1: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:33:33 ID:H96YQWOo0
【真・女神転生デビルサマナー】雇われサマナーキル夫
真 ・ 女 神 生
ャ-、 、 転
__ .ヾゝ`'゙ ャ、,ィ ',\ ,-ァ ∧ .∧
ヽニニつ iヽ > ヽヽノ ( { _|ヘ---┘゙-─‐┘゙─ヘ |`i
ャー────‐.} ゙l_,ィ彡'゙⌒''゙ } .| ¨弋弋 ̄{ l ̄ ̄.] .i二二 --─'"`L____ノ .i___
.`´ ̄ ̄フ厂¨¨`i ィ'´ ',\ | .| > > ヽ」 └i .j──一' ̄`! 「 ̄¨¨''┐ r-、_ノ'´ _, -―--、
} } | |、_ .,j } | │ // _, - ',ノ __,ィヘ_,,-'''´ノ { ) -==ニ二_, --、_ノ
, -‐'゙ノ ` ‐ 二 - _/,ィ j 「 ',__// ,-‐' , -'"  ̄ヽ ヤ´ __//
`''"´ ¨ ー ' .レ゙ .`ヽ'"⌒'゛ `'"´ `ヽ) ヾニ_r‐'′
/\ /\ /\ /\ /\
< 悪 > < 魔 > < 召 > < 喚 > < 師 >
\/ \/ \/ \/ \/
●この作品は株式会社ATLUSによって平成七年十二月二十五日に発売された、『真・女神転生デビルサマナー』の二次創作作品です
●原作との相違点も多く、作者の知識の至らない点は自己解釈によって補われています。あらかじめご了承ください
●この作品はフィクションであり、実在する人物・地名・団体とは一切関係ありません
4: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:43:04 ID:H96YQWOo0
┌─────────────────┐
│ .│
│ 第一話『デビルサマナー見参』 │
│ .│
└─────────────────┘
.
5: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:43:17 ID:H96YQWOo0
,, -''L.. -__、
,, ‐'''"''> ..,,、 _,,/. l゛ .|. │ l ./'- 、
_,,...、,イ ゙''、 ,,,ノ゛.ヽ .l, ! " " .′.,-ヽ
./´ ... '" ../゙ ̄´ ‐、ヽ 、___ / .`'、、.゙' ,i-'"゙ ̄″`''''、, _..|
_,-イ .,. '゛ ゙ \ ,゙) 入、 / ゙-、, .゙,..!゛ ..l .'.゛ ゙l
.// ゛ / ./ ., `゛ l'''''-、 _ / \ `' .,ノ │.ー''"|
!│ .i'.′ l / ..、 ._..、 'ー';;,゙..._,_.,,,,;;y x-" ''、 .`‐ .| /.''‐、,_(
.l !、│ ! ! ! .゙ ,,,/: . ,i.゛ ゛ .. -.゛ │ヽ _∟.┴-- .ヽ ./ ../ヽ. │
.、、、 : ゛ .l ‐│ .i " ,,ノ/i.: i ,, ‐''.""` `゙´ /、 `'..、 / ,,へ ,i'゙
,i`'ミ;;-.._::ヽ..l. .! .! ! ." ! |::: ′ '゙ .、 -~ ,,_゙丶 l 、. ヽ ,i‐.l `.r'"
. | ...l\ ヽ .! .゛./ .l゙ !: . / ." .,r‐. , `''- .ヽ \ヽ _./゛! ._r'"
.ぐ : |、 `'-,,i .゙、.l .,′ :: l /: ....シ-. : ...‐ .`'’ 、 .ヽ .`ト, ,iー'| ,,./
. ヽ !.ヽ .'冫 - 、/゙,,ノ_...、/../ : / ::.,ー--'" .,丶 、 __へ 、 ゙、 ...iー|´."._,/゛
.\, ヽ `-、 'ニ `".'.シ'/:::::.../ ::,/゛ ./ .; .ゝ .´:::::::::::.i, ゙.、 ゙「゙ `,,,..ー'゛
-ヘミ\,ゝ ‐i:!.l:::ヘ.:::::::::::,r'" ./ ,, / . !: .l:: l::::::::::::::::::,i"ヽ .`-. .l^゛
- ,.゙'!'〃 -~"゙、::::::::,i′ / l゛'.::: ":::゛:::::::::::::::::::::|:´ l、 .ヽ. .l
ヽ ゙'-ハ.┬'''''|ノ::::: l ./ /::::::‐::.::__::::::::::::::::::::::::.!.-''''..l, .ヽ
゙、 ヾ '."、i、:::::::::! ,‐.「 .i"::::::_..∠‐.!:::::::::::::::::::::::.l .ヽ 、 .`゙ヽ
ヽ 'ー〃i l:::::::./ ..,シ^'''ン":::,,,、ヽ::::::::::::::::::::::ヽ. `'-,,, `‐ '-. ヽ
..l. ::::.|l゙"::./ .l ::/ ,/::,r'" \,::::::::::::::::::./;;;;ニニ;;-、`'''― 、 \ .ヽ
ヽ、:::::::./ i|‐゛ !::::/゛ _,ヽ::::::::./´ ゙'、.l \、 ヽ
ヽ / ./ .l::::.l,, __.. ー',゙./ ::::::./ ./ノ .\ : ヽ
/゛ ,/ `'-..,二..-ー'゙./::::::./ ,,,r=-‐" ヽ : ヽ
/ .、/ , ---‐゙:::::::,i‐゙ ." l .!
/ ,ノ/ ..-'メ."´.. .i'゛
/..// / ' .' ." "." ''
_./ " // ,{
.i.'.二`-".′ !
,i'",/゙ン'.,-.. /
゙ ゙ ‘ .' `
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悪魔。主に神話の中で語られるその存在は、人の心の闇に付け入り、
その魂を地獄へと連れ去ってゆくと知られている。
魔がさす、という表現があるように、人間の悪性の象徴ともされる彼らは、
古来より人の影の中で息を潜め、隙を見せるのを待っていると思われてきた。
今となっては神話もお伽噺同様の扱いではあるが、ある時代では、
そのお伽噺の存在が世間を恐怖に貶めたこともある。
そして彼らは、そんなお伽噺の住人達の姿を実際に目にし、対話を試み、
それらを討つ者として世界の陰で静かな戦いを始めた。
誰が呼び始めたのか、誰かが名乗ったか、いつしかそのような人種は、
悪魔召喚師、デビルサマナーと定義されるようになった。
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6: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:43:31 ID:H96YQWOo0
,ィ´ ´ ̄ _, /.!, `゙ー、{~゙い .ト、;!.j,`゙!=ミェ',!
く.,,,- _,´--'゙〉'゙ヽ__,..ゞ}゙fイヽ l、丶_. ! ゙、
`~´ _,/ /イ゙ヽミ゙l-{ ヽ.、 ゙!.ぃ_ゝ,.イ~゙丶、
,.ィ'´ ~` ,ノf,ュェ=∠、ハヤ. ,.ニr.弋トゞ^ 、 ゙!
"ー--,ェィ"!={{ェr'-i'=='ヘヤ.〈《ぃ ゙'丶、 ,!
,..ィ´゙'" '=-f / j' ~` ヤヤ-t‐'゙ ヾヽ、_,ノ
/ ,.,ノ ,ノ ゙! ゙ぃ ,.ムゝ
ム..、 / ,.イ ノ ゙' ,.イ
`ヽ、 /. / /゙! ,.イ
/. / / l、_,ムイ
. /. / / !
. /. / / l ! l
/. / / . ヤヤ. !
/ / /. ヤヤ !
. / / .ゞ、/ ヤヤ !
.. / / ,r'゙ ヤヤ ヽ
... / / / ヾ、 ヽ
..../ / / ヾ ヽ
゙/ / / ヽ ヽ
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これはその戦いの記録。
人と魔の狭間で生きる、魔を駆り魔を討つデビルサマナーの物語である。
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7: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:43:45 ID:H96YQWOo0
~御幡県三津井市すずのもり公園の公衆トイレ~
;ヾ、,.、,、.、rツ ッッシ、:':' r':' _,、-'゙_,
,、,、,ミッン、,._ _,、-'゙_,、-'゙. _,、-'゙,
、ィッ ,:、 ゙''ゞ=ミ、~.: _,、-'゙_,、-'゙ _,、-'゙,,
}; ヾ ゙' {!li;:,. _,、-'゙_,、-'゙ _,、-'゙,::|_|__l__,|⊥ |__|
ゞァ''゙ぐ _,、-'゙_,、-'゙ _,、-'゙,、-''" .|__|__| _|_|_
,ヘ:'_,、-'゙_,、-'゙..::「┴_,エ ┴ ''"_|_|__l__,|⊥ |__|
└i'゙-ニ,ニエ,.:|ニ「 _エ ┴ ''"_|__|__| _|_|_
|エ | ニエ, |ニ「 _エ ┴ __.|_|__l__,|⊥ |__|
|エ | ニエ, |ニ「 _エ ┴ 「fj.||__|__| _|_|_
|エ | ニエ, |[8] _エ ┴ └‐_|_|__l__,|⊥ |__|
|エ | ニエ, |二 _.エ 二.._ |__|__| _|_|_
|エ | ニエ, |┴ _.エ 二.._ |_|__l__,|⊥ |__|
|エ | ニエ, |工 _.エ 二.._ |__|__| _|_|_
|エ | ニエ, |工 _.エ 二.._ |_|__l__,|⊥ |__
-,-=''┷━━|┬ニエ ┬-- .|__|__| _|_|_
''ーニ_''ー::、_ ゙┷ 工_二'‐-、,_|_|__l__,|⊥ |__
二二二`''ーニ`_''ー-、_¨''━、L|__|__| _|_|_
二二二二二二二`''ーニ_''ー 、_ |⊥ |__
8: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:44:00 ID:H96YQWOo0
___ _
-‐''"´ ̄ ` `''ヽ=、
,.‐''"´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
r(:::::::::::::::::,、_ィ::::::::::::::::::::::::::::::::::
ゞ, rr~ヅ ミ:::::::::::::::::::::::::::::::::
フハ ミ::::::::::::::::::::::::::::::
. l __,,. -─¬,〈:::::::::::::::::::::::::::::: ……で、なんでそれが、俺がここにいちゃいけない理由になるんだい?
〉゙゙`'''Tjフ ̄ ヽ::::::,ィ ,、ヽ:::::::
. / ,.‐'" }:::/ /ヽ ハ::::::: 気持ちいいことに男も女も人間も悪魔も関係ないだろう、ん?
/.. "´ 2ノ/ l:::::
. ヽ.ニ,` __/ :l:::: 実際俺のイチモツを受け入れりゃノンケだろうが……
. 'ーr_‐;ァ ィ l:::
〈.. /:{ ヽ
`} /:: ! i
丶、,、. イ:::::: !
【魔王マーラ Lv90】
____
/ \
/ \
/ (●) (●) \ いや、ですから、死んでしまうんですよ。人間の方が。
| (トェェェェェェェェイ) |
\ \ェェェェェ/ / 何人この便所から死体が上がってると思ってるんですか。
/⌒ヽ ー‐ ィヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 | 日に五人っすよ。それもかっぴかぴに干からびて。
/ / r─--⊃、 |
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
【人間 加賀喜留夫 Lv56】
9: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:44:40 ID:H96YQWOo0
''´´´ ̄ ̄ ̄ ̄` ー--、_
/:;:;:;:;:;:;.;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.ヾ、
/;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾ
.,'.:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ヾヽゞζ)ヾ゚''心,ヾ;:;:、;:,,'゙
,':;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;;:;:;:' ハソ ''!ヾ
.|;:;:;:;:;:;:;:;:;::;::;:;:;;:.';. .ノ´)ノ ! いや、だってな? 仕方ないじゃないか、そこに穴があるんだから。
.|:;:;:;:;:.,--.、:;:::;/ 〃二二ーーー-t fー-,,!
.|;:;:;:;.,'rヽ ',:;:;/ r==f ̄ ´ ∧<'' 腹が減ってて、目の前で焼きたてのステーキがあったら食いたくなるだろ?
l;:;:;:;:|.l r l l;:リ 、迅y. ´ K庁 !
