やらない夫は弱虫のようです 第四十六話 そして10年が経ち・2
1189
┏
焚き火を付け、野宿にはいる準備をする。
┛
パチ ` ,ヾ、
` ヽ、 ,ノ )´( 、 ゝ ―――俺たちは、『ラーの鏡』を手に入れるために、
) Y 人 ヽ)ゝ' こんなところまで来たんだお。
(:.、)ノ' ノ ,( `ノル' パチ
パチ _,ノ .. t ソ
`ヘ( 从;: .:;、丿)ノ
i /_) ,; ;,,. Y
⌒ヽ .;: ::;, ヽ
丶 _人ノ, ;: ; ( ┏
从ヽ .;: ;,ノ あたたかで動物・魔物除けにもなる焚き火。
r===<彡-'"ソ_;;#;;从ノ="(ン(",,
(\,ノ´フ,{='に}/{てニ}r=ィへ,)≡==- その塩梅を、俺が引き受ける。
>`てk-'ト、iノ//ヽ)ー'レr小)人ミ三≧ ┛
(ノメ'トf //けi」(ノ'(ツハ)ト)三≧
^^''"'"ケ) (ハ)"(ハ)ヽ)"^^
.
249 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:33:15 ID:lGqN9xix [5/31]
1190
,. ._-‐- 、
/ >´⌒´ ̄ `ヽ.ヽ、
/ \ヽ、
/ . / 、 ヽヽソ
. / / / / ハ .i l i !/.ハ
〃i / / / / ! i i i !//!〉 ラーの、鏡?
. | ! l「Tヽ! i /__ハ-! .|/ソ 〉
八トN' t.;;} レイ;:;r;ト| | .〉' ラーの鏡とは。
/ ハ ´ ゞ::イ | !イ
/ /! \ ‐- .リ />'´ ̄ ̄ ̄`\
,' / i! ` ー‐‐</ // ヽ!
i i ハ! rトー'/ / i il /
| リハ! |i(( /イ ハヾ 、_____ i
ヽ /ハl }ー─ '´ \ー─‐'
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 隠された真実を見破るという、神の力がこもった鏡さ。
| ( ●)(●)
. | (__人__) 俺たちの目的に必要なんだ。
| ` ⌒´ノ
. | }
. ヽ } ……ラインハットを、魔の手から取り戻すために。
ヽ ノ
.> <
| |
| |
.
250 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:34:04 ID:lGqN9xix [6/31]
1191
____
/ \
. / \ さっきも話したけど、俺を追い出し、親父も亡くなった
. / ― ー \ ラインハット国は、かなりの状態になっているらしいんだお。
| (●) (●) |
. \ (__人__) / 俺の知ってるデールは…阿呆でなかったはずなんだけど。
. ノ ` ⌒´ \ でも、あいつはまだ子供だお。
/´ ヽ それに。自分の立場を守るために、いくらでも甘い言葉を吐くやつはいるから。
┏
普段は軽い態度を崩さないヘンリーなのに、
今日は何か話したい気分らしい。あれこれ、話題を変えて、真剣に話をしていた。
┛
___ 俺たちが調べたところによると、どうやら皇太后たるペシュマレンドラが
/ \ ラインハットの政治を牛耳っているらしいお。
/ _ノ '' 'ー \
/ (●) (●) \ 国王たるデールを差し置いて。
| (__人__) |
\ ` ⌒´ / 確かに俺の知る義母も、デールを王にしたがってはいた。
だけど、自身が政治に口を出すことは一度もなかったはずなんだお。
.
251 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:35:19 ID:lGqN9xix [7/31]
1192
_-─―─- 、._
,-"´ ゝ \ 俺のお袋も、それに昔の俺自身も。
/ ヽ 体が弱くて、よくぶっ倒れてたお。
/ ::::/::::::::\::ヽ
| / ヽ `::::´ /`ヽ 親父が俺を心配そうに見舞ってくれていたのを
l ( ○ノ::::::::::ヽ○.;l 俺は覚えてる。
` 、 (__人_) .;/
`ー,、_ / ……葬式の準備を、とか俺の目の前で相談する
/ `''ー─‐─''"´\ 側近を、どなりつけてたことも。
/ ̄\
| |
\_/ お袋をどれだけ大事にしてたのかも、
| 俺はみんな覚えてるんだお。
/  ̄  ̄ \
/ ::\:::/:: \ ―――だけど、お袋はほんとに弱かったお。
/ .<●>::::::<●> \ 俺以上に。
| (__人__) |
\ ` ⌒´ / 物心ついたころから、いつもお袋は、ふせってたお。
/,,― -ー 、 , -‐ 、
( , -‐ '" ) ……だから、親父がほかの女性に目が行くのも。
`;ー" ` ー-ー -ー' 嫌だけど、判らなくはないんだお。
l l
.
252 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:36:34 ID:lGqN9xix [8/31]
1193
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/ ̄\
| |
\_/
ノ L__|__
⌒:::\:::::/::\
/ <●>::::<●>\ 「 ふざけたことを言うなっ!!
/ (__人__) \
| |::::::| | ヘンリーはまだ生きている!! 」
\ l;;;;;;l /l!|
/ `ー' \ |i
/ ヽ !l ヽi
( 丶- 、 しE |
`ー、_ノ ∑ l、E ノ ――――あのセリフに、どれだけ救われたか。
レY^V^ヽ
俺はだから、親父を嫌いにはなれないんだお。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
__
/..::::::::::::::..\ 「血を残すのも王の仕事」とか、俺の前で平気で言う側近もいたお。
/..:::::::::::::::::::::::::.\
/..::::::::::::::::::::::::::::::::::::.\ ペシュマレンドラは俺だってそんなに好きじゃない。
| :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: | だけど、親父の選んだ女だお。
\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/
,. -‐'´..:::::::::::::::::::::...`丶、 糞ガキで悪たれだった俺を、それでも王位継承者としようとした。
ノ .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::....ヽ 親父が、選んだ女なんだお。
.
