Hurry, hurry, hurry
Take the A train
To get to Sugar Hill way up in Harlem
急げ、急げ、急げ、
A列車を捕まえて
ハーレムのシュガー・ヒルまで登ってゆこう*1
If you should take
the A train
You'll get to where you're going in a hurry
もし君が
A列車に乗れたなら
目的地にすぐに到着さ

Hurry, hurry, hurry
Now it's goin'
急げ、急げ、急げ
もう出てしまうところだよ

Can you hear
the rails a hummin'
(boo de ahh dah)
聞こえるかい
レールがハミングしているよ
(ブー・ディ・アー・ダー)

If you should miss
the A train
You'll miss the quickest way to get to Harlem
もし君が
A列車に乗り損ねたら
ハーレムまでの最速ルートに乗り損ねたってことだよ

*1 シュガー・ヒル(砂糖が丘)はニューヨークはマンハッタンのハーレムにある瀟洒な高級住宅街で、1920年代以降は「ストライヴァーズ・ロウ(努力者通り)」と同じく、社会的に成功した黒人が居を構えるようになった。成功は砂糖のように甘い、という意味が込められている。成り上がりを目指す当時の若者たちにとって憧れの街でもあった。渋谷か青山みたいなもんだろうか。
way upには「成りあがる」「昇進する」という意味もある。「出世していつかはシュガー・ヒルに住むぞ」という歌詞でもあるかもしれない。


text & tune: William Thomas "Billy" Strayhorn (1915 - 1967)

発表は1941年。デューク・エリントン楽団の代表曲で、ビッグバンドジャズの基本中の基本。
奴隷扱いや人種差別の多い南部からなんとか脱出したアフリカ系アメリカ人たちがニューヨークのハーレムに集中して居住した結果、1919年から1930年代にかけて「ハーレム・ルネサンス」と呼ばれる独特の芸術文化が興り、白人をも魅了した。この曲は「そうだ、(地下鉄に乗って)ハーレム行こう(使命感)」という歌なのである。


デューク・エリントンは父親が名士の執事で大統領邸宅にも出入りする立場にあったため、父親仕込みの優雅で上品な立ち居振る舞いから「デューク(公爵)」とあだ名されたのがそのまま芸名になった。

キャブ・キャロウェイもそうだけど、この頃成功した黒人ミュージシャンて実は結構いいとこの坊ちゃんて人多いよね。


そして、そのエリントン楽団の懐刀として作詞・作曲を担当していたのがビリー・ストレイホーン。
もともとはクラシックを志望していたが、当時クラシック界はまだ白人優遇の世界だったため、結局ジャズに転向する。1933年にエリントンの公演を聞いて惚れ込み、数年後の1938年に公演の後に押しかけてエリントンの曲のアレンジをピアノ演奏してみせ、それを気に入ったエリントンに引き抜かれた。
以来、長きにわたってエリントンの片腕であり続けたが、作詞作曲しても結局エリントンがクローズアップされてしまう点は不満だったらしい。一時期離れてソロキャリアも追求してみたりしている。
とは言え、彼自身も他のミュージシャンに強い影響を与えた偉大な人物であったことには変わりはない。レナ・ホーンは、ストレイホーンがゲイであることを知りながら結婚まで考えたという。


デューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ
収録アルバム: Swingin' With the Duke
Take the a Train
Grammercy Records
2010-11-19


おまけ:アートディンク謹製の経営シュミレーションゲームのタイトル名がそのまま『A列車で行こう』になっている。第一作は1985年、ニンテンドースイッチの現在に至るまで新作を出し続けているという長寿シリーズでもある。ワオ!



おまけその2:映画『スウィング・ガールズ』で、ジャズに関してはずぶの素人なのに、なりゆきでジャズ演奏させられることになった田舎の女子高生たちが初めに覚えさせられる曲。




さらにおまけ:奥山靉作詞、美空ひばりによる歌唱の日本語版もあるが、地下鉄が汽車に変更されている上に恋人同士の二人旅という内容になっている。まあシュガー・ヒルもハーレムも説明がなけりゃなんのことやらわからんだろうからしゃーない。





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