535 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:46:09 ID:Q11s1UJA0 [5/24]
| そうだな。
/ ̄ ̄\ 今回やるのは、大体この辺りになる。
/ _ノ \.
| ( ●)(●) ....・ 「仏法を見限った」発言
. | ::::::⌒(__人__) .・ 法嗣を持たなかった理由
| ` ⌒´ノ .・ 最後の境地
. | }. 。 ・ 柳生一族と沢庵和尚
. ヽ } / ...・ 和尚の評価-禅僧・沢庵
ヽ ノ ./
/ lヽ介/lヽ、 ,rE)
. | | ~ヾ/~ |. ソ◇'
| | ゚| |\/____E[]ヨ___________
_ | | ゚| |__
|\  ̄ヽ⌒ヽ⌒ヽ \
|\\ ⌒ ⌒ 甘 \
| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
____
/ \
/ ─ ─\ あと、剣術に対し、和尚が与えた影響については、
/ (●) (●) \ 前の不動智神妙録についての話で、ある程度解説してるので、
| (__人__) | .それについては、そちらを見てくださいお。
/ ∩ノ ⊃ // ∩ノ ⊃
( \ / _ノ \/ _ノ
.\ “ / . \ “ / 【外伝その3・後編4「活人剣・治国平天下の剣、その礎2(沢庵・不動智神妙録)」】
\ / /\/
http://tagenmatome.blogspot.jp/2009/11/blog-post_29.html \ \
\ \ \
> > >
/ / /
536 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:46:51 ID:Q11s1UJA0 [6/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) それじゃ、早速1つ目から行こうか。
| (__人__)
| `⌒´) ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
| } ..... ┃ その1.: 「仏法を見限った」発言について ..┃
ヽ } .. ╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
> ノ
/ \ /て⊃
| ィ |\ `´ ゞ _三}
| | | \__/.
____
/ \
/ ノ ヽ.\ 「その67」の冒頭に出た、和尚の手紙にある
/ (●) (●) \ 「末法之法三十年前ニ見限候間」のことだおね。
| (__人__) |
./ ∩ノ ⊃ / …和尚らしくもなく、随分と投げやりな感じだお。
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
.r⌒i
| |‐‐-----==--‐‐''''"´`゙゙'i
| | |
.| | 波多中庵殿 |
| | |
|r⌒' 沢庵 |
゙'ゝ-‐‐--===‐‐‐-------┘
【寛永十八年正月の波多中庵宛の手紙(抜粋)】
「老希ニ近事三百六十日ニテ候。死後ノ事毛頭不思、末法之法三十年前ニ見限候間、
相続之事不思、寺之事次テ何ト可成ト云事不存、遺像遺言心ニナシ
(中略)禅師号国師号無望無、其外一事モ無所望」
(意訳)
『来年には七十になるが、死後については何も考えていない。
この末世の仏法は三十年前に見限っている。
(法統の)相続や寺のことなども何も言うことはない。
遺像や遺言などもどうでもよい。禅師号や国師号も要らぬ
望むような事など何もない』
537 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:48:13 ID:Q11s1UJA0 [7/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ .ヽ、\
| (●)(●) | そして、その手紙より後に、
. | (__人__) .| 更にこんな話が出ている。
| . '´n`' .ノ
.ヽ . | | } 「師の印を得てより後、今已に四十年」とある通りなら、
ヽ.. ノ .ュノ .印可を得た32歳から40年後の72歳になるから、
/ { ..ニj、 正保元年前後の最晩年の言葉になる。
|. | "ツ \
|. | .l |ヽ、二⌒)
【万松語録(巻の一)】
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_| .『予、薙染(ちせん)の後、志を立て参禅学道し、師に於て授記し、
| ._ .|_| 一に篆を本寺に見、正しく簾前の紫を賜はる。
| |万| . |_| 人これを見、好き人天師と誤り想ふなり。元来ただ名字の羅漢なるのみ。
| |松| . |_| 師の印を得てより後、今已に四十年、一則の話頭を以って人に示す。
| |語| .|_| 其れ正知見を得る者、一箇もまた無し。
| |録| .|_| 今より五十年の命在るも、住を以って来を推すに、恐らくは済度の頼むべき無し。
|.  ̄ .|_| 若し済度を除かば、即ち渡世の活計と成る。豈(あに)愧はぢ)ざらんや。
|. .|_| 以故す、今予、仏法を棄てて唱へず(中略)
|________.|_| 今の世上、得法を称する者太だ多し。
└─────── 古を以てこれを見るに、即ち多くは是れ相似底の消息なり。
似は即ち似にして是れ即ち未だ是ならず。
未だ是ならざる法を以て人を度さば是れ人を度するにあらず。
却つて人を暗坑に陥らさん』
____
/ \
/ \ …ますます陰鬱な感じになってるお。
/ _ノ ::::::: ゝ、 \ 「今予、仏法を棄てて唱へず」って、
| (○) (○) u | どうしてそこまで言っちゃったんだお?
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
538 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:48:51 ID:Q11s1UJA0 [8/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ .ヽ、\ そのヒントと思われる記述が、この手紙にある。
| (●)(●) | 正保二年四月の和尚の手紙だ。
. | (__人__) .|
| .`⌒´ .ノ
. r─一'´ ̄`<ヽ }
. `ー‐ァ , ) , -'~⌒ヽ、
ノ {. ,ヘ ,l. ゝ、_ .'ヽ).
. /, 、 _ /. | . ', . .. .ヽ、
(/ / // / / ...| ...|\..\\ \_)
/ // / / . . \_\_)、_)
ー' {_/ノ ."´
/⌒ソ/⌒ヽ、
. / // ..\ ._,
/ // .`ヽ,.._,ィ''´ `'ー- 、 /i
/ // \,. _..ノ .|
. / // ⌒´ .|
/ // |
/ // |
. / // 小出吉英殿 .|
/ // . |
/ // .|
./ // . |
/ // |
ッ芝ヾシ⌒ヽ、 沢庵 |
.ヾニジ \ ._,.イ⌒ヽ |
`ヽ,.._,ィ''´ `'ー- 、 . |
.\,. _., 、 . .リ
⌒´ \._,ノ
【正保二年四月二十六日、小出吉英宛の手紙(抜粋)】
「何と精を尽くし申し候ても、紫野の仏法、今の世には用に立ち申さず候間、
.成り次第にして置かせらるべく由申し候へ共、止め申さず候。
.人を引導など仕り候ことは、浄土宗も一向宗の衆も仕り候間、
.よき仕手にさせて、一分心をすまして、物の本のきれをものぞきて居らるるが、
.自分の利益たるべく候由申す儀に候」
(意訳)
『自分がどう頑張ったところで、今の紫野(大徳寺)の仏法は、今の世には無用なものである。
.この後は最早成り行き次第であろうと言いはしたが、それを止める気もない。
.葬式なら、浄土宗でも一向宗でもできるのだから、そのようなことは向いている者に任せ、
.心を澄ませ、読書に励むことが、自分にとって良いことであろう』
539 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:49:46 ID:Q11s1UJA0 [9/24]
____
/ \
/ -‐´ `ー\ …正保二年といえば、
/ (●) (●)\ 前年に上方に帰郷して、戻ってきた後だおね。
| u (__人__) |
\ ` ⌒´ / 「紫野の仏法、今の世には用に立ち申さず候」って、
> ー‐ < 和尚から見た大徳寺は、そんなに堕落していたのかお?
. / / ̄彡ミヽ、
/ ヽ / / ヽ ヽ
ヽ. Y / | |
ヽ ノ ヽ ノ
_____
/ .r┐ヽ「|
/ r-、 | .| ./ l l゙l
. / .__,ノヽ ゙、_,ノ '-' .|,,/ | .いや、これについては、
| (●)ヽ ノ ´/ 大徳寺が堕落していたとか、
| 〉 〈_,,.-、 そういう話とはまた違うようなんだ。
.| (__人{ .r''´
.| ´ ⌒| _,.-i'´ 「どういうことだお?」
. .{ l-‐'''''''ーl }
{ . |´ ̄ ̄``l }
{ .| |.}
540 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:54:56 ID:Q11s1UJA0 [10/24]
(⊃ ̄ ̄\
(⊃ _ノ \
(⊃ ( ●)(●) そもそも、和尚が幕府と関わるようになったのは、
| (__人__) 紫衣事件が発端なのは覚えてるな?
| ` ⌒´ノ
| } \ その原因である元和元年に出た「大徳寺諸法度」なんだが、
/ヽ } \ 実のところ、あの法度そのものはまだ続いてるんだよ。
/ ヽ、____ノ )
/ . | _/
| / ̄ ̄(_)
\ \ /| JJJ (
\ / /⊂_)
___ て
/ \ そ
/ノ \ u. \ えっ?
/ (●) (●) \ あれって和尚の嘆願が通って、
| (__人__) u. | 寛永十八年に家光が撤回したはずだお!?
\ u.` ⌒´ / (その62:
http://yromtm1059.blog117.fc2.com/blog-entry-418.htm)
ノ \
/´ ヽ
541 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:55:28 ID:Q11s1UJA0 [11/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \ 違う違う。
.| ( ●)(● ) | .家光が撤回…というか、
.| (__人__) │ .厳密に言うと大幅緩和したのは、あくまで
| `⌒´ |
.| | 「出世入院に関する条目(第二条)だけ」
r、 r、ヽ /
ヽヾ 三 |:l1.ヽ / 大徳寺法度が全部で五ヵ条あったのを
\>ヽ |` } > < 忘れたのか?
ヘ lノ `'ソ ヽ
/´ /,1 | |
\ ノ .| | |
____
/ u \
/ \ /\ そ、そういえば、
/ し (○) (○) \ .他にもあったような…。
| ∪ (__人__) J |
\ u `⌒´ /
/⌒ソ/⌒ヽ、
. / // ..\ ._,
/ // .`ヽ,.._,ィ''´ `'ー- 、 /i
/ // \,. _..ノ .|
. / // ⌒´ .|
/ // ◎ 大徳寺5つの誓い ◎ |
/ // |
. / // ひとつ、寺法はきちんと守ること .|
/ // . ひとつ、無闇矢鱈に出世入院させないこと |
/ // .ひとつ、新しい院をやたら建てないこと |
./ // ひとつ、寺領はきちんとまとめること |
/ // .ひとつ、諸院の塔主は輪番を守ること |
ッ芝ヾシ⌒ヽ、 |
.ヾニジ \ ._,.イ⌒ヽ |
`ヽ,.._,ィ''´ `'ー- 、 . |
.\,. _., 、 . .リ
⌒´ \._,ノ
大徳寺諸法度(超訳)
542 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:56:37 ID:Q11s1UJA0 [12/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●) .つまり、「出世入院に関する条目」こそ
| (__人__) ある程度緩和されたものの、残る四条目、
| `⌒´ノ
| ,.<))/´二⊃ ・ 寺法の遵守
ヽ / / '‐、ニ⊃ ・ 無許可で新寺を立てる事の禁止
ヽ、l ´ヽ〉 ・ 寺領の確認、及び記録・管理を徹底
,-/ __人〉 ・ 各寺の住持は相応しい者による輪番とする
/ ./. / \
| / / i \ これらはそのままなんだな。
|" / | > )
ヽ/ とヽ /
| そ ノ
____
/ \
/ \ …でも、非現実的だった出世入院の条目(※)と比べれば、
/ _ノ ::::::: ゝ、 \ まだ理解できる内容だお。
| (○) (○) u | これが残ることが、さっきの和尚の言葉にどう繋がるんだお?
\ (__人__) ,/
/ `⌒´ \
※大徳寺諸法度、二条目原文
『一、参禅修業、就善知識三十年、費綿密公夫、千七百則話頭了畢之上、
遍歴諸老門、普途請益、真諦俗諦成就、出世衆望之時、以諸知識之連署、
於被言上者、開堂人院可許可、近年猥申降論帖、或僧臘不高、或修行未熟之衆、
依令出世、匪啻汚官寺、蒙衆人嘲者、甚違干仏制、向後有其企者、永可追却其身事』
【非現実的な箇所】
”参禅修業、就善知識三十年、費綿密公夫、千七百則話頭了畢之上、遍歴諸老門”
↓
意訳 : 参禅の修行は、善知識(師僧)に三十年就いて修行し、千七百の公案を解き、
更に諸師について修行をし…
543 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 03:57:06 ID:Q11s1UJA0 [13/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( -)(-) …やる夫。
.| (__人__)_ .内容どうこうではなく、幕府によって、ここまで管理されることを
| `⌒´. ̄ 寺社が受け入れざるを得ないこと自体、
.| ノ 本来、寺社からすれば、受け入れがたいことなんだよ。
ヽ .,ノ )/´二⊃
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ 江戸時代以前の寺社ってのは、
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ .武士とも朝廷とも違う、独立した勢力だった訳だからな。
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
_____
/ ― \
/ノ ( ●) \ んー…。
. | ( ●) ⌒) | 一向一揆とかあったけど、ああいう感じかお?
