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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　巨人軍に葬られた男～湯口敏彦物語～

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第2話『一軍の壁』

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川崎市内にある巨人寮『多摩川寮』。



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寮生たちの一日は、文字通りの野球漬けである。

朝７時過ぎに起床すると、まずランニングと柔軟体操をこなす。



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　　　　　　 .l/l:::::r　-'~_,,..._　 ;.　　　 ,-　、‐-l:::::::,''
　　　　　　　 　 j::,　 ,;' .f:::i 　 ﾞ　　　 .f:::i ヽ　 /:}'
　　　　　　　　 lヽヽ　　'`　　　　　　 　'"　　 /~.l
　　　　　　　　 `、(ゞ.　　　　　 ;:　　　　　　/) ,.'　　 まだ眠いなぁ
　　　　　　　　　 `　、　　　　　　　　　　　/／
　　　　　　　　　　　　ヽ、　　- -- 　　,. '~
　　　　　　　　　　　　　 .i. 、　　 　 .,　i′
　　　　　　　　　　　　 __,j　` 　_ ,.. '　 l._
　　　　　　　　　　　r'　,. l　　　　　　 l 、~ヽ
　　　　　　　　　　　l　.ゝt　　　　　　 lkl　　l
　　　　　　　　_,. -'/　　l　　　　　　　　/　 ヽﾞ';,
　　　　　 _,..-"　 /　　 _ l‐--、　.,-―/　　 ヽ、ﾞ'':.,
　　　 ,.-"　　　 /　　r~ l l　　　　'　　f .r～,　 l　　 ﾞ'':.,



それから朝食をとり、多摩川グラウンドへ向かう。

練習は夕方までみっちり行われる。



　 /ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘ 　　　　　　　　　　　　___／
　/ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/⌒ヽ,　　 ノﾜ"`' ｰ--､_,_／
　ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｌ {ヘ,. 'r-＜/　　　　　 ｌ ｌ
　ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉハｉｉｌ　`/ /　　/　　　　　/　ｌ
　ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘｉｉｉｉﾊｉｌ　　 `　_,/　　/　　　　　 ｌ　 ,ｌ
　ﾘｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/__ｌﾘ　ｌ　　　　　　　/　　　　　　ｌ　　　 高校時代もハードな練習をしてたつもりだけど、
　　ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/ｌｉﾄr｡､''ｉ`　　　U　,　　/　　　　　　 ｌ　　　 プロはその比じゃないな
　　ﾘｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾊｉｉｉ/ ｌｉ 'ﾟ”~　　　　　　 ｉ　 r---､　　　　 ｌ
　 ノﾊｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘ/ ﾘｉ　　　　　　　U　　 /　 ヽ、　ヽ、　　 ｌ　　　  ついてくだけで精いっぱいだ
　　　ﾘﾊｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘｌｉｉｉｉｉｉｉｉ/ﾘ　､　　　　　　　　　　/‐- ､,, ヽ　　 `‐- ､ｌ
　　　 ｉ　＼ｉﾊｉｉｉｌ 'ｌｉｉｉｉ/''＼,　,i＿ 　 ､.っ 　　　 /　_,,... `／'>　　/
　　　　　　　　ｌｉ　 ｌｉ/　　　`-'=‐-y- ､,,___ __,,ｲ､,　,_／ ／ー,
　　　　　　　　　　　　　　　　　,／　ｌ　　　　　'、￣　　/　／ /
　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　 ヽ　r‐‐ｉ,　 ヽ,　　 /／　,/
　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　ｌ　ｌ　　ｌ　　＼, //　　/
　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　 ＼ｌ　　`￢ｰ--'"




練習後寮に舞い戻ると、すぐさま風呂に入り夕食を済ます。
それから、ようやく自由時間となる。

だがその自由時間も、ごく限られている。
寮の門限は夜の10時、翌日が休みの場合は11時までと決められていた。



　 　 　 　 　　　　 /:::::::::::イ::::::::::ﾊ:::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　 /::::::::::::::::／::::/:::l:::::::＼＼:::::::::::}
　 　 　　　　　　イ:::::::::::::::::::::::::::::/|:|:::::::::::::::::::::::::::|
　 　 　 　 　 　　イ:::::::::/|:::/|::::/　|! | l|::::ﾊ:|:::::::::::ﾄ
　 　 　　　　　　　ｲrl:::/_|/__|/|_,　| ､__|/＿|_|:l::::ﾊ
　 　 　　　　　　　　{k〈ｬ'´ﾋｿ` ﾍ.　　'"ﾋｿ｀'ｧ/k）　  これじゃ、気の休まる暇がないや
　 　 　 　 　 　　　　ヽﾍ. 　 　　　　　　　　 /‐'
　 　　　　　　　　　　　　＼ 　 　 , _　　　／
　 　 　 　 　 　 　 　　　　rへ、 ‐―　／|l ＼_
　 　 　 　 　 　 　　　_／/::::/:|:`:::-イ　　|　　|＼
　 　 　 　 　 　 　 ／　 /　 |　l　　　 /　 |　 │　＼
　 　 　 　　　　／　　 /　　{＿_ 　　/＿.ﾉ　　| 　　　＼
　 　 　 　 　／　　 ∠ -┴ﾍ‐-､三７ ／ へ、| 　 　　　＼
　 　 　 　 /　　　　|　　　 く ＼i　 ／ _＞ 　 `　　　　　　 ヽ
　 　 　 　 |　　　　|| 　 　 　 ＼|/´／ 　 　 　 　　| l 　　／ |
　 　 　 　 |　　　　|:|　　　　　 「　 　 　　　　　　　|/　／ 　 |



選手は練習後も厳しい寮則に縛られ、常に首脳陣や寮長の監視下に置かれるのだ。

『多摩川寮』の寮長を務めるのは、武宮敏明。
その厳格さから、『鬼軍曹』と呼ばれてきた。



　　　　　 　 　 　 　 　 |::::::{　｜ヾⅩ　/___ Y ﾍ　　.i |::}
　　　　　　　　　　　　 ,L:::ﾊ　/　 |.ヾ＼-- 〃　}　 .l |:r､　　 ちなみに従軍経験もあるのだぞ
　　　　　　　 　 　 　 7.ﾊ}::/ - ､　　　ヾ＼/　 /_＿　Y ',
　　　　　　　 　 　 　 { |::j,{　=-rtｯｘ、_,.ﾉ__{_x=＝=ミ .| ﾘ　　  当時の野球人としては珍しいことではないがな
　　 　 　 　 　 　 　 ハヾ{　　 ｀ヽ,,.ィ/:}　　{::::::::::::::::ﾘ !,′
　　　　 　 　 　 , ｬ≦/ﾍ _　ﾞ:､　 ﾞ .:,'!　!　　|｀ =-=ﾁ,ｲ':≧=-
　　　　　　ｘ＜: : : : :{{: : :.|　　l:　　 ,'　j　　.{:',　　 YⅥY¨Y_,､-=≧=-
　　　 , : ´　　　ｚ≦、' : 从　　　 r≦＞､_xく≧､ 　 从_｀´｀Y｀ ☆ﾉ:､＞:≧ｘ
　　／: : : :,イ _,､yLｿ .V: :.ﾍ　 //'´￣ 二二　 ヾ_}/: :|: : :｀ ＜　_ ｀´ﾊ-'　∨＼
_／: : :xく　ﾉｰ Y｀　 z＜,: : :冫 、.,　｀´　　　ヽ-r:': : : !: : : : : : : : : :｀ ＜ 　 }: :ハ
: : :／／☆　　 ＞'´: :.i: V: : ゝ、 ヽ　＿＿＿ ｲ: : : : 从: : : : : : : : : : : : : ヾj: : : :|
: く／☆　　／: : : : : :.l: : ∨: : 7 .／　 　 y =ﾐﾊ V:.//: : : : : : : : : : : : : : : :.|.: : : |
: : :＼　 .／: : : : : : : :.l: : : :＼7:/　 　 ／　　　Y∨:ｲ: : : : : : : : : : : : : : : : :.|.: : : |
: : : : : Y: : : : : : : : : :.7: : : : : :}' i　　'´　　　 ｨ⌒Y: : : : : : : : : : : : : : : : : : : l : : : |
: : : : : :ヽ: : : : : : : : /: : : : : :/　',' /　 ;　 ／　　.ﾘ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : l: : : :.|

　　　　　　　　　　　　　　　　　武宮　敏明

だが、武宮はただの『鬼軍曹』ではなかった。



　　　　　　　　　　　　　　　_,. -＝＝＝＝==- ､
　　　　　 　 　 　 　 　 _／壬三三三三三三三≧ｰ､_
　　　　　　　 　 　 　 rﾐ/ﾞヾ,,三三三三三三三三三ミ.ヽ、
　　 　 　 　 　 　 　 /_/　　 ',ヾ三三三三三三三三三ミ.ヽ､
　　　　　　　　　　 /´　　　　',__∨/////三三三三三三ミﾐﾊ
　　　　　　　　　r'´　　　 _／ ',／¨ﾐｽ=､＝ニニ二二三三三ﾊ
　　　　　　　　　| ｀ヽ、　/　／',,　　ﾘﾞﾊ ', 　 　 　 　 ﾞ7三三三}
　 　 　 　 　 　 ﾉ_ ,､ .＼　/ ｀ｰ',,-__}_　}_}_-､ ＿　, . {ニニニミ}
　　　　　　 　 /-ﾆ,ヽﾞtｯ∨ 　 　 '',, | ｀ | |　r'〈___ﾞr'ﾆV//ニニﾘ
　　　　　　　 ,'　　　　ﾆ=ｨ　　 r=7三三ミヽ{　　 .ﾊゝ-V/ニﾆﾀ　　 厳しいだけでは若手は育たん
　 　 　 　 　 i　　　　／/　　/ i {三三三ニﾊ 　 '´∨　∨/タﾞ
　 　 　 　 　 |',〃　 .i ./　　　 　 V三三三三〉　　　＼ _,.ﾞX_　　　 それは軍隊時代に嫌というほど学んだよ
　 　 　 　 　 | '　　　l/　 　 ,;;　　 ＼三三少ﾞ ﾞﾊ　　'´ ∨　 ﾊ
　 　 　 　 　 |　 ,.心〈　 ノ _,.={　　　 ｀ニ￣＼ ﾉﾊ　　　 V　 ﾊ⌒i
─────|／'弋川川く,, ,　',　 　 　 ､　_,.-'＼∧ 　 　 V　ﾊ.{ |
└┘..(￣)／|　　　 ｀¨弋川ﾐﾊ　　　　　/ 　 r-､}ﾐ∧　　　 V　 V!
三三三r' 　 l　='´¨＝､　 ｀弋ﾊ　､　 　 !　 / ,'　 ｀￢─-､　,｀i ', |
　 ￣￣| 　 .| 　 　 　 ヾｯ,,　　ヾ}.　〉　　　 _|＿､_ 　 _　-､ ',　, {　.ﾊ_
　　 / /|　　 ＞､　　　　　'''　　 ／　　　 _{ ﾐ　　 ￣　ヽ　　',　 ',　',ﾊ＼
　 ./ / ｲ　　 ,. >､＞ ､ _　　　　 _　 - ' ´ {　- ､_　 ｀ヽ　,　　',　　　　V/＼
　/ //| ＼　i f⌒ﾘ ,>三≠､￣　　　　　　k　 イﾊ　　　　　　 '　 　 　 V/　＼
./　!l! j!　 |　! !　///77｀}　|　　　　　　　　 ヽ_ﾉハ　　　　　　　　　 　 ∨=､
{　　l!ﾊヽ=' .i i　 |f ﾄy'　/ .ﾘ　　　　　　　　 ／／八　　　　　　　 　 　 /
ﾊ　 　 ヽヽ-' lヽ ヽl!′/　/　 　 　 　 　 ／／　　　＼　　 　 　 　 　 /

V9メンバーの一人・柴田勲は朝帰りの常習犯で、次のようなエピソードを残している。



　　　　　　　 ,r/ヽ-ヘrｆ´ﾄ､,.‐､-､_
　　　 l｀ｰﾆ三==　三ヽ ヽ　　, ヽ＼ヽ┐　,. ‐- ､
　　 rﾍヽ'´ 　 ／二ニ ＼il ｆ/ //| ／￣＼　＼　＼
　　 Eミﾐヽ ｀ｰ-==三二　 ＼//／／,-､　ヽ‐､　 l /
　　 ∨ミヽ ‐- ..,,_　　､ __ヽ＼///／　　l　　i､ 　 /__
　　　lミﾐ　 ＼　　　　/　 ｀丶､ ./　 /l　l　ﾊ .l　l　　/
　　.　lミ＝=ﾆ二　_,,,..l　　F-丶--'´‐l　 /,ﾉヽ!　　i ヽ､
　　. /==ﾆ二-‐_,,..　　l　 l　　　　　 /// ｆ＼　ヽ　 ＼　l
　　. >'ﾞ丶ヲフ-‐ノ__ノ＼,!　 　　　 ／/ﾉ　 └‐-､　 ﾉ　ヽ
　　/,l ^iヽヽ　／"＝===_=_==　ﾉ/ｨｧ/　　　　　　ヽ　 l ﾉ }
　///.l ﾚ ﾄ ∨　　　 '￣､ツヽ　　 !.<.i　　　　　　　'ｰ､／ｆ
/// /∧ヽ-､　　 　 / 　 |! i　　　i l .l　　　　　　r'´　ﾉ　 ﾊ　　　  武宮さんは必ず、寮の入り口のどこか一つを開けていたんだ
　// // ヽ--! 　 　 l.　　 !　ヽ ,. - ｧ ￣＝=‐_-ﾉ_　 it‐'´　＼
　／//　ノ／¨＼　 !　　　　　 ｀￣ l　　　　　　{　ﾉノ｀ｰ　／　　  門限をすぎても帰ってこない選手のためにね
　　/　（　）＼ ､＼＼　　.. -‐''"￣/　　　　　　 T-‐ ':::::::/
　/　　　¨　　 ＼｀丶 ＼　　 "￣ i　　　　_ -‐''":::::::::::／　 ／
-‐､　　　 / ＼ 　｀丶､＼＼　　 /_.. -‐ ¨:::::::::,..､ __ /､　／
　　＼　 /　　　}　　　　　ヽ l ¨¨:::::::::::::::::::::::::/　　　ヽ＼　　／
　　　 ＼＼　 /　　　　　/　￣､¨'''‐- ..,,__,,.ノ　　　　 ｀ヽヽ'､
　　　　　＼ ¨　　　　　/　 /　　＼

　　　　　　　柴田　勲

　　　　　　　　　　　／ミヽﾉ＼Y｛//≧=ミ
　　　　　　　　　 /三ミ 　 　 　 //／／ノ}ノノ}＿
　　　　　　　　 /⌒＼　｝ヽヽヽ{//三三≧ 三三彡,
　　　　　　　 ノ三三ﾐ　　　　 ./ｲ　　__三三三三　}
　　　　　　　/⌒ヽ/ /. ハli{⌒ }　　　　三三三ミ　{
　　　　　　　{　,彡{ ｛｛ |　}ﾉ　 ﾉ三三ミ＞-ミ. ﾆﾆﾆ}
　　　　　　　{　彡ﾘノ_r=======≦ {__{ /ﾊ　}　ﾆニ{　　 「規則を破るなら、俺の目に止まらんようにやれ」──
　　　　　　　{　lilｉﾊﾓ}　 ≦弋ﾗﾗ　　　　）ノ ﾉ　　 ,∧
　　　　　　　{　lilil{ {ﾉ　　　　　　　　　(___／　ミ== ハ　 それが武宮さんの口癖だったよ
　　　　　　　{　liliﾘ〈─ｧ　　　　　　　 { /ハ}ﾊｌｉ|　　 |ｌ}
　　　　　　　{lil| ﾉ　　｛===一'　　　／ﾉﾉ　O }lハili|ｌ|ｌ|
　 　 　 　 　 ＼{　　　 }「￣:　　 ／＿{ {＿＿＿_}li|ﾉﾉ
　　　　　　　　　　　　 {＿＿ .イニニﾉﾉニニニﾆﾆ}
　　　　　　　　　　　　/{ {　| ||ﾆﾆ「EO |ニニニニ {
　　　　　　　　　　　　OO__| ||ﾆ └─＜ニニニニ＞--
　　　　　　　　　　　　／ﾆ(＿)＜´ﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆ／ﾆﾆニﾆ
　　　　　　　　　　 イ／／ニニニニニニﾆ／ﾆﾆﾆニニ



時には鉄拳制裁も辞さない厳しさの一方で、人情味に溢れた人物でもあった。
武宮の元で育った寮生たちは、V9達成など巨人史に栄光の足跡を残していくこととなる。

湯口の部屋は寮の二階にあった。ドラフト二位で入団した大北敏博が同室である。



　　　　　　　　丶　　　　　　　　　　 　 　 　(⌒)
　　　　 　 　　 　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
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　　　　　　　　　　　|　　　　　　　iﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆﾆi　 　 　　　　 |
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　　　　　　　　 ／.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼

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　　　 　 　 　 　 　 ////∧////＼_.ノ}
　　　　 　 　 　, -く//// 　∨://////
　　─==ニヽ_/,ｨ} }///　　　V/////
　-==ﾆﾆi⌒}ﾐ{ Y　ﾚ'､　　　　∨イ/
　 x≦三}_ノ⌒/　lKヌ､__ﾉ/／　/　  なんだこの部屋、
　---＜´　 //　 //｀¨´ /rｧァｲヽ　 ベッド以外何もねえじゃんか
　　　　　　/∧ .//　 .__/　, ｲ　　}
　　 ＼　 ///∧/ f三ﾌ ,ｲlilil}　.ノ　 つまんねえの！
　　 .　＼/　　 ∨⌒／ililiｌilﾘ　　}
　　　　//＼　　 ｀丁/////　　/
　　 /// 　 　 　 　 /////　／

　　　　　大北　敏博

大北は香川県出身、湯口は岐阜県出身である。



　　　　　　　　　　　　　　　　 　 丶､/
.　　　　 　 ／￣￣￣￣￣＼　　　/ヽ／
　　　　　　|＼___＿___＿___／|　 　 ／ ﾍ.
　　　　　　|　ｌ∥∥∥∥∥l　|　　　　 "´i￣
　　　　　　|　ｌ∥∥∥∥∥l　|
　　　　　　|　ｌ∥∥∥∥∥l　|
　　　　　　|=ｉ⌒＼ 　 ／⌒ｉ=|
　　　　　　|=| 　　 ヽ/　　　|=|
　　　　　　|=| 　 　 　 　 　 |=|　　　　　 まっ、いっか
　　　　　　|=|~r-oｭ　ro-ｭ~|=|
￣￣￣D)「ij　 ￣　i　￣ 　ij ]　　　　　お前、湯口だっけ？
ヽ＼,ﾃ￣ノ>　　　　^　　　　<ト/^ゝ　　 これからヨロシクな
ゝｰ'ｰ'.(^_/|Yﾞ､ヽｪｪｪｪｪﾌ　/Y|　^^
　　　　　　|!　ヽ　　　　　/　 i|＿＿＿
.　／￣￣∧　　＼二／　　∧　　 ／⌒＼



　　　　　　　,. -─　‐- ､
　　　　　 ／レＶ:::::V＼ﾚヘ
　　　　｀7::::::::::::::ﾊﾊ:ﾄ､::::::::ﾊ
　　　　厶:::::/|/__　 -‐'ﾆﾍ::::|
　　 　 ﾉﾚ:Ｎ ´,z=ヽ　 ⌒ﾞ　ﾘ､
　 　 　 ´ ヽﾊ 　　ヽ＿　 ./ノ　　うん、こちらこそ！
　　　　　　 ヽへ、 ﾏ_ノ ,ｲ
　　　　　　　　　 l　 --'　ﾄ､
　　　　　　　　／ !　　　 |　＼
　　　 　 -‐　7　_/ ､ , - ﾄ､ |　＞　._
　　 ／ | __／V´ |-─‐ノ　｀　 ＼__/｀ヽ
　 /　　|　l　　 ／';::::「//　　 　 　 /　　|



共に地方出身ということもあり、二人はすぐに意気投合。
無口な湯口も大北には心を開いた。

　::::::::::::::::: ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿　　 ▲
　:::::::::::..:　||　 ／　／　　 　　 　 　 　 　 　 　 　　||　　□]
　::::::.: : 　 ||／　／　　 　　　 　 　 　 　 　 　 　 　||　　▼　 ＿＿＿＿＿
　:::: :　　　||　／　　　　　　　　　　　 　　　 　 ／ .|| 　 　 　 |::: ＿＿__:::::::|
　 　 　 　 ||　　　　 　　　　　　　　　 　 　　／　　,l| 　 　 　 |::::|　焼肉.l::::|
　 　 　 　 ||　　　　　　　　　　　　 　 　　／ . 　 　|| 　 　 　 |::::|（ﾟωﾟ)ﾉ|::::|
　 　 　 　 ||　　　　　　 　　　　　　　　／　.／　　 l| 　 　 　 |::::|ぃょぅ__|::::|
　_＿＿＿||　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／　.　 　|| 　 　 　 |◎ :::::::::::::::::..!
　　(⌒;;;)|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣| (⌒;;) ￣|￣ ||:::::::::::::::::::::::: |
　（　　;;;⌒;;)|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣￣|￣(⌒;;;;;; 　;;)￣ |:::::::::::::::::::::::: |
　 , .,.;;;;（ ,.,;;;;,)　|￣￣|￣￣|￣￣|￣（⌒;;`;´;`　 ,;;;;.,. ,;;;;)___|:::::::::::::::::::::::: |
　三三三三三i／￣￣￣￣￣￣￣|三三三三三三三i／　￣￣￣￣￣￣


二人はしばしば近所の焼肉屋に足を運んだ。
二人とも大食漢で、二、三人前はペロリと平らげた。


　　　　　　　　　 ｆ｀＜.,___ ￣ _二フ!　 　 ./::〉
　　　　　　　　　 ト､　＼ヽ￣ 　 | ｌ|　　 ./::/
　　　　　　 　 　 ト､＼.,,入＼ 　 l ｌ! 　 /::/ 　 　 　 <＾ヽ
　　　.　　　　　　ﾄ､ ∨　　 ＼　 ｊﾉ!　./:::/ｆ⌒ヽ　　　）::::l
　　　.　　　　 　 ﾄ､ヽ!　|　　　｀i´ l　/:::::::::::::::::！　／:::;ﾉ
　　　　　 ,. -─「ヽヽ} ﾉ_,.-_　　__l /:::::/⌒V:::::::｀¨:::／＿＿_
　　　　／／／ |ｆヽｿ　 ｨ' eヽ ｆﾗﾉ.＼/　　 ヽ--／￣:::::::::::/
　　 ／／ ./　ノヽﾆﾄ､_ 　￣ __〉l　　　　　　　　'二二､フ::/
　 /／ ／/／　})'´.| ｌ　 Ｆ--ヵ/　っ　　　　　　_＼:::::::::::<
　＼　'´￣＼ 　 　 ヽ! ,ﾉ|‐-､/　つ っ 　 　 　 |::::| ＼_／
　 　 ヽ　　 / ヽ／ 　 ﾊ｀ｔ‐ｘ ）　　　　 　 　 　 |::::ｊ 　 　 ,.へ
　　　　＼ノ　　 }　　_／｀--'　　　,.、　　　　　 レ'　　／:::／ __
　　　　　 {　　 /7　.／〉　　/＾}　/./　,.‐,　　　　　　 レ1::|　 |::j
　　　　'´￣　/ ﾉ／／　　 ﾉ‐ﾉノ /／／ 　 　 　 　 　 └　　ロ
　　　　　　 /　´　 ニニﾜ/　 ）　 ´∠＿_
　　　　　　　　　　｀ﾆニﾉヽ '⌒ヽ　　-一'