';:;:;:;:l l ( .イ .ヽ` ! 大丈夫だ、全員きっちりイかせてやってる。
/;:;:; ヽヽ_l. .ヽ .!
/;:;:;:;:;:/\ __ ノ | 「いや、逝っちゃってるんですって。あと手握るのやめてもらえます?」
. 从从从 l .´ .l
', ヽ ー=二ア j
..',. . ', ` 、 、____, /
', .', .、 / _. _
. '., ', 、 ! /-.、 <´.\`r´ヽヽ
. ',. ', `ー,―、´ `゙'ーー ,,, . >.、´ ヽ / ' ,
' , ', / ', `'.、 '、 ,ヽ ヽ \ _,,-、
' , .', / | ', . '、 .,`-、ヽ、 \_,,-ー'' .\
\_ / /| \ ./| .l 〉 ヽ, >''"´
\ `ヽ ′ | / / | 入 / , ' ` ー''""~
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「一応食いすぎないように、一人一時間は持たせてるんだがなあ」
「一時間ぶっ続けですか。そら死にますわ、マーラ様のイチモツなんざ
ぶち込まれた日にゃ三秒で白目剥いて泡吹くでしょうに」
全身に駆け巡る寒気を抑え込みながら、偉丈夫の姿をとった存在と交渉を続ける。
この悪魔、魔王マーラは、一週間ほど前からこの公衆便所に居座っていた。
元々ハッテン場としてネットの隅で噂になっていた場所ではあったが、
そこに煩悩の魔王が住み着くなどとは誰も思わなかっただろう。
しかもこの悪魔、無駄に強力なのである。
正直、自分が立ち向かえる相手ではない。戦いになったところで
銃を抜く前に上半身を吹き飛ばされて終わりだろう。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
10: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:45:20 ID:H96YQWOo0
____
/ \
/ \ ふぇぇ……ごりっぱすぎて手に負えないよぉ……
/. u (●)ili(●)\
| (トェェェェェェェェイ) |
\ \ェェェェェ/ /
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
このごりっぱな悪魔は本来、そこまで凶悪な悪魔というわけではない。
強力な魔王というとてつもない脅威には違いないが、積極的に人を喰らうのかと
いえばそうでもない。ただ、性欲が凄まじいのだ。
魔王マーラは不機嫌そうに鼻を鳴らし、「じゃ、あんたが俺を満足させてくれよ。
見たところ、それなりに鍛えてはいるようだからな。大丈夫、痛いのは始めだけだ」
とツナギのチャックを下ろし始めたものだから、喜留夫は恐怖で失禁しそうになり
ながら、チャックを上げるよう懇願した。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
11: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:45:35 ID:H96YQWOo0
___
,.-'":::::::::::::::::::`"''-、
/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::/ ̄ ̄ヽ:::::::::,、:l
l::::::::::::/≡=-.,,_ }从リ |:l
|::::/ヽ| == , =≡|ノ
|::::l |:l | =/
|:::::ヽリ l / はあ……わかった、わかったよ。
|::::::ハ. 、__' /
|::/ |∧ `ニニ´ / 'ミ_'⌒) ソーマの一つでも貰おうか。あとトパーズ。
__/l | ::::\__/ (´ ⌒)
_,,..-―――''"´ ./∧ ! :::::::::::::::l、 `~ー' 「うぐっ……ど、どうぞお納めくださいませ」
./ ∧ ,|∧
/ ∧ i / |. ∧‐-..,,_ ……グレイトチャクラも欲しいな。精をつけたい。
\ ./ ∧‐-、 ,.-| \. \
ヽ /___ ∧__ __l _..> \ 「チャクラポッドで勘弁してもらえませんかっ……!」
. l / ∧ ヽ ∨ \ ∧
___ | ./ ∧ | ∨ \ ∧ ,.-――-..,,_
__ `ヽ \ ∧ l 〉 / __ /‐‐-、 , ̄`)
、、 l \ ∧ l | / /| / / \ ̄  ̄"''-.,,
ヽ i ´ `ヽ \ l | | ./ / y'ヽ ヽ { ‐‐-、 `ヽ
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
敵わない悪魔には立ち向かわず、とにかく交渉に持ち込む。
それが喜留夫の方針であり、これまでのやり方だった。
どれだけ強力な悪魔でも、基本は他の悪魔と同じだ。物欲があり、
好奇心があり、人間に興味を抱いている。それらを上手い具合に満たせて
やれれば、魔王であろうと大人しく帰ってくれることもある。
無理に突っ込んだところで、生まれるのは成果ではなく犠牲だけだ。
と、大義名分を自分に言い聞かせ、いそいそと懐をまさぐり希少な宝石や
神酒を取り出す。正直、手痛い出費だが命には代えられない。ジャケットをめくった
時に目に入った刀と銃が泣いているようにも思えるが、自分はこういった場面で
奇跡的な勝利を収められるほど、神に愛されてはいないのだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
12: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:46:13 ID:H96YQWOo0
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□
・
13: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:46:29 ID:H96YQWOo0
___
/ \
/ \ 見た? 俺の交渉術。 こりゃー知力50あるわ、間違いなし。
/ \
| (●) (●) |
\ fェェェェェェェェy /
/ ヽ
/ \
/ ィ r \
| `|| |ヽ ヽ
/⌒ヾ| | |, |
ヾ___,ソl │(、__,ノ
| |
l Y´ /
ヽ, ( ,/
ヾ | |
≒;| |
(.("_`゙_)
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依頼の達成報告を公衆電話から終えた後、足早にその場から立ち去る。
冬であるにもかかわらず未だに冷汗は止まらず、
脇の下で洪水が起こっていたが、それもご愛敬というものだ。
もともとあの魔王は、DDSnetで不特定多数のサマナーに対し依頼を発信されており、
その内容は「討伐、および撃退することを命ずる」とのこと。つまりは、
もうどうにもならないから助けてくれ、手段は問わない、ということだ。
あのサイトの運営に関しては、どうやら公的機関の息もかかっているらしく、
たまにこういった依頼が大々的に掲示されていたりする。
報酬はいいのだが、どうにも無茶が過ぎる内容が多い。
それもそのはずである。なぜなら、そうして依頼に出されるのは、
お抱えの兵士ではどうにもならない事柄であるのだから。
ポケットから手帳を取り出し、予定を確認する。
確か十二時ちょうどから、駅から少し離れた喫茶店で依頼人と待ち合わせする
予定だったのだが、その店名を忘れてしまったのだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
14: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:47:04 ID:H96YQWOo0
ニ竝立竝」:':':\::::::::::::::::::...\ __ __ __ _
/ ||立竝|':':':':':':>、;;;;;;;南風,,,\ エェェェェェ _ _
__||竝立|:':':'/叉叉叉叉叉叉}ニ===┬─--
/ ||竝立|/i ̄|| 丁ニTニ!i竝| |i :
__||立竝|i |_||__||_| |l竝| / |i i
 ̄ ||竝竝|| | ̄|l || ̄| ||立| // |i |
/ ||足立|| |/|l ||/| ||竝|// |i / !
__||立竝|| |_||__||_| ||立| |i/ !
E立r┴ー┴┴┐ || ̄| ||竝| ,,..,,... |i ,,..,,.:
E竝||¢  ̄ ̄|::|/||/| ||立{.:;.'":;..'"'.: !.:.;'".:;.:.
E立||│KEY |::| ̄|| ̄| ||立{.;.:;....:;:;.:;..:;.:;.:;..:;.:;..
E竝||coffee |::|_||_| ||竝「工工エエエエエエ
E竝|| 南風 |::|¨¨¨¨¨ __||竝|工工エエエエニニ!
E工丁ニニニ|「二二ニニ===--─=== 二¨¨
 ̄ ┴  ̄___」L ̄.. - ,.. .  ̄ ..
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店名を確認した後、スマートフォンを取り出してそれを打ち込む。
軽く道筋を見て記憶し、足早に歩きだす。アプリを見ながら歩けるほど自分は
器用ではないので、最初から記憶するつもりで見た方が手っ取り早い。
十分もかからず、その喫茶店は見つかった。
黒板を思わせる看板に、安っぽいフォントで店名がでかでかと書かれている。
ビルの一階部分に建てられたその店の部分にだけレンガ模様に塗られており、
上層階は完全に灰色の豆腐のような外観だった。
ドアをくぐり、禁煙席を指定してから奥のテーブルに腰掛ける。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
15: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:47:22 ID:H96YQWOo0
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_,.ィ'"´ `'ト、
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| .:.:./.:.:. // .://.:./ |:./ } :.:.:.:.:.:.:.:.::|
| .:.:.:/.: /--─‐‐ ''/" l/\ | :.:.:.:.|.:.:.:.:: |
| :.:./:.:/ ,ィ==rァ / /_,_ `ト、:.:.|::.:.::.|::|
. | :.:.:j:.:.:.:.l'"トz::゚リ ィテラト| .:.:. |:.:.:.:.|.:|
. | ..:.:|:.:.:.:.{ `-‐' ヒ::,゚ソ /}:.:.: l\:.//
| :.:.:| :.:.:.ヘ、 ~ /,ノ:.:.::.∧ \
| :.:.:| :.:.:.::}へ、 __ ' _ イ : /二二^ \
. | :.:.:| .:.:.:.:.lト、 >、_ _,. <:.:..:..〈 ー‐-、 ヘ
/ :.:.:.| :.:.:.:..| \ 了\__:.:.:.:.:.:.:`l斤\ |
. / :.:/|:.:.:.:.:.:|ヘ rー--ヘ、 \:.:.:.::.:..| ト---‐┴、
/../::::::|:.:.:.:.:.:| \{ ー-<⌒)'二\::.| {::::::::::::::::::::::}
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袖を捲り時間を見ると、約束の時間まであと十数分といったところだった。
ついている。
正直なところ、自分はこういったことに疎い部分がある。待ち合わせに
数分遅れることもよくあるし、目覚まし時計のベル程度ではそうそう目覚めない。
普通の社会人であれば毎日のように怒鳴られていたであろう。
こういう時だけは、自分がこれを生業にしていることをありがたく思う。
運ばれてきたチーズトーストを齧りながら、入り口の様子を窺う。
店内は休日のランチタイムであるにもかかわらず空いており、
カウンターに大きな声で喋るご老人方四人組がいる程度だ。
青いシャツの中年男性、浮かれた様子の女性二人と入ってきたところで、
依頼人が姿を現した。事前に聞いていたとおり、黒いカーディガンに紺のスカート、
染めた形跡のない黒い長髪の少女。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
16: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:47:34 ID:H96YQWOo0
. ___
. /´ ̄  ̄`\
./ ヽ
/ ヽ お先に失礼しております。私、加賀探偵事務所のオーナーをさせていただいております、
./ ( ● ) ( ● ) l
.| | 加賀喜留夫です。
..ヽ r ェェェェェェy /
. ヽ、 Lェェェェェェ/ /
/:::::::::|::\゙_>介 √!;:::::::\
. /:::::::::::::::\:::ヽ };;{ |::/::::::::::::::ヽ
/:::::::::::::::::::::::ヽ::ヾ::}〃:::::::::::i:::::::i
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
こちらを見つけるなり、少女は駆け寄るようにして近づいてきた。
喜留夫も立ち上がり、ケースから名刺を取り出す。
年齢までは聞いていなかったが、だいぶ若い。大学生くらいだろうか。
「あ、えと、どうも。桂言葉です」
おずおずと頭を下げ、桂言葉は席に着いた。
受け取った名刺をすぐに財布にしまったあたり、成人してもいなさそうだ。
喜留夫は既に平らげた皿を脇に押しやり、追加のコーヒーを店員に頼んだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
17: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:48:00 ID:H96YQWOo0
___
/ \
/ \
/ ( ●) (●)\ ああ、ここのお代は私の方で持ちますので。
i (トェェェェェェェェイ) i
ヽ、 \ェェェェェ// どうかお気になさらぬよう。
/ ┌─┐
i 丶 ヽ{ .珈 }ヽ
r ヽ、__)一(_丿
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
三十路に差し掛かる男と、二十歳にも満たないような少女の組み合わせは、
中々にいかがわしいものに思えたが、喜留夫は気にしないことにした。
なに、自分とてまだまだ若い。この依頼人の豊満な乳房に心が浮き立つくらいには
若い。いや、しかし、これは中々の上物だ。大きな目と薄い唇には化粧気も見られず、
憂いを帯びた表情はどこか色っぽい。五年もすれば大層な美女となるだろう。
それはともかくとして、今は依頼を聞かねばならない。
事務所ではなく喫茶店を指定してきたあたり、人に聞かれたくないような内容
ではないはずだ。事前に聞いていた限りでは、護身だった、気がする。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
18: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:48:14 ID:H96YQWOo0
....-―-...
