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やらない夫は弱虫のようです 第四十三話 ピエールの昔話・1
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130 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:43:10 ID:egOnYakf [2/51]
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                    ┏
                      私は、ちっぽけなスライムの一匹にすぎませんでした。
                                                       ┛








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131 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:43:33 ID:egOnYakf [3/51]
1118







                            ┏
                              そう、スライムといえば、モンスターのなかで

              人                一番弱いといわれているものです。
            _ノ  `、_                                         ┛
          .,r'    ~ヽ,
         ,r'~        ~;,
        〈   ●  ●    〉       ┏
         ゙i、 ヽ___ノ   /           確かにスライムは、本当に弱い、個体です。
          丶---------r'´
                               戦い方を知っている者なら、子供にも倒せてしまう。
                                                               ┛





132 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:44:07 ID:egOnYakf [4/51]
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         ┏
            しかし、弱いだけでは人間、いえ人間でなくとも、

            他の魔物や動物に―――あっさり滅ぼされてしまうでしょう。
                                                ┛


                            人
                           _ノ  `、_
                         .,r'    ~ヽ,   ~♪
                        ,r'~        ~;,
                       〈   ●  ●    〉
                        ゙i、 ヽ___ノ   /
                         丶---------r'´


           ┏
             スライム族は、生き延びるために実にいろんな能力を

             持っていたりするのです。
                                              ┛






133 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:44:46 ID:egOnYakf [5/51]
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                         ┏
                           たとえば、寿命。
                                      ┛


                                             ____ ヨボッ
                                           /      \
                                          /   \ , , /\
            バブッ- -、                      /  ==⊂⊃=⊂⊃=\
               /● ● .ヽ       →           |     ⌒(__人__)⌒ |
               、(,、__)○ノ                    \      ` ⌒´  ,/
                                    .
              【Before】                          【After】
                         ┌────┐
                         │ 人間  ..│
                         └────┘



         +        人                          +     人
          人    ノ .`、                          人   ノ .`、
         `Y´+. ,,:'´   `ヽ、                       `Y´+ ,,:'´   `ヽ、
          . ,、:'`        `':、,      →              . ,、:'`        `':、,
          〈   ●  ●    〉                     〈   ●  ●    〉
           ゙:、 ヽ___ノ   /                       ゙:、 ヽ___ノ   /
            丶---------r'´                        丶---------r'´

              【Before】                             【After】
                          ┌─────┐
                          │ スライム .│
                          └─────┘




            ┏
              実はスライムは、かなり長寿な魔物だったりします。

              そして案外知られていませんが、加齢による能力の差はないのです。
                                                         ┛


             ┏
                まあ天寿を迎える前に、何者かに殺されてしまうことのほうが

                実際、多いわけなんですけどね。                    ┛



134 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:45:31 ID:egOnYakf [6/51]
1121




                  ┏
                    そして、弱い生物につきものな高い繁殖力。
                                               ┛




             ドンドンフエルゼ∧     ∧           ∧ フエルゼ
                   ( `д´)   ( `д´)∧   ∧  (`Д´ )
                         (;`д´)(`Д´;)(`Д´ )
                          (`Д´;)(`Д´;)
                 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
                ┃一体何匹産めば                   ┃
                ┃気が済むんだこのスライム!            ┃
                ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛




                   ┏
                     …まぁ、ちょっと言いすぎな感はありますが、
                                                 ┛

               ┏
                  オスとメス、一緒にしておけばいくらでも。と、

                  ネズミ算ならぬスライム算なんて、言葉が以前あったくらいです。
                                                          ┛




135 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:46:25 ID:egOnYakf [7/51]
1122




                ┏
                   そしてもう一つ―――、スライム、というより

                   スライム族を生き長らえせている、最大の能力。
                                                  ┛




                                              ○   o
                                             。   ・    o
                        人                      ・ .,-―-、 。
                       (゚ー゚ )                     ,ノ    `:、
                                            _, - '  .(・)(・) , `ヽ、
                                            <___  `━━ '   `)
                                              `-、    ,--―'
                                                 ̄ ̄ ̄
                w/|                ノ^ 、
               ,ヘ'W゙'i,7             ,;' : : : : ヽ
             _,r'"∧'`~゙ラ             {, : : : ・∀・}
            ゝ,r'"~`ベ'ヽミ            `ー---ー’
            ( ・∀・ ○)フ




