キヤノンEOS Rシステムの世界 : 福島典昭 ポートレイト、スチルライフ、風景...、オールラウンダーカメラR5の実力
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矢地祐介 レンズ:RF70-200mm F2.8 L IS USM 1/125秒 f5.0 ISO100──この動きのあるカットは、矢地さんにジャンプしてもらい、その瞬間を狙った。
福島 タイミングを合わせて3〜4コマの高速連写です。レンズはRF70-200mm F2.8 L IS USM。
──ジャンプする矢地さんをギリギリのフレーミングで追っていましたよね。ズームレンズで解像度も充分なのだから、「もっと引いて撮って、後でトリミングすればよいのでは?」と思ったのですが。
福島 僕の「基本的スタイル」なんですけど、「撮ったままが一番いい」と考えているんですね。仕事の撮影の場合は確実さを求められるので、もう少し引きで撮るかもしれませんが、今回は格闘家矢地さんとのフォトセッションということで、全神経集中してギリギリのフレーミングで追っています。矢地さんの前にもモニターを置いてティザー撮影の写真をそのまま見てもらっていますから、迫力のある絵をそこに出したい。彼がそれを見てジャンプの仕方を調整したり、新しい動きをしてくれる。それがフォトセッションとして面白いかなと。
──撮影中、福島さんは一切、ファインダーを覗かなかったですよね。背面液晶を見て矢地さんを追っていた。
福島 カメラをEOS R5にしてから、ファインダーを覗かなくなりました。EOS R5のEVFは見やすいし違和感もほとんどないので、MFでのブツ撮影の時や、明るい野外で風景を撮る時は覗きますけど、AF撮影で人物を撮る時は、EOS R5の瞳AFを絶対的に信頼してますから。このジャンプの撮影ではMFでしたが、仕事のほとんどの人物撮影は瞳AF。だからEOS R5を使っているうちに自然とファインダーを覗かず、背面の液晶で被写体の表情や動き、フレーミングを追うようになりました。
フォトグラファーが撮影でやらなくてはならないことを100とすると、今までその何十パーセントかはフォーカスを合わせるということ作業に割いてきた。それが必要ないので、その分を相手とのコミュニケーションに使えます。いい意味で撮影の感覚が変わってきたと思います。
矢地祐介 レンズ:RF50mm F1.2 L USM 1/200秒 f5.0 ISO100──最後のカットは、矢地さんに対戦相手がいるかのように動いてもらい、それを高速連写で撮影。秒20コマという凄い撮影でした。
福島 これは瞳AFを使っています。ストロボも高速連続発光のモードにして、その分、光量が落ちるので絞りは開け気味にしたのですが、少し引いて撮っているからf5.0もあればフォーカスも来ます。止まったポーズで撮影しても、この筋肉の表情は出ません。実際にリアルに動いてもらいその瞬間を捉えたからこそ、筋肉の筋が立ってきます。それに回し蹴りのベストなタイミングでシャッターを切るなんてなかなか難しい。それを可能にするのが秒20コマの高速連写であり、フォーカスを追い続ける瞳AFなのだと思います。
──この時の使用レンズは?
福島 RF50mm F1.2 L USMです。実を言えば、EOS R5の導入を決めたとき、一番欲しかったレンズがこの50mmなんです。まずこのRFの50mmを買おうと。レンズに関して言えば、RF28-70mm F2 L USMも気に入っています。これもなかなか写りが綺麗なレンズですよ。
Wine Glass レンズ:RF70-200mm F2.8 L IS USM 1/100秒 f11 ISO100
COSMETIC レンズ:RF100mm F2.8 L MACRO IS USM 1/200秒 f5.6 ISO100──スチルライフの写真も高速連写を使っていますね。
福島 ワイングラスの写真は、高速連写で撮影した写真ですね。ちょっとした仕掛けを作り、グラスが破裂する瞬間を狙った。
──コンマ数秒の世界ですから、普通、狙ったタイミングでシャッターを切るのは難しいですよね。以前は何度もトライ&エラーをして偶然の一瞬を捉えるか、赤外線などを使った特殊な装置で、シャッター、ストロボのタイミングを合わせたりしていましたが、秒20コマならこの瞬間が捉えられる。
福島 今後、さらに1秒間に20コマ以上高速連写が可能なカメラが出てくると思いますし、確かに2〜3コマ増えたと言われれば、その2〜3コマというのは大きいと思います。だけど実際にEOS R5の秒20コマで、充分、この瞬間が撮れてしまうんですね。
レンズ:RF70-200mm F2.8 L IS USM 1/400秒 f2.8 ISO100
レンズ:RF70-200mm F2.8 L IS USM 1/500秒 f8 ISO100
レンズ:RF28-70mm F2 L USM 1/320秒 f8 ISO125──風景はどこで撮影されたのですか?