,...::‘:::::::::::::::::::::::::::`ヽ、
/::::/::::::::::::::::::::/::::::::::::::::ヽ
/::::/:::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::/::::::::::::::::,:'::::::::,::::::::::::::::::::/::ヽ
/::::::,::::::::::::::::/:-/―,フ/::,イ::::::|:::::i
,::::::::,i!::::::::::::://芹恣`/'´ !:::::,:!:::::|
,'::::::/:|!::::::::::/イ 夊」 /イ:::/:::|:|
/::::/::::i:|:::::::::'´:| 芹 '::::::::,j/
/:::,:'::::::|::!::::::::|::::! 〉'/::::::,/
//:::::::,:i::|::::i:::|:、:!、 - 、 ,イ::;イ::i
/'::::::::/:::!:::::::|::|:::::i, ヽ ,イ:::::!/ |:::!
/:::::, ≦≧、i:::::::!::|:::::i:::::::`7´|::ト:::/ !:::!
,..':::Y三三三 |::::::|:::|:::::!\:/::::::!::|:::! i:::|
/::,:::{三三三ヽヽ::::!:::|:::、:\ニ 、_!:_i:::|、 !::|
/::::/'::::|三三三三 ヽ:!:::i:::::i::::::i-}_/-{::::!‘. |::!
,.':::::::/::::::∧三三三三三レ!::::|::::::!、} \ヽ:::::‘ i::!
/:::::::/:::::::/:::∧ 三三三三ニ!\!:::::|三≧ 、 ヽ、‘i:!
. ‘::::/:::::,:::::::/:::∧三三三三 |三|:::::!三三三≧≧i!、
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
桂言葉は運ばれてきたコーヒーには目もくれず、深刻な面持ちで口を開いた。
彼女から事務所のサイト経由で依頼があったのは二日前だ。
文面は丁寧だがところどころに切実さが滲み出ており、緊急を要するものでは
ないが、相応の厄ネタであることを感じさせるメールだった。
「依頼というのは、その、私の友達のことなのですが。最近、大学に来てなくて、
SNSの返信もかなり遅くなっていたので、一度様子を見に行ったんです。
講義が終わって、彼女の家に尋ねに行くと、その」
そこで言葉に詰まったのか、彼女は一度うつむき、そしてまた顔を上げると、
「家にはいませんでした。ただ、そこで妙な生き物に襲われたんです」
そしてまた口ごもると、桂言葉は意を決したかのように口を開いた。
「多分、あれって悪魔ってやつなんじゃないか、って」
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19: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:48:25 ID:H96YQWOo0
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. /::i|::::::::::::::::::/:/::::厶 // 、 i|::|i:::|:::::::::::|i
′i|:::::::::::::: /:// .:// \ |::|i:::}:::::}::: |i
. ∩ |:::::::::::::/|/ x云 // 云x|/ ::::::://:::|i へ、変なこと言ってすみません。でも、こんなこと警察に言うわけにも
i |i:|:::::::::::::: |rf℃n / n℃ハ}:::://:::: |i
i |i:ハ〉::::::::::i| Vツ Vツ /} /::::::::: |i いかなくって……すみません、とにかく、あの子のことを頼みたいんです。
rヘi |i:, |∧::::::::|\ ,, , ,, //ノ::::/:: |i、
. i^`ヽ}__,, >、 〉 ::::|\u __ /::::::/::::::|{ \ 「保護、ということでいいでしょうか?」
. i゙ \_}ー- }/ハ::| i\ `¨ .///::::/ /〉....\、\
. | \) //i|::::::| (\ ー=≦ //::::/ //.............\ \ それもありますけど、とにかく探していただいて、危ない目に
. 人 ___,, ィi^ i|::::::|i. \\ //::::/_//................_..} \
. /.........................ノ.i|::::::|i-‐==‐-ミ__x‐=ァ::::/......{...............{...`、 } 遭っていたら守ってあげてほしいんです。
.. /........................./} リ:::::八. . .x<. .(__). ./::::/. \.` 、.................`、 {
/........................./ }/::::/...ハ. . . . . 厂\::::/ ._._._}.....`、.................`、
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つまりは護衛と人探しの両方を兼ねた依頼、ということになる。
悪魔の危険もあるため、貰うならば百万円は超える計算だ。
だが、こんな年端もいかない、それも世間知らずそうなお嬢様がそんな額を用意
できるとも思えないのも現実である。
「いいでしょう、十五万で引き受けます」
「じゅ、十五万ですね。分かりました。言われた通り、手元にありますので……」
「では、指定した口座に前金の振り込みをお願いいたします。
確認でき次第、調査を開始させていただきますので」
また経理担当から愚痴を言われるな、と喜留夫は契約書を差し出しつつ
内心では汗をかいていた。
誰に対しても臆することがないのが喜留夫の取柄の一つだが、彼女だけには
頭が上がらないのである。
桂言葉に、事前に持ってくるよう頼んでいた資料をテーブル上に広げてもらう。
捜索対象の顔写真から住所、その他諸々の情報だ。これらを頼りに、
これからの調査が開始される。
桂言葉の説明を聞いている間、喜留夫は経理担当への言い訳ばかり考えていた。
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20: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:48:37 ID:H96YQWOo0
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21: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:49:21 ID:H96YQWOo0
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~TIPS~
/ ̄ ̄ ̄\
/ \
/ (●) (●) \
| (トェェェェェェェェイ) |
\ \ェェェェェ/ /
. ... /⌒/^ヽ、 ,ィヽ、
/ ,ゞ ,ノ , \
l / / ト >
ヾ_,/ |/ /
| |/
【名前】
加賀喜留夫
【種族】
人間
【レベル】
56
【属性】
Neutral-Chaos
【相性】
破魔無効
【能力】
力-C 魔-D 体-D 速-C 運-E
【スキル】
地獄突き 猛反撃 暴れまくり 狙い撃ち
【装備】
『改造COMP』
黒いボディのガンタイプCOMP。極めて高性能であり、様々な機能を持っている。
独自の改造が施されているが、喜留夫自身が手がけたものではない。
『粗製の短刀』
白木拵えの短刀。
無銘であり、所々に粗末さが感じられる。払魔の呪文が刻まれているが気休め程度。
『喜留夫の拳銃』
FNX-45。カーキ色の拳銃。装弾数十五。ダットサイト装備。
使用している銃弾は呪術師が加工した特殊なもの。
強力な悪魔を相手取るにはいささか力不足だが、それ以外の悪魔や人間には十二分に威力を発揮する。
かなり奮発して買ったらしい。
『喜留夫の狙撃銃』
モシンナガンM1891/30。
かなり旧式のボルトアクション狙撃銃。実際骨董品レベル。
安価だからという理由で愛用しているが、なんだかんだで手に馴染んでしまったらしい。
ライフル弾を撃ち込まれれば流石の悪魔もそれなりに応えるとのこと。
【備考】
年齢:二十六歳
最終学歴:高校中退
職業:私立探偵
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22: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:51:01 ID:H96YQWOo0
~加賀探偵事務所~
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:| :| | |______t_____:| |______t_____:| | :| |______::::| :| |___
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______| :| |_______________:| :| | || || :| |: : |___|
_|__| :| |_|__|__|__|__|__|__| :| | ::ロ||ロ:: || :| |: : | |ニ>ニ>ニ>ニ>
__|_| :| |__|__|__|__|__|__|_| :| | || || :| |: : | |
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\|_| :\|_| \|_|
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事務所の前まで戻ると、喜留夫は深呼吸をした。
事務所はこの望月ビルの地下一階にある。一回はエレベーターホール、
二階はパブスナック、三階は中国人が多く働くいかがわしいマッサージ店となって
いる。珍妙なラインナップだが、それゆえに格安で借りられ、
立地もよかったので背に腹は代えられなかったのである。
両開きのガラス戸から中に入り、エレベーターに乗る。
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23: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:51:20 ID:H96YQWOo0
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ー 、____, '\ `ー 、
, '⌒ ソ―――――・| ∀――――――――――‐∀ l
⌒ヽ‐ / ┌――┐│ l ////// / | |
`X l:ニl | │ l ////// / | |
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/ ` 、 ー==○ ヽ l | |
l \ _, ―――ヽ ◎ ヽ , ⌒ l
/ /ヾ `l l l lヽ___ヽ__________, ' / l
/ ,〉 ヾ ヾ ノノ \------------------- ` ‐ ´
l ・ l l l ̄ ̄ \_ ―――――、 、 _メ´
l 〉 ` ` ―――――'‐' ̄
l l
ヽ‐- 、_ 〉
l l
l l
` ´
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短い廊下を抜け、事務所へと入る。
玄関、応接室、事務室と続いていて、そこから先は居住空間として使っている。
つまり、ここが職場でもあり家でもあるわけだ。
懐のホルスターからCOMPを抜き、撃鉄を下ろす。
きゃりきゃりと金属が擦れ合う音をたてながら、銃の形をしていた物が
開き、小さなモニターとキーボードが現れる。
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24: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:51:33 ID:H96YQWOo0
============三二=-- =============三二=--
εξλ 三二=-- || ┃┃┃ ┃┃┃┃ ┃┃┃┃ 三二=--
σκοΒΑξενξ || 三二= || ┛ ┗ ┛ ┗┗━┛┛┗┻ || 三二=
κψΚσνΩφκτμψ 三二=--__________________三二=-- 三二=--
ρκπδκι 三二=-- 三二=-- 二=--
ρδбθσιρ 三二=- 三二=--ψ 三二=-
ι∩∞∝ 三二=--━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 三二=--┃┃┃ ┃ 三二=--
===========三二=-- 三二=--====三二=--
| |┃ εσκοΒΑξενξ 三二=--
|┃ φκψΚσνΩφκτμ 三二=--
|┃ ιρκπδκι 三二=--
|┃ ┏━┫┳ ┳ ┳┳┓ ┳┳┓┏━┓┳┓┏ ┏━┓┳┏ 三二=--
|┃ ┗━┓┃ ┃ ┃┃┃ ┃┃┃┃ ┃┃┃┃ ┃ ┃┣┻ 三二=--
|┃ ┣━┛┗━┛ ┛ ┗ ┛ ┗┗━┛┛┗┻ ┗━┛┻ ┗ 三二=--
|┃ ξζηοπυω 三二=--
|┃ νιεκσοθζε 三二=--
===== ┃ χφΦΥΨΧοκενηψ 三二=--
|| ┃┃┃ ┃ |┃ ισλοωθ 三二=--
|| ┛ ┗ ┛ |┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━ =============三二=--
25: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:52:05 ID:H96YQWOo0
||ω .  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ||νεξλ 三二=--
||θζε 二=-- ||εσκοΒΑξενξ || 三二=-
||οκενηψ 三二=- ||φκψΚσνΩφκτμψ 三二=--
||ΑΕΜΕΝ 三二=-- ||ιρκπδκι 三二=--
============三二 ___..--ー'宀コ土コ宀ー--,,_||♀§Å‰£χξνφΘ 三二=--
_,,z亡ン-宀>''゙~ ~゙''<゙''¬-- ||ニ辷,,_ΠΜΦ ._____________ 三二=--
=============三二=-- ̄ ̄~弋ニ~~^======| 三二=
||ξζηοπυω 《 / lレ' "二=-- ゙ゝ]「. .lL ゙lL | 三二=--
||νιεκσοθζεニィ‐"^lL 三二=-- ノ广゙'+,,上.」]} |┏━━━━━━━━━━━━━ 三二=--
||χφΦΥΨΧο 木゙弋ー--,,上 三二=-- _上,,..--夕勹レ |┃ νεξλ 三二
||ισλοωθ ㌔_ \. .下二=--___,,..-一''^]「 ./ _ノ'´ |┃ εσκοΒΑξενξ 三二=-
||υρδбθσιρ ゙゙ヘa_ \u廴二=--宀ゥy__上 / ,,ィ‐゙゙ |┃ φκψΚσνΩφκτμ 三二=-
||∽ι∩∞∝ ~~`ーレ廴ニ=--二二ニニ千ー'~~ |┃ ιρκπδκι 三二=--
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
悪魔を使役するための機械、それがこのCOMPである。
喜留夫のCOMPは銃を模した形をしており、ホルスターに収納できるように
なっている。軽量なので取り回しが良いのも利点だ。
つまるところ、悪魔召喚プログラムを内蔵したパソコンである。
青い画面の上で大量のヘブライ文字が踊り、「Summon ok」の一文のみが
英文で表示される。
瞬間、喜留夫の足元に魔法陣が形成され、生体マグネタイトが緑色の燐光となって
部屋を埋め尽くす。大昔の魔術師が儀式に儀式を重ね、日取りに月齢に供物にと
必死になってやっていたことも、現代ではボタン一つでこの通りだ。
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26: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:52:27 ID:H96YQWOo0
..-‐ ¨ ≧ァオ¨_ミ:x.__
,ィニjァ='ィ ⌒´辷彡ス `Y
r:ヘ.Yツ / / i l i ヽ ` ヾ) i |
トi ,ィ/ ′ i l l l | | l .ハ (( | !
| jヘトN i | | ィ7从┼l‐-i! }` !リ
レ′ l Vアフ彡ィ/ j」⊥j、! イ ハ、
/ 八 くヾrjYtリ ´ヒ:z:ノ;7 / Y ヽi それで、契約は取れたの?
