1、夏子の作り方


琉球新報 2010年7月2日(金)
落ち穂 「夏子の作り方」

 夏子という名前から「夏に生まれたんでしょう?」と聞かれることがよくあります。そう、もうちろん、夏です!と言いたいところなのだけど、実は4月生まれの私。「生まれた時にすでに足を2カ所骨折していて、命があと何日持つか分からない、とお医者さんから親は言われたそうです。何日持つか分からない命に名前だけは付けなきゃいけない。夏の子どもみたいにとにかく元気に育ってほしい、そんな想いで夏子と付けたそうです」と答える私。一方で、いつも以上に明るい声で「沖縄と言えば夏!太陽の下で元気いっぱいに遊ぶ沖縄の夏の子どものように、明るく、元気に、のびのび育ってほしい、そんな想いがあるの」と答えることもしばしば。
 名前に託された本当の想いは当時の親にしか分からないのだけど、初対面の人にとっては、障がいがあり、車いすに乗っていて、身長も100センチ弱の小さな私のインパクトはかなり強いのです。この「いかにも障害者」という暗いイメージを払しょくさせるべく、初めの自己紹介は私にとって大切なのです。見た目のインパクトを覆すほどのイメージをどうやって伝えていくかが、悩みどころでもあり、私の人生の楽しいところでもあるのです。
 名前の由来で、辛い中でも元気に頑張ってい生きているという、涙をそそるような雰囲気を伝えたかったら前者の理由を使い、沖縄の南国のイメージと共に「私、毎日楽しいの、うふふ」という印象を作りたかったら後者を使う。同時に相手の反応も楽しむのです。
 今の時代、障がいがあるから大変で、でもそれを乗り越え頑張っている、という障がい者像はもう時代遅れ。障がいは個性、と言われたりもするけれど、障がいがポジティブなイメージを持ち、偏見がないという社会からも程遠い。現実では障がい者に接すると、恐怖や戸惑いの感情が湧きあがる人が大半ですよね。その当たり前とも言える感情を持ちつつ、今までとちょっと違った障がい者像、言い換えると、とっても魅力的な夏子像を与えられる連載にしようとワクワクです。一緒に考え、感じ、楽しんでくださいね。