Come all you rounders if want to hear
A story about a brave engineer
Casey Jones was the rounder's name
On a "six-eight" wheeler, boys, he won his fame
聞きたい鉄道員たちは皆寄っといで*1
勇敢な機関士の物語を
その鉄道員の名はケイシー・ジョーンズ
第68号機の担当で、そう、噂に勝る大した男*2
The caller called Casey at a half past four
Kissed his wife at the station door
Mounted to the cabin with the orders in his hands
And he took his farewell trip to the Promised Land.
ケイシーに電話がかかってきたのは四時半*3
駅舎の出入り口で妻にキスを送り
操縦席に乗り込んで、全ての采配は彼の手に
そして死出の旅へと向かったのだった

Casey Jones
Mounted to the cabin!
Casey Jones
With his orders in his hand!
Casey Jones
Mounted to the cabin!
And he took his farewell trip to the Promised Land!
ケイシー・ジョーンズ、
操縦席に乗り込んだ!
ケイシー・ジョーンズ、
全ての采配は彼の手に
ケイシー・ジョーンズ、
操縦席に乗り込んだ!
そして死出の旅へと向かったのだった!

Put in your water, and shovel in your coal
Put your head out the window while the drivers roll
"I'll run her 'till she leaves the rails
For I'm eight hours late with the Western Mail."
水を注げ、石炭を放り込め*4
機関手が窓から頭を突き出して運転している間は
「こいつが脱線するまでは走らせ続けにゃならん*5
 西部郵便は8時間も遅刻してるんだからな」*6

He looked at his watch, and his watch was slow.
He looked at the water, and the water was low.
He turned to the fireman, and then he said,
"We're gonna reach Frisco, but we'll all be dead."
懐中時計に目をやれば、時計は遅れていた*7
水量に目をやれば、水は残り少なかった
ケイシーは火夫の方を向いて、こう言った*8
「シスコまでたどりつけなきゃ、みんなおじゃんだ」*9

Casey Jones
Gonna reach Frisco!
Casey Jones
But we'll all be dead!
Casey Jones
Gonna reach Frisco!
We're gonna reach Frisco, but we'll all be dead!
ケイシー・ジョーンズ、
シスコまでたどりつけなきゃ!
ケイシー・ジョーンズ、
みんなおじゃんだ!
ケイシー・ジョーンズ、
シスコまでたどりつけなきゃ!
シスコまでたどりつけなきゃ、みんなおじゃんだ!

Casey pulled up that green ol' hill
She took off through the crossing with an awful shrill
The switchman knew by the engine's moan
That the man at the throttle was Casey Jones
ケイシーは緑の荒れた丘で停止をかけた
機関車は恐ろしい金切り声をあげながら踏切を通過した*10
転轍手(てんてつしゅ)は機関車の悲痛な音でわかった*11
減速レバーのそばにいた男こそケイシー・ジョーンズだと

He pulled within two miles of the place
A No. 4 stared him right in the face
Turned at the fireman said, "Boy, you'd better jump.
Cuz there's two locomotives and they're going to bump."
2マイルものあいだブレーキをかけ続けたが
第4号列車が目と鼻の先で睨んでる*12
ケイシーは火夫の方を振り向いて、「おい飛び降りろ、
二台の機関車が衝突するぞ!」

Casey Jones
Two locomotives!
Casey Jones
And they're going to bump!
Casey Jones
Two locomotives!
There's two locomotives that're going to bump!
ケイシー・ジョーンズ、
二台の機関車!
ケイシー・ジョーンズ、
衝突するぞ!
ケイシー・ジョーンズ、
二台の機関車!
二台の機関車が衝突するぞ!