. | (__ノ ̄ /
. | /
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
544 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:00:02 ID:Q11s1UJA0 [14/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ―)(―) シュポ …………。
.| (__人__) チリチリチリ……
| .,ノ )/´二⊃
人 /"/ '‐、ニ⊃
./ ヽ l ´ヽ〉〆ヽ
( ⌒ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ―)(―) , 、
.| (__人__) ふぅーッ ,´ ( ⌒ヽ )
| `-=━・ --==≡三三 ( ( ) ) )
.| ノ ヽ `ー ノノ
ヽ .,ノ )/´二⊃ ヽ_- ノ
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
545 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:01:32 ID:Q11s1UJA0 [15/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ .___
| ( ー)(●) ( ⊂⊃ ) まあ、わかりやすい例としてはそうだが、
. | (__人__) ホワッ ̄ ̄ .あれはかなり極端なもんだ。
| ( ( ノ
.l^l^ln ⌒ } ともかく、中世以前の寺社勢力というのは、
. ヽ L } ∩ ノ)━・ 自前の所領と、それを支える武力も持ち、
ゝ ノ ノ / _ノ´ 更に表向きの政治に対する権威や影響力に加え、
/ / \/ | .宗教的権威まで持ち合わせた勢力なんだぞ。
/ / ' | .武士からすれば、始末に負えないなんてもんじゃない。
. / / |ヽ__ノ
ヽ__ノ
____
/ \
/ u ノ \
/ u (●) \ そ、そんなに寺社が凄いなら、
| (__人__)| どうして幕府に従うことになったんだお?
\ u .` ⌒/
ノ \
/´ ヽ
546 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:02:12 ID:Q11s1UJA0 [16/24]
/ ;;;;;;;;;;ヽ
/ ;;;;;;;;;;;;;、 そりゃお前。
| ノ \ ;;;;;;;;;;|
|( ●) (●) ;;;;;;;;;l 「 力 ず く で 叩 き 潰 さ れ た か ら 」だよ。
| (__人__) ;;;;;;;;il
| ` ⌒´ ; ;;;;;;;.;;;;;ヽ 叡山焼き討ち、石山合戦、紀州征伐…。
! ;;;;;;/i;;;;;;;;ヽ、 戦国時代、寺社勢力がどれだけ派手に武士と戦して、
\ ;;//;;;;;;;;;i;;;;;;ヽ、_ .そして徹底的に敗れたか、調べればわかることだろ。
/)  ̄ ̄;l; ;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`‐-、
_ / :/ |;;;; /;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ヽ、
ノヾ `‐-" l , -‐"i /;;;ノ;;;;;;;/;;;;;;,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙ヽ,
ノヽ | / .ヽ!;;:/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;li
l , :l / , ;/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
( ヽノ .i i; ;l ,, ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|
ヽ、 \l/_,-‐ 、:;| :;\,,-‐;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
ヽ、i \i;;;;;:));| ;;;;;;;;;/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;‐、;;;;;;;;;;/
\ \´);;| ;;;;;;;/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\;;;;
____
/ \
/ \
/ \ あー…。
| \ ,_ | そういやそうだったお…。
/ u ∩ノ ⊃―)/
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
547 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:03:19 ID:Q11s1UJA0 [17/24]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ ._ノ ヽ、\) ;;;;)
| (●)(●)/;;/ そして、江戸幕府が、
| (__人__)l;;,´| .そんな勢力が復活するのを黙って見ている訳もなく、
| ./´ニト━・' .l .有力寺社に対し、個々に法度を繰り出し、
| .l _ニソ } .幕府の支配体制に取り込むように仕掛けた。
/ヽ、_ノ /
__/ / ノ__ いわゆる「寺社諸法度」であり、
/ / / `ヽ. そのひとつがさっきの「大徳寺法度」なわけだ。
/´ ./ ,. ヽ.
ト、_,/. |、 ヽ
| |/ /
____
/ \
/ _ノ ヽへ\ つまり、かつて武士と対等か、それ以上の勢力だった寺社が、
/ ( ―) (―) ヽ 武士との戦いに敗れて、言うことを聞かざるを得なくなった、
.l .u ⌒(__人__)⌒ | ということかお?
\ ` ⌒r'.二ヽ<
/ i^Y゙ r─ ゝ、 「そういう訳だ」
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、|
{ { \`7ー┘!
548 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:04:09 ID:Q11s1UJA0 [18/24]
____
/_ノ ヽ、\
/( ●) (●).\ で、でもやらない夫。
/ (__人__) u. \ そうだとしても、そこで沢庵和尚が
|ni 7 ` ⌒´ . |n 仏法を見限る発言をしたことにどう繋がるんだお?
l^l | | l ,/) U l^l.| | /)
', U ! レ' / . . | U レ'//) 正直、和尚は寺社勢力の勢力が強かったとしても、
{ 〈 ノ / 態度としては同じだったんじゃないかと思うお。
..i, ."⊃ rニ /
."'""⌒´ `''""''''
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ( ;;;;(
| ( ─)(● ) ;;;;) まあ、和尚個人としては、
| (__人__) /;;/ 寺社の勢力が強かろうが弱かろうが、
. | ノ l;;,´ そこは気にしなかっただろうさ。
| ∩ ノ)━・'
/ / _ノ´ 問題は、幕府という「外部の勢力」によって、
(. \ / ./ │ 「寺社の独立性が損なわれた」ことにある。
\ “ /___| |
. \/ ___ /
549 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:05:26 ID:Q11s1UJA0 [19/24]
___
/)/ノ ' ヽ、\
/ .イ '(●) .(●)\ …どういうことだお?
. /,'才.ミ). (__人__) \
. | ≧シ' ´ ⌒` |
. \ ヽ /
_, -‐
_, -‐  ̄ ‐=ニ=-
/ ̄ ̄ ̄\ _, -‐  ̄‐=ニ二ニ=- _, -‐  ̄
/ ヽ ,~'_, -‐  ̄`ー-----― '
/ 丶 _,~'_ッ'-
| _ノ ( ●) .厂
i ( ●) ! .⊃ 寺社…というか仏教勢力というのは、
| (__人_) /〉 当たり前だが、その基本となる法は「仏法」になる。
/∧ ,.<))/´二//⊃ これに対し、朝廷や武士の法は「王法」といい、
/ : | ヽ / / '‐、二ニ⊃` .それぞれ別個のものとして存在していたんだ。
, -‐'´: : : : :l 丶l ´ヽ〉: : : : \
/: : : : : : : : :| /_/ __人〉|: : : : :| そして、僧たちからすれば、
「ヾ: : : : : : : : : :l_/:_/ヽ. /´ | : : : : :| 守るべきはあくまで「仏法」であり、
〈\ : : : : : : : :,、: :/´∨/`ー'〉 |_| |: : : : :| 世俗の法である「王法」は尊重こそすれ、
!: : :ミヽ: : :/ `y′.: ',ゝ、_/ l: : : : : :| それに縛られることは決して良しとするものではない訳だ。
! ⌒ヽ: : : :.ヾ/: ://: : : :| l: : : : : :|
550 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:06:22 ID:Q11s1UJA0 [20/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ しかし、この法度によって…
| ( ●)(●) .いや、この法度を受け入れざるを得なくなったことで、
. | (__人__) 寺社の法(仏法)は、世俗の法(王法)の下に
| ` ⌒´ノ 位置付けられることになってしまった。
. | . }
. ヽ } ( つまり、
_ヽ ノ`ヽ、_ )
_/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( 【 王法 > 仏法 】
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,)
, -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 となってしまった訳だな。
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
/ `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
____
/:::::::::: u\
/:::::::::⌒ 三. ⌒\ …それを覆そうにも、
/:::::::::: ( ○)三(○)\ 武力はもうないし、所領だって
|::::::::::::::::⌒(__人__)⌒ | .散々に削られちゃってるから…
\:::::::::: ` ⌒´ ,/.
ノ::::::::::u \ これ、詰 ん で な く ね?
. /:::::::::::::::: u
|::::::::::::: l u
ヽ::::::: -一ー_~、⌒)^
ヽ::::::::___,ノγ
551 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:07:40 ID:Q11s1UJA0 [21/24]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ ._ノ ヽ、\) ;;;;) そういう訳だ。
| (●)(●)/;;/ ここまでの話と、和尚の来歴を踏まえて考えると、
| (__人__)l;;,´| 「見限候」「棄てて唱へず」「用に立ち申さず」という
| ./´ニト━・' .l 一連の和尚の言葉に、ひとつの意味を見出せる。
| .l _ニソ } つまり…
/ヽ、_ノ /
__/ / ノ__ 「和尚は、仏法(寺社)の復権のために抗ったが、
/ / / `ヽ. 大勢を覆しきることはできず、遂には諦めた」
/´ ./ ,. ヽ.
ト、_,/. |、 ヽ
| |/ /
____
/ \
/ \ そして、王法(幕府)に屈した仏法(寺社)を、
/ \ 「見限った」という訳かお…。
| \ ,_ |
/ u ∩ノ ⊃―)/ .世間的な意味で堕落しているからではなく、
( \ / _ノ | | .寺社が幕府に屈して、抗えもしなくなったことが、
.\ “ /__| | .和尚にとって決定的だった…ということかお。
\ /___ /
552 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/14(火) 04:09:28 ID:Q11s1UJA0 [22/24]
/ ̄ ̄\ .........::::::::::...r‐ ' ノ.
/ \........::::::::_ ) (_
|::::::: : |.....:::(⊂ニニ⊃) まあ、あくまで
>>1の解釈だがな。
.|::::::::::::: |....: ::::`二⊃ノ ただ、和尚が紫衣事件で幕府に抗ったのも、
|::::::::::::: |..: :::: ((  ̄ .出世入院の条件なんて瑣末なことでなく、
.|::::::::::::::: } [l、
ヽ } /,ィつ 「世俗権力が、宗教の枠内の事に踏み入ってきた」
/ ヽ . ノ .,∠∠Z'_つ
/ ''⌒ヽ ./ .r─-'-っ .ことに対しての、仏法者としての矜持故だったと
.| ( / } ./ ):::厂 ´ .見ることができるんじゃないかと思う。
| / .// .ト /
____
/ \
/ -‐´ `ー\ 元々、和尚自身、
/ (-) (-)\ 権勢欲なんて全くない人だし、
| u. (__人__) .| 紫衣事件の時も隠棲していたのに、わざわざ出てきたのも、
\ ` ⌒´ / 「仏法の独立性を守るため」と考えれば、納得ではあるお。
> ー‐ <
. / / ̄彡ミヽ、 それが、必死の思いで抗ったのに、寺社勢力全体が
/ ヽ / / ヽ ヽ 「もう、幕府に従うしかないよね…」という空気だったとすれば…
ヽ. Y / | | 和尚の失望もわかる気がするお。
ヽ ノ ヽ ノ
577 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:00:48 ID:Hvg37V8c0 [2/17]
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \
| ( ●)(● ) | さて、和尚の「仏法を見限り」発言について、和尚が見限ったという「仏法」は、
| (__人__) │ 仏教の教義そのものというより、王法、即ち世俗権力と対比しての仏法、
| `⌒ ´ | 即ち、寺社勢力のことではないか、という推測を踏まえた上で、2つ目の話題に移ろう。
| |
ヽ /
ヽ 人
⊂てヽ / ヽ
{三_ ィ `´ /| ィ |
.\__/ | | |
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃ その2 : 和尚が法嗣を持たなかった理由 .┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
∩_
〈〈〈 ヽ
____ 〈⊃ }
/⌒ ⌒\ | | 2つ目の話。
/( ●) (●)\ ! ! 「和尚は何故法嗣を作らなかったか?」ということだおね。
/ :::::⌒(__人__)⌒:::::\| l
| |r┬-| | /
\ ` ー'´ //
/ __ /
(___) /
578 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:01:13 ID:Hvg37V8c0 [3/17]
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \ まず、この話については、前提として、
| (●)(●) |
. | (__人__) .| 「禅宗に於いては師資相承が重視された」
r、 | `⌒´. |
,.く\\r、 ヽ ノ ということを踏まえておく必要がある。
\\\ヽ} ヽ / 師資相承ってのは、弟子を一人前に育て上げ、
rヽ ` ヽ / ァ'´ヽ .その弟子に印可を授ける形で、
└'`{ . \.| / i .教えを後に伝えていく、という継承方法だ。
ヽ、._ ヽ、_,r' .|
`ヽ、 /' |
`'ー'´
___
/⌒ ⌒\ つまり、教えを後に伝えたければ、
./(ー) (ー)\ 印可を与えられるだけの弟子を育てろ、ってことだおね。
/::::::⌒(__人__)⌒:::::.\ で、その教えを継いだ弟子が「法嗣」ってわけかお?
.| |r┬-| |
\ `ー'´ /.. 「そういうことだ」
rー'""l, 'l, / .| ||/`>、 .
./ | 'l, / .|./》/ ∧.
./ , | ヽ ヽ,、/.@ / 《l,l / ヽ
/ 、,ヽ|/ ヾ。ツ`' 「ゞ / /《ヾ /゙ヽ
./ ///l`゙'゙ー-'" / // ノ// //`l.
.,|. /// | |___,,,ノ≡≡ツノ//_,,-‐'"".l
| /// /| /二=‐'"´´/ /`゙゙'ー-、,_.l
|/// / | /|三="´ / //"´´゙'ー、|
.///ノ ノ ノ ノ‐-二‐'"´ ノ/r=、,_ー-、_|.
579 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:01:38 ID:Hvg37V8c0 [4/17]
>―― .
> \
./ V 更に言えば、ここで伝える「教え」は、
| V 単に経典などの文字や言葉による知識だけを指すのではなく、
V 師である自分自身の禅風…言うなれば人格も含めたものになる。
| 〈ヽ____, V 教えの外に別して伝えるもの…「教外別伝」という訳だ。
{/ ( ●)/ i V
Y Y=( )´ : } V だからこそ、この法の教えの流れである「法統」は、
丶イ 、 __) ', / V>、_ .僧にとっては血脈のようなものであり、また法嗣も子の様なものだと言える。
し´ ', // /: :\ 和尚も師匠である一凍から、「跨竈児(親勝りの子)」などの表現をされている。
: \ /', // /: : : : :}へ .
