ベティの家出版

ブルース・ブラザーズの劇中歌

Folks, Now here's the story 'bout Minnie the Moocher,
She was a red-hot hootchie-cootcher,
She was the roughest, Toughest frail,
But Minnie had a heart as big as a whale
皆の衆よ、これがはぐれミニーの物語*1
その娘はお熱い踊り子で*2*3
最高にガサツでタフな突き出し女*4
でもミニーはクジラみたいにでっかい心の持ち主だった
Ho-de-ho-de-ho,
(Ho-de-ho-de-ho,)
Hi-de-hi-de-hi-de-hi,
(Hi-de-hi-de-hi-de-hi,)
He-de-he-de,
(He-de-he-de,)
Ho-de-ho-de-ho,
(Ho-de-ho-de-ho)

She messed around with a bloke named Smoky,
She loved him though he was cokie,
He took her down to Chinatown,
He showed her how to kick the gong around,
(Showed her how to kick the gong around)
ミニーがいちゃつく野郎はスモーキーという名だった*5 *6
ミニーはスモーキーが大好きだったけど、奴はジャンキーだった
奴はミニーをチャイナタウンへ連れてって
アヘンの吸い方を教えてやったのさ*7

Hi-de-hi-de-hi-de-hi-de-hi-de-hi-de-hi,
(Hi-de-hi-de-hi-de-hi-de-hi-de-hi-de-hi,)
He-de-he-de-he-de-he-de-he-de-he,
(He-de-he-de-he-de-he-de-he-de-he,)
Ho-de-ho-he-doddy-hay, (Ho-de-ho-he-doddy-hay,)
Ho-de-ho-de-ho, (Hi-de-hi-de-ho)

Now, she had a dream about the king of Sweden,
He gave her things that she was needin',
He gave her a home built of gold and steel,
A diamond car with a platinum wheel
ミニーが夢見たのはスウェーデンの王様のこと
王様はミニーが欲しいものをなんでもくれた
王様は金と鋼鉄で建てた家もくれた
プラチナの車輪のついたダイヤモンドの車も

Oh, skip-bop-doop-bop-lay-de-doo,
(Oh, skip-bop-doop-bop-lay-de-doo, )
Skee-bop-de-google-eet-skee-bop-de-goat,
(Skee-bop-de-google-eet-skee-bop-de-goat, )
Skeet-dot'n-dot'n-dot'n-dot'n-dottee-oh,
(Skeet-dot'n-dot'n-dot'n-dot'n-dottee-oh, )
Hi-de-hii-de-ho,
(Hi-de-hii-de-ho)

Now, He gave her his townhouse and his racing horses,
Each meal she ate was a dozen courses,
She had a million dollars worth of nickels and dimes,
And she sat around and counted them all a billion times
王様がくれたのはお屋敷に競走馬
ミニーが食べたのは12コースもの料理
ミニーが持つのは億万長者くらいのニッケル貨や小銭*8
それを無限に数える以外何もしなかった*9

Ho-de-ho-de-ho,
(Ho-de-ho-de-ho,)
Hi-de-hi-de-hi,
(Hi-de-hi-de-hi)

*1 moocherは浮浪者、せびり屋、騙されやすいカモ、ヤク中などの意味がある。ミニーちゃんはその全部でもある。かわいそう。
*2 red hotはセクシーという意味もある。
*3 hootchy-kootchyとも。腰をくねらせるベリーダンサーのことだが、性的にそそる女という意味でもある。
*4 frailは脆い、か弱いという意味だが、男に騙されて金を取らずに相手してしまう新米娼婦のことも指す。ダメじゃん。また「俺のいい女」「かわいい女」のことも言う。
*5 mess around with...で(性的に)いちゃつく、困らせる、ふざけあう、弄ぶという意味がある。ミニーがスモーキーに懐いてつきまとっていたという意味かもしれない。
*6 smokyは煙たい、ススまみれという意味だが、黒人、アヘン常習者という意味もある。フルネームはSmoky Joeとされ、他にもZah Zuh Zaz《ザ・ズ・ザ》、Kicking the Gong Around《アヘンを吸いながら》などにも登場する。ちなみにblokeは「あの男」「奴」という意味だが、コカイン(coke)と韻を踏む言葉でもある。



