進化が止まらない40歳。声優・下野紘を変えた“危機感”の正体

ひときわ高いテンションと高音のハスキーボイスで、どこか憎めないヘタレキャラを演じさせたら天下一品の声優・下野紘。2019年は『鬼滅の刃』の大ブレイクもあり、我妻善逸を演じた下野の知名度はさらに急上昇している。

声優としては明るく陽気な下野だが、アーティスト活動ではまったく違うクールな一面を見せており、そのギャップがファンにはたまらない。

今回の撮影でも、カメラの前では大人の色気を存分に見せつけつつ、その裏では気さくにはしゃいでいた姿が印象的だった。インタビュー前、席に着くなり「最近イベントがなくなっちゃったので、しゃべりたくてしょうがないんですよ(笑)」とノリノリな様子。「きょうは必要以上にしゃべっちゃいますよ」の言葉通り、1時間を優に超すロングインタビューとなった。

5年目を迎えたアーティスト活動についてはもちろんのこと、1stアルバム『WE GO!』の制作秘話、声優業への熱い想いまで、たっぷりと語ってもらった。

撮影/小嶋淑子 取材・文/岡本大介
スタイリング/村留利弘(Yolken) ヘアメイク/中島康平(UNVICIOUS)

4年でレベルアップを実感! ようやく自信がついてきた

2016年3月のアーティストデビューから約4年が経ちました。個人的に、歌唱面でものすごくレベルアップしていると感じますが、いかがですか?
レベルアップ、しましたね(笑)。純粋な歌唱面でもそうですけど、たとえばライブでのパフォーマンス、イベントでの立ち振る舞い、あるいはアニメのアフレコといった声優業のほうにもいい影響を与えていて、そのことにとても驚いていますね。約20年間声優をやってきて、「僕にもまだこういう表現ができるんだ」と実感することが多いんです。
たとえばどんなところが声優業にも生きていると感じますか?
端的に言えば「喉を痛めない発声」です。ボイトレの効果が大きいと思うんですけど、声の出し方っていろいろあるんだなと改めて思い知らされたんです。歌でもお芝居でも、これまでの僕はちゃんと伝えようとすればするほど力んで喉を痛めてしまう傾向があったんですけど、発声の仕組みや喉の使い方がわかってくると、以前より力まずに求める声を出すことができるようになったんです。

それまでは気持ちだけで歌ったりお芝居していたんですけど、両者を比べたとき、明らかに喉に負担をかけない声のほうがクリアで聴き取りやすいんですよね。さらに歌に関して言えば、これまではできなかったような柔らかいニュアンスを出すことができるようになったりと、表現の幅がグンと広がったなと思います。
『WE GO!』は、そういった成長を遂げたうえでの満を持しての1stフルアルバムなんですね。
そうですね。これまでいろいろなタイプの楽曲を歌ってきて、この曲はこういうふうに表現したいなとか、こう歌ったら面白そうだとか、そういう自信のようなものが去年くらいからようやくついてきた気がして。『WE GO!』はこれまで以上にアプローチを考えたりイメージをして臨むことができたと思います。
きょうの撮影衣装もそうですが、ジャケット写真もビシッとしたスーツ姿で素敵です。
今回のアルバムは、1960年代にイギリスで流行したモッズカルチャーがコンセプトなんですよ。これまでわりと革ジャン系のビジュアルイメージが続いていたので、「ここらでスーツとか、どうっすか?」とスタッフに提案してもらって、「いいね!」って(笑)。声優としての下野紘って、どちらかというとポップでカジュアルなイメージがあったので、これまでにない真逆のイメージを見せたいと思ったんです。
ビジュアルのイメージから入ったんですね。
そもそも『リアル -REAL-』でアーティストデビューしたときもそうでしたからね。アーティスト活動を始めるにあたって「音楽のジャンルから入るか、あるいはテーマを前面に打ち出すか、どうしますか?」って聞かれたんですけど、当時はどちらもピンと来なくて「よくわかんないです」って答えたら、「じゃあ側(ガワ)から決めましょう」って(笑)。まずは僕が「どんな服が着てみたいか?」というところから入ったんですよ。
それが『リアル -REAL-』の革ジャンだったんですね。
そう。そんな歴史があるので、今回も「ゆくゆくはスーツ姿でライブとかやれたらカッコいいよねえ」みたいな安直な発想でした(笑)。
スーツのなかでも、とくにモッズスーツを選んだ理由は?
それはもちろん、ビートルズです! ロックでスーツといえばビートルズですから、モッズスーツにたどり着くのは必然でした。それなら規曲もちょっと懐かしめのロックがいいだろうということになり、テイストや方向性が決まっていきましたね。