: ヽ ‐ | ', // |: : .〈: : : \
: // ,’ { ’ ,/ / ,’: : ): : : : :\
>', //,’ { / / ’/’’: : : : : : : : : : :
/: : : :>・ ・ | {/ / ./: : : : : : : i: : : : : : :
|: : : / / |/ / /: : : : : : : /: : : : : : :
ノ: : / / .| / /: : : : : : : : : : : : : : : :
___
/ \
/ ノ \ \ …でも、和尚は、
/ (●) (●) \ その法嗣を持つことを拒否したお。
.| u. (__人__) | __ .弟子はいたけど、彼らに法を継がせなかったんだお。
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ /
(⌒ /紀念録./ ./ 【「東海和尚紀年録」寛永二十年の記述】
i\ \ ,(つ / ⊂) 『師退きて門人に語りて云く。
| \ y(つ__./,__⊆) . 台命、太だ重しと雖(いえど)も、老僧更に児孫相続の心なし』
| ヽ_ノ |
580 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:03:42 ID:Hvg37V8c0 [5/17]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ああ、そうだ。
| ( ●)(●) つまり、この法嗣についての話を裏返すと、
| (__人__)
| `⌒´ノ 「法嗣を持たないことには、
| } ..自分の教えを後世に遺せない」
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) …いや、和尚の場合、弟子もいて、
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( 家光や後水尾上皇にも請われたにも関わらず、
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) 自ら法嗣を作らないと明言したのだから、
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉| 「自分の教えを後世に”遺さない”」
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i ! ことを選択したということになる。
調べてみたら、禅宗において、
____ この法嗣を持ち、教えを伝えることは、
/ \ とても重要視されてたってあるお。
/ -‐´ `ー\
/ (●) (●)\ 「(法を)断絶せしむること莫れ」(阿難/禅宗第二祖)
| (__人__) | 「(法を伝えないのは)仏種を断ずる罪」(懐奘/日本曹洞宗第二祖)
\ ` ⌒´ /
> ー‐ < とまで言ってる僧もいたし、
. / / ̄彡ミヽ、 事実、家光や後水尾上皇も強く懇望してるんだから、
/ ヽ / / ヽ ヽ .かなり重要視されてたのは間違いないお。
ヽ. Y / | |
ヽ ノ ヽ ノ なのに、どうして和尚は法嗣を作らなかったんだお…?
581 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:04:47 ID:Hvg37V8c0 [6/17]
/ ̄ ̄\
/ _ノ .ヽ、\ 話が最初の設問に戻ったな。
| (●)(●) | で、ここからが推測になる。
. | (__人__) .|
| ` ⌒´ ノ まず、単純に考えられるのは、
. r─一'´ ̄`<ヽ }
. `ー‐ァ , ) , -'~⌒ヽ、 「法嗣にできる程の弟子がいなかった」
ノ {. ,ヘ ,l. ゝ、_ .'ヽ).
. /, 、 _ /. | . ', . .. .ヽ、 というところだな。
(/ / // / / ...| ...|\..\\ \_) 家光の懇望を見ても、和尚が法嗣と
/ // / / . . \_\_)、_) 認められる弟子がいないことが問題であるように読める。
ー' {_/ノ ."´
/\
/. \ 【『東海和尚紀年録』】
V. \ 『時に大樹(家光)、師に謂って云く。
i \、__ .和尚法齢既に老いたり。然るに未だ嗣法の弟子あるを聞かず。
斗‐''"¨ ̄ ̄`ヽ{ //、_ 疑うらくはこれ会裡機に契う者なきか。
{、 ヽ /' ゝ> 我意(おも)えらく、大亀の世尊(迦葉)に於けるは又猶蠅の驥尾に附すが如し。
{ミヽ \ // // ヽ 然り而して其の法的相承今日に至り、群生利海を蒙る。
ヘ: ヽ \ ':/// ´_彡} .是れ豈に霊山密付の謂いに非ずや。
ヘ:. :', \ {,//, /'"´ .今疇室の徒、纔に悟徹底者を見れば、須らく許可し以って後世に伝うべし』
ヘ :':, _ -=====ミヽ|./ /'
ヘ :::':,、/´ _,. -====ミゞ斗}
ヘ ::彡'/´ `¨¨¨´
____
/ \ 「和尚の目から見れば未熟かもしれないが、
/ _ノ ヽ、_.\ .和尚の法を伝えるためにも、少しでも見込みがあれば、
/ (●) (●) \ その者に印可を与えて、法嗣としてほしい」
| (__人__) |
/ ∩ノ ⊃ / …確かに、ここを読むと、
( \ / _ノ | | 和尚の認定基準が厳し過ぎるのが、
.\ “ /__| | 印可の弟子がいないことの理由のように見えるお。
\ /___ /
582 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:06:33 ID:Hvg37V8c0 [7/17]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( -)(-)
. | u. (__人__) . あと、かつての弟子であった一絲から、
| `⌒´ノ こんな批判も出ているな。
. | } __
\ } / ̄ ̄⌒/⌒ ./
(⌒\ / / /
i\ \ ,(つ / ⊂)
.| \ y(つ /,__⊆)
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_| 【「一絲語録」より】
| ._. .|_| 『師、已に壇越の堅請に随つて一方の伽藍に董□(※とうり)す。持法の具其れ備はり、
| |一| . |_| 持法の資其れ饒なり。何が故ぞ槌払の下全く□子(※のっす)に乏しき哉。
| |絲| . |_| 料るに夫れ賢を選び器を択ぶの然らしむるか。
| |語| .|_| .馬骨を棄てずして駿馬を得るは宗匠偉度の常なり。
| |録| .|_| .仰ぎ望むらくは賢不肖を問はず、先づ収録を賜へ。
|.  ̄ .|_| .若し其れ親しく炉鞴に投じ、妙密の鉗槌に当り得ば、
|________.|_| .頑銅鈍鉄□(※すみやか)に宝器と化すること豈難事ならんや』
└─────── (※ □部分は漢字が出なかった箇所)
____
/ \
/ \ 「既に環境が整っているにも関わらず、弟子が少ないのは
/ \ それは師が選り好みしているからではないか。
| \ ,_ | 今からでも遅くないから、きちんと育ててやれば、
/ u ∩ノ ⊃―)/ .誰であれ、きっと立派な禅僧となれるであろう」
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| | …こりゃ随分手厳しいお。
\ /___ /
583 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:07:49 ID:Hvg37V8c0 [8/17]
____
/ _ノ ヽ_\ しかし、やらない夫。
. / (ー) (ー)\ この懇望や批判を踏まえると、和尚に嗣法の弟子がいないのは、
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \ 「和尚の認定基準が厳し過ぎる」か、
ヽ L |r┬-| | 「和尚が弟子をきちんと育てていなかった」かのどちらかで、
ゝ ノ `ー‐' / どっちにしても、和尚自身にも原因があるようにも見えるお。
/ / \
/ / \
. / / -一'''''''ー-、.
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、_ \ 確かに、そういう面はあるだろうな。
(●)(● ) | 実際、和尚自身、弟子を育てようとはしたが、
(__人___) | .「正知見を得る者」、即ち、印可を出せるだけの者が
| u | 出なかったと書いている。
| .|
ヽ 、 ,イ ただ、「今予、仏法を棄てて唱へず」という言葉は、
/ヽ,ー- ト、 直接的な文章としては、そちらに掛かっていることからして、
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__ 和尚なりに力を入れてはいたとは思う。
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.... でなければ、弟子が育たなかったことで、ここまで言わないだろ。
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【万松語録(巻の一)】
| |万| . |_| .『師の印を得てより後、今已に四十年、一則の話頭を以って人に示す。
| |松| . |_| 其れ正知見を得る者、一箇もまた無し。
| |語| .|_| 今より五十年の命在るも、住を以って来を推すに、恐らくは済度の頼むべき無し。
| |録| .|_| 若し済度を除かば、即ち渡世の活計と成る。豈(あに)愧はぢ)ざらんや。
|.  ̄ .|_| 以故す、今予、仏法を棄てて唱へず』
|. .|_|
|________.|_|
└───────
584 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:09:51 ID:Hvg37V8c0 [9/17]
_____
/ .r┐ヽ「|
/ r-、 | .| ./ l l゙l しかしな…和尚の他の言葉を読んでると、
. / .__,ノヽ ゙、_,ノ '-' .|,,/ | 和尚が嗣法を望まなかったのは、
| (-)ヽ ノ ´/ どうもそれ以外の要素の方が大きいように思えるんだな。
| 〉 〈_,,.-、
.| (__人{ .r''´ 言ってしまえば、
.| ´ ⌒| _,.-i'´ それなりの実力の弟子がいたとしても、
. .{ u. l-‐'''''''ーl } 法を継がさなかった可能性があるんだ。
{ . |´ ̄ ̄``l }
{ .| |.}
____
/ \
/ u ノ \
/ u (●) \ …つまり、和尚が自分の意思で、
| (__人__)| 自分の法を遺さないと決めたってことかお?
\ u .` ⌒/
ノ \
/´ ヽ
585 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:10:49 ID:Hvg37V8c0 [10/17]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ ._ノ ヽ、\) ;;;;) ああ。
| (●)(●)/;;/ 簡単に言えば、
| (__人__)l;;,´|
| ./´ニト━・' .l 「当時の仏法(寺社)が、王法(幕府)に対して無力であった失望から
| .l _ニソ } 自分のものも含め、当代の仏法そのものを遺すに値しないと考えたのではないか」
/ヽ、_ノ /
__/ / ノ__ というところだな。
/ / / `ヽ. 例えば、さっきの「万松語録」の文章は、
/´ ./ ,. ヽ. 更にこのように続いている。
ト、_,/. |、 ヽ
| |/ /
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【万松語録(巻の一)】
| |万| . |_| .『今の世上、得法を称する者太だ多し。
| |松| . |_| 古を以てこれを見るに、即ち多くは是れ相似底の消息なり。
| |語| .|_| 似は即ち似にして是れ即ち未だ是ならず。
| |録| .|_| 未だ是ならざる法を以て人を度さば是れ人を度するにあらず。
|.  ̄ .|_| 却つて人を暗坑に陥らさん』
|. .|_|
|________.|_|
└───────
____
/ \ 「今の世では、法を得たと称しても、その実、そうでない者が多い。
/ _ノ ヽへ\ そのような者が法を説いても、人を救うどころか、
/ ( ―) (●) ヽ 却って暗い穴に落とし込むようなものだ」
.l .u ⌒(__人__)⌒ |
\ ` ⌒r'.二ヽ< …”だから、このような法なら遺さぬ方がよい”って訳かお。
/ i^Y゙ r─ ゝ、 でも、これって嗣法の弟子が育てなかったことを嘆く文章の続きだお。
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、| これだけなら、あくまで良い弟子が育たなかった失意が先にあって、
{ { \`7ー┘! そこから出た言葉だっていう見方もできるお?
586 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:13:11 ID:Hvg37V8c0 [11/17]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;) いや、元々、和尚は
/ _ノヽ_\ ) ;;;;)
| (─)(─) /;;/ 「沙門の言行正しきときは、即ち権威とても恐れなし」(東海夜話)
. | (__人__) l;;,´
| `∩_ノ)━・' と述べている通り、当代の仏法についても、
. | |_ノ それが正しいものだとした上での発言をしている。
/ヽ | |_
| \_/ ノ ヽ しかし、紫衣事件に端を発する寺社の混乱と、
\ /_| | 幕府への従属を選んだ姿を見て、仏法に対する言葉が
| \ / _/ 変わっていくんだ。
_____
/ ヽ____//
/ / / 【寛永十二年九月二十四日の宗矩宛の手紙(抜粋)】
/ / / 『上意をいやとは、いかなるはちひらき坊主にても、
/ / / 申されざる儀に候』
/ / /
/ / /
/ / /
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____
/ \ ああ、これ、
/ _ノ ヽ、_.\ 江戸に上がって来るようにっていう家光からの命令について
/ (●) (●) \ 宗矩に相談も兼ねて出した手紙かお。
| (__人__) |
/ ∩ノ ⊃ / …随分トーンが変わってきてるお。
( \ / _ノ | | 「乞食僧ですら、将軍の命令には嫌とは言えない」って
.\ “ /__| | 沢庵和尚の言葉とは思えないお。
\ /___ / 確かにこの後、和尚はかなり渋ったとはいえ、上府してる訳だし…。
587 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:14:08 ID:Hvg37V8c0 [12/17]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ そして、その失望は、
| ( ー)(ー) 最終的には当代の仏法の否定に繋がっていく。
. | (__人__) 正保二年の小出吉英宛の手紙でも、
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ
.l^l^ln } `‐= ) 「何と精を尽くし申し候ても、
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;) .紫野の仏法、今の世には用に立ち申さず候間」
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/ と書いている通りだ、
/ / \ .l;;,´ つまり、弟子が育たなかったこととは別に、
. / / |ヽ、二⌒)━・' .当代の仏法自体を無用と断じた訳だな。
ヽ__ノ
____
/ \ まとめると、こういうことかお?
