スマホの買い替えサイクルについて考えてみた!

先日、講談社の現代ビジネスにて『日本に帰国したら成田空港で壮絶いじめ「古いスマホなら1万5000円払って」』という見出しの記事を見つけました。何事かと思い記事を読んでみたところ、空港の検疫にて自前のスマートフォン(スマホ)に新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」を入れられず、COCOAの入ったスマートフォンをレンタルさせられたという内容でした。

その執筆者のスマホはiPhone 6だったらしく、OSのバージョンが古くてアプリを入れられなかったのです。記事の過激な見出しや執筆者の意見、さらに認識の間違いなどはひとまず置いておくとして、古いスマホを長く使っていると最新のアプリやサービスを利用できずに困ることは多々あります。

みなさんはスマホをどのくらいの頻度で買い換える(機種変更する)でしょうか。もしくは古いスマホを使っていて、どのようなことで困ったことがあるでしょうか。感性の原点からテクノロジーの特異点を俯瞰する連載コラム「Arcaic Singularity」。今回は古いスマホを使い続けることのリスクやスマホの最適な買い替えサイクルなどについて考察します。

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執筆者の主張の一部は理解できないでもないが……iPhone 6は早めに買い換えることをオススメしたい


■OSやスマホ本体のサポート切れに注意
スマホの買い替えサイクルについては、筆者は「2~3年が妥当ではないか?」と考えるところですが、実際の数字はどのようなものになっているでしょうか。

内閣府が公開している消費動向調査によると、携帯電話やスマホの買い替えサイクルは年々伸びており、携帯電話(フィーチャーフォン)全盛の2002年には平均2年程度で買い換えられていましたが、現在は平均4年以上と2倍以上に伸びています。

株式会社携帯市場が2021年10月に公開した「スマホの疲労度調査アンケート」の「スマートフォン購入時期」の項目では、2018年から2021年にスマホを購入した人が合計で87%となっており、内閣府の調査よりは短めの買い替えが多いようにも見受けられます。

一方で、5年以上(2017年以前から)スマホを買い替えていないという人も13%存在することから、冒頭で紹介した記事の執筆者のように、6~7年前のスマホを利用しているという人がいるのも頷けます。

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ちなみに筆者は趣味と仕事の両面の理由からメイン利用のiPhoneを毎年買い替えている


では、古いスマホを使い続けることのリスクとは一体何でしょうか。真っ先に考えられるのは、先の例のように最新のアプリを導入できなくなることです。

スマホは私たちが日常的に利用する道具でありながら、長年愛用するようには設計されていません。PCと同じようにOSのサポート期間が設定されており、スマホに導入できるOSのバージョンも厳格に規定されています。

それはスマホメーカーやOSメーカーが定期的な買い替えを促すためでもありますが、何よりも道具として安全に利用できる保証を続けるために世代交代が必須だからです。

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古いスマホとOSを使い続けてはいけない理由とは


スマホは日進月歩で進化していく道具であり、常に最新の機能が追加されています。OSが古いままではそれらの機能をサポートできず、またそれらの機能を利用したアプリやサービスの全機能を提供できない可能性があります。

スマホメーカーやOSメーカーとしても、そういった古い仕様への対応をどこまで続けるのかというのは常に大きな問題です。だからこそ「これ以上は使わないで下さい」というサポート期限を設け、アプリにも「このOSではサポートできません」と明確に表示する必要があるのです。

当然ながら、それらの機能が使えないことを了承した上でスマホやOSを使い続ければいいじゃないか、とも考えられますが、冒頭で紹介した記事の執筆者のように、アプリを導入できない理由を自身の端末(およびOS)の古さではなくアプリ側の問題として捉える人々がいる以上、強制的にでもスマホ本体およびOSの更新を進めていくしかないのです。

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最新のアプリがサポート対象外になるほどスマホを長く使い続けるのはやめよう


■個人を脅かすセキュリティリスクの増大
アプリの動作や最新の機能に対応するためにOSの更新が必須であり、そのサポート期限のためにスマホの買い替えが必須であることは理解できたと思いますが、もしサポート期限の切れたスマホやOSを使い続けた場合、新たなリスクが発生します。それがセキュリティリスクです。

