高山明泰強化部長に実際に使用した際の第一印象を聞いた。
「まずトラッキングシステムは従来のものだとカメラなど大掛かりな投資が必要だった印象でした。それがCoach160だと一般のカメラで対応できるので、システムを使うこと自体のハードルが低いという印象が大きかったです」
試用したのはまだ公式戦の数試合にとどまっているが、その優れた能力はすでに把握できているようだ。山形ではGPSタイプのトラッキングシステムを取り入れて5年ほど使用してきている。有効なデータや使い方が分かってきたぶん、新たに試したCoach160との比較もできる。
「GPSタイプは計測機器を装着している選手しか測定ができません。でもCoach160のようなAIタイプだと相手チームの選手も測定できる。これが一番大きな違いだと感じています」
GPSタイプは絶対的評価に、対してAIタイプは相対的評価に活用できるというのが、高山強化部長の見立てだ。
「トラッキングデータは普段から強化の面で活用しています。選手の走行距離やスプリント数で試合におけるプレーの強度=インテンシティを測ったり、フィジカルコンディションをチェックしたりするにも有効です。ただGPSタイプでは相手チームのデータが取得できないので、これまでの自分たちのデータと比較することで評価することになります。一方でAIタイプは相手チームのデータも出るので、相手との関係性で比較ができます。例えば気温が高い日の試合で自チームの運動量が下がった場合、相手チームと比較することでフィジカル的な問題か、環境の問題かを判断できるようになります。絶対的か相対的かで評価する材料は少し変わってくるんです。そういう意味では客観的なデータが取得できるCoach160は、特にコンディション面の判断でより有効な情報が得られると感じています」
さらに取得できるデータ量に関しては驚きもあったという。
「撮影するだけでこれだけのデータが出てくるのか、と。自動で行ってくれる手軽さもさることながら、映像と取得したデータがリンクしていることで、即時性を持って特定のプレーを振り返られるのには可能性を感じました。さらに設定を自由に変えられることにも可能性を感じます。これが一定の条件設定のみだと、単純に足の遅い選手はスプリントが数字で出なかったりする。でも本人はスプリントをしているわけで。個々に応じて“時速何キロ以上”というスプリントの速度条件を調整できるのは、間違いなく使えます」
驚きという点では――強化という点からは離れるが――新型コロナウイルス感染対策にも使えると知ったことだ。