桜が「姉さん」と呼んだとき、私たちの絆も深まった。下屋則子×植田佳奈『Fate』対談

TYPE-MOONによる大人気ビジュアルノベルゲーム『Fate/stay night』。2006年のTVアニメ初放送から15年の時を経て、いよいよ今年の8月15日に公開される劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring songをもって、全3ルートの映像化が完了する。

ヒロイン・間桐桜の繊細な心情、魔術師たちが死闘を繰り広げる“聖杯戦争”の激しさ――最終ルート『Heaven's Feel』(以下、HF)は、その対照的な表現に魅了される物語だ。

また、圧倒的な作画の美しさも見どころのひとつ。この映像表現を生むのは、2019年にTVアニメ『鬼滅の刃』でも大きな話題となったアニメ制作会社ufotableだ。過去には『空の境界』(2007〜10年)、『Fate/Zero』(2011〜12年)なども手掛け、TYPE-MOON作品とは切っても切れない強い関係にある。

ライブドアニュースでは3月上旬に、ヒロインの間桐 桜と遠坂 凛のキャストインタビューを実施した。

15年をともに歩んできたのは、声優の下屋則子と植田佳奈。色違いのワンピースで取材に臨み、「プライベートは一緒にクッキーを作ることもあった」と話す。本当の姉妹のようなふたりから、サーヴァント愛やキャスト愛、さらには姉妹愛など、『Fate』シリーズにまつわるさまざまな愛が語られる。

撮影/アライテツヤ 取材・文/阿部裕華
ヘアメイク/尾関真衣(addmix BG)【下屋】、木村ゆかこ(addmix BG)【植田】

HF劇場アニメ化を知ったのは、イベント前日の夜だった

おふたりが劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」の制作決定を知ったのはいつ頃だったのでしょうか?
下屋 私も佳奈ちゃん(植田さん)に聞いてみたかったです! 2014年のイベント(Fate Project最新情報発表会)で、『Unlimited Blade Works』(以下、UBW)のTVアニメ化とHFの劇場アニメ化をお披露目しましたけど、佳奈ちゃんはどのタイミングで知りました?
植田 私は前日の夜、イベントの台本をもらったときに知りました。
下屋 一緒ですね! 『Fate/stay night』の何かをアニメ化するのは知らされていたんですけれども、どのルートかは知らなくて。キャストの中でも、何をやるんだろうと話してたんです。「HFじゃない?」という話も出ていて、私としては「やれたらいいけど、やれるかな……」と半信半疑な感じでした。

いざイベントの台本を読んでみたら、最初に「UBW テレビアニメ化」と書いてあって、そうだよね……と。でも、読み進めていくと「HF 劇場アニメ化」の文字があったんです! イベントでサプライズ発表いたします、と最後に書かれてあったんですけれども、私にとってもすごくサプライズだった記憶があります。
植田 私は映画(2010年の『Fate/stay night UNLIMITED BLADE WORKS』)が公開されたあとだったので、絶対に(まだ映像化されていない)HFがアニメ化すると思っていました。なのでHFのアニメ化を知って、「やっぱり来たよね」と。

むしろ、UBWのアニメがTVアニメでもう一度作られるということが、私の中ではかなりイレギュラーでした。
▲下屋則子
▲植田佳奈
イベントでHFの劇場アニメ化が発表されたとき、ファンのみなさんの反応はいかがでしたか?
▲イベントの最後に上映された、HF劇場アニメ化を知らせるPV。
下屋 地響きを感じるくらいの大歓声が上がりましたね。

あのときのことは鮮明に覚えていまして。HF劇場アニメ化はイベントの最後のサプライズだったので、司会の方はイベント中、あえて私に話題を振らないようにされてました。でも、あまりにも話が振られないし、アニメ化が先に発表されたのはUBWでしたし、イベント生配信のコメント欄には「下屋さんなんでいるんだろう、かわいそう」っていうのがあったみたいで(笑)。

なので最後の最後にHF劇場アニメ化が発表されたときは、「下屋さんよかったね!」という声がたくさんあったみたいです(笑)。
▲間桐 桜(まとう・さくら)
CV:下屋則子。“Heaven's Feel”ルートのメインヒロイン。主人公・衛宮士郎(CV:杉山紀彰)の後輩で、彼を慕っている。遠坂家に生まれるも、間桐家の養子となる。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
▲遠坂 凛(とおさか・りん)
CV:植田佳奈。主人公・衛宮士郎の同級生。ヒロイン・間桐 桜の実姉。遠坂家の六代目当主を務める魔術師で、冬木市の管理者。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

