時代を先取りしすぎてしまったモデルも存在!

 1970年代にマイカーブームがきて、80年代〜90年代初頭に自動車大国としてのピークを迎えてしまった日本。コストなんて気にせず、とにかくこだわったクルマ作りがされていたので、今も「名車」と呼ばれるモデルはその時代に多いのかもしれませんね。

 そしてその後、90年代後半〜2000年代はライフスタイルが多様化し、クルマには「個性」や「強み」が求められた一方で、コスト管理が厳しくなったり、世界で売ることを見据えた開発にシフトしたりと、じわじわと変革期に突入していきました。「マーケティング」なんて意識も定着してきて、ユーザーに響くクルマが増えた時期でもあったのですが、買う方もすでにクルマのある生活が当たり前になっているので、何か目玉になるモノや、新しいモノ、変わった魅力がないと、飛びつかない。

 ということで、なかにはちょっと個性が強すぎてしまったり、時代を先取りしすぎてしまったり、見た目はいいけど使い勝手がダメだったりと、期待されたほどは売れず、不発に終わったクルマも出てきたのです。

 ただ、そんなクルマたちを20年以上経過した今、あらためて見返してみると、意外にもしっくり受け入れられたり、魅力が増していたり、「今だからこそ欲しい!」と思えるクルマもあるものなんですね。今回は、当時はちょっとムリだったけど、今ならオシャレに乗れるクルマたちをご紹介したいと思います。

1)WiLL Vi

 まずは、2000年に登場してわずか1年で姿を消してしまった、WiLL Vi。あまりに短命すぎて、「そんなクルマあったっけ?」と思い出せない人も多いのではないでしょうか?

 そもそも「WiLL」というのは、1999年からスタートした日本の有名大手企業による異業種合同プロジェクトで、当時「ニュージェネレーション層」と呼ばれた20代から30代に響く製品を開発して、「WiLL」というブランド名をつけて販売するというものでした。

 その一員に加わったトヨタ自動車が、WiLLブランド製品第一号として華々しくデビューさせたのが、初代ヴィッツをベースとしたハッチバックスタイルのソフトトップコンパクトカー「Vi」だったのです。

 デザインモチーフとなったのが、シンデレラのかぼちゃの馬車、というのですが、新車当時はただただ奇抜なへんてこりんなクルマ、というイメージしか持てなかったのが正直なところ。しかも運転してみると、小さいサイズの割に車両感覚がよくつかめず、運転が苦手な人には勧めにくいかな、という印象も。

 でも、今見てみるとどうでしょう。奇抜さは薄れてキュートさと親しみやすさに変わり、フランスパンをイメージしたというインテリアなんて、でっかいフィギュアみたいでパンブームの今なら目がハートになる人も多そう! 当時より安全基準なども厳しくなった今、そして今後はもう二度とこんなクルマが出ることはないでしょうし、若い世代にさらりと乗りこなして欲しいなと思います。

2)スズキ・ツイン

 続いては、2003年から2005年までと、こちらも短命に終わったスズキ・ツイン。全長わずか2.7mほどのコロンとしたフォルムに、軽初のハイブリッド車とガソリン車を設定していた、2ドア2人乗りの軽自動車です。これこそまさに、時代を先取りしすぎたと言えるクルマですね。

 当時はエコが叫ばれ始めていたものの、まだまだ現在のようにそれが当たり前という意識は薄く、ユーザーの心理としては「いくら軽だからって、なんでわざわざこんな小さい2人乗りを買わなきゃなんないの?」という感覚。ミニマムな暮らし、なんてのもまだ一部の人たちだけのもので、多くの人は「どうせ買うなら広くて使える軽の方がお得でしょう」という気持ちでした。

 黄色や青、赤といったクレヨンのようなボディカラーも、ちょっとチープに見せてしまっていたかもしれないですね。でもこれが今見ると、無駄がないのに遊び心がある雰囲気といい、屋根のあるバイク的なフットワークの良さといい、現代車に負けない燃費といい、めちゃめちゃ魅力的じゃないですか。1人で気軽に足がわりに乗れるクルマが欲しいと思っている人には、かなりオシャレな1台だと思います。