                   ┏
                     非常に高い、環境に対する対応力。進化の速さです。
                                                      ┛

               ┏
                 スライム族の種類が多岐にわたるのは、「あなた方」もご存じのはず。
                                                           ┛

                  ┏
                    そして、スライムとして生まれたものは、強く願えば他の種類の

                    スライムに変化を遂げることも、できたりするんですよ。
                                                           ┛



136 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:47:06 ID:egOnYakf [8/51]
1123





             人
            _ノ  `、_            ┏
          .,r'    ~ヽ,             私は、物心ついたときから、なんの力もない。
         ,r'~        ~;,
        〈   ●  ●    〉          一匹のスライムにすぎませんでした。
         ゙i、 ヽ___ノ   /                                     ┛
          丶---------r'´





                 ┏
                   しばらくは、それでいいと思っていたのです。

                   幸いにも、私の住んでいるところは平和なところで、

                   人間にも魔物にも、諍いというものがほとんどありませんでしたから。
                                                             ┛



137 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:48:05 ID:egOnYakf [9/51]
1124




                ┏
                  しかし、私は知らなかったのですよ。

                  それが、一人の巫女による力であるものということを。
                                                   ┛



                   ,.
                i //,.-‐''
         __ ,, ..,,‐-、 .|./::/r‐- 、
           ,.r' ‐ 、ヽl::/:/:::::::::::::::`'' ‐ 、                 ┏
          /r::::::::::::`':::::::::::::::::::::、::ヽ、:ヽ`ヽ、                私の生まれ育った地、エルヘブンは、
         イ´/:::::::::::::i::::::::i:::::::ヽ::::ヽ:::ヽ:::ヽ、ヽ
        /:::/::::/::::l:::::l:l:::::::::l: l::.l:..',:..',:ヽ:. ヽ:..', 'li                王たる権力者も、英雄たる支配者もいません。
       ./://:. .l. . .l:. .:l:..l' ‐'1:.l. l:. .:l .:l:.ヽ:. ',:...l 、l!                                            ┛
       /l.:l.:l:.. .:l:. ..::l:..:ト .l.  |::ト.:ト.::. l:::l:.:::',.::l:..:l  !、
      / |.l..:|:. .l:l:..:ト l:.,.l_l::l  |l:l l:l十‐l::l,j:::il:::|:::li  \
     ./ .l::l:::l::::l::l:::|r 'l_l,.. li  j./レ 'f:マミ、.l::l::l:l.i:l l    ヽ、
     /  ヽl、l::::l::ト:K´ヒンリ    i  ゞ‐ ' l|,':::l,/ l     `' 、,
    /   i {ヽ::l',ヽ,.;:` ´    .    ´´´/:l::|  ノ     ,. r'          ┏              ┓
    /_    l ヽ|i::ヽ        i〉     /l:::l:|  ,.. --‐ ' ´              大巫女・
     `' ‐-、_  l|l::l|.ヽ      ー_‐ '   , 'lノl::l:|'´ l、ヽ\                     モーリアン
        l,r-ヽ!li:::l| l:l`. 、         ,.イj,.r.|i::i|‐ ''"ヽ、:ヽヽ            ┗              ┛
        ` ̄`/li::il_ヽ、 l:l` 、  ./ .l ,.r'li:i|ヽ::\:..:ヽ、:::`' ‐ 、
              ゝ''l::::l''‐- 、 l  ` "   .l'´ヽl:::lヽ::\:..\ヽヽ、` ''‐‐` ''ヽ、
                 l:::l _ ,..,_.ノ      'r''ヽl::l ヽ、::::ヽ:::ヽ:ヽ ヽ ヽ  ` ヽ、ヽ、
            / l::l 、''‐`''‐ 、   /, '/l::l  .>::::::ヽ`ヽヽ ヽ \   ヽ:::',
           /  l::l `ヽ`ヽ ` ン /,.'  l::l / `ヽ、::\、:ヽ、 ',l ',ヽ  ヽ|
         ,.r '` ヽ、l::l    `ヽ ヽ ' /   |l ./   i  ヽ ,ヽ`ヽ、ヽl、 l::::',  !  ┏
       ,r '      .l::l     \/     | / ,.- 、  l    ヽ:::l lヽ、::ヽl::::l       たった一人の、しかし偉大な力を持つ
      , '        l::l 、     /    /,r '::::::::::`ヽ、   /ヽ::l l::::lヽ:::l::l
     ,.' i         ll ヽ、 /    ,r ':::::::::::::::::::::::::l ./   ヽl:::::l ヽl:l      大巫女が、聖なる土地であるエルヘブンを
    /.  l          ヽ   '/     i:::::::::::::::::::::::::::::::::l/      ',l::::l l:l
   /   i           /     i:::::::::::::::::::::::::::::::::::l      l:::ll          神から預かり、守っているのです。
                                                                            ┛