253 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:37:41 ID:lGqN9xix [9/31]
1194
〃 i,
r' ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈 蛇の道は蛇、とでも言うのかね。
! :l ,リ|} |. }
. {. | ′ | } その頃サンタローズの奥の洞窟にいた俺の所にも、
レ-、{∠ニ'==ァ 、==ニゞ< ラインハットの噂は「いろいろと」届いてたのさ。
!∩|.}. '"旬゙` ./''旬 ` f^|
l(( ゙′` ̄'" f::` ̄ |l.| 「あの王妃はどうやら魔物くさい」ってな。
. ヽ.ヽ {:. lリ
. }.iーi ^ r' ,' 俺はこの通りの魔物だし、別にリュカでもなけりゃ、
!| ヽ. ー===- / 教える義理はなかったんだが…。
. /} \ ー‐ ,イ
__/ ∥ . ヽ、_!__/:::|\
┏
代わる代わるに、俺たちは新参者のピエールに事情を話していった。
あまりに、ヘンリーが痛々しくて。
┛
ハ
, ' .丶 スミスの言うとおりだぜ。
,. '´ ` 、
γ ● ● ヽ 人間には人間の、魔物には魔物のルートがあるのさ。知ってるだろ?
..! ゝ_‐----‐_つ .}
. 丶.. ___ _ ,, .. ' な~んか、ラインハットは臭かったんだよ。「いろいろと」ね。
┏
サンタローズの村に着き、その状態を見るまでは、
ヘンリーは大して以前の自分の国のことを知りたがらなかった。
むしろ知るのを避けていた、かもしれない。
┛
.
254 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:38:06 ID:lGqN9xix [10/31]
1195
⌒Y⌒
. ´  ̄ ` .
. / / / i、 、 \ 、
. / /////i .l ヽ ヽ ヽ. Vi お二人はその時にリュカたちの仲間に?
i i i i l十ト、N l-.ハ i !〉
レ'从N O Oi.l トvヌ
iハ"" _ ""リ lノト ヽ
__| i> -- -v'⌒.リ_」ハ.」
/ハfメi / //⌒V
┏
けれど。10年以上離れていた村に、戻って。
┛
/ ̄ ̄\ ああ。
/ノ ヽ、_ \
. (●)(● ) | スラリンとスミスとは、俺とヘンリーがサンタローズに「戻った」時に、
. (人__) | 仲間になったんだ。
|⌒´ |
. | / その時は、こいつは大してラインハットに興味を持ってなかった。
. ヽ / 当然だと俺も思う。
ヽ /
.> < ――――自分を裏切り、奴隷にした義母がいるところ…だからな。
| |
| |
┏
変わり果てた村を、見て。ヘンリーは、変わった。
┛
⌒Y⌒
. ´  ̄ ` .
. / / / i、 、 \ 、 ((戻る?))
. / /////i .l ヽ ヽ ヽ. Vi
i i i i l十ト、N l-.ハ i !〉 ((…奴隷?))
レ'从N O Oi.l トvヌ
iハ"" _ ""リ lノト ヽ
__| i> -- -v'⌒.リ_」ハ.」
/ハfメi / //⌒V
.
255 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:38:56 ID:lGqN9xix [11/31]
1196
____
/ \
/ ─ ─ \ スミスの話を聞いて、俺は合点がいったんだお。
/( ●) ( ●) \ 以前政治に口を出さなかったペシュマレンドラが、今そうしてる訳が。
| (__人__) |
\ ` ⌒´ / ラインハットは魔物に…支配されてると。
/ ー‐ ヽ
/ `
┏
きっと、平和なサンタローズの村だったならば、
ヘンリーは変わらなかっただろう。
┛
____
/ \
/ ─ ─\ しかしペシュマレンドラは皇太后として現に今ラインハットにいる。
/ (●) (●) \
| (__人__) | 証拠がなきゃ、誰も信じないお。追い返されればまだいい、
\ ` ⌒´ ,/ 殺されてしまう可能性も高いお。
ノ ー‐ \
何かないか。調べに調べて…一つの伝説にいきあたったんだお。
┏
城に戻ろうとも言わず、
きっと俺たちと旅を続けよう、と思っていたと思う。
┛
.
256 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:39:35 ID:lGqN9xix [12/31]
1197
____
/ \ それが、『ラーの鏡』の伝説だお。
/ ─ ─ \
/( ●) ( ●) \ 邪悪なものを祓い、真実を見せる神器だお。
| (__人__) |
\ ` ⌒´ / 俺たちは『ラーの鏡』が、通称「神の塔」と呼ばれる
/ ー‐ ヽ ところにある、ってとこまでつきとめた。
/ `
┏
だけど、そうはならなかった。
ヘンリーはサンタローズの様子に、自分の使命を感じ取ったらしい。
┛
____
/⌒ ー、\ その塔は、神に仕えるものしか入れないそうで。
/( ●) (●)\ で、俺たちは修道女であるマリアに頼んで、一緒に来てもらったんだお。
/::::::⌒(__人__)⌒:::::\
| |r┬-/ ' | 神の塔とかご大層な名前の塔のくせに、中は魔物でいっぱい。
\ `ー'´ / どうなってんだおって感じだったお。
┏
…ラインハット国の、第一王子としての。
自分の、使命を。
┛
.
257 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:40:59 ID:lGqN9xix [13/31]
1198
, 、、 ,,
, ' ____ " 、、
, ' /⌒三 ⌒\ ', やっと一番上まで登って、よしもう少しだとか思ってたら、
; /( @)三(@)\ ; 今度はなんと通路が途中で切れてるんだお。
; /::::::⌒(__人__)⌒:::::\ ;
| u |r┬-| u | ; ぽっかりと穴があいてて、そのまま進めば
\ u `,. -'"´´ ̄`ヽ ; 下にまっさかさま。ジャンプできる長さでもない。
_ / (___ | ',
,、' / | ; さてどうしたものかと思ってたら、
、 ( ̄ | ;
 ̄ ̄ ̄| | ;
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
_____
, x-‐…ー- 、 `ヽ、
/,∠ -―- .._ \ \
// , / ヘ \ \
, ' / / / / / \ /
/ 厶⊥」..._// / リ ∨ i
厶イ / ヽ ` \,イ ! / | マリアが、歩き始めたんだお。
| { __、 __ \ | i / , |
j/j/l イバ ` 乢/ / ,′ スタスタとないはずの通路を
,' tkノ 丐=ミ / // / 歩き始めたんだお!
