やる夫と学ぶ北欧神話　９





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |￣￣￣￣￣￣ llヽ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ) ≡≡≡≡≡≡）
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　　　　　　　　　　　　　 (ヽ三/)　））
　　　　　　　　　　　　　　 ( i)))
　　　　　　　　　　 ／￣￣＼　＼
　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼　）　　　　　　　　　　　　さーてと、今日は北欧神話の原典について解説するだろ！
　　　　　　　　　|　　　 （ ＞）（＜）
　　　　　　　　.　|　　///（__人__）
　　　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ
　　　　　　　　⊂ヽ γ　　　 く
　　　　　　　　i !ｌ ノ　ﾉ　　　　|
　　　　　　　　⊂ｃノ´| 　 　　｜






　　　　　　　　　　　　　　　　／ ￣￣ ＼
　　　　　　　　　　　　　　 ／ノ　　ヽ__ 　 ＼　　　　　　　　　　何でそんなにイキイキしてるんだお……。
　　　　　　　　　　　　　／（―） 　（― ） 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　|.　　（_人＿）　　　u　|
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼ 　 ｀⌒ ´　　 　 ,／
　　　　　　　　　　　　　　/ 　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　./　l　　　,/　 /　　 i
　　　　　　　　　　　　　(＿) 　　(__ ノ 　 　 l
　　　　　　　　　　　　　／　　／　　　___ ,ノ
　　　　　　　　　　　　　!､＿__!､＿_＿＿_つ


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　　　 　 ,'　　 　 /　　/　　　　　　　 　 　 l　　　　＼　　ヽ
　　　 　 ! 　 　 /　　/　　　　　/　 ,'　　　 |　　l　　 ﾊ　 ﾍ､ヽ､_,
.　　　　 | !　　 l　　 ｌ　　　　　/　 / 　 ,ｲ　! 　 i　　 ! l　ヽ ',｀￣
.　　　　 l |　　 l　　 ｌ 　,/　 〃　,/ 　 /│ l　　j　　 l│　 ! l
　　　　ノ | !　│ 　 |　/_／/ ／/　 /　,' ∧ / |　 /　j 　 ｌ│
　　　　　ﾉ l　ｧ|　　 lノ┬‐'┬ / ／　 / ´‐┬　! /　,/　 / ﾘ　　　　　　　　　原典や資料は注目されにくい部分。
　　　　 ｲ 八{´ｌ　　!|　 |::::::::! '´　 　 　 l::::::::!　 ｲ　 }　 /
.　　　　　 　 Vﾊ　　l　 ゝ:;;;ﾉ　　　　　　ゝ:;;ﾉ　./}, '/／　　　　　　　　　　　　言い換えれば説明し甲斐がある要素……解説役の性と思われる。
　　　　　　　 ヽ ', 　|　　　　　　　　　　　　　 ﾁ'　/
　　　　　　　　 `ﾍ　lヽ　　　　　　　 　 　 　 厶 ./
　　　　 　 　 　 　 ', {.代ﾄ､　 　 　 　 　 , イ |　/
　　　　　　　　　　　＼_'i|　＞ ､　_ , イ/ V　ｌ./
　　　　　　　 　 　 ／ ヽj　　　　　　 {｀ヽ 　 ′
.　　　　　　　 _ ／　　｢´　　　　　 　 ヽ}　＼
　　　 _, -‐ ´　　　　　l‐--‐､　＿　-‐ |　　 ` ｰ- ､
.　r＜＼＼　　　 　 　 ヽ '´￣　___ ｀ヽl|　　　　 / /ヽ
　y⌒ヽ ＼＼　　　　　　V　￣ ＿ ｀ヽl|　　 　 / /　∧
./　　　 ヽ. ＼＼　　　　　∨￣　　｀ヽ | 　 　 / /　/　 l






　　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　／　　　u　＼
　　　　　　　 　／　　／　 　 ＼＼　　　　　　　　　　　　　　　やらない夫が暴走しないようにストッパーになってほしいお、
　　　　　　　／ 　し （○） 　（○） ＼　　　　　　　　　　　　　　有希ちゃんだけが頼りだお。
　　　　　 　 |　∪　 　 （__人__）　 J |
　　　　　　　＼　　u　　 ｀⌒´　 　／






　　　　　　_,,.. -　､
　　 　 ,.-'　　　 　 ｀' ､.
　　　,r'　　　 　　 ,rfn､ ＼
　 　 ,'　 ,rffn.　　 '"　 　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　そこ、喋ってると聞き逃すだろ！
　　 .i　 '"　　　　　,riiﾆヽ. 　 ',.
　　 {　　,riiﾆヽ　　　 　 _.　 　 ',
　 　!　　　,..　 _,,..　-‐'　_,..r'　 i
　 　',　　 '､., __ ,.. -‐''"ﾞ　 }　　|
　 　 `､　　ヽ　　　　　　　 ! 　 }
　 　　 '､　　ヽ　　　　 　./　　 !
　　　　　＼　　｀ヽ==＝'ﾞ　 　 ,'
　　　　　　 ' ､　　　　　　　　/ .
　　　　　　　　`''‐　　　.　r'　＼
　　　　　　　　　/　　　 く　　　 ＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　|　　　　 ＼ 　 　　＼ 　 　　　　　　＼
　　　　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)　 ＼　 　 　　　　　 ＼

.

　　 　　　　　　　　　　　　／￣￣＼　　　～♪
　　　　　　　　　　　　　／　ノ　 ヽ、.＼　　　　　　　　　　　　　　さて……北欧神話の資料としてはこれらが挙げられるだろう。
　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|
　　 　 　 　 　 　 /￣￣￣ 丶人__）.　 |　　　　　　　　　　　　　　【主要な原典】
　　　　　　　　　/　　　　　　　　＼ .＿|＿＿＿__　　　　 　 　 　 　 ・スノリのエッダ（散文のエッダ）
　　　　　　 , --'､ 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　 　 ｀〉　　　　　　　 　・古エッダ（詩のエッダ）
　 　 　 　 /　⌒ ）　　　　　　　　/　　　　　　　　 /
　　 　 　 ,′　　ﾉ　　　 　 　 　 /　　 　 　 　 　 /　　　　 　 　 　【補完、補助等の資料】
　　 　 　 l　　T´ ..＿　　　　　./　　　　　　　r'´￣ヽ　　　　　　　　 ・ユングリンガ・サガ
　　　　 　ヽ ノ　　 .／丶､　　/　　　　　　　（ ￣　　l
　　　 　　 　 ｀'ー'´　　 | .｀'ｰ'――┬― --､/ 　 _.ﾉ







　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 「ゲルマーニア」や「デンマーク人の事績」については以前説明したし、
　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　関連性も薄いんで省くぞ。
　　.　|　　　　 （__人__）
　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 二つの「エッダ」は特に外せないな、ぶっちゃけ神話のほとんどは
　　.　 |　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 「エッダ」に集約されていると言っていい。
　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼


.

　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　 ／─　 　 ─　　＼　　　　　　　　　　　ふむふむ。とりあえず「エッダ」を知ってればいいということかお。
　　　　　　／ （●） 　（●）　　　＼
　　　　　　|　 　 （__人__）　　　　　 |
　　　　　　＼　　 ⊂ ヽ∩　　　　 <
　　　　　　　 |　 |　 '､＿ ＼　／　 )
　　　　　　　 |　 |＿＿＼　 “　 ／
　　　　　　　　＼ ＿＿＿＼_／






　　　　　　　　.r-､　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／て )　　　 　／　　 _ノ　　＼
　　　 　 　 （ _ﾉ　 ﾌ.　　 　 |　　　（ ●）（●）
　　　　　　　ゝ、 〈　　　　　|　　　　（__人__）　　　　　　　　そうだな。まずは「スノリのエッダ」の概要から入ろう。
　　　　　　 / ハ　ヽ.　　 　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ
　　　　 　 /〃　ﾍ　 ＼ . 　 | 　 　 　 　 　 }　　　　　　　　 名前のとおり、スノリという人物によって書かれた書物だ。
　　　　　 ｉ ！　　 ＼　 ｀ ーヽ　　　　　　 }
　　　　　 丶丶　　　_ ＞　　　ヽ　　　　ノ､
　　　　　　　 　 ゝ'´- ､_ 　y-､　　　　　　　＼
　　　　　　　　〈　　　　 ￣　 う 　 　 　 /､　　ヽ
　 　 　 　 　 　 `ー― ￢､__ノ　　　　　| 　>　 /
　　　　　　　　　　　　　　 |　 　 　 r'＾ヽ'´ _／
　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　 　 `く__ノ´


.

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　スノリはアイスランドの詩人であり、歴史家だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　晩年は島の有力な権力者となった時期もあったそうだ。


　　　　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　　 　 ／ 　 　 　 ＼
　　　.　　　　　／　＿,ﾉ　　⌒　＼
　　　　　　 ｌ^l^lｎ　 （●） 　（●）　＼　　　　　　　良い詩人になるには古い伝承の知識が不可欠です。
　　　　　 　ヽ 　 L　　 ､　｀　　 　 　　|
　　　　　　　 ゝ 　ﾉ　　 ￣￣　　 　／　　　　　　　しかし今の若者は伝承をほとんど知らない……これではいけませんね。
　　　　　　／ 　 /　　　　　　　 　　＼
　　　　 ／　　 /　　　　　　　　　 　 　＼
　　　. /　　 　/　　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
　　　人＿＿ﾉ　　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

　　　　【スノリ・ストルルソン（1178～1241）】






　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　 ／　　　　 ＼
　　　　　　　／　　⌒ 　　⌒＼　　　　　　　　　　　　　　　　　「朦朧とした詩作品を理解できるようになりたいと願う者は、
　　　　 　／　　 （ ●） 　（●）＼　　　　　　　　　　　　　　　　　この本を研究しなくてはならない……」
　　　　 　|　　 　　　　___´__　　　|
　　　　　　ヽ、　　　　`ー '´　 ／
　　　　 　　ノ　　　　　　 　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この書物を「エッダ」と名づけましょう。
　　.　　／　　　　　　 　 　 　 　 ヽ 　 　 　 　 　 　 　 　 カ
　　　　|　　　　ｌ　　 l||l　从人 l||l 　　　 l||l 从人 l||l 　 カ　 　タ
　　　　ヽ　　　 -一''''''"~~｀`'ー--､　　-一'''''''ー-､. 　 　 タ
　　　　　ヽ ＿＿＿＿(⌒)(⌒)⌒)　)　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))
　　　　　┌ ┌┬┬┐┌┬┬┬┐┌┬┬┬┐┌┬┬┬┐
　　　 ,. - ''"|￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ρ￣`ｌ
　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ノ￣￣


.

　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼　　　　　　　　　　　　…とまあ、スノリが書いたエッダは、詩を学びたい人のための
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　 　 教本として書かれたものだ。
　　　　　 r;r‐r/　| 　 |　　（__人__）　 |
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ　　　　　　　　　　　　時期は大体1222～1225年ぐらいだと言われている。
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}　　　　　　　　　　　　「エッダ」という名前の由来については複数の説がある。
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ





　　　　　　　　　|
　　　　／￣￣＼
　 　／　　 _ノ　　＼.　　　　　　　　　　　・「祖母」という意味
　 　|　　　 （ ●）（●）
.　　 | 　　　　（__人__）　　　　 　 　 　 　 ・「詩学」という意味
　　　|　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　　　|　　　　　　 　 }.　　 　。　　　　 　 ・スノリが学問を学んだ地「オッディ」をもじった
.　　　ヽ　　　　　 　 } 　　　/
　　　　ヽ　　　　　ノ　　　./　　　　　　　　※オッディは当時のアイスランドの学芸の中心だった地
　　　　 / lヽ介/lヽ、　,rE)
.　 　 　| | ~ヾ/~ |.　ｿ◇'
　　　　| |　　ﾟ| 　|＼／＿＿＿＿Ｅ[]ヨ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　＿ | |　　ﾟ| 　|＿_
　 |＼ ￣ヽ⌒ヽ⌒ヽ　＼
　 |＼＼　　⌒　 ⌒　甘 ＼
　 | 　＼|￣￣￣￣￣￣￣|

.

　　　　　　　　　　 　 　 ＿＿＿_
　　　　　　　　　　 　 ／　　　 　 ＼
　　　　　　　　　　 ／　　 ⌒　　 ⌒＼　　　　　　　　　　もとは詩の教科書なのかお。何か意外だお。
　　　　　　　 　 ／　　　（ ●）　（ ●）ヽ
　 　 　 　 　 　 l　 　 　 ⌒（__人__）⌒　|
　　　　　　　 　 ＼　　　　　｀ ⌒´ 　 ／
　　　　　　　 　 ／　　　　 　 　 　 　 ヽ







　　　　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　　　　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　　　　　　　　　もちろん、伝承を後世に残す目的もあっただろう。
　　　　　　　　　 　!　　（__人__）　 |
　　　　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |　　　　　　　　　　　習慣の変化などの要因のために、古い伝承は失われそうに
　　　　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/　　　　　　　　　　　 なっていた時期らしいからな。
　　　　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　　　　 　　|　|／|　　　　 |　|


.

　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　ノ　　ヽ /＼'ｰ､　　　　　　　,, ..,､　　　　　　　　「スノリのエッダ」は以下の三部構成になっている。
　　　　　　|　 （ ●）（ /　　.＼` ､　　 .　／／ /
　　　　　.　|　　（__人/　　 　　＼ヽ､,.／／　../　 　 　 　 　 　 　 ・ギュルヴィたぶらかし
　　　　　　 | 　　 ｀ /　　　　　　　｀`７７　 　/　　　　　　 　 　 　 ・詩語法
　　　　　.　 ヽ　　 /　　　　　 　 　 / /　　 /　　　　　　　　　　　 ・韻律一覧
　　　　　　　 ヽ.. /　　　　　　ｆヽ、/ / , -,./
　　　　　　　　/./　　　 　r-､ ヽ　∨,ノ　/
　　　　　　　　|. ＼　　　〈＼.＼,〉　｀,　 ｆ　　　　　　　　　　　　　このうち、「韻律一覧」はノルウェー王の功績を称える内容なので、
　　　　　　 　 |　.　＼　　(ヽ ヽ ｀..　　　|　　　　　　　　　　　　　北欧神話にはほぼ関係無いな。
　　　　　　 　 |　　 　.＼　＼　　　　 　ﾉ







　　 /:::/:::: /::::::::::::l::::::::|:::::::l:::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::i::::::
　　/::;ｲ::::i::::::::::::::| ::::::l|;::::::li;::::::::|､;::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::l:::::
　 .l::/ l:::::|::::::::::::/!::::::| li::::::lヽ::::::l. ヽ;:::::::::::::::::l::::::::::::::::::::l::::::　　　　　　　　「ギュルヴィたぶらかし」は北欧神話の大まかな概要。
　 |::l　| ::::|::::::::-i-L;;_l .|!i:::::l ヽ::::l　　ヽ､__;;;;::::| :::::::::::::::::l::::
　 |:!　.|::::::l::__;;;|_　l:::l｀ヽヽ;:::l　ヾ;ﾚ‐'''ﾞﾞ´＼ :::::| ::::::::::::::::l:::::　　　　　　　　 スウェーデン王ギュルヴィはガングレリという偽名を名乗り、アースガルドを訪れる。
　 l! 　.|:::／ ___ノ,ｨ'ﾄ|''=ﾐ､ ヾ!　　,r-=fニﾐ;;弍;;| :::::::::::::::l~ﾞ'i
　　　　l/　,/ﾄ､::lﾞ__ﾞヾ::ii::|ヽ　　,/　　.|:::illi:::ﾞii/ |:::::::::::::::j¨ﾞ l　　　　　　　　 そこで会ったハール、ヤヴンハール、スリジという三人の神との問答を通して、
　　　/⌒ヾ､|/`fﾄ l　ﾞK);j .l'⌒''h.　　 K);;;;ｯﾘ　l:::::::::::::/　.ﾉ　　　　　　　　 神話についての解説を行っている。
　　/‐-､ `iﾉ　/'ヽ|､　　 ノ 　　 ヾ､ 　 　　,/　 |:::::::::::/=7ﾞ
　./　､. ヽ |ﾞV,_ 　l:::i､￣　丶 　　　ﾞ''ｰ-‐''　　,l::::::::::/|:;/
　i　 'ﾞヽ_j-'　　　.|::::|.＼　　　‐- 　　　 　 　,,ｲ::::::::/ ,l/
　ヽ　　　 ヽ　　 jl:::::l. 　 ヽ､　　　　　 ,　''ﾞ　/:::::::/ﾞ｀ヽ､
　　ヽ､.　　　　 /ヽ::::|　　　 ,,｀=ｰ '''i´　 　 /:;/ﾚ'〉;:;:;:;:,.,＼
　　　/　　　　/.　 ヽ:|　,,r''ﾞ,.;:;:;r''ﾞ~ﾉ　　　/ｲ　 /;:;:;:;:;:;:;:;:;:;


.