/ / ヽ卜辷r" : "" { ! ハ ト-ミ: ____
√ァ’ / トミ Ⅵ( ‐.‐ 人ヾ { , マ≧ レ==ミ`ヽ 「ああ、取れたよ。十五万でな」
/〃 /イ ャ‐ミxヾ:`へ、_ ..√てハ>"{ ヽノノ ヽ\
人{/ / } }rリ) r' `’ ) _/ `ヽУく )/ ……十五万? 桁が足りないのではなくて?
.-一=彡 ハ /r‐ " ,ィ Yヽ辷彡= _厂Y `う レ/ \ ー=彡
ィ´  ̄ /ヾく | =彡 リ_ / > < 1| {:_ /イ\ 丶 「いいや十五万だ。仕方ないだろ? 相手は子供だ」
/ / /\-ィ 「ぇ≧z\_/ィミУ { 〃´ /ヽ \
/ 〃 ′ Y | " ヾ ̄  ̄ /_ }.:′ / } ヽ
.ィ i { Lk、 ! ¨_ノ /=ミ 〉/⌒ヾ ハ
/ { ヾ:、 r'¨ ` rァヘ:、 ヽ しぅ〃 : ヾ ∧ }l /
く 八 ヽ/ /ソi } ` :.、 } ソイ} } i 〃 /
ハ ヽ r='=<r彡八V_ ==≧<ア/ ¨{/ ト、 v/イ 八
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緑の燐光が集束し、やがてそれが徐々に形を成していく。
そうして現れたのは、少女の姿をした悪魔だった。
百六十もない背丈に、白桃色の長い髪、白薔薇を模した眼帯、
ウェディングドレスを縮めたような白い衣装は、
そういった趣味の少女に見えなくもないが、正真正銘悪魔である。
悪魔ではあるが、敵対する危険はない。何しろ彼女は自分が契約した仲魔だからだ。
寝首を掻かれる心配もない。何しろ十年来の仲だ、やるならとっくにやっているだろう。
そんな彼女に今回の報酬金の話をすると、穏やかだった彼女の表情は
途端に険しくなった。臓腑を冷水に浸したような感覚が喜留夫を襲う。
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27: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:53:56 ID:H96YQWOo0
/ / // /|ノ ゝ/ / / / / / // l ト_l_r/ / / ill / . / / l /
;/ / / |- └//_/ / /l /l il/ //yγ|/ l /|/ / // | /l / /
;;/r ̄´ ̄´ ` `l_、 //l //l // / l/ | || / ;/ : l| / /// / \ /l/ / /
;:rー´,yー´/l⌒lゞノ l/ l /l//lil / / i | / // / /il// |/ / / /
l il 〈l〉//ヾ`\ lーl/ll/ / /l/ l l | / | / / /l/ / /l / / //
l i Y r´ ♂i ヾl〉ーll / l l / l_/ll/ l // l ト 、/ / /l / / l/
\τーl l / yl l 〉 l/l l l l /ll // / // / l / \ノ/ l / / //
` 〉\ ヾ y_て / l ll ll l i ll / / / / / / / /l/\l // //
;;ー、_\_/l//ヽll l l l l / /_,--/- /_// // l\// //
L_ゞーヽーー´ー)l》〉il l i l / /´ //彡==ー-/ / / // /
ヽ l\il_/ ̄/ /´ /i/ ´ / 〃 : : ;;;;;;;;;::;;ミ‐_l/ / / / / あらあらまあまあ、とってもお優しいのね。
) l `´ (/ / / / ;∥;;;;:.. ::::::::::::::ノ/ l// /
!/ ´ ´ / ´  ̄\::::::::::....℃/\l / / で? 今月が赤字だって覚えていらっしゃる?
/ ゛゛ゞ;;;;;;;;/:://l/ / ;/l
ヽ_ ― ゛゛// // / / l 「ぐっ……ま、魔王マーラ撃退で稼いだろ!
― // / / / /l
、_ ― //;/ / l l あの分はどうしたんだよ」
\` ヽ、 ;/ / / l l /
ヾ__ > /// / l l / それでも赤字よ。あなたが相場通りに額を
、 /〃 / i l /
\ / / / l l / 提示していれば、話は違ったけれどもね?
;;;;;;;\ _ -、 _ イ / / l l /
:::::::::::::\ _ _/ l;;;;;;;;;// / / / / l 「しょうなのお?」
l  ̄`;;;;;;;`‐‐=-ー ´;;;;;;;;;;;;〈 ヽ/ / / / / li
「;;;;;;;;;;「  ̄┐;;;;;::::::::::::l / / / / / /
l i::::::::::::::) lーーー´ / / / / / /
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そう、この事務所の経理担当とは彼女、夜魔クイーンメイヴなのである。
悪魔に経理を任せるなんて! と絶句するサマナーもいるだろうが、
自分には学もなければ細かい計算をする能力もない。勉強は苦手だ。
その点、彼女であれば問題はない。なんせコナハタの女王の神格を宿している
のだ、政治経済はお手の物である。なので、その類は彼女に任せきりなのだ。
「あれだけ霊石をただで渡しておいて黒字も何もないでしょう?
ただでさえ依頼が少ないのに、どうしてそう余裕ぶれるのかしら?
人情家なのは結構だけれど、自分の懐を見てからやっていただけると幸いだわ」
なので、これだけ言われても反論の余地はない。
すまない、本当にすまない、と頭を下げ、許しを請う他ないのだ。
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28: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:55:46 ID:H96YQWOo0
、 _, .} ,メ l ',:: ヽ::::. ',: ヽ
 ̄,´/F>`ミi_ i i ';:: ' ;: ';:: ',
,⌒Yiー<⌒ハL i '::; ',、 ';:: }
,イ冖!/てヾVYjヽ_, l、 , ',斗七 '.,ヽ 人,,リ
从r'弋心ノ',イj从i l....ヽ/ '; :::\ l ::/イ
.< ゝ._`フノノハ、 .i l::::''ゞ从_i⊥、;\j .i
弋 _、.>√勿/ヽi. ハ V{ィrャミ < 丶_ ……ああ、勘違いしないでちょうだい。
)) /´ `.i`...'.,::、 '、 ハ `.辻,ィ'}  ̄|
l ::: ::',::\ iヽ |下乙 / 別にそういうところが嫌いというわけではないから。
l :: ;;; ::ヽ| ゞ /
,' ..:: ,:'::, :::| (
,' :: .:: ::: ::|`( Y ヽ、 /
,' .:: .:: .::.. ::: :| ,ゝ‐イ .ノゝ___,,ノ
,' .::: ..::: .::: ::: :::!" `丶、s ̄`)
,' .:::/ ::: .:: :: ::/ l .l ヽ ̄)
,' ::; ' .:: ::: ノ,/ ヽ、 ヽ / /、ゝ
. / ..::: ::: // `丶、` '彡,廴`;;;;;
..,,,_::,,__.:,,,,::://‐-、__ `丶 .ヽ /∧/|
Y  ̄ - ,,,, ` ‐ - 、 .Y..∧/|
`ヽ ヽ|∧//|
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笑顔の罵倒が数分続いた後、メイヴ、と喜留夫は呼んでいるのだが、
メイヴは事務室へと向かっていった。色々とやることがあるのだろう。
とにもかくにも、これから調査を始めなければならない。
「前金の振り込み、確認できたわ。それで、まずは大学に行くの?」
「いや、自宅の調査が先だ。そっちは悪魔の巣になってる可能性が高い。
その、清浦刹那だったか、その子の安全のためにも、先にそっちに行こう」
「そ。じゃあ、自宅が外れたら大学に向かいましょうか。装備は大丈夫?
弾丸は十分?」
言われて懐を見る。祓魔の呪文が刻まれた短刀に、カーキ色の拳銃と消音器、
そのマガジンが十個にマガジンポーチと一式揃っている。
「おう。そんじゃまあ、いっちょ稼ぎますか」
黒のビジネスバッグに身代わりのヒトガタや、使うことになりそうな
着け髭や帽子などの変装道具などを捻じ込み、メイヴに「出るぞー」と呼びかける。
探偵の仕事はここまでだ。ここからは、デビルサマナーとしての仕事となる。
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29: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:56:27 ID:H96YQWOo0
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30: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:56:43 ID:H96YQWOo0
-,ヘ‐/:丶、
/:/:/ : : : : \:.\ 、__
/7 ア/: :/ : : : : : : : 丶:.\ |7 n .,7 /7
_,〈 / }: : : ,: : : |: : : : : : : :ヽ: :',ヽ | |,ル'/, フ
<ア/}/: : : :{.: : :.|: : : :.l\: l: :',: :',.、ヽ r 、| /
./ : : /: : : : 从匕: : : :.匕⌒: : l : |: :Y ヽヾ- ` { やっほ、何の用~?