/ _ノ ヽへ\
/ ( ―) (―) ヽ .・「印可を授けられるだけの弟子が遂に出なかった」
.l .u ⌒(__人__)⌒ | ・「当代の仏法に遺すべき価値を見出せなくなった」
\ ` ⌒r'.二ヽ<
/ i^Y゙ r─ ゝ、 この二つが合わさって、法嗣を持たない…。
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、| 即ち、自身の法を遺さないと決めた、と。
{ { \`7ー┘!
588 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:14:42 ID:Hvg37V8c0 [13/17]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ _ノヽ_\ ) ;;;;)
| (●)(●) /;;/ …あるいは、和尚からすれば、
. | (__人__) l;;,´ 「法を”継がせる”」という考え自体、
| `∩_ノ)━・' .おかしいものだと考えていたのかもしれん。
. | |_ノ
/ヽ | |_ 実際、こんな言葉もあるんだ。
| \_/ ノ ヽ
|\ /_| |
| \ / _/
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【東海夜話】
| |東| . |_| .『法は其れ嗣ぐべからず、嗣ぐべきは法に非ず。
| |海| . |_| 法は其れ断ずべからず。断ずべくは法に非ず。
| |夜| .|_| (中略)法は自ら無始無終なり。
| |話| .|_| 断続なし。只仏出て即ち法顕はる』
|.  ̄ .|_|
|. .|_|
|________.|_|
└───────
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【碧巌九十偈「禅」】
| |碧| . |_| .『末法の禅流、禅を以て授受せんと擬るに、禅授くべからず。
| |巌| . |_| 的的西天二十八世、授に似て授に非ず。
| |九| .|_| 東土二三、伝に似て伝ならず。
| |十| .|_| ただ弟子心了し、師有りてこれを証明するのみ。
| |偈| .|_| 若し証明の師無きは以て我れ是れ禅を得、道を得ると道(い)え。
|.  ̄ .|_| しかるにみだりに口を開けば則ち抜舌罪遁るべからず』
|________.|_|
└───────
-―─- 、
/ \
′ ノ ' ヽ、 , これは…
i ( ●) (● ) i
| (__人__) | 『法とは、授けるとか嗣がせるというものではなく、
、 .´⌒` .ノ .自ら悟るべきもので、師はその悟りを証明するに過ぎない』
> r、. r、<
/ ─| 1 悟 l |ー ヽ ということかお?
( _ ノ り 乂 _,ノ
.  ̄′ l 「そういうことだな」
. i |
乂 イ
| /ー―一 、 |
し′ 、_j
589 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:15:14 ID:Hvg37V8c0 [14/17]
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、_ \ この発言を踏まえて考えてみると、
(●)(● ) | 和尚の「法嗣を持たない」という発言には、
(__人___) | 別の解釈が出てくる。
| u |
| .| 『法(悟り)は自ら顕れるものだ』
ヽ 、 ,イ
/ヽ,ー- ト、 であれば、無用のものである「当代の法」などを
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__ 教える必要も、継がせる必要もない、ということになる。
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.... 真の法なら、自ら顕れる筈…という訳だな。
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
つまり、
____
/ \ 「法嗣がいようがいまいが、
/ ─ ─ \ 真の法とは関係のないことなのだから、
/ -=・=- -=・=- \ . どうでもいい」
| (__人__) U |
\ ` ⌒´ / ということかお?
それはそれで、また極端な…。
590 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/10/20(月) 02:15:47 ID:Hvg37V8c0 [15/17]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( -)(-) まあな。
| (__人__)
| `⌒´ノ しかし、ここで出た概念、
| } つまり、「当代の法」とは関わりなく顕れる「真の法」という考え方は、
ヽ } ( 他のことにも絡んできそうだから、覚えておいてくれ。
_ヽ ノ`ヽ、_ )
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( ひとまず、和尚の法嗣に関しては、
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) こんなところだな。
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
___
/)/ノ ' ヽ、\ わかったお。
/ .イ '(●) .(●)\ じゃあ、次の話に移ろうかお。
. /,'才.ミ). (__人__) \
. | ≧シ' ´ ⌒` |
. \ ヽ /
615 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:33:01 ID:Mt36Zunw0 [3/18]
╋━━━━━━━━━━━━━╋
┃ その3 :.最期の境地について..┃
╋━━━━━━━━━━━━━╋
/ ̄ ̄ \ (
/ _,.ノ `⌒ ノノ
| ( =)(=)(,ヽ、 (( さて、1と2を踏まえると、晩年の和尚は、
.| U (___人__) ,r__i____ ノ
| √丶丶丶┬─'" 「当時の仏法(寺社)を見限り、
| | ) j .また、自身の仏法(禅風)についても、嗣法を認めなかった」
.人、 ヽ´ /
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r という、かなり厳しい判断を下していたことになる訳だが…。
_, 、 -― ''"::::::::::::\::::::ー-- く / ⌒ヽニ-、
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;|
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;i
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
____
/ \
─ ─ \ では、そんな和尚の最期の境地は、
(ー) ( ー) \ どんなものだったか、というのを推測してみるお。
| (_人__) |
\` ⌒´ /
/ ー‐ / ,>"'-、
// / ヽ/ / ヽ
/ | !/ / i
./ /!/ / |
,.{ l./ ./ ノ ヽ
/ ヽ、 /_____,,...--' ヽ
/ ゝ-- , ,----、 i
,..--....,,,_,,.-( .(~ ~) 丿....,,,____,,,..-' ,..-‐-., J
( ゝllllゝ.,_,彡ミ,_,.ノllllllllllllllllllllll/ i
ヽ ヽlll/lllllllllllllllllllllllllllll/ミ/ ,/
ゝ \llllllllllllllllllllllllll// ,...-'
616 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:33:38 ID:Mt36Zunw0 [4/18]
._
/′ ヽ
/ │
.、 丿 〉
,' ゝ、 ____ / ⊥..............,,_
/ ゙‐'''"´  ̄ `''、
..ノ _/'' ̄〉 / ̄ ̄`''‐---'′
_..‐′ ..-'′ ,' /
......ィ‐ _ _l"^ゝ_ 丿 ,' _r;;こ............,,__
⌒ ̄ ̄´  ̄` ....-‐′ ................、 `゙'' 、
,,-‐'、 _..r‐'´ _,,..-、 ゙r / ヘ、
! │ 一‐'、 (´ / 丶..rに.... 、_ _,/
! ヘ ゝ ''′ _,,′ ´′
\ ゙ゝ、''、 __..--''''' __..................,,___
`ー‐‐ `''' 彡-‐''''' 二 ...._...._ `゛''ー 、
,,r'' ̄1 _,,..-‐''" _,,..-:」 ニ´ `゛''ー 、 ゙\
ノ'´ ∫‐''''"´ ,,/ ン'''´ │ _,,_....一′ 〉
| ./ ゙ー--‐''''''" _r‐´ ーー-.. ` ̄´ ` `''''ー、 __../
ヘ 丿 / ` 、 ´
丶___ノ | __..‐‐'ワ _┘
` ゙-..‐'´ / /′
..‐'" ̄"´ /′
`ゝ 丶
/ __,,..-┘
_..-'" /
_....‐" _..r'''´
.._r匕 ..---....-‐"
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \
| .(●)(●) | まず、「最期の境地」について、
. | (__人__) | .一番の参考となるのは、辞世の偈である
| `⌒´ | ) ;;;;) この「夢」の一字だな。
. | | .) ;;;;)
. ヽ } /;;/
ヽ ノ .l;;,´
. / ∩ ノ)━・'
( \ /|_ノ ヽ ____
. \ "" /_ノ | / \
\ /___/ / ⌒三 ⌒ \ 「夢」といえば…
/ (○) 三(○) \ やはり「夢じゃ夢じゃ。夢じゃ夢じゃ夢じゃ…!」(by萬屋錦之介)かお?
| ::::⌒(__人__)⌒::::: |
\ |r┬-| /
/ `ー'" .ト _ \
<三三三三三三| |(___)
|\  ̄ ̄ レ/
617 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:34:14 ID:Mt36Zunw0 [5/18]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ンな訳ねーだろ。
| ( ●)(●) ていうか、こないだ新文芸坐の時代劇映画祭で
. | (__人__) 魔界転生や十兵衛暗殺剣と一緒に公開されてたな>柳生一族の陰謀
| ` ⌒´ノ
. | } ミ ピコッ
. ヽ } ミ /\ ,☆____
ヽ ノ \ \ / \
/ く \. /\/ ─ ─ \ 久しぶりに件のシーンだけ観直そうかと思ったら、
| `ー一⌒) / (●) (●) \ 気が付いたら最初から全部観てました。
| i´ ̄ ̄ ̄ \ | (__人__) | いやーやっぱすげーおアレ。
\_ ` ⌒´ /
/ \
618 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:35:06 ID:Mt36Zunw0 [6/18]
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、_ \
(●)(● ) | まあ、それはともかく、
(__人___) | ここで言う「夢」は、おそらく金剛般若経の一説(※)、
| | 「夢幻泡影」を踏まえたものだと思われる。
| .|
ヽ 、 ,イ ※「一切有為法 如夢幻泡影 如露亦如雷 応作如是観」
/ヽ,ー- ト、 (一切有為法は、夢、幻、泡、影のごとく、露のごとく、また雷のごとし。
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__ .応(まさ)に是(かく)のごとき観(かん)を作(な)すべし)
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:....
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
____
/ \
/ ─ ─\ ”この世のあらゆる物事は、
/ (●) (一) \ 夢幻のように儚く、移ろいやすいものと観よ”
| (__人__) |
\ `_⌒ ´ / ということかお。
. ノ.,.,.,.,.,.,.,/ )ヽ.,.,.,く
(;:;:;:\;:;:/|_ノi );:;:;:;:) 「そういうことだ。
. |;:;:;:;:゙;:;:;:;:;:|;:;:;:|;:;:;:;:;:;:/ そして、”故に、そのようなものへの執着を捨てよ”という話になる」
\_;:;:;:;:;:;:;|;:;:;:|;:;:;:;:::ノ
619 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:36:18 ID:Mt36Zunw0 [7/18]
______
/ \ 心底どうでもいいけど、
/ ─ ─\ 昔、そんなタイトルのエロゲがあったおね>「夢幻泡影」
/ (●) (●) \
| (__人__) | _|_________
\ ` ⌒´ ,/ | | |
___/ \ | | |
| | / , | | PC98 .|
| | / ./ | | |
| | | ⌒ ーnnn |_|___________|
 ̄ \__、("二) ̄ ̄ ̄l二二l二二 _|_|__|_
__
/::::::::::::\
/ __ノ::::ヽ
| (;;;;;;)::::) いきなり話を超俗っぽくするなよ。
.| ::(;;;人) しかし、あれの発売当時(1995年)に生まれた子が、
| :::::::::rつ 今じゃエロゲができる齢になってるとか、PC98も遠くなりにけりだな…。
.| :::::::((三)
ヽ ::::::::::(::::< …いや、だから俺まで脱線してどうする。
ヽ ::::::::::/∧::::∨ ほら、話戻すぞ。
∠::::::::::::/⌒ ∧:::ヽ
(:::::\ /:::::::/;;;;;;;;;;) 「わかったお」
|\::::::::::::/|
|:::::\_/:::::|
620 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:37:04 ID:Mt36Zunw0 [8/18]
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ_
| (●)(●) で、大書された「夢」の一字の横に付記されたのが、これだ。
. | (__人__)
| `⌒´ノ ) ;;;;) .『百年三万六千日
. | } .) ;;;;) .弥勒観音幾是非
. ヽ } /;;/ 是亦夢非亦夢
ヽ ノ .l;;,´ .弥勒夢観音亦夢
. / ∩ ノ)━・' .仏云応作如是観矣
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ | 沢庵埜老卒援筆』
\ /___/
____
/ \
/ ─ ─\ 「仏曰く、
/ (●) (●) \ ”是もまた夢、非ざるものもまた夢、
| (__人__) | 弥勒も夢、観音もまた夢である”
\ ⊂ ヽ∩ < このように観るべし」
| | '、_ \ / )
| |__\ “ / ってとこかお。
\ ___\_/
621 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:38:16 ID:Mt36Zunw0 [9/18]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ _ノヽ\ ) ;;;;) 大体そんなもんだな。
| (●)(●) /;;/ この一文をそのまま解せば、
. | (__人__) l;;,´
| `∩_ノ)━・' 「あらゆるものは”夢”である」
. | |_ノ
/ヽ | |_ .というところになる。
| \_/ ノ ヽ 大書された「夢」とほぼ同じ意味だな。
|\ /_| |
| \ / _/
/ ̄ ̄ ̄\
/ / \ \ …ということは、和尚は最期に、
/ (●) (●) \
| (__人__) | ”この世一切の執着”から離れた境地に至った、
\ ` ⌒´ /
/ \ ということかお?