　　　　　　　　 ／￣￣￣＼
　　　　　　　／　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　　ギュルヴィって、前回出たのと同じ人かお？
　　　　　　/　　　 ─　　　─　ヽ
　　　　　　|　　　 （●） 　（●）　|　　　　　　　　　　神様のほうは知らない名前だお……。
　　　　　　＼　　∩（__人/777／
　　　　　　／　　（丶＿//// ＼






　　　　　　　　　 _,.　─　､.　--　._
　　　　　　 　 ／　　　　　　　　　 ｀ヽ
　　　　　　／　　　　　　　、　　、　　 ＼
　　　　　/,.　 ,.　/　 　 l.　 | ヽ　ヽ　ヽ.　ヽ　　　　　　　　ハールは「高き者」もしくは「片目の者」、ヤヴンハールは「等しく高き者」、
　　　　/ / i'/　/　 ,|　 |　 ,!　 |　 ',.　！　 ',　　　　　　　 スリジは「第三の者」を意味する。
　　∠-7 j |.|　 |　./|　,1　ハ. ハ　| 　 |l.　l |
　 　 　 | | |l.',.　} ﾅTｧ-| ./　l./'''Tﾅ{.　,ﾘ　 |1　　　　　 　 このうち、ハールとスリジはオーディンの別名として
　　　　 l！Mヽ.{<ｨﾃtﾄ !' 　 ' t5ﾓト,.ﾚ!' ,1 ,!　　　　　　　 別の詩に登場している。
　　　 　 1',l.|　ﾞﾄ　'ぅり　　,　　2tﾀ /　 /,!'
　　　　　　｀| l. ｢ヽ　　　 __　　　　/! ｲ/　　　　　　　　　 この二人のどちらかは、オーディンなのかもしれない。
　　　　　　　l.ﾄ. |l. ヽ､　　　　 _,.ノｲ/ |!
　　　　　　　｀ ヽl ﾍゝl｀　-　´lﾙ　′
　　　　　　 　 　 ／.ノ　　　　ヽﾞヽ、
　　　　 　 _.. - ´　 L._,. -- .._...| 　 ｀ ‐ ､._
　　 　 ,f´l.　|　　　 「 _,　-　､._j　　　　/ / ｽ
　　　/　l. ',　', 　 　 ｢_,. --　..｣　　　 / / /　',
　　　!　 ヽヽ ヽ　 　 |　　　　｜　　 / / /　　l






　　　　　　　 　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　 （●）（● ）　　　|　　　　　　　　　　　前回解説したゲヴィウンの話は、ギュルヴィたぶらかしの冒頭でもある。
　　　　　　　　 （__人__）　　　　 |
　　　　　　 　　（　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　どうせだしもう少し詳しく話すか。
　　　　　.　　　　{　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　 ⊂ ヽ∩　　 　 く
　　　　　　　 　 | '､＿ ＼　／　 )
　　　　　　 　 　|　 |_＼　 “　.／
　　　　　　　 　 ヽ､ ＿_＼_／


.

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ある時、ギュルヴィ王の元を旅の女が訪れた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　彼女の余興に対する礼として、王はこのような提案をした。



　　　　　　　 ト､、:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_,. -‐ '":;:;:;:;:;:;:;_,.ノﾐ'、
　　　　　　　 |:;:;:;:｀`'ー:;:;:;:''"´:;:;:;:;:;:;:_,. -‐='二三ｼﾊ
　　　　　　　 ト､＿:;:;:;;l:;:;:;:;:;__,. - '"´ 三三三三彡ﾉ!
　　　　　　　 l:::l　 二、― 'r―-,_ 　 _三三三彡彡ﾆヽ
　　　　 　 　 ヾi　 `ｰ′:.　`""´　　 ｀￣'三三彡片ヽl|　　　　　　　　　　そちに褒美を取らそう。
　　　　　　　　 '、 , - ､、　　 __,.. .. ,、_,　　'三彡'^> ﾉﾘ
　　　　　　　　　l ｲで>､ヽ　 ':,ｨ'で'＞'"　　 三ｼ' f ﾉ /　　　　　　　　　　そうじゃの……四頭の牛が一昼夜かけて鋤で
　　　　　　　　　l ヾ二ﾌ ,!　　ヽ二彡'´　　　}ﾂﾘ ,､_ノ　　　　　　　　　　　引くことが出来る広さの土地をやろう。
　　　　　　　　　'､　　　 l　 　 ,.、　　　　　 i 川 ├ミ'、
　　　　　　　　　 ヽ　　 ,'　　 '__)ヽ、　　　 /｀`7>、
　　　　 　 　 　 　 ヽ　/`ー'i´　　　＼ 　 /　 ///>、
　　　　　　　　　　　ヽ'､ ､_,=＝ァ=-､_,｝ / /./////ﾄ､
　　　　　　　　　　　　＼ヾ二"´_,. ‐-.:.:/ /.//////:.:ヽ
　　　　　　　　　　　,. -/ゝ､':､_:' :、_ _:/ / //////:.:.:.:.ヽ‐- 、
　　　　　　　　　 ／　/:.:.'､ ヾ"ﾞ´￣ / / /////'′:.:.:.:.:.ｿ ﾉ ）
　　　　　　,. -―{　､/:.:.:.:.:ヽ ヽ.　　/ / /////:.:.:_,. - '"　／￣｀`丶、
　_,. -‐ '"´　　　ヽ ｀丶､r―--`'-/ / /////''"´　　　／　　　　　　 ｀丶、
'´　　　　　　　　　 丶､＿｀￣￣ / / ////'′　_,. - '′　　　　　　　　　 ｀丶、


.

　　　, ⌒ﾊ 　　　　　　　　ﾊ⌒ 、
　　 j::::::::::::i ,ﾍ^ ⌒　Ｙ⌒ヽ .::::::::i
　　 I::::::::::::j ..::::::....::::..::::::. .:::ヽ::::::i
　　 I::::::::::ﾘγ::..:::::::..:::...ﾍ、::: ﾉ:::::ﾘ　　　　　　　　　　　本当ですか？　それでは早速牛を用意してきますね。
　 　 Yyﾉﾉ ::::ﾉ...:ﾉ　_ノ　 ヽ::::ﾙﾘﾉ
　　　　ﾘ::::::::(　　（ ●）　（::(　　　　　　　♪
.　　　　ﾊ::::::ﾊ 　 ,,　 r‐ｧﾘ） )
　　　　　） ) ）、 　　 ￣くﾊ（
　　　　（,（.(　' ﾍ　　 い ﾉ:::））
　　　　ノ/）` 　 ヾ　ｿ￣（( 、
　 　 　 ,' 　 ﾉ　 　 Ｙ　　　　ヽ







　　　　　　 /､;:;:;:;:;:;:;:;:;ｰ-:;､_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
　　　　　 ./ﾐﾐﾐミミ､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ｰ-;:;､;:_;:;_:;::-‐'"´i
　　　　　 lﾐﾐミミミミミミミｰ-::､;;;;_;:;:;:;:;:;i;:;:;:;:;:;:;:;:i
　　　　　,!ミﾐミミミミミミﾐ　　　＿;`-､;;;!:-‐'''´|ﾐi
　　　　//｀,ヾミミミﾐｼ‐'″　　'ー‐' 　:　 'ﾆﾌ' i;/
　　　　l l　,rヾミミﾐ 　　　　　_,,,,,　　 ﾉ　 _,,_　l　　　　　　　　　　　 ほほほ、そう急がずとも土地は逃げぬぞ。
　　　　',ヽヾ､ヾミミ 　　　 ｨで)ヽ､ 　 r';ｨび､.ﾉ
　　　　 ヽ､__,, ミミ 　 　　 ｀ﾞﾞ'''"ﾌ｀　 | ｀ﾞ'''ﾌ'i
　　　　　〃 i l ミﾐ　　　　　 ／´　 　 | ｀ｰ'´l
　　　　　／ヾ.l ﾐﾐ　　　　　　　/'　 　 |　　/
　　　.　/:::::',ヽヽ`　　　　　　 / ｀ `ﾞｰ-'　/
　　　r/::::::::::',ヽヽ　　　　　　 　 　 i:i　', /
　　　/::::::::::::::ヽヽ＼　　　　'"ｰ=＝=-'/
　　　ヽ:::::::::::::::::ヾ､　` ､　　　ﾞ'一''ｰ'ﾉ′
　　　､　＼:::::::::::::::ヽ　　｀ ｰ‐-t't::i´ﾞｰ-､
　　　.｀-､　｀ｰ-:､::::::ヾ'､ 　 　 //:::l　ヽ　｀ﾞｰ- ､


.

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　旅の女――ゲヴィウンは巨人との間に生んだ4人の息子を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿＿,ィ__ﾉ!　　　　　　　　　　 牛の姿に変え、彼らに鋤を引かせた。
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 〃⌒Ｖ/´￣￣ゝ..ノ
　　　　.　　　　　　　 　 　 　 {{　　 }}{
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 }}　 〃}}／"⌒ヾ:.
　　　　　　　　　　　　　　乂）ﾉ　 {{〃　　　　〃
　　　　　　　　　　　　　　　. . -‐ ＹＬ..　　　〃
　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　 ｀ヽｲ从）
　　　　　　　　　　　 ∠.. イｉ｀ヽﾊ 　 　 　 ',
　　　　　　　　 　 ..:´.:.:.:.:.:.:ﾉ.:.:.:.:ﾉ人　　　｜　　　　　　　　　　ブモモモー！！　×４
　　　　.　　　　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:::.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ.　 {
　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ　）
　　　　　　 　 i.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::.: .:.:::ノi::::::｢ {
　　　　　　 　 i.:.:.:.:.::,.-‐。⌒ヽｒ '"　.ｲﾉノLﾉ〉
　　　　　乂ｰ┴―ｒｆ　　o 　　vｒ＜.:.:.:.:.:.:.:ﾌ′
　　　　　 　 ￣厂 ｀! 　 Ｏ　 /!|::::::::.:.:...イ
　　　　　　 　　＞::::ヽﾄ｡、　 jﾟﾉ:::::::/´　ﾉ
　　　　　　　　⌒ヽ::::::`ヽ. 　 」::::::/　／
　　　　.　　　 　 　 ＼｀ヽゞ孑ヘ/　ﾉ
　　　　　　 　 　 　 　 ヽ.丿　　 ｊ 　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 {
　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾐ彡'






　　　　　　　　　　　 .r-､　　, ⌒ﾊ 　　　　　　　　　 ﾊ⌒ 、
　　　　　　　　　 　 ／て )　j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒　Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
　　　　　　　　 　 （ _ﾉ　 ﾌﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i
　　　　　　　　　　 ゝ、 〈　ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ
　　　　　　　　　　/ ハ　ヽYyﾉ ﾉ :ﾉ...:ﾉ　ノ　　ヽ ::::::） ﾙﾘﾉ　　　　　　　　　　ファイトッ、マイサン！
　　　　　　　　　 /〃　ﾍ　ヽ　ﾘ::::::(　（ ＞）　(＜::（
　　　　　　 　 　 ｉ ！　　 ＼ 　 ﾊ::::ﾊ 　　 r‐ｧ　 ﾘ） )
　　　 　 　 　 　 丶丶　　　_ ＞ ） ) ）、　 ￣ .ノくﾊ（
　　 　 　 　 　 　 　 　 ゝ'´- ､_ 　y-､ﾉ ヾ　ｿ　（　＼
　 　 　 　 　 　 　 　 〈　　　　 ￣　 う　　Y　　y、　 ヽ
　　 　 　 　 　 　 　 　 `ー― ￢､__ノ　　　　 　j　>　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 　 　 r'＾ヽ'´ _／
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,′　:: 　　`く__ノ


.

　　　　　　　　　　　 |;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:||;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
　　　　　　　　　　　 l;:;:;:＿＿＿jl|＿＿_;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l
　　　　　　　　　　 ,ｲ::7´ ,r=ぅ　　　r- ､ ￣｀`i丶､;:;:l　　　　　　　　　あ…ありのまま　今　起こった事を話すでおじゃる！
　　　　　　　　　　/::::ｼ　 "´　　　　｀ ~´　　 ｨ'ミ::::`'i!
　　　　　　　　　　）::/ ,. -－ ､　　 , -－ ､　 ｀ヾ::::::::},　　　　　　　　　『土地を与えると言ったら
　　　　　　　　　　l:::l.:.,ｨ句丶y'.:　　ｨ句丶､:.:.　ﾞi:::::::::l　　　　　　　　　　　　　陸地ごと持っていかれた』
　　　　　　　　　　}::l:.:.｀￣,.:'´ .:　:　｀ﾐ￣.:.:.:.:.:.　l:::::::ﾑ、
　　　　　　　　　　l::l　　 , '　,r'　　ヽ、　　　:.:.:.　}:::/^'i l　　　　　　　な…　何を言ってるのか　わからねーと思うが
　　　　　　　　　　N!　　　 /ﾞ'^'- '^'ﾞヽ　　　　　 l::fｸ //　　　　　　　麻呂も何をされたのか（以下略
　　　　　　　　　　l l!　　 /　 ,..,_,..、　丶　　　　 l:lぅ,ﾉﾉ
　　　　　　　　　　しi　 i 　 ,ｲｴｴｴ>､　ヽ　　　 ,l:ゝ- '
　　　　　　　　　　　ヽ. l l　l{､:.:.:.:ﾉ:.:.:l）　l　　　ｲ::ﾉ
　　　　　　　　　　　　ヾ! l ヽゝｪｪｪｧﾂ　 }　　 ,/:::ヽ
　　　　　　　　　　　 　 >､　 `ｰ-‐ '"　ノ　,ィ'{^~ﾞﾞ´
　　　　　　　　　　　 ／l, ﾄ、　　　　 　 ,ィ" Y lﾄ、
　　　　　　　　　　 _/:.:.:ヽヽ.` ‐--‐ '"´　 　 / ハ
　　　　　　　　,r‐</:.:.:.:.:丶丶　ヾ ,ｿ　　　　/ /:.:.ヽ‐-､
　　　 , -‐ ''"^ヽ　丶､:.:.:.:.:＼＼　　　　　／／:.:.:.:.:ヽ } lｰ-- ､、
,, - '"　　　　　 丶、　｀` ｰ- ゝ ヽ､＿_∠∠.:-ｭ:.:.:_,:ノ /　　　 ｀ 丶､




.

　　　 , ⌒ﾊ 　　　　　　　　　 ﾊ⌒ 、　　　　　　　　　　　　　ゲヴィウンが持っていった土地は、現在のデンマーク領シェラン島となった。
　 　 j:::::::::ヽ ,ﾍ^ ⌒　Ｙ ⌒ヽ/ .::::::::i
　　 ﾉ:::::::::j（ﾉ ..::::....::::..:::: ::. .ヾ)':::::::::::i　　　　　　　　　　　　　そして、えぐられた部分は湖に――スウェーデンのメーラレン湖が出来たのは
　　 ﾙ:::::ﾘγ::..:::::..:::...ﾍ、: : : :: ﾉy:::::::ﾘ ,:┐　　　　　　　　　　 こういった理由があるからだと言われている。
　　 Yyﾉ（::. ::.ﾉ ノ　 　 ヽ､ヾ:::::（ ﾉﾘ／　｜
　　　　　ヽ:::(　（●）　（●） ):::::ﾉ/ 　　 /　　　　　　　　　　　デンマークの首都コペンハーゲンには、ゲヴィウンと彼女の息子たちを模した
　　　　　　( （i　　 rー r－､） )｀/ 　 ／　　　　　　　　　　　　像を置いた噴水が建てられている。
　　　 　 　 ）ﾊゝ 　 ￣ ヽ　｜（/　:/',
　 　 　 　 （(::::ぃ＞ 　　ﾊ　 l_/_, -‐､',
　　　　　　ﾉ/)!:） ,ヾ　ｿ │　 / , -－'i|
　　　　　　 l/　ﾉ　　Ｙ　　{　　V , -－ﾍ　　　　神様ナメんなよ！
　 　 　 　 /　（　.....　　 ...ハ　 Ｌ|　r=　|
　 　 　 ／　　　::::::::　　::::: ハ.　└'　／





　　　　　　　|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|
　　　　　　 ├- ､__:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;:-‐'"´;i
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　　　　　　 ,i＝＝==､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:-‐"´ﾞﾐ三ﾐi
　　　　　　 i三三ニﾆ'￣｀ﾞﾞ''''' ー- ､;:;:;:;:;:;:-一'"　　 　 ﾐﾆ三i
　　　　　　 i三三ﾆ三　　　　　　＿　 ￣　　r==､　　　 'ヾ､ミi
　　　　　　_,i三三ﾆ三ゞ　　　 ﾆ三ｼ　　i　　 ゞ"´　　　　　!ﾐ;iヽ　　　　　　　　　　うーむ、アース神族というのはかくも力の強い者達なのじゃな。
　　　　　 i"ﾞヾ彡彡ｧ"´　　　　　　　　 i　　ﾉ　__ ,,,...､_,,. 　 iﾐ| |
　　　　　 { {｀ヾ彡;ｼ′ 　　, _ --‐- ､丿　 ｨ''"ノ（oﾂヽ''　　|ﾘﾉ　　　　　　　　　　 あの力は一体どこから来ているのか……知りたいでおじゃる。
　 　 　 　 '､(､ヾ彡ﾘ 　 　　ｨ'でo)'ヽ､　 :　 ';:. 'ー-‐'"″ 　 |ﾘ
　　　　　　 ',ヽヾ､彡　　　ゝ｀ﾞﾞ'''''"´ﾂ　.､　 i::.｀ヽ､,,,,ノ 　 　|i|
　　　　　　　ヽ丶ヾﾘ,　　　 ｀ ､,,,,,,ノ　　.: 　 i:::.　　　　　　　ﾘi
　　　　　　 　 ゝ､,ヾﾘ　　　　　　　　 ,　.::　　'､::.　　　　　　 ﾘ
　　　　　　　　　　 ヾi,　　　　　　　 /､ _　　　 ,,'　　　　　 , /
　　　　　　　　　　　ヾ,　　　 　 　 /　 ´｀｀ｰ''´　 　 ､　　,' /
　　　　　　　　　　　 ヾ,　　　　　 '　　　　 : :　　　　 ',　,　/､
　　　　　　　　　　　　 ヽ､　　　　, --‐‐一''ー─''''　' /./::::ヽ.
　　　　　　　　　　　　 i"i ヽ　　,r' _,,,, ゝ--‐‐''´ｰ'"　ﾉﾉ::::::::::ヽー-､
　　　　　　　　　 　 　ﾉ, |',　 ヽ､　　 ｀ ; ; ; ; : : : '　 ／::::::::::::::::::＼_｀ヽ.
　　　　　　　 　 　 ／::i　| ',　　 ｀ヽ､＿ 　 　 ＿,／:::::::::::::::::::::::::::::/　ヽ
　　　　　　_, -‐'''"i:::::::i　.|; ',　　　　　　￣￣／／:::::::::::::::::::::::::／　 ／＼



