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;,;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,:/                      Y:.:.:.:.:.:!::::::ト、::.:/:::::::::::::::`.、   !:.:.:`、
;,;,;,;.:.:,;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;/                    `ー<´:ヽ:::ヽ:::::!::::::::::::::::::::::`ヽ、l:.:.:.:.i

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
すかさずメデューサが自分の背後から躍り出て、魔獣に回し蹴りを入れる。
魔獣が吹き飛び、壁に叩き付けられるが、すぐさま起き上がり、
口から炎を漏らしながらメデューサへと飛びかかった。

メデューサが相手の仲魔を抑えている今が好機だと、頭で理解する前に
体が動いていた。

男が引き金を引き、銃弾が自分の脇腹を抉る。
だが、溢れ出る怒りと興奮によるおかげか、大して痛みは感じなかった。
焼き鏝を押し付けられているような感覚に襲われるが、怯まず、剣を振り下ろす。
自分の袈裟斬りは敵の肩口を捉え、そのまま真っ二つにした。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

449: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:31:55 ID:PRimjMIw0

  /-..,_       `'ヽ;;|'\;;;;;;|`''-,!''\_\::::`':....    \.:       `--'"             /   /          ,.-'/
r'" !_ `''''フ    `''.,;ト.,ヽ;;;;;!  |!  \-,\ `':..   ヽ、                       !  /         / /
! / `'''''''''''7,..   \! `-!;;;;| |`'¬ `.,__'-.!  -..,,__   \       !               | /         /   /
Y"  r---''''''')     \.. :::',;;!_.!.::::'''--.,_\      `'''''-.,|_       '!             ,レ"         ./   /
| r"  ,.--く   ,.     'ト::' .:!|`'       `'-..,_        `'i,     |            r"         ./     /
 '.,! /''" ,,.レ''''"     'L_:'_.'....           \       :::',    .!           |         /     /|
  \j  Y"----.,_     |\:.               `.:.    .:::::::|    |          /       /       ! |
   \ L:::::...         |: '、...:.       :::::::::' ::::::..:'" .:::::::::'::|    |         !     /         / |
     \`!''::..._       .|:. \::      ....:::::::"::::::":ト., :::::::::' ::|     ヽ        /    /         ./ /
       `\ ''''::...      !::.   \ :::.. :::::::::::::":::::/ :| .|:::::::" ::|    |      ./   /           / /
          '、  `      |:::.   \::''.::::::::::::::::// .::'! !:::'" ::: '::!     \    /  /             / !
          ヽ    ::.   |::::     \''''''"...:::/:/  :|`'|::' .::::::.._'|       `、  | -'"          ,.   / /
            \  ''   ヽ:       \:::::::/:/ :  :! `: ::: :::::'''`-,     r''''" ̄       _,,.-'''"   / .ノ
             \  ::::::.. ':'       .\ノ/ :: ::|: ':' ::::''",.::::::::L   _,レ     _,,.-'''"       /  |
              \:::::::::::.. '         \   ': :/ :::'":''"   .::::::::::`!r'"   _,,.-'''"           /  |

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「桜!」

剣を投げ捨て、桜へと駆け寄る。
抱き寄せると、桜は息も絶え絶えに、自分の顔を見つめてきた。
「先輩……」

自分を認識すると、桜は小さく微笑み、「よかった、怪我、ないですね」と零した。

「馬鹿、自分のことを心配しろ! 待ってろ、今、止血を……」

正直、桜は血まみれで服もずたずたになっており、どこが負傷しているのか
分からなかった。

恥ずかしがっている場合でもなく、乱暴に服をめくると、自分の血の気が引いて
いくのが分かった。

左胸の辺りに、ぽっかりと穴が開いていた。

「桜……嘘だろ……?」

桜が。桜が死ぬ。そう考えた時、世界が色を失った。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

450: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:35:37 ID:PRimjMIw0

三三三三三 _____.|┃┃
三三三三 /.  ::::::::::::|┃┃
三三三../     :::::::::::|┃┃
三三 /   (●) ::(●)|┃┃
.三三|.  (トェェェェェェェェイ|┃┃
三三 \ . \ェェェェェ/|┃┃       おい、戸が開いてたぞ……
三三 /       :::::::::::::.|┃┃
三三 / i    :::::::(.二つ┃       っと、非常事態みてえだな。
三三{ ミi    ::::::::::.二⊃┃
三三l ミii   ::::::::::::ト、二)┃
三三| ミソ     . :::::::.`ト-'. ┃

