304 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:11:21 ID:e4LFvmMs [30/38]
828
┏
――――…一年と、ほんの数カ月。
┛
305 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:11:58 ID:e4LFvmMs [31/38]
829
.l,;;;;;;;;;l;;;;;;;;;l /;;| ┏
l;;;;;;;;;;;i;;;;;;;;;!、 ´ /;;;;l それは、一緒に暮らしていた、年月。
l,;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;',ヽ、 ー , イ;;;;;;| ┛
l;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;', ヽ、 ,/;;;;l;;;;;;;l
ノ,,;;;;;;;;;;;;;;',;;;;;;;', `丶、..., '´;;;;;;;;;;|;;;;;;l
r‐ ''"´ ',;;;;;;',、 、 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;l
ヽ ',;;;;;;;',\\. /、;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;;;;;;;! ┏
/,. -‐‐- 、 ',;;;;;;;', \ヽ、lヽ;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;! 夫婦となり、親となり、家族となって。
`ヽ'、;;;;;;';、 \ ! ヽ;;;;;;;ノ;;;;;/ ┛
┏
―――たった、それだけの時間しか、わしたちは一緒にいなかった。
┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ト、;;;l、;; ト、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;', 「 この子には、強く…何より優しくあってほしいわ。 」
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ト、!-ヽ!ヽl.ヽ;;;;;;;;;,イ/!;;,ィ;;;;;;;;;;;;;;;;;
,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l、;;!ィ ===ミl `i;;;;;/ ナ'l/ノ、/;;;;;;;;;;/
;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;ト、ヾ"" レ' -=、 !;;;;/;;;;/ 「 あなたのような…ね。 」
l;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;| , " ノ//
',;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;;l 、,__ '"/;;|
:;:;:;:;ンヽ',;;;;;;;' ヽ、 ,/ l;;;;;;;l ┏
;:;:;:;/_/_',;;;;;;;', `丶、..., ' ´ |;;;;;;;l 自分の息子に対して、そう願っていた
r‐ ''"´ ',;;;;;;;',、 、 / l;;;;;;;l 妻は、今はいない。
ヽ ',;;;;;;;',\\/、 i;;;;;;;! ┛
/,. -‐‐- 、 ',;;;;;;;', \ヽ、lヽ. l;;;;;;;!
`ヽ'、;;;;;;';、 \ ! ヽ、 ノ;;;;;/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
306 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:12:45 ID:e4LFvmMs [32/38]
830
┏
あの時のわしと、現在のわしでは取り巻く環境、状況。―――すべてが、何もかも違う。
┛
, ,.ノ 、 zzz…
l (= = zzz… ┏
| (__人) 今、わしのもとにはリュカ―――マーサが
ヽ ノ 産んでくれた、たった一人の息子がいる。
/ くつ ┛
| つ
ヽ __ ) ┏
Lノ 元気で、素直な子に育ってくれたと思っている。
┛
┏
この前など、ベビーパンサーをどこからか拾ってきて飼わせてくれと言ってきた。
┛
┏
やはり血は争えないと、いうことなのだろうか。あの後も、マーサは気づけば
みょうちくりんな生き物を連れてきたり、助けたりしていたものだ。
┛
307 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:13:53 ID:e4LFvmMs [33/38]
831
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「奥さまの前では、誰しもが警戒心をほどかされてしまいます…。
そんな、不思議な力のあるお方でした。」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏
そう、先ほどサンチョが言った通り。マーサはどこかそういうところがあった。
┛
┏
説明しえない力……人であろうが動物であろうが、魔物であろうが。
不思議と、逆らえない。警戒心を抱けない。そんなところがあったのだ。
┛
308 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:14:42 ID:e4LFvmMs [34/38]
832
<<サンタローズ村・パパスの家>>
-‐一……ー- 、
,, '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',,
/イ/-、∠/-― 、`ヽ:i }::::::| しかし、驚きましたよあの時は。
/イT o} y T o ̄} l」 |::::::|
l r′  ̄ * 、ー' :::::| 旦那さまが突然、奥さまを連れてこられて……、
r┴―――一'′ ヽ :::::| あの時程、戸惑われている旦那さまのお顔は、
| \| このサンチョ、記憶にございません。
| }
| /′
ヽ_____ '´ /
/`ー――――一'´ /
/ /⌒ヽ. /
┏
一時間ほど、だろうか。わしとサンチョは、ホットワインを片手に、
静かに昔話をした。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ー)(ー) その話はしてくれるな。
. | ; (__人__)
| ` ⌒´ノ わしもあの時は、どうかしていたんだ。
. | nl^l^l
. ヽ | ノ
ヽ ヽ く
/ ヽ \
309 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:15:42 ID:e4LFvmMs [35/38]
833
-‐一……ー- 、
, '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::', なにをおっしゃいますか。
/イ/-、∠/-― 、`ヽ:i }::::::|
/イT o} y T o ̄} l」 |::::::| サンチョは嬉しかったんです。常に長であろうと
l r′  ̄ * 、ー' :::::| されておられた旦那さまは、あのころはいつも
r┴―――一'′ ヽ :::::| 無理をされておられました。
| \|
| } 奥さまがいらしてからですな。旦那さまが柔らかく
| /′ なられたのは。
ヽ_____ '´ /
/`ー――――一'´ / ―――ええ。あれほど、仲良くいらしたのに…。
/ /⌒ヽ. /
┏
薄寒く、静かな夜。
思い出話をするにはちょうど良い夜。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ー)(ー) ………随分と、色々あったものだ。
. | . (__人__)
| ` ⌒´ノ しかし、「その」話はするな。サンチョ。
. | } わしは諦めた気はないし、これからも諦める気はない。
. ヽ }
ヽ ノ
i⌒\ ,__(‐- 、 ―――ベルギースも未だ、手掛かりと思えるものが
l \ 巛ー─;\ ある度に知らせてくれる。ありがたいことだよ。
| `ヽ-‐ーく_)
. | l
310 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:16:36 ID:e4LFvmMs [36/38]
834
-‐一……ー- 、
, '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',
ええ、全くです。申し訳ありません。 /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i }::::::|
/イT o} y T o ̄} l」 |::::::|
……そういえば、旦那さま。 l r′  ̄ 、ー' :::::|
数日前に、ベルギース様からの書状が r┴―――一'′ ヽ :::::|
届いていたようですが…、 | \|
| }
やはり、奥さまの? | /′
ヽ_____ '´ /
/`ー――――一'´ /
/ /⌒ヽ. /
┏
しかし、わしは誰かの思い出話をするのは好きではない。
第一、思い出にするつもりも、ないのだ。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(ー いや…、それが、よく判らんのだよ。
| (__人__)
| ノ 何か頼みごとがあるらしいのだが、書状には
| ∩ ノ ⊃ 細かいことは一切書いていなかった。
/ ./ _ノ
(. \ / ./_ノ │
\ “ /___| |
. \/ ___ /
312 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:17:37 ID:e4LFvmMs [37/38]
835
┏
サンチョがいれてくれた、ワインももう生ぬるく、さめた。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \
. | ( ●)(● ) | ―――あいつには、昔から世話になっている。
. | (__人__) │ 近いうちに、ラインハットに行くことになるだろうな。
| `⌒ ´ |
. | | すまんが、サンチョ。準備を頼めるか?