/: : : :|: : l: : {,ィ苳ミ \ | ィ苳ァリ : }: : :. 丶 ` ノ
/:/ : l\∧: ゞVソ 、 り }: |:./ : }、:. {ー─}
{;' {<^¨^~、`^ゝ、 ノ:./': : : } ',} 'ー─l
| {く_ r' 7 ヽ ノ /: : : }^ソ- 、l /- 、 |
| `ヽ< >ー‐'7乂:.イ z‐ミ } 厶=ミ.、 }
| \ ミニニ〈: : :ノ `ー、__/_ ゙v
〉 ※。 ミ´ ̄〈: : ) /ニニニヽノ
〈 ノ ゚`''*。(: : )※ /ニニ丶ニニ}
【堕天使パイモン LV52】
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
清浦刹那の住んでいるアパートは、古びた薄紫色をしていた。
木枠は所々朽ち、階段の手すりには赤錆が目立つ。
大学生が一人で住むにはお手頃な家賃なのかもしれない。
喜留夫は清浦刹那が住んでいるとされる一階の三号室の前に立つと、
COMPを抜いてキーボードを叩いた。やがて喜留夫の周りに生体マグネタイトが
撒き散らされ、二体の悪魔がその姿を現した。
メイヴと、喜留夫の仲魔の一体である堕天使パイモンだ。
見た目は女の顔をした男、というかなり奇怪なものとなっているが、
これでも立派な序列九番の地獄の王である。
西洋風の鎧に赤いマントを着込んだその姿は確かに王らしいが、
幼さの残る少女の顔がその全てを打ち消していた。
「おう、いつもの鍵開けだ。静かに頼むぜ」
「うん、まっかせて」
喜留夫にはピッキングの技術がない。かといって大家から鍵を借りるのも
難しいだろう。となれば、ここは悪魔の出番である。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
31: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:57:07 ID:H96YQWOo0
__
ノ: : : __: : : : >一┓
/: :-=ミ:.\\:/=Y=ミ
/:/: : : : : : :\:ヽ 辷リi: :ヽ ヽ
/:/i: : : : : : \: : :ハ Ⅵ{: : : Vノ
ノ:イ: |: :{、: :.{ヽ:/斗ミ: : 弋}: : :\ _
|: :|i八_\ヽ 伐zソ: : : :ゞイ: ハ⌒
|: :|l: : :x=ミ⌒ }ハ : : |:从: :乂 ちょろいちょろい。
_ |:八: : : :ゞ' 、 _ ' / }: 从/ ーァ:.、_
/ 7⌒ゝ{ 〉: \个=--- '≦:/< >:i廴_ んじゃ、潜入開始だね。
. / vr{ \: {≧=ー{ニノイ< 弌 ⌒〉:}ミ、
/ | }八 \ Y/´ > > /⌒: :人
, | |\ r'V{/\__彳 < / Y: : : /
/ ; √ ≧=彡く: :rvYr: : :|}へ从{´ /イ }: : ∧
, ; |:i:i:i:i:i:i:iヘ\≧=--=<大> ,/ { ヘソ: :}
/ ; |:i:i:i:i:i:i:iYニr=r-‐=rへ \ \ } 〉: : :イ
, | |:__:ノ:i:i:i:i:iニYYニニyゞ /\ 、_,ノく: :Y: r'
i | | |ニ \:i:i:i:}ニ}ニニ /ニ {:i:i:i}≧=ミ\: ノ:.ソ
| | | |ニニ=\ノニ{ニニ {ニ彡、:ir{ニニ/ /''\
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
パイモンは鍵穴を覗き込んだ後、指先をくるくると回し始めると、
そこから小さな氷ができた。魔法で生成された氷はみるみるうちに大きくなり、
鍵の形を成した。
それを鍵穴に差し込み、回す。がちりと音が鳴り、パイモンは得意げに鼻を鳴らした。
「便利なものよね」
隣のメイヴが腕を組みながらそれを見て、呟く。
実際、パイモンは戦闘において劇的な活躍をするような悪魔ではない。
だが、とにもかくにも便利なのだ。こうした工作活動から魔法による支援などを
得意としており、私立探偵の皮を被っている身としてはありがたいことこの上ない
存在なのだ。見た目に関しては、ひとまず置いておくとして、だが。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
32: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:57:24 ID:H96YQWOo0
∩
( ⌒) ∩_ _
/,. ノ、 i .,,E)
,、 ,、 / / ゚)゚), -、 / /"、
_n , - (゚(゚ ))> ./ /⌒ヽ_''_) ノ' ゚)゚), -
( l ( '_,r'⌒゙i / /ヽ_,,__ \/ /⌒ヽ_''_)
\ \ ∠_ ,,ノ ( / ヽ_,,__ \ n
ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ |  ̄ \ ( E)
/ / \ ヽ フ / ヽ ヽ_//
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
COMPを懐に戻し、代わりに銃を抜く。
サプレッサーをはめ込み、マガジンを確認して、スライドを引く。
事前にCOMPのエネミーソナーを確認したが、周囲に悪魔の気配はあるものの、
それほど強いものではないらしく、下級悪魔のものではないかとのことだった。
それでも、用心に越したことはない。
いつでも懐の短刀を抜けるようにジャケットの前を開け、銃を構えながらドアに
手をかけ、開く。
部屋の中は、とても整理されているとはいえない状況だった。
最初は掃除ができないタイプなのかと思ったが、どうもそうではないらしい。
ダイニングキッチンの台所の上では皿やコップが割れ、床に破片が散乱している。
テーブルは真ん中から折れてへの字になっていた。
「パイモンは周囲警戒、メイヴはそのまま待機」
仲間に指示を出し、銃口を部屋の奥へと向ける。
寝室の扉の先で小躍りをしていたのは、黒い小人のような姿をした何かだった。
この小さな悪魔にはよく出くわす。幽鬼ガキだ。数は五匹。
どうやら彼らが部屋荒らしの犯人だったらしい。
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33: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:58:01 ID:H96YQWOo0
`ヽ:、 . i:{
ヾ:、 {:!:.、
ヾ:!. ヾ:.、\
゙::. .゙ヾ:.、ヽ.
_, .= - イミ、 ゙、:. . `ヽ:.、
ィ:7 イ壬ソィ=-ミ、_ ヾ:.、: : .、:}、
/i ! ゙弋辷彡ニ=ミ、`ヽ `ヽ:、 :i:l:、
/ο{ 、..:::ヾ.煙乂大ヾ.ヾ:.゙. ヾ:、. ゙:.、.
/゚ 、:::、::ー-:::7´ ヾ:.ハ:.i:} j } .}:i:!
,'f '! ..:::"::::::::::::::ァ′ }:.! ゙ヾ:、 (( . ,':/
!.i ゙、..::::::::::::::::::::::/ リハ \、_...._ ):、:.i!
ヽ;、;丶:::::::::::::/ (( 丶:‐、`ヾ::ミ、___..._ノノ.:{:.:
` 、::::゙ー/ `ヽ.、`⌒ヾ、`ヽミ_:.:.....:.::::::ノ'
` ̄ ` ̄⌒``ヽ入_>―イ
ヾ:.、`ヾ=彳
) }
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
両手でしっかりと銃を構え、ダットサイトを覗き込む。
幽鬼ガキは目が良くないので、隣の部屋にいる自分たちには気づかずに
虚空を見つめて唸り声を上げていた。
頭に狙いをつけ、引き金を引く。
次の瞬間にはガキの頭は弾け飛び、その中身を床に撒き散らした。
仲間の死に動揺したのか、ガキたちは騒ぎ始め、ようやくこちらを見た。
間髪入れずに二発、三発と狙いを移しつつ銃弾を撃ち込む。
ぱすっ、という軽い音と共に弾丸が射出され、ガキたちの頭と胸元を抉っていく。
十秒と経たないうちに、寝室はガキたちの臓物と血液で滅茶苦茶になった。
COMPを抜き、エネミーソナーを確認する。
周囲に悪魔の気配はない。
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34: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:58:16 ID:H96YQWOo0
___ __ _))r-、ィ⌒ヽ
{薔} λ廻 }⌒ヽ
/./ 辷ニソ
/ / l l l l (( \
/ / l l| /i| i| i| | | l \
. / / l | l | / i|/_|/ | ! ! | \
/ | /! | r// イ示ハ|/! /l l i
. / /レ' l l必}) 弋沙/ l l l| | 妖精は無暗な殺生は好まないわ。
/ / l,リゞ彳, レ! l |
. / / / ノ八 _ / / i! 多分、命は取られてないと思う。
/ / / l l ゝ、 _ イ / |
.′ i / / / /_fTフ./ / ヘ. |
i / / / / /r| /ノ i i! しヘ ヽ
/ / / / / /ノfi フしヘ! |ィ⌒´ヘ
/ / / / / { { ノ≫≪ | |ノ⌒てi
i i ノ / / ヽ У|≫≪ λ \ ̄`>
// ( ( \ i fてzr-z_ノ \ \ ノ
/ノ i \ ) ) ⌒乙 / /
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「清浦刹那って子、こいつらに食われちまったのか」
すかさずパイモンが否定した。
「いんやー、人の血肉の匂いはしないし、多分それはないんじゃなーい?
多分ここで悪魔に連れ去られるなりなんなりして、その後でマグの残り香に
釣られてきたんじゃないかな」
「ん、ガキ以外の気配がするのか?」
「そうそう、見てこれ」
パイモンが指差す先には、フローリングの上に細かい砂のようなものが落ちている
のが見えた。
「妖精の鱗粉ね、これは」
「お、さすが元妖精。分かるもんなんだな」
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35: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:58:50 ID:H96YQWOo0
___
/ \ しゃーねーな、後回しにしてた大学に聞き込み行ってみるか。
/(● ) (● ) \
/ (トェェェェェェェェイ) \ なんか分かるかもしれねえし。あとヴィクトルあたりに、
| l^l^lnェェェェ/ |
\ヽ L / 妖精の巣がここらへんにないか聞いてみっか。
ゝ ノ
/ /
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
とにかく、ここでの収穫はなしということだ。
銃を懐にしまい、そそくさと出口へ向かう。
長居して他の住人に見つかっては面倒だ。警察など呼ばれた日には
たまったものではない。
「人間の大学? ねえねえ、僕も観に行っていい?」
「恰好がなあ……悪いがCOMPで大人しくしててくれや」
頬を膨らましながら、パイモンは渋々承諾した。
子供ならともかく、大学生にもなる人間が妖精に連れ去られるのは稀だ。
何か事情があるのかもしれない。
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36: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:59:35 ID:H96YQWOo0
┌──────┐
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│::::::::::::::::::::::::::::::::│
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└──────┘
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└───┘
┌─┐
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└─┘
┌┐
└┘
□
・
37: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 01:59:48 ID:H96YQWOo0
~瑠璃が丘大学~
; : : ;、: : : : :ミ:、_ |: : : : : : : : : : : : : : :
: : : : :ミ: : : : ):゙': :'ミ _________|: : : : : : : : : : : : : : :
. ;_-=-, , : ://: :∠ミ |:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:|: : : : : : : : : : : : : : :
: :; : : : , :Y: :ノ: : :,ヾ,_ /| ‐- _ _|:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:i:|: : : : : : : : : : : : : : :
: : : : ; : : ミ: :ヾ: : :ハ;⌒ミ / | | l ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|: : : : : : : : : : : : : : :
: :ミ: : : : :ノ: :イ: : : :,:j: : :,ト、_, _ / | | | ┬ ―――――┬ |: : : : : : : : : : : : : : :
;'"; :゙; : : :ゝ: ミ;: ,: :^i, ;:ミ: : : ゛:j / | | \ | |_____.. | |: : : : : : : : : : : : :-‐
| |: : :;./゙/j: :,:. ;ミノ: :r;':, :;.ミ/ | | \ | | |__|__|__|__|__|__l | |: : : : : : : : : : : : : : :
: `ヽ: :,/, レ゙/,: :'.:; ;人: :/ /| | |\ \| | |__|__|__|__|__|__l | |_: :-‐: : : : : : : : : : :
: : : : :ヾ /; ': ; : : ,:_:,'/ /,:i^| | |\\ \!  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | |: : : : : : : : : : : : : : :
|`'↑/゙/-‐=i⌒´ / /,.:l || | | \ヽ l¨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |: : : : : : : : : : : : : : :
| | /;. || | | / / . |: | || | | | | l―――――‐┤ |: : : : : : : : : : : : : : :
| | /:゙;^ー=‐/ /,:i::| |: | || | | | | |_______」 |: : : : : : : : : : : : : : :
ノ゙⌒:-‐=゛/ /, l |::| |: | || | | | | ||__|__|__|__|__|__| | |: : : : : : : : : : : : : : :
: : ': : : :/ /, 1:.:| |::| |: | || | | | | ||__|__|__|__|__|__| | |: : : : : : : : : : : : : : :
': : :':/ / , | |: :| |::| |: | || | | | | |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄¨| |: : : : : : : : : : :-‐ : :
: ;/ /, |::::| |: :| |::| |: | || | | | | |~ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |_: : : :-‐: : : : : : : : :
" /, イ::||::| |: :| |::| |: | || | | | | l―――――‐┤ |: : : : : : : : : : : : : : :
. //:l l:::||::| |: :| |::| |: | || | | | | |_______」 |: : : : : : : : : : : : : : :
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捜索対象の通っていたとされる大学は、かなりの偏差値を誇る市でも
有数の大学だった。高校を中退した喜留夫には到底縁のない場所だったが、
一応何度か仕事の関係で来たことはあった。
が、そこで一つ、問題に気が付いた。
正門の脇に立つ小屋の中に座る警備員の存在だ。
私立探偵と名乗ったところで、通してくれるかは正直言って怪しい。
どうしたものか、と悩んだ挙句、物陰に隠れてジャケットの下でCOMPを操作し、
メイヴを呼び出した。
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38: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:00:03 ID:H96YQWOo0
____
/ \
/ \
/ (●) (●) \
| (トェェェェェェェェイ) | 俺じゃあ、あそこを通るのは少し無理があるからな。
\ \ェェェェェ/ /
. ノ / )ヽ く メイヴ、手を貸せ。
( \ /__ノi ) , )
. \ ゙ / ヽ ヽ/ /
\_/ \_ノ
| { | ハ ' 乂込りイ、`ヽ
| ' | ミ、 i |ハ ゞ=彡ノ/z i
| ヽ .! ハ:}|i: ! { ' i ゞ=ソ i:!