             ┏
                大巫女の力は、凄いものなのです。

               一切の魔物の影響を受けず、物理的な力は通用しません。

               何故なら彼女らは、代々、神にあるものを託され…、

               それを守るために、絶大な力を与えられていたからです。
                                                   ┛



138 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:49:08 ID:egOnYakf [10/51]
1125



              ┏
                ―――と、偉そうなことを言いましたが、

                「何」を託されているのか、ということはさすがに私は知りません。
                                                        ┛

              ┏
                しかし、とても、「この世界に重大な影響を及ぼす何か」、であることは

                間違いはないようです。
                                                           ┛



                                ____
                               〃 /^lヘ ヽ
                              !んi ノリノ ))〉
                              ノんiハ*゚ ‐゚ノ〉
                             (イ  (「 _ソ] l)
                              ))  レト-'iJ
                                 ノ_i_」



              ┏
                 たった一人の女性が負うにはあまりに重大な「何か」……、

                 しかし、エルヘブンの民たちは、大巫女を中心として、それを守り、

                 平和に――ええ、平和だったと思います――、暮らしてきたのです。
                                                          ┛




139 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:50:12 ID:egOnYakf [11/51]
1126




                ┏
                  何も知らない私がぴょんぴょんと平和な森で過ごしていた頃。

                  大巫女、モーリアン様の直系に、赤子が産まれました。
                                                       ┛



            ..::   ノノノ ノノ ノ ::..  スヤスヤ
          ..:: /           ヽ、::..
         ..:: /              ヽ ::..
        ..:: /                ヽ ::..
       ..:: /                 i ::..
       ..:: |               __,ヽ ::..
       ..:: |        ー―        'ヽ ::..
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           ..:: / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         ..:: /



                 ┏
                   そう、それこそマーサ。「あなた」の母であり、私の…母、

                   と言っては失礼だと思うのですが、ええ、母のように慕っていたのです。
                                                               ┛


                 ┏
                   大巫女モーリアン様は、仰ったそうです。

                   この子こそは、数百年のエルヘブンの歴史上、

                   最も優れた大巫女になるだろうと。祝福と、愛情をこめて。
                                                        ┛



140 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/30(日) 01:50:47 ID:FG6FT7lx [1/2]
スライムホイホイとかありそうだよな…


141 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:51:42 ID:egOnYakf [12/51]
1127




           ┏
             大巫女に守られた土地であるエルヘブンは、

             どうやら弱い者の邪気すらからも守っていたのかもしれません。
                                                    ┛



                                             ノト     |
                                             彳ミ    ノiミ
                              __,,.. .-‐ '''""~~""''' ‐-彡彡ミ .彡ミ..,,____
                         _,..-'''"              彡彡ミミ 彡;;;ミミ    ̄ ~~""''
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       ,,       .,.:,           ..         ..            .,.            ,..