. ヽ /
ヽ /
> <
| |
はい、判りました>
┏
そろそろ、この昔話も、終わらせるときだろう。
┛
5 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:25:48 ID:e4LFvmMs [3/21]
836
┏
わしは数日もしないうちに、サンタローズから離れたラインハット国に行くことになるだろう。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ すまんな。
| ( ●)(●)
. | (__人__) ―――サンチョ、お前には、本当に…
| ` ⌒´ノ 昔から、世話をかけるな。
. | }
. ヽ }
ヽ ノ ┏
.> < アルカパから帰ってきてやっていた仕事にも、
| | 一区切りがついた。 ┛
| |
-‐一……ー- 、
, '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',
旦那さま、何を言われるのですか。 /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i }::::::|
/イT o} y T o ̄} l」 |::::::|
このサンチョにそんなことをおっしゃいますな。 l r′  ̄ * 、ー' :::::|
r┴―――一'′ ヽ :::::|
| \|
| }
| /′
ヽ_____ '´ /
/`ー――――一'´ /
/ /⌒ヽ. /
┏
もうそろそろ、明日に備えて眠りにつく頃合いだろう。
┛
6 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:26:40 ID:e4LFvmMs [4/21]
837
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) さて…それでは、そろそろ寝ようか。
. | (__人__)
| ` ⌒´ノ 明日も早い。
. | } リュカの相手も…してやりたいしな。
. ヽ }
ヽ ノ
.> <
| |
| |
┏
マグダレーナがアルカパからやってきたころから、リュカは自分を鍛えてくれと言ってきた。
┛
┏
あの優しい子がどうしたものかと思ったが、どうやらわしの手伝いをしたいらしい。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)) あいつは、今はわしの動きを追いかけるだけで
| (__ノ_) 必死だが、不思議なほど銅の剣を使いこなしている。
| `⌒ノ
. | } 不思議だな…。わしは自分で自分を鍛えながら、
. ヽ } そんな自分がどこか好きでは無かったよ。
ヽ ノ
.> < そんなわしが、息子に剣を教えることになろうとはな。
| |
| |
7 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:27:48 ID:e4LFvmMs [5/21]
838
-‐一……ー- 、
, '´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
/::::, -‐ァ:::, -―ァ:::::, -、::::::',
旦那さま…。 /イ/-、∠/-― 、`ヽ:i }::::::|
/イT o} y T o ̄} l」 |::::::|
l r′  ̄ 、ー' :::::|
r┴―――一'′ ヽ :::::|
| \|
| }
| /′
ヽ_____ '´ /
/`ー――――一'´ /
/ /⌒ヽ. /
┏
鍛えながらも、嫌っていた技術。
―――大事なものさえ守れればよいと思っていた、その技術。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 人によっては、滑稽だと笑うかもしれんな。
| ( ー)(ー)
. | (__人__) わしは、好きな女一人守れなかった男だ。
| ` ⌒´ノ ―――そう、一人も、守れなかった男だ。
. | nl^l^l
. ヽ | ノ そんな男が、息子とはいえ…。
ヽ ヽ く 教えることに、なろうとはな。
/ ヽ \
8 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:28:44 ID:e4LFvmMs [6/21]
839
/ ̄ ̄\
/ _⌒ \
| (●)(●) そんな顔をするな、サンチョ。
. | ⌒(__人__) わしは今、悲嘆にくれていたりはしないのだから。
| |r┬| .}
. | ー―' } あいつは優しい子だよ。
. ヽ } 優しいからこそ、強くなりたいと思っている。
ヽ ノ
―――マーサの願った通りの子に、育っているのだから。
┏
息子に体術や剣術を教えるたび、複雑な気分にならないでもない。過去の、自分を思い出すからだ。
┛
┏
だが、それでもわしは嬉しいのだ。日に日に、教えたことを理解していく息子を見るのが。
┛
∧
|.l.|
「 わっ! とうさん、ほんとに 、 ノ |.i.|
もらっていいの!? 」 (● ●宀
*(人__)rE)
ヽ イ |
「 ありがとう! だいじにするね! 」 / ノ
(| |
ゝ l |
`(_ノ
9 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:29:59 ID:e4LFvmMs [7/21]
840
┏
――― 一年と、数か月。たったそれだけしかいられなかった、わしと、マーサ。
┛
┏
それでも、毎日成長していくリュカを見るたびに、わしはマーサの姿を息子の中に見ることができる。
┛
, ,.ノ 、
l (> < 「 わぁい! 」
(^ヽ,,,,(__人)^)
ヽ \ .ノ / 「 プックル、プックル! 」
Y /
| | 「 きょうから、いっしょにくらせるね! 」
| |
し. ⌒J
┏
―――それに気づくたびに、わしは思うのだ。 今度こそ、……遠慮するのはやめよう、と。
┛
10 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:30:45 ID:e4LFvmMs [8/21]
841
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「 マーサ。…その、なんだ。 」
|//// (__人__)
| ノ 「 ―――いや、何でもないんだ…。 」
| ∩ノ ⊃ }
/ヽ / _ノ }
( ヽ / / ノ
ヽ “ /_| |
\__/__ /
┏
あの子が生まれた日に、―――言いたかったのに、言えなかったこと。
┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏
伝えたいのに、伝えられず後悔するよりは…、と思うのだ。
┛
11 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:31:46 ID:e4LFvmMs [9/21]
842
――――さぁ、サンチョ。お前もそろそろ休んでくれ。
┏
これまでも、これからも。
┛
┏
わしはリュカの、息子のそばにいようと思う。
┛
┏
たとえそのせいで、魔物との戦いが面倒なことになったとしても。
┛
┏
わしができること、してやれること。全てを見せてやろうと思うのだ。
┛
┏
あの子が……、一人で生きていけるように、なるまで。
┛
┏
自分の母のことを聞いて、理解できるように…なるまでは。
┛
―――はい。おやすみなさいませ…。
12 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:32:53 ID:e4LFvmMs [10/21]
843
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
, - ────── - 、 、
/ ヽ
/ \
/ ,, 、、 \
/ __ノ′ `ヽ、__ l
// ヽ /´ `ヽ |.