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
気が付くと、加賀喜留夫が後ろに立っていた。

加賀喜留夫は桜を見ると、「ちょっと待ってろ」と桜の前で屈み、
鞄からお香らしきものを取り出した。

「おい、あんた! ふざけんなよ! 桜がもうだめだって言いたいのか!」

「落ち着け、黙って見てろ」

呑気にお香を焚きながら、呪文を唱える加賀喜留夫の後ろで、
自分は怒りと絶望感に打ち震えていた。

桜が死んでしまった。
自分の責任だ。自分が夜中に出歩きなどしていなければ、桜もこうして
夜に家に来ることもなかっただろう。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

451: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:37:35 ID:PRimjMIw0

            !;,;,;,;,;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,;,;.:.`:、;,;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:¨:.''':.:-:.:,;,;,:.:.:.`ヽ;,;,;!
            l,;,;,;,;,;,;,;,;,;,:.:.:,;,;,;,;,;,;,:.;,;,:`:、;,;,;,;,:.:.:.:.:,;,:.:.:.:.:.:.:.;,;,;,;,;,;,:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:,;,;l
            ¨''7-;,_;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;;,;,;,;`:、;,;,;,;,;.:.:.;,;,;,;,;,:.:.:.:.:.:.:.;,;,;,;,;,;,;,:.:.:.:,;,;,;,i
             /: : : : フ''‐-;,;,__;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;`;,;,;,;,;.:.:,;,;,;,;,;,;,;,:.:.:.:.:,;,;,;,;,;,;,;,;ri;,;,;!
              / : : /     ;  ̄¨'''フ--;,;,;,__;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;/ !;,;l       桜っ……!
          ,r‐'´: /      ; ,r''''´    _,,/  ̄¨¨;'''‐--;,;,__;,;,/   !,;;!
     ___,, -‐'''''’;, ;,;,/         /     /        ',     ' ,     レ′
-‐'''¨¨:.:`、: : : : : : : : l         ,r''′   /     ;          ' , /
_;,;.:-:.:'':.¨:`、: : : : : : :l      ./     /      ;            /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`、: '; : : : :l    ー'′   /        ;          /
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`、:' :,: : ヽ _____,,,,, -i‐‐''´         ;      _,,-'"
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`、: : ': : : : : : : : /              ;    ,/
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/`、: : : : : : : : /′            ;  _,,-"
:.:.:.:.:.:.:.:,;,;,/:.;,;,;,`、: : : : : /               i'''′
.:.:.:,;,;,;,/:.;,;,;,;,;,;,;,;`、: : :/ `ヽ、            ,,r┘
;,;,;,;/:.:.;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,`v'´: : : /´ ` 、           /
/:.:.:,;,;,;,;.:,;,;,;,;,;,;,;,;/: : : : /: : : : : \       /′
:.:.;,;,;,:.:,;,;,;,;.:.;,;,;,/: : : : : : :!: : : : : : : : \    /′
,;.:.:.;,;,;,:.:.;,;,;,;/: : : : : : : : : !: : : : : : : :`ー-`ー/
;,;,:.:.:.;,;,;,;,/: : : : : : : : : : : :! : : : : : : : : : : /´

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
顎が濡れている。指で触れると、血がついていた。唇を噛み切ったらしい。
脇腹を撃たれたこともすっかり忘れていた。最早自分の痛みなどどうでもよかった。

桜、桜が、自分のせいで。

その事実だけが重くのしかかり、心に罅を入れていく。
瞼を閉じ、ひざを折り、意識を手放そうとする。

そこに、誰かが抱き着いてきた。
「先輩っ」

耳元で囁かれ、目を見開く。
そこには血まみれではあるものの、生気を取り戻した桜がいた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

452: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:37:50 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

