「浪川にできるんだったら、あなたにもできるから」浪川大輔のノンストレスな生き方

『ルパン三世』シリーズの石川五ェ門、『君に届け』の風早翔太、『ハイキュー!!』の及川 徹、『Fate/Zero』のウェイバーをはじめ、35年以上も第一線で活躍し続ける声優・浪川大輔。

エンターテインメントレーベルKiramuneでのアーティスト活動も2020年に10周年を迎えたが、活動への想いは当初とまったく変わっていないという。

「ずっと発信してきた、『浪川にできるんだったら、あなたにもできるから』という言葉はまだまだ言い続けたい。何事にもチャレンジし続けることで、『あんなおっさんなのに、あそこまでできるんだ! じゃあ、俺らにもできるな』と感じてもらえたらうれしい」

歌が苦手だったところからスタートした彼が、何のために歌ってきたのか。浪川は改めて言葉にする。「人に喜んでもらえてこそのエンタメ」だと。10周年の節目に、その集大成となる応援ソングが完成した。

取材・文/原 常樹 制作/アンファン

10周年の節目に最強の応援ソングを届けたかった

6月に音楽活動10周年を迎えられました。改めておめでとうございます!
ありがとうございます! 10周年というタイミングではありますが、僕だけではなく、どの方にとってもイベントごとが中止になっているのが世の中の状況で…。それでも何よりも大切なのは、みなさんが健康に毎日を過ごせること。またいつか会える状況になったときに、僕自身も、そして応援してくださるみなさんも、お互いにパワーアップした元気な姿で会えたらいいなと思っています。
今は蓄えて今後の爆発に備えるような。
そうですね。そういう青写真を描きながらがんばって耐えている感じでしょうか。
いよいよ9月2日に7thシングル『wonderful days』がリリースされます。
もともとは10周年のタイミングに向けて、ひとつ形を残したくてリリースする予定でした。なので、着手したのはずいぶん前になります。

MVに関しても僕のシーンの撮影は終わり、ジャケット写真も撮り終えて、これから2曲目のレコーディング、というような状況で緊急事態宣言が出て、少しお休みに入ったという感じでした。
となると、楽曲のコンセプトはだいぶ前から固まっていたということでしょうか。
はい。今までもそうでしたが、僕の楽曲は基本的に自分から「こういうのをやりたい」と提案することが多いんです。今回の表題曲のコンセプトは、まぁ、カッコつけて言っちゃうと“最強の応援ソングを作ろう”みたいな。
“最強の応援ソング”ですか。
これまでの楽曲を振り返ってみると、ロックもいっぱいやってきましたけど、応援ソングも多いんです。“人を応援するのが好き”と言うと変かもしれませんが、これはもともと10年前に音楽活動を始めたときの原動力に通じる部分で。歌が苦手だったところからスタートした自分が、何のために歌ってきたのか…そのひと区切りとなるような応援ソングを作ろうと。

じつは、最初はロックな楽曲、おもしろくて笑える曲、ダンサブルなナンバーという3曲で構成しようかとも思ったんですが、ロックで応援ソングを表現するのはなかなか難しくて(笑)。このあたりはロックというジャンルの捉え方にもよるとは思うんですけど…。

いろいろ考えた結果、“応援”を強く打ち出す方向性になり、この『wonderful days』が表題曲に決まったんです。
そんな温かい応援曲だからこそ、今のご時世にはグッとくる方も多い気がします。
いやー、そうなんです! 楽曲を書いてくれたのは宮崎 誠さん。最初の1分30秒ぐらいまで仮の歌詞と仮歌を入れたデモを送ってくれたんですけど、その仮の歌詞が最高で…。聴いた瞬間に、「僕が言いそう! これこれ、こういう感じが言いたかったんだよ!」となって、そのまま歌詞を書いてもらいました(笑)。
宮崎さんと通じ合っている感じなんですね(笑)。
本当にそんな感じでした。なので、どこか一部分を聴いてほしいというよりも、歌詞も曲もすべてを通して楽しんでほしいです。

たとえば“いつもヘコヘコ頭を下げて そうやって強くなっていく”みたいな感じは、普段の僕とも通じる部分がありますし、聴いてくださった方にとっても、どこか共感できるようだったらうれしいなと。
聴く側としても、共感できる楽曲は自然と好きになるものですよね。
お便りで、「浪川さんの曲を聴くとホッとします」、「この曲を聴くと気持ちが奮い立ちます」みたいな感想をもらうことがあるんですけど、僕自身もそういう感覚になることは少なからずありますからね。