622 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:39:49 ID:Mt36Zunw0 [10/18]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ …そういう解釈もあるんだが、
| ( ー)(ー) 1と2で推測した和尚の心境を踏まえると、
. | (__人__) それだけでは済まない部分もあるように思えるんだよな。
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ
.l^l^ln } `‐= ) 端的に言えば、この偈には
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;) 「絶望」と「情」のふたつも含まれているように感じるんだ。
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/
/ / \ .l;;,´
. / / |ヽ、二⌒)━・'
ヽ__ノ
___
/ \
/ u \ 「絶望」と「情」…。
/ ノ ヽ、_ \ その内訳は何なんだお?
| ( ●) (● ). |
\ l^l^ln__人__) /
/ヽ L⌒ ´
ゝ ノ
623 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:40:40 ID:Mt36Zunw0 [11/18]
/ ̄ ̄\ まあ、ここまで話が進んだなら、、
/ _ノ \ 「絶望」については、細かく語るまでもないな。
| ( ー)(ー)
| (__人__) 紫衣事件に象徴されるように、
| u. `⌒´ノ 幕府(王法)に対して、寺社(仏法)の独立性を守るべく奮闘した和尚が
| } .最後の帰郷時、京で見たものは、幕府に屈服した寺社の姿だった。
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) それを見た和尚が、江戸に戻った後に書いた
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( 「紫野の仏法、今の世には用に立ち申さず候」という一文と合わせると、
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) この「夢」という偈は、
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉| 「己のやったことは全て無であった」
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i ! という和尚の絶望も含んだものではないか…ということだな。
_-─―─- 、._
,-"´ ゝ \
/ ヽ
/ ::::/::::::::\::ヽ この件については、あくまで
>>1の推測ではあるけど、
| u / ヽ `::::´ /`ヽ 晩年の和尚の言動を踏まえると、
l ( -ノ::::::::::ヽ-.;l .あり得ないとは言い切れないのが結構キツいお。
` 、 (__人_) .;/
`ー,、_ /゚
/ `''ー─‐─''"´\o
624 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:41:17 ID:Mt36Zunw0 [12/18]
____
/ \
. / \ で、やらない夫。
. / /) ノ ' ヽ、 \ もうひとつの「情」というのは一体なんだお?
| / .イ '(●) (ー) u|
. /,'才.ミ). (__人__) / …少しは絶望が薄れるものなのかお?
. | ≧シ' ` ⌒´ \
/\ ヽ ヽ
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ .⌒ ⌒ ) ;;;;)
| (─)(─) /;;/
. | (__人__) l;;,´ まあ、そうだな。
| `∩_ノ)━・' ポイントは、これが「請われて書いた」ものだということにある。
. | |_ノ .つまり、「自分の心境を語る以外の面もあるのではないか」ということだ。
/ヽ | |_
| \_/ ノ ヽ 「どういうことだお?」
\ /_| |
| \ / _/
625 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:42:38 ID:Mt36Zunw0 [13/18]
/ ̄ ̄\
/ ⌒ .⌒.\ _,, 忘れたのか?
.| (●) (●) .| l;l この偈は、本来なら書くつもりもなかったものを、
. | (__人__) .| _,_,|,|_, 弟子たちに請われて、仕方なしに書いたものなんだぜ。
| `⌒´ |, ト-=y 丶
. | } ヽ `i, ̄‐^l .つまり、和尚から弟子たちに対する
. ヽ } ヾ~ ` i, 「最後の教え」という面も持ってる訳だ。
ヽ ノ _ ヽ、 ;i,
,,_,i y,ソト,,__ ヽ、 ;i, 「お前ら、仕方がないから最後に一言言ってやる」
,/r-'"j / / ii, `ヽ、-x,,゜r ;i
,,/'/__.L、 /ヾ、"i `ヽ `;i i, という訳だな。
,/ /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i `、'i iヽ、
_,) ヽ " ネメ、_ii"~ _Yri l, ヽ、
_,,,>t 、ヾ、 ゞ;;/ / ,¬ V⌒l
,y`;,,__ ,i /ii' / r-/| l l
_/^,,, ヘ l /iil / l"v' y } l
v=4⌒ヽ、 j --,,,if /iii| ,, 〈-ヘ_,、 <、 / i|
ヽ, ,, i、 _,,tv /iiiii ム、 / / ヽ、ヽ、_x--ー‐- 、
__,,,l ii Yi___,lk / }iiiiil ヘ __,,,,,,___/ `x'"^ ,,,,, \
^ ̄⌒ヽ ヘ、 ,ノiiiii|、__,,,y,,_,,,/ ヽ、 ,/ ,,,-‐‐ `',, ヘ,、
,,,_ \ ヽ `>- liiiiiiil ¬">-- ヽ ヽ i i/ _,, / } i
"- ,, } / /iiiiiiil / l l l lK ^~' / |
\ーヾ /iiiiiiiil / i i | |i`'ヽーミ_/ /
_____
/ \
/ ⌒ ⌒\ …そういえば、元々和尚は
/ ( ・ ) ( ・ )\ 黙って入寂する筈だって話だったおね。
| __) |
\ l_ /
/ ‐' \
626 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:43:39 ID:Mt36Zunw0 [14/18]
/ ̄ ̄\
/ ノ ヽ、.\ そうだ。
| (●)(●) | その上で、和尚が残した例の遺戒も踏まえると、
/ ̄ ̄ ̄ 丶人__). |
/ \ ._|_____ .「お前ら。
, --'、 / `〉 あらゆるものは夢だ、夢。
/ ⌒ ) / / .執着なんてするもんじゃない。
,′ ノ / / だから、俺が死んでも引きずるな」
l T´ .._ ./ r'´ ̄ヽ
ヽ ノ ./丶、 / (  ̄ l という解釈もできるんじゃないか…という訳だ。
`'ー'´ | .`'ー'――┬― --、/ _.ノ
____
/ \
/ ─ ─\ そういえば、遺戒でも散々
/ (●) (●) \ 「自分は一禅僧に過ぎないから、そう扱え」と言ってたおね。
| u (__人__) |
/ ∩ノ ⊃ / 超約すれば、
( \ / _ノ | | 「俺が死んだからって、
.\ “ /__| | いつまでもメソメソするんじゃねーぞお前ら!」という感じかお?
\ /___ /
627 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:44:52 ID:Mt36Zunw0 [15/18]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) ああ、そんな感じだな。
| (__人__) 法を嗣がせる訳ではないが、
| `⌒´ノ .それでも弟子として沢庵なりに指導をし、
| } .今、枕元で最後の言葉を懇願している…。
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) 「仕方ねえな、こいつら」
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ (
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) という、「情」から、
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 師として最後の言葉をかけてやったとしても、
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉| おかしくはないのでは、ということだな。
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
____
/ ⌒ ^\
/ ( ●) (●) だから、「情」という訳かお。
/ ::::::⌒(_人__)⌒ヽ 確かに、その意図があったとするなら…
| |r┬-| | .少しは救われる気がするお。
\ `ー'´ /
628 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/11/03(月) 19:45:48 ID:Mt36Zunw0 [16/18]
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \ まあ、今までの話をまとめると、
(●).(● ) |. 「和尚の最期の境地」としてありそうなものは、
(__人___) .|
'、 | 1 : 一切の執着からの解放
| | . 2 : 己の無力さを振り返った絶望
,. -ーー| /レ、 .3 : 弟子たちへの情
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ この辺りかな。
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ 1と2が矛盾しているようにも見えるが、
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ . これは、あり得そうに思えたものを挙げているせいで起こる
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j .「食い違い」と思ってくれ。
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: /
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: /
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: /
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
____
/_ノ ヽ\
/ ( ●) (●)、 正直、「和尚の最期の境地」なんて、
/::::::::⌒(__人__)⌒\ 正確なところは誰にもわからない訳だし、
| |r┬-| | あくまでこれは、「辞世の偈を元に
>>1が推測したもの」ということで
\ `ー'´ / ご容赦してほしいお。
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ
664 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:02:39 ID:1OnKSoGg0 [4/16]
╋━━━━━━━━━━━━━╋
┃ その4 :.柳生一族と沢庵和尚 ┃
╋━━━━━━━━━━━━━╋
/ ̄ ̄\
/ ─ ─ \
| .(●)(●) | さて、次は少し話題を変えて、
. | (__人__) | 柳生一族と沢庵和尚についての話にしようか。
| `⌒´ | ) ;;;;) ポイントとしては、
. | | .) ;;;;)
. ヽ } /;;/ .・ 柳生一族から見た沢庵和尚
ヽ ノ .l;;,´ ・ 沢庵和尚から見た柳生一族
. / ∩ ノ)━・'
( \ /|_ノ ヽ この2点になるな。
. \ "" /_ノ |
\ /___/
____
/ \
/ _ノ ヽ まあ、その2点なのはいいとして、
/ ( ●) (●)' , -―ーっ 「柳生一族」と言っても、そもそも史実の柳生家で
| (__人__) | ( ゝ彡 ̄ 和尚と絡みがあるのは宗矩と十兵衛くらいじゃないのかお?
\ ` ⌒´ /゙| ̄'|
/⌒丶、 ー‐ ' .|, |
__/ ノ \__ィ ´ー‐イ' | ∫
| | / / r_____ ∬
| | / / |i ┌‐┐
| | ( 〆⌒'――──―r─≒、.((| |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄└‐┘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
665 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:03:24 ID:1OnKSoGg0 [5/16]
/ ̄ ̄\
⌒ ⌒ \
(●)(● ) | まあ、確かに代表格はその二人だが、
(__人___) | .実は宗冬にも色々と教授していたらしい。
| |
| .| いずれ紹介するつもりだが、
ヽ 、 ,イ 宗冬の手による伝書『宗冬兵法聞書』には、
/ヽ,ー- ト、 和尚からの教えが載ってるんだ。
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:....
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
___ '_
/ \
/ ─ ─ \ .お、ホントだお。
/ (●) (●) \ 寛永九年前後の話が中心だから、
.| (__人__) | __ .宗冬がまだ十代の頃の話かお。
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ /
(⌒ / 史料/ 柳生 ./ 結構数も多いし、
i\ \ ,(つ 新陰 / 流 ⊂) .「無心」についての教示が載ってたりと、
| \ y(つ__./,__⊆) 宗冬も相応に和尚と付き合いがあったということかお?
| ヽ_ノ |
| |_
ヽ、___  ̄ ヽ ヽ
と_______ノ_ノ
666 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:06:12 ID:1OnKSoGg0 [6/16]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ ⌒ ⌒ ) ;;;;) そうだな。
| (●)(●) /;;/ そして、寛永九年頃と言えば、
. | (__人__) l;;,´ 和尚が上山から江戸に戻ってきた頃だから、
| `∩_ノ)━・' .まだ十兵衛は柳生庄で蟄居中だ。
. | |_ノ
/ヽ | |_ むしろ、宗冬の方が、十兵衛より先に
| \_/ ノ ヽ 和尚と知己を得ていたと言えるな。
\ /_| |
| \ / _/
____
/ \ …言われてみれば確かにそうだお。
/⌒ ⌒ \
/( ・ ) ( ・ ) \ それを踏まえると、記録はないとはいえ、
| (__ | 当時江戸にいた友矩も、和尚と付き合いがあった可能性が
\ _l / あるかもしれない訳かお。
/ ー \
667 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:07:50 ID:1OnKSoGg0 [7/16]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ (( あと、上の三人だけではなく、
-、 .| (● ) (● ) | ノ' 一番下の六丸もな。
ヤ ', | (___人___) .| ,i'
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::. 和尚が亡くなった正保二年の時点で、
', j / / .| ____/./ もう六丸も数えで11歳なんだぜ?