.

　　　　　　　　　　　 i;:､;:;:;:;:_:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:_:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;i,
　　　　　　 　 　 　 /三､;:;:;:;:;`;:‐-;､、l_,;:;-‐;:';:´;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ｨ彡ﾆ、　　　　　　　　　　　　 神々の力の秘密を知るために、ギュルヴィ王は老人に変装し
　　　　　　　　　　 l三三＾'ｰ-:､、;:;:;:;:j::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:-‐イ彡三三i　　　　　　　　　　　　　アースガルドへの旅に出る。
　　　　　　　　　　 i'l三Ξ.　 ,.＝ﾐ`'ｰ-‐'";ニこ´　　 ｨ彡三三7,.、
　　　　　　　　　　 ',lミｼ"　　｀￣´　　　　｀¨"´　 　 `ｰﾐ三彡7-ヽ　　　　　　　　　　　 彼は賢く魔術の心得もある王だったが、それでも神々の前では
　　　　　　　　　　　lﾐﾐ,　:.　 _,.=､、 .　　　..: _,.〟､、..:　 ヾ彡〃//　　　　　　　　　　 　 まったくの無知な人間も同然であった。
　　　　　　　　　　　 〉l;　::.彳ヾﾟ;ﾊ、:、 ,:'　,.ｨﾍ;ﾟﾂゞ::' 　 .::彡/ノ/
　　　　　　　　 　 　 ヽli. :ヽ.｀ﾞ'''"ﾌ`.: 　l::. ヽ｀ﾞﾞ"´.:'　 .::::::彡ゝ/
　　　　　　　　　　 　 ｀li.　　｀ﾞ "　.:: 　 l:::.　｀ ﾞ "´　..::::::::彡ｰ'′
　　　　　　　　　　　＿,.ﾄ:..　　　 .:' :　　 :::::.､　　　 .::::::::::彡′
　　　　　　　　　,ｨ'´r'"::ﾍ:::.. 　 /｀'=､__,.ｨ'' ' ヽ　 ..:::::::::::;ヲ
　　　　　　　,r‐' ./:::::::::::::ヽ::::.　　　　: :　　　　 ､.:::::::::::;ﾉ ヽ､_
　　　 , -‐''"　　 ヽ::::::::::::::::＼　ー-:こ=ﾆ=一　ﾉ .::::／l:::ヽ, ﾍ｀ｰ-､
, -‐"　　　　 ヽ 　 ＼::::::::::::::､＼　｀ー‐--´　" ::／/ /::::::::i　l　　　｀ｰ-､､
　　　　　　　　 ＼　　＼::::::::::＼ヽ､＿＿＿_,.／: :/ /:::::::::::l　ｌ　　　　　　 ｀丶､、
　　　　　　　　　　＼.　 ＼::::::::::ヽ、::.　　　.: : : ／./::::::::::::ﾉ /







　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,== ,‐‐、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／"　　 ｀　＼
　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　 　 　 ∧　　　 l}　　　　　　　　　　　　　　予言の力を持つ神々は、ギュルヴィがやって来ることも
　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　 　　 l=l　 　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　 既に見通していた。
　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　＿／￣{l　　　　 ／三ﾆヽ　　 |｀＼
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /'／　　「" |　　　/=======ヽ 　 .|ヽ　|　　　　　　　　　　　ギュルヴィ王と神々の問答が終わると同時に大きな音が響き、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 / 　 |　　/::::::::::::::::,:::::::| 　/　 ヾ　　　　　　　　　　 　 黄金で飾られた館は一瞬にして消え失せた。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　'"" | ヽ　|　 /三=、＿_　=,| ,/　　/ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　／""""l}　　|　＼ ヽ　{l三ﾆ　　/=// ／"　　l} ＼　　　　　　　 　ギュルヴィ王が訪れた神々の国は、最初から幻だったのだ。
　　　　　 　　　　　　　　／　　　　　| .....|　　　＼孑　　ニﾆ/ ／　　　　 l )　　＼、
　　　　　　　　　　　　／　　　　.　　 |.　..|　　　　　　ニニﾆﾅ　　　　　　|/ |　　　　 ヽ
　　　　　　　　　 　／　　　　 　　 　 |　　l {l　　／　　 〆　==　　　　　　l /　　　　l　l}
　 　 　 　 　 ／""　　　　　　　　　　 |　　l　ソ"　　／ノ ^y ヾ,,,t,　　　　　　　　　 /　ヽ
　　　　　　 {l 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　|　　 ,／ ／　 l l　ヽy　　　　　l 　 　 　 l　　l}
　　　　　　 {l　　　　　　　　　　　　　 |　 | ν　,／ 　　 | |　　ヾ　　　　/　　　　　　 　 l}



.

～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～～



　　　　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　 　 　 　 ／　　_ノ　 　＼
　　　　　　　　｜　　（ ●）（ ●）　　　　　　　　　　　　以上が「ギュルヴィたぶらかし」の大まかな内容だ。
　　　　 　 　 　 | 　 　 　（__人__）
　　　　 　 　 　｜　　　 　｀⌒ ´ｌ
　　　　　　　　 ｜ 　 　　　 　　}
　　　　　　　　　ヽ 　　　　 　　}
　　　　　　　　　　ゝ　　　　　丿
　　　　 __＿＿（￣￣　　　 /￣￣/´￣/＿
　　　i⌒ゝ、　　ヽ　ヽ.　 　/ 　 　/　 ⊂) 　i⌒ゝ、
　　　i;;;;;;;;;;|＿＿　Ｌ人　　￣￣｀´￣ ノ_＿i;;;;;;;;;;|






　　　　 　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　／⌒　　⌒＼
　　　　　　 ／（ ●） 　（●）＼　　　　　　　　　　　　一つのお話みたいになってるんだおね、やる夫でも読めそうだお。
　　　　　／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼
　　　　　|　　　　　|r┬-|　　　　 |　　　　　　　　　　 教科書って言うから難しい内容だと思ってたお。
　　　　　＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／


.

　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　 　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　入門書みたいなものだからな。
　　　　|　　　 ⌒　　　⌒
　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　内容もかなり詳しいから、これだけでも神話を一通り知ることが出来るだろ。
　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼







　　　　　　　／￣￣＼
　　.　　　.／　　　_ノ　 ヽ
　　　　　 | 　　　（ ●) (●)　　　　　　　　　　　　　 次は「詩語法」だな。これは詩の技法……「ケニング」と呼ばれる
　　　　　 | 　 　 　（__人__） 　∫　　　　　　　　　 　 比喩法についての解説だ。
　　　　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　∬
　　.　　　ヽ　　 　 　 　　} |￣|　　　　　　　　　　　　主に「ケニング」についての説明が中心だが、ここにしか書かれていない
　　　　　　　ヽ　　　　 ノ　|＿|）　　　　　　　　　　　 神話もいくつか存在する。
　　＿＿__／　　　　　 ｲー┘ |
　　| |　　/　　/　　　 　_＿＿/　　　　　　　　　　　 「ケニング」自体、北欧神話と深い関係があるから、結構重要な部分だ。
　　| |　 /　　/　 　 　　|
　　| |　（　　　￣￣￣⌒ヽ
　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|


.

　　　　　　　　　　 　 　 ＿＿＿_
　　　　　　　　　　 　 ／　　 　 　＼
　　　　　　　　　　 ／　─　 　 ─　＼　　　　　　　　　　その「ケニング」って……やっぱいいお。
　　　　　　　 　 ／ 　 （●） 　（●） 　＼
　 　 　 　 　 　 |　 　 　 （__人__）　　 　 |
　　　　　　　 　 ＼　 　　 ｀⌒´ 　　　,／
　　　　　　　 　 ／　　　 　ー‐　　　　＼







　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　なんだい、質問なら最後まで言っていいんだぞ。
.　　　　　　　　　　　　　　　　|　　（__人__）　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 ｀ ⌒´ 　ﾉ
.　 　 　　 　 　 r─一'´￣`＜ヽ　　　　　　}
.　　　　 　　 　 `ー‐ｧ　　 ,　 　 )　　　 　, -'~⌒ヽ、
　　　　　　　　　　 ノ　　　{. 　 ,ﾍ　　　　,l.　ゝ、_ .'ヽ).
. 　 　 　 　 　　 ／, ､　_　　　/. |　　 　.　',　　.　..　 .ヽ、
　 　 　 　 　　 （／ / // / /　...|　 　 　 ...|＼..＼＼ ＼_)
　　　 　 　 　　 　 / // / /　　　　　　 　 . .　＼_＼_)､_）
　　　　　　 　　 　 ｰ' {_/ノ　　　　　　　　　 　 　　."´


.

　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　 ／　　　　 　 　　＼　　　　　　　　　　　いや、あんまり話題が逸れるのも……。
　　　　　／ 　　　　　　　　　　＼
　　　　　|　 　　　＼　　 ,＿　　 |
　　　　　/　　ｕ　 ∩ノ ⊃―）／
　　　　　(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　　　　.＼　“　　／＿＿|　 |
　　　　　　　＼ ／＿＿＿ ／







　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　（●）（● ）　　　|　　　　　　　　　　　　俺もちゃんと自制するようにしてるだろ。
　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|　　　　　　　　　　　　 ケニングの詳細は後で触れる事になると思うから、答えはその時にな。
　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　 　 　 /　　　　　 |


.

　　 　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　／　ノ　 ヽ、.＼
　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　　　「スノリのエッダ」についてはこのくらいか。
　　 　 　 　 　 　 /￣￣￣ 丶人__）.　 |
　　　　　　　　　/　　　　　　　　＼ .＿|＿＿＿__
　　　　　　 , --'､ 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　 　 ｀〉
　 　 　 　 /　⌒ ）　　　　　　　　/　　　　　　　　 /
　　 　 　 ,′　　ﾉ　　　 　 　 　 /　　 　 　 　 　 /
　　 　 　 l　　T´ ..＿　　　　　./　　　　　　　r'´￣ヽ
　　　　 　ヽ ノ　　 .／丶､　　/　　　　　　　（ ￣　　l
　　　 　　 　 ｀'ー'´　　 | .｀'ｰ'――┬― --､/ 　 _.ﾉ






　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　 ／　　─　 　 ─＼　　　　　　　　　　　　あ、「詩語法」にしか無い神話ってどんなのがあるんだお？
　　　　　　／ 　　 （●） 　（●） ＼
　　　　　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |　　　　　　　　　　 ちょっと気になるお。
　　　　　　./　　　　 ∩ノ ⊃　　／
　　　　　　(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　　　　　.＼　“　　／＿＿|　 |
　　　　　　　　＼ ／＿＿＿ ／


.

　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /7
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 //　　　 　 　 　 　 ・神々が小人の道具（グングニル等）を得た話
　　　　　　　　　　　　　　 　 //　　　　　　　　 　 ・イズン誘拐の話
　　　　　　 　 　 ＿＿　 　 // 　 　 　 　 　 　 　 ・トールと巨人フルングニルの決闘
　　　　.　　　 ／ノ　ヽ＼ .//　　　　　　　　 　 　 ・トールが巨人ゲイルロドの元を訪れる話
　　　　. 　 ／　（●）（●〉/　　　　　　　　　　　　・詩の蜜酒の話
　　　　　　l　 　 （__人_,//l
　　　　.　　|　　 　｀⌒// ﾉ
　　　　　　 l 　 　 　 // ./
　　　　.　　 ヽ r-‐''7/）/
　　　　　 　　/　と'_{'´ヽ
　　　　　 　 /　 _.､__〉　ﾄ,　　　　　　　えーっと、このくらいかな。
　　　　　 　 {　 ､＿_}　 |.i
　　　　　 　 ヽ　_,.ﾌ　　.|.|






　　　　　　　　　 .．- ―――‐ - .､
　　　　 　 　 .／: : : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　／: : : : : : : /: : : : ､: : : : : : ＼
　　　　　 ': : : : :./: : : :i: : : : : :i: :ヽ: : : : : ヽ
　　　 　 i: : : : : ｉ: : : : ｲ: : : : : ﾄ: : : i: : : : : ﾊ
　　　 　 |: : :i: : l: ￣/ |: : : : ﾊ:iヽー!: : ｉ: : l i　　　　　　　　　　　どれも北欧神話関係の本なら必ず載っていると言える、知名度の高い話。
　　　 　 |: : :l: : l: : /==ｫ: : / ｊ/==ｫi!: :.': : :ﾄ:ヽ
　　　 　 |: : :l: : l: :ﾊｆ:t::|ヽ:{ 　 f:t::| l: /: : :.| ｀　　　　　　　　　　 やらない夫が重要と言うのも頷ける。
　　　　　i: : fヽ: Vｉ. ヒﾝ　　　　ヒﾝ j/: : :i: |
　　　　　Ｙ＾ゝ.i: : :!　　　　　′　　/|: : /l/
　　　　　 　 ＼ヾ:.!､　　　 △ 　 _ ｨ: :./
　　　　　　　　 ヾ:{/У｀j￣iヾ丁ﾉ l1/
　　　　　　　　　 ／ 　 ｷ⌒}　｀ヽ
　　　　　　　　 ./＼ヽ　 ヾ¨!　/∧
　　　　　 　 　 ':::::::::＼ヽ ヽ| //:::ﾊ
　　　　　　　　i::::::::l::::::ｉヾ､ｊljイ:::::i:::i


.

　　　　..　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　―　　-＼　　　　　　　　　　　　　確かに、神様が武器を手に入れた話とか、
　　　　.　　.　／　 （●） 　（●）　　　　　　　　　　　　 トールと巨人の戦いは重要そうだお。
　　　　　　／　　　　 （__人__）　＼
　　　　　　|　　　　 　　｀ ⌒´　　　|　　　　　　　　　　 スノリはすごい本を書いたんだおね。
　　　　.　　＼　　　　　 　　　　 ／
　　　　.　　　ノ　　　　　　　　　＼
　　　　　／´　 　　　　　　　　　　ヽ







　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼　　　　　　　　　　そうだな、今の俺たちが北欧神話に触れることが出来るのも、
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　スノリの「エッダ」があるおかげだな。
　　　　　 r;r‐r/　| 　 |　　（__人__）　 |
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ　　　　　　　　　　当時のアイスランドでも、エッダは多くの人に親しまれていたようだ。
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ







　　　　　　　　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　　　　　 　 　_ノ　　ヽ、　　＼　　　　　　　　　　　　　さて、次は「古エッダ」についてだ。
　　　　　　　　　　　　（ ●）（ ●）　　　|
　　　　　　　　　　　　（__人__） 　　　　 | ..／}　　　　　　　　　　エッダと名づけられてはいるが、「スノリのエッダ」とは何の関係も無い。
　　　　　 _　 　　　 　ヽ｀⌒ ´　　　　　| /　/ 　　　__
　　 (＾ヽ{　ヽ　　　　　 {　　　　　　　　./　/　 .　／ .ﾉ
　(￣ ヽ ヽ　i　　　　　　ヽ　　　　　　/　厶-　´ ／
.(二 ヽ　i　i　|,r‐i　　　　ﾉ.　　　ヽ /　　　　 ／
　　ヽ　　 ／　 ノ　　／　　 　r一'´　ー ､　　￣￣￣）
　　 i 　 {　　 ｲ―イ　/　 　.`ー―.　､＿_　.〈￣￣
　　　ヽ.　`ｰ '/　　　/　　　　　　　　　 　/＼ ＼
　　　　　 `ー ' ￣￣!　 　　　　　　　　　|　　ヽノ


.

