同日、都内で開いた会見でパイオニアの森谷浩一社長は「パイオニアを継続させるための最善の選択だった」とベアリングから支援を受け、再成長を目指す理由を述べた。
パイオニアはベアリングに対し、520億円の第三者割当増資の実施と、既に提供を受けた250億円のデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)で770億円の出資を受ける。その後、ベアリングが既存株主から約250億円でパイオニアの全株を買い取る。
経営再建に向け構造改革も実行する。従業員の約15%に当たる約3000人について、希望退職や配置転換などで削減するほか生産、販売体制などサプライチェーンを見直す。構造改革の具体的な内容は19年3月末までに公表する予定。
一連の責任をとり、約770億円の出資を受けた後、森谷社長と社外取締役以外の取締役が退任する。森谷社長は19年1月1日から当面の間、基本報酬を100%、その他の役員は同40―70%カットする。
パイオニアはカーナビゲーションシステムなどOEM(相手先ブランド)事業の不振で18年3月期に2期連続で最終赤字に落ち込むなど業績が低迷し、9月にベアリングからスポンサー支援を受ける基本合意を発表した。当初はベアリングから約500億―600億円の資金提供を受け、上場を維持する予定だったが、「意思決定のスピードを速められる」と、森谷社長は非上場化の理由を説明した。
ベアリングのジォーン・エリック・サラタ最高経営責任者(CEO)兼創業パートナーはパイオニアの支援を決めた理由を「技術、ブランド、人材に強みがある。(ベアリングの)経営支援で再成長できる」と述べた。出口戦略については「現時点で考えはない。何年も先の話になる。まずは財務健全化とマネジメントの再生が重要だ」と述べた。
パイオニアは今後、ベアリングの支援を受けながら、OEM事業を立て直すとともに、これまで蓄積してきた車に関連するデータを活用したソリューションビジネスで再成長を目指す。
カーエレクトロニクス業界はカーナビなど既存事業の不振や次世代技術への対応に向け再編が活発化している。クラリオンが10月、日立製作所から独立し仏自動車部品大手のフォルシアへの傘下入りを決めたほか、アルパインは親会社アルプス電気と19年1月1日付けで経営統合する。
日刊工業新聞2018年12月8日
生き残りへ正念場
カーナビゲーションシステムメーカー各社が岐路に立っている。パイオニアはカーナビ事業の業績悪化を受け、カルソニックカンセイなど他社との提携で経営の立て直しを模索する。アルパインやクラリオンも事業体制の見直しを進める。カーナビ市場は成熟し、今後は販売台数の大幅な伸びが見込めない。自動運転やコネクテッドカー(つながる車)向けの次世代技術への対応が急務だ。生き残りをかけた戦いが本格化する。
パイオニアが業績低迷から抜け出せない。2018年3月期の連結決算は自動車メーカーに直接供給するカーナビのOEM(相手先ブランド)生産事業の収益が悪化し、2期連続で最終赤字に落ち込んだ。
6月には森谷浩一社長率いる新経営体制が発足。他社との提携によるOEM事業の切り出しなどを視野に、秋ごろまでに改革案を発表する。6日に発表した18年4―6月期の決算短信には、「継続企業の前提に重要な疑義が生じている」と記載されるなど、事業の立て直しは待ったなしの状況だ。