     ┏
       私はあの村近くに長いこといましたが、不思議と、凶暴なものはいませんでした。

       人も…魔物も…驚くほど平和だった。楽園という言い方はおかしいですが、

       あそこほど命を脅かされる心配のない土地も珍しかった。

       勿論、食物連鎖としての危険はありました。―――けれど、訳知らず殺される、という危険はなかった。
                                                                     ┛



142 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:52:58 ID:egOnYakf [13/51]
1128




                 ┏
                   それだから、でしょうね。幼いころのマーサと、

                   私が出会うのに、時間はかからなかった。
                                               ┛

            ┏
              マーサは幼いころから既に大巫女としての「力」に目覚めていましたし、

              妙な考えを持つやつらは近寄れるわけもなかった。
                                                          ┛




                                          ゙、::l :::::,'ヽ:.く    .:.:.:.:.:.::  //:::::::∧/:::::::l:l::/
           「 ねぇ、ピエール。                     ';:l ::::{            // .:::::/|:/:::::::::レ'
                                            ヽ::::ヘ    ー       // ::/::l::::::::::リ
            あなた、なんだかオデキができてるみたいよ。 」   ヽ:::::\          /:/:::::/::::::/
                                             \l::::ヽ、    _..:イ//:::::://l/
                                               `'\lヽ -‐ ''´:::::::::::ノイ:i/
           「 痒くない? つぶしてあげましょうか? 」                  |      ::::レ'
                                                  _l      .::::::',
                                                /:::/l    ..:::::::::::ゝ=ヘ
                                             _, -'´/:/ :l   _,..-‐'´ ̄   `ヽ、




         ┏
           何より、彼女には差別や区別するという心がなかった…、

           不思議ですよね。エルヘブンの民ですら、魔物には一線を置いていた、というのに。
                                                               ┛




143 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:54:09 ID:egOnYakf [14/51]
1129




              人
             _ノ  `、_               「 ひどいよマーサ! これはオデキじゃないやい。
           .,r'    ~:  O   ←おでき(?)    これはね、騎士の芽なんだ!            」
          ,r'~     ノ  ~;,
         〈   ●  ●    〉
          ゙i、 ヽ___ノ   /
           丶---------r'´



                                         ゙、::l :::::,'ヽ:.く    .:.:.:.:.:.::  //:::::::∧/:::::::l:l::/
                                          ';:l ::::{            // .:::::/|:/:::::::::レ'
                                           ヽ::::ヘ    -       // ::/::l::::::::::リ
                 「 …騎士の芽? 」              ヽ:::::\          /:/:::::/::::::/
                                             \l::::ヽ、    _..:イ//:::::://l/
                                              `'\lヽ -‐ ''´:::::::::::ノイ:i/
                                                   |      ::::レ'
                                                 _l      .::::::',
                                                /:::/l    ..:::::::::::ゝ=ヘ
                                             _, -'´/:/ :l   _,..-‐'´ ̄   `ヽ、



              人
             _ノ  `、_          「 そうだよ。ぼく、ずっと前から、スライムナイトになりたいって思ってたの。
           .,r'    ~:  O          そしたらね、今日できてたんだ。
          ,r'~     ノ  ~;,
         〈   >  ●    〉        スライムはね、魂が純粋な子供のうちに強く願うと、
          ゙i、 ヽ___ノ   /         違うスライムに進化することができたりするんだよ!              」
           丶---------r'´




144 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:54:57 ID:egOnYakf [15/51]
1130




ハ  i   i    ト、 |            〉  /,' レ'´ レ'
 ヽ ヽ、  ト、  ! ヽj       、    ´  /, '.': i        「 ……まぁ。あなたたちスライムって、ほんとに不思議で、
  \\ ', \ i              ̄   /: ':/ /           素敵な生き物なのね。お祝いを、言わせてくれる?   」
    Y´\!  ヽ!丶              /,:',:',:'/ /
    |       \      ,.  '´ /,:'//レ'
    |         Tー-‐'´   メレ´´




                  ┏
                    マーサは優しかった。だから、私に騎士の芽が生えた時、

                    真っ先に報告に行ったのがマーサでした。
                                                        ┛




              人
             _ノ  `、_       「 えへへ。ありがとうマーサ。
           .,r'    ~:  O
          ,r'~     ノ  ~;,      これで騎士の芽が大きくなって、騎士になったら。色んな鎧や、盾だって
         〈   ●  ●    〉     装備できるようになるんだよ。
          ゙i、 ヽ___ノ   /
           丶---------r'´      そしたらぼく、マーサを守ってあげられる。ぼくがマーサの騎士になるからね! 」