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 和尚の話も幾らかは理解できる年頃だろう。
l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` {
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
____
/─ ─\ …まあ、六丸の後のことを考えると、
/( ●) (●)\. 和尚から何かしらの教授があってもおかしくはないおね。
/ (__人__) \
| | .なんだかんだで江戸柳生家って
/ ∩ノ ⊃ / .一家揃って和尚と付き合いがありそうだってことかお。
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
668 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:09:46 ID:1OnKSoGg0 [8/16]
/ ̄ ̄\ (
/ _,.ノ `⌒ ノノ
| ( ●)(●)(,ヽ、 (( それについては、見方を変えれば、
.| (___人__) ,r__i____ ノ 「沢庵和尚と関わりがあったのは江戸柳生家のみ」とも言えるな。
| √丶丶丶┬─'"
| | ) j 尾張柳生家の方は、沢庵和尚のこと自体は知っていたようだが、
.人、 ヽ´ / .直接の交流があったことを示す史料は見当たらない。
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r 更に言えば、石舟斎と和尚の関わりについても同様だ。
_, 、 -― ''"::::::::::::\::::::ー-- く / ⌒ヽニ-、
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;|
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;i
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
____
/~~~ \
/ ―~~― \ 石舟斎と和尚の関係については、
/ (●) (●) \ 吉川英治「宮本武蔵」(&「バガボンド」)の影響がありそうだお。
| ( ((__人__)) ) | まあ、面識がある可能性は否定しないけど、おそらくは無い、というところかお。
\ `⌒´ ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ 「そうだな」
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 |
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
669 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:10:31 ID:1OnKSoGg0 [9/16]
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \
| .(●)(●) | で、その上で本題に入るが、
. | (__人__) | まず、「柳生一族から見た沢庵和尚」というのは、
| `⌒´ | ) ;;;;)
. | | .) ;;;;) 1 : 面白いし頼りにもなるが面倒なところもある友人
. ヽ } /;;/ .2 : 頼りになる先生
ヽ ノ .l;;,´
. / ∩ ノ)━・' この辺りといったところか。
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ |
\ /___/
___
/ ヽ、_ \
/(● ) (● ) \ 1は宗矩、2は十兵衛たちから見た和尚といったところかお。
/:::⌒(__人__)⌒::::: \ えらく気安い印象だお。
| l^l^lnー'´ | .仮にも当代随一と称された禅僧なのに。
\ヽ L /
ゝ ノ
/ /
670 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:12:10 ID:1OnKSoGg0 [10/16]
/ ̄ ̄\ まあ、宗矩からすれば
/ ⌒ ⌒ 和尚が大悟する前からの付き合いだし、
| ( ー)(●) 十兵衛たちから見ても、東海寺ができるまでの間、
. | (__人__) .2年以上、屋敷で同居していた人だからな。
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ
.l^l^ln } `‐= ) 実際、『昔飛衛という者あり』を、
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;) 最初、宗矩に焼き捨てるように言われた際、
ゝ ノ ノ .) ;;;;) 十兵衛は真っ先に和尚に相談しに行ったりしてるし、
/ / \ ./;;/ かなり気安い関係だったのは間違いないだろう。
/ / \ .l;;,´
. / / |ヽ、二⌒)━・'
ヽ__ノ
____
/_ノ ヽ\ 十兵衛や宗冬からすれば、
/ ( ●) (●)、 一緒に住んでて、困ったことがあったら助けてくれる
/::::::::⌒(__人__)⌒\ 頼りになる先生、ってとこかお。
| |r┬-| |
\ `ー'´ / …なんだか藤子作品の
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ 「不思議な同居人」みたいだお。
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ
671 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:13:26 ID:1OnKSoGg0 [11/16]
/ ̄ ̄\
/ .⌒ ⌒
| (● )(●) ノ' そして、「和尚から見た柳生一族」は、
| (___人__) rニi ,i'
| ` ⌒´ノ .| レ..;::. 1 : 厄介事を頼んでくることもあるが頼りにもなる友人
| |_,-‐、l// 2 : 色々手間の掛かる小僧っ子ども
人、 厂丶,丶, v´j
_,/( ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ __ノ こんなところだな。
_, 、 -― ''"::::::::::::\:::::::::::::::::::::( <"ニ‐-、 1は宗矩、2は十兵衛たちへの評価ってところだ。
/:::::::::::::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r /⌒ヽ;;:::::: ) .本編でも紹介してる通り、和尚も歯に衣着せぬ物言いをしてるし、
丿::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;V/..... ̄ ',;;:::| .気の置けない間柄という認識だっただろうな。
i ;;::::::::::::::::::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;〈 ;;;;:::::::::::... ',;;i
/ ;;;;:::::::::::::::::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::\::::;;;;;;;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
____
/ \ 柳生家から見た評価の向きを
/ ─ ─\ そのまま戻したような感じだお。
/ (●) (●) \
| (__人__) | 「そうだな。
/ ∩ノ ⊃ // ∩ノ ⊃ 概ね、それで合ってると思う」
( \ / _ノ \/ _ノ
.\ “ / . \ “ /
\ / /\/
\ \
\ \ \
> > >
/ / /
672 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:14:51 ID:1OnKSoGg0 [12/16]
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \ ただ、そういう付き合いとは別に、
(●).(● ) |. .柳生家からすれば、和尚の深い知見は、
(__人___) .| .自家の兵法の完成度を高めるために必須だったし、
'、 | .和尚の幅広い交友関係は、友誼を結ぶに損の無いものだった。
| |
,. -ーー| /レ、 柳生一族にとって、沢庵和尚との付き合いは、
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._ .損得に基づいた面もあったという訳だ。
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: /
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: /
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: /
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
____
/ _ノ ヽ_\ まあ、その点では、和尚にとっても、将軍家側近である宗矩との縁は
. / (ー) (ー)\ 大徳寺寺法の復旧を目指すために必要だったから、お互い様と言えるお。
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \ .実際、宗矩経由で家光への取り成しを頼んでる記述もあるし。
ヽ L |r┬-| |
ゝ ノ `ー‐' / 私人としてではなく、「柳生家当主」と「大徳寺長老」としての付き合いも
/ / \ 宗矩と和尚の間にはあった、ということだおね。
/ / \ お互い、立場のある身だから当然だけど。
. / / -一'''''''ー-、.
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
673 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:17:48 ID:1OnKSoGg0 [13/16]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ\ ) ;;;;) お互いの付き合いがなければ、
| ( ─) (─)/;;/ 家伝書の内容は今と違うものになっていた可能性があるし、
. | (__人__) l;;, 大徳寺の法も旧に復せずに終わったかもしれない。
| ∩ ノ)━・'
. | / ノ´ } つまり、互いの目的を達成するという点において、
. ヽ / / } 柳生家と和尚は「WIN-WIN」の関係だった、とも言えるな。
ヽ/ / ノ
/ ヽ
-―─- 、
/ \
′ ⌒ ⌒ , そういうことだおね。
i ( ●) (― ) i 尤も、これは宗矩と和尚の両方に言えることだけど、
| (__人__) | そういう付き合いの中で、
、 ノ
⊂⌒ヽ > <_/⌒つ 「まさか、こいつとこんな付き合いをすることになるとはなぁ…」
\ 丶′ 7
\ ノ ト、_/ という感慨もあったとは思うお?
. ′ |
. i |
乂 イ
| /ー―一 、 |
し′ 、_j
674 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2014/12/21(日) 23:18:46 ID:1OnKSoGg0 [14/16]
/ ̄ ̄ \ -、_
_,ノ ヽ、__ / / ,〉、
(⌒)(⌒ )/ ´/ /) まあ、それはそうだな。
(__人_) { , ' ´,/ 二人が知り合ったのは、おそらく関が原以前の大徳寺だから、
'、`⌒ ´ V __, <´ 宗矩は家康に召抱えられたばかりの二百石の軽輩、
| 〈´/::::Λ 和尚も出石の宗鏡寺から京に上がってきたばかりの修行中の身だ。
| ヤ::::::::::::::Λ
`ュ`ー─ー V::::::::::::::Λ まさか、後にどちらも当代随一の評価を得て、
/ム _ , -./V::::::::::::::Λ、 将軍家の側近になるような相手とは思わなかっただろうな。
_,. -/:/===/´..::/i:::::::::::::::::::Vヘ. .お互い、昔を思い出して苦笑しあったりしていたかもしれんな。
//./.::::{ | :::::/::::i::::::::::::::::::.∨}
j ::::::::>.:::::::l |::::::::::::::i::::::::::::::::::::レ;
i :::r :〈 ::::::::i |::::::::::::::::〉、:::::::::::::::::ノ
i :::| :::::'., ::::i {:::::::::::::::::::::`::-==::イ
| :::| ::::::::',::::i ',:::::::::::::::::::::::::::::::::::/
___
/_ノ '' 'ー\ それを踏まえると、柳生家と沢庵和尚の関係の根本にあったのは、
/ ( ⌒) ( ⌒)\ やはり、「宗矩と和尚の個人的な友情」だった、というとこかお。
/ :::::⌒(__人__)⌒::::\
| `'ーnl^l^l | 「だな」
\ l っ/
( ゝ
i \
688 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:02:44 ID:deI0NRiw0 [3/27]
╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋
┃. その5 : 和尚の評価-禅僧・沢庵 .┃
╋━━━━━━━━━━━━━━━━╋
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒ \ _,, さて、柳生家と和尚の関わりについての話も済んだし、
.| (●) (●) .| l;l いよいよ最後の話として、
. | (__人__) .| _,_,|,|_,
| `⌒´ |, ト-=y 丶 「歴史上の人物としての沢庵和尚の評価」
. | } ヽ `i, ̄‐^l
. ヽ } ヾ~ ` i, .について進めようか。
ヽ ノ _ ヽ、 ;i,
,,_,i y,ソト,,__ ヽ、 ;i,
,/r-'"j / / ii, `ヽ、-x,,゜r ;i
,,/'/__.L、 /ヾ、"i `ヽ `;i i,
,/ /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i `、'i iヽ、
_,) ヽ " ネメ、_ii"~ _Yri l, ヽ、
_,,,>t 、ヾ、 ゞ;;/ / ,¬ V⌒l
,y`;,,__ ,i /ii' / r-/| l l
_/^,,, ヘ l /iil / l"v' y } l
v=4⌒ヽ、 j --,,,if /iii| ,, 〈-ヘ_,、 <、 / i|
ヽ, ,, i、 _,,tv /iiiii ム、 / / ヽ、ヽ、_x--ー‐- 、
__,,,l ii Yi___,lk / }iiiiil ヘ __,,,,,,___/ `x'"^ ,,,,, \
^ ̄⌒ヽ ヘ、 ,ノiiiii|、__,,,y,,_,,,/ ヽ、 ,/ ,,,-‐‐ `',, ヘ,、
,,,_ \ ヽ `>- liiiiiiil ¬">-- ヽ ヽ i i/ _,, / } i
"- ,, } / /iiiiiiil / l l l lK ^~' / |
\ーヾ /iiiiiiiil / i i | |i`'ヽーミ_/ /
歴史上の人物としての沢庵和尚の評価…。
_____
/ ─ ─\ 【江戸時代初期、幕府の法度に敢然と立ち向かい、
/ (●) (●)\ 遂には将軍の帰依を受け、寺法復旧を勝ち取った名僧】
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \
ヽ L |r┬-| | .【禅の視点から兵法を説いたことで、
ゝ ノ `ー‐' / ”剣禅一致”の概念を生み出した傑僧】
/ / \
/ / \ パッと思いつくとすればこんな所かお?
. / / -一'''''''ー-、. あと、逸話レベルでいいなら「沢庵漬けの発明者」とか。
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
689 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:03:04 ID:deI0NRiw0 [4/27]
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒ \ そうだな。
| .(●)(●) | 和尚が紹介される場合、大体はその辺りになる。
. | (__人__) | 少し変えて、人物評的な所で言うと、
| `⌒´ | ) ;;;;)
. | | .) ;;;;) 【厳しい修行の末、融通無碍の境地に達した孤高の僧】
. ヽ } /;;/
ヽ ノ .l;;,´ 【名声や富を寄せ付けず、
. / ∩ ノ)━・' あくまで一禅僧として生きようとした清貧の僧】
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ | というところだな。
\ /___/
____
/_ノ ヽ\
/ ( ●) (●)、 今までの本スレで紹介した通りだお。
/::::::::⌒(__人__)⌒\ 特に付け加えることはないおね。
| |r┬-| |
\ `ー'´ /
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ
690 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:03:51 ID:deI0NRiw0 [5/27]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●) だがな…「歴史の流れ」を踏まえた上で評価すると、
| (__人__) また別の見方もできるんじゃないかと思うんだ。
.| .`⌒´ノ
| ,.<))/´二⊃
ヽ / / '‐、ニ⊃
ヽ、l ´ヽ〉
,-/ __人〉
/ ./. / \
| / / i \
|" / | > )
ヽ/ とヽ /
| そ ノ
_____ ━┓
/ ― \ ┏┛
/ノ ( ●) \ ・ 「歴史の流れ」…かお?
. | ( ●) ⌒) |
. | (__ノ ̄ /
. | /
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
691 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:04:09 ID:deI0NRiw0 [6/27]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ ヽ、_
| ( ●) (●) ああ。
| (___人__) まず、和尚が生きた時代は、丁度中世と近世の境い目であり、
.| ` ⌒´ノ それは日本の仏教史においても、大きな変革点となる時だった。
| |
.|、 _r十、 中世において、世俗権力とは異なる独自の権力・権威を持っていた仏教は、
[::.ヽ、 __rく_} _i .} .しかし、近世に入り、江戸幕府という世俗権力の支配体制下に組み込まれていった。
_, 、-一 :::"\ :::::::::} _i _l _i .} これは既に話したことだから、わかるな?
/ .:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::} _l i_ i. {:.. ヽ__
/ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::} _jノ`~゛ t:::::/:::::..\ __
.i :::::::::::::::::、.::::::::::::::::::::::::::::} ゙i -‐.i.,-‐、::::::::::::::.. \_
i ::::::::::::::::::: i:::::::::::::::::::::::::::i ヽ ⌒,; ‐'::::::::::::::::::::::::.. `::...、
l ::::::::::::j:::::: i:::::::::::::::::::::_ノソ } /:::i:::::/::/::::::::::::::::::::::.. `ヽ
l ::::::::/::::::::::::::::::::::::::/.:::゙i::\__ rl ´::::: i::´::::::::::::::::::::::::::/::::::::: l
l :::::/::::::::::::ソ:::::::,/::::::::::::::::::::ー,´:::::::: l>ーーー-、r-‐:'::::´::::::: l
____
/ \
/ ─ ─\ 「寺院諸法度」に象徴される
/ (●) (●) \ 幕府による寺社の統制ということだお。
| (__人__) | .まあ、それに対して立ち上がったのが、
./ ∩ノ ⊃ / .沢庵和尚なんだから、そりゃわかるお。
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
692 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:04:37 ID:deI0NRiw0 [7/27]
/ ̄ ̄\
rヽ / ノ \ \
i ! | (●)(●) | そうだ。
r;r‐r/ | | (__人__) | そして、その点で言えば、
〈_L (`ヽ .} | `⌒´ ノ 沢庵和尚は旧来の仏教の側に立って、
l` ( ``/ . | } 「変革を拒んだ人物」とも言えるんだな。
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ィ ヽ
____ て
/ u \ そ
/ \ /\ そ、そう言われてみれば…確かに。
/ (○) (○). \
| u (__人__) |
\ `⌒´ /
693 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:05:21 ID:deI0NRiw0 [8/27]
___
/ \
/ u .\ 「剣禅一致」の概念を作り出した一人だから、、
/ ノ ヽ、_ \ なんとなく革新的な人物、という印象があったけど、
| ( ●) (● ). | 確かに、僧として見た場合、和尚は一貫して「旧来の仏教」の側に立ってたお…。
\ l^l^ln__人__) /
/ヽ L⌒ ´
ゝ ノ
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、_ \ 武道史上においては、
(●)(● ) | 大きな変革となった「剣禅一致」の概念も、
(__人___) | 和尚からすれば、あくまで、宗矩に請われて
| u | 「禅的な面から兵法を説いた」ものに過ぎないからな。
| .|
ヽ 、 ,イ 和尚自身の禅は、これによって
/ヽ,ー- ト、 特に変わってないんだから、
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__ 禅僧としての和尚のスタンスに
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.... 「剣禅一致」は殆ど影響して無いんだよ。
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
694 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:06:00 ID:deI0NRiw0 [9/27]
/ ̄ ̄\
/ __,ノ ヽ、_ ただ、念のために言っておくが、
| (● ) (● ) 従来の仏教を守ろうとした側…敢えて「守旧派」と言うが、
| (___人__)i 彼らを「発展」を拒んだと批判するのは筋違いだ。
| ノ
| | それは、現代までの歴史を知っていて、
人、 | 現代の仏教のあり方にどちらかといえば肯定的であった場合、
_,/(:::::ヽ、 __ ,_ ノ 成り立つ話であって、当時、生きていた人物にとっては、
_, 、 -― ''"...:::::::\ ::::::::::::::::::7、 先がどうなるかわからない変革…むしろ、
/.;;;;;::゙:':、::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..-、_ 既存の体制を覆すような幕府のやり方に、
丿;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::゙'ー、 反発を覚える方が多かった、と見るのが妥当だろう。
r ;;;;;;;;;;;;;;;;:::::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |:: !