.i | ハ:{. r=彡|{|ノi |. | ヽ 八
:| ! >ー从_}{ i ! |.川 i{ `ヽ | ! ハ 、 ゙
|{ / ーヽメ 八ハ!{ !ノj_z_j | .'{ ヽ
ハ 人ハr=ミ ハ ハ ノ从 7Zマ.く_ ' | {八 あら、こういうのならパイモンの方が向いてるのではなくて?
/ }込八irくイ_ノ ノ i.i゙;;;}j ' ハk , ! i ヽ
{ :{ゞ=ミ_ノ/ , ゞー" / ノ/ |i ゝ 「いや、お前が適任だ。ほれ」
.八 ∧ '' j:i '' ノ "″,イ./{ 八 `ー
. ヽ∧ 八{_ノ、_ ./rーミ八 `ー -
\ヽ.  ̄ ´ イハ }vー 、`ー -
`ヽ \> . ィ´,⌒´ ノ `ヽ
ハ \ ヽハ≧=彡} `ヽ `ヽ ハ
丶. \ }、 { / ノ }
\ ヽ ノ iト、∨ \
39: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:00:21 ID:H96YQWOo0
____
/ \
/ \ 「……これ、女性ものの服じゃない。こんなのどうしたの?」
/ (●) (●) \
| (トェェェェェェェェイ) | いや、こんなこともあろうかと、鞄の中に忍ばせといたんだよ。
\ \ェェェェェ/ /
⊂ ヽ∩ > \ そこのコンビニでトイレ借りられるから、そこで着替えろ。
'、_ \| |
\ \ / /
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そうして取り出したのは、白いキャミソールとショートパンツだった。
同行者や証言者役としてメイヴにいつか着せるかもしれないと思い購入し、
そのまま箪笥に封印されていたものだ。やはり、何が役に立つかは分からない
ものである。
服を手渡すと、メイヴは何とも言えない表情になった後、俯いて
「分かったわよ」と承諾した。何か気に入らないことでもあったのだろうか。
とにかく、今はメイヴに頼らざるを得ないのも事実だ。
金髪とも白髪ともいえない、悪魔特有の不思議な色合いの髪と眼帯が目立つが、
喜留夫が行くよりはいい。自分の場合、捕まれば懐から銃や短刀がごろごろ
出てくるのだ。
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40: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:00:43 ID:H96YQWOo0
,, _<(必ヾー 、
,,r=y' 》ヒソ} \
, '´</ ヾヘ ',
i t 》 `i ハ ト、
ゞ/ 《/从ハナ父 / !ハ | ハ
/ 》 !、!ィェ!,リ弋ワノ / !` >、 ! ',
/ 从ソ! 必グ //./ / /\ |`j !
/ / /i!ヘ! 》`_ '/イ´/ / ヽ |/ /
/ イ ,' ヘ''> 、 イ´ ,'! .,' ! i i! / ……寒いわ。
', / / r| !__,,/´ | !>| ヽ !/
ハ! .ゝ. //! 人 r '´/ イ ⌒ヽ, `、
>' / /,'ノノ //! ∧ ヽ
/ 》/ ( !'ーくヘ | \ ' ,
/ / '';;'' ! ! | ' , ヘ
./ / i' !| ! / i、 ハ
i | ヽ ,,;; ;;,, / | ,' / | i
! !`, );;'' '';;;;;;;;;;;;{;;;;| / / / /
ヽ i 丶 ,! ハ/、 / / / /
ヘ ヽ ヽ i i ,' / i / /
) /! / | i! V V /
/ / | / .! |;;;ヘ ! ,' ィ ヽ
/ ハ | ./ i! i!;;;;レ ,7/ ハ \
/ / / | / i! | |;;;;;;;!//, i ∧
i /く / .|_,,, ----L___!、 !;;;;;;i'/ | / !
! .! Y;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`へ;;;;; ! V .ノ
ヽ ヾ、i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|, / /
)ヽ 》、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;イ | i /
//´) ! ヽ ー--^i!^ー---'''´ |/ イ / \
( く. ソ i ! |' /!| iヾァ 、!
) / ./ ', !/ 'ハ V /
/ / ! | / > ヘ、
( / 、-| | i / ,へ、 `i
`ヽ、 ヽ| ハ |;/ ∨´`つ ノ
r-ァ ,' i i'i t! / /
i ヾノ | .i 'i i`ー' .| i
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数分後、コンビニのトイレから戻ってきたメイヴは、立派な人間の女性に
化けていた。血管まで透けて見えそうな白い肌を露出した姿はとても寒そうだ
ったが、それ以上に小柄ながらもすらりと伸びた四肢と胸元で確かに主張して
いる小振りな胸が質素でありながらもどことなく淫靡な雰囲気を醸し出していた。
顔を逸らしそうになりながら、自分のジャケットを脱ぎ、肩からメイヴに羽織らせる。
「それで行け。清浦刹那についての聞き込み、頼んだぞ」
「分かったわ。ところで、その」
「なんだ」
「似合っているかしら? 私も人間の服を着るのは初めてなのだけれど」
「お、おう、似合ってるぞ。綺麗だ。とにかく行ってこい」
その言葉を聞くと、暗かったメイヴの表情は満足げなものになり、
すぐさま大学へと歩き出していった。
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41: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:00:53 ID:H96YQWOo0
{ i ′ {f^ : ! ! i i :!.i | i i: i! !
{ i :| :| _j 乂__ :! : :! ! :|: !:| ! !:| i| i
. 八 :!| :! {f i |:⌒ヾi :l i l i斗‐==ー- ..,_
ハ !| :! {{ :! :| }} :|i :! :l l !:|/イ从}/Ni{ i
. } :| :! :! 乂 ! :| .≠イ !: | :! 从斗≠示えメ_,ル
, } :| :! :! {{ :i :| .イfr「⌒ー=ミル:从ハ! イハィイ.: r=ミ:ハ抃 { ただいま。成果ありよ。
/,.:} :|八: | :八乂_刈ル,.ノ rfゥ^} }ハ/ ) }/ ,∨乂り.:ノ 从{
イ ィ } :|ハ ヽ:! :\乂_人}气ぇソ__ノ 「 ^冖冖゛ 乂
ノ , . !{ } リ ! ⌒ヾ ∧ :} 乂r-<⌒Y f´/ /
. / , i /イ: , /i :i 八____廴_彡^ , _ 八{ {
/ /: i // :i 从ハ八(___ -‐=ミ }乂:{
. / //i | : // | //:ハ∧ :ト、 ̄ (イ__) f ヽ 从ハ
′ ′:| //. : / } ∧ :\  ̄ .ィ"/ ハ {
八 ′ :|:/ :} : ∧( ≫ イ 乂 ノ 八
:{ i{ ハ: / } i ハ}ノ ⌒ヽf⌒77r-く⌒V「{ {{ (( {
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
正門で待ち続けること数十分、ようやくメイヴが帰ってきた。
上機嫌そうな目つきから察するに、どうやら収穫はあったらしい。
「いじめ? っていうのにあってたらしいわね、その子」
メイヴは人間であれば誰もが聞いたことがあるであろう単語を口にした。
「不愛想で何考えてるか分からないって、女の子たちからは不気味がられてた
みたい。結構な嫌がらせを受けてたみたいね。
あの桂言葉って子だけは、同じ高校の出身ってことで仲が良かったらしいわ。
男連中からは、完全にヤれるヤれないだのしか聞けなかったけど」
それからメイヴは、こう聞いてきた。
「ねえ、なんで人間はいじめなんてやるの?」
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42: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:01:07 ID:H96YQWOo0
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/ \
/ \
/ (●) (●)\
| (トェェェェェェェェイ) |
.〉 ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
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「いや、いじめ自体は、人間が大勢集まると自然に起こるんだよ。
アイデンティティってあるだろ? 俺はこれこれこうだから存在する意義があるんだー
ってやつ。それで一番単純なのが、優れている、って理由だ」
「そのアイデンティティといじめが関係あって?」
「ああ。自分の存在意義を確かめるには二つ方法が合ってな。
一つは努力して結果を残すことだ。もう一つは他人を蹴落として見下すことだな。
結論として、必死こいて努力するより、誰かを見下して安心した方が手っ取り早いし
楽なんだよ。だからみんなやるんだ。誰かをいじめて、尊厳をぶち壊して、服従させて、
俺はこいつよりましなんだって自分を慰めるんだよ。あと、あれだな」
「あれ?」
「暴力性っていうのは誰もが持ってるものだからな。いじめってのは楽しいんだよ。
だからやるんだ。単純だろ?」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
43: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:01:28 ID:H96YQWOo0
\ ハ,__,.、\\ \ x ´ \ ヽ \
ヽ //´~ ̄`ヽj 丶 \/ヽ\ \ ヽ \
Y:/ 丶 \ \\ ヽ/\ ,ィt ヽ \ \
l:lヽ __ \ \\ \ ヽ,ィ勿ト、ヽ ヽ \ ヽ
レ'乏二ミミト、\ \ヽ ィ冬z亥ヾ \ \ \ ヽ 不思議ね、人間って。
::Y //r卅ヾ ヽハ ヽ 丶 ` ト、 丶 ヽ \ ヽ
`l j l lリl リ リ l lヽ ヾ | ヽ. \ \ \ ヽ 「そうでもないさ。一週回って単純だよ。
! V戈ニ少ン リ ハ 丶 ヽ \ \ \ ヽ
ゝ、匁辷k彡'' _ /ト、 \ \ \ \ \ヽ っと、ヴィクトルから返事が来てる」
V ヽヽ `Y:! ___ ノ ,.'__ン /ヽ \ \ \ \ \
. ヽ \>l:}、 イ'´ / \ \ \ \ \
\ \ゞ= '≧ ─ -- < ̄l 辷=、 \ \ \ \ \
ヽ\ \ \弋,.イ ̄`ー' V' !_ r'\ \ \ ヽ ヽ
. \\ \ \7ヾ ヽ l 丶 | \ \ \ヽ ヽ
\ ヽ ヽ ヾ { ハ V /ー' ヽ ヽ ヽ ヽ
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
メイヴが納得したのかしていないのかよく分からない表情で相槌を打つ中、
胸ポケットのスマートフォンが鳴った。
取り出してみると、ヴィクトルに送ったメールの返事が来ていた。
「妖精の巣ならば、以下の地点に妖精が多く見受けられる異界が出現している。
何か面白いものがあれば持ち帰ってきてくれ」といつも一文が添えられていた。
ヴィクトルというのは、阿久戸湾にある完全予約制の高級ホテルの地下に
居座る不気味な男だ。六年ほど前から別の町からやってきたらしいが、
詳しくは知らない。とにかく、明確なのは悪魔の研究をしており、サマナーの
サポートが可能だということだ。
メールに添付されていた地図の画像を開く。
異界化している場所は、ここからそう遠くはなかった。歩いて数分という距離だ。
メイヴを連れ、早速向かうことにした。
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44: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:02:02 ID:H96YQWOo0
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!ソ;ハj|W "" Vv,w,.vw,.v"ji,,Iw,,MW w,,Mv,w,.vw,.vW "" V"ji,,Iw,,MW "" w,,Mv,w,.vw ,,,,,.., ,vv
"~'"'"~ ~""~'"'" ~~""~'"'" '"'"~~""~'"'" ~ "'''~"''""'''~"''" "'~"''"''~"''"
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
土の匂いと草木の香りが漂う空間で、私は座り込んでいた。
「ね、いいとこでしょう?」
幼い女の子の声が頭の中に木霊する。
「あなた、とても酷い目に遭っていたわね」
「あなた、とてもいい子なのにね」
「ここで一緒に暮らしましょう? そうすれば、いつかあなたも立派な
妖精になれるわ」
「空を飛んで、花の蜜で喉を潤して、木の枝の上で眠るの」
ああ、それはいいかもしれない。
どうせあのまま、あの場所に留まっていたところで、辛いことが待っているだけ
なのだ。小学校が終われば中学校が、中学校が終われば高校が、
高校が終われば大学が、大学が終われば社会が待っている。
言うなれば苦難のエスカレーターだ。そこから抜け出せるのなら、それも
悪くはない選択肢なのかもしれない。
頭の上を飛び交う小さな女の子たちを見上げながら、私は倒れ込んだ。
少し疲れた。ちょっとだけ眠ろう。
「あら、お昼寝? いいわね、わたしも一緒に寝ようかしら」
女の子たちが空から降りてきて、私の胸の上で煌めく羽根を畳む。
妖精というのだろうか、こういう生き物は。とても綺麗だ。
こんなに綺麗になれるのなら、そう思い、私は瞼を閉じた。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
45: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:02:18 ID:H96YQWOo0
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46: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:02:28 ID:H96YQWOo0
____
/ \
/ \ ……なあ、こんなところに森なんてあったか?