145 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:55:41 ID:egOnYakf [16/51]
1131




  ヽ i,|  |  i  |::::| |::',. l, |  l ', :::::::... 〈:: | '" '゛
   ヽ i 、 |i l、 i::::l |::::i |::|::.. |l:|   ::::.. ヽ:l           「 …あたしを…? 」
    ヽ', :〉 |:'.,l::ヽ|::::l |::::i |::|::::.| !       ..ゝ
     ヽ',ヽ::|\:|l|、:::',. l::::l:i::|i::::|    =:ィi´::|
     / ヽ ヽ ! ヽヾ:;l:|';::::||:::l   /´/イ::/
    /        ヽ>ヽ.i:::l、!:l_,/::::i//:ll/
../` `<_          /   |:;' !|/|:::イ'゛ /
/    `ヽ.、   i  /    ゛    '゛  ´
       `ヽ、!  l
          ` '、
            \




             人
            _ノ  `、_              「 そうだよ!
          .,r'    ~:  O              だって、マーサって無茶なんだもの。
         ,r'~     ノ  ~;,
        〈   ●  ●    〉            なんでも友達にしちゃうでしょ。爆弾ベビーとか、
         ゙i、 ヽ___ノ   /             メイジキメラまで。                   」
          丶---------r'´




             人
            _ノ  `、_              「 そりゃさ、この森や村は平和だよ。
          .,r'    ~:  O
         ,r'~     ノ  ~;,             だけどさ、あいつら図々しいもん。
        〈   ●  ●    〉            餌をもらえるの、当然だと思ってるみたいだし。
         ゙i、 ヽ___ノ   /                凶暴じゃないだけだよ!               」
          丶---------r'´






               「 それにさ。「あいつ」。いつもマーサをいじめるあいつからも、
                 ぼくはマーサを守りたいんだ! だから、スライムナイトになるんだ! 」





146 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:56:29 ID:egOnYakf [17/51]
1132





  ヽ i,|  |  i  |::::| |::',. l, |  l ', :::::::... 〈:: | '" '゛
   ヽ i 、 |i l、 i::::l |::::i |::|::.. |l:|   ::::.. ヽ:l
    ヽ', :〉 |:'.,l::ヽ|::::l |::::i |::|::::.| !       ..ゝ      「 …それって、「イーブ」のこと…? 」
     ヽ',ヽ::|\:|l|、:::',. l::::l:i::|i::::|    =:ィi´::|
     / ヽ ヽ ! ヽヾ:;l:|';::::||:::l   /´/イ::/
    /        ヽ>ヽ.i:::l、!:l_,/::::i//:ll/
../` `<_          /   |:;' !|/|:::イ'゛ /
/    `ヽ.、   i  /    ゛    '゛  ´
       `ヽ、!  l
          ` '、
            \



                ┏
                  私は、不安だったのですよ。確かに、マーサの力は強大です。

                  しかしそれはあくまで魔物相手のこと。

                  人間には妙な考えを持つ者も、いたのですから。
                                                        ┛



             人
            _ノ  `、_        「 そうだよ。あいつ、マーサの次に強いからってさ。
          .,r'    ~:  O        酷いんだよ。乱暴な呪文ばっかり強くてさ。
         ,r'~     ノ  ~;,
        〈   ●  ●    〉      だからぼく、心配なんだ。
         ゙i、 ヽ___ノ   /
          丶---------r'´        ―――マーサがいつか、あいつに酷いことされやしないかって。 」


.

