製品には詳しくなったのになぜか売れない、そんな悩みを抱えている営業職の人もいるのではないでしょうか(写真: tokinoun/ PIXTA)

今度の新製品には自信があるし、機能やスペックのことだって懸命に覚えた。顧客には説明を尽くしているのに、なぜか買ってもらえない……。売れない新人営業は悩み続け、あるとき先輩からの一言で気がつきます。自分の営業スタイルは間違っていた、と。そんな実体験から独自の「仮説提案営業」メソッドをあみ出し、新卒2年目に新製品受注件数1位を達成したJOENパートナーズ代表の城野えんさんの著書、『成果に直結する「仮説提案営業」実践講座』を一部抜粋・再編集し、初回商談で気をつけるべきポイントを紹介します。

初回商談で顧客が求めているもの

新卒で入社した会社で営業部門に配属され、顧客先への訪問が始まった頃、営業部門全体で当時リリースされたばかりの新製品を拡販することになり、私は必死に新製品の機能や仕様を覚えようとしていました。

自分が売る製品について、詳しくなればなるほど顧客にうまく製品の良さを訴求でき、受注につながると思っていたからです。

ところが、なかなか技術的な言葉が覚えられず苦戦している様子を見ていた当時の私のOJTトレーナーでトップ営業だった先輩が、ある日こういってきたのです。

「初回商談では必要性訴求が9割だよ。製品の細かいことは語る必要はないよ」

製品のことに詳しくなければ売れない、と思っていた私からすると衝撃的な言葉でした。思わずこういい返しました。

「先輩、知識を身に付けないとお客様にうまく説明できないですよね? そしたら買ってもらえないのではないでしょうか」

先輩から返ってきたのは次のようなものでした。

「それはね、市場が伸びていて、あちこちから製品の引き合いが来ている状況なら、もうお客さんは必要性を理解してるわけで、後は製品の機能を説明するだけだから、こっちも詳しくないといけないって話。だけど、俺たちは、まだ明確なニーズがない顧客に対してこの新製品を売ろうとしている。

そういうユーザーには製品の細かい話なんてどうでもいいんだよ。その前に、なぜその製品を導入する必要があるのかを、きちんと体系立てて説明できることが重要なんだ。だけど、意外にそれをみんなやろうとしない。だから、なかなか新製品が売れていない。もちろん、製品知識はあるにこしたことはないけど、知識がないと売れない、というのは間違っているよ」

この話を聞いても、受注経験がなかった私はまだ半信半疑でしたが、「ニーズがないなかで売るためにどうすれば良いのか」をもっと研究してみようと思いました。

それから私はトップ営業だった先輩の営業手法を徹底的にマネすることにしました。あらゆる営業本・心理学の本を読み漁り、トップ営業の方のセミナーにもたくさん参加してきました。

どうすればニーズがまだない顧客に対してうまく必要性を訴求して受注につなげられるのか、トップ営業の方々のマインドや手法を取り入れつつ、自分なりにアレンジを加え試行錯誤を繰り返していったのです。

初受注、2件目、3件目と受注が増えていくうちに、少しずつもやもやとしていたものが確信へと変わっていきました。そして「仮説提案力」こそが、必要性訴求のカギになるということに気づき、私独自の「仮説提案営業」のメソッドをあみ出したのです。

仮説提案で若手社員に成功体験を積ませる

昨年、あるIT企業に営業研修をした際に、配属されてからまだ日が浅い新人営業の方と、個別面談をすることがありました。彼はとても真面目で一所懸命な性格で、「攻めの営業」で新規顧客開拓に取り組むチームメンバーの中で、自分がまだ売上を作れていないことに焦りと不安を感じていました。

そして、「自分は製品知識がないので、売れてないんです。だから週末はカタログやチラシを見ています。早く製品のことを詳しく説明できるようになりたいです」と話していました。

この時、私は自分の新人時代のことを思い出しました。彼は、「製品のことを知れば知るほど売れる」と勘違いしていた私と、全く同じ考えだったのです。

このような思考に一度陥ってしまうと、どんどん受注が遠のいてしまいます。「製品知識」については、あるにこしたことはないので、先輩も「熱心に勉強していて偉いね」といってくれるでしょう。

しかし、ニーズがない顧客に対して、「攻めの営業」で受注するためには、いかにうまく必要性を訴求できるかがカギとなります。


(本書より抜粋)

「顧客を知る」ことが大切だ


配属間もない新入社員をメンバーに持つマネージャーの皆さんにお伝えしたいのは、まだ担当顧客が少なく、業務量も少ないうちは、製品カタログをじっくり眺めている時間があれば、「顧客を知る」「顧客の想定課題の仮説を立てる」「製品とつなげるストーリーを作る」ことにたっぷり時間をかけさせましょう。そうすることで、まだ製品知識が完璧でない段階でも、案件創出ができるようになります。

新人の時はまず成功体験を積ませることが重要です。若い人ほど、一度自信を喪失してしまうと、なかなか立ち直れないからです。製品知識は商談経験が増えれば自然とついてくるものです。「知識が完璧につかないと売れない」という思い込みをまずはなくしてあげましょう。

(城野 えん : 営業コンサルタント/株式会社JOENパートナーズ代表取締役)