休日になると、電車に乗って二人で新宿にも出かけた。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i／|￣￣￣￣|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ,／...:::| ＳＥ.Ｉ.ＹＯ.|
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　　　　 ,_＿／|::::Ｓ:::Ｅ::::Ｉ::::Ｙ:::Ｏ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|＿＿＿＿＿＿＿＿|／ _ｌ [二i二i二i二il|
　　　／ |l__l|￣￣￣￣￣￣￣￣ll二二二二二二二二二二二二二二l|.　　 ｌ [二i二i二i二il|
　 ／il／|日|￣￣i|￣￣￣li工i￣|　|＿＿＿_,| |＿＿＿_,| |＿＿＿_,|　 |.　　 ｌ [二i二i二i二il|
／i／i／|曜|＿＿,|＿＿＿＿＿,,i|　|二|　 |　 | |　 |　 |　 | |　 |　 |　 |　 |.　　 ｌ [二i二i二i二il|
　 | . .::::::|朝|二二iｌ二二二il二二i|　|二|＿|＿| |＿|＿|＿| |＿|＿|＿|　 |.　　 ｌ [二i二i二i二il|
i　. . .:::::::|市| ￣| ￣| ￣| ￣| ￣|.|　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ 　 |.　　 ｌ [二i二i二i二il|
　 . ..::::::::|開| 　 | 　 | 　 | 　 | 　 |.|　|| ￣￣￣| || ￣￣￣| || ￣￣￣| . | ,,''⌒ヽ二γ⌒ヽ,,''⌒ヽ
..::::::::::::::::|催|二二iｌ二二二il二二i|　|l　　 　 　| |l　　 　 　| |l　　 　 　|　(:::::::::ヽ⌒ヽ⌒:::::::ヾ::::(:::::::)
　,,,,　 ,,,,.|中|　／／＿＿＿／／_|　||＿＿＿_| ||＿＿＿_| ||＿＿＿_| ヾ:::::::::::::　｀):::(..::::::)::)⌒)::::::）
,";;;`,,";;;`,";;;;;`ﾞ二二二二二二二|　 ＿＿＿＿＿＿[_キ_印_良_品_]_　(:::::(⌒::/:::ノ⌒:::ゞ:ﾉ::ゞ:::)::)
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;;;;||;;ﾐ;;||;;ﾐ;;;||;;;;ﾐ||／　 ||／　 ||／..| .|　|￣||￣||￣||￣||￣||￣| ￣ | ￣ |.! ( ::| |:;ﾉ ヽﾞﾞ| |::ﾉ( :| |;/
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.l'l'l'l. l'l'l'l. l'l'l'l.　||　 　 ||　 　 ||　　| .|　|／||／||／||／||／||／| ／ | ／ |.! |~|~|~|~|~|~|~|~|~|~|~|~|
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　　　　　　　　　　　　　　,.　-‐………‐‐一ｧ
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　　　 　 　 　 　 　 ／.:::::,lィ≠≧厶∧|｀ヽ:::::｀ア
　　 　 　 　 　 　 /.:::::/l/　,f弋{｢｀`　　､__厶::::ト
　　　　　　　　　 {::::::::{　　　　　　　　 く衍∨!::l　 すごい街並みだなあ
　　　　　　　　　 ｊr弌:!　　　　　　　 　 ′　!｣`｀
　　　　　　　　　 { ⌒｀　　　　 　 ○ ､　 　 }　　　 岐阜とは大違いだ
　　　　　　　　 　 ヽｰ┘ 　u　　 　 　 　 , '
　　　　　　　　　　　｀Ｔ7　　　　　　　　, '
　　　　　　　　　　　 个　　　 　 　　／
.　　　　　　　 　 　 　 |　　　　 厂｢´
　　　　　　　 　_.　-‐┤　　 　 　 ｢ﾉ｀ヽ
　　 　 　 　 ∠　　　　|　　　 　／　　　}
.　　　 　 　 }　　}　,r＜_　　　/　　∧ 厶__
.　　　　 　 ,'　　 て{::::.::.:.:.:￣｣　／　 ヽ {、 ｀丶、



若い彼らにとって都会の華やかな雑踏は、やはり魅惑的であった。

──1971年春。
来るべきペナントレース開幕を控え、プロ野球のキャンプが始動する。



　　i　　　　/　　　　／　|　 ＼|／
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　　　　 /　　 ／ ,へ　　　　　　＿--　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 (
　　＼　　 ／　　 Υ　 -─ ￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(´~
　　　 ヽ　　　　-‐ ￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(´⌒´"
　　.　　|　　　──　──── ─ ─── ‐‐ ‐　　　　　　　　 ゝ-'´⌒´ (　（,,,,,
　　　 /　 　 へ､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (´⌒''´｀´　　　(,,,,,´(⌒ヽ
　　／　　　ゝ　　 ヽ　　　 ヘ　　　　　 　 　 　 　 　 (´~'　（´( (⌒` （´⌒´
　　　 ＊＼　 ＼　　　 ヾ　　　 　 　 ヘ 　 　 　 　 　 ￣￣`ｰ─── ─- - ---
　　　 ヾ ＊　　　　＼　　　　 ヽ　　　　　　　　ヘ
　　l　　 ＼ △　　　　　＼　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　ヘ
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　　　 　 t 　 　 Υ　 ＼　　　　　＼　　　　　　　丶
　　.|　 　 ヽ　　　　 .,ゝ､ 　 　 　 　 　＼　　 　 ゝへ、
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巨人の二軍キャンプ地・宮崎県都城市は、宮崎市でキャンプを張る一軍とは距離を隔ている。

都城のキャンプ地には、可能性を秘めたルーキーたちの初々しい姿があった。



　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /: : : : : : : :./:/ : :∧: : :/ |ハ: :.l: : : : : : : : :＼
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ': : : : : : : :./:/∨/　lﾊ:/　ﾘ　l:./|: ∧: : : : : : ﾄ丶
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 l: : : : : : : :/ﾊ-――､‐-　　　j/ j:/　|: : : : : ハ
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 {: : : : : : :/　　zﾃぅ=､丶　　 / __￣｀ル}: : :/
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 : :.j⌒､:.|　　｀ ﾋ:::ﾉ 　　　　′ｨっ‐、　': 从
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 V ^ﾇﾊl 　 　 　 　 　 　 　　 ﾋ:::ﾉ 〉/ﾙ'
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ　ゝ　　　　　　　　　　{　 　 　 /}
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼__,　　　　　　 　 ｀　′　 　//
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /ｲ}ヽ　　　　 ー　 __ 　 　 /'′
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´ |　　 ＼　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 _＿_j　 　 　 `　--　ィ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 八　/　　　　　 　 　 ,′
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／　 ﾞく.　 　 　 　 　 　' ､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＿＿く 　 　　 ＼　　　　　　{ 　 ＼

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　湯口　敏彦（一位）


　　　　　　 （{ﾄ､　　　　　　　　　 　 　 ,ノl|　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 f⌒/⌒ヽノ　　＼
　　　　　　 |｢下lト　 __　　　　 　__,ィｆ｢l| l|　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／ｰ／⌒Y´　＼　 　＼
　　　 　 　 ﾄ､ | ＼　 {| ￣｢}厂l　　ｊﾘﾉﾉﾉ{　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /⌒/ｰ─＜ ＼＼＼ 　 ∧
　　　 　 　 |＼ｌ　　＼l{ 　 | |ｌ l|　 /レ‐'ｆ |　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'fヘ) /　|　∨ ___ヽ ヽ ヽ　 }
　　　 　 　 |＼l　i　　 ＼　l |l ﾘ　/'" 　 |,|　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ! ｀´　|　 |　 |廴lリ |　|　|　 i
　　　 　 　 |＼l　|　　 　 ＼{ﾘｊ／ -､　　l,!　　　　　　　　　　　　　　　　 |il{､＼|＿|＿|＿_|　|　|　l　/
　　　 　 　 |＼l　|　　　　 　 ´ /　　ｌ　ｌ j{_　　　　　　　　　　 　 　 　 　 lﾊ {込 　ｰイtｬｧ.|　|　|　|/
　　 　 　 「ヽN{ （　　　　　　　　　 ＿_ｊ ｢ｉ}　　　　　　　　　　 　 　 　 　 Vﾍ 　 }　　｀¨´ ｌ|　|　| ｨ
　　　　　  |｢ヽＶ　 ＞‐ｚ_､　　 l　,ｨヒ_,　ｊ ﾘ　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 Vﾍ く　　　　 /|　l／ .ﾄ､
　　　　　 │{_〉　　 ｨ' ｆうﾞヽ-ｒ'＾ｨ ｆｩ ﾉ　l/　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼､ｰ‐-　　　jイ　,､_|ﾉ＼
　　　　　 入__)ヽ　"￣￣／ｉ_ | ´￣　 /　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 >二　＜__...ィf}」へ　 ＼
　　　　 彡'// |│ 　 　 〈　（__ｊﾉ　 　 /＿＿　＿＿　　　　　 　 　 　 　 ＿　イ⌒ヽ　 ー＜／　　　＞イ＼
　　　  /⌒》　 ｌ l 　 r‐ ､＿____,ノ⌒} ＿＿__}´　　 　 　 　 　 　 　 　 /´p/_///　 ヽﾆﾆﾆﾆ　}　p,ィ／ p　 　｀＞ ､
　  ___人　》　l∧l 　弋ｰ-　+ +　' ノ,ﾊr─一'⌒ヽ　　　　　　 　 　 　 {　/_/ l| l.　　 /　　 .//　 /7　　　　　／p　∧
　　 ＿ﾉＶi　 ｌ　 ヽ. 　 ｀二ﾆﾆ二´ /　|＿__,ノ　　‘，　　　　　　 　 　 ∨}_l　(| ﾄ､　/　　 .// 　//　P　　／　　　 ___}
　 /　　　 |　 l　 　 ＼　　　 {　　 （_,ノ{　　　　⌒ヽ∨　　　　　　　 　 ﾉ |_|　 | |込 　,≦//♀//　 　 ／P　, ＜´　 /
　　　　　  |　ﾉ　 　 　 ＼＿＿_／ l　　}─‐一'　 　 ∨　　　　　　　　 {　{_|　｜!雨V斧//　 /´　♀/{　　／　　 Ｒ/

　　　　　　大北　敏博（二位）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　淡口　憲治（三位）

中でも大物ルーキー湯口の存在はファンやマスコミの強い関心を呼んだ。
東京の球団事務所には湯口を一軍で見たいファンからの非難の声が相次いだ。



　　　　　||　　|!　　　　　　 /　　　　　　　　　　／　 　 　 何で湯口を一軍で鍛えないんだ！
　　　　　||　　|　　　　　　/　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　,-‐-､　　／　　　／
　　　,.　- ─-　、　　　 　 　　|_!_!ｭ }　　　　／
　　/　 ノノノノハヽ　　　　　　　`'}‐┴､
　 i　,-､_{＿＿＿ l'　　,. -─- ､　｛￣｀{　　　　　　　　　　／
　 } | r} ` / -' | |`i ／　　,ﾍr^､ |　}_,　 ,! -‐- ､　　　　／　　　　　　　　　 ／
　 { 'ｧ'　　`ー'/,_ ）!／ﾘノ二二jﾉノ`i, / 　 　 ＿i　　　　　　　　　　　　　／
　,-ｿ　､ 　 ノ/ﾆ| `i／/　 -　r {⌒ / |＿_∠＿_,へ　／￣￣ヽ　 ,-rrr､
/#＼　 ､ 　　`='ノ iﾆij　 　,ﾆﾞ | ｀i　/| r､/＿＿,|￣/ 　　ノノﾉij　iっ,!,!,!　 島本や佐伯は一軍のキャンプでやってるじゃないか！
＼＃i＼ 　 ￣,ﾉ`i ヽ　　　|r┼-､ i'　 v{_　（__ﾊ_! 　|　_ノ^i'_ﾌ'i,! 　`i 　{
　 ＼i＃|＼==|/`|＼＼`ｰ| ´|ﾆ､ヽ　　|　i ` ,.-ｉ{ 　 }､|- 　　,-'i　　 |＼_|>
　　　＼|ヽ ｝ ﾉ　　i　＼ |　〉' `ｰ'/　 ,<.j　　 二ﾉ 　/ｿ 　ヽ._`ﾌｧ-ｧr{`ｰ-1
　　　　　 Ｏ|/ 　　 |l/　i ﾉ´|　 / /_ノ＼＼　"{ヽ /ｉ｢|i､rr､/|ﾍ!　/ﾉ　　　|
　　　　　　 |　　　　ﾘ　/∧　 V_i/　　　ヽ_|＼ノ|ﾍ !| !|.| | |/　　|-── '
　　　　　　 |０` 　 　| /　 ヽ＿/|＼ 　 ､　　　`|　{| 　 |゛゛|　　 |
　　　　　　 | 　 　　 |　　　　/ﾉ |　　＼ ﾘ 　 　 | ﾉ　 ri　 ﾉ　　|

　　　　/-─‐7 //
.　 　 /　 　 /
　　　　 　 /　l l　/　ｏ o
　　　　　/　　　/　　　　　　,-─`　 ヽ´　'´‐z._
　　　　　　　　　　　　 　 ／　　　　　　　　　 ‐-ゝ
　　　 , --､　　　　　　　/ 　 　 　 　 .ﾉﾍ　　　 ＼
　, -､i　　　＼　　 　 　 |　　　　　 ｲ/::::::|∧ﾄ、 トゝ
/　　 ＼ ,〃　＼　　　　|　　　 ,イ‐!-:: j:::!-‐!ヽＮ
＼ ,〃　＼　／＼　　　 |　r‐､ |＝==　 　 =＝l
〃＼　／＼､ヽ､ノ）. 　 │.{ {､||　ﾟ‐-　　/ﾟ-‐ ,'　　 くっ……！
　 ／＼ヽ.　 〉ト‐<　　　│ `ｰl!　u 　 　 `７ /
.ヽ＼__/）､`´ノ.／|　　　/l.　 /＼　 ⊂ﾆ=‐ /　　　 肩を痛めてしまった……！
　 `‐-‐'＼｀／ ／,,. -‐'|=|. /　　:＼　 ＝ /
　‐- ､::::＼| ／::ヽ　　　|=:|/　　　 ::::＼／|`ｰ-　､.＿
.　　　 `‐､:::::::::::::::）　　 |=:|＼　　 　 ::::/|=|
　　　　 　 `ｰ-‐ '　　　.|=:|.　 ＼　　 /　|=|
　　　　　　　　　　　 　 |=:| 　 　 ＼/ 　 |=|
　　　　　　　　 　 　 　 |=:ﾄ、　 　 ∧　　|=|

　　　　　　　　　　　　　　　高橋　一三


こうしたファンの声に加え、1969年の沢村賞投手・高橋一三ら
左腕投手陣の調整遅れもあり、川上監督も湯口の一軍昇格を検討する。


　　　　／　 ,/　／　／ 　 _,..-''
　　,.ｨ <´　 〈,/〃／-／/-'"／　／ ,／_
　　} }　,〉　//" ,r'´ノ ,r'′／／-　 ____ノ
　　,) Y　ﾉ　／／ ,r''　―､''"二´‐'/
　,ｲ　　　ﾉ り ,=、-ﾆ_　 　＝＝＝=-‐''"
　,) Y　 ｨｲｨﾉ　|| ,r'ヽ´‐'＝=-‐''ﾆ__　　　 ヌウ…こうも投手陣に調整のメドが立たんようでは……
〈　`ヾべ| :::　　 ｩ）　`8､ヽ‐ ヽﾆ_-ﾆ__
〈 Z⌒＼{::::　　_"＼ ＼ヽヽ''-._ﾆ.._　　　  いっそ、湯口を一軍に上げるか？
　`‐''^ └-ｨ..ノ　 /　　||　　＼
　　　　　,. --ヾ__/　☆　　　　＼
　　　　　>----<,,,,）　　　　　　　 ＼
　　　　(||>／￣　　　　　　　　　ヽ　|ヽ
　　　　　(　　　　　　 　 　 ヽ 　　|　|｜
　　　　　　＼　　　　　　｜ノ　　ノｲ /
　　　　　　　 |　　　　　　ヽ　　 |ノ /|

　　　　　　　　　川上　哲治

しかし───



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／{　　　　　 　 ／
　 　 　 　 |＼　　　　　　　　 ∧　　　　　　 |＼　　　　　/＼　 　 　 　 ／　 {　　 　 　 ／/
　　　　 　 |　 ＼　　　　　　 /　＼　　　 　 j　　＼ノ＼￣￣￣}ﾄ､ . ／　 　 {　　 　 ／　/
　　　　　　|　 　 ＼＿＿＿/　　　＼＿＿/.　 　 　 　 ＼　　　|: :|　　 　 　 ＼__／　　/
.　　　　 　 |　 ＜￣￣￣∨￣￣￣}＼　　　　　　　　　　|　 　 | :|　　／}＼　　　　　 {
　　＿______|　 |＿＼　　　|__)　　 　 }: : }　　　　ﾊ　　　　 |　　 └一　　 |: : |.　　　 　 |
　 （￣￣＼　　　　 |　　　　　　　／: : /　　　　{　｀ー―┘　　 　 　 　 /: : :|＿＿＿　＼
.　　ヽ 　 　 ＼＿＿|　　 　 　 ／: : ／　　　　　　　　　　　　　　＿__／: :／　　　　　ﾄ､　 ＼＿＿＿＿
　　　|　　　　/　　 　 　 　 　 {＿／￣￣＼　　　＼＿_／|　　　|＿＿／ 　 ＿ 　 　 |: :＼＿＿　　 ／
　　　| 　 　 厶＿＿／|　　　　　　　＿＿,ノ〉　　 　 ＼___｣　 　 |＼　　　 ／／　　_ノ : : / 　 　 ＼(
　　　|　　　　　＼: : : :｣　　　　　 く___j＼／　　　　　　　 j 　 　 |: :| ＼／／／￣: : :. :._/　　 　 　 i＼
　　　|　　 ,ィ　 　 }￣　　／|　　　　　　　＼　　 ／￣￣/ 　 　 |: :|＿　<／: : ／￣￣/　 　 　 　 ﾉ: : }
　　　|　 /: :|　 　 |　　／／　　 　 　 r――ﾍ／　　 　 /　　 　 |／　{＼ ＼／　　厂/　　　 　 ／ : : /
　＜/　/: :│　　/ｰ'’／　　 ＿　 ﾄ------'´　 __　　 /　　　　〈　 　 ＼{＿＿__／ /　　 　 ／ : : ／
.　 /／: :／|　　〈: :／　 　 ,厶: :|　＼　　　　 ／ _}　 /　 　 　 / ＼　　　　　　　　/　　　／ : : ／
.　 ＼／　/　　　＼＼＿　　__〕｣　　 ＼ｰ一'_／/　 {　　　　 /: : / ＼＿＿＿＿_| 　 ／ : : ／
　　　 　 / 　 ,ｨ　　{＿＿} ￣￣　　　 　 ￣)＼/　／＼　　 /: : /　　 ＼: : : : : :__{　/ : : ／
....　　　/　／: :l　　 {――――--　　　 ／: : /￣: : ／ ＼/＿/　　　　　￣￣＿| 〈: :／
.　　　/／: :／ |　　 {─────-＼__{　／＼__／　　　　　　　　　　　　　 く　　　ヽ＼ ＼
　　　 ＼／　　|　　　ヽ＼　　　　　　　＼_{ 　 　 　 ／￣￣＼ 　 　 　 ／￣ {＿＿,ノ: : )　 {
　　　 　 　 ／ ト----': : :}＼　　／￣￣￣＼　　 /　　　　　　＼　　 / 　 　 ＼: : : : :／＼　{
　　　　/／　　 ＼＿:_:_;ノ　 }／　　　 　 　 　 ＼/　　　　　　　　 ＼/　　　　 　 ￣￣　　　＼{
　　　／

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ﾋﾛｼ
これに反対したのが、ヘッドコーチの中尾碩志である。



　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 .　-‐.:.:￣￣￣＞x.
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ .:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l
　　　　　　　 　 　 　 　 /.ィ.:.:.:| .:.:.:/:.:.〃.:.:/.:.／..:.::.ィ.:.:.:.:!.:.:!
　　　 　 　 　 　 　 　 ノ'´ l.:.:.:.| .:.:/.:∠|..:.:'.:./ .:::／　!.:! ..:|.:.:|
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |, .:.:| .:.l/ｒｆｭ心|::/.:／-‐'´ !l ..::ﾄ..:|
　　　　　　　　 　 　 　 　 ﾉ|l.:∧ .:l上ﾚt癶:{:/　ィｆj升V.:.:∧ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　|l.:.｀ヽ.:.',　　　 　 {　｀¨¨７.:.:./　　　 監督、待ってください
　　　　　　　　　　　　　　　|ｲ/.:.::ド ､. 　 ____′ 　, ′:/
　　　　　　　　　　　　 　 　 从/ﾄ'､　>　'--- ’ .イ:.:／　　　　　 それではキャンプ計画がメチャクチャになる！
　　　　　　　　　　　　　　　／　　 ヽ辷 ≧-＜リﾊ{

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中尾　碩志

　　　　　　　　／.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　 　 　 　 {.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:∧
.　　　　　　　 |.:.:.:.:.:/.:.:／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧ .:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.｝
　　　　 　 　 ,'.:.:.:.:.:{.:.:.:.:.:.:イ／／.:.:.:/　ヽ.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:.ﾘ
　 　 　 　 　 !:.:.:.:.:.:|:.:.:／ﾉ' ／ ｊハ从 斗七爪}.::.:.:.:.:.:.:i
.　　　　　　 〃i.:.:.:.:∨ ￣廾ト､ ﾉﾙ' 　ィﾃ示ヽ!:.:.:.:.:.:.:.:|
.　　　　　　/ 八.:.:.:ハ〃「丕ﾗ　} 　　　`´￣ /.:.:.:.:.:.:.:.:|
.　　 　 　 /　 　ヽ:.:.:∧ ´ 　 　 :!　 　 　 　 /:.:.:.:从}八{
.　　　 　 　 　 　 }:.:.:.:∧　　　　`　　　　　/.:.:.:.:イ/ヽｊ　　 それに、まだプロの体ができていない湯口を
　　　　　　　　　 ∨ヽ.:介　　　 ´こ丶　 / 从:/ﾉ'　　　　  一軍に入れたら、本人も焦って潰れてしまいますよ
　　　　 　 　 　 　 　 }从.:.:＞　 　 　 　 ／}:.:/
　　　　　　　　　　　　ヽｊヾi:.:| ≧ ､　 イ　 :|/
　　　　　　　　　　　　　 　r‐＝＝＝＝＝＝7
　　　　　　　　　　　　　　 ||:::::://:::::::::::::| |:::::{
　　　　　　　　　　　　　　/′::| |:::::::::::::ｌ| |:::::|l





