2020年12月10日に発売されたアクションロールプレイングゲーム「サイバーパンク2077」は、不具合の多発から開発元が謝罪と返金対応を迫られる事態に陥っています。一連の問題が発生した理由について、海外メディアのBloombergが開発者ら20人以上へのインタビューを実施した結果をレポートにまとめて公開しました。これにより、開発現場での対立といった問題が浮き彫りになっています。

Cyberpunk 2077: What Caused the Video Game's Disastrous Rollout - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-01-16/cyberpunk-2077-what-caused-the-video-game-s-disastrous-rollout

Cyberpunk 2077 staff didn't think game should ship in 2020, the 2018 demo was 'entirely fake' and more - report - VG247

https://www.vg247.com/2021/01/17/cyberpunk-2077-fake-demo-launch-report/

Cyberpunk 2077 Crunch and Development Issues Detailed in New Report

https://gamingbolt.com/cyberpunk-2077-crunch-and-development-issues-detailed-in-new-report

「ウィッチャー」シリーズで知られるCD Projektの最新作であるサイバーパンク2077は、発売前から度重なる延期や労働環境の問題が指摘されながらも、事前予約本数が800万本に達するなど大きな期待を集めていました。しかし、リリース直後から多数のバグやセーブデータが破損する不具合などが報告され、事態は集団訴訟にまで発展しています。

「サイバーパンク2077」の開発元がアメリカでも集団訴訟を起こされる - GIGAZINE

Bloombergのジェイソン・シュライヤー氏は、CD Projektの開発スタッフら20人以上に取材を行った結果から、「サイバーパンク2077」の開発現場には以下のような問題があったことを明らかにしました。

◆ゲームとゲームエンジンの同時開発

ゲームエンジンとは、ゲーム開発のために作られるソフトウェアのことです。近年では、Epic Gamesが無料で提供しているUnreal Engine 4や100万人以上の開発者が利用しているUnityなどのゲームエンジンが採用されるケースが増えていますが、CD Projektはサイバーパンク2077と並行してサイバーパンク2077用のゲームエンジンも開発していたとのこと。この開発体制の無謀さについて、シュライヤー氏の取材を受けたスタッフは「電車を走らせながら線路を敷くようなものです」と表現しています。

◆見通しの甘さ

開発スケジュールの見通しにも問題があったことが分かっています。CD Projektの元オーディオプログラマーであるAdrian Jakubiak氏によると、誰かが会議中に「この技術的に困難なプロジェクトを、一体どうやってウィッチャーと同じ時間で成功させるつもりですか」と発言したところ、別の誰が「開発していれば途中で解決するだろう」と答えたとのこと。

CD Projektは、長年にわたり「そのうち解決する」の精神で成功を収めてきたとのことですが、Jakubiak氏は「今回はうまくいかないことが最初から分かりきっていました。しかし、これほど悲惨な結果になるのは予想外でした」とコメントしています。こうした見切り発車による混乱の影響で開発は遅延し、結果としてサイバーパンク2077は3回もリリースが延期されることとなりました。

さらに、開発期間が十分に確保されていなかったことも判明しています。サイバーパンク2077が最初に発表されたのは2012年ですが、発表当時CD Projektは別のゲームの開発に人員を割いており、サイバーパンク2077の開発が本格的にスタートしたのは2016年後半になってからのことでした。そのため、多くのスタッフはサイバーパンク2077の完成時期を「2022年」と想定していたとのこと。CD Projektが2019年に発表したサイバーパンク2077の最初の発売日は2020年4月16日であるため、サイバーパンク2077の開発期間は開発現場の想定から2年間近くも短かったことになります。

◆現場の対立

2016年に再スタートした開発プロジェクトの陣頭指揮は、CD Projektのスタジオ代表であるAdam Badowski氏が引き継ぐことになりました。ディレクターに就任したBadowski氏はスタッフに対し、ゲームシステムとストーリーの大幅な見直しを指示しましたが、これがウィッチャー3の主要メンバーだった古参スタッフの反発を招きました。この不和は最終的に、トップレベルの開発スタッフの大量離反という形で表面化し、ただでさえ時間不足に直面していたサイバーパンク2077の開発プロジェクトは、さらに混乱することとなります。

こうした混乱の中、CD Projektは2018年にサイバーパンク2077のデモムービーを公開していますが、シュライヤー氏によると、このデモは「ほぼ完全なハリボテ」だったとのこと。開発スタッフらは、デモを用意するためだけに数カ月間を無駄にしたと話しています。

◆非効率的な人事

サイバーパンク2077のクレジットには、500人以上の開発者が名前を連ねており、約240人体制で開発された「ウィッチャー3 ワイルドハント」の倍以上の人員が投入されたことが分かっています。

それにもかかわらず、サイバーパンク2077の開発プロジェクトは慢性的なリソース不足に悩まされており、Jakubiak氏は「1日13時間もプログラミングしたことがあります。こうした長時間労働のせいで家族から離縁されてしまった人もいました」と証言しています。Jakubiak氏自身も、結婚を機にCD Projektから退社しています。

開発スタッフの中には「プロジェクト内のチーム同士の連携が取れていなかった」と話している人もいることから、こうしたリソース不足は、CD Projektが大量の人材の管理に慣れていなかったことが一因だと見られています。また、CD Projektの本拠地であるポーランド出身の開発スタッフと、英語話者の開発スタッフの間にある言葉の壁も大きな問題となりました。CD Projektは、英語話者が出席する会議では英語だけを話すよう開発スタッフに指示していましたが、この指示は厳守されていなかったそうです。

◆パンデミック

2020年に発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックも事態に拍車をかけました。感染予防のため、開発スタッフらは自宅のPCを使ったリモートワークでゲーム開発を続けることを余儀なくされ、これが原因でPlayStation 4やXbox Oneの実機での開発が困難になりました。コンソール版のサイバーパンク2077でパフォーマンス上の不具合が多く報告された背景には、こうした開発環境の変化があったとのことです。シュライヤー氏は「不具合やグラフィックの問題の多くは修正できると開発陣は述べています。ファンからの信頼を取り戻すのは難しいかもしれませんが、『No Man’s Sky』『FINAL FANTASY XIV』『Destiny』など、発売当初の不振から立ち直り、後に高い評価を獲得したゲームには前例があります」と述べて、サイバーパンク2077の今後に期待感を示しました。