/ ,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i:: | その意味では、和尚は、「孤高の僧」というより、
/ ,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |:: i 「当時の仏教界における多数派の代弁者」だったとも言えるな。
/ ,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:'''丿;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l:: !
___
/)/ノ ' ヽ、\ でも、崇伝や天海なんかは、幕府寄りのスタンスを取ってたし、
/ .イ '(●) .(●)\ 和尚のいた大徳寺でも、幕府に従った方がいいとする派閥もあった筈だお?
. /,'才.ミ). (__人__) \
. | ≧シ' ´ ⌒` | その辺りはどうなるお?
. \ ヽ /
695 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:06:31 ID:deI0NRiw0 [10/27]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ そりゃお前、「理想と現実は一致するとは限らない」ってだけの話だよ。
| ( -)(-) 例えば、俺たちだって税金なんか上がってほしくないけど、
.| (__人__)_ 現実問題、税率が上がったなら、おとなしく払うしかないだろ?
| `⌒´. ̄
.| ノ 前にも書いたが、本音では幾ら嫌だろうが、力関係では
ヽ .,ノ )/´二⊃ 幕府が圧倒的に上だから、寺社も従わざるを得ないって話さ。
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ .かつては、これを跳ね返せるだけの武力や経済力が寺社にもあったが、
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ 戦国時代を経て、そういう力はほぼ奪われてしまったからな。
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ .抵抗の仕様も無い訳だ。
.\ / / { /
____ あー、そういうことかお…。
. '" U `丶、 どうせ逆らっても無駄なら、おとなしく従って、
/ \ \ 少しでもマシな条件を得ようとしたor痛い目を見るのを避けた、と。
/ `¨″ `'ー'" ̄`
{ 三三 三三 } 「まあ、そうだな。
'. J / あと、崇伝や天海については、仏教勢力内の政治闘争で、
\ u ゙'ー'^'ー'゙ / .幕府の力を後ろ盾にするために協力した、という面もあるな」
`¨7  ̄ ‘,
/ ‘, …生臭い話だお。
696 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:07:51 ID:deI0NRiw0 [11/27]
/ ̄ ̄\ そして、その結果、
/ _ノ \ 日本における仏教は、世俗権力の体制化に組み込まれ、
|:::::: (● ) ) 従来の独立性を失った。
. |::::::::::: (__人)
|:::::::::::::: `⌒´ノ ....,:::´, . 和尚のやった大徳寺寺法の旧復にしたところで、
. |:::::::::::::: } ....:::,, .. 「幕府の許容範囲で」という大枠があってのものだし、
. ヽ:::::::::::::: } ,):::::::ノ . 和尚の死後、19年後の寛文五年(1665)には「諸宗寺院法度」が出され、
ヽ:::::::::: ノ (:::::ソ: . .幕府による宗教統制は、より強固なものになったしな。
/:::::::::::: く ,ふ´..
|:::::::::::::::: \ ノ::ノ その意味では、和尚の行動は、あくまで「抵抗」に過ぎず、
|:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´ 大勢を覆すことはできなかった、と言える。
_-─―─- 、._
,-"´ \ つまり、歴史の流れを踏まえた上で言えば、
/ ヽ 沢庵和尚は「敗者」だった、という訳かお…。
/ _/::::::\_ヽ
| :::::::::::::: ヽ 「まあ、和尚一人に責があるわけでも無いし、
l u ( ●)::::::::::( ●) .そもそも勝ち負けを言うような話ではないのだが、
` 、 (__人_) / ”代弁者”として矢面に立っている分、
`ー,、_ / そう見なされる部分はあるかもしれんな」
/ `''ー─‐─''"´\
697 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:08:20 ID:deI0NRiw0 [12/27]
/ ̄ ̄\ .中世から近世へと移り変わる江戸初期に於いて、
/ \ 仏教に限らず、様々な分野で変遷が起こった。
|:::::: | その中には、兵法だって含まれる。
. |::::::::::: |
|:::::::::::::: | ....,:::´, そんな中、宗矩は、和尚の助力を得て、
. |:::::::::::::: } ....:::,, .. .近世に対応した兵法思想の確立に成功したが、
. ヽ:::::::::::::: } ,):::::::ノ . 和尚自身は仏教において、近世への対応を目指すのではなく、
ヽ:::::::::: ノ (:::::ソ: . あくまで変革を拒み、結果として敗れた、というのは、
/:::::::::::: く ,ふ´.. .ある種、皮肉めいたものがあるな。
-―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ――
|:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´
____
/ \
/ \ …鏡に映った姿のようだおね。
/ \
| \ ,_ | その意味では、和尚は、
/ u ∩ノ ⊃―)/ もう一つの宗矩のあり得た姿なのかもしれんお。
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
698 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:09:04 ID:deI0NRiw0 [13/27]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ (( まあ、その辺りについては、【その1】【その2】で書いた通りで、
-、 .| (● ) (● ) | ノ' 結果として、当時の仏教界に失望した和尚は、
ヤ ', | (___人___) .| ,i' .宗門や法統などを振り捨て、自分の禅を第一にするようになる。
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::. 正保二年四月に小出吉英に宛てた手紙の通り、
', j / / .| ____/./
.ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 「一分心をすまして、物の本のきれをものぞきて居らるるが、
l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` { 自分の利益たるべく候由申す儀に候」
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\ というわけだ。
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
____
/_ノ ヽ、\
/( ●) (●).\ うーん…気持ちはわからなくも無いけど、
/ (__人__) u. \ 一人の僧としてはともかく、大徳寺長老の座に位置する師僧…、
|ni 7 ` ⌒´ . |n 人の上に立ち、教え導く立場の身として見た場合、
l^l | | l ,/) U l^l.| | /) . 和尚のスタンスは決して褒められたものじゃないと思うお。
', U ! レ' / . . | U レ'//)
{ 〈 ノ / 「実際、説得や批判もされてるしな。
..i, ."⊃ rニ / 問題がなければ、そんなものは起きない訳だし」
."'""⌒´ `''""''''
699 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:09:44 ID:deI0NRiw0 [14/27]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ー)(●)
. | (__人__) ただ、この辺りについて調べてみたところ、
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ どうも和尚のスタンスには、理想…とまでいかなくとも、
.l^l^ln } `‐= ) 参考にしていた人物がいるんじゃないかって気がするんだよな。
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;)
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/
/ / \ .l;;,´
. / / |ヽ、二⌒)━・'
ヽ__ノ
_____
/ ― \
/ノ ( ●) \ 和尚が参考にした人物?
. | ( ●) ⌒) |
. | (__ノ ̄ / …誰だお?
. | /
\_ ⊂ヽ∩\ 「それはな──」
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
700 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:13:53 ID:deI0NRiw0 [15/27]
.ィ .ィ
!、 / ! //
,ィ ! '., / !/ /
i:::,.-ァ マ .、! ヾ´./ / . ィ
i/:::;'.,.-ァ ヾ .ィ i、 / ''´/
{:ソ::::レ:::;',.--、 ィチゞiソムミ.、'. /
ヾ::::::::::::r "´ 、___ {:::::/ ィュミァヾミij_.::} 吾輩は一介の僧であーーーるっ!!
';:::::::::' __,.イ/i ヾ::::| _`_ !、`{:::/!
}::::::::!. ''  ̄  ̄ `ヽマ! {,ニ) ル' |::/ !
,r ー‐.、ー .、 ハ `¨ ..イ! レ' ! ∧ .ィ
/ ', ;:.ヽ. / 三´_ ', / /≧、`ヾi
.j、______ ,.イ´:.:.:.:.ゝ. __ノ `゙ヾ´ } \
ハ:::::' ,}:.:.:.:.:.:.:.ヾ{ '; .:ゝ=ー ´
{:::::::' __,.イ:.:.:.:.:.:.:.:/ ヽ ! ヾ}ト、 ,.-
!:::::' ̄ ,}::.:.:.:.:.:./ ゝ . __. ィ个ー- イ:.:.:.} rァ', ヽ
i::::' __,.イ:.:.:.:./  ̄ ̄ ヘ .ヘ i:.:.:.:'ァー,-- ァ=-., _,.ィ <、r .}
';::' ̄ ノ:.:/ ヽ ,.ィヾ´ `ヾ/ ` ハ:.:.:/ ; ' { { ヽ イ
ヾ、r ´  ̄ \ >ゞ´ マ ! {:.:.:.{. ! { ヽ ゝ ´
`マミ:.、 } | ,! ̄ ゝ--`― '' ´
ノ ≧ヾ::.、 ! ! /ハ
/三三ミ:.、  ̄`ヾ, -- 、 `ヽ
/ /` トト{{{{{' rャ ィッ )-ァハ ...................................
/ // ,.-=、¨`ヽ mn/ //,ハ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.ムー- ニ二 / ィ/ i{ハ≧三三く{ ヾ、 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
ムー- /:.:.:マ i! __) }トハ ::::::::::::::: :::::::::::::::
} /- ―'' ´:.:.:.:.:.:.マ !! ̄ ̄ } 八 ', ::::::::::::::: 一休宗純… :::::::::::::::
ハ/.:.:.:.:.:i!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..} !| ! -―={ ´::.:.:ヽ.',::::::::::::::: :::::::::::::::
/.:.:.:.:.:.:.:.:.!i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| | ヽ.  ̄} !:.:.:.:.:.:.:', ::::::::::::::: いわゆる「一休さん」だよ。 :::::::::::::::
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:!i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! i. !ヽ. i !:.:.:.:.:.:.:.', ::::::::::::::: :::::::::::::::
,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| | ';:::\ リ:||:.:.:.:.:.:.:.:', ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! i }:::::::`¨´::::||:.:.:.:.:.:.:ィ!:i ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| | .!:::::::::::::::::::||:.:.:.:.:./ }:.:! ...................................
./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!ト、.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! i ';:::::::::::::::::::!i:.:.:.:./ /:.:.|
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!i゙''、\.:.:.:.:.:.:.:.:; ,' .}::::::::::::::::::||:.//.!.:.:!
一休宗純
(いっきゅう そうじゅん)
701 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:14:24 ID:deI0NRiw0 [16/27]
____
/ _ノ \
/ ( ●)}|)_ えー!?
/ :::::⌒ (_ノ、) 一休って…あの一休さんかお!?
| u. |┬‐'
| |_|___
\ `ー‐'ノ
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \ そうだよ。
(●).(● ) |. 時代は違えど、一休和尚も大徳寺の長老だぜ?
