二１１５．
―――――――――――――――――――――――――
　　とうとう鳴り響いてしまった正午の鐘。
　　いい加減焦れていた雪華綺晶は早くしないとと、
　　まだ無言で考え込んでいるやらない夫に声を掛けた。
―――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　　´ 　　　　　　　　 r-ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　{ {:必 }､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　|l　　　　　　|　　　　ゞ辷ｼ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 / ,　　　|l　　　　　　|　　　　　　 i| 　　|＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.′i|　 |　ﾊ 　　 |　　 |.　　　　 　 八　　ヽ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 l|　 | / |　 |　|　　 |　　 ｌ　　　|,　 ＼　 }＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 l|　∥ 厶./l　|　　 |　　 |　　　| 　　 ﾉ　ﾊ.　＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､ l|ﾍイrぅｭ､_!ﾊ|　　 |　　 |　　　|　　/　/　 }　　)　　)
　　　　　　　　「ちょっと！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ.　 }c::::ﾘ　/　　/　　/　　　 | ／ ／　／ ／　／
　　　　　　　　 十二時の鐘が鳴っちゃったよ！」　　　　　　　　ｒ　　　{沙'"./　　/　　/　　　　{{　 ( 　 /　（　　（
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| _ 　 　 　 / 　 /　　/　　　＼ ＼　＼{　　 ＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ｀ヽ　　 / 　 /　　/　　　　　 :　 ＼　＼　　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ .}　 / 　 /rzr─ ｧ　　　i　 i　　　＼　＼　　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ー/　 ／　　　 /　　　　｝　 ｝　　　 ＼　＼　　　)　　 )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／_／　＿,厶ｲ⌒! 　　/　 /　　　/　 } }　　)　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｨ ⌒ Y⌒!７ﾌ7ｧ/　　　/　　{　／ ／　　　　／　ﾉ　 /　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (＼　　 }_/////_ﾄｧ　　　　　 |　／　　.　 イ　／　 ／　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弋 三.r┴ミ了く／ﾉ　　　　　 |　　　／.　 /／　 ／　 ./　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （＿＿rイ　 兀け　　　　　 |　 ／　　　く　　 ｛　　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |＼､. イ ⌒i､　　　_＿ｊ　/　　　　{　＼　 ヽ　{　　?
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　 ＼　　 人 /￣/　 {　.＼　　　 ＼　 ＼　}/　　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ / r‐ {　 /　 /　 /　　 ＼　 ＼　　　 )　　＼}　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠厶⊥!.　 ＼　／　 / 　 　 　 ＼　 ＼　/　　　/　{



　　　　　＿＿
　　　 ／ノ　ヽ＼　て
　　／.（○）（○）＼そ
　　|. u.　（__人__）　|　　　　「うお！？
　.　|　　　　　　　　|　　　　 もうそんな時間か！」
　　 |　　　　　　 　|
　.　 ヽ　　　　　　ﾉ　　　　　（駄目だ、
　　　 ヽ　　　 　/　　　　　　どうしても渡す理由が思いつかない）
　　　　/　　　　ヽ
　　　　|　　　　　|
　　 　 |　 　 . 　 |



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　まさかそんなに時間が経っているとは思わず驚いた彼は結局、
　　試しに聞いて怒られるのもなんだか怖くて、無策のまま時間を使い切ってしまった事になる。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１１６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,, -‐'''″￣｀ミ`{.{@yiゝゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,,i=η／　　　　　　　ヾ､`ヾ､)) l　｀'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,//,i<迴'j　　　i　　　　,　ゝ ＼. (( .i i　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l l　/ //　i　i 7 .i　　　ヽ,ヽヽ i i　l l ﾊ　｀!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l i　 / i　l l　l .i| |　　 i i　i　,ﾊ　il　i i ,ヽ　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l i　i l ,　l. !　|i|i　l　i i l i　l l　ﾊ7i　i l i ゝ,.｀'i
　　　　　　　　　　　　　「ベッケナー公が館に戻るまでには　　　　　 ,i i l l　!　i ヾ i　l ＼i i lﾊi i i l　ﾉl　| i l　 .l　}
　　　　　　　　　　　　　 私達も戻ってないと。　　　　　　　　　　　　. // /i|　| i | i l_.,,((、ii､ |il! .だ｀｀'i.7　l l|　 .'y l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　//,'´　i＼＼ヾiFｯﾐ''ｼi　　 弋__沙7　//i　./ ./
　　　　　　　　　　　　　 お昼、一緒にって言われてるじゃない」　 イ　.,/′ヽゞゞ≦汗彡'　 ,　　　.//　li　| / /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /,,_　　 }li ゝ､i,　)).　　　　 　.lil　.li l i ,l .{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　　　7 i! !i)..ゝ．.,_. ⌒",.／il　 il　＼＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ i/ //-‐'′κ,｀"-　>ヾ　! >.-‐'ゝゝ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/''"　~´ ,/ | k>っ>b, ,,.,ciyi)-ゝ　　　 ＼ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 7ζ　　_ / l　ξl lゝ､ . ／l .!　i l　　　　　iゝ｀l



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　一応最後の予定なんだし、せっかくだしと言う彼女に頭を抱えたまま頷いた。

　　この値段であれば多少時間が空いても他の者が買ってしまう確率はそれなりに低い、
　　理由が出来たら買いに来れば良いだろうか。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　.／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　 .／ 　　　 _ノ ⊂_ ‐-' ＜
　　　　　　　　　　　　　 |　 　　　（ ―）　 λ　　 ヽ
　　　　　　　　　　　 ,ﾍ__|　　　 　　（__人）　　ヽ　　',　　　　　　「………取りあえず戻るか」
　　　　　　　　　 __,/　　　｀ ＜ 　 　 ⌒ﾉ　　. ｒ'-‐￢
　　　　　　　 ／---‐――--.､ゝ＼　｜　　　」-‐＞ヽ　　　　　（買い逃すって事はなさそうだから、
　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／⌒ヽ._ ノ　　　/　 ´　　 l　　　　　 理由を思いついたらでいいか………）
　　　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　／´ ｀ヽ　　　　 ヽ.　　,　, .!
　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　／　　　　 ヽ　　　　 l｀ / / /!
　　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　 ./　　　　＿ __ヽ-､　　 !/. ,'　l　!
　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l　＿十''''''''""　　　　　＼ ＜　　　'　l

二１１７．
――――――――――――――――――――――
　　決断できずに済みません、と店員を振り返ると、
――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ＼　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .（●）（● ） 　u.　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　「済みません、また来ます」 　 　 　 　 　 （__人__） 　u　 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.(｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { 　 　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{ 　 　　　u.　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　 　 　 　　＿＿＼　　　　 /ﾘ 厂`'‐- .._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ :　　: :介ｰz＜__｣// |: : : : : : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 | : : : : ::〈　｢｀乂/ 　/ 丿: : : : : : : |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| : : : : : /: |　{::::}　/ `7: : : : : : : :│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 　 　 　 | : : :　〈: :│ {::::l /. :/. : : : : : : : : |



　　　　　 　 ,.-' ､ヽ　　　　　　　　｀ヽ、
　　 　 　 ／　　 __ヽ!　　　　　　　　 　 ヽ
　　　　 /　　　 ´ _｀ヽ´　　　　　　　　　　ヽ
　　 　 i　　　 ,.r'´　｀　　,.-､　 　 　 　 　 　 i
　　　 l　　　´　　　 　 ,､r ､ ヽ、　　　　　　　ｌ
　　　ｌ 　　　　　 　 ,ｨ/　　 ヾﾄ､　ヽ　　 　 　 |
　 　 l　　　 　,.ｨ　/ i{　　　　 i} ヽ　ﾄ、　　 　 !
　　　jr.ｼ 　 /l !/l.! {! 　 　 　 }!　} i,ﾊ　　　　,!
　　　l.ｲ/　_{. i!|!_|!__!_　 　 　 } __!l_!__|!ヽ､ｌ　ﾘ
　　　|! !/i´ﾊ´-‐tr;ｊ- 　 　 rﾉ ‐t!ﾘ-,!｀ﾄヽ!ﾉ　　　　「ええ、待ってるわ」
　　　! ｌハ ゝ!　　 　 　 　 iヽ　　 　 　 リ/
　　　 ｜ ヽ､.l　　 　 　 　 ! ノ　 　 　 !ノ
　　　　　 　 !ﾊ 　 　 　 丶　　 　 　 / ﾘ
　　　　　　 ﾉﾞl ﾄ、　 　 ｰ ;;;ｯ'　　　ｨ!､ﾄ､
　　　 　 　 　 ,ゝ|.ヽ、　　 　 　 ／|　,ゝ
　　　　　　　 f く!　　｀ ｰ　 　´ 　 !く
　　　　　　　 ヽ　｀ ヽ、　 　 　 　 !　ヽ、
　　　　　__,. -'´i　　　　ヽ、　　　 l _ノ　〉
　｀´ ￣　 　 　 ｀ヽ、　　　 ｀ ｰ-'´　　/｀ヽ､



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　買ってくれるのではと期待はしていたものの、
　　値段が値段であるだけに即決はないと思っていた彼女は笑顔でまた来てください、と言った。

　　彼がどのぐらいの予算を持っているかは知らないが―――店員には先の会話は聞こえていなかった―――
　　逆に言えば悩めるだけの余裕はある様だし、逆にこの値段を即決で買われる方が余程恐ろしい。
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二１１８．



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││　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │三三三三三|　　またのご来店、　 　 　 　 .|　　　　　　 　 　 　 　 ││
││　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │三三三三三|　　お待ちしております。　　...|　　　　　　 　 　 　 　 ││
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││　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │三三三三三三三三三三三三三三三三│　　　　　　　　　　　 　 ││

二１１９．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,____,.廻}｀lii_,,..､∥
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,-''"´´￣｀｀!K呈/ゞ､''-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,／´　　　　-､　 .｀iﾞ""i..} !　l `',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ././　　 i　　 i　 'i　 i }　　'i　li　,　.l＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ .|　　　|i　　 ii　 l　.! .i　　 i　ll　i .|＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l ,.ii　　　| l　 !i　　l　.l　|　　i .i ii　l .l　.＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l i.lu　　./ll`''ii-l=､l_ / λ　 li　i.ヽ､! ｀i　 i ,/
　　　　　　　　　　　　　　「………もうっ！　　　　　　　　　　　　　　　　li li i､ ..//!_/ ! !　/｀l''i/i　 .li　 .|i.＼, ＼ l l
　　　　　　　　　　　　　　 意外に思い切りが無いんだね！」　　　　　 ヽi{ｼ/´. '行勿ｯ/ / / .l　 .! il　 i＼ ｀ゝ､``'_'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ<　　 ｀ｰ'´.//'!./入 !　l ..| ヾ i｀＼ li ｀｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .`.､-､.　.,//l..! /-∧ヽ !､ il ..l .l　ii|　i｀-i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/./..!._,i､,__,,,l　/!i｀｀''.!入!>i!!　l l　il　 l　li
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ /　 .i　iii/､l　l''''y!‐''>.-.!! .l　.|i Il　l　/ il
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／　　.l　.iil/.Ll l!=ﾝ-'./´　`'i i＼i li .li　l　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l./　　　 .l　.il-ンl .!,　　 !　　　｀il　i　/ il ..!　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l.l　　.,,／ i　l Z-/i.＼　 .!ｨli　　 ゝil　l　il l　 i



――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　店の外に出るなり、雪華綺晶が咎めるように言った。
　　それほどの資産を持っているのなら、購入を迷う理由が分からなかったし―――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　 ／　　u　　ノ ＼
　　　　　　 |　　　 .u （ ●） |　　　　　「悪い悪い」
　　.　　　　 |　　　　 　（__人_）
　　　　　　　|　　　　　 ｀ ⌒ﾉ
　　　　　　　 |　　　　　　 　}
　　　　　　　 ヽ　u 　　　　 }
　　　 　　　　 ヽ　　　　　ノ
　　　　　　　　ノ　　　　　＼
　　　 　　 ／´　　　　　　　　ヽ

二１２０．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　一緒に居るのに、その悩みを話してくれなかった事が悔しかったせいだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――



　 　 　　　 　　　 :::＼;;;;;:::::::: :::::: :::::::::|: ヽ|:::::||　 |　　 ＼ ||　 　 ＼|
　 　 　　　 　　　 　　 ＼;;;; ;;;;;:::: :::::::::|::　.|:::::||　 |　 　 　 ||　 　 　 |
￣￣￣￣￣￣￣￣￣ |;;;;:: ;;;;;;;;:::::::::| iヽ|:::::||　 ￣￣￣￣￣￣￣
定食屋　目覚め　＝.....|; ;;;;:;;;;;;;;;;;;;;:::|: ヽ|:::::||
_＿＿＿＿＿＿＿＿＿|;;;;::::;;;; ;;;::;;;;;:|:::　|:::::||
　 　 　　　　　　　　　　|;;:::;;;::::;;;;;;;;;;;;;::|::::. .＼||　 ＿＿＿＿＿＿＿
＿＿＿＿＿＿＿＿.　|;;;;:::::;;;;;;;;;;;;;:::::|　　　　　　|　＼ 　 ||　 ＼　 |
　＼ 　　 |　＼ 　 　 |　|: ::; ;;;; ;;;;;;;;::::::|　　　　　　|　＼＼ ||　 ＼＼|
＼　＼ 　|＼　＼ 　 |　|＼; ;;;;;;;;;;;;;::::::|　　　　　　|　　 ＼ ||　 　 ＼|
　 ＼　＼|　 ＼　＼ |　|;;;;;;＼; ;;;;;;;::::::|　　　　　　|　 　 　 ||　 　 　 |
　 　 ＼　|　 　 ＼　 |　|:::::::;;;;＼ ;;;::::::|　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣
　 　 　 　|　 　 　 ＼|　| 　 : ::::;;;＼:::::|
　 　 　 　|　 　 　 　 |　| 　 　 　 ''''＼|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 f´￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ノ　､　、　　|　　いや、その………　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ● ●） l　　.乂＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 （人__）　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　 　 ノ
　　　　　　　　　　　　　　　 ､^@￣@^ ,　 　　　　　　　　　　　　 　 / 　 　 ヽ　　三
　　　　　　　　　　　　　　　 ((从（（(,,i! )　　　　　　　　　　　 　 　 G|　　 E.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ∂ヮ ﾟ从(,　　　　　　　　　　　　 　 　 ∨　/-Ｊ　　　三
　　　　　　　　　　　　　　　((とtξ,,,tつ)　　　　　　　　　　　　 　 　 (＿ﾉ　　三
　　　　　　　　　　　　　　　) )（,,,,ζ,,）( (　三　　　　　　　　　　　　　　　　ﾀｯﾀｯﾀ
　　　　　　　　　　　　　　.( ( (　U　U　) ) )　三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾀﾀﾀﾀﾀｯ

f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
|　　………何か悩みがあるなら、 　 |
|　　相談してね？　　　　　　　　　　　 |
乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ

二１２１．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　軽やかに、舞うように走る目の前の彼女の言葉に感謝しつつも、
　　どうにも参ったな、と呟いたやらない夫は腰に吊されているレイピアに視線を向けていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　 n
　　 《@>
　　　 )/ {
　　　i:{ ヽヽ　　　 r、
　　　||　　ヾヽ ノﾉﾉ｝
　　　ヾ　　 }厂～ソ
　　　 ｀ミ=千_r==´<i、
　　　　　　　　　　ヽヽ
　　 　 　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　 　 　 ヽヽ
　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽヽ
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ|



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　価格としては金貨八百枚前後だろう。
　　素材はミスリル銀であるものの、硬質化や何らかの属性が付与されている訳でもないそれは、
　　雪華綺晶の実力には本当に物足りない代物だ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１２２．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　こういった武具は市場に出回る級の物でも、
　　持てる力の増加が緩やかなのに比べて価格は二次曲線的に跳ね上がってしまう。

　　付加されている魔法が一つ増えるだけでももちろん、魔力の強弱、材質、年代、制作者などで
　　桁が一つ変わることも珍しくない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　!　　　↑　　　　　　　　　 　 　 　 　 !
　　　　　|　　　価　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /
　　　　　|　　　格　　　 　 　 　 　 　 　 　 丿
　　　　　|　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /
　　　　　|　　　　　　　　　　　　 　 　 　 丿
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　!
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　丿
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　 ./
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　 丿
　　　　　|　　　　　　　　　　　　 丿
　　　　　|　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　|　　　　　　　　　 _／
　　　　　|　　　　　　　_..r'"
　　　　　|　　　　,,..r''
　　　　　|_....v=ノ
　　　　　|
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　武具の力→

二１２３．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　先の魔剣が釣り合うかと言えば、今度は彼女の方が不足気味になってしまうだろうが、
　　それでもこのレイピアを使い続けるよりは余程ましに思える。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　 ――　､
　　　　 　 　 　 　 ／ 〉´.,,,,,-----,,,,...ヽ_
　 　 　 　 　 　 ／ ／_;_;_;_;_;_;_;_;_;_;_;_;_;_|
　　　　　　 　 /　/／〉　 ( ー)　(ー )　 ｌ
　　　 　 　 　 ｌ　 ´ イｌ　　 (___人___)　　ｌ　　　　　　　　　　　　　「……………」
.　　　　　　　 ｌ　 　 ｉYｌ　 　 ｀ ⌒ ´　　 ｌ
.　　　　　　　/　　 ﾊ !.!　　　　　　　 　 !　　　　　　　　　　　　　 （買うだけ買うか？
.　　　 　 　 /　　/　 ' ヽ 　 　 　 　 　 /
　　　　　　 ｌ　　　／/ ､ゝ　　　　　　 ／ ヽ_　　　　　　　　　　　　いつ渡せる理由が出来るかも分からないし、
　　　 　 ´｀ ー‐ '｀./　　｀ー､　　,－´　　/ 　 ＼　　　　　　　　　 最悪貸すでも何でも良いじゃないか）
.　　　　 ｉ　　　 　 ｉｉ　　 / ｀:.ｉ 　 ｉ´ヽ.　 /　　 　 ｀　 ､
. 　 　 , 'ｌ　　　　　ｌ.!　 /　　 ｌ 　 !　ﾊ　/　　　　　　　 ＼
　 　 / ,:|　　　　　| ヽ/　　　!＿'　　 V　　 　 　 ,　 ,　 　 ヽ
.　　/ / ｌ　　　　　|　　　　 /:.:.:.:ヽ　　　　　　　/　/　 ／　 ｉ
.　　!/　 !　　　 　 ｌ＼.　　 ｉ:.:.:.:.:.:.ｉ　　　　　 ／　/　 /　　　ｌ
　　/　　　　　　　 !　 ヽ.　 !:.:.:.:.:. !　 　 　 ´　　 !　 /　　 　 !



――――――――――――――――――――――――――――――――
　　ただでさえ、正体不明な黒ローブの存在も気がかりだ。

　　こめかみを触る癖がバンダナを触る癖に変わりつつあるやらない夫は
　　もう一度だけ今買うかどうかを検討し、そして―――
――――――――――――――――――――――――――――――――

二１２４．
――――――――――――――――
　　街路のど真ん中で足を止めた。
――――――――――――――――



　　 !:::::::::::::::::::::::|　　　　　　　　　　|:::::::::｀‐-､:::!
　　|:::::::::::::::::::::::l　　　　　　　 　　　|:::::::::::::::::::::::|
　 i:::::::::::::::::::::::l　　　　 　 　　 　　　!:::::::::::::::::::::::l
　 l::::::::::::::::::::::!　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::|　　　　（やはり、早めに買っておこう）
　/:::::::::::::::::::|　　　　　 　　 　　 　　　!::::::::::::::::::::l
/_::::::::::::::::::::!　　　　　　 　 　 　　　　 |:::::::::::::::::::|
ヽ、:::､:::::::::l　　　 　 　　 　 　 　 　　　i:::::::::::::::::::!　　　　ﾋﾟﾀｯ
、ヽ、ヾ､:::|　　　　　　　　　　　　　　　|:::::::::::::::::::|、
:::＼::＼:::ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　l::::::::::｀ｰ=＝!
ヽ、:::ヽ:::!　　　　　　　　　 　　 　　 　 ヽ::::::::::::::::::::|
　/｀ヽ__/　　　　　　　　　　　　　 　 　　i:::::::::::::::::::l
￣´￣ ｊ　　　　　　　　　　　　　 　 　　　|::::::::::,ｨ'=弌!、
¨￣´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ_ノ !ﾉ tf＝=､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　iﾆ｀ヽ〃/ ￣｀ヽ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 ｀ヽ､＿ﾞー‐‐'"）

二１２５．
――――――――――――――――――――――――――
　　振り返ったのは、走っていた勢いで少し離れた雪華綺晶。
　　早くしないと遅れるよ、と訝しげに問うと、
――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　___　 　__　_))r-､ィ⌒ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {薔}　　　　　 λ廻 }⌒ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／.／　　　　　　 辷ﾆｿ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　/　　 l　　l　l　 l　(( ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /　/　ｌ　 ｌ|　/i| i|　i|　|　| ｌ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 　 　 　 　 /　/ l　|　l | / i|/_|/ |　!　! |　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「どうしたの？」　　　　 　 　 　 / 　| /!　| r//　 ｲ示ﾊ|/! /l l　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 　 　 　 /　 /ﾚ' l　l必}）　 弋沙/ l l　l|　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　 /　　 l,ﾘゞ彳,　　　　　 ﾚ!　ｌ　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 　 　 /　 /　　　/ ﾉ八　 _　　　　 /　/　 i!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　 /　　　/　 l　l　ゝ､　　 _ ｲ　/ 　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 .′　i　　／　 / /　/＿fTフ./　/ ﾍ. ｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i　 ／ ／　　/ /　/r| ／ノ　i　 i! しﾍ　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 / / ／　 　 / / ／ﾉfi　ﾌしﾍ!　 |ｨ⌒´ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ / /　　　 / / {　 {　ﾉ≫≪　|　 |ノ⌒てi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i i　ﾉ　　 ／ /　ヽ　У|≫≪ λ　 ＼￣｀＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 // ( 　　 (　　＼　 i fてzr-z＿ﾉ ＼　 ＼　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／ﾉ　　i　　　＼　　)　 )　　　⌒乙　 /　　/



　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,, -‐ ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/'　　　 ヽ
　　　　　　 ／￣￣＼ 　　　　 ./　　　　　 i
　　　　　／ ._ノ　　ヽ､＼ 　　 /　　　 ...........i
　　　　　|　 （●）（●）　|　　/　　 ..:::::::::::::::|
　　　　　|　　（__人__）　 | 　/　　..::::::::::::::::::l
　　　　　.|　　 ｀ ⌒´　　.} ./　　..::::::::::::::::::::!　　　　　　「先に戻っててくれ。
　　　　　 |　　　　　　 　 }/　　.::::::::::::::::::::/　　　　　　　やっぱり買ってくる」
　　　　　 ヽ　　　　　　 ./　　 .:::::::::::::::::::/
　　　　　　.ヽ　　　　. .／　　.:::::::::::::::::::/
　　 ,. ‐'"´　 `'‐,r''"~　　　.:::::::::::::::::／
..:.／,. -‐‐- ､　l′　　 　 ..:::::::::::::／|
:,'　　　　　　／　　　　 　 !.:::::::／:i..:..l
r　　　､　 / 　 　 　 　　　 !:::::::::::　i..:..i
l　　.......`:i　　　 i 　 　 　 　 !::::::::::　ﾞ､:.i
!　 ::::::::::/　　　　i　　　　　　 i::::::::::　ヽ:i
.!　::::::::/　　　　　i　　　　　 .....i:::::::::::　ヽ
.ヽ ::::::|　　`､　　 `､　 .....::::::::::::l:::::::::::: 　`,
/ ＼:::l.　　 `､　　　ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::: 　/'''ー─----､
　　　`ヽ　　 `､　　.::::＼:::::::::::::::|:::::::::　/,,　　　,. ‐;''



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　もう、躊躇していない様子のやらない夫は館のある方向を指さして、
　　すぐ追いかけるからと言った。
―――――――――――――――――――――――――――――――

二１２６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　　　　　　　　　..ｲ- フi‐-/ｨ γｧ_へ＿___
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l.ゝ ､_　　　 .イ　　　　--- {川r-､Yi ￣`ﾍ｀i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 />r‐-i ﾍ´　　 i　　　　'´　|_i <ユヽﾉ_　　　ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 《.ｆ .C > ﾄ､.|ｲ　 l!　　i　l ヾ　 ゝイイヾ へ　∥
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　f i κシｲ/ﾉ　　 l　　l　lﾍ ヘ.　|!　　　ヾ　i∥
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゞーiト-彳i |　__ l　))i! .l　ﾍi　ﾏ|!　l　 l　il .{i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　「しょうがないなぁ、君は。　　.　 ヘ　l　 l ｉ |ｒｲニⅤﾍヾ.i　 _z--､! .l　 l　l y.l!
　　　　　　　　　　　　　　　　　 急ぐんだよ？」　　　　　　　　　 ＼.ﾍl　ﾘ ﾏi/fニ r＼} 　　弋:少i!　l　 l. l ll...ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾl /i　人､ ﾆﾉ .}ﾉ 　 　 　 　 l! l　 l.7∥!､.ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／.//　/i lーｲ(ｲ　 　 　 　 　 ﾄ7r､//ﾉ .|　＼ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ /i./　/ i　.ﾍ　　 　 ｀.´ 　 　.ｲ　r f´ ７｀|　　 ヽヘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 /　i　/　 iﾉ`ー` - ､ _　　 イ l　/>⌒　ゝ-､　　　i　i}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　l　i　ｲ´　　r }ヽ_ﾉ　 ii　 トイl（__　　　　　i!　　 i.∥
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. ｉ!　 ｌ`'}　{i　　　 ＞-f　i_ﾉ⌒い⌒ rイ　　　i>　i}　　 i l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ 　l!　!ｌｌ ﾏ　　　.) .-.||≫≪､ﾉ　　i　　　　 ｌ　／　　//
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ　 li 　 ﾍ ﾉ､ ／ゝ′'′ゝ′とﾉ/　　　　 /-|.　　 //
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　 li　 　 ﾍ ∨　　　　　　　　 ./　 r---ｲ 　 |　　 i l



―――――――――――――――――――――――――――――
　　やれやれ、と肩をすくめる演技をした彼女は分かったわと了承し、
　　苦笑いの彼はその至上命令に頷き返してから―――
―――――――――――――――――――――――――――――



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ⌒）（⌒)
.　|　　u　 （__人__)　　　　「全力で戻るよ」
　 |　　　　　 |r┬|}
　 |　　　　　 |　| |}
.　 ヽ　　　　　｀ﾆ}
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　/　　　 く　　
　　　|　　　　 ＼ 　
　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)

二１２７．
――――――――――――――――――――
　　今来た方向へと、物凄い勢いで駆け戻る。
――――――――――――――――――――



　　　　ﾟﾞ'ｰ､,,,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,l ゞ:〃　　　 　　 　,,,r'" l|　 |∥∥∥∥∥
　　　　ﾟﾞ'ｰ､,, ﾞﾞ｀ｰ､, 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,l ゞ:〃:::::::::::::::::::::;rﾞﾞ|::::::::::l|　 ￣￣￣￣￣￣
　　　　　　 ﾞﾞﾞﾞ',ｰ､,. ﾞﾞ'ｰ､_　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,l ゞ,.〃 　　 　 ,r''|::::::|;;;;;;;;;;l|
　　　　　　　 .ll　　.ﾞﾞ''ｰ,,,　''ｰ､,_　＿　　　　 　　　　　　　　　,lﾞゞ;〃:::::::::::;;rl|::::::|;;;;;;|::::r''''l|￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　 .ll　いら　　~~ﾞlｰ､､:i┿l|　　　　　　　　　 　 　 l:ゞ〃 .　,,,r'"　l|;;;;;;|::r''|;;;;;;;;;;l|
　　　　　　　 .ll　 しゃい 　 lﾐﾐl*li温l|ヽi:ｰ,、　　　　　　　 彡~〃彡'"''',,r''' l|::r''|;;;;;;|::::::::::l|
　　　　　　　 .l:──--､､､...lﾐﾐl*il丿l|__liﾞﾟ態N､､ , 　 　 　 l l㌍'''"､__r''__,､､l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l|　:::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　, l l l llll|ミミミミミミミlﾐﾐl*ll泉l|~~トlｰ-iﾞl~~冫　 　 　~ |ﾟl､.丿彡彡彡l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
　　　　　 lj,,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',,',lﾐﾐl*ll丿l|　llヽﾞヾiｰ ﾟlﾞ~i:!』,, 　 　l『』iﾞﾞﾟﾞ:lヽ￣￣l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l|　::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　 l|　　l　　　.l　　　 lﾐﾐl*ll卵l|　ll .l il!ヮ ';li,''ll l㌍lﾞli....ll　ll i~ll"|..|￣~l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
　　　　　 l|　　l　　　.l＿＿..lﾐﾐl*ll冖l|　ll　l.ill￣~~~''ﾞ｀ﾞ'''｀ 　　"l|､l.l　|..|____,l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l|
　　　　　 l|　　l---i .l _,,,,,wil"~l*ll!l!l!l'ﾞﾞ“ﾞ~　 　 　 　 　 　 　 　　l| l　|　　　l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|
　　　　　 l|　 ,,l,,､､-''~　　　 　""" 　 　 　 　／￣￣＼　 　 　 ..ﾞ=ﾞヽ|＿＿l|;;;;;;|::::::|;;;;;;;;;;l|
　　　　　 llﾞ｀　　　.:　..　　 　　　　　　　　 ／　　　　　　＼　　　　 　 ヽ､　 l|::::::|;;;;;;|::::::::::l|　:::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　|　 　　　　　　　|　　　　　　　 ヽ､|~ヾl::::::|;;;;;;;;;;l|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　　　　 | 　 　 　 　 　 　 ヽ､,l~ヾl::::::::::l|　:::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　ﾉ　　　　　　 　 　 　 .ヽ､ l~ヾ;;;ll＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 .　 |　　　　　　　 }　　　　　　　　　　　　　 ヽ､ l~l|　　┌───┐
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 .　 ヽ　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､l　　│∥∥∥│
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,,.. ．-‐' 　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　<"　　 ,__,,_　　　　 　　　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽヾ丿　　|　 　 　　　　　 i　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＆　　|　　　　　　 　 |　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|, ,_　 　 　　　 i''ヽ、　 )　　　　　　/￣￣￣ /_/_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　 　, -ii、^ﾞ''"　　　　　 / ./二/　/　/￣￣￣ /_/_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　 へ　 i　　　 i　　　　　　　/__,--,　 /　/ ./二/　/　/￣￣￣ /_/_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|　　 /　　＼|　　　 |　.　　　　　　　 /___ノ.　/__,--,　 /　./ ./二/　/　/￣￣￣ /_/_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　/　 　 　 |　　　 |　.　　　　　　　　　　　　　 /___ノ.　./__,--,　 /　./ ./二/　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 /　　　　　｀--- ´　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /___ノ.　./__,--,　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /___ノ　.