{k.ノハ/ // /ー┐
| ' `¨ z,彡kj/} /ー‐┘ いや、あれには参った。
八 、 __ - ソ ,′ あれこそ神の試練だったのかも
/ >、 / ̄匚彡 | と思うお。
/ //`'ーr―ァ' ´ イ |
/// / /\_/ | |
// ( ( / /\ | |
. // \ / x-<.: : .:∧ { '.
// ,x==彡' / ヽ: : :.| ヽ \
{ / ,《 / / i.: .:lノハ\ \ \
'( / /.:| i |/:.:,'|,小. \ \
,イ / : : | | ;' j : : / |/// ! )、 \
〃| /|: : :∧_| !ノ.:., ' |// | | \ \
{{.∧ 乂.: .: .: :| |.:,イ レ′| | } }
〃 j,厂|.: .: : : :| | /| | | | ,′ ,′
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
いや、本当に信仰の力ってのはすごいと思ったお。
俺みたいに、何でもかんでも疑ってしまう人間には、きっと神様も味方しないんだろうなって思っちまったお。
.
258 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:41:51 ID:lGqN9xix [14/31]
1199
(ヽ三/) ))
__ ( i))) マリアのおかげでラーの鏡も手に入れた。
/⌒ ⌒\ \
/( ●) (●)\ ) よっしゃあこれでラインハットに飛びこめるぜ! …って
./:::::: ⌒(__人__)⌒::::\ 俺たちが意気揚々としてたときに、
| (⌒)|r┬-| |
,┌、-、!.~〈`ー´/ _/ おまいさんたちが責め込んできたんだお。
| | | | __ヽ、 /
レレ'、ノ‐´  ̄〉 |
`ー---‐一' ̄
__
_..,.,.,.、、、,.,.,_ _,/´ ̄`ヽ、
,.:.´: : : : : : : :ヾ:.:/: :`: :.、 )
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
/: : : : : : . . . . . . . . . . . . . .: : :.:.:'.,
/:.:./: : : /: : :/:.i: : : : : : ヘ: :ヘ: : :. ',
i/: : : : :/: : /: :.|: : ∧; : : ヾ: :|: : : } うっ。…申し訳ありません。
{:.:./////ー':|: /ー'|: : :|ヽ、|:.:.,:.:i
∨ /| '´ - |/ - |/ヘ|/ |:.:.:|:./
!/i:.:.:l  ̄ ̄` ′ ´ ̄ ̄ |:.:.:| }
. 〈 .|:.:.:! |:.:.:.
`|:.:.:| ∪ |:.:.:l. ┏
!:.:.| r――┐ ,. !:.:.:!:. くるっとヘンリーの表情が変わる。
|:.:.:| \ ` ̄ ̄´ ,.イ |:.:.:|
__ __ ヘ;:.:!>{::`:ーr:┬:r‐:´::::}<!:.:/ > そして面白そうにピエールに突っ込んだ。
/´:::::::::::::∧`\ヾ!:::/´ ̄>C< ̄`∨::|/ !{_ ┛
:::::::::::::::://::::∨♀´ ̄  ̄`Y´ ̄  ̄`♀∨ノ
:::::::::://::::::::::::| 人 |
:::://::::::::::::::::::! /´ `\ !
∨::::::::::::::::::::::ノ /´ `\
.
259 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:42:28 ID:lGqN9xix [15/31]
1200
_∩
/ 〉〉〉
{ ⊂〉 ____
| | /⌒ ⌒ \ 何を謝ってんだお? むしろ感謝したいくらいだお。
| | /(●) (● ) \
| |/:::⌒(__人__.)⌒::: \ おまいさんたちが飛びこんでこなきゃ、俺たちひょっとして
ヽ | |,┬‐ | | あの大波にかっさらわれてたかもしんないんだお。
\.\ `ー ´ /
\ __ ヽ
ヽ (____/
┏
もともとのヘンリーは、こんなにお調子者を気取らなかった。
だけど、変わった。
十年前のあの時から。
┛
____
/_ノ ヽ_\
/。(⌒) (⌒)。\ きひゃー! 目的がやっと見つかったかと思ったら
/::::::⌒(__人__)⌒::::::\ その直前に自然災害!
| ヽr┬-/ |
\ `ー'´ / これこそ神を呪いたくなる運命って奴だお!
だけどそうならなかった。ありがたく思ってるお。
.
260 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:43:14 ID:lGqN9xix [16/31]
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そして―――…、十年ぶりに戻ってきた、
サンタローズの村を見てからは、なおのことに。 _
┛ /| r`l
|::|└:|
|::| ..:::|
,t |::| ..:::ト、
-}ト 、 ト、 /T|::|:::::::|:::
「嘘…だお?」 Y:ヒ、 ,、 || r┘.:|-┐|.;|:|::|:::::::|:::
工|工|工l工エエエl\ `=|;:{二 |:| /\.||...::/〉:::::::,⊥;:|::rェェェェ
__|___|_,工工]エエ}ニTニ7〉ェェェュ |;:厂 .r┴:/.::.:.└┐/.::: __|_rェェエlエ工
_|_|_;工工]エlエ|-[]─[[:ロ::ロ:{ |:;| |..::::':::: .r:、:...|:::::r┘..;;'エエ工[工[
__|_|_l工工;エエ|____]〕ニlニl 、.v,,!;:.v、ミ.:ゞ;yv;ゞ;ゞv;ゞ ,工/\>工工工
_|工|_;工工]エlエ|┴┬/>─‐> 、.v,,;..v、ミ.:ゞ;yv;ゞ;ゞv;ゞ.v;ゞゞ,上/ ./|エエ;工工
__|_|二l工工;エエ}┬//.::::/ 、.v,,;..v、ミ.:ゞ;yv;ゞ;ゞv;ゞ,v,,v,vゞゞ;;ゞv;ゞゞ,.上ェΥエl エ[工:[工[
_|_|_,工工]エlエ}//.::::/v、::.;.;... ;.w;ヾ.:゙;;ミ゙':ヾvv'w:,ゞ;;;ヾ.:;ゞ彡ゞ/.\\:|エエ{工[工工
__|二l_l工工;エエl/,,;;,/ ....-::.;.;::.::::-..... .. .... . ... ... .`"''、v,;.wVゞ;v;ゞ;';\::..:\{エlエ[工工工
_|_|_l;;工工;エエl-_L-|,,;..v、 ....::. ::: .:.;:へ.;.'.. ._... .'.. __ `.';;::.._/\二:トニH.{エエ[工l工工
、.v,,;..v、, 工工エエ|-l_ L|vゞ;ヾ.:゙;;ミ゙',,,ゞ、.v,,;..v、 ~~. .::/vへ\-/:/\へ . 、.v,,;.v<|ニHニ|エエ}工]工[ニ
ゞ;爻彡ヾ;ゞ;yゞ、.vk,,..vl,|ゞ゙;ミ゙、.v,,;..v<>'ニニTニニTニTニ>/./,:、:.:.\;ゞミ.:ゞ;y;、HニH.kv,l.v[工;工工
”v:";v;oゞゞ;yゞ ゞ;爻彡ヾ;,,;..v、,...:/ ./:/.ー~「l─「l─「l-|:|./ <;~~`.::: llニコ;;::/>.爻v;oゞ;ゞ彡ゞ゙;
.:゙;ゞ;ヾ.:゙;;ミ゙':,oヾv”v':,ゞ;;ミ゙'爻。....:~~'~<二二二>~ ~~ ~/ <\\ ゞ;ヾ.</:ゞ;yゞ゙;;ミ゙':,;oゞ;ヾ;
.:゙;;ミ゙':,”:";oヾv;;ミ゙'爻vゞ;ヾ.:゙;;ミ゙':,;.;:: .:. .... ..' . ....::.;.~~`´:~:.::~~.~`.... .. . __ ゞ;ヾ゙ヾ;ゞ;yゞ;ミ゙':,ゞ.彡
「これが? これがラインハット兵がやったことだ、っていうのかお?」
.