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ | |
　　　　　　　　　　　 ミ￣｀ヽ､,,ﾉ'''ノ'''/ ,/ﾉニ＝'
　　　　　　　　.＿ミ'　　　　| ﾄ､､　,,ノ ,//,,ノ,ﾆ''_ノj_,,
　　　　　　　ﾐ : : : : 　　　　|〉｀l ）|/,,/ /　/三／彡'
　　　　　　　ミ::::::∠＿ミ--ﾉ　,,_,,彡_,ｲ_ノ￣ミ､ T　_,,ｨY彳⌒
　　　　　　　｀l､_ト-‐''⌒三く {::::::::<三/ﾊＶミ＿ Lｲﾉ／
　　　　　　 ＿ノ / rj ｎ ,,;ｴ !:::::::::::: ヾ´ ﾉハ　　ﾉ::∠　　＿　　　 ム……
　　　　　　 ＜二_ﾉ/ ﾄ'j 彡 l:::::::::::::::　　r'|,,ｲヽ:::::-､ ﾞi /.......ﾞl
　　　　　　　 ヽ--'ノ ト|ニ-､::::::::::::::::　 j　　Vﾄ､:::::::|,/ ::::::: ﾉ　　 それもそうだな
　　　　　　　　ﾞﾗ＿ﾉ.|/ / ,､ ＼::::::::::　/:::＼,,-┴‐'_ハ＿_/
　　　　　　　　　　　 { 「　 V┴ﾍ:::::::::/:::::／ ＿,-//､＿_,,ト､_
　　　　　　　　　　　　Vヽ:　｀ヽ└,､'::::／r∠　 く .{::::::::::: |┐.ﾞl
　　　　　　　　　　　　 ゝ､＿__.}_,-ﾉ_:::|_/ノ　ヽ 　＼ﾞー-ｲ,,l_　|｀ヽ
　　　　　　　　　 ,-─ｪ| {::::::,,-l／::::|::∠､: : :: ﾉ--､　　 /　　.ﾊ:::::|
　　　　　　　　／::／ハヽ__//:::::::::／: : ::}__,ｨ'､＿ﾉ　　/./｀V　.|::::|
　　　　　　_∠_／:::::::::::::,フｲ /　l´: : ::／|　|　|::::ヽ 　 {_ﾞ=ノ ／|:::}､
　　　　_∠　　|／::::::::／/　 |　　｀ーｲハ.l-ﾄ､ハ::::|／ ／ ,,ｲ |_|:/ﾉ
　　 ／　　　　|::::::::::/ /::::::,⊥＿__　|　 ﾊヽヽ|:::::rﾆ､イ ／:::| l　|Y
　 /　　 ,,-‐'':::｀ーｲ /_,,／/:::　　　ヽV::::::ﾊヽ＼{__ﾉ‐'´::::::::,ト|_j´
　j::::::::/::::::::::::::::::://|:::::::::::ﾉナ-､＿＿}::::::::::|.|:::::::::::￣￣￣|,L/
/　　/::::::::::::::::／: 〈〈::::::∠__}＿＿}:::::::∧:::::::||:::::::::::::::::::三」ﾞｰ'
ヽー'--､＿／|::::::::|.|:| {＿__}＿＿_::::::|＿:::::::||::::::::::::三＞ﾉ´



結局、湯口の一軍昇格を巡る喧々諤々の声は自然消滅する。

そうした混乱はあったが、湯口は予定通り二軍でのキャンプを開始する。



　　-､　 ＼　　 ＼　＼　　 .＼ .ヽ .ヽ　 .ｌ　　.! .|　.!　 l　,!　 /　　./ 　 ./ 　./ 　/ 　 . ／　,／゛
　　　｀''-､　ﾞ'-､　 `'､. ＼　　 ヽ, .ヽ ヽ　.ゝ　 ! .!　′.| .lﾞ　 ′　/ 　 / 　/　／　 .／ . ／ 　_..‐'
　　''-､、 .｀'-､. `'-、 .＼ ＼　　ヽ. " ﾞヽ 　　 l　　　　 .!　　　 / 　./ .／ ,./ 　,／. ／ . ,..ｒ'"　.,..-
　　'-､、｀'‐､、 ｀'-,,. ＼ .｀'‐.＼　 ｀-　　　　　 　　　　 　　　 　 : '"／ .‐゛ ,／ ／ ._..‐″_..-'″ .
　　_　　｀''-..,,｀''-､. ｀''　　　　　゛　　　　　　 　　 　　　 　 　 　 　 '"　 . ／ .'"._..‐"._..-'"　._..-‐
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　　ｰ　..,,、　｀'''ｰ ..,,　　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .゛ .‐'"゛　 . _,,　-''''"
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　　'''"_,,　‐''"゛ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｰ､,,.　.｀ﾞ''ｰ
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　　´　,..-'" ,..-'´ .,／　 　　 .,,‐　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`-、 .＼、　 .｀''-､.
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　　／´　. ／ 　　 ,／ 　/ 　./ 　,/　　./　　/　 !　 ．　│　 !　　　'､　＼　　.＼　 ＼.　 ｀'-、
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　　　　　　　　　　　　　　　_
　　　　　　　　　　　　.ィ:::::::)1≧x
　　　　　　　　　　　 人::::::::::::::::::ﾌ-!　　　　　　　　　バシッ！！　　　　　　　　　　　　　　 _,,,,.... --ｰ''''''ﾞﾞﾞ´_,,,,..　-ｰ''''"゛
　　　　　　　　 　 　 | {::匸三三{::ト|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,,.... --ｰ'''''"ﾞ´　 __,,,,　-ｰ'''''"ﾞ´
　　　　　　　　　 _, -=Ⅷ≧ｭL｣Ⅳ＼ ,,_人､ノヽ　　　　　_,,,,.... --ｰ'''''"ﾞ´　　　_,,,,..　-ｰ'''''"´
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　　　　　　／　　　}`圦_＿Ⅵ/-　＜　　　　　._,,,,..　-ｰ'''''ﾞﾞﾞ´
　　　　　.ｨ`ｰ=≠.ｨ≦:::r= 　 7. : :/´)　　　　　て
　　　　/　⌒ ￣Ⅶ::::才ｰ=xｲ: : ⌒／^⌒`Y´^＼ﾉ
　　　　}　　　_,ｨ≦圦::::::::::::::::::::〉"￣/.:::才　ヽ
　　　　`ｰ１才⌒ヾ::::):::::::::::::／/　　》::::i　　 /
　　　　　 ｢廴_　-=１ヾ￣￣} / 　 .ｲ { 弋 テ
　　　　　 ゞ=-　　,ｲ　　　　　　　,ｲ廴}　　r'
　　　　　　ﾄ､_＿/`ｰ=''⌒ｰ=≠''/ヾ(　-='
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　　　　　_人_＿/}　　　　　　 .ｲｰ=　く_＿
　　　ｨ≦::::::::::::Ⅳ　　　　　　 ゞ::::::::::::::::::::::)
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　　　 ｀7　　　　　　　,　 ,　　　　 ､　　ヽ　　ヽ　　　ヽ
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　　　l　　　　　　 l　l　　|　　/|　 ﾉｌ　　 ハ　∧　 ､　 |ｰ､‐'
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　､ノ　　 　|　|　　 V V~"十-l/_　　l/　　　 __,,,l　l　 |
　　7　 |　_|　|　　　l　　工二ｪヽ~　 　　∠~_　/|/|　|
　　| / /~､|　ﾄ　　 |　　　　　‐'　 　　　/┴-「 l　/|/
　　l/|. | （ l/ |　　|　　　　 　 　 　　 　l　 　　 l　l
　　　|　ヽヽ_ ヽ　|　ι　　　　　　　　　ヽ　　　| |
　　　ヽ l ヽ＿ ヽl　　　　　　　　　　　　/　　　| |
　　　　V|　　λ 　 　 　 　 　 　__　　　　　　 l l
　　　　　ヽ　 | ヽ 　 　 　 　 ／　 ￣ 7　　 /V　　　おおっ、すごいスピードだな
　　　 　　 | ,┤ ヽ　　　　　（＿＿＿/　　/
　　　　 __ / く　　ヽ､　　　　　　＿ 　 　/
　　　／ <　　ヽ　　　＼　　　　　　　 /
　 _,┤　 ヽ　　 ＼　　　　ヽ ､＿＿_/
／　|　　　ヽ　　　ヽ､　　　　　　 ト、

当時の二軍投手コーチは中村稔だった。
13年のプロ生活で通算72勝を挙げた名投手である。



　　　　　　　　＿_,.-―――‐- ､_
　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : :｀ヽ.
　　　　 ／: : : : : : /: : ｲ ∧ ｌ : l、: : : ヽi:.
.　　　 /: : : : : : : :l : /､ｊ/　lハ: ! ヽ: l: : ､ミ
　　　/ : : : l: : : :/レｒ┬≧‐　V_／V!: : ﾄ
　 　 l: : : !: !: : : |　　｀ 弖　　　 ､乞 }: : |
　 　 |:l┌|: l、: : l　U　　 　 　 　 〉　{: トl.
　 　 N {ハ:|ﾍ : ド　　　　　　　　　　∨
　　　｜ヽ ﾞ{､ﾍ: l　　　　　ｨー一ﾕ 　′　　 こいつ、本当にルーキーか？
. 　 　 Ⅵ: ｀ ￢ヾ　　　　　 ￣‐　　/
　　　 　 ヽ:|: ﾄl　＼ 　　　　 　 　 /
　　＿_　　ﾞl､:! 　 ＿＿　 ＿＿__/ - ､/｀ｿ
　　　　 ｀ー＝ﾆ　　 ┌＼ ├ｙ ´＿_　`<
　　　　　　　　　＼　 |　c ! |/　 ￣｀ヽ　l
　　　　　　　　　　 ＼|＼_,!/　､- 、 ヾ'‐′
　　　　　　　　　　　　>┬{ 、　｀ヽﾞ､　l
　　　　　　　 　 　 ／l／/　 ｀＝､ ヾ-'
　 　 　 　 　 　 ／　｜ ｛ｒ‐- ､＿_)‐'
　　　　　　　／ 　 　 !

　　　　　　　　　中村　稔


その中村の目も湯口の投球に釘付けになった。

　　　　　　　　　 ... .-‐…‐-. ..
　　　　　 　 . .::´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:...
.　　　 　 ／ !:.:.:.:.:.:,ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:.rｖ ｘ''｀ .､
　　　　 /ｲ／ﾚ'ヽﾊ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｊﾊﾉヽ!｀:.:丶
　　　　ｊ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .､
　　　　i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｨ.:.:.:.:.:/.:.:.:/ｉ|ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ
　　 　 {.:.:.:.:.:.:.:.:.:/iﾉiﾉ!::/iﾉi:/ノ　ﾘ､:.:ﾊ:.:.:.:.:iヽ
　　　　 ｖ‐､.:.:.:.,'　ｰ‐ﾉﾅﾆ､′　 ｒ‐i/-ﾄﾉﾊﾉ
.　 　 　 { ､ ヾ:::! 　 < ﾄィj　 　 　 ｲ7ヽｉ/
　　　　　ヽ ( ﾊｉ　　　 ｀ﾞ 　 　 . 　｀ﾞ　,′
　　　　　　 ):.:.:.ｉ､　u　　 　 　 〉'　　ﾉ
　　　　　 　 ﾉﾊ| 　､　　　　- -　 ／　　'ミ_'⌒)
　 　 　 　 ｒ‐‐‐|　　丶　 　 　 ／　　　  (´ 　⌒)
　　　　　 ﾉ　＼!　　　　ﾞ　ｒ‐<　　　　　　 ｀～ｰ'
　　 　 ／ヽ　　 ＼.__　 　 |、　｀ヽ.
.　　／　　　｀ヽ　　　 ＞､ ! ヽｉ　ｒ‐ 、
. ／　　　 　 　 }　 　/　　ﾄ､　ｊ ∧　!＼






　　　　　　　　　　　　　　　　　＜￣￣￣＞ ､
　　　　　　　　　　　　　　イ: : : : : : : : : : : : : : ＼
.　　　　 　　　　　　　／ : : : : : : : : : : : : : : : : :　　.
　　　　　　　　　 　 / ..: : : : / : : : : : :.! : : : :!: : : : :i
.　　　　 　　　　　 /: : : : :.:./!: : : ﾊ : :.|: : : : | : : :.:.:|
　　　　　　　　　 /イ : : : :/ Ⅳ∨　＼|＼从{: : : :.:.|
.　　　　 　　　　　　|: : : : {- ─-　　　 -─ -}从.:.:.|　  （球威は申し分ない
.　　　　 　　　　 　 Ⅳ : : |代公ｿ　　　代公ﾂ/ }::八
.　　　　 　　　　　　 乂}: :|　　　　　 　 　 　 |　/´　　 　 だが…制球が甘いな）
　　　　　　　　　　　　　〉ﾊ　　　 　 }　　 　 .′＼
　　　　　　　　　　　 イ {　 ＼　 　 　 　 .／{ : : ::i｀ー─ - ､
　　　　　 　 _　＜ : i : : |.　 　|＼　￣_／　 |: : : :| : : : : : : :∧
　 　 　 　 /＼ : : :.:.| : 八　　 ＼　￣／ 　 .!: : : :! : : : : : :/: : :.
.　　　 　 /: : : ヽ: :.:.| : : .:|　 ／｀}　 /￣＼ {: : : : 〉: : : : :/ : : : :.
　　　　 /: : : : : | :.:.:L: : .:|／{::＼〉./:::::／　.|: : ::/ : : /: / : : : : ::.
.　　　 ∧ : : : : :| : : : :＼::|　 ＼:::介／　　 .|::／ : : :.|::/ : : : : : : :.



事実、中村の元には、スカウト陣から「剛球だがコントロールが芳しくない」という報告が入っていた。

制球難克服のための手段として、投球フォームの改造という手もある。
二軍監督の白石勝巳とも、その辺は話し合った。



　　　　　　　　　　_l:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀:.:.:､:.:.:.:.:.:.＼:.:｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.＼､
　　　　　　　　　 _l:.:.::.＼:､:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.:.:.:.:＼:.:.:.ヽ､:.:.:.:.:.:.:ヾ.､
　　 　 　 　 　 .:´:.:',:.:.:.:.:.＼:､:.:.:.:.:.:.:.＼:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.ヽ:､:.:.:.:.:ｉ:. '.
　　　　　　　 /:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:..ヾ＼:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.l:.:.:ｉ:.:.:.:.:ヽ:.:.:l:.:.:.',
　 　 　 　 　 ':.:.:.:.:.:.ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ ､:.:.:.:.:.ヽ＼:.l:.:.:l:.:.:.:.:.:.:ｉ:. ':.:.:.:.l
　　　　　　 /:.:.:.:':.:.l:.:.:ﾄ､:.ヽ:.:.:.:.:.:._',-‐　､:.:.',:.:.ヾﾊ:l:.:.ｉ:.:.:.:.l/:.!:.:.:.:.!
　　　　　／ィ:.:.:l:ｉ:.:l:.:.:l　 ､:.＼:.:.´:.:.',　,xfｒっヽ メ:ﾘ:.:.l:.:.:.:/:.:.:!:.:.:.:.＼
　　　 ／　　l:ｉ:.:l:.:',:!:.:.l￣｀＼:',＼:.:.: ','　｀ー'　 ヽヽ:.:!:.:.:.:,ヽ:.:ｉ:.:.:.:l｀ ー ‐
　　　　　　　l!:.:':.:.:ヽ从 ィ弋メ＼ ＼:.', 　 　 　 　 l:.:!:.:.:./, }:.:.!:.:.ｉ:l　　　 湯口くんは、期待通りの逸材ですね
　　　　　　　l:.ﾊ:.:.:..:.:.:.:ヽ　　 丿 ＼　ヽ　 　 　 　 l/:.:.://./:.:.l:.:.l:!
　　　　　　 /:'　l:.:.:.ｉ:.:..ｉ:.:.ｉ　 〈　　　　　　　　　　 /l:.:.:/ｰ:':.:.:.:l:.:ﾊ　　　 性格も素直だし、とても練習熱心だ
　　　　　／´　 ヽ:.:l､:.:.:!从　　　　　　　　　　　 /　!:/:l:ｉ:.:.:.:.:!:/
　　　　　　　　　 ヾl　:.:.:.:.:.ヽ　　ィ　　 フ　　　 　 /!'.:/l:l:.:.:.:!/
　　　　　　　　　　 }　ヽ:.:.:.lヾﾄ､　｀ ´　　　　　 ／//'　lﾊ:.:.!ﾊ
　　　　　　　　　　　 　 ＼.:! }　 ヽ　　　　　 イ　　　　/　Ⅵ
　　　　　　　　　　　　　　 ＼　 　 ヽ　 ＜　　　　　　_ .-‐ヽｰ. -. .､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　 　 　 . : ´: : : : : : : : : : : : :.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＿__ ｉ　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : 〉
　　　　　　　　　　　　　　　_＿_ ノ:.:.:.:／} ／: : : : : : :　　´ ￣￣　｀　メ._
　　　　　　　　　　　　　/:.,: : : :./:.:.／　／: : : : : : ／　　　　　　　　　　　｀ヽ､
　　　　　　　　　　　_. 人:.ヽ: :.ｲ ´　 ／: : : : : : ／　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　, 　 ´ ﾉ: : ｀: :V　ｰ ／: : : : : : : / /　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　 　 　 　 　 /　 　 ハ: : : : ヽｰ ': : : : : : : : : :l /　 　 /　　　　　 　 　 　 　 　 　 ',

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　白石　勝巳

　　　　　　　　 　　／: : : : : : ::::::::: : ::/: : : : ＼::::::::ヽ..._
　　　　　　　　 　/: : : : :/: : ／::ヽ:::/: :＼ : : : : ヽ:::::::＿_::_ー-
　　　　　　 　　/: : : : :/ ::/ : : : : :Y: :: : ::::＼: : : : :ヽ::::ヽ
　　　　　 　 　/　　　/　/　　　::::,､_:::　　 :::::ヽ 　 :::::ヽ:::ヽ
　　　　 　 　/,: : : : : |: :|: . . ::/ /　　|　.:.　:::::::ヽ : :::::::k:::::l
　　　　　／´i: : : : : :|: :| : : :::|::/_ _ 　| ::::　::::::::::l: : : :::| .|::|
　　　　　　　i:::'l: : r　ヽ|: : :::ｫ/ __ _ ヽ|:|､:::::::|,:､::l: : :::::l　ﾘ
　　　　　　　i/ l ::::t卩|| : ::/|　'､k｡ｶ　`|ヽ:::::|Z|::l : ::ﾄ､|
　　　　　　　 　t|::::::＼| : :/　　　　　　 　 t::j ::ｆ:l:: ::::| .|
　　　　　　　　　|:::::::::::::|: :|.　　　　　　 　　>:/:::|､::::/
　　　　　　　　 /}::::::::::| |::|　　 　　_ _ _ . '::::/::::/ |::/
　　　　　 　　/　ﾚ|::／　`|＼ 　　 ヽ--'::::/l::∧| ﾚ　　ただ、やはり…──
　　　　　 　/､　.　'　＼　　:::::＼　 　.:::, '　l/　 |
　　　　　／　ヽ　　　　　`　､　 .::.` -,'､､　　　　　　　　, ､
　　　／ 　　　　ヽ　　　　　　Ａ:::::::|/ ::}.::ヽ　　　　　　/ :::l
　 ／　　　　　　　　＼　　　/:::{o`::|__､l::::::}　　　　, '　..:::/　　 　. - _´｀,ー__､
／　　　　　　　　 　 ::::::＼/　::::|　i::| /::::::::|　　／　__;;k'　 --´‐‐ ...￣....`::､:::`,
　　, - ･･･ -　､　　　 　　　　　 ＼`||　::::::{　／　　　　　　 ..:::::::::::::_:: ‐　 ' ￣
　/　　　　　　 　`　　　.　　　　　　`|| 　 :l ./　　 　　　　..:::::_:: -
/.　　　　　　　　　i　　　 　.　　　　　|､ 　l,/　　　　.......::::::-


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-─一　¨￣￣￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　 ｀ヽ　 ＼　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿ イ .／　.|　　　　　 ＼.　＼　＼ 　 ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 / ｲ /　 .!　.! 　　 　 　 ､ 　 ､　 ヽ　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 / / /　/ .|　.| 　|　 |.　 　ﾍ　 |　　.i　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / / /　 |l　|　.|　 | 　|＼　　|　.|　　.|　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /イ　|∧.:|∨＼{＼{＼|　 ＼从リ　　.|l八
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　ﾊ _リ＼　 ､＿ -‐一　 |　 |/⌒!:!|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 Ⅳ ﾙt vuj　 　 ィT斗´ 　 !　.! `7{/{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 | |　　　/　 　 　 　 　 Ⅳ゛_j/∧!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 | |　　 〈　　　　 　　u　∨ //jУ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 j八　　　､　　　　　　 　 ∨/＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　　　　　　　／|´| : : ＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ──コントロールか　　　  }＼「二二> 　.／::::.′: : : :.:.|｀　ｰ ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／: :./＼ -　 _／:::::. /　.| : : : : ､: : : : :.＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　-　 ´: : : / : : }｀丁::::::::::.　′　!: : : :.:∧: : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／: : : : : : :.:./ : : /　_{ 　 　 _/　　..|: : : : : :.:〉: : : : : : : : :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /{: : : : : : :.:.:.〈: :: :/　/ ヽ　厂}＼　　|: :: :: :／ : : : : : : : : :/ :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |: : : : : : : : :.:＼∧/＼　Y／／ ＼∧: :／ : : : : : : : : : :/ / :