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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　1643年、アイスランド南部のスカルホルトの納屋から、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　古ぼけた羊皮紙の写本が発見された。


　　　　　　　　　 _,,,,;;;;;;iillllll||||||||llllii;;,,,,,
　　　　　　　 -`'!|||||||||||||||ll!'''' ''''''!!||li!,
　　　　　　　　'''ﾆ!i|||||l!!!|||!　--､ 　　|
　　　　　　　　　-=l|||'つ '' 　 r.u`'　〈
　　　　　　　　　　　'||l,,ﾐ',　　　　　､ ｧ'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この詩は……「エッダ」で引用されていたものだ。
　　　　　　　　　　　 '|''’ヽ　 　 -‐-/　　　　　　　　　　 /　 ､_
　　　　　　　　　　　ノ､_　 `　､_. 　/　 　 　 　　 　 　　/　　　 ` - ､＿_,　 -　　　　もしかして、スノリはこれを参考にしたのではないだろうか？
　　　　　　　　__, -;;〈　 ` -､__　l´　　 　　　　　　　　 /　　　　　　　　　 /´
　　_,,,;=;;;;;;;;;;;;';;;;;l;;;;;;;;:ヽ　　　 ｱ,,ｹ､_　　　　i~ l､　　 ﾉ　　　　　　　　　 /
.／;;;;;;;;;;;;:::`::､::::::|､_:::::_,入､_ /:::::|l,:::l::､_　 ,-|;　|）　/　　　　　　　　　ノ
l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::l;;;;:::::::＞:::::::ヽ`Y〉:::l`l;;_;〉;,ノ`ﾉ､. | l /　　　　　　　,　／
.|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::､::::::::`::､_::::::::::､_ |::::V;:o/　, '　;ノ,//　　　 ,-､__　/ /
.`;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::ヽ:::::::::::`:､::::::＼|::::::l_/_　　　　''/　　　　 -=_, `ｙ'
　'';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::i;;:::::::::::::::`､:::::>´;;;;;`:ヾ､､_,ｨ ｲ` -- ､__,-'ﾌ'ヽ 丶
　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::`_､;;;;;::_,::-':;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;Y､:l::::i　　　 ﾉ-;　`､　,-'
　　　`､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_,;;-:::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::|::;l;;;;::|　　,ｒo(ﾆ -､,_)
　　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::,::-''´::/;;;::::､/l'（　 `　 ノ
　　 　 　 ﾄ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::,;;-';;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;_,/;;;､=-- 'l'ﾉ

　　　　　　　　【司教　ブリュヌヨルフ】






　　　　　　　　　　､--ﾆニ二´￣ヽ`ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きっとセームンドが書いたものに違いない。
　　　　　　　　　ヽﾆﾆ二二ﾆﾆ(-､,､,ノ,`7
　　　 　　　　　　　Z-―--,-/`. -､ 　`Y)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _, -‐-- ､　___　　　　　この写本を「セームンドのエッダ」としよう！
　　　　　　　　　　　`ヽ-l ﾐﾉ`'.　 i'Tj`' ,ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, -'´　、 ____ ､_　 `　 ‐､
　　　　　　　　　　　　 lﾐ!'`i　　　　　 . ヽ　　　　　　　　　　　　　　　 _ ／ﾌ´　　　'-､ﾐli`´`､''　'―'’
　　　　　　　　　　　　.l'　　 ､. 　,ｨ'ﾆｱ/´　　　　　　　　　　　　 　 , -　 l i ､　　　　　　ヽ__..ノ
　　　　　　　　　　　 ﾉ　　 　 ヽ､!=-'/_,　-ﾃ-　､_　　 __.......　 'ﾌ／　　　､＼`＞ﾆ二=､_イ...ﾉ
　　　　　　　　　 _,ノl_〉,....　-‐ﾌ´.`/'´　 /　　　　`'''´　　　　　　　 　　　 ゝﾐ_-ｼ//
　　　　　　_,　-'´//l' `'l　 .／　　.l　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`''-ﾆ/
　　　　 ./ /　 /_,-l 〉_ﾉ| /-､_, - '　　 l　　　　　　　　　　　　　　　　　 _, - ' ´￣
　　 　 / /　　ﾌ' l'./ .l .ｙ　　 ｡`､　　　|　　　　　　　　　　　　　　__, - '´
　　　/　.l　 .〈.　 |'　 l/　　　／　　　　l　　　　　　　　 __,　--'　´
　　.ﾉ　 l'　　 l　 |　/　　_,／,----､　　ヽ　　　　 , - '´
　 /　　 |　　　| .|./　_／　　　　　　　　　ゝ_　_／
　　　　　　　　　　.／　　　　　　　　　　　　 7'


.

　　　　　 　 　　 　 　　 　 _____
　　　　 　 　 　 ,. ‐''三ヾ´彡ｼ,=｀丶、
　　　　　　　／'".:=≡ミ_≧_尨彡三:ヽ、　　　　　　　　　　　　　セームンドはアイスランドで初めて歴史書を書いた人物である。
　　　　　　/／.:;:彡:f'"´‐------ ｀`'ｒ=:l
　　　　 　/〃彡_彡′,.=､￣￣ ,.=､　|ミ:〉　　　　　　　　　　　　 彼が記したノルウェー・アイスランドの歴史書は失われたが、
　　　　　'ｙ=､､:ｆ´===tr＝=､.___,. ==､._ゞ{　　　　　　　　　　　　　後の歴史家たちに大きな影響と与えたとされる。
　　　　　{´yﾍl'′　　 |　　 /⌒l′　 |｀Ｙ}
　　　　　ﾞ､ゝ) 　 　 　 `''''ﾂ_　 _;`ｰ‐'ﾞ:::::ｌ{　　　　　　　　　　　　　彼はオッディに塾を開き、スノリもここで学問を学んだ。
　　.　　 　ヽ.__　　　　　,ｨnmmm､　　 .:::|!
　　　　,.ィ'´ﾄ.´　　　　　´｀"｀"｀ﾞ″　.::::;'
　　イ´::ﾉ|::::l ＼ 　　 　 　　　"'　　　:::/
　　::::::::::::|:::::l 　 ヽ、　　 　　　..::　 .:::/.､
　　:::::: ::: |:::::ヽ 　　 ヽ、.......::::／..:::／!＼＼　　　　　　　なぁんか勘違いしとりゃせんか？
　　::::::::::: |::::::::ヽ　　　 ｀`''‐--ｧt''′ |!:::ヽ:::＼
　　:::::::::::::|::::::::::::ヽ、 　 　 　 /i|iﾄ､　 |l:::::::ヽ:::::＼
　　:::::::::::::|::::::::::::::/:ヽ、　 　∧|i|i|i|〉. ||::::::::::ヽ:::::::＼
　　
　　　【セームンド・シグフスソン（1056～1133）】






　　　　　　　　　　　　 -,,_----------:､__
　　　　　　　　　　　 -=;;-`----　　　ヽヽ `-‐i　　　　　　　　　　　　その後の調査により、写本の作者がセームンドであるという説は
　　　　　　　　　　　　 -;=---　　 _r'-''‐`‐､,. .!、　　　　　　　　　　　否定されている。
　　　　　　　　　　　　　 `-:､.r‐､､!. -､,,,_　　.|'"
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i ! ri　 　 (.･)`' ir'　　　　　　　　　　　　　作者も成立年代も異なる詩の集まりで、古いものは800年代、
　　　　　　　　　　　　　　　|-`'i　　　　　_ _!　 ヽ‐z　　　　　　　　　　新しいものは1300年頃に成立したもののようだ。
　　　　　　　　　　　　　　ノ､　 ヽ　 (二ﾆ'r'　 　 ', Z
　　　　　,..--､------r''"i　`'-､_　-､,,_,,/　　　　i ＞
　　　　 ,'　　　`:､　　 |　　':,　　　`‐r:,!､_　 　 　 ,'r`
　　　　,'　　　　　',　　|　　 ヽ､_　　,'　`i',':,ー-､-､　　　　マジで！？
　　　 ,'　　　　　　i　　`''ﾆ-" `:､-:'`:i-,'ヽ,ヽ　 ヽ `､
　　　i　　 　 　 　 l.　　 `:､　　　＼　|　', |`:､.　　',　',
　　 ,'　　　　　　 ,'　　　　 `:.､　　 ヽ.|　 ',| ﾟ./　　 i　.i
　　,'　　　　　　 ,'　　　　　　　`:.､　 `:､　i. ,'　　　.|　.|
　 ,'　　　　　　 ,'　　　　　　　　　 `-､ ヽ,!.,' ―--.|　 |
　,'　　　　　　 ,'　　　　　　　　　　　　`､,'/　　　　i　 |
./　　　　　　 ,i　　　　　　　　　　　　　i"　　　　　i　 .|


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.

　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　　　　　　　　「古エッダ」というのは「スノリのエッダ」と区別するための名前だな。
　　　　　　|　　　 （ ●）（●
　　　　　　|　　　 　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　編纂自体は1270年頃で、「スノリのエッダ」に刺激された者が
　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　 複数の詩をまとめたんじゃないかと考えられている。
　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ
　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |
　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /







　　　　　　　　　＿＿＿
　　 　　　／）／ノ '　ヽ､＼
　　 　 ／ .ｲ '（●） 　.（●）＼　　　　　　　　　　　　「エッダ」はスノリの書いた教科書だけど、その後に見つかった本も「エッダ」……
　 . 　/,'才.ﾐ).　 （__人__）　　　＼　　　　　　　　　　　何かややこしいお。
　 . 　|　≧ｼ'　　 ´ ⌒｀　　　　　|
　　.　＼　ヽ 　　　　　　　　　 ／


.

　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　（●）（● ）　　　|　　　　　　　　　　　今では「エッダ」というと、北欧神話や英雄伝説（人間がメインの物語）といった
　　　　　　　（__人__）　　　　 |　　　　　　　　　　　伝承をまとめた詩を指すみたいだな。
　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　 わりと大雑把な分類だし、そんなに気にしなくてもいい。
　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　 　 　 /　　　　　 |







　　　　 　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　 ／_ノ 　 ヽ_＼　　　　　　　　　　　　　そうするお。「古エッダ」のほうにも、有名な神話はあるのかお？
　　　　 　 ／（ ●）　（ ●）＼
　　　　 ／ ::::::⌒（__人__）⌒::::＼
　　　　 |　　　　　　 ￣　　　　　 |
　　　　 ＼ 　 　 　 　　 　　 　 ／


.

　　　　　　　　　　　　　　　　_,..:.:-:.:―:-:....､
　　　　　　　 　 　 　 　,.r:':.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::｀丶､
　　　　　　　　　　　 ／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ、
　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:.:/:.:.:.:,r:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ト:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　/:.:.:.:.!:.:.:./:.:/:.:.:.:. /:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:!:.ヽ:.ヽ:.:.;ヽ　　　　　　　　　　　 第一に「巫女の予言（ヴォルスパ）」が挙げられるだろう。
　　　　　　　　　 /:.:.:.:.:l:.:.:/:./l:.:／/:,:イ:.:/l:.:.:.:ハ:.jl:.:.:i:.:l:.､ヽ
　　　　 　 　 　 /:.:.:.:.:.:l:.:.:l:/:.ﾚ＿/'´/シ　!:.ﾂ′.V ';.:.l.:.!:.:l:.:',　　　　　　　　　　 一人の巫女が、世界の誕生から現在までと、未来……
　　　　　　　　/:.ィ:.:.:.:.:i:.:.:':.:.:.:!＿_｀｀`￢ ' ´　 ,　--l:.､/:/:l:.:l　 　 　 　 　 　 　 即ちラグナロクとその後の再生についてを語る。
　　　　　　　　´　l;';.:.:.:.',:.:.:.:.<7:::::::｀ヽ　　　　　＿　レ/:':ノ!/
　　　 　 　 　 　 　 ';l:.:f ';.:.:.:.:.l::::::::r'′　　　 r'::::::lヽ// '´/'　　　　　　　　　　　 おそらく最も有名で、壮大な長編詩。
　　　　　　　　　　　 Vヽ ',:.:.:.:lー- '　　　　　l::::::ﾒ /:;'!
　　　　　　　　　　　　 ヾl､',:.:.:.!　　　　　　　 ｀ ´ /::/
　　　　　　　　　　　　　　 ';ﾊ:.:ト,、　 　-　 　　ノ;.:.;'
　　　　　　　　　　　　　　　　>:〈/丶､ _　-v' ´V l:,'
　　　　　　　　　　　　　　 ／　ヾ、　 _ヽヽ､　　　l;'
　　　　　　　　　　　　　イヽ　　　ヽ'´　｀',　 ｀l:ヽ、
　　　　　　　　　　　　 l:.:.ヽ＼　　 _ヽ＿__',　 リr ´_二ュ _
　　　　　　　　　　　　,':.:.:.:.:ヽ .Y´,........---..ﾐ二y::´::::::::::::::;'
　 　 　 　 　 　 　 　 ,':.:.:.:.:.:.:.〉Y::::::::::::::::::::::;':::::::;'::::::::::::r ､'
　 　 　 　 　 　 　　 /:.:.:.:.:.:.:.l:.;'-､::::::::::::::::::;'::::::;':::::::::::::/　 7
　　　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:／Y　〈::::::::::::::::::;'::::::;'::::::::::::ヽ.._ノ!






　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　 （ ●）（●　　　　　　　　　　　　　　　　他にはオーディンの箴言とか、スリュムの歌とかかな。
　　　　　　|　　　 　 （__人__）
　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　「古エッダ」のほうは、神話を知ってること前提の内容だから、
　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃　　　　　　　　　　　　　　　 ある程度知識が無いとわかりにくいかもしれない。
　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ
　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |　　　　　　　　　　※スリュムの歌……トールが女装するアレ
　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /


.

　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　 ／ _ノ　 ヽ､_ ＼
　　　　.　|　（ ●）（● ）　|　　　　　　　　　　　　　古エッダにはケニングが多く使われている。
　　　　.　|　　（__人__） 　│
　　　　　 | 　　｀⌒ ´　 　|　　　　　　　　　　　　　「巫女の予言」から一つ例を出してみよう。
　　　　.　 | 　 　 　 　 　 |
　　　　.　 ヽ　　 　　　　/
　　　　　　 ヽ　 　　　 /
　　　　　　　>　 　　 <
　　　　　　　|　　 　　 |
　　　　　 　 |　　　 　 |






　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　ノ　　ヽ /＼'ｰ､　　　　　　　,, ..,､
　　　　|　 （ ●）（ /　　.＼` ､　　 .　／／ /　　　　　　　　「スルトは南から、【枝の破滅】を持って攻め寄せ、
　　　.　|　　（__人/　　 　　＼ヽ､,.／／　../　　　　　　　 　 戦の神々の剣からは、太陽がきらめく」
　　　　 | 　　 ｀ /　　　　　　　｀`７７　 　/
　　　.　 ヽ　　 /　　　　　 　 　 / /　　 /
　　　　　 ヽ.. /　　　　　　ｆヽ、/ / , -,./　　　　　　　　　　 なんとなくわかると思うが、ラグナロクについての一部だ。
　　　　　　/./　　　 　r-､ ヽ　∨,ノ　/
　　　　　　|. ＼　　　〈＼.＼,〉　｀,　 ｆ　　　　　　　　　　 　 ここの「枝の破滅」がケニングだろ。
　　　　 　 |　.　＼　　(ヽ ヽ ｀..　　　|
　　　　 　 |　　 　.＼　＼　　　　 　ﾉ


.

　　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　　 ／─　 　 ─　　＼　　　　　　　　　　　　スルトが持ってくるということは……何となくわかる気がするお。
　　　　　　　／ （●） 　（●）　　　＼
　　　　　　　|　 　 （__人__）　　　　　 |　　　　　　　　　　 炎ってことかお？
　　　　　　　＼　　 ⊂ ヽ∩　　　　 <
　　　　　　　　 |　 |　 '､＿ ＼　／　 )
　　　　　　　　 |　 |＿＿＼　 “　 ／
　　　　　　　　　＼ ＿＿＿＼_／







　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　／ 　 ⌒　　 ＼
　　　　　　　　　　　（ ●）（ ●）　 　 |　　　　　　　　　そう。主に「○○の××」の形……あるものを二つの単語で表す
　　　　　　　　　　　.（__人__）　 　 　 .|　　　　　　　　　比喩技法が「ケニング」だ。
　　　　　　　　　　　　ｌ｀ ⌒´　　　 　 |
　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　これまでに紹介してきた神々の別名も、一種のケニングと言えるな。
　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　＿ |
　　　　　　　　　　　（ヽ、ヽ　　　/ 　）|
　　　　　　　　　　　 |　｀`ー―‐'|　..ヽ|
　　　　　　　　　　　 ゝ　ノ　　 　ヽ　 ノ
　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


.

　　　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　ケニングはエッダだけでなく、サガ……アイスランドで語り継がれた
　　　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　 　 　 　 　 物語でも頻繁に使われている。
　　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　　.ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　 アイスランドの文学作品とは切っても切れない関係にあるな。
　　　　　　　.ヽ 　 L　　　　 　 }
　　　　　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　　　　　／ 　 /　　　　　＼
　　　　　 ／　　 /　　　　　　 　＼
　　　　. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
　　　　人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))






　　　　　　　　　　　　　　　／.:.:.　　　　　　　　 ＼
　　　　　 　 　 　 　 　 　 /:,:.:.:　 ／　　　ヽ　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　 /.:.l:.:.:/:/　　　:/ 　',　:l　　 ヾ`ｰ
　　　　　 　 　 　 　 　 /!:.:.|:.: l/　 〃 /　j　}　:|　 　 ﾊ
　　　　　　　　　　　　/ｲ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ﾑ_/|　l 　ｌ }　　　　　　　　質問。
　　　　　　　　　　　　　N:.ﾊ:.:.:lｨfｱﾄ/　ﾚ　ｨ=ﾄ | /| ∧j
　　　　　　　　　　　　　　ヽﾑ:.} c;_j　　　　c;ﾘ ﾙ iﾚヽ　　　　　　　　　先ほどの一節の「太陽がきらめく」、これは比喩技法？
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 `ﾍ:ゝ　　　 .'　 　 小/
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヾ:{＞､ _　ｨ＜}/|/
　　　　　　　　　　　　　　 _, ｨr'´ヽ｛ __＿`}　ヽ､_
　　　　　　　　　　　　　／| l:|　　　| =＝=|　　 |:lﾞヽ
　　　　　　　　　 　 　 /　 | l:ｌ　　　l 　 　 l　　 l::ｌ　l
　　　　　　 　 　 　 　 l　　ヽﾊ　 　 l　 　 l　　//　 |
　　　　　　　　　　　　ハ　　ヾヽ　　l　　 ｌ　 //　l　l


.

