全農は、超がつくほどグローバル市場で戦っている事業体というのが真実なのである。そもそも、協同組合が「グローバルビジネスができない」と主張している時点で変なのだ。世界には、グローバルにビジネスをしている協同組合が少なくない。
例えば、ニュージーランドのGDPの約2.8%を稼ぎ出し、輸出総額の約25%を占める、同国最大の組織である乳牛組合フォンテラは、普通に協同組合だ。
2000年には、デンマークとスウェーデンの最大手の組合が合併し、アルラフーズが誕生した。アルラフーズは、デンマークの乳量の9割超を集乳する同国最大の協同組合で、販売先は国内以外にも欧州各国、アメリカ、中東、アジアにまで及んでいる。欧州をはじめ、世界の主要国に63の工場を持ち、100社以上の系列子会社を展開させている。
オランダのユトレヒトに本拠を置くラボバンク・ネダーランドは、農業組織向け金融機関になる。日本で言えば、農林中金に該当するだろうか。ラボバンクは金融ビジネスを世界的に展開しており、東京にも支店がある「グローバル金融機関」だが、協同組合だ。
全農、フォンテラ、アルラフーズ、ラボバンク。いずれも「協同組合」でありながら、グローバルにビジネスを展開している。この手の“事実”を無視し、規制改革会議や安倍内閣は「グローバルで戦うために株式会社化」と、極めて抽象的(しかも間違っている)なロジックで農協改革を断行した。
国家とは、このような道をたどり「亡国」に至るのである。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、わかりやすい経済評論が人気を集めている。