天気がいいのに気持ちは沈んでいる…みたいなときでも、音楽を聴いたら気持ちも引っ張り上げられる。これまでも「そんな曲が作れたらいいな〜」と思いながら活動してきましたし、それをそのまま歌詞にしたのが『wonderful days』なんです。

まぁ、そんなストレートな想いを込めたからこそ、冷静に歌詞を見るとちょっとクサい部分がありますけど(笑)。
そこもまた魅力的だと思います。ライブの締めに歌ったりしたら、グッときそうな…。
いやー、まさにそのとおり!(笑)実際、『wonderful days』はライブのセットリストの最後に持ってくることを想定していた曲なんです。

明るいけれども感動できる。まぁ、やっぱりと言われてしまうぐらいコテコテの曲なんですけど(笑)。でも、「わかっているけれど、このコテコテがいいんだよ!」って感じるときってあるじゃないですか。

たとえば“お誕生日”って老若男女に関係なくうれしいものですし、サプライズでケーキが出てきて、クラッカーを鳴らしてお祝いしてもらえたりする行事ですよね。これってめちゃくちゃコテコテだけど、祝われる側からしたらうれしいですよね。

『wonderful days』はそういうポジションを狙って作りました。
たしかに、何事も予想を裏切ることだけが正解じゃありませんよね。
そうなんです。そもそも、これまで奇をてらうことをいっぱいやってきたので(笑)。コテコテを目指した結果、この10年間を象徴するような1曲に仕上がったとも言えます。
10年前と比較して、音楽活動に対する意識の変化はありましたか?
変わりましたね。もともと、Kiramuneレーベルで音楽活動を始めた頃は、「カッコつけた感じのロックが刺さる」というイメージでやってきましたけど、ファンミーティングなんかで曲の人気ランキングを見ると、意外とそうでもなくて(笑)。自分の想いと違う部分ってけっこうあるんだなと感じるようにはなりました。だからといってロックをやめるとかそういうことではなく、僕のロックを好きでいてくれる方もいらっしゃる以上、これからも歌っていきたいとは思っていて。

言うなれば、音楽活動はエンターテインメント。そして、僕は「人に喜んでもらえてこそのエンタメ。喜んでもらえないなら、それはただの自己満足でエンタメとは言えない」という考え方なんです。

だから、ライブもエンタメ色が強いし、節目のタイミングとなるシングルの表題曲が応援ソングの『wonderful days』になったのは、僕の中で合致している部分があります。
© Kiramune Project

浪川バンド「ノンストレス」と一緒に歩んだ10年

2曲目の『Up to the rainbow』についても教えてください。
こちらはいつも一緒にライブを盛り上げてくれる「ノンストレス」のメンバーに作ってもらっています。ギターの(大内)慶くんに曲を制作してもらいつつ、歌詞をAメロ、Bメロ、Dメロ、サビと分けて、それぞれのメンバーに書いてもらいました。

こちらのテーマは“ワンライン”。普通ならバンドメンバーはうしろにいるイメージがありますが、そうじゃなく、みんな同じ立場で一直線に並んで、横を見たらホッとする…。そういう“仲間”のイメージが伝わればいいなと思ったんです。リモートでもいいんですけど、やっぱりリアルで仲間たちと一緒にいたときの楽しさって格別ですから。
コロナ禍でそう実感している方も多いかと思います。
「ノンストレス」のメンバーと年齢的には上下の開きがあるんですけど、お客さんも交えてみんな仲良くワンラインでいられたらいいなと。まぁ、ワンラインというと一直線みたいなんですけど、その実、お互いが支え合っている…そういう形なんじゃないかなって。
以前にも、バンドメンバーを前面に押し出した『ノンストレスナイト』という楽曲がありましたが、浪川さんの音楽活動はいつもバンドと寄り添っている印象がありますよね。
そう感じてもらえるのはありがたいです。さすがに今回のMVにはバンドメンバーは登場していません…というか、登場しちゃったら世界観が変わるので控えてもらっていますが(笑)、それでも、ノンストレスも含めて僕の音楽活動を楽しんでくださっているお客さんがいるので、メンバーに1曲は書いてもらいたいという想いが強くありました。