453: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:38:04 ID:PRimjMIw0

           ____
         /     \
       /         \       ……あのよ、お前、何がしたかったんだ?
      / (●) (●)    \
      | (トェェェェェェェェイ)    |     「俺は……正義の味方に……」
      \ \ェェェェェ/   /
 ⊂ ヽ∩  >          \      たった一人守れないで、何が正義だよ。
  '、_ \|               |
     \ \      /  /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
桜を客間で寝かしつけた後で、庭で加賀喜留夫と二人で話した。

「あのな、正義っていうのは主張するもんじゃなくて行動に宿るもんだ。
今までのお前の行動を正しいと思ってくれる人が何人いると思う?」

「……それでも、俺は。俺は正義の味方になりたかった。
誰かを助けられた時だけ、少しだけ楽になれた。
誰かの役に立てている時だけ、生きることを許されている気がした」

「そうか。お前は、救われたかったんだな」

救われたかった。そうかもしれない。
結局、自分は偽善者だったわけだ。誰かのためと言い張り、自分の存在を
肯定するためだけに動いていた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

454: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:48:02 ID:PRimjMIw0

             ____
           /      \
          /         \
        /   (●) (●)  \      でも、それはこれまでの話だろ?
        |   (トェェェェェェェェイ)   |
        \  \ェェェェェ/   /      今はどうなんだ? 今のお前は、どうしたい?
 r、     r、/          ヘ
 ヽヾ 三 |:l1             ヽ
  \>ヽ/ |` }            | |
   ヘ lノ `'ソ             | |
    /´  /             |. |
    \. ィ                |  |

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「あのな、お前は人間を買い被りすぎなんだよ。人が一生の内に守れる人間の
数なんて、精々数人程度だ。家族だったり、恋人だったりな。
でもな、それでいいんだよ。たった数人でいいんだ。人の生涯なんてそんなもんだ。
市民を、人類を、世界を、なんてのはな、人間のやることじゃねえ。
神様のやることなんだよ」

「俺は……」

「俺にも守るべきものがある。生きる意味がある。お前はどうだ?
お前はこれからも、顔も知らない誰かの赦しを得るために生きるのか?」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

455: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:52:48 ID:PRimjMIw0

                         ┌──────┐
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         │::::::::::::::::::::::::::::::::│
                         └──────┘

                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
                           │::::::::::::::::│
                           └───┘

                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘

                               ┌┐
                               └┘

                                   □

                               ・

456: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:58:33 ID:PRimjMIw0

                     _,,.........-‐‐‐-.....,,_
                    ,、丶`:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.``~、、
                    /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
                  ,.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:___:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`、
               /:.:.:.:.:.:.:.:.´:.:.:.:.:.:.``ヽ、:.:.:.:.:.:.:.‐-.:._:.:.:.:.:.:.:.:∧
                ;′:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`丶、:/:.∧
              ,/:.:.:.:.:.:.:':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\:.:.:.\ー-:.:.:.:.:_,;.:.:.>r=,r㍉
.             ∥:.:./:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:\:.:.:.`、:.:.:.:.:.:.:.:._;:://Yl/∧
.            i{:.:.:.′:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.|\| `ヾ、 ̄:.:.///l∧/∧
.             i{:.:.:.i:.:.:.:.人:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l \:.:.|-‐   `ヾ、∧___|_/|_-┘
.             i{:.:.:.|:.:.|:.:.:.l \:.:.:、:.:.:.:|'´  ,斗-=ミ、    i'´}{ r }-r.、
             ⅱ:.:.|:.:.|:.:.:,| -‐ト、:.:\:|   ノ う⌒)ノ     〉:/し′:;. } 〉
             八:.:.:、人:.:.:.、,斗=ミ:.:.:.\   `~゙´    _/_     `、/
           (  \:.:\\《 う )`¨¨⌒       / ⌒¨\\  ,.イ          先輩、学校、行きましょう?
             |:.`¨⌒:.八 `´  、        /  i{   \Υ:.:|
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:ヽ           /     i{     | |.:.:.|
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.:个.、  ー ´ ;′    :i{/|___/イ:.:.:.|
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.:.:|:.:.:.〕iト...,,_  ノ _,,......,,_ ∨=彳:.:|:.:.:.:|
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.:.:|:.:.:.〕i|:.:.:.:.:.:√´     `、,/|  〉:.:|:.:.:.:|
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.:ⅱ:.:八l.:.:.:.:/          |人_/>-:.:乂
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.:八:.:.:.:.:\.:}         |,/  ̄ ̄/>-‐…-...,_
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.:.{:.:.:.\:.:_彡{         |    //-‐'"      '_
             |:.:.:|:.:.:.:.|:.:.: :、:.:._<//           ;′ //´         '_
             |:.:.:|:.:.:.:.|i.:.:.:.:.\/=/         / / /            '_
             ⅱ:.:|:.:.:.:.|乂___.:/==/         /__/r‐<´            }
             八:.:ト、:.:.从人:〈==/         /_彡′ `~"''~、..,,,_        ,′
                  Ⅴ 冫 //=`/         /...__            ゙゙̄''   /
                   〈//=//         /    ̄ ‐-   ̄ ̄``ヽ、  /
                    / /==/ _/         ハ               `、(/
                 / L彡 ;′            | |                    丿
                  ;′  . : : :{          丿乂           /  /

