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――2004年にスカウトされてこの業界に入ったそうですが、その時はOLだったとか。
「アパレルの販売をしていたんですが、非日常的なことに憧れていたんです。当時、『ちんかめ』のようなオシャレなヌードがはやっていて、私も記念に残せたらなって。当時から性には好奇心旺盛で、美大生相手のヌードモデルをやっていたので脱ぐことには抵抗がなかったんです。
ある日、新宿で芸能関係のスカウトの人に声をかけられたんです。本当はAVだとわかっていてついていったんですけど(笑)。で、あまりにもあっさりOKしたもんだから、スカウトの人が逆に『お金に困ってるの?』なんて心配してくれて(笑)。行動派なんで自分で決めたら、どんどん突き進んじゃうタイプなんです。
とはいえAVってブラックな業界かもって不安はあったんですけど、いざ撮影に入るとスケジュールもしっかりしているし、スタッフもプロ意識が高い。すごくちゃんとした業界なんだって感心しましたね」
――OLをしていた会社やご両親にはバレなかったんですか?
「デビュー2年目ぐらいに社内で噂になってしまったんです。ただ、社長にバレたらクビになってしまうし、面倒くさくなるのは目に見えていたので、聞かれた時に私ですよって正直に言って、噂を流さないようお願いしたんです。そしたらみんな協力的で、応援してくださる方もいて助かりました。いい会社だったんですけど、2年ぐらいでもう限界かなって思い辞めたんです。理由は引っ越しということにして、社長も何も言わず理解してくれました。私がAVをやっているのはわかっていたのかもしれませんけどね。
ただ同じ頃、両親にはバレてすごいトラブルになってしまったんです。私としては天職だと思っている仕事だけど、普通の人に理解してもらうのはやっぱ難しいんだなって……」
――ちょうどその時期、「森野雫」という芸名から現在の川上ゆうに改名していますね。
「森野雫はピュアっぽいイメージだったんです。普通のロリって感じで。ただ私の中では行き詰まりもあって、よくありがちなどんどんハードなプレイを解禁していって最後は引退、みたいな使い捨てっぽい雰囲気の女優には絶対になりたくなかったんです。
だから改名を機に自分の興味があったSMという分野で勝負しようって。普通、ロリからSMに転向すると、以前のファンがいなくなってしまうことが多いんですけど、私としてはSMをやったからって消えちゃうような女優じゃないんだ、というのを見せたいなって思って。少しでも名前を売ろうとコツコツやっていきました」
――その後、徐々に人気が上がり大ブレイク。結果的に改名は大正解でしたね。
「森野時代は、プロとして無理してでも頑張らなきゃって気持ちが強くてストレスをためていたんです。でも改名を機にリフレッシュしたというか、プロとして大事なところを押さえつつも、自分の好奇心に対し正直に、自然体でやるのが一番じゃないかって。すべて演じるんじゃなくて、自分の本性を入れていったほうがいい作品になるし、見ている人も感じてくれると思うんですよね」
――川上さんの作品には縄を使っての緊縛が多いですが、縛られる感覚というのはどういった感じなんでしょうか?
「以前は快感に溺れた姿を見せるのが恥ずかしかったんですけど、SMをやって責められる姿をさらしたことで逆に開放的になれたんですよ。だから完全にハマってしまいましたね(笑)。縛られるのって、どこか男性や母親にハグされているような感覚があって落ち着くんですよ。安心感というか」