　　　　　　　　／￣￣＼
　　　.　　　.／　　　_ノ　 ヽ
　　　　　　 | 　　　（ ●) (●)　　　　　　　　　　　　　　　　　お、長門鋭いな。それもよくある比喩技法のひとつで、
　　　　　　 | 　 　 　（__人__） 　∫　　　　　　　　　　　　　　 確か「ヘイティ」と言ったかな。
　　　　　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　∬
　　　.　　　ヽ　　 　 　 　　} |￣|　　　　　　　　　　　　　　　 一つの言葉で言い換える……たとえばフェンリルを「狼」というようにだ。
　　　　　　　　ヽ　　　　 ノ　|＿|）
　　　＿＿__／　　　　　 ｲー┘ |　　　　　　　　　　　　　　　ここでいう「太陽」は「光」のこと、剣が光を反射している様子を表しているんだな。
　　　| |　　/　　/　　　 　_＿＿/
　　　| |　 /　　/　 　 　　|
　　　| |　（　　　￣￣￣⌒ヽ
　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|







　　　　　 　 　　　＿＿＿_
　　　　　 　　　／_ノ 　 ヽ_＼
　　　　　　　／（　●）（　●）＼　　　　　　　　　　　　　　　へえ～……それにしても、えらく回りくどい言い方をするんだおね。
　　　　　 ／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼
　　　　　 |　　　　　（　 （　　　　　 |
　　　　　 ＼　　　　 `ー'　 　 　 ／


.

　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　（●）（● ）　　　|　　　　　　　　　　　　詩人たちが色々な技巧を模索した結果だろうな。
　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|　　　　　　　　　　　　 まあ、神話を知るだけなら、あまり気にしなくていい。
　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　 　 　 /　　　　　 |







　　　　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　 　 　 　 ／　　_ノ　 　＼
　　　　　　　　｜　　（ ●）（ ●）　　　　　　　　　　　　　　ケニングの解説はこのくらいにして、次は補助的な資料についてだな。
　　　　 　 　 　 | 　 　 　（__人__）
　　　　 　 　 　｜　　　 　｀⌒ ´ｌ　　　　　　　　　　　　　　 「ユングリンガ・サガ」は、「ユングリング家のサガ」とも呼ばれる。
　　　　　　　　 ｜ 　 　　　 　　}
　　　　　　　　　ヽ 　　　　 　　}　　　　　　　　　　　　　　　スノリがノルウェー王侯について記したサガ集「ヘイムスクリングラ」の
　　　　　　　　　　ゝ　　　　　丿　　　　　　　　　　　　　　　序章部分にあたるサガだ。
　　　　 __＿＿（￣￣　　　 /￣￣/´￣/＿
　　　i⌒ゝ、　　ヽ　ヽ.　 　/ 　 　/　 ⊂) 　i⌒ゝ、
　　　i;;;;;;;;;;|＿＿　Ｌ人　　￣￣｀´￣ ノ_＿i;;;;;;;;;;|


.

　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　　　　　　　　　　　「ヘイムスクリングラ」自体はノルウェーの歴史書と言えるな。
　　　　　　 　!　　（__人__）　 |
　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |　　　　　　　　　　　　　一代毎に一つのサガにまとめられていて、十六人の王達について語られている。
　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　 　　|　|／|　　　　 |　|







　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　 　／　　─　 　 ─＼　　　　　　　　　　　スノリって色々書いてるんだおね……歴史書ということは、
　　　　　　／　 　 （●） 　（●） ＼　　　　　　　　　　「デンマーク人の事績」と同じようなものかお？
　　　　　　|　　　　　（__人__）　　　|
　　　 　　 ＼　　 　　｀ ⌒´　　 ,／
　　　　　　ノ　　　　　　ー‐　　　＼


.

　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　ノ　　＼ ＼　　　　　　　　　　　　　　　　んー、そうかもな。
　　　　|　 （●）（●）　|
　　　.　|　　（__人__）　 |　　　　　　　　　　　　　　　　こっちではアース神族はノルウェー王朝の先祖とされているから、
　　　　 |　　 ｀ ⌒´　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　 　 「デンマーク人の事績」と比べると扱いはいい方だな。
　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼






　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　 （ ●）（●　　　　　　　　　　　　　どちらかというと歴史資料の面が強いが、「ユングリンガ・サガ」には
　　　　　　|　　　 　 （__人__）　　　　　　　　　　　　 二つのエッダには無い話もいくつかある。
　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ
　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃　　　　　　　　　　　　 メインとまではいかないが、北欧神話についての伝承を補完する
　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ　　　　　　　　　　　　　 資料の一つによく挙げられるんだ。
　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |
　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /


.

　　　　　　　　　　,,　r一--　､ ,,
　　　　　　　 ／´　　　　　　　　 ｀`ヽ､
　　　　　　/'　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　,;'　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
.　　　　ﾉ　,　　i　　　 　 / 　　　,,　　 /　|ヽ ﾞヽ
　　　　ｲ　i　　|　　　i　,'`メ ／/　　/i　 .ﾄ ヽ　ヽ
　　　　ﾚ| {　　 i　　　|/／'´ `ﾒ　／ /　/|　 }　ﾄ 1
　　　　　',ｲ　　 i 　　r+ﾃ=ﾐメイ 　 /／'"|´/ / ﾊ|　　　　　　　　　　例えば、どのような話？
　　　　　 `､ヽ r'ﾒ,　　{｡;;;;'ｿ `　　 ' ,rz;,y'ノi〃ｲ .'
　　　　　　 ｀ﾊヾ ﾍ 　 i'ｰ''-　　　 /｡ｼﾟｸ　/'"
　　　　　　　 　ﾚ',`'';　 i 　　　　,　`'' /　/
　　　　　　　 　 ' i∧ﾄ　i, 　　- 　　,ｲ{ ./
.　　　　　　　　 　,y}`ヽ |ゝ, _, r '´ ﾘ |/
　　　　　　　　 ,ノ.:.:.ヽ `', {;;ヽ､.　　　|i
　　　　　　　,;<､.:.:.:.:.:.:.`ｖ'" ^,ヽﾐ､,
.　　　　　 /,ニヾ`ヽ.:.:.:.:.:.`彡=ヾ}:||i､
..　　　　 //　　` `＼＼.:.:.:.ﾍ　　i|:||i丶
　　　　 ,' f　　　　 ヽ ＼＼:.:.:i 　i|.||i　',
　　　　ｲ i　　　　　　/'　＼ヽ.:i_,,_|:ii　.{　
.　　　 ,'　ﾍ　　　　　 ､　　 ﾊヾ',|ｿ,'/i　ヽ






　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　 /　ヽ､_　　　＼
　　　　　　　　. （　（● ）　　　　|　　　　　　　　　　　　オーディンの兄弟ヴィリ、ヴェーが一時期王になった話とか、
　　　　　　　　. （人__）　　　　　 |　　　　　　　　　　　　後はヘーニルとミーミルについて……ミーミルがヴァン神族に
　　　　　　　　r-ヽ　　　　　 　　 |　 　 　 　 　 　 　 　 首を刎ねられた経緯なんかがそれだ。
　　　　　　　 （三） |　　　 　　　 |
　　　　　　　　>　ノ　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　 エッダだとこういう細かい部分は端折られてるんだよな。
　　　　　　　/ 　/ ヽ　　　　 /
　　　　　　/ 　/　へ>　　　 <
　　　　　　|＿__ヽ　　＼／　 )
　　　　　　　　　　|＼　　　／|
　　　　　　　　　　|　 ＼_／　|


.

　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　／　ノ　　＼ ＼
　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　　　　　原典についてはここまでだ。
　　　　.　|　　（__人__）　 |
　　　　　 |　　 ｀ ⌒´　　ﾉ　　　　　　　　　　　　 　 ちょっと回り道になったが、やる夫の疑問への解答に移ろう。
　　　　.　 |　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　なぜ矛盾した記述があるのか、だったな。
　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼






　　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　 　／　─　 　 ─　＼　　　　　　　　　　　そういえばそんなことも言いましたね。
　　　　　／ 　 （●） 　（●）　 ＼
　　　　　|　 　 　 （__人__）　 　　 |　　　　　　　　　 どんな理由があるのかお？
　　　　　 ＼　 　　｀ ⌒´ 　　 ,／
　　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|


.

　　 　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　／　ノ　 ヽ、.＼
　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　　　　複数の要因があるから、一つずつ説明していこう。
　　 　 　 　 　 　 /￣￣￣ 丶人__）.　 |
　　　　　　　　　/　　　　　　　　＼ .＿|＿＿＿__　　　　　　 　 まずは記述の矛盾だな。
　　　　　　 , --'､ 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　 　 ｀〉
　 　 　 　 /　⌒ ）　　　　　　　　/　　　　　　　　 /
　　 　 　 ,′　　ﾉ　　　 　 　 　 /　　 　 　 　 　 /
　　 　 　 l　　T´ ..＿　　　　　./　　　　　　　r'´￣ヽ
　　　　 　ヽ ノ　　 .／丶､　　/　　　　　　　（ ￣　　l
　　　 　　 　 ｀'ー'´　　 | .｀'ｰ'――┬― --､/ 　 _.ﾉ







　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　 rヽ　　／　ノ　　＼ ＼　　　　　　　　　　　　　人間を創造した神の名が二通りあることは、以前にも言ったな。
　　　　　　　　 i　!　　|　 （●）（●）　|
　　　　　 r;r‐r/　| 　 |　　（__人__）　 |　　　　　　　　　　　　　「スノリのエッダ」では「ボルの息子たち」、つまりオーディンとその兄弟、
　 　 　 〈_L (｀ヽ .}　　|　　 ｀ ⌒´　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　「古エッダ」ではオーディン、ヘーニル、ローズルとなっているんだ。
　　　　　l｀ （ ｀`/　.　 |　　　　　　　 }
　　　　　ヽ 　　l　　.　 ヽ　　　　　 　}
　　　　　　|,. 　 l　　 /⌒　 　ー‐　　ｨ ヽ


.

　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　 ／─　 　 ─　　＼　　　　　　　　　　　　　二つのエッダは作者が違うから、矛盾はあるかもしれないおね。
　　　　／ （●） 　（●）　　　＼
　　　　|　 　 （__人__）　　　　　 |　　　ﾌﾑﾌﾑ
　　　　＼　　 ⊂ ヽ∩　　　　 <
　　　　　 |　 |　 '､＿ ＼　／　 )
　　　　　 |　 |＿＿＼　 “　 ／
　　　　　　＼ ＿＿＿＼_／







　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　|　　　 （ ー）（ー）　　　　　　　　　　　　　　 時代も違うからな……更に「スノリのエッダ」だけでも矛盾した記述があったりする。
　　　.　|　　　　 （__人__）
　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　.　 |　　　　　　　ｎｌ^l^l
　　　.　 ヽ　　　　　 |　　 ﾉ
　　　　　 ヽ　　　　ヽ　く
　　　　　　/　　　　　ヽ　＼


.

　　 /　　　 /'　/　　　　　/　,:'くヽ／　＼　,、 ﾍ　 ／i
　,:'　/　　　,:　'　/　'　/　/　,:'／　 ／＼丶＼ゞ」 ﾉ 丿
'　 ,:　　　/'　　 ／￣￣　;;＼＼へ＼ 　|｜　　　|／
'　/　,:'/,:　　／（〇） 　（●）;＼　 Y´　|ノ
/,:　　　　 ／　（__人__） :::::::;;;;;;;;;＼　　,:'/,:　　　/'
/　,:'/,　　|;;;; ::::｀ ⌒´:::::;;;;;;∪;;;;;;;;;;| '　/　/　,:'/,:　　　　　　　まじで！？
　/　　　　＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,／'　/
/　　/'　　／　　∪　:::::::::;;;;;;;;;;;;;＼'/　　/'
/　,:'/,:　｜::Ｙ　　　　::::∪;;;;;;;|;;;;;｜/　,:'/,:
　　　　　｜｜∪　:::::::;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;｜





　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 __,
　　　　　　　　　　　　　　　　　 __,..-:‐::───:‐-.､__,ノ:;/
　　　　　　　　　　　　　　　,.イ´:;: : : : : : : : : : : : : : : : :＜、
　　　　　　　　　　　　　 ／: : :.:/: : : /: : : : : : : : :|:: : : : : :｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　／: : : :.:/: : :.:/: : :/: : : : : : |:.: : : :ﾊ: : : :＼
　　　　　　　 　 　 ／: : : : : :/: ::､:/:: : ;ｲ:: : : : : : :|: :|: : : :|: : : :､::＼
　　　　　　　　　,ノ: : : : ::|: :.:|: : : :|＼:/ |:: : : : : : :|: :|: :.;_:.:|: : : :ﾍ￣`　　　　　　　　　まじで！？
　　　　 　 　 　 ￣|: : : : |: : :|: : :/|:.:/`ｰ|: :.;: : : : :ｊ斗:'´:.: :|: : : : ﾊ
　 　 　 　 　 　 　 |: : : :.:|: : :{: :;ﾏﾁ弐ﾔ ∨|: : : :/_∨ﾍ::.: :|:: : : : : }
　　　　　　　　　　|: : ::l'´|: : :∨ V::tｨ::}　　 ∨::/ﾃ弐ｱ∨::l:: : : : : :|
　　　　　　　　 　 |/|: ::ゝ|:: : : :|　ゞ-" 　 　 ∨ん':;ﾘ,' /∨､: :/＼:|
　　　　　　　　　　　∨|: :V::. : :|　　　　　　　｀　`ｰ " {::: : :∨　　 `
　　　　　　　　　　　　 ∨:.:＼::.:|　 　 　 /´￣|　 　 　 }::: : :|
　　　　　　　　　　 　 　 ｀ヽ:/ヽ:|、　　 /＿__,ｊ　　　 ,人::.: :|
　　　　　　　　　　　　　　　／ ,r=＝=-.､-r-､-‐＜_　　＼:|
　　　　　　　　　　　　　 ／　/:::::::::::::::::::｀ヽﾆﾆ7 //::ヽ､_＿
　　　　　　　　　　　　　 ＼,/::::::ゝ､::::::::::::::::＼///:::::::::´:::::::;}ﾌ
　　　　　　　　 　　 　 ＿,ノ::::::::::ノ:｀ヽ::::::::::::::::＼::::::::;/_:;／
　　　　　 　 　 　 　 <´:::::::::::::／:::::::／ ＼::::::::::／`ｰ=っ
　　　　　　 　 　 　 ,ノ＼::::::::::::::::／｀ヽ､_V`ｰﾍ､_,っゝ'´





　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　　　　　　　（何故オーバーリアクション…？）
　　　　　　|　　　 （ ●）（●　　　　　　　　　　　　　　オーディンの持つ腕輪ドラウプニルについてだ。
　　　　　　|　　　 　 （__人__）
　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　　　　　　　「詩語法」では九夜ごとに八つの分身を生み出す腕輪として小人が作った。
　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ　　　　　　　　　　　　　　 一方、「ギュルヴィたぶらかし」だとバルドルの火葬の際、火葬薪の上に
　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │　　　　　　　　　　　　　 腕輪を置いた後に、この能力が備わったと語られている。
　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |
　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /


.

　　　　　 　　　／￣￣￣＼
　　　　　　　／　＿,　、＿　＼　　　　　　　　　　スノリは案外おまぬけさんだったのかお？
　　　　　 ／　 （●） 　（●）　 ＼
　　　　　 |　　　　（__人__）　　　　|
　　　　 　＼　　　 ｀ ⌒´　　　 ／







　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／ _ノ　 .ヽ、＼
　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　　いや、そうとは限らないぞ。
　.　　　　　　|　　（__人__）　.|
　　　　　　　 |　 .　'´ｎ｀'　 .ﾉ　　　　　　　　　　　スノリではない別の誰かが書き足した可能性もある。
　　　　　　　 .ヽ　. 　| |　　}
　　　　　　　　 ヽ..　ﾉ .ュノ
　　　　　　　　　/　{ ..ﾆj､
　　　　　　　　　|.　| "ﾂ　＼
　　　　　　　　　|.　| .l　　|ヽ、二⌒)


.

　　　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　　　　＼
　　　　　　　 ／ _ノ　　ヽ__　　.＼　　　　　　　　　た、他人が書いた本にそんなことしちゃうのかお！？
　　　　　　／　（○）!i!i（○）　　　＼
　　　　　　|　　　（__人__） 　u　　　 |
　　　　　　.＼　　　）t-ﾂ　　　　　／
　　　　　　　/　　　⌒´　　　　　　＼
　　　　　　　＼＿（__）　　　　　　i＼(__)
　　　　　　　　|　　　　　　　　　　|






　　　　 　 　 　 　 　 _.　-－-　._
.　　　　　　　　 ,..イ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´￣｀丶､
　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.　　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ﾍ
　　∠:ィ:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.',:.:.:.:.: ﾊ:.:.:.:.:.:＼
　　　 /:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:. ﾊ:.:.:|:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:トゝ　　　　　　　　本の複製を手書きで行っていたため……。
.　　　|:.:':.:.:.:.:.:.:.:|:.:∧:.:.:.:.:!､:.:.!.､:._｣ ',...Ｌ:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.Ｎ
.　　　l:.:l:.:.:.:|:.:.:下'ト ヽ:.:.:|　ｘ|'´＼! ',:l:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.|　　　　　　　　　　　人の手で行えば、書き損じや修正等が生じ、原本と異なる記述に
　　　 V||:.:.:.Ｖ:.:.|,ｨ=ミ､＼!　　ｨイ¨'ﾄヽ:.:.:.:.:ハ:.:ﾄｿ　　　　　　　　　　　なることは十分にありうる。
　 　 　 ﾘ､:.:.:.＼|:{ ﾋ,ハ　　　　 ら､j.| |:.:.:.:.,'ノ〉:|′
　 　 　 　 ヽN:.:.:.:| ｰ‐'　　　　　ー-' ,!:.:.:./ｲ/ヾ
　　　　　 　 l∧:.:.ヽ　　　'_　　　　　/:.:.// '′
　　　　 　 　 　 ＼:.|｀　 _,..__　.ィ　./:.:./ｰ､
　　　　　　　　　　｀rｧ ´　/　 l　 ,./:.:/　 ∧
　　　 　 　 　 　 ／′　/三ミ ､//／ 　 　 ヽ
　　　　　　　　 / .′　/　　 ｀y　´　　　　　　ﾍ.
　　　　　　　　,′|　　|　　　/　　　　　.ィ´￣ヽ.〉
　 　 　 　 　 /　 .|　　|　　/　 　 　 ,.'´　　　　｜
　　　　　　 ,.'　　 ｌ　　|　./　　　 ／ 　 　 　 　 |
.　　 　 　 /　　　 '､　 ! /　 　 .ｲ 　 　 　 　 　 ,!