福島 EOS R5とレンズを持って、日本各地を1人でクルマで回って来ました。メインに使ったレンズはRF70-200mm F2.8 L IS USMです。僕の場合は風景と言っても、大きな自然の中で起こっている瞬間を切り取るというものなので、手持ちで撮影することが多い。手ブレ補正をONにすれば、200mmにズームしても手持ちで充分いけますしね。
波のしぶきの写真(ページトップ)は高速連写で撮っていて、見ていただければわかると思うのですが、解像力、それにフォーカスの合う幅が凄いんですよね。──絞りはかなり絞っているんですか?
福島 感度は上げたくないのでISO100で、シャッター速度を稼ぎたいから、絞りは開けています。これはf2.8からf5.6ぐらいじゃないかな。それでもフォーカスが来るところは、カリッと描写する。
動いているしぶきにピンポイントでAFで合わせると、連写でもAFが追ってくれるんです。目に見えないくらい細かくて動きのある霧のようなしぶきでさえも、1点AFでフォーカスを合わせて解像するって、凄いことですよね。今回、日本各地を回ってさまざまな風景を撮ってきたのですが、どんな条件でもほとんどフォーカスが来ていました。──最後にEOS R5を約半年以上使ってきての印象をお聞かせください。
福島 やはり人物、スチルライフ、風景、今の僕の撮影で必要な部分にEOS R5がはまったということですね。もちろんEOS R5よりも画素数が多いカメラ、連写性能があるカメラ、動画性能に特化したカメラもありますが、EOS R5は動画も含めて今求められる性能を高いレベルでバランス良く備えている。
導入してしばらくは、高解像度が必要な撮影 、広告の場合、最終的にどんなサイズの媒体で使われるのかわからないことや、トリミングしての部分使用もありますから、「とりあえず高解像度で撮っておいて下さい」という案件も多いので、やはり中判デジタルカメラはまだまだ必要かなと考えていたんですが、実際、ここ半年で中判デジタルの出番もほとんどありませんからね。
EOS R5でずっとやりたくてまだできていないのが、8Kの切り出しです。たとえばリップのブツ撮りで、リップに赤い液体をゆっくりと垂らして撮影するような場合。スチル撮影でも、何本もリップを用意するわけにはいかないのですが、8Kで撮ってそれを切り出しができたら、面白いんじゃないかと思う。そうしたことも含めてEOS R5は、これまでの僕の撮影のスタイルを変えてくれるカメラだと思っています。矢地祐介フォトセッション スタッフ
Hair & Make:高取篤史(SPEC)
Stylist:竹村伊央(SPEC)
Retoucher:北岡弘至(GARABATO)スタジオ:アートプラザ六本木
福島典昭(ふくしま・のりあき)
広告フォトグラファー。
1972年京都生まれ。1990年、父親である風景写真家福島右門の影響で写真を始める。
2002年 PHOTOGRAPHERとして活動開始。広告・雑誌を中心にPORTRAIT、FASHION、STILL LIFEで活躍。
https://www.noriakifukushima.com/EOS R5
約4500万画素35mmフルサイズCMOSセンサーと映像エンジンDIGIC Xを搭載。静止画での常用ISO感度は100〜51200を達成した。デュアルピクセルCMOS AF IIによってAF性能が大幅に向上。人物の瞳・顔に加え、頭部検出も可能に。映像エンジンDIGIC Xにより、最高約20コマ/秒の高速連続撮影(電子シャッター時)やカメラとレンズの協調により、最高8.0段の手ブレ補正効果を実現。
製品の詳細:https://cweb.canon.jp/eos/your-eos/product/eosr/r5/