二１２８．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　後ろ姿が角を曲がって見えなくなるまで見送って、
　　それから館に戻り始めた雪華綺晶の口から吐息が漏れた。

　　困った人ねとは言いつつも楽しそうな彼女には結局、理由は解らなかったが―――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　／　｀ｰｧ!|　　　`ー　　　　　　　　　　　 　 　 ﾄﾍ-ﾍ´　　|
.／　　 ( r＝'　　　　　　　　　　l　　l　 　 |　　　　ｌｰトゝl　　 l
　　　　/っ７　　　　 ／　 /　 /| 　 |　 　 |　 　 　 | rf''　|　　|
　　　 //'/´　　　／　　/!　 /=|　 /　　 ﾊ　　 　 l | `l.　 l　　|
　 　 ///　　　 /l /　 //　 /l　ｌ　/!　　/ |　　 ｌ　| |　| 　 |　 l
　　/// l　　 //‐l─/‐|l-/,ﾉl / / |_ｉ-/─!-　/ /| !　|　　l　 |　　　　　　「ふう、やれやれ。
_／//　|　! / ,| ﾊ. /ﾆ´|! |'´ヽl/　 |l,. -='ﾃ ／ｌ/　|ｌ　 l　　|　,|　　　　　　 一体何を悩んでいたのやら？」
　／　　|/ヽl /'　/lミﾆ ' ,ｿ / '　　　'ﾄf_',ｿ´　/! |　　i　| 　ﾊ　|
´　　　　　　　　,ﾍ |l￣､´ノ　　 　　　￣ 　 /' | |　　|　|　 | i　!
　　　　　　 　 / ｀ヽl｀（´　　 　 !　　 　 　 /´　l ! 　 |l　!__,|　 |
　　　　　　　/'　　　 ＼ ＿　　ー'　　 _, ｲ_　　| !　　| l |-─‐'
　　　　　 ／　　　 /＜´　 lヽ__　 _／l￣｀ﾌ　　|l　　 | | l`ヽ､
　　 , -‐く、　 _,,.､/　　 ＼　￣｀Y ￣　／　 　 l|　　 | l | ｀ ‐-､＼
　/´＿　　｀ ´　　 ＼_,／´　　 (´　 　 `ー-､_, -‐-､,i -‐-、　　 ヽ＼
__ヽ´ﾉ　｀ヽ　　　　　　　 　 　 　 ）　　　　　　　　　　　 __ _）　 　 /／
　 ￣ヽ＿__,. --､　　,ｲolﾍ＿_/´＼＿r‐io､＿/｀ヽ＿,く‐' ´￣￣｀ヽ
´￣ ｀ く、　　　　｀ ´/ /,. -‐'_,. --､ヽ､. |　l　　　　　　 ＼　　　　 /|
　　　　/ヽ　 __ ,ｨ- /o/_　＜_　　　 ｀＞｀ｌo|　　　　　　　r'ー‐‐'´ /､ ＼
､　　 （､　|　ﾉ　 ｀| ヽ/＿｀ヽ､ `ー '_, -‐'_l　!_／k‐ﾍ　 /_,）　　　/　 ＼, ＼
´　　　＼￣　　　|　　　　｀)く, -‐-､ヽ/´　￣　-‐./　￣ /　　　 ＼　　 ヾ　ヽ



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　相談はしてくれなかったにせよ、
　　あの値段に対して何らかの迷いを覚えたのであれば良い傾向かも知れない。
　　何となくだが、そう思えた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１２９．


┌─────────────────┐
│　　武具屋　是得太の鼓動―――　　　　.│
└─────────────────┘

　　 　　　　　　　　　　　　__,,,,,　　-‐‐‐-- ､ __　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＿,　 　 ＿, 　 　 ＿　 　 ＿ 　 　 ＿ 　　 ＿,　 　 ＿　 　 ＿
　　　　　　 　　　　,,-'''''^ 　　.　　　　　　　　　 ￣''‐-､,　　　　　　　　　　　 |_|_|　　 |_|_| 　　 |_|_|　　 |_|_| 　　 |_|_|　　 |_|_|　　 |_|_|　　 |_|_|
　　　　　　　 　// ／, -''^￣__.　 　　　　　　　　　　　　^'､,　　　　　　　 |￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿　|￣|＿
　　　　　　　　{ {　, '^ ,.-'''^　　　　　　　　　　　　　　 　　　＼　　　　　　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|　|　 ＿|
　　　　 　 ._,-ゝ､/ / ,　　　　''^⌒ヽ　　　 　 　　　 　 　 　 　 ヽ　　　 　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|　　 |＿|
　 　　　／　　　ヽ'（（/　 ／⌒ヽ　　ヽ.　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ
　　 　/　　　　　　ヽ（ .r' ／ ／ﾍ　　 ヽ　　　　　　　 　 　 　　 λ
　　 / ./　 　./ /.r' .,-''^⌒'^^'⌒ ﾍ　　i.　i i . !　 　 　 　 　 　　　ｷ
　　.i' r' 　　 ,{ i .i　i' 　 　　　 　　 λ 　|　川 .|　　　　　　　 　　 　|
　　| ﾉi　　　ｿi.|｜.{　　 　 　　　 　　i　 |　|.i| .|,　'､,　　　　 　　　 　|
　　|/ |　　 /ﾉ !, ! |　 　 　 　 　 　 　|　| .! || |　＼ ^' ､　　　 　　 　|
　　!　| 　ノ /!　 ﾍ!i. 　 　 　 　 　 　 | .!.i ! !|.! 　　ミヽ､＼　　　　 　|
　　　 ｛ 　 / |-^￣^'=､ 　　 　　　　ﾉｿ ﾉ .ﾙ'　　　!ヾ,＼ ヽ　　　　　|
　　 　　| ﾉ　.| ‐'冖i=‐､ヽ 　　 　__,,,--=＝‐､,　 　|、ヽ, ヽ､ 　 　i　 |　　　　「冒険者同士、か………
　　 　 　i!i^i |　　　￣^ 　　 　 　　-‐'冖i=-､ `　 |. ヽ, ヾ　ヽ､ 　i　i
　　 　　　i .| |　　　 　　 　　 　　 　　　￣^￣ 　 || ,― ､ﾍ. 　 i　|..　　　　　 ―――？」|
　　 　　　!　|.|　　　　　　　　　　 　　　　　　 　　i!//⌒}.}. i　　i　|!
　　　　　　! | .!　　　　　,　　　　　 　　 　　 　 　ﾉ ｲノ./ 　 }　 } !
　　　 　　ﾉ !､!.i　　　　　ゝ^'　　　　 　 　　 　 　　　ノ 　 　　./|!
　　 　　ノ　 .|　ﾍ.　　 　､.= ､,,_　　　　　　　 　/'^　 　 　 　/
　　　　　　　.! j　ヽ　 　　`＝￣　 　　　　　ノ　　 　　,/ｿ ﾉ
　　　　　　ノ'^ﾉ .i　ﾍ 　　　　　　　　　　,,,-'/　/　ノ　//　{
　　　　 　　　ノiﾉ　.i　 iヽ､　　　__,, -‐''^　ﾉ ノ　/　　{　 {ヽ､
　　　　　　　　 ヽ. .r 　| 　　￣　　　　 　 イ 　（　　 >''^
　　　　　　　　　　ﾉ,ル| 　 　 　 　 　 　 　 | ___ゝ‐''^
　　 　 　　　 　　　__ノ|. 　 　 　 　 　 　 　 |^
　　　　　,,,,,､-‐''''^　　!　 　 　 　 　 　 　　 ＼



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　静かになった店の中。

　　先程の若い二人組を見てつい、この魔剣の販売委託者であり、
　　やはり冒険者である自分の恋人のことを思い出していた店員の耳に
　　だんだんと近づいてくる足音が届く。
―――――――――――――――――――――――――――――――

二１３０．



　　　＼　　　　 　 ＼　＼　　　　 | ,,,--'''''￣　| // ＿,,,,--┐ 　 |　／　　＿,,,...---
. 　 　 　 ||￣　/l‐|、-/l　＼┌'￣|　　　 ＿,,,,-ゥ/i｀ヽ、　　.ィ-ァ|　| 「￣' 　 |
. 　 　 　 ||　 ./,'　| | |、|￣''''ー-____,,--''''',,,-'''~/　 ＼|..　.／／　|　| |　　　　|
. 　 　 　 ||　//==| |=|/ー-＜￣__,--'' ￣　　 /.　　 　 ／／.|　　|　| |　　　　|
―--,,,___||_// ┌| |‐---,,,,__￣|　|　|　　　　.　　 　 ／／　　|　　|　| |　　　　|
＿＿＿ .||l /|　| 'l |　　　　　|　|　|　　　　　　 　 ／'''~. 　 　 |　　|　| |＿,,,,--|--''''
====┐ .||/. |　|　|l.　　　 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |　　|　| |　　　　|
　 　 ||　 ||/ .|　|　'!　　　 　 .|　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |　　|　| |　　　　|
　 　 ||　 ||　 |　|　　 　 　 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |　　|　| |　　　　|
――||―||　 |　|　　 　 　 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |'.―|‐.| |-,,,,,__　|＿,,,,
　 　 ||　 || 　|　|　　 　 　 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |　　|　| |--''''￣|'''''--
　 　 ||　 || 　|　|　　 　 　 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |　　|　| |‐-,_____|
　 　 ||　 ロ(()==| 　 　 　 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　＼|　　|　| |　　　　|｀''--
　 　 ||　 ||　 |　|.　 　 　 ／ .|　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |＼..|　| |　　　　|
　 　 ||　 ||　 |　|.／　 ／. 　 |　|　|　　　　　　　　　　　　　＼|　 ＼ |,,,,....--- |----
　 　 ||　 ||　 |／　 ／..　　　.|　|　|　　　　　　　　　　　　　　 |＼..|..＼...　＿__|,,,,,,,,,,



――――――――――――――――――――――――――――――――
　　何事か、と視線を向けるのとほぼ同時。
　　勢いよく開かれた扉から飛び込んできたのは、先程帰ったあの少年だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　 ――　[] ]　　 ／￣三＼
　　　| ｌ￣ | | 　　／　　 ＼三/＼
　　　|_| 匚. | 　三　　 （ ●） （ ●）　　　　　.|＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　　| | 　三　u 　　 （__人__）　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　 　　　 |_|　　≡　　　 　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　　　　 　　　　　二 　　　　　　　}　　　　　∠　　たびたび申し訳ありません！　＞
　[] []　,-　　　　　ニ　　　　　　ｒヽ，　　　 ／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　 ／／　　　r⌒ヽ　　　　　／　|　　　　 ￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　匚／　　　　 三　　ヽ　　三　　 /　　　　　　/／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　　　　　　　　 三　　ヽ三　　／
　　　　　　　　　三三　三　　／|
　　　　　　　　　三　≡､__.／　|
　 　　　　 　　　　r　　　　　　 |
　　　　　　　　 三　　 　　　　|
　　　 　　　　　三　　　|三　　|
　　　 　　ニ へ三　　.|三.　　 ヽ
　　　 　二　|　≡　　 /　三　　 ヽ
　　　 　ﾆ＿ノヽ＿＿ノ　　三　　 ヽ
　　　 　　　 　　　　　　　　　三　　）
　　　　　　　　　　　　　　　三　　/
　　　　　　　　　　　　　　三　　/
　　　　　　　　　 　　　　ニ　　ーヽ
　　　　　　　　　　　　　　　＼＿ ノ

二１３１．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　もし今日の掃除をさぼっていたら埃が舞い上がっていたであろう速度で
　　カウンターに詰め寄った彼は、腰の道具入れから袋を取り出すと
　　全く迷いの残されていない表情で言い放ち、
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼_人＿人∧从＿人_∧_人_从_/／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　さっきの魔剣、買います！　＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<　　　　　　　　　　　　　　　　　(
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＾Y￣∨￣∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
.　　　　　 　 ＿＿_
　　　　　 ／　 　 　 ＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 _＿＿_
.　　　 　 |　　_ノ　　　 |　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 _／/￣￣ ＼.　　　　 ／￣i
.　　　 　 |）　( ●)　　 |　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／:://ﾞ~/￣￣￣.¨＼.／ 　　/
　　　 　 （_人__） 　 　 |-..、 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／ :::: l l. /　／　　ヽ-／　　 ／
.　　　 　 |｀⌒´　　 ,-┴::::'l_,.-―-..、 　 　 　 _ ,-／:::::::::::///.　/　ヽ、＿＿＿／ヽ、＿, - ─＝ヽ
　　 　 　 ＼_　　 l´::::::::::::::::::::::::::::::::::￣｀ー‐::':::::::::::::::::::: //　｀Ｙ　ヽ、＿ ,-ﾐヽ、 　 　 　 　 　 　 ／
　　　　　　 ／. ヾ| ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: //＼_/　 ｌ　　/￣＼＼｀ﾞ ー─‐＜￣￣
　　　　　　,ヽ/｀ｘ｝ :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: //- '´ .Y..　｀i-'　　　 ｀-＼ ＼　 　　｀｀ ―- 、
　　　　　 ｛::::ヽ,| /::::::::::::::::::::::::::::::::／￣￣￣｀ヽ- 'ヽ// ::, - ‐|.　　 !.　 　 　 　 　∨　｀ゝ - 、＿＿/
　　　　　　＼/ l.lヽ ::::::::::::::::::::::::::: |　　　　　　　　　　~｀´　　 /. 　 /.　　 　 　 　 　∨ ∧
　　　　　　／:|.／:::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　　　　　　　　　 　 　 ゝ　ノ.　　 　 　 　 　 　∨　ヽ、
　　　　 　 |:::::| ＼:::::::::::::::::::::::::::::::/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r―-､＿_r―-､　＼　 ｀ー 、
　 　 　 　 |:::::| ol |:::::::::::::::::::::::::: /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|―‐z＿＿,r:､__） 　｀ー― '
　 　 　 　 !:::////::::::::::::::::::::::::::〈　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　|　　　/　 /＿__r-､
.　　　 　 / ::l〈〈「:::::::::::::::::::::::::::::::＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　>―-､＿＿ノr―‐┴'′　　,,,,、　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,,,,、
　　　　 / :::ﾘ o||:::::::::::::::::::::::::::::::::＜＿　　　　　　　　　　　　　,. -‐'''"￣￣`―〇ﾆニニヽ　 　 　 ,! .,i´:iｰ匸ｌ　 ┬-、　　　　　　　 /｀ ,lﾞ
　　〈｀ﾞゝ ::/ //∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　　　　 .　　　 　 ／　　　　　　　　　　 ＼ 　　 `〇　　│.l＿ ﾞ‐'ﾟ″　 .|,,,ﾉ　　.,,,ο　　　 |　,i´
　 〈｀ﾞゝ ::/ //　.∨::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼　　　　　　　　| 　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　lﾞ /i､｀,!　　　　　 _,,-'彡'"｀　　　 .|丿
　/_ｌ｀ゝ:/ o/　／.∨:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ、　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　 / /　｀"　　 ,―''''ﾞン'"｀　　　　　 _ﾚﾞ
　/｀ ゝ/ //／／　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　 /　　　　　lﾞ丿　　　　　｀'-‐" 　 　 　 　 　 ,i´丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼＿＿＿＿＿＿_／　　　　　　｀｀　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀"｀
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／
／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／／

二１３２．
―――――――――――――――――――――――――
　　その勢いに圧されながらも革袋の口を開いてみれば、
　　確かに中には白金貨がずらりと並んでいた。
―――――――――――――――――――――――――



　　　　 ／　　　　　　　　　　　　 rrｰ- ､ ､-､　 ､　　 ＼
.　　　, '　　　　　　　　　　　　　 ,'il　　　 ｀ヽ. ＼ 、ヽ　　｀ヽ､
　　, '　　　　　　　　　　　　　/!/　　　　　　ヽ　 ヽヽ ヽ　＼ヽ＼
.　/　　　　　　　　　　　　　〃/　 　　　　　　 ヽ　 ヽヽ ヽ　 ヽ',　ヽ
. ,'　　　　　　 　 　 　 /, 'ｲ//' ＿ ヽ　　　ヽ.　　　　　ヽ ヽ　ヽ.',　 ヽ
.,'　　　　　　　　／　/// l' '､´_,.ニ''-､､_　, ヽ　　　　　 l　 ヽ l.N
i　　　　　　 ,／　　/〃: :　｀'ニてc)"ヽ￣　　　 =_-''"｀i l　 l !ll l
!　　　 .／〃／　,　/ : : :　"　 　　￣ ´　　　 ヽ´(c)ヽ-!ﾉ /./ l |
i　　 , ／ 〃´｀ヽl　!: : : :　　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ ￣　| /ノ
.',　// ﾚ' i /フ‐' !l | : : : :　　　 　 　 　 　 　 　 ( 7/ 　 ! '　　　　　「ま、毎度ありがとうございます。
. V/　'　l ! l r"､, !!ll: : : : :　　　　　　　　　　 ,.. ,_´_　　 l　　　　　　 白金貨でお支払いですね？
　lﾄ､　　l!ヽ｀　 ') ', ﾄ､: : : :　　　　　　　　 r'´‐＝‐i　　 l
　ll　ヽ　ヽ ｀ヽ､_ ハ : : : : :　　　　　　　　ヽ二ニﾉ　　 i　　　　　　 鑑定しますので、しばらくお時間を頂きます」
　ll　　ヽi 　 l!　l : : : : : : : : .　　　　　　　　　 ""　　　,'
　ヽ　　 'l　　!　ﾄ、: : : : : : : : . ..　　 　 　 　 　 　 　 .,'
　　　　〃!　i　l.!ヽ : : :　　　ｰ-　:,ヽ　　　　　　　　 /
　　　／' l　,l　lヽ: : : :　　　　　　　｀ヽ ､_　　　　_.ノ
　　 　 　 ! .l|　!: : : : :　　　　　　　　　 　 /Tl!´
　　　　　 l　l /: : : : :　　　　　　　　　　　!リ ヽ
　 　 　 　 ヽ,': : : : : :　　　　　　　　　 　 !l(



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　しかし、支払い方法がこの店では滅多に取り扱わない最高額貨幣ともなれば、
　　彼女も秤を持ち出して真贋を見極める必要がある。
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二１３３．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　宝石鑑定士の免許状がカウンター奥など目に付くところに張られていない以上、
　　もう少し手軽な宝石払いは出来ないであろう。
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f´￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
|　　えーっと………　　|
乂＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
　　　　　　　　　　　　ｼﾞｬﾗｼﾞｬﾗ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　（○）（○ ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「百五十枚あると思いますが、　.　　　　　　（__人__）　 　u　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 よく確認をお願いします」　　　　.　　　　　　　ヽ｀⌒ ´　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｛　　　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（こりゃあ時間が掛かりそうだ、　　 　 　 　 　 lヽ、　　,ｨ'.) ./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 失敗したかな―――？）　　　　　　　　　　　　j　.}ﾝ／／　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　ﾉ　'"´ ￣〉　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　 　 {　　　　 勹..　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　 ヽ　､＿_,,ﾉ　.　|



――――――――――――――――――――――――――――
　　かと言って金貨一万五千枚を数えさせるわけにもいかないし、
　　白金貨ともなれば当然、比重鑑定が必要だ。

　　必要ではあるのだが―――
　　結果として彼は、ここでしばしの足止めをされる羽目になる。
――――――――――――――――――――――――――――

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━━━━━━━━━━━……

二１３４．
━━━━━━━━━━━……
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　　午後零時を少し回った辺り。

　　闇の日の公務は正午までなので、そろそろ公がご帰宅なさるなと
　　アストナージが悩んでいた矢先に玄関が重々しく開かれた。
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￣￣ ＼::::＼::|::::|lll|　 　 　 ￣￣￣￣￣￣￣
　　　 　 ＼::::`:::::!lll!
　　　　　　 ＼:::: !lll!　　　ｷﾞｷﾞｨ
　　　　　　 　 ＼|lll|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_．---　､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 r '"´ 　､､　　 　｀' ‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　}　　ﾐヾﾞﾞ `'' ﾍ、　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　 　ヽ／　　 　 　　ｌノｉ、 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　/,.-_､　丶'r＝､‐､　ヾ 　 　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　　 　ｉ < ｿ 　 　丶_ｿ　 　ﾉ　 　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「お帰りなさいませ」　　 　 　 　 { 　ヾ、,　　　　ﾐ　　} r‐ ､ 　 　 ｊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　', 　､＿_　　　　　　ﾚ ヮ' ｌ　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　',　 ー '　　　　　　 __／ .／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　ヽ　`　　　　　ノ　　ｒ'"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　 _　＿＿＿_|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ￣／　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{｀/ 　 　 　 　 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　 _．-―一 、Ｌ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _．-‐''´￣　　　　　　　ヽ　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　',　　 ＼

二１３５．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,．-─‐‐ - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　 ｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 ,　‐-､　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　 / ,人　 Y^ヽ　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j　　 /ヾ =jk'　,!;:::.:.｀`ｰ- ､　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　 j　, ≧≦ｲ､.:.:.__＿ _　 ＼　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼_ Yﾉ,ィﾆ　‐ ── ‐ -ｭrQ､｀ヽ　 ,ﾉ
　　　　「今戻った。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ﾌ´　/　／　　　_／^`ヾ　＼_Y′
　　　　 至急、他の三人を私の部屋に集めてくれ」　　　　　　　/__,　- ─ rr '"´＿__,,　 !　　 !j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´`T´ゝ‘-'ﾞ「j;;:.ゝ‘-'′　j ,ｲk !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!j　　　1　;::. ￣　　　j N ,ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`!　　,rゞィｰ-､､　　 i ﾚ /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 '´ｰ=ﾆﾆ>ゞﾞj　 ﾉｿ´1
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､　　 ー-''　　 ,ｲ;::＿」＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ,ﾊ､,,,_ _　　__,,ノ,」┐　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_」 「ﾆ Y､ 二Y二ﾌ-‐' ┤　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ ,､-‐'"´.:.:.:.:.ﾄ､|　| |　　　　 //.:.:.:.:.:.|　　 　L ー- ､　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/,r'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ!　| |ｰ ､　 /i !.:.:.:.:.:.:.|,．-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀`ー-rrｧ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,/／j」､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽj 」ﾆﾆﾆﾆｿ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,f// 久
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/'´ 　　　　￣｀`ｰ ､.:.:.:.:i 「 ー-//.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,．-───　‐ ─　‐-y'ー'　　ﾞi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　/　　　　　　　　ヾ.:.:.l |　　//.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　　　　　　　　 　 /　　　　　」



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　　予定通りすぐ昼食会かと思ったら雇っている冒険者を招集して欲しいと言うので、
　　違和感を感じた彼は差し出された錫杖を受け取りながら
　　後に続いている二人にも視線を巡らせる。
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　　　　　 　 ,r‐'ﾞ´　　 　｀ヾjir /　 .:.:.＼
　　　　　 ／ｨィ彡,　,; _/^ヾr'^ヾﾘ」r.:.;;:;;l
　　　　 /.:.:.:.:.::::::r''''"´ 　　　　　｀ヾ;;;;;:ｿ
　 　 　 !;,;,;,;;::::::/　　 ＿ _ , 　r‐-､};;;「
　　　　 l;;;;:;:;:;::::l　　 ´r_｡ﾝ　 ﾉ｡< .l/´　　　「あ、はい。
　　　　 ヾ;;〈^ヾ!　　　　　 　　「´　!　　　　 ………それが、その………」
　　　　　｀ゞY7　 　 r　　　r‐､ﾉ　,′
　　　　　　｀i;;ﾊ 　　'　｀ー=＝‐ /　　　　　（何かあったのだろうか？）
　　　 　 　 _ﾘ.__ヽ＿　　 ´￣　/
　　　　　 /　　 　 　 ＼ _ ＿,ｲ
　　　　 _/　　　　　　　　V「´ |
　　 ￣　　￣｀¨`ー - ､__}j　 」＿

二１３６．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　ベッケナー公だけでなく、エルとコナタの二人も―――コナタはいつも通りかも知れないが―――
　　硬い表情を浮かべており、何か公務中に良くない事でもあったのかと思わされてしまう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　|:: ﾊ　　`　　　　　　　　　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　　　　　　　　　　　「……………」　　　 　 　 　 　　　|/l:ハ　　 ､　＿＿　　　　　　　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |ハ　　　　　　　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　　　　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　　　　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!　　　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､



　　　　　　　　　 _,-,ﾆ二ニ=､
　　　　　　　　／／
　　　　　　　 /:/
　 　 　 　 　 ヾ`､
　　　　　　　　＞+:‐: ´:￣: ￣: :`:'￣:l.､＿＿＿,／
　　　　　　／: : : : ／: : : : : : : : :/ : : l: : : :く‐´´
　　 　 　 /: : : ／: : : : : : : :/: :/: : : : l: : : : ､:＼
　　　　　l: : : /: : : : : : : : :/: /l: : : : ∧ l: : : :ヽ: :ヽ
　　　　 /: :/: :/: : : _,:_∠Ｌ､:::/: : : /::::l l: : : : :ヽ: : ヽ
　 　 　 l: /://: : : : :／::/':::::/: : : /::::-H､: : : : : lト､: ヽ
　　　　l://://: : : ｲミ土=､_/: : :/:::::::::l∧: : :l: : :l　｀ヾ､
　　　　l/: :l l: : : ｲ:llo:::::::/:::/://:::テﾃヵl: : :ﾊ: : l
　　 　 l: : :l: l: :/.:l.:l し: 」:::::l/:'::::::P::::/'/l: : :l:N: :l
.　　　 l: : : W/: : N　　　　 　　 ､ `‐':::l::l: : lN　V
.　　　 l: : : : :ﾊ: : : ト､　　 ー=　　　 ノlﾊ: :ハl　　　「……………」
　　　 l: : : : : :､: : : 「ﾌ｀‐- ,､-┬:Ｔ´: :l　l/
.　　　l: : : : :,レ､: : :ヾ､　　/､｀Y/:l:l: : l
　 　 /: : :rﾆミミヽ: : ヾ､-─┤ `┤: : l
　　 /: : /￣＼ヾヽ: : :ヾ､　　 l　　ll: : l
　　/: : /　　　 ヽヾヽ: : lヽ　　l　 /l: : l
　 /: : /　 　 　 l ＼ヾ､: l ヽ　 l //l: :/
　/: : :l　　 　 　 l ハ ヾ､l､､l　 l////l

二１３７．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　普段なら、戻って来るなり食事の後の甘味について
　　尋ねてくるはずのエルが何も言ってこない。

　　それが明らかな異常に思えたので、
　　自分の失態を報告するのは気が重かったが現状について説明しようと重い口を開き、
　　まずは情報収集に行っているはずの二人について触れた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　_．---　､_
　　　　 　　 r '"´ 　､､　　 　｀' ‐ ､_
　 　 　 　 　}　　ﾐヾﾞﾞ `'' ﾍ、　　　　＼
.　　 　 　 　ヽ／　　 　 　　ｌノｉ、 　 　 ヽ
　　　　 　　/,.-_､　丶'r＝､‐､　ヾ 　 　　|
.　　 　　 　ｉ < ｿ 　 　丶_ｿ　 　ﾉ　 　　　ヽ
　 　 　 　 { 　ヾ、,　　　　ﾐ　　} r‐ ､ 　 　 ｊ　　　「その………
　　　 　 　', 　､＿_　　　　　　ﾚ ヮ' ｌ　　／　　　 やらない夫君と雪華綺晶さんは
　　　　　 　',　 ー '　　　　　　 __／ .／　　　　　詰め所に情報収集に行ったまま、
　　 　 　　　ヽ　`　　　　　ノ　　ｒ'"´　　　　　　　まだ戻ってきていません」
　　　　　　　 丶　　 _　＿＿＿_|
　　　　　　　　 ヾ￣／　　　　　 |
　　　　　　　　　{｀/ 　 　 　 　 　|
　 　 　 　 　 　 ／　 _．-―一 、Ｌ_
　　　　　 _．-‐''´￣　　　　　　　ヽ　｀ヽ
　　　　／　　　　　　　　　　　　　　',　　 ＼

二１３８．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,．-─‐‐ - ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　　／　　　　　　　 ｀ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　　　 /　　 ,　‐-､　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　 / ,人　 Y^ヽ　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j　　 /ヾ =jk'　,!;:::.:.｀`ｰ- ､　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　　l　　 j　, ≧≦ｲ､.:.:.__＿ _　 ＼　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼_ Yﾉ,ィﾆ　‐ ── ‐ -ｭrQ､｀ヽ　 ,ﾉ
　　　　　　　　　　　「むっ？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ﾌ´　/　／　　　_／^`ヾ　＼_Y′
　　　　　　　　　　　 そうか、ならばすでに　　　　　　　　　　　　　　　　/__,　- ─ rr '"´＿__,,　 !　　 !j
　　　　　　　　　　　 聞いているだろうから話は早いな。　　　　　　　　´`T´ゝ‘-'ﾞ「j;;:.ゝ‘-'′　j ,ｲk !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　!j　　　1　;::. ￣　　　j N ,ﾘ
　　　　　　　　　　　 キル夫君は？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`!　　,rゞィｰ-､､　　 i ﾚ /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　 |　 '´ｰ=ﾆﾆ>ゞﾞj　 ﾉｿ´1
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　ﾄ､　　 ー-''　　 ,ｲ;::＿」＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ,ﾊ､,,,_ _　　__,,ノ,」┐　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿_」 「ﾆ Y､ 二Y二ﾌ-‐' ┤　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ ,､-‐'"´.:.:.:.:.ﾄ､|　| |　　　　 //.:.:.:.:.:.|　　 　L ー- ､　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/,r'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ!　| |ｰ ､　 /i !.:.:.:.:.:.:.|,．-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀`ー-rrｧ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,/／j」､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽj 」ﾆﾆﾆﾆｿ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,f// 久
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/'´ 　　　　￣｀`ｰ ､.:.:.:.:i 「 ー-//.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,．-───　‐ ─　‐-y'ー'　　ﾞi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　/　　　　　　　　ヾ.:.:.l |　　//.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　　　　　　　　 　 /　　　　　」



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　さすがだなと感心した公に頷き、次に問題の彼について話そうと口ごもった時だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　_．---　､_
　　　　 　　 r '"´ 　､､　　 　｀' ‐ ､_
　 　 　 　 　}　　ﾐヾﾞﾞ `'' ﾍ、　　　　＼
.　　 　 　 　ヽ／　　 　 　　ｌノｉ、 　 　 ヽ
　　　　 　　/,.-_､　丶'r＝､‐､　ヾ 　 　　|
.　　 　　 　ｉ < ｿ 　 　丶_ｿ　 　ﾉ　 　　　ヽ　　　　「それが、その………」
　 　 　 　 { 　ヾ、,　　　　ﾐ　　} r‐ ､ 　 　 ｊ
　　　 　 　', 　､＿_　　　　　　ﾚ ヮ' ｌ　　／
　　　　　 　',　 ー '　　　　　　 __／ .／
　　 　 　　　ヽ　`　　　　　ノ　　ｒ'"´
　　　　　　　 丶　　 _　＿＿＿_|
　　　　　　　　 ヾ￣／　　　　　 |
　　　　　　　　　{｀/ 　 　 　 　 　|
　 　 　 　 　 　 ／　 _．-―一 、Ｌ_
　　　　　 _．-‐''´￣　　　　　　　ヽ　｀ヽ
　　　　／　　　　　　　　　　　　　　',　　 ＼

二１３９．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　突如玄関脇の壁が爆発してロビーが轟音に包まれ、館全体がビリビリと揺れた―――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,　‐'"ﾞ''ｰ　....,,.._,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,‐´　　　　　　　　 　　ﾞ'- ，
　　　　　　　　　　　　　　　　　　_、　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　 　 　 　 　 |,
　　　　　　　　　　　　　　　''"￣゛￣´ﾞ"'ｰ ..、　　　.l′　　　　　　　　 　 　 　 　 　 フ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀''-､_./ 　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ７　　　　　　　　 　 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |､　　　　　　　　　　　　　/゛
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _,,....,,,_,　　　　　　　l　　　　 　 　 　 　 　 __彡 -――　,,、
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i'゛　　　 .`l_.　.,､-ｰ''ｱ:;､-'/　　　　　　 ,,､-'７　　 　 　 　 /￣/＿
　　　　　　　　､,、　　　 ...r‐'"ﾞ"　　　　　　　ﾉ　 ／／／/了　 　 　 /　／　　 　 ,-ｰ―"　＿＿/､
　　　　　　　　　 ｀''ｰ ,,ﾉ゛　　 　 　 　 　 　 ｲ　　i::/　/ / / 　 　 　 / ,r',,,,,､- ｧ／-z''"　　/　　　　 ｌ
　　　　 　 　 　 　 　 ,,|　　　　　　　,,-￢‐ ,|　 ノ:ﾉz''"/／ ,,､-ｰ ''"　　,､-ｰ''"　 ／／/　/　 　 　 　 !
　　　　　　　　　　　/ 　　!　　　　 .゛　　　,ﾘ　/;;;､-''了　 / ,､z''"／|　/ 　 　 　 |／ ./　/ 　.／＼　　!
　　　 　 　 　 　 　 lﾞ　　 .ｌ　、　　　 　 　　i　　 ,､-ｰ'　　 '"／ ／　/ /　　　　　　　 /／　　 ＼／;;､-'/
-ｰ'''''''^ﾞﾞﾞ￣￣ﾞﾞﾞﾞﾞﾞ'l　　　 ｀lﾞ　　　　|　　　/　「"　　 　 　 ,ﾉ ／　 / /　　　　　　　　　　　　　　､-",､ '
　　　　　　　　　　 ｀>　　　.ﾞ'‐　　　/　　/　/　　 　 　 　 |/　 　 ﾚ 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　／
　　　　_,,,,.... -―'''''^l　　,　　　　　 .`‐　|　 |　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　／.,,
　　　　　　　　　　　 ゝ　ヽ、　　.．　　　|／　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ﾚ".,,,,_ ｀'　､
　　　　　 　 　 　 　 i′　　 .ﾞ'　 ヽ、　　 　 　 　 　 　 ＼、　 　　　　　　　　　　 / 　　　　 .,./ 　｀'ｰ ,,.｀^''ｰ ,,.
　　　 　 　 　 　 , / .｀'''―i ,,　　　　|　　　　　 .'､_._,,,．　 . ￣｀'--　　 　 　 　 　 　 　 ,i ／　　　　　　 ｀''-､.　｀'‐
　　　　　　　 ／ 　　　　　,lﾞ /　　　 `-、　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,i ....-゛　　　　　　　　　　　 ﾞ''-､
　　　　　 ／　　　　　　　 !　｝　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,!　 ,,|,、
　　　 ／ 　　　　　　　　　　 ｀''i　..ｌ　　　　 ,,,　.ﾞ;;r-　　　　　　　　　　　　'.ｌ゛　　　 ｀'､
　 .／　　　　　　　　　　　　　　ヽ_ ｀'''､　　　.´゛　　｀ﾞ'^´ .ー　　　　　　 ‐'"　　　　　｀'､
／　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ、 ｀.｀　 .'-..,,..､　　､　　._....＞　　.,..-　　　　-ii'"''''-､
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / . ,..　　　 .i-‐ﾞﾞ'-,　 ￣　　　　　　　　　　 ,.、 ﾞ>　　 `'-、
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / 　/ ｀''''､／　　　 .`i ..,,.... ,,＿_.　　　　 ,,..,,ノ　＼ヽ　　　 . ＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / 　./ 　　　.!　　　　　 !　　　　　 ゝ 〟_...″　　　　`〈;;、　　　　＼

