「たった1分でも」と決めて動き始めるとドーパミンが分泌され、気分が乗ってきた結果、5分、10分と続けられることも少なくありません。
・ 「面倒な書類を作成しないといけないのに、手がつかない」ときは、あえて仕事から離れて身体を動かしましょう。
体操するのも手ですが、椅子に座ったまま、呼吸に意識を向けるのも効果的です。
気持ちを落ち着けたいなら「スー、ハー」と深呼吸。心に勢いをつけたいときは逆に「ハッハッハッハ!」とリズミカルに。
三三七拍子のリズムでもOKです。
行き詰まったらとりあえず「動く」ことを意識すれば、「やる気」は自然と出てくる(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)
・ 仕事をするとき「to do リスト」を作るのは、もちろん大事です。
でも「タスクの優先順位は?」「抜け漏れはない?」と悩み始めるとキリがないですし、あれもこれもとマルチタスクを始めようものならグッタリしてきます。
そんなときは 「目の前のタスクを1つ終わらせる」 ほうが先決かもしれません。タスクがたとえ100個あったとしても、100個同時にマルチタスクで処理することは不可能です。
実行するときは常に1つずつ、「シングルタスク」で取り組んでいるはず。
「まず目の前のタスクを終わらせる」と決めれば迷いは消え、2つめ、3つめのタスクへと向かう弾みもつきます。
こうした「ほんのちょっと」の行動が、やる気に火をつけて、心の勢いをつくります。
ドーパミンの放出で心に勢いがつけば、動けない人が動ける人に変わります。
立ち上がるだけで、モメンタムは上がる
体と心は表裏一体。
行動と感情は、密接に関係しています。
むしろ、行動から感情が生まれるのだという考え方が、モメンタムの基本。
「やる気があるから行動する」のではなく 「行動するからやる気が出る」 のです。
同じように、「おかしいから笑う」のではなく、「笑うからおかしくなる」 のです。
これは脳科学でも実証済み。
たとえそれがウソの笑いでも、笑っているうちに、本当におかしい気持ちになってきます。
以上を踏まえて、モメンタム発動の条件を一言でいうと、「何でもよいので行動する」ことです。
例えば、「会社、行きたくない……」と、ベッドのなかで悶々としていることを想像してみてください。いくら待っても「会社に行きたい!」という気持ちが芽生えることはなさそうです。
しかし、ただ「立ち上がる」だけなら、できる気がしませんか?
そして、「立ち上がる」だけでも心は動き始めるのです。
行動科学の手法にも、これを利用したものがあります。
パソコンを使わせず、参加者全員を立たせて討議をするのです。
すると全員の集中度が高まり、討議が活性化。
まして、うたた寝をする人などいません。
あらゆるシチュエーションで、「行き詰まったら、動く」ことを意識してください。
「立ち上がる」以外にも、背伸びをする、歩き回る、ラジオ体操をする、ゴルフの素振りをする(もちろん、野球や剣道の素振りでもOKです)、踊る、軽くジョギングする、などの行動も、モメンタムの発動に効果的です。
※気持ちが落ち込んで、何日も「会社に行きたくない」という気持ちが続く場合は、心療内科などでご相談ください。
会社に行きたくなければとりあえず「立ち上がる」ところから始めよう(イラスト:『「心の勢い」の作り方』より)
(川野 泰周 : 臨済宗建長寺派林香寺住職/精神科・心療内科医)
(恩田 勲 : JoyBizコンサルティング代表取締役社長/一般社団法人日本モメンタム協会理事)