5801 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 21:57:57 ID:6N539Jc.0
、 - ‐‐ -,
,´: : : : : : : : :
゙i : : : :○ ○゙i
}: : : : : : : _ _ _| さて、今回はディアナの町に帰ってきたところから再開か。
|: : : :-=´_ _,´
y' : : : : :_: : : : :i ぼちぼちやっていこうかね。
/ : : : : : : :┌─┐
i : : : 丶: :ヽ{ .茶 }ヽ
r : : : : :ヽ、__)一(_丿
ヽ、___ : : : :ヽ : :ヽ
と_ : : : : : : ノ : :ノ
 ̄ ̄ ̄  ̄
5802 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 21:58:11 ID:6N539Jc.0
|::.:i i | |::.:i i |
|:.:.i i | r===┬===┐. |:.:.i i | r===┬
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昼の日差しを窓越しに受けながら、アンゼロットと無人の廊下を進む。
車椅子のアンゼロットは、時折ちらちらと後ろを振り返っていた。
自分で歩けなくなってから、彼女はいつもこの調子だ。
きっと、今まで自分ひとりで何でもこなしてきたから、誰かに補助してもらう
ということに馴れていないのだろう。
少し前までは、アンゼロットは何でもそつなくこなし、てきぱきと手際よく片付けていた。
日常的な所作から、ちょっとした作業でさえ、誰かに頼るところを見たところがなかった。
そのアンゼロットが、少し高いところにある物を取ってもらったり、
抱きかかえられて別の場所に座らせてもらったり、
こうして車椅子を押してもらったりとしている。もらったりだらけだ。
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5803 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 22:05:58 ID:6N539Jc.0
.,..-――‐-.、
/ \
./ ―‐ ―‐ ',
l ━ ━ l
_l ,'_ とりあえず、アンゼロットさんの部屋まで行きますか?
\.ヽ、 (_人_) //
/\.>、---- ,<./、 「ええ、お願いします」
.,'. \ ヽ〉-〈/ / ',
l. \ヽ /./ .l
|. `Y´ |
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足は止めずに、アンゼロットに質問した。
「石化自体は、ずっと前からあったんですよね」
「ええ。といっても、指先がほんの少し、程度だったのですけれど。
この分だと、持って一年……いえ、半年程度でしょうか」
アンゼロットはさも当然のことを口にするかのように言うが、
やる夫の中では、その言葉は重い石となって沈殿していく。
半年。長いようで短いその間に、彼女の命は終わる。
自分も精々十年程度の命だが、死の期限が分かっているというのは
中々に恐ろしいものがあった。
今まで意識してこなかった、人生の旅路の地平線にある断崖が
急に目と鼻の先まで来たのだ。恐ろしくないわけがない。
その恐ろしさ以上に、今まで当たり前のように思えていた日常の一瞬が、
途方もなく愛おしく思えるようになった。朝に交わす仲間たちとの会話、
透き通った空に響く鳥の声、アンゼロットとの時間。
大切じゃないものなど、何一つとしてなかった。
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5804 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 22:13:14 ID:6N539Jc.0
____
/ \
. / \ 今日はもう、部屋で休むんですか?
. / ― ー \
| (●) (●) | 「まさか。座りっぱなしで眠れるわけもありません。読みかけの本でも漁る予定です」
. \ (__人__) /
. ノ ` ⌒´ \
/´ ヽ
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それらを守るための盾となれるのなら、それでいい。
意地も張れぬ人生などこちらから願い下げだ。そんなのは前の世界で
塞ぎこんでいた、世捨て人気取りの小僧だった頃と何も変わらない。
アンゼロットはどうなのだろうか。
自分はアンゼロットのことを、ほんの少ししか理解できていない。
彼女の中には自分の知らない顔や表情がいくつもあるだろう。
もっと彼女を知りたかった。多くの時間を過ごしたかった。
彼女から愛されることがなかったとしても、もっと彼女を愛したかった。
それだけが、心残りだった。
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5805 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 22:22:45 ID:6N539Jc.0
__. <´ ̄ ̄ ̄ ̄ ` `丶、
. / ̄ ̄>┤ \ \
/ / | \ ヽ \
/ , { \ \ \ \ ∧
〃 / ヘ \ \ \ \ ∧
{{ / , | l \ ヽ ヽ \ .! '.
{ | | | 、 、 \ ,へ =x l │ '.
| | | | .| \ \ く 八厂「`ミl l | '. ありがとうございました。
| | 、 |\l斗≠く\ \l_ノ ___ 、 l. l |ヽ .
| |l\ 彳 ゞl \`ヽ '" ゙̄ヽ|│ | } '. もう大丈夫ですよ。困ったらゴーレムを呼びますので。
| ヽ\.\ \ ,r==ミ |│ |.丿 '.
ト 、 \\\ }l" , |│ | \ '. 「……あの」
| \ ヽl\`ハ . ' ,|│ | \ '.
| , \丶、 イ_l│ |\ ヽ '. はい?
| | │ l __>< ̄ヽ -< 厂} l | )==へ、
| | | { n ヽヽヽ }_厂} } l |¨´.: : : : : : :}. '.
| | | い ノ 〉ノ 丿 | :/: : : : : :.| '.
| | | ./ /oY´ ̄`ヽ /´: : : : : : : :.| '.
| l l ,′ ,くヽノ`ー / /: : : : : : : : :.:.| '.