二１４０．
――――――――――――――――――――――――――――――
　　難しい表情でそれぞれ考え込んでいたエル、コナタは反応素早く、
　　武器を構えると視線をそちらに向け、
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼ー-- ､,,_ー=ミ‐-..､
　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿ﾐ::::::::::::::::｀¨ミヽ､::::::ヽ.
　　　　　　　　　　＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 ヽ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､
　　　　 　 　 　 ー=ﾆ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j::ﾊ
　　　 　 　 --─=＝ﾆ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヾミ:::::::::::}
　　　　　　　 ,,ｨ彡:::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡ｲﾊ::く
　　　　　　／::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::l::::::::',
　　　　 ／---─ｧ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::／:::ﾘ:::::::}ﾊ
　 　 　 　 　 ／/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::イ:::ﾂ<彡'/:::;イ::::::::::l:::|
　　　　　　　　/::::ｨ::::::::::::::::::::::::::,ｨ/ 　¨''=ｲ _,ｲ:::ｲﾃ ::::::::::ハj
　　　　　　 _,,ｲ／/:::::::::::::::::::::ｲ/ |　　　　 　 ノ　|¨ .::::::ｲ/
　　 　 　 　 　 ∠ イ:::::::::ｨ::/ .|　　　 　 　 　 ､ _｣ ｲ:／.j'
　　　　　　　　　　/ｲ:／ .|ｲ　 　＼　　　‐--- ／|:/　　　　　　　　　　r‐ｰ',!　　　　　 　 　 　 ,..::;ﾆ＝-､
　　　 　 　 　 　 __ ｲ　　 j　　　　　＼　　ﾞﾞﾞ／ 　.ｿ　　　　 　 r‐ｰ1　 lﾞ　 .lﾞ　　　 　 　 　 　 i::/　　 　 、
　　　　　　　　 /＼　　　　　　　 　 ／ヽ- '　　　　　　　　　 ,lﾞ　 ,i´　lﾞ　 lﾞ　　　　　　　　　　,ゞｰ--‐::':::|,..-;:ァ
　　　　　　　／　　 ヽ､　　　　　_ ｲ　　　　　　　　　　　　　│　,"　 lﾞ　│　　　　　　　　／:::::::::::::::;::::::::!::::::｀丶、
　　　　　 ／　　　　　　ヽ､　　Y　　　　　　　　　　　　　　　|　 ,lﾞ　 .|,,,,,ﾉ　　　　　　　　/::/::::::::::/:/|;:::::;!i::i::::::....､ヽ
　　　　 /　　　　　 　 　 　 ー┴､　　　　　　　　　　　　　　.Ｌ,,,ﾉ　 .,ｒ'"ﾞﾞl　　　　　　　 l:/::;'::::'オ/|::|:::/:廾!::::::::::ﾞ:.ヾ:、
.　　 　/　　　　　　　　　　　　 　 |　　　　　　　　　　　　　　ｒ'"＾ﾞl　　ヽ-'゜　　　　　　 ,!,イ:::::/ !':|:l::l::/::::::lﾊ:::::|;;::::l
　　　/　 　 　 　 　 　 ＼　　　　 |､　　　　　　　　　　　　　ヽ-'゜　　 　 　 　 　 　 　 /i:::::!::/ｉTﾆT::,!;':::ｲﾆﾘ,!:::l｀､:|
　 　 i　　　／　　　 　 　 ＼ 　 　 ﾊ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 !:（|:'!::l::ﾟ‐':::/:::::::ﾟ‐：!:}::!　 ﾞ!
　 　 |　　/　　　　　　　　　　ヽ　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |::::M::::!､　 　_ 　 .ィ:i!ﾘ
　 　 |　 ,'　　　　　　　　　　 　 }　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |::::|:::l:::ﾚﾞ'ﾏ￢＜:!::|::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!::::|x<!:l　 |―|　,l:::|:::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 l::::::;!ヾｌ:ﾄﾐヾ、l〃!:ハ:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,':::::::|　 ヾ＞ﾐV∠}′ i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l::::::::{　,r=-=ニＬ._〉,ノ l|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,!:::::::::l　　　 　 |l!l!|´ 　 |!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !:::::::::::ﾄ、　　　|＜　＿/:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 !::::::::::::ﾞ7ー イ丁´「 〈::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l::::::::::::/　l　 |　|　 l　ﾞ､::::|

二１４１．
――――――――――――――――――――――――
　　大音量で痛い鼓膜と、土埃に目を瞬かせながらも
　　アストナージとベッケナー公が玄関横を振り返れば、
――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　＿ _
　　　　 　　 　 　 ,．-‐''"´　　　｀ヽ_
　　　　　 　 ,r‐'ﾞ´　　 　｀ヾjir /　 .:.:.＼
　　　　　 ／ｨィ彡,　,; _/^ヾr'^ヾﾘ」r.:.;;:;;l
　　　　 /.:.:.:.:.::::::r''''"´ 　　　　　｀ヾ;;;;;:ｿ
　 　 　 !;,;,;,;;::::::/　　 ＿ _ , 　r‐-､};;;「
　　　　 l;;;;:;:;:;::::l　　 ´r_｡ﾝ　 ﾉ｡< .l/´　　　「うわっ！？」
　　　　 ヾ;;〈^ヾ!　　　　　 　　「´　!
　　　　　｀ゞY7　 　 r　　　r‐､ﾉ　,′
　　　　　　｀i;;ﾊ 　　'　｀ー=＝‐ /
　　　 　 　 _ﾘ.__ヽ＿　　 ´￣　/
　　　　　 /　　 　 　 ＼ _ ＿,ｲ
　　　　 _/　　　　　　　　V「´ |
　　 ￣　　￣｀¨`ー - ､__}j　 」＿



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿,.r''"￣￣￣~＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　 _,,ノ-､.,)､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　./　　　　　　　/'　　　｀ヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　 ,从iﾘ'　　　　　　ヽ l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l　　　r''' ヾゝ　　　　　　　 i |.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|　　　i.　　　　ﾞヽ,,　　　　_ .l |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !　　　i　ｰ<￣｡)ﾉ~　r(￣｡）ﾚ!　 　 　「何事だ！？」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ,r‐､|　　　￣　　　|~￣　 ﾘ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.=l )､!l　　　　　　.__｣: ）　 ,ilﾉ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 !ヾ.||　　　__,,,,,,,,＞=',,,,　iト-ﾞ＝､､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　`tゞ!　　"　r‐'"ﾆﾆ)　ﾞ ,il　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,（（　　　　v'　ﾄ,,､　　　￣~ ='　 /,,!　　　　//＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ＼　　|i　　!"''ゞ,,___　　　　/,,j'　　 　 ／　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　＼ヽ　i　　 !　 "''ｰ"ﾆ''ﾆ'"彳!　　 //　　　　　　￣

二１４２．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　次第に煙が晴れ、壁の向こうから差し込んできた太陽に照らされていたのは―――
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　 　 　 | |　　　|　　　　　　　　　　　　ヽW／＼,,,,,,,,.......／ゞ人
　 　 　 | |　　　|　　　　　　　　　ゞ/／##　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾゝ／
　 　 　 | |　　　|　　　　　　　　　／$:::::::::::!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::<ゞ
　 　 　 | |　　　|　　　　　　＼/从##　　　ゞ　　　　　　　　l　　　#〉
　 　 　 | |　　　|　　　　　　　／##　　　　　　　　　　　　　・ ﾊﾟﾗ##＼
　 　 　 | |　　　|　　　　　／＼〉##　　　i　　　　　　　　　　　　　　##/
　 　 　 | |　　　|　　　　　　　人##　　　・　ﾊﾟﾗ　　　　　　　　　　###＼　(　｀)⌒;;,,.⌒）
(⌒;;;;,,.⌒）:::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: (;;　｀)⌒;;,,.⌒）
（⌒;;;;;⌒;ソ⌒;;):::::::::::::-:::::::-:::;;;;;;;;;;;;;;;::::---::::::::::::::-::::::::;:::::---::::::::(⌒;;⌒ヽ;;　｀)⌒;;,,.⌒
;;;; )(⌒;;ヽ;;｀)⌒;;,,.⌒）:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(⌒;;;ソ⌒)(⌒;;ヽ;;｀)⌒;;,,."）
⌒;ソ⌒;;;;'''）ヽ）;;;;;;;,,,,,,）ソ''⌒;;）⌒;ソ⌒;;;;!"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ''"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ''⌒
⌒;;;;!"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ;ソ⌒)(⌒;;ヽ;;;;;'''）ヽ）;;;;;;;,,,,,,）ソ'';｀)⌒;;;;'''）ヽ）;;;;;;;

二１４３．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　赤錆色の外套を身に纏い、無骨なメイスとヒーター・シールドを構えたキル夫だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼
　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　「ギ………
　　　　　　　　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/　　　　　ギギ…………」
　　　　　　　　　　 　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У
　　　　　　　　　　 　 ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;N＿;;;;ゝ
　　　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§ﾉ二ヽr―マ;ヽ　　　　　 ＿___
　　　　　　　　　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;,,|／　／'／ヽ,／;;;;;＼　　　 |: : : : :｀'''--,,,
　　　　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;,,＿／／ 　.／;;;;;;;;;;;;;;;＼　 丿: : : : : : : : :ヽ
.　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;|;;;／ ／ヽ_／;;;;;;ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;×: : : : : : : : : : : :〉
　　　 　 　 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;／ ／;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: : : : : /￣
　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: :/
　　　 　 　　L.::::厂;　;r ／ ／　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;|/〈Ｘ,,;;""ヽ: : : :/
　　　　　　　／　　ﾉ.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ:入;;;;;;;;;;ﾍ,,〈_,;;ノ: : : : : /
　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ￣ ヽ_/
:::::::::::::::／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::｀ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ:::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
モクモク::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
(⌒;;;;,,.⌒）:::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(;;　｀)⌒;;,,.⌒）
（⌒;;;;;⌒;ソ⌒;;):::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::;;;;;::(⌒;;⌒ヽ;;　｀)⌒;;,,.⌒
;;;; )(⌒;;ヽ;;｀)⌒;;,,.⌒）::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(⌒;;;ソ⌒)(⌒;;ヽ;;｀)⌒;;,,."）
⌒;ソ⌒;;;;'''）ヽ）;;;;;;;,,,,,,）ソ''⌒;;）⌒;ソ⌒;;;;!"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ''⌒モクモク
⌒;;;;!"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ;ソ⌒)(⌒;;ヽ;;;;;'''）ヽ）;;;;;;;,,,,,,）ソ'';｀)⌒;;;;'''）ヽ）;;;;;;;

――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　口から漏れるのは虫の威嚇音のように軋んだ声。
　　フードの裾から覗く視線は鉛のように重く、
　　それで居て正気を感じさせない程に怒気ともつかぬ何かを溢れさせている。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

313 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 21:29:53 ID:L7V/pQUY キル夫、堕ちたか

二１４４．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　まるで正気を感じられないキル夫にしかし、脂汗を垂らしながらもアストナージは歩み寄っていった。
　　一つは自分の発言が軽率だった事を反省し、繊細だったこの青年に謝りたいと思っていたから。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　_．---　､_
　　　　 　　 r '"´ 　､､　　 　｀' ‐ ､_
　 　 　 　 　}　　ﾐヾﾞﾞ `'' ﾍ、　　　　＼
.　　 　 　 　ヽ／　u　　 　　ｌノｉ、 　 　ヽ
　　　　 　　/,.-_､　丶'r＝､‐､　ヾ 　 　　|
.　　 　　 　ｉ < ｿ 　 　丶_ｿ　 　ﾉ　 　　　ヽ
　 　 　 　 { 　ヾ、,　　　　ﾐ　　} r‐ ､ 　 　 ｊ　　　　　「な、なんだキル夫さん、
　　　 　 　', 　､＿_　　u　　　ﾚ ヮ' ｌ　　／　　　　　　やっぱり戻ってきたんですね。
　　　　　 　',　 ー '　　　　　　 __／ .／
　　 　 　　　ヽ　`　　u　　ノ　　ｒ'"´　　　　　　　　　 さっきは言い過ぎました、すみません」
　　　　　　　 丶　　 _　＿＿＿_|
　　　　　　　　 ヾ￣／　　　　　 |
　　　　　　　　　{｀/ 　 　 　 　 　|
　 　 　 　 　 　 ／　 _．-―一 、Ｌ_
　　　　　 _．-‐''´￣　　　　　　　ヽ　｀ヽ
　　　　／　　　　　　　　　　　　　　',　　 ＼



――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　もう一つは戻ってきた事で、なにやら至急の相談がしたかった公からの叱責を
　　回避できたと思って安堵したからだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

　　 　 　 　 　 　 ',:::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ｌ. 　 　 　 　 ',::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ
　　　　 　 　 　 　 ',:::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ　　　　　　　',:::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:. ｌ
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　　　　　　　　　　　　　 ｌ::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.ｌ 　 　 　 !:::::::::::::::::. /　　　　　|　だ、だからって壁をぶち抜くのは　.|
　　　　　　 　 　 　 　 　 ｌ::::::ｉ:::::::.:.:.:.:.:.:.: |.　 　 　 ｉ:::::::::::::::.:./.　　 　 　 |　やり過ぎじゃないですかねー？ 　 .|
　　　　　　　　　　　　　　ｌ::::::ｌ:::::::.:./:.:.:.:.:|　　　　 !::::::::::::::.:/　　　 　 　 |　ハハハ、アハハハ………　　　　　 |
　　　　　　　　 　 　 　 　 ｌ::::::ｌ:::::::/:.:.:.:.:.:|.　　　 /::::::::::::::./　　　　　　　乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
　　　　　　　　　　　 　 　 ｌ:::: |::::/:.:.:.:.:.:.:.|　　　/:::::::::::::::.:ｌ
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　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |::: ｌ':.:.:.:.:.:.:.:.:. !　　 {ｉ　ー ⌒ｉ´
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　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /::ヽ:―‐:.､:.:.:.:.:.:〉　　 ｌ!　　　ヽ
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　　　　　　　　　　　 ー――――― ´



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　そして最後に―――
　　いきなり壁を突き破って現れるなどといった、
　　現実離れした登場の仕方に危険を感じる本能が麻痺してしまったせいだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１４５．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　強ばった笑みを浮かべる執事が間合いに入るなり、右手のメイスが高々と振り上げられた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



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　　　　　　　　　　　　　,从　　　　　　 __　　 .／　 ／:: ::::: :: :...
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　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 〈⌒／ヽ／/::::::::ﾉ: : : : :: : : . .... ...
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　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ:::::::::::::::::|
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　　　　　　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　}:::: :::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　 　 j::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::'、

二１４６．
――――――――――――――――――――――――――――
　　膨れあがる殺気。
　　外套の袖の上からでも分かる程、メイスを握る右腕の筋肉が
　　隆々と盛り上がったのを見てエルは警戒を発し、
――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '　'　.ｌ::::::::l　 　 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　「危ない！　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　　　　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　 近づいては駄目です！」　　.　 　 　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 　 　 ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　" . ';ヽ　　　　　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　'|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　　　　　　　　　'i::: '　　　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!'i　　　j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｿ. 　　　/　　 ﾝ　　　　　 ､　',　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　 / 　 　 　 　 　',　', 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　 '　　 / 　 　 　 　 　　 i.　', ｌ

316 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 21:31:29 ID:JgMqOCLU 退場したら誰がΖのメンテすんだ

二１４７．
――――――――――――――――――――――――――――
　　コナタは執事を引きずり戻そうと、そちらに一歩を踏み出した。
――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i　　　　　;　 　 　 　 /
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 l 　 　 　 ;　　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｌ　　　　 ,'　　　 　 /　　　　 ,.．､、
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｜　　 　,' 　 　 　 /ー- ､. -=― .､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l.　　　 ,′ 　 　 /　　　　　　　,:　ﾞｉ｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　 ｉ　　　　/ヾ:　　　　 ,,.:'　　｜l　　　　「――――！」
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,!　,　　!、　　　' ﾉ,' ＿_　 '"_,_;_,..-',ｲ
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,'　　　｜`ｰ--‐"'''´　　 ￣i｀－ '"　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　 |　　　　 　 　 　 　 l　　　　 ,!
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 r'´￣`ヽ､!　　　　　　　　　　 ﾞ､　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,' 　 　 　｜　　　　　　　　　　　 `''''"
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　,:'
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　/ 　 　 ,,.:' /　　　　 　 　 　 　 /　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　 ､-ﾞ'' 　 '''"　/　　　　 　 　 　 　 /＿/￣/　 /／/ 7
　　　　　　　 ,:''⌒｀`'''＜ﾞヽ､、 　 　'{　 　　　　　　　　　　　　匚　 ./i／i／　∧∧　,ヘ
　 　 　 　 　 !,. -　､　 　 ＼ヽ､`　､.,!　 　　　　　　　　　 　 　 /　./　　　　　l /l / / ./
　　　　　　　 ﾞヽ、　 ｀ ‐ ､...ヽ､_｀`'く　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　./　　　　　　　 ／.／
　　　　　　　　　 ｀`''‐- ､_　｀` ｀`r'′　　　　　　　　　　　　　￣　　　　 　　　　￣
　　　　　　　　　　　　　　 `丶､ノ

二１４８．
――――――――――――――――――――――――
　　だが遅かった。
　　戸惑ったアストナージがエルを振り返った次の瞬間、
――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_．---　､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 r '"´ 　､､　　 　｀' ‐ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　}　　ﾐヾﾞﾞ `'' ﾍ、　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　 　ヽ／　u　　　　ｌノｉ、 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　/,.-_､　丶'r＝､‐､　ヾ 　 　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　　 　ｉ < ｿ 　 　丶_ｿ　 　ﾉ　 　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 { 　ヾ、,　　　　ﾐ　　} r‐ ､ 　 　 ｊ　　　「え―――」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　', 　､＿_　u　　 　　ﾚ ヮ' ｌ　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　',　 ー '　　u　　　 __／ .／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　ヽ　`　　　　　ノ　　ｒ'"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　 _　＿＿＿_|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ￣／　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{｀/ 　 　 　 　 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　 _．-―一 、Ｌ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _．-‐''´￣　　　　　　　ヽ　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　',　　 ＼

二１４９．
――――――――――――――――――――――――――
　　無慈悲で遠慮のない鋼鉄の嵐が突き抜け、
　　彼の頭蓋ごと鼻から上を綺麗に消滅させてしまい―――
――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,,,,､-∠
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ) 　 ／　 ,､'て ,,､ィ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾌ　/_,,､-ｲ　/./　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,, /　 ´　　 / / /　/　　　 ,,,､-ｰァ
`'ｰ..、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｨ, ､- '"　　 r''ｰ "/__l. /　」 ,,ｲ　/ 　 ／
　　　｀''ｰ..,、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノ'''´　 ,,､-'"/　/　　,,ｲ 　 /／／ .| /　／,,,､ｲ
　　　　　　 ｀''ｰ ,,、　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 .イ　,､-'"　　ノ　 / ,r'" （　　 　 ）　 （/／/´　 /
　　　　 　 　 　 　 ｀''ｰ､,,,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /'´" ／（　　）　/　ﾉ　 /　　　 ﾉ　／　　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　｀ﾞ'ｰ ..,_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 }　 /　/.　/　 ）　 |　　　 /／　　　/　／
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀'''ｰ ..,_　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｲ　 }　/　 /　 /　／　　　　　　　　/／
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀ﾞ''ｰ ..,,、　　　　　　　　　　 　 　 　 /　/　 |　/ 　 /／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ'''ｰ　,,,_ 　 　 　 　 　 ./,／　　|／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ﾞ'''ｰ- ..,,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀ﾞ"''―- ....,,＿、　　　　　　　　　　　　　_,,..
''ｰ､,、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣´ﾞﾞ^'''''''''''''''''''''''''''ﾞﾞﾞﾞ´
　　　｀''-..,Yｰ　,,
,~''-､　　　 　　　.｀''- ..,,_　　._
..｀'-,,,ﾞ＼、 　 　 　 　 　 ｀''ｰﾐi,ﾞ''ｰ..、　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,,..,,,,_
　　　　｀ﾞ'!・　　　 　 　 　 　 　 ｀　　｀''‐､、　　 /',　 ー '　　u　　　 __／ .／;; ､ .｀ﾞ'''ｰ　,,,、　　　　 .__i--........,,,,,_,i.... ．
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀''- ,, ヽ　`　　　　　ノ　　ｒ'"´　　　｀"　　 ._　　｀ﾞﾞ''―/゛ 　 　 　 　 　 ﾞ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀丶　　 _　＿＿＿_|.,ﾞ,ﾞﾞ';;i_.　　　　　 ｀''ﾆ￢-..,,_　　　 '''ﾆコ━=ｉ,ﾞ,´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ￣／　　　　　 |　　´ .｀"　　　　　　　｀ﾞ''ｰ ..,ﾞ''-､,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{｀/ 　 　 　 　 　|　　　ｸﾁｬｯ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 _．-―一 、Ｌ_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _．-‐''´￣　　　　　　　ヽ　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　',　　 ＼

320 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 21:33:19 ID:LEqeh2oA ああ、キル夫……。ダメだったか。

二１５０．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　とても運の悪い事に、生暖かくどろっとした液体やら固体やらが入り交じった物が、
　　助けようと向かっていたコナタの顔面に叩き付けられてしまう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'''`~''・
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /,.-､:.ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　!:(',,,,、
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !i　　 f''`⌒(　　　　　,,,,　　　　　　　　ノ:::::::::::::::::)
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　 　,!,,,、(　　　　　/::τ　o　　　(::::::::::::::::::τ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:.、　　　　　　　　　　!:::(　　　　・、;::::::::::::;;.;`` ''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 iヽ ゜　　　　　(/　　　　　　/／'''`'`'` `
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,.=ﾆ二ﾞ ,,、..　　　／/　　　ノ'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／π /;::::::::(,.,.(;;;::::(　　 ,,.,　ヽ、　　　 　 __
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /／/:.):::::::::::::::::::::::::::/　　'''''`　.:.:＼ ＿∠_ヽヽ-,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　τ　!::::::::::::::::::::::::::::)／,,,,,　ー‐''"´　　 　 | ! |'　
　　　　　　　　　　　　　「！？」　　　 　 ﾚ|:.i(::::::::::::::::::::::::::::冫 `'`'　　　　 　 　 __ﾉ_ノ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ::：':'::::::::::::::::::::::::::::;(,,,,,,,、:::::::＼＼,.-‐''"＼＼＼
　　　　　　　　　 　 　 　　　　　 　 ﾋﾞﾁｬｯ　　　ﾉ.:>､＼.､_ ゝﾉ ｲ:;:;:;:|,.〈ヽヽ＼＼　 ＼＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/〃´77―､､＼_」:;:;:;:ｌ　ｌ>‐ヾ､ ｀ﾆヽ､　＼＼ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　l　 | {__ミ}ヾ､＼!_;:ノ‐":::::/ヽ＼ヽ｀ﾞｰ､ヽヽ ヾ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／＼_ヽ ',',∨/､ヽｰ‐､:´::､--"!l」＼　ヾ､　　ヾ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／:.,:.:.::.／ﾞー'"´:;:ゝ---'ｌ:::::::::＼ﾉl ﾄ､:.＼ 　ﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／:.,イ:.:.:/　　 ゞヽ:;:;:;:;:;:;:/:;:;:ﾞー-､_ゝ　 ＼:.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 //:./ /:.:.:/　　 　 ﾞトL__/;/＝=|__;:>､/　　　　ヾ
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾚ'　|:.:.:.:| 　 　 　 !　　l｀´7ﾞーﾞァｰ'　　:::冫 `'`'　　　　、,:'::::::`:::,,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ:.:.!　 　 　 lヽ_ノ　/　　 /　　　　::;(,,,,,,,、:::::::-ｰ''''`'`''''''''"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾﾞ､　　　　｀´　 /　　,/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /__　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'´　У
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　 _/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /,〃　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /,.-―-､.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾚ"´￣ﾞ､/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ﾞー―‐'

二１５１．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　鈍器のわずか一振りで、熟柿のように弾け飛んだ命。
　　突然の事にベッケナー公も、長年仕えてくれた執事の名を叫ぶことしか出来なかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　,,;;;-―'''''"'ﾍ;;;;,,,
　　　　 　／　　　　　 _,,ノ-､.,)､
　　　　　i　　　 ,从iﾘ'　　　　ヾl　　 　 　 　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　 　 　l　　r''' ヾゝ　　　　 　||　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
.　　　 　|　　i.　　 ___ﾞヽ,　 ___ .l|　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　　 　 　!　　i　-< ・>ﾉ~ r<・>ii　　　　　∠　　ア………アストナージィィ！！　＞
　　　　　ヽ,r､|　　 ""　　|~"" iﾉ　　　　 ／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　　　　　!ゞ|　　 ,,,,,,,_ ソ;;,,,,_ i　　　　　￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　　　／ `ゞ!　 　　 r‐'"""y;; /　　　　　　　/／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　,（（　 　 i　ﾄ,,､　 ￣二"';./
　　　ヾヽ　 |　ヾ"''ゞ,,___,,,,,ノ;;"
.　　　 `i i　 !　　"""'''''''''''''"



――――――――――――――――――――――――――――――
　　対してエルは、糸の切れたように座り込んでしまったコナタを見て
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,' i l::::::入:::::::､:::::::ヽ::::::::ヾ ::',:::ミﾆ-､_::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 /,i! l:::ン　ヽﾐ::::iヽﾐ::::､:::::::::ヽ::',:',::::`ｰ-`:.､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 iｿl|.／ 　 　 　`ﾞ'､｀ ヾ::::ヽ:::::::'::',!',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　l!. l!ヽ､_　ー　　　 ヽ　＼':,ヾ:::::::'!i'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　!　'i!; l|!ﾞi　　　　　　　　　ﾞ'ｬ,＼､:::::::::::::i::::::ｬ::ヾ､:::::: ／／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　li､ l!:i　　　　　　　　　　 ヽ `ﾞYi:::::::ili:::::i',ヾi;,'／／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「まずい！」　　　 　 　 　　ﾞ!ヽ::`ｬ-⊆＝ｯ-　　　　　　　i:!;:::::i! ',:::l ' ,Y ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ､,ﾍ ｧ'｀ 　 　　　　　　　 l!';::::i　 ｿ! /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、　　　　　　　　　 ﾝ'i:ﾘ　 ﾘ'/!i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　　　_,.-'"'　ｿ 　 '/ｉｌ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　　 ｌ　　　　　 _,_'"::::　　　ﾞ ,r ' ￣　　` ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　ヽ､＿_､ｼ'ﾞ'"ﾏTﾐヽ　／　　　　　　　　 `ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　　　　　　　　　　　ヽ ヽｿ



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　と鋭く呟き、一気に血なまぐさくなったロビーの中を見回して
　　この場で使えそうな精霊力に大体の目星を付けておく事を忘れない。
―――――――――――――――――――――――――――――――

二１５２．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　髪や顎から滴る血液。
　　顔を拭った指に粘っこく絡みつく脳漿。
　　もはや生臭さも感じられない、血の海の中心に座り込んでしまったコナタは
　　ただガクガクと不自然なぐらい全身を震わせ、恐慌してしまっている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　 　 　 　 r,/''"´￣｀
　　　　　　　　　 l::|　 　 　 　 　 ／!
　　　　　 　 　 　 l:!　　　　　 ／.::/
　　　　　　　　　　ヾ:.　　＿/.::.:∠-.－::.::ァ
　　　　 　 　 　 　 , ゝ´.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::＜、
　　　.　　 　 　 ／.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:｀ヾｰ
.　　　　　　　 /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.　.＼
　　　　　 　 /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:　i . :.:.i__::丶、
　　　　　　 ,'　: : .::.::.::.::.::.::.::.::..::. :　. . : l.::.::.::.!　￣
　　　 　 　 i.::.::.::.::.; ,::.::.::.::.::.　.　: ::.::.::.:l:.::.:i:.::|
　　　　　　 l.::.::.;:;';';';';';';:,.::.::.::.::.::.::.::i::.::j､::.;{::.:|
.　　　 　 　 l:.::;';';';';';';';';';';';.;';.::.::.::.::.l::.::l Υ|::.:|　　　「うぁ………
　　 　 　 　 l.::;';';';';';';';';';';';';';'.::.::.:.:/:.::ﾊノ.::|ヾ|　　　 うあああ…………」
　 　 　 　 　 !.;';';';';';';';';';';';';';';.::.::./::.::|　|::.:|
.　 　 　 　 　 l.';';';';';';';';';';';';';';'::.::/.::.::|ノ|::.:|　；
　　　　 　 　 ；},';';';';';';';';';';';';';'::./::.::.::l　!.::.|；
.　　　　　　 ； l.:l.';';';';';';';';';';';';';/::.::,::.::!_|.::/　；
　　　　 　 　；l.::.!.';';';';';';';';';';';'/::.::.;;.::.:|l!ヾ、；　　ｶﾞｸｶﾞｸｶﾞｸ
　　　　　　 ；l.::|::.::';';';';';';';';';'/.::.::.;;';:.::.|l!l!|ﾞ!　；

325 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 21:37:09 ID:L7V/pQUY コナタはまだそういうの不慣れなのか

二１５３．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　その横で―――
　　いまさら自分が死んだ事に気づいたかの様に、執事の死体がゆっくり倒れ込んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　τ　!::::::::::::::::::::::::::::)／,,,,,　γ
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　　　　　　　　　　　　　　　,ノ;;;／　　　,,,..'.ゞ-'`,;;;;;;;,-‐,
　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＿ﾑ,,,,,--';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;<　　　ﾄﾞｻｯ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 '-:::::;;;;;;;;;;　　;;;;;　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ￣`ｙ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ__
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　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　　.,,,,"‐―,--―'-,,_彡,　　　､山ノ
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 r';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/"""　　　　　　　　　　　　　　　　　||
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:'i　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ||
　　　　　　　　　　　　　　／￣ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;'i　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ||
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　　　 　 　 　 　 ／;;;;;;:;;;_-""　　　　|;;;;;;;;;;|　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ||
　　　　　　　 　 l;;;;;;;:ｒ""　　　　　　　ヽ;;;;;;;'i, .　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ||
　　　　　　　 　 |;;;;;;;| 　　　　　　　　　入;;;;;;'i,　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ||
　 　 　 　 　 　 ,|;;;;;;;| 　　　　　　 　　　　　ヽ;;;;;;'i,　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ||
　　　　　　　　　,ｌ;;;;;;ｌ'.　　　　　　　 　　　　　　ヽ;;;;ヽ　　　　　　　　　　　 　 　 ||
　　　　　　　　　 r';;;<　　　　　　　　 　 　　　　 ヽlllヽ　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ||
　　　　 　 　 　 ,/;;;;　　　　　　　　　 　 　　　　　　ヽｌｌｌ）
　 　 　 　 　 　 ｌ'-'.