デビュー曲『リアル -REAL-』をもう一度、歌いたかった

アルバムのオープニングを飾る『Departure』、続く『Survive』などはまさに今回のアルバムの方向性がよくわかる、懐かしいロックチューンですよね。
作曲をお願いした高橋諒さんも宮崎京一さんもずっとお世話になっている方ですから、すぐにやりたいことを理解してくれて「モッズって言ったらこうだよね」と、とても素敵な楽曲を提供してくださいました。
“フェイク”や“シャウト”など、歌い方もロックンロールの作法に則っているなと感じました。そこは意識したところですか?
いただいた楽曲を聴いて、自分なりにノリやテンポなどを考えつつ、こんな感じで歌いたいなというのはきちんと持って臨みました。結果的に『Departure』はちょっとアクセントを強調してトリッキーな歌い方になりましたし、逆に『Survive』はかなり荒々しく(笑)。

どちらもまずワンコーラス歌ってみて、それを自分で聴いて、もっとこうしたほうがいいかなと自分なりに分析しつつ、アプローチを変えながら作っていきました。ここまで主体的な作り方をしたのは、今回のアルバムが初めてです。
今回のアルバムには1stから4thまでのシングル曲が収録されていますが、注目すべきは『リアル-REAL-』が『リアル-REAL2020-(Re-Recording)』として再収録されていることです。
フルアルバムを作りましょうという話が出たときから自分の中で考えていたことで。ぜひとも『リアル-REAL-』をもう一度歌わせてもらいたいと思っていたんです。
それは、今ならまた違った表現ができるという気持ちからですか?
そうです。4年前に『リアル-REAL-』でアーティストデビューしたときは、そもそもアーティストとして歌うことに精一杯で、かなり楽曲に振り回されていたなと。全力で取り組んだ結果なので仕方のないことですけど、でも楽曲に対する理解度が深まってくるにつれて、ここはもっと強めに出したほうがよかったなとか、歌詞の流れも含めて思うところがたくさん出てきたんです。

それで再録したいと伝えたら、どうやらスタッフ陣も同じ気持ちだったみたいで。なので今回は、原曲から若干のアレンジは加わっていますけど、基本的には同じ演奏でもう一度レコーディングしました。
聴き比べると違いがよくわかりますが、原曲よりも力強く、それでいて言葉が粒立っていて、歌詞もスッと入ってくる感じがします。
ありがとうございます。自分でも、この4年間の成長を実感しています。
アルバムのリード曲『WE GO! -On Your Mark-』の作詞作曲はヒャダインこと前山田健一さんです。おふたりはTVアニメ『みつどもえ』から交流がありますが、楽曲提供は今回が初ですね。
もともとアルバムのうち1曲は、僕とゆかりのある人やお世話になった人、あるいは憧れの人にお願いしたいねという話があり、それで前山田くんにお願いしたんです。僕がこれまでやってきたギターロックと前山田くんのポップなテイストがどんな化学変化を生み出すのかワクワクしました。
前山田さんらしいポップでキャッチーなテイストながら、一方でギターロック感もしっかりある素晴らしい楽曲になっています。
じつは最初に仮歌をいただいたときには今よりポップ成分が多めだったので、もう少しバンド感を感じるアレンジにしてほしいとお願いしたところ、絶妙な塩梅になって上がってきました。歌い方も少し荒々しい生感のあるアプローチをすることで、ポップなんだけど力強い、これまでなかった雰囲気になったと思います。