OSのアップデートは、新たな機能を追加するばかりではありません。外部からの悪意ある攻撃やウィルスなどの被害を未然に防ぐために日々セキュリティアップデートがいたちごっこのように繰り返されており、そのセキュリティサポートに掛かるコストも膨大であることから、サポート期限を設けざるを得ないという現実があります。

例えば無期限で古いOSのセキュリティサポートを続けていては、年々サポートコストが膨れ上がるばかりです。当然そのコストは製品価格に転嫁せざるを得なくなり、企業業績の悪化にも繋がりかねません。

しかしながら、悪意ある攻撃者はそういったサポート期限の切れたスマホやOSを狙っています。セキュリティ更新が止まったスマホに対してセキュリティホールを突いた攻撃を行うことは容易です。だからこそ、スマホはサポート期限が切れる前に買い換えなくてはいけないのです。

例えばiPhoneシリーズの場合、特定の機種に対応するiOSのサポート期限は5~6年程度と言われています。機種によってバラつきがあるため一概には言えませんが、その期限を考えると長くても4~5年程度での買い替えは必要だと考えます。

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犯罪者は常にスマホ内の個人情報や資産を狙っている


■長期利用はバッテリー破損のリスクも増える
また、スマホには高性能バッテリーが搭載されていることも、あまり長く使うことを推奨しない理由になります。

スマホにはリチウムイオン系のバッテリーが搭載されていますが、このバッテリーはエネルギー密度が非常に高く、強い衝撃や破損によって発火もしくは爆発する危険があります。

安全な利用範囲で、尚且つ一般的に想定される利用方法であればそういった事故はほとんど起こりませんが、それでも年に数件はスマホの発火事故や爆発事故のニュースを目にするほどです。

こういった事故はバッテリーの経年劣化によって引き起こされるだけではなく、物理的な衝撃が何度も加わった結果として起きたり、充電端子の劣化などでも起こります。そのため、早めの買い替えによってリスクを軽減していく必要があります。

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東京都の情報サイトによる注意喚起(引用元


バッテリーの状態については、スマホの自己診断機能によって劣化具合を確認しておくことも大切です。例えばiPhoneシリーズの場合、「設定」→「バッテリー」→「バッテリーの状態」で、バッテリーがどれだけ劣化しているのか確認できます。

例えば充電しながらのゲーム利用や動画視聴などでスマホを酷使すると、バッテリーは激しく劣化します。「最大容量」の数字が80%を下回っているようであれば、仮に1~2年程度しか使っていなかったとしても買い替えた方が良いかもしれません。

ちなみに、Appleのサポートサービス「AppleCare+」に加入している場合、「2年以内の利用で尚且つバッテリーの最大容量が80%未満」になると無償でバッテリー交換が可能です。2年以内の利用でバッテリーが激しく劣化してしまった場合は、こういったサービスを利用して製品寿命を延長するのも良いでしょう。

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最近スマホのバッテリーの減りが早いな……と感じたら、一度は確認しておこう


■早めの買い替えで安全・快適なスマホ生活を
これらのことから、スマホの製品寿命は4~5年程度を限界として考えておくと良いように思われます。買い替えサイクルはもう少し早めの、2~3年がベターではないでしょうか。

恐らく多くの人は、こういった事例や理由を詳しく精査しなくとも、感覚として「3年使ったしそろそろ買い替えかな」と理解していたかもしれません。

スマホは肌身離さず毎日利用するものであるにもかかわらず、その製品寿命は身の回りの日用品の中でもかなり短い部類です。それにもかかわらず、決して安い買い物ではありません(安い端末でさえ2~3万円は掛かる)。

さらに買い換えるとなると、データやアプリの移行作業やワンタイムパスワードアプリの再登録作業など、買い替えに躊躇する要因が大量にあるのも頭が痛いところです。

スマホはその特性から「壊れたら買い換える」、「壊れるまで使う」ということに大きなリスクが伴う道具でもあります。壊れる前に買い換えなければバックアップもデータの引き継ぎも行えません。

これらのことを正しく理解した上で、日々のメンテナンスや安全な利用を心がけたいものです。

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スマホを買い換える際にはバックアップなどの各種準備も忘れずに


記事執筆:秋吉 健


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