僕ら、一緒にいるときは本当に楽しいですから。「ノンストレス」というバンド名も、「一緒にいる時間が長いけどストレスフリーだよね? ストレスフリーって“オールフリー”みたいだな〜」みたいな話になったときに、流れですぐに決まったので(笑)。
そう考えると、素敵な関係性ですよね。
そういう関係性を、僕らだけじゃなくみんなで共有したいという想いもありました。

『ノンストレスナイト』を作ったときも、ライブに来たらまた次の扉が開ける…みたいなイメージでしたし。そーっとうしろめたい気持ちで扉を開けるより、どうせなら、「何だろう? 何だろう?」とワクワクしつつバーンッと開けるような人生でいたほうが楽しいんじゃないかと!

この“扉”というのは、今回の『wonderful days』にもつながっているポイントだったりします。

「どれが正解かわからない世の中になってきちゃったね」

3曲目の『Best Answer』のイメージは?
こちらは“何がベストアンサーなのか”というのをテーマにしていて。

自分で決めるのが正しいのか、それとも人に言われたことを守るのが正しいのか…。どれが正解かわからない世の中になってきちゃったよね、ということを歌っています。言葉に関しても、20年前には“インスタ映え”みたいな言葉はもちろんなかった。じゃあ、若者言葉が間違っているのかというとどうだろう、みたいな…。

最終的には、「そんなちぐはぐな世の中でも、自分で選んで進むしかないよね」ということをけだるい感じで歌う曲にしようと発注したんです。そうしたら、めちゃくちゃ難しい曲があがってきちゃって(笑)。

こうやってみると、3曲とも時代に当てはまる楽曲になって、いいのか悪いのか…という感じですね(笑)。
レコーディングに対する手ごたえは?
10年やってきて実感することでもありますが、いつもレコーディング中に「本当にこれでいいのかな?」と感じていて…。どんなにその曲がいいという確信があっても、100%の力を自分自身が発揮できていたとしても、それは変わりません。レコーディングの時点で120%うまくできたと言いきれたことは、一度もないんです。

じゃあ、どこで欠けたピースがハマるかというと、それはライブで歌ったり、みなさんの反応を目の当たりにする瞬間。そこで初めて曲が仕上がるのかなという気持ちです。

僕が音楽畑で30年やってきたとか、そのクラスになると違うのかもしれませんが…。音楽のキャリアはまだ10年、そこまで音楽に精通しているわけでもないので、実際に聴いてくださる方の意見や気持ちを直接知ることで、「ああ、いい形になってきたんだな」と初めて実感できるんですよね。

そうやって少しずつ価値観もアップデートさせながら、10年間という歳月を積み重ねてきたイメージです。

刺激ばかり求めず、当たり前にあるものの大切さを見つめ直す

それだけライブが大事な浪川さんにとって、6月と7月に予定されていたアニバーサリーライブの中止は苦渋の決断だったかと思います。
そうですね…。こういう状況下だとどうにか前を向かなきゃという感じですが、落ち込んでいるときって、何をやっても落ち込むものなんですよ。これは僕もそうです。どんなに励まされても、やっぱりつらいときはつらいんです。

じゃあ、そこで何が力になってあげられるかというと、ひとつは“自分自身”。

その方法はというと、たとえば、「いつも通っている通学路で花が咲いているのを見つけた」それだけでいいんです。あとは、「たまたま出会った散歩中の犬がめちゃくちゃかわいかった」とか、言ってしまえばなんでもいい(笑)。落ち込んでいたり、忙しかったりするときって、そういう普通のことにすら気づかないものなんです。

なので、僕の場合は、前を向くためにも、“当たり前にあるものをちゃんと見る”ように心がけています。
当たり前にあるものの大切さを確かめるような?
ええ。まさに新型コロナウィルスの影響で、それまで当たり前だったことができなくなって悔しいので。

でも、見方を変えれば、“かつての当たり前がじつはそもそも刺激的で、そればかりを求めていた”とも言えるんじゃないかなと。そう思うようになりました。ライブができなくなったのはもちろん残念だけど、そこから何かを発見して前を向くことこそが大事だし、今、当たり前にあるものの大切さを見つめ直すキッカケにできたら、もっと心を豊かに持てるんじゃないかなと思っています。
そうですね。振り返ると、かつてのライブの楽しさが懐かしくなります…。
ライブだけではありませんが、なくしちゃいけない文化だと思います。そのためにも、同じ声優や演出家の方とも、「表現って何なんですかね?」と話すようにしています。