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿　＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　,.　－'´::/::::｀ヽ:::::｀丶、
　　　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::_::::::/::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　,.'::::::::／::::ヽ:!:::::::::::::ヽ::::::::::::::::::＼
.　　　　　　　　　　　　　/::::::::/:::::::/::_::::::::::::::::::::',:::::::::＼:::::::｀::....．._
　　　　　　　　　　　　, ':::::::::/:::::::::::::ハ厶:::::!::::::::'.::::::::::::ヽ::::ヽ￣
　　　　　　　　　　 ∠イ::::::/:::::::::|::::厂　　',::ﾄ､::::::ﾄ､::::::::::::',:::::ﾊ
　　　　　　　　　　　　 |::::/:::/:::::_L::l._　　　';l　';::::l　ヽ:::i::::::',:::::::.
　　　　　　　　　　 　 厶'-:';.r|::::::|∨　｀丶　'　 '斗-‐';┼:::::|::|:::|　　ええ
　　　　 　 　 　 　 　 ￣|::::{　|::::::|　'Ｔﾂト　　 　 ';}ゥＴ'';|.::::::|∧:|
　　　　 　 　 　 　 　 　 l∧ヽ|::::::|　 ｀¨´　　　i　　￣　ハ::::|　 :|　　あのコントロールじゃあプロでは
　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ:',::Ｎ　　 　 　 　 }　　　　|:::ﾊ: !　　　　通用しません
　　　　　　　　　　　　　　 _,.ｲヽ!ﾍ 　 　 　 　 ′　　 /l/　l;′
　　　　　 　 　 　 _,.．-　´　 !　|　',＼　　──‐　 , 'ヽ､　　　　　　 投球フォームにも問題があるように思うのですが……
　　　　　　　,.　'´　　　　　　|.　|　 ヽ ＼　　　　／　|　 ｀　　._
　　　　　 ／　　　　　　　　｜　!　　 ＼ ｀　-イ　.|.　|　　　　　｀ヽ.
.　　　　 /　　　　　　　　 　 l.　 |　　　　＼ ／ 　 |　｜　　　　　　ﾍ




　　　　　　　 __ ...　-‐ ､
　　　　, -.::''.:::::::::::::::::::::..`ｰ-.､
　　 ／::::::/:::::::;::::::,:::::::::::::::::::::..ヽ.
　　イ/::/:::::::;ｨ::::/::::::::::::::::::::::::::::.ヽ,
　　 /::::i::::／.l::/l::ﾊ:::::,i::::ヽ:::::::i:::::::l
　　/;ｨ::{:/ｰ､ｌ/_.!'　|:::ハ:;∧:::::ｌ:::::::l
　／　|::|　ﾃ''ｯ､｀ 丶ｰ- ､　i;:::|::::::/
　　　.|::l　　　　,　　 'ﾃ''ｚ､ l:::ﾘ::::::i
　　　.|/|　　　/　　　ｒ.Kヽf''i/'ｌﾉﾘ　　 ……そのことなんだがな
　　 　 ﾊ　 　｀　　　 | .| l .| |ノ
　　 　 ,小.　- ､　　 .| .l/././､
　_,,ィ'´.H. ﾞ.. 　　,, -'"　　,/　 ￣ﾞ'ｰ､
''´ /　 { ' 　｀''r'´　　　 ／　　　　/　ヽ
　/　　 ヽ､　,ｨl　　　イ /　　 　 /　 　ヽ
./　 .,ィ＾i }_/_/l　　　 |/ 　　 　,　　　　 i
'.‐'"　ヾ{;:::;}::;;/|.　　　l.　　　 /　　　　　|

　　　　　　　　　　　　 　　 　 __,,,､,, 　 ,,､- ､
　　　　　　　　　　　　 　 ／´: : : : : ｀´: : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
　　　　　　　　　　 /: : : : : : :i: : : : :.∧: : :il: : i: : :ヾ: :',
　　　　　　　　　　,': : : : : : : l: : :/:./　∨:ハ: :i!: :l: :::::::i
　　　　　 　 　 　 l: l: i: : l ／!／∨　　 |/　∨∨!: :::::::l
　　　　　　　 　 　ﾚ!: !: :l i"⌒"'-､　　　,､-'''⌒`l: :::::ﾍ!
　　　　　　　　　　 ∨ﾍ i | でラ`　 　 , 　f∃ｿ /::∧|
　　　　　 　 　 　 　 !ﾍ∨ゝ　 　 　 　i　 　 　 ∧ｿ
　　　　　　　　　　　 ﾚヽi l.　　　 　 　ｊ　　 　∧ﾉ　  とりあえず今は、湯口のフォームに
　　　　　　　　　　 　 　 ﾚﾍ　　　__＿___　　/ﾉ　　　 口出ししないつもりだ
　　　　　　　　　　　　　　∨＼　ヽ __ /　／ ′
　　　　　　　　　　　　　／i｛　 ＼ 　` ／i
　　　　　　　　　　　 　/:::::l ﾍ　　 ｀　´　∧＼
　　　　　　　　　 _,,-''/::::::::l　　` ｰ､　,／　.i:::::＼､,_
　　　 　 　_,..-.:":::::::/:::::::::::i　　 /;;ﾍ__!入　 l:::::::::＼`::..､,,_
　　_,..-.:":::::::::::::::::::::＼:::／:|ﾍ /`ﾍ::::::::ｿ´ﾍ i::＼::／::::::::::::`i:ｰ.,





　　　 .l::/:::::::::l::::/........./....　 ／..............／........./........　 ﾊ:::::|::::::　:|
　　　 l::i::::::::::::|:::|:::::::/.:::::／:::::::::::::::／.:::::::／::::::::/::::/ .|i ...|　､: .|
　　 ./::l::::::::::::::l::|:::::/.::::/::::::::::::::;／..::::;／ /::::::::/,::::/　i.l:::::|:::::|::::|
　　/,:'|:::i:::::::／i|:::::l:::::/:::::::::::;≠‐-:Z._　 /.::::／/:::/　,!::|:::::|:::::|:: l　  ヽ＿,
　ノ 　 |::l::::/.斤l::::|::;ｲ:::::::／＿.|／ -､｀ﾒ::／　/::/-''7::::|::::|:::::|ﾍ:l　　  ヽ(_／
　　　　|::ﾄ::ヽ,弋l:::|/:|::::;ｲ　攵;:cﾘ￣`/／　　/,ィ-ｧ/:::::|::::|:::::|　|:!　　　 ) (
　　　　.i:| l:::l.:＼,l::::::|::/:|　　　￣　　　　　　/'ﾞｰﾞｲ;':::::::l|:::l|::::| 　ヾ　  ノ (｀
　　　　 ｌ|.ﾉ::|::::l:::|i::::|/:::|　　　　　　　 　 ／､　　/:::::::/.|::l.|:: l　　　　 ´⌒＼
　　　　,ｨ''〈 |::::j:::l !:::::::::|　　　　　　 　　　 　ヽ./:::::::/　ｊﾉ.l::/
　　　/,.;:;:;:;/／ｊﾒ　ヽ:::::|　　　　　　　　　 -‐.T:::::／　 　 j/
　 ／{,.;.;.;.;.;.;ﾞヽ,　＼.ヽ;::ﾄ､　　　　-‐‐‐-　,ｲ l::::/　　　ほう
／,.;:;:;l,.;.;.;.;.;.;.;.;ヽ,　 ＼N.　`　､　　ー　／|/ .|::/
;:;:;:;:;:;:;:l,.;.;.;.;.;.;.;.;.;.ヽ.　　ヾ､ ／､ﾞ ー '　　　　 |/
:;:;:;:;:;:;:;:;l,.;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:ヽ､　　＼__. ヽ､::,＼
;.;.;.;.;.;.;.;.;.l:;.;.;.;.;.;.;.;.;.;:;:;:;＼　　　/-､{;:;:;:,.ヽ､

　　　　　　　　　　　 　 　 　 _＿＿__
　　　　　　　　　　　　 ..:.:.:´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ー､
　　　 　 　 　 　 　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　/:.:.:.:.:.:.:.:ｉ:.:.:.: ｉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
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　　　　 　 　 　 ／ 〉:.:./ｌ/　 ＼:! ヽ:.!ヽﾄ､:ｉ:.:.:.:. ｌ
　 　 　 　 　 ／ ／:ｌイ　'　　　 ｀ 　 ｀　　 ｌ:.:.ｉ:.:.ｌ
　　　　　　 /　/／〉:.:.ｌ _＿ ノ　　 ´ ￣ ヽｌ:.:.!ヽ!　 だって、あいつはまだ一年目だろ？
　　　 　 　 ｌ　 ´ イ !:. ! 弋ｚｱ　 　｀ー ‐　ｌ / _ﾉ
.　　　　　　ｌ　 　 ｉ Y｀ﾊ　　　　 ｉ　　 　 　 !'7〃　  下手に色々言って戸惑わせても
.　　　　 　 ｌ　 　 '　ｉ.　 ヽ　　　 !　　　　 .ｲﾂ´　　  逆効果になるだけさ
.　　 　 　 /　　/　 '　　　_>　―_－　／　!､
　　 　 　 ｌ　　　／　　 / ､ ｉ｀ ､ __ イ 　 ／ ヽ_
　　　　´　｀ー‐'｀　　 /　　｀ー､　　,－´　　/ 　 ＼





　　　　　　　　　　　　　　 ,　≠.￣　　､
　　　　　　　　　　　 　 ／ /　　｀　､　　ヽ､
　　　　　　　　, -一＝ﾗ　/　　　 　 ＼ 　　＼
　　　　 　 　 /　　　 V ｒ｜　　 　 ＼　　　､　 ＼
.　　　　　　 /　　　　　 |　　　　 ､　　＼　　＼　､＼
　　　　　　/　　　　 　 ,|　l　　　､ヽ　　 ヽ　　 ＼l　 i
　　　　 ／／　　/　/ ハ　,　　　',　,　　　ヽ　　　､　l
　 　 ／ ７　 　 /　/ /　 '.　、 　　､ 、　　　'　　l　ヽl
　　　 　 ' 〃　 '　」_/＿_ ヽ ぃ 　 い＞z―┼　|　 い
.　　　　 l il　　 l　 !｛　＿ｚミ ﾄヽ　 Ⅵ＿_>、|　 ｊ,　 | l
.　　　　 l/l　　 l　 リ代ｒtｭ「｀ヽ　、 |乍t.刀､!　小　トヽ  …それもそうかもしれませんね
.　　　　 {　、　 !、 {　　￣　 　 　 ヽl　￣ 　 ! /ﾍ ﾊl
　　　　　　 ヽ　! ヽ!､　　　 　 　 {､　　　　　ﾑ{.ｨ / ｛　　 分かりました、湯口の件は
　　　　 　 　 ヽｉヽ l∧　 　 　 　 !ﾉ　　　　/l ｛ l/　　　　 あなたに任せますよ
　　　　　　　　 ｀ ヽ{ﾍゝ　　 ー‐ ‐一 　 ｨ ハl ′
　　　　　 　 　　 　 }　ヽへ　　 ￣ 　 .ｲ/ﾚ　 ｀
　　　　　　　　　　　 ／/＼＞　__　´／ l ＼
　　　　　　　　 　 ／　,'　　 ＼____／ 　｜　 ＼
　　　　　　　　　/　　 { 　 　 〃⌒ヽ.　　!
　　　 　 　 　 　 　 　 |､　　 ﾊ　　　ﾊ　 ,!
　　　 　 　 　 　 　 　 | ＼ /　i ⌒ ｉ　Ｖ |



最終的に、中村も白石も湯口の投球フォームに手を加えることはしなかった。

その代わり中村は、下半身強化のための走りこみ中心のメニューを湯口に与えた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　 . . -‐…‐-.....　　　　　　 　 　 　 ..-‐ 、
　　　　　　　　　　　　　　　＞ｰ''ﾍﾊ.::::::::::::::::::::::｀ヽ. 　 　 ／｀ ＜　　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　⌒>.:::::::::::::ノ ﾊﾊハハ:::::ﾊ　 ／　　　 　 ｀ヽ　　　＼
　　　　　　　　　　　　　 　 7ｌ.:::::/:::ﾉ::ﾄ､::::::::::::::::::::::::厂　　｀ヽ　 . : : /´`丶、　＼
　　　　　　　　　　　　　　 ´ﾉィｲ＜ハ!　ヽ{＞､:;.-､∧　　　 . :l . . : : }　　 　 ＼ 　＼
　　　　　　　　　　　　 　 ,.--=￢<ﾋﾊ　ｰ''ﾋﾉ> rﾍ人 ', . . . : : } . : :／　　 　 　 ＼ 　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　 　 _／｀ヽ　 八　 く　　　u ,ィ　 }}　＼. . : :ｊ.:／　　　 　 　 　 〈　　　 }
　　　 　 　 　 　 ｘ＜⌒｀ヽ　Ⅵ　 ＼ ヽ‐)　 .ｲ　　/厂￣: : : :「　　　　　　　　 　　`^ ー'
　　　　　　 ,.ヘ'⌒丶、　　　ハ! 　 | ｀ ｰ＜ ノ __,/く. : : : : : : :}
　　　　,-‐/ 　 ､｀ヽ 　〉　 　 　 ｀ヽjノ⌒} ｊー'.:::/／　. : ハ : 人
.　　　/　/　 ヽ ｊ.ノ },人 　 ／￣｀ヽ　 　 ￣｀ヽj　　　｢　 /: : : : 〉
　　　ヽ　ヽ_＞'（_／＼ﾉ／　　 　 　 ＼　　ー=ヘ.　. :￣. : : : :./、　　　　　 /　￣￣￣ / .__
　　　 　￣　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ` ｰ-､ー 厂　＿＿_／::::}　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ゝ ⊥.イ.:::::::::::::::::::人　　　　　　　  匚　 ./i／i／　∧∧　,ヘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |::::::ｊ.:.:::::::::::::::´:::ハ　 　 　 　 　 /　./　　　　　l /l / / ./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |::::::::::／.:::::::::::::::::::}　　　　　　 /　./　　　　　　　 ／.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ::／.:.:::::::::::::::::::::ﾉ　　　　　 　 ￣　　　　 　　　　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／.:.:.:::::::::::::::::::／',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::厶=-‐-.､＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::/.:::::::::::::::::|　ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/.:::::::::::::::::::jこ jﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::/.:::::::::::::::::ィﾖ 　{{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::..＜´　|主 　}ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼.:.:.:.:.:::::::::::::::::／ 　 ＼'｢ ｀ヽﾉﾘ.::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ` ー一'´￣　　　　　 ヽｰ彡'.::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ.:.::::::::::::丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨.:::::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨/.:::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V.::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〈.:::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 Y.::::::::::::::入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ー=≦∨〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }主}｀ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｊ主ｊ_ ,ﾉ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /ー‐ヘ.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ー‐彡'′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ￣

　　　　　　　　　　　　　　,.　-‐………‐‐一ｧ
　　　　　　　　　　　　 ／.:::::／l.:::::/.:i::{:::::＜_
　　　 　 　 　 　 　 ／.:::::,lィ≠≧厶∧|｀ヽ:::::｀ア
　　 　 　 　 　 　 /.:::::/l/　,f弋{｢｀`　　､__厶::::ト
　　　　　　　　　 {::::::::{　　　　　　　　 く衍∨!::l
　　　　　　　　　 ｊr弌:!　　　　　　　 　 ′　!｣`｀　そろそろ切り上げようかな…
　　　　　　　　　 { ⌒｀　u　　 　 一 ､　 　 }
　　　　　　　　 　 ヽｰ┘ 　　　　 　 　 　 , '　　　  いや、まだだ
　　　　　　　　　　　｀Ｔ7　　　　　　　　, '
　　　　　　　　　　　 个　　　 　 　　／
.　　　　　　　 　 　 　 |　　　　 厂｢´
　　　　　　　 　_.　-‐┤　　 　 　 ｢ﾉ｀ヽ
　　 　 　 　 ∠　　　　|　　　 　／　　　}
.　　　 　 　 }　　}　,r＜_　　　/　　∧ 厶__
.　　　　 　 ,'　　 て{::::.::.:.:.:￣｣　／　 ヽ {、 ｀丶、
　　　　　 / r‐一'´ヽ:::.:r一'′´　　　　 ＼丶、　丶、
　 　 _　７⌒＼　　　 ',::{　　／ /　　　　　　 　 丶、 丶、
　／　　　　 　 ＼ 　 ｣::!　　 ／　　　 　 　 　 　 　 ＼　 ヽ


湯口はひたむきだった。
合同練習は手を抜くことなく黙々とこなし、夜は夜で遅くまでシャドーピッチングに汗を流した。


　　　　　　　　　　　　　 ／/￣￣|ヽ
　　　　　　　　 ＿　 ／　｜　　　 ||＼
　　　　　　　 /　　ヽ　　　｜　　　|||　 ヽ
　　　　　　 /　　　ヽヽ　　　　　　//　　/
　　　　　 / 　　　　ヽヽ　　　　　//　　　ヽ
　　　　　/ヽヽヽﾉﾍ　ヽヽ　｜　//　//　 /
　　　　 /ヽヽヽﾘ　　V／＼｜ ///ﾍ// /
　　　　 |ヽヽヽﾉ　　　　　　 ＼／　 |/ /
　　　　 |ヽヽ､|　　　　　　　　 /　ﾉ　|/!
　　　　/ヽヽ./ ,.,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,　 r'´　　|ﾘ
　　　　|,.､ミ |　=ﾓtラー､:::r .r,.ﾐ_-､_ﾚ、
　　　　/,､∨　　　￣　 '´｜ |ゞﾆﾞゝ//!　　　 お前はホント真面目な奴だなあ
　　　 //rヽヾ　　　　　　／'７!　　 / し!
　　　〈ヾヽ｀　 l　　　　　＼_ノ　　 i l,ﾞ!_ﾍ　　 ほどほどにしないと
　　　|ﾘヾ〃,　 l　　,.=-⌒ﾆ､_､_　∧　',　ヽ　 壊れちまうぞ
　 ,.--io'ｲﾞ´l　 l　　 ｀'ｰ:-....-,　//iﾍ　ﾍ　ヽ
　|　　|ﾘ/　 ヽ　　　　　 _　　　/r-!、l,　ヽ
　l,　r"/　　　＼　 ,.-:'´:::｀ヽ /∧　 ヽ!
　 Yﾞ　l　　　　　＼::::::::::::::::/´:/ ﾉヽ_,.入
　　　 !　　　　　　　￣￣/:::::/　ヽ/ヽ　ｲ

深夜に寮の廊下でウサギ跳びをして、同僚に怒鳴られたこともある。



　　　　　　　　　 ,r_.ェ-_､_
　　　 　 　 　 ／::と Ｚ つ:::｀ヽ､
　　　　儿　 /::::::::::::(._フ" ):::::::::ヽ
　　　　ﾌ「 ':::::::/:::::::::`'''´::::::::::::ｔﾀ',　　　 うるさいぞ、湯口ッ！
　　　　 　 l:::::::f:::(((ぅ:::l::::i:::l::::::l:::l:::',
　　　　 　 ｌ:::::::i:::::::l:_:_:|_:_凵⊥l-|:l::|　　  今何時だと思っていやがるッ！
　　　　　　',:::::::!::::::|で６ﾗ')ﾉｨ５ﾗ川
　　　　　　 ヽ::::i::::::ｌ　 ''"'( ::{;ｉ::::ｊ::ﾘ｀二ヽ-､
　　　　　　 ｛ヽ::l::::::l 　 　 ､.ﾉ::://ﾆ二:.ｅヽ ヽ‐=' O)
　　　　　　 ハ ＼:::::l　　∈=':〃ﾆニﾆ::.’ｉ }e､ヽ￣
　　　　　 ム ｅ,＼ヽドｪ.､二ノ=-‐'`ｉﾆFl　|　　e､＼
　　 　 ／ヾ〉　 ｅ､｀ｒ― - = 二⌒ｉ lﾆF|ｅ|､_e､
　　 ／ｅ､ ヾ〉 ｅ､　 ＼　_／ (ｒ ＼| |-F|’| ＼　e､
　 /　 ｅ､　 ヾ〉　 ｅ､ ／/" 　 ＼ｒぅ|ｅF|el　　 ＼
　｛ｅ､＼　 ｅ､ヾ>､／　l |l　　＼_.ﾉ´ｌ’E|’!
　 ＼._　`ミ＞､／ ,ｲ[|ｌ ｌl　､ヽ､.ﾉ, ,' 〃| l
　　 ヽ ,ｅ´／/ｅ' ｒﾀ´ｅ' `7''`ｒ'' // （()ｊ l
　　　 ＼ /´{　ｒﾀ'´ｅ' ｅ'/ ｅ､∨/ ｅ､ ¨ l

　　　　　　　　　淡口　憲治
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 _ イ::..／l／|／..:::N＼lヽ.::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 フ::::::::::::::/:::::::ﾊ::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 イ:::::::/l/ |// 　|/∨＼:::::::::::::〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｲ:::l/ ≧‐ﾍ　 vz-―‐∨l:::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ∧'´（.）.:.:.:.:.:.:."（.）`ｧ　〉y
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ}　 　　　i〉　　　U　/ノ‐┬､
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ごっ、ごめん…　 ∧ 　　r-―､　　　.仆　　|　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _イ/|　＼　l＿___ｊ　／:::| 　 　|　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　 |　　 |＼__ 　イ/　　| 　　/　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／ヽ 　 　|　　 |__- ＿__//⌒)}　／　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |／⌒>､三--/　>＼|/ 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　　　|＼|　　　　＼＼_/／ 　　/ 　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　 |　/／ﾉ　　　　ヽl 　　＿/＿／|

　 _,,. 　　'"´ ￣￣￣ ＼ 　／ ￣￣￣ ´"''　　.,,_
　l}　　　-‐―‐‐‐‐‐-　　Y　　-――(　　)　‐-　{l
　l} 　 -‐―――‐‐‐- 　 |　　-‐‐――‐‐-　　　{l
　l} 　 -‐―――‐‐‐- 　 |　　-――‐‐‐‐‐-　　 {l
　l}　,,.　-‐≦三三二ニヽ|／二三三三≧‐-　.,, {l
　l}/-‐=二三三＞　'`゛｀⌒´"'　＜三三二ﾆ=‐-l{l
　l}!三二＞ '"´　　　　　　　　　　　 ´" ' ＜三二{l



さらに毎日ではないが、日記もつけていた。
プロとしての心構えやコーチのアドバイスを箇条書きした。



　　　　　　　　　 ... .-‐…‐-. ..
　　　　　 　 . .::´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:...
.　　　 　 ／ !:.:.:.:.:.:,ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:.rｖ ｘ''｀ .､
　　　　 /ｲ／ﾚ'ヽﾊ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｊﾊﾉヽ!｀:.:丶
　　　　ｊ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .､
　　　　i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｨ.:.:.:.:.:/.:.:.:/ｉ|ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ
　　 　 {.:.:.:.:.:.:.:.:.:/iﾉiﾉ!::/iﾉi:/ノ　ﾘ､:.:ﾊ:.:.:.:.:iヽ
　　　　 ｖ‐､.:.:.:.,'　ｰ‐ﾉﾅﾆ､′　 ｒ‐i/-ﾄﾉﾊﾉ
.　 　 　 { ､ ヾ:::! 　 < ﾄィj　 　 　 ｲ7ヽｉ/
　　　　　ヽ ( ﾊｉ　　　 ｀ﾞ 　 　 . 　｀ﾞ　,′ 中村コーチは下半身を上手く使えと言ってたな
　　　　　　 ):.:.:.ｉ､　　　　 　 　 〉'　　ﾉ
　　　　　 　 ﾉﾊ| 　､　　　　- -　 ／　　　 上体だけで投げるなと──
　 　 　 　 ｒ‐‐‐|　　丶　 　 　 ／
　　　　　 ﾉ　＼!　　　　ﾞ　ｒ‐<
　　 　 ／ヽ　　 ＼.__　 　 |、　｀ヽ.
.　　／　　　｀ヽ　　　 ＞､ ! ヽｉ　ｒ‐ 、
. ／　　　 　 　 }　 　/　　ﾄ､　ｊ ∧　!＼

