1. Procession: Hodie Christus Natus Est《入祭唱:この日キリストは生まれ給えり》

Hodie Christus natus est:
この日、キリストは生まれ給えり
hodie Salvator apparuit:
この日、救い主は現れ給えり。
hodie in terra canunt Angeli,
この日、地で天使たちは歌い、
laetantur Archangeli:
大天使たちは大いに喜ぶ。
hodie exsultant justi, dicentes:
この日、正しき人たちは歓び躍り、言う、
Gloria in excelsis Deo,
「いと高き神に栄光があるように。
Alleluia.
アレルヤ。」


text: グレゴリオ聖歌より
2. Wolcum Yole《ようこそ》

Wolcum,
ようこそ!

Wolcum,
ようこそ!

Wolcum be thou hevenè king,
ようこそ、天の王よ

Wolcum Yole!
Wolcum, born in one morning,
Wolcum for whom we sall sing!
ようこそ、冬至祭!*1
ようこそ、かの朝に生まれた方*2
ようこそ、とかの方のために我らは歌わん

*Wolcum be ye, Stevene and Jon,
*ようこそ、聖ステファノと聖ヨハネ*3*4
**Wolcum, Innocentes eveyone,
**ようこそ、罪なきみどりごたち、*5
***Wolcum, Thomas marter one,
***ようこそ、殉教者トマス*6

*Wolcum be ye, good Newe Yere,
*ようこそ、良き新年よ*7
**Wolcum, Twelfth Day both in fere,
**ようこそ、祝祭日の十二日目よ*8
***Wolcum, seintes lese and dere,
***ようこそ、大小さまざまの聖人さまがた

Wolcum Yole!
ようこそ、冬至祭!

Wolcum,
ようこそ!

Candelmese,
Quene of bliss,
Wolcum bothe to more and lesse.
聖燭祭よ、*9
祝福の女王よ、*10
ようこそ、富める人も貧しい人も!

Wolcum,
ようこそ!

Wolcum,
ようこそ!

Wolcum be ye that are here.
ようこそ、ここにおられる方々

Wolcum Yole!
Wolcum alle and make good cheer.
ようこそ、冬至祭!
ようこそ皆さん、そして歓呼の声をあげよう

Wolcum alle another year.
ようこそ、全ての年よ

Wolcum Yole.
ようこそ、冬至祭、

Wolcum!
ようこそ!

*1 YoluはYuleのなまりとも、単に「やあ!」というかけ声ともとれる。Yule(ユール)はキリスト教以前に北欧にあった冬至の祭り。最も日照時間が短い冬至に、太陽の再生を祈る。キリスト教に取り入れられてから、キリストの生誕を記念するクリスマスとなった。ユールは現在でもクリスマスの別称として使われる。
*2 古くは日没から新しい日が始まるとされた。つまりクリスマスイブの夜はすでにクリスマス当日。なお、キリストは十字架にかけられ没した午後3時からの連想で、午前3時に生まれたとする俗信がある。

*3 使徒言行録に登場する、キリスト教最初の殉教者。12月26日の聖人。《善良な王様ウェンチェスラス》で詳述。

*4 27日の聖人、福音記者ヨハネ。《父の御言葉が人となる》で詳述。

*5 28日を記念日とする「聖なる嬰児(みどりご)たち」のこと。《コヴェントリーのキャロル》で詳述。

*6 29日の聖人、カンタベリーのトマス・ベケットを指す。《カンタベリーの至宝なるトマス》で詳述。

*7 クリスマスから数えて十二日目の1月6日は、クリスマス最後の日として盛大に祝った。また東方の博士たち来訪の祝日。



*8 キリスト教圏では、クリスマスから新年が始まると考えられた。
*9 被献日、マリアの清めの祝日とも。クリスマスから四十日目にマリアが神殿で産褥からの清めを受け、またイエスを奉献して(お宮参りのようなもの)預言者シメオンに祝福を受けた日として記念する。2月2日に定められているが、地域によってはこの日をクリスマス完全終了として、ツリーなどを燃やす。

*10 もちろん聖母マリアのこと。

text: 14世紀頃の作者不詳の英詩


3. There Is No Rose《かくも徳高き薔薇はない》

There is no rose of such virtu,
As is the rose that bare Jesu.
かくも徳高き薔薇はない、
イエスを生んだかの薔薇ほどには。