政治・経済・文化の中で、いちばん最初に弾かれるのは文化。

でも、政治も経済も、心が豊かじゃないと変なほうに向いちゃう可能性があるんですよね。“幸せのお裾分け”なんて言葉もありますが、自分が幸せじゃないとやっぱり人を幸せにはできないはず。

そういう意味でも、文化は、じつは政治と経済を支えていることになりますし、僕も「そこに誇りを持ってこの地味な作業をしようよ」とは言っています(笑)。
精神面を支えていると考えると、エンタメの功績は無視できません。
もちろん、そのために我々も最大限まで注意深く、徹底しないといけません。根性でどうにかなるものではありませんし…。

僕らが若い頃は、「ちょっとぐらい風邪を引いても学校に来い! 部活に出ろ!」みたいな風潮が当たり前で、昔の声優業界も、「声が出ない? いやいや、とりあえずスタジオに来て聴かせてもらって、こっちに判断させてよ!」みたいな世界でした。今はそんなことやったら大変ですよ(笑)。

少なくとも、今の声優業界は意識が徹底されていますし、スタジオに入った瞬間に検温。収録も、多くても3、4人ぐらいしかブースに入れませんし、消毒や換気タイムをしっかりと設けて、現場ではしゃべらない。それどころか、スタッフさんとも接触しません。
アニメのアフレコなどでは、もう役者同士の掛け合いもできなくなったんでしょうか?
全員の掛け合いは基本的に無理ですね。ただ、スタジオによってはブースを複数用意して、ヘッドホンで別のブースの音を聴きながら掛け合いをする…みたいな形を取るケースはあります。
同じ現場にいながら、リモートの掛け合いですね…。
そのシーンに登場する役者を回しつつ、うまくやっている感じです。当然ながらスタッフさんの負担はとんでもないことになっていますし、「それまで3時間程度で終わった作業が24時間かかる」というケースもあるようです。

僕も心に余裕はない。でも、少しでも前向きに扉を開けよう

浪川さんは「株式会社ステイラック」の代表取締役を務められています。そちらの業務でも、コロナ禍で苦労されることが多かったのでは?
会社ごとに方針が違うので、僕がやっていることがすべて正しいとは言いきれませんが、社員は土日祝日の休みに週1回の在宅ワークをプラス。フレックス制で「コアタイム」も満員電車を避ける時間に設定しているので、もはやアルバイトみたいな勤務形態にせざるを得なくなっています(笑)。それでもみなさん、ちゃんと働いてくれているので、売り上げとかもがんばっていますけど。

あと、うちは養成所もやっているので、そちらもオンラインの授業ができるように切り替えたり…。
物理的な面はもちろん、各所のメンタルケアも大変そうですね…。
問題はまさにそこ! さっきも言ったように、メンタル面で最終的に背中を押せるのは自分だけ。だから、『wonderful days』をみんな聴いて、という話なんです(笑)。いやもう、それぐらい応援の気持ちを込めていますから。

今は心細いかもしれないけれど、『Up to the rainbow』でも歌っているようにみんな状況は同じだし、最終的には『Best Answer』で歌っているように自分のベストアンサーを探していくしかないんです。

そして、少しでも心に余裕を持ってほしいなって。正直なことを言うと、僕も心に余裕なんてないですよ! でも、持とうという気持ちは常にありますし、こうやって歌で表現することで自分自身にも言い聞かせています。

そういう気持ちをみんなで共有して、『wonderful days』のように次の扉を開けたらいいんじゃないかなって…。うーん、自画自賛するようですけど、やっぱり今回のシングルの構成、完璧すぎません!?(笑)
(笑)。新しいライフスタイルが求められる世の中では、たしかにこの楽曲から勇気をもらえる方は多いかと思います。
新しいライフスタイルというと難しく感じるかもしれないけれど、自分が元気で明るく取り組めることが大事なんです。「イヤだ、イヤだ…」と思いながら取り組んだら、絶対にイヤな生活にしかなりませんから。これだけはもう間違いありません。
だからこそノンストレスに生きたいわけですね。
理想ではそうですね。ただ、絶対にストレスがたまる部分はありますよ! 僕も昔はよくインタビューで「ストレスとかなさそうですね」と言われてきましたし、カッコつけて「ストレスなんて溜めるもんじゃない。貯めるのはお金だけだ」みたいなことを言ってましたけど、冷静に考えたら、ストレスだらけです(笑)。どんな人だってそう。