そんな湯口を、伝説の400勝投手・金田正一も絶賛。



　　　　 　 　 ｀ヽミメ、　. -‐,=‐
　　　 　 . . .-‐‐ミ i!　Y i! 厶イ_＿
　　　∠..., =‐-　i!　 i!　 i!　i!　＜´
　　　 .ィ´ i! 　 i!　i!　i!　i! 　 i!　i! ヽ　 俺の二世を語る奴は多くいたが、
.　　, ′i!　i!　i!　i!　i!　i!　 i!　 i!　i!.!　  皆中身のない奴らばかりだった……
　 /イ i!　i!　i!ｨ i! i./::､ i! ﾄ､　i!　i!　!
　　/i!.／/i!./::iメi/:::::::,ﾒ､「ヽﾄ､ i! i!j　　その点、湯口は違う
　 /イ i!/! /==｡=､:::::.=｡==＝:i!,...i! |
　　　 ｊ/ j/ i::｀:‐:/:::::::: ｰ一.:´:|ir, }.|　　キャンプで少し見たが、あいつこそ
　　　　　　　i:::::/.::::::、　　 .::::::|Lﾝii|　　本物の金田二世だな……！
　　　　 　 　 i: ｀‐――一'.;.::::ハ.i! ｊ;＼
　　 　 　 　 　 ､ 　ー　..:::::／;　 ヽ:{;;;;;;;ﾄ､__
　　　　　 . -=''7ﾍ.....:.:::::／;;; '　　　ｊ;;;;;;;j;;;;;;;
　　 -‐'";;;;;;;;;;/;;;;;;ヽ .イ;;;;: ' 　 　 /;;;;;;;;|;;;;;;;
　　;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;|:.:;;:::'　　　　/;;;;;;;;;;;!;;;;;;

　　　　　　　　　金田　正一



その真摯な姿と才能を加味する限り、湯口は巨人軍史上最高の
左腕投手になるはずの逸材だった。

そしてキャンプが終わり3月上旬、プロ野球のオープン戦が始まる。



　　 ＿＿,,,,,,,,,,,,,,,,,...................＿..........................,,,,,,,,,,,,,,,,,＿＿
￣ 　　　　　　　　　　　　　￣　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣　"""""
　　　　　　　　　_,,.　-＝-　.,,_

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,..､ -
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　 _,,..､ - ‐ '''' "´
　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　_,,..､ - ‐ '''' "´
＿　　　　 ＿＿＿_ ,,..､ - ‐ '''' "´
.／ ＝　／　　　 ／
　 　／　　 　／
_,／￣￣￣

　|　三＿二　/　ﾄ⊥-（(｀⌒)､_i　 |　|
　〉─_,.　-‐='＼ '‐＜'´＼/´､ｦ _/､ |
　|,.ノ_, '´,.-ﾆ三-_＼ヽ　川 〉ﾚ'＞/ ﾉ
〈´／／´|　｀'t-t_ｩ=､i |::　:::,.-‐'''ﾉﾍ|　  いよいよオープン戦だ
. r´｀ヽ　/　　 ｀"""｀j/　| |くゞ'ﾌ/i/
. |〈:ヽ, Y　　　　　　::::: ,. ┴:〉:　 |/　　  開幕一軍の当落線上にいる者は、
. ＼ヾ( l　　　　　　　　ヾ::::ﾉ　　|、　 　 これが最後のアピールするチャンスだと
　j .>,、l　　　　　　_,-ニ-ﾆ､,　 |)）　 　 肝に銘じておくように
　! >ﾆ<:|　　　　　　､;;;;;;;;;;;;;,.　/|　　　　　　　＿__,. -､
　|　 |　 !､　　　　　　　　　 　.| |　　　　　　 （ ヽ-ゝ _i,.＞-t--､
ヽ|　 |　　ヽ＼　　 　_,..:::::::.　/ .|　　　　　　　｀''''フく　＿,. -ゝ┴-r-､
..|.|　 |　　　　:::::ヽ<::::::::::::::::>゛　|＿　　　＿,.-''"´ ／￣,.／´　ゝ＿'ヲ
..| |　 |　　　　＿;;;;;;;_￣￣　　　|　 ￣￣　/　_,. く　 ／　ゝ_／￣|
:.ヽ‐'''!-‐''"´:::::::::::::::::￣￣｀~''‐-､_　　　 /　にﾆ'／,.､-t‐┴―'''''ヽ
　 ＼＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　/　　/　　.（_ヽ -'__,.⊥--t-⊥,,_
＼　　　￣＼―-- ､ _::::::::::::::::::::＿＿::/　 /　　／　 ￣　　 ）　　ﾉ__'-ﾉ
　　＼　　　 ＼::::::::::::::｀''‐--‐''´::::::::::/　 /　／　／￣ rt‐ﾗ'￣￣ヽヽ
ヽ　　ヽ＼　　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　 /　　　ゝﾆ--‐､‐　　　|
　l 　　ヽヽ　　　＼:::::::::::::::::::::::::::::::/ 　　　　　　　　　　/‐＜_　　ヽ　　|ヽ

川上はそのオープン戦のメンバーに、湯口の名を加えた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ | |
　　　　　　　　　　　 ミ￣｀ヽ､,,ﾉ'''ノ'''/ ,/ﾉニ＝'
　　　　　　　　.＿ミ'　　　　| ﾄ､､　,,ノ ,//,,ノ,ﾆ''_ノj_,
　　　　　　　ﾐ : : : : 　　　　|〉｀l ）|/,,/ /　/三／彡'
　　　　　　　ミ::::::∠＿ミ--ﾉ　,,_,,彡_,ｲ_ノ￣ミ､ T　_,,ｨY彳⌒
　　　　　　　｀l､_ト-‐''⌒三く {::::::::<三/ﾊＶミ＿ Lｲﾉ／　　　　 湯口、しっかり準備しておけよ
　　　　　　 ＿ノ / rj ｎ ,,;ｴ !:::::::::::: ヾ´ ﾉハ　　ﾉ::∠　　＿
　　　　　　 ＜二_ﾉ/ ﾄ'j 彡 l:::::::::::::::　　r'|,,ｲヽ:::::-､ ﾞi /.......ﾞl
　　　　　　　 ヽ--'ノ ト|ニ-､::::::::::::::::　 j　　Vﾄ､:::::::|,/ ::::::: ﾉ
　　　　　　　　ﾞﾗ＿ﾉ.|/ / ,､ ＼::::::::::　/:::＼,,-┴‐'_ハ＿_/
　　　　　　　　　　　 { 「　 V┴ﾍ:::::::::/:::::／ ＿,-//､＿_,,ト､_
　　　　　　　　　　　　Vヽ:　｀ヽ└,､'::::／r∠　 く .{::::::::::: |┐.ﾞl
　　　　　　　　　　　　 ゝ､＿__.}_,-ﾉ_:::|_/ノ　ヽ 　＼ﾞー-ｲ,,l_　|｀ヽ
　　　　　　　　　 ,-─ｪ| {::::::,,-l／::::|::∠､: : :: ﾉ--､　　 /　　.ﾊ:::::|
　　　　　　　　／::／ハヽ__//:::::::::／: : ::}__,ｨ'､＿ﾉ　　/./｀V　.|::::|
　　　　　　_∠_／:::::::::::::,フｲ /　l´: : ::／|　|　|::::ヽ 　 {_ﾞ=ノ ／|:::}､
　　　　_∠　　|／::::::::／/　 |　　｀ーｲハ.l-ﾄ､ハ::::|／ ／ ,,ｲ |_|:/ﾉ
　　 ／　　　　|::::::::::/ /::::::,⊥＿__　|　 ﾊヽヽ|:::::rﾆ､イ ／:::| l　|Y
　 /　　 ,,-‐'':::｀ーｲ /_,,／/:::　　　ヽV::::::ﾊヽ＼{__ﾉ‐'´::::::::,ト|_j´
　j::::::::/::::::::::::::::::://|:::::::::::ﾉナ-､＿＿}::::::::::|.|:::::::::::￣￣￣|,L/
/　　/::::::::::::::::／: 〈〈::::::∠__}＿＿}:::::::∧:::::::||:::::::::::::::::::三」ﾞｰ'
ヽー'--､＿／|::::::::|.|:| {＿__}＿＿_::::::|＿:::::::||::::::::::::三＞ﾉ´
　　　　　　　 {三三|||:::::::::::}:::::::::::::::::::|　 ﾄ::::::ヾ､三三ﾉ　|





　　　　　　　　　　　　　　,.　-‐………‐‐一ｧ
　　　　　　　　　　　　 ／.:::::／l.:::::/.:i::{:::::＜_
　　　 　 　 　 　 　 ／.:::::,lィ≠≧厶∧|｀ヽ:::::｀ア
　　 　 　 　 　 　 /.:::::/l/　,f弋{｢｀`　　､__厶::::ト
　　　　　　　　　 {::::::::{　　　　　　　　 く衍∨!::l
　　　　　　　　　 ｊr弌:!　　　　　　　 　 ′　!｣`｀
　　　　　　　　　 { ⌒｀　u　　 　 一 ､　 　 }　 …はい！
　　　　　　　　 　 ヽｰ┘ 　　　　 　 　 　 , '
　　　　　　　　　　　｀Ｔ7　　　　　　　　, '
　　　　　　　　　　　 个　　　 　 　　／
.　　　　　　　 　 　 　 |　　　　 厂｢´
　　　　　　　 　_.　-‐┤　　 　 　 ｢ﾉ｀ヽ
　　 　 　 　 ∠　　　　|　　　 　／　　　}
.　　　 　 　 }　　}　,r＜_　　　/　　∧ 厶__
.　　　　 　 ,'　　 て{::::.::.:.:.:￣｣　／　 ヽ {、 ｀丶、
　　　　　 / r‐一'´ヽ:::.:r一'′´　　　　 ＼丶、　丶、
　 　 _　７⌒＼　　　 ',::{　　／ /　　　　　　 　 丶、 丶、
　／　　　　 　 ＼ 　 ｣::!　　 ／　　　 　 　 　 　 　 ＼　 ヽ



高校出の巨人軍ルーキー投手では、堀内恒夫以来の抜擢である。

予定されていたのは、3月22日、23日の大洋二軍戦での登板。



　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＿___l!、＿___
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.-‐'´:::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､
　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞヽ.
　　　　　　　　　　　 　 　 ／,.ｲﾍ/!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ、:::ヽ.
　　　　　　　　　　　　 　/／|/ﾚｿ/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ＼ヾ､::::ﾞ!
　　　　　　　　　　 ____ノ"::::::::::,.-'T￣）:::::::::::::::::::::::::ｒ‐-ﾄ､_:∧:リ::i
　　　　　　　　　　 ｀7ｨ:::::::::ｒ'" ／ ／::::::::::::::,､:::::::::::::＼ヽ、｀ヽ.::::::l
　　　　　　　　　　　ｿ リ:::::{､__ｊ／::::::::::::;.ｲ:::ハ:ｒ､:::::::::::::＼}_　 |::::::i
　　　　　　　　　　　 /ｲ::::::::::::::::::::::/l:::/　|:/　 !|　!:::::ﾄ;:::::::::::｀´:::::::|
　　　　　　　　　　　　 |ﾊ::::::::::/!:::/ |:/　 |!　　 l!　iﾄ､:! l::ﾊ:::;､:::::::::ﾉ
　　　　　　　　　 　 　 　ｒ'i::ﾊ:| iV　 li　 　!　　　　　 |! ,ﾘ　l::! iﾄ;::/　  （少し調子は悪いけど、
　　　　　　　　　　　　　 {ﾍヽ. ￣｀＞=､_ 　 　 　 __,,.z=''￣ﾘ ﾘ:/｀}　　  川上監督がせっかくチャンスをくれたんだ
　　　　　 　 　 　　 　 　 ＼.ｙi、 <´ ! ソ｀ﾞ''　　`" '´iソ}ﾞ>　 /ｨｿﾉ
　　　　　　　　　　　　　　 　ﾞｰl.　 　 ￣　　 　 　 　 ￣　　/ｰ'"　　　　絶対に結果を残してやるぞ！）
　　　　　　　　　　　　　　_,.-'|lﾍ、　　　　　 l!　　　　　　 /ﾞ!ｒ､_
　　　　　　　　 　 _,,.-‐'"ｊ|　 ｊ|　 ＼　　　 ＿＿__　 　 ／　ﾘ　 ﾞllヽ､
　　　　　　　,,.-'´　 　 ／　／　　 l´＼　 　 　 　　 .イ　　{{　　{l　　 ﾞヽ、
　　　　　　/　　　　／　／　　　くﾍ:)　i､ヽ..___,,..イ´<ｿ、　 ＼　 ＼　　　 ヽ、
　 　　 　 /　　　 ,.ｲ　　|l　　　　　＼　　ヾ、 ／" 　 ／　　　 〉、　＼　 　　 ﾞ､
　　　　 /　__　　 ｊ:|___,..ハ、　　　　　｀ヽ、 ｀´　　／　　　　 //　　　〉ｊ　 __ 　i
　　　　 i （＼） ,:'::::::::::::::::::::!　　　　　　　 ! 冂 /´　　　 　 　|:::｀ﾞ‐-'":i　（／） |
　　　　 |　￣　i:::::::::::::::::::::::;! ／＼　　　 ヽL」ﾉ　 　 _,,.へ、 l:::::::::::::::::ヽ. ｀¨´　l
　 　 　 ｊ　　 　|:::::::::::::::::::,ｲ'"　　　ヽ.　　l⌒! １　　 i 　 　 ヽi､:::::::::::::::::::! 　 　 ﾞi
　　　 /　　 　 i:::::::.,へ_/　　　　　　 |　　l二!.⊥　　|　　　　　｀!:::;-､:::::::|　 　 　 l、
　　 /　　　 ／::::::/　 /　　　　　　　ｊ　　 　 　 　 　 i　　　 　　 V 　ﾞ;::::::! 　 　 　 }、

その頃の湯口はオーバーワークのため本来の調子が出せていなかった。
しかし、首脳陣の期待に応えたい湯口は、連日ブルペンでの投球練習に励む。



　　　　　　　 ＞──､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r:::.:..:....､
　　　　　　　└──‐'　　 r──､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ::::::::::::::i
　　　　　　　く￣￣＼ 　 /　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 ,ｨ≦三ﾊ:::::!
　　　　　　　　￣二二_／　 r─､　　　　　　　　　　　　　＼　 　 　 |　　　　 ’　　　　 ￣Ⅶ　　Yﾌ ￣｀ヽ
　　　　　　　 ∠´＿＿＿／|　く＿　　　　　　　　　　　　　　 ＼、_ ﾉし'/／　　　　　　／ゞ、 _/l|　 　 _/:::::.. 、
　　　　　　　　　　　　∠二_　　　　 ￣ヽ　　　　　　　　　　＿＿）　　　　て　　　　　 ′　弋三ｿ　／.:::::i:::::::∧
　　　　　　　　　　　　　　　｀}　 /´フ_／　　　　　　　――＝二　　　　　 ＝――　　ﾄ-=≠＜　 / ..::::::∧:::::::∧
　　　　　　　　　　　　　　　　| ,/　　　　　　　　　　　　　 .__,,,．　ﾒ、　　　 （_　　　　　 Ⅵ:::::::::::::≧}:::::才　 }≧::圦
　　　　　　　　　　　　　　　　}/　　　　　　.__,,,--ｰ'''“^ﾞ´._,,,,..．　　　Ｙ＾　 ＼　`　　　　 `寺:::::::::::::.`ｰ=　(::::::::::::ノ
　　　　　　　　　　　　　　 _,,,,.... --ｰ'''“^ﾞ´._,,,. --ｰ''''''　　　　　　　　|　　 　 ＼　　　　　 ￣〉ｰ=::::::::::::::::::::::::::::ト､
　　　　　 ._,,,,.... --ｰ''''''ﾞ　 _,,,,.... --ｰ''''''　　　　　　　　　　　　　　　　!　　　　　　　　　　　／　　　 ￣ﾌ三二一一”ｰ'
　　''^￣＿,,..　-―'''''''　~　　　 　 　 　 　　　　,ｲ,ｲ ,ｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　／.::::::　　 　 ￣￣￣〉ｰ= 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾚﾚ //　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　 　 ／｀ヾ:::::L.. . . _＿＿/_/Ⅷ:::圦
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　 　 {　　　　￣￣　　 　 　 　 Ⅵ::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 |　　　　　　　　 　 　 　 　 `寺ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ト、 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _|　　ｰ=}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／.::::.｀ヾ ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { .:::::::::才"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣

　　　　　　　　　　　　　　_ｍｎ冂∩ｎ
　　　　　　　　　　　　　 {∩∩冂∩クエ}
　　　　　　　　　　　　　ｒ┴＜りり／￣｛
　　　　　　　　　　　　　}三三≧＜三＿〉
　　　　　　　　　　　　　ＴTﾓｯ{l イtｯラ}lハ　　 おう湯口、張り切っているな
.　　　　　　　　　　　　 人{　 /| l ＼　 }ﾘﾉ_
　　　　　　　　　　　　 (（_.∨__ｰ　__　/(⌒)＼
　 （￣{￣{＼ 　 　 ／ (（_)∧.｀ニィ ｲ(＿)}　 }＼
　r≦丁丁ヽ ∨⌒{　　 (（_)　 ー＜ (＿)　　/
　 ￣￣＼.　　∨ ∧　　(（_)　　　　(＿)/　/
　　　{￣￣　　 ∨ ∧　　(（_）⌒ヽ(＿）.　/
.　　/ ー人___　 ｝}＼ﾍ　　　{ 　　 }　　　/
　 /　/　/∧_／/}　 }＼ 　.人＿ノ 　 ／⌒＼
. /　 {　 {＼二 イ}　　　}＼　　(_)　／´￣￣｀ヽ
/　　　　}::::::＼==}　　　　　≧fつｲ

　　　　　　　　　　　　　　　森　祇晶





　　　　　/:::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ:::::::::::::::::::::::::ヽ、
　　　 _ﾗ::/ｿｲ〃:::::::::ｨ:/|:l　ﾞl::|ヽ:::::;､ﾚVｗﾘl
.　　　７:::::::::::::::､:ﾊ|/ ﾘ　l! 　 ｌ! _ｌﾊLｌ,i::;::::::::}
　　　 |ﾊ:::::::iⅵ_l!‐_二｀ヽ. 　｀　ｒ≠､､｀ｌｲ:::::!
　　　 　 ⅵ:ヽ 　/ l!寸｀　 　 　 弋ﾘ冫　1:::ﾄ
　　　　　　ヾ;ﾍ　　｀ ´　　　　　　 　 　 /ヾ'　 ええ、なんとか調子を上げていかないと
　　 　 　 　 { fヽ.　　　　　｀´　　 　 　/ｿﾉ
　　　　 　 　 ｀ヽゝ.　　　 ｰ ─‐　　 _'／　　 オープン戦登板も決まりましたからね
　　　　　　　　　　ム、　　　　　　／
　　　　　　　　　　 　 |｀ヽ､_ __,／ |
　　　　　　　　　　 　 |　　　　　　 |
.　　　　　　　 　 .'｀ｰ┤　　　　 　 |｀７ヽ
　　　　　　 　 _/　 i /! 　　　　 　 ト ｌ　,ﾄ､-､_
　 　 _,. -‐'"´/,.ヘ ＼ ‐‐､　 ,.‐‐　 / i＾|　ヽ　｀‐- ._

　　　　　　　 　 　 　 　 __,...,
　　　　　　　 　 　 ｒ‐冂　l　lユ７ヽ
　　　　　　　　 ┌ｖﾍｌ‐l ｒ‐.ｋ/７ /¨l
　　　　　　　　 <ヽ」 冂 ｌ　l‐┐冂ノ!
　　　　　　　　　}ヽ､｀¨厂l‐!_.」 ,ｨ彡{
　　　　　　 　 　 ﾞﾄ､ ＞､ﾉ__,.ィﾆ三ヨ　　　　 そうらしいな
　　　　　　　　　 _Lx＜ i￣ﾌ二ィノl∧
　　　　　　 　 　 lﾊ ﾋｔｯﾃ　 irェｵﾌ ﾚﾉ　　　  …どうだ、今日のブルペンは俺が球を受けるよ
　　　　　　　　　 ヽｉ',　ｒ' ｌ　l 〉 ､　 l/⌒ﾊ
　　　　　　　　　/⌒'ｖ' 弋フ'　 ﾞヽ∧._ｦﾉ
　　　　　　　　　ﾄ､._∧　ｰ==ブ　,ｿ ,'¨ヽヽ
　　　　　　　　_i´｀ｌ /ｌ＼｀ ￣ ／　 i.　 ﾘ |､
　 '´￣ヽ-‐'"´入ﾉ i　!　｀ーｲ /　 ,.ゝ‐< ｌトヽ
　　／　／/　ｉ　 |　ｌ　ヽ＼ ｆ´ i　/　 　 j./l
　/　 /／/　.ヽ-<　l､_.ﾉ　　l ノ _｣_ 　_ノ ｲ
　　 //／l　　l ,.､,.-､!　　 ／ /　　｀i　 l.リ




