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やる夫は異世界の戦士になるようです119【完】

6241: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:00:02 ID:/1tY2dxE0

    /||ミ
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6242: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:01:08 ID:/1tY2dxE0

        、 - ‐‐ -,
       ,´: : : : : : : : :
      ゙i : : : :○ ○゙i      というわけで、今回で最終回だ。
       }: : : : : : : _ _ _|
       |: : : :-=´_ _,´      今まで待っててくれたみんな、ありがとう。
      y' : : : : :_: : : : :i
     / : : : : : : :┌─┐      それじゃ、はじめよっか。
     i : : : 丶: :ヽ{ .茶 }ヽ
     r : : : : :ヽ、__)一(_丿
     ヽ、___ : : : :ヽ : :ヽ
     と_ : : : : : : ノ : :ノ
       ̄ ̄ ̄  ̄

6243: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:01:30 ID:/1tY2dxE0

                                      _,、_,.、_
                                      _,r‐^v' '  "'^~`{  ,、
                                  r'^'u'゛  _ ,、,、_  iニ'ー'  ヽヽ
                               、 ,--゛   .ノ!ー'r' } }   }´    '´
            ,                    _,r^i  ̄,`'ゞ  ゛、  r',r‐'~,、r'~{、
     、 ,r'、ー' ̄'~´ヽ,-、         ,.□ー' △.`フ/ `´'" {´ _ _ ~r '´  ,.,ii/
   ,、;r´ `ー、コ .▲    .`'ヽ__ ー    ,く゛ ハ     { .○...,- {, { r。  'ヽ   {,、,、  。
  =~, { 、.  [Fossil Mountains]  r-'´~"ー, ヽ  Erinus . ‐{  '´`     'ー,   `'~'ニ'
   "r'~´ ●     ■       .`r.───┐ . □     ..{        ハ   ☆."{;
   ;´   .■     .★.■           .└──────┐ ―'´~´´ `ー'     `ー’、
   `~ー。、     .■      .×                   .│  ×     .□ ○   △..{,
      ゛、ヽ                               .│               ,r,    ヽ 、
      ,、   ヘヘヽ                  Mobius         .×│             ヽハ    "ー"゛

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大陸歴725年3月2日。メビウス首都イプセンにおいて、アラディア軍による
最初で最後の攻城戦が始まった。

ここまでの戦いで両軍共に疲弊しており、アラディア軍の被害も
三分の一に届こうとしていた。

大陸は混迷に包まれ、あらゆる技術と手段がかき集められた。
試作段階の銃器、訓練兵、未調教の竜。
メビウスに至っては、周辺の集落から緊急の徴兵を行いもしたという。

曇り空の下のイプセンに、時代の終わりの風景が出来上がりつつあった。
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6244: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:01:44 ID:/1tY2dxE0

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6245: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:06:08 ID:/1tY2dxE0

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                        `>、  マr ' 〈.::::::::::::, '
                     xf三 \     ヽ、/
                    ノ 二=--=二\  :..:イ
                xf三二=--=二三 ∧  Vハ
             xf三二=--= r 、(\ 三∧  Vハ
          ,. イf三二=--=二 ( \ \\>∧  ヾi

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剣を腰に提げ、姿勢を正し、無数の黒い野戦服姿の中に溶け込む。
背格好はそれぞれ違えど、崩れた服装をした者やだらしない姿勢の者は
一人としていなかった。吹き抜ける風の音に紛れて、深々と誰かが吐息を漏らす。

何度も見た光景だった。きっと、この光景を見るのは最後になる。
そう信じたい。
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6246: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:06:23 ID:/1tY2dxE0

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     イ ー ̄三  ̄二三[]=イ"ゝ
     /弋_ー  = ーノヤ彡ノヽ

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不思議な気分だった。先が分からないなど、当然のことだったはずなのに。
明日は一応生きているだろう。十年後も多分だらだらと生きている。
進学し、就職して、生きていく。失敗して、そのレールから外れてしまい、
戻ることから始めなくてはいけなくなっていたとしても、生きてはいるだろう。

そう考えていた。ある程度は、自分のこれからが思い描けた。
それも元いた場所での遠い昔話だ。ここでは、明日のことなど分からない。
数時間後ですらも分からない。それなりの高確率で死ぬだろうが、それも
確実とは言えない。

これだけの人数の内、一体何人が生きて帰れるのか。
死ぬかもしれないというのに、これだけの兵士たちが逃げずに立っている。
傍から見れば気が狂っているようにしか思えない。
もしかしたら自分はもうおかしいのかもしれない。

それでも、逃げる気にはならないのだから。
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6247: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:06:36 ID:/1tY2dxE0

       / : : /: : : : : : : : : : : : : : : : : 、:_ヽ.
        ,' : : /: : : : : : : : : : : : : : : :l´ヽ、 : : : : : : : : : ヽ: :ヽ.``
      i: : : :!: : : : : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : : : : : :ヽ: :!
       |: : : j: : : : : : : : : : : : : l: : : ト:ヽ: : : : : : : : : : : : : : :l、:l
      !: : /: : : : : : : : : : : : : :l: : : !: ヾ:.、 : : : i: : : : l : : : l l:!
      !: /: : : : : : : : : : : : l: : !: ;イ:!: : : `i`:ーr':l、: : : ! : : : l l'
      Y:, イ : : ! : :l: : :l : :| : ハ:| |:ト、: : : |lヘ:,l: !l: : : :! : : : l
       ノ'i: :liヽ: :|: : :!: : | : :ト、トl|、|j_,ヘ: : :l|'´_|ノ ! : :/: : /:/
       l: :ヽ.ヘ:|、: :l: : :|、 :|_,.イ', " ヽ: | ̄´ l: :/: :,イ:/
       /イ: : :ヽ.、ヽ|、: :| ヽ! ̄´     ヽ   ノイ:/ー'‐--..__
      ,イ. iヘ:ハ: : `r 、 ヽ!           ヽ  ,:'. '´. . . . . . . . . .!ヽ
    / l . |  lノヘ|  ヽ.            '´ ヘ.、. . . . . . . . . . .l. . ヽ
   / . . | . |    ヽ  ヽ、     ,. -‐`// !. ヽ、 . . . . . . . l . . . ヽ
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'´ . . . . . . | . l       ヽ.    / ` r ' /、   l . . . / . . . . . . . .|. . . .
. . . . . . . . | . j      / ̄ |   l   ノ、 ヽ \ |. . ./. . . . . . . . . |. . . .
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号令がかかることもなく、行軍が開始される。
念話によって先頭集団が動き出したのだろうが、どうも寂しい。
映画なら、ここで一つ、王様の激励があるはずだ。
その時間すら惜しむのは、理屈としては分かるが、一兵士としてはどうにも
締まらない。

「……次に、やる夫さん。聞こえていますね」

アンゼロットの声が頭の中で反響する。
朝とは打って変わって、すらすらと冷淡な声だった。

「朝にも説明したとおり、あなたはこれより第二前衛中隊アルバート分隊の
指揮下に入ってください。私たちはこれから、魔道ゴレム兵を最前列に置き、
イプセンと我々の間を遮る場所に位置するスクネゾ城塞に強襲を仕掛けます。
ここまでは、よろしいですね?」

そこでアンゼロットは一区切り置くと、すうと息を吐き、
「ここまでの戦闘で魔道飛竜隊に穴が開いておりまして。
私も適性を持つ人間なので、砲撃手として魔道飛竜隊の方に参加します。
なので、ここから先は統括支援魔導士隊のニコライ殿があなた方に指示を出します。
それでは、後でまたお会いしましょう」と告げた。

そこで念話は途切れた。
そうか、アンゼロットは空の方か。
大切な人が最前線にいる不安と、優秀な彼女が空から援護してくれるという
安心感が絡み合い、やる夫は奇妙な気分にさせられた。

呆けそうになっていると、後ろから何者かに小突かれた。
振り返ると、レンジが大ぶりの剣を担ぎながら、早く行けと顎で促してきていた。

奥歯に力を入れ、足を運ぶ。
早く飛竜隊に追いつき、城塞を落として、合流せねばならない。
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6249: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:09:14 ID:/1tY2dxE0

             ,..  -‐-v、_ヘ、
          /. : . : . : .:ハ`\、
          〃. : . : . /゙|/|: .∧:. .ヽー
        イ: . : . :‐z、、_ !: |: :.ヽ:: |、
         |: . :| . |/`┘` fュy: } 〉:|` 、
         {{ヽト∨     冫 }/ハ:リ        ……心配事か?
          }ト|,     、‐_、 /ン゙ j/
         ノノ:.:}ヽ、    , '
         イ斗┴r┐` .;-/
   / ̄`ーゞ、  / |__ 〈ー─r、
  /     \ ∨\  |,ベ._ / |
  {    . : : : . ヽ>ー\[ ̄{ 〉\|、_
  |        `丶}\  __\_]~∨'\`ヽ
  :|   ._    \_}/r‐-}\ ゙,`''く l ゙,
   ト、: :./ / ̄`` ぐ└f'二)::{  ',  | !,ゞ┐
   `、∨ ´ ,.、-''"~ ̄}_{‐''く:::{_  ', _|_|_,rー'、_
    }{ / _、-'''"~ ̄{_\;;;;;j;><;:::::\:::ヘ}\
     }∨: /  _、-''゙~ ̄ ̄     \::::},之_ ヽ
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森を抜け、時折現れる斜面を登りながら、作戦で指定された位置を目指す。
遠目に見えるイプセンを守る城塞には、既に火の手が上がっていた。
やはり、飛竜の速度は通常の行軍とは段違いだ。
先頭集団の方では、既に十数匹の斥候と思われる狼を仕留めたとのことだが、
それ以降の警戒指示や陣形変更の指示は来ていない。
城塞内の戦力が、魔道飛竜隊への対処に追われているということだろう。

後衛部隊は既に位置に着いた。
これから自分たち前衛部隊は第三前衛中隊を除き、密集隊形へ移行。
砲撃により防壁を破壊した後、突撃し内部を制圧するという手筈になっている。

ようやく指定の位置に辿り着いたらしく、部隊の脚が前から後ろへと止まっていく。
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6250: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:09:35 ID:/1tY2dxE0

                                    (
                                     )   ノノ
                              ∧    ((   ,,,;)
                             / ∧ヘ     )  ノ
                              而而 |  .( _ ⌒)
                             |n l|√ | ...(  (
                              鬥鬥l__∧___.) ノ
                          。___|]] |三|]]三 . )ノ  .∧
                       (      ∧三 l|__l三|]]三ー/:∵\|
                        )  ) .I/厂|∧l|   | ̄ ̄ ̄丁二二「|
          ∧I         ( ::(  /|T¬「 ̄| [[| ロロロ [[| 凶凶l |
          [[[[|  ∧   __ .) ::).| ll| ロ|| lll |]] | ロロロ [[| 凶凶l |
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焦りが背中にまで出ていたのか、後ろからレンジが並び立つように出てくると、
周りに気づかれないように小声で話しかけてきた。

「いや、大丈夫。レンジはなんだか、元気そうだお」

「人のことを馬鹿みたいに言うんじゃねえ。まったくよ、心配して損したぜ」

冗談めかした口調でレンジは拗ねると、肩にぽんと手を置き、
それからすぐに離れていった。

中隊長の号令が高々と響き渡る。

石造りの城塞は、事情を知らずに見れば荘厳なお城のようだったが、
曇った空に煙を上らせ、倒壊していく見張り台らしき塔を見ていると、
そこが戦場であるのだと目と耳で改めて理解させられた。
崩れていく建物の音のみならず、人間の悲鳴まで聞こえてきそうだ。

「総員、構え! 突撃、準備!」

号令に合わせ、大量の剣が鞘から抜き放たれる。
金属の擦れる音と、それが空気を裂く音が合わさり、この場を埋め尽くす。
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6251: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:13:22 ID:/1tY2dxE0

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次の瞬間、閃光が炸裂、視界が白く染め上げられる。
少し遅れて、轟音が鼓膜をこれでもかといわんばかりに揺さぶってきた。

光が消え、視野が回復した時、城塞を囲っていた防壁は瓦礫すら残さず消失し、
そこらじゅうから黒煙を上げていた。

中隊長の声が響き、それを皮切りに、剣を構えたまま雄叫びと共に走り出す。
そうして、怒号と悲鳴の嵐の中に、身を投げ込んだ。
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6252: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:16:08 ID:/1tY2dxE0

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                         └──────┘


                           ┌───┐
                           │::::::::::::::::│
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                           └───┘


                             ┌─┐
                             │ :: │
                             └─┘


                               ┌┐
                               └┘


                                   □

                               ・

6253: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:16:38 ID:/1tY2dxE0

            :,:           :(::)
            /⌒''⌒) :,,゜      '         ,,,,,,,
           (:::::::::::::::!'                 (::::::)
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           τ'::/ .;:
            )/
         。            '  、       ;: 。
                               `'''`~''・    ' `
     f''`⌒(     ,,,,               !:(',,,,、              ::,,,,,、...
     ,!,,,、(     /::τ             ノ:::::::::::::::::)          。  !::::::::::`! 、
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       ゜     (/      ⌒・ .   ・、;::::::::::::;;.;`` ''
     ,,、..   //   ノ'          //'''`'`'` `       ..,,.. _,,,.、 ・         ,, ...:・..
  π /;::::::::(,.,.(;;;::::(   ,,.,  ・っ                    ;,;;( ):::::;.    c::── '`'''::::::::::;''
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 τ !::::::::::::::::::::::::::::)/,,,,, γ               :'`'``:!
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相手の手元を斬りつけ、返す刃で胸骨のあたりを刺し貫く。
鎧の裂け目から生暖かい血が噴出し、顔にまでかかる。
痙攣しながらもなお立っている敵兵を蹴り飛ばし、その勢いで剣を抜く。

既に、二桁は軽く殺していた。
自分の強化魔術の精度が良くないのか、剣の刃は段々と毀れ、血と脂で
元の鈍色は既に見えなくなっていた。これではただの鈍器だ。

敵の物か味方の物かは分からないが、とにかく床に落ちていた剣を拾い上げ、
こびりついていた血を振り払う。

随分と軽いが、殺傷力は十分だろう。

気づくと、四方八方から聞こえていた叫び声が止んでいた。
動いているのは自分を含めた黒い兵士たちだけ。
つまり、この場は制圧したようだ。
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6254: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:19:16 ID:/1tY2dxE0

                       ,ィ劣王ミ::、..___
               ,...._    寸圭圭圭圭圭}
             r:升圭少    ``x圭圭少´
              `¨´             ̄   ___
         <:少        ,..xュュュュ、       〈圭圭心,
                 {圭圭圭圭圭圭ヽ    ̄¨¨¨´
             __........__寸圭圭圭圭圭リ
  ,.......xュョョュュ.、,....ィ升圭圭圭圭圭圭圭圭少
  `寸圭圭圭} 寸圭圭圭圭圭圭圭圭圭K._
    `¨¨¨¨´ ,佳圭圭圭圭圭圭圭圭王圭圭}
      {少r:ゞミ王王圭圭圭圭少'´ ̄¨¨¨´
        {圭圭圭沁 `¨¨¨´ f壬心
        寸少' ̄ r劣}    弋圭ヲ
               ̄