ロンドンで食べたチキンカツカレーが忘れられない

『WE GO! -On Your Mark-』のMVやアルバムジャケットの撮影はロンドンで行われたそうですね。
そうです。アルバムのテーマが「モッズ」なので、これはもうイギリスで撮影するしかないだろうという、これもまた安直な発想ですけど。
ロンドンを訪れるのは初めて?
初です。いやあ、写真映えする街でしたね。どこを切り取っても絵になるという。バンクシー(イギリスを拠点とする匿名のストリートアーティスト)の拠点として有名なリーク・ストリートトンネルとか、巨大な崖のあるセブン・シスターズなど、街中から郊外までいろいろな場所で撮影してきました。あ、もちろんアビイ・ロードでも撮影しましたよ。
ビートルズのジャケットで有名な横断歩道ですね。
あそこは人気の撮影スポットで、僕らが行ったときにはビートルズの格好に扮装した方が撮影待ちをしていました。写真撮影をしている人がいるときは、信号が変わっても車が停まってくれたりして、なんて心の広い街なんだと思いましたね。まあ、住民の方々も半ば諦めているのかもしれませんけど(笑)。
イギリスといえばよく話題に上がるのが食事についてですが、いかがでした?
おいしかったですよ。イタリアンや中華、飲茶もなかなかでした。ただ唯一、ロンドンの中華料理屋さんで出していたチキンカツカレーは……忘れられない味です……。
忘れられない味?
中華料理屋なんですけど、なぜか日本のメニューもあって、スタッフのひとりが「チキンカツカレー」を頼んだのが地獄の始まりでした(笑)。
(笑)。具体的にはどんな味だったんですか?
野菜とチキンカツとライスがワンプレートで出てきて、カレーは別添えだったんですけど、ライスはタイ米でした。
東南アジア系のスパイシーカレーみたいな?
それがそうでもなくて。なんというか、まずはハッカクの香りがガツンときて、次になぜか「甘〜い」ってなるんです(笑)。野菜のまろやかな甘みとかではなくて、ストレートな砂糖の甘さで、それからはハッカクの辛さと砂糖の甘さの繰り返し(笑)。
あまり想像できませんが、おいしくはなさそうです……。
いや、本当にもう罰ゲームですよ。これはちょっと衝撃的なマズさでした(笑)。
ロンドン滞在時は、自由時間などはあったんですか?
自由だったのは、空港内とお土産を買った時間だけで、あとはずっと撮影でしたね。いつかプライベートで行ったときに、ゆっくりと観てまわりたいと思います。

今の僕は『ドラゴンボール』の超ナメック星人!?

では改めて、1stフルアルバム『WE GO!』について、聴きどころを教えてください。
僕としてはアルバム全体をひとつの「旅」だと捉えていて、1曲目の『Departure』で出発して、いろいろな経験をして『I'm Home』で家に戻ってきて、最後の『Soul Flag』でまた忙しい日常に戻っていく。この旅は僕自身の成長物語じゃないですけど、そういうことも裏テーマになっているので、その点も意識しながら聴いてもらえるとより楽しめるんじゃないかなと。
下野さん自身のこれまでのヒストリーにもなっているんですね。
そうです。4年前にアーティスト活動を初めて、当初は声優とアーティストでははっきりと色を分けようと思っていたんですが、だんだんとそれが曖昧になっていったんですよ。やればやるほど、「結局どっちも下野紘じゃん」っていうところに行き着く。声優業とアーティスト業とを、切り離しては考えられなくなってきたんです。

アニメでのお芝居も、イベントでの立ち振る舞いも、アーティストとして歌うことも、すべては表現の一側面でしかなくて、それらがお互いに影響を与え合いながら成長してきた気がします。そういう意味で、アルバムの最後を締めくくる『Soul Flag』は、下野紘の声優とアーティストのどちらの側面も持ち合わせている曲だなと感じていて、だからこそ最後に聴いてもらうことで僕の内面的な変化や成長も感じてもらえるんじゃないかなと思います。
声優とアーティストが不可分になってきたというのは、3rdシングル『Running High』のときにもおっしゃっていましたね。今では完全にひとつになった感覚ですか?
すごく厨二的な言い方をすると、闇の自分と光の自分がいて、それらが融合してようやく本当の自分になった感じ?(笑)もっと大人な言い方ができないか考えたんですけど、この表現しか思いつかなかったです、すみません……。でもこれがいちばんしっくりくる言い方なんですよね。
なんだか、マンガに出てきそうなキャラですね。
『ドラゴンボール』でいうと、神様とピッコロがもともとは同一人物で、融合して超ナメック星人になったみたいな(笑)。
半身を取り戻したと。
そうですね。でも今思うと、最初にキャラを分けたからこそ、今では「ちょっとクールな感じを足して」とか「もう少しだけ明るくていい」とか、いろいろな場面でさじ加減ができるようになったのかなと思いますね。
新型コロナウイルスの影響があり、今後の活動がイメージしにくいところがあると思いますが、いずれはアルバムを引っさげてのライブもありますよね。
そうですね。本当にどうなるかはわからないんですけど、ぜひやりたいです。僕としてもこれまで以上に提案できることが増えたと思いますし、やりたい企画もたくさんありますから。
2019年はツアーこそなかったですが、5月にミニライブ(『下野紘 リーディング&ミニライブ2019"sympathy"』)を開催して、しかもダブルアンコールに応えるという異例の出来事もありました。本当にファンの方々を大切にされているなと感じます。
あれは本当にね、弱りましたよ。だって大人たちが本気で怒り気味だったんですから(笑)。「イケるかな?」と思ってパッと袖を見たら、そこにいた2、3人のスタッフが大きく手でバッテンのジェスチャーをしていて。

