トイレの長時間使用が激減! 「見える化」サービスで″待たなくていい世界″実現へ
ショッピング中に「トイレに行きたい!」と駆け込んだものの、目の前には長蛇の列。待っている人がたくさんいるのに、なかなか個室からは人が出てこない…。

そんな「トイレの待ち時間が長すぎ問題」をセンサーやAIといった技術の活用で解消しているサービスがある。

「追い出す」のではなく「他人を思いやる気持ち」にフォーカスを当て、必要のない長時間利用の減少に成功している「
AirKnock Ads(エアーノック アッズ)
」だ。

同サービスを開発した株式会社バカンのCEO・河野剛進さんに、ライブドアニュースの看板犬・ドアふみが話を聞いた。

トイレの待ち時間をどうやって減少?

トイレの待ち時間ってしんどいよな。スマートフォンが普及してからはみんなの利用時間が特に長くなった気がして…

エアーノックアッズはそんな"トイレ待ち"問題を解決するサービスらしいな。どんなものなんだ?
トイレの空き室状況や使用時間を可視化することでトイレの回転率上昇につなげるサービスです。
自分がトイレに入っている時間と他のトイレの空き状況が個室内のモニター(サイネージ)に表示されているな。どういう仕組みなんだ?
各個室の扉に設置したセンサーによってトイレが使用されているかどうかを検知。リアルタイムの混雑状況をモニターに表示します。
外の状況を伝えることで、「待っている人がいるかもしれないから、スマホを使うのをやめて出よう」などとトイレ利用者に判断してもらいます。

現在は全国のトイレおよそ2500個室に設置。コンビニエンスストアやデパートなどの大型商業施設、オフィスなどで導入いただいています。
施設のトイレ空き状況が外部から確認できるサービス「VACAN Throne」の導入者から「長期滞在の解消」を望む声が上がったことがきっかけのひとつに

30分以上の個室利用回数が半分以下に

シンプルながら素晴らしいアイデアだぜ。でも、肝心の効果はどうなんだ?
実証実験では「30分以上」の個室利用回数が64%減少と半分以下になりました。20分以上の利用は43%減、15分以上も29%減となるなどの効果を上げています。

「追い出さない」にこだわったわけ

すごい効果だな! でも、エアーノックアッズって「自主的」に外に出てもらう仕組みだよな。

例えば一定時間が過ぎたら「アラートが鳴る」みたいに、もっと積極的に出ていってもらうようにしたほうが効果は上がるんじゃないのか?
企画段階では「警告を鳴らす」「スマホを使わせない仕組みを作る」などのアイデアも上がりました。

でも、それって自分がされたらすごく嫌ですよね

「一人でも多くの人にトイレを気持ちよく使って欲しい」という目的とずれてしまうため、「追い出す」以外のアプローチを考え抜きました。
確かに、落ち着いてトイレに入れない世界って嫌だな。

必要な人には長時間使って欲しい

それに私たちは「必要な人には長時間使っていただきたい」と考えています。
必要な人?
例えば、お腹が痛いなど体調が悪い方やトイレで休む必要がある人などですね。

いろんなケースが考えられると思うので、トイレが必要な人には必要なだけ使ってもらう。一方で、ついスマホに夢中になってしまっている人などには、出るか出ないかのジャッジ基準となる情報を提供する。
「他人を思いやる」気持ちを軸にアプローチすれば、トイレの長期滞在はなくなるのではないかという考えがこの製品の根底にはあります。
使用時間の下にはトイレ利用者を焦らせないためのメッセージも表示される
人の優しさを大事にする河野さんらしい仕組みだぜ。
とはいえ、実証実験の時はドキドキでしたけれどね(笑)。みんな、どれくらい他の人のことを考えてくれるのだろう…と。

でも、日本だけではなく中国での実証実験でもきちんと効果が出たので、世界中どこでも他人を思いやる気持ちは変わらずにあるのだとほっとしました。

災害避難場所の密回避でも活躍するVACAN

そもそも、バカンってどんな会社なんだ? トイレ専門の会社?
僕自身は「日本トイレ協会」の会員になるほどのトイレ大好き人間なんですが、バカンはトイレ専門の会社ではありません(笑)

私たちのミッションは「いま空いているか1秒でわかる、優しい世界をつくる」。

2016年の創業以来、センサーやカメラ、AIを使って人やモノのデータを解析し、空き状況を可視化することで商業施設や観光地、飲食店などの混雑を抑止するサービスを提供しています。
待ち順・受付管理をデジタル整理券で行うことによる無駄な行列解消や…
飲食店の混雑状況がわかるサービスを手がけている
新型コロナウイルスの感染防止のためにも密防止が求められる今の時代にぴったりのサービスだな。
コロナ禍で人の一極集中を避けたい災害避難所や投票所でも活用されるなど、新しい取り組みも増えています。
避難時の密防止を模索する自治体の依頼を受けて開発したサービス。利用可能な避難所の情報を、災害時に住民やその家族がリアルタイムで確認することができる
創業したきっかけのひとつは、"フードコートの列に子どもが耐えられずに困った"という自身の経験ですが、「自分が使いたいもの」を突き詰めていった結果、コロナ禍でのリスク回避に役立つサービスにつながったことはとても嬉しく思います。

今後は何を目指す?

まさにソーシャルグッドなビジネスだな。今後はどんなことをやっていきたいんだ?
混雑状況、空き状況可視化のための技術開発をこれまで以上にやっていくとともに、今後はその分析データをどのように活用していけば役に立つのか、人々や社会にとって良いサービスを提供できるように新しい挑戦を続けていきたいです。

開発に込めた河野さんの情熱を漫画化!

今回の取材先:
株式会社VACAN(バカン)
センサーやカメラなどで人やモノの混雑・空きデータを取得・解析し、混雑の可視化から抑制、管理など様々な機能を提供する混雑情報プラットフォーム「VACAN」を展開。レストラン街やカフェ、オフィス、トイレ、観光地、投票所といった日常空間から、避難所などの非日常空間まで多様な領域の空き情報を取り扱っている。「いま空いているか1秒でわかる優しい世界をつくる」をミッションに掲げる。
取材・文/ドアふみ
撮影・ドアふみの手伝い/編集部
漫画/龍たまこ