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今しがた刺し殺した兵士に視線を落とす。
倒れた衝撃から粗末な兜が外れ、幼い顔が露わになっていた。
二十にもなっていないだろう。下手したらラピスより年下かもしれない。
健康的な小麦色の肌は、自分が頭を掴んで壁に叩き付けたことによるものか、
擦り剥けてずたずたになっていた。

装備からしてメビウスの兵士なのだろう。思えば、ここまで斬り倒してきたのは
皆メビウスの兵士たちだ。青と白が混じった野戦服は今のところ見ていない。
こちらとしては好都合だが、どうも不穏な匂いを感じずにはいられなかった。

エリヌスの要塞に突入した時に、義勇兵を囮に建物ごと
爆破してきた時のことを思い出す。
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6255: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:21:25 ID:/1tY2dxE0

                              ..‐-
                            /  /
                          /  /
                   , -‐──  、  /
                  /        ヽ
                 / ‐-、   ─    、
                / (●)   (● )   ヽ
                |   (__人__ )     |
           __/ ゝ、  `⌒´     _/
           ヽ ̄ヽ  /   ー‐      `ヽ、
           メ、ヽ7ヽ'     `´        ヽ
          ト´_>メ'ヽ~i               i
         //ゝ‐"| |ヽ  __,、     ノ`    i
        ゝ' |    |/|             l    i
          i   /  |             |    |
          ゝ‐'"    |            |    |
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残存兵の掃討もそこそこに、やる夫たち第二前衛中隊は先行していた魔道ゴレム
部隊の後を追う形で城塞を後にした。
裏門を抜けると、軍事施設と思しき建物の方が多かったが、
既にちらほらと一般の家屋らしき建物も見えた。

道にはかなりの量の死体が転がっており、黒い野戦服もいれば鈍色の鎧もいた。
今、魔道ゴレム部隊と第一前衛中隊がぶつかり合っているのは、もう少し先らしい。

空を仰ぐと、数えきれないほどの飛竜たちで埋め尽くされていた。
互いに火を吐き、飛び交い、魔力の槍が閃いている。
あの中の、一体何騎がアラディアの兵士なのだろうか。

中隊長の号令が疲弊した精神に鞭を打つ。
斬り合いで乱れた呼吸を整え、やる夫たちは火の手が上がる町へと突進した。
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6256: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:22:38 ID:/1tY2dxE0

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戦闘が起こっていたのは、大きな市場だった。
ディアナよりも広く長い大通りには、色とりどりの天幕が貼られ、
普段は住民が商売をしているであろう屋台が、焼け焦げ、瓦礫と木片の山と
化していた。

やる夫たちを出迎えたのは、援軍を喜ぶ味方の声ではなかった。

大通りに辿り着いた時、鎖が擦れるような音が聞こえ、次の瞬間には
奥で待ち構えていた敵兵たちから弾丸の雨を浴びせられた。
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6257: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:23:46 ID:/1tY2dxE0


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       .l゙         二ニ-- ‘´    _,,.. -ー     _..-‐'″ .,..ー _/     .i′ ! .l,   、 \
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... --ー'''^゙´ .ヽ          _;;jjl″       ._,,, ._..-''"゛._.. ‐'´ ., / .../    ../    . l  ! .! .ヽヽ ヽ  .`'-,
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     ._..-'"゛        _/´., ‐'´   " / .,,‐   /   / .,i / ,i ./   l    廴__ノ  |  ! !..l !、    ヽ

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ただの弾丸ならば、まだよかった。
だが、やる夫の目に映ったそれは、どこかで見たことがあるものだった。
映画で見た、軍用のヘリや軍艦に取り付けられている巨大な銃。
ガトリングとでもいっただろうか。それによく似たものが、じゃらじゃらと
耳障りな音を立てながらやる夫たちに銃口を向けていた。

兵士がハンドルを回し、連なった銃口が回転すると、連続した破裂音が
通りに響いた。

目で捕らえることなどできなかった。今までエリヌス兵に滅多撃ちにされたことは
一度や二度ではなかったが、これはその比ではなかった。
弾丸が腕を、足を掠めるたび、服ごと肉がこそげ落ちていく。

中隊長が何かを叫んでいるが、それを認識する余裕も与えてはくれなかった。
一人、また一人と倒れ、倒れたところに銃弾を受け弾ける。

銃座は火を噴き続け、間断なく味方を挽肉へと変えていった。
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6258: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:27:10 ID:/1tY2dxE0

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腕でなんとか頭部だけは守り、近場にあった建物の陰へと転がり込む。
目に入る血を拭いながら周囲を見ると、どうやら二十人近くは逃れられたようだ。
反対側の建物の陰には傷だらけのレンジが、何やら指示を出していた。

「魔道飛竜隊に援護を要請しろ! 一部隊でいい! あのデカブツを潰させろ!」

反射的に、やる夫も空に飛ばしている鴉を通じ、念話が聞き取れないか試みた。
途端に、頭の中にがんがんと戦場の混乱が流れ込んできた。

「現在、我ら魔道飛竜隊は上空にて敵飛竜隊と
交戦中! 戦況は劣勢、援護には向かえない! 繰り返す、援護には向かえない!」

「こちらラーズグリーズ隊! 現在敵対空射撃と飛竜隊による集中攻撃を
受けている! 凌いではいるが、身動きが取れん!」

「こちら支援魔導士隊コートウェイ! 援護に向かっていたゲリ隊、フレキ隊が
撃墜された! フレスベルグ隊のみの支援となるが、しばらく持ちこたえてほしい!
ガルーダ隊はそのまま本隊の上空を!」
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6259: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:28:49 ID:/1tY2dxE0

            ___
          /\三三ノ'\
        / (●)三(●) \    __
      /  )  (__人__)    |  〈〈〈 ヽ
      |   u.  |!!il|l| /  /  〈⊃  }
     \      ゙ー ′  /    |   |      せ、先行してる第一とゴレム部隊は!?
     /⌒ヽ   ー‐  ィ___/   !
     /                 _ノ      大通りでは確認できていないお! 位置だけでも!
     /   /i         ┌─一'´
     |   l |         |            
.    |   | l         |
.    〈  〈 l         |
     !i i i ! l         |
     ゙゙゙゙`´ |
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なんとか第一前衛中隊と合流できれば、状況を打開できるかもしれない。
先行しているのならば、ここからいくらか進んだ場所にいるはずだ。
ならば、一部だけでも引き返してもらって背後からあの銃歩兵たちを
叩かせればいいのではないか。そう思い、縋る思いで支援魔導士隊に
怒号を飛ばすが、他部隊への指示や救援要請にかき消されてしまう。

やがて、その答えが聞こえてきた。
「こちら第一前衛中隊! 現在、敵地竜隊の挟撃に遭っている!
撤退の許可を願う! 繰り返す、撤退の許可を!」

挟撃? ということは、自分たちの部隊を壊滅させかけたあの兵士たちは
伏兵なのか。第一前衛中隊たちをわざわざ見過ごして地竜隊にぶつけ、
後備えを潰すためだけに待ち構えていたというのか。

話を聞く限りでは、メビウスとエリヌスの兵士たちの足並みは滅茶苦茶だ。
だが、その滅茶苦茶な動きに、自分たちは確固撃破されそうになっている。

いや、違う。
規模そのものが、そもそも違うのだ。

自分たちがいくら策を講じても、彼らは数を揃えて戦場に溢れさせるだけで、
それらを飲み込んでしまうのだ。

今まで大陸を二分していた軍勢たちが今、この町に集結し、一つの勢力に
集中攻撃している。その結果が、これだ。
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6260: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:30:08 ID:/1tY2dxE0

         ____
       /   u \
      /  /    \\
    /  し (○)  (○) \
     | ∪    (__人__)  J |
    \  u   `⌒´   /

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「こちら第一魔道大隊隊長ハイグリーズ。対峙中の敵部隊の殲滅を確認。
ただちに城塞内に進入、前衛中隊の援護へ向かいます。後続の魔道部隊は
負傷者の救護が完了し次第続いてください」

その中で、ただ一人だけが静かな声を放っていた。

「現在、我々は敵地竜隊と交戦、殲滅。護衛の魔道飛竜隊は
敵地上兵器の破壊と前衛部隊への援護へと向かわせました。
それまで持ちこたえてください。決して無理な突撃はしないよう」

周りの兵士たちの表情に色が戻る。
血だけに彩られた灰色の目に希望が宿る。
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6261: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:33:07 ID:/1tY2dxE0

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       ,.': /: : : : : :: ヽ、: : .     . : : : : :_/zミ、ヽ、 !:::::::::!:リ':!::::::::',:::V:::Vヽ ̄j´
      _,ノ: /: : : : : : : : : : : :`: :ー‐‐‐‐‐≦/〃'乂ソメミ,ノ::::/!:!メ:::::::!::',:::V、V、:メj_,
    ,イ´::/: /: : : : : : : : : : : /: : : : >: ":,メ    ` />' ハ! }::::::j:::::!::::, V:、
   ,/: : :/: : : : : : : : : : : :./: : >:´: : : :ノ{     / '"   、f孚V:::::ハ::::j:::!:, V:、
 /': : :/: : : /!: : : : : : /: >': : : : : :,メ!V{      _  ― フ~‐/}:::/:::!::ハ::! :、 ヾ、
/: /: : /: : : ://: : : : : /: /: : : : : : :,.イ V ヾ   ,.イ"ー、 ヽ `´   / ::i:::j:∧::! ヽ
: :j': :./: : : ://: : : : : :/': : : : : : : イ/-----  f´:ヽ::::::::r‐V  ノハ:::::/!:::/ ',|
: : : : : : : ://: : : : : : : : : : : :,.イ/::f    //  .{、: : `,:::フ´   ,イ//ソ j:/
: : : : : : : :j': : : : : : : : :,: <: : //: ! _, イ/   ゝ ヽ:_,j/   ,..イ ' '  /'
: : : : : : : : : : : ,: :<: /: : : ://: ノf!´  ∧: .  - :、ー' ,..イ      '
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: : :,:<: : : : : : :./: : : : ://: : }::ハ {,イ´`メ ≧"
/: : : : : : : : ノ´: : : :.//: : : :Vj ', フ     `> 、
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「これより指揮は俺が預かる! いいか! 現在、敵の包囲を抜けた
魔道大隊とブリュンヒルド隊ガッツ分隊が首都中央に向かっている!
決して無駄死にするな! 一人でも多く殺せ! 一秒でも長く生き残れ!
死にたくなけりゃ得物を放すな!」

レンジが叫んだ。どうやら、今の銃撃で中隊長がやられたようだ。
「ここは迂回して敵本陣を目指しつつ、機を見て味方と合流する!
全員ついて来い! ここの路地を曲がるぞ!」

全身から血を流しつつも、レンジはふらつくこともなく立ち上がり、
目についた家屋のドアを力任せに引きはがすと、それを片手で振りかぶり
「来い!」と短く呼びかけてきた。

合図とともに飛び出し、レンジたちのいる建物の方へ駆ける。
レンジは手に持ったドアを盾にするかと思うと、雄叫びを上げながら
銃座の方へと投げつけた。様子を窺っていた敵兵たちはそちらに気を取られたのか、
飛び出してきた自分たちではなく飛んできたドアへと銃を向けていた。

レンジたちの下へとたどり着き、勢いのままに走る。
イプセンの町は入り組んでおり、ちょっとした迷路を思わせた。
曲がり、走り、曲がり、走りを繰り返し、暗い小道を血を滴らせながら疾駆する。
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6262: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:34:10 ID:/1tY2dxE0

    -=イ : |:ヽ : : : : : : : : : `ヽ、: : : ヽ
      /: : :|: : :ヽ、:ヽ、: : : : :ヽ:ヽ、: : !
      !: : : | : : |、:,ヽ: :ヽ: :ヽ: : :l:`ヽ: : l
      l|: l: :ト、: :ifッ`` ヽ:ト、: |: !:|〉ヽ: : :ヽ、__    _,. .-―ァ.、
      ト|ヽト、:メ、:、      jハ;ハト、 : :、 :_:ヾヽ「 | ̄. . . . . . / . . \          っ……鴉がやられたか。
            く   `  u.   ノ  j;ハ、:ヾ`` l. .l. . . . . . . /. . . . . . . ヽ
          └<つ       / ``   l. .l. . . . . . /. . . . . . . . .          これじゃ動きようが……
            `l   ,∠ 、 ヘ.'`ヽ、   |. .!. . . . . .i. . . . . . . . .
              ` '´ /、 ヽ. `ヽ. i\  |. .l. . . . . .!. . . . . . . . .
               〉、ヽ  ト、 | |::ト.ヽ |. .ヽ. . . . ト、. . . . . . . .
               l. |/lヽヽ | j:j|. .ヽ`. ./ . . . .!. . . . . . . . .
                  !. . . L: >、Y,<| . . `ヽ、. . . . .ヽ、. . . . . .