発売当時は個性的すぎていても今では時代に合っていることもある

3)日産マイクラC+C

 次は、2007年から2010年まで、日本ではわずか1500台のみ販売された、日産マイクラC+C。マイクラはマーチの欧州名で、4人乗りのクーペカブリオレでした。名前からもわかるとおり、そもそもはヨーロッパの人たちに向けて販売されていたもので、おそらくそれを見た日本人が「これいいんじゃない、日本でも売って欲しいなぁ」と無責任に言ったのではないか、と推測されますが……。

 確かに、日本でのマーチはコンパクトカーとしてはオシャレ路線で、女性からも男性からも人気がありました。でも、でも、やっぱりベースは実用車なんです。「実用車なのにオシャレ」というところが絶妙に響いていたのだと思うんです。それが、屋根が開くオープンカーになってしまうと、室内は狭いし静粛性は劣るし、値段も高くなって、実用的ではない単なるオシャレカーとして勝負しなければならないわけですね。

 当時、日本にはフォルクスワーゲン・ゴルフカブリオレとかプジョー207CCとか、ヨーロッパのコンパクトなオープンカーがそろっていて、やっぱりそのオシャレさと比べてしまうと、日本人はそちらになびいてしまうのは仕方のないところでした。

 でも、今この時代なら、実用性だけじゃない遊び心や余裕を持ったコンパクトカーって、すごく抜け感があっていいんですよね。見栄は張らないけど、等身大でいいけど、あくせくするよりは人生チカラ抜いて楽しもうよ、みたいな気分にマイクラC+Cがすごく合っていると感じます。限定車だったのでなかなか中古車も少ないとは思いますが、ぜひ探してみてくださいね。

4)ダイハツ・ミラジーノ

 続いては、1999年から2009年まで販売されていたダイハツ・ミラジーノ。クラシックな雰囲気を前面に出してデザインされた、セダンタイプの軽自動車です。もちろん、名前のとおりダイハツの旗艦車種の1つであるミラの派生車種で、丸目のシンプルなヘッドライトや、メッキで囲まれたフロントグリル、メッキバンパーといったモチーフは、1960年代に販売されていたコンパーノのイメージを継承したものとされています。

 なので、その辺りに郷愁を感じる人や、クラシックな雰囲気が好きな人には好評だったものの、欧州車をよく知る人たちからすれば、「MINIそっくり!」と驚きを隠せないところもありました。本家本元は50年代から世界中で売られているベストセラーカーですから、その二番煎じのようなクルマはちょっと……と敬遠していた人も少なくなかったと思います。

 でも今となっては、クラシックMINIはもうほとんど日本で見かけなくなり、ミラジーノも登場から20年以上が経過して、いい感じにヴィンテージに近づきつつあり、とってもオシャレ。肩肘張らずに乗れるのではないかと思います。

5)日産エスカルゴ

 そして最後は、ちょっと古くなりますが1989年から1990年の2年間のみ販売していた、日産エスカルゴ。商用のライトバンなんですが、パイクカーと呼ばれるデザインに特徴のあるクルマで、名前の通りその姿はまるでカタツムリ。フロントフェンダーから突き出て、そのままルーフまで伸びるピラーがカタツムリの殻のようなフォルムを作り出して、後ろはストンと断ち落としたような平面のバックドアになっています。

 フロントマスクは、カタツムリの目玉のようにちょこんと丸いライトが付いていて、商用車といえどもかなりキュートでクルマらしくない雰囲気を漂わせていたのです。もちろん、お店の配達車や営業車などとして使うと、目立つし宣伝効果は高かったのかもしれないのですが、どこかオモチャっぽい印象は拭えず、オシャというよりは奇妙なクルマという感覚。

 でもそれが今では、わずか全長3.5m弱のボディの後ろ半分がパネルという斬新さや、余計な装飾のないシンプルなインテリアは、若い世代が見たらレトロだけど新鮮で、すごく魅力的に映るのではないでしょうか。

 というわけで、発売当時は個性的すぎたクルマ、時代を先取りしすぎたクルマ、とんがりすぎていたクルマたちですが、今なら気負わずにオシャレに乗れそうなクルマたちをご紹介しました。新車のときは売れなくても、10年後、20年後にスポットライトが当たるクルマがあったり、トレンドにピタリとはまるようになっていたり、不思議なものだなと思います。

 ここ最近は、あまり奇想天外なクルマが誕生しにくくなっているようにも感じるので、また私たちの度肝を抜くようなクルマを自動車メーカーには作ってもらいたいなと願います。