石破茂元幹事長は立候補に強い意欲を示しているが、同じく出馬すると見られていた野田聖子総務相は朝日新聞の報道により、秘書が無登録の仮想通貨業者を連れ金融庁から違法性を指摘されていたことが発覚、雲行きが一気に怪しくなってきた。
「首相と石破氏の一騎打ちの可能性が出てきたところで、進次郎氏もやる前から結果が見えている総裁選に危機感を感じている。ようやく出馬に前向きになったようだ」
とは、自民党関係者。
果たして小泉進次郎氏の出馬はあるのか。まずは岸田氏の出馬断念までの一連の動きを、全国紙政治部担当記者が解説する。
「岸田氏は6月18日に東京・赤坂の日本料理店で首相とサシで会食している。首相は3選の意欲を強める一方で、この段階では森友・加計学園疑惑でかなり追い詰められていた。そうした中、石破氏を完膚なきまでに叩くにあたって、岸田氏が出馬するか否かが重要なポイントになってくる。そこで首相は自ら岸田氏を会食に誘い、相談を持ち掛けたのです」
ところが、岸田氏は安倍首相の意を汲むどころか世間話に終始し、肝心の総裁選へ向けての意志についても語らずじまいだったというからノー天気。
「岸田氏は頭はいいが勘が鈍く、優柔不断な面がある。そんな性格とメガネの風貌から、陰では“自民党のキテレツ君”と呼ばれているほど。会食でもそんな面が全開に出たようで、首相も周囲に不満をぶちまけたそうです。つまり、もう岸田を眼中に入れない戦略でやると。当然、以前噂のあったポスト安倍の岸田氏への禅譲話も、この時点で消えたといいます」(前出・自民党関係者)
その後、安倍首相は何とか支持率を持ち直し、自身の細田派、麻生派、二階派を取りまとめ、衆院竹下派もなびき始めた。さらに地方票でも安倍支持が広がり、ほぼ盤石の体制が整う。
「首相としても、すでに岸田派の動向などどうでもよくなった。そのため今回の岸田氏の不出馬宣言は、首相に恩を売るどころか自分の首を絞める事態を招くことになったのです」(前出・記者)
しかし、これにより安倍首相陣営にとっては、思わぬ誤算が生じ始めている。それが、にわかに広がる進次郎氏への期待の声だ。
自民党ベテラン議員の話。
「岸田派内では、どんなに不利になっても総裁選で戦うことが次につながるとの主戦論が半数はいた。それが今も徐々に増え、進次郎氏に流れる向きが強まっているという話も聞いている。党内には、やはり“安倍一強”の状態をよしとしない見方が多く、これで首相が楽勝となれば、ますます暴走するという不満が増している。特に、若手はもう頼みは進次郎氏しかいないということだろう」
各マスコミによる「次の首相は誰がいいか」の世論調査では、進次郎氏は首位の安倍首相を超えないまでも、石破氏と2位、3位を競い合っている。しかし、実際に総裁選を占う自民党支持層内では半数近くが安倍首相を支持し、ダブルスコアで進次郎氏に勝ち目はない。
「しかし、それは進次郎氏が出馬について沈黙を守っているためで、いざ出るとなれば地方票はガラリと事態が変わるでしょう。万が一、首相と進次郎氏の決選投票になれば、そこに石破氏の票も流れ、引っ繰り返る可能性も高まる。首相陣営は最悪の事態を想定する中、そうなることを最も恐れているようです」(前出・記者)