Alleluia.
May flights of angels sing thee to thy rest.
アリルイア。
飛行する天使たちが、あなたの安息のために歌ってくださるように。*1
Alleluia.
Remember me,
O Lord, when you come into your kingdom.
アリルイア。
わたしを覚えていてください、
主よ、わたしがあなたの御国(みくに)に入る時には。*2

Alleluia.
Give rest, O Lord,
to your handmaid, who has fallen asleep.
アリルイア。
安息をお与えください、主よ、
あなたのはしために、眠りに落ちいらんとする者に。*3

Alleluia.
The Choir of Saints have found
the well-spring of life and door of Paradise.
アリルイア。
聖人らの合唱隊はすでに得たり、
命の泉と楽園の扉を。*4

Alleluia.
Life: a shadow and a dream.
アリルイア。
命とは、幻影と夢そのもの。*5

Alleluia.
Weeping at the grave creates the song:
アリルイア。
墓の上でむせび泣く者が歌を造り出す。*6

Alleluia.
Come, enjoy rewards and crowns
I have prepared for you.
アリルイア。
来たり、報いと栄冠を楽しめ、
あなたのために備えられたものを。*7

*1 シェイクスピア『ハムレット』からのセリフ。瀕死のハムレットに、親友ホレイショーが別れの言葉として言うセリフ。
*2 正教会における「永眠者のための奉神礼(パニヒダ)」の式文より。
*3 はしためは女の召使いのこと。永眠者が男性である場合servant(しもべ)とする。
 正教会では「死者」「逝去者」という呼び方はせず、「永眠者」と呼ぶ。死は天国へ至る喜ばしいことと考えるためである。
*4 これも「パニヒダ」の式文より。日本正教会の式文では「聖人の群は生命の泉と,天道の門を得たり。」
*5 これも『ハムレット』からのセリフだが、原文ママではない。クローディアス王からハムレットのスパイを命じられたギルデンスターン&ローゼンクランツと、ハムレットの会話に基づく。

ギル「その、夢と御意(ぎょい)あるが、取りも直さず、御大望(ごたいもう)でござる。何故と仰(おしゃ)あれ、所謂大望の本体は夢の影に過ぎませぬ。」
ハム「夢も影じゃ。」
ロー「いかにも。私は大望をば果敢(はか)ない、影の影とも申すべき空(あだ)なものと心得まする。」(坪内逍遙訳)


*6 「パニヒダ」の「ただ墓の上の嘆きに歌いて言うべし、アリルイヤ、アリルイヤ、アリルイヤ。」に対応している。stand at the graveで「墓の上に立つ」つまり残された人。死者本人を指す場合は、「in the grave」。
*7 これも「パニヒダ」式文より。呼びかけに対する神からの返答。


text: Mother Thekla (1918–2011) ギリシャ正教会の修道女。正確に言えば、『ハムレット』と「パニヒダ」に基づいて編訳したもの。
tune: John Tavener (1944-2013)

若くして亡くなったギリシャ系の女優Athene Hariadesを記念したもの。ロンドンのHellenic Collegeで英語と劇の教師も務める才女であったが、1993年に自転車事故で死去した。
ダイアナ元皇太子妃の葬儀でも使用されたことで知られる。英語風に発音した《アシーナのための歌》とも訳される。

ちなみに、正教会というのはカトリックと同じくらい古いキリスト教の一派。キリスト教の勢力分類は、一位がカトリック、二位が正教会である。ギリシャ正教会、もしくは東方正教会とも呼ばれる。カトリックは西の方。基本的には正教会の上に現地の名前がつく(「ロシア正教会」「日本正教会」など)。

St. John's College Choir, Cambridge
収録アルバム: Tavener: Song for Athene / Svyati
Song for Athene
Naxos
2000-11-27



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