士郎と桜が体を重ねるシーンは、なくてはならない表現

おふたりはHFが劇場アニメ化すると知って、率直にどう感じましたか?
下屋 劇場アニメ3部作として制作してもらえることは、本当に贅沢だし嬉しかったんですけど……。「HF」ルートはかなり特殊だと思っていたので、みなさんに受け入れてもらえるか少し不安がありました。「Fate」ルートや「UBW」ルートのように王道なストーリーではないので、劇場アニメで初めて知る方たちには衝撃の大きい作品になるんじゃないかと思いました。

なので、イベントでみなさんがとても喜んでくださって、すごく安心したんですよね。
植田 私の第一印象は「どうアニメ化するんだろう……?」だったな(笑)。

とくに、いまだに鮮明に思い出すくらい衝撃的だった、桜が町を徘徊してまざまざと“食事”をするシーン(PC版のみの描写)。あのシーンはどうやってアニメで描くのかな、と真っ先に頭に浮かびましたね。
映画だと『Ⅱ.lost butterfly』(以下、二章)で描かれたシーンですね。
植田 映画では桜のメルヘンチックな夢として描かれていて、こんな表現があるんだ!と、すごく衝撃を受けたのを覚えてます。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
二章はとくに、衛宮士郎(CV:杉山紀彰)と桜が体を重ねるシーンでは「そこまで表現するんだ……!」と驚きました。アニメでも原作通りに描かれることを、どのように感じていましたか?
下屋 完成した映像を観たとき、HFにとって、そういった描写はなくてはならない表現だったのかなと思いました。
それはなぜでしょう?
下屋 桜はずっと士郎が好きで、もしかしたら手に入れたいという願望があるかもしれない。でも、姉である凛への憧れを含め、自分を取り巻く環境のせいでコンプレックスを抱えていて、自分は士郎にふさわしくないという想いも持っています。

そんな桜が一歩踏み出して、士郎と結ばれるという意味があの描写にはあって。さらに、心も体も結ばれたことで、士郎がこれまで持っていた正義の信念が覆ることになります。みんなの正義の味方を目指した士郎が、「愛するひとりを守れなくて、何が正義の味方なんだ」と“桜にとっての正義の味方”になることを決める。

そうした桜と士郎の関係に変化を持たせるには、一歩踏み込んだ表現が必要だったと感じます。
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土蔵のシーンでは、姉妹のあり方が対照的に描かれている

では、『Ⅰ.presage flower』(以下、一章)と二章でおふたりの印象に残っているシーンを教えてください。
下屋 一章は、士郎と桜の出会いのシーンと、土蔵で桜が士郎に自分のことを話すシーンが印象に残ってます。

出会いのシーンは、目に光が灯らず笑顔も見せなかった桜が、士郎や藤村先生(CV:伊藤美紀)とともに日々を過ごす中で人の温かさを知って、少しずつ表情や感情が生まれていくのを丁寧に描いていただけて嬉しかったです。

土蔵のシーンは、初めて桜が自分のことを語るシーン。大切な思い出や自分について踏み込んで話していたのが、すごく印象に残ってます。

あと、真アサシン(CV:稲田徹)とランサー(CV:神奈延年)のバトルシーンは素晴らしかったですね!
わかります! すごくカッコいいシーンですよね。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
下屋 あとは、しんしんと降り積もる雪の描き方も本当に美しかったです。背景美術の美しさも印象に残ってます。佳奈ちゃんは?
植田 私も則ちゃん(下屋さん)と同じで土蔵のシーンは印象的でした。二章では凛が士郎と土蔵で話していますが、桜と凛のあり方が対照的に描かれていて。校庭で走り高跳びをする士郎の思い出に対して、桜と凛はリンクしてるようでしてない。同じものを見ているのに、ここまで心情が違うんだ、と印象的でした。

あと、なんといっても二章の桜と士郎の雨の中でのシーン。みんなの正義の味方であることを貫いてきた士郎が、ただひとりにとっての正義の味方になると決意した。今までの士郎とまったく道を違えたシーンなので、(その選択が)正しいかどうかはわからないけど、理解できる……納得できるシーンですね。
下屋 あのシーンのあとに、アーチャー(CV:諏訪部順一)と士郎がすれ違うのも印象的ですよね! 今までの自分と別の道を行く、ということがあそこでは表現されていたなと。
植田 そうですね!
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
下屋 私は二章だと、雨のシーンはもちろんですけど、凛のことを「姉さん」と呼べたときはすごく印象的でした。