閉場時間の兼ね合いとかもあるからやっぱり難しいかと思いつつ、でもこれだけ盛り上がってくれているお客さんに僕の口から「無理です」とは言えなくて。それでバンマス(バンドマスター)に「……さすがに無理だよね?」って聞いたら「いや、俺はイケますよ!」って(笑)。
ダブルアンコールに応えることにしたんですね。
最後は即興ソングで「みんな帰れ〜♪」と歌いました。前代未聞ですよね?(笑)
でもすごく優しいなと思いましたよ。
嬉しかったですし、楽しかったんです。自分から朗読とライブだけのイベントをやりたいと提案してやらせてもらった企画だったこともあって、お客さんにあそこまで喜んでもらったというのは余計に胸にくるものがありました。ああいう形のイベントも、またぜひできたらいいなと思っています。

「ここまでかな…」自分の可能性の限界を感じていた

4月21日に節目となる40歳に。35歳のときにインタビューをさせてもらった際、「40になったらいろいろな考え方が変わっていると思う」とおっしゃっていたのが印象に残っていますが、実際にはいかがですか?
もう、いろいろと変わりましたね。
どんなところがいちばん変わりましたか?
健康に対する意識ですね。アーティストデビューしたばかりのころは、筋トレや体力作りとか、ほとんど意識したことはなかったんですけど、今はかなりやっています。それに食事面でもめっちゃ健康に気を遣うようになりましたね。
昔はお酒や揚げものが大好きなイメージがありました。
それもかなり控えるようになりました。今はジュースのような清涼飲料水もまったく飲まなくなりました。
それは何かのきっかけがあったんですか?
2018年にライブハウスツアー(『下野 紘ライヴハウスツアー2018 "Color of Life"』)をやったんですけど、その準備のために、バンドメンバーみんなで「ちょっとシェイプアップして体力もつけよう」っていう話になったんです。それからだんだんと本格的にトレーニングをするようになったんですけど、3ヶ月くらい経って「みんなトレーニングしてる?」って聞いたら、なんと誰もやっていなかった(笑)。
あらら。
ただそのあとにも舞台があったり別のライブがあったりもしたので、せっかくだからこのまま続けようと思って。食事の時間をなるべく一定にしたり、食べものを買う際も成分表をしっかり見て、なるべく添加物を取らないようにしたり。
徹底していますね。
おかげさまで、だいぶ元気ですよ(笑)。それに体力がついたことで、やりたいことも年々増えているんですよ。最近いろいろなところで言っているんですけど、今いちばんやってみたいのが、「富士山登頂」と「自衛隊の体験入隊」。とにかく体力的にしんどいことを経験したい。ただこれにはマネージャーがあまりいい顔をしていなくて(笑)。
ちょっと心配になりますもん。ところで、筋力や体力がついたことは仕事面でもメリットを感じますか?
先ほどの喉の話にもつながってくるんですけど、いい発声をするためには横隔膜を十分に下げる必要があるので、そのためには腹筋が必要なんですよね。お腹周りに筋肉がつくと、身体全体も軽くなって動きやすくなるので、それらがいい意味で循環しているなと思います。
下野さんのような高音のハスキーボイスを維持するのは相当大変だと思いますが、むしろまだまだ進化しているんですね。
もともと「声優としてスキルアップしなきゃ」と焦っていたタイミングで始めたアーティスト活動が、こういった形で声優活動に生きるとは。なんでもやってみるものですね。
40歳というと、声優界でも中堅のポジションになると思います。下野さんは昔から「可愛い弟キャラ」というイメージが強いですが、最近では兄貴的な雰囲気もありますよね。
あの、今「兄貴」と言ってくれましたけど、僕の気持ち的にはもう「兄貴」もキツいんです。自分のことを「お兄ちゃん」って言うのに抵抗があって、どうしても「おじさん」って言っちゃいます(笑)。「おじさんはこう思うよ〜」みたいな。
まだまだ全然「お兄さん」で通ると思いますけど。
ダメなんですよ。頭のどこかに「俺ももう40だぞ」っていう気持ちがあって、それが拭えないんですよね。
でもお話を伺っていると年々進化していますし、やりたいことも増えていて。もう40だからと守りに入らないのは素敵だと思います。
じつはアーティスト活動をする前は、声優としての下野紘はだいたいここまでかなという、自分の限界みたいなものが、なんとなく見えてしまったんです。声優界もどんどんと新しくて新鮮な表現をする若い人たちが増えていて、そこに負けていられないという気持ちがありつつも、このまま自分が変わらないでいることに恐怖も感じたんですね。