261 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:43:52 ID:lGqN9xix [17/31]
1202
┏
やっとの思いで奴隷の身分から解放された俺たち。
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┏
特にヘンリーは喜んでいた。これで俺を、村に帰してやれる、と。
┛
/.: ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
/: : : \
/: : : : \
/: : : : : : \ 「 どういうことだお…何故、何故村が焼き討ちに? 」
/ : : : : : : : ___ノ'′ ゙ヽ、___ \
l : : : : : :.; '⌒` ´⌒ヽ l
| : : .::;;(。o〇 ) ( 〇o。);;:: | 「 パパスが俺をさらった!? 何故! 何故そんなことが! 」
l : : : :°o゚゚~'"´ `"~゜o゚;° l
\ : : : : : : 。;゚( j ) ; 。+/
\: : : : : : ::`┬‐'´`ー┬′ + /
/ヽ: : : : : : : |/⌒⌒、| イ\
: : : : : : :゚: : : ゚´ ̄~:j ̄` ; \
: : : : . : : . : : ; '"`` + \
: : . : . : . : . : . °
: . : : . : . +
┏
奇跡的に生き残っていた村民が、教えてくれたんだ。
┛
┏
ラインハット王子ヘンリーを誘拐した罪により、
ある日村に兵士たちがやってきて……村を、滅茶苦茶にしていった、って。
┛
.
262 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:44:42 ID:lGqN9xix [18/31]
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「 俺はもう泣かない。だから、だから今だけは 」
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/ ノ' ^ヽ_\ ┏
. ゚ / 。;'⌒) (⌒ヽ\° そう言って、ヘンリーは村でずっと泣き続けた。
. / o'゚~(___人___)~o°\゜
. | ゚ |/⌒ヽ| ゚ | 子供みたいに。俺と、父さんと、村に対する罪悪感で。
\ ` ⌒ ´ / ┛
┏
わんわん泣いて、数時間。
やっと落ち着いたかと思ったら、ヘンリーは言った。
┛
/  ̄ ̄ ̄ \:
::/ ::::\:
;: | :::::::| : 「 リュカ。この村の洞窟にはパパスの
\.....::::::::: ::::, / 残したらしいものがあるんだおね? 」
r " .r /゚。
:|::| ::::| :::i 「 それを見つけたら、でいい。
:|::|: .::::| :::|: 俺と、一緒にラインハットに…行ってくれないかお 」
:`.|: .::::| :::|_:
:.,': .::( :::}:
:i `.-‐"
┏
反対する理由なんかなかった。
俺とヘンリーは洞窟の中に入り、そしてスラリンとスミスを仲間に加え…、
スミスたちの一言で、俺たちのこれからの行動は確定されたんだった。
┛
.
263 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:45:30 ID:lGqN9xix [19/31]
1204
, '´  ̄ ̄ ` 、
i r-ー-┬-‐、i
| |,,_ _,{| 「 次はラインハットにいくのかい?
N| "゚'` {"゚`lリ
ト.i ,__''_ ! 魔物の俺たちが言うのもなんだが、
/i/ l\ ー .イ|、
,.、-  ̄/ | l  ̄ / | |` ┬-、 やめといたほうがいいかもしんないぜ。 」
/ ヽ. / ト-` 、ノ- | l l ヽ.
/ ∨ l |! | `> | i
/ |`二^> l. | | <__,| |
_| |.|-< \ i / ,イ____!/ \
.| {.| ` - 、 ,.---ァ^! | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l
__{ ___|└―ー/  ̄´ |ヽ |___ノ____________| 「 うん。オレもそう思うな。
}/ -= ヽ__ - 'ヽ -‐ ,r'゙ l |
__f゙// ̄ ̄ _ -' ハ |_____ ,. -  ̄ \____| 今のラインハットは危険だよ。
| | -  ̄ / | , ' .丶 | ̄ ̄ ̄ ̄ / \  ̄|
___`\ __ / ,. '´ ` 、__ / , / ヽi___.| だって、 」
 ̄ ̄ ̄ | _ γ ● ● ヽ l | ! ̄ ̄|
_______l ..! ゝ_‐----‐_つ .} l| |___|
. 丶.. ___ _ ,, .. '
「 魔物が支配してるみたいだからね。」
.
264 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:45:59 ID:lGqN9xix [20/31]
1205
___(⌒ヽ
/⌒ ⌒⊂_ ヽ
(⌒ヽ∩/( ⌒) (⌒) |(⌒ヽ 大体だお―、十年も奴隷やってきた俺たち、
ヽ ノ| :::⌒(__人__)⌒ ::| ⊂ `、 そう簡単なことでめげる訳ないっつーの、って話だお!