呼ばれたときの凛が本当にかわいい! 嬉しいのに、素直に嬉しいとは言えない、でも顔に少し出ちゃってるのが、すっごく凛の性格を表してるなと(笑)。
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マスターへの想いを感じた、サーヴァントの描写

HFでは、桜と凛、それぞれのサーヴァントとの絆がより丁寧に描かれているように感じます。HFのアーチャーは、最後まで凛を守り抜く存在として描かれていたのが印象的でした。
植田 HFでアーチャーがずっと凛を守っているのは、桜の攻撃の対象がつねに凛だったからだと思っています。一章からずっと命の危険にさらされてるなと。凛はそこまでうっかりしていないのに(笑)。

黒い影(=桜)が毎回凛を狙っていますが、いつもなら士郎に向かうはずの敵からのタゲ(ターゲット)が、HFでは全部凛に来ている。アーチャーはそれになんとなく気づいていて、守らざるを得ないというか。
HFでは士郎に対するアーチャーの態度も、これまでと違いますよね。
植田 「Fate」ルート、「UBW」ルートと違って、士郎に対する敵意はだいぶ薄れてますよね。HFルート以外のアーチャーは、あわよくば士郎の息の根を止めようとしていたと思うんですよ(笑)。

HFでは、最初こそ敵意があるけど、凛の手前、手は出さない。でも、あるときを境にアーチャーの中で、「あ、こいつは自分と違う道を行くんだな」とわかったのかなと。もちろん好きにはなれないと思うけど、「桜を守る」という士郎の選択は理解できる。暗黙の肯定があるように見ていました。

だからこそ、アーチャーは最期、士郎に自分の腕を託した。
たしかにそうですね……。
植田 でも、士郎の新しい未来へのはなむけにも見えて、今までのどのアーチャーよりもカッコいいなと思っていました。
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下屋さんはいかがでしょう。これまでのルートでは桜とライダー(CV:浅川悠)の関係は描かれていないので、HFを経てライダーへの印象もかなり変わったのではないでしょうか?
下屋 ライダーとの主従関係が明らかになるのはHFが初めてでしたけど、アーチャーと凛みたいにつねに一緒にいて、「ライダー! やって!」みたいな指示は出してないんですよね(笑)。
植田 そうだね(笑)。
下屋 「ライダー、お願い……」と、遠い場所から見守っているような感じで、他のマスターとサーヴァントとは違うやりとりが多かった気がします。

そんな関係性だけど、ライダーがつねに桜を想って行動してくれているのが印象的でした。
二章は、ライダーの桜への想いが伝わってくるシーンも多いですよね。
下屋 桜に対して、ライダーが「私は何より、貴女の命を優先する」と言ったり、夜に士郎のもとを訪れて「あなたは最後まで桜の味方ですか? たとえ、この先に何があろうとも」と伝えたりするのもそう。桜は士郎とライダーが会話をしたことを知らないけど、私はライダーの行動に対してとても温かい気持ちになりました。

『Ⅲ.spring song』(以下、三章)では、さらにライダーが桜を想ってくれている言葉が多かったので、台本を読んだときは嬉しかったですね。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

姉妹が逆の立場だったら、桜は凛を殺している可能性も?

改めて、HFを通して抱いた、ご自身のキャラクターへの印象について教えてください。桜と凛の好きなところはどこでしょうか?
植田 HFで凛を演じて、いい意味で“甘い女の子”なのかなと思いました。
甘い女の子ですか?
植田 一章から三章までを通して、凛は魔術師としても、姉としても、女性としても未完成で。魔術師として完成された女の子だったら、真っ先に桜を手にかけていると思います。

それは、ずっと思っていて。桜が脅威であることは一章の終わりからなんとなく気づいていて、二章で確信に変わった。その時点で、冬木の管理者、魔術師として完成されていれば、いくらでも手にかけるタイミングはあったはずなんですよ。ただ二章の終わりでも手にかけなかった。それが凛の優しさ、魅力、愛すべきところであり、欠点だったのかなと思います。
下屋 凛が「冬木の管理者として処分を下すわ」って桜に言ってたけど、どのくらい本気だったんでしょうね?
植田 どれくらい本気だったかはわからないけど、お父さま(遠坂時臣、CV:速水奨)なら、確実に手にかけてただろうね(笑)。