.

　　　　　 　 　　　＿＿＿_
　　　　　 　　　／_ノ 　 ヽ_＼
　　　　　　　／（　●）（　●）＼　　　　　　　　　　　　手書きで？　めんどくさいお。
　　　　　 ／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼
　　　　　 |　　　　　（　 （　　　　　 |
　　　　　 ＼　　　　 `ー'　 　 　 ／







　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　 （ ●）（●）
　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　　印刷技術なんてものは無かった時代だからな。
　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　.ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　　一冊しか無い本をいちいち読み回すほうが面倒だろ。
　　　　　.ヽ 　 L　　　　 　 }
　　　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　　　／ 　 /　　　　　＼
　　　 ／　　 /　　　　　　 　＼
　　. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
　　人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))


.

　　　　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　　　　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|　　　　　　　　　　　「スノリのエッダ」は四つの写本が現存しているが、序文の有無や
　　　　　　　　　 　!　　（__人__）　 |　　　　　　　　　　　微妙な綴りの違いがあるそうだ。
　　　　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/　　　　　　　　　　　 どれが正しい、或いは本来のものに近い記述なのか、結論づけるのは
　　　　　　　 　./　ノゝ　　　　　/　　　　　　　　　　　　 不可能に近いだろうな。
　　　　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　　　　 　　|　|／|　　　　 |　|







　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　 次の要因は「古エッダ」に関わるもの……ケニングだ。
　　　　　　.　|　　　　 （__人__）
　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　 アイスランド文学の特徴とも言うべき技法だが、解釈を困難に
　　　　　　.　 |　　　 　　　　 }　　　　　　　　　　　　　してしまった部分もある。
　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ
　　　　　　　　　.>　　　 <
　　　　　　　　　|　　　　 |
　　　　　　　 　 |　　　　 |


.

　　　　　　　　　　　　　 　 　 /7
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 //　　　　　　　　　　一つ例を出すか、【】で囲んだケニングは、何を指すと思う？
　　　　　　　　　　　　　 　 //
　　　　　 　 　 ＿＿　 　 //
　　　.　　　 ／ノ　ヽ＼ .//　　　　　　　　　　　　「ヘルの道すじにあるものはことごとく恐れおののき、
　　　. 　 ／　（●）（●〉/　　　　　　　　　　　　　　やがて、【スルトの身内】は老樹を飲み込む」
　　　　　l　 　 （__人_,//l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（巫女の予言）
　　　.　　|　　 　｀⌒// ﾉ　
　　　　　 l 　 　 　 // ./
　　　.　　 ヽ r-‐''7/）/
　　　　 　　/　と'_{'´ヽ
　　　　 　 /　 _.､__〉　ﾄ,
　　　　 　 {　 ､＿_}　 |.i
　　　　 　 ヽ　_,.ﾌ　　.|.|





　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ∩＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〈〈〈　ヽ　　　　　　　　簡単だお、スルトはムスペルヘイムの長だお。
　　　　　　　　　　　＿＿＿_　　　〈⊃　　}
　　　　　　　　　 ／⌒　　⌒＼　　 |　　 |　　　　　　　　 ムスペルヘイムは炎に包まれた国で、樹を飲み込むんだから……
　　　　　　　　／（ ●） 　（●）＼　 !　　 !　　　　　　　　「スルトの身内」は炎のケニングで、森なんかが燃えてる様子を
　　　　　　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼|　　 l　　　　　　　　表しているんだお！
　　　　　　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 | 　／
　　　　　　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／／
　　　　　　　/　＿＿　 　　　　　　/
　　　　　　　(＿＿＿）　　　　　　/


.

　　　　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　 　 　 　 ／　　_ノ　 　＼
　　　　　　　　｜　　（ ●）（ ●）　　　　　　　　　　　　　　手元にある本では「スルトの身内」＝フェンリルってあるな。
　　　　 　 　 　 | 　 　 　（__人__）
　　　　 　 　 　｜　　　 　｀⌒ ´ｌ
　　　　　　　　 ｜ 　 　　　 　　}
　　　　　　　　　ヽ 　　　　 　　}
　　　　　　　　　　ゝ　　　　　丿
　　　　 __＿＿（￣￣　　　 /￣￣/´￣/＿
　　　i⌒ゝ、　　ヽ　ヽ.　 　/ 　 　/　 ⊂) 　i⌒ゝ、
　　　i;;;;;;;;;;|＿＿　Ｌ人　　￣￣｀´￣ ノ_＿i;;;;;;;;;;|






　　　 　　　　＿＿＿
　　　 　　 ／_ノ　　ヽ＼
　　　 　／ （○）　（○） ＼　　　　　　　　　　　　　　　何でじゃーい！！！！！！
　　　／ u 　 （__人__）　　　＼
　　　|　　　　　|i!i!i!i!|　　 u　　|
　　　＼　 u　　|;;;;;;;;;|　　　 ／
　　　 ／ 　　　｀⌒´　　　　＼
　　　(<<<)　　　　　　　　（>>>）
　　　 |、　i、　　　　　　　,i　　/
　　　　ヽ＿/　　　　　　　ヽ__/
　　　　 |　　　　　　　　　　|


.

　　　　　　　 　　 ／￣￣＼
　　　　　　　 　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 　|　　　 （ ー）（ー）　　　　　　　　　　　　ケニングで、戦士はよく樹に言い換えられるんだ。
　　　　　　.　 　|　　　　 （__人__）
　　　　　　　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　「戦いの樹」＝戦士というようにな。
　　　　　　　 　.ｌ^l^lｎ　　　 　　}
　　　　　　.　　 ヽ 　 L　　　 　}
　　　　　　　 　　ゝ 　ﾉ　　　ノ
　　　　　　　 　／ 　/　　　 ＼
　　　　　　　 ／　 /　　 　 　　＼
　　　　　　. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　　　　　　　ヽ＿＿ﾉ





　　　　　　 ., ──‐､
　　　　　 ／　　　　　＼
.　　　 　.|　　　　 _ノ　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　ここの「老樹」も比喩だとしたらどうだ？
　　　　　| 　　　 （ ●) (●)
　　　　　| 　 　 　 （__人__） , -―ーっ　　　　　　　　　 飲み込まれる老いた戦士……とくれば、オーディンだろ。
　　　 　　|　　　　 ｀ ⌒´ﾉ （ ゝ彡￣
.　　　　　 ﾝ　　 　 　 　 } ﾞ|￣'|
　　　 ／⌒ヽ､ 　　　 ノ　 .|,　 |
＿＿/　　　ﾉ ＼_ィ ´ー‐ｨ'　　 ∫
| |　 /　　 /　　　　r_＿＿__ ∬
| |　/　　 /　 　 　 |i　　　 ┌‐┐
| | （　〆⌒'──r─≒､.（(| 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣└‐┘￣￣￣￣￣￣


.

　　　　　　　　　　 　＿＿＿
　　　　　　　　　　／　　 　　＼
　　　　　　　　 ／　 _ノ ''　'ー　＼　　　　　　　　　　　　オーディンを飲み込むから、「スルトの身内」はフェンリルってことかお。
　　　　　　　／　　（●）　 （●）　 ＼
　　　　　　　|　 　　　 （__人__）　 　　|　　　　　　　　　　何か納得いかんお……
　　　　　　　＼ 　 　 　｀ ⌒´　　　／







　　　　　　 　 　 　 ／ :. ィ.;:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　ｲ:.:.:.:/-|/|∧:;､:.:.〈
　　　　　　　　　　ﾘ:.:./ ● 　 　く!:,:.:..、
　　　　　　　　　　 l:.:.l　　　　●/:./￣　　　　　　　　　　……同じく。
　　　　　　　　　　　vﾍ　 - 　 ノ:./
　　　 　　　　　　　 _,-+　匸ﾍ/V
　　　　　　　　　　,《　ﾋ⌒j　》、
　　　　　　　　　　l::＼ l　/∥::l
　　　　　　　　　　|:::::::ﾄ,Ｖイ:::::|
　　　　　　　 　 　 |:::::::l介l:::::::|
　　　 　 　 　 　 　 l::::::|人|:::::::l


.

　　　　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　別にやる夫の答えが間違いって言うわけじゃないぞ、
　　　　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　 　　炎を表すと書いている本だってある。
　　　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　　　.ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }　　　　　　　　　　 このように、ケニングによって同じ文章でも複数の解釈が出来てしまうんだ。
　　　　　　　　.ヽ 　 L　　　　 　 }
　　　　　　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　　　　　　／ 　 /　　　　　＼
　　　　　　 ／　　 /　　　　　　 　＼
　　　　　. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
　　　　　人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))







　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　 ／ _ノ　 ヽ､_ ＼
　　　　　　　　.　|　（ ●）（● ）　|　　　　　　　　　　　　例えばトールは「オーディンの子」と呼ばれる。
　　　　　　　　.　|　　（__人__） 　│
　　　　　　　　　 | 　　｀⌒ ´　 　|　　　　　　　　　　　　 それじゃあ「オーディンの子」という記述があったら、それらは全て
　　　　　　　　.　 | 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　トールを表すケニングだと言えるだろうか？
　　　　　　　　.　 ヽ　　 　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　 　　　 /
　　　　　　　　　　　>　 　　 <
　　　　　　　　　　　|　　 　　 |
　　　　　　　　　 　 |　　　 　 |


.

　　　　　　　　　 　 　 　 ＿＿__
　　　　　　　　 　 　 　／　　 　 ＼
　　　　　　　.　　 　／　　　　　　　＼　　　　　　　　　　言えないお、トール以外にもオーディンの子はたくさんいるお……。
　　　　　　　.　　／　／）　ノ ' 　ヽ､　＼
　　　　　　　　　|　／ .ｲ '（ー）　（ー）　u|
　　　　　　　.　　 /,'才.ﾐ).　（__人__）　 ／
　　　　　　　.　　 |　≧ｼ'　　｀ ⌒´ 　 ＼
　　　　　　　　／＼　ヽ 　　　　　　　　　ヽ







　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　　うむ。前後の文脈等から推測することも出来るが、それでも限界がある。
　　　　　.　|　　　　 （__人__）　
　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　　　ケニング以外にも曖昧な言い回しが使われているから、古エッダの記述については
　　　　　.　 |　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　 学者によって異なる解釈がなされている部分が多いんだ。
　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　　　　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　　　　　　|　　　　|￣￣￣


.

　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　|　　　 （ ●）（●　　　　　　　　　　　これらの要因が重なって、様々な解釈が生まれるんだな。
　　　　　　　|　　　 　 （__人__）
　　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ
　　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ
　　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |
　　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /






　　　　　 　　 ＿_＿__　　　　　
　　　　　　 ／　―　　 ＼ 　　
　　　　　／ノ　　( ●)　　 ＼　 　　　　　　　　　　　うーん……もっと昔のものなら、わかりやすい内容だったのかお？
　　　.　｜ ( ●) 　 ⌒）　　　|
　　　.　｜　　 （__ノ￣　　　 /
　　　.　｜　　　　　　　　　/
　　　　　＼＿　　　 　 _ノ＼
　　　　　　　/´　　　　 　 　 |
　　　.　　　 |　　/　　　　　　|


.

　　　　　　　 ﾋﾟｺｰﾝ!
　　　　 　 　 ヽ　i　/
　　　　　　　　( m )
　　　　　　　　 l≡l
　　　　 　 　 　 ｀´
　 　　　　　＿＿＿_　　　　　　　　　　　　　　　 あっ！　そうだ、エッダ以外にも残ってる伝承は無いのかお？
　　　　　／⌒　　⌒＼
　　　 ／（ ●） 　（●）＼　　　　　　　　　　　　 それと比べれば、元の内容がわかるんじゃないかお。
　　／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼
　　|　　　　　|r┬-|　　　　 |
　　＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／






　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　あれば苦労しないだろ……。
　　　　　.　　 |　　　　 （__人__）
　　　　　　　　|　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　　ゲルマン民族には文字で書き残す習慣が無かったから、
　　　　　.　　　|　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　 比較できるような資料が無いんだ。
　　　　　.　　　ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　　ヽ　　　　　ノ　 /つ━・　　　　　　　　 せいぜい民間伝承にいくつか残っている程度だな。
　　　　　　　　　／　　　　 ＼ / /
　　　　　　　　/ /＼　　　/￣＼
　　　　　　＿|￣￣ ＼　/　 ヽ　＼_
　　　　　　＼￣￣￣￣￣￣ ＼＿_）
　　　　　　　||＼　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　||＼||￣￣￣￣￣￣￣||￣
　　　　　　　||　 ||￣￣￣￣￣￣￣||


.

　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　 ヽ_＼
　　　　　　／ 　　 （●） 　（●） ＼　　　　　　　　　　　そ、そうなのかお？　でも北欧神話にはルーン文字っていうのが……。
　　　　　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |
　　　　　　./　　　　 ∩ノ ⊃　　／
　　　　　　(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　　　　　.＼　“　　／＿＿|　 |
　　　　　　　　＼ ／＿＿＿ ／






　　　　　　　　　　, -=―＝―- ､ _
　　　　　　　〃⌒>'´　　／　 　　丶`ﾆ=‐'
　　　　 　 ./ ,′// , ´ / 　j　}　ヽ　＼
　　　　　 /　l　 | i　l　/ ／// ,ｲ ﾊヽ　ヽ
　 　 　 ノ,ｲ八　l ﾚ_j/∠∠/／/∠Ll　}ﾍ　　　　　　　　　　　　　確かに、ルーン文字はゲルマン民族が実際に使っていた文字。
　　　　＜ノ .∧ ｌ　 ﾑrt=k｀　　ｨ=､ﾙﾚ′j
　　　 　 / イ　Vﾍ.　ヽVr!　　　jr/ﾑｲ{　　　　　　　　　　　　　　 ただし主な用途は記念碑や祈りの句など、短い文章を記すため。
　　　　　´　W^{ゝﾍ　ﾊ.ヽヽ　_ '　/〈ﾘヽ
　　　　　　　　 j八 }ヽ ﾍ､ 　 j`＜ミ＼　　　　　　　　　　　　　　 古エッダの詩のような長い文章のためのものではなかった。
　　　　　　　　　　ﾘ朽＼!｀{7|:::::::::＞ﾐ;>,
　　　　　　　　　　ノ ＼- 厶］::::::::f }::/:/
　　　　　　　r=＜　　　 Ｖ三|:::::::::| |/:/
　　　　　　 /‐-､ ＼　　 ∨ﾒ､::::ノ　V､
　　　.　　 /_j 　 , X ＼ 　 ヽ {´　　　/
　　　　　　 〈　　´ 　＼＼　 >ﾍ､___,ｲヽ
　　　　　　　`､　　　ヽ ＼.>j　　　　ﾊ│
　　　　　　　　{　　　　 ∨　 ｀ヽ､_,/∧|
　　　　　　　　lヽ　　勹'´　 　 　 //　l !


.

　　　.　　　　　　　 ＿__
　　　.　　　　 　 ／　―＼
　　　　　　　 .／ノ　　(●)＼　　　　　　　　　　 　 　 ルーン文字って、木の板や石に「刻み付ける」ものだから、
　　　　　　　 |　 ( ●) 　 ⌒)ｌ　　　　　　　　　　　　　長文を残すには向いていないんだ。
　　　　　　　 }　　　（_ノ￣　 i
　　　　　　　 |　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　　それに、木は腐ったり薪にされたり、石は風化などで失われてしまったりする。
　　　　　　　　＼　　　 　 _ノ
　　　　　　　　　/´　　　　 `、　　　　　　　　　　　　　仮に伝承を刻んだものがあったとしても、少なくとも現存していないな。
　　　　　　　　 /　,＿__　 ,.　i
　　　　　　　　（ ､＿＿⌒) ノ
　　　　　　　　　ヽ、　i⌒i⌒i
　　　　　　　　　　　　i　 i　 i＿
　　　.　　　　　　　 　 ＼＿）＿）






　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼　 　,.:┐　　　　　　　　 キリスト教が紙を持ってくるまで、ゲルマン民族の伝承は
　　　　　　　　　　　 .（ ●）（ ●）　　..|　／　｜　　　　　　　　口承……言葉でのみ受け継がれていたんだ。
　　　　　　　　　　　 （__人__） 　　　　.|./　　 /
　　　　　　　　　　　　 i⌒ ´ .r－､　　|/　 ／
　　　　　　　　　　　　 { 　 　 ヽ,　',. .,/　:/',
　　　　　　　　　　　　 .ヽ　　　.|　 l_/_, -‐､',
　　　　　　　　　　　　　 .ヽ　.　| 　 / , -－'i|
　　　　　　　　　　　　　　/　　 {　　V , -－ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　|　　　ヽ　 Ｌ|　r=　|


.