「 ――――マーサァー――!!! 」 l ``ヾ, lゞ 〃 l , -‐ ''"´ l |
|ヽ ノ ヾ ヽ、.. _ノ |
,'⌒/´ ヾ'⌒`` |
| l j ノ′ l
l `ー-'´``ー---─ '″`ヾ /
| ト、ノ),、、 ノ /
| | ``´´ / イ
| | /⌒'⌒/ / l
| ,l / / / ' |
| | / / ,. |
ゞ `ー┴---一´ / |
┏ ヽ`ゝ、__,,,,, ,, / 、ノ ト 、.._
「あの時」のように。 \ __ , _,_ -‐ イ / ト、:.:.:`::-..,,_
┛ ,`ー--- --ーー / 、′ /゙.:::.:.:.:.:.:.: . \
/..::.:.:.:.:| ト /′ ; ′ /...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:...\
/´.:.:.:.:.:.:.:.l、 /´ /...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. \
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l , '′ ,/...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..: . \
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏
自分を殺してやりたいと思うような、悲嘆にくれないためにも―――…
┛
13 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:33:45 ID:e4LFvmMs [11/21]
844
14 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:34:15 ID:e4LFvmMs [12/21]
845
┏
――――次の日。
┛
┏
忙しい仕事にキリをつけ、息子の相手をした後。
┛
, -―- 、
/ \
/ \_ |
(●) (●) |
ただいま。 (_人__) /
l`⌒´ /
……サンチョ? いないのか。 | ヽ
__!、____/ \
/、 ヽ r 、 ヽ
ハ ヽ Y`l | > Y
{ ヽ_ゾノ | レi i i}
`¨´ ヽ ハ `'''
> / ヘ
/ /ヽ ヘ
_,/ / ご_ノ
( ヽ /
\__ノ
┏
わしは再び仕事にとりかかろうか、と思っていた。
┛
┏
ラインハットに行くまでに、もう少しまとめておきたいことがあったからだ。
┛
15 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:34:54 ID:e4LFvmMs [13/21]
846
トントン。
┏
わし以外に誰もいない家の戸が、ノックされた。
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ ((村長かな?))
| ( ●)(●)
.. | (__人__)
| ` ⌒´ノ ……どうぞ。どなたかな?
.. | }
.. ヽ }
ヽ ノ
.> <
| |
| |
―――すいません、失礼します。
┏
どうせ村民の誰かかと思っていた。
┛
┏
……だが。
┛
16 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:35:25 ID:e4LFvmMs [14/21]
847
┏
事前の約束もなく入ってきたのは、いつも通りの村民ではなく。
┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
l l ノ!
l `ー‐ f r'
l ノ'
! / ――――こちらは、パパスさんのお宅でよろしいですか?
,' /
 ̄ `ー - /
` 、 /
:.:.:.:.:.:... 、 /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. .:.:ヽ _ ´ ┏
ー- :.:.:.:.:.:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:ヽ 浅黒い肌。柔らかいが、隙のない動き。
` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ ┛
、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ ┏
..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ やや緊張した、言葉遣い。
┛
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┏
今まであったこともない、青年だった。
┛
17 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:36:10 ID:e4LFvmMs [15/21]
848
┏
何処かで、会ったような気もしたが…、
┛
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \
. | ( ⌒)(● ) | ああ、そうだよ。私がパパスだ。
. | (__人__) │ ―――君は、だれかね?
| `⌒ ´ |
. | |
. ヽ /
ヽ /
> <
| |
| |
┏
記憶をまさぐっても彼と同じ人物は当てはまらなかった。
┛
18 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:36:43 ID:e4LFvmMs [16/21]
849
l l ノ!