　　　　　　　　　　　　　 　 　 __ヽ_ｉ＿__
　　　　　　　　　　　　　 　 :´.::::::::::::::::::::::::....
　　　　　　　 　 　 　 ／ｉ／!ｨ::::::::::::::::::::::::::ﾄ:｀
　　　　　　　　　　　/.:::7／!/.::::ﾉﾊ!::::::ﾊ　ヽﾊ::::ヽ
　　　　 　 　 　 　 /.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ!｀:::::::::::!
　　　　 　 　 　 イ:::::::::::::::::::::/!::::::i:::::::::::::::::::::::::::::::!
　　　　 　 　 　 /:::::::::::,i::/:::/ i::ﾊﾉ＼::ヽ:::ﾊ:::::::::::::!
　　　　＼_人　 ｉﾊﾊ::::::iｊ,' !,'　 ﾘ 　､___ヽﾊﾉ ﾘヽ:::/
　　　　__)　　　　 ヽﾊﾘ', ‐ﾆﾐ ヽ 　 ｀ィ≠､　　!:/-.　  ほっ、ホントですか！？
　　　　　)　　　　　 ｉ }　 〈 ﾋ::j　 　 　 ﾋ:::ｿ 　 ﾘﾋ ,'
　　　　／`Y　　 　 ヽﾞ､　｀,,､　,　　　 ﾞﾞ ｀　　,__ノ　　 ありがとうございます！
　　　　 　 　 　 　 　 　 ' .　 　 ｀＿　　　　 /
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼　 `ｰ‐'　　 ／ﾘ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＞,.. __.. イ　ﾄ､_
　　　　　　　　　　　　　　　/　 |　　　 : : :ﾄﾉ ヽ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ノ 　,ﾉ　　　. : :/　　 ﾄ､
　　　　　　　　　　　  - '／　　ﾘ　　　 ／ 　 　 |　｀　､
　　　　 　 　 ,..-≠　／　,ｲ!　/ｰ 　- | ｒ‐-､　 j　　　 ｀　、
　　　　　　  ∧　　 'ｰ‐ｧ'　 〉 |ヽ,＿__.ｊ/　　 ＼ﾄ､　　　　　＼
　　　　　　 /　}　 　 ／　／　|::::::.:.::::::ﾊ　　　　　 ＼　　　　　ヽ

　　|| |　|　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＿___　　　　　　　　　　　　|.|　　|　| ||
　　|| |　|　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_.. -‐''"￣゛　　￣ﾞﾞ''ｰ､、　　　　　 　 |.|　　|　| ||
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　　　　　　／　　　}`圦_＿Ⅵ/-　＜　　　　　._,,,,..　-ｰ'''''ﾞﾞﾞ´
　　　　　.ｨ`ｰ=≠.ｨ≦:::r= 　 7. : :/´)　　　　　て
　　　　/　⌒ ￣Ⅶ::::才ｰ=xｲ: : ⌒／^⌒`Y´^＼ﾉ
　　　　}　　　_,ｨ≦圦::::::::::::::::::::〉"￣/.:::才　ヽ
　　　　`ｰ１才⌒ヾ::::):::::::::::::／/　　》::::i　　 /
　　　　　 ｢廴_　-=１ヾ￣￣} / 　 .ｲ { 弋 テ
　　　　　 ゞ=-　　,ｲ　　　　　　　,ｲ廴}　　r'
　　　　　　ﾄ､_＿/`ｰ=''⌒ｰ=≠''/ヾ(　-='
　　　　　　| _＿}{ｪｪ　　　　　 r=1　/ _/
　　　　　_人_＿/}　　　　　　 .ｲｰ=　く_＿
　　　ｨ≦::::::::::::Ⅳ　　　　　　 ゞ::::::::::::::::::::::)
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　　　　　　　　　 ... .-‐…‐-. ..
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　　　　 /ｲ／ﾚ'ヽﾊ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｊﾊﾉヽ!｀:.:丶
　　　　ｊ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .､
　　　　i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｨ.:.:.:.:.:/.:.:.:/ｉ|ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ
　　 　 {.:.:.:.:.:.:.:.:.:/iﾉiﾉ!::/iﾉi:/ノ　ﾘ､:.:ﾊ:.:.:.:.:iヽ
　　　　 ｖ‐､.:.:.:.,'　ｰ‐ﾉﾅﾆ､′　 ｒ‐i/-ﾄﾉﾊﾉ
.　 　 　 { ､ ヾ:::! 　 < ﾄィj　 　 　 ｲ7ヽｉ/
　　　　　ヽ ( ﾊｉ　　　 ｀ﾞ 　 　 . 　｀ﾞ　,′　ふうっ…！
　　　　　　 ):.:.:.ｉ､　u　　 　 　 〉'　　ﾉ
　　　　　 　 ﾉﾊ| 　､　　　　- -　 ／　　'ミ_'⌒)
　 　 　 　 ｒ‐‐‐|　　丶　 　 　 ／　　　  (´ 　⌒)
　　　　　 ﾉ　＼!　　　　ﾞ　ｒ‐<　　　　　　 ｀～ｰ'
　　 　 ／ヽ　　 ＼.__　 　 |、　｀ヽ.
.　　／　　　｀ヽ　　　 ＞､ ! ヽｉ　ｒ‐ 、
. ／　　　 　 　 }　 　/　　ﾄ､　ｊ ∧　!＼

　　　　　　　　　　　　　　_ｍｎ冂∩ｎ
　　　　　　　　　　　　　 {∩∩冂∩クエ}
　　　　　　　　　　　　　ｒ┴＜りり／￣｛
　　　　　　　　　　　　　}三三≧＜三＿〉　　　なかなか良い球投げるじゃないか
　　　　　　　　　　　　　ＴTﾓｯ{l イtｯラ}lハ
.　　　　　　　　　　　　 人{　 /| l ＼　 }ﾘﾉ_　　 さすがドラフト一位だな
　　　　　　　　　　　　 (（_.∨__ｰ　__　/(⌒)＼
　 （￣{￣{＼ 　 　 ／ (（_)∧.｀ニィ ｲ(＿)}　 }＼
　r≦丁丁ヽ ∨⌒{　　 (（_)　 ー＜ (＿)　　/
　 ￣￣＼.　　∨ ∧　　(（_)　　　　(＿)/　/
　　　{￣￣　　 ∨ ∧　　(（_）⌒ヽ(＿）.　/
.　　/ ー人___　 ｝}＼ﾍ　　　{ 　　 }　　　/
　 /　/　/∧_／/}　 }＼ 　.人＿ノ 　 ／⌒＼
. /　 {　 {＼二 イ}　　　}＼　　(_)　／´￣￣｀ヽ
/　　　　}::::::＼==}　　　　　≧fつｲ





　　　　　　　,ｨ‐'"~￣｀`丶、
　　　　　_／ﾝハル/Vヽ/ト＼
　　　　 ﾌ.::::::::::::::::ﾊﾊ:ﾄ､:l::::::::::ヽ
　　　 /ｨ::::::::/|:/ﾚ' ! ヾ_从:|:|::::::!
　　　　/!::::N-‐''ヽ 　　..-- ､1ｋi
　　　　!ﾊﾍ:{　r'"~　,　　　 　 ﾙ,}
　　　　 　 Yｔ、　　 `＿_,　　〃′　いえ、まだまだですよ
　　　　　　 `‐へ　 `ー '　,ｲ
　　　　　　　　　　lヽ､__,／ﾄ､
　　　　 　 　 　 ／|　　　　ﾚへ、
　　　 　 _,､-‐ｲ__　!　　 　 L　{ ｀''‐-､_
　　 ／|　 　 ,ｲV Ｙ`ﾆﾆ二」ハ `ト-､　 ｀>､
　 / 　 ｌ┬'´/／/|::::::r‐ｧ' ７　`ｰ'　　`Ｔ′',
　/　　 l│　 　 ＼!::::| /　/　　　　　 |/　　 !

　　　　へﾊ「:Yj⌒i⌒iｎ
　　　(⌒YYYフｎ'⌒Yフ
　　 ﾉ二二　　ﾆ二二二}
　　 {＜/＼liliﾉ｀≧ｔﾃ　}-　  どれ、そろそろ疲れただろう
　　 |lilli{ (ﾊ{　　　／ _i {
　　Y ⌒Yﾆ}　 ／　 __T´　  今日はこの辺にしておくか
.　 人__.ノ　{／　　 こう
　　(___)　　 ｀＞　､＿)__ 　　 , -､
　 (___)　　 { __　 __(___)　}_,／ ／
　　 Y ⌒Y（___）(___)　　／ ／{＿
　　.人__ノイ　 , 　／⌒へf　　　　＼
　　　　　　　／／　　 　 ⌒}　　　 　 ﾟ｡
　　　　　 イ.／ 　　　　　⌒i 　 　 　　 ﾟ｡
　　　／７77{　　　､＿_ノー'　　　　　　 }
　 ／　/{ { {:{　　／　　　 　 　 　 　 　 ﾉ




　　　　　　　　　 ... .-‐…‐-. ..
　　　　　 　 . .::´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:...
.　　　 　 ／ !:.:.:.:.:.:,ィ:.:.:.:.:.:.:.:.:.rｖ ｘ''｀ .､
　　　　 /ｲ／ﾚ'ヽﾊ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｊﾊﾉヽ!｀:.:丶
　　　　ｊ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. .､　  ヽ＿,
　　　　i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｨ.:.:.:.:.:/.:.:.:/ｉ|ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀ヽ　ヽ(_／
　　 　 {.:.:.:.:.:.:.:.:.:/iﾉiﾉ!::/iﾉi:/ノ　ﾘ､:.:ﾊ:.:.:.:.:iヽ　　  ) (
　　　　 ｖ‐､.:.:.:.,'　ｰ‐ﾉﾅﾆ､′　 ｒ‐i/-ﾄﾉﾊﾉ　　 ノ (｀
.　 　 　 { ､ ヾ:::! 　 < ﾄィj　 　 　 ｲ7ヽｉ/　　　　 ´⌒＼
　　　　　ヽ ( ﾊｉ　　　 ｀ﾞ 　 　 . 　｀ﾞ　,′
　　　　　　 ):.:.:.ｉ､　　u　 　 　 〉'　　ﾉ　　 えっ
　　　　　 　 ﾉﾊ| 　､　　　　- -　 ／
　 　 　 　 ｒ‐‐‐|　　丶　 　 　 ／
　　　　　 ﾉ　＼!　　　　ﾞ　ｒ‐<
　　 　 ／ヽ　　 ＼.__　 　 |、　｀ヽ.
.　　／　　　｀ヽ　　　 ＞､ ! ヽｉ　ｒ‐ 、
. ／　　　 　 　 }　 　/　　ﾄ､　ｊ ∧　!＼

　 　 　　　 _ イ::..／l／|／..:::N＼lヽ.::＼
　 　 　　　 フ::::::::::::::/:::::::ﾊ::::::::::::::::::::::::::',
　 　 　　　 イ:::::::/l/ |// 　|/∨＼:::::::::::::〉　　 森さん、すいません
　　　　　　　ｲ:::l/ ≧‐ﾍ　 vz-―‐∨l:::::/　　　 もう少し付き合ってもらえませんか？
　　　　　　　　∧'´（.）` 　 　"（.）`ｧ　〉y
　　　　　　　　ヽ}　 　　　i〉　　u　　/ノ‐┬､　 ようやく調子が出てきたところなんです！
　 　 　　　　　　∧ 　　r-―､　　　.仆　　|　|
　 　 　 　 　_イ/|　＼　l＿___ｊ　／:::| 　 　|　|
　　　　　／　　 |　　 |＼__ 　イ/　　| 　　/　|
　　　 ／ヽ 　 　|　　 |__- ＿__//⌒)}　／　 .|
　　 /　　　　　 |／⌒>､三--/　>＼|/ 　 　 |
　　/　　　|＼|　　　　＼＼_/／ 　　/ 　　　 |
　 /　　　 |　/／ﾉ　　　　ヽl 　　＿/＿／|





　　　　　 　 　 ＿ 　 ＿
　　　　　 ┌lﾆ「└冂　７^>┐
　　　　　,rくV冂ｰ厂Y＾ト/´/７
　　　　　)‐二ﾆ=-=二三ニ二(
　　　　　 YこjW{;二=-‐＜二〈　　 まぁ俺は構わんが…
　 　 　 　 ﾋp} 　ﾄﾆｐブ￣｀!ﾆヽ
　　　　　　|ﾌ| 　| ド､~　　}　'Fﾘ　  あまり無理はするなよ？
.　　　　　 ｜ﾞ=_'_'ﾞ 　ヽ　/　ｒく
　　　　　　 |〈.-―ヽ 　V　/´交ヽ
.　　 　 　　｜`⌒｀　 ,/／ヽ立ソ＾ヽ
　　　　　　 /'ｧ---‐''" /.交ヽ/ 　,ハｰ､
　　　 　 r「//＿_ /'交ヾ立ソ　 /　 / 　＼
　　　_,ィｲ//4Ｏ) ヾ立ゾ／　／　ノ　　　　￣`ｰ､＿
　 ／／ / |卩 ｌフﾉ-‐''"　 '"　／　　　　　　　／ 　　＼
　　　　 / />rr＜‐'´__,,.. ‐'''"
　　　　　 |〃ﾙ厂フ



オープン戦の登板が決まったこと、そしてブルペンで正捕手の森が相手を相手を努めてくれたこと。
肌寒いにもかかわらず、湯口はつい張り切りすぎてしまった。

その結果───



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`　　　　　'
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　､ 　　ﾉヾ　 　 　'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)ヽ/　　ヽ､ﾉ|ノ´
　　　　　　 　 　------- ―=＝ ﾆ ニ二　　　　　 　二ニ ﾆ ＝=― --------
　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　)　　　　　（
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　'´⌒`Y´⌒` ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　 　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ､__人_人_人_人_人人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ）　　　　　　　　　　  （
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ）　うわあっ！！　  （
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ）　　　　　　　　　　  （
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒ Ｙ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ブルペンでの投げ込みすぎに、以前からのオーバーワークも祟り
湯口は左肘を痛めてしまう。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／::::::::::::￣｀ヽ
　 f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣｀ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /::＿__:::::::::::::::::::::＼
　 |　僕は…何をやっているんだ　　　 　 　 　 　 　 　 ,.　' ´ ￣￣￣ ｀ ` ヽ//　　　｀`ヽ::::::::::::::::::＼
　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　／ ＼　　| 　 　 　 　 ＼　　　　　＼::::::::::::::::ﾞ､
　 |　せっかくのチャンスだったのに…　　　　　 　 |　 / ノ＼.ヽ　| /　 　 　 　 　 ＼　　　　 ヽ::::::::::::::|
　 ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿乂_ ,. -―┴‐;;'´/.　|　ﾞ, l/　　　　　　　　　　ヽ　　　　｀､:::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／;;;;　::;;;;;;;;;;;;;;;;;7　|　.| |　　　　　　　 　 　 　 ﾞ,　　　 　 Y/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l;;;;;;;:　.:;;;;;;;;;;;;;;;;;/.　.!　,' |　　 　 　 　 /　　　　　〉　　　 .//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 !;.,,,,,,,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;//　l_ノ;:/| ／ ￣ ｀`y'　　 　 　 ﾊ　　　 //
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　ノ::::::::::ヽ　　　　 ハ＿＿_／::::ﾄ､　 .//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l／-､,,,＿::::|　　 　 　 |::::::::::::::::::::;'　｀'Y/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |ﾊ/V＼ﾄ､l　　 ＿ 　 ｀ヽ､＿＿_,ｲ::::::::::::::::::/ 　 // >
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ヾ三___／:::::/｀`'ー- ､,＿__/:::::::::::_／ 　 ,//｢|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＼:::::::::::|:::::::::::::::::::::::::,:r‐ ''"´　 ,.-'´ // .|.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀!:::::::ヽ:::::::::::::::::::::ヾヽ-‐ '"´ヽヽ,//　 |.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｢::::::::::::＼:::::::::::::::::::ヽ.　　　 　 //＼　|.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /-ﾐ/‐ｧ:::入::::::::::::::::::::ヽ.　　　//　ヽ＼!.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∠_　 | /／　 .＼::::::::::::::::::ヽ.　 //　　　｀ｰ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 〈.　 ヽﾚ'ﾉ 　 　 　 ＼::::::::::::::::::ﾞ,//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀` '' ´　　　　　 ＿）:::::::::::::／〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／ ヽ ヽ;::::／／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 l　　／>.｀ ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀ 'ー‐ '' ´


結局、湯口はオープン戦で一度も登板することがなかった。

川上の落胆も大きかった。



　　 　 　 　 __ノ＼＿_
　　　　-=/⌒ｰ　 ∨　}-､
　　　 ／⌒ヽ＼ }　}／｀ヽ＼‐┐
　　 /ｲ７７⌒Yニﾆ{　 ﾄ /　/-､}
　　　 / /:{ く {三ﾉﾉrｲ{ﾄ(ﾉ,ｲ }/
　　, '　/⌒ｰ/　　　ﾍむ7_ノノ　湯口登板で後楽園を満員にして、
　//　/　　 {　　　　　__｛　　　 スター誕生といきたかったのだが……
⌒ヽ￣￣￣＼　　ｰ‐ｊ
＼ 　＼:::::::::::::::＼__ﾌ　　　　　 ままならぬものだな……
　 ＼　 ＼:::::::::::::{
　　　}　　 }::::::::::::＼-､
_＿__j　 　 ∨:::::::::::::＼＼-､
ｰヘﾉ´＞-､}::::::::::::::::::::}　}　ﾄ､
　　 ｀^ー─'--- ､::::::::}　}/ }　',
　 ／　　　　　　　 ≧'⌒ヽ￣}ﾉ
イ　　　　　　　　 ＼　　　　＼ ＼
　　　　　　　　　　　}　　 　 　 !　 }
　　　　　　 　 　 ／　 　 　 　 ﾄ､ {
≧x　　　　　　　　　　　　　　 j　V＼
　　 ＼　　　　　 　 　 　 　 ／　 ｊ　/
＿＿/⌒＞──ｧ──一'　　　／
＼::::::::::::＼＼:::::::｀ヽ　　　　　／
　 ＼::::::::::::::::::::::::::::::::＼/￣´

──やがてイースタンリーグが始まり、二軍は各地を転戦した。



　　 ＿＿,,,,,,,,,,,,,,,,,...................＿..........................,,,,,,,,,,,,,,,,,＿＿
￣ 　　　　　　　　　　　　　￣　　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣　"""""
　　　　　　　　　_,,.　-＝-　.,,_

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,..､ -
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　 _,,..､ - ‐ '''' "´
　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　_,,..､ - ‐ '''' "´
＿　　　　 ＿＿＿_ ,,..､ - ‐ '''' "´
.／ ＝　／　　　 ／
　 　／　　 　／
_,／￣￣￣

肘の痛みから解放された湯口は、5月3日の大洋二軍戦でプロ初めてのマウンドに立つ。



　［PEPSI][ﾛｯﾃﾘｱ]　　_ _ _ _ _ _ _ _ ＼
　.|￣￣￣￣￣￣| .曰田田田田田　 ＼ 廾廾廾廾廾廾廾88888888888888888888888888
　.|　　 ∧＿∧ 　 |　 ﾖ|三‐ 〒. ▽。。　 |二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二
　.|　　(´･∀･`)　 .|　 r.r.r.r､　::::: ::::: :::::／　　.l　l二二二二l　..l::::::::::::::::區l　l區:::::::::::::::
　.|＿＿＿＿＿＿|　 LLLLl　::::: ::::: ／ 　　　.l　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |￣　　　　　 l　|　UCカード　|　ｱｻﾋｽｰﾊﾟｰﾄﾞﾗｲ　｜　LOTTE　｜
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　　l　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 | 　　__________l＿＿＿＿＿＿l＿＿＿＿＿＿＿＿l＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　/　 ∧＿∧　 ∧＿∧　 ∧＿∧　 ∧＿∧　 ∧＿∧　∧＿∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│/　　(´･ω･｀)　( ・∀・ )　(　ﾟ∀ﾟ　)　(*ﾟ ｰ ﾟ*)　(.`Д´ .)　( ´_ゝ｀ )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　 ∧＿∧　 ∧＿∧　 ∧＿∧　　∧＿∧　 ∧＿∧　 ∧＿∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　ミ,,・∀・,ﾐ (´∇｀* )　(｀･ω･´)　(*´Д｀*). ( ﾟдﾟ　)　 (.=ﾟωﾟ=)
　l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣ﾚ￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣l￣
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　────────────────────────────────────────




　　　　　　　　　　　　　　,.　-‐………‐‐一ｧ
　　　　　　　　　　　　 ／.:::::／l.:::::/.:i::{:::::＜_
　　　 　 　 　 　 　 ／.:::::,lィ≠≧厶∧|｀ヽ:::::｀ア
　　 　 　 　 　 　 /.:::::/l/　,f弋{｢.:.:.:.:.:.:.:.__厶::::ト
　　　　　　　　　 {::::::::{　　　　　.:.:.:.:.:. く衍∨!::l　 （これがプロのマウンドか…
　　　　　　　　　 ｊr弌:!　　　　　　　 　 ′　!｣`｀
　　　　　　　　　 { ⌒｀　u　　 　 一 ､　 　 }　　　　 二軍と言っても、今までとは
　　　　　　　　 　 ヽｰ┘ 　　　　 　 　 　 , '　　　　　雰囲気が全然違うな）
　　　　　　　　　　　｀Ｔ7　　　　　　　　, '
　　　　　　　　　　　 个　　　 　 　　／
.　　　　　　　 　 　 　 |　　　　 厂｢´
　　　　　　　 　_.　-‐┤　　 　 　 ｢ﾉ｀ヽ
　　 　 　 　 ∠　　　　|　　　 　／　　　}
.　　　 　 　 }　　}　,r＜_　　　/　　∧ 厶__
.　　　　 　 ,'　　 て{::::.::.:.:.:￣｣　／　 ヽ {、 ｀丶、
　　　　　 / r‐一'´ヽ:::.:r一'′´　　　　 ＼丶、　丶、
　 　 _　７⌒＼　　　 ',::{　　／ /　　　　　　 　 丶、 丶、
　／　　　　 　 ＼ 　 ｣::!　　 ／　　　 　 　 　 　 　 ＼　 ヽ

　　　　　　　　　　　_, -‐　､
　　　　　　　　　 r:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i　　　　　　 （落ち着け…！
　　　　　　　　　 ゝGl:.:.:.:＿:.ﾑ､-‐､
　　　　　　　　 く::ェｭ_,フ´ｔj〉Yﾊ〉 i 　 ヽ､　  舞台が違うだけで、
　　　　　　　　 　 ﾞ"ゝt ｀"ノノﾉノr'⌒ Y ヽ やることは同じなんだ！）
　　　　　　　　 　　 i ﾐ､　Y。i 　 i　　　 i　ヽ_
　　　　　　　 　　　 〉　 ヾ､　　　 i　　　 l　　入
　　　　　　<二ﾌ　 /-‐ｭ_ 〈｀ヾ-‐ﾅ_,-‐-ゝノノ´ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　湯口ー、期待してるぞー！＞
　　　　　,､,､ｎ､__,､_ン⌒Y´　　　　V:.:.:.:.|￣　　　ヽ
　　　　ゞヽi_ゝ　）:.:.:.:.:.:.:.:|　　　　 　〉:.:.:.:ﾄ"´　　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三振見せてくれー！＞
　　　　ポ＞‐´｀ヽ―-‐´　　　　　/:.:.:.:.:ﾉ　　 　 ｲ
　　　　ン.　　　　　　　　　　　　 〈:.:.:.:.:/　　　 ｨ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノ‐､:.:ﾉ　　／ /
　　　　　　　　　　　　　　,..-‐'´フ´ ﾉ　　 /　/
　　　　　　　　　　　　　　〉´ン´　Yｱ　　/　/
　　　　　　　　　　　　　　ゝ="￣ソ　　 Y　〈
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ､_／i ヾ　 〈　　ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ゞ,-‐､_i＿_ｨ'
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　i三ミ.| ﾐ彡i
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|´ﾞY ﾊ ﾐ彡|
　　　　　　　　　　　　　　　　 __,丿､ ﾉﾘ ヽ‐､(l
　　　　　　　　　　　　　　　t三⌒ヾｖ斗 t七三i
＿＿＿＿＿＿＿_, -‐"´三三三三￣￣⌒｀ﾞ￣￣