　　　　　　　　／￣￣￣＼
　　　　　γ⌒)　　　　　　(⌒ヽ　　　　　　　　　　　　え、キリスト教が？
　　　　 ／ _ノ ノ 　　 ＼ 　＼ `､
　　　 （　 < （○）　 （○）　　 | 　）
　　　　＼　ヽ　（__人__） 　 ／ ／







　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／ 　 ⌒　　 ＼
　　　　　　　（ ●）（ ●）　 　 |
　　　　　　　.（__人__）　 　 　 .|　　　　　　　　　　 　 アイスランドの国教がキリスト教になったのは1000年、布教はそれより
　　　　　　　　ｌ｀ ⌒´　　　 　 |　　　　　　　　　　　　少し前から行われている。
　　　　　　　　{　　　　　 　 　 |
　　　　　　　　{　　　　　 　＿ |　　　　　　　　　　　　「エッダ」を書いたスノリはキリスト教徒だし、年代的に考えて「古エッダ」の
　　　　　　　（ヽ、ヽ　　　/ 　）|　　　　　　　　　　　　作者もだろうな。
　　　　　　　 |　｀`ー―‐'|　..ヽ|
　　　　　　　 ゝ　ノ　　 　ヽ　 ノ
　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


.

　　　　　　 　　　／￣￣￣＼
　　　　　　　　／ ／ 　 　 ＼ ＼　　　　　　　　　　前に有希ちゃんが言ってた「キリスト教の影響」ってのは
　　　　　　 ／　 （●） 　（●）　 ＼　　　　　　　　 このことかお。
　　　　　　 |　　　　（__人__）　　　　|
　　　　　　 ＼　　　 ｀ ⌒´　 　　／
　　　　　　 ／ 　 　 　　　　 　 　 ＼







　　　　　　　　　　　　　／.:.:.　　　　　　　　 ＼
　　　 　 　 　 　 　 　 /:,:.:.:　 ／　　　ヽ　　　　＼
　　　　　　　　　　　 /.:.l:.:.:/:/　　　:/ 　',　:l　　 ヾ`ｰ
　　　 　 　 　 　 　 /!:.:.|:.: l/　 〃 /　j　}　:|　 　 ﾊ
　　　　　　　　　　/ｲ:.:.i|:.:.jL∠/_/ | /l.ﾑ_/|　l 　ｌ }
　　　　　　　　　　　N:.ﾊ:.:.:lｨfｱﾄ/　ﾚ　ｨ=ﾄ | /| ∧j　　　　　　　北欧神話……特に「スノリのエッダ」の内容はキリスト教徒による
　　　　　　　　　　　　ヽﾑ:.} c;_j　　　　c;ﾘ ﾙ iﾚヽ　　　　　　 　 ものであることを念頭に置く必要がある、と聞く。
　 　 　 　 　 　 　 　 　 `ﾍ:ゝ　　　 .'　 　 小/
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヾ:{＞､ _　ｨ＜}/|/
　　　　　　　　　　　　 _, ｨr'´ヽ｛ __＿`}　ヽ､_
　　　　　　　　　　　／| l:|　　　| =＝=|　　 |:lﾞヽ
　　　　　　　 　 　 /　 | l:ｌ　　　l 　 　 l　　 l::ｌ　l
　　　　 　 　 　 　 l　　ヽﾊ　 　 l　 　 l　　//　 |
　　　　　　　　　　ハ　　ヾヽ　　l　　 ｌ　 //　l　l
　　 　 　 　 　 　 |　ﾍ　 l　ヾ＼ ヽm/ ,／　V　:|
　　　　　　 　 　 ﾉ　　＼|　　`ﾄ,＼V／| 　 │ ､|


.

　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　|　　　 （ ー）（ー)　　　　　　　　　　　ま、北欧神話を知りたい分には特に問題は無いけどな。
　　　　　　　|　　　 　 （__人__）
　　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ　　　　　　　　　　　その辺は学者さんの仕事だろ。
　　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃
　　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ
　　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |
　　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /






　　　　　 　　 ＿_＿__
　　　　　　 ／　―　　 ＼
　　　　　／ノ　　( ●)　　 ＼　　　　　　　　　　　でも……教えてもらうからには、やっぱり正しい北欧神話が知りたいお。
　　　.　｜ ( ●) 　 ⌒）　　　|
　　　.　｜　　 （__ノ￣　　　 /
　　　.　｜ 　 　 　 　 　 　 /
　　　　　＼＿　　　 ⊂ヽ∩＼
　　　　　　　/´　　 　 (,＿ ＼.＼
　　　.　　 　|　　/　　　　　＼＿ﾉ


.

　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　　正しい、か……やる夫の言う「正しい神話」って何だろうか。
　　　.　|　　　　 （__人__）
　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　　　 キリスト教云々を抜いても、神話ってのは変わるものだ。
　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　　 全ての神話が最初から存在するわけじゃない。何年も人々の間で
　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼　　　　　　 信仰されて、新しく生まれたり変化していくんだ。
　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼







　　　　　　　　 ／￣￣＼　（ ;;;;(
　　　　　　　／ ._ノ　　ヽ､＼) ;;;;)
　　　　　　　|　 （●）（●）/;;／　　　　　　　　　　　例えば神々の地位とかな。ニョルズなんかは元は別の神が姿を変えたものだし。
　　　　　　　|　　（__人__）l;;,´|
　　　　　　　|　./´ニﾄ━・'　.ｌ　　　　　　　　　　　　「エッダ」として書かれる前の口承だってそうだ、要するに伝言ゲームなんだから、
　　　　　　　| .l　_ニｿ　　　 }　　　　　　　　　　　　 人々の間で語り継がれる間に変化していたっておかしくないぞ。
　　　　　　　 /ヽ､_ノ　　　 /
　　　　 　 __/　　/　　　 ノ__
　　　　　/ /　　/　　　　　　 ｀ヽ.
　　　　 /´　　./　　　　　　　,.　 ヽ.
　　　　 ﾄ､＿,/.　　　　　　　｜､　 ヽ
　　　　　 ｜　　　　　 　　　｜/　 /


.

　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　 ／　　　　 　 　　＼　　　　　　　　　　た、確かに……じゃあどうすればいいのかお。
　　　　　　／ 　　　　　　　　　　＼
　　　　　　|　 　　　＼　　 ,＿　　 |
　　　　　　/　　ｕ　 ∩ノ ⊃―）／
　　　　　　(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　　　　　.＼　“　　／＿＿|　 |
　　　　　　　　＼ ／＿＿＿ ／






　　　　　 ／￣￣＼
　　　　／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　　　　　　　　難しいこと考えなくても、「エッダ」を読めばいいだろ。
　　　　|　　　 （ ●）（●）
　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　言ってみれば、北欧神話の最も新しい姿なんだ。
　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼


.

　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／　　_ノ　,ヽ＼
　　　　　　　　|　　　（ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　　スノリはキリスト教徒だが、伝承を残すために「エッダ」を著した。
　　.　＼　 　　|　　　　 （__人__）
　　　　 .＼　　.|　　　　　｀ ⌒ﾉ　　　　　　　　　　　　　　 当時「エッダ」を読んだのは、つい数世代前まで古い神を信仰していた人達だ。
　　　　　.　＼　ヽ　　　　　 　}
　　　　　　　 .＼_,ゝ　　　 　ノ　　　　　　　　　　　　　　　「エッダ」が多くの人に受け入れられたのも、様々なサガが愛されたのも、
　　　　　　 　／, r､　　　　く　　　　　　　　　　　　　　　　北欧神話の神々が密かに息づいていた証拠だと思うんだ。
　　　　　　 ./　〈　 ＼　　 　i
　　　　　 .　ヽ､ .ヽ 　 ＼ i..｜
　　　　　　　 　.て_）　 　＼ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　 　　 　＼







　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／ 　 ⌒　　 ＼
　　　　　　　（ ●）（ ●）　 　 |　　　　　　　　 　 　 　 研究とかならともかく、やる夫は北欧神話の神々の活躍を知りたいんだろ。
　　　　　　　.（__人__）　 　 　 .|
　　　　　　　　ｌ｀ ⌒´　　　 　 |　　　　　　　　　　　　 だったら正しいとか間違ってるとかを考えるより、神話の中で生きてる
　　　　　　　　{　　　　　 　 　 |　　　　　　　　　　　　 神々を感じるのが大切なんじゃないか。
　　　　　　　　{　　　　　 　＿ |
　　　　　　　（ヽ、ヽ　　　/ 　）|
　　　　　　　 |　｀`ー―‐'|　..ヽ|
　　　　　　　 ゝ　ノ　　 　ヽ　 ノ
　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣


.

　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　 ／　　─　 　 ─＼　　　　　　　　　　　　感じる……かお。やる夫は、最初は面白い話が聞ければいいと思っていたお。
　　　　　／ 　　 （●） 　（●） ＼
　　　　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |　　　　　　　　　　 でも、やらない夫や有希ちゃん、それとできる夫から話を聞いてたら、
　　　　　./　　　　 ∩ノ ⊃　　／　　　　　　　　　　　北欧神話の色んなことを知りたくなったんだお。
　　　　　(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　　　　.＼　“　　／＿＿|　 |
　　　　　　　＼ ／＿＿＿ ／







　　　　　 　 　　　＿＿＿_
　　　　　 　　　／_ノ 　 ヽ_＼　　　　　　　　　　　　 やる夫はゲルマン民族のこととかは全然知らないから、
　　　　　　　／（　●）（　●）＼　　　　　　　　　　　神様を感じられるかどうかわからないお。
　　　　　 ／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼
　　　　　 |　　　　　（　 （　　　　　 |　　　　　　　　　 それでも大丈夫かお？
　　　　　 ＼　　　　 `ー'　 　 　 ／


.

　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／　　 _⌒　 ＼
　　　　　　　　|　　　（●）（●）　　　　　　　　　　当たり前だろ。俺だって、その辺の知識はやる夫と変わらないぞ。
　　　　　　　.　|　　 ⌒（__人__）
　　　　　　　　 |　　　　 |r┬| .}　　　　　　　　　　興味を持って、知りたいと思うことが大事なんだ。
　　　　　　　.　 |　　 　　ｰ―' }
　　　　　　　.　 ヽ　　 　　 　 }
　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　/　　　 く






　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾍ
　　　　　　　＿＿＿_　　　　　　/ /
　　　　　 ／＼　　／＼　　　／ /　　　　　　　　わかったお！　やらない夫、これからもよろしくお願いするお！
　　　　／（ ⌒） 　（⌒）＼／　 /
　　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼ /
　　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 |
　　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／
　　　／　　　　　　　　　 ＼
　　/　　　　　　　　　　　 　＼
　/　　／＼　　　　　　　 　 　ヽ
　　／　　　＼　　　　　 　　 　ﾉ
　U　　　　　　ヽ　　　 　　 　ノ


.

　　　　　　　　　 　 ,. :-:.' ｰ ' ¨ :.ゝ.､
　　　　 　 　　　 ,.:´: : : : : : : : : : : : : ヽ.
　　　　　　　 　,.': : : : : : : : : : : ',: : : : : : ヽ､
　　　　　　 　 ,':.:;':.:.:;'.:.:.;'.:./.:;'.:.:|i:';:.:.:.:.:.:.::`､｀ゝ
　　　　 　 　 ,':.:.i:.:.:.i:.:/i:.:/i:.:ﾊ:.:l:i:.:.i:.:i:.:.:.';.:.:',
　　　　　　 /ｲﾊ:!:.:.:l:/ i/ ﾉノ ﾉリﾘハﾘ:!:i:.:.!:.l　　　　　　　　　……よろしく。
　　　　　　　i/!:.:!:.:.;;;;;;;;;;;;;;;;　 　 ;;;;;;;;;;;;;;l:.!:ﾊ!
　　　　　　　　∨|:.:.!　　　　　　　　　 ﾉ/i/ﾉ
　　　　　　　　 　ﾍ!:|　　　　　　　　　ﾉ!/′
　　　　　　　　　 　ヾ!＞ｰ- 　 -- ＜ｲﾘ
　　　　　 　 　 　 （;;;;;ｿ⌒)￣｀´￣(⌒ヽ
　　　　　　　 　　　ヽ;;=;;/＿_,,､＿/;;｀ソ
　　　　　　　　　　　 〉;;;;;;;;ｿ:/Ａ.i:ｌ;;;;;;!′
　　　　　　　 　 　 ノ｀;;;;;;;;;;i;!＿__i;!;;;;;ゝ、
　　　　　　　 　　（_;;;;;;;;7;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ;;;;;;;;）
　　　　　　　　　　 ｀￣￣￣´｀￣￣￣´






　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　 　　　 ＼
　　　　　　|　　　 ⌒　　　⌒　　　　　　　　　　　　　　　　おう、俺のほうこそよろしくだろ。
　　　　　.　|　　　　 （__人__）
　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　 　 　 　 長門からは色々教えてもらう立場だしな、俺も勉強させてもらうだろ。
　　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼


.

　　　　　　　　.r-､　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／て )　　　 　／　　 _ノ　　＼
　　　 　 　 （ _ﾉ　 ﾌ.　　 　 |　　　（ ●）（●）　　　　　　　　　……と綺麗に締めたところで、長かった解説編も終わりだろ。
　　　　　　　ゝ、 〈　　　　　|　　　　（__人__）
　　　　　　 / ハ　ヽ.　　 　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　 次回からは神話の紹介だな。
　　　　 　 /〃　ﾍ　 ＼ . 　 | 　 　 　 　 　 }
　　　　　 ｉ ！　　 ＼　 ｀ ーヽ　　　　　　 }
　　　　　 丶丶　　　_ ＞　　　ヽ　　　　ノ､
　　　　　　　 　 ゝ'´- ､_ 　y-､　　　　　　　＼
　　　　　　　　〈　　　　 ￣　 う 　 　 　 /､　　ヽ
　 　 　 　 　 　 `ー― ￢､__ノ　　　　　| 　>　 /
　　　　　　　　　　　　　　 |　 　 　 r'＾ヽ'´ _／
　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　 　 `く__ノ´






　　　　　　　　　＿＿＿＿
　　　　　　　／　　⌒　　＾＼　　　　　　　　　　　　　　　　何だかんだで、やる夫も夢中になってしまったお。
　　　　　 ／　　（ ●） 　（●）
　　　　／　　::::::⌒（＿人__）⌒ヽ　　　　　　　　　　　　　 神話も楽しみだお。最初はどんなお話だお？
　　　　|　　　　　　　|r┬-|　　　|
　　　　＼ 　　 　 　　`ー'´　 ／


.

　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　|　　　 （ ●）（●）
　　　　　　　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　んー、どうしようかな。
　　　　　　　|　　　　　　　　　ﾉ
　　　　　　　|　　 　 ∩ノ ⊃ }　　　　　　　　　　　　　とりあえず楽しみにしてるだろ。
　　　　　　 /ヽ　　 ／ ＿ノ }
　　　　　　(　ヽ　 /　　/　ノ
　　　　　　　ヽ　“　　/＿|　 |
　　　　　　　　＼＿_/＿＿ /






　　　　　　　　　　 ＿
　　　.　　　 ,,-‐'''´　　｀―-､
　　　.　 ,／　　　　　　　　　 ヽ
　　　ィ'/　　　　　　　 ､　 ､　 ヽ
　　　　i.,,　 i /.,､　i､ i　 l　 .l　 .l
　　　　"ll､ l､ﾄTヾ lやヽ,T　l　 ,,l　　　　　（わくわく）
　　　　　`l.lヽらﾌ ` 'ちﾌ'l /,), /`
　　　　　　'.l l''_, ─､_''.,ｨ /,/!/
　　　　　　　!r'# # #Y〃i
　　　.　　　 ﾑ # # rｸ､ .l
　　　　　　 '- ｹtｫｬl､ __,,)
　　　.　　　ｬ''ヽｨ.' !l__,λ＿
　　　　　　 `i--.ｫ''~~'´>_)　)
　　　　　　　 ｀´ ｀‐ ´￣ ｀´

.

　　　　　　　 　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　　　　 ／　　─　 　 ─＼　　　　　　　　　　そーいえばバルドルの時に、有希ちゃんが言ってたこと思い出したお。
　　　　　　／ 　　 （●） 　（●） ＼
　　　　　　|　 　　 　 （__人__）　 　 |　　　　　　　　 キリスト教の影響がどーたらってやつ。
　　　　　　./　　　　 ∩ノ ⊃　　／
　　　　　　(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
　　　　　　.＼　“　　／＿＿|　 |
　　　　　　　　＼ ／＿＿＿ ／





　　　　　　　 .／￣￣＼
　　　　　　.／　　　　　　＼
　　　　　　|　　 　　ー　　‐ i
　　　　　　|　　　（ ●） （ ●）
　　　　　　|　　　　　（__人__）　　　　　　　　　　　　そういえばそんなことも言ってましたね。
　　　　　　|　　　　　　`⌒´i
　　　　　　ヽ.　　　　　　　ﾉ
　　　　　　　ヽ　　　　　ノ
　　　　／ 　 ＼　　　　 　 ＼
　　 　 |　　　　 ＼, -‐- 、-‐- 、
　　 　 |＼　　　　 ＼.　　（"￣ .入
　　　　|　　＼　　　　" ￣￣￣　　）
　　　　|　　／ ＼,,＿＿＿＿＿__人
　　 　 |　　　　　　／＼　　　 ＼ 　＼
　　　　ヽ,_＿＿_／;__＿＼　　　 ＼,,_ ＼,,__
　　　　　　　　　　　　　　（＿＿＿＿__）＿__）


.