Alleluia.
アレルヤ。

For in this rose contained was
Heaven and earth in litel space,
この薔薇の中の小さなすき間に、
天地の全てがあるのだから。

Res miranda.
不思議なこと。

By that rose we may well see
There be one God in persons three,
この薔薇によってわたしたちは知るのです、
三つの存在であるひとつの神を。

Pares forma.
人の姿をそなえられた。


The aungels sungen the shepherds to:
Gloria in excelsis,
Gloria in excelsis Deo:
天使たちが羊飼いに歌う、
「いと高きところに栄光、
 いと高き神に栄光があるように」。

Gaudeamus.
楽しもう。


Leave we all this worldly mirth,
And follow we this joyful birth;
わたしたちは全ての浮き世の歓楽を捨て、
この喜ばしい生誕につき従う。

Transeamus.
さあ行こう。


Alleluia.
Res miranda.

Pares forma.

Gaudeamus.

Transeamus.
アレルヤ、
不思議なこと。
人の姿をそなえられた。
楽しもう。
さあ行こう。

text: 1420年頃のキャロル。

詳しい内容は中世バージョンの方の記事に詳述。



4a. That Yonge Child《この幼い子が》

That yongë child
when it gan weep
With song she lulled him asleep:
That was so sweet a melody
It passèd alle minstrelsy.
この幼い子が、
すすり泣きを始めると、
かの方は歌声でもってなだめて寝かしつけた。
それは甘く優しいメロディで、
どんな吟遊詩人をもしのいでいた。

The nightingalë sang also:
Her song is hoarse
and nought thereto:
Whoso attendeth to her song
And leaveth the first
then doth he wrong.
小夜啼鶯(ナイチンゲール)も歌うけれど、
その歌声は耳ざわりで、
その上何の意味もない。
そんな歌に耳を傾けようとして、
さっさと出ていってしまう、
そんなことをする人はまちがっているよ。

text: 14世紀頃の作者不詳の詩

ナイチンゲール「解せぬ」


4b. Balulalow《バルラロウ》

O my deare hert, young Jesu sweit,
Prepare thy creaddil in my spreit,
And I sall rock thee to my hert,
And never mair from thee depart.
わが愛しの、幼く愛らしいイエスよ、
あなたに用意されたゆりかごはわたしのまごころの中。*1
わたしの胸のそばであなたをゆらしてあげましょう。*2
わたしはあなたから決して離れないわ。*3

But I sall praise thee evermoir
With sanges sweit unto thy gloir;
The knees of my hert sall I bow,
sall I bow,
わたしはあなたをとこしえにたたえます、
あなたの栄光をたたえて甘く歌うことで。
わたしの心はへりくだる、
へりくだる、

And sing that richt Balulalow!
lu-la-low,
lu-la-low, la-low!
そしてこの善きバルラロウを歌いましょう!
ルラ・ロ、
ルラ・ロ、ラ・ロと!

*1 spreit=spirite 前に腕と訳してたが何とまちがえてたんだろう。
*2 母親の鼓動を聞かせると赤ん坊は安心して寝付きやすいと言われる。
*3 イエスが十字架にかけられたとき、弟子たちはちりぢりに逃げだしたが、母マリアと女たちは最後までイエスのそばにつきそっていた。

text: 16世紀のスコットランドの詩。James、John、RobertらWedderburn兄弟により1567年に編集された歌集に初出。

バルラロウはスコットランド語で「子守歌」のこと。どことなく物悲しいメロディなのは、やがて十字架にかけられて死ぬわが子の運命を嘆いているため。


5. As Dew In April《四月の露のように》

I sing of a maiden
That is makèles:
King of all Kings
To her son she ches.
わたしは歌う、ひとりのおとめを
たぐい無きかのひとを。
王の中の王が、
人の子となられるために彼女を選ばれた。

He came also stille,
There his moder was,
As dew in Aprile
That falleth on the grass.
彼はひそやかに来た、
み母のもとに。
四月の露が
若草の上に落ちるように。

He came also stille,
There his moder was,
As dew in Aprile
That falleth on the flour.
彼はひそやかに来た、
み母のもとに。
四月の露が
花の上に落ちるように。