/. u (ー)ili(ー)\
| (トェェェェェェェェイ) | 「なかったわね。十中八九、異界化の影響でしょう」
\ \ェェェェェ/ /
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
異界化しているとされる公園は、明らかに異常な空間と化していた。
外観はなんともないのだが、公園の敷地に入った途端、巨大な森の中へと
放り出されたのだ。何も知らない子供が迷い込んだら大変だ。一刻も早く、
この公園から引っ越してもらわねばならない。
COMPからメイヴとパイモンを呼び出し、周囲の警戒に当たらせる。
足元に目を凝らしてみると、スニーカーの足跡が見つかった。
恐らく、これが捜索対象のものとみていいだろう。他に足跡はない。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
47: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:03:54 ID:H96YQWOo0
、 _, .} ,メ l ',:: ヽ::::. ',: ヽ
 ̄,´/F>`ミi_ i i ';:: ' ;: ';:: ',
,⌒Yiー<⌒ハL i '::; ',、 ';:: }
,イ冖!/てヾVYjヽ_, l、 , ',斗七 '.,ヽ 人,,リ
从r'弋心ノ',イj从i l....ヽ/ '; :::\ l ::/イ
.< ゝ._`フノノハ、 .i l::::''ゞ从_i⊥、;\j .i
弋 _、.>√勿/ヽi. ハ V{ィrャミ < 丶_ ……連れ戻すの?
)) /´ `.i`...'.,::、 '、 ハ `.辻,ィ'}  ̄|
l ::: ::',::\ iヽ |下乙 / 「まあな、それが依頼だ」
l :: ;;; ::ヽ| ゞ /
,' ..:: ,:'::, :::| (
,' :: .:: ::: ::|`( Y ヽ、 /
,' .:: .:: .::.. ::: :| ,ゝ‐イ .ノゝ___,,ノ
,' .::: ..::: .::: ::: :::!" `丶、s ̄`)
,' .:::/ ::: .:: :: ::/ l .l ヽ ̄)
,' ::; ' .:: ::: ノ,/ ヽ、 ヽ / /、ゝ
. / ..::: ::: // `丶、` '彡,廴`;;;;;
..,,,_::,,__.:,,,,::://‐-、__ `丶 .ヽ /∧/|
Y  ̄ - ,,,, ` ‐ - 、 .Y..∧/|
`ヽ ヽ|∧//|
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
靄がかかった森を進む。エネミーソナーには空気中のマグネタイト濃度と
周辺の悪魔の探知結果が出ていた。真っ赤に、
つまりは大量のマグネタイトと悪魔の存在がモニターには表示されていた。
パイモンも召喚し、後方に控えさせる。所持マグネタイトの温存のためにも、
ここはこの二人で行くことにした。
様子を窺っているのか、道中で悪魔に出くわすこともなく、三十分ほどが経過
した頃だった。
「止まれ」
凛とした、それでいた逞しい声が森に響く。
現れたのは、腕を露出させた薄めの鎧を着込んだ男だった。
その両手にはを長槍と短槍が一本ずつ握られている。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
48: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:04:17 ID:H96YQWOo0
\: : : \: : : : : : : : : \: : : : : : : : ::::ト、: : : :/: : : :/: : : : : | /|
`ヾ:::... : : \: : : 「`丶.;.:.\: : : : : ::::::l::l: : :./ : : :./: : : : : : レ':./
\∨:::::::::......\小  ̄`ヾ: : ::::::::j::l_;.> ´/'": : : : / ::::/
ヾ::::::::::::::::::::::::「 `ゞ'"/:/ /: : : : / : ::/
∨:::::::::::::::/ '; /:,′ 〈:'´ ̄: ::::::::/ィア´
∨、:::::/ \ '; // .:.:`ヾ::::::::::::::/
/ Y _うュ、 // .:.:.:ノ:.∨::::/
| :.:i ヽ弋テヾ==' 》 //、__,,..斗匕.:.:.:.:'ハ′ 我こそはカーターホフの森の番人、
'. ヽ{ .  ̄ ''ヾ:.:> ノ'゙ハ:.:.代テ¨フ:./´!/
∧ : ,.ィ⌒ー‐' / :.:./.:.:./ タム・リンなり。悪いがここから先へ通すわけ
/::::ゝi、 // ,':. .:.:/:./
_,.イ:::::::::::|::. リ l:.:.:. .:.イイ にはいかぬ。お引き取り願おうか。
//|:::::::| :. ゝ 、:.:.:ノ:.:.:. /':::::|
、 l/ lハ;;;;| ::.、 _,,. ---- 、 / /:::::::::,
ヽ> 、 __リ/:.:\ :.丶 --- / ,:::::ハ:::「\
\: .\__/: .r{ : :.:.:.\ :.:.\ / j:::/ j;ノ
\: . : . : . : .:ゞ : . :.:.:.:.≧ュ、:.:  ̄ ̄.:.: ,,≦ヽ
【幻魔タム・リン Lv55】
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
あら、とメイヴが口角を上げる。
男はかなりの美丈夫だった。目鼻立ちがくっきりしており、切れ長の目は
鷹のようでもある。精悍な顔つきの下には敵意が燃えているのが見て取れる。
「サマナーと、ケルトの妖女に堕天使か。我らの森には似合わぬ」
「そう言うなよ。ここに清浦刹那って女の子が来てるな?」
「ならばどうした、連れ帰しに来たか?」
男は否定しない。受け答えの最中で、COMPのアナライズ結果が出た。
男は人間にしか見えない風貌だったが、悪魔だった。
幻魔タム・リン。妖精の騎士として知られる悪魔だ。
その神格通り、妖精の森の番人をしているというわけだろう。
「その子にも家族がいる。友人がいる。そいつらの下に帰してやらにゃならん。
通してもらえないか? 物が望みならある程度は出せるぞ」
「不要。生憎俺は砂糖菓子にも金貨にも興味はなくてな。
清らかなる乙女の一人や二人でも連れてきていれば話は別と言いたいところだが、
そうもいかぬ。通りたければ、この槍を味わっていけ」
どうやら、交渉に応じる気はないらしい。
相手は人型の悪魔だ。小回りの利く仲魔がいる。
結局、COMPの中のもう一体の仲魔の出番はお預けになりそうだ。
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49: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:05:07 ID:H96YQWOo0
____
/ \
/ \
/ (●) (●)\ そうかよ、じゃあ少し痛い目見てもらおうかね。
| (トェェェェェェェェイ) |
\ \ェェェェェ/ /
ノ \
/´ _i⌒i⌒i⌒i┐ ヽ
| l ( l / / / l
l l ヽ /
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
拳銃を抜く。それに呼応して、仲魔たちが構える。
それを見たタム・リンは口端を小さく歪めると、槍を両手に携えたまま、
姿勢を低くした。狩りを開始する際の豹にも似た姿勢だ。
ダットサイト越しに狙いを定め、引き金を引く。
が、その動作の内に、タム・リンは駆けだしていた。
拳銃では対応しきれない。咄嗟に判断し、懐にしまっていた短刀を抜く。
一秒とせずにタム・リンは間合いを詰め、喜留夫の目と鼻の先へ槍の穂先を
向けていた。
無我夢中で顔を逸らしそれを避けるが、背中に走った痛みに呻く。
タム・リンは体を捩じり、顔に最初の一突きを放った後、回転しながら
もう片方の槍の石突で喜留夫の背中を狙ったのだ。
咳き込み、後ろに転がる。その間を縫うようにパイモンが飛び出し、
タム・リンと刃を交わすが、筋力で上回られているらしく、すぐに吹き飛ばされて
しまった。吹き飛ばされながらも、魔法で作られた氷の刃を飛ばすが、
それすらも回転する槍によって弾き飛ばされてしまう。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
50: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:05:32 ID:H96YQWOo0
____
/ \三三三三三三三
/ \二二二二二二二
/ (○) (○) \三三三三三三三
| (トェェェェェェェェイ) |二二二二二二二
\ \ェェェェェ/ /三三三三三三三
/ ト _ \二二二二二二二
<三三三三三三| |(___)三三三三三三三
|\  ̄ ̄ レ/ 二二二二二二二
|  ̄ ̄ ̄ 三三三三三三三
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
パイモンの撤退を援護しようと、メイヴが雷撃を放つ。
意思を持った雷撃は銃弾のようにタム・リンの脇腹を穿ち、焼け付かせる。
「ぬうっ」
さしものタム・リンもよろけ、隙を見せる。
それを見逃す手はない。呼吸を整え、短刀を構えて駆けだす。
タム・リンがそれに反応し、槍を振り回しながらこちらに向き合う。
止まるには遅い。離れるには時間がない。ならば突っ込むまでのこと。
突き出される長槍を掴み、無理やり穂先を胴体から逸らす。
続けて振られる短槍の刃を短刀で受け止める。
腕に衝撃がびりびりと伝わり、短刀を落としそうになるのを堪える。
そして互いに両手が塞がれた状態のまま、喜留夫は頭突きを繰り出した。
一発、二発、三発と頭を振り、相手の頭へと打ち付ける。
効いているかは二の次だ、こういうのは勢いなのだ。
よろけたタム・リンの頭に追撃の膝蹴りを入れ、空いた右肘を打ち下ろす。
そこへメイヴの雷撃とパイモンの氷の刃が飛んできて、タム・リンの背中を貫いた。
激痛に動きを止めたタム・リンの頭を羽交い絞めにし、短刀を突き立てる。
「おしまいだ」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
51: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:05:47 ID:H96YQWOo0
,、 ,、
_l `゙゛‐-' `ヽ、. 、
-=≦"´ `ヽl\
、 ノ ト、__
ゝ ト''/
. ,ゞ . ,、r、 /
. ヽ __ __l.:::::::Yて, ちいっ……殺せ!
i /-、`v"::::\::l 》
..ノ l l '::::::::::ヾl .ヾ、 「殺しゃしねえよ、こちとら話し合いに来たんだ」
ζ, 〉、 ::::ミミl ノ
´ソノノ.从川 彡,'" u ’.:::::l
.人ノノノ`ソノノ. u. l
/ \\ _,,_____ノ
_ .\\/
`ヽ、 \\
ヽ ./ /
.`i ヽゝ',
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
無益な殺生は主義に反する。
ここでタム・リンを殺したところでこちらに特はない。
むしろ、妖精たちを怒らせて清浦刹那を殺されでもしたら事だ。
一度タム・リンの頭を放した後、「攫った女の子に会わせてくれ」と物は試しで
頼んでみる。
タム・リンは逡巡した後、「よかろう」と首を振った。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
52: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:05:59 ID:H96YQWOo0
,、-‐、 ィ‐-、
,、 - '".,、.-‐:iヽ‐‐--.、 `゙'‐、、,_
. V .,.::'´:.:.:.:lヽl:.:.ヽ|:\:.:.:\ /
〉:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:ヽ:.:.:ヽヽ:.ヽ,:.:ヽ/
. ,、ィ.i:.:.:.:.:i\:.i:.:',:.:.',:.:.',:.:.ヽ:.:ヽ.:ハ、
〉' i:.:.:.:.:.i`'゙ヾ'"',:.:.:.:.:.:i:.:i:.:',:..:.:.:.:', ヽ,
. \i:.:.:.:.:.:i i:.i:.:.:.:リi:.i、:.',:.:.:.:.:i-'`
.|:.:.:.:.:.:i___ i:i:.:.:./_i_i__:.:i:.:.:.:.|
|:.:.:.:.:..i,ィ==、 リ.i:./ ィ==、i:i:.:.:.:.| ……誰?