　　　　　　　 ＞──､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r:::.:..:....､
　　　　　　　└──‐'　　 r──､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ::::::::::::::i
　　　　　　　く￣￣＼ 　 /　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 ,ｨ≦三ﾊ:::::!
　　　　　　　　￣二二_／　 r─､　　　　　　　　　　　　　＼　 　 　 |　　　　 ’　　　　 ￣Ⅶ　　Yﾌ ￣｀ヽ
　　　　　　　 ∠´＿＿＿／|　く＿　　　　　　　　　　　　　　 ＼、_ ﾉし'/／　　　　　　／ゞ、 _/l|　 　 _/:::::.. 、
　　　　　　　　　　　　∠二_　　　　 ￣ヽ　　　　　　　　　　＿＿）　　　　て　　　　　 ′　弋三ｿ　／.:::::i:::::::∧
　　　　　　　　　　　　　　　｀}　 /´フ_／　　　　　　　――＝二　　　　　 ＝――　　ﾄ-=≠＜　 / ..::::::∧:::::::∧
　　　　　　　　　　　　　　　　| ,/　　　　　　　　　　　　　 .__,,,．　ﾒ、　　　 （_　　　　　 Ⅵ:::::::::::::≧}:::::才　 }≧::圦
　　　　　　　　　　　　　　　　}/　　　　　　.__,,,--ｰ'''“^ﾞ´._,,,,..．　　　Ｙ＾　 ＼　`　　　　 `寺:::::::::::::.`ｰ=　(::::::::::::ノ
　　　　　　　　　　　　　　 _,,,,.... --ｰ'''“^ﾞ´._,,,. --ｰ''''''　　　　　　　　|　　 　 ＼　　　　　 ￣〉ｰ=::::::::::::::::::::::::::::ト､
　　　　　 ._,,,,.... --ｰ''''''ﾞ　 _,,,,.... --ｰ''''''　　　　　　　　　　　　　　　　!　　　　　　　　　　　／　　　 ￣ﾌ三二一一”ｰ'
　　''^￣＿,,..　-―'''''''　~　　　 　 　 　 　　　　,ｲ,ｲ ,ｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　／.::::::　　 　 ￣￣￣〉ｰ= 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾚﾚ //　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　 　 ／｀ヾ:::::L.. . . _＿＿/_/Ⅷ:::圦
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　 　 {　　　　￣￣　　 　 　 　 Ⅵ::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 |　　　　　　　　 　 　 　 　 `寺ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ト、 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _|　　ｰ=}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／.::::.｀ヾ ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { .:::::::::才"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.ｨ圭≧ｭ.
　　　　　　/´ 　 ム -イ;‐ｧ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |才⌒ヾ:i
　　　　　　,!　　　 　　〃 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ⅵ　｣　 |　　 ＿
　　　　　 ／　 　 　 ｨ!　|　　　　　　　　　　{　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼＿/フ/´　ハ
　　　 ／　 　　　;'´ i　 ｌ　　　　　＼　　　　|l|w/L ,r_／　　　　 　 　 　 　 　 　 . ィ"　／￣〉､_}
　　　l　　／| 　 !: 　!　 |　　　　　　＼＼{ｗ└ ¨ ´ ／　　　　　　　　　　　　　 / ＿イ　 ／ｰ=１
　　　|.／　 l 　 |!　 l　 |　　　　　　　　＼´　　　　　彡x　　　　　　　　　 　 rt=={　 ﾉ才　　　∧
　　　　　　 | 　 l!　|　 |　　　　　　　　　　>　 ； ’　　∠─　　　　　　 _,,..-=::ヾ_　ﾉ￣｀ヽ　　　 ∧
　　　　　　 !　 |l'　|　 |　　　　　　　　／　　　　　　}|　　　　　 _,,..-=:::::才"　　 ￣`ｰ=彳　　　　∧
　　　　　　 |　 |!　.|／ 　　　　　　　／´ヾ,　　r､r‐|＾`　_,,..-=::::::::::::才"　　　　 　 　 |　　　　　　　∧
　　　　　　 |／　　　　　　,､　　　　　　　/／　 }´　,ｨ圭::::::::::::才"　　　　　　　　　　|　　　　_＿,,..ｨﾃ
　　　　　　　　　　　　　　,l |　　　　　　　/　　　　　Ⅶ圭才"　　　　　 　 　 　 　 　 L..ｨ≦IⅣ.:::::::::!
　　　　　　　　　　　　　　,!　L.-ヾi=,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |::::::::::Ⅳ.:::::::::::|
　　　　　　　　　　　　_,.-'´　 _, - '_´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l::::::::::::::::::::::::::::!
　　　　　　　　　　　|_,.- '´|　L-'´_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |::::::::::{::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　,.-'´　 ,.-'"　　　　　／|　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |::::::::::{:::::::::/.::ﾉ
　　　　　　　　　　　　　|,.- '´| |　　　　　　 ／／　　　　 ＿＿　　　 　_　　　　　　　Ⅷ::::/.::::イ:::::j
　　　　　　　　　　　　　　　　|,i　　　　　／ ｨ'　　　　／＿＿ノ　　／丿　　　　　　　 Ⅶ::|::::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　く／レ　　 　　　　　　　 ／ ／　　　　　　　　　Ⅵl:::::::::::::′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,____,. - '´ ／　　　　　　　　　　　 }/.:::::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/＿＿__,／　　　　　　　　　　　　　 |:::::::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 人::::::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　　　１
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ゞ≧ｭノ´

結果は、2回を投げて3失点。
初登板はほろ苦い結果に終わった。



　　　　　　　　　　　　 /ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘ 　　　　　　　　　　　　___／
　 　 　 　 　 　 　 　 /ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/⌒ヽ,　　 ノﾜ"`' ｰ--､_,_／
　 　 　 　 　 　 　 　 ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｌ {ヘ,. 'r-＜/　　　　　 ｌ ｌ
　 　 　 　 　 　 　 　 ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉハｉｉｌ　`/ /　　/　　　　　/　ｌ
　 　 　 　 　 　 　 　 ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘｉｉｉｉﾊｉｌ　　 `　_,/　　/　　　　　 ｌ　 ,ｌ
　 　 　 　 　 　 　 　 ﾘｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/__ｌﾘ　ｌ　　　　　　　/　　　　　　ｌ
　　 　 　 　 　 　 　 　 ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/ｌｉﾄr｡､''ｉ`　　　　　,　　/　　　　　　 ｌ
　　 　 　 　 　 　 　 　 ﾘｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾊｉｉｉ/ ｌｉ 'ﾟ”~　　　　　　 ｉ　 r---､　　　　 ｌ
　　　　　　　　　　　　 ノﾊｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘ/ ﾘｉ　　　　　　　u　　 /　 ヽ、　ヽ、　　 ｌ
　　　 　 　 　 　 　 　 　 ﾘﾊｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾘｌｉｉｉｉｉｉｉｉ/ﾘ　､　　　　　　　　　　/‐- ､,, ヽ　　 `‐- ､ｌ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｉ　＼ｉﾊｉｉｉｌ 'ｌｉｉｉｉ/''＼,　,i＿ 　 ､.っ 　　　 /　_,,... `／'>　　/
　　　だめだ…　　　　　　　　　　ｌｉ　 ｌｉ/　　　`-'=‐-y- ､,,___ __,,ｲ､,　,_／ ／ー,
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,／　ｌ　　　　　'、￣　　/　／ /
　　　また期待に応えられなかった　　　　　  ／　　 ヽ　r‐‐ｉ,　 ヽ,　　 /／　,/
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　ｌ　ｌ　　ｌ　　＼, //　　/
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　 ＼ｌ　　`￢ｰ--'"

だが、この結果に首脳陣は特に危機感は覚えなかった。



　　　　　　　　　　　　 __　,.-￢-　､._
　　　　　　 　 　 　 ／　'´,　 ､　　 、 ｀ヽ､
　　　　　　　　　 ｒ´　 　 /　l　ヽ　　＼　､ヽ
　　　　 　 　 　 /　　/ /l.　 l、　＼　　ヽ ', lヽ
　　　　　　　　/,　l. / /´ヽ　lヽ 　 ヽ. !　ヽ. ト ヽ､
　　　　　　　 '´|　 V　'＿_ヽ. ﾄ＼､＿',| 　 ',｜
　　　　　　　　 | l. ,|　|　__　＼ﾞ､ヽ.__ヽl.　　ﾄ.|　 初登板、お疲れ様です
　　　　 　 　 　 lﾊｌﾍ｜´　｀ 　 ヽ´　｀｀〉,^! | !
　　　　　　　　 　 l＼ｌ|　　　　|　　　　//ｨ N　 緊張して少し硬かったですね
　　　　　　　　　　| ﾊ ヽ　　＿＿ 　 /ﾊ/ ｀　　　　 　 _
　　　　　　　　　　'′lﾊn＼ ｀ニ´／! !　　　　　　　 ,ｲ |
　　　　　　　　　　 _,.-' /ヽ ｀ - ´ ,ﾊ＼　　　　　　　| |ヽ
　　　　　　 _,　- ' / 　 |　　ヽｪ､ ' 　 |　ヽｰ､　 　 _　| ﾄ. ヽ
　　,.､-‐　´　 　 /　　｜　 /　　〉 　 | 　 ヽ　｀⌒.l ヽ',ヽヽヽ
　 / ヽ　　　　　〈　　,.-|ヽ/ ヽ-/ ヽ/|､　　,〉 　 　 |　l_! ヽ　ﾞl





　　　　　　　__.　--─-- 、
　　　　　∠　　　　　　　　＼
.　　　／,r　/　/　　ヽ ﾍヽ　 ＼
　　 /// ,　|　｜　 　 |　| ﾍ　　ヽ
.　　|/ ｌ /　|　∧ |　| :|　|、:|｜　 ',
.　　| l　|　､ﾄ､.|. |ﾊ ﾊ |ヽ!ヽ'Ｖ　　｜
.　　lｲ　lヽ| _ム-- ｀　レﾆニT |　N
　 　 ∨|　|´ 'ﾓｼ´　　　ﾞー'　|｜ |　 久々の実戦だもんな
　　　 |ハ！　　　 　 　 　 　 |/／
　　　 　 ヽﾄ、　　　 l　　　　/　　　　結果のことは気にしなくていいぞ
　　　　　　ヽl＼　 -─'　　ｲ
　　　　　　　　 l｀　 ._　 ／ ﾉ、
　　　　　　　　/　|　　　 ,rく. ヽ
.　　　　　　　/　,ヘ　　 /　∧｜
　　　　　　　|　ハ　',　/ ／ ∧!

その言葉通り、チャンスはすぐに巡ってきた。一週間後のロッテ二軍戦である。



　　　　　　　　　　　__ヽ!　__
　　　　　　　 　,.ｨ´::::::｀:::::::::::::｀ヽ、
　　　　　　　,.ｲ /ｨ,ヘﾊ::::::,ﾍﾊヘVヽ.
　　　　　　/:::ﾚ'!ｗﾍﾊN:::::ﾚvVヽ∧ハ
　　　　　/,ｲ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l
　　　　　' |::::::::::::::::::ﾊ::ハ!:::ﾄ::ﾄ､:::::::::::ﾄ､　 前は緊張して完全に舞い上がっちゃったけど、
　　　 　 　!ﾊ:::::|iV_'　ﾘ 　!ヽ! i_,.l_!|:::_ﾉ｀　  今日は大丈夫だ
　　　　　　　{fｔi´,ｲｒﾞﾒ‐'　ｰイﾁ ) !ｲｒ}
　　　　　　　 ヽ.ｊ　￣"　 i　｀ﾞ´　/-'´　 　 なんとしても挽回するぞ
　　　　　　　　　 ヽ、　 _.._　 　.ｲヽ、
　　　　　　　 ,.-‐'/ ｀>､_　,.. '´ ﾞy' ﾄ､_
　　　　　　／ ,ｒ'´　i /ヽ.´　 /　ｊ　|'" !、
　　　　　ｒ'　 /ﾍ.　 |'__ 　!　/／　/　　 ヽ.
　　　　　|　　V´ ﾞ! |ヽ.｀ ‐ｲﾍ 　ｒ'　　　　ﾍ
　　　　　ﾄ､ ! 　 ノ {:::::ﾞｰ‐ｊ /　,ﾊ　　　 　　!、
　　　　　| ﾞヽ!　 l　ヽノ￣ ハ/ _,.}'´　__　､__ !

この試合に、郷里から湯口の両親も応援に駆けつけた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　／:::／:::::::jﾞヽ:､::::::／ , :::::ﾊ.､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /:::／::::::::::ム､,ヽ :/:／::|:::::::::',::',
　　　　　　　　　　　　　　　 /,ィ::::::::::::::/　　　ﾞ"'' ｰ-､!:::!:::::ﾊﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　ﾉｒ'1::::::::::::ﾉ　　　　　　　 '.::::i:::::::ﾊﾊ
　　　　　　　　　　　　　　 {ｼ::::|:::::::i'"　　　　　　　 　 ',:::l:::::::::トi
　　　　　 　 　 　 　 　 　 {ｿ:::::!:::::::|―‐ .　　　　 __ 　 ヾ!:::::::::ﾄ:}
　　　　　　　　　　　　　　{':::::::i!::::l::lィ::::.､　　　　,＿ヽ.　i:ﾊ::::::i:ｌ}
　　　　　　　　　　　　　　ﾊ:::::ﾊ:::::､、ー'　　　　 l:::::::>､ }:!:::::::八}　　  前回は酷く打ちこまれたけど、
　　　 　 　 　 　 　 　 　 ﾊ::::::!::',:::〈ゝ　　　 .　　 ￣｀ .∧|:::: ,':ﾊ　　　 今日は大丈夫かしら
　　　　 　 　 　 　 　 　 ,'::!:::::l:::::::圦.u　　_′　　　　/-i!|::;ｨ:::::!',
　　　　　　　　　　　　　,:::!::::::!:::::::::::＞　　　｀　　　ィ:::::".ﾚ::|:::::|ﾊ
　　　　　 　 　 　 　 　 ﾊi::::::,':::::::::::,ｒ‐,! ｀ ｰ　 i´、:::',::::::',::::::!:::::!ﾊ
　　　　　　　　　 　 　 ﾊ:l::::::!:::::::／ ﾞｖ　　　　 ｉ,ハ:::ﾊ:::::ﾊ:::::::::::l:ﾊ
　　　　　　　　　　 　 ,':;. ´￣｀Ｙ',　　ヽ.　　　 /　 .〉､,.:_:_:ﾊ_::::::::!:ﾊ　ﾄﾞｷﾄﾞｷ
　 　 　 　 　 　 　 　 ,}′　　　 ', i　　 ヽ＿_,/ 　 ,' /　　　　｀ヽ:::::ﾊ
　　　　　　　　　　　/　　　　　　',|　 　 /　 〉､　 .ﾚ′　　　　　',:::::::'.
　 　 　 　 　 　 　 人　　　 　 　 ﾞ!　　/　ﾟ {　 ',　.!　　　　 　 　 |:::::::ﾊ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　湯口の母　ふさ




　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 >　 <　 ＼／　 　＼　_,.. -－─－＝＝=ｰ- ､
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／／＼＼／＼ ／_,　'"　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／／ ＼　　._,r'"　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 >　 <　　／ ,.ｲl/r'　／⌒´　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｊ≧i{ﾙzえr‐=＝宀Y!→三　　　　　　　　　　|
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /ﾄ{⌒｀´″　　　　　 ｌ|　　三　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 { }i{　　 　 　 　 　 　 ﾘ　　三　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼／　　 ｿ -､　　　　　　　　　　 三　　　　　　　　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／＼　　 i=-､　　　,r=＝‐一　　　`ミミ　　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 _ｒ＝＝≠ー‐' ｒ‐テ宍ぃ,＿＿＿ヾミ　　　　 ヽ、 !
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 └}－ i 亠}⌒ヽ{ ､_ ￣´ }ｒ───―ｒ‐ｒイ ⌒ﾄi }| |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＿!｀_ｊ　　　ヽ ＿ _ノ'_ノ'´　　 ﾉ　ミ!　i片 l//ll |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　}　　 '´ `!　　　　　　 ／　　ﾐ!　 し'ノ/l!ｌリ
　　　 なに、心配いらんさ　　　　＼／　 ､ヽ _ ｒ‐- ﾉ　　｀ヽ、　　　　　　　i＿,ノﾍ川
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／＼ 　 川从川从川从　 !　　i 　 　 　 !　　　ﾉﾙ{
　　　 敏彦はきっとやってくれるよ　　　　 ヽ‐ー→―ｰ‐ｧ'’ ｊ 　 !　 　 　 !　}　　　{_
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ×　　　 　 ヽi`ー─－^'´/　 !　　　　　 /　/　　　 ｿヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　い､＿___,.　　　/　 　 　 ／l 　}　　 ／　/ヽ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ×　 }　　　　　 　 　 　 ,.　'" 　 } /　／　／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　 ／　 　 　 　 '､　　 　 　 　 _／　　　　//／　 ／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ×　　　　　　　　｀`＝ニｒ‐ '"/　 　 　 ／　　／

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　湯口の父　昌範

そして、結果は───



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /´ 　 ム -イ;‐ｧ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,!　　　 　　〃 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 　 　 ｨ!　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 　　　;'´ i　 ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　／| 　 !: 　!　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |.／　 l 　 |!　 l　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 l!　 |　 |　　　　　,､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 !　 |l'　|　 |　　　　 ,l |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 |!　.|／ 　　　　,!　L.-ヾi=,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／　　　　　　_,.-'´　 _, - '_´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,. ‐ﾞ　　　 　 　 　 　 i　　　　 　　　　 、　　　　　　|_,.- '´|　L-'´_|
　　　　　　　　　　　,..;;ｉｿ　 ｀ﾞ."ﾞﾞ´　　 ＼　　　　　　 ._＿＿ ／ 　　　　　ヽ　 、　　　　　,.-'´　 ,.-'"
　　　　　　　　　　 i'',ﾞi-;;,ﾞ´ 　 　 　 　 　 ヽ　._,,　‐''"　　 ／ 　　　　.ヽ　　 .ヽ　＼　　　　|,.- '´| |　　　　 ／|
　　　　　　　　　　 ﾚ゛... .., ⊥　　　　　._r‐'ﾞ'"　　　　　／　　　　　　　 ヽ　　 .`　　｀　　　　_　　|,i　　　／／　　 ＿＿　　　 　_
　　　　　　　　　　iケ ヽ　｀'〈　　　 ／　　　　　　　 ./ 　　　　　　　 _＿＿＿＿-　　　　 ,｀ﾞ"'ｰ-..,,_ ／ ｨ'　　／＿＿ノ　　 ／丿
　　　　　　　　　　/ 　.i|＼　 ｀'' / 　　　　　　　　　/　　　　　　 ,,ﾞヽ　　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ''ｰ ..,、 ｀ﾞ''ｰ　,,,　　　　 　　／ ／
　　　　　　　　　lﾞ　　 ,!　 、　　 ＼　＿＿＿＿_ ,,.iＬ ........,,,,,,.- ir‐-.＼　　　　　　　　　　　　　　　 ｀''ｰ..,,　　｀ﾞ'ｰ ,,、- '´ ／
　　　　　　　　　 `'ｰ ｌ　　|　　　　゛./ ゛　　．　　 　 　 　 　 　 'i ､　　 .ﾞｉ,　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀''ｰ..、　 .｀''-､
　　　　　　　　　　　/　　 |,,,　　　　|　　　.ﾉ　　　 　 　 　 　 　 " ゛　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ'''.､,　　 ｀'-、
　　　　　　　 {　　 /　　　l　.｀ﾞ''ｰ-∟..__,　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 lﾞ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 ｀､
　　＼　　　　|l|w/L ,r_／ .!　　　　　　　￣￣ﾞﾞ'''''￢ｰ- ..,,.,, -'''"ﾞﾞ.゛￣´～‐‐''''.'''. "　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　 .ゝ
　　　＼＼{ｗ└ ¨ ´ ／　.l　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ 　　　　 /
　　　　　＼´　　　　 彡x　!　　　　 　 　 　 　 　 !　　　　　　　　 ヽ　　　．　　　　　　　　　　　　　　　　_,、 -‐''''″　　　　. ／
　　　　　　>　 ； ’　　∠─!　　　　　　　　　　　 |　　＼ 　 　 　 　 ヽ　　.ヽ　　　　　 ____,,,,,..　r━'''"ﾞ´　　 　 　 　 　 ,..-'"
　　　　／　　　　　　}|　ー―-------------------------ｰー―ｰ￢''''''''ﾞﾞﾞﾞ￣￣　　　　　　　 　 　 　 　 _,,　‐'″
　　　／´ヾ,　　r､r‐|＾`,,,　 .|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,.. -‐''"゛
　　　　　　/／　 }´　　 ﾞ'‐.l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　＿,,,,.... --ｰ''''"´
　　　　　/　 　 ｌ..　　　　 .,,"　　　　　　 　 　 　 　＿____,,,,,,,,,,.......... --――'''''"ﾞ￣´
　　　　　　　　　 ｀ｰ 　‐￣￣￣￣￣￣￣￣￣´゛,.｀'-､ iﾞ''ｰ ..,,｀'- ｀'-. ､,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　 /　　　.゛～､,,_ ﾞ''i- ..,,,_　｀'-､

　　　　　 /´ 　 ム -イ;‐ｧ
　　　　　,!　　　 　　〃 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＿
　　　　 ／　 　 　 ｨ!　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_/´　　　｀.
　　 ／　 　　　;'´ i　 ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　　　　　　　く_r一ァ=- .ィ ＼_＿＿＿,, ..　．　…━─- ､
　　l　　／| 　 !: 　!　 |　　　　　　　　　　　＼　　　　|l|w/L ,r_／　　　　　 〈_　 r=}　　}＿/j=- 　 - 　 - 　 -───=''
　　|.／　 l 　 |!　 l　 |　　　　　　　　　　　　　＼＼{ｗ└ ¨ ´ ／　　　　　　|／`７　_/￣￣｀ .
　　　　　　| 　 l!　|　 |　　　　　,､　　　　　　　　 ＼´　　　　　彡x　　　　　 /　 　 ﾊ　＼ 　 　 i
　　　　　　!　 |l'　|　 |　　　　 ,l |　　　　　　　　　　>　 ； ’　　∠─　　　 .ｲ 　 ／　 .　　＼　,ｲ
　　　　　　|　 |!　.|／ 　　　　,!　L.-ヾi=,　　　　／　　　　　　}|　　　　　 | `ｰ'　　 　 .　 　 )　|
　　　　　　|／　　　　　　_,.-'´　 _, - '_´　　　／´ヾ,　　r､r‐|＾`　　　　　　`ｰ=x:::..　　 ゝ- '彡１
　　　　　　　　　　　　　|_,.- '´|　L-'´_|　　　　　　/／　 }´　　　　　　　　　　　Ⅶ:.　　　　　　{_
　　　　　　　　　　　　　　　,.-'´　 ,.-'"　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　Ⅵ:.　　　　.　 -{
　　　　　　　　　　　　　　|,.- '´| |　　　　　 ／|　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ⅵ:.　才"　　 ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　|,i　　　　／／　　 ＿＿　　　 　_　　　　　　　　　 〉”　　　　　　 .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ｨ'　　／＿＿ノ　　 ／丿　　　　　　　／　　 　 　 　 　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　く／レ　　　　　　 　　／ ／　　　　　　／　　　　　　　　　.ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,____,. - '´ ／　　　　　　 ／　　　　　 　 　 .ィ::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/＿＿__,／　　　　　　　　/　　 　 　 . ． く;;;;;;;;;:::::人
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　.　　　　　`寺;;;;;::::::..､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 　 　 　 /　　　　/　　　　　　 ｀寺::::::::::..ｰ-　.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　/　 　 　 　 　 　 ヾ:::::.:.:.:.:.:.. . .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　/　　　　　　　　　　　 `　.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. . .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_}　　＿,ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/ 　 　 〉'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,_＿/_＿＿/