147 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:57:35 ID:egOnYakf [18/51]
1133




                ┏
                  だから私は、強くなりたかった。

                  マーサから、すべてを守れるほどに強くなりたかったのです。
                                                       ┛




       \ \\:>    -‐  ‐='´イ :://〃´
        `  \ヾ\      ,.イイ/'/        「 大丈夫よ、ピエール。心配しないで。
            ` |` 、__ ,. ´ | ´
           __ ノ          ', __           そんなことありっこないから。……だってね、
        ,. '´ /            \ヽ.`ヽ、        彼はね、あたしのことを好きなの。
.        / 〈 /             \〉  \
     /     \                /    \     だから、 本当にひどいことなんて、できっこないのよ。 」
   /       \          /         \




            ┏
              子供のうちに、進化しやすい今のうちに。スライムナイトになって、

              彼女の騎士になり、せめて、彼女を守ろうと。―――そう、決心していたのですよ。
                                                                ┛



148 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:58:36 ID:egOnYakf [19/51]
1134




 ゛ ! |l ';  !'、    < ‐       ,::゛ィ:::/ ゛    /! :::::`/         「 ピエール。ありがとう、そんなこと言ってくれて。 」
  ';!|!; '、`、'i     `      ´ /::/ / / i .:::::::l
    ヽ!`;、ー`=-     ,:: ''"    /:/ ,.、''ッ‐',イ   l ::::::/
      li:::`ヾー          /‐'゛,、': '" / /ノ:::/:l/          「 でも、あたしは、よく判らないのよ。
      |l:::::::、`:.、_              / ィ´:::::/             好きってどんな気持ちなのか。
      '、;::i:: `i‐-ミ=‐          /:'゛ |!'!:/´
       ',:|ヽ 、ヽ 、 \             ´ ヽ               父さまや母さまに抱く「好き」とは違うのでしょう? 」
       `:、\ヾ、ヽ、 `ー- 、..,,_         ヽ_  ,.、,_
          ` ヾ、\.、 i /'゛',      i   ,、 '"´   ̄``'' ー―ァ;;、、
               `` '゛  ヽ     ! ,、'゛          ,、:'´:::::::::::
                     ヽ    l/         ,.、::'゛:::::::::::::::::::
                    /`i  /      _,、 :‐ '"::::::::::::::::::::::::::::::




          ┏
            マーサは自分の力を、他の誰よりも自覚していました。今になって思えば、ですが。

            まだ、それほどの年齢でもないのに、いつも目は遠くを見ていた。

            ……変な言い方をすると、なんだか自分の人生に「見切り」を付けているような感じでした。
                                                                  ┛




  ヽ i,|  |  i  |::::| |::',. l, |  l ', :::::::... 〈:: | '"
   ヽ i 、 |i l、 i::::l |::::i |::|::.. |l:|   ::::.. ヽ:l        「 ……ひょっとしたら、あたしは。
    ヽ', :〉 |:'.,l::ヽ|::::l |::::i |::|::::.| !       ..ゝ
     ヽ',ヽ::|\:|l|、:::',. l::::l:i::|i::::|    =:ィi´::|          誰も好きになっちゃ、いけないのかもしれないわ。 」
     / ヽ ヽ ! ヽヾ:;l:|';::::||:::l   /´/イ::/
    /        ヽ>ヽ.i:::l、!:l_,/::::i//:ll/
../` `<_          /   |:;' !|/|:::イ'゛ /
/    `ヽ.、   i  /    ゛    '゛  ´
       `ヽ、!  l
          ` '、




149 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 01:59:41 ID:egOnYakf [20/51]
1135




            ┏
              まだまだ子供だった私には、マーサの言葉の意味がわかりませんでした。
                                                            ┛




                     ━┓
              人     ┏┛
            _ノ  `、_     ・
          .,r'    ~:  O
         ,r'~ ノ      ~;,
        〈   ●  ●    〉
         ゙i、 ヽ___ノ   /
          丶---------r'´




            ┏
              誰も好きになっちゃいけない、とか。理解できるはずもなかった。

              でも、私はそれでも構わなかった。マーサが誰を好きであろうと、なかろうと。
                                                            ┛

          ┏
            必ず、マーサを守る。強く、立派なスライムナイトになって! そう、誓っていたのです。
                                                                ┛


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150 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/30(日) 02:00:25 ID:egOnYakf [21/51]
1136







                    ┏
                      ……でも、私の願いは。

                      マーサを守りたいという、切実な私の願いは、

                      叶えられることなく、終わったのです。
                                                  ┛



                     ┏
                       マーサが……、私の名付け親であり、

                       母のように慕っていたマーサが……。

                       ある日突然、村から、姿を消してしまったから。
                                                    ┛



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