それに、もし桜が冬木の管理者で、凛が暴走した場合、桜は凛を手にかけると思う(笑)。
下屋 えぇ! 姉なのに……?
植田 士郎を守るためなら実の姉でも殺せてしまうところ、桜にはあると思う。桜と凛では持ってる強さが違うって思うことはあります。
下屋 たしかに……、「先輩のため」かぁ……。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC
桜の強さについて、下屋さんはどのように感じますか?
下屋 桜の強さって我慢強さですよね。

我慢せざるを得ない状況だったのかもしれないけど、だからってあそこまで我慢し続けるなんて、すさまじい女の子だなと。私だったら絶対に無理なので……。

凛に対しても、嫉妬はしていても文句は言わない。おじいさま(間桐臓硯、CV:津嘉山正種)に対しても、恨み言を言わないじゃないですか。
植田 でも、恨むならお父さまよ?(笑)

二章に、桜が電車の中で家族を思い出すシーンがあったけど、けっこう衝撃的で。時臣に間桐の家へ養子に出されたとき、小さいながらも桜の自我はすでに芽生えていたのかなって思ったの。
下屋 時臣さんに対してどう思ってるのかわからないけど、家族のことを覚えているがゆえの幻想だったのかもしれないですね。それか、単純に小さい頃から普通ではない環境で育ってきているから、家族に対する夢や理想がああして描かれたのかもしれないし……。

ただ、桜は少なからず、魔術師である自分を誇りに思ったことは一度もないと思ってます。凛や兄さん(間桐慎二、CV:神谷浩史)とは対照的に。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

HFの凛はクール? 怒りを表に出さない芝居を意識

『Fate/stay night[Unlimited Blade Works]』(以下、UBW)と比較して、HFは桜と凛を取り巻く状況が大きく変わっていますよね。キャラ解釈や演技など、HFで意識した部分はありますか?
植田 私の中でUBWは“動”、HFは“静”のイメージが強くて。HFはドラマシーン(=静)のほうが多いし、音楽も静かですよね。だからこそ、アクションシーン(=動)の荒々しさが際立って、効果音が引き立つ。なので、凛のお芝居も“静”を意識していました。

これまでの凛は、感情をハッキリ出すタイプで、怒ったときはガツンと声に出して、イライラしたらわかりやすく表に出します。でも、HFの凛は怒っても、それを内に秘めているというか……。今までだったら「なんでなのよ!」と感情的に怒るところを、「なんでなのよ……」と冷えた怒りを表現するような感じです。
HFでは、淡々と話す凛が印象的でした。
植田 蟲蔵を見たときも、大声で怒鳴り散らしてもよかったのに、怒りを抑え込むことで逆に強い怒りの感情を表現していました。HFの凛はクールだったなって感じています。
植田さんがあえてそういう表現にしようと思ったんですか?
植田 須藤(友徳)監督から、「感情を表に出さないように表現してほしい」とディレクションがありました。

一章は比較的自由に演じさせてもらって、二章も最初は感情を出す演技をしていました。ただ、なんとなく自分の中でも「違うな……」と感じていて。そうしたら監督から、「今回の凛は、冬木の管理者としての意識が強いので、魔術師然とした表現をしてください」と。

なので、慎二と話しているときもすごく冷たくて。無感情とまではいかないけど、とてもニュートラルにお芝居している部分は多かったですね。
感情を抑えるシーンが多い中、逆に感情を出したシーンはありますか?
植田 土蔵のシーンは唯一、女の子らしいトーンで話したと思います。どこまで感情を出していいのか悩みましたけど、結局かなり甘めに語って、監督もその表現を許してくれました。

凛が今までにない温度感で士郎と話しているのが、より桜の嫉妬をかき立てて、そのあとの行動につながる、という感じですよね(笑)。

桜のバックボーンは、他のルートと何も違わない

下屋さんはいかがでしょうか。HFで桜を演じる際、意識した部分はありますか?
下屋 桜は、他のルートと立ち位置が明らかに違いますからね(笑)。UBWだと普通の高校生で、聖杯戦争が始まればフェードアウトしていく、日常の象徴のような存在として描かれているけど、バックボーンはどのルートでも一緒で。帰ったら家にはおじいさまがいて、蟲蔵に……(苦笑)。
植田 あはは、そうだよね。
下屋 それがHFになって、桜に焦点を当てるだけで、作品やキャラクターの雰囲気がガラリと変わります。なので、「変えるぞ!」という意識ではなく、改めて桜と向き合う気持ちで一章から演じてきました。