――――――――――――――――――――――――――――
　　おそらく痛みを感じる事もなかっただろう。

　　まだピクピクと痙攣している四肢から次第に力が抜けて、
　　握られていたままだった錫杖が鈍い音を立てて床に転がる。
――――――――――――――――――――――――――――

二１５４．
――――――――――――――――――――――――――――
　　そのまま暴れ回るのかと思われたキル夫は立ち止まったまま、
　　歪んだ歯車を無理に回すような声で錫杖を要求してきた。
――――――――――――――――――――――――――――



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　　　　　　,,,;;;''''''　'''';;;;;;,,,,　'''';;;;,,,,　　　　　　''';;;,　　　　　　,,,,;;;;''''　　　　''';;;;,,　　　　'''''';;;;;;,,,,,;;;;;;;;''''''
　　　　　'''''''''　　　　　''''''';;;;;;,,,,　''';;;;　　　　　;;''　　　　,,,;;;;;'''''　　　　　　　'''';;;;,,,　　　　　　'''';;;　''''';;;;;;;,,,,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　''''''''';;;;;;;;,,,,　　　; 　 　＿＿　　　　　　　　,,,,,,,,,,;;;;;''f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
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　　　'''''''''''';;;;;;;,,,,,,,　　　　　,,,;;;,,,　　　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ 　 　 　 　 　 |　　シャク……ジョ………ウ……….. 　 |
　　　　,,,,,,;;;;;;;;;''''';;;;;;;;,,,,,,;;;'''''　　''''';;;;;;;,,,,,　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ　　　.,,;;'''''';|　　………ヨコ……セ……　　　　　　　 |
　　　　,,,;;;;'''　　　　''';;;''　　 　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ '　　　　'乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
,,,,;;;;;;'''''''　　　　　　　;'　　　　　　　　　,,,｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　,,,,;;;''''　　'';;,,　　　''';;;;;;;,,,,,,,;;;'''''
　　　　　　　　　　　 '　　　　　　 ,,,;;;''''''　ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/　 '';;'　　　　 　　';,　　　　'''';;;;;''
　　　　　''';;;,,,,,　　　　　　　　,,;;;;'''　　　　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У　　　　　　　　 　 　 ;,　　　　　'';,,,;';,,;''
　　　　　　　　''';;, ,,,,,,,,,,;;;;;;;''''''''　　　　　　ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;§;;;|;;;;ゝ
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;∧;;;ゝ＝//;;;;∧;;;;;;;;;＼　　　　 　 ''''';;;;　,,,;;;''';;'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;∨;;;;;;;H;;;;;;;;;;;∨;;;;;;;;;;;;;;;＼　 　 　 　 '''';;;;;　　　 ,,,,;'';,
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一１５５．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　今のところむやみやたらに暴れ回る事はなさそうなので、
　　集中を解かずに精霊視力で見れば以前にも増して
　　―――何かしらの薬や魔法による操作をされていると分かる程に―――
　　精神の精霊が暴走しており、理知的な自我は欠片ほども残っていないように見受けられる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::／!:::ヽ::::::::::::::::::::::::::!:::::::｀ヽ、｀ヽ二ﾆﾆ＝＝‐‐--､__:_:::::::::::::::｀ﾞ‐-､__:::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::::::::／:::::|!::::ヾ、::::::::ヽ::::::::::i｀ﾞ‐--､_ヽ∠´￣￣￣￣｀ﾞ`ヽ､,,_｀ﾞヽ､ヾ‐､_:::::::::::｀ﾞ‐-:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'::::ｲ／:::::::::::i !:ﾄ::ヽ:::::::::::ヽ:::::::::l　　　 //`‐ﾞﾆ=‐ __　　　　　　 ｀ﾞヾ､, ﾞ!::｀ﾞ‐ﾆ=‐-:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:/::ｿ::::::::::::::ハ.l! !:::l!::::::::::ヽ:::::::::ヽ 　 //　　 　ｒ'´(;;)ﾞ）　　　　　 ／ﾂ'' |:::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::::::::::/:::ハ　ﾄ､:＼ヽ:::::ヾ､::::::ヽ. | !　　　　｀‐-‐"　　　　 ／彡" U !::::::::::::ﾊ:::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::/::/___ ﾍ ﾄ､::::::ヽ､::::::ヾ::::ヽ::ヽ|　　　　　　　　　　 ／彡''　　　 |:::::::::::|　!:::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　::::/:::::::/:(´ｒ‐‐ヾ.ヾﾄ､＼::::＼::::＼:::＼ゞ､,,_　　　　　__,,. '"彡"　　　　　|::::::::::i　 |:::::::::
　「精神の精霊が暴走して 　 　 　 　 　 　 　 /!:::::::::|::::V;}　 ／ |!　＼ヾ::::ヾ＼:＼:::＼ヾ､ｰ‐--‐''"彡''　　　　　　　　|::::::::| 　 !::::::::
　 自我が失われている………　　　　　　　　 /::::::::::i:::::{;iｊ／　　　　　 ＼::::::ヽ、＼:::::'::ヾ、≡=三彡　　　 　　 　　 　|::::::::i　　|::!::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃:::::ｒ‐''´　　　　　　　　　　＼:::ヽ.　 ﾞ‐-､_ヾ､　　　　　　　　　　　 　　|::::::/　　|::|!:::
　 これは………強力な洗脳です！」　　　　　|!::|:::::|　　　　　　　　　　　　　　ヾ､ 　 　 　｀￣　　　　　　　　 　i 　 　 |:::/ 　 　!:|i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 li::|::::::ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　!　　|:/　　　 |:!|:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ::::|!:::::|::lヽ、　　 ｰ‐-､.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　し'　　,ﾘ　　　　|:i|::::
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ|!::::i:::::l　　 ｀!　　　　　　　　　　　ヾヽ､_　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 |:|l::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞi:::::l::::::l､ 　 '　　　　　　　　　　 　　 ｀ヽヽ　　　　　　　　　　　　 　　 　　 　　ﾘ::::::

一１５６．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　拷問と並んで洗脳は殆どの国で禁止されており、そもそも手段も失われて久しいはずなのだ。
　　
　　それをするのはおそらく、詰め所から情報のあった黒ローブの者であろうと想像するには容易く、
　　今この状況で、たった三人で対応するには難い。
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　　　　　　　　　　　　　　　,．-─‐‐ - ､
　　　　 　 　 　 　　 　　／　　　　　　　 ｀ヽ､
　　　 　 　　 　 　　　 /　　 ,　‐-､　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　 /　　 / ,人　 Y^ヽ　　　　　＼
　　　　　　　　　　　j　　 /ヾ =jk'　,!;:::.:.｀`ｰ- ､　　 ＼
　 　 　 　 　 　 　　l　　 j　, ≧≦ｲ､.:.:.__＿ _　 ＼　　 ＼
　　　　　　　　　　　＼_ Yﾉ,ィﾆ　‐ ── ‐ -ｭrQ､｀ヽ　 ,ﾉ
　　　　　　　　　　　　　｀ﾌ´　/　／　　　_／^`ヾ　＼_Y′　　　　　　「くそっ！
　　　　　　　　　　　　　/__,　- ─ rr '"´＿__,,　 !　　 !j　　　　　　　　 出遅れたかっ！」
　　　　　　　　　　　　　´`T´ゝ‘-'ﾞ「j;;:.ゝ‘-'′　j ,ｲk !
　　　　　　　　　　　 　 　　!j　　　1　;::. ￣　　　j N ,ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　`!　　,rゞィｰ-､､　　 i ﾚ /!
　　　　　　　 　 　 　 　　 　 |　 '´ｰ=ﾆﾆ>ゞﾞj　 ﾉｿ´1
　　　　　　　　　　　 　　 　　ﾄ､　　 ー-''　　 ,ｲ;::＿」＿
　　　　　　　　　　　　　　 ／ ,ﾊ､,,,_ _　　__,,ノ,」┐　　　|
　　　　　　　　　　　　＿_」 「ﾆ Y､ 二Y二ﾌ-‐' ┤　　　l
　　　　　　 _ ,､-‐'"´.:.:.:.:.ﾄ､|　| |　　　　 //.:.:.:.:.:.|　　 　L ー- ､　＿
　　　　 ／/,r'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ!　| |ｰ ､　 /i !.:.:.:.:.:.:.|,．-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.｀`ー-rrｧ､
　　　 ,/／j」､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽj 」ﾆﾆﾆﾆｿ/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,f// 久
　　　/'´ 　　　　￣｀`ｰ ､.:.:.:.:i 「 ー-//.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,．-───　‐ ─　‐-y'ー'　　ﾞi
　　 /　　/　　　　　　　　ヾ.:.:.l |　　//.:.:.:.:.:.:.:.:／　　　　　　　　　　 　 /　　　　　」



――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　幸い、館のメイドなどは普段から申しつけている通り、
　　有事の際の対応方法として指示があるまでの部屋待機に徹しているようだが
　　衛兵、騎士など外部に連絡する係のはずだったアストナージが
　　一番最初に殺されてしまった為、素早い援軍は望めそうになかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

一１５７．
―――――――――――――――――――――――――――
　　扉を破砕された轟音などを聞きつけた近所の者が
　　あるいは衛兵や騎士に連絡をしている可能性もあったが、
　　それをあてにするには危険すぎる状況だ。
―――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　　　　　　　「コナタ！　　　　　　　　　　　　　　　 '　'　.ｌ::::::::l　 　 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　　　　 そこは危険です、下がって！　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　　　　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　　　　　　　　　 コナタ！」　　　　　　　　　　　　.　 　 　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 　 　 ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　" . ';ヽ　　　　　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　'|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　　　　　　　　　'i::: '　　　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!'i　　　j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｿ. 　　　/　　 ﾝ　　　　　 ､　',　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　 / 　 　 　 　 　',　', 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　 '　　 / 　 　 　 　 　　 i.　', ｌ

一１５８．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　下手に近づいてキル夫を刺激する訳にもいかない、と座り込んでいるコナタに声を掛けるが、
　　やはり突然の衝撃と、元々持っていたトラウマの併発とでまったく聞こえていない様子。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　 　 　 　 r,/''"´￣｀
　　　　　　　　　 l::|　 　 　 　 　 ／!
　　　　　 　 　 　 l:!　　　　　 ／.::/
　　　　　　　　　　ヾ:.　　＿/.::.:∠-.－::.::ァ
　　　　 　 　 　 　 , ゝ´.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::＜、
　　　.　　 　 　 ／.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:｀ヾｰ
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　　　　　 　 /.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.:　i . :.:.i__::丶、
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　　　 　 　 i.::.::.::.::.; ,::.::.::.::.::.　.　: ::.::.::.:l:.::.:i:.::|
　　　　　　 l.::.::.;:;';';';';';';:,.::.::.::.::.::.::.::i::.::j､::.;{::.:|
.　　　 　 　 l:.::;';';';';';';';';';';';.;';.::.::.::.::.l::.::l Υ|::.:|
　　 　 　 　 l.::;';';';';';';';';';';';';';'.::.::.:.:/:.::ﾊノ.::|ヾ|　　　　 「助けて、助けて………」
　 　 　 　 　 !.;';';';';';';';';';';';';';';.::.::./::.::|　|::.:|
.　 　 　 　 　 l.';';';';';';';';';';';';';';'::.::/.::.::|ノ|::.:|　；
　　　　 　 　 ；},';';';';';';';';';';';';';'::./::.::.::l　!.::.|；
.　　　　　　 ； l.:l.';';';';';';';';';';';';';/::.::,::.::!_|.::/　；
　　　　 　 　；l.::.!.';';';';';';';';';';';'/::.::.;;.::.:|l!ヾ、；　　ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ
　　　　　　 ；l.::|::.::';';';';';';';';';'/.::.::.;;';:.::.|l!l!|ﾞ!　；

一１５９．
――――――――――――――――――――――――――――――
　　―――その膠着した状態を、また遠くから監視している者が居た。
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,、､-‐‐‐‐-　､.,_
　　　　　　　　　 　 　 　 _､-'' ｀　　　　　　　　　　´''‐ ,_
　　　　　　　　　　　 _､‐｀　　　　　　　　　　　　　 　 　 ´'‐,_
　　　　　　　　　　､ ｀　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　　　_
　　　　 　 　 　 ､｀　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼　　　　　　　　　 ,
　　　　　　　　,｀　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ　　　　　　　　 ´_
　 　 　 　 　 ,｀　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ　　　　　　　　 ',
.　　 　　　　,′　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ　　　　　　　 '.
　　　　　　 ;　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　　 　 　 :
　　　 　 　 !　　　　　　　ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/ 　 　 　 　 　 ｉ
　　　 　 　 !　　　　　　　λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У　 　 　 　 　 　 ｉ
　　　　　　 ,　　　　　　　ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;§;;;|;;;;ゝ　　　　　　　 ;
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　 　 　 　 　´,　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;∧;;;ゝ＝//;;;;∧;;;;;;;;;＼　　 　 ,'
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　　　　　　　　 ^､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､｀
　　　　　 　 　 　 ' _　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　_ ｀
　　　　　　 　 　 　 ´-._　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ､‐｀
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　　　　　　　　　　　　　　　 ´''‐- ､、.,,_____,,..､､-‐ ''｀



　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,..　-──-　.、
　　　　　　　　　　　　　　　　, ‐'´　　 ＿＿ 　 　 `ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　 ／　, ‐'"´ 　 　 　 ｀`''‐､　 ＼
　　　　　　　　　　　　　 /　／　　　　　　　　　　 　 ＼　ヽ
　　　　　　　　　.　 　 　 y'　　　/` ‐ 、　　　 ,.. -'ﾍ 　 ヽ. }
　　　　　　　　　　　　　,' 　 　 /　　　/｀,ゝ' ´ 　 　 ヽ 　 Y.
　　　　　　　　　.　　　 i　　　 ,' 　 　 {　{　　　　　 　 ヽ 　 `、
　　　　　　　　　　　　 l　 　 ,ｲ─- ､.._　ヽ　,,　_,.. -─:}　　　!
　　　　　　　　　.　 　 |　　r‐i|　ｰ=ェｪ:ゝ　,.∠ｨｪｪ=ｰ' |r ､.　 l　　　　「ふむ？
　　　　　　　　　　　　|　　{ﾄ｣l|.　　　　　 : | "　 　 ｀`: |!ﾄﾘ　　|　　　　いまいち反応が鈍いな。
　　　　　　　　　.　　│　　ヽ､|　　　　　 ;.｣_　　　　　 |'ソ　 　 !
　　　　　　　　　.　　│　　 　 ヽ 　 　 r──ｯ　　　 /ﾉ　　　　|　　　 憎悪の対象が今の男だったか？」
　　　　　　　　　　 　 |　　　 　 lヽ　　　￣￣ 　 　 / ｲ　　　　│
　　　　　　　　　.　 　 !　　　 丶ヾヽ　　　 ~　　　, '　ﾉ　│　　 !
　　　　　　　　　　　　 ﾄ.　　　　ﾐ.ゝ ヽ.＿＿__.／　　/　 l　　 /
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　ヽ├ ============/ｲ　,' / , '
　　　　　　　　　　　　　　＼. 　 |　 　 ゝ-|||‐ァ'　 　 |ノﾚ'／
　　　　　　　　　　　　　　 　 ` ┤　 　 ヽ.|||ノ　　　　ﾄ,
　　　　　　　　　　　 　 __,.　-‐'´ゞ:=====|||====＝' '　` ｰ-



―――――――――――――――――――――――――――――
　　期待していた程の殺戮劇が起こらず、拍子抜けした声が漏れる。

　　錫杖さえ奪えば皆殺しでも構わないと指示してあるはずなのに
　　動かないと言う事は、何かしら躊躇っているのだろうか。
―――――――――――――――――――――――――――――

一１６０．



　　　　　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　　　　　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ
　　　　.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!　　　　　　　「コナタ！」
　　　　　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼
　　　　　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ
　　　　　　　　　!::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i
　　　　　 　 　 　l:!:::l:::l !　　,r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i
　　　　　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i 　u　 l:::::::::::::ハ:!
　　　　　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　　 ｨ::/i:::::ﾊi　 !
　　　　　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_
　　　　　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　　　 ／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　　　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　　　　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　　　　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i



―――――――――――――――――――――――――――――
　　もしくはもっと強力な相手でも居るのかと魔法の目を巡らせれば、
　　一人の―――見覚えのある男が水晶玉に映し出される。
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,、､-‐‐‐‐-　､.,_
　　　　　　　　　 　 　 　 _､-'' ｀　　　　　　　　　　´''‐ ,_
　　　　　　　　　　　 _､‐｀ ,r/　,;-ー_　　　　　　　　　　´'‐,_
　　　　　　　　　　､ ｀ 　 /:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､ 　 　 　 　 　 ^ _
　　　　 　 　 　 ､｀　　　,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､　　　　　　´ ,
　　　　　　　　,｀ 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　 　 　 　 　 ,｀　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ　　　　　　　',
.　　 　　　　,′　　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!　　　　　　　 '..
　　　　　　 ;　　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼　　　　　 　 :
　　　 　 　 !　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ.　　　　　　ｉ..　　　　f´￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
　　　 　 　 ! 　 　 !::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i　　　　　　　ｉ　 　 　 |　　む、こいつは……… |
　　　　　　 ,　　　 l:!:::l:::l !　　,r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i　　　　 　 　 ;.　　 　 乂＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
.　　　 　 　 '.　　 　 !|:.!::', 　　i'/￣￣ i 　u　 l:::::::::::::ハ:!　　　　　　 ,′
　 　 　 　 　´,　　　　l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　　 ｨ::/i:::::ﾊi　 !　 　 　 　 ,'
　　　　　　　 ´_.　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_ 　 　 　 _｀
　　　　　　　　 ^､　　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　　　 ／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ-､._
　　　　　 　 　 　 ' _　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　_ ｀
　　　　　　 　 　 　 ´-._　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ､‐｀
　　　　　 　 　 　 　 　 ´‐､,_　　　　 　 　 　 　 　 　 _,､‐'｀
　　　　　　　　　　　　　　　 ´''‐- ､、.,,_____,,..､､-‐ ''｀

一１６１．



　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,-,ﾆ二ニ=､
　　　　　　　　　　　　　　　　／／
　　　　　　　　　　　　　　　 /:/
　　　　　　　　　　　　 　 　 ヾ`､
　　　　　　　　　　　　　　　　＞+:‐: ´:￣: ￣: :`:'￣:l.､＿＿＿,／
　　　　　　　　 　 　 　 　 ／: : : : ／: : : : : : : : :/ : : l: : : :く‐´´
　　　　　　　　　　 　 　 /: : : ／: : : : : : : :/: :/: : : : l: : : : ､:＼
　 　 　 　 　 　 　 　 　 l: : : /: : : : : : : : :/: /l: : : : ∧ l: : : :ヽ: :ヽ
　　　　　 　 　 　 　 　 /: :/: :/: : : _,:_∠Ｌ､:::/: : : /::::l l: : : : :ヽ: : ヽ
　　　　　　　　　　　　　l: /://: : : : :／::/':::::/: : : /::::-H､: : : : : lト､: ヽ
　　　　　　　　　　　　　l://://: : : ｲ:::::::]::::::/: : :/:::::::::l∧: : :l: : :l　｀ヾ､
　　　　　　　　 　 　 　 l/: :l l: : : ｲ:l::::::::::::/:::/://::::::::::::::l: : :ﾊ: : l
　　　　　　　　　　 ；　 l: : :l: l: :/.:l.:l:::::::::::l/:'::::::::::::::::::::::::l: : :l:N: :l
　　　　　　　　.　　　； l: : : W/: : N　　　　 　　 ､ ::::::::l::l: : lN　V　　　　「痛い、痛いよ………
　　　　　　　　.　　；　 l: : : : :ﾊ: : : ト､　　r_―ｭ　　 ノlﾊ: :ハl
　　　　　　　　　　　； l: : : : : :､: : : 「ﾌ｀‐- ,､-┬:Ｔ´: :l　l/ ；　　　　　　 おかあさん、おかあさん………
　　　　　　　　.　　；　l: : : : :,レ､: : :ヾ､　　/､｀Y/:l:l: : l　；　　　　　　　　やめて、やめて、やめて、やめて
　　　　　　　　　 　； /: : :rﾆミミヽ: : ヾ､-─┤ `┤: : l　；　　　　　　　　噛まないで、食べないで………」
　　　　　　　　　；　 /: : /￣＼ヾヽ: : :ヾ､　　 l　　ll: : l ；
　　　　　　　　　　；/: : /　　　 ヽヾヽ: : lヽ　　l　 /l: : l　；
　　　　　　　　　； /: : /　 　 　 l ＼ヾ､: l ヽ　 l //l: :/　；　ｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀｶﾞﾀ
　　　　　　　　；　/: : :l　　 　 　 l ハ ヾ､l､､l　 l////l　；



――――――――――――――――――――――――――――――――
　　床に転がっている死体の他、領主とおぼしき中年、
　　へたり込んでいる十五歳ぐらいの少女には見覚えが無かったが―――
　　否、その面影は記憶に引っかかるものがあった。
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,、､-‐‐‐‐-　､.,_
　　　　　　　　　 　 　 　 _､-'' ｀　　　　　　　　　　´''‐ ,_
　　　　　　　　　　　 _､‐｀　　　　　　　　　　　　　 　 　 ´'‐,_
　　　　　　　　　　､ ｀　 ヾ`､　　　　　　　　　　　　　　　　　^ _
　　　　 　 　 　 ､｀　　　　＞+:‐: ´:￣: ￣: :`:'￣:l.､＿＿＿,／´ ,
　　　　　　　　,｀　　　 ／: : : : ／: : : : : : : : :/ : : l: : : :く‐´´　 　´_
　 　 　 　 　 ,｀　　　 /: : : ／: : : : : : : :/: :/: : : : l: : : : ､:＼　 　 　 ',
.　　 　　　　,′　　　l: : : /: : : : : : : : :/: /l: : : : ∧ l: : : :ヽ: :ヽ　　　 '.　　 f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
　　　　　　 ;　　　　/: :/: :/: : : _,:_∠Ｌ､:::/: : : /::::l l: : : : :ヽ: : ヽ　 　 :　　 |　　―――こいつもか。　　|
　　　 　 　 !　　 　 l: /://: : : : :／::/':::::/: : : /::::-H､: : : : : lト､: ヽ 　 ｉ　　.乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
　　　 　 　 !　　　　l://://: : : ｲ:::::::]::::::/: : :/:::::::::l∧: : :l: : :l　｀ヾ､　 ｉ
　　　　　　 ,　　　　l/: :l l: : : ｲ:l::::::::::::/:::/://:::::::::::::::l: : :ﾊ: : l　 　 　 ;
.　　　 　 　 '.　　　 l: : :l: l: :/.:l.:l:::::::::::l/:'::::::::::::::::::::::::l: : :l:N: :l　　　　,′
　 　 　 　 　´,　　　l: : : W/: : N　　　　 　　 ､ ::::::::l::l: : lN　V 　 　 ,'
　　　　　　　 ´_　　l: : : : :ﾊ: : : ト､　　r_―ｭ　　 ノlﾊ: :ハl　 　 　 _｀
　　　　　　　　 ^､　l: : : : : :､: : : 「ﾌ｀‐- ,､-┬:Ｔ´: :l　l/ ；　　 　､｀
　　　　　 　 　 　 ' l: : : : :,レ､: : :ヾ､　　/､｀Y/:l:l: : l　；　　　 _ ｀
　　　　　　 　 　 　 ´-._　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ､‐｀
　　　　　 　 　 　 　 　 ´‐､,_　　　　 　 　 　 　 　 　 _,､‐'｀
　　　　　　　　　　　　　　　 ´''‐- ､、.,,_____,,..､､-‐ ''｀

一１６２．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　今まで行ってきた事からすれば当然か、と愉悦に似た笑みが漏れる。

　　それでも歯牙にも掛けぬ存在や、すでに済ませた実験の残滓に拘う暇など無い。
　　自分の目的以外に、時間や余力を取られる事などあってはならない事なのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　!_,..::::::::=＝:＝=::::;,,,　　　　　 　　ヾ
　　　　　　　　　　　 ,／"　　ゞ_,.;:"`~`ヾ,　~`;:::,._　　　　　　`;,.
　　　　　　　　　　　/　,.r-・”~~　　　　　ヾ　　　~~=-;;:...　　　 i
　　　　　　　　　　/　 ,.i　　　　　　　　　　 ヾ　　　　　 `;:,,,　　 i
　　　　　　　　　/　　,.ｒii　　　　　　　　　　　ヾ　　　　　　~`;::,,i
　　　　　　　　 /　　i,i　ii　　　　　　　_,,,,:=-- .ヾ::　　　　　　　ヾ_
　　　　　　　 ,/　　 i;i　 ,,i　　　　 _,,.;'ゝ.-.-;;'　　ヾ:::::....　　　　　ヾ　　　　　　　「―――ククッ。
　　　　　　　.r　　yii, =;,.. -;" 　,"~/'-'"ﾆ;'"　　　.ヾ　,.:"^;.　　 　ヾ　　 　 　 　 腐れ縁とはこのことか、
　　　　　　　l　:': ::::i.∠.,(ﾂﾍ　　　　"　　　　　　　. i: i r　 i　 :　:　　i　　　　　　性懲りもなくちょろちょろと纏わりつきおって。
　　　　　　 .l　::: ::::::l　　'　 .,i　　　　　　　　　　　　.i::i.iﾍ　i　 :::.:::　　|
　　　　　　,l　:::: :::::::::;,　 　.:;" ,　　　　　　　　　　　.i:i　　,i　..::::::::::::　|　　　　　 ちょうど良い、そのまま始末されてしまえ！」
　　　　　　l　:::::: ::::::::'.　　 　`　　　　 　__.,,　　　　 .i!　 /.::::::::::::::::::::::|
　　　　　 ,l　::::::::.::::::::::{　　　　 -=＝二..ｿ　　　　　　=":::::::::::::::::::::::::|
　　　 　　 l　:::::::::::::::::::ﾍ　　　　　　"`::.,　　　　　　　l::::::: i::::l:::::::::::::|
　　　 　 　,l　:::::::::::::::::::::::ﾍ　　　　　　　　　　::::/　　j::::::: l::::ll:::::::::::i
　　　 　 　 ,l .::::::::::::::::::::::::::ﾍ　　　　　　　　:::::/　　 "";'ノj丿|:::::::::l
　 　 　 　 　` ,,,,,::::::::::::::::::::::::ヽ　　　　　　.::::/　　　　　　　 ,j:::::ノ
　　 　　 　 　 　 ~`=-;,:::::::.___;;i,m;,:::_::;.;:`_;,,/　　_-=＝;""l　""
　　　　　　　　　　　　　 　　　　i＼　　　_,...;;:::""　　　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　 ___,i ﾍヾ,/"~　　　　　　　　　 l＜,.........____
　　　　　　　　　　　　　　／　,i.,_　］［_}β　　　　　　　___ゞ　　　　　　~~~~~~~~~~
　　　　　　　　　　　　,／　　 i.,_　.］［_}β　__,.-=ゞ"-"~~~~
　　　　　　　　　　,／　　　　i_　 =i i==＝,""~
　　　　　　　　,／　　　　　　　`　i, i
　　　　　　;／/　　　　　　　　　 ,i　i
　　　　/"~//

二１６３．



　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,、､-‐‐‐‐-　､.,_
　　　　　　　　　 　 　 　 _､-'' ｀　　　　　　　　　　´''‐ ,_
　　　　　　　　　　　 _､‐｀　　　　　　　　　　　　　 　 　 ´'‐,_
　　　　　　　　　　､ ｀　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　　　_
　　　　 　 　 　 ､｀　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼　　　　　　　　　 ,
　　　　　　　　,｀　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ　　　　　　　　 ´_
　 　 　 　 　 ,｀　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ　　　　　　　　 ',
.　　 　　　　,′　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ　　　　　　　 '.　　　　　　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　　 ;　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　　 　 　 :　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　 　 　 !　　　　　　　ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/ 　 　 　 　 　 ｉ　　　　 ＼　　　非力なカトンボ共に　　　　　　/
　　　 　 　 !　　　　　　　λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У　 　 　 　 　 　 ｉ　　　　 ∠　　　魔法の洗礼を浴びせよ！　　＞
　　　　　　 ,　　　　　　　ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;§;;;|;;;;ゝ　　　　　　　 ;　　　　　／＿　くれてやった魔符を使うのだ！＼
.　　　 　 　 '.　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§;;Ц;;;§;;;|;;;;;;;ヽ　　　　　　,′　　　　￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　 　 　 　 　´,　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;∧;;;ゝ＝//;;;;∧;;;;;;;;;＼　　 　 ,' 　 　 　 　 　 /／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　　　　　　 ´_　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;∨;;;;;;;H;;;;;;;;;;;∨;;;;;;;;;;;;;;;＼　　_｀
　　　　　　　　 ^､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､｀
　　　　　 　 　 　 ' _　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　_ ｀
　　　　　　 　 　 　 ´-._　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ､‐｀
　　　　　 　 　 　 　 　 ´‐､,_　　　　 　 　 　 　 　 　 _,､‐'｀
　　　　　　　　　　　　　　　 ´''‐- ､、.,,_____,,..､､-‐ ''｀

二１６４．
―――――――――――――――――――――――
　　男から下された強い命令は
　　魔法がまだ接続されたままのキル夫に伝えられ、
―――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼　　　　　　　　　―――魔符を使うのだ！―――
　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　　「………マフ………ツカウ………」
　　　　　　　　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/
　　　　　　　　　　 　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У
　　　　　　　　　　 　 ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;N＿;;;;ゝ
　　　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§ﾉ二ヽr―マ;ヽ　　　　　 ＿___
　　　　　　　　　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;,,|／:::::／'／ヽ,／;;;;;＼　　　 |: : : : :｀'''--,,,
　　　　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;,,＿／／:::::::／;;;;;;;;;;;;;;;＼　 丿: : : : : : : : :ヽ
.　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;|;;;／ ／ヽ_／;;;;;;ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;×: : : : : : : : : : : :〉
　　　 　 　 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;／ ／;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: : : : : /￣
　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: :/
　　　 　 　　L.::::厂;　;r ／ ／　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;|/〈Ｘ,,;;""ヽ: : : :/
　　　　　　　／　　ﾉ.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ:入;;;;;;;;;;ﾍ,,〈_,;;ノ: : : : : /
　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ￣ ヽ_/
　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　｀ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　　　｀`ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;i::::;;;;;;;ﾘ
　　　　　　　　　｀ﾞ`‐‐-- ､;;/ﾍ:::ﾉ　　　　　|::::::入--‐‐‐´ゝ
　　　　　 　 　 　 __,∠;;;;;;;;;;;;;;//　　　　　　ヽ_ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
　　　　　　　　　〈、;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　　　　iﾆ｀ゝ;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ
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　　反復した彼はギクシャクとした動きで懐から魔符を取り出してしまう。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,　'′　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,　'´　　　　　　　　　　 ＼
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　　　　　　　　　　　　　　　　＿_,　-　'´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　 　 　 　 　 　 　 ヽ￣￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
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　　　　　 ,r'´￣　　　　ヽ　　 　 　 ,　- ､　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _,　′
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　　 　./　　　　 ＿,,,ノ-‐'　 　 ヽヽ .／　　　　　　　　_, - ′
　　　/　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　_,　-‐ '´　　　　　　　　　　　　　「ギギ………
　　./　　　　　　　 　 　 　 　 ,ｲ.l＿_　-‐ '´　　　　　　　　　　　　　　　　　　 マ………フ………」
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340 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 21:49:46 ID:3BGLQr.I キル夫パネェ。 元々の腕力と洗脳効果のブーストか？

二１６５．
――――――――――――――――――――――――――――――
　　これに素早く反応したのはエルだ。

　　魔法など使われてたまるかと先程目を付けていた精霊力の一つ、
　　暖炉の炎に精霊語で呼び掛けを行えば、
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　|:: ﾊ　　`　　　　　　　　　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　　　　　　　<火の精霊よ！>　　 　 　 　 　 　 　 　 |/l:ハ　　 ､　＿＿　　　　　　　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |ハ　　　　　　　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　　　　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　　　　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!　　　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､

二１６６．
―――――――――――――――――――――――――――――――
　　精霊視力を以てすれば見える、
　　薪の上で寝そべっていたサラマンダーがそれに応えて火線が走った。
―――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |　 |: :. 　　　 　 |: : .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |　 |　　　 　 　 .|: : : : : : .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |　 |　　　 　 　 .|: : : : : : : |i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 .| |　 |　　　 　 　 .|: : : : : : : |i
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| |　 | 　　 |＼ ＼|: : : : : : : |i
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　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 :..||＼||XXXl.!＼i＼i＼i＼ ＼.!i
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ; : '; :.|| ===|.!＼|＼i＼i＼i＼ ＼
　　　　　　　　　　.,..-''''"´.￣ ￣￣"ﾞ''''―　..,_ : ' :; : ' :; : ' l＼| 　 ＼i＼i＼|￣|: .
　 　 　 　 　 　 ./　　　　　　　　　　　 _,..,,,,.,,,__｀ﾞ''''ｰ--,,,,,,,,,,,,,___从人＼i＼| : :|: : .
　　　　　　　　./　　　　　　　　　 ,／´　　　　　 ´゛'''''''''''''''''''''￣ﾞ''//从 |＼| : :|: : :
.　　　 　 　 　 lﾞ 　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　 　　　＼　 |＼| : :|: : :
　　　　　 　 　!　　 　 　 　 　 　 !　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　＼|＼| : :|: : :
　　　　　　　　!　　　 　 　 　 　 .|　　　　　　　　　　　　　　　:.:＼_________＼|_;_;|: : :
　　　　　　　　.!　　　　　　　　　..ｌ,　　　　　　 ; : ' :; : ' :; : ' :; : ' :; : ' :; : ' :; : ' ; .＼
　　　　　　　　 |,　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /'i
　　　　　　　　 . ｌ　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /. i　　　　　　　 ／i
　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 j　　| 　 .,､-'/／|r" ﾘ
　　　　　　　　　　.ヽ　　　　　　　　　　 ヽ,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　|､-'"　,/:|　 ||　/
　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 ,,､- '"　|　r'.|/"
　　　　　　　　　　　　ヽ.　　　　　　　　　　　.＼　　　　　　　　　　　　　　　　 ,､-'"　　 ii　,／ |　|／ ／|
　　　　　　　　　　　　　ヽ,　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　r'"　,､-'|.　 ﾉ　|　　|　　,! |.　|
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　 　 　 　 　 　 ＼　　　　　　　　　 　 j　 /　　.|.　/　.|　　|　r".| |. /／|
　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　　 　 　 　 /／ ,ri　 |.　i　 .|　 r'　|　 |.ﾚ''|　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀'-、 　 　 　 　 　 ／. |　 |　| 　 |／　 .|　/ 　 |. r'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　 ｀'-、　　 　 　 |.　 | 　.|　〉 　 　 　 .|/　 　 |/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞ'-､　　　　|　 | 　 | /
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 　､＼　|/
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　 .､　　　　　　　　　 ＼＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ .＼　＼ ＼　 .､　＼ ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀　　＼　＼. ＼＼＼ ＼＼、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　゛　 .＼ .＼　 .＼ ＼

二１６７．
―――――――――――――――――――――――――
　　室内の空気を貫いて迸った火弾は
　　狙い違わずキル夫の持っていた魔符を燃え上がらせ、
―――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r' ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、 　 |　 　 /´　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ..）ヽ ﾉ|　　　　　　 ／　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾎﾞｯ　／:::::/´:::しイ　 _,　'′　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::;ィ::::::::::::::ヽ　_,ｲ 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| :::/. ｀ｰ-イ::::::｀::::/ 　 　 　 　 } ﾄ､　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＿_,　-|::: 　　　 　 て_:::／　　　　―く　）ヽ　 ＿,　ヽ
　 　 　 　 　 　 　 ヽ￣￣￣　　　　 ヽ　　　 　　／::/　　　　　　　　（ 　:|　⌒)ﾉ／
　　　　　　　　　＿, ゝ、　　　　　　　:､　　　:::＿::::ノ　　　　　　　,ｲ　 ) /　　（
　　　　　 ,r'´￣　　　　ヽ　　 　 　 ,　- ､　　　　　　　　 　 　 ／ 　 /'´　　,ィ
　　　 　 /　　　　 ､　　__,ヽ　　 ／ヽ、　,ﾘ　　　　　　　　　　/しl､　　　　 /:::し
　 　 　 /　　　　 　 ヽ　 ,ｨ冫イ、　　 V/　　　　　　　　　　_　|　　ﾉ―ｧ　ノ: ::イ　　ﾎﾞｯ
　　 　./　　　　 ＿,,,ノ-‐'　 　 ヽヽ .／　　　　　　　　_, - ′l、（　 /-'´: : :::ノ
　　　/　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　_,　-‐ '´　　　　　⌒)r―''´￣
　　./　　　　　　　 　 　 　 　 ,ｲ.l＿_　-‐ '´　　　　　　　　　　　　ﾘ
　 /　　　　　　　　　　　　 ,ｲ　ゝ_ノ
. /　　　 　 　 　 　 　 　 /　〉‐' 　　　　　　　　　　　　　　　「ライト………ニ…ン……グ………ス………
　　 　 　 　 　 　 　 　 /ゝ‐'　　　　　　　　　　　　　　　　　　ギギギ………？」
　　 　 　 　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　 ／
　　　 　 　 　 ／