l `ー‐ f r'
l ノ'
! / ――――僕は…
,' /
 ̄ `ー - /
` 、 /
:.:.:.:.:.:... 、 /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.. .:.:ヽ _ ´ ┏
ー- :.:.:.:.:.:.:.:.. ..:.:.:.:.:.:ヽ 彼は、言葉に詰まるように話し出す。
` 、:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ ┛
、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
..:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ ┏
..:.:.:.:.:.:.:.`:.:、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./ その喋り方、その目つき。
―――何故だろう、初めて会う彼に、懐かしさすら感じるのは。
┛
19 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:37:38 ID:e4LFvmMs [17/21]
850
―――あなたの、息子です―――。
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ、_ \
┏ . | ( ●)(● ) |
緊張した様子のまま、彼はわしにいった。 . | (__人__) │
┛ | `⌒ ´ |
. | |
. ヽ /
┏ ヽ /
嘘を言うはずもないような、澄んだ瞳で。 > <
┛ | |
| |
┏
誰かに、誰かに似ていると思わせる瞳で―――わしを一心に、見つめながら。
┛
.20 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:38:34 ID:e4LFvmMs [18/21]
はい。以上で、パパスの過去編、すべて終了です。
ありがとうございました。
次からはラインハット編。リュカの親友が、できますね。
21 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:41:47 ID:s/64ke7Z [2/2]
乙乙
>>1ペロペロ
22 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 22:47:49 ID:e4LFvmMs [19/21]
乙ありがとうございます。
>>21
ペロペロはやめれwww 私は飴とかじゃないぞwwww
23 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:49:52 ID:dOUmShqa
乙!
これだけパパスの内面に踏み込んだのは数あるDQスレでも珍しいですね
24 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:56:58 ID:BcZ9prxk [2/2]
乙 ムシャムシャ
25 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 22:58:45 ID:VMjOeGb1
乙
このシーンをパパス視点だとどんな風になるか気になる
26 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 23:00:46 ID:ZYuttZwx [1/2]
乙です!
うわああ……いよいよ、ラインハットへ向かう時が……
28 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/14(金) 23:14:45 ID:e4LFvmMs [20/21]
<<作者からのお礼>>
_,,. -─- .== -,..-‐、
. _,厶-ク \v`ヽ\´- ヽ 乙ありがとうございます。
/ / ,ハ ハ ハ }
. / /イ /ヽヘ/r、_},ハ // ヽ 最終話の、ラストだけ小説から少しお借りしました。
{イ /!仏ムヘ/ `ソイ リi // 本当は、もっとBADEND的な鬱話で終わらせる予定だったのですが、
Vi ハ ○ ○.^ヾイ}.リ| | このラストを思いついて一気に修正することになりました。
ハ/||ミ彡》、_,、_, ⊂⊃/ |ノ| | |
\トゞミゞ ヽ._) / | }.| | 99パーセント、オリジナルでしたがいかがでしたでしょうか。
| |> ァr‐七⌒ | |リ | | 面白いが故に、とても難しく、そして楽しいパパスの過去編でした。
| |/ {メ^く_/ | |ヽ | |
| ト /:∧∨ 〉.| ト | | イメージと違う、と思った方もいるかもしれませんが、ご容赦ください。
_,,. -─- .== -,..-‐、
. _,厶-ク \v`ヽ\´- ヽ
/ / ,ハ ハ ハ } パパスは書いていて実に味のあるいい親父です。
. / /イ /ヽヘ/r、_},ハ // ヽ もうすぐ…と思うと、ラストに時間がかかってしまいまった。
{イ /!仏ムヘ/ u. `ソイ リi // |
Vi ハ ─ ─.^ヾイ}.リ| | >>パパス視点で
ハ/||ミ彡》、_,、_, ⊂⊃/ |ノ| | | それも考えたのですが、見ないのもお楽しみ、ということに
\トゞミゞ ヽ._) / | }.| | しました。息子視点では、また現れますけども。
| |> ァr‐七⌒ | |リ | |
| |/ {メ^く_/ | |ヽ | | >>ラインハット
| ト /:∧∨ 〉.| ト | | ああ、いよいよ少年編屈指のあれこれが詰まった
シリーズになります…。
親友になる「あいつ」は、もう皆さん想像がつきますよね?
31 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/14(金) 23:22:36 ID:ZYuttZwx [2/2]
>親友になる「あいつ」
だれだろうまるでよそうがつかない!