i:.:.:.:.:"fr'::: i i/ ir'::::}゙' i:.:.: i
i:.:.:.:.:.:.i弋ソ 弋ソ /i:i〉:i
. i:.:.:.:.:.:.::i ' ,'ノ:.:.:.:i
. i:.:i:.:.:.:.:.:\. ‐ /:.:.:.:.:.:.:i
V:'、:.:.:.:.:.:.:.> _. <:.:.:i:.:.:.:.:.i:.:i
'、:iヽ:.:.:.i-'ノ i_ 、:.i:.:.:.:.:i:.リ
. , '´゙` i. i. `' 、:/:i/
/:| i--、 ,--i |\
/:::::::i ', / i::::::ヽ
,':::::::::::i ',. / i:::::::::::',
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
数分後、タム・リンが森の奥から清浦刹那を連れてきた。
後ろにはぶんぶんと妖精たちが羽ばたいている。
「人間よ」
「臭いわ、火薬の匂いよ」
「酷い人、わたしたちはいじめられてる子がいたから連れてきただけなのに」
ざわざわと木々のさざめきにも似た声が聞こえてくる。
こいつらが清浦刹那を攫ったらしい。一応は、良心からくるものなのだろう。
妖精はとても気まぐれな種族だ。
砂糖菓子や魔力を提供すれば簡単な手伝い程度はしてくれるが、
たまにこうして人間を妖精のコロニーへと連れ去ってしまうこともある。
「桂言葉って子が、君を探している」
「言葉……」
ぼんやりとした表情で、清浦刹那は喜留夫の言葉を鸚鵡返しに口にした。
「その子、俺に十五万円も払ったんだぜ。大金だ。普通払えるもんじゃない。
そんな友達が、あんたを探してる。どうだ、妖精になっちまう前に、
ちょっくら話してきちゃくれないか? 俺はいじめられたことがないから分からんが、
俺にも友達はいたことがある。話をつけるくらいはするべきだ、そうだろ?」
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
53: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:06:14 ID:H96YQWOo0
. , - ‐ , , イ  ̄  ̄ ` ‐ -t
ャー '´ , ― ― 、 |
. { , イ::::!ヽ::::::::::::::;::::::::::::::::ヽ |
. i /ヽ;:::::::::!:::::ヽ:::::::!::ヽ:::::::::::::::::\ ノ
/:::::::::|:::ヽ::::!::::::::::ヽ::!::::::::\::::::::::::::ハ ,}
l::::::::::::::::i:::::::ヽ!::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::ハ \
|::::::::::N::::|ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::l ヽ >
|:::::::::|゙゙゙ヽN;:::::::::::::i::::::i::::::ヽ:::::::::::∧:::::::::::!_ノ
|:::::::::| V:!::::::::ト::::ト;::::::ヽ:::::::::::∧ :::::::!
|:::::::十―‐ 、Ⅵ:::::十;十弋:::Vi::::::::i:∧:::::::! ……行かなくちゃ。ごめんね、妖精さん。
|:::::::::! ,ィz=-. V V:::!;ェ===ュ::ト:::::::::i、:!:::::::!
|::|:::::::! .ぅ;;;;l i:::| j ぅ;;;;;;:Ⅳ. V::::! i::::::::ハ でも、嬉しかったよ。
|::|::::::::} .込リ |/ 込ツ .Ⅵ./::::::::::ハ
|::|::::::::ハ ィーⅣ::::::::::::ハ
|::|:::::::::|:ト、 ´ イ:::::::::::::::::::::::::::::!
|::|:::::::::|::| 丶,..  ̄ イ .|::::::::::::::::::::::!::::::!
|::|:::::::::|::| |:::::> .. < _k-;:::::::::::::::::!:::::|
V:ト:::::::|::|. ヽ:::::::::::イ , イ ヽ:;::::::::::::|::::|
. ヽ|ヽ:::::||. ヽ::// `\::::|:/
. ヽヽ::::! // \
54: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:06:24 ID:H96YQWOo0
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55: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:06:35 ID:H96YQWOo0
i´` 、
` ) _ _
i:,// - ´  ̄  ̄` - 、 ,_、
__;,.〃y/ \ `´ヾ
,__ >/ノi / `\ /´´
iしe/フ ̄ / | | ; /イ>i
_ 〃´ ̄// / | | | | ヽ Y>=レ>
,-´ / /イ/ / | | | | | |\fノ,、
/ // // ;; ,, , | | | ; ; | | | iヽ``ヽ
/ / / // i ` | ; | i | l i ll | | | |` _|ノノ
/ / // l/ `ー-、_|l l | ヽ ├-- 、l ; l l l ´(ヽ あら、メール? 他の女から?
| l / / l | |,、/r、ゞハヘ` |=_ノ |/| i|` / イ/,, | |l |
| | / // // |rハヒ妥>y>` `ヘ|イテ〒ノ // /lヽ | 「ちげえよ、この前の依頼人からだ」
ヽ ヽ / / / il |トミ=>ソノ くゝ'シ_| / / /i |
\/ / // l i"`(ヾ .  ̄゜ / // /i ヽ ヽ
// / /ノ イ -ヽ r´´ 、_ ___, / / / i il ヽ `、
/ / / イ /l、 ト \、 //,/´ ̄フ __ノ"i \
/ / | | ; il ,__) ` ン ミ 、 _ イ / // /y´_-ノ ヽ
/ // l / ノ i /l -つ、- ヽヾ `>< l i/ / ´〃-´ i`、
/ // il l / / l / \>_`___ ,-、
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
キーボードを叩き、メールを開く。
メールの送信主は桂言葉だった。
あれから二日が経つ。報酬金が全額振り込まれていたということは、
そういうことだったのだろうが、改めて確認してみたというわけだ。
メールの内容はこうだ。
結局、清浦刹那は戻ってきたらしい。多少の原因が自分にあったことを認め、
今では周りにピースサインなどで感情表現をするようになったらしい。
全てを放棄して楽になることよりも、自分の世界に向き合うことを選んだと
いうわけだ。その勇気には、喜留夫も感服させられた。
てっきり、喜留夫は彼女が妖精の国にそのまま行ってしまうと思っていたからだ。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
56: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:06:52 ID:H96YQWOo0
____
/ \
/ \ ま、あの子も幸運だったってことだな。
/ (●) (●) \
| (トェェェェェェェェイ) | 世の中、探してくれる友達もいずに一人で死んでく奴なんかごまんといるし。
\ \ェェェェェ/ /
/⌒ヽ ー‐ ィヽ
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 |
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
/ ̄>t=ヘ_/ムイ- ―- __ _
/ イ{し}V≠  ̄ == ⌒しイ¬キ―‐、
/ />┬そ__ __,.. {{ 乃ノ i ハ
/ 〃 t(⌒´  ̄  ̄ ヾ一;、/ | ,
/ {し_) / i ヽ ノイ ′ !
/っ7 / / /| | | | rf'' | |
//'/´ / /! /=| / ハ l | `l. l |
/// /l / // /l l /! / | l | | | | l
/// l //‐l─/‐|l-/,ノl / / |_i-/─!- / /| ! | l | ねえ、私たちはあなたの仲魔だけれど、友達でもあるのかしら?
_/// | ! / ,| ハ. /ニ´|! |'´ヽl/ |l,. -='テ /l/ |l l | ,|
/ |/ヽl /' /lミニ ' ,ソ / ' 'トf_',ソ´ /! | i | ハ | 「なんだよ、急に」
´ i' / | } ,ヘ::|l ̄、´ノ  ̄ /' | | | | | i !
i' / | } / `ヽl`(´ ! /´ l ! |l !__,| | 友達はいたことがある、って言ってたでしょ?
i'/ | } /' \ {^ヽ _ _, /^ ノ_ | ! | l | -─‐'
i '/ | }/ /< ', '、 ,.イ .' ̄`フ |l | | l`ヽ、
'/ , -‐く、 _,,.、/ } | ` ´ .{ { / l| | l | ` ‐-、\
/´_ ` ´ \_, { f^ヽーf^くl ,},`ー-、_, -‐-、,i -‐-、 ヽ\
__ヽ´ノ `ヽ j/⌒ヽ/⌒\| __ _) //
 ̄ヽ___,. --、 ,イ/ -ー¬{ }¬ー '.io、_/`ヽ_,く‐' ´ ̄ ̄`ヽ
´ ̄ ` く、 ` ´/j ー}{一 i| l \ /|
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
「それは別の人間だ。お前たちは……そうだな。俺の人生の相棒だ。
それじゃだめか?」
「いいえ、それでよしとしてあげる」
そう言うとメイヴは喜留夫の肩に手を置き、パソコンのモニターを覗き込んだ。
これはそんな風変わりなサマナーの話。
魔を討ち、魔と共に戦う悪魔召喚師の人生の記録である。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
57: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:07:19 ID:H96YQWOo0
_, - .
i ´ `丶、
r )) {廻}`i
l {薔} i | | | i l |ノ
| 7 i | | | |ハ l |
l! | l .ハr‐ァi´.┃! | あ、ちなみに今回ので赤字増えたわよ。
. l! |.| | Vゞイ /. |
| l l fて- _ fヘイ..|i | 「しょうなのお?」
| | | r) `i {~~~7|i |
| | .ノ{ ⌒-i~lΥノ |iル′
/ | ゝ、_ .} r`i´ |.|
〃 l | ` ν.ゝ、. lリ
~また次回~
58: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:09:48 ID:H96YQWOo0
/||ミ
/ ::::||
/:::::::::::||____
|:::::::::::::::|| ||
|:::::::::::::::|| ||
|:::::::::::::::|| 、 - ‐‐ -,
|:::::::::::::::|,´: : : : : : : : :
|:::::::::::::::|゙i : : : :○ ○゙i ハロー。初めましての人は初めまして。久しぶりの人は久しぶり。
|:::::::::::::::|}: : : : : : : _ _ _l
|:::::::::::::::||: : : :-=´_ _,´ モコイさんだよ。チェケラッチョ。
|:::::::::::::::||___ : : :丿
|::::::::::::::(_____ノ´||
|::::::::::::::(_ノ / . . . ||
|:::::::::::::::||/ ||
|:::::::::::::::|| ||
\:::::::::::|| ̄ ̄ ̄ ̄
\ ::::||
\||
59: ◆x0SRSoJXe. :2017/10/22(日) 02:13:37 ID:H96YQWOo0
,- ‐‐ - 、
イ: : : : : : : : :`,
/○ ○: : : : /
┌─┐ i_ _ _ : : : : : : :{ 今回は不定期でやっていくデビルサマナーの二次創作となるよ。
┃茶┃ `,_ _`=-: : : :|
├─┤ i: : : : :_: : : :' ちなみに>>1のメガテン歴は真123マニアクス、アバチュ12、ペルソナ1234、
 ̄ ̄ ̄ー‐'' `-‐´ : : : : : :ヽ
ゝ __ ,.. イ : : : : : : : : l: : | デビルサマナー、ソウルハッカーズ、ライドウって感じだ。
{ : : : : : : : : :|: :.|
,、 '" : : : : : : : : :゙、:.ヽ そこらへんの知識と愛と勇気で頑張るよ。
( : : :‐ 、 : : : :__,. : : :Y"
` ー‐┘ ̄‐〈_ ,,ノ
、 - ‐‐ -,
,´: : : : : : : : :
゙i : : : :○ ○゙i
}: : : : : : : _ _ _| 基本的にお休みの日に書いて、書きあがったら投下って感じかな。
|: : : :-=´_ _,´
y' : : : : :_: : : : :i ボクってとってもダーティーワーカー、ってなわけでもないけど社会人なのよね。
/ : : : : : : :┌─┐
i : : : 丶: :ヽ{ .茶 }ヽ それじゃ、コンゴトモヨロシク。また見てね?
r : : : : :ヽ、__)一(_丿
ヽ、___ : : : :ヽ : :ヽ
と_ : : : : : : ノ : :ノ
 ̄ ̄ ̄  ̄
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