「日本は今や基本システムになった4−3−3を採用している。チュニジアは4−1−4−1とも、4−3−3とも言えたが、ソリッドで組織的な守備と縦に速いカウンター攻撃を特徴とし、戦術的色合いがよく似た同士のゲームになった。
序盤から目についた点がふたつある。
ひとつは攻撃陣のコンビネーションの良さだろう。インサイドハーフである原口元気、鎌田大地のふたりは、ポジションを交換しながらチームの車輪としてバランスをとっている。おかげで、右サイドの伊東純也は縦への推進力を用い、クロスからチャンスを作り出した。浅野拓磨が届かず、鎌田が押し込むだけというチャンスを外してしまったが。
もうひとつは、センターバックに入った板倉滉のプレーの安定感だろう。自ら仕掛けた守備を見せた時、吉田麻也、長友佑都がカバーに入る連係もよかった。自分の守りへの確信と周りを使う手際のよさには高い評価を与えられる。空中戦でも十分な強さを見せた。また、攻め上がって南野に出した背後へのパスは卓抜で、(オフサイドでゴールは取り消しになったが)ハイライトのひとつになるプレーだった。
最も危険なスペースを留守にしていた
両チームが、戦術、技術、体力と高いレベルで競い合った前半と言える」
エチャリはそう言って日本に及第点を与えた。では、なぜ森保ジャパンは後半に3点も放り込まれたのか。
「日本は後半も、決して悪い立ち上がりではなかった。この日、最も活発だった右サイドで、伊東が再びチャンスを作りかけていた。
しかし、前半から気になる点があった。
このリポートでは指摘し続けてきたことだが、遠藤航のプレーに安定感がないのである。
遠藤は局面での勝負に強迫観念があるのか、あまりにも前に行きすぎたり、サイドに釣り出されたりすることで、"センターバックの前"という最も危険なスペースを"留守"にしていた。それをチュニジア陣営に研究されていて、ユセフ・ムサクニなどにつけ狙われた。遠藤の負けん気の強さは買えるが、無理したパスも目立ち、それを奪われてのカウンターも受けている。
後半10分、左サイド伊藤洋輝が入れ替わられ、吉田麻也が後手に回って後ろから慌てて倒し、PKを献上して先制点を奪われた。
この失点自体は、個人的なミスと言えるだろう。チュニジアのFWタハ・ヤシン・ケニシのダイアゴナルランとファウルの誘い方をほめるべきだ。ドラマチックにすべきではない。
個人的には、その後も遠藤のプレーのほうが気になった。
誤解してほしくはないのは、遠藤は偉大なMFと言えることだ。ずっとプレーを称賛してきた。代表に欠かせない選手と言える。
ただ、最近は"動きすぎている"。いるべきポジションにいながら、必要な場合は自分ではなく、周りを動かし、チーム全体を好転させるべきだろう。彼がいるべき場所からいなくなって、それを狙われている。途中出場のハンニバル・メイブリにも、その指示が与えられていたのではないか。私が指摘してきたように、チュニジア代表の指揮官も日本の弱点を見抜いたのだ」
エチャリはカタールW杯に向け、あえて苦言を呈している。そして総括としてこう続けた。
「後半31分、日本は単純に背後に蹴られたボールの対応を吉田が誤って、2失点目を食らっている。
その後はチュニジアの戦術的柔軟性が際立った。5バックにし、焦る日本を引き回した。中央の守備は非常に堅く、三笘薫には右サイドで何度か敗れたものの、クロスはことごとく弾き返している。そしてアディショナルタイム、再び吉田のミスを突いてのカウンターを発動させ、あっという間に3点目を決めた。瞠目すべき攻守のメカニズムだった。
森保一監督率いる日本は、プレーメカニズムを高めてきた。前半に関しては、互角以上の内容だった。しかし、ダイアゴナルの動きの多様性という点では、やや劣っている。その勝負を左右したのは、遠藤のポジションと言える。残念ながら、相手にポジション的優位を作られていた。その結果、チームが最大限に力を発揮できない理由につながった。
ただし、これは十分に修正可能だ。W杯まで半年足らず、改善した日本の戦いが見られることを期待している」