親は夕日の真中に」
朝日と夕日、どちらがすぐれているかを議論するのは、意味がないことです。日が昇り、空を渡り、やがて西に傾いていく。そのときの夕日の美しさに人はみな心を打たれる。落日は終わりではなく、夕日の中に明日への希望や予感を感じる。西の空を美しく、荘厳に彩って沈んだあと、日はまた昇るのです。
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五木寛之
1932年、福岡県生まれ。戦後朝鮮半島から引き揚げた後、早稲田大学露文科に学ぶ。PR誌編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門』(筑豊編ほか)で吉川英治文学賞を受賞。2010年刊行の『親鸞』は第64回毎日出版文化賞を受賞。
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(西所正道=構成 若杉憲司=撮影 西本願寺所蔵「安城御影」=写真)