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兵士たちの息が上がり始めた時、レンジは突然足を止めた。
体力の限界というわけではないだろう。

彼の停止に倣うように、自分たちも停止する。
建物の間にできた細道は薄暗く、自分たちの存在を隠してくれているような
安心感があった。それもあってか、兵士たちの混乱も比較的穏やかになっていた。

レンジ、どうかしたのか。そう声をかけようとした時、巨大な何かが風を切る音がした。
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6263: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:35:21 ID:/1tY2dxE0

      /     ,ノ./      /  /    ./..}i  }i.     |jし′
.     /     / /      /  /    ./  }i  }i      i|゙/
     /    / /      /   /    ./.  _)  }i    i|
.    /    .,/./      /  /    ./  ./.`ヽ, }i  }i )i|
.   /     ,/./      /  /    ./  ./...  }i {  _}し.i|
  /     / /      /  /    ./  ./   ./゙`} /  j}. !i|
. /    .,/./      /  /    ./  ./. |   /イ   j}.. !i|
./     ,/./      /  /    ./  ./.  jl}  〃  jl} )_..゙|:i|!
゙    .,/./      /  /    ./  ./.   ノ:{  {! __j} し. |:i|!                         |
.   ,/./      /  /    ./  ./   j} {i   `ヽ、   |:i|!                            i|
   ,/./      /  /    ./  ./   j} j{     j} }   |:i|!                            l|
.  / /     /   /    ./  ./   ./  ) ノ|    j}し'  l:l|:i|!                          il|    て
 / /     /   /    /   /   ./   〃:j|   _)   :l|:i|        |                  il|!  ¨´そ
,/./      /  /    ./  ./   ./     ノ:{   j}     :l|:i|        |                   il|!`¨´⌒
../      /   /    ./  ./   ./ j}    ) {!  j}       i|        |                 :i:l|!/ ノ¨´
"     ./   /    /   /   ./  ノiしイ, j} 廴  )                  |                廴.i:|:l|!∠㌢"
     /  /    ./  ./   ./  /  j{ j}  しイ                   |               ,.l:|:l|㌢"¨
.    /   /    ./  ./   ./  }i |i /iし′                     |        i|      。ィ才i:|:l|   /
   /   /    /   /l|  /   ).il:|/ }i                     i|        i|     ,ィ劣才:|:l|i  /,イ
  /   ,i′   /  ./..゙l||jl}    `|:|  `Y                      l|        l|.     て⌒`゙i:|:l|i ,ィ´ソ
. /   /    ./  ./. !l|l' }!   j{  i|  j{ }_                   il|        l|   ,ィ才´,ィ     /  j{ ,
./   ./..  ノ!      ノ.l| {i   ノし,. i| / し′                     il|        l| そ⌒`,ィ㌢´   ノ  ノ /
′ ./.... /イ´   Y´ . l| . j} j}   !i|lイ                        il|l      ,.ィ||て_,ィ劣´   ,ィ才´ て
  /... j}' 彡'    j{ |    ,イ j}..  !i|l'                      :i:l|l    ィ才||才㌢´    ,ィ才㌢⌒`
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}i' /  才´     i:|:l|        :l|:i|                    ,ィ劣,ィi:|:l|て      /      て   /

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視界が橙色に染まった。感覚が残っている頭部や胸部に鑢で磨り潰されるような
鋭い痛みが走り、たまらず悲鳴を上げる。

息ができない。体中に火が点いたようだ。
いや、そうではない。実際に、自分が燃えているのだ。

自分と、自分以外の者たちの悲鳴が重なり合い、肉と髪と骨が焼ける匂いが
その場に充満した。

熱すら感じない。熱だと認識する前に、それは痛みへと変わる。
陸に上げられた魚のように口をぱくぱくと開閉させながら、
やる夫は意識を手放した。
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6264: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:35:54 ID:/1tY2dxE0

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                               ・

6265: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:36:09 ID:/1tY2dxE0

         , -─‐──‐-、
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.      ! u. _ノ′ヽ、__ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;       ,;   \ ,rー、
        ゝ。((:::::::)  ;;;;;;;;;;;)##i'′⌒ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄ヾ`ヽ ヽ
       (  ヽ'"(__人___)"'# ,ノ ヽ、____"___,、___ソノ__ノ
  ´ ´ `゚~゜´^" ´~`゚゜`⌒ ´"´´゚^゚^ ~゜゚`´^゙^ ^´'゜´^゚´ '゚^´゙ ^ ゚゜
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意識の覚醒は緩やかなものだった。
自分が倒れ伏していることを理解するまで十秒ほどかかったが、
部隊が炎の嵐に巻かれたことは覚えていた。

軋む体を起こす。反射的に魔術による強化を施していたのか、
服は所々が炭化するだけに留まっていた。体の方の再生速度も相変わらずだ。
さっきまで丸焦げだったろうに、既に新しい皮膚ができあがりつつある。

「おい! そこの奴、まだ生きているぞ!」

後ろから男の鋭い声が聞こえ、視界の端に映った自分の剣を拾い上げる。
木や革の部分は焼け落ちていたが、刀身だけは辛うじて形を保っていた。
刃物としての機能は期待できないが、それで戸惑うだけの余裕もなかった。
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6266: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:40:08 ID:/1tY2dxE0

                ,._
               ((,.-―‐‐-、
            -'ァ ̄:: : : : : : : : : :ヽ
              ノイ : ト、 : : : : :i : : : : i
             ト|ハ|tr|;イ: : / : : : : j
              ソ   |ル',ソ: : : : /     ___
              `r=   ノ| : ;、iハ!、,.'´ ̄ . . ヽ. .ヽ._
               ー‐ ァ '´Y,ン´ ̄. . . . . . . . . . ∨ノ `ヽ'ヽー 、
               ,..-`‐. '´. . . . . . . . . . . . . . . . .i.:/ . . . 〉 l  ト、
                ;'.:l:.:.:.:.:.:.:.:.:. . . . . . . . ヽ、:. . . . . .|、_.:.:/ ノ /ノ
ニニニニニニニニニニニニニニニ|.:.:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:..:. . . . `ヽ. . . . |j lj)、_,、,./´ _
__________ヽ:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: . . . . . . . . . . Y::Y:ー'‐iニニ´oヽ
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                 ` 、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. . . . . . . . . . . . . . ヽ、
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                    ヽ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ
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振り返ると、焼け焦げた建物と仲間たちの死体、そして、炭化した外套を
投げ捨てて剣を構えるレンジがいた。

恐らく、外套を強化して盾にしたのだろう。レンジが無事だったと安心するが、
彼の視線の先にいるメビウスの竜騎兵たちとその飛竜を見て、やる夫は
総毛だった。さっきの炎の正体はこいつらか。数は三人と三騎はいる。
彼らは空から地上に降り立ち、死体を検分しているところだったようだ。

「ああ、やる夫か。お互いしぶてえもんだな。大丈夫か? 顔とか焦げてるぜ?」

ちらりとこっちを見て、レンジは口端に笑みを浮かべる。

「レンジ」

「うるせえ、さっさとここから離れろ。そんなんじゃ歩くのが精いっぱいだろ」

「でも、それじゃレンジが」

自分が涙声になっていることにも気づかず、レンジに呼びかける。
一緒に逃げよう、そう口にしようとするも、舌は鉛のように重く、動かない。
ふらつくレンジの背中が物語っていることは、頭の中では理解できていたが、
心が追いつかなかった。

ここでレンジと一緒に死ぬか、レンジを置いて一人で逃げるか。
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6267: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:40:53 ID:/1tY2dxE0

        ||:::|  |   ,.'´ ̄,、: : : `ヽ、  ))
        ||:::|  | //´: : : |:ヽ: : : : : : `<.
        ||:::|  | ;'/: : : : : |: : :\: : : : : ヾ.``
        ||:::|  | i':/: : :!|: :|:|: : :|l:ヽ._;i: : : :ヽ、
        ||:::|  | !:|: :|: |ム:|lハ: : ト、:ヽ.:! : : ト.``
        ||:::|  |'l:ヘ: i: |rt:ォ`lヘ.:lィォヽ:|: l: :| . !
        ||:::|  |.'V.ヘト|     iヽ /:|: lルi ./
        r'.||:::|  |. .l lハ:|、  ,. _',  ハ;ハノ /./
      ,:' . ||:::|  | . l 丶ヘ ー '/ |. . /,ノ
       !. . .||:::|  |ヽ.l   ヽ `7´ |  _ヽ/.(
      l、. ||:::|  |. . | /iトヘ._/ィ´. .〉)'           お前はどっかで隠れて休んでろ! 
   ,.‐.-、ヽ. .||:::|  |. |ノ'´. . |ヾ::ー:r' |`.'´|'
   l. . . . ,.l, .||:::|  |、.!>ー'| ヘ:::j | . . !            俺はこいつらを叩き切ってから行く!
  __j,.- '/l|,.||:::| |.ヽ. . . .|  il:ヽ.l .イ
/ . . . . . .j ,|!.||:::| |ヽi、. . |  jヽ.::ヽ:'i             足手まといなんだよ、分かんだろ!
. . . . . . . . l ,ハjj::::|  |`ヽ.j . . |  / /iヽ._::;>
. . . . . . . . | | |'^:、|  |、  〉、ノ、 ' ,ノj .〉:::ノ::ヽ、
. . . . . . . . | Yj::::::||  ! ヽ'./∨ ´ /.'´.i、::::、:,.ィ:!
. . . . . . . . i:::!:;ヘ:::l!_,/| ,イ| /   ! . . |i`Y ヽィ
. . . . . . . . l::,、!|/、>'ー'/::| j、ー 、|. . | `^ '´
. . . o. . . ._>、:l j|:ヽ: >:/:::/ /ヽ  | . . |
;.',´ ̄ ̄ヽ ヘ`:j:::/´:!::/'´:::::::i   | . . |
/::::::::::::::::::∨ゝ.,.- 、'ノ、::_;.::::|   ! . /
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どうしてレンジが自分を逃がすために、満身創痍の体で敵に立ち向かわねば
ならないのか。それはレンジのみが知ることだろう。

だが、彼は命を賭して、自分を逃がそうとしている。

竜騎兵たちがそれぞれの飛竜に戻り、飛竜が背中に跨った主に応えて咆哮する。

「行け!」

竜の雄叫びとレンジの声が引き金となり、やる夫は満足に動かない足を引きずる
ようにして彼らに背を向けた。どうか生き延びてくれ、と根拠も希望もない願いを
何度も口にしながら、木と人の焦げた匂いで一杯の路地から逃げ出した。
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6268: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:44:05 ID:/1tY2dxE0

         _ ノ゛,, ;、、、 '⌒ゝ、 ',
       `┬;;;:::┬′   ィ===yl
        ⌒゙''''''´"        }
     l!            u   ./
   i! |l     /´   |   ゝ /
\  l| l      ゝ、____人_____ソ
  ` .、  ι     、::::::::::ノ/
   :ミ:ー.、._        ̄  ``'''ー-、

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┃system message
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最早当てなどなかった。ひたすらその場を離れようと、歪んだ剣を杖にして歩いた。
部隊は全滅し、生き残ったのは自分だけ。できることなどあるはずもない。

ギルガメッシュは自分が神を討つ手段だと言ったが、見当違いも甚だしい。
意気込んで敵の本拠地に攻め込んだ結果がこのざまだ。

足が再生し終わったのか、足取りが少し軽くなる。
自身の体の頑丈さに呆れ、そして憎くなった。
どうしてこうも、自分は何もできないのだろうか。仲間の死に際でも、
ただ自分だけが逃げ延びた。

負傷が減ったことで、感じる余裕のなかった精神への負荷が募りはじめた時、
頭の中で自分の名前を呼ぶ声が聞こえた気がした。
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6269: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:46:11 ID:/1tY2dxE0

                                      __/ニニニニ _´ニニニ`_ 、          ヽ
                                     Y´ニニニiニニニニ/ニニニニニニ\           }
                                       ノニニニ人ニニ,/ニニニニニニニニ丶       ノ
                              _ -‐.... ̄<二ヽ_/ニニ__/ニニニニニニニ  -‐……`‐--‐ ´       ヽ
                             ´   __ :::::::::< ̄ ヾ´ニニニニニニニ _´ニニニニニニ`___、.          i!
                        /   //////>、:::::::`¨ 人ニニニニニニ,/ニニニニニニニニニ\       ノ}
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                        _人_   ....:::::::::::\\ノ-=二二=-... _ニニニ ''
                     Y⌒   ´-‐_ニヽ ::::::::::::::_i´    ::::::::::::::::::::`ヽ/
                    八 、 __ ,ィ≧,、ニニゝ、__/Γi!     .::::::::::::::::::::::/
                 __,ゝ二ニニi  i i ̄ ̄::}i  ノ ,ノ     :::::::::::::: ´ ̄ ̄ ̄ ̄ フ
                  Y´ニニニニ,|  | |:::::::::::八 r イ  __ _::::::::::/ -―――‐<
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              ´    , ´ ヽr‐ 、 r‐|  | L∠ / ,/    ´ ̄ ヽ_人__ -‐ ::::::....
         /  __   \  八  \\ ヾ-ィ´ ∠ __,/       八/{::::::::::::::::::::::::::::..............
        /.     \ ̄ ̄ i「 ` 、 ̄   `¨´   .:/∠ -‐   ̄  {::::人::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.............   _ -‐
.     '       ヽ _八__ ヽ__   '  .:/          人:::::: \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::_ ...-‐...´
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とうとう幻聴まで聞こえだした、と自嘲気味に嘆息を零すが、どうも違うらしい。

声の主は上を見ろと言ってきた。
言われたとおりに空を仰ぐ。頭上では飛竜同士の空中戦が続いていたが、
黒い飛竜、つまりはアラディア側の魔道飛竜の数が大分減っていた。

「おい、そこの兄ちゃん! 大丈夫か!」

男の声がはっきりと聞こえた。眼球に魔力を通してから空に目を凝らすと、
こちらへと滑空してくる一騎の黒い飛竜が見えた。

点ほどの大きさだった黒い飛竜は徐々に本来の体格を露わにしていき、
やる夫の目の前へと降り立った。

「やる夫さん!」

今度は聞き慣れた女性の声が耳に響いた。
まさか、そんな偶然、と思いながらも、飛竜に跨った竜騎兵の後ろに佇む女性を見る。
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6270: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:47:13 ID:/1tY2dxE0

       {             ト、     ,>、  |    |
,     {  ',       |   | 'x;≦==ミ:,,\    |
'   {  」_ ハ.  {     ト、、_,xf{Z''"´    `ヾ;;,、 |
   '.   `≧ュ、、   | \〃    _     ヾゝ|
.    \ |〃⌒ヽ\ |   \!  {い      /ノ
\    `トi{  n   \      'vソ    /  |       その傷はどうしたのですか!? 他の部隊の兵士は!?
     \ヽ. `’                  |
. \  {  \ ,,_,.           _     _,.     |        
\{ \ ト r‐-ミ   ,         `¨¨´       |
    |\  ハ   く             u.   |
    |  ヽ|八                        |

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見間違えるはずもない。小柄な軍服姿の女性はアンゼロットだった。
アンゼロットはやる夫を見るや否や、飛竜から飛び降り、倒れ込みそうになりながら
も前のめりで駆け寄ってきた。

「みんな、やられちゃいました。この先に、敵の飛竜が降りてきて」

状況を説明しようとするが、喉も舌も上手く動いてくれず、言葉が途切れる。
落ち着いて、とアンゼロットの両手が頬を包む。

「とにかく、これ以上の戦闘は損害が増えるだけです。
撤退の許可が降りるのも時間の問題です。あなたの他に生き残っている負傷者は
いますか?」

首を横に振る。言葉にするのが恐ろしかった。
彼女に、子供のような存在だと語っていたレンジのことを告げたくなかった。
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6271: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:47:45 ID:/1tY2dxE0

