Adobeからタブレット端末向け「Adobe Touch Apps」シリーズ6種類が発売された。ラインナップは「Adobe Photoshop Touch」「Adobe Collage」「Adobe Debut」「Adobe Kuler」「Adobe Ideas」「Adobe Proto」の6つ(いずれもAndroid Market価格:850円、Adobe IdeasのみApp Store価格:500円)で、アプリごとに使用できる機能が別れているため、用途にあわせてアプリを選ぶことができる。いずれのアプリもタブレット端末の利点である大画面とタッチ操作が生きる直感的なUIが特徴だ。

また、Adobeはマルチデバイス化の象徴として推し進める構想である「Adobe Creative Cloud」も発表している。「Adobe Creative Cloud」は、Adobe Creative Suiteと互換性のあるファイルをクラウドで管理し、アドビのアプリケーション上でマルチデバイスに利用できるサービスだ。もちろんタブレット向けアプリ6種類も「Adobe Creative Cloud」に対応するため、クリエイティブ制作でのマルチデバイス化はいっそう加速しそうだ。

モバイル環境で本格的な作業が行えるとあって、Adobeユーザーだけでなく、使い勝手は気になるところだろう。そこで、全6種類のアプリの特徴と使用感を紹介しよう。PCでの定番であるPhotoshopとの違いなど、画像編集ソフトとして、上級者だけではなく初心者にも使えるかどうか、という側面からも検証してみたい。

■Photoshopのコア機能をおさえた万人向けの「Adobe Photoshop Touch」
「Adobe Photoshop Touch」

「Adobe Photoshop Touch」は、言わずと知れた人気画像編集ソフト「Adobe Photoshop」のタブレット版だ。レイヤー機能や多彩なエフェクトなど、Photoshopのコアな機能はしっかりとおさえている。また、タブレット独自の機能として「Scribble Selection」というキャプチャ機能があり、複雑な領域もタッチ操作で簡単にキャプチャすることができる。

タッチのレスポンスも良く、指先の細やかなニュアンスまで感知してくれるので、ストレスのない作業が可能だ。仕上げた作品はFacebookやGoogleとの連携もできるので、旅行先で撮影した写真を簡単に加工してシェアするなど、気軽な楽しみ方もできる。

チュートリアルが懇切丁寧に作られているため、まったく初めてPhotoshopに挑戦する、という人にも馴染みやすい。画像編集の入門ソフトとして「Adobe Photoshop Touch」を使ってみて、操作に慣れてからデスクトップ版のPhotoshopに移行すれば、違和感なくスキルアップにつなげられそうだ。

■チラシやポップのDIYが捗るコラージュ機能の「Adobe Collage」
「Adobe Collage」

「Adobe Collage」はその名の通り画像やテキストをコラージュ(切り貼り)できるアプリだ。コラージュ機能のみに特化しているため、UIや操作方法も極めてシンプルなのが特徴だ。

具体的には、画像(動画)、テキストの追加・編集と、ペン機能を使用してコラージュを作成していく。画像や動画に使用する素材は端末内のギャラリーから引用できるのはもちろん、アプリ上からGoogle画像検索、YouTube検索で探して追加することもできる。

「Adobe Collage」を使えば、仲間内で行うイベントや旅行のチラシや、飲食店のポップのDIYをワンランクアップのクオリティで作成することができる。複雑な機能を削ぎ落し洗練された使い勝手は一見の価値アリ。


■Creative Suiteで作成したクリエイティブでプレゼン品質アップ!「Adobe Debut」
「Adobe Debut」

「Adobe Debut」はCreative Suiteファイルを利用してプレゼン資料を作成・再生するアプリ。Adobe Photoshop、InDesign、Illustratorのファイルにアクセスしてスライドを追加していく。