\ \ )┬-| / /> ) ))
(( (⌒ )、 ヽ_ `ー‐' ,/ / / ええもう大変でしたとも!
\ \ / /
ヽ_ ノ │ 毎日怒鳴られるわ石運ばされるわ鞭打たれるわで!
__ __ ___
i´ ̄´ `> 、 /´ ̄ `ヽ
r─/´ ヽ、/ }
イ / / /´ ̄`ヽ ′
く / :/ ヽ.`\
/∨! \/.:// :/ :! ヽ ヾ :|
ヽ トヽ/ :// :/ :/ .i :|.:| ヽ i ト、|
/ヘ!∨ :レ′ / / :/:/! /|.:| ./ .i | ! リ 奴隷!?
ヽ__レ′ | >メ<,,._/ノ/ / l :|/ /! iリ
/ !/ヤ⌒メ\.:/ / / /メノノヘ:/ あなたたちは、奴隷だったのですか!?
/// / / {らc:j ヽ/ /イハ;jゝヘハ
/ // /イ :/ `='′ {;ソ イ:ヽ.:|、
// / !::に} 〉 /:| :|ヘ
|リ :/ || |:\ __ / | :| :ト、
| :/ :レ′| \ ´ / /| ハl :}
_____.レ′ __.|___>._ _ _/ / ハ :/ リ.ノ
..,,、r=''""´:::::::::::::::`≧x、、_,|!:::::::::::::::::::::::::| |::::|l / :/ ______
::::::::::::::::::::::::::;r=====ゝ>:::::::::::::::::::::::| |::::||ユ、,ムr=''"´:ヘヽ:::::::::::`ヽ、
:::::::::::::::::::::::/ /:::::::::::::::::::::::::ヾV´ ̄ ̄``>v<´ ̄`ヽ;:::::::::::::::::\\::::::::::::ヽ
';::::::::::::::::::/ /:::::::::::::::::::::::::::::::/ \\、_((⌒__,/∧::::::::::::::::::::\\::::::::/
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.
265 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:46:41 ID:lGqN9xix [21/31]
1206
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ー)(●) ああ。そうさ。十年。
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ 俺たちは、ゲマにつかまってから十年。
. | } 奴隷として、過ごしたんだ。
. ヽ }
ヽ ノ ここにいる、マリアもそうだ。
.> <
| |
| |
┏
十年。それくらいの長い時間。
俺と、ヘンリーは一切の自由をはく奪され、奴隷として働かされていた。
┛
γ⌒) ))
/ ⊃__
〃/ / ⌒ ⌒\ あんときの辛さに比べたら、大抵のことは乗り切れるお!
γ⌒)( ⌒) (⌒) \ ∩⌒)
/ _ノ :::⌒(__人__)⌒ 〃/ ノ 何回マジで死ぬ、と思ったことか。
( <| | |r┬( / / ))
( \ ヽ \ _`ー‐' /( ⌒) 名前も知らない宗教の、素敵な神さまの神殿を作るだとかで、
/ / 俺たちはもうゴミ扱いだったお! もう素敵過ぎる!
.
266 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:47:09 ID:lGqN9xix [22/31]
1207
::::::... ..丶
:::::::.... ...\ もう素敵過ぎて、俺たちの心はズタぼろだったおよ。
:::.' ──-.. \
:::::::... ⌒__丶 \ そんな時、俺たちはここにいるマリアに会ったんだお。
:::::::::.... .'::. ).ヽ .ヽ マリアは元々奴隷じゃなかった。
:::::::::::.... __ ..丿 ヽ
:::::::::::... ヽ .ヽ 俺たちを閉じ込め、奴隷として労働させた、
:::::.._ ノ ヽ.____丿 .丶 素敵な神さまの教団の、信者だったんだお!
::::::::::::::.... ..::ノ .)
:::::::::::.. ../ .ノ それなのに、その素敵な神さまとやらは、マリアのほんのささいな
:::::::::.⌒ " ..ノ 小さなミスで、奴隷の身分にたたき落としやがったんだお!!
:::::::::::::::::.... ....::::::../
:::::::::::::::::::::.. ......::::./
┏
自分が何を作らされているのか、何をしているのかすら教えられず、
ひたすら十年。俺たちは酷使されまくっていた。
┛
´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::: \
/: /  ̄ ̄ ̄ ̄ ` ,:.:.:.:.:.:.:.:.:. :::::::::::::::: \
" /:.:.イ:.  ̄ ̄ ̄ ̄ :\ \:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::: '.
/.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:` 、 V :.:.:.:.:.:..:.:::::::::::::::::|
/:.: /:./ :.:.:.:. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. V:.:.|.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::|
| :./:./|::.:.:.:.:.:.|ヾ :.:.:.:.:.:!!:.:.:.:.:.:.:.:. |.:.:.:.::.:.:::::::::::::::::::|
そうじゃ。 |.イ Li__/Llj !:.:.:.:.:.:.!!:.:.:.:.:.:.:.:. |:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::|
|:.:.:| __ ,,  ̄ ̄ L_:.:.:.:.: /:.:.:.:.:. |.:.:.:.:.:.:::::::: ト _ノヽ
妾は「光の教団」という、教団の |:.:.:| _ `ー \/:.:.:.:.:.:.: |/:.:.:.:.:.::::::| |
信者じゃった。 |:.:.:i ==ミ、 , -____ /:.:.:.:.:.:.:.:/ :.:.:.:.:.:.:::::: ト ___ノ
|:.:.ハ ℡㍉ '勿oTミ / イ:.:.:.:.:/⌒Y:.:.:.:.:.:.:: |
ああ、本当に熱心な、信者だったよ。 N__ハ 心j ぅ込:j '/ !:.:.:.:/ ⌒| :.:.:.:.: |
! i::::: / └‐|'ノ .イ:.:.:.:.:.:.: |
! i ' ::::::::::::: r‐イ:.:.| :.:.:.:.:.:.:...!
!人 イ:.:.:.|.:.:.| .:.:.:.:.:.::. :!