        {::::{   人人, ∨::::::::::::::::::::::::::::::::::/  ,'::::::::::::/!  /'  i|                 /
        乂:\.   \:\∨::::_::::__:::::/   ,.:::::::::: ' i! /   i|                /
          ` <二二_\:`/ /    ∨   ,':::::::::/  i! /     i!          /
                -‐'  ̄ ̄ ̄≧''フ/  〈_::::::/  i!/     i|         /
             /〃〃 -‐_´__/ 乂_/ヽ/_/   }'       i|
              '' ´..:´:::::::二-‐'\ __ ノ /   /       i|.       /
              / / /::::( `/ _,,.. ― 、 _,. -‐/   /         |.        /         
          / / /::::_ -‐ ≦___/   /   /        |      /
.             / _j/      <    //    マ   /        |       /           /
           乂>´            `ー〈〈    ヽ {          ノ     '              / _
          〈          __∧ヽ,/{ ̄i  マ      /   /           ,//´
.             ` <       {   人 ∨ 人 ヽ ヽ _  / `¨¨¨´            //
.                ` <   /__マ'´ i}/   ,/ ̄/    /、                   / {
                 `¨¨/:/::/`ヽ/i   / {  ヽ.   〈  \             _,. イ  ∨    /
                   {::{、:ゝ'ノ i} !  /  \      ヽ  ヽ___  -<´  |__  ∨    }
                   乂 `¨  〉,| ,/     \    /   }   }  `ヽ ヽ   ヽ. ∨  〈
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「話は済んだか? なら、さっさと行くぞ。ぎりぎり三人までなら乗れるはずだ」

竜騎兵が竜の背をばしばしと叩く。その声にも、どこかで聞いた覚えがあった。
彼は確か、以前自分とアンゼロットに話しかけてきた、ナノハを敵視していた
竜騎兵だったはずだ。

「行きましょう。とにかく、ここから離れないと……」

アンゼロットに連れられ、飛竜へ走り寄る。
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6272: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:48:03 ID:/1tY2dxE0

                 (⌒ヽ
                {⌒ヽ  ヽ
                ヽ  ヽ_}
             / ヽ ヽ   ト__
               〈    \  ̄ / l
             \   \/  l
          =ニ;:;:;:;:;:;:; \     /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
       三;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\    〈;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;
     ‐==;:;:;:;:;:;:;:;: '´    \  \`   ,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
     ニ三;:;:;:;:;:;:;:'          \  〉   ' 、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
_ ≦三二==─フ  ̄ ̄二丶   ̄  __ _ __________
/ /    '´  //三≠  ̄ ̄  ̄ ̄ 〈 ヽ/\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
  i 三──   //三/ Ξ         \    ヽ
  | 二二二ミヽ| |三  ≠         r‐'   ∧  l
  | 三 ̄Ξ=i| |三 ≡=         \  { `ー'
  乂 三三  ヘヘ乂 ヾ           `ー'
_ 三=─-   ヘ人≧ ___ ________\\______
  三=───≧─三二二ラ'    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄,:':;:;:;:;:;\\;:;:;:;:;:;≧ ̄ ̄ ̄
 =三三三三;:;:;:;:;:;:'、                ,.,.;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\\;;:;:;:;:ニ─
    ニ三;:;:;:;:;:;:;:;:;:` ,,             ,,, ;:;:゙:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\\Ξ=‐
     =ニ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:      ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:\\
        三 ,:,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;:三二\\
           =‐ =                            `ー'
                                            (⌒ ヽ  _
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                                               ゝ─'

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あと一メートルといったところだった。
火薬が弾ける音が響き渡り、竜騎兵の体がぐらりと揺らいだ。
やる夫は飛竜の背中から崩れ落ちる竜騎兵を、驚く声すら出せないまま見ていた。

いたぞ、と誰かが叫ぶ声がする。

アンゼロットを見やり、頷く。迷っている余裕はなかった。
この場に留まっていても殺されるだけだ。ならば、僅かであっても可能性がある方に
賭けるしかない。

騎手を失った飛竜に駆け寄り、その手綱を掴んだ。

ジャンヌの加護を受けるはずだった自分なら、きっと飛竜への適性もあるはずだ。
騎手がいないのなら、自分が手綱を握ればいい。

そう考えての行動だった。
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6273: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:48:20 ID:/1tY2dxE0




                            プツン
__________________∧,、________________________
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`'` ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




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だが、その考えは甘かった。
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6274: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:50:36 ID:/1tY2dxE0

― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄― -_-_ ̄ ̄― -_ ̄― ― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄― -_ ̄
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐― ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___―― ̄ ̄___ ̄―==
―― ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―  ――――    ==  ̄―― ̄ ̄___ ̄―===━
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐―   ――――    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―
 ___―===―___   ――――    ==  ̄ ̄ ̄  ― ̄―‐―― ___
 ̄――――    ==  ̄ ̄ ̄ ̄_――_━ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―=‐―
 ___―===―___   ――――    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄ ̄―‐―― ___
 ̄ ̄―‐―― ___ ̄ ̄―――  ___ =―    ̄ ̄___ ̄―===━___ ̄―
__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐―   ――――    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―
 ̄___ ̄―===━___ ̄―  ==  ̄ ̄ ̄  ――_――__―_____ ̄ ̄ ̄ ̄‐―
  ___―===―_―    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄ ̄―‐―― ___
  ――――    ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ―― __――_━ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―=

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それは懐かしい感覚だった。
失われて久しい五体の感覚が、急激に呼び起されていく。
手綱を通して自分の神経が竜と繋がり、流れ、食われていくのが分かる。

最初は熱を感じた。
温かい、などという優しいものではなかった。
血管が焼けている。皮膚が燃えている。骨髄に針金が通され、内臓が爛れる。

痛みだった。

途端に視界が奪われ、意識が遠のいていく。
耐えられなかった。久々に痛みを感じたということもあったが、それ以上に、
瞬時にあらゆる拷問を受けた精神が早々にギブアップしてしまったのだ。

ああ、なるほど。適性のない者が竜に乗ろうとすると、最悪発狂死に至ると
いうのはこのことだったのか。

それもいいかもしれない。この痛みから解放されるのなら、それがいい。
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6275: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:52:18 ID:/1tY2dxE0

                     / .イ  } }r≧s。.  ,. ≦/ /_‐\ ‘,
                 //    }_ノ‐、-ャニニ)r '7 /./ニニニ\‘, {
                    '´   .ィ/⌒i、ノ, } }´(*)`ヽi/ニニニニニ _{
                 /   r≦ニ7 i´ ノ  ``}: :/}: : : :}ニノニニニニニ‐
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          /   /   r<⌒'く⌒>'⌒i' ,.イ.ノ/ニニニニニニニニ7∧
         /   /   /i_ノ⌒'く⌒ヽ :レ'‐}´i{ニニニニニニニニ7/ ∧
.      /   /   /ニ‐「  __ノ  :}/ニニ}ニ{ニニニニニニニニ7 /.:∧
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   /          {ニニニ‐、ニニニニニニ}/ニニ⌒ヾー==彡 ‘,  ./ ∧
.  /        /    , {ニニ=-‐ \ニニニニニ乂ニニニ/ム       ‘,   / ∧
  ′  .,'  ./    ′ ̄      \ニニニニニニニ/ニニ‐_           / ∧
     /   ′  ./         ./ニ\ニニニニ/ニニニニ‐_    }    / ∧
  i   /   :{   ′         /ニ‐/{\ニニ‐/ニニニニニニ〉、   :}    /
  | /    {:   {        ィ乂ニ/ニ‐{ニ≧≦ニニニニニニ/ニ\ .ノ      ‘,
  Ⅳ    {:   ‘,   _ -ニニニニニ‐{ニニニニニニニニ/ニニニニ\    }
  {i.     {     _ ‐ニニニニニニニ‐人ニニニニニニ‐,.イ二ニニニニニ\  }    }
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だが、そこで、誰かの声が意識を掠めた。
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6276: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:53:55 ID:/1tY2dxE0

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  マ ∧
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.    \∧_  _.〉|
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     くi:∧':、_/ l :∧               | /|  ̄  ./:弋_/弋弋人/ ̄ ̄,,-―――-、    )>
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冷たい風を頬に受け、目を覚ます。
手には何も握られていない。慌てて剣を探すが、手が地面につくことはなく、
翼がはためくような音がするだけだった。

何かがおかしい。まず、目線の高さがおかしい。

それに、尻の付け根あたりに慣れない感覚がある。
生まれた時から生えていたかのようなそれは、やる夫の意思で右へ左へと振る
ことができた。

「やる夫さん! しっかりしてください、やる夫さん!」

誰かが背中で暴れている。
子供が背中に乗っているのかと思ったが、そこでようやく、やる夫は自分の身に
何が起こったかを理解した。

自分の意識が、竜の意識に呑み込まれたのだ。
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6277: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:54:47 ID:/1tY2dxE0

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             //   戈、      ./!/!//! >=く.,ムイ,,'´  ̄ ̄ ̄ 〉 .', ∧ヾ∧/>
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            /.:,'       .ノ    /!/i/:i/i/iく三≧=:-、,'/           〈    .∨∧.i戈人!、
              / .,'     / ,,<三:!/:!/./!/:! >― 、 /,,_.          )     ∨∧ /!∧i|
          / ./     ,ムイ,,  .l∨∨!/∧/《 ̄`ヽ/´/三三≧x、     /`ヽ  ..:∨∧ リ∧!
            / ./     _,.ノ/././  !:》!.:| 》'!.,ノ! / ̄>=- ,,―-、  ∧   ∧       ∨∧! ,り
        / ./    // Y!/j/jj、,人_V∨l]///>-.、   _   .\ ∧ . ∧∧       ∨∧|
          / ./.     ,' ./ 弋!戈リォツ!.,人,レ':l/!./>-.、   、 .:`ヽ、:!川 ,/ ∨:', .       ∨∧
.         / ./.:   .,' /     .`Y笑≧x、i ∨!/:i´ ̄ ./`ヽ  \ _.∧!;ノ´   ∨',      .∨∧
       | l     ,'./     .リ>込戈_人`ヽ、.,ノ`ヽ:戈=-.、j三>''.\\   ∨i       l  .!
       | |    .//     ./.,'  `ヾ>、 `Y´:ハ、r< ̄`/`ー― - 、\\ ..Ⅵ       .!  |
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体が重く、鉤爪が錨のように地面に食い込んでいる。
これはもう、疑う余地はないだろう。

背中で意識を失った自分の体を揺さぶっているアンゼロットに対し、
念話の要領でなんとか対話できないかと試みる。

「……やる夫さん? なぜ、竜からやる夫さんの声が?」

「分かりません。でも、これで飛べるはずです。しっかり捕まってて」

動揺を滲ませながらも、アンゼロットはやる夫の、もとい竜の背をぺちんと叩く。

「何をしたかは知りませんが、馬鹿な真似はよしなさい。今すぐ起きなさい」

半ば予想していた答えに苦笑しながら、やる夫は翼を広げ、地面を蹴った。
翼を上下に、扇を振るように動かす。風が巻き起こり、その風を受けて
ふわりと体が浮き上がる。
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6278: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:55:14 ID:/1tY2dxE0
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どんどん高度を上げ、町を離れていく。

翼となった腕を広げ、やる夫は大空へと羽ばたいた。
風を切り、舞い上がる。不思議な高揚感が胸に渦巻く。
鳥になった夢を見ているかのようだ。

空には無数の飛竜が飛び交っていた。
アラディアの魔道飛竜とメビウスの飛竜が、炎と光弾をぶつけ合いながら
空中を縦横無尽に飛んでいる。その流れ弾を、アンゼロットが展開した
光の壁が音もなく弾く。

勢いのままに滑空し、時折羽ばたいて高度を保ちつつ、敵の少ない方向へと飛ぶ。
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6279: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:56:49 ID:/1tY2dxE0

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「あの時の子供か」

ぞくり、と背筋に悪寒が走った。無数の刃物を背後から突きつけられているような
殺気が、それだけで心臓を握りつぶそうとした。
聞いたことのある男の声が、竜に飲み込まれたやる夫の意識の闇に響く。

忘れもしない、最初の会戦の時のこと。
かつて恐怖から逃げ出した銀色の飛竜が、やる夫たちに向かって滑空していた。

「鬼神……」

アンゼロットが息を呑む。

「よお相棒。裏切り者の中にガールフレンドでも見つけたか?」

いつの間にか、銀色の竜は二騎になっていた。
鎧には鎖に繋がれた赤い猟犬のエンブレム。
数々の戦場で自分たちを襲った歴戦の竜騎兵。

円卓の鬼神と片翼の妖精。
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6280: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:58:20 ID:/1tY2dxE0

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,/./      /  /    ./  ./   ./     ノ:{   j}     :l|:i|        |                   il|!`¨´⌒
../      /   /    ./  ./   ./ j}    ) {!  j}       i|        |                 :i:l|!/ ノ¨´
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     /  /    ./  ./   ./  /  j{ j}  しイ                   |               ,.l:|:l|㌢"¨
.    /   /    ./  ./   ./  }i |i /iし′                     |        i|      。ィ才i:|:l|   /
   /   /    /   /l|  /   ).il:|/ }i                     i|        i|     ,ィ劣才:|:l|i  /,イ
  /   ,i′   /  ./..゙l||jl}    `|:|  `Y                      l|        l|.     て⌒`゙i:|:l|i ,ィ´ソ
. /   /    ./  ./. !l|l' }!   j{  i|  j{ }_                   il|        l|   ,ィ才´,ィ     /  j{ ,
./   ./..  ノ!      ノ.l| {i   ノし,. i| / し′                     il|        l| そ⌒`,ィ㌢´   ノ  ノ /
′ ./.... /イ´   Y´ . l| . j} j}   !i|lイ                        il|l      ,.ィ||て_,ィ劣´   ,ィ才´ て
  /... j}' 彡'    j{ |    ,イ j}..  !i|l'                      :i:l|l    ィ才||才㌢´    ,ィ才㌢⌒`
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「悪いがここで墜ちてもらう。恨めよ」

二つの巨体が翻り、迫る。
アンゼロットが魔力を練り固めた剣を展開するが、それよりも早くニ騎の
飛竜の鉤爪がやる夫の体に食い込んだ。

内臓が穿り返される。悲鳴が咆哮となり空気を震わす。
苦痛にもがくやる夫に、銀色の飛竜はその咢に蓄えた炎を浴びせた。
辛うじて翼で背を防御しつつ、錐揉み回転しながら落下する体を
再び気流へと乗せて滑空する。

銀色の飛竜が交差しながら飛び、アンゼロットが放つ魔術砲撃を躱しながら
火球を放つ。

直線的な火球は、やる夫自身に向かって放たれたのではなく、
やる夫が向かっていた先へと放たれていた。
火球が光の壁にぶつかり、包み込んでくる。アンゼロットを乗せていなければ、
今頃は黒焦げになって地に落ちていただろう。
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6281: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:58:47 ID:/1tY2dxE0