/ /レ{ イ /{ } \__.ノ{´: : : : : : : : : : .:.:| '.
. ' /::/⌒ヽ/ ̄!<. } } }: : : : : : : : : : : : :| '.
' /:.:.{ / /: : \ } l: : : : : : : : : : : : :| 、 '.
/ く: : :| / ./: : : : ∧/ ノ:.: : : : : : : : : :..:ノ ヽ '.
/ 〉: :{ { /: : : : : : ∧ /.:.: : : : : :.「 ̄ ̄.! ヽ '.
/ / }: : { } }: : : : : : : : ∨: : : : : : : :.} l l '.
____
/ \
/ ─ ─\
/ (●) (●) \ 一緒に、町を見に行きませんか?
| (__人__) |
./ ∩ノ ⊃ / 「……はい?」
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| | ああ、ええと、デートっていうか。
\ /___ /
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「でえと?」
聞きなれない言葉を耳にしたアンゼロットの目が丸くなる。
そうか、この世界ではデートとは言わないのか。
「逢引っていうか、逢瀬っていうか」
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5806 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 22:22:55 ID:6N539Jc.0
/ 〃 \
/ / / ヽ
′ // ! / 〃 、
, ィ/| | / | /{/ ,
. ,′ / l{' |. { ─-| / │ //| |' | ヘ ',
/ { ⌒ト、 从 / j/ `lメ、 | | '| |
. / ∧、{| \ヘ{ V │ | | / | j } !
/ / ヘ. | l\ ===ミ 、 | | /ナメ、} i .′i ……あの、やる夫さん?
/ / / `l| | ` |//jノ ,′ | ′/
. / / / l| | =ミ、 ′ | / 私、あなたと恋仲になった覚えは
. / / _ァ‐-| │ u. ヾ/ イ リノ
/ ' // ト、 /li │ 丶._ ´ <.__ ノ// '′ 一切ないのですが。
/ ,厶∠... | `¨|i | \ ` ` ,ハ//´ レ′
/ /..:::.::.:::::..`ヽ | |、 \ ,..r ´ |
/ ,/..::.::.::.::.:::::::::::::::..\| |て /ト、`r l | 丿| |
/..: : :.::.::.::.::.::::::::::::::::::::..\ │ `スrく}r‐┴く | |
'/.:.:.::.::.::.::.:::.:::.:::::::::::::::::::::::::::} | / }\j::::.:::.::..\ |
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折角ディアナに帰ってきたのだから、一緒に散歩でもどうか、とでも言えば
よかったものの、気が付けばデートなどと口走っていた。
もしくは、無意識の内に、彼女との時間を散歩で済ませたくないという意識が
表に出てきたのかもしれない。
ともあれ、自分がアンゼロットに惚れているのは変わらない。
だから、一秒でも多く時間を共有したく思うのと同時に、
少しでも自分の好意やら何やらを伝えたかった。
アンゼロットは困惑したような笑みを浮かべる。
実際、困惑しているのだろう。
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5807 : ◆x0SRSoJXe.:2016/06/05(日) 22:24:55 ID:6N539Jc.0
___
__,..'´ ̄ `丶、
, '" ̄ フ ̄l `ヽ \
/' / | ヽ ヽ
〃 ,イ | ! | l i 大体ですねえ、私があなたのどこに惚れるのです?
i' ,' l、 | l| | l、| | |
|l | | 」ム |ヘナ7メ、| | | この泣き虫の意気地なしのむっつりスケベの
|| | ヽ. |ハ|=、ヽ、l 彳うミ、| | |
|ハ、 ヽ从l 化リ ` ゞ‐' | |ヽ l うすら馬鹿のむっつりスケベに。
ヽトトゝ 、 | レ' l
| i、 r_, | | ! 「言い過ぎ、言い過ぎです。あと、むっつりじゃないです」
| | > 、 , イ | | l
| | /ソ)T,.,_,.、jー| | | いえ、むっつりです。ナノハですら薄々気づいていますよ?
/j |_l | レ',イムトr )| |.,..-┴..、
/:´l l::::::! '´ィ,'(_゚)、| |'::::::::::::::::::ヽ 毎日毎日、飽きずに目で人の胸やら尻やらを追いかけまわして……
/::::::::::! l::::::| !/ イiヽ| |:::::::::::::::::::::::!
!::::::::::::| |:::/ヽ、 j '´||l| || |:::::::::::::::::::::::l 「堪忍してください……」
l:::::::::::::| |::| / )、ルノl、|l」| |:::::::::::::::::::::::l
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返事は辛口だった。久々のきつい言葉がぐさりぐさりと容赦なく突き刺さる。
確かに、通りすがる女性兵士の中に、こう、スタイルに恵まれた兵士がいたり
すると、やはり男性として気になるものである。
ましてや、自分は十八歳。同年代の男性たちは今頃、カラオケボックスの隅やら
多目的トイレの中でやりたい放題だ。そんな中で未だに童貞なのだから、
色々と抑制が効かないことも多々ある。アラディア軍が女所帯であるのも悪い。
主に刺激が強すぎるのが悪い。
だが、アンゼロットからすれば、それらは全て言い訳になってしまうようだ。
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