だけど、何度も言っているように、少しでも前向きに生きていくという気持ちが大切なんだと思います。

6月にYouTubeチャンネルを開設したのは若手のため

6月にはYouTubeで『浪川大輔:ステイラックch』も開設されました! こちらも注目を集めています。
みんながやっているから「二十番煎じ!?」というノリで一発目の配信をやらせてもらいましたけど、もともと、前々から始めようと思っていたんです。
僕の中にも発信したい想いはありますが、声のお仕事だけでなく、ありがたいことに毎週のように顔出しのお仕事をさせてもらう機会があるので、僕自身はYouTuberである必然性はありません。じゃあなんでYouTubeを始めたかというと、若い子たちにとってチャンスになるなと思ったからなんです。

彼らを見ていると、発信したいものはあっても何かとパワーが足りなかったりするので、その手助けになる遊び場が作れたらいいんじゃないかと。なので、チャンネル名に僕の名前だけでなく事務所の名前も入っているんです。

観てくださる方にとっても、ハードルは低く、老若男女が関係なく楽しめるようなものを目指していますし、僕らで率先して恥をかいていけたらなと…。

これは僕がKiramuneレーベルで音楽活動を始めたこととも通じる部分で、当初は、「なんで下手クソなのに歌うの?」ってみんな感じていたはず。でも、率先して恥をかいていくからこそ伝えられるメッセージもあるんですよね。

YouTubeでは、朗読したり、歌ったり、運動したり、さまざまなことをやっているので、「色がないじゃん」と言われたら「たしかに」という感じなんですが、楽しめればどんな色でもいいと思うんです。大変ですけど、いろいろ模索しながら楽しんでいけたらなと。動画の時代に向けて、スタッフが映像編集を学ぶスキルアップの機会にもなりますし。「もし、ウチを離れることがあっても、絶対に役に立つからやっておきなよ」とすすめています。
スタッフも含めて、先を見据えての展開なのですね…! ちなみに若手の役者さんから「YouTubeを使ってこんなことをやりたい」といった声はあがっていますか?
これがですね…。うちのスタッフが若手に向けて「社長の想いはこうです。やりたいことがあったらスタッフも一緒に考えますし、社長を使いたければいくらでも動きますんで」と声をかけてくださったんですが、誰からも反応がないみたいで…(笑)。

その後どうなったのか、まさに今、横にいるスタッフたちに確認しようとしたら、みんな目を合わせてくれません(笑)。社長からしたら、もっとがんばってほしいですよ、ホントに!(笑)

まぁ、YouTube以外にも何かできないかといろいろと考えてはいるんですが、あまり急ぎすぎても1つひとつが軽くなってしまうので。今は目の前のことにしっかり向き合いたいと思っています。
業界の在り方が刻一刻と変化している今、ほかの声優さんやスタッフさんたちと、業界の今後について話をする機会も多いんでしょうか?
それはもう、メチャメチャしてますよ! 配信が主体になってくるのも、順当に行けば3年後くらいに来たであろう流れなので、正直まだ身近なスタジオもほとんど準備が整っていません。ただ、最近になってやっと慣れてきたという話はちょくちょく聞くようになった気がします。

声優って、意外とサブカルチャーに強い人が多いので、技術的なことも教えてもらったり。これだけ長いこと仕事をしていると知り合いも多いし、みんなに仲良くしてもらっているので、いろいろな意見がもらえてありがたいです。

10年間の思い出。ライブ中に逆バンジーに挑戦したことも

最後に改めて、音楽活動10年間を振り返って印象に残っている出来事を教えてください。
ソロの1stライブは印象深いですね。あのときは2DAYSだったのに、そもそもリハーサルでがんばりすぎて、初日の1曲目から声が出ないという…。これは“1stライブあるある”なんですけど(笑)。
力の加減がわからないとしょうがないですよね(笑)。
長く声優として活動してきて、こんなにも声が出なくなることなんて、なかなかありませんから(笑)。

そして、10年を振り返ったときに外せないのが、野音(日比谷野外音楽堂)での5thアニバーサリーライブ。「あの場に立てたら、あとはもういいや」というぐらいの気持ちだったので、あんなに早く立たせてもらえたのはうれしかったです。いまだにあの光景は忘れられません…。