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     .´`ヽ、:∨   _!` 、\            ∨   ,,'´ ̄ ,,― 、r='  ̄ヽ        ./
        ∠二! ∨! i!ヽ、ノ   ̄|:〉             !  /   /,,===个===イ     _/_
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        l/ ̄\ _  /-、r-、 |             ∨  _,,<_ヾ_人  ノ   /
            \∧__\/!.|_   ,         ) /!ー― 、`ヽ、`   /
              ∨ .|\∧/!//_,,/_   _/_| ',::::、  .`ー、>-、/                            ,
.               、 >∨____.∨ー=.イ /_,,'´   ./,'/ ノ  ,, .,,ァ                 __ ,,/,,、    ./:!
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            _>- 〈〉《_,. -、   ! \_./`ーイ/ ..,;':::ノ / . // ,./             ,,<爻ー<!<二>'´≧=≦≧>〉.|.:ト.、__
             \ ヽ`戈ァ、_/  \_!_ノ    /:, ' ´ ./  //   {           /l/l/!_!≧=≦こ><三>――/ |∧.:ノヽ<
           /_,/ 天=-、!〉   ` 、_ 、   !、__ ./   .//   戈、      ./!/!//! >=く.,ムイ,,'´  ̄ ̄ ̄ 〉 .', ∧ヾ∧/>
.           / ̄\l|リ ∧Y     : :  、: : :L:::ノ}!)`ヽ|  ./゙,'      人    /!/i∧/j/こ式≧x゙く//         ,>- ';.゙∧ /戈!、
           : :!i  丶:'^ヽ: : :、)ヽ. .そr‐r-.、 /`!_人l|.../.:,'       .ノ    /!/i/:i/i/iく三≧=:-、,'/           〈    .∨∧.i戈人!、
           、:ノj、   丶ノ: : :く__ノ、.' `ヽ、 弋  ∨ ./ .,'     / ,,<三:!/:!/./!/:! >― 、 /,,_.          )     ∨∧ /!∧i|
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           ,へ、: :{、_     丶: : ノ::::{´⌒)}ア ,ィ=、   . ,' ./ 弋!戈リォツ!.,人,レ':l/!./>-.、   、 .:`ヽ、:!川 ,/ ∨:', .       ∨∧
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6283: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 20:59:36 ID:/1tY2dxE0
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勢いをつけて体を翻し、巨体を反転させるが、それでも二騎の飛竜は
食いついて離れなかった。炎と鉤爪が上から、後ろから襲い来る。
今のやる夫は、ただ頑丈なだけの的に過ぎなかった。

横から体当たりを受け、姿勢を崩す。アンゼロットの悲鳴が、
やる夫の臓腑を締め付ける。

銀色の飛竜が立て続けに尻尾の一撃を見舞おうとする。
そこに、一本の槍が飛んできた。

やる夫を蹴り、その反動で飛び上がり回避すると、銀色の飛竜は
槍を投擲してきた者たちを視線だけで捕捉した。

「お嬢ちゃんたちを墜とさせるな!」

その叫び声を皮切りに、他の魔道飛竜隊の生き残りが
一斉に鬼神と片翼へと襲い掛かった。

その数は数えるほどしかいなかったが、それでも恐れる様子もなく、
死の化身とでも言うべき二人組へと突進していった。
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6284: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:04:07 ID:/1tY2dxE0

////////////// 、 /////ヾ、
///////////////\ヽ⌒´ ` 、ヽ
///////////////_(` ' ノ ィ- 、ヽヽ
///////// /  ̄  `> 、`ー"、`ヽl
////////           ヽ、  ゝ      各騎、散開! まとまって飛んだら一気に落ちるぞ!
'//////               、.ム /
////,イ             ヽ マト、        絶対に背後を見せるな!
/// l                /i/iハ
//  .l          / /\l ヽ
/l  l、        _/ /\ヽ   l
',l   l `――― ´_ イ  ヾ l l ,/
,ヽ, ' /ニニニ、ヽ./- 、ヽ    /'"
'/i メ,⌒/ /` ー- ニ __ "

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銀色の飛竜と火球を飛ばし合っているのは、大鷲のエンブレムが鎧に描かれた
魔道飛竜隊だった。

その後ろに肉薄しているのは、黒い四騎の飛竜隊だ。

どの竜騎兵たちにも、やる夫は会ったことがあった。
かつての敵と思っていた彼らが、自分と同じ勢力として、
目の前で戦っているのはどこか非現実的な光景だった。

その彼らの声が、やる夫の意識を現実に引き戻す。

「こいつらを行かせたら今度こそ全滅だ! 絶対にここで仕留めろ!」

ガルーダ隊を筆頭として、魔道飛竜隊たちが銀色の悪魔たちへ果敢に挑んでいく。
だが、彼らが号令をかけるその間にも、一騎、二騎と撃墜されていた。
魔術という攻撃手段を得た魔道飛竜隊ですら、彼らの異常なまでの
戦闘能力には敵わないのだ。自分があの中に飛び込んでいったところで、
撃墜された彼らの後を追うだけだろう。
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6285: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:08:26 ID:/1tY2dxE0

      /     ,ノ./      /  /    ./..}i  }i.     |jし′
.     /     / /      /  /    ./  }i  }i      i|゙/
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.   ,/./      /  /    ./  ./   j} {i   `ヽ、   |:i|!                            i|
   ,/./      /  /    ./  ./   j} j{     j} }   |:i|!                            l|
.  / /     /   /    ./  ./   ./  ) ノ|    j}し'  l:l|:i|!                          il|    て
 / /     /   /    /   /   ./   〃:j|   _)   :l|:i|        |                  il|!  ¨´そ
,/./      /  /    ./  ./   ./     ノ:{   j}     :l|:i|        |                   il|!`¨´⌒
../      /   /    ./  ./   ./ j}    ) {!  j}       i|        |                 :i:l|!/ ノ¨´
"     ./   /    /   /   ./  ノiしイ, j} 廴  )                  |                廴.i:|:l|!∠㌢"
     /  /    ./  ./   ./  /  j{ j}  しイ                   |               ,.l:|:l|㌢"¨
.    /   /    ./  ./   ./  }i |i /iし′                     |        i|      。ィ才i:|:l|   /
   /   /    /   /l|  /   ).il:|/ }i                     i|        i|     ,ィ劣才:|:l|i  /,イ
  /   ,i′   /  ./..゙l||jl}    `|:|  `Y                      l|        l|.     て⌒`゙i:|:l|i ,ィ´ソ
. /   /    ./  ./. !l|l' }!   j{  i|  j{ }_                   il|        l|   ,ィ才´,ィ     /  j{ ,
./   ./..  ノ!      ノ.l| {i   ノし,. i| / し′                     il|        l| そ⌒`,ィ㌢´   ノ  ノ /
′ ./.... /イ´   Y´ . l| . j} j}   !i|lイ                        il|l      ,.ィ||て_,ィ劣´   ,ィ才´ て
  /... j}' 彡'    j{ |    ,イ j}..  !i|l'                      :i:l|l    ィ才||才㌢´    ,ィ才㌢⌒`
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そうして狼狽えている時に、片翼を赤く染めた飛竜の視線を感じた。
小さな動きではあったが、がちり、と銃口を向けられたような寒気が
背中に走った。

アンゼロットの結界が展開され始めるが、それでも間に合わない。
回避しようと思った時には、既に目の前は炎の橙色に包まれていた。
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6286: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:08:40 ID:/1tY2dxE0

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6287: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:10:37 ID:/1tY2dxE0

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  ___―===―_―    ==  ̄ ̄ ̄  ――_―― ̄ ̄―‐―― ___
  ――――    ==  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ―― __――_━ ̄ ̄  ――_―― ̄___ ̄―=
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白い視界の中、意識を取り戻す。
頭と胸部が浮遊しているような、いつもの感覚が戻ってきていた。
どうやら、飛竜との精神の接続が切れたようだ。

周囲の輪郭が形を帯び始める。
散乱した瓦礫と、派手に穴が開いた壁。
そして、倒れ伏した飛竜と、その傍に横たわるアンゼロットの姿。

息を呑み、すぐさま駆け寄る。
呼びかける、が、自分の声が聞こえない。
いや、違う。何も聞こえない。自分の呼吸も、足音も、何も聞こえないのだ。
おまけに、今まで残っていた頭部や胴体の感覚までも失われていた。

動揺しつつも、アンゼロットの体を抱き起す。
体温も鼓動も感じ取ることができないため、生死の判断もつかない。

きっと生きている。大丈夫だ。
そう自分に言い聞かせながら、一旦アンゼロットを飛竜の背にもたれかけさせた。
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6288: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:15:11 ID:/1tY2dxE0

         , -─‐──‐-、
          /       ゚    ヾ)
       / ;  ゜      °  \     /⌒ヽ
      l  U      ;       l    /   r l   /⌒\
       |         u.    ;   |ー‐‐--'   f、l__/     ヽ
.      ! u.         ∪      ノ   ,;         /  ヽ
        ゝ          :: i'′⌒ ̄ ̄` ̄ ̄ ̄ヾ`ヽ  /ヽ   ト、_
          ヽ      "'__ ,ノ ヽ、____"___,、___ソノノ  {____ノ
  ´ ´ `゚~゜´^" ´~`゚゜`⌒ ´"´´゚^゚^ ~゜゚`´^゙^ ^´'゜´^゚´ '゚^´゙ ^ ゚゜

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「…えるか……聞こえるか、やる夫」
途切れ途切れの念話が頭の中に響く。思考だけで応答できるのは、
この状況では不幸中の幸いと言えた。

こちら第二前衛中隊のやる夫です。応答を。

「妾だ、ギルガメッシュだ。今確認したが、お前が墜落したその建物。
敵の神殿内部だな。対空攻撃も掠っていたようだが、無事か?」

言われて、飛竜の腹を見てみると、焦げ跡の他にも串刺しにされたような穴が
ちらほらと見て取れた。

「とにかく、そこから脱出せよ。貴様一人では何もできまい。
いいな、何が何でも逃げ切るのだ」

そこまで言って、念話は切れた。

そうか、自分は神殿に落ちたのか。
ぼんやりと考えて、すぐにはっとした。ということは、敵の本拠地ではないか。
まずいぞ、すぐにでも敵の大群が押し寄せてくる。

そうすれば、ここで意識を失っているアンゼロットも巻き込まれる。
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6289: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:15:48 ID:/1tY2dxE0

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                      :/ヽ#;;;、/┳ .\:
               :/(○) (;;;;)  ┳ \:
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               :\;;;;; `⌒´ ;;;;     /:
                   :i         ⌒\:
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                   :|┃;; |   ┳;;; _/  /:
                 :/|;;;;  |ー‐-、/  く  (´ヽ:
                  :{_ !、_,l    |   `¨  |:
               :)ソ(___j)──┤       |:
                         :ゝ-i──i-´:
                             :\_/:

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散らばっていた木片の中でも、尖っていた物を拾い上げる。
いずれにせよ、素手よりはましだ。強化すれば鈍ら程度にはなるだろう。

覚束ない足取りで部屋を出る。
扉を開くと、神殿の名に恥じないような、赤褐色を基調とした荘厳な風景が
広がっていた。幾何学模様のカーペットが張り巡らされ、メビウスの国旗が
垂れ幕としてそこら中にかかっている。ここはメビウスの国を象徴する建物
なのだと感じさせられた。

そして、その絢爛豪華な間取りに佇む、大勢の兵士たちへと視線を移す。
流石に神殿の守りまでは任せなかったのか、兵士たちは全員メビウス兵のようだ。
武装は基本的に剣と槍、時々斧。鎧を着込んでいる。馬と竜はいない。
数はざっと五十はいるだろうか。と、冷静に分析してはみたものの、どうしようも
なかった。不思議と笑みが浮かぶ。呆れと諦観の混ざった笑いだった。
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6290: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:19:32 ID:/1tY2dxE0

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    ,lゾ  .〃   .,〃 ./  ,i";;;;;;;;./     ./     ,r'./     .,    ._/;;;;;;;;;;;;;;,,,./ ゛       . _,,-へ.iii
   .〃   ./l   、〃 ,ir / ;;;;;;; /    .,〃    .,ノン′  .,,ir'"  _/丶;;;;;;,ン'″    ,, ;;二二r‐''''、;;;;;;;.
   〃  .,ノ~;/  .,/./ .,ノ/ / ;;;;;;;;;;;;l  .,.. |″    ,i'ン"   ,ii'" .,..-'";;;;;;;;;;;,/゛  _,,,,,__ ,ir!'"       `'''″
  .il″ / ;;;;;/ ,ノ゙''゙,i彡'゙i/'";;;;;;;;;;;;;;;;;゙‐''"./     ,-/'" ,.. ;;/!"._./ ";;;;;;;;;;;.,./ _..-、., />'"゛
. ,i|′ ,/;;;;;;;;l゙./ ;;;;;;";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;'|  ,.il!ン''/...-彡 '',゙..-'";;;;;;;;;,..;;二―'",,/'!'"
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/r'";;;;;;;;;;; 〃;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;>'";;゙´,iテ '´;;;;´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;フ"      _,,,...i;;;;iv=ゞ´
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体が斬られ、貫かれる振動だけを感じながら、ひたすら歩く。
しばらく歩くと、階段が見つかった。敵兵に纏わりつかれながら、なんとか
そこを降り、さらに下を目指す。

敵兵たちが何かを叫ぶが、聞こえない。もしかしたら、とても重要な情報を
口にしているかもしれないが、耳がおしゃかなのでどうしようもない。

やがて、一番下まで来たのか、階段が終わり、広い一本道の通路へと出た。
燭台の炎に照らされた通路は洞窟のようにも見えた。何かの倉庫だろうか?
まあ、確認すれば分かる。ぐらつく視界の中を進もうとして、急に視線が低くなった。

足がダメになったのか、と下半身を見やる。正確には、見やろうとした。
上半身と下半身が分かたれていた。白い脂肪や筋肉の筋などで若干
繋がれてはいるものの骨は砕かれていた。

改めてみると、体中の至る所が切り裂かれ、穴だらけになっている。
正直、正視できたものではなかった。
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6291: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:20:08 ID:/1tY2dxE0

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┃system message
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腕を動かして、這いずりながら移動する。
追いかけてきた敵兵たちが自分を見るや否や斬りかかってくるが、
やっていることは不毛な運動にしかなっていなかった。

それらを無視し、ひたすらに前へと進む。
やがて、通路の一番奥へとたどり着いた。観音開きの厳重な石扉だ。
ただ、不思議な点が一つあった。幾つも錠と閂があるにもかかわらず、
なぜか右の扉の下部分に、ペット用のドアのような小さな押戸があるのだ。
牢屋の食事を囚人に届けるためのポストにも似ている。

ともかく、好都合だ。押戸に手をかけ、中に入る。
腕も生えたのだ、しばらく休んでいれば足も生えてくるだろう。
それまではここで隠れていよう、と朦朧とする意識の中で考えた結果だった。
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6292: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:21:10 ID:/1tY2dxE0