(__人___) .| .沢庵和尚からすれば、先達にあたる人物だ。
'、 |
| | 関わりで言えば、元和四年から一年ほど、
,. -ーー| /レ、 一休和尚が再建した山城の妙勝寺(俗に言う一休寺)に滞在したり、
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._ 寛永十九年の日蓮宗と浄土宗の宗論判定の際に説いた、
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ 「分けのぼる 麓の道はかはれども 同じ雲居の月を見るかな」
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j って言葉があるけど、あれも一休和尚の言葉が元になってるからな。
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: /
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: / (※「わけのほる ふもとの道はおほけれと おなし高ねの月をこそみれ」
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: / ⇒一休の著作『骸骨』に収録)
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
702 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:14:52 ID:deI0NRiw0 [17/27]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ `⌒ .禅風そのものは違うが、
| (● )(●) ノ' 世間から高く評価されつつも、一定の距離を置き、
| (___人__) rニi ,i' 印可や法嗣を否定しつつも、後世に教えを遺した一休和尚の姿は
| ` ⌒´ノ .| レ..;::. 沢庵和尚にとっても参考になったんじゃないかと思う。
| |_,-‐、l//
人、 厂丶,丶, v´j 和尚は諡号を受けるな、年譜を書くなと言ったが、
_,/( ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ __ノ 既に書いた著作については、特に破棄を指示していない。
_, 、 -― ''"::::::::::::\:::::::::::::::::::::( <"ニ‐-、 栄誉はいらぬし、自身の後継などにも頓着しないが、
/:::::::::::::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r /⌒ヽ;;:::::: ) 仏法は別、といったところか。
丿::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;V/..... ̄ ',;;:::|
i ;;::::::::::::::::::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;〈 ;;;;:::::::::::... ',;;i 実際、和尚の著作って結構多いからな。
/ ;;;;:::::::::::::::::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::\::::;;;;;;;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
∩_
〈〈〈 ヽ
____ 〈⊃ }
/⌒ ⌒\ | | つまり、法統や年譜による記録に頼ること無く、
/( ●) (●)\ ! ! 説いた教えが真の仏法に適うなら、それは残る筈だとして、
/ :::::⌒(__人__)⌒:::::\| l 己の禅の是非をそこに問うた、といったところかお?
| |r┬-| | /
\ ` ー'´ // 「そうだな。
/ __ / 尤も、その辺りはあくまで
>>1の私見だが」
(___) /
703 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:15:17 ID:deI0NRiw0 [18/27]
___
,,.-''"´ ` .、
/ ヽ
./ ',
l l その点で言えば、
/ l 400年経った今も残る和尚の声望を見れば、
〈`ヽ、 | 和尚の禅は是とされたと考えていいんじゃないかな。
|ミ=-  ̄ ̄`ヽ /
l ミ=-‐ .′ 尤も、宗矩個人に説いた筈の
l/ ヽ ,' 「不動智神妙録」が代表的な教えとして知られるとは
( __ 人 ) { 流石の和尚も想像してなかったかもしれんが。
/ // )ニ=''´ ./ .|
ツ二二二/ ./__ ./ |
/ / /''"__,ノ ′ .|
/ / / /,.-''")_ _,,-''´ / ヽ__
,' /'´,,..-''´| / _ \/`ヽ、
_ ´l / ./ | ´ / / \
,,..-''" | .l ./ / イ / / \
____
/ \ あれ、思いっきり宗矩個人宛だおよね。
. / \ 最後とか完全に私信だし…「教え」に含めていいのかお?
. / /) ノ ' ヽ、 \
| / .イ '=・= =・= u| .「まあ、”日用禅”を説いた和尚からすれば、
/,'才.ミ) (__人__) / あれも教えであることは違いないから、別に問題は無いんだがな」
. | ≧シ' ` ⌒´ \
/\ ヽ ヽ
704 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:15:46 ID:deI0NRiw0 [19/27]
/ ̄ ̄\ まあ、「和尚の評価」についての話は、
/ _ノ \ 大体こんなところか。
| ( ー)(ー)
. | (__人__) ・ 幕府に抗った気骨の禅僧
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ ・ 剣禅一致を説いた傑僧
.l^l^ln } `‐= )
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;) という一般的な評価の裏に、
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/ ・ 歴史における「敗者」
/ / \ .l;;,´
. / / |ヽ、二⌒)━・' .という面もあった、というところだな。
ヽ__ノ
____
/ \ 「時代の変革に立ち向かったが、敗れ去った無念の人」
/ u ノ \
/ u (●) \ というところかお。
| (__人__)| 世間的には将軍家の帰依まで受けて、
\ u .` ⌒/ 国師号の話もあった程なのに、和尚自身の認識では、
ノ \ 「一番守りたかったものを守れなかった」ということだおね…。
/´ ヽ
705 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:16:01 ID:deI0NRiw0 [20/27]
/ ̄ ̄\ 主観と客観で、
/ \ 「成功」の基準が違うのはよくあることさ。
|:::::: | .外から見れば成功者に見える和尚の地位も、
. |::::::::::: | ..本人の認識からすれば、
|:::::::::::::: | ....,:::´, .
. |:::::::::::::: } ....:::,, .. 「余計な名声ばかり上がるくせに、
. ヽ:::::::::::::: } ,):::::::ノ . ..肝心の仏法(の独立性)を守りきれなかった」
ヽ:::::::::: ノ (:::::ソ: .
/:::::::::::: く ,ふ´.. という絶望の檻だったと言える。
-―――――|:::::::::::::::: \ -―,――ノ::ノ―― だからこそ、法統の断絶や、
|:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´ あの最後の遺戒の境地に至ったんだろうな…。
____
/ \
/ _ノ ヽへ\
/ ( ―) (―) ヽ …………。
.l .u ⌒(__人__)⌒ |
\ ` ⌒r'.二ヽ<
/ i^Y゙ r─ ゝ、
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、|
{ { \`7ー┘!
706 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:16:47 ID:deI0NRiw0 [21/27]
╋━━━━━╋
┃ .最後に. ┃
╋━━━━━╋
さて、随分長く掛かってしまったが、
それじゃあ最後にまとめと行こうか。 ■ 沢庵和尚の評価 ■
| 【仏教の面から】
/ ̄ ̄\ ⇒ 仏教が世俗権力の下に組み込まれたようとした時、
/ _ノ \. 正面から抗った気骨の僧。
| ( ●)(●)
. | ⌒(__人__) 【武道の面から】
| `⌒´ノ ⇒ 「剣禅一致」を説き、兵法に新たな道を開いた人。
. | }. 。
. ヽ } / 【柳生家から見て】
ヽ ノ ./ ⇒ 友であり、師でもある近しい人物。
/ lヽ介/lヽ、 ,rE)
. | | ~ヾ/~ |. ソ◇' 【本人の内面(※推測)】
| | ゚| |\/ ⇒ 晩年の失望の中、一縷の望みをかけた無念の人。
_ | | ゚| |______E[]ヨ____________________________
|\  ̄ヽ⌒ヽ⌒ヽ \
|\\ ⌒ ⌒ 甘 \
| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
/ ̄ ̄ ̄\
/ / \ \ .今更ながら、柳生家と縁の深いお人だったおね。
/ (●) (●) \ 沢庵和尚がいなかったら、どうなっていたのかお…?
| (__人__) |
\ `⌒´ /
/ \
707 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:17:19 ID:deI0NRiw0 [22/27]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●) …まず、柳生家の歴史は変わっていただろうな。
| (__人__) それに、武道思想の面で見ても、和尚の教示がなければ、
| `⌒´ノ 今あるものとはまた違ったものになっていた可能性が高い。
| ,.<))/´二⊃ 「剣禅一致」なんて言葉も生まれなかったかもしれん。
ヽ / / '‐、ニ⊃
ヽ、l ´ヽ〉 反面、和尚本来の領分である仏教の面においては、
,-/ __人〉 若干の差異はあっても、大きな違いはなかっただろうな。
/ ./. / \ .その辺りは既に話した通りだ。
| / / i \
|" / | > )
ヽ/ とヽ /
| そ ノ
____
/ \
/ \ …なんか本業に満足できてないのに、
/ U _ノ ヽ_ \ 他人の手伝いでやった副業が大当たりして、
| (一)|lil|(ー) | そっちの評価の方が高い、みたいな感じだお。
/ ∩ノ ⊃_) /
( \ / _ノ | | こんなこと言ったら怒られるかもしれないけど。
.\ “ /__| |
\ /___ /
708 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:17:41 ID:deI0NRiw0 [23/27]
___
/:::::::::::::::::ヽ ____
/ :::::::::./ ̄ ̄ \____ ,. --ー.....:::::::::::::::::::.. \ …さあ、どうだろうな。
/ :::::::::: ⌒´ ヽ、,_ \:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: i
.| :::::::::::(⌒).(⌒ ) |::::::::::::::::::γ:::::::::::::::::::: ノ 和尚のことだから、
| ::::::::::::(__人___) |:::::::,. -ーy::::::::::::::::::::: / 即座に機転の利いた返しをして、
| :::::::::::/::'、 | ̄ _/::::::::::::::::::::: / .こちらをギャフンと言わせるかも知れないぜ?
.| :::::::/::::: | | /...::::::::::::::::::::: /
| :::::::::::::/| /レ-,.イ:::::/:::::::::::::::::: / なんせ、「伶牙利舌漢」と言われた和尚だからな。
i:/:::::::::::: ヽ__、____,. "//::ノ.:::::/:::::::::::::::: j 歴史上の評価がどうだろうが、
r:::::::::::::::::::「二二二 ::::::::::/::::::ノ::: 、:::: // 俺たちみたいな凡骨が及ぶような人じゃないのは確かだろ。
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::r
____
/ \
. / \
. / /) ノ ' ヽ、 \ …違いないお。
| / .イ '(⌒) (⌒) u|
. /,'才.ミ). (__人__) /
. | ≧シ' ` ⌒´ \
/\ ヽ ヽ
709 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:18:06 ID:deI0NRiw0 [24/27]
…まあ、和尚についての補足はこんなところだな。
去年の10月に始めて、今まで掛かるとは
>>1も想定してなかったが、
とにかくまとまってやれやれだ。
沢庵和尚の教えについてより知りたい人は、
このスレの中で紹介している「不動智神妙録」や「太阿記」以外にも、
色々な著作があるから、それを追うのもいいかもな。
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ____
| ( ●)(●) /─ ─ .\ 一番まとまってるのは、
. | (__人__) /(●) (●) \ 「沢庵和尚全集」なんだけど、
| ` ⌒´ノ / (__人__) .\ 絶版の上に、古本も結構な値段がするから、
. | } | .`⌒´. | 借りられるなら図書館を探すのがいいと思うお。
ヽ } \ ー― /
ヽ ノ > \ 【沢庵和尚全集】
/ く.[ニニニニニニニニニニニニ`.ニニ´ニニ]ゝ ヽ
ttp://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784820579656 | ヽ、二/ 〈〉 〈〉 ヽ__,ノ l
. | / 〈〉 ヽ |
| / 〈〉 〈〉 〈〉 ヽ /
ヽ、_ヾ-‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐ゞ___/
710 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:18:31 ID:deI0NRiw0 [25/27]
それじゃあ、和尚についての補足はここまでだ。
次は武蔵についての話をするので、
また気長に付き合ってもらえたら嬉しいだろ。
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒ .\ . ____
.. | ( ⌒)(⌒ ) .| / \ 次はなるべく早めに
. . | (__人__) │ / ⌒ ⌒ .\ 終わらせたいと思うお。
| `⌒´ | / (⌒) (⌒) \ 今年もよろしくお願いしますお。
. | | | (__人__) u. .|
. ヽ / \ .`⌒´ /
ヽ / > .く.
/ く.[ニニニニニニニニニニニニ`.ニニ´ニニ]ゝ ヽ
| ヽ、二/ 〈〉 〈〉 ヽ__,ノ l
. | / 〈〉 ヽ |
| / 〈〉 〈〉 〈〉 ヽ /
ヽ、_ヾ-‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐‐--‐ゞ___/
711 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編)[saga] 投稿日:2015/01/12(月) 21:19:27 ID:deI0NRiw0 [26/27]
_.. -ー'''''''―-..,,,
/゛ `゙''ー ..,,,,,,__、 ∧
,i'゙,,....,,,、 ,,,,.\. | ; `、 /
i./ `''、 \ ., ノV `¨¨´{ _,, /
,!l 夢> i'i|.゙l , \ \ ー---‐‐ ー‐ /
l:|.`.゛ ./´゙7i}゙'、 `、\ __) /
!l,,_ l / '´ ...} `、`¨´ /
.',_/ / ! `、 またいつの日か、 {
l ._i、 ,、ヽ !;:;:;ヽ .`、 オレが降臨する時を 二ニ=-
l. i-'" ゙',/ l;:;:;:;:;\ _,,,,.............../ ! } .待つがよいわー!! /
リ',、 .l゙''、|;:;:;:;:;,ノ゙ / .,.‐', l } {
'!|.l. / .゛', ;;l" / ., / l, .',; その時まで、 `、
_,.l,', ;;,'-'./ ゙./ _,,,/ ! ..l / …さらばだー!! .`、
,./ '" ゙''" / , ''"'''"| / .l l .l./ __ `、
i'" ./ ./ / ., '~', .l ! / ;//⌒i _二__ \
_..-'"゙゙フ'./ / ,/ ./', .', .l /;:;:;:/ | /  ̄⌒
/゛ イ゛,/./ ,/ ,,-', .l .', _ '";:;:;:;:;:;:;:;:;| _] -‐==‐- 、 'ハ ;
, ',゛i!〃゛ / ., ''.l ', .l ,,ミ'゙;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:',゙''-// \/ `、{
,..┴-iフ" ./ ._‐{ . ! ', ._ノ'l丶;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;| ´ `''' !./ -',、`′
/ / .// l ', .,ゞ゛ !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ! . ゙'- `'
/ . / .,,/゙l゙ .! .l ._ソ" .l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: !
/ ., ''l'7 ! ヽ,,,,','"| ',;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:}
./ .,-{..,i,' | ′ .l_ !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!
: '.l.,,i'゙.l |i./ .ヽ .',,'',、 .l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:!
..ィ ! ', ',`'、. _,,,',. ゙リ..,,,_ !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
', l l..,ノ'´ `'-、 .,,...../ ゙'イ;:;:;:;:; ゙゙̄''゙‐' ..、;:;:;:;:;:;:;:;!
.l .!/ `'-,, \,ノ゙;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:!
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. ゛―----........,,,,_、 .`゙''''ー-ミ;;ッ、,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.!
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ー''''''''''''―-..,,_ ゙゙゙̄"'''ー ,,, ./゛ `''ー ..,,,_;:;: /
`゙'''‐ ~
【やる夫で学ぶ柳生一族(その67補足):「沢庵和尚についての補足」】 完