Swing low, sweet chariot,
Coming for to carry me home
静かに揺れよ、愛しい荷車*1
わたしを天国へ連れにやって来い*2
I looked over Jordan, and what did I see?
(Coming for to carry me home,)
ヨルダン河を見渡したら、何が見えたと思う?*3
(わたしを天国へ連れにやって来い)

A band of angels coming after me,
(Coming for to carry me home.)
わたしの後についてくる天使の楽隊
(わたしを天国へ連れにやって来い)

Swing low, sweet chariot,
Coming for to carry me home
静かに揺れよ、愛しい荷車
わたしを天国へ連れにやって来い

If you get there before I do,
(Coming for to carry me home,)
もし君がわたしよりも先に着いたら
(わたしを天国へ連れにやって来い)

Tell all my friends I’m coming, too.
(Coming for to carry me home.)
みんなに伝えてくれ、わたしもすぐに行くと
(わたしを天国へ連れにやって来い)

Swing low, sweet chariot,
Coming for to carry me home
静かに揺れよ、愛しい荷車
わたしを天国へ連れにやって来い

*1 チャリオットはタロットカードだと戦車。馬車とも訳されるが、馬がつないでなくてもチャリオットと呼ぶ。リヤカーや大八車のようなものも含む。
*2 homeは家、故郷という意味の他に天国を指すこともある。黒人霊歌では特にその傾向が強い。
*3 ヨルダン川は旧約聖書では神がイスラエルの民に与えると約束した地の東方に流れる川(諸説あり)、新約聖書ではキリストが洗礼を受けた川であるが、アメリカとカナダの間を流れる川をヨルダン川に見立てたと解釈することもある。


text & tune: 黒人霊歌

彼らが話しながら歩き続けていると、見よ、火の戦車が火の馬に引かれて現れ、二人の間を分けた。
エリヤは嵐の中を天に上って行った。(旧約聖書・列王記下2:11)

この「チャリオット」は、本来預言者エリヤが載せられていた不思議な馬車を指す。人の手の届かない馬車に乗せられ、天国へ向かう歌だと一般には解釈されているが、国境の川を越えて奴隷制のないカナダまで逃亡する歌であるという説もある。追っ手に気づかれては困るので、「静かに揺れよ」と頼んでいるわけである。


黒人奴隷の解放につとめ、「黒いモーセ」「女モーセ」と呼ばれた女傑ハリエット・タブマンは93歳まで長生きしたが、その臨終に際し助けられた人々や支援者が集まり、この《静かに揺れよ、愛しい荷車》を歌ったという。


The St. Olaf Choir
収録アルバム: The Spirituals of William L. Dawson




おまけ:ロジェ・ワーグナー合唱団バージョンでは歌詞は一番までとなっている。


(CDのみ)
黒人霊歌集
テーリー(サリー)
EMIミュージック・ジャパン
1992-11-18


おまけのおかわり:アメリカで非常に人気が高い黒人霊歌であると同時に、覚えやすいメロディのせいかパロディ作品がやたら多い。
ミルス・ブラザーズのRockin' Chair《ロッキング・チェア》、ダイナ・ショアのSentimental Journey《センチメンタル・ジャーニー》などに散見されるが、もっとも白眉なのが、Dizzy Gillespie(ディジー・ガレスピー)によるSwing Low, Sweet Cadillac《静かに揺れよ、愛しいキャデラック》である。

Swing low, sweet Cadillac
Coming for to carry me home
静かに揺れよ、愛しいキャデラック
俺を家へ連れ戻しに来い

I looked over Jordan, and what did I see?
Oh, an Eldorado, comin’ after me
ジョーダン通りを見渡したら、何が見えたと思う?
ああ、俺の後ろについてくるエルドラドさ

ちなみにエルドラドとは1953年に発売されたキャデラックの最高級品。アイゼンハワー大統領のパレードにも使われた。


深夜番組「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」に取り上げられたことで有名になった。
最初のスキャットが「横浜 オー! 横浜 オー! 横浜 オー! 横浜 オー! 横浜? いやそりゃおかしい いやそりゃおかしい いやそりゃおかしい おかしい おかしい いやそりゃおかしい こりゃ間違いよ」に聞こえる。
散々調べたがさっぱりわからなかった(コメンテーターの安齋肇が「ガーナ語?」と言ってたがガーナは色んな言語が混在しているので結局何語かわからない)。



さらにおまけ:スポーツ専門チャンネル「Jスポーツ」で、サイクルロードレース番組のEDテーマとなっているのがこの曲。
確かに「レースはもうおわったからゆっくりおうちに帰ろう」感がある。




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