*7 kick the gong aroundで「アヘンを吸う」。アヘン窟へ入る時に銅鑼でも叩いたのか?
*8 お札とか金貨とか見たことないから想像できないんだね。かわいそう。
*9 sit aroundで「何もせずぼーっとしている」。アヘンで完全にぶっ飛んでしまっている。

text & tune: Cab Calloway(1907-1994)、Clarence Gaskill(1892–1948)、 Irving Mills(1894-1985)

ミニーはミッキーの彼女…ではなく、Mary(メアリー)、Minna(ミンナ)、Minerva(ミネルヴァ、ミナーヴァ)などの愛称。バージョンによっては、最後に「Poor Min(かわいそうなミン)」という歌詞がつく。
あとものすごいスラングまみれで絶対教育上よろしくない。

意外にも、Ghost of Smokey Joe 《スモーキー・ジョーの亡霊》でその後アヘンから立ち直ったらしいことがうかがえる。


キャブは1930~1940年代にかけて一世を風靡したアフリカ系アメリカ人のジャズシンガーであり、バンドリーダー。当時の様子は映画『コットン・クラブ』でうかがうことができる(キャブのそっくりさんも劇中歌に登場している)。父は弁護士、母はオルガニストという恵まれた家庭に育ち、音楽の教育を受け、姉のブランチと共にジャズシンガーへの道を邁進する。ルイ・アームストロングに教えてもらったスキャット唱法を多用する独特の芸風により「ハイディホー・マン」というあだ名がついた。ベティのアニメの他、音楽番組や音楽映画にも多数出演し、多くの映像記録が残っている。サンキューキャブ。
1950年以降は映画や演劇にステージを移し、1980年以降は映画『ブルース・ブラザーズ』及び子供向け番組『セサミ・ストリート』でリバイバルする。86歳で家族に見守られ逝去するという充実した人生であった。彼の功績をたたえ、彼の名を冠した奨学金基金やアートスクール、オーケストラが設立されている。

あまりに音楽記録が多いので、これはそのうちの1バージョンに過ぎない。
色々聴き比べてみても面白いかもしれない。

収録アルバム: BD Music & Cabu Present Cab Calloway
Minnie the Moocher
BDMUSIC
2015-07-20


CDのみ 映像から抽出した音源が入っている ある意味希少かも
Boop Boop Be Doop
Boop Boop Be Doop
Boop, Betty
Proarte
1993-01-29



歌唱者ヘレン・ケインて書いてあるけどどう聞いてもベティのアニメからの抽出やん
Minnie the Moocher (Remastered)
Master Tape Records
2020-08-14


おまけ:キャブが活躍した、従業員やエンターテイナーは全て黒人で客は全て上流階級の白人というナイトクラブ「コットンクラブ」を舞台に、己の才能を武器にのしあがりを目指す若者たちの群像と当時の世相を活写したコッポラ監督の映画。

コットンクラブ (字幕版)
コットンクラブ (字幕版)
ニコラス・ケイジ



おまけその2:あらゆるアメリカ音楽をオマージュした、あらすじがあってないような音楽映画。大御所が多数出演してることでも有名。キャブは主人公のブルース兄弟を孤児院で面倒を見てくれたおじさんという役で登場。ブルース兄弟がライブコンサートに到着するまでの時間稼ぎとして、Minnie the Moocherを歌う。

ブルース・ブラザース (字幕版)
ブルース・ブラザース (字幕版)
アレサ・フランクリン
2013-11-26



Minnie The Moocher
First Night Records
2020-12-10







おまけその3:2017年9月に発売されて話題になったゲーム「Cuphead」に、キャブをモチーフにしたボスキャラ「Mr. King Dice」が登場する(サイコロ頭に口ひげのおじさん)。彼の勝ち台詞である「Hi-de-ho!」はまんまキャブのスキャットによく出るフレーズでもある。ゲーム内の世界観そのものが1920~30年代のカートゥーンをモチーフにしており、白黒時代のアニメのスラップスティックでぐにゃぐにゃした動きを見事に再現している。ロックマンや魂斗羅などをオマージュした横スクロール系アクションゲームだが、難易度は鬼畜

死後にこんな形でリバイバルするとはキャブも思わんかったやろなあ。





おまけその4:ベティさんの「ミニー・ザ・ムーチャー」を製作するに至るまでを詳しく概説した本。

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