　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::厶=-‐-.､＿
　　　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::/.:::::::::::::::::|　ハ
　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/.:::::::::::::::::::jこ jﾘ
　　　　　　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::/.:::::::::::::::::ィﾖ 　{{　　　　　　　　　「今だ！」
　　　　　　　　　　　　l.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::..＜´　|主 　}ﾄ､
　　　 　 　 　 　 　 　 ＼.:.:.:.:.:::::::::::::::::／ 　 ＼'｢ ｀ヽﾉﾘ.::',
　　　　　　　　　　　　 　 ` ー一'´￣　　　　　 ヽｰ彡'.::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ.:.::::::::::::丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨.:::::::::::ハ　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨/.:::::::::::}　　　　　/＿/￣/　 /／/ 7
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V.::::::::::::::ヽ　　　　　　　匚　 ./i／i／　∧∧　,ヘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〈.:::::::::::::::::::}　　　　　　　/　./　　　　　l /l / / ./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 Y.::::::::::::::入　 　 　 　 /　./　　　　　　　 ／.／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ー=≦∨〉　　　　　￣　　　　 　　　　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }主}｀ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｊ主ｊ_ ,ﾉ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /ー‐ヘ.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ー‐彡'



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　　今がチャンスと見て取った彼はコナタと錫杖を回収すべく、そちらに走り寄る。
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二１６８．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　ところが。
　　燃える魔符を無造作にを投げ捨てた右手が再びメイスを振り上げ―――
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:: :::: ::::: :: : : .: : : :: : :: ::....
　 　 :. ::::: ::: :: : :: ::: .. ::: :: :::::: :: ::: :: : :..　　　　　　　　 ／　 ／
　　　　　　　　　　　　　 　 　　 ::: :: : ::::: :: :..　　　　／　 ／
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 : ::: :::::: :: :: :::／　 ／..
　　　　　　　　　　　　　,从　　　　　　 __　　 .／　 ／:: ::::: :: :...　　　「………ばぁく
　　　　　　　 　 　 　 ,ィ⌒ヾ 　　__, -く:::ヽ／　 ／
　　　　　　　　　　／´. : :: ::.: . ィ:､::＼:::l::j⌒ヽ
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 l:､::::}::::::j/´:⌒::::l....　　ｽｯ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 〈⌒／ヽ／/::::::::ﾉ: : : : :: : : . .... ...　　　　　　　　　　　　　　れぇつ……」
　　　　　　　　　　　　　 　 　／ヽ／::::::::::／　　　::: :: ::: : ..　　　 　 . . .....
　　　　　　　　　　　 　 　 　レ／:::::::::::::f 　 　 　 　 　 　 　 　 　 : :::: ::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　ｉ:::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　|:::::::::::::::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　 　 |::::::::::::::::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　}:::: :::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　 　 j::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::'、

二１６９．
―――――――――――――――――――――――――――――
　　叩き付けられた足下の点を中心として
　　床から衝撃波が円形に吹き上がり周囲の全てを巻き込んだ。
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　 .,､-ｰ''ｱ:;､-'/　　　　　　 ,,､-'７　　 　 　 　 /￣/＿
　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 ／／／/了　 　 　 /　／　　 　 ,-ｰ―"　＿＿/
　　　　　　　　　　　　　　　.ｲ　　i::/　/ / / 　 　 　 / ,r',,,,,､- ｧ／-z''"　　/
　　　　　　　　　　　　　　　,|　 ノ:ﾉz''"/／ ,,､-ｰ ''"　　,､-ｰ''"　 ／／/　/
　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾘ　/;;;､-''了　 / ,､z''"／|　/ 　 　 　 |／ ./　/ 　.／＼
　　　　　　　　　　　　　　 i　　 ,､-ｰ'　　 '"／ ／　/ /　　　　　　　 /／　　 ＼／;;､-'/
　　　　　　　　　　　　　　/　「"　　 　 　 ,ﾉ ／　 / /　　　　　　　　　　　　　　､-",､ '
　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　/　　 　 　 　 |/　 　 ﾚ 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　／;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:､〉　　　|　 |　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　／#i､;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/　　 　|／　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ﾚ",;ｨゞ　　　　/＿＿／
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:￣＼＿／ゞ⌒　　　　 　 /!ｼ"⌒Y';;;;;;;;;;;;;＼!#＿,;〉　　　　;:;:;:;:f´￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
ゞ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:"|!|";:;:;:;:;:;:;:;:;:;:ﾍ,;／く;;;;;;;;;;;:::::::::::::;;;;;;;;;;;”;:;:;:ヾ!、;:;:;:;:;:　　|　　じぃん………　　　|:
i|;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;://!　　　 　　 ,/!;;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;!ﾍ　　　　　乂＿＿＿＿＿＿＿_ ノ;:
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;:;:ゞ/7.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/!,;|!　　　ﾍ<;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;; /ｼ` 　　　/#!ﾍｼ.:.:.:.:.:.:.:.:/!＿;:;:;:;:;:;:;:;:;
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;:;:;:;:`＼/!､＿_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼ヾ､.:.:.:.:.:￣,;;”~",;￣.:.:￣~ ‘￣”ヾ~.:.:.:.:.:.:＿.:.:.:.:.:/! 　 　 　 　 〉ｨi|、;::;:;:;:;:;:
;:;:;:;:＿/!ｼゞ 〈.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i＼ﾍ､、＿,ｲ　　　　　　　　　､_,;!､＿_/#!､!_ ,;/ｼﾍ､　　　　/#|!‘;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
;:;:;:;:;:7;:;:;:;:;:ヾ＼＿_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:￣”",;;.::￣~＾‘,.::;.:.:.;;;:,,￣,;~~.:ヾ.:.:,;:;､.:￣"‘,;.:~~.:.:.:.:＿,;ｨﾍ|!／＼;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:|!/l､〈.:.:.:.:.:.:.:,;;:*.:.:‘.:.:,.:.:;.:.:.:.:.:#.:.:.:.:.: ﾍ.:.:.:.:.:,;.:.:.:.:‘,;;;;:.:.:.:.:,;;､.:.:.:.:.:.:.:.:》,;.:.:⌒`;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::

二１７０．



　　　　　　　　..　/⌒i
　　　　　　_,,..､　.|　 / ,..-､　　　　　　　　　 /`l　_
　　　　 　 l 　 l　| /´ l,､_ノ　　　　　　　　　l　 |/ 〉
　　　　　　|　 i'　'´_,,、　　　 . ,-､,-‐'''"＼　l　 |ﾚ'　　　　　 　 　 　 　 　 _,,..、　　　　　　 ,..､
　　　　 　 .|　 し''´　」　　　 . l　　._‐t　 .|　 　'　　　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　｀ｰ､　　　 ／　ア
　　　　　　.|　 ,,.-''´　　　　　 ヽ┘　l　 / 　　　　 r‐､,,,-----――-、　　 ヽ､　 'l　 ／　／
　　　 　 　 |　.|　 　 　 　 　 　 　 　 !　 l 　　　　　 ｀――''''''''''''''''''''′　　　 ｀ｰ',／　 /
　 　 　 　 ..l､_ﾉ　　　　　　　　､　.__/　 l　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／　 /´
　　　　　　　　　　　　　　　 ｜￣　　__,l　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 「　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　 └-...‐''ﾞ .　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀''"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　||￣￣￣￣￣ ||
　　　　 ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|| 　　i´T｀i　　 ||＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　 三三三三三三三三三三||　　 |__|__l　　 ||三三三三三三三三三三
　　　　 __　 ＿_,;　 ＿_ 　 ＿_;;　　||;　　　　　　　 ||　　 ＿_,,　 ＿_;;;　＿__　 __
　　　　 _||　||_|_||　||_|_||　||_|_|| 　; ||;　　 ＿__　 # || 　　||_|_||　||_|_||　||_|_||　||_
　　　　 _||　||_|_||　||_|_||　||_|_|| 　 ;||　　;;||_|_||　　 || 　　||_|_||　||_|_||　||_|_||　||_
　　　　 　　 ￣'' 　;:;￣ 　 ''￣ 　　||;;　　||_|_||　　 ||
　　　　 三三三三三三三三三三;人;;从;;；;:人;;:.｀）三三三三三三三三三三
　　　　 __　 ＿_ 　 ＿_ 　 ＿_;;:（´⌒;人;;从;;；;:人;;:.｀）" ＿_,,　 ＿_;;;　＿__　 __
　　　　 _||　||_|_||　||_|_||　||_|(´⌒;:⌒`～;;从;;人;;;⌒｀;: ||_|_||　||_|_||　||_|_||　||
　　　　 _||　||_|_||　||_|_||　ﾞ;`（´⌒;;:⌒∵⌒｀);（´∴人;;ﾉ`／　 ||_|_||　||_|_||　||_
　　　　 ＿＿＿＿＿＿ ' (´:（´;⌒;从;;人;;;⌒｀）⌒;;从;;ノ;;⌒ﾞ.＿＿＿＿＿＿_
　　　　 　;;;";;;:::::;; ﾞ"'':::"(´⌒;（´∴人;;ﾉ;⌒｀）⌒;（´∴;ﾉ;⌒｀）;　ﾞ" ﾞ" ;:;:;:"";;:;:
　　　　 　;:;ﾞ" ;:;;:;:''"";:;:;:;:;:ﾞ" ﾞ";.／　 　 　 　 　 　 ＼"'';;;";;;:::::;; ﾞ"'':::::;;;;;;;" ""ﾞ
　　　　 ⌒))ゝ⌒ゝ）⌒ﾐ⌒;;;)i^i　　　 　 　 　 　 　 　 i^i⌒ゝ;:;）⌒ゝ;;;⌒ゝ⌒´;;
　　　　 ;;ゝヾ;ヾ;:⌒;;Ｚ;）;.;)ヾﾐ|｜　　　　　　　　　　　｜| ゞ（(;;;ゝヾゝヾ;ヾ⌒;;;）)
　　　　 ゝヾﾞヽｿ;;;)ヾｚ;:;ｿ(;;;ゝ|｜　　　　　　　　　　　｜|)ゝ;;;;ゝ））;ヾ;:;;;ヽｿヾﾐ;ｿ
　　　　 '"''"`''´"''"´"''"''"''`"´　　　　　　　　　　　　｀"''"''"`"´"''"''"`"´"''"''

二１７１．
――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　台風の目に立つキル夫は生存者を捜すように、煙の中をゆっくりと見回した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼
　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　「ギ………
　　　　　　　　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/　　　　　ギギ…………」
　　　　　　　　　　 　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У
　　　　　　　　　　 　 ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;N＿;;;;ゝ
　　　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§ﾉ二ヽr―マ;ヽ　　　　　 ＿___
　　　　　　　　　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;,,|／　／'／ヽ,／;;;;;＼　　　 |: : : : :｀'''--,,,
　　　　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;,,＿／／ 　.／;;;;;;;;;;;;;;;＼　 丿: : : : : : : : :ヽ
.　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;|;;;／ ／ヽ_／;;;;;;ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;×: : : : : : : : : : : :〉
　　　 　 　 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;／ ／;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: : : : : /￣
　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: :/
　　　 　 　　L.::::厂;　;r ／ ／　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;|/〈Ｘ,,;;""ヽ: : : :/
　　　　　　　／　　ﾉ.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ:入;;;;;;;;;;ﾍ,,〈_,;;ノ: : : : : /
　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ￣ ヽ_/
:::::::::::::::／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::｀ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ:::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
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モクモク:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
(⌒;;;;,,.⌒）:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(;;　｀)⌒;;,,.⌒）
（⌒;;;;;⌒;ソ⌒;;)::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;::(⌒;;⌒ヽ;;　｀)⌒;;,,.⌒
;;;; )(⌒;;ヽ;;｀)⌒;;,,.⌒）::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::(⌒;;;ソ⌒)(⌒;;ヽ;;｀)⌒;;,,."）
⌒;ソ⌒;;;;'''）ヽ）;;;;;;;,,,,,,）ソ''⌒;;）⌒;ソ⌒;;;;!"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ''⌒モクモク
⌒;;;;!"'''）ヽ）;;;;;ｿ;;,,,,,,）ソ;ソ⌒)(⌒;;ヽ;;;;;'''）ヽ）;;;;;;;,,,,,,）ソ'';｀)⌒;;;;'''）ヽ）;;;;;;;

二１７２．
――――――――――――――――――――――――――――――
　　もうもうと舞う埃や灰の中、
　　膝を突いているコナタと吹き飛ばされて壁に叩き付けられたエル、
　　隅で気を失っている公爵の内、
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　 　 　 　 ＿
　　　　　　　／￣ヽ／　 　￣ヽ
　　　　 　 ./　　/`´　　　　　　､＼　　　　　　「ゲホッ、ゲホッ………」
　　　　　　i　／!　　　　　　　 　 ﾞヾ、
　 　 　 　 ∠ｨ .|　､＿　 ＼ｰ- _　　 ￣`ｰ ､__　　ノ〉
　　　　　　　 | :j i ヽ.　＼__＞´:＼　　　　　　 ￣ ヾ.
　　　　　　　 ∨ヾ､　ﾄ-!　!'ﾌ　.i＼:.　　　 ＼＝=ｰ-ｒゝ
　　　　　　　　　　 ヽj　|　| {＿.}､__∨i::::iﾊ　∧／不
　 　 　 　 　 　 　 　 |　l　|　|　.| iﾞＹl-! !＼. !:::i:::| .＿ ._　　　　　　　　　　―――まずはその小娘を狙え―――
　 　 　 　 　 　 　 　 ﾚ’ｒ‐ .ﾉ　f .} ﾚ｀jﾉ_,ｲ `ｰﾞーf i__[!_ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ￣　　￣　　　　 ﾞー‐一ﾍt_人__ｊ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　|:: ﾊ　　`　　　;;;;;;;;;ll　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　　|/l:ハ　　 ､　＿＿　;;;;;;;; ＃　;;　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　　　　　　　　　　　　　　「う、しくじりましたね………」　　　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |ハ　＃　　;;;; 　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |　ｺﾞﾌｯ
　　　―――その半端者が　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　}::::{　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　どんな顔をするのかを見てみたい。　 　 　 ,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　}::::{　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　ククク―――　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!}::::{　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　}::::{　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　}::::{　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶

二１７３．
――――――――――――――――――――
　　またしてもコナタに狙いが付けられ―――
――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,　'′　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,　'´　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ , -　'′　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　＿_,　-　'´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　 　 　 　 　 　 　 ヽ￣￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　＿, ゝ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　　　　 ,r'´￣　　　　ヽ　　 　 　 ,　- ､　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _,　′
　　　 　 /　　　　 ､　　__,ヽ　　 ／ヽ、　,ﾘ　　　　　　　　　　　　　 イ
　 　 　 /　　　　 　 ヽ　 ,ｨ冫イ、　　 V/　　　　　　　　　　_　- ´
　　 　./　　　　 ＿,,,ノ-‐'　 　 ヽヽ .／　　　　　　　　_, - ′
　　　/　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　_,　-‐ '´　　　　　　　　　　　　　「エク…ス……プロ………」
　　./　　　　　　　 　 　 　 　 ,ｲ.l＿_　-‐ '´　
　 /　　　　　　　　　　　　 ,ｲ　ゝ_ノ
. /　　　 　 　 　 　 　 　 /　〉‐'
　　 　 　 　 　 　 　 　 /ゝ‐'
　　 　 　 　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　 ／
　　　 　 　 　 ／

二１７４．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　先程の爆裂陣のせいで暖炉は崩壊し、精霊を呼べる程の火種は残っていない。

　　屋内であるここは風の精霊力が弱く、使えそうな候補が全て失われたエルは
　　予め水の精霊を手元に置いておけばよかった、と後悔するが遅かった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　　　　　　　「しまった！　　　　　　　　 '　'　.ｌ::::::::l　＃ 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　　　　 コナ―――」　　　　　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　;;;;;;;　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 ;;;;＃ ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
　　　f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ 　 　 　 　 　 　 " . ';ヽ　＃　 　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　|　　………ジョ………　　　|　　　　 　 　 　 　 　 '|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
　　　乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ　　.　　 　 　　　　　　　　　'i::: ';;;{ 　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!'i　;;;{ j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｿ. 　　　/　　 ﾝ　　　　　 ､　',　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　 / 　 　 　 　 　',　', 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　 '　　 / 　 　 　 　 　　 i.　', ｌ



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　絶望に顔を歪ませる中、残り一音節となってしまった解放のその瞬間。
―――――――――――――――――――――――――――――――

二１７５．
――――――――――――――――――――――――――
　　壁の穴から颯爽と現れた者が二人分の防御は無理、と
　　エルに自分で身を守るように声を飛ばし―――
――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　j　 |:l　　 　 !::　:.,　 　 :l:::l
　　　　 　 j　 l｣_r―┐|_＿ l.　　::|::::l
　　　　　/j　 l|　〒ﾃ 「　　　|　 :::|:::::!
　 　 　 / 　 /l　/|| l　lﾊ　　 l　 :::|:::::|　　　　＼_人＿人∧从＿人_∧_人_从_/／
　　　 ,/＼ / l　{_ﾊ_| lメ〈　　ｌ　.:::|／l　　　　　)　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　　　　＼./ｰl　l乂l　l∨〈　　lー/ 　 |　　　　＜　　　離れて、エル！　　　　　＞
　　　　　 {＿l　l乂l　l　V ﾊ　|‐/　／　　　　　<　　　　　　　　　　　　　　　　　(
　　　　　　　j　l乂l　l　 ∨:l　l /'´　　　　　　　／＾Y￣∨￣∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
　　　　　　　l　l乂l　l 　 ｌヽl　l
　　　　　 　 l　l乂l　l　　lく l　l
　　 　 　 　 l　l乂l　l　　l∠|　　　　　ﾀｯ
　　 　 　 　 l　l乂l　l　　l∠l　ﾊ
　　 　 　 　 ｌ j乂/ /　／　ﾍ _/
　　　　 　　 | 乂　lｰ'　　　／ :|
　　　　　　　l 　　 { ＿＿/ ＿｣
　　　　　　　| 　　 〈￣￣
　　　　　　　l　　　ﾉ}
　　　　　　　ゞ==='ｲ

二１７６．
――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　まさに一か八か。
　　呪文の詠唱もないまま、攻撃魔法に対する防御力を上昇させる理力魔法を
　　全力で解き放ったのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ο　　　Ｏ　　　　 ／　。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ。　Ｏ　　　　　／　　　　　　ο
　　　　　　　　　　　　　 ＿　　__　--------､　r-=-､i______　　　　　　 ο　　　ヽ　　。　　／/　　Ｏ_,　　。
　　　　　　　　　　　　_ｆi 薔}'´　　　　　　　　　 . li廻ﾝﾃ}　i　l　｀`i ､_　　　　　　　 iヽ:''"ﾞﾞ'':.,／
　　　　　　　　　　　/ ミ彡彳　　　　　　　　　　　┴　　lﾉ　l　l 　 －―＝＝ニ二 ;:　　　　 :;　二ニ＝―‐‐
　　　　　　　　 　 /i　/　　　　　　　　　　　　　　　l　　l |　　l　l 　 }　　。　　'Ｏ　　 :､,.　..,::'､‐-　　　。
　　　　　　　　　 il　l l　　　　　　　　　　　　　　l　　　　 l　　l　l　.７　　　Ｏ 　　／／｀ｖ::　､j　　。　Ｏ_,　　ｳﾞｳﾞﾝ
　　　　　　　　　l　 Y　　 l　i　|　　　　　i　l　　 l i　l　　 |　　l　l　i　　　　　　　/／。　 |　　　ヽ
　　　　　　　　　 l　 l　　 ll　l　l　　　　 i　 ;i　 / i　!/ l　l　　l　l　 l　　　　　　／　　　 ο　 　　Ｏ
　　　　　　　　　　!　l　　 l　l l　l　　l　 l　 /i　　 l i　l　　l　 l　l　 l　　　　　／/　　　 /
　　　　　　　　　　l　 l　 ｌ　l　　i l　 l　i　_ ---ｭ､　l　 l /　 l 　l　 l　　　　　 /　　　 /
　　　　　　　　　 7　　i　l　 !l ))--､ l/　 i i:::::仍 i　/ / i　　ｌ　 !i　;　　　　7　　　　/　　　　　　　＼_人＿人∧从＿人_∧_人_从_/／
　　　　　　　　　 l　 　入l　f i ツi }　　　乂:::::汐　l　l　l　　i　//!l　　　／　　　　/‐''''ﾍ　　　　　　)　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　　　　　　　　　ﾉ　l　 l　 l､ﾐニ ン　 　 　　 　　　i　 l　l　　 >,-､!へイ　　 　 　/′　　 >　　　　＜　　カウンター・マジック！　　＞
　　　　　　　　　l　　l　l 　 ﾍ　　))　　　　　　　　 !　l　l--イ　　>ｲ　　　　　　 ｀!　　　7 `'i､　　　　<　　　　　　　　　　　　　　　　　(
　　　　　　　　 /　　 l　l　　l.ﾍ　　　　　r -､　 　 ｨ!　 l l　 ／ '´　　　　 /　　　 |　　　7　　f-　　　／＾Y￣∨￣∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
　　　　　　　 7　il　　l　l /　.　`‐-　　__ ` 　 ／つ!　　l　/ 　　　　　　 l 　 　　l　　　/　 /　l
　　　　　　 /　/　l　　l ノ　／　　　,r‐f-⌒て´　 ）i　　l　　　　　 i　　　 ` --'- __ ノ　 /　　!　　　　　　　　　f´￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
　　　　　／ /　 ノ イ　 ／　r-､__(　､_, 　　ノ　 ろ !　 l　　　　　 └ ､____　　　　 `i, ィ　 　 〉　　　　　　　　　|　　………ン………　|
　　　 ／　イ´￣ ／／ 　　ﾉ　　　ゝーf⌒---イ 7　 ﾉi　　　　　　 _ -`-ﾆ=--- ､ﾉ　|　 ７　　　　 　 　 　 　 乂＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
　__ノ　 ／　　 /　／　　／　　　 /＿＿＿＿__l ./　ｲ　 !､　　　/　　l　　　　　　　　　`-′
　　　 //　　　/ /　　／　　　i　. l　へ_ _／＼／! ＼　　 `''' ′　　　l
　　　 /　　　/ /　／　　　　/　 /　／ 　＼／＼／ /ヘ　　　_　-ｲ　＼
　　　 l　　　i 　 /　　　　 ／　　 ￣￣￣￣￣てノ　　　 ﾉ-イ　　　　　　＼__
　　　{　　　 l　 l i　　　／　　　　　　　　　　ｽワ　　　 /　　　　　　　l　　＼- ニ=-



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　―――慣れていない無詠唱の魔法は、暴発や不発の危険性を多分に秘めている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１７７．
――――――――――――――――――――――――――
　　それでも、祈るような魔法は行使者の手の毛細血管を
　　無残に破裂させるのと引き替えにコナタを包み込み、
――――――――――――――――――――――――――



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ>　　　　　　　　　　　　　　 　　/＼
　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿＿＿ ヾ_,ゝ __,,:::=====:::,,　　./^＼/　 / 　 _　　"　';:.　:,;':.:
　　　　　　　　　 ;"　/＿＿＿　　 ./ 　　　 .　　｀　´　´､ゝ'' ＼ 　　 /　　/,/
　　　　　　　 :　;　　 　　　　　/　 /　　..‐´　　　ﾞ 　　　　　　　/　　 ＼　　　 ＿　　;　:.:,;'
　　　　　　　　　 .;,..::,:'" 　　 /　 　 ＼　　　　　　　　 　 　 　./ 　/＼　＼　/_,/
　　　　　　 ::,;''　,.,..; 　　　　/ 　/＼/^　　　　　　　　　　　　/　 /　 /　`.　　　　"';:;　:.:,
　　　　　　　　　　　　　 ; ./ 　/　,;　　 　　 　 　 　 　 　 　　＼/ 　/　 /　;.　　　　　;:; :.:,
　　　　　　　　　　　　 / / 　/　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　/　 / 　 ｷ　　i^＼
　　　　　　　　　　　　;ﾞ　^--'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　^--'　　　ﾞ;　　＼, ＼
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　　　　 ;　:.:,;'　　　　i;　　　　　　　　 　 　、,.　　　　　　　　　　;i　　　　 　 　.i￣　／--;"´
　　　 :.　:;:; 　　　　/i|lli;　i　. .;,　､ 　 　　　,　　　　　　　, 　　　　　 　` 　 ,i|;iil￣
　　　　　　 ;:;:.:,　　 　 /ﾞ||lii|li||,;,.il|i;,|il　.:." 　　　　　　　　　.;,,　.i|i,..,.i|||l´i,.il|lヽ　,　　　;:..,;::.''"
　　　 ..,.,;　 　　　 　　 　 ｀;;　":':....:...　.:.　　　　　　　　　　　,,::　..:.::.:..;,.. .从　　::.,　　;:;..,
　　　　　 "　';:.　:,;':.:　　 　　　　　'　　 ". ..:　　　　　　　. ..:;"　　　　　..,.,;;:　.:':.,,"'"
　　　　　　　　　　　　　　　　　 '　　　　 　　　　　　　　　..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　:::::::::::　　　:::::::::::



――――――――――――――――――――――――――――――
　　一秒の何百分の一だけ遅れて、爆発の魔法が彼女を飲み込んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ
.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!
　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼　　　　　　　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　　　!::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　 　 　 　l:!:::l:::l !　＃r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i　　　　　　∠　　　………コナタァァァッ！　　　＞
　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i ;;;;;;;;;　l:::::::::::::ハ:!　　　　　　／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　＃ｨ::/i:::::ﾊi　 !　　　　　 ￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_　　　　　　　 /／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　＃　／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i

二１７８．
―――――――――――――――――――――――――――――――
　　弾け飛んだ熱波と衝撃波が行き過ぎた後。
　　原形を保っていたコナタは、床に伏していたが息はあるらしく―――
―――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　_,,　ｰ''''''"ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ|ﾞﾞﾞﾞ^''''ｰ　,,、
　　 　 　 　 　 ,..ｒ'"　　　ヽ　　　　.|　　../ 　　 /ヘ､
　　　　　　 ／ 　.`-　　　 ｀; 　　 .{　　ﾞ'　　　 .,.べ..,｀'-
　　　　 , '"-　　　　　　　　;;_,,,,_　ゝ　　i'ﾞ'''ｰ､　　/ 　　＼
　　　 ,i'ヽ　　　 ,..-―ｰ､..／゛　　 .＼　 ./．.ｒ'".＼　　.,i'"　ヽ　　　　「う………」
　　 ,i′　　　./ 　　, ｰ'"　　　　　　　＼`''''く　　 .＼..′ .／ヽ
　　lﾐ、　　　 |′　./　;;/ .、.__　　..ｌ　　　 ﾞ'-､.,ゝ　　　.ｌ ./ 　　 .ｌ
　│　.＼＿_/　.. ".　;;;| ./i　 | . ｌ　ｌ.　 ヽ　/ -､　｀'-､　_..‐″　 ...-''.!
　.|　　　　　　＼,,,,,,,,,,;;;;;ｌ、ヽ ﾞl　.ｌ　 . ｌ .ヽ　 ｀'-..,_, ＼ ,　　　 '''''''.!....-'''''"
　.!　｀., --　　　＼,,　""";;;;;;;;;;'ﾘ│ .ゝ　 .ｌ　 ｌゎ、　.ヽ｀''-.ﾐヘ..、｀ﾞﾞﾞ］
　.|　´　　　,,　"'　,,|￣";;' ;;;／｀'''|　　 |　 .ｌヽ ＼　ヽ　　｀'-､ヽ　|
　│　　　　　 iへ,,,,、;;;　 ;;/ﾞ!ﾐ＼,.|　　.!　│､ヽ／t .レ”ﾞ,ﾞ│ ｀ /
　　ｌ　,,.　　ｒ'"　　ｌ　 ｀ﾞ'''''"'-､ ｀イ.ｌ　 .|　 l'､ ｌﾞ' li_Λ| ‐"　.｀ヽ "
　　 ヽ　　　(彡ｰ'.!　　　　　　ﾞ'i./ ...ｌ,　.!　!　ﾞ'ﾑ‐.／`　　.`‐､_.ヽ,,
　　　.ヽ　　 ._　　 ﾞ''''''''''''￢―′　.､.ｌ, |, '|. ,i",ﾉ゛　、　　　 i-,|_..,.,!
　　　　.ヽ.'"゛　/ . ,, ‐　 　 　 　 　 !　.ｌ］` lレﾞ.i　　 ｌ　　r‐″　　..ｌ,
　　　　　 .＼./ 　 ,〉　　 .,,, ｉ′　　.!　　ｌﾞt./　/ 　　iゝﾉ.ｌ＼.　　 , ┴、
　　　　　　　 `'-i./　_． .〈　 ＼　 .ヽ　 .ヽ..,,./ 　! 丿　　 ｌ　.＼ ! ./´ ｀'-､
　　　　　　　　　　｀'Y-..,,,/　.'"　　　　＿. 〈..,,_._,ﾒ､　 , ―.ｌ,　　`-|.　　　 ..＼
　　　 　 　 　 　 　 / 　　 .￣ﾞﾞﾞﾞ^ﾞﾞﾞﾞﾞ´　　　　　　 .＼".／^ﾞ'､　　　 ＼ 　　　＼
　　 　 　 　 　 　 / 　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞく　　　ヽ.　　　　.＼　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　.ヽ　　　　　 ＼ 　 ./ｰ;;x,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 ｌ　　　　　　 ｀'-. ! './　ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　ｌ, 　 　 　 　 　 `ヽ ｌ.　.ｌ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼　　..ｌ,　 　 　 　 　 　 ﾞ!i|,` . ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ., ﾉ 、　　　　　　　　｀'''''"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞ.ｌ .广ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｌ..ｌ, へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｖン'　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼,,./

二１７９．
――――――――――――――――――――――――――――――
　　無詠唱の代償に精神力を大量消費した上
　　グローブの中は手首から先の感覚が殆ど無く、
　　握力もだいぶ弱まって剣を振るうには支障を来すだろう。

　　それでも最悪の状況は避けられた、とレイピアを抜いた雪華綺晶は
　　常軌を逸した様子のキル夫に注意を向けつつエルに説明を求めた。
―――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　 ,.ｨ ｰｭ.
　　　　　　 　 　 r=}7´　. :　ﾊ∧
　　　　　　 　 　 l! //, . :l! ｣l|i :∧
　　　　　　　　　 } l　rｯﾊrt_j,k: :∧　　　　　　　　　　　　「コナタは生きてる！
　　　　　　　 　 / :ゝゞ'　_　/: :ヾ《　　　　　　　　　　　　 一体何が起こってるの！？
　　　　　　 ＿_.「¨!彳＞ イﾊ_,､ : .｀ヽ　　　　　　　　　　　 キル夫はどうしちゃったの！？」
　　　 ‐＝f」」」j|　|==========================-
　　 　 　 　 ⌒.:!_」ﾄ. 　￣`7{　,ｲ: :イ´
　　　　　　　 _ﾚ'.::::::} 　 ,イ .ｲ　{: : : ヽ　　　　　　　　 　　　（くっ、無詠唱の反動が………）
　　 　 　 .　´ ..:ﾄ-ｲ　/´　(::::　 i: : : r '
　　　　 / . : ／`ｰ=彳ﾊ　 ﾍi　 l: : : L .
　　　　《{: :く　　　　＿/　　 }　 !: : : : : ﾊ
　　　　 ヾ: :ﾊ　　/´　　 　 /、_ﾑ : : : ／
　　　　 ノ}/　}　 ＼　　　ハヽｰ ': : : {
　　　　／ `ｰ=彳⌒ｰ1,ｨ彳: : : : : : ノ
　　　　｀ヽ : : : :ﾄ∨{:::::.　　: : : : ; ´
　 　 　 　 },ｲ: : | X |::::∧x ∨て
　　　　　 　ﾑ,: :| X ｌ::::::∧x:.∨{｀ヽ
　　　　　　 　 ) l X |::::::::∧x為!
　　　　 　 　 　 | X i/´　　ⅥIIi
　　　　　　　 　 l X |　　 　 ⅥIi
　　　　　　　 　 | X i　　　　 Ⅵi
　　　　　　　　　l x :|　　　 　 Ⅵ
　　　　　　　　　|　 i|　　　　　 `
　　　　　　　　　ゞ彳

二１８０．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:: ﾊ　　`　　　;;;;;;;;;ll　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　「彼は洗脳され、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|/l:ハ　　 ､　＿＿　;;;;;;;; ＃　;;　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　 何者かに操られているようです！」　　　　　　　　　　　ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |ハ　＃　　;;;; 　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　 （そうだ、この手口………　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　お前なのか―――！？）　　　　　　　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　}::::{　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　}::::{　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!}::::{　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　}::::{　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　}::::{　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､



――――――――――――――――――――――――――――
　　説明しながらエルは、キル夫を操っているであろう者の正体に
　　自分が追いかけている者と同一の可能性を考え始めていた。