　　　　　　　 　 　 ´　￣￣￣￣￣く
　　　 　 　 ／ : : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
.　 　 　 ／　　　: : : : : : : : : : : : 　 　 . . .＼
　､＿_/／. /. . . . . . .　　　　. . . . : : ! : : : : ヽ
　　￣/. : /. : : : :/ : : : : : : : : : : : ＼l: : : : : : :ヽ
.　 　 l : : l : / : /. :/ : : ヽ、: : : ｀ヽ : !: :l: : : : :　ヽ、
　　　l :/ l : l: : :l :∧: :ﾄ、: lヽ、: : : :ヽ!: :l: :ｌ: : : ｌ ￣　　　　　　　　そんなことも言いましたね。
　　　l/!: ! : ｌ: :/l/‐-ヽ! ヽ !　 _ヽ-―!‐ !: :ｌ: : : !
　　　　ヽ! : l : ! rfチミ､　 ヽ´ fr旡ミ! : ト､l : : ′
.　　　 　 ヽ !: :l　 rっｿ　　　　 匕り !: : !丿/j/
.　　 　 　 j∧ :ﾄ､ ｀¨　　 .　　　　　 ｌ ｌ :ｌ j/
　　　　 　 　 V: :lヽ、　　 _ 　 　 ／j/!/
　　　 　 　 　 ヽ: !　＞ 　 __.. ィ
　　 　 　 ｒヾ ￣ ||　 　lr‐ 'ﾌ, '／ |ヾ|　!　 |　 !
　　　 　 ,',ﾍ　ヾヽ|| 　／　　 ∠- ｧ! ＼|　　!__ヽ
　　　　/!　 ヽ　| |||／　　　　 r--'ヽヽ　`ｰ､ヽ ¨ｧ
　　　 ,'　〉　 ヽ !_/　　 　,､┬､二ゝﾆ ＼ 　 ヽ!/│　
　　　 ! /　　　/ |　　 ィ´　! !　　　　| ＼_　 　|_　!
　　　|　!　 ,,.ｲヾ ＼　｣〉　 |│　 　　! ／|　／ ハ|






　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　（○） （O）　　　　　　　　　　　　何その「忘れてた☆」みたいな言い方！
　　　　　.　|.　　　.||　（__人__）
　　　　　　 |　 　 ﾉi　　! 　 | }　　　　　　　　　　　必死になって調べた俺の心に突き刺さるんですけど！
　　　　　.　 |　　 し'　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　 ヽ　　　　　ノ
　　　　　　　　/　　　 く
　　　　　　　　|　　　　 ＼
　　　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)


.

　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　／　　 　 　＼
　　　　 　／　─　 　 ─　＼　　　　　　　　　　　　で、結局どーなの？
　　　　／ 　 （●） 　（●）　 ＼
　　　　|　 　 　 （__人__）　 　　 |　　　　　　　　　　「エッダ」の話でもキリスト教出てきたし、わりと気になるお。
　　　　 ＼　 　　｀ ⌒´ 　　 ,／
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|







　　.　　　　　　　 ＿__
　　.　　　　 　 ／　―＼
　　　　　　 .／ノ　　(●)＼　　　　　　　　　　　　　結論から先に言うと、諸説あるから何とも……だな。
　　　　　　 |　 ( ●) 　 ⌒)ｌ
　　　　　　 }　　　（_ノ￣　 i　　　　　　　　　　　 　 キリストモチーフ説以外にも、死と復活による戦士の儀礼を表しているとか、
　　　　　　 |　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　　 あと冬追い出し（レターレ）と似てるって考察なんかもあったな。
　　　　　　　＼　　　 　 _ノ
　　　　　　　　/´　　　　 `、
　　　　　　　 /　,＿__　 ,.　i
　　　　　　　（ ､＿＿⌒) ノ
　　　　　　　　ヽ、　i⌒i⌒i
　　　　　　　　　　　i　 i　 i＿
　　.　　　　　　　 　 ＼＿）＿）


.

　　　　　　　　　　　,..　--- ..
　　　　　　 ,..-.:.￣.:..:..:.. : : : : ｀丶、
　　　 　 ／:..:..:.　..: : : : : : : : : : : : :＼
　　　　/:ﾍ=､､:.＿: : : : ＿＿:ヽ:_:　-^,.ﾄ､
　　　ノ:..:..:./:.. ￣: :７´:―― : :|‐: :´､: ヽヽ
　　ｰ-/:..:.i:../:. : : ,/:..:.:ｲ:.ﾊ:.. : j:.. :}:.､ヽ:. ﾄヽ
　　　 !:..:..:|:.{/:..ィ_jz≦ﾉ '　}:.／_}_ｲ:. } |:.｜||
　　　 Vl:.:.|:. Vl´｢＿　､｀　ﾉ′ ＿ﾉ:ｿ:ｲ: ﾘ ﾉ　　　　　　　　　レターレ？
.　 　 　 }:ハ: : l f7｢::｀ﾊ　　　/:::7}7ｲ:/}/
　　　　 ﾉﾍｰl､: :!VZﾂ　　 　 ﾋ:ﾉ/:.//
　　　 　 　 ｀ｨﾍ:ﾄ､ _　　　_ 　 ノ:ｲ/
　　　　　 rく､＼｀ ヽ二コ:千:|K、′
　　　　　 |:..:ヽヽ＼: :Yﾆ|: :!:/j!:.l
　　　　　 ﾄ:..:..:.＼ヽ＼!r|┴＝ミ!r ァ７
　　　　　｜!::.:..:.ヽ＼ヽ|!　　　 /７　/
　　　　　 j::.l::..:..:.⌒ｰｧ⌒} 　 / / /^}
　　　　　 |::.:.＼::..::.::.::>ｰ'―-L∠_¨´
　　　　　 l::.::.:..:.￣￣ト ､, --､―弋i






　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　（●）（● ）　　　|　　　　　　　　　　　　　詳しい情報は見つからなかったんだが、藁などで作った人形を
　　　　　　　（__人__）　　　　 |　　　　　　　　　　　　　冬に見立て、川に流したり燃やしたりする行事だそうだ。
　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　 擬人化した冬を殺すことで、暖かい春を迎えるわけだな。
　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　 　 　 /　　　　　 |


.

　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　　　|　　　 （ ●）（●　　　　　　　　　　　けっこう古い時代からある習慣で、ドイツの一部じゃ
　　　　　　　　　　|　　　 　 （__人__）　　　　　　　　　　 キリスト教からの禁止令が出ても続けられていたらしい。
　　　　　　　.　　　|　　　　　　　　ﾉ
　　　　　　　　　　 |　 　 　 ∩ ノ ⊃　　　　　　　　　　 寒さの厳しい土地だから、根強く残ったんだろうな。
　　　　　　　　　／ 　 　 .／　＿ノ
　　　　　　　　 (.　 ＼ ／　.／_ノ │
　　　　　　　　　＼　 “　／_＿_|　 |
　　　　　　　.　　　 ＼／ ＿＿＿ /






　 　　　 　　 　＿＿＿_
　　　　　　　／ー　　─＼
　　　　　 ／ （●）　（●） ＼　　　　　　　　　　　　へえ、そんなのがあるのかお。
　　　　／　　　.（__人__）　 　＼
　　　　|　　　　　｀⌒´　　 　　 |　　　　　　　　　　 殺されるための冬って、善い神様なバルドルのイメージとちょっと違うけど……。
　　　　 ＼　　　　 　　　 　 _／
　　　　 　ﾉ　　　　 　　 . 厂

　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　　　確かにな……とは言え、バルドルが善良な神なのは「スノリのエッダ」の
　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　記述が根拠だから、昔はまた違った顔を持っていたのかもしれない。
　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　＼
　　　　　　　/　　　 く　　＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　　|　　　　 ＼ 　 ＼ 　 　　　　　　＼
　　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼






　　　　　　　 ／￣￣＼　（ ;;;;(
　　　　　　／ ._ノ　　ヽ､＼) ;;;;)
　　　　　　|　 （●）（●）/;;／　　　　　　　　　　　　　バルドルは輝く容姿＝光のイメージがあるが、それは冬にも
　　　　　　|　　（__人__）l;;,´|　　　　　　　　　　　　　　通じる部分があるのかもしれない。
　　　　　　|　./´ニﾄ━・'　.ｌ
　　　　　　| .l　_ニｿ　　　 }　　　　　　　　　　　　　　 ゲルマンでは冬のことを「白い季節」と呼んでいたそうだ。
　　　　　　 /ヽ､_ノ　　　 /　　　　 　 　 　 　 　 　 　 自然の光って、大概は白いだろ。
　　　 　 __/　　/　　　 ノ__
　　　　/ /　　/　　　　　　 ｀ヽ.
　　　 /´　　./　　　　　　　,.　 ヽ.
　　　 ﾄ､＿,/.　　　　　　　｜､　 ヽ
　　　　 ｜　　　　　 　　　｜/　 /


.

　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　 　　　／）／ノ '　ヽ､＼　　　　　　　　　　なるほど……じゃあバルドルは冬の神様なのかお？
　　　　　　 　 ／ .ｲ '（●） 　.（●）＼
　　　　　 . 　/,'才.ﾐ).　 （__人__）　　　＼
　　　　　 . 　|　≧ｼ'　　 ´ ⌒｀　　　　　|
　　　　　　.　＼　ヽ 　　　　　　　　　 ／








　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　 /ﾉ　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　. （ ●）（ ●）　　 |　　　　　　　　　　　さあな。色々な説はあるが、そもそもバルドル自身の記述が少なくて、
　　　　　　　　　|（人__） 　 　 　 |　　　　　　　　　　　いずれも裏づけが取れていない状態だ。
　　　　　　　　　 | ⌒ ´　　　 　 |
　　　　　　　　.　 |　　　 　　　　|　　　　　　　　　　　 結局のところ、本当のバルドルがどんな神だったのかはわからないのさ。
　　　　　　　　.　 ヽ　　　　　　/
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　 /
　　　　　　　　　　　.>　　　 <
　　　　　　　　　　　|　　　　 |
　　　　　　　　　 　 |　　　　 |


.

　　　　　　　　　 ＿＿＿＿＿＿_
　　　　　　　　／　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　　　　とまあ結論出てないんですけど、これでいいでしょうか
　　　　　 __／　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　／.　　　　　　　　　　　 、 　　　|
　　　　|.　　 　　　　　　,(⌒(○)ヽ 　 　|
　　　　l　　ｌヽ　　　　　 )＞ 　 　 　　／
　　　/　　　 ヽ＼　　　`(__,(○) / ／
　　　|　　　 　 ＼ ￣￣￣￣￣￣　　＼
　　　|　　　 　|ヽ、二⌒)､　 　 　　　　　 ＼







　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　 　 ＼　　＼
　　　 　 ,'　　 　 /　　/　　　　　　　 　 　 l　　　　＼　　ヽ
　　　 　 ! 　 　 /　　/　　　　　/　 ,'　　　 |　　l　　 ﾊ　 ﾍ､ヽ､_,
.　　　　 | !　　 l　　 ｌ　　　　　/　 / 　 ,ｲ　! 　 i　　 ! l　ヽ ',｀￣
.　　　　 l |　　 l　　 ｌ 　,/　 〃　,/ 　 /│ l　　j　　 l│　 ! l
　　　　ノ | !　│ 　 |　/_／/ ／/　 /　,' ∧ / |　 /　j 　 ｌ│
　　　　　ﾉ l　ｧ|　　 |尢/‐=乞t/ ／　/∠ﾆ｢厂! /　,/　 / ﾘ　　　　　　　　　よろしい。
　　　　 ｲ 八{´ｌ　　!|<f{矛:下 '　　 　 ｲ孑代ﾌ.ｊ/.　 /　/
.　　　　　 　 Vﾊ　　|　 r';;z j　 　 　 　 r';;zﾘ　 /}, '/／　　　　　　　　　　　　個人的にバルドルと冬の関連性は興味深かった。
　　　　　　　 ヽ ', 　| 　　￣　　　　 ,　　￣　 ﾁ'　/
　　　　　　　　 `ﾍ　lヽ　　　　　　 _　　　 　 厶 ./
　　　　 　 　 　 　 ', {.代ﾄ､　 　 　 　 　 , イ |　/
　　　　　　　　　　　＼_'i|　＞ ､　_ , イ/ V　ｌ./
　　　　　　　 　 　 ／ ヽj　　　　　　 {｀ヽ 　 ′
.　　　　　　　 _ ／　　｢´　　　　　 　 ヽ}　＼
　　　 _, -‐ ´　　　　　l‐--‐､　＿　-‐ |　　 ` ｰ- ､
.　r＜＼＼　　　 　 　 ヽ '´￣　___ ｀ヽl|　　　　 / /ヽ
　y⌒ヽ ＼＼　　　　　　V　￣ ＿ ｀ヽl|　　 　 / /　∧
./　　　 ヽ. ＼＼　　　　　∨￣　　｀ヽ | 　 　 / /　/　 l


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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾃﾞｰﾝﾃﾞｰﾝﾃﾞｰﾝ
　　　　　　　　　 ＿＿＿＿　　　　 ′／　　　　　　　　　　　　　　　　　ｹﾞﾙｹﾞﾙ ｹﾞﾙｹﾞﾙ
　　　　　　　　／　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　　　/ ─　　　─　　　＼
　　　　　　/（ ●）　 （ ●）　　　 ＼
　　　　　　|　　（__人__）　　　　　　 |　　　　　　　　お、もうこんな時間だお。
　　　　　 　＼　｀ ⌒´ 　　　　　 ／
　　　　　　 　/　　ー‐　　　　　　ヽ
　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 ｀








　　　　　　　　 　　＿＿＿_
　　　　 　 　　　／　　 　 　＼
　　　　　　 　／　 ⌒　　⌒ 　＼　　　　　　　　　　　やる夫はそろそろ帰るお、お邪魔しましたお。
　　　　　　／ 　 （⌒）　（⌒） 　 ＼l⌒l
　　　 　 　|　 　 　 （__人__）　　 　　|`''|
　　　　　　＼ 　 　　｀ ⌒´　　 　_／ /
　　　　　　　 　　 　　　　　 　　　　/


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　　　　　　 　 　 　 　 　 ＿＿
　　　　　　　　 　 ／´￣　　　￣｀丶、
　　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　＼
　　　.　　　 　 /　/　　　　　　　　　　　 ｀ ､
　　　　　 　　/　 l　　　　　　　　　 　ヽ　　 i
　　　.　　 　//l　l　　　 ｨｲ/ヽ　 ∧ 　 l　　 l
　　　　　　 {ｲ l　l　　//‐－　}／ ‐ﾍ　l　l lﾉ　　　　　　　　　私も失礼する。また呼んで欲しい……。
　　　　　　　{小ｲ 　 l/T弐ト 　 r=ヌⅥ　lﾉ
　　　　　　　　}从 　l|　ヒ::ﾘ　　 ヒ::ﾘ川V
　　　　　 　　　　 V l|ヽ、　　, ､　 イﾙ刈
　　　　　　　　　　∧j＼｀￢ニＴ´ }｀ヽ、
　　　　　　　　　　{　　　＼　∨　/　　 }
　　　.　　　 　 　 ∧　 　／}Y^Y´　L.ノ
　　　　　　　　　/　 ＼厶ノ/　 !　　}
　　　　　（ （　 〈＼　　 　 /　　h　/
　　　　　　　　　ヽ..工_ｰ''′￣ }}/
　　　　　　　　　 {__/　￣下ﾆﾚ'′
　　　　　　　　　　　　　　 ｀ ´






　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　|　　 　（ ⌒）（⌒）　　　　　　　　　　　　　おう。二人ともまたな。
　 　 　 　 　 |　　 　　（__人__）
　　　　　　　 |　　 　　 ｀ ⌒´ﾉ
　 　 　 　 　 ,|　　 　　　　　 }
　　　　 　 ／ ヽ　　　　　　 }
　　　　　く 　く ヽ　　　　 ノ
　　　　 　 ＼　`' 　　　 く
　　　　　　　 ヽ、　 　 　 |
　 　 　 　 　 　 | 　 　 　 |


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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊﾞﾀﾝ

　　 　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　／　ノ　 ヽ、.＼
　　　　　　　　　　　　　|　 （●）（●）　|　　　　　　　　　　　　さてと、次を考えておかないとな……。
　　 　 　 　 　 　 /￣￣￣ 丶人__）.　 |
　　　　　　　　　/　　　　　　　　＼ .＿|＿＿＿__　　　　　　　何がいいかなあ。
　　　　　　 , --'､ 　 　 　 　 　 　 /　　　　　　 　 ｀〉
　 　 　 　 /　⌒ ）　　　　　　　　/　　　　　　　　 /
　　 　 　 ,′　　ﾉ　　　 　 　 　 /　　 　 　 　 　 /
　　 　 　 l　　T´ ..＿　　　　　./　　　　　　　r'´￣ヽ
　　　　 　ヽ ノ　　 .／丶､　　/　　　　　　　（ ￣　　l
　　　 　　 　 ｀'ー'´　　 | .｀'ｰ'――┬― --､/ 　 _.ﾉ













　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,斗-､
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　　　　　　　　　　　　　　　　 Vﾍ　　　　　　　 　　 V〉,　`ー―┘　 　 　　_,＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　Vﾍ　　　つづく 　　　V〉, 　　　　　　 ,　≦,斗‐''
　　　　　　　　　　　　　　　　　 Vﾍ　　 　 　 　　　 　 V〉, 　　　, ＜＞'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　Vﾍ　　　 　 　　 　 　 V〉, 　 < ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Vﾍ　　　　　　　　　　 V〉 〈//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Vﾍ、 ＿＿＿＿＿_　 ,∧_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y≦三三三三三三≧厂



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解説編はこれで終わりです。
次回からの投下はちょっと間が空くと思います。

おつ
このへんはまったく知らんかったな

乙。>>751-752に一コマ抜けてね？

>>811
いえ、抜けてないです。今回は触れておきたいことを色々詰め込んだので、
やる夫たちのやりとりが不自然になっちゃってるのかな……。

説明不足な所があるかもしれませんし、わからない点があれば書き込んでくださいな。