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<プロフィール> 伊藤伊作さん(マックス株式会社 機工品営業部 マーケティンググループ) 原 雅人さん(同社 機工品営業部 マーケティンググループ) 橋本愛美さん(同社 IR広報・ESG推進室)蟹澤宏剛(かにさわ・ひろたけ)教授芝浦工業大学建築学部教授。専門分野は建築生産・建築構法。建設現場の労働実態などにも詳しい。
「地震の被害が少ない欧米圏などの建築物は、石やレンガを積んだものも多い。しかし、日本の場合は地震や台風などが発生するため、鉄筋を用いて建築物の強度を高める必要があります。現在はタワーマンションなど、日本の集合住宅のほとんどが鉄筋コンクリートで建てられています。鉄筋は木造住宅も、基礎の部分に用いられているし、高速道路や橋にも使われています。街を見渡せば、あらゆるところで鉄筋が使われているんです」(蟹澤教授)
「鉄筋を組むとき、位置を定めるために鉄筋同士をワイヤで縛る“結束”という作業を行ってから、コンクリートを流すんです。結束は従来、ベテランの職人さんの仕事でした。そこで我々は、その結束作業をベテランでない方でもきれいにできることを目指し、開発を行いました」(伊藤さん)
「鉄筋結束機が発売されたのは1993年。今年で30周年を迎えました。弊社の主力事業である鉄筋結束機が建設業界、そして社会に与える影響について広く知っていただきたく、今回多くの人が目にしやすい渋谷駅で広告を掲出するに至りました」(橋本さん)
「少しでも結束が緩いと、コンクリートを流したときに鉄筋がズレてしまうんです。鉄筋の位置が変わってしまうと、建物の耐久性にも大きく影響が出てしまいます。また、結束の強度が鉄筋ごとに違うのもNG。均等な力で、それぞれしっかりと鉄筋同士を結束することは、熟練の職人さんだからこそ為せる技でした」(原さん)
「結束作業を機械化することで、均等な仕上がりで結束できるようになりました。ベテランの職人さんと同じクオリティで作業できるようになり、作業効率も上がったんです。加えて、職人さんたちの体への負担が軽減したことは大きいと思います。鉄筋は建物の床にも張り巡らされているため、しゃがんで作業する人が多かったんですよ。でも鉄筋結束機は立ったままでも使えるので、腰への負荷を減らせる。力を入れずに結束できるので、職人さんたちが怪我をするリスクも減ったと思います」(蟹澤さん)
「1993年の発売当初は『手作業でやったほうが早い』なんて言われていました。確かに、ベテランの職人さんたちは1回の結束に1秒も時間をかけないんですよ。我々も本当に尊敬しています。今でも結束や鉄筋の仕事に対する誇りを持っていらっしゃる姿を見て、背筋が伸びるんです」(伊藤さん)
「職人さんたちに、ツインタイア前身の、1本のワイヤを送って結束するリバータイアというモデルの使い勝手をヒアリングしたんです。その結果、『結束に使うワイヤの量を減らしてコストダウンする』ことで市場のニーズに応えられるのでは、という結論に至りました。ワイヤの使用量を減らそうという発想から、2本のワイヤを同時に送って結束する機構を導入し、より速く、より結束力を高めることを実現しました。現場の声を聞いて生まれたツインタイアを発売したことで、徐々に建設の現場でも受け入れられるように。ベテランの職人さんたちも、各々のスタイルでツインタイアを作業工程で活用してくださるようになって。『鉄筋結束機を使うことが当たり前』の世界になることを目標にしていたので、その第一関門をクリアできたな、と手応えを感じましたね」(伊藤さん)
「建設業に従事する技能労働者の数は、20〜30年すれば現在の半分になると予想されています。担い手不足が進むなか、今まで通りのペースで仕事を進めるためには、働く人の負担を軽減させる『機械化』が必須だと思います。また、建設の現場は過酷だからこそ、仕事を覚えて面白くなる前に辞めてしまう人が多いんです。鉄筋結束機のように簡単に作業ができる機械が浸透することで現場の負担が減り、離職も食い止めることができるはず。特に職人さんたちは、勤務時間あたりの作業量で1日の評価が決まります。仕事の効率を上げる機械を導入して、稼ぎが増えれば、働きやすい環境も整っていく。鉄筋結束機は、建設業界の景色を大きく変えた発明ともいえるでしょう」(蟹澤教授)
「実は鉄筋結束機以外にもさまざまな工具を開発しているんです。たとえば釘打ちという手作業の工程を軽減するために、圧縮した空気を利用して釘を打つ『高圧コイルネイラ』という製品を販売したり。ホッチキスも、元々は紙を紐でとじていたのを、作業者の負担を軽減するため、小型のホッチキスを開発しました。我々のものづくりの根底には『世界中の暮らしや仕事をもっと楽に、楽しくする』というメッセージを込めているんです。人々の心にゆとりをもたらすことは、我々の使命だと捉えています」(橋本さん)
「作ったものがお客様の元へ届き、働き方がどう変化したかを直接聞く。大きな変化をもたらせたときはやっぱり嬉しいですし、やりがいを感じています。また、愛される製品を作るためにも、デザインは重視します。お客様が使いやすく、かつ『ほしい』と思えるような見た目であること。それこそ若い世代がカッコいいと思えるような工具を提案したいです。30周年のロゴも、まさに胸を張って製品の歴史を示せるようなデザインを意識しました。
31年目に突入する鉄筋結束機。その市場を創り上げたのはマックスなんだ、という意識は常に持っています。これからもお客様の期待を上回るような発想で、さらなるニーズに応えられるよう、製品をアップデートしていきます」(伊藤さん)