Casey said just before he died,
"There be two more roads that I'd like to ride."
Fireman said, "What could that be?"
"The Southern Pacific and the Santa Fe."
ケイシーは死の間際に言うことには、
「乗ってみたかった路線が二つあった」
火夫が聞いた「そいつはどれだい?」
「サザンパシフィック鉄道とサンタフェ鉄道さ」*13

Mrs. Jones sat on her bed a-sigh'n
Just when she got the message that her Casey was dyin'
Said, "Go to bed, children, and hush your cryin'!
'Cuz you got another Poppa on the Salt Lake Line."
ジョーンズ夫人はため息をつきつつベッドに腰かけていた
夫ケイシーの訃報を聞いたばかり
そして言った、「ベッドにお入り、子供たち、もう泣くのはおよし!
ソルトレイク線にまだもうひとりパパがいるからね」*14

Mrs. Casey Jones
Got another Poppa
Mrs. Casey Jones
On the Salt Lake Line
Mrs. Casey Jones
Got another Poppa
And you got another Pappa on the Salt Lake Line.
ケイシー・ジョーンズ夫人、
もうひとりパパがいる
ケイシー・ジョーンズ夫人、
ソルトレイク線に
ケイシー・ジョーンズ夫人、
もうひとりパパがいる
ソルトレイク線にまだもうひとりパパがいるとさ。

*1 rounderとは短期契約の鉄道員を指すアメリカの俗語。
*2 実際には384号機担当であり、事故の際は代理で382号機を運転していた。この382号機は後に愛称として「ケイシー・ジョーンズ」と呼ばれるようになった。
*3 実際には自宅ではなく宿泊待機中に呼び出され、出発は深夜0時50分だった。なのでこの時刻も妻の見送りも全くのでたらめ。
*4 shovel inは「食べ物をどんどん口に放り込む」という表現でもある。
*5 機関車は女性名詞のため「she(彼女)」を使う。
*6 実際に牽引してたのは客車の上、95分程度の遅れ。8時間遅刻とかスケールがでかすぎる。それともアメリカではあり得るのか?
*7 腕時計が一般に出回るようになったのは第一次世界大戦(1914-1918)なので、この頃はwatchと言えば懐中時計だった。
*8 この火夫(ボイラー係)は史実ではシム(Simeon T. Webb、1874 - 1957)といい、382号機専属の黒人火夫だった。ケイシーは当時としては珍しく黒人に対しても友好的だったらしく、追突直前に彼を逃がしている。
*9 Friscoはサン・フランシスコのくだけた呼び方だが、シスコ住民に言うとあまりいい顔をされないらしい。そもそも史実の目的地はミシシッピ州カントンである。
*10 crossingってたぶん踏切って訳でいいんだよね?
*11 転轍手とは、手動で線路を切り替える係。日本では知らんが、アメリカでは現在も現役の職業。ただし、この時実際に待機していたのは先に立ち往生していた列車の旗手で、車輪が踏むと爆発音が出る信号(信号雷管)を線路にしかけたり、旗とランプで後続車に停止するよう合図を送っていたはずなのだが…。

*12 実際に路線上で衝突したのは第83貨物列車。
*13 いずれもかつてアメリカで繁栄した大鉄道会社。
*14 当時ジョーンズ一家が在住していたテネシー州ジャクソンからソルトレイクまで現在の電車で行っても二日かかる。車で行っても丸一日かかる。

text: T. Lawrence Seibert(? - ?)
tune: Eddie Newton(? - ?)

1900年に起こった機関車追突事故で殉職したケイシー・ジョーンズ(John(athan) Luther "Casey" Jones、1863 - 1900)を主人公としたバラッド。このような事故や災害をテーマにした「ディザスター・バラッド(災害バラッド)」というジャンルがあり、「マーダー・バラッド(殺人バラッド)」と並んで人気が高い。
本来の機関士が体調を崩したためにケイシーが代理で機関車を操縦していたが、定刻遅れを取り戻すべく急いでいたことと、霧雨の深夜で視界が悪かったことと、カーブの多い路線だったことが重なり、線路上で立ち往生していた別の貨車に追突した。追突寸前に気づいたケイシーは同席していた火夫を逃がしてからも減速と汽笛をかけ続けたことで、乗務員にも乗客にも死傷者は出なかったが、ケイシー自身が唯一の犠牲者となってしまったのだった。