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 .ヽ\.ヽ;;;;;;゙V;;;} ,!.l       ./ ;;;;;;;;;.,..-‐'''''''''''ー 、;;;;;;;;;;;;;`'x  .v、`ぃ;;;;ヽ,    . l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;n.
  .ヽ;;゙'' l'、;;;;;;;;.l /;;;.!     ./;;;;;;; /  ,..-‐''ッ  ,,、`'./ ;;;;;;;;;;ヽ, ゙'.l' li.;;;;;;;\,,   .ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.l,
!、  .ヽ;;;;;゙!コ;;;,iジ;;;;│     ,!;;;;;;/_,  .!  ー゛  .lヽ l;;;;;;;;;;;;;;;;.!  l;;";;;;;;;;;;;;;\   ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;"
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".,./ ;;;;;;;;;;;!゙;;;;;;;;,,./ ´   ,i'、   .,,、 `'''、.;;;;;;;;;;;;;;;゙'、 .l;;; l   / ;;;;;;.l  ,/゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
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そうして中に入ると、湿った空気がやる夫を包み込んだ。
空気を感じ取ることなどできないはずなのに、なぜか本能がそれを知らせた。
メビウスの捕虜収容所での出来事を咄嗟に思い出す。

これは五感で言い表せるようなものではない。強いていうならば、死の匂いだ。
生唾を呑みながら、部屋の中央に鎮座するそれへと目線をやる。

そこには、巨大なボールが蠢いていた。
ボール、というよりも、ボール型の肉塊といった方が正しい。
ところどころに腕や足といった人間の面影を残しながらも、その姿は完全に
人のパーツを取って付けただけのグロテスクなオブジェとなっていた。

それをしばし見つめた後で、やる夫はとうとう意識を手放した。
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6293: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:21:32 ID:/1tY2dxE0

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                                   □

                               ・

6295: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:22:33 ID:/1tY2dxE0

       ___
       .| -、 > 、, -─-  、  , -─‐┐
       !i  >、            / i !
       i/./            < .`ヽi
       / /              V ヽ---ミ、
      , ./               i  ハ    ヽ,         やぁ。いやはや、君は見た目以上に頑張り屋さんなんだね。
      ., ,    , 、            !   i     .ヽ
      i .i.  (.' )       r,¨ヽ  |    !      Y       そんな体になってまで戦うなんて、正気を疑うよ。
     / .人    ¨        .ゝ-.'   !  八      |
   , - ノ    iゝ、    ゝ^-'      .イ|   .ヽ--ミ  ,        ともかく、おめでとう。これで君の使命は果たされたわけだ。
  ,( (    /   ≧-  ___ -- ノ  !    フ.ノ、ノ
と" ヽヽ、 .∧     /     .> "¨   Y.ト、 - "/ .ヽ
∠,   ゝxニ_ノ     .i     /     ゝ-r‐ " 、 Y"
 ゝ--- "       人_u_.u__L  ---── 'ゝ _}--'
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久しぶりの白い空間で、やる夫と謎の獣は向き合っていた。

「なんだお、使命って」

「僕が君に、そしてあの女性型の神が君に授けた使命さ。
神の下に辿り着き、殺せってね。本当におめでとう。そして、ありがとう。
これで僕も色々と取り掛かれる」

首をひねっていると、「ついでだ、色々と教えてあげるよ」と獣は腰を上げた。
ゆっくりと伸びをしながら、「まず神様っていうのはさ、君が知っているものとは
少し違うんだ。この世界の神っていうのはね」と口にした。

「どう違うんだお? 魔術なんて使わせられる時点で神様以外にいないお」

「まあね。確かに超常的な力は持っている。けれど、それらは君たち人間から
生まれたものだ。君たちの世界では、神というのは心の中にあるものだろう?
その点ではこの世界での神も同じさ。人の心から生まれ、そして育った。
君たち人間の魂を胎盤とし、そして食料にしてね」
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6296: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:24:15 ID:/1tY2dxE0

                 ハ 、
                   ': :ヽ'                , イ
                  /: : : :| ’               / /|
               j: : : : :| ヽ __      ./ /: :|
                厶-‐        ̄  、/ /: : : : :|
               , '                 \: : :|
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        /   /   ,-==-、         ___    i   \
       /     ,                   ' ⌒ヽ   |   ヽ
        /     i                     |     ヘ
.       /       、                       j       ハ
.     /       ヽ      `ー' ー '          ,イ
    /        / `  _                 / .|         ’
.   /         j     ンー‐        r‐ '    |        i
    ,            l      /            l        |        |
.   i         ,     / 、        |        |        |
== |            i    ,   ヘ      /. |       |        |
- __l            |     i    i    /   |      |        |ニ====-   、
`.ー-ミュ、        .|ミ、  |   |   /    ヽ、  r‐''ニ|        | _ - ‐ ' _ノ
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神の下に? つまり、あのグロテスクな肉塊が神だとでもいうのか?
とすれば、神の懐に行った人間というのは、あの肉塊に会いに行っていたのか?
獣の話を半分流しながら考えていると、とんでもない言葉が聞こえてきた。

「簡単な話さ。この世界ね、一度滅んでるんだよ。文明が行き着くところまで
行き着いて、その文明を薙ぎ払えるだけの兵器を作り、それが世界中で
解放された。この大陸はその中で唯一汚染を免れた島なのさ。
そしてここに生きる人々は、その末裔ってわけ」

無意識に嘆息しながら、「根拠は?」と指摘した。

「エリヌスを見れば分かりやすいんじゃないかな? 彼ら、窮地に立たされると
ぽんぽんと新技術を出してきたでしょ。それも三日三晩じゃなし得ないような
進化だ。マスケット銃からガトリング砲だなんて、何百年かかるんだって話
じゃない?」

「待て、なんでそんな名前知ってるんだお?」

「僕も神だからさ。死んだ人間たちの恨みや怒り、生きている人間たちの
恨みや怒り、そして祈りから生まれた存在だよ。さっき言った世界の崩壊で、
この世界では物理法則の制限が少々緩くてね。偶発的に僕やメビウスたちが
生まれたってわけ。まあ、メビウスとエリヌスは元々同じ存在なんだけど。
この二つは存在は二つだけど、意思と命は一つなのさ」
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6297: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:25:40 ID:/1tY2dxE0

        /    {         / | i         ___
       ,イ     ヽ      /   ト-'― ー--<二       ̄` 、
       l i 、_    `ー ニ´   └ 、          ̄` 、      丶
       ! 'ハ\  ̄`ー- ´   , -c    ヽ          ` 、      ヽ     大量の死霊の集合体、それが僕ら。
       ',  ゝ' ヽ        ヽ-'      ヽ           ` 、
        ゝ´   j. , -c             } ヽ            `ー--‐     それが祈りによって力をつけ、
      ,ィ    ,イ ヽ-'    __ノ        j  \
.     /     j     `ー'         ノ    \           : : :      加護を与え始めたのさ。
     /      ハ             _ <_     ヽ          : : : :
.    /        !  ヽ           ヽ      ̄ ̄` 、 `ヽ        : : : :     祈りがなければ、必要とされ続け
   /         !    `二ー┐       ヽ         ヽ  `ー    . : : : :
   /       l ( ̄   `´                    ヽ    ー : : : : :      なければ、僕らは消えてしまうからね。
.  i          !   ̄` ー --┐     i   \         ',       ̄ ̄
  l. .       l           ',     j    ヽ         }
.  l: : : .     . :l         ',     l  /   ヽ       /
  i : : : : : . . : : : : i        ,イ ヽ   l  i     ヽ、__ ノ        /
  !: : : : : : : : : : : : i       i      ヽ j      \          /
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「最初に生まれた神は、戦争から逃げ延びた生き残りから現れた。
土地を浄化し、生きる技術を元の世界の知識から絞り出し、竜と狼を生み出して
民草を守った。けれど、それだけじゃだめだった。信仰は薄れゆくばかりだった。
だから、その神は自分を二つに分かつことにした。与えるだけではいけない。
奪う存在がいなければならない。人間が追い詰められ、自分たちに縋るための
必要悪をその神は欲した。それがメビウスとエリヌスの国さ。
二つの国は戦争を続けつつも、実質的な休戦を幾度も挟み、情勢は安定していた。
そ、アラディアができるまではね」

「……アラディアの神っていうのは」

「僕だよ。といっても、僕はアラディアではない。こんな姿じゃ、人々を導く
英雄神としては物足りないだろう? だから、受け皿としてアラディアの神格を伝え、
それを更に民へと伝える巫女を用意した。巫女を通じて、アラディアへの信仰は
僕に流れる。その信仰を、僕は魔術という形で返した。
こうして、長年迫害され続けた信仰を持たざる者たち、蛮族たちの死霊から
生まれた僕は、アラディアを他の国と戦えるだけの国に仕立てたってわけ」
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6298: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:27:36 ID:/1tY2dxE0

     ____
   /      \
  /         \
/           \      「けれど、このままじゃアラディアは敗北し、潰されてしまう。
|     \   ,_   |
/  u  ∩ノ ⊃―)/       僕はアラディアを勝利させる必要があった。その時、君のような人間が現れ始めた」
(  \ / _ノ |  |
.\ “  /__|  |
  \ /___ /

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「恐らく、ジャンヌという神は、戦争終結への祈りから生まれたんだろうね。
そして彼女によって呼ばれた他世界からの人間、メビウスとエリヌスの因子を
持たない不純物を、僕は借り受けることにした。そう、君のこと。
旧世界の末裔たちは皆、遺伝子レベルまで彼らの加護が働いているからね。
いざという機会があっても、神がその気になれば、融解して取り込まれてしまう。
だから、君が必要だったわけ」

獣は不気味に唇をゆがめながら、こう続けた。

「ともあれ、君は使命を果たした。
後は僕がやっておくよ。君の体を使い、神を殺す。その後は、アラディアの時代だ」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

6299: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:28:53 ID:/1tY2dxE0

¨¨ ‐- . _             ,.. -‐ァ
、       `ヽ-‐…‐- ミ,.. '"    /ニ
ニ、              `ヽ.    /ニニ
ニ=ヽ                   '.   /ニニ
´   i                    :. /ニニニ
   i                  '. `ヽ.ソ
   |    x≠ミ     r==ミ '.   '.
   l   ⊂⊃          ⊂⊃  '.
  .,:′           `ー'^ー′    }  i
 人                   .:   |
´  丶              イ    |
.   /≧=-   _ .  -=≦ . ‐=ニ二ニ= 、
.  /         /     . ‐=‐ ´  i ` }
/   !     イ       {=‐{ |     |彡'
  |   |      |       `ー-|     |
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アラディアの時代。その言葉にはっとする。
そうだ、神を殺せば、竜も力を失うだろう。この獣の言葉を信じるならば、
エリヌスもメビウスの死と連動して、その神獣たちは姿を消すはずだ。

平和が来る。
そう思い、やる夫は握り拳を作っていた。

「喜びなよ、これでアラディアは虐げられる側から、虐げる側へとなる。
前時代の……メビウスとエリヌスの人間たちは奴隷へとその身を落とし、
アラディアは栄華を極め、一層神を讃えることになるだろう。
まあ、その後は腐るだけだからね。そのあたりは、メビウスとエリヌスの真似を
させてもらうよ。ああ、安心して。ちゃんとアラディアが優勢になるようにするからさ。
これからは、アラディアがこの世界の支配者になるんだ」

そして、その希望が間違っていたことを、やる夫は察した。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

6300: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:33:51 ID:/1tY2dxE0

          ____
        /      \
       ─   ─    \     ……あのさ、一つ聞いていいかお?
      (●)  ( ●)      \
      | (_人__)        |    「なんだい? ここまでやってくれたご褒美だ。何でも答えるよ」
       \` ⌒´       /
        / ー‐       ヽ
       /            `
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┃system message
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手には、剣が握られていた。ラピスがくれた、あの剣だ。

「ここまで死んだ人たちは、皆神様のために戦ってたってことなのかお?」

「うん、そういうことだね」

「なら……」

獣へと歩み寄る。これに返す答えなどとうに決まっている。
アンゼロットやナノハがこの場にいたとして、反対することはないだろう。

下↓3
1.決して許さない
2.問答無用で斬りかかる
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6301: 安価のやる夫だお :2017/08/23(水) 21:35:25 ID:YA0HptUA0
1

6302: 安価のやる夫だお :2017/08/23(水) 21:36:24 ID:6aA05MoY0


6303: 安価のやる夫だお :2017/08/23(水) 21:37:03 ID:H7VLUHo20


6304: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:40:47 ID:/1tY2dxE0

         ___
        /:::::::::::::\
       /:::─三三─\
     /:::::::(○)三(○):\
   /::::::.:::::::::: (__人__) ::::::::\   /l
   |::::::::::::::::::::::::::`::⌒´:::::::::::::::| //      カズキも……レンジも……ナノハさんの仲間たちも……
   \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::///
   /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://         みんなみんな、お前たちのために死んだってことかお?
  /:::::::::::;:::::::::::::::::::::::::::::::://
  |:::::::::::::|:::::::::::::::::::::::://
  \::::::::: ̄ ̄ ̄( ̄/
   |`ー―‐、;_;_;_;/:::::::::

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┃system message
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「……おい、馬鹿な真似はよしなよ。戦が終わるんだよ?
よく考えるんだ。ここで君が僕の言うことを聞けば―――」

「黙れっ! これ以上、お前らなんかのために、
泣く人がいちゃいけないんだ!」

剣を振り上げ、獣へと振り下ろす。全身の筋肉が咆哮する。
こいつだけは許すなと、体が、本能すらそう訴えかけている。

振り下ろされた剣は獣の体を裂き、霧散させた。
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6306: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:42:22 ID:/1tY2dxE0

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   └────────────────────────── ── ─
   ┌──────────────────── ── ─
   └──────────── ── ─
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                   -‐ァ/    丶\
                       /          \__、
                    /              \`
                    ,厶          i⌒}
                    } ,i:、       ,: 八
                     j/八丶    ,ノ}rヘ⌒       ……目が覚めましたか?
                   ,xf'⌒ア^ー く}ノ^iト..、
                     /.:.:.:.:.:{\ ノ ノ.:.:.:.:.:.:.:.`、
                  __,/.:.:.:.:.:.:.,> -く.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`.__,
                   _).:.:.:.:.:.:.:.:.{ ( ノ ).:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i(__
                  ⌒i:.:.:ィx:._.:ノ、_,.xく.:.:.:.:.:.:.:.:.:、_,.r'⌒
                    '⌒厶.,( ‐=彡' ノ、ヘ /-‐=〔_,
                _j___/{_ ,.xく    _/「 ̄___{
                 〈___{   __ /¨” ̄ { T  ___〉
                 y'^ '⌒).,_  _,.. -‐ \マ⌒'マ
               /j__ . イ       /;ヘ∨/ヘ,
              _」 '´ __/‐-     -‐ / ∧∨厶=、
             { 'て  ∧          /_,∧くnn /
               \{ / {≫x.., ___,  _,.-‐=ニア^,}㏍{
               (_ ^辷__)il}ー <-:.´.:.:.:.:.:.:く ∧⌒h
                 /´/:.:.`'ト    \.:.:.:.:.:.:.:.:`'、/マ7フ