僕らが歌えるのは、もちろんレーベルの力があってこそだとわかっているんですが、それでもフェスのようなステージに立っているのは不思議な感覚なんですよ。
不思議な感覚ですか…。
友だちとフェスを観に行くと、ステージがキラキラして見えるんですよね。でも、「自分はキラキラはしてないだろうな…。ギラギラはしているだろうけど」みたいなことを考えながらステージに立っていました(笑)。いまだに実感がないというか、スゴいステージを繰り広げているみたいな感覚はまったくありません。やっぱり僕の中にあるのは、「1つひとつやってみます。1個1個伝えます」ということだけなので。

ただ全身全霊をかけて目の前のステージに向き合うだけですし、その結果、2019年のツアーで全身が攣(つ)って、その状態のまま本編を終えるという事件も起きました(笑)。

ほかにも、歌っている途中で歌詞を忘れて止めた挙句にもう1回歌い直した事件もありましたし(笑)、トロッコに乗ったときにやっぱり歌詞が飛んで、1番からマイクを置いてお客さんに歌ってもらったこともありました(笑)。数えきれない思い出ばかりですよ!
ライブならではのエピソードですよね(笑)。
もちろん、終わったあとにはすごく怒られるし、僕もしょんぼりしていました…。でも、ビビッて何もやらないより、ビビりながらでも恥をかいたほうが、こうやって笑い話にできるので。

ちなみにいちばんビビッたのは、ライブ中に逆バンジーに挑戦したとき。「タッキー(滝沢秀明さん)のように空中で回って」とか言われて、正直、「無理だろ!」と思ったんですよ。でも、口パクにしてもらえるならなんとかなるかなぁと思っていたら、「何言ってんの? 歌ってもらうよ」って言われて「えっ、ウソでしょ?」って(笑)。
アテが外れたわけですね(笑)。
「歌えるとか、歌えないとかじゃなくて、そこも含めてやろうとすることがエンタメじゃない?」って言われて(笑)。しかも、実際にその状況になると不思議と燃えてきて、やってやろうという気持ちが湧き上がってくるんですよ! 自分ひとりだったら絶対にやろうと思わなかったですし、人の意見っていうのは大切なんだなと改めて感じました。

あとはおととしのキラフェス(『Kiramune Music Festival 2018』)で、ラストを飾らせてもらったときに、不思議な感動と“引退感”が出てしまったこと。ステージからハケながら「このまま引退するんじゃないかな…」と思っていたので、気になる方はぜひDVDでそのシーンをチェックしてみてください(笑)。そうやってステージに立って眺めてきた景色は、やっぱり僕にとってはかけがえのない宝物なんです!

叶うかどうかはわかりませんが、コテコテに演出したライブと、音楽以外を削ぎ落したライブをどちらも形作ってみたいですね。ふたつに分かれているようだけど、どちらも浪川大輔のライブだなと思ってもらえるような…。少なくとも10年ではどちらも実現できていませんからね。

そして、音楽活動への想いも、レーベルに入ったときとまったく変わっていません。まだまだ新人というか、目標にはまったく到達していないので、まだ変えてはいけないと思っています。

これまでずっと言い続けてきた「浪川にできるんだったら、あなたにもできるから」という言葉はまだまだ言い続けたいし、これからも何事にもチャレンジし続けることで、「あんなおっさんなのに、汗かいてブサイクになりながら、あそこまでできるんだ! じゃあ、俺らにもできるな」と感じてもらえたらうれしいです。

浪川さんに聞きました! Kiramuneの仲間を漢字で表すと?

やっぱり「遊」かなぁ…。文字通り、感覚が常に遊び心にあふれているんですよ! もちろん、キメるところはキメるけれど、基本的にはいたずらっ子だから(笑)。いつも楽しそうだし、だからこそ彼のステージも楽しいんだと思います。
彼のひと言はとにかくパワーがあるんですよ。「鶴の一声」っていう言葉があるから…「鶴」かな。僕が100発、1000発とマシンガンのように言葉を打ち出しても、彼が一発ビー玉をピッと転がすだけで覆されるような(笑)。いや、スゴいですよ、やっぱり。
柿原は「義」かな? 考え方が良くも悪くも“正義のヒーロー”なんですよ。自分の信念を強く持っている。立場の弱い人を見たら「俺がなんとかする」と言いながら、自然と守っちゃう。そんなイメージがあります。
岡本は相手に合わせるのがうまいから「染」。まず、「はいはい、はいはい」って返事が早いんですよ!(笑)しかも、それが空返事じゃなくてちゃんと理解しているから、頭の回転がものすごく早い。きっと、相手の言いたいことが把握できちゃって、先に行っている感じなんでしょうね。

