「素晴らしい才能」奥平大兼と鈴鹿央士の才能を青春映画の名匠が絶賛
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監督は、青春映画といえばの古厩智之監督。長澤まさみ初主演作『ロボコン』(2003年)ではロボットコンテスト、『のぼる小寺さん』(2020年)ではボルダリングなど、一心不乱に心血を注ぐ青春のひとコマをサッとすくいあげ、ツブ立たせてきた。なんでだろ、古厩監督にかかるとどんな若手俳優も活気づいてきらめくし、単なる自転車の走行でさえマジカルな一瞬として映る。
◆奥平大兼には“ストリートな感覚”がある
――青春映画を長年撮り続けてきた古厩監督ですが、新作の『PLAY!』にはヒップホップ映画的な側面があるということで、なるほどと思いました。というのも、奥平大兼さんは一点透視的でクリアな眼差しが特徴的な俳優で、これがまさにストリート的だなと思ったからです。撮影前から奥平さんにストリート的な感覚を感じ取っていたんですか?
古厩智之監督(以下、古厩):奥平さんにはもともと、ストリートな感覚があります。つまり、立っているだけで風景に溶け込んでしまう。余計な説明をしないスタンスの演技は、映画的な振る舞いです。彼の出演作品を何本か見ている中で、ますますいいなと思いました。
――長澤まさみさん主演の『MOTHER マザー』(2020年)などですか?
古厩:『MOTHER マザー』もそうですし、日本に住むクルド人の女の子を描いた『マイスモールランド』(2022年)もすごくよかったです。どの作品でもカッコつけないストリート感が共通しています。
◆「ほんとうに、よく見て、よく聞く俳優」
――奥平さんのキャスティング理由について、監督が寄せたコメントが面白かったです。「よけいなことはやらない。説明はしない。ただ立っているだけで風が吹いてくるような感じがします」と。
古厩:俳優にはテレビっぽい人とそうではない人がいると思っています。その意味で奥平さんはテレビっぽくはない。テレビではとにかく終始何かしていなければなりませんが、一方映画では大前提として、まずそこにいるということが大切です。
――そこにいるということ、存在しているということに対して、よく“ナチュラルな演技”と表現されますよね。この表現にはいつも違和感を覚えます。ナチュラルとはつまり、何もしていないわけで、何もしていないこととそこに立っている佇まいとして存在していることはまったく違うことですよね。
古厩:彼はほんとうに、よく見て、よく聞く俳優です。普段の生活の中でもそうですが、何かを意識的に喋ろうと思うと、途端に相手を見られなくなったり、聞けなくなったりします。プロの俳優さんでもそういう人が多いなと思いますが、奥平さんはそれができるんです。
――画面の中で演技が持続するんですね。
古厩:そうですね、素晴らしい才能です。
◆「ヤバいやつとは正反対の、優しく華がある鈴鹿くん」
――一点透視的な奥平さんに対して、鈴鹿央士さんは多方向的だと思います。映画やドラマだけでなく、NHKのコントバラエティ『LIFE!』にも出演するなど、振り幅があります。監督にはどんな姿が映りましたか?
古厩:鈴鹿さん演じる達郎をちょっとヤバいやつにしたいとは思っていました。どこか人を人とも思っていない、見ていない。そんな子が、人を人として見ていく話。かと言って、ほんとうにサイコパスっぽく見えるのもマズい。
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