!:.:.:.\ ー_- イ:.:|:.:.:. /: | :.:.:.:.:.:. 八
!:.:.:.:.:.:r> .. ___ -‐'´ | ⌒V ヘ从 :.:.:.::/:.:.::\
.
267 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:47:50 ID:lGqN9xix [23/31]
1208
l: : : : : : : : :| :l: : : : : : : : :| //: : : : /: : : : : : :l:| |: : : : :|: : : : : :|: :|
l: : : : : : : : :| :l: : : : : : : : :|〃: : : ://: : : : : : /:l |: : : : ハ: : : : : |: :|
{: : : : : : : : :| :|: : : : : : : : :|: : : :.:.//: : :._: :. :イ_」 `丶」 \: : ::|: :|
|: : : : : : : : :| :|: : : : : : : : :|: : : :.//>'"└'´ 入 j: :| だが、妾はその時、教団に対して
}: : : : : : : : :! :|: : : : : : : : :|: : / /: :`|: | 疑問を持ちだしてもいたのじゃ。
__」.: .: : : : : : :. :|: : : : : : : : :レ´ 、 / : : : :レ′
ト: : : : : : : : -l: : : : : :.l: : | _... 、`ヽ-' /z=rゝ,': : : : | 信者だったころ、神殿工事の手伝いに
| }: : : : : :/ ,-|: : : : : :.l:.l:.| -≠ァ=¬=z イム。ノ /: : : : :| 出かけての。
__ | |: : : : : :{ l: :|: : : ::|:ハ:| 弋辷ヘノ └'′/l、: : : :.|
| l: : : : : :.', {`ヽ_: : |ハ| /v|∧ハ/ その時、妾は見た。不潔で、ボロボロな
| |: : : : : : :\`丶 \| c ヽ /: :/ 者たちが働いているのをな。
| ハ: : : : : : : `ヽ- 、 ` ノ: :/
/: :.ハ: : : : : : : : V \ イ: :/
/: :. :/ ヽ: : : : -―}\ __, ' / | /
. /: : : : : : 入/ ヘ \ ヽ、 / K――、
/: : : >‐'" \ \l > 、 ‐- 、 _ イ | ハ |
./: :./ \ \ > 、」/ | | l | |
.
| |i | .! |i .! l .! ヽ
| | i i|,l! _|!i/! l .! ',
.| |,, -ゞ ´  ̄ ¨" t -_..ゝ
∧ ! { ´ ̄ ヽ f‐''
' .゙、 ゙、 ゙、 , -=、__ ′
¨ヾ、 、ヽ 、 ヽ .!r゚| ト
λ、fヽ、ヾ ゝ `ヾソ 丶
.(〈 ` ' ヽ、 妾は聞いたよ。その者たちより、よっぽど
`^ーj ノ 血色もよく、頑丈な奴らにな。
|`‐f ′
| l ∧ _ ノ 「この人たちは何をしているのですか、
',.!{ / 手伝わなくてもよいのですか」とな。
!',ヽ 丶、 /
⌒ヽ 、 ノ
ヽ ,r`フーr ´!|
、 ヽ ,!´ .! /| |
丶 ヽ |.! ! | |
ヽ ヽ | ! !/| |
. ヽ ,r┴、 ト、! .!| |
.
268 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:48:31 ID:lGqN9xix [24/31]
1209
/:.:./:./:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.j!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
/:.:.:.:./:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:l:.||:.|:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.!:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:',
/:/:.:.:.:.:.:.:.::/|!:.:.:.:.:.:.|」 | |:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.!:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
,:./:.:.:.:r― ´ ー―'´ `ー 、:.:|:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!
,:.:リイ´ `ヽ:.:.:.:}:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:| _
.':./:.:.:! \/:.:.:.:.:.:.}:.:.:.:.:}─‐ ' /
|:.|:.:.:.:', __\ ,ノ__ /:.:.:.:.://:.:.:.:.:.ト、___/ 彼らは言ったよ。
|/|:.:.:.:.', ''7。ネミ、 ' ,=テ。≡ヌ- /:.:.:.:.://:.:.:.:.:.:.'
. ト、:.:.:ハ ぅ_ソ _ぅ__:ソ /イ:.:.://_ヽ:.:.:.:.' 「こいつらは奴隷だ、
ト、∧ 〃j/ /( |:.:.:.:.! 教祖さまに仇をなした者たちだが、
|:.:.:.:.:, ノ/:.:.:.:.| 死ぬまで働いてその罪を拭う機会を
|:.:.:.:.:.., ` .ィー:.':.:.:.:.:.:.:.| 与えられているのだ」
|:|:.:.:.|:.ヽ. ‐- !:./:.:.:.:.:.:/:.:.:.:|
|:|:.:.:ハ:.:.:.:>.. , |:.l__:.:.:.:,イ:.:.|:.:.| とな。
|:|:.:.:|:.}'⌒゙|:.:.|`:>、 -=' __ノV ヽ/|:.:.:.:|:.:||
||:.:.:.|:.| |:.:.|:.:| `{/! ̄ ̄ / /:.|:.|:.:.|:.:l:|
||:.:.:.|:.| | ̄`_Y⌒ヽ==- 、_ / /:.:.|:.|:.:.|:.:.||
ノ:.:._ノ=| |:::::::ノー(⌒::::::::::::/ , ` ー :._!:.:.l|
┏
マリアも吐き出したかったのか、一気にまくしたてるように言う。
┛
/ / 〃 _ .. -― - .\丶
/ 厶 ´ i `` :.
i ,イ i ィ | ! ハ
ト、 _」 / | ハ N ト ヾ、
!  ̄ j / i | ,ハ i |イ i |ハ
` ー=彡 .′| i 厶イ ーL -一 ー-ト ' }ハ i
i | | { -一 _ ト、ト、 | 妾はそれまで、教団のために、親も家も捨て、
| /! イ | ____ _ .: ` ' ` i丶 全てをかけて、働いていた。
l i `トハ i |'¨7抃ミト .'__ /.: |
} { 廴`ト ト、{ ゞ-゚'’ 丐7У.:i ' 『やがてこの世に、全てをおおう闇の時代が来る。
jト、 ` `¨ 厶:. :| i だから、光の国を作り、光であるものを闇から守る』
i ′:.:.7`:. 、 ′`v ヽノ
| i.:.:.:.:.:.:. 、 __ イ ……そう言った、教祖の言葉に感動してな。
| |.:.:.:.:.:.:} \ `´ イ |
, 人:r…く ` r- _.:1: i | だから必死で働いた。仲間も集めた。
} / /.:.:.:ヽ ヽ ハ´ {. | | 言うことをきかない奴らなど、闇の劫火に焼かれて、
/ /.:_.:./丶 { トミx ':.. |:. | 死んでしまえばいい、とすら思っていた。
/ 厶才:::::`ヽ } :. } ト、 }:. :
. /;ヘ::::::::::::::::::::::ヾr- ゝ ! i::::`:ー'┐
У 丶::::::::::::::::::{ .:「`丶 , -'Y⌒ヽ:::::::::|丶
.