He came also stille,
There his moder was,
As dew in Aprile
That falleth on the spray.
彼はひそやかに来た、
み母のもとに。
四月の露が
小枝の上に落ちるように。

Moder and mayden was,
never none but she:
Well may such a lady
Goddes moder be.
母にしておとめであった
彼女にならぶものはあるまい。
かくも高貴な女にこそふさわしい、
神の母となられるのには。

text: 1400年代の作者不詳の詩


6. This Little Babe《この小さなみどりごは》

This little Babe so few days old,
Is come to rifle Satan's fold;
All hell doth at his presence quake,
Though he himself for cold do shake;
For in this weak unarmèd wise
The gates of hell he will surprise.
この産まれてまもないみどりごは、
サタンの大軍を撃ち倒すために来られた。*1
地獄は彼ゆえに揺れ動く、
それなのに彼自身は寒さに震えている。
このか弱い武器も持たぬ腕で、
地獄の門を驚かすだろう。

With tears he fights and wins the field,
His naked breast stands for a shield;
His battering shot are babish cries,
His arrows looks of weeping eyes,
His martial ensigns Cold and Need,
And feeble Flesh his warrior's steed.
彼は涙でもって戦われ、戦場で勝たれる。
裸の胸が盾となる。
彼の大砲は泣き声、
彼の矢は泣き濡れたまなざし、
彼の戦旗は寒さと貧しさ、
貧弱な身体が彼の軍馬。

His camp is pitchèd in a stall,
His bulwark but a broken wall;
The crib his trench, hay stalks his stakes;
Of shepherds he his muster makes;
And thus, as sure his foe to wound,
The angels' trumps alarum sound.
彼の陣営は馬屋に張られる、
だがその砦はひび割れた壁。
飼い葉桶が彼の塹壕(ざんごう)、干し草の山が彼の柱、
羊飼いらが彼の呼応に奮い立つ。
かくしてまことに敵どもは痛めつけられる、
天使のラッパが戦の合図となる。

My soul, with Christ join thou in fight;
Stick to the tents that he hath pight.
Within his crib is surest ward;
This little Babe will be thy guard.
If thou wilt foil thy foes with joy,
then flit not from this heavenly Boy.
わたしの魂よキリストにつらなりて戦え、
彼が据えられた天幕の杭として
城の中庭なるその飼い葉桶の中で。
この小さなみどりごがあなたの守り手、
あなたが喜び勇んで敵をくじくのなら、*2
この天の幼子から追い放たれることはないだろう。

*1 rifleはライフル銃のライフルだが、ライフル銃が登場したのは19世紀世紀から。16世紀のライフルとは、ぶんどるという意味の他、何かを強い力でぶっとばすという意味がある。
*2 自分の魂に向かって呼びかけている。

text: Robert Southwell(c.1561–1595)


7. Interlude《間奏曲》



8. In Freezing Winter Night《凍てつく冬の夜に》

Behold, a silly tender babe,
In freezing winter night,
In homely manger trembling lies.
Alas, a piteous sight!
見よ、あどけなくもか弱きみどりごを、
凍てつく冬の夜に
つつましい飼い葉桶の中に震えて眠るとは、
悲しきかな、憐れな眺めかな!

The inns are full; no man will yield
This little pilgrim bed.
But forced he is with silly beasts
In crib to shroud his head.
はたごはいっぱいで、譲ってくれる人もいない、
この小さな巡礼者のための寝床を。
哀れなけだものたちと共にすることを強いられる、
うまぶねの中に、そのこうべを覆うものとして。

This stable is a Prince's court,
This crib his chair of State;
The beasts are parcel of pomp,
The wooden dish his plate.
この馬小屋は王子さまの宮廷、
このうまぶねは玉座の椅子。
けものたちは王子の行進につき従う群れ、
木皿の食事が王子さまのご馳走。

The persons in that poor attire
His royal liveries wear;
The Prince himself is come from heav'n:
pomp is prized there.
貧しい身なりの人は、
王族にかしずくお仕着せの従僕。
この王子さまこそ天から来られた方、
その随身たちは貴ばれる。

With joy approach, O Christian wight,
Do homage to thy King.
And highly praise his humble pomp,
wich he from Heav'n doth bring.
喜びもておそばにはべれ、キリスト教徒たちよ、
あなたの王を仰ぎたてまつれ。
こよなき賛美がそのつましい随身たちにあれ、
王子さまが天からお連れあそばした者たちに。

text: Robert Southwell(c.1561–1595)