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
あれから、COMPを持って夜の街を練り歩くことはしていなかった。
積極的に人を襲う悪魔がいれば、政府からサマナーに討伐依頼が出される。
基本的にそのサマナーたちに任せておけばいいと、加賀喜留夫は言っていた。

自分に何ができるのか、何がしたいのか、今一度よく考えてみた結果、
自分はCOMPを手放すことにした。

今は、これまでどおりの日常を過ごしている。
桜と一緒にいること。それが、桜を守ることに繋がると信じて。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

457: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:58:47 ID:PRimjMIw0

           ___ _ゝ==ヘ、  ___
           >.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`´.:.:<.
         < ̄:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ.
        / ̄.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ゝ
       /:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾゝ
        ̄/:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|′
         !/!:.:!:.:/ハ:.|:.ト、:.ト、:.|ヾ|ヘ!ヽ!:.:.:.:ヾ!
         ∨レヘL_」ヘ!ヾ}、,りrt≦二リr‐:.!          ……ああ、行こう、桜。
            rラ __     r==、 レゝ }}
            !ヘ'" ̄`          ソノ
           ヾヘ  ′___    /リ
               \ ` ー ´  /  |
               \__ / /  |
             「::::||::|  「| ̄ ̄ ̄ ̄|
           __,,、r┤:::||┘ |:|_:_:::::::::::::¬ ̄`ー...、,,_
     rー..'':::"´:::::::::\::::|| 、 _|:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`::ーr、
      i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::||   |:|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::i
    i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::||ヘノ;;|:|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::ト、
     l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::||ヾ/!:!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::/::::::::::::!::!
     l::::::',::|::::::::::::::::::::::::::||   |:|::::::______:::::::::::::|:::/::::::::::::::!:::|
     |::::::::',|::::::::::::::::::::::::::||   !:!::::::` ̄ ̄ ̄´::::::::::::!:/::::::::::::::::!::::i

╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
誰かを守ることができたのなら、その誰かが、桜であってほしい。
そうだ。

自分は、桜だけの正義の味方になるのだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

458: ◆x0SRSoJXe. :2018/05/08(火) 22:59:54 ID:PRimjMIw0

      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
      |´|
.     _,k|´|‐´`ー''7____
   k'´: : |´|: : : : : : : :<__
   <´ : : :|´| : : : : : : : : : ,>
  / : : : |´|: : : : : : : : : :,>
  `> : : : |´| : : : : : : :_: : `.、
   `、 _,;,;,|´|;_: : : : :,/ .iイ ̄
.   ,f´  . ̄ `ヽi'´ `´ ,!
  /      , '´:`.、-‐'
  ,!,,,,,,,,,,,,__  ',:.:.:.:.:ヽ
 f":::::::::::::: ̄`ヾ、:,;/,!
 i::::::::::::::::::::::::::::::::i ̄
 ヽ,;__'、;;;;;;;;;;;____;イ
.  `ー'    `ー'
                ~また次回~

関連記事
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿

最新記事

月別アーカイブ

カテゴリ

メールフォーム

このページのトップへ



以上の内容はhttp://jibunyoumatome.blog.fc2.com/blog-entry-2066.htmlより取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14