269 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:49:06 ID:lGqN9xix [25/31]
1210
/ : :/イ´ .. ---- .. `ヽヽ: : :ヽ
/ . : / イ´ : / : :l: :| i : : `ヽ、i: : : : . だが、のう。
.′ : /: :/: . イ: : : | |i: : .ヽ: : l: . : :i i 妾は疑問を持ってしまった。
i.! : : i|: :|: : : i |. :| . . l :|| : . .|| :|: : :| l
|| :|: :|! :|! : _」 L⊥: ⊥ハ: : :|! : || : : |:.| 妾や妾が聞いた奴よりほど年若い、子どもと言っていい
∧||: |: :|:/´ _ノ  ̄ `ヽ|l : :i.|:.レヘ 年端もいかない者たちが、大人よりひどい労働に
〈. |l i:l:. :{ `^ー |l: : リ: | ノ つかされているのを、見てしまってな。
` |从. : l j.l : 从:|´
|.:.{`ト{ ≡≡′ `≡≡' イイ }.:.:! ……教団のやつらは、それを見抜いたんじゃろうな。
|.:|トミ.! レノ.i.:.:′
|小: :.:.:、 ' 、 ノ:.: :/:/ 今にして思えば、本当に小さなミスじゃった。だが、
|:.:ハ :_ :\ ー、―‐ノ /--v':.l{ あいつらは許さなかったよ。そして、奴隷階級行きじゃ。
|/:.:.:i´ i`{:.i`i .  ̄ ィ:´i:.j }:.:.|
}:.:.:.:.| |:.|i:}  ̄ {:.:.l|:|/ ハ:.l
ノ:.:.:._:| レ' ` ー| ト :.:.|
┏
これは全て過去の話。
……だが、俺達三人には、けして忘れられない話。
┛
, --――- _
. イ: : : -――- 、: : : ``丶、
. /: :∠ -――- 、 ` < l: : ` 、
/: :/: : : : : :./: : : : :`丶、 `l: : : : : \ そして、2年じゃ。
. /: :/: : : : : : //: : : : : : : : : :\|: : : : : :l: :ヽ
/:/: : : : :./: ://: : : : : /: :l: : : : :|: : : : : :|: : : ', ヘンリーには、すぐ会えた。
. /:/: : :/: : :/: :///: :. : :.イ: : ll: : :.| :|: : : : : :|: : : :.',
/:/イ: :/''" ̄ ̄  ̄\/ |: : ||: :.:.|: |: : : : : :|: : : : } ヘンリーは明るかったし、リュカは強かった。
イ/ └r' `ヽ _,.>' L: :/: |: : : : : :|: : : : l 妾の心は慰められたよ。
|: : : :| _ `ヽl : : : : : |: : : : l
|: :. :.ll '"7ヌzミ 〉: : : : :l: : : :/
レ___」.} 弋_cノ -テモ=z、 ,': : : : : l: : : ,' ―――だがその頃、妾たちのエリアを管轄する
. | `" 弋゚cン` /: : : : :/l: : : l 監督が変わった。「鞭男」とかいう奴に。
. l , `゛¨ //: : :,イ::|: : : ',
', 〃―" ,ノ:::l: : : :ヽ あいつはほんとに酷い奴だった。
. 人 r、__ -r '": : :ハ: : : : :\ 老人や子供を使い殺しにし、……女には、
f: :.> 、 ` ‐―┘ / j_: : /__ゝ_: : : \ 乱暴を働こうとした。
|: / \ / ∨::::::::::::/ ̄`ヽ
レ' /:::ト―r‐< / /::::::::::: / …妾にもな。
l l::::.| | ヽ / /::::::::::::: l
| |r‐| | / /:::::::::::::::::|
.
270 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:49:55 ID:lGqN9xix [26/31]
1211
┏
ヘンリーとは十年、マリアとは二年。
┛
____
/::: \ そう、あの糞野郎の「鞭男」は、何を血迷ったか
/:::::::::: \ マリアに乱暴をしようとしやがったんだお。
/:::::::::: \
|::::::::::::::: | 俺はもう我慢できなかった。んで、リュカを巻き込んで
/⌒::::::::: ⌒ヽ/ 鞭男を半殺しの目にあわせてやったんだお。
;/:::::::::::: \;
;/:::::::::::::: \ ヽ; ……まぁ、当然のごとく取り押さえられ、牢獄行きだお。
┏
俺たちは、地獄をともに味わってきた。
┛
___ _
-‐''"´ ̄ ` `''ヽ=、
,.‐''"´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
r(:::::::::::::::::,、_ィ::::::::::::::::::::::::::::::::::
一つ、聞いていいか? ゞ, rr~ヅ ミ:::::::::::::::::::::::::::::::::
フハ ミ::::::::::::::::::::::::::::::
お前らは今、自由の身だ。 . l __,,. -─¬,〈::::::::::::::::::::::::::::::
どうやって、抜け出したんだ? 〉゙゙`'''Tjフ ̄ ヽ::::::,ィ ,、ヽ:::::::
. / ,.‐'" }:::/ /ヽ ハ:::::::
/.. "´ 2ノ/ l:::::
. ヽ.ニ,` __/ :l::::
. 'ーr_‐;ァ ィ l:::
〈.. /:{ ヽ
`} /:: ! i
丶、,、. イ:::::: !
<…それは
.