作詞者は第6曲《この小さなみどりごは》と同じ。中世のクリスマスを主題にしたキャロルには、天の王が地上の貧しき身分に甘んじることを感嘆し賛美するものがしばしばみられる。

9. Spring Carol《春の賛歌》

Pleasure it is to hear iwis,
the Birdès sing,
The deer in the dale,
The sheep in the vale,
The corn springing.
それを聞くのは確かに楽しいこと、
歌う小鳥たち、
緑したたる谷の鹿、*1
清水したたる谷の羊、
芽吹く小麦。

God's purvayance
For sustenance.
It is for man.
これは神がそなえられたもの、
糧(かて)として
人のために。

Then we always to him give praise
And thank him than.
それゆえに、わたしたちは常に主に賛美を献げ、
主が与えられた以上に感謝を献げるのです。

*1 daleとvaleはどちらも谷という意味であまり違いはないが、しいて言えばdaleは開けた広い川谷、valeは長く細長い川谷というニュアンスがあるらしい。

text: William Cornysh(1465?-1523) ヘンリー八世時代の作曲家兼俳優兼詩人その他いろいろなマルチタレント。

全然関係ないけど、ヴィクトリア朝が舞台の『アンダー・ザ・ローズ』って漫画に「春の賛歌」ってサブタイトルがついてて、「きっと心あたたまる話なんだろうな」って思って読んだらハートフルボッコにされた。




10. Deo Gracias《神に感謝》

Deo gracias!
神に感謝!

Adam lay ibounden,
bounden in a bond;
Four thousand winter
thought he not to long.
アダムは囚(とら)われ横たわっていた、
縛(いまし)めのうちに囚われていた。
四千回もの冬を、
彼は長いとは思わなかった。

Deo gracias!
神に感謝!


And all was for an appil,
an appil that he tok,
As clerkès finden
written in ther book.
全ては一つの林檎から、
彼が手にした林檎から始まった。
学者たちが解き明かした通り、
ものの本にもそう書かれている。

Deo gracias!
神に感謝!


Ne had the appil takè ben,
The appil takè ben,
Ne haddè never our lady
A ben hevenè quene.
その林檎が取られなかったら、
その林檎が食べられなかったら、
わたしたちの貴女(あなた)が、
天の女王となることもなかった。

Blessèd be the time
That appil takè was.
Therefore we moun singen.
祝されよ、
林檎が食べられた彼の時は。
それゆえにわたしたちは歌わん、

Deo gracias!
神に感謝!と。


text: 15世紀 作者不詳

詳しい解説はボリス・オード版の《アダムは囚われ横たわり》にて。



11. Recession: Hodie Christus Natus Est《退祭唱:この日キリストは生まれ給えり》


第一曲と全く同じだが、だんだん遠ざかって消えていくなどの演出がある。

tune: Benjamin Britten(1913-76)

英国音楽史が誇る天才ブリテンにより、ウェストミンスター大聖堂少年聖歌隊のために作曲された愛らしい連作集。なお、上梓された1942年は第二次世界大戦中。通称は《キャロルの祭典》としているが、《キャロルの典礼》と呼ぶこともある。イギリス独特のクリスマス時期の礼拝形式である『The Nine Lessons and Carols(9つの聖書日課とキャロル)』などのコンサート風礼拝を想定しているのかもしれない。

他の人による《キャロルの祭典》全訳&解説


大英博物館所蔵「ヘンリー八世の典礼用詩編書」より詩編第96編(97編)
「C」の装飾イニシャル
ps96-illustr-henryviii-psalter-1540

Ensemble féminin de musique vocale de Lausanne & Marie-Hélène Dupard
収録アルバム: Oeuvres de Benjamin Britten
Oeuvres de Benjamin Britten
Evasion Music
2014-11-13


おまけ:スペインの合唱団によるバージョンだが、なぜかパーカッションが入っててちょっと雰囲気が違うの好き。ラッターの連作《ダンシング・デイ》が入ってるのもポイント高い。

収録アルバム:There Is No Rose
There Is No Rose
La Ma de Guido
2013-02-07




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