InstagramやTikTokなら、アプリで簡単に十分に楽しめる、完成度が高い動画が作成できるのだが、本格的に動画を作ろうと思うと簡単ではない。
PCで動画編集ソフトを使って作り込むことが必要となるからだ。
さて、ここで迷うのがどの動画編集ソフトを使えばよいのか?
である。
特にこれからPCで本格的に動画編集をしようと思っているなら、どのソフトを使えばいいのかも分からないし、ソフトの特徴も知らない。
しかも動画編集ソフトは、どれもそれなりの価格である。
自分の目的や技量に合った動画編集ソフトを選ぶのは、実に難しい。
そこで、多くのユーザーがいる有名な動画編集ソフトを比べてみよう。
それぞれの特徴から、自分に合ったものを見つけてほしい。
なおここでは無料で利用できるソフトは含めない。
本格的に動画を作る場合、やはり無料のものでは限界があるからだ。
●Premiere Pro(Adobe)対応OS:Windows/Mac
価格:サブスクリプション2,728円/月〜
インストール数:1ライセンス2台
現状、動画編集ソフトの中では頂点に位置するといってもよいのが「Premiere Pro」(プレミア・プロ)だ。
本格的な動画編集ソフトの中ではもっともユーザーが多いとされ、趣味のYouTube動画から、ビジネス用途、あるいはプロの映像制作にも利用されているほど用途は幅広い。
最近では映画『シン・ゴジラ』の編集に「Premiere Pro」が使われ業界内でも話題になった。ただし価格も頂点だ。
できることも多いのだが、その分、使いこなすには覚えることも多い。
もちろんテンプレートを使用してサクサクと作るような使い方でも、ある程度まではできる。ただそこから先、非常に細かな設定ができることこそが「Premiere Pro」の特徴でもある。
もし、これから動画編集を始めるのであれば、「Premiere Pro」は少々ハードルが高いかもしれない。ただ、覚えることは多いが、操作は難しいということはない。
かなり先の目標を見据え、プロレベルにまで挑戦するぐらいのやる気を持つ人なら、「Premiere Pro」を使いこなせるだろう。
また、「Premiere Pro」はAdobeのさまざまな製品との連携が可能な点もメリットだ。
Adobeの多くの製品を使えるサブスクリプション「Creative Cloud コンプリートプラン」(6,248円/月〜)に契約すれば、フォトレタッチの「Photoshop」やイラストデザインの「Illustrator」など、そうそうたる有名アプリも使える。
後述の「After Effects」とも連携しながら使えるので、「Premiere Pro」と「After Effects」で動画編集の二刀流も可能だ。
Premiere Pro。タイムラインやプレビュー、エフェクトなどが1画面にまとまった定番の構成。
<こんな人に向いている>
・WindowsのPCでプロレベルの動画を編集したい
・とにかく細かいところまで自分で表現したい
・Adobe製品のさまざまな高機能をとことん欲張りたい
●Final Cut Pro X(Apple)対応OS:Mac
価格:買い切り36,800円
インストール数:1ライセンス1台
「Final Cut Pro X」は、Appleが発売している本格的な動画編集ソフト。したがってOSはMac専用となり、Windows版はない。
「Premiere Pro」と双璧を成すソフトで、本格的に動画を編集している人は、ほぼこのどちらかを使っているといっても過言ではないだろう。
また特にクリエイティブ指向が強いMacファンのユーザーは、いわば“純正”の「Final Cut Pro X」を選ぶ人も多い。
「Final Cut Pro X」も、非常に多くのことができ、やはり覚えることも多い。ただ「買い切り」なのでコスト面の有利さはある。次のバージョンアップまでは基本的に追加料金がかからないからだ。
テンプレートも充実していて、アレンジもしやすい。
一方で、音声付きの動画で音声だけを編集したいときには分割する作業が必要になるなど、操作では多少のクセがある。
テロップの入れ方も画面に直接書き込める「Premiere Pro」に対して、「Final Cut Pro X」ではタイトルのテンプレートを使ってアレンジするなど、少し手間がかかるところもある。
もちろん慣れてしまえば難しいことはないが、ほかの動画編集ソフトを多少なりとも経験しているユーザーだと、はじめは少し戸惑うことがあるかもしれない。
<こんな人に向いている>
・Macユーザーで細かいところまで動画にこだわりたい
・サブスクリプションよりは買い切りでコストを節約したい
・とにかくMacの雰囲気が好き
Final Cut Pro X。こちらも同様に、動画編集ソフトとしては定番の構成で、細かい設定も画面内で調整できる。