　　こういった、人を人とも思わぬやり方に覚えがあったせいだ。
――――――――――――――――――――――――――――

二１８１．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　また雪華綺晶も、つい数時間前に得たばかりの情報を現状に絡めさせ、
―――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　 ∠乂ﾆヅ´　　　　　　　　　　　　 ヽ､＿（(＿
　　　　 　 　 　 /{｛　 ((　/　　　　　　　　　　　　　　 ∨辷ﾍY ｀丶
　　　　　　　　 ′　/　))　′　　.′!　 　 l　|　　｀ 　 弋ニツ｀ ヽ　ヽ
　　　　　　　 /　　/　/　/ !　|　 |　l| ｉ ｌ　|l　|　! 　 l|　　|　))ヽ　 |　　|
　　　　　　 ./　　/　, 　 ′!　 )) |　l| ｉ ｌ　|l　|　! 　 l|　　| ((　 l　 ! 　 |
　　　　　　/　　/　/ 　 l!　|　|{｛ |　l| ｉ ｌ　|l　|　! 　 l|　　|　　 ｉl　 ｌ 　 |
.　　　　　/　　/　/　 　 ! ⌒＼ト|　l| ｉ ｌ　|l　l ／⌒l|　　|　　 ｉl　 | 　 |
　　　　　′　,'　 l　 |　 l|ｨｾﾆﾐﾍﾞ}从八|ノ|lｨ彡＝ﾐ l|　　|　　 ｉl　 l　　|
　　　　/　　/　　Ⅳ八从K( くﾉ 》　　　　　 　{ ! }　》lN从　　 ｉ　 | 　 |　　　　　　「洗脳ですって！？
.　　　/　　 '　 　　 l　　 !ゝ二_ツ　　 　 　 　 :.=' 彡i| 　 !　　 :. 　i 　 i　　　　　　 ―――まさか禁呪！？
　　　′　/　　　 ノ　　∧　((　　　　 .:i　 　 　 　 　 l 　 i　 　 ｌ　 l 　 |
　　/　　/　　 ／ 　 ／ ∧　))　　　　　　　　　　 　 ﾊ　 !　　 .|　 l 　 |　　　　　　 ティターンズの黒ローブが居るの！？」
　 ,'　　/　　 /　,　〃　/　i､　　　　 r―‐ｭ　 　 　 ｲ　ｉ　|　 　 {　 ヽ　ヽ
ノ　 ノl　　 ,'　 i　/　 /　 l| ヽ　　　 ｀￣　　　 ／_ !　i 八　　 丶　 ＼
{　／　l! 　 i　　l./　 /　　 ｉ　_{＞　、　　 　 ィヘ /.i 　ゞ　ヽ
i,/　 ノ　　/(　〃　ノ　 　 .i　ﾄ､｀￣}　r'⌒ｰﾚ7 イ ﾊ　　　　 ＼　　　ヽ
′　 　 ／　 ゞ　 (r‐､　　/ ﾉ　￣不´＞ 　 /　〈　　ヽ　　　　　ヽ
　/　／ √~￣ﾞ￣’　 ￣￣ ｀　　{「ヽ√　　　　 `ー ､＿,　,..-―‐￢，
　／ 　く,　　　　　　　　　　　　 　 ノﾘ　　 　 　 ＿＿　　`´　 7'"￣
　r――く入　　／⌒ヽ　　　　 ／ヾ　　　　　　 　 　 ﾞｰ～ｭ／｀ ヽ

二１８２．



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼
　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　　「………キラ……キ……ショ………」
　　　　　　　　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/
　　　　　　　　　　 　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У
　　　　　　　　　　 　 ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;N＿;;;;ゝ
　　　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§ﾉ二ヽr―マ;ヽ　　　　　 ＿___
　　　　　　　　　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;,,|／:::::／'／ヽ,／;;;;;＼　　　 |: : : : :｀'''--,,,
　　　　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;,,＿／／:::::::／;;;;;;;;;;;;;;;＼　 丿: : : : : : : : :ヽ
.　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;|;;;／ ／ヽ_／;;;;;;ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;×: : : : : : : : : : : :〉
　　　 　 　 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;／ ／;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: : : : : /￣
　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: :/
　　　 　 　　L.::::厂;　;r ／ ／　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;|/〈Ｘ,,;;""ヽ: : : :/
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　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ￣ ヽ_/
　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　｀ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　　　｀`ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;i::::;;;;;;;ﾘ
　　　　　　　　　｀ﾞ`‐‐-- ､;;/ﾍ:::ﾉ　　　　　|::::::入--‐‐‐´ゝ
　　　　　 　 　 　 __,∠;;;;;;;;;;;;;;//　　　　　　ヽ_ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
　　　　　　　　　〈、;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　　　　iﾆ｀ゝ;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､;;;;;;;;;;;ﾞー‐‐'"）



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　魔法に寄るものならば、と動きを止めているキル夫に向かって解呪の魔法を放った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　 　 ．-――z^＾7￣｀((⌒ ．_
　　　　／　　　 ／　　　}(勾},ﾄ､　　 `ｰ　．_
　　 ／　　　 ／　　　　 ((乂ミ=　　　　　　 ヾﾐ　．　　 _
　／　　　　　　 　 　 　 _)} 　 ．-‐　　　　　　 　λ--__))
´ 　 　 ／7　／　　　　　　／　　 -～ ＿_　　　　 ゞ勾ハ
　　 ／　/／　　／　　　　　／　　　　((⌒'　/　　　 Ⅵ　ｉ
＿ノ　　'　　　　　　　イ　／　　　／／｀).l　/!　/　,　 Ⅶ !
.　　／　　　　　　　　/　 　 ／／l＼ レ'/ / } / //　　:.　!
￣´　　　 　 　 　 　 {./　／／ r=＝＞ﾐ / // 〃ﾙ　　ｉ　l　　　　
　　　　／　　　　 ／ｽ／／{,// 7rｯそ》}　 八､/　} l 　}　|　　　　「万能なるマナよ―――
　　 ／　　　　 ∠ゝ､ﾝ　　　 _《　ゞﾄ=ン　γ=ミ　/ ﾘ ./ ノ!　　　　彼の者を蝕む魔法を取り除け！」
　／　　　　 ／__.У::. 　 　 ((⌒ｰv_ｿ"　　辷ｿⅣ／ノ　　l|
　　　　　 ／　ﾄ､_ ハ::.　　　　　 　 　 　 ､ 　 ﾊ　／|　 　 l|
＿　　 ／　　 {　 ￣ﾄ､::.　　　　, r‐=z 、 ′/ ／ｉ　l|　 　 l!
7} `ー- ．＿ノ　　 ﾑ 丶:. 　　 l　　ヽ:/ 　 ｲ:. 　 |　l|　 　 l!
/　　　　　　　　　 {__ヽ、ヽ:. 　 `ゝ=ｧ’ イ　!:.　　|　l|r―-lﾄ､
i　　　　　　　　　　　／}　　≧x.._ ィ～zﾘ √￣￣〃　　　　⌒ヽ‐z

二１８３．
―――――――――――――――――――――――――――――――
　　されど彼女の魔法は空振りではなく、
　　相手の呪力に打ち勝つことが出来ずに霧散させられただけに終わる。
―――――――――――――――――――――――――――――――

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼_人从＿人∧从＿从人_∧_人_从_/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　―――ディスペル・マジック！　＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＾Y￣∨Y￣Y∨^Y^⌒Y^YY^^Y^
　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼
　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ　　　　　―≪(_　　.:
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ　　　　　　　＼.,し
　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ　　　　　　　 Ｖ
　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　　　　　}
　　　　　　　　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/　　　　　　　/　ﾊﾟｼｯ
　　　　　　　　　　 　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У　　　　　　／
　　　　　　　　　　 　 ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;N＿;;;;ゝ　　―≪´
　　　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§ﾉ二ヽr―マ;ヽ　　　　　 ＿___
　　　　　　　　　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;,,|／:::::／'／ヽ,／;;;;;＼　　　 |: : : : :｀'''--,,,
　　　　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;,,＿／／:::::::／;;;;;;;;;;;;;;;＼　 丿: : : : : : : : :ヽ
.　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;|;;;／ ／ヽ_／;;;;;;ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;×: : : : : : : : : : : :〉
　　　 　 　 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;／ ／;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: : : : : /￣
　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: :/
　　　 　 　　L.::::厂;　;r ／ ／　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;|/〈Ｘ,,;;""ヽ: : : :/
　　　　　　　／　　ﾉ.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ:入;;;;;;;;;;ﾍ,,〈_,;;ノ: : : : : /
　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ￣ ヽ_/
　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　｀ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　　　｀`ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;i::::;;;;;;;ﾘ
　　　　　　　　　｀ﾞ`‐‐-- ､;;/ﾍ:::ﾉ　　　　　|::::::入--‐‐‐´ゝ
　　　　　 　 　 　 __,∠;;;;;;;;;;;;;;//　　　　　　ヽ_ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
　　　　　　　　　〈、;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　　　　iﾆ｀ゝ;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､;;;;;;;;;;;ﾞー‐‐'"）

二１８４．
―――――――――――――――――――――――――――――
　　何らかの魔法が掛かっているのは今の反応で確信できたが、
　　それなりに―――あるいはかなり高位の術者に寄るものらしい。

　　なら寝かせるなり気絶させるなりで無力化させてよ、と
　　立ち尽くしている精霊魔法の使い手に大声を出すと、
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　.,　　-‐‐　　 / /> ﾍ　 ＼
　　　　))　　　, -'　 ´　-‐　　　 ‐- ､　ゞﾍ_ｿ_/　　 l
　　 r-))-ﾉ､/　／　　　　　　　l　　　　＼　(( _i　 　 !
　 /　{ トコ} /　　　　　　　　　　l　　　　　ﾍ　　l.　　 l
　/　　i-イ 7/ i　i　　ﾍ　　i ﾍ　　l　　 l　l　　l　 !　　 ＼_
　ﾍ　　 i　 l　! l　l　　 :ﾍ　　i ヽ　 lヽ　,_!　l　 l　 ﾍ　　　　i
　　｝　 l　l　 l　l　i　　　 ヽ　l　 ヽ,.イ´i ;l l　l　 l　　＼　　 l
　 7　　l　 l　l　 l　ﾍ　　)) ＼ｧｲ´　lrｪｪlｭl　　　 l　　　ヘ　l　　　　　　「………駄目！
　/　　 i!　 l　l　　_..r-､((　 ＼r　 ｲ::fj:::::?　　 l　　　　l　 l　　　　　　私程度じゃ打ち消せそうにない！
　{　　/　 / i　l　{ ／r-＼ }　　　　込zzノ i　　 l　　　　ﾍ,
　!　　l　 i　 ＼! f i_トー} )-i　　　　　　　 l 　　 l　　　　　 l　　　　　　ｽﾘｰﾌﾟ　 ﾒﾝﾀﾙ・ｱﾀｯｸ
　＼　 l　l　　　　i--=､___ノ　'　　___ 　 　 }　　 l　　　　　 l　　　　　　 眠りとか精神力減衰とかは使えないの！？」
　　 l　　 l　　　　l　　))　　　　 '´ ´ 　 ／-!　 l　__　　　　 l
　　l　　　l　　　　 l　　　` ‐--___　 イﾉ　/____ j l　 ＼_　　 `
　　{　　　l　　　　　　　　　`'''　｝　　ﾉ　__r-ﾄ---､　　　＼
　　　＼　l　　　　　r-_--i　_ノ-イll＞＜l l　　　（_
　　　　 i　へ,　　 /　l　￣コ　　　 ll＞＜l l　　　 /
　　　　{　 r､/　/　r-l　　 ニﾄ.　 r-i　i--i　i-}⌒{_
　　　　 ∨　l　l　　ﾏ---i　ilﾉ--<　 --　　　 7　　）
　　　　　　　{　 l　　i　　`---　 <　　　　　（_　　　l ﾍ
　　　　　　　 i　　ﾍ 7　　　　r-'　　　　　　_~)　　 /　 l
　　　　　　　l　　　i/　　　 /　　　　　　　 (__　　　}　　 i

二１８５．
―――――――――――――――――――――――――――――――
　　そんな手はとっくに考えてます、とエルも不機嫌そうな大声で答える。
―――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ..〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 '　'　.ｌ::::::::l　＃ 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　「精神の精霊が暴走している相手には 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　;;;;;;;　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　 効果がないんですよ！」　　　　　 　 　 　 　 　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 ;;;;＃ ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 " . ';ヽ　＃　 　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 '|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 'i::: ';;;{ 　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!'i　;;;{ j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｿ. 　　　/　　 ﾝ　　　　　 ､　',　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /　　　 /　　 / 　 　 　 　 　',　', 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 '　　 / 　 　 　 　 　　 i.　', ｌ

二１８６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　　´ 　　　　　　　　 r-ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　{ {:必 }､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　|l　　　　　　|　　　　ゞ辷ｼ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 / ,　　　|l　　　　　　|　　　　　　 i| 　　|＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.′i|　 |　ﾊ 　　 |　　 |.　　　　 　 八　　ヽ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 l|　 | / |　 |　|　　 |　　 ｌ　　　|,　 ＼　 }＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 l|　∥ 厶./l　|　　 |　　 |　　　| 　　 ﾉ　ﾊ.　＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､ l|ﾍイrぅｭ､_!ﾊ|　　 |　　 |　　　|　　/　/　 }　　)　　)
　　　　　　 ﾐｭｰﾄ　　　　　　　　　　　　　　ﾉ.　 }c::::ﾘ　/　　/　　/　　　 | ／ ／　／ ／　／
　　「じゃあ静寂は！」　　　　　　　　　ｒ　　　{沙'"./　　/　　/　　　　{{　 ( 　 /　（　　（
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| _ 　 　 　 / 　 /　　/　　　＼ ＼　＼{　　 ＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ｀ヽ　　 / 　 /　　/　　　　　 :　 ＼　＼　　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ .}　 / 　 /rzr─ ｧ　　　i　 i　　　＼　＼　　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ー/　 ／　　　 /　　　　｝　 ｝　　　 ＼　＼　　　)　　 )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／_／　＿,厶ｲ⌒! 　　/　 /　　　/　 } }　　)　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｨ ⌒ Y⌒!７ﾌ7ｧ/　　　/　　{　／ ／　　　　／　ﾉ　 /　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (＼　　 }_/////_ﾄｧ　　　　　 |　／　　.　 イ　／　 ／　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　弋 三.r┴ミ了く／ﾉ　　　　　 |　　　／.　 /／　 ／　 ./　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （＿＿rイ　 兀け　　　　　 |　 ／　　　く　　 ｛　　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |＼､. イ ⌒i､　　　_＿ｊ　/　　　　{　＼　 ヽ　{　　?
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　 ＼　　 人 /￣/　 {　.＼　　　 ＼　 ＼　}/　　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ / r‐ {　 /　 /　 /　　 ＼　 ＼　　　 )　　＼}　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠厶⊥!.　 ＼　／　 / 　 　 　 ＼　 ＼　/　　　/　{



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　魔符は封じた方が良いんじゃないのと焦る雪華綺晶の声と、
　　あなたこそ何か手は無いんですかと言わんばかりの、エルの声がロビー内で何度も交錯した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ
.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!
　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼
　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ　　　　　「屋内に風の精霊が居たら試したかも知れませんが、
　　　　　!::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i　　　　　　私にキル夫相手の肉弾戦は無理です！
　 　 　 　l:!:::l:::l !　＃r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i　　　　　　　　　　　　　　　　ｻｲﾚﾝｽ
　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i ;;;;;;;;;　l:::::::::::::ハ:!　　　　　　雪華綺晶こそ沈黙の魔法とかその他は
　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　＃ｨ::/i:::::ﾊi　 !　　　　　　使えないんですか！？」
　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_
　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　＃　／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i

360 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:03:46 ID:U2wO60/U 喧嘩してる場合かｗｗｗ

二１８７．
――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　理力魔法にも無力化させるだけの種類はあるでしょう、と不満たらたらの声に
　　唇を噛んだ雪華綺晶は未修得である事を告白し、
　　他に手が無いと告げる。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃)Y　　　　　　　　　　　　　　　 ＼γ仗ｒ　　￣　　─── ---　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ニ {辷／　　　　　 ,l　　　　　＼＼　　　ヽ辷}＿＿＿　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　_　‐　´〃￣ .／　　 　 　 ///ｌ　　 ｌ ヾ.　 ヽ ヽ､　　 ＼ヽ===ｘ￣￣￣￣￣￣¨　　　　　 ＼
　　　　　　　　　 .　 ´　　　　ij　 ィ　　　　 /　 ///　V　∧　',ヽ　 ',　',＼ヾ　 ヽ　＼)）　　　　　　　　　　＼　　　　.＼
.　　　 　 　 　／　　　　_　‐　才_　〃 ,ｲ. /!ﾊ/.ｌｌ　　 X/､∧　', ＼ ｌ　ｌ//ヽ　　 ｌ　　ヽ　　　　　　　　　　　 ヽ 　ー'　　　　　　て
　　　　　　／　　　 .　´ ｰ=彡'／ / ./ .ｌ.//ｌｌ ｌ/lｌ　　〃ヽ ヽ乂ｌ　　7 //// l　　.ｌ　　　',　　　　　　　　　　　　ｌ　) 　 　　　　　　（
　　　　　,.'　　　 ／　　 　 　 ,'　./ ./　 ｌｌ//ﾚヾ..!　 /　　 ヽ､__≦ィ彡´≧､ﾐ＼　ｌ　　　 ',_　　　　　 　 　 　 ／ｌ ヽ 　 　 修　　 （
.　　　　/　　 ／　　　　　 　 ｌ　/ｌ　! ﾊ ｌｌ. テ〒≧=-　　　　　 テｌ:i!:ｌ　》> ｌｌ ｌ　ヽ! 　　　 ',`‐-　＿　　 　／　/　　） 　　行　　. ｜
　　　　ｌ　　 _､__　　　　　　　| / ｌ　!´ ｌ∧γ人fﾃヽ　　　　　　ｌ　ｌ:i!:ｌ 〃　|ｌ ﾊ　 '　　ヾ　　　 　　　 ＞´.　　/　／）.　　 中　　　 |
　　　　ヽ__（__　 ヽ.　　　　　 ﾚ　ﾊ ｌ　/　',《 .Yト入》　　　　　　≧‐=彡.　 ｌｌ ｌ ヽ.　　　 ＼　　 　 ／　　　　/／､　| 　 　//　　　（
　　　　　　　　ヽ_/　　　　　　／　ヽ　 　//ﾐ二ン　　,!　　　　　　　　　　,'ｌ ｌ　　＼　　　 ＼　 /　　　　／¨　　＞| 　　 ' '　　　 ｜
ィ´￣￣￣￣￣'　　　　　 ／ 　 _ ノ .／ｌ///ｌ ｌ　　　 ヽ　　　　　　　　　/ ヽヽ　　 ＼　　　..∨　　　 ,.'　　　　　./　 　　　　 　　|
　 .ｨニニﾆ斗‐´_　-─　彡　　´　.／ //ヽ//ヽヽ　　r= ニ三 _）　　　.∧　 ヽゝ　　', ヽ　 　 !　　　 （___　　　　ﾉ　　　　　　　 /
／　　　　 ,　´　　　　 ．　´　 /／　 //.／　Tl ) ）　　　'"'　　　　　 ／__ ヽ　　　　　ヽ　` ‐八　　　　ヽ_￣￣ ´ゝ..ィ'!ヽ　　／
　　 　 　 (　　　　　／__　　／/　　 ! ｌ/　　./　ﾄ．　　　　　　　　 ／(　 /　ﾊ　　　　　 ＼　 　 ` ､　　　 _二ニ＝=---- ）／_
　　　　 　 ＼　　　ｌ／／／　/　　　ﾚ´　　/　　　 .≧　 、_　, ≦=--）/　/ .',　　 　 　 　 Y　　　　￣￣　─==､＿＿　　　　ヽ
　　　　　　　 ）　　 ／／　　/　　　 /　　./　　　 ,と二⊥///ｌヽ.　　//}､　　　　　　　＿ ｨ─‐､　 ＼　＼　　　　＼　　ヽ
　　 ,　-‐ ￣＿,　´ ./　　　 ｌ 　 　 /　　./　　　　∨　　７￣ｌｌ　/　　　　｀ ‐-､＿　／　　＿＿_）　　 ＼　＼__　 　 ＼　　＼
　／γ¨　　 ／　　/　　　　 ',　 　 l　　 ‐　､　＿　>　　ｆ-γ　　　　　　　　　　　｀　　´人__.　　　 　 　 ＼　ヽヽ＼　..＼　　＼
/　, （_,γ／/　　/ｌ　　　　　 ．── ´　　　ｌ　　　　　　　 ﾊ　　　　　　--──…ｌ⌒V　　　｀　､　',　　 　 ',　.', ヽ ＼　 ＼
. /ｌ　　//　/　　/ ｌ　　　　／　　　　　　　　 ＞ ．　　　 ＿　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　'＿_ヽ　_　 ',　',‐､.　 ＼.　 ',
/　!　//　/　　.,'　ｌ　　　　ヽ∠_　　　　　／　　　　＞´　　　`＜＿　　　　　　,′　　　　 ．＜￣　　ﾄ､　　 ‐',　',　　ヽ __ヽ　!
ｌ　 し'/　,'　 　 ｌ　 !　 γ７7777ヽ　＿γ⌒ヽ__／＼　　　　　　／ .＼＿＿／　＿＿　 /　　　　 　 |　￣ヽ　!　ト．_　　　 ゝ!


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　ただ、この年齢でこれほどの実力を持つ彼女を不勉強と一括りにするのは酷な話であるし、
　　さらには先程の無詠唱行使による消耗が激しく、
　　他に魔法を行使するだけの集中が確保できるか分からない事、
　　目的はキル夫の無力化であって息の根を止める事では無い事が手を大幅に狭める事となっていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１８８．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　「情けない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |:: ﾊ　　`　　　;;;;;;;;;ll　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　 連携が取れない冒険者など　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |/l:ハ　　 ､　＿＿　;;;;;;;; ＃　;;　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　 烏合の衆とはよく言ったものです」　　　　　　　　　　 　 　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ハ　＃　　;;;; 　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　 （この状況ではキル夫を斃す選択も難しい―――　　　 　 　 　 　 　 ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　どうする？）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 __　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　}::::{　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　}::::{　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!}::::{　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　}::::{　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　}::::{　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　言い合いも馬鹿馬鹿しくなったエルは
　　私達の実力などこの程度でしかない、と自嘲せざるを得なかった。

　　長い間共に活動し、お互いの実力や技術を余すところ無く把握した仲間内ならともかく、
　　つい先日一緒になった程度の間柄で採れる作戦など高が知れている。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二１８９．



　　　　 　　 __　 　 ,､ .（(,､-―‐''''''''''―-､,　　　　((
　　　　　　,ｲ `'ｨｹ´vﾄr,,)）　　　　　　　　　｀ヽ, ,ｨｭ))-､
　 　 　 　 l　　 ,ゞﾍﾉﾌｨ　 .／　 　 　 i 　 　 　 `､Yﾉ　 l!
.　　 　 　 j　 　 ゞ〃‐'´　/　　/ 　　 | 　 　 | 　((ヽ､　 i!
　　　 　 / 　 //.（(　　　/ 　 / |　|　 | 　 　 | 　 )） ヽ　.i!
.　　 　 / 　 // 　 )）　:/ 　 /.　|　|　 | 　 　 | 　　　　i!　|
　 　　/ 　　/　　 "　 / 　 / 　 |　| 　|　　|　|　 |　|　 i!| |
.　 　 ′ 　.i　　/　 l .|　　l!　.)）|　|　|.| ｌ　|　|　 |　||　|: /
　　　l　　　|　 i!　　.| |　　ﾄ､（(ｨｭ, |　l.| |　|　|　 |　||　|: {　　　　　　　「ええ、全くね」
　　　V　　i!i　 |　　 |.i　,ｲ´ｨY^ﾔﾊ| i!|| | l:|　|从| l:|! ||:ハ
　　 　ﾍ　ﾉﾉ　 |!　　 |! _Vゝ~ﾝ'.ﾉ j`´ ｀ γﾃｫ､// i!/　l ∧　　　　　　（やらない夫はまだ追いついてこないだろうし―――
　　　　,ｲ,ｲ .l　 l!　　 l!ゝ_ゝ｀´ﾝﾝゝ　　　込ｿ.ﾉ/.| .〈ヽ,l:　 ＼　　　　　 私達だけで何とかするしかないわ）
　　／／|　.ﾘ　 .|!　　ヽ　((`ｰ'´`　 　'　　￣ /　|　.ﾍ .ヽ 　　＼
,ｨ'´／　 l　/ ,ｨ　 |! 　 ,､`､))　 ,､,　.ｰ.,､　_, ｨ' 　 |　| ゝ 　＼　　:.
　/　　 ﾉ／ｨ'　_,､ｨ'ヽﾉ,ﾊ､,` ﾉ´ ｲ,-‐ﾉ `ｰ'r-､ ､.ヽ l　 ヽ　 ﾉ　　}
　{_,､ｨ´,ｨ'´　ｨ'´　　 　　__,ﾊ,　ﾉ (__ -‐　 '´ （,､‐-`､!　　〉/　　　〉



――――――――――――――――――――――――――――――――
　　同意した雪華綺晶も、やりづらくて仕方ないと感じていた。

　　結局、味方の意志を統一できるリーダーか、
　　戦術の核となるだけの力を持つ中心人物が居るか、
　　的確な指示を出せる軍師役でも居ない限りは
　　同士討ちを恐れたり、無数の選択肢に迷うばかりになってしまうのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――

二１９０．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　そうこうしている間にも、
　　待つ筋合いのないキル夫は新しい魔符を懐から取り出しており―――
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　,ィ、
　　　　　　　, '　 　 ヽ、
　　　　　 ,.ｲ　　　　　　ヽ、
　　 　 ／　　　　　　　　　｀`ヽ､　　　　　　　　　　　　　　　「ギギ………
　　 ／　　　　　　　　　　　　　　｀ー ､　　　　　　　　　　　 ディ………ス……イン……テ……」
　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀`ー ､＿
　` 、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀￣￣￣￣/
　 　 ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /､＿_
　　　　 ｀　、　　　　　　　　　　　　　　　,---､　 　 　 　 〃　　　 ￣｀ヽ
　　　　　　 .｀　、　　　　　　　　　　　　 l/´ ／ヽ、　　 /＿　 ,ｨ　　　　 ',
　　　　　　　　　｀ヽ、　　　　　　　　　　 ヽl　　　　｀ヽ/　　 〃　　　　　 ',
　　　　　　　　　　　　｀ヽ､　　　　　　 　 　 ヽ、〃/　　｀`ミ=-､__,　　　　.',
　　　　　　　　　　　　　　　｀ー- ､　　　　　　 .ヽ、　　　　　　　　 　 　 　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀` ー―-,-/`r､　　　　　　 　 　 　 　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ_ノ、 ヽ、　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`Y, ヽ　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `‐ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ、



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　使おうとしているそれが、大魔導師位でも無ければ作成できない魔符と知った
　　雪華綺晶の背筋を、冷や汗と共に戦慄が駆け抜ける。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　＿_
　　　　 　 ．-――z^＾7￣｀((⌒ ．_
　　　　／　　　 ／　　　}(勾},ﾄ､　　 `ｰ　．_
　　 ／　　　 ／　　　　 ((乂ミ=　　　　　　 ヾﾐ　．　　 _
　／　　　　　　 　 　 　 _)} 　 ．-‐　　　　　　 　λ--__))
´ 　 　 ／7　／　　　　　　／　　 -～ ＿_　　　　 ゞ勾ハ
　　 ／　/／　　／　　　　　／　　　　((⌒'　/　　　 Ⅵ　ｉ
＿ノ　　'　　　　　　　イ　／　　　／／｀).l　/!　/　,　 Ⅶ !
.　　／　　　　　　　　/　 　 ／／l＼ レ'/ / } / //　　:.　!
￣´　　　 　 　 　 　 {./　／／ r=＝＞ﾐ / // 〃ﾙ　　ｉ　l　　　　 ﾃﾞｨｽｲﾝﾃｸﾞﾚｲﾄ
　　　　／　　　　 ／ｽ／／{,// 7rｯそ》}　 八､/　} l 　}　|　　　　　「分子分解！？
　　 ／　　　　 ∠ゝ､ﾝ　　　 _《　ゞﾄ=ン　γ=ミ　/ ﾘ ./ ノ!　　　　　やめてキル夫！
　／　　　　 ／__.У::. 　 　 ((⌒ｰv_ｿ"　　辷ｿⅣ／ノ　　l|
　　　　　 ／　ﾄ､_ ハ::.　　　　　 　 　 　 ､ 　 ﾊ　／|　 　 l|　　　　　コナタを殺す気なの！？」
＿　　 ／　　 {　 ￣ﾄ､::.　　　　, r‐=z 、 ′/ ／ｉ　l|　 　 l!
7} `ー- ．＿ノ　　 ﾑ 丶:. 　　 l　　ヽ:/ 　 ｲ:. 　 |　l|　 　 l!　　　　　（そんな高位の魔符！
/　　　　　　　　　 {__ヽ、ヽ:. 　 `ゝ=ｧ’ イ　!:.　　|　l|r―-lﾄ､　　　　　出所は何処！？黒ローブ！？）
i　　　　　　　　　　　／}　　≧x.._ ィ～zﾘ √￣￣〃　　　　⌒ヽ‐z

二１９１．
―――――――――――――――――――――――――
　　悲鳴でまた、動きが鈍った。
　　わなわなと震える手は、もしや抵抗を示していたのか。
―――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,. -─────────‐- .、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　「………イ…………」　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　::::::::::::::::::::::::::::::::　　　　　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　　／ ／￣＼＼::::;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::／／￣＼＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　|　 |.　　　 .|　| ::::;;;;;;;;;;;;;::::｜ |.　　 　.|　|　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ 　　　　　＼ ＼＿／／　::::::::::::::::::　＼＼＿／／　　　 　 .＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　 .|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　　　 .＼
　　　　　　　； ./三≦=ｔ　　　 　 　 　 　 /　　　　　　　　 |＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／|　　　　　 　 .ヽ
　　　　　　　；/三三三三三≧=┐；　　|　　　 　 　 　 　 |　 工工工工工工工工工工工工工工｜　　　　 　 　 .|
　　　　　；　/三三三三三三三l；　　　 |　　　　　　 　 　 ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　　　　　 　 　 |
　　　　　 ；/三三三三三三ﾆ=l.　；　　 |　　　　　　　　　　　＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／　　 　 　 　 　 　 |
　　　　； ./三三三三三三ﾆﾆl；　 　 　 |　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼エエ工工工工工工エエ／　　 　 　 　 　 　 　 |
　　　　；/三t/⌒Ｖ‐ﾐ三三ニ!　；　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /
　　；　 /三./　　/ 　 }三三t|；　　　　　 　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／
　　. ；/三/　　/　　,ﾑ三三|　；　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／
　；　/ﾆ./　　/　　 ﾑ三三.|；　　ｶﾞｸｶﾞｸ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―――どうした！やれ！―――



　　　　　　　　　 ∠乂ﾆヅ´　　　　　　　　　　　　 ヽ､＿（(＿
　　　　 　 　 　 /{｛　 ((　/　　　　　　　　　　　　　　 ∨辷ﾍY ｀丶
　　　　　　　　 ′　/　))　′　　.′!　 　 l　|　　｀ 　 弋ニツ｀ ヽ　ヽ
　　　　　　　 /　　/　/　/ !　|　 |　l| ｉ ｌ　|l　|　! 　 l|　　|　))ヽ　 |　　|
　　　　　　 ./　　/　, 　 ′!　 )) |　l| ｉ ｌ　|l　|　! 　 l|　　| ((　 l　 ! 　 |
　　　　　　/　　/　/ 　 l!　|　|{｛ |　l| ｉ ｌ　|l　|　! 　 l|　　|　　 ｉl　 ｌ 　 |
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　　　　　′　,'　 l　 |　 l|ｨｾﾆﾐﾍﾞ}从八|ノ|lｨ彡＝ﾐ l|　　|　　 ｉl　 l　　|
　　　　/　　/　　Ⅳ八从K( くﾉ 》　　　　　 　{ ! }　》lN从　　 ｉ　 | 　 |
.　　　/　　 '　 　　 l　　 !ゝ二_ツ　　 　 　 　 :.=' 彡i| 　 !　　 :. 　i 　 i　　　＼_人＿人∧人_人_从_/／
　　　′　/　　　 ノ　　∧　((　　　　 .:i　 　 　 　 　 l 　 i　 　 ｌ　 l 　 |　　　　)　　　　　　　　　　　　 ＞
　　/　　/　　 ／ 　 ／ ∧　))　　　　　　　　　　 　 ﾊ　 !　　 .|　 l 　 |　　　＜　　　キル夫！！　　　＞
　 ,'　　/　　 /　,　〃　/　i､　　　　 r―‐ｭ　 　 　 ｲ　ｉ　|　 　 {　 ヽ　ヽ　　　<　　　　　　　　　　　　　(
ノ　 ノl　　 ,'　 i　/　 /　 l| ヽ　　　 ｀￣　　　 ／_ !　i 八　　 丶　 ＼　　　　／＾Y￣∨￣∨^Y^^^Y^
{　／　l! 　 i　　l./　 /　　 ｉ　_{＞　、　　 　 ィヘ /.i 　ゞ　ヽ
i,/　 ノ　　/(　〃　ノ　 　 .i　ﾄ､｀￣}　r'⌒ｰﾚ7 イ ﾊ　　　　 ＼　　　ヽ
′　 　 ／　 ゞ　 (r‐､　　/ ﾉ　￣不´＞ 　 /　〈　　ヽ　　　　　ヽ
　/　／ √~￣ﾞ￣’　 ￣￣ ｀　　{「ヽ√　　　　 `ー ､＿,　,..-―‐￢，