最大の特徴は挿入するクリエイティブをレイヤー単位で調整できることだ。つまり、プレゼンに必要なレイヤーのみを用いてスライドを作成することができるのだ。

また、プレゼン中にピンチイン・アウト操作でスライドを拡大・縮小できるほか、ペン機能を使用することもできるので、プレゼンの進行にあわせながらメモを書き込むなど、タブレットならではの小回りがきくのも魅力だ。

大画面に出力して、大人数へ向けたスライドショー形式のプレゼンはもちろん、少人数での会議やアイデア出しといったディスカッションの場にも重宝しそうだ。


■カラーテーマを手間なく思い通りに手に入れる「Adobe Kuler」
「Adobe Kuler」

「Adobe Kuler」はCreative Suiteで使用できるカラーテーマを作成できるツール。基本的な機能としてカラースライダー、カラーホイールを利用したテーマ作成が可能だ。右上のアイコンで「Color rule」を指定すれば、基本にしたい色を指定することで自動でテーマを生成してくれるなど、便利なサポート機能も充実している。

また、自分の欲しいテーマを手間なく手に入れることができるのが「Adobe Kuler」の魅力だ。ひとつは、探索オプションを利用する方法だ。Adobe Kulerコミュニティに収録されている50万以上のテーマの中から希望に添ったテーマを入手することができる。

もうひとつは、端末内のギャラリーやGoogle画像検索でヒットした画像から自動でテーマを生成する方法。参考にしたい画像から主要な色を抽出してテーマを自動生成してくれる。

思い立ったときに、時間をかけることなくテーマを作成できるので、タブレットとの相性もバッチリのアプリだ。


■アイデアを瞬時に書き留める細かい配慮の行き届いたツール「Adobe Ideas」
「Adobe Ideas」

「Adobe Ideas」は閃いたアイデアを指やスタイラスペンで素早く形に変えることができるアプリだ。

ペン機能でデザインできるだけでなく、引いた線を自動で補正してくれたり、描画レイヤーと写真レイヤーを使い分けることができたりと、欲しい機能はしっかりおさえたれている。また、「Adobe Kuler」で作成したカラーテーマを使用することもできる。

作成したデザインはもちろんAdobe Creative Cloudとの連携もできるので、外出先で思いついたアイデアを「Adobe Ideas」を利用して書き留めておき、自宅やオフィスに戻ってからデスクトップで本格的な作業を行うことができる。


■ジェスチャ機能でワイヤーフレームを作る革新的UI「Adobe Proto」
「Adobe Proto」

「Adobe Proto」はタブレットならではのジェスチャ機能を駆使してワイヤーフレームを作成できるアプリ。四角形は「DIV」、バツ印だと「イメージ」、三角形だと「動画」といったように、複雑な操作を行う必要がない。

ジェスチャは全部で16種類用意されており、予め覚えておけばクライアントとの打ち合わせや社内会議で出たアイデアをその場で可視化することができる。アプリ内には豊富なサンプルが収録されているので、ワイヤーフレーム作成の経験がない筆者でも、頭の中に描いたイメージを形にしていくことはそれほど難しくなかった。

DIVやヘッドラインといったwebサイトの印象の軸になる要素だけでなく、チェックボックスやドロップダウンといったディテイルの部分まで編集できるのは助かる。

これまでのワイヤーフレーム作成の概念を覆すUIではあるが、圧倒的に作業の手間が省けるので、開発現場で非常に重宝しそうだ。


■使いやすく機能的なUIに感服
いずれのアプリも、Adobe商品のヘビーユーザーにも、初心者にもなじめるUIや機能を実現しており、使いやすさにも配慮が行き届いたアプリケーションに仕上がっている。それでいてタブレットの利点である直感操作と手軽さを失わずに盛り込まれているので、初心者でも使いこなすことができるだろう。Android Market価格 850円(Adobe IdeasのみApp Store価格:500円)と安価で手に入ることも魅力だ。

一瞬の閃きを形に変えていくクリエイターにとって「Adobe Touch Apps」は新しい武器になりそうだ。

「Adobe Touch Apps」製品情報
アドビ
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