●Power Director (Cyberlinks)対応OS:Windows/Mac
価格:サブスクリプション8,400円〜/年・買い切り12,980円〜
インストール数:1ライセンス1台
「Power Director 」はCyberlinksが発売している動画編集ソフトで、本格的な動画編集ができる。何より最大の特徴はテンプレートやサンプルなど、ダウンロードして使える素材の数が非常に多いことだ。
特にサブスクリプションで契約すれば、それらをすべてダウンロードして、利用できる点は大きなメリット。モーショングラフィックスのテンプレートをパッケージにしたものや、シーン別に効果音をまとめたパックなど、無数といってもよいほどの数が提供されている。欲しい素材を探すのに苦労するほどだ。
サブスクリプションでも1年の定期契約で8,400円〜。割安だし、セールで半額近い値下げを行うこともあるので、タイミングを見て契約するのもいいだろう。
買い切りではダウンロードできる素材の数が限られるが、それでもバラエティー溢れるエフェクトや効果音を使える。
また、「Premiere Pro」や「Final Cut Pro X」に比べてユーザーが少ないこともあり、「これ、どこかで見たようなエフェクトだな」というカブりが少ないのも隠れたメリットだ。
<こんな人に向いている>
・手頃な値段で本格的に編集できるソフトが欲しい
・凝った演出をできるだけ簡単にテンプレートで仕上げたい
・ほかの人と違った演出をしたい
Power Director。画面構成は比較的単純で、どちらかといえば細かい設定を行うよりもテンプレートを当て込んでいくような流れ。
●After Effects (Apple)対応OS:Windows/Mac
価格:サブスクリプション2,728円〜/月
インストール数:1ライセンス2台
Adobeには「Premiere Pro」があるが、もう1つ映像編集ソフトがある。それが「After Effects」だ。「Premiere Pro」との違いはその名の通り「エフェクト」に重点を置いたソフトになっていること。
「After Effect」は、短い時間の映像のなかに、さまざまな効果を加えて演出する機能に長けている。そのため、撮影したいくつもの映像データを切ってつなげて……という編集では、「Premiere Pro」のほうがやりやすい。
ただ、1つのシーンで演出できる効果のバリエーションは「Premiere Pro」よりも多く、3D表現など「Premiere Pro」ではなかなか難しい(できないことはない)演出を加えることも可能だ。
「After Effects」は、どちらかといえば「Premiere Pro」と一緒に使う「補完ソフト」のようなイメージもあるが、1本の映像データを使う場合や、1分程度、あるいはそれ以下の短い映像作品を作るときには単体でもかなり凝った映像編集ができる。
「Premiere Pro」と一緒に使う場合は、「Premiere Pro」から一部のビデオを「After Effects」に読み込んで編集するといった高度な連携も可能になる。この場合は単体でサブスクリプションを契約するよりも、多くのソフトを使える「Creative Cloudコンプリートプラン」を契約した方がオトクだ。
<こんな人に向いている>
・短い動画を扱うことが多い
・凝った演出をできるだけ簡単に作りたい
・Premiere Proと組み合わせてプロ級を目指したい
After Effects。他の一般的な動画編集ソフトとは異なり、「1つの素材で1つのレイヤー」を構成している。
●とりあえずお試ししてみるのもよしこれらのソフトはいずれも、30日〜90日程度、無料で試せる。
各ソフトメーカーのダウンロードページから、体験版としてインストールでき、ほぼすべての機能を利用できる。
「まずは試しに使ってみる」
こうしたアプリ選びのアプローチもよいだろう。
たたし体験版ではダウンロードできる素材などは限られる。
この先も動画編集を続けるのであれば、できるだけ早く使うソフトを絞っておくとよい。
理由は、動画編集ソフトは「プロジェクト」というファイルで編集内容を管理するのだが、ソフト間でのプロジェクトファイルの互換性がないからだ。
たとえば、
「Premiere Pro」で編集した動画を「Final Cut Pro」で再編集するには手間がかかる。
また、どのソフトもセールで値引きをしていたり、サブスクリプションには年間契約でオトクになったりするプランもある。
お試しを活用しながら、オトクに使える買い方を探ろう。
動画編集ソフトに「どれがオススメ」という一択の正解は残念ながらない。
それぞれの目的や目指すレベル、使用するPCの種類、費用対効果などを考えて、
「自分に合った動画編集ソフト」
これを見つけることになる。
こうして自分に最適なソフトを選び、とことん動画編集を楽しんでほしい。
執筆 八木 重和