演出面でも桜の描き方にはすごくこだわっていただいたと思います。セリフのないシーンでも、桜の心情や表情をしっかり表現していただいたので、意識しすぎず演じることができた部分もあります。
須藤監督から提案されたことはありましたか?
下屋 普段の桜に関してはとくになかったです。ただ、「マキリの杯」としての桜を演じるのは初めてだったので、どういう風に演じていこうか、須藤さんと役作りのディスカッションはさせていただきました。
基本的には自由に演じられていたんですね。
下屋 須藤さんも、原作者の奈須(きのこ)さんも、わりとキャストに任せてくださるので、「変わらずよろしくお願いします!」って感じでした(笑)。託されていたところはあったと思います。
植田 そうだね。須藤さんは、細かい表現に関しては、その場その場で教えてくださる方で。でも、最初のインプレッションをすごく大切にさせてくれます。

奈須さんは、いつも新しいプロジェクトが始まるときに挨拶してくださるんですけど、最近は「僕よりみなさんのほうがキャラクターのことをわかっていると思うので、感じるままに演じてください」と言ってくださって。HFのときも同じように言ってくれました。

プライベートでも仲良し。一緒にクッキーを作りました(笑)

2006年に「Fate」ルートが映像化されたアニメ『Fate/stay night』。そこから約15年、おふたりはずっと姉妹を演じられています。下屋さんにとって、姉の凛を演じている植田さんはどんな存在ですか?
下屋 佳奈ちゃんってすごく凛に近いと思うんです。素なんじゃないかと。
植田 おお!(笑)
下屋 凛としているところを持ち合わせていながら、かわいらしい一面がある。凛も機械が苦手とか、うっかりしてるとか、かわいらしい一面があるじゃないですか。佳奈ちゃんは機械が苦手なわけじゃないですけど(笑)。

姉妹役を演じているから、仕事でご一緒させていただく機会も多くて、一緒に作品を作り上げていくのが心地いい存在なんです。

仕事だけじゃなくてプライベートでも本当に仲良くさせてもらって、佳奈ちゃんと姉妹でよかったと感じています。
プライベートでも仲良しなんですね!
植田 『Fate』シリーズチームのキャストは仕事でもプライベートでも仲がよくて。フットワークが軽いので、ごはん食べに行こうよ!って声をかけても参加率が高いんです。「みんなで物産展に行こうよ」とかもあったよね(笑)。
下屋 あったね〜(笑)。
植田 みんな忙しいのに、ここまでフットワーク軽く集まれるのはスゴいことなんじゃないかな。特別なチームメイトだと思います。

則ちゃんに関しては、プライベートでも家に来て一緒にクッキーを作ったり。本当の姉妹みたいに感じています。
作品がお互いの関係に影響する部分もあるんですか?
下屋 作品で描かれるキャラクターの距離感が、自分たちに影響される部分はあると思います。それこそ、二章で堂々と凛を「姉さん」と呼べるようになったことで、佳奈ちゃんとの絆も、より一層深まった気がします。

ライダー役の浅川さんとの距離もグッと縮まりました。今まで役としての接点がなかったので、お話する機会がほとんどなくて。HFで桜とライダーの関係性が描かれてから仲良くなって、よく女子会をやるようにもなりました(笑)。

HFは終わりでも、みんなとお別れするわけじゃない

みなさんが仲良しだと、アフレコ現場もかなり楽しそうですね。
下屋 自然といい雰囲気ができあがっています。
植田 ここ3年くらい、HF関連でイベントや生放送をする機会が多いんですけど、ファンのみなさんの感想で「仲良しなのがすごくわかる」とコメントをいただくことが多くて。それは、仕事だけじゃなくて、プライベートでも仲がいいからだと思います。一緒に過ごす時間が多いから、話題が尽きないんですよね。15年ずっと一緒にやってきたからこそ、できあがった関係だとも感じます。
三章のアフレコを終えられた際、現場はどのような雰囲気でしたか?
下屋 劇場版だと、作っていくあいだに後日追加でアフレコをする場合もあるので、「またね!」という雰囲気でした。