32 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/15(土) 01:45:36 ID:yDOaBGAz
おつでした、作者様!
小説版は読んだことがないんだけど、パパスとマーサがちゃんと笑顔になれる最後を期待してしまいました。
作者様はプロの物書きさん?
33 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/15(土) 15:27:26 ID:4wkLqHDe
乙
あわわわ…来たよ…来ちゃったよ…小説版屈指の名シーンが…。
34 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/16(日) 00:01:22 ID:0lgnGe9e
_,,. -─- .== -,..-‐、
. _,厶-ク \v`ヽ\´- ヽ 今晩は。作者です。
/ / ,ハ ハ ハ } ただ今からラインハット編の書きだめを
. / /イ /ヽヘ/r、_},ハ // ヽ 始めたいと思います。
{イ /!仏ムヘ/ `ソイ リi // |
Vi ハ ○ ○.^ヾイ}.リ| | さて…どれだけ原作でどれだけのオリジナルで
ハ/||ミ彡》、_,、_, ⊂⊃/ |ノ| | | とか分配を全く考えていない相変わらずの見切り発車です。
\トゞミゞ / | }.| | 以前私が自分をアホの子といった理由が皆さんわかりますよね?
| |> ァr‐七⌒ | |リ | |
| |/ {メ^く_/ | |ヽ | | でも頑張りますので、みなさんこれからもよろしくお願いします。
| ト /:∧∨ 〉.| ト | |
>>だれだろう
うそだっ! ぜったいしってるはんのうだっ!
__,,. -─- .== -,..-‐、
. _,厶-ク \v`ヽ\´- ヽ >>パパスとマーサがちゃんと笑顔に
/ / ,ハ ハ ハ } ……難しいです。原作小説では…(察してください)…ですので。
. / /イ /ヽヘ/r、_},ハ // ヽ しかし、私はアンハッピーエンドよりハッピーエンドが好きです。
{{イ /!仏ムヘ/ `ソイ リi // | 二人には、何らかの形で、笑顔を。約束します。
Vi ハ == =='. ^ヾイ} リ| | しかし親世代、なぜこうまで展開がハードなの。堀井雄二さまよ。
ハ/||ミ | |、_,、_, | | / |ノ| .| |
\トゞ.| |. { } .| |_./ | }.| | >>プロ…
|| ⌒)、._ ̄_ (´ j | |リ | | きゃー!そんなことないっすよ!趣味でちょこちょこ書き物
|| |/ {メ^く_/ | |ヽ | | をしたりしてるだけです。 でもマジうれしい。
|| ト /:∧∨ 〉.| ト | |
>>小説屈指
続きは青年編で! しかもかなり後です!
35 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 00:37:45 ID:NCaz2Ujl
>>続きは青年編で
仕方ない、読み返してくるかw
CDシアター版のパパスさんも格好いいんだよな…
36 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 01:16:09 ID:e5poue3M
今日初めて読みました。非常に面白い。
作者さんのDQ5への想いが詰まってるのが伝わってきますよ。素晴らしい
37 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 05:26:34 ID:PmSHMxTB
こんな面白いスレを見落としていたとは…
ラインハットも楽しみです
38 名前:名前なんて無いだろ常識的に考えて[sage] 投稿日:10/05/16(日) 08:06:29 ID:Cdw6Tado
ラインハット編は何周プレイしてもスゲエ辛いんだけど、
でもやっぱり5が個人的シリーズ最高傑作だと思うのは
やはりラインハット編あればこそなんだよなあ…
ドジッ娘の>>1がどう料理するのか、心から楽しみにしてます。
39 名前: ◆VeXhfoQdhw [] 投稿日:10/05/16(日) 19:45:59 ID:IvMoeSyw [1/32]
作者です、今晩は。
さっそくでなんですか、21時に27話、ラインヘット編を投下したいと思います。
今回は1話です。投下ペースにやたら考えているつい最近。
>>35-38
ありがとうございます!嬉しすぎて涙でそう。頑張る原動力です!
>>CDシアター版のパパス
カッコよすぎて泣ける。惚れる。神谷さんの本気を見た。
>>ラインハット編
はい、作者も辛すぎますが大好きなところなのです。
最初にゲームでやった時もマジ泣きした記憶が。(SFCの時代)
どう料理していくか…頑張ります!