今になって振り返ると、そういう危機感があったからこそアーティスト活動を始めたり、身体を鍛えたりしているのかもしれません。

誰のためにキャラクターを演じ、歌を歌うのか

今のところ、見事にその変化や挑戦が実を結んでいますよね。ネットサイトのアンケートで「2019年にいちばん“推せた”男性声優」第1位に輝くなど、人気面でも絶好調です。
いろいろな要因が重なった結果だとは思いますけど、本当にありがたいですね。
2019年は『鬼滅の刃』の大ブレイクもありましたし、声優20年目にして新たな視聴者層に届いた印象もあります。
もうね、『鬼滅』の影響力はスゴいですよ。いろいろな現場で「我妻善逸、大好きです!」「下野さん、ファンです! 『鬼滅』観てます!」って言われますから。世の中、何があるかわかりませんな(笑)。
数多くの人気声優の中で1位を獲得したというのは、やっぱり嬉しいものですか?
それは単純に嬉しいです。でもこの世界に入って、いろいろな人から「この世界は水モノだぞ」と言われて育ってきていますし、僕自身もそれはその通りだなと。だから認知していただけたことに対しては素直に感謝しつつも、自分が左右されることはないです。調子に乗って、ハシゴを外された瞬間にドンと落ちるのも怖いですし(笑)。
謙虚なんですね。
1位を取ったらそれで終わりっていう世界ではないですからね。喜んだとしても一瞬で、それからもずっと仕事は続いていくものですから。

それに世間的な評価と自分の中での評価というのはまた少し違うもので、たとえば皆さんに「いい」と思っていただけたお芝居でも、家に帰って自分の声を確認すると「ここはダメだ、もっとこうすればよかった」とか、すぐにダメ出しが始まるんです。

声優にとって表現やキャラクターを追求するすることに終わりはないですし、それはずっと向き合って考え続けなくちゃいけないテーマなので、評価されることは嬉しい反面で、それとは少し距離を取ることも必要だなと思っていますね。
そういう真面目な姿勢が、20年間という長い期間、第一線で活躍されている理由のような気がします。
そうですかねえ。でも僕自身、若い頃にちょっとだけ天狗になりかかった時期もあるんですよ。「あれ? 俺ってもしかして人気あるんじゃね?」って(笑)。でもそのたびに失敗するし、挫折するんです。それを繰り返してきての今なんですよね。
失敗や挫折も決して無駄ではないということですね。
そうですね。40歳を迎えて改めて感じるのは、僕らが輝いていられるのはすべて周りの人たちのおかげだということ。もちろん自分が必死で頑張るのは大前提ですけど、でもそれだけでは輝けないんですよ。僕らが表舞台に立てるのは多くのスタッフさんが支えているからこそだし、応援してくれるファンの方がいて初めて成り立つ職業ですから。

誰のためにキャラクターを演じているのか。誰のために歌を歌っているのか。それは決して自分のためじゃなくて、その先にいる、それを受け取る人のためであるべきで、その気持ちだけは絶対に忘れてはいけない。そこさえ忘れなければ、きっととても楽しい40代になるんじゃないかと、僕はそう思っています。
下野紘(しもの・ひろ)
1980年4月21日生まれ。東京都出身。B型。2001年に声優デビュー。主な出演作品は、『ラーゼフォン』(神名綾人)、『神のみぞ知るセカイ』(桂木桂馬)、『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE』シリーズ(来栖翔)、『進撃の巨人』シリーズ(コニー・スプリンガー)、『鬼滅の刃』(我妻善逸)、『アフリカのサラリーマン』(オオハシ)など。2016年にソロアーティストデビュー。2020年8月19日に1stフルアルバム『WE GO!』をリリース。

CD情報

1stフルアルバム『WE GO!』
8月19日(水)リリース

左から初回限定盤、通常盤、きゃにめ盤。

初回限定盤[CD+DVD]
¥4,000(税別)
通常盤[CD only]
¥3,000(税別)
きゃにめ盤[CD+DVD]
¥4,500(税別)

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、下野紘さんのサイン入りポラを抽選で3名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2020年8月18日(火)18:00〜8月24日(月)18:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/8月25日(火)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、個人情報の安全な受け渡しのため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月25日(火)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月28日(金)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
キャンペーン規約
  • 複数回応募されても当選確率は上がりません。
  • 賞品発送先は日本国内のみです。
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