二１９２．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　しかし、雪華綺晶の声よりも強い強い命令が否応なしに彼を突き動かし、
　　恐るべき光弾がコナタに向かって放たれてしまう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　 .ヽ　　　　　ｌ　　　|　　　 ｌ　　　/ 　　　.／　　　 ／　　　　 _..-'"　　　._,, -'"゛　　　　　　　　　　　_,,,.. -…
-、　 　.f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ　／　　 .／ 　 　 ／　　　　_..-'"　　 _.. -'"゛ 　 　 　 　 　 　 _,,.. -‐''"゛
　｀''-、 |　　…………ト………　 　 | /　　.／　 　 ／　　　 .,..-'"　 ._.. -'"゛　　　　　　 . _,,.. -‐''"´
...、　 .｀'乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ 　　./　 　／　 　　 -'" ._.. -'"゛　　　　 　_,,.. -‐''"゛
　 ｀''-､、 .｀'-､.　　 ..ヽ　 .ゝ　　　　./ 　 ./　 .,／　 ,..-'"_..-‐'″　　　_,,,　-''''"゛　　　＿＿＿＿＿＿＿　　/￣／
.,_　　　 .｀''ｰ..、 ＼ 　　　　　　　　　　　　 : ..-''ﾞr‐''″ . _,,,　-‐''"゛ 　 　 　 　 　 /　　　　　　　　　　/　/　／　　　,,,..．
　 ｀ﾞﾞ'''ｰ- ..,,_ .｀"　.｀　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｰ'''"゛　　　　　　　　　 　＿_ /　　　　　　　　　　/　/ﾚ/　/￣／
　　　　　　　 .｀ﾞ"'～　　　　　　　　　　　　　　,,,,,,,..........---一￢'''''''"ﾞﾞ￣￣　 /＿＿＿＿＿　　 /　　　　 /　／
ー―――――ｰ　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ー――――――――――――――――/　　/　　　　　ｉＹ/　　―‐
　　　 . _,,,..　-ｰ''''″　　　　　　　　　　　 　　　￢―-- ....,,,,＿、　　　　　　　　　　　　　　/　　/
￢'"ﾞ´　　　　 ._..-''ン　　　 　 　 　 　 　 　 二ｰ　,,、　　　　　.￣ﾞﾞﾞ"''''―- ＿＿＿＿＿/　　/
　　　　　_..-'"゛ ／ 　 　　　　　　　　　 : .、､、 ﾞﾞ''-..,｀ﾞ''ｰ　,,_　　　　　　　/　　　　　　　　　 /
　 ._..-'"゛　 ／ 　　.／ /　　 .,!　 　　 : '､　＼"-＞､ .｀''ｰ､、 ｀ﾞ'''ｰ ..,,,　 ./＿＿＿＿＿＿_/　　　　　　　　　　　　―‐
.'"゛　　 ／ 　　　 / 　/　 ,i　｜.!　 ｌ　　 ｀'､　 ＼.｀'- ＼ 　 ｀ﾞ'ｰ､,、　 .｀ﾞ''ｰ ..,,、　　　　　　　　　　_从
　　,／゛　　　　/ 　 ,i′　!　 .,! .l　　ｌ　　　 ＼　 ｀'-, ｀'-_ﾞ''-､.　　 ｀'ｰ ,,、　　　｀ﾞ''ｰ　,,_　　　　　/　/ _从＿＿
.／　　　　　 / 　　/ 　　ｌ　　 !　l　　 ｌ　　　　＼　　 ＼, .｀'-､｀''-　　　　｀'''　　　　　　 .｀ﾞ''ｰ　,/,.,//　//　 ／
　　　　　　/ 　　 /　　 .,!　　｜ .|　　 .ｌ　　　　　ヽ.　　 ｀'-　 ゛　.,,‐　..-'".-'''"´　　　　　　　　"　/,､/'´ ／
　　　　 ./ 　　　/ 　　 /　　　|　│　　 ｌ　　　　　 .ヽ,　　　　 l　″ 　 　 　 　 ￣ﾞﾞ^"　　 　、　　　ﾞ　/／
　　　 / 　　　 / 　　　,!　　　 !　 .l　　　 ｌ　　　　　　 "　　； ."　　　　 　 　 　 　 　　"-　　｀''-､,、　'´　　　　　　　｀'
　 . /　　　　 / 　　　 ｌ　　　　!　　!　　　 .ｌ　 　 　 　 　 　 !　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　 ﾞﾞ''-..,、
　/ 　　　　./ 　　　　l　　　　 !　　.!　　　　ｌ　　　　　　　! .゛　　　　　　　　 　 　 　 　 　ヽ　　　　　　　 ｀ﾞ'ｰ､、
"　　　　　/ 　　　　.lﾞ　　　　 |　　 l　　　　 ｌ　　　　　　! ｌ　 　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　 、　　　　　　　　｀'ｰ ､
　　　　　/ 　　　　 /　　　　　!　　 .!　　　　..ｌ.　　　　　　ｌ　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i ゝ　 .｀''-､
　　　　/ 　　　　　/　　　　　 !　　　!　　　　　ｌ　　　　　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　 ､|　 　　　　 ﾞ''-､
　　　./ 　　　　　 ,!　　　　　 .|　　　.!　　　　　.ｌ　　　　 :　＼　　　　　　　　　　　　　　　!　　 . ＼ 　　　　｀'-､,
　　 /　　　　　　 l　　　　　　 !　　　.l　　　　　 ﾞl、　　　　 . -__　　　　　　　　　　　、lﾞ 　　　　　 . ＼ 　　　　 ｀'-､
　 ./ 　　　　　　 !　　　　　　｜　　　|　　　　　 . ｌ 　 　 　 　 　 ＿___,　　 　 .,,. ,ﾉ./ .゛　 .＼.　　　　　 ＼ 　　　　 .｀'
　/ 　　　　　　 /　　　　　　　!　　　 .l　　　　　　 ｌ,　　 　 　 　 　 　 　 -'".'" .‘ 　　　　　　 ＼ 　　　　　｀'-､

二１９３．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　だがその数瞬が、雪華綺晶に決心するだけの時間を与えていた。

　　もしその猶予が無かったら、もしも持っていた剣がこのレイピアでは無かったら―――
　　おそらく間に合わなかっただろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　 く ﾉ　ﾌ　｀゜　‐／ ｀゛　　　　　　　　　　／／　´｀-´/＾l/--､ヾ ｀ヽ_
　　　　　　　　〈ﾉ〈´て｀Ｙ´　　　　　入　　　　　　　　　　　　ヾ´y／´｀ﾌilﾉi　l　 ヽ
　　　　　　　´ﾌ三ｙ/´く　　　　　　//＼　　　　　　　　　　i　　 三ミ　´´ﾉill　l
　　　　　　　　 ﾊＫ-ﾌ　　　　　　　l/　　 　 　　　　　　　l　il　　｀r-｀´￣ l　ヽi
　　　　　＿／´//li　　　　　　　　il　　　　　 ヽ　　　　　 il　l　 il　l　　l l l　 ＼ヽ
　　　　　　￣´///　　　　　　　　 l　　　　　　　　｀〉/l　　l il　　l il　　l l i　　　ヾ、
　　　　　　 ／　/　　´　　　/l i　 i /l　　　　　　　 l /l l　 i l l　 ;l l　　　ill　　 ヽ il
　　　　　/　　　i　／　　　　l l i　　i l l l　　　　　　Ｌ___ll　l　ll　l l l　 ;ﾄヽヾ　　　､/
　　　　 i　　　　／　　　__-i　￣￣l｀l l i　　　　　i´/ l i l￣｀ﾄ´ゞ ;　　l　ヾ 　　　　il;　　　　（ごめん！
　　　　 l　i　　/／　　 ´l　ll ll l　　l ｲ(ヾ　　　　 /=-ｲ=i=-_l　/ il　　 ﾄ　 ヽ 　　　il　　　　　私の剣―――！）
　　　　 〈 ヽ /　il　i.　 　i　l　il_レ-＾ｾﾌil ,　　　 ｦ""o:;;;;;;;;;ﾟ;;｀ﾄ　il　 /ilil　　il　ヽ　il
　　　　　iﾍ〉/　 i l　i　i　 il　〉/　＜ﾉ>λil　　 ﾉ　　i;゛゛;;;;;;;;:::i il /　/ i　ヽ　ヽ　il　il
　　　　 ﾉ　〉Ｘ、il l　 　l_ _l彡ヽ＞ソ／ )ハ ソ　　　 ;;;::;:､､。ﾉ / ／　 l　 il　 l　il　　l
　　　　/　t　´￣ll　 l　l　 l　 ﾄーyニ/-´　´　　　　""´｀=-´｀ノ /　 l　　 il 　　　 　il
　　　　　　i ﾉ＼ i l　;/ﾊ　li　 il　ｦ ﾉア　　　 ､　　　　　　　　　 ´ ノ/￣ヽﾉ　　　 　　li
　　　　／´　／　 il　i/ l　l_〉ン／　ゞ-､_　　　　　　　　　　／ll/´´　　　　ハ ーi　　　ヽ
　　 ／　　 /　　　 i;　　 l　´i l il＼　　　　－― -　　 　／li￣´´　　　　　　　　l、　　　｀
　　i/i　　 l　　　　　＼　il　　ll　ilＸ｀ト ､　　ﾟ￣´ ,　イ´升ノ　　　　　　ソﾊ　/il　〉、　　　｀、
　 i/ il　　l　　　　　　　く￣ノﾉﾊ;:l　／｀　｀　-　´__//／　　　　　　　　　　　　／il 〉》　　　 il

二１９４．



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　　　　　 　　　　 　 ＼　　 ＼　　丶　　　　　　　　 i　　　|　　　　　　　./　　　 / 　 　 　 　 　 ／
　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　 ＼　　丶　　　　　　　i　　　|　　　　　　 /　　　 /　　 　 　 　 ／ 　 　 　 ／
　　　　　　　　 ヽ　　　 　 ＼　　 ＼　　丶　　　　 　 i.　　 |　　　　　 ./　　 　/.　　　　f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　 ＼　　ヽ　　　　　i. 　 .|　　　　　/ 　 　 /　　　　　|　今まで、ありがとう――― .|
　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　 ＼　　 ＼　　ヽ　　　　i　　|　　　　 /　　　/　　　　 ／乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r―''''''ヽ,　ヽ 　 　 　 　 　 　 　 　 ---‐‐‐
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ .／　　　　　r''"ヽ, ＼,　　　　　　　　　　　 　 -----‐‐‐‐‐
　　　　ー――――――――　　　　　　　　 j　l　,.　/　　　 '　 　 l　　 ヽ､
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　 ￣￣￣￣￣￣￣￣　　　　　　　　　　　　/ﾞヽ-ｯ-‐'´　.／｀ト-:rイ｢´ ﾞ　｀''　-､,＿　ノ　 　 　 　 ￣￣￣￣￣￣
　 　 　 　 --------‐‐‐‐‐‐‐‐　　　　　　／　 ／　,;∠∠,ノ´　 ｲ　　　　　　　　　　　　　　‐‐‐‐‐‐‐‐-----
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..／ﾉ　.／　／､,　　　 ,､'　./
　　　　　　　　　　　　 ---‐‐‐‐‐　 　ヽ---ﾂ　 ∧　　￣￣　　/　　　　　 　 |ﾞﾞﾞﾞﾞ|　　　　　　l￣l l￣l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ./　.ト､,_　　　　/　　　　　　　 |　　|　　　　　　l＿l l＿l
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　　　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 /　　　　 /　　　　　　　 |　　　　 i,　　　　　　　　丶　　　　　＼　　　＼
　　　　　　　　　　 ／　　 　 　 　 /　　　　 /　　　　　　　　|　　　　　i,　　　　　　　　　丶　　　　　＼

二１９５．
――――――――――――――――――――――――――――
　　キル夫とコナタの、ちょうど真ん中に投げつけられたレイピアが
　　飛来した分子分解の光球を受け止めて輝きを放った。
――――――――――――――――――――――――――――



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　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　 ＼　　ヽ　　　　　i. 　 .|　　　　　/ 　 　 /　　　　　／　　　　　／
　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　 ＼　　 ＼　　ヽ　　　　i　　|　　　　 /　　　/　　　　 ／　　　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　,.､r'!　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　-----‐‐‐‐‐
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　 　 　 　 --------‐‐‐‐‐‐‐‐　　　 | 　 ./　 |　 |　　　　　　　　　　　／| .|　,l /　./　　　　‐‐‐‐‐‐‐‐-----
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　　　　　　　　　　　　　　　／　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ;'_／
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　　　　　　　　　　　　　 ／　 ／　　　/　　　　 /　 　 　 　 |　　　i,　　　 　 丶　　　　　＼　　　＼
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　　　　　　　　　　 ／　 ／　　　 　 /　　　　 /　　　　　 　 |　　　　i,　　　　　　　丶　　　　　＼　　　＼
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　　　　　　　　　　 ／　　 　 　 　 /　　　　 /　　　　　　　　|　　　　　i,　　　　　　　　　丶　　　　　＼

二１９６．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　最後の役割を果たした剣は塵となって消滅してしまったが
　　輝きが消えた後には、消滅せずに済んだコナタがそのままの姿で横たわっており、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　_,,　ｰ''''''"ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞ|ﾞﾞﾞﾞ^''''ｰ　,,、
　　 　 　 　 　 ,..ｒ'"　　　ヽ　　　　.|　　../ 　　 /ヘ､
　　　　　　 ／ 　.`-　　　 ｀; 　　 .{　　ﾞ'　　　 .,.べ..,｀'-
　　　　 , '"-　　　　　　　　;;_,,,,_　ゝ　　i'ﾞ'''ｰ､　　/ 　　＼
　　　 ,i'ヽ　　　 ,..-―ｰ､..／゛　　 .＼　 ./．.ｒ'".＼　　.,i'"　ヽ
　　 ,i′　　　./ 　　, ｰ'"　　　　　　　＼`''''く　　 .＼..′ .／ヽ
　　lﾐ、　　　 |′　./　;;/ .、.__　　..ｌ　　　 ﾞ'-､.,ゝ　　　.ｌ ./ 　　 .ｌ
　│　.＼＿_/　.. ".　;;;| ./i　 | . ｌ　ｌ.　 ヽ　/ -､　｀'-､　_..‐″　 ...-''.!
　.|　　　　　　＼,,,,,,,,,,;;;;;ｌ、ヽ ﾞl　.ｌ　 . ｌ .ヽ　 ｀'-..,_, ＼ ,　　　 '''''''.!....-'''''"
　.!　｀., --　　　＼,,　""";;;;;;;;;;'ﾘ│ .ゝ　 .ｌ　 ｌゎ、　.ヽ｀''-.ﾐヘ..、｀ﾞﾞﾞ］
　.|　´　　　,,　"'　,,|￣";;' ;;;／｀'''|　　 |　 .ｌヽ ＼　ヽ　　｀'-､ヽ　|
　│　　　　　 iへ,,,,、;;;　 ;;/ﾞ!ﾐ＼,.|　　.!　│､ヽ／t .レ”ﾞ,ﾞ│ ｀ /
　　ｌ　,,.　　ｒ'"　　ｌ　 ｀ﾞ'''''"'-､ ｀イ.ｌ　 .|　 l'､ ｌﾞ' li_Λ| ‐"　.｀ヽ "
　　 ヽ　　　(彡ｰ'.!　　　　　　ﾞ'i./ ...ｌ,　.!　!　ﾞ'ﾑ‐.／`　　.`‐､_.ヽ,,
　　　.ヽ　　 ._　　 ﾞ''''''''''''￢―′　.､.ｌ, |, '|. ,i",ﾉ゛　、　　　 i-,|_..,.,!
　　　　.ヽ.'"゛　/ . ,, ‐　 　 　 　 　 !　.ｌ］` lレﾞ.i　　 ｌ　　r‐″　　..ｌ,
　　　　　 .＼./ 　 ,〉　　 .,,, ｉ′　　.!　　ｌﾞt./　/ 　　iゝﾉ.ｌ＼.　　 , ┴、
　　　　　　　 `'-i./　_． .〈　 ＼　 .ヽ　 .ヽ..,,./ 　! 丿　　 ｌ　.＼ ! ./´ ｀'-､
　　　　　　　　　　｀'Y-..,,,/　.'"　　　　＿. 〈..,,_._,ﾒ､　 , ―.ｌ,　　`-|.　　　 ..＼
　　　 　 　 　 　 　 / 　　 .￣ﾞﾞﾞﾞ^ﾞﾞﾞﾞﾞ´　　　　　　 .＼".／^ﾞ'､　　　 ＼ 　　　＼
　　 　 　 　 　 　 / 　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞく　　　ヽ.　　　　.＼　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　.ヽ　　　　　 ＼ 　 ./ｰ;;x,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 ｌ　　　　　　 ｀'-. ! './　ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　ｌ, 　 　 　 　 　 `ヽ ｌ.　.ｌ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼　　..ｌ,　 　 　 　 　 　 ﾞ!i|,` . ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ., ﾉ 、　　　　　　　　｀'''''"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾞ.ｌ .广ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｌ..ｌ, へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｖン'　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼,,./

　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ
.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!
　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼
　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ　　　　　「……………」
　　　　　!::!:::i:::::!　u 　` ｀ ヽ　　　　i:::::!::::::::::::i
　 　 　 　l:!:::l:::l !　＃r_ー‐-､ 　u　 l::::!::::::::::;::i
　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i ;;;;;;;;;　l:::::::::::::ハ:!
　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　＃ｨ::/i:::::ﾊi　 !　ﾊﾟｸﾊﾟｸ
　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' u　 ／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_
　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　＃　／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i



――――――――――――――――――――――――
　　無事を確認するなりどっ、と汗の噴き出したエルは
　　もはや上手く言葉が出てこない。
――――――――――――――――――――――――

二１９７．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　操られているらしいキル夫を傷つけたり殺す事はしたくない。
　　かと言って無力化も出来ない現状を続けても、じり貧になると判断した雪華綺晶が
　　何とか交渉か意思の疎通は出来ないものかと声を張り上げると。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　 　 _＞yえ}ﾄｖ^ー　　　 　　　　 　 　　 　 　　　｀丶へv七たﾍﾞ
　　 　 》ゞそヅ/　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　　　＼乂v匕人
　 　　＾｝乂=ｧ'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 Y^＞=ﾍ V
　 _＿_ﾉ/7 /.′ 　　　　 　|　l|　l　　 |! i　　 |　!| 　 　 　 　{　　 　 ) ）
((´~7￣/ /　　 　　 |　ｌ |　|　l|　l　 　|! |　|　|　!| 　ｌ　　　　| 　 　 ( (＿_
_)} ./　/　′　 　 　 |　| |　|　l|　|((⌒|! |　|　|　!| 　|　　　　l　　　 ｝｀￣)）
.　/　/　 |　　ｌ 　 　 |　| |　|　l|　| ｀)l |! |　|　|　!| 　l/　 　　}　　　ﾊ　　´
　l!　｛ 　 ! 　 |　 _　 |　| |　|　l|　レ'/ |! |　|　|　!|　/! 　 　　ｌ　　/　|
　｝　 Ｖ　|　　|ﾍ｀}!　|　|_l_⊥斗 ﾍくi　|! ト┼- ､!| / !　　　　|　 /　 |　　　　　　「キル夫！
　 ＼　ヽ.| 　 | ∧ゞ==く rｯ7そト〉{　 　 ｨfﾗ冬圷　/ ./ ″　!　{. 　 |　　　　　　 目的は何！？
　　　）　∧　 ＼∧　　 》ゞト=ン^〈　　 　弋 ぅﾂ´′/ / 　 八　＼人　　　　　　私達を殺す事なの！？」
　　 /　/ ∧　　 Ｖ） ＿ﾉ!ーv__ゾ´　　　　　　　/ /.|　l!　 / ∧　　＼＼
.　 /　/　　 }　 　 ﾚ'ﾉ´~ 丶　　　　_'._　 　 　 イj |　|　l!　｛　　ﾊ　 　 ヽ ）
　/　/　　 /　 　 ﾉ＾　/　　 ＞　　 ´｀　　＜=ﾍﾞ} |　|　l! 　 ＼　ｌ　　　 |(
ノ　/　　 /　　 （ 　 ./　 r=くｘﾍ ト=ー=ヘ人 　 | l　|　l! 　 　 ヽｌ 　 　 | ＼
　 /　　 ∧　　　｀ヽ′ ノ　 ｨ^ー～v-～ yへｖﾉ j　|　|!　 　 　 ｌ 　 　 |　　）



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　　　　　　?／, くl::::|　　　（ ①　） 　　　（::①:::）:::::|:::＼:.:;
　　　　　　 {　く::::::::ｰ─-、＿　　 　 　 　 ...:::::::::::::::::ｉ:::::::ﾉノ
　　　　　　　＞ ＼:::::::::::::::::::::::＼ｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）::.::/::／´. :.
　　　　　　 /　　 　7ニ三ミヽ::::::!:: .ェｪｪｪｪェ／:::::_;＜ :. :. :. :
　.　 　 　 /　 　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＼::＼｀_フ:::::::,ｨ彡⌒´:.:.＼ :. :. :.
　　　　　/　　　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:..:. ヽ、::r‐冖´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ :. :.
　.　　　/ 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.: ＞不、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.丶:.
　　　 /　　　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. : 厶　　Yヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..i



―――――――――――――――――――――――
　　キル夫はただ、与えられていた命令を繰り返した。
―――――――――――――――――――――――

二１９８．
――――――――――――――――――――――――――――
　　多分、この状況における選択の機会はこれが最後だろう。

　　要求を拒否すれば殺し合いに発展する可能性はかなり高く、
　　猶予を引き延ばす事も難しそうだ。
――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　.r-､_,, - ''´￣￣｀`'-､,　_,,
　　　　　　　 〆´__t=lニﾆ　　　　￣｀`'ｰ l　.＼
　　　　　 　 l __,,fゝ }==-　　　　　--==--r-,　 l
　　　　　　　l　 /　　　i　,　　　　､　　 　 i`ｰ'l　 li
　　　　　 　 l ./ |　i i　l i　l i　　l l　.li　l i　 |､l　l .l､
　　　　　　/ ./　l .l ll l l 　l　l　 l .l　l l　l i　/l l　l/. }
　　 　 　 ﾉl 7 ll　 l l.l l l　_!_ l ((l　l .l l　l/ i　 l　l　λ
　 　 　７λli　 ` i lヽli.ﾉr-. ､=l))l .l　l l / ./　l iλ .| `ｰ､　　　　　　「………やっぱり錫杖か」
　　.　/ i　l l　　 i l　lく　ﾚ`　r′lⅥ V7l l　 l　li 入乂　 l
　　 /　　l/ヽヽ　.! i (( F､,,i_/　'　　　ヽ{li　l.i　λ .|ヽ｀l　l　　　　　　（どうするべき？
　　l　 ,　 l　 i　l　lヽ! !l.ゝ､ 　　-　　,,ｲll./､.l.i　　 i　 i .l .入　　　　　 時間稼ぎも、キル夫の解放も出来そうにない―――）
　 .l　　l　l　　l__l　l }　i i┌＞- , イ´└l　{./ }　r-,　.l l　 　｀ヽ,
　λ　　i .l､　入'´|Ⅵ λ､_）　 つ　　 7l l / l-z,) !､ .l ヽ　　l　 l
..7　`　.7 l ../　　 フ / .l lｰz )´乙__凡＼ll .l　　 .ハλ l　　l　 l
　　　　{　.Y　　　 {.! l__.l l／´ 　 ＼ .| .| .l }　}　　　/ 入.　 .l　 .l
　 /　　＼.＼-､...._i .y L ＞i_f‐ｧ＜ ,l､_f// /____ ./ ;　　l　　l　　l
　i　　　 　 l ゝ　　ﾉ　}　　　　　`'''ﾟと- /i l l　　　!､!l　　　ヽ　ヽ 入
　!　　　　　l　l　 /　/　　　　　て､ろ　 !l l .l-- ,, 《 .l　　　　ゝ,　`　 ＼



―――――――――――――――――――――――――――
　　迷った雪華綺晶が荒れ果てたロビーに視線を走らせれば、
　　白目を剥いて気絶している公爵とコナタ、錫杖が目に入る。
―――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　 /　　　　 　 / ／　,.-'"´￣￣￣￣￣゛ヽ-､　　 ｀､
　　　　　　　　　　 　 ,'　　　　 　 ,' // ,'´　　　　　　　　　　 　 　 ゛!　 　 l
　　　　　　　　 　 　 ,'　　　　　 ,ﾍ（/ノ　　　　　　　　 　 　 　 　 　 l　　　|
　　　　　　　　　　　,!　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ　 |
　　　　　　　　　　 ,'　　　　　,'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｝　|
　　　　　　　 　 　 l: :　　　　'ｲ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 | 　l
　　　　　　　 　 　 |: : : 　 　 /　　　　　　 　 　 　 ヽ　　　　 　 　 　 　 | ,'/
　　　　　　　 　 　 |: :/´ヽ、 i　　 ,. -――--- ､　 ﾉ　　　　　　　 　 　 ﾘ,'
　　　　　　　　　　 ∨/´ヽ| ,'　 ´　_ "´￣｀゛ヽ, ｀"　　／―--―-､ 　 ,'/
　　　　　　　　　　　!　/ /,' |　　;　　　 ￣￣　｀ 　''　 ,'（　'"´￣ヾ　　 /ﾍ
　　　　　　　　 　／',　! l｜ l　　　　 　 　 　 　 　 　 l　ヽ　￣￣　 　 lｨ l　　　　　　「う………」
　　　 　 　 　 ／.:.:.:.!ヽヽ｀! ﾉ　　　　　　　　　　　 　 l 　 l　　　　　　,'l ,'
　　　 　,. -'"´:.:.:.:.:.:i l (ヽ_≦ 　 　 　 　 　 　 　, -､_ﾉ　'´　　　　　 ,'//
　　,,-'": : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽゝ:.:.彡　　　　, --―- ､,,,,｀‐''´＿＿　　 　 ,'ﾝ'＾ヽ、
　//: : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|: : : :.:.l´|　 　 "´´,￣￣`""　 ヾ―‐-ﾞヽ　　/:.:.: : : : ＼
//: : : : :.:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.,|: : :.:.:.:| ', 　 　 　´￣`ヽｰ――‐,=-ｨ 　 　 /!.:.:.:.: : : : : :＼
/: : : : : :.:.:.:.:.:.:.:./:.:./,'　　　:l　i　　 　 　 　 　 ｀￣￣´　　　 　 //:.:.:.:.:.:.: : : : : : :＼＿
: : : : : : : :.:.:.:.:.:.,'／　　　　　ヽ,,'',,　　　　　　 　 "゛　　　　　　,' i:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : : : :＼
: : : : : : : : :.:.:.:.,'　　　 　 　| 　ヾ､"ヽ,,　　　　　　　　 　 　_　/ /:.:.:,.--､: : : : : : : : : : :
: : : : : : : : : :.:.:| 　 　 　 　 ヽ　　 ヽ、｀ヽ､__,,_ 　 　 　 _／/￣ヽ／:::::::::ヽ.: : : : : : : : :

二１９９．
―――――――――――――――――――――――――――――
　　戦闘になった場合は何が何でもコナタを護ると言わんばかりに
　　レイピアの柄を握りしめたエルはだが、
　　どのような選択でも文句は言いませんと判断を委ね、
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |:: ﾊ　　`　　　;;;;;;;;;ll　 　 　 }:::{　}::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　　　　「………任せます」　　　　　　　　　　 　 |/l:ハ　　 ､　＿＿　;;;;;;;; ＃　;;　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |ハ　＃　　;;;; 　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　}::::{　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　}::::{　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!}::::{　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　}::::{　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　}::::{　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､



―――――――――――――――――――――――――――
　　極々短い時間の中で
　　一体、今時点でどうすれば最善なのかと迷った雪華綺晶は
　　ここには居ない彼の顔を少し思い出し―――
―――――――――――――――――――――――――――



　　 　 _＞yえ}ﾄｖ^ー　　　 　　　　 　 　　 　 　　　｀丶へv七たﾍﾞ
　　 　 》ゞそヅ/　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　　　＼乂v匕人
　 　　＾｝乂=ｧ'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 Y^＞=ﾍ V
　 _＿_ﾉ/7 /.′ 　　　　 　|　l|　l　　 |! i　　 |　!| 　 　 　 　{　　 　 ) ）
((´~7￣/ /　　 　　 |　ｌ |　|　l|　l　 　|! |　|　|　!| 　ｌ　　　　| 　 　 ( (＿_
_)} ./　/　′　 　 　 |　| |　|　l|　|((⌒|! |　|　|　!| 　|　　　　l　　　 ｝｀￣)）
.　/　/　 |　　ｌ 　 　 |　| |　|　l|　| ｀)l |! |　|　|　!| 　l/　 　　}　　　ﾊ　　´
　l!　｛ 　 ! 　 |　 _　 |　| |　|　l|　レ'/ |! |　|　|　!|　/! 　 　　ｌ　　/　|
　｝　 Ｖ　|　　|ﾍ｀}!　|　|_l_⊥斗 ﾍくi　|! ト┼- ､!| / !　　　　|　 /　 |　　　　　　「……………」
　 ＼　ヽ.| 　 | ∧ゞ==く rｯ7そト〉{　 　 ｨfﾗ冬圷　/ ./ ″　!　{. 　 |
　　　）　∧　 ＼∧　　 》ゞト=ン^〈　　 　弋 ぅﾂ´′/ / 　 八　＼人　　　　　 （ねぇ………。
　　 /　/ ∧　　 Ｖ） ＿ﾉ!ーv__ゾ´　　　　　　　/ /.|　l!　 / ∧　　＼＼　　　　 君なら、どうする？）
.　 /　/　　 }　 　 ﾚ'ﾉ´~ 丶　　　　_'._　 　 　 イj |　|　l!　｛　　ﾊ　 　 ヽ ）
　/　/　　 /　 　 ﾉ＾　/　　 ＞　　 ´｀　　＜=ﾍﾞ} |　|　l! 　 ＼　ｌ　　　 |(
ノ　/　　 /　　 （ 　 ./　 r=くｘﾍ ト=ー=ヘ人 　 | l　|　l! 　 　 ヽｌ 　 　 | ＼
　 /　　 ∧　　　｀ヽ′ ノ　 ｨ^ー～v-～ yへｖﾉ j　|　|!　 　 　 ｌ 　 　 |　　）

二２００．
――――――――――――――――――――――――――――
　　―――錫杖を渡す事に決めた。

　　全てを後回しにする判断だったが、
　　現時点でこれ以上犠牲者を出さない事を最優先としたのだ。
――――――――――――――――――――――――――――



　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,ｨ　　　　　　　　　　（{
　　　　　　　　　　　　　　(( _　-=＝=＝=-　．_ )）　 _＿
　　　　　　　 _ｨ爪ふ_,,,ｨ　}}　　-= - - =-　 　 {{Y　ｨf=ム
　　　　　　 从{己})）ソﾐ=〃　　　　_ _　　　　-=ﾐ{　弋ソ人ヽ
　　　　　 ,' と辷イr_ﾉ　　　　　／　　　　　ヽ　､__」ﾄ､_ﾆ彳　 }
　　 　 　 {　 ﾉヾイ　　　　　／　 /　　　　　　＼￣　 Yﾊ　　 ヽ
　　　 　 / /　__ ﾉ　　 　 〃/　 ,'　　　　　ヽ　　 ヽ　 ハ　　 　 ',
　　　　イ　　77!　　　　/　 {　 .i　　　　　i　 i　　　| 　　i! }　　　}!
　　　　/ 　 // |　　　 ,'　　|i　 |i　　 /　 :|　 |　}　 i　　 :| |!　 　||
.　　　/　　イ　 !　　　i　/　|!　.ﾘ__ｨ/i　　ﾘ　八 Ⅴ从　 :| |!　　 ﾘ　　　　「………キル夫。
..　　/ ／ / 　 ｲ　 i　|!/-=≠=く　/ﾘ　 /-/―‐ヾ/　 　;{ |　　 /　　　　 錫杖を渡すよ。
　　,' ｲ 彡 ﾊ　{i!　 l　|!r(Y⌒ミﾒ}）　 ／ ,ｨﾁ示ｧ_ }ｿ　　ハ!　　i
.　/　.{{　　{ﾘ.川,　 |　ﾄ八ムzソﾉ　　　　弋zブ　,　　i　　 i!　 │　　　　 だからもう、誰も傷つけないで。
　{　 乂　 / 　 ﾘ 　i　|ﾊ ゞ辷ツ'　　　　　' 冖｀ /　　|　　 |　　 ! 　 　 　 お願い………」
　ヽ　 　 /　　/　　|　| ∧{{_　　　 　' 　　　　　/,.'z　|　　 | 　 八
　　＼ 彡 ／,'　　 |!　!i{　 ゝ.　　　´=｀　 　 イ / 　 ﾘ　　 j　./　 ヽ
　　　 }　/　/　　 ∧　ヽ　 j⌒}r､ 　- 　＜iム,'　　/　　 八 {!　　 　ヽ､
　　　 i ,'　.,'　　 /　 ヽ　 ＼　　⌒)__r- '^Y´ 7 ,イ　　　　　＼　　　　 i
　　　 /　/　　./　　　　}　Y.）　 　　 ))　　　ム　 i ヽ 　　　　　｀ヽ､　 .!