…ああ、そういう意味だと「先」のほうがいいかな。僕もせっかちですが、アイツのほうがせっかちです(笑)。
ユニット全体でいうなら「角」。1人ひとりに尖った個性があって、まったく丸くない。そんな個性がそろってひとつの三角形を成しているイメージですね。表現が難しいんですけれど、Trignalがあるから3人がいるんじゃなくて、3人がいるからこそのTrignal…みたいな感じかなぁ。
あの方は、めんどくさいおじさんだからなぁ…(笑)。何事に関しても物事を正面から受けないから、漢字でいうなら「斜」。みんなが普通の道路を走る中、ひとりだけ下水道の排水溝を自転車で走っているみたいな(笑)。

そういうスタンスは“役者あるある”ではあるんですけど、あの人のポジションは声優業界でもかなり斜めなはず…。それも想像力がものスゴいからこそですし、いつも我々の斜め上にいるというポジションは貴重だと思います。
SparQlewの子たちはキャンパス…つまりは「面」。どの角度から見てもしっかりした面が見えるというか。どんなことをやらせても確かな結果を残しそう。

ただ、それは個性がないというわけではなくて、それぐらいオールマイティなイメージということで、「こちらのやってほしいこと」を真っ向から受け止めて形にしてくれるのは彼らなのかなと。ちなみに、その対称に位置するのが吉野さんだと僕は思います。
「力」かなぁ…。活動休止中ですが、レーベルの動力源にもなっていましたし。どのメンバーもパワーを持っていますけど、やっぱりCONNECTはまたちょっと違ったパワーがある。だから歌からも、鮮やかさや美しさよりも、まず力強さを感じるんですよね。「実力派」という言葉が何よりもピッタリだと思います。
© Kiramune Project
浪川大輔(なみかわ・だいすけ)
4月2日生まれ。東京都出身。B型。子役として活動を始め、『白バイ野郎パンチ&ボビー』の吹き替えで声優デビュー。主な出演作に『ルパン三世』シリーズ(石川五ェ門)、『君に届け』(風早翔太)、『ハイキュー!!』(及川 徹)、『Fate/Zero』(ウェイバー・ベルベット)、『ペルソナ4』(鳴上 悠)など。株式会社ステイラック代表取締役。2010年にKiramuneレーベルからアーティストデビュー。2020年6月に音楽活動10周年を迎えた。

CD情報

浪川大輔7thシングル
『wonderful days』
9月2日(水)リリース
http://kiramune.jp/artist/namikawa/

左から豪華盤(初回限定生産)、通常盤

【豪華盤(初回限定生産)】[CD+DVD]
品番:LACM-34003
価格:¥2,000(税抜)

【通常盤】[CD only]
品番:LACM-24003
価格:¥1,400(税抜)

© Kiramune Project

Blu-ray情報

浪川大輔 MUSIC CLIP COLLECTION
『step by step』
9月2日発売

デビュー曲『ROCK STAR』から『HIYAKE!ダンシング』までのMUSIC CLIP全13曲を収録
品番:LABX-8440
価格:¥4,800(税抜)

© Kiramune Project

サイン入り色紙プレゼント

今回インタビューをさせていただいた、浪川大輔さんのサイン入り色紙を抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
ライブドアニュースのTwitterアカウント(@livedoornews)をフォロー&以下のツイートをRT
受付期間
2020年9月2日(水)12:00〜9月8日(火)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/9月9日(水)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから9月9日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき9月12日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
  • 応募にかかる通信料・通話料などはお客様のご負担となります。
  • 応募内容、方法に虚偽の記載がある場合や、当方が不正と判断した場合、応募資格を取り消します。
  • 当選結果に関してのお問い合わせにはお答えすることができません。
  • 賞品の指定はできません。
  • 賞品の不具合・破損に関する責任は一切負いかねます。
  • 本キャンペーン当選賞品を、インターネットオークションなどで第三者に転売・譲渡することは禁止しております。
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