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住宅金融支援機構が公表しているデータによると、コロナ禍の現在、25人に1人が住宅ローンの返済に問題を抱えていると分かっています。他人事ではない住宅ローン危機。どのような理由から、住宅ローンは払えなくなるのでしょうか? クラッチ不動産株式会社代表取締役・井上悠一氏が解説します。

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「住宅ローンを滞納していて…」相談者に多い理由

住宅ローンを払えなくなる理由は、大きく5つに分かれます。?離婚、?リストラ、?病気、?老後破綻、?不動産投資の失敗です。

私のもとへ来る相談の割合としては、?「離婚」3割、?「リストラ」1割、?「病気」2割、?「老後破綻」3割、?「不動産投資の失敗」1割です。住宅ローン破綻から抜け出すには、今の自分がおかれている現状を正しく把握すること、および選択可能な対処方法を知ることが必要です。

それぞれの理由によって解決方法が異なります。ここでは、?〜?の理由について見ていきます。

?離婚

結婚して、マイホームも購入して幸せだった家庭にも不幸が訪れることがあります。離婚です。私も離婚の経験があります。マイホームを買ったはいいけれども、離婚が決まると、とたんに悩みの種となります。離婚後のマイホームの処分は、購入時の何倍もの労力と精神力を費やします。

夫が住宅ローンを組んで生活していたと想定すると、夫が自宅に残る場合と、妻が自宅に残る場合の2パターンがあります。

(1)夫が残る場合、家族で住んでちょうどよかった広さの自宅も、夫一人では広過ぎます。しかし、地元不動産業者に査定を依頼すると、住宅ローンを完済するにはまったく足りない価格でしか売れないことが判明し、「そろそろ貯金も足りなくなってきたし、どうしたらいいんだろう……」というご相談が多いです。

(2)夫が出ていき、妻が子どもと自宅に残った場合には、夫は住宅ローンに加えて、自分の賃貸マンションの賃料、また養育費等も加わり、住宅ローンが支払える状態ではなくなります。次第に滞納し始め、最後には妻と子どもが暮らす家に競売の通知が届いて、問題が発覚するという場合もあります。

妻にとっては寝耳に水ですが、通知が届く頃には、もう取り返しがつかない状況になっています。「毎月きちんと支払ってもらう約束だったのに、そんな……」という相談者は後を絶ちません。

残念ながら、所有者および住宅ローンの債務者ではない妻には取り得る手段がありません。あくまで、夫主導で動いていく必要があります。

元配偶者と共同で…「負動産」競売という最悪のケース

問題が複雑化するケースとしては、夫婦共有名義であったり、妻の父親がお金の一部を工面したことにより親子共有名義であったりするときです。売却しようにも、どちらかが反対すると話が前に進まなくなります。

妻が連帯保証人になっていた場合にも、同様の問題が起こります。「元夫名義、元夫所有の不動産で住宅ローンの連帯保証人になっていたが、離婚したので保証人から外れたい」という相談をよく受けますが、後から連帯保証人を抜ける方法はありません。連帯保証人は、なった瞬間、ほぼ債務者本人と同じです。

また、連帯保証人は任意売却時に、顔も見たくないであろう元配偶者と共同して売却する必要があります。しかも、売却をしても、住宅ローン全額を返せない「負動産」であるためなおさら話は前に進まなくなり、競売という最悪のケースになることも多くあります。

離婚の場合には、離婚前に、不動産をどうするのか、夫婦間で話しておくことが非常に重要です。すでに問題が先送りになっている場合には、精神的な面が障壁となっていることがほとんどですので、我々や弁護士などが間に入ることで問題を整理し、解決していくしかありません。

?リストラ

リストラの対象となり途方に暮れている、転職したが3分の1程度の収入になってしまった、リストラされていないが残業がなくなり大幅に減収した、会社が倒産し再就職もなかなかできず住宅ローンを支払えなくなったなど、新型コロナの影響もあり、減収によって住宅ローンを払えなくなった理由はさまざまに考えられます。

リストラ等により収入が減少した場合は、任意売却したとしても債務が残るので、問題は抜本的には解決できません。住宅ローンの支払いが済んだとしても、その他の借金の支払いが終わらなくなる恐れがあるため、生活の再建を考えて定期的な収入を得る必要があります。

ですので、リストラ等による収入減の場合には、任意売却だけで解決しようとせず、生活の糧を得ることをまず最優先としましょう。その次に、債務をできる限り減らし、生活できる収入と支出のバランスを調整することが肝心です。

がんやうつ病の治療がスタート…家に住み続けるには

?病気

がんやうつ病、その他の病気により仕事を辞めなくてはならなくなった、退職はしないが収入が減少し、他の借入も増えたため、住宅ローンが支払えなくなったという方の相談も多数あります。

がんなどの病気を患った場合には、団体生命信用保険でカバーされ、住宅ローンの支払いが免除されることもあります。病気にかかると、仕事に支障が生じて収入が減るだけでなく、治療費なども必要になります。そのうえ住宅ローンまで支払うとなれば、たちまち生活が成り立たなくなるので、こういった制度は非常にありがたいです。

うつ病の場合は、正常に解決策を模索できる状態でないため、ただただ問題を放置されている方もいます。競売の現況調査が行われてから私のところへ相談に来られ、いったん任意売却の方針でまとまりましたが、その後は連絡が途絶え、自宅にうかがっても玄関に出てこず、最終的に競売になってしまったという方もいました。

焦る気持ちは非常に理解できますが、生活の再建を考えると、まずは病気を治療することに専念すべきです。そのうえで、競売等ではなく、少しでも納得できる最善策を模索し続けることが大切です。

引っ越しは、身体的にも精神的にも非常にストレスがかかるので、病気のときには、できれば避けたいものです。病気の種類にもよりますが、同じ環境に住み続けることが、治療にとって大事になることもあると思います。

最後まで諦めずに、親子間売買(※)やリースバック(※)など、最善策を模索し、可能な限り住み続ける方法を考えることが、リスタートにとっては肝心です。

※ 住宅ローンが残った自宅を、子どもや兄弟、叔父叔母、姪甥などに売却すること。単に、親子間、親族間で不動産を売買するだけでなく、売却後も元の所有者が自宅に住み続けることができる。

※ リースバック…不動産会社・金融会社・投資家などに自宅を売却し、買主から自宅を賃貸する方法。所有権を移転するため「自分のもの」ではなくなるが、賃料を支払って住み続けることができる。

井上 悠一

クラッチ不動産株式会社 代表取締役