271 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:50:26 ID:lGqN9xix [27/31]
1212
/ ̄ ̄\ もういいヘンリー、そっからは俺が言う。
/ _ノ ヽ、.\
| (●)(●) .| ……そんでだ。後は殺されるのを待つばかり、って時に。
! (__人__) | 牢の番人だった男が、なんとマリアの兄のヨシュアだったんだよ。
, っ `⌒´ |
/ ミ) / 幼いころにわかれたきりだった兄妹の再会って訳さ。
./ ノゝ /
i レ'´ ヽ
| |/| | |
┏
「義母」に裏切られ、「父」を殺され、「兄」に助けられ。
―――思い出したくはない、けれど、忘れられない共通の過去。
┛
/ ̄ ̄\
/ ヽ、_ \ ヨシュアさんも、あの教団の異常さ残酷さに
. ( (ー ) | 疑問を持っていてな。
. (人__) |
r-ヽ | マリアに話を聞いた途端、脱出計画を立ててくれた。
(三) | |
> ノ / ……俺たちを死んだことにして、秘密の排水溝から
/ / ヽ / 樽を使って流して解放してくれたのさ。
/ / へ> <
|___ヽ \/ ) ……彼に、どんな罰が下ったかと思うと……。
|\ /| 俺は、彼を心から尊敬する。死ぬまでな。
| \_/ |
.
272 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:51:04 ID:lGqN9xix [28/31]
1213
┏
俺たちの旅は魔物を倒す旅じゃない。
でも、俺たちは決して許さない。
人の命を、紙きれみたいに粗末に扱える奴らを。
┛
_____
, x-‐…ー- 、 `ヽ、
/,∠ -―- .._ \ \
// , / ヘ \ \
, ' / / / / / \ /
/ 厶⊥」..._// / リ ∨ i
厶イ / ヽ ` \,イ ! / |
| { __、 __ \ | i / , | そして、樽は、ある修道院の前に流れ着いた。
j/j/l イバ ` 乢/ / ,′
,' tkノ 丐=ミ / // / 妾たちを助けてくれたのは、その修道院に仕える
{k.ノハ/ // /ー┐ 尼の方たちでの。
| ' `¨ z,彡kj/} /ー‐┘
八 、 __ - ソ ,′ ……生きて、こうして地獄から出れたのも、
/ >、 / ̄匚彡 | 神の恵みなのじゃろう。
/ //`'ーr―ァ' ´ イ |
/// / /\_/ | | 妾は、その修道院に残ることにしたのだよ。尼として。
// ( ( / /\ | |
. // \ / x-<.: : .:∧ { '. 今度こそ本当の神に―――兄や、妾と同じものたちの、
// ,x==彡' / ヽ: : :.| ヽ \ せめてもの平穏を、祈るためにな。
{ / ,《 / / i.: .:lノハ\ \ \
'( / /.:| i |/:.:,'|,小. \ \
,イ / : : | | ;' j : : / |/// ! )、 \
〃| /|: : :∧_| !ノ.:., ' |// | | \ \
{{.∧ 乂.: .: .: :| |.:,イ レ′| | } }
〃 j,厂|.: .: : : :| | /| | | | ,′ ,′
{{ j.: .: .: .:.| |.:〉 | | j j / /
}} /. : : : : :| |:\| | / / / /
┏
命を簡単に扱える奴らを――― ……ラインハットに巣食っているという、奴らを。
┛
.
273 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:52:07 ID:lGqN9xix [29/31]
1214
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●) )
. | (__ノ、_)
┏ | ` ⌒ノ
俺たちには理由がある。 . | }
. ヽ }
―――動き続けなければならない、理由が。 ヽ ノ
┛ .> <
| |
____
/ \ ┏
/ ─ \ 平和を取り戻すとか、そんなご大層なもんじゃない。
' (●) \
(l、__) | そんな、天に選ばれた英雄がするようなもんじゃない。
⌒´ / ┛
`l \
l \
_,. -─ ー─- 、_
_.イ_ -‐───── 、 \
/∠ -‐─‐r──‐-、 / \
/ / / / ハ V ハ
/ / / / / 〉 イ ', l
┏ / ,' //|__ノレ′厶_/ ! ! | !
自分をもって生き続ける、それだけのために。 / / { 厶 ヽ / レ| | |
∠ /| 个 _ _ィf示アヽ! | ├─┐
動き続けなきゃ、いけない理由があるんだ。 | イィfてカ 弋_zソ リ ム ト、_ノ
┛ / /lハ 弋_ソ / /´} !
/ / / ハ , // l )ノ |
/ ′ / ∧ ィ7厂 |
| ヘ、 ´` / | | |
| / ノ> 、 _ イト、 / / |
| |⌒| ≧ て / |⌒| ./ j
| | |_.へ_ノ ト、! ! / /
../ ../|⌒| 、 ! /ィ  ̄ ヽ
.
274 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/06/01(火) 21:52:32 ID:lGqN9xix [30/31]
今回は以上です。
次から、ラインハット城に…いけると思う。
276 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/06/01(火) 21:56:07 ID:QVmbgB2T
乙でした。
ゲームではここら辺の会話が少し乏しいので、
こういった補完は非常に嬉しいです。
ラインハット大好きだw。
277 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/06/01(火) 21:57:00 ID:0n7OPc/y
乙でした
サンタローズ壊滅…ちゅるオプさんは生き延びれたのだろうか
278 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/06/01(火) 21:57:06 ID:xzfWJTz4
乙
ラインハット楽しみだわ
281 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/06/01(火) 22:07:08 ID:l6hEoGYw [2/2]
乙でした。
じわじわと熾り火の様に燃え上がってきたぜ。
もうずっと肌がスミス状態だ。
282 名前: ◆VeXhfoQdhw [sage] 投稿日:10/06/01(火) 23:17:03 ID:lGqN9xix [31/31]
作者です。乙ありがとうございます。
ここら辺はやっぱり本来のDQ5のゲーム優先でやるべきかなぁ、
ってくらい話があれこれ飛んでて正直書きにくかったです。
読みにくくないといいのですが…。申し訳ないです。
やはり小説はゲームをやったことがある人前提での話の進め方だな、
と感じました…うう。力不足を感じる。
次からのラインハット城でのシーン、どう動かすべきか。考え中です。
>>ちゅるオプさんは生き延びれたのか…
生き残っていると、いいなぁ…。
>>肌がスミス状態
えっなんでしょうそれ
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