彼の死を悼んだ黒人の掃除夫ウォレス・サンダース(ジョーンズ夫人の回想によれば、ケイシーがほんの駆け出しの鉄道員だった頃から「ほとんど崇拝に近い」ほど慕っていた)が作詞したバラッドが原型となり、アメリカ各地でさまざまに改変されたり新しいバージョンが作られたりして、次第に実際の事故からかけ離れた内容になっていった。もっとも知られるバージョンは、寄席芸人であったサイバートとニュートンによって1909年に発表された楽譜(ミュージックシート)によるもの。ちなみに現在でも入手可能。
もっとも、上記に執拗に上げた註でもわかるだろうが、内容ははっきり言ってほぼでっちあげである。

Casey Jones (English Edition)
T. Lawrence Seibert
OnlineSheetMusic.com
2013-04-25


ジョーンズ夫人の不貞と短期間での再婚をほのめかす最後のくだりは、当時の流行歌によく見られるフレーズ。殉職した警官とその殺人の濡れ衣を着せられた男が処刑された1890年の事件にもとづく殺人バラッドDuncan and Brady 《ダンカンとブレイディ》によく似たフレーズが登場する(ジョーンズ夫人の旧姓も殉職した警官と同じブレイディ。このバラッドには警官の妻が遺族年金を期待するなどの描写がある)。また《蒸気船ビル》にも、未亡人となった妻が「今度のパパは鉄道員にする」などと言うシーンがある。当時は危険な仕事に従事する人間が多くて、夫が殉職して残された妻が生活のため短期間で再婚するというようなことが頻繁にあったのかもしれない。


このフレーズは実在のジョーンズ夫人ことジェイニー・ジョーンズ(Mary Joanna ("Janie")、1866 - 1958)を激怒させた(そりゃそうだ)。実際にはジョーンズ夫人は再婚せず未亡人を貫いたにも関わらず、92歳で没するまでの58年間ものあいだ、無責任な歌がそこらじゅうで歌われたり、無許可で亡夫の名前をいろんなものにつけられたり、マスコミにおもちゃにされたりという現象に悩まされる羽目になった。


なお、夫妻の三人の子供のうち、末っ子のケイシー・ジュニアことジョンは37歳で早世したが、長男チャールズと長女ヘレンはいずれも長命で、特にチャールズの娘ナンシーは「ケイシー・ジョーンズの孫娘」としてケイシー・ジョーンズ鉄道美術館を訪れる人々に物語を聞かせるのを喜びとしていたとか。




Billy Murray
収録アルバム: Casey Jones (Remastered) - Single

Casey Jones (Remastered)
Bacci Bros Records
2019-06-11


おまけ:ディズニーの1950年制作短編アニメ「勇敢な機関士」は、ケイシー・ジョーンズおよびそのバラッドがモデルになっているが、悲劇的な事故には触れず、次々と災難に見舞われても指定時刻に間に合おうとする人間離れしたコミカルな機関士として描いている。冒頭に登場する見送りの美女を、ジョーンズ夫人とすることもある。ナレーションの江原正士氏のつっこみが楽しい。字幕がところどころ間違えてるのが気になるけど。ミグ類じゃなくて身震いね。

ケイシーは殉職以前から、多少手荒い手段を使ってでも時間に間に合わせる主義だとか、野球ファンであるとか、特徴的な汽笛の鳴らし方だとか、時間にうるさいので行動が時計代わりになるとかという様々なエピソードにより結構な有名人であった。その中の(眉唾な)エピソードのひとつに、「線路で動けなくなった少女を、機関車のカウキャッチャーに乗って救った」というのがある。囚われの美女を救い出すシーンは、このエピソードが元になっている。



ついでに、「ダンボ」及び「リラクタント・ドラゴン」に登場するサーカス列車は、「ケイシー・ジュニア」の名を冠している。



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