内閣府の資料によると、世界全体で平均寿命は増加の傾向にあり、世界トップクラスの長寿国である日本の平均寿命は2019年で女性が87.45歳、男性が81.41歳とわかっています。世界的に社会が高齢化する中で、「30年前と比較すると70〜80歳の高齢者の身体的および認知的パフォーマンスは高くなっている」ことがフィンランドのユヴァスキュラ大学の研究チームによる調査で判明しました。
Cohort differences in maximal physical performance: a comparison of 75- and 80-year-old men and women born 28 years apart | The Journals of Gerontology: Series A | Oxford Academic
https://academic.oup.com/biomedgerontology/advance-article-abstract/doi/10.1093/gerona/glaa224/5901594
Birth cohort differences in cognitive performance in 75- and 80-year-olds: a comparison of two cohorts over 28 years | SpringerLink
https://link.springer.com/article/10.1007/s40520-020-01702-0
Older people have become younger: physical and cognitive function have improved meaningfully in 30 years - University of Jyväskylä
https://www.jyu.fi/en/current/archive/2020/09/older-people-have-become-younger-physical-and-cognitive-function-have-improved-meaningfully-in-30-years
この研究はユヴァスキュラ大学のスポーツ健康科学部および老年学研究センターで実施されたもの。最初のコホートは1989年から1990年の間に収集されたもので、1910年〜1914年までに生まれた75歳と80歳の高齢者500人のデータで構成されています。そして、2番目のコホートは1938年〜1939年、あるいは1942年〜1943年に生まれた75歳と80歳の高齢者のデータを収集したものです。
まず、2つのコホートの間で、歩行速度・握力・膝の屈伸力・肺機能・肺活量で比較が行われました。その結果、歩行速度では2番目のコホートが最初のコホートよりも平均で毎秒0.2m〜0.4m早く、握力は5%〜25%、膝の屈伸力は20%〜47%、肺活量は14〜21%向上していることが判明しました。
さらに、2つのコホート間で音韻言語の流暢性、作業記憶、反射神経といった認知能力を測るテストの結果を比較したところ、すべての認知能力で有意な向上が確認できたとのこと。
研究チームの1人であるカイサ・コイフネン氏は「2番目のコホートで歩行速度と握力が向上したのは、身体活動の増加と体自体が大きくなったことが理由だと考えられます。また、認知能力におけるコホートの最も重要で根本的な要因は、教育の長期化でした」と述べています。
また、同じく研究チームの1員であるマッティ・ムヌッカ氏は「2番目のコホートに属する高齢者は、30年前に生まれた最初のコホートの人たちとは異なる世界で育っています。たとえば、栄養や衛生が改善し、医療と学校システムの進歩によって教育へのアクセスが改善し、労働環境も良くなっています」と述べています。
ユヴァスキュラ大学のタイナ・ランタネン教授は「今回の研究結果は、私たちの高齢者に対する理解が古いことを示しています。また、高齢化社会の中で、『健康寿命の増加』と『介護を必要とする超高齢者の増加』という2つの問題が見えてきます」と語りました。