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┃system message
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「君は……」
目が覚めると、先程の肉塊の前に、長い金髪の女性が立っていた。
いや、立ってはいない。足が少し浮いている。それこそ、幽霊のように。

「よく、戻ってきてくれました。大丈夫です。後は私にお任せください」

頭の中に声が響く。今ではもう、騒々しい戦場での念話も届かず、
ジャンヌの透き通った声だけが頭蓋に反響していた。

「待って。アラディアは……人間はどうなるんですか」

「……私にはお答えできません。人の未来は、人によって決まるべきものです。
それがどんな未来であろうとも」

その言葉を聞いて、安堵した。
そうだ、未来は彼女たちの手によって作られるべきだ。
人は人のために生きるべきなのだ。
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6307: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:44:15 ID:/1tY2dxE0

                              >     ̄ " ''  <
                            ィ  ) .{     ) >、     ヽ,
                         r j´  彡 ゝ., ,. イ  ⌒ ヽ     ヽ
                        / ⌒ =彳 rγ r ヽ)  ゞ, ,ノ  rヽ     `
                       Y (`/" ̄ )丿 (   >=ミゝ=-- マ `     i      ……言っていませんでしたが、前の
.                       ムイ/    /丿 ,´  /     マ`ヽ ) l     l
                       , ィ /.イ /( ´ し ィ   i   ', イ ノ)l     |      世界でのあなたは死んではいません。
                       | /l /-=〈:ム ^ ,.ィ升 イ ィ   } ゝ ノ|   .: ::|
                      δ l 弋ゥミマ'イ:::::::::/メノ/ l i ノ  ゝ,.イ:   .::: ::|      この世界でのあなたの肉体は滅びますが、
                      ムl  イ`丈:jマレ ´/ マz..,_`リト、ヽr へノ.: .:  ::l: ::|
.                      { l .::::l   }     ´ らミュヽ|i  `, ノ.:: .::: .::l::.::|      魂だけなら送り返せましょう。
                     /iili .::::::l  ノ      `丈:::ノノl   0::::: .:::: :::l::::::l
                     /.:: .:::::::::.             l  / }::::.:::::: :::l:::::::l     そして、彼女の魂も……
    . ⌒ヽ             /イ::: .:::イ::::::::.   、        ,'  {L ノ:::::::l::::. ::::|::ハム
   ,.. l_   ',           /´ l::.::::' l:|l::::::::. ,. `  ̄      /イ i'i'i'iハ:::::li::::::::::ソ '!i,
  {   `ヽ  }          /   l:::::'  !l !;:: ´ / `,  __,.   ≦//l .::::イ::',::::l:::l::::::::::|  `
  '    ,. -≠ 、            l::'   Y  l  ム ̄!--==≠=l .::::/" }::ハ|::::\:::::l
  ',   l     ヽ          l!    {   l   lマ ̄ ̄ゝ, .l::::/  |::::::l:::::::::ノハ|
   }y  ',      `,  _,.  .,_      >-',   lム .l|  \   l l:/   ` ,:::::::::::ノ
  ,! l   \   >-==-- 、   ̄>"/    \ l  >!l    l ノ /      --<.,______
  Λλミ===キ (       ヽ  /        `て´  \ .ノk      /" ̄     ̄`ヽ
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ジャンヌが何かを言っているが、それすらも認識できなくなりつつあった。
意識が消えていく。体の中に大事なものが崩れていく気がした。

少し、寒い。寒さなんて感じないはずなのに、寒くて、暗くて、冷たかった。
それが自分の体温なのだと気づくこともないまま、やる夫は目を閉じた。
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6308: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:47:15 ID:/1tY2dxE0

_;;;;;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭_::::::::.,_ヽll_::::::::::::::::::::::::____圭圭圭圭圭
j;;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭 ̄)  `ヽ、:::::::/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\圭圭圭
,.:、圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭_   .'ー´\   /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\.:圭圭
 ~つ圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭ヤヽ、_:::::::::::::::\|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.圭圭
   ,. -‐-,圭圭圭圭圭圭圭圭圭{ _  丶::::::::::::::|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.圭圭      …………。
     (,圭圭圭圭圭圭圭圭圭'′ \  \:::::::::\.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/::圭圭
     {;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭\   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ヽ、圭
   _;;;;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭`ー──‐-=、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ム.:圭
   j;;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!圭
    ,.:、圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭_______/.:.:.:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;{圭
    ~つ;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:圭
      ,. -‐-.,圭圭圭圭圭圭圭/:.:.:.:.:.:x──/ ̄.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:::圭
        {,圭圭圭圭圭__/:.:.:.:.:.:/:::::::::::/:.:.:.:.:.:.:____> ´圭圭
       /;圭圭圭圭圭i.:.:.:.:.:.:.:.:.:./:::::::::::::./:.:.:.:.:/圭圭圭圭圭圭圭圭
       ヽ;圭圭圭圭圭.ー─一´::::::::::::::::/:.:.:.:.:/圭圭圭圭圭圭圭圭圭
     _ノ;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭i:.:.:.:.:.:i:圭圭圭圭圭圭圭圭圭
    j;;圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭!:.:.:.:.:.:!圭圭圭圭圭圭圭圭圭
        シ圭圭圭圭圭圭圭圭圭圭/:.:.:.:/圭圭圭圭圭圭圭圭圭

6309: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:47:34 ID:/1tY2dxE0

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                                   □

                               ・


6311: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:48:48 ID:/1tY2dxE0

【20XX年6月3日】

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丶   \  |::::|ヽ   ,,,r゙~゙~;: ;: `~"~ | |                  .,l°:;: ;: : ;:ヽ,,/ ,,/i
,,、\   '\|:::.|゙''┌┐´;:: :; ;:;: ;; :; ;:;  | | ;:"゙゚゚“''ヽ,,、.,vr'゙"`:;   _,,,xr‐ :;:;: ;:;:: ;: ,/ ,/,,;;/iミミミミ
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,,;;/,,;;/,,;\,,   \,|::::|.\   ;、 `:、┌ ,| |.┴ュ ; :;:: ;: r━,┓凵vト ;:;: ;:;:   /,/,,;;/,,;;/,,;;/iミミミミミ
,,;;/,,;;/,,;;/,,\    \,|   Π ;:;; ;:: |F | |FFF] ;:   |FFf┃,i;:;´;: ;:;: ;:;:  //,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/iミミミミミ
,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/\,   \,, |::|\、;:、.;.|F | | FFF| ._,;; :;; lFF'f┃[;:  ;: ;:; , //,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;;iミミミミミミ
,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/\   \|::| || ゙、''''"''| |“"゚゙'~";;:: :;: l l ̄''|;:;: ;:;    //,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;.,;;/iミミミミミミミ
,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/\   \__l:l      | |;:.,.;┏''-_ー''' ,l゙|:::::::|     //,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;//iミミミミミミミ
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,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/ l:l━'“”“""゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゙\ミ ミ;|∇|,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,;;/,,/iミミミミミミミ
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今日は大学が休みなので、墓参りをしに来た。
老人の墓は、やる夫が拾われた寺の墓地に建てられていた。
住職に位置を聞き、線香を焚きに行く。

やる夫があの世界から戻った時、時間は一切流れておらず、
翌日には老人が亡くなったという事実を知らされた。心不全だったそうだ。

今日は天気も良く、体調も良好だった。あの世界での戦争による体の異変が
嘘のように、やる夫の体は元通りだった。無論、鍛えた分も戻ってしまっていた。

だが、夢ではないという確証がある。
あの後、懐にある思い出の品が入っていた。第一次ロンドブル会戦で助けた
兵士から貰った、あの羽根を模した小さな縫いぐるみだ。
糸も布も荒く、まず市販品ではないだろう。それがやる夫に、あの日々が現実で
あったことを確信させてくれた。
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6312: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:52:15 ID:/1tY2dxE0

::: i ;川: :.|:, :,':,;':,;',.:' :. ,: ';:';, ,: ,ゝ` ,         '; :. '` :, :' 、ゞ´ ,ソ:,:' ;. ;,: ゝ|゙.:.|:,、: :|、:j i; : : :::: :
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:. :|. :!ノ :!:.:!::..,ゞ:, 、 :. :,:' ;. ;,: ゝ              ,.:'` :, :'´ ,‘ ,,;::!:.,ゞ;,: ,ぐ ゞ|:, 川;.::| ! 川 : ::
 :|..:川人:!;,;':,:'`:,: ,: : .,ゝ; :': ゞ` .、           シ` :, :',.:` :. ノ:;,;':,:'`:,: ,:, :,':,;;:';i ,:,:,ゝ| |: : ::: ::
. ::i从::川::|: .| !:.,:!:, :,.ィ:, ): :,ゞ`::.、,,、       ,,- 、ソ` :, :' ´ ,ソ!;,;':,:'`:,: ,: : .,ゝ; :' :,、 ハ:|,,-,、 : :
.!;:川:《:!::!゙|ゞ;::!:.,ゞ;,: ,ぐ:.、ー――――――――`;シ` :, :'―:,` :,そ― ;`り‘ ,,:,:':,: :,く:, :,: ゙:く≦ソ : :
: 《:川: ! | |::;|:;':,:ゝ:,.、:、 |::弍ニニニニニニニニニぞ; :' ` ,: : :, 、ニ!:, ,.:` :´ ,ソ',.:' :. ,: ';:';, キゞ : i !
: ::|リ:! |.:i:.|;;:':Y´:,:':,: :,く:, :,: ゙:,`ー―― ┐┬――弍ミ:x.、 ;, : ' ` :,シ`:, :i :.そ:, 、;,;':,:'`:,: , : :|`´ 川 .!
.: :|ソ::!゙川 !:,';;':ゞイ:i:!` 、:,: ,:ゞ-`     .! |    ーイ:.,':`;, :' , '`ゞ,.:` :´ ,ソ:, :,':,;':,;',.:' :. : :! / :!:! !:
.: :|ソ::!゙川 !: |:|ゞぐ`;|:,、:゙|:,ゝ | ̄ ̄ ̄i .! ̄ ̄ ̄戈ゞ;'`:,:: , ̄: ., ::‘,,! ,:, ,,!:,';;':ゞイ:i:!`ー升≧=≦
: ::|リ:! |.:i:.|`:!:!:,:':,ゞ,;'; ,:ゞ;,:':,ゝ  . ̄ ̄ ̄! | ̄ ̄ ̄ ̄ ` 、:;. ` :, :':. ̄,;:`|: ,|,.:` :´ ,ソ::,'`ヾ、,..イ : :`ヾ
: 《:川: ! | |,;'|:|;:'´`ヾ! :!`| |`         ! |        ´ゞ:., :, ::|戈;: |`゙|戈‘.:|:.::i !戈:!:;\ : ::!: :
.!;:川:《:! i∧.|:|``  ! :! .! !          |::::トァ      ´`ン`::,|:.,!; :'_|:| |`:、シ!: :|:i:|: : :|川戈マ
. ::i从::川: ∧.!    .| :| .| | .       マ二/:::! i        `シ"|: |` |!|:| ri===ァ!: :|:i:|: i :|!:|.!: :.`\
 :|..:川人:!: :'i     .!∧.! !        .|:..:|!:: |::|        ,n.::;__j:::|戈!|:|:r.!: :i´ :!: :|:i:| i; ;|: !j: :l: : : ヾ
:. :|. :!ノ :!: i : ::,     ! .|| |       .|.:.:|!:: |::|   ,,≦圭ハ|.:!.」_;L;|≧!|.|: :|:.::| :|: :j: :! !:,:| !: ::! : : :
: ::i ;!州゙人: ∧   | __|| |      _.|:.:.|!:: |::ト=イ,,゙ ´゙゚゙゚´ ̄:|.:::|`  .!|:|: :|:.::| :|:..:|:!j l: :j ::| ノ!: : : :
::: i ;川,': :∧ : :,二二||二二二 .,ィ:.:.::|:.:.|!:: |.:|´         ├┤ヾ,,'!|.|: :|:.::|: :.|.: 川: : /,./ :./ : : :
: 人: ;,: !:. :. ∧ ∧  || ___ l: : :.::.|:.:.|!:: |;;|:.、        ├┤ミ,.」|:|: :|::..| ,.;|:/:./:.:/ ./ ,ノ : : : :
/: : :\:∨: : :∧ ∧ ̄ |_|_,オ≧=- .|:.:.|!:: |.: /        ´ヾ``!ー=!: :!: :| `7::/ :,:'.::/ / ,.イ : :
: :: :: :.∧:∨: : :.:\::\  <≧≡彡':|:.:.|! / .:/           `ヾ、≧::! .:|:,/≦イ_,ノ´ ,./ ! : :
: : : : : :∧::\: : : :.:\::\  `ヾ 三>、゙|/ .:/                弌x、:`゙゚´>=< : . ,.イ: : :| : : :
ノ:. :./`ヾ: : :\、: : :.\::≧= 、 ミ圭彡/_.:/               `ヾ`ヾ从三乂≧=ヾ、ノ :,,:
,.イ´    `ヾ:_:_!`ー≦:∧ ̄`___ _,,´ .イ                  \!艾≧三≧≦彡イ :|:
., ,.ィ ,       _ ,,―< .ノ!-仝=イ                     又彡イ≦三≧≡!人
i/,.'´, < ̄ ̄>< >'::´ ̄|:..:|ノ                            `ヾソ戈三≦≧三
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╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
老人の墓の前まで歩いていく。
春が終わり、初夏となったが、まだまだ涼しいくらいだ。
少し前まで真冬の土地にいたのが嘘のようだった。
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6313: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:52:41 ID:/1tY2dxE0

                            ∧
     /| ̄ ̄|                    | i                    /| ̄ ̄ ̄|
      | : |    |    /l       /| ̄ ̄| | |                 .  | |.: . . '|
      | . |    | .  / /       | : |    |..〉.:|          /| ̄ ̄|  | |    : . |
      | : |    | ̄|/ /         | : |    | | |           | : |    |  | |:.. .  ;|
\    | . |    |  |_ /      /| ̄| :| : |    | | l'w'^~^ヽ/| ̄| : |    |  | |   . .; : |
 :|   :| . |    |  |/      :| . |  | .| : |    | | |      | : |  | : |    |  | |.: ' . .|
 :l,,r'"゛''| : |    |  | | ̄ ̄l   | : |  | :| : |    l l ;"; l⌒l | : |  | : |    |  | |   . .. : |
 :i   | ̄| ̄ ̄ ̄i: |_|    |,;''"| : |  || ̄γ ̄ ̄ ll  |  | | : |  | : |    |  | |;.. ..  |
. l:  | ̄ ̄| ̄ ̄ ̄| .|    l   | : l | ̄ |_| ̄ ̄ ̄|_| : |  | | : | | ̄| ̄ ̄ ̄|| ̄| ̄ ̄ ̄|