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,, -‐-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 r'~　　　　`､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {_, -‐‐-‐'ﾆ~',
　　　　 /´ 　 ム -イ;‐ｧ　　　　　　　　　　　　　　　　,.-､.　_,'_,, -‐''''''~｛ 0 }
　　　　 ,!　　 　　〃 /　　　　　　　　　　　　　　　　／／　　 !!',　　　　.,'`ｰ' ~'''~`､
　　　／　 　 　 ｨ!　|　　　　　　　　　　　　　　　／／／　_,,-''` `､＿ , ' ,!　!|　　　,｝
　 ／　 　　　;'´ i　 ｌ　　　　　　　　　　　　　　 ／／　　./　　　　　　　`'　 i　　　,'i
　l　　／| 　 !: 　!　 |　　　　　　　　　　　　　　／　　　　{　　　 '、　　　_,-'~　　ノ {
　|.／　 l 　 |!　 l　 |　　　　　　　　　,､ ､ﾊ,　　　　　　　 ',　　_,,_' 　 ／~ヽ_,-'~ 　 i
　　　　 | 　 l!　|　 | 　　　　　　　　 ,＿<　 て　　　　　　 '､/　,､'., '　　,,-'~　　 　 ',
　　　　 !　 |l'　|　 |　　　　　　　　 {＿./'Y''~ヾ￣　''''''ー--､今`,`,`,'~　　　　　　　｝
　　　　 |　 |!　.|／ 　　　　　　　　 　 ￣~~~~''''''~~~~~￣￣V// ｝　　　　　　　　　i
　　　　 |／　　　　　　,､　　　_　__,,-‐､_　　　　　　　　　　　　　　{　　　　 　 　 　 /
　　　　　　 　 　 　 _,, l |_　　{ }~ェェ` ､` ､　　　　　　　　　　　　 } 圭| | |区王| | |}
　　　　　　 　 　_,-'i　 !　L.-ヾi=,　　　　}　}　　　　　　　　　　　　i.　　　　　 ￣　　',
　　 　 　 　 　 ├i_,.-'´　 _, - '　_´　　 ﾉ ﾉ　　　　　　　　　　　　} 　 　 　 { _,-'~,　 ',
　　　　　　　 　 ~ |_,.- '´|　L-'´　_l ┬　　　　　　　　　　　　 　 {　　　　　{/／_,,-　.}
　　　　　　　 ,-‐'',` 　,.-'´　 ,.-'"　　i　　　　　　　　 　 　 　 　 i　　　　　,'''~￣　 　.i
　　　　　　_,,'-/~｛`'　|,.- '´| | "'~　/　　 ／|　　　　　 ＿＿　 .i　　 _　　i'　　 　 　 ,i
　　　　　 ｛　 i'二 '､二,-'　 |,i '､__./､　／ ｨ'　　　　／＿＿ノ　　／丿　 i.　　 　 　 ,!
　　　　　　'i,_{＿　　｛　　 ＿}　　 ~/く／レ　　 　　　　　　　 ／ ／　 　,{　　 　 　 ,'
　　　　　/　｛＿ ￣~{~￣＿｝　 　/　 　 　 　 　 　 ,____,. - '´ ／ 　 　 ,' i　 ___　　,'
　　　　　￣/{ ',＿￣{￣＿/＼／i　　　　　　　　 /＿＿__,／　　　　　,' ｛二--二{
　 　 　 ＿/__}_',_ ￣i￣ _i'__,,ノ' ｛　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 　 ｛　.}　 __　 .｝
　　 ,-'､＿`_, .} 'i￣ {.￣ {　 ﾉ　__｝　　　　　　　　　　　　　　　',_　 　 _}　,'￣　￣`i
　./~　　　ﾉ　　'､__,-､‐-､￣　　）　　　　　　　　　　　　　　　　 '､￣~　i/　　　,-､,'
　 ',￣~'''｝　　　　　 /　/~￣,iノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '､､_,-i'　　　　`,'
　　',　　 }` ､＿_　 ｛_ノ　　ノ .!ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >＿i　　 .,-､,'
　　 ',,___,,',　　　￣　　`ｰ'~､_ﾉノ ',　　　　　　　　　　　　　　　　　/ 圭.}　　　`,'
　r'~　　　 }　　　　　　　 　 '､_,-'`､　　　　　　　　　　　　　　　　 `ー_{　　　,'
　`ー''''~~　　　　　　　　　　 `ー‐'　　　　　　　　　　　　　　　　 _／`､＿ノ｛
　　　　　　　　　　　＿,,,,,,＿ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｛ 　　　　_,,,_}
　　　　　　　　　i二＿＿＿__二i　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣'''''￣

3人の打者にツーランホームランを浴びて、2回ももたずに降板。



　 　 　 　 　 　 /::　　　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r' '"__　､｀､::::::::::::::::::
　　　　　　　 ,/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::r- ;;;;;;;;;;､:::::l ｀,:.:.:.:.:l　 ',:::::::::::::::::
　　　　　　　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::'､　　　 ヽ::::l`｀‐‐、l　 l:::::::::::::::::
　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::l ｀､ l'　　　　',::,､l 　　'　´/---､__､,,
　　　　　　　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::l　 〉l´　　　　l/:''　　　　'､
　　　　　　　 ::,;'l:::::::::::::::::l ﾊl､l　 l ''　　　　　　　　　　　 '､
　　　　　　　 ﾉ 'i:::,､:::ﾊ:::ll＼ ｀'　'l　,／ ,,;　　　　　　　　　',　　　,
　　　　　　　　　 l:ハ::l　',l　 ｀' ､　,l; l ,;;''　　　　　　　U　　　　　　',
　　　　　　　　　 '　 ｀'　 `　　　 ｀''''l_;''　　　　　　　　　　　　　　　 '
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 l:. .　　,r,‐‐ｯ､　　　　　　,:.　　:.
　　　　　　　　  ちくしょうっ！　　　,':.:,; :. l l´ ｀l::::l　　　　 　l_:.　／
　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　`' ´ ｀´　　 l'´ . . 　　　/_＞´
　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀｀''' ‐::::r'´´/





　 　 　 　 　 /: : : : : : :.／／l: : : : : : : :/‐ヽ､__: :∨: : : : : ∧
.　　　　　　 ハ: : : : :／／: : |: : : : : : : !|　　　　 ヽゝ: : : : : ∧
　　　 　 　 |｀´ゝ: ／／: ｉ: : :|: : : : | : : !l 　 　 　 　 ∨: : : : :∧
　　　 　 　 |: ｀杙: < : : : l: : :|: : : : |: :ハl　　　　ｕ 　ﾍ: : : : : :;∧.
　　　 　 　 |: : 化::} : : : :.l: : :|: : : : |ノ--i!--- ､　　　　.i: ヘ: :|.i∧
　　　 　 　 |: : 辷::).: : : :.|: : :|: : : : |　 , z=叱゛:::::::::ノ._‐l: :ﾄ｀_:!./|｀,
　　　 　 　 |: : ik::::).: : : :.|: : :|: : : : |　｀ 弋少:::::::::::iﾊﾃﾊ:.:!: :∨ .l::|
　　　 　 　 !: : : Y : : : : :.|: : :|; ; : : | 　:::::::::::::::::::::::::∨ﾖ: : |: : |　.|::|.
　 　 　 　 /ｉ: l: :.|: : : : :l :l: : :| i∨:∧　　Ｕ　　　 　 冫i.: :.|: : |　 `´
　　　　　ﾊ: l: l: :.|: : : : :l :l: :il.l ゝ∨:∧. 　 　 　 ,.-rｎ 人: |: : !.
　 　 　 ﾊ:.:.:l: l: :.|: : : : :l :l: :il.l ﾍ ∨:r:ﾍ　　　／ / l ｈﾍ:: :Nﾉ　　敏彦……
.　　 ／: : : :l: l: :.|: : : ∨ |: : |l　 ﾍ∨: ゝ　ｎ/　 /　j |ヽ ヽ´
.　 /: : : : : :.l: l: :.|: : :∨: :l:__.|l　　ﾍ ﾙ ／ /　 /　/ ﾉ}｜ ﾄ､
　/: : : : : : :.l: l: :.!: : ノ: :ｿ-､ﾉl.　　 ﾍ/ 　/　　　 　 {｜|　{ ﾉ.
./: : : : : : : :.i: :ソ:／:／　 ／<　　　｜　　 　 　 　 ﾉ　　 ′
!: : : : : : : : :／／:／‐-=x　　.＼　　 ＼　　　　／　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ､ 　　/ 　 　∠..__



両親の目の前でのノックアウトだった。

湯口の課題は、やはりコントロールだった。



´::::::::/ｨノl,.ｲ l/ノ::::::::::::::::::::::::lヽｊ＼_::lヽ、::::ﾐ:ヽ
::::::::/::::l/:::::l／::::::::::::::::::::::::::::::ﾞvヘﾊﾄ､　ﾍ:::::Vﾊ
::::::::::::::::::::::::::::::::::/l:::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::＼l:::::::::::i
:::::::::::::::::::,ｲ:::::::::/ |::::::::::ﾊ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!
::::::::::::::::/ |::/|::/　l:::i:::::!　 ';:ﾄ､::::ﾄ､::::::::::::::::::::::::::::l
:/l::::::/l:!　l/ l/　　|;ﾊ:::|　　ﾘ　ヽl　!:ﾄ:::::::::::::::::::::::l
ﾉ !ﾊ:l ,ﾘ-‐‐- ､ 　 　 l:!__ _＿_ ,ﾘ　l:ハ:::::::::::::::::::ﾊ
　 !ｒ-!　ｨ'Tメﾐ ヽ　　　 ‐,=ﾆ ､_｀ ` 　 ﾍ::::,:ｒｰv′
　 { ヽ!　ヾ少　　　　　　　{ﾄソ ｀> 　 　l:/,.f⌒ﾘ　　  このままじゃダメだ…なんとかしなきゃ
　　ヽ l　　　　　　　　　 　 ｀ ´ 　　 　 ｿ/l´) /
　 　 ヽ!　　　　 ﾉ　　　　　　　　　　　ｒ'ソ ／　　 　 僕に期待してくれる人がいるのに…
　　　 　 ､　　　丶 　　　　　U　　　ﾒ-‐'"
　　　　　 ＼　　 ヽ二)　　　　　 ,.ｨ'
　　　　　　　＼　　　　　　　 ,. '´,'
　　　　　,.-‐ '´lヽ、　　 ,.　'´　　!、
　　　　/　 く　 |　 ｀¨ ´　　　 　l　＼
　　 __/　 　 {,.ｲ　　　　　　 　　l !　　ヽ、
　／ノ　 　 　! l　　　　　　　　 |､l　　 　i｀丶、
'´　 i　　　　　l、　　　　　　　　　|　　　 ',　　 ｀ ‐ ､
　　 |　　　 　　l　　　　　　　　　 l　　　　ヽ.__　　　 '' ‐ 、
_,.-‐l　　　　　　ﾞi ￣｀ヽ _,.-'´￣ |　　　　　ヽ.＼　　　　 ｀ヽ、



打者から次々三振を奪い取る代わりに四球も連発した。
二桁の四球も珍しいことではなく、それによって自滅するパターンが多かった。

この未完の大器に対して、首脳陣は悠然とした態度を見せた。



　　　　　　　　　　　　 　　 　 __,,,､,, 　 ,,､- ､
　　　　　　　　　　　　 　 ／´: : : : : ｀´: : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :.ヽ
　　　　　　　　　　 /: : : : : : :i: : : : :.∧: : :il: : i: : :ヾ: :',
　　　　　　　　　　,': : : : : : : l: : :/:./　∨:ハ: :i!: :l: :::::::i
　　　　　 　 　 　 l: l: i: : l ／!／∨　　 |/　∨∨!: :::::::l
　　　　　　　 　 　ﾚ!: !: :l i"⌒"'-､　　　,､-'''⌒`l: :::::ﾍ!
　　　　　　　　　　 ∨ﾍ i | でラ`　 　 , 　f∃ｿ /::∧|  湯口の課題は制球難だ
　　　　　 　 　 　 　 !ﾍ∨ゝ　 　 　 　i　 　 　 ∧ｿ
　　　　　　　　　　　 ﾚヽi l.　　　 　 　ｊ　　 　∧ﾉ　　　 課題がハッキリしている分、
　　　　　　　　　　 　 　 ﾚﾍ　　　__＿___　　/ﾉ　 　 　 対処もしやすいはずだ
　　　　　　　　　　　　　　∨＼　ヽ __ /　／ ′
　　　　　　　　　　　　　／i｛　 ＼ 　` ／i
　　　　　　　　　　　 　/:::::l ﾍ　　 ｀　´　∧＼
　　　　　　　　　 _,,-''/::::::::l　　` ｰ､　,／　.i:::::＼､,_
　　　 　 　_,..-.:":::::::/:::::::::::i　　 /;;ﾍ__!入　 l:::::::::＼`::..､,,_
　　_,..-.:":::::::::::::::::::::＼:::／:|ﾍ /`ﾍ::::::::ｿ´ﾍ i::＼::／::::::::::::`i:ｰ.,
　,´ｰ-､::::::::::::::::::::::::::／:::::::::i　　　 ∨:/　 　 l::::::::＼::::::::::::::i:::::::',





　　　　　　　　　　　　　　　　　」ヽr‐-ゞ｀`vｉレヽ∧
　　　　　　　　　　　　　　､-ミ'　人　｀ﾞ‐-'　''､ ´V__7
　　　　　　　　　　　　　 __ゝ__,､-,z　|二二ﾆ､__ヽ､ﾆく
　　　　　　　　　 ,ヘ_-‐ヾ〈 (､:´ //ヾl/　　_/ノ､_‐-ゝ7
　　　　　　　　　f　　へ「llﾉ＼ヽ/';／';‐=二-7 ヾ,､l'´ヽ　　 　 　 まあ、最初のうちはこんなものだろう
　　　　　　　　　(　（_:::ﾌ-ヾｉ :): :{/､_ ﾉ /rュ/　;　V lヽ|
　　　　　　　　　 ヽっ（::ﾚ=トゝ､」ヾ-'､`￣,,_　　ﾞ,　 了_l､　　　　  慌てさせることはない
　　　　　　　　　　 / ,J ｉ::））:::::::::::|'__　ヾ,'´´　　;　　 V､`,
　　　　 　 　 　　　ゝ_7､ヾ､l:::::::::::::ヽ､7　　　_　　;　　 !)」 ヽ　　 一軍入りは早くてオールスター明けからでいい
　_　　　　　　　　　´　　丶ゝ､:::::::::::::,:_-‐ﾆﾌ'　　 :　 /::､ ＼｀'､
　} ヽ　　 　 　　 　 　 　　 　lゝ､:::::::､｀‐￣__;;　　 　/::　;　　V､
　|　 l　　　　　　　　 　　　　ヾ､ﾊ:::::::｀:::´;;　__　 　/::::　　; ; ; ヾ
　! ノ､　　 　 　 　 　　　　 　　　lｉﾍ::::::.　,´////>'::::::　　_ -‐フ`
　ｉ :　}　　　　　　　　　　　　　　l」｀､＼:.' ///／:::::::;;／.....o..//
　ｉ､:´ ｉ　＿__┌‐-､ 　　　　　 　 　　ヾ:::｀:::::´:::::_:／....0.......// ,'
　l､:　 V　 }} 」.＿　|　　　　　　　　　　ｉ:ヽ:;;;┌l「l................../／
　ゝ　､/　 へ」l_ ｀ｉﾉ､ 　　　　　 　　 　l_:::::::::| |　L......／::/
　 >'´,,　'/　 }}ヽ=´　7　 　 　　　 　 　 「V-'＼ヽ..／:::::://
　 )　　_　,,-‐へ ＼ .l 　 　 　　　　 　　[l|...o.....／:::::::::://
　ヽ´　￣　　　}}＼l .|　 　 　　 　 　／/'ゞ‐'´:::::::::::::::://

しかし、一軍は遠かった。



　　　　　　　 ｒｰ､
　　　　｣´￣｀ｌｰ) ＼
　　　　Ｔ¨Ｌ　|_/⌒/
　　　　 ｀レ￣｀ヽ〈
　　 　 　 |　　i＿_1
　　　　　_ゝ_／ ノ
　　　 　 Ｌ__jイ´_　）
　　　　　　　 |　　ｲ
　　　　 　 　 |　　ﾉ--､ 　 　 　 　 　 ｒ'⌒ヽ_
　　　　　　　 ゝ､_＿_ﾉ二７　　／´￣l､＿,/}:＼
　　　　　　 　 |ｰi |　　 l_/　／__ｨ::.　 ゝ~_ィ´:;　,ゝ
　　　　　　　 __〉 {　　　 　 (Ｔ´ |1:::.　　＼_>､};;_｣
　　　　　　　'ー‐┘ 　 　 　 !　｀￣''ｧ一 ､＼　ヽ｝
　　　　　　　　　　　　　　　〈｀￣￣＾｀￢ﾉ .::〔￣´
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 1　 ヽ 　 .:::レ　　ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　|＿ｲｰ-､_;;j|_:.　　　ゝ、
　 　 　 　 　 　 　 　 __,,,... -- |. ｛―――‐ﾌゝ、 　 〉 -- ...,,,__
　　　 　 　 _,, -‐　´ 　 　 　 ,ｒ|__ﾄ,　　　　1ﾆﾉ ー'´　　　　　　 ｀　‐- ,,_
　　　 , ‐ ´　　　　　　　　　└―'´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀



7月のヤクルト二軍戦では同じルーキーの渡辺進に豪快なサヨナラ本塁打を浴びせられた。
被弾はやはり、制球の甘さに起因していた。

プロの緻密な野球も、若い湯口の悩みの種だった。



　　　　　　　　　　＿,,＿,,,,,
　　　　　　,,r '";;ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ;;`ｉ;,,､
　　　　 ／::::;;;;;ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ;;;;;;;;::`;,、
　　　 /::;;;;;;ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ;;;:::::＼
　　　 ｌ:;ｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ;:r、
　　　 'ｌｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉ/ｉｉｉｉｉｉﾄｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾊｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉｉﾊヽ
　　　　,-､ｉｉｉｉ／ｌｉﾄハｉｉハｉｉｉ／　ｌﾊｌｉﾘｉｉｉｉｉｉｉｌ"`'
　　　　 〈 `'jV　 .____,,,ｉ,,__ｉｉ　 　＿,,,ｉｉﾄｉｉｉﾊ/
　　　　ヽ、_　'" r-ｮｧｰ　　 "ya-/／"　　 プロのサインプレーって、
　　　　　　 ヽ　　゛~`　　 '、 "~'/''"　　　  こんなに複雑なんだな
　　　　　 _r-|ヽ、　　_　 _'"　, '
　　_,.／'/　ｉｉ　 ` 、　 '　, rt,_　　　　　　　 覚えるだけで大変だ
'"_,,　　/　ｌ"　　　　`''";ｌ､ヽ, "'　 ,
　　　 /　 `,　　　　　　 `〉 ｉ、　　 `　,、
　　　/ｉ　　 ｉ,ｰ-、　　_,,r`ｉ　 ヽ,　　　　＼、
　　 /　　　 ,_ヽー-- -ー''ｌ　　　ヽ　　　　 'ｉ,
　　　　　　　　　　　　　　'　 '~`￣　　　　　'ｌ



何もかもが高校時代と違っていた。

結局湯口のプロ一年目は、終始二軍暮らし。
イースタンリーグの成績は、17試合に登板して5勝6敗、防御率3.56。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.'"ｲ,ｨｿハ,-vﾍ/ﾊリ:::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/::::::::::::::´:::::::::::ﾘ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾞ:ﾆ=-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:::::::::::::::::::::::::,.-､::::::::::::::::::::::::,. ':::::::::::::::::::::::::::::､ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 l:::::::::::::::::::,ｒ' ⌒!l::::::::;.ｲ::;ｨ:::_:::::,.イ::::::::::::::::::::::::lヽ!
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 !:::::::::::::::::|　(´ｿｊ/ﾘ" l/ ﾒｲ-='､/ｿ,ｨ::::::/!:::::::::::!
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ:::::::::::::;ゝ ソ　ｿ　　　　 　 __ﾞヽ.,ﾒﾉﾙ ﾘ::::ﾊ::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　!::::::／ `┐　　　　　　　　!　ｊﾞゞ､_　/ノﾘ　!l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　W´ 　 　 !　　　　　　　 　 ｀ 　 ,ｒ'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 l
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　 　 　 _　ﾞ 、
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｒ‐‐=/　　　　　　　ヽ、　　 　 　 ‐､　,. ‐'"　　……
　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ　　　｀ヽ、　　　　　/ヽ　　　　　,.-´
　　　　　　　　　　　　　　　 ﾍ､__ 　 　 　 ＼　 　 /　　 ＼__,. '´
　　　_,.--'｀ヽ.　 　 　 　 　ｊ｀ﾞ┴-ﾞヽ、　　　　＼/、
　 　 {:.::..;:;:;:;:;:|　　　　　／_,.-‐‐-､ 　!　　　　　｀ﾊ ヽ
　　_,.ゝ:.:.:.;;‐二ﾆ=､　,.ｲ '".:.:.:.:.:.:.:.:.ﾞヾ､! 　 　 　 l | l´!
'"´=ﾆﾆ二､ヽ:::::!;;i:ﾞy.:.:.,.--‐'"´｀ヽ.::.:..ヽ.､　　　 ｊ |ﾉ ﾞ､
‐'"⌒＼.:.::.i;|.:.:.／‐'"´　　　　　　　ヽ.:.:.ヽ.ヽイ´ /=‐､ﾍ_
:.:.:.:.:.:.:.:.:l.:.:.li!,.ｲｿ　　　　　　　　　 　　!.:.::.:l　 | !　￣｀ﾞ!-､



87もの奪三振を記録し、ドラフト一位の片鱗を見せているが、
四死球76では首脳陣の信頼を勝ち得るわけもない。

読売巨人軍のドラフト一位選手は、一年目からプロの厚い壁にぶち当たり、
周囲の期待を裏切っていた───



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　　　　　　　仁二ニﾆヽヾY′　　　　　　　　　　　　 {__yｲ,仁二ﾆム
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　巨人軍に葬られた男～湯口敏彦物語～

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第2話『一軍の壁』　終

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本日は以上です。見ていただき、ありがとうございました。

次回投下は少し間隔があきますが、11月8日を予定しています。

乙
四球こんな多いんじゃ使えんよなぁ

乙です
高卒1年目なら悪くないんだけどなあ
周りの期待値が高すぎるのもよくないな

乙

まぁ、今の高卒の扱いとはまた違うしなぁ
大学はともかく、社会人に関しては今以上に充実していたとはいえ

乙でした
これだけ期待されていた逸材であっただけに本人の苦悩も含めて色々切ない…

乙
ここまでは当人の問題だけど、さあここからどう葬られてしまうのか