ただ私は、すごく桜を背負っているような気持ちがあって……。「飲んで帰らなきゃダメだ!」と思い、佳奈ちゃんをごはんに誘いました(笑)。
植田 ごはん行きました(笑)。
本当に仲良しですね(笑)。そこまで寂しくなかったのは、長い時間、一緒に同じ作品に携わってきて、「きっと次も会える」と思えるからかもしれませんね。
下屋 そうなんですよね。二度と会えないと思うことはまったくないです。それこそ、“HFの桜”は最後かも、と思いますけど、“『Fate』シリーズの桜”とお別れするわけじゃない。キャストのみんなも同じように思っているんじゃないでしょうか。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

運命的な出会い。『Fate』シリーズは“家族”であり“宝物”

15年かけて全編がアニメ化されるほど、『Fate』シリーズは長く熱く愛されている作品です。15年前、おふたりが桜・凛を演じると決まったときは、ここまで人気が出ると思っていましたか?
植田 思ってなかったかも。
下屋 私も想像できてなかったな…。15年経っても、『Fate』シリーズの原点である『Fate/stay night』をやってるってスゴいよね。
植田 ゲームのルートを全編アニメ化することが、まずないからね。
なぜ、ここまで愛され続ける作品になったんだと思いますか?
植田 原作の魅力は絶対的にあるんですけど、こんなに長く続くようになったのは、ufotableさんとの出会いだったんじゃないかなと私は思います。

初めてufotableさんが制作したPS Vita版『Fate/stay night[Réalta Nua]』のOP映像を観たとき、こんなにTYPE-MOON作品と親和性が高い作画があるのか……とすごく衝撃を受けました。その後、『Fate/Zero』(以下、Zero)を観て、『Fate』シリーズがひとつ違う次元に行ったように思いました。
©Nitroplus/TYPE-MOON・ufotable・FZPC
当時は「TVアニメのクオリティじゃない……!」と思いました。
植田 Zeroの1話を観た瞬間は、このクオリティをテレビでやってしまったら、このあとどうするんだ……と。
下屋 Zeroから女性人気もすごく出たもんね。
植田 そうですね!

そこから、UBW、HFと続いていくわけですけど、どんどんファンのみなさんの熱が上がっていく感じがしました。10年を超えてもなお上がっていく。それは、『Fate』シリーズとufotableさんの出会いがあったからかなと思いますね。
それでは最後に、おふたりにとって『Fate/stay night』はどういう存在ですか?
植田 私にとって『Fate』シリーズは“家族”かな。『Fate』シリーズだけじゃなくて、TYPE-MOONを含めた全部がそうかもしれない。お父さんが武内(崇)さん(TYPE-MOONの代表にしてイラストレーター)で、お母さんが奈須さん(笑)。大きなファミリーみたいに感じています。
下屋 私は、とくに『Fate/stay night』のメンバーは“親戚”みたいだなと思ってます(笑)。少し時間があいても、会ったら自然と他人じゃない何かを感じるような。
たしかに、親戚って毎日顔を合わせるわけではないけど、お正月とかに集まったら自然と会話できるようなところがありますね。
下屋 広い意味で“家族”だと感じますね。そして、私の中で『Fate』シリーズは“宝物”です。運命的な出会いだったと感じています。

15年前に桜のオーディションを受けたとき、今の自分は想像していなかったです。もともとかなり人気のある作品だったので、付き合いが長くなったらいいなとは思ってましたけど、まさか15年経って桜ルートのアニメをやってるなんて(笑)。
植田 あはは!
下屋 『Fate/stay night』だけじゃなくて、派生ゲームや小説などいろんな作品も生まれ続けている。これだけ長く続いて、私たちが家族として一緒にいられるのはファンのみなさんのおかげなので、本当にありがたいと思います。

編集部が独断で選ぶ、「ここの桜・凛が最高……」なシーン

下屋則子(したや・のりこ)
4月22日生まれ。千葉県出身。主な出演作に、『Fate』シリーズ(間桐桜)、TVアニメ『マケン姫っ!』(天谷春恋)、『神無月の巫女』(来栖川姫子)、ゲーム『テイルズ オブ ゼスティリア』(ライラ)など。
植田佳奈(うえだ・かな)
6月9日生まれ。大阪府出身。A型。主な出演作に、『Fate』シリーズ(遠坂凛)、TVアニメ『魔法少女リリカルなのは』(八神はやて)、『咲-Saki-』(宮永咲)、『暗殺教室』(不破優月)など。

作品情報

劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song
2020年8月15日(土)公開
https://www.fate-sn.com/

©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

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応募方法
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受付期間
2020年8月12日(水)18:00〜8月18日(火)18:00
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  • 当選者発表日/8月19日(水)
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  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから8月19日(水)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき8月22日(土)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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