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柔らかな日差しが降り注ぐ中に、老人の墓はひっそりと佇んでいた。
先客はいないらしく、供え物の類は見当たらない。

年齢を偽って買ってきた、老人の好きだった銘柄の煙草を墓前に置き、
線香を焚いて合唱した。

老人も自分と同じく、家族はいないようだった。
ただ遺産だけはあったらしく、親族を名乗る中年の女性が葬儀を執り行ったそうだ。

「あれから色々あったんだお、じいちゃん。
信じられないかもしれないけど、本当に色々あったんだお」

そう、色々とありすぎた。

「こことは違う場所に行って……色んな人に出会って……それから、たくさん
人を殺した。もう数も覚えてないくらいに」

初めて人を殺した時も、無我夢中だった。
ただ、自分だけが手を汚すことを恐れていてはいけないと思ったのだ。
戦うことが罪だと言われれば、頷くしかない。けれど、そうするべきだと思ったのだ。
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6314: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:55:55 ID:/1tY2dxE0

       ____
     /:::     \
   /::::::::::     \       ……素敵な、人だったんだお。
  /::::::::::         \
  |:::::::::::::::         |     じいちゃんにも会わせてやりたかったんだお……
  \::::::::::::::       /ヽ
   /:::::::::        くゝ  )
  ;|::::::::::::          / ;
  ;|::::::::::::::       イ ;

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╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
人を愛することを知った。愛することの難しさと、温もりを教えてもらった。
人を愛するには勇気と寛容さが必要なのだと教えられた。
何もかもを彼女に教えてもらった。

生きる意味をもらった。守るべき何かをもらった。

だが、それももうない。全て向こう側に置き去りにしてしまった。
自分に残されたのは、この体と彼女のいない未来。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

6315: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:56:12 ID:/1tY2dxE0


        .|  ヽ人 ゝ      ,      /´ /
      .| | {.| ` \    _ ‐-,     | | \
       | ,'  ` ___入    ` -     イ  |ノ  \
       > /:::::::::::\>       イ .|  |.     \
      / ./::::::::-‐:::::::::ヽ 7-`- ´ .|7z.|  |      \         ―――また泣いてらっしゃるのですか?
       / ./::/:::::::::::::::::::::}\i i` 7_.|_<   ',>= _    \
     ./ .i:,::::::::::::::::::::::::::::::| ∧ \i  / >>. \::::::∧    \           相変わらず、仕方のない人ですね。
    / /:::::::::::::::::::::::::::::::::::| ∧. \i./   { \::::::\    \
   / /::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::  ,   { }   <::::\\::::::>、
 /  ヽ:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::::|  i __ ′ヽ _ヽ::::\\:::::::i
´     >::::::::::::::::::::::-=::::::::|  |/  |::∨  \:::::::::::\\:::ヽ
      ゝ:::::::::::::::::::/;;;;;;;;;;;:::, /‐- 、::::∨  /::::::::::::::::ヽ ,::::ヽ
      /::::::::::::::::::∧:::::::::::/ /:::::::::::::::::::::::ヽ./::::::::::::::::::::}.} .i::::::::::
      /::::::::::::::::::/ ',::::::::/ /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: 'ヽリ:::::::::::
     ./::::::::::::::::::/  }:::::/ /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/   ∨::::::::

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╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
彼女の声が聞こえた気がした。
彼女の足音が聞こえた気がした。

頭を振り、鼻をすすり、涙を拭う。
そんなことあるはずがない。あるはずがないのに、ありもしない希望に縋り、
後ろを振り返る。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋

6316: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:56:24 ID:/1tY2dxE0

             __    _    ___
           ´ ,,斗-=,≧ュ! `ヾ´   ` 、
        '   ´  /  |         \
.        {: Y          |  .{        ヽ
.         乂{    /      .从  {     、    .‘,
            ′    ' ′{ヽ‘,.、 _j__ ‘,‘,
           i   i  {_{_j_{ Ⅵ´\!\ } ‘,   .i
           |  从 ´{ Ⅵノ  }' 抖芋ミ      |
           人 、‘,  ァ芋ミ    V少 ¦ !  :|
            ヽ{\゙,. ハVソ 、       i i ! ¦          仕方ないので、一緒にいてあげます。
              }i 乂从     _ '   ' ; .! 人
              }i   个s。. _  ,.イ_j ム斗-- ミ         ほら、ハンカチ。
                  八 | i   _j廴__r 7/| .'ニニニニ\
               /  ,ji i__ 」辷フ77イ__j_{ニニニニニニヽ
            / ./‐i 厂 `ヾ}{フ“´ ̄ :}ニニニニニニニ}
               / ./ニニi'   (/)__  ヽノニニニニニ/⌒,
            / ./ニ/廴,,才7^*、 ___)'^‐乂ニ‐r 'フ´ r 7!
.            /  人ニ{ニニ7__ /′  Γニニニ廴{7   L}_j__
            /     ヾ ‐ニ⌒V_レ'⌒ー'ニニニ(r_'´,   、___)
         /      マニニ{ニニニニ‐(__/  {   } (.i}
.          ′      }ニニムニニニニニ7 / /⌒ 、_ノ r'i}
                    ノ‐ニニニ}ニニニニ‐{ (_/{/_j  」一' i}}
        ,゙        /‐ニニニ7ニニニニニ)、  厂`´   ノ}}
              /ニニニニ7ニニニニ¨´ニ\/       '
      i    ,〈ニニニニ/\ニニニニニニニヽ   /
      |    _‐ニ\ニニ/ニニニ\ニニ>''“ ̄`ヾ /
      |  _‐ニニニ`¨´ニニニニニ`ー´ニニニニニ\
      | _‐ニニニニニニニニニニニニニニニニニ‐\
      |_‐ニニニニニニニニニニニニニニニニニニ二\
      _‐ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ‐\
     _‐ニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニニ‐ヽ

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╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
その瞬間、胸の内の暗闇が途端に照らされた。そんな気がした。
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6317: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:56:46 ID:/1tY2dxE0





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―――人は一生の内で、どれだけの体験をすることだろう。
人生を変える体験というのは、意外と多い。些細なことで、生き方は変わる。

暗闇の中を歩いてきた。でも、今は違う。
それを照らす灯火と、共にその先を見つめてくれる人がいる。

一人じゃない。決して。人は、孤独から脱することができるのだ。
それは世界の外の人間かもしれないけれど、きっと他の誰でもない誰かが、
待ってくれているはずだから。
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6318: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 21:57:06 ID:/1tY2dxE0

                           __
                  ,  -‐==≦7/`¨¨¨¨"  <
                   /     ´   ′       ` 、
              〃  /      ;         ヽ ヽ     ..;
               レ'            i          ヽ  ‘,  ∨   /.;
               /   ./ ,′      {.    ‘,.    ‘,  ./ :;
                ;′′′i{ {    {  { ‘,  .i  i  i     / ::;
                  { i{ { .八 {__j__ .{ i  、 、 ̄「` 、!   !  i ./ ::::;
                  { i{  、 ./{Ⅵ\{人 {\lz斗=ミ|   |   :./ ,::::;
                 人八:. \ { ァ≠ミ、 `i  ´Vr リ¦ .i  ./ .,:::::;
                  \ {ヾ 代r リ      ` ´ .,'  ; . / ,:::::;
                   i ヾ.从 , , ,  、   ' ' ' ′ ./ ./ /:::::;
                   |.! .!  i.、     、  ノ   i   .〃ヘ,/::::::,
                      从_i  个s。.     イ |  .《  〈:::::::;    ―─ ─  、
                 ,. ´ニ'   iヾー‐{〕≧ チr 7八 .r‐》.-、\;  /\    /_  ::..
                /ニ二/  ノニニニLL}ー{」,/\ .| /⌒)'〕_,》/ 弋ソ`  '弋ツ :::::..
                /ニニニ/ /r――=ミ辷彡'ニニ .L|  ) | |  (_人__ノ  ::::::::.
.              ,;仁ニニ‐/./ニ,!    (/,)´ ̄ ̄`...《 .ゝ-'/\_   |::::::::::::::}   .:::::::::.
             {ニニニニ{/ニニ〈ー―==彡7` 、   、_ ,ゞ=・^! . /|'l\  ;::::::::::::ノ   ..::::::::::
            人ニニニ,'ニニニ厂 ̄  / \ \ /ニ.\\l//|/\\`ー‐'ィ↑:.、::::::::;'=ァ__
.               ヽニニ{ニニニ`ー‐ 、  ′ __辷r'ニニ...|\/   \,∧_|__/ .:|::::::.>.;⌒ヽ ._j}
           ′  /ゞニ人ニニニニニヽ{{/´ニニニニ‐.L...l,     |      ̄ヘ ̄::/}.⌒::〉
          /   ,仁ニニ‐}ニ=‐-‐=ニニ,'≧ 、ニニニニニノニ_ヾ、  /       / }/.::i─〈  _
.         /   .,;仁ニニニ‐jニニニニニ'ニニニ=‐--‐=彡≦ニ〃_/    ,,/ ,/}::::::::Y⌒ ̄ \
        /   ,;仁ニニニ/ニニニニニ7ニニニニニ7´ 「`マニ.||=|     , イ《 / .::}::::::::.}', マムマム
.       /  .,;仁ニニ‐/ iニニニニニ7ニニニニニ‐7  :|  、 .||=|__,, イ 廴/   .::::}::::::::::!::', マム:マム
      /   .iニニ=ミ'   iニニニニニ'ニニニニニ7   :! , ィ{:};~__,,斗‐''"     .:::::}:::::::::::!Y:', マム::マム
.       ′   !ニニニム  人ニニニニ7ニニニニニ‐7   Y^ヽ::|〈,  ≧‐- ,,,  .::::::}:::::_:::-ゞ,:::', マム:マム
          iニ>rzz,ム/ニニニニニ7ニニニニニ‐j}   .|_」_|__≧‐- .,__ "''ー--ヤ   /〈::::', マムマム
          レ'7」ー'ヽ '‐ニニニニニ'ニニニニニニ从   i|   {/o/、/o^ト ,,___,〉_ イ\゚:} ̄', マム:ミ'
.    i    r{┘  _-ニニニニニニ7ニニニニニニニ-_ i|   {o/\o\/| |::::ヘ v /:!!\,/o}  ', マ:マ
     i|   ∩ノ  _-ニニニニニニニ'‐ニニニニニニニニ-_i| ..._{/__∠。\/ : :| |:::::/,、〈:::||,/∠.},  ゞ:,Ⅴ
..   八.   乂,__,イ.マニニニニニ/\‐ニニニニニニニニ‐_. .〉、_i_,,イ" : : :| |::://::ヘ'':||-<ニニ彳
      ヽ{、从/ニ‐マニニニ,.イニ,ニ‐\ニニニニニニ‐/‐_〈   ! /i, : : : :| |//::::::::ヘ||ヘ_l _i_|
        /ニニニ‐\..<ニニ7ニニニ\ニニニ‐,. イニニ.ム==マ    ̄ ̄| 'ー─‐''|| マ.:彡'\
       _-ニニニニ,.'ニニニニニ7ニニニニ\..<ニニニニ `ー─’      ̄ ̄ ̄ ̄  `ー―’
.     _-ニニニニ/ニニニニニニ7ニニニニニニニマニニニニニ-_     ./
                                           ~FIN~


6321: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 22:02:53 ID:/1tY2dxE0

                  ,- ‐‐ - 、
                   イ: : : : : : : : :`,
                      /○ ○: : : : /
          ┌─┐  i_ _ _ : : : : : : :{       どうだったかな? ちなみに今回のエンディングは、唯一の帰還
          ┃茶┃   `,_ _`=-: : : :|
          ├─┤    i: : : : :_: : : :'       エンディングだ。他は全部永住エンドだね。
           ̄ ̄ ̄ー‐'' `-‐´ : : : : : :ヽ
             ゝ __ ,.. イ : : : : : : : : l: : |      いやー、だって異世界の方だとアンゼロット生き残れないんだもん。
                  { : : : : : : : : :|: :.|
                ,、 '" : : : : : : : : :゙、:.ヽ
               ( : : :‐ 、 : : : :__,. : : :Y"
               ` ー‐┘ ̄‐〈_ ,,ノ

6322: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 22:07:56 ID:/1tY2dxE0

                  . . .-─‐-. ミ
                     |: : : : : : : : : : `: ..
                     |: : : : : : : : : : : : /
                    }Ο : : : ◯: : : :,′
                   : : : : : : : : : : : :i        次は……そうだねえ。デビルサマナーかFateの二次創作したいねえ。
                      { -===- 、: : :. :.|
                    〉: : : : : : : : : :ノ         ま、やることがあったらやる夫板2に乗っけるから、見つけたらまたよろしくね。
                  i: :`ニニニ´: : : : ‘,
                 __/ : : : : : : : : : : : : i        とにもかくにも、完結できてよかったよ。
      ___        /.: : : : : : : : : : :‘,.:.三|
     / :::: ヽ: : : :‐--∧_: : : : : : : : : : :./:|: : : |        それじゃあ、さようなら、さようなら、さようなら。
     .′ :::::::‘: : : : : : }/∧ア´二二ヽ:/ | : : ‘,
.    ‘::::::::::::::ノ: : : : : :ハ \{/: : : :/⌒゙ヽ : : :‘        元気でね。
.       ゝ-=彡-──<¨¨゚‘; .: : :./:::::::::::::::} : :. :.|
                 \: :′:::::::::::/______」
                     弋:::::: /
                       `¨´

6323: ◆x0SRSoJXe. :2017/08/23(水) 22:08:09 ID:/1tY2dxE0

                  . . .-─‐-. ミ
                     |: : : : : : : : : : `: ..
                     |: : : : : : : : : : : : /
                    }Ο : : : ◯: : : :,′
                   : : : : : : : : : : : :i        次は……そうだねえ。デビルサマナーかFateの二次創作したいねえ。
                      { -===- 、: : :. :.|
                    〉: : : : : : : : : :ノ         ま、やることがあったらやる夫板2に乗っけるから、見つけたらまたよろしくね。
                  i: :`ニニニ´: : : : ‘,
                 __/ : : : : : : : : : : : : i        とにもかくにも、完結できてよかったよ。
      ___        /.: : : : : : : : : : :‘,.:.三|
     / :::: ヽ: : : :‐--∧_: : : : : : : : : : :./:|: : : |        それじゃあ、さようなら、さようなら、さようなら。
     .′ :::::::‘: : : : : : }/∧ア´二二ヽ:/ | : : ‘,
.    ‘::::::::::::::ノ: : : : : :ハ \{/: : : :/⌒゙ヽ : : :‘        元気でね。
.       ゝ-=彡-──<¨¨゚‘; .: : :./:::::::::::::::} : :. :.|
                 \: :′:::::::::::/______」
                     弋:::::: /
                       `¨´

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面白かった、このビターな雰囲気は好きだなぁ。

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