気になるのは、現在の韓国代表にはどんな選手がいるのか、だ。
2018年ロシアW杯後に就任したポルトガル人パウロ・ベント監督率いる韓国代表は、主にヨーロッパでプレーするアタック陣と、国内を含めたアジア地域でプレーするディフェンス陣で構成される。
昨年10月と11月にヨーロッパのクラブに所属する選手だけでA代表を編成した日本と比べると、たしかにヨーロッパ組が占める割合は低い。しかしながら、プレミアリーグ屈指のアタッカーと評されるFWソン・フンミンを筆頭に、日本が警戒すべき選手は少なくない。
そこで、現在ヨーロッパでプレーする韓国代表選手にスポットを当て、彼らの実力を整理してみる。
言わずもがな、まずは近年の韓国サッカー界を牽引しているソン・フンミンこそが、現代表の大黒柱だ。
現在28歳のソン・フンミンは、10代でドイツに渡り、ブンデスリーガのハンブルガーSV、レバークーゼンを経て、2015年にトッテナム・ホットスパーに加入。今後を見据えても、歴代アジア人選手のなかで最高のワールドクラスと言っても過言ではない。
過去4シーズン連続でプレミアリーグふたケタ得点をマークし、6年目を迎える今シーズンもすでに13ゴールを量産中(3月19日時点)。同じく16ゴールを量産するハリー・ケインとのアタックコンビは現在リーグ最強の破壊力を誇り、ソン・フンミンはトッテナムに欠かせない重要戦力となっている。
とくに昨年は、バーンリー戦(2019年12月7日)でマークした自陣エリア付近からの長距離ドリブルシュートが、最も優れたゴールを決めた選手に贈られる「FIFAプスカシュアワード2020」を受賞。世界中の話題をさらったばかりだ。
もちろん今回の招集メンバーリストにも名を連ねるが、残念ながら直近のアーセナル戦で負傷を負ったため、来日の可能性は微妙なところ。ただし、仮に予定どおり来日した場合、今回の試合の注目度がより高まることは必至と言える。
続く注目株は、現在25歳のFWファン・ヒチャン。こちらも10代でヨーロッパに渡った逸材だ。
オーストリアのレッドブル・ザルツブルクに加入してキャリアを重ね、今シーズンからドイツ・ブンデスリーガのライプツィヒに移籍。その間、ローンで先輩ソン・フンミンがプレーしたハンブルガーSVでもプレーしたほか、ザルツブルク時代にはアーリング・ブラウト・ハーランド(ドルトムント)や南野拓実と共演したことで、日本のサッカーファンにもお馴染みの選手だ。
前線の複数ポジションをこなすうえ、スピード、スタミナ、フィジカル、得点感覚を兼備。新天地ではここまでリーグ戦で無得点とまだフィットしたとは言えないが、南野と似たタイプの万能型アタッカーが現代表の中核であることに疑いの余地はない。
ただ残念ながら、当初は今回の招集リストに加わっていたが、クラブの新型コロナウイルス対策の影響で参加を辞退する運びとなった。
今回招集された選手のなかで注目の若手を挙げるとすれば、スペインのバレンシアでプレーするMFイ・ガンインになる。
現在20歳のイ・ガンインは、10歳でバレンシアの下部組織に入団したスペイン育ち。2019年のU−20W杯では韓国U−20代表の一員として2ゴール4アシストをマークし、準優勝の原動力となっただけでなく、大会MVPも受賞した神童だ。
2018年にトップデビューしたバレンシアでも年々進化を遂げて出場時間を伸ばしており、とくに今シーズンはスタメン出場が急増。持ち前のパスセンスとキック精度に磨きがかかり、好不調の波が少なくなった印象だ。身長173cmと決して恵まれた体格とはいえないが、デュエルの強さも向上し、実戦的なアタッカーに成長した。
年齢的には五輪代表の主力でもある。だが、バレンシアで実績を積み始めてからはA代表の常連となっており、今回も日韓戦のメンバー入りを果たしている。
そしてもうひとり、今メンバーに招集されたヨーロッパ組が、初選出となったMFチョン・ウヨンだ。
現在21歳のチョン・ウヨンは、2017年に10代でブンデスリーガの名門バイエルンと契約し、主にセカンドチームでプレー。翌年にはチャンピオンズリーグでトップデビューを果たした、将来を嘱望される若きタレントだ。
2019年にフライブルクに完全移籍を果たすと、ローンでの武者修行を経て、今シーズンからトップチームに定着。年明けからはスタメン出場も増え、ここまで14試合3ゴールをマークするなど急成長を遂げている。
スピードとフィジカルに優れ、前線の複数ポジションをこなす柔軟性も兼ね備えたチョン・ウヨンが日本戦で代表デビューを果たすかどうか要注目だ。
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一方、今回は所属クラブの事情により、招集できなかったヨーロッパ組の代表選手もいる。最近の常連のなかでは、FWファン・ウィジョ(28歳/ボルドー)、MFイ・ジェソン(28歳/ホルシュタイン・キール)、MFファン・インボム(24歳/ルビン・カザン)、MFクォン・チャンフン(26歳/フライブルク)らが、それにあたる。
とりわけ、元ガンバ大阪で昨シーズンからボルドーでプレーするファン・ウィジョは、今シーズンも主軸FWとしてスタメンに定着。労を惜しまない守備でチームに貢献しながら、ここまでリーグ・アンで8ゴール2アシストを記録している。
代表チームでも、不動の1トップとして君臨。今回はクラブの新型コロナウイルス対策によって招集は叶わなかったが、フランスで進化を遂げたファン・ウィジョが今後も代表の中核を担うことは間違いないだろう。
その他、最近のパウロ・ベント監督のリストから外れているヨーロッパ組としては、MFペク・スンホ(24歳/ダルムシュタット)、MFキム・ジョンミン(21歳/ヴィトーリア・ギマランイスB)、FWイ・スンウ(23歳/ポルティモネンセ)、FWチ・ドンウォン(29歳/アイントラハト・ブラウンシュヴァイク)、FWソク・ヒョンジュン(29歳/トロワ)といった面々が挙げられる。
日本ほどではないにしろ、このように近年はヨーロッパでプレーする韓国人選手も増加中だ。もちろん全員が代表選手になるわけではないが、今後も彼らの活躍ぶりが韓国代表の強さを測るものさしになるだろう。
過去の日韓戦の対戦成績は、日本の13勝23分40敗。果たして、25日の親善試合ではどのような結果が待っているのか。韓国代表のヨーロッパ組のプレーぶりを含め、注目の一戦になりそうだ。