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　／´;;;;;＼＼;;;＼
　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_ヽ_､;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´::::::::ﾄ､;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／::::::::::（①）ﾍｌ;;;;;〉　　　　　「ギー………」
　　　　　　　　　　　 ヽ;;;;;;;;;;;|;;;;/::ｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）｝;;/
　　　　　　　　　　 　 λ＿ゞ＼ゝェｪｪｪェ／_,/У
　　　　　　　　　　 　 ｲ;;;;;;;;＼;;;;;;|;;§ﾐ三;;;N＿;;;;ゝ
　　　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;|;;§ﾉ二ヽr―マ;ヽ　　　　　 ＿___
　　　　　　　　　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;,,|／　／'／ヽ,／;;;;;＼　　　 |: : : : :｀'''--,,,
　　　　 　 　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;,,＿／／ 　.／;;;;;;;;;;;;;;;＼　 丿: : : : : : : : :ヽ
.　　　　　　 　 　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;|;;;／ ／ヽ_／;;;;;;ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;×: : : : : : : : : : : :〉
　　　 　 　 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ;／ ／;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: : : : : /￣
　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;H;;;;;;;;;;;|　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼: :/
　　　 　 　　L.::::厂;　;r ／ ／　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;凵;;;;;;;;;;;|/〈Ｘ,,;;""ヽ: : : :/
　　　　　　　／　　ﾉ.／ ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ:入;;;;;;;;;;ﾍ,,〈_,;;ノ: : : : : /
　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ〆;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ￣ ヽ_/
　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　｀ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;;;;;;;;;;;;;;ｌ
　　　　　　｀`ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ﾍ::|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 」;;;;;i::::;;;;;;;ﾘ
　　　　　　　　　｀ﾞ`‐‐-- ､;;/ﾍ:::ﾉ　　　　　|::::::入--‐‐‐´ゝ
　　　　　 　 　 　 __,∠;;;;;;;;;;;;;;//　　　　　　ヽ_ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;､
　　　　　　　　　〈、;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　　　　　iﾆ｀ゝ;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､;;;;;;;;;;;ﾞー‐‐'"）

二２０１．
――――――――――――――――――――
　　一方、観察者から訝しげな呟きが漏れる。
――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,..､-..――..-...､,,_
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＞￢─＜ﾍ:｝
　　　　　　　　　　　　　 　 ,'.:.:.:.:.:.:＞ " ´_.,､:＜:´:￣｀:ヽ、
　　　　　　　　　　 　 　 　 {､∠....､:＜´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヾ:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　,'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ∧ﾉ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,'.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. / ｿ
　　　　　　　　　　　　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ｲﾉ 〈
　　　　 　 　 　 　 　 　 /:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. K}　 /　　　　　　「………この娘を相手にすると動きがかなり鈍るな。
　　　　　　　　　　　　 /:.:!:.:.|:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾉ ﾉ　/　　　　　　　まだ理性がどこかに残っていると言うのか？」
　　　　　　　　　 　 　 {:.:.|:.:.:!:.:. |:.:l.:.i:.:.:.:.i:|:.:.:.:.|:.|!:ソ;　/
　　　　　　　　　　　　 ∨ﾘ:.l|.:.:.:l:.:|:.:|.:.:.:｛{￣｀ :＜ｲｰ ′
　　　　　　　　　　　　　ヾﾍ:,ﾍ:.:.ヾ;.ﾍへ:.ノ: : : : : : :＞:.､
　　　　　　　　　　　　　　∨: :.:｀ー'": : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　 __ 　 　 `_ソ´￣￣￣￣￣｀"ｰ=￢′
　　　　　　　　　　ﾑ7＞＜´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞､rｪｭ、
　　　　　　　　 .,/ /ー―､:.:.:./:.:.:.:／´￣￣￣￣￣￣´ｰ‐<Kヾ､　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　 ,ｲ:{´:::::::::::::::ヽ:/:.:／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノﾉ:.:｀ヽ　　　　　　　 　 　 　 /./^@￣@^､ヽ
　　　　　　　ハ{{::::::::::::::::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: //:.:.:.:.:.:.:.:',　　　　　　　　　 　 |　!iﾉ从ﾉ））)) .|
　　　　　　 ,'.:.:Y､::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.',　　　　　　　 　 　 ヽ.从∂ヮﾟ从./
　　　　 　 ﾉ.:.:.:.:.ﾍ:::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::://.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼　　 　 　 　 　 　 　 ＼＿＿／
　　　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.ﾍ::::::::::::::::::ｌ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ {:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ヽ　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
.　　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ;::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::{ { ｛:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧
　　 　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:〉;::::::::::::::l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l l ∧.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ∧
.　　 /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　＼:::::::::ﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::jヽﾍﾍ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ∧
　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　　　{ヽ:::::::ﾍ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ:::::＼:j.、:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ∧



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　自我など残さず従順な人形に仕立てたつもりだったが、どうも結果が芳しくないようだ。
　　洗脳が解ける事はまず有り得ないが、相手が殺す気になって結果が読めなくなったり、
　　変に時間を掛けて援軍や騎士団が来ても面白くない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２０２．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　向こうの音声は聞こえないが娘が錫杖を拾って差し出したので、
　　命乞いなり停戦なりを呼びかけたのだと分かる。

　　理想を言えば、目障りなあのハーフ・エルフと小娘は処分しておきたかったが
　　飽くまでついでであるし、今の目的はあの錫杖を手に入れることに他ならない。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,　 --──‐ ､
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／＼ ヽ　jj 川　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　__　ヽ」」从ﾉﾉ＿　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　／ ／ ,　 --────ニﾆヽ　}
　　　　　　　　　　　 　 　 / /／　　　　　　　　　　 　 ｀ヽV
　　　　　　　　　　　　　　（ l/　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　r'⌒ヾ川/"⌒ヽ　　　　　!
　　　　　　　　　 　 　 　 /　　 　 /　 〃{{　　　　　 ヽ　　 　 |
　　　　　　　　　　　　　 | 　 i　 /　 　 !　　 　 　 　 　ヽ　 　 |　　　　　「まぁいい。
　　　　　　　　　　　　　 | |　| r┤ニﾆ｡､、!　/ _,,｡ニﾆ ﾚ1　　|　　　　　今の目的は錫杖だ。
　　　　　　　　　　　　　 | |　| {ヽ!　 ｀￣ 　|　 ´ ￣ 　 lJj　　 }
　　　　　　　　　　　　　 | |　|　ヾ」　　　　 j　　　　　　rｲ 　　j　　　　　 奪って合流しろ」
　　　　　　　　　　 　 　 ヽ!　l　　 ヽ 　 　 _`.. ｨ　　　 / //　/
　　　　　　　　　　　　　　 ＼l 　 　 ﾄ､　　`ニ´　　 /ﾄ､//／
　　　　　　　　　　　　　　　　`ー-ｲ}　＼　　 　 ／/ﾉ〒´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､ヽ__ ｀￣´ ,　 '´　|
　　　　　　 ＿＿＿＿＿..　 --一1| `ｰ､｀ヽ ／ ｎ　　 |⌒`　ー--------く｀ヾト､_
　　　　, イ〈7厶__　　　　　　　　 小　 { ヽ､| | レｲ　　 /|｝　　　　　　　　 ___＞⊥L}＼
　　 ／ /　 /--- ､｀丶､　　　　　 ヽ　 ＼コ | |ﾌﾉ　 ／/　　　　　 ,　 '"´_　--一ﾍ ヽ ヽ
　 /　 /　 / 　 　 　 ｀丶､＼ 　 　 　 ＼___〕 | |___／　　　　　　／,　 '"´　　　　　 ヽ |　 !



―――――――――――――――――――――――――
　　ならば寄り道は不要、と退くように命じるや否や―――
―――――――――――――――――――――――――

二２０３．
―――――――――――――――――――――――――――――――
　　目の前の錫杖を掴んだキル夫は
　　今までの鈍い反応が何だったのかと思わせる程の素早さで身を翻し、
―――――――――――――――――――――――――――――――




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―――-:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／　　　　｀"´ ｀ﾍ＿_,.- ´
　　 　 　 ￣｀"'' ―‐-.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／
　　　　　　　　　　　　　　 ￣￣　　　　　　　　ｶﾞｼｯ

二２０４．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　赤錆色の外套をなびかせて壁の穴から外へ飛び出すと、あっという間に姿を消したのだった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　,,_　　　　　　　　　　,,_　　　　　　　　　　,,_　　　　　　　　　　,,_　　　　　　　　　　,,_
　　　　　　　　,,illl!ll丶,,,,lilili 　　　　,,illl!ll丶,,,,lilili　　　　,,illl!ll丶,,,,lilili 　　　　,,illl!ll丶,,,,lilili　　　　,,illl!ll丶,,,,lilili　 ,,,_
　 　 　 　 　,;iill!ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞllllll!lilil 　 　 ,;iill!ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞllllll!lilil　 　 ,;iill!ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞllllll!lilil　 　 ,;iill!ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞllllll!lilil 　 　 ,;iill!ﾞﾞﾞﾞﾞﾞﾞllllll!lilil, ,illl!l
　　　　 .,,,,iil!!!!ii,,, ,,iill!!ﾞ　　 　.,,,,iil!!!!ii,,, ,,iill!!ﾞ　　　.,,,,iil!!!!ii,,, ,,iill!!ﾞ　 　.,,,,iil!!!!ii,,, ,,iill!!ﾞ　　　.,,,,iil!!!!ii,,, ,,iill!!ﾞ　　lililill
　　　 .llllﾞﾞ°　,llllll!!li　　　　.llllﾞﾞ°　,llllll!!li　　　.llllﾞﾞ°　,llllll!!li　　　 .llllﾞﾞ°　,llllll!!li　　　.llllﾞﾞ°　,llllll!!li　　　liliii
　　　　　 .,,,,iiil!!ﾞﾞ　　　　　 　　　.,,,,iiil!!ﾞﾞ　　　　 　　　.,,,,iiil!!ﾞﾞ　　　　　　　.,,,,iiil!!ﾞﾞ　　　　　　　.,,,,iiil!!ﾞﾞ　　　"''''
　　　 .lllll!lﾞﾞﾞ　　　　　　　　.lllll!lﾞﾞﾞ　　　　　　　　.lllll!lﾞﾞﾞ　　　　　　　 .lllll!lﾞﾞﾞ　　　　　　　 .lllll!lﾞﾞ　　　　　　lilili

　　　iヽ　　 r⌒ヽ､￣￣＝／￣￣￣￣＼￣￣￣￣￣￣￣￣￣　,　＿＿＿＿＿＿＿
　　　i)::ヽ/　＼　　＼. ／　　　 　　　　　＼＿＿　￣￣￣￣＝ ￣＿＿　￣￣￣￣＝ ￣
　　　　i)::ヽ　/　ヽ 　 ／　　　（ 　　）三（ 　）ヽ
　　　　〈__／ 　.　|　 |　　　（ﾄｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｲ）　　―――---- ￣￣￣＝ ￣＿＿
　　　￣￣￣￣/　　.＼ 　　＼ェi⌒＼ｪェ／/　￣￣￣￣＝ ￣＿＿　￣￣￣￣＝ ￣
　　　￣＿＿　./　　 ／ ⌒ヽ,＿　ヽ　 .＼／￣￣￣￣＝ ￣＿＿　￣￣￣￣＝ ￣
　　　._＿　　 r　 ／　 　　　|ヽ　　＼ 　 ＼　＿　￣￣￣￣＝ ￣＿＿　￣￣￣￣＝ ￣
　　　."ヽ |　　i,　　　　　 　 ﾉ　　＼　＼＾　　i 　―――---- ￣￣￣＝ ￣＿＿
　　　　.| ヽ./ ヽ､_../　　　　/　　　 　　ヽ､__ノ＝ ￣＿＿　￣￣￣￣＝ ￣
　　　　 .i　/　　／/　　.／＝ ￣＿＿　￣￣￣￣＝ ￣

385 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:24:55 ID:T6xZAHbQ やっぱ堕ちちまったかキル夫・・・ 388 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:26:48 ID:578I8/Rc キル夫は堕ちたんじゃない、引きずり込まれちまったんだ・・・

二２０５．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　完全に気配が消えてから、探るように息を吐き出した雪華綺晶。
　　とにかくコナタを治療しなきゃ、と神殿に走るか考えたところで横合いから声が掛かる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r─┬vイ彡'´　　　　￣｀　￣ ≧､_イ ミi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|｛ 人／　　　　　　　　　　　 ﾚｲ彡Yﾕ　ヾﾌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ィイ >　　　　　　　　　　　　　 ト､- ﾌ /ﾉ　 ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ） ﾚ　　　　　　 i　　/　ﾊ　　　 ﾄ≦ﾆ''｀ i　　 ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　 廴／　　/　 i　　 il　 /　.ハ　　 i　　 ）ﾉ　 il　 / ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　/　ｲ　/i 　 il　　il　 il　 i　ﾊ　　il　 i　　 /　./ 　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　./ /i i　i .il.　 il 　 il　 il　 il/　V　il　 il　.:/　./　　　 ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌ　 / ｲ　il　il il.　 il　　il　 il　 il　　.V il　 il .ｲ　ｲ　i　　 i　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 i .|ｨ　il　ilﾊ 　 il　　il　 il　 il＿ _i　il　ｿ　i　 .i　il　　.il　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 | ﾊ　.il　il　　-ﾅ ﾊ il ﾊil　ﾉ　＿.l 升 il　 l　 .l / 　 . il　|
　　　　　　　「行った、よね………」 　　　 |　 ﾚ人 .il　ilr─v彡ミV.i ﾊ/　　ゞ7行≦､./|　 .|　　　 il　.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 i　i　 il　iト- ､ニヾ　Y　　　　 Y:::....::ﾀ.ｲ il　 .|　　　 il　.ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 　 ヽ　　｛ rK炉y ｝ ﾉ　　　　　ゞ＝ij / 人　.|　　　 i　 iム
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 ﾊ　 ハ　ゞｯミ≧/イ ､　　　　　　　 / /il il　.|　　i 　 　 　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　人　 　 i　　＼ ゝテ' ´　　　　　　　　 ｲ ｲ .il il　.|　　il　　 ﾊ　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　/　　　　 ハ　　　　ー -　　 ,＿|　| .il il ﾄ ゝ　il　 ｲ　i　　 )
　　　f´￣￣￣￣￣ ｀ヽ　　　　　　　 　 ｛　　 / / ｲ　　　./　　＞､　　　　　　 | イ/ｲ 人升ﾌ⌒ヽ　,'　 |　､ _',
　　　|　　雪華綺晶。　.|　　　　　　　 　 /　 ./ /　 il　　 /　　人 　 ＞　_　ィ　｝//　il　　Ⅶ　 ／　 il　 　　 ﾊ
　　　乂＿＿＿＿＿_ ノ　　　　　　　 . /　 ./ /　 ｲi 　 ｲ　／　　￣||　　|￣ゝｲ　　/　　r=-''ﾊ　　 人　|　､ _ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'´ ／　ﾉ　/　ilイ　 /　　　｛￣＿.ノ　　./ 　 /　　ｲ　　　|　　　il　.　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　/　/　il　/　　　　 ￣＼ i　　/　　 ﾊ　　（ ⌒ヽ フ入 i　 |　　ヽ _ ＿ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. ／　　/　/ ./　/　 　　　　　　 ）|　 ｛　　 ｛ ｝　　|　　 |-─Y　　. ヽ　_ ＿　　 ＼

二２０６．
―――――――――――――――――――――――――――――
　　振り返ればいつの間に飲んだのだろう、
　　霊薬の効果で傷を癒したエルが更に二つを差し出してきたので、
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　 　 　 　 　 　 ヽ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､
　　　　 　 　 　 ー=ﾆ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j::ﾊ
　　　 　 　 --─=＝ﾆ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヾミ:::::::::::}
　　　　　　　 ,,ｨ彡:::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡ｲﾊ::く
　　　　　　／::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::l::::::::',
　　　　 ／---─ｧ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::／:::ﾘ:::::::}ﾊ
　 　 　 　 　 ／/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::イ:::ﾂ<彡'/:::;イ::::::::::l:::|
　　　　　　　　/::::ｨ::::::::::::::::::::::::::,ｨ/ 　¨''=ｲ _,ｲ:::ｲﾃ ::::::::::ハj
　　　　　　 _,,ｲ／/:::::::::::::::::::::ｲ/ |　　　　 　 ノ　|¨ .::::::ｲ/
　　 　 　 　 　 ∠ イ:::::::::ｨ::/ .|　　　 　 　 　 ､ _｣ ｲ:／.j'
　　　　　　　　　　/ｲ:／ .|ｲ　 　＼　　　‐--- ／|:/
　　　 　 　 　 　 __ ｲ　　 j　　　　　＼　　ﾞﾞﾞ／ 　.ｿ
　　　　　　　　 /＼　　　　　　　 　 ／ヽ- '　　　　　　　「公とコナタにこの霊薬を。
　　　　　　　／　　 ヽ､　　　　　_ ｲ　　　　　　　　　　　 高い物ではありませんが」
　　　　　 ／　　　　　　ヽ､　　Y
　　　　 /　　　　　 　 　 　 ー┴､
.　　 　/　　　　　　　　　　　　 　 |
　　　/　 　 　 　 　 　 ＼　　　　 |､
　 　 i　　　／　　　 　 　 ＼ 　 　 ﾊ
　 　 |　　/　　　　　　　　　　ヽ　　 |
　 　 |　 ,'　　　　　　　　　　 　 }　　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,, -‐'''″￣｀ミ`{.{@yiゝゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,,i=η／　　　　　　　ヾ､`ヾ､)) l　｀'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,//,i<迴'j　　　i　　　　,　ゝ ＼. (( .i i　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l l　/ //　i　i 7 .i　　　ヽ,ヽヽ i i　l l ﾊ　｀!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l i　 / i　l l　l .i| |　　 i i　i　,ﾊ　il　i i ,ヽ　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l i　i l ,　l. !　|i|i　l　i i l i　l l　ﾊ7i　i l i ゝ,.｀'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i i l l　!　i ヾ i　l ＼i i lﾊi i i l　ﾉl　| i l　 .l　}
　　　　　　　　　　　　「う、うん。　　　　　　　　　　　　　　　　. // /i|　| i | i l_.,,((、ii､ |il! .だ｀｀'i.7　l l|　 .'y l
　　　　　　　　　　　　 じゃあ、コナタにはエルが……」　　　//,'´　i＼＼ヾiFｯﾐ''ｼi　　 弋__沙7　//i　./ ./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　イ　.,/′ヽゞゞ≦汗彡'　 ,　　　.//　li　| / /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /,,_　　 }li ゝ､i,　))　 　 ｡ 　 . lil　.li l i ,l .{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　　　7 i! !i)..ゝ．.,_. 　　,.／il　 il　＼＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ i/ //-‐'′κ,｀"-　>ヾ　! >.-‐'ゝゝ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/''"　~´ ,/ | k>っ>b, ,,.,ciyi)-ゝ　　　 ＼ヾ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 7ζ　　_ / l　ξl lゝ､ . ／l .!　i l　　　　　iゝ｀l



――――――――――――――――――――――
　　出来れば触れるのは一人にしておきたい、と
　　コナタの分を残して一つだけを受け取った。
――――――――――――――――――――――

二２０７．
――――――――――――――――――――――――――
　　しかし、残りの一つも無理に握らせたエルは言ったのだ。
――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ,. '　　　　_,,,,､､yｯ‐'´
　　　　　　 　 　 　 　 　　　　,r／, _,､-='"´:::::::K..,,,,,,,＿＿__　 ＿_,,,,.....
　　　　　　　 　 　　　 ／ ,､ｲｼｰ''"´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::￣::::ン'"´
　　　　　　　　　　　 / ／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,､-'"
　　　　　　 　　　　 ｿ,:'::::,::::::::彡=::::_:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`'=ｪｰ　　　_,.
　　　　　.　　 　 　 il!'::::ｿ::, ｪ=-ﾆ 'ﾞ:::::::::::::::::::::::::::::-ｰﾆ三::::::::::::::::::::`ﾐｪ＜´
　　　　　　　　　,..=ﾞ::!:::ﾚ:':::::::::::::::::::::::::::::::::::::三ニ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::`=ﾐ云ﾐ'=､､._
　　　　　　　 ,r'^ﾁ;::::::::ｰ＝ﾆニ　 ﾆ＝=ー-:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｫr'''`ﾞﾞﾞ'''ｰ-､
　　　　　　　　 ﾒｿﾍ､:::::::'::.:.,::::::':::.:,::::::::::'.::.::.,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ､ﾞヾ､
　　　　　　 　 ｲ!l ! !::ヽ､::::::::::::::::::::`::::::::'::.:.,::::::ヾ､:::::::::::::::::::_::::::::::::::::::ヽﾐｷ=;'''`´
　　　　　　　 ﾙ'|.l!::l!::::::i:ヽﾐﾆｪｰ- ､､､.._::::::::::ヽ､::＼三ﾆ二_::::::::::::::::::::::::::ヽ=ｰ___
　　　　　.　　ｿ .i.:::!::',:',:::､:::::::::;::::::､:::::::::､､::::::::::::::::::::ヽ､::::::::::`:::::::::::::::::ﾆ=二''"´
　　　　　.　 /　 !:从::'.,:::!ヾ､:::::ヽﾐ ﾆｨ弋;ｯ'y､ヽ::::::::::::::::ヾ:::::::::ヽ:::::::::三天_ ~
　　　　　　ﾉ　　り !ｌ::::ヾiﾞ代ｯ､-::ヽ` 　､ ノ 　 ﾞi::､::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::ミヽ､
　　　　　　　　　!'　!':;::ﾊ:;ゝ=‐ 　｀ﾞ`'‐ 　　　　　!:l ﾒ､::::::::::::､,､:ヽ:::::::ヾｯ､ヽ
　　　　　.　　　ﾉ.　 　ヾ','!ﾘ丶 |　 　 　　　　　　 !i,i:　｀ヾ､:::i 'i ﾞヾﾐ廷=-ヽ
　　　　　　　　'　　　　 `､ﾞｬ､. ヽ､ ‐　　　　　　　ﾘ'　　　　ﾞﾘ＞・'"　 　 ｀`ヽ､.,
　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀ i! ヽ　＿＿_ 　　　 ／　　　,, -'" 　　　 　 　　　 `ヾヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　!　　ﾞヽ`ﾆ´ 　 　／:: 　 ／´　'""'ｰ-､ﾞ_ヽ､ 　　　　 ｀ヾ､
　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　｀ヽ. __,. '^`'‐=./'´　　　　　　　 `'ｰﾞﾐ､,　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　ﾞ'ヽ､　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　 ＼　ヽ,　　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　　　　　　ﾞ|　　　 　 　 　 　 　 　 　 　＼　i 　 　 　 ヽ
　　　「私はキル夫を追いかけます」 　 　 　 ｌ 　 　 　　 　 　 　 　　　i　　　､.i.',　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　 　 　　　　　　　　　!　　　ヽl ',　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !　 　 　　　　　　　　　,' ,'.　　　ﾍ : ､ 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　 　　　　　　 ヽ　 　 　　　　　　　　,' ,' 　　　　ﾞi! :　　　　　　ヽ.
　　　　　　　　 　 　　 　 　　　　　　　　　　　　　　ヽ　 　 　 　 　 　　/ ,'　　　　　 ﾍ'　　　　　　 ,ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､　　　　　　　/ ,'　　　　　',　ヽ　　　　　　',ヾ.
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　 ｀ヽ､　　　　 / /　!　　　　 ',　 ﾞi 　 　 　　　', ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　　 　 ﾍヽ 　 　/ /　 !　　　　　'i　','i, 　 　 　 　 ',　＼
　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　　　 　 　　　　　　　　　ﾞiヽ　　 /　　ｌ　　　　　　l　 ヽ　 　 　　　',　　i',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 'i ヽ　′ 　ｌ　　　　　　 i 　 ﾞi 　　　､　 ,'　　 ﾐ､

二２０８．
――――――――――――――――――――――――
　　その時一瞬だけ触れた指先から伝わってきたのは
　　どす黒く、そして強い憎しみの感覚に見えた。

　　飄々とした仮面の奥に潜んでいたそれに驚き、
　　仲間がこんな状況なのにと言うと、
――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,____,.廻}｀lii_,,..､∥
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,-''"´´￣｀｀!K呈/ゞ､''-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,／´　　　　-､　 .｀iﾞ""i..} !　l `',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ././　　 i　　 i　 'i　 i }　　'i　li　,　.l＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ .|　　　|i　　 ii　 l　.! .i　　 i　ll　i .|＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l ,.ii　　　| l　 !i　　l　.l　|　　i .i ii　l .l　.＼＼
　　　　「え？　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 l i.lu　　./ll`''ii-l=､l_ / λ　 li　i.ヽ､! ｀i　 i ,/
　　　　 ちょ、ちょっとエル！　　　　　　 　　　　li li i､ ..//!_/ ! !　/｀l''i/i　 .li　 .|i.＼, ＼ l l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽi{ｼ/´. '行勿ｯ/ / / .l　 .! il　 i＼ ｀ゝ､``'_'
　　　　 重傷のコナタを放って！？」　　　　　　　 ﾞ<　　 ｀ｰ'´.//'!./入 !　l ..| ヾ i｀＼ li ｀｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .`.､-､.　.,//l..! /-∧ヽ !､ il ..l .l　ii|　i｀-i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/./..!._,i､,__,,,l　/!i｀｀''.!入!>i!!　l l　il　 l　li
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ /　 .i　iii/､l　l''''y!‐''>.-.!! .l　.|i Il　l　/ il
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／　　.l　.iil/.Ll l!=ﾝ-'./´　`'i i＼i li .li　l　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l./　　　 .l　.il-ンl .!,　　 !　　　｀il　i　/ il ..!　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l.l　　.,,／ i　l Z-/i.＼　 .!ｨli　　 ゝil　l　il l　 i



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,／　 ,,､-‐=''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 /:i,､ｨ'´::::∠､,,,,,,___
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::,ﾆ=-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,-'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::､'=、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　　ﾍﾟｺﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '!i'!:::::::::::::::,=-‐'""゛゛゛゛￣￣｀'''‐､
　　　　　　　　　「………すみません。　　 　 　 　 , !ヽ::::::／´ 　　　　　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　 十年ぶりなんです。　　　　　　　　　　ﾘ/　　 ヽ　　　　　　　　　　　　　 '､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !　　　　 ',　　　　　　 　 　 　 　　 'i,
　　　　　　　　　 コナタも分かってくれます」　　　　　　 l　　　 　 ',　,　 ﾉ　　　　　　　　　　'､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　　　　/ /　/　　　　　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞl′　　　lﾞﾉ　´　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　　lﾞ､,　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 　 l'ヽ｀ｰ　　　　　　　　　　　　i



―――――――――――――――――――――――
　　申し訳ありませんと頭を下げた彼は
　　よく分からない言い訳を残して出ていってしまう。
―――――――――――――――――――――――

二２０９．



　　　　　　　 　 　 　 　 /:|:::::::::i::::;iく　ﾞi;:lll!::::|||!
　 　 　 　 　 　 　 　 　 i::::::i::::::|;ｨi|liﾘ　　l::ii|:i:lil!　　　　　　　　　「では」
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ﾞ-|--イｉlliil/　　　|||:||:|:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞｰ!´　　　　ll:::i||:|!
　　　　　　　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　　|:|::l:!|　　　　　　　　 ,,..,,..､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |:||!!　　　　　.|ﾞﾞ'l____,! .|　!:
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l iil　　　　　l　........〟.厂　　　,､ r‐'ｌ　.r､、!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　||i　　　　./ .iト､　.!　l　　　i　ﾞl.|　ﾞl /　lﾞ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |l　 　　!､／''-,｀'ﾞ ./　　 │ ﾞl |　|/　lﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .／..､/ 　　　ﾞl,,ﾉ '"│ /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ,／　　　 　　´　　.lﾞ　lﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .ﾞ''"　　　　　　　　　　 ＼,lﾞ




　　　　 　　 __　 　 ,､ .（(,､-―‐''''''''''―-､,　　　　((
　　　　　　,ｲ `'ｨｹ´vﾄr,,)）　　　　　　　　　｀ヽ, ,ｨｭ))-､
　 　 　 　 l　　 ,ゞﾍﾉﾌｨ　 .／　 　 　 i 　 　 　 `､Yﾉ　 l!
.　　 　 　 j　 　 ゞ〃‐'´　/　　/ 　　 | 　 　 | 　((ヽ､　 i!
　　　 　 / 　 //.（(　　　/ 　 / |　|　 | 　 　 | 　 )） ヽ　.i!
.　　 　 / 　 // 　 )）　:/ 　 /.　|　|　 | 　 　 | 　　　　i!　|
　 　　/ 　　/　　 "　 / 　 / 　 |　| 　|　　|　|　 |　|　 i!| |
.　 　 ′ 　.i　　/　 l .|　　l!　.)）|　|　|.| ｌ　|　|　 |　||　|: /　　　　　「………ほんとに行っちゃったよ、
　　　l　　　|　 i!　　.| |　　ﾄ､（(ｨｭ, |　l.| |　|　|　 |　||　|: {　　　　　 信じらんない」
　　　V　　i!i　 |　　 |.i　,ｲ´ｨY^ﾔﾊ| i!|| | l:|　|从| l:|! ||:ハ
　　 　ﾍ　ﾉﾉ　 |!　　 |! _Vゝ~ﾝ'.ﾉ j`´ ｀ γﾃｫ､// i!/　l ∧
　　　　,ｲ,ｲ .l　 l!　　 l!ゝ_ゝ｀´ﾝﾝゝ　　　込ｿ.ﾉ/.| .〈ヽ,l:　 ＼
　　／／|　.ﾘ　 .|!　　ヽ　((`ｰ'´`　 　'　　￣ /　|　.ﾍ .ヽ 　　＼
,ｨ'´／　 l　/ ,ｨ　 |! 　 ,､`､))　 ,､,　.ｰ.,､　_, ｨ' 　 |　| ゝ 　＼　　:.
　/　　 ﾉ／ｨ'　_,､ｨ'ヽﾉ,ﾊ､,` ﾉ´ ｲ,-‐ﾉ `ｰ'r-､ ､.ヽ l　 ヽ　 ﾉ　　}
　{_,､ｨ´,ｨ'´　ｨ'´　　 　　__,ﾊ,　ﾉ (__ -‐　 '´ （,､‐-`､!　　〉/　　　〉



――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　正直呆れたが、エルにはエルなりに譲れない部分や目的があるのかもしれない。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２１０．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　今はそれよりも回復が先だ。

　　倒れたままのコナタに走り寄った雪華綺晶は息があることを確認すると、
　　すぐに助け起こして口に霊薬を流し込んだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　　´ 　　　　　　　　 r-ト､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　{ {:必 }､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　|l　　　　　　|　　　　ゞ辷ｼ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 / ,　　　|l　　　　　　|　　　　　　 i| 　　|＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.′i|　 |　ﾊ 　　 |　　 |.　　　　 　 八　　ヽ　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 l|　 | / |　 |　|　　 |　　 ｌ　　　|,　 ＼　 }＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |　 l|　∥ 厶./l　|　　 |　　 |　　　| 　　 ﾉ　ﾊ.　＼. ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､ l|ﾍイrぅｭ､_!ﾊ|　　 |　　 |　　　|　　/　/　 }　　)　　)
　「おっと、それどころじゃないよ！　　　　　　　　　 　　　　　　　　ﾉ.　 }c::::ﾘ　/　　/　　/　　　 | ／ ／　／ ／　／
　 コナタ待ってね、すぐ霊薬を飲ませるから！」　 　　　　　　　ｒ　　　{沙'"./　　/　　/　　　　{{　 ( 　 /　（　　（
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| _ 　 　 　 / 　 /　　/　　　＼ ＼　＼{　　 ＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ｀ヽ　　 / 　 /　　/　　　　　 :　 ＼　＼　　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ .}　 / 　 /rzr─ ｧ　　　i　 i　　　＼　＼　　　＼　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ー/　 ／　　　 /　　　　｝　 ｝　　　 ＼　＼　　　)　　 )
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／_／　＿,厶ｲ⌒! 　　/　 /　　　/　 } }　　)　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｨ ⌒ Y⌒!７ﾌ7ｧ/　　　/　　{　／ ／　　　　／　ﾉ　 /　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 (＼　　 }_/////_ﾄｧ　　　　　 |　／　　.　 イ　／　 ／　/　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　弋 三.r┴ミ了く／ﾉ　　　　　 |　　　／.　 /／　 ／　 ./　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （＿＿rイ　 兀け　　　　　 |　 ／　　　く　　 ｛　　 /　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |＼､. イ ⌒i､　　　_＿ｊ　/　　　　{　＼　 ヽ　{　　?
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　 ＼　　 人 /￣/　 {　.＼　　　 ＼　 ＼　}/　　ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ / r‐ {　 /　 /　 /　　 ＼　 ＼　　　 )　　＼}　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠厶⊥!.　 ＼　／　 / 　 　 　 ＼　 ＼　/　　　/　{

二２１１．
――――――――――――――――――――――――――――――
　　もちろん、触れてしまった事で否応なしに彼女の心は見えてしまう。
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　 ＿　　　 　 　 　 ,､　　　　 .ﾉｿ
　　　　　　-一＝ﾆニ　,,￣ ﾞ'一T￣~!　ヽー- '´'',,_
　　　　　　 　　 　 ,, -‐ ﾞ´: : : : : : : :i!: : : : : : : : : : ::｀ﾞ:.､
　　　　　　　　,／: : : ;; : : : : : : i: : ::|: : : : : : : : : : : : : : ､ヽ
.　　　　　　 ／: : _／　　　　　:i!::: /|: : : : : :i : : :　　　　 ヽ｀,
.　　　　　 /:,, ィ／　　　 /: : : | : / .|: i: : : : |:ﾊ,: : : : . . .　 ﾍi!
　　 　　 /／ ./　. : : : :/: : : ,,|-‐ﾄ､.|: |: : : ::|!_⊥ _ : i: : : ::i: ﾊ
.　　　　/　　/: : :/: : :::i!: :／/|: /　 |::|i; : ::::|　　ヽ｀ヾ|: : : :i!: :|
　 　 　 　 　l: : ::i: : : ::l: : : ./ |/　　 !:| l! : : :|　　　Y: :|:::: : ::| : |
.　　　 　 　 l: : /l: : ::::l: : :/　 | 　 　 !|　l.: ::::|　　　 ヾ:}::: : : |};: |
　　　　　　 l: :/ |: : :::::l: : !　＿＿_,　i! 　ﾍ: ::|＿＿＿i!;:: : ::l::i!::|
.　 　 　 　　!/.　l: : ::ﾊ:!: i!. ━━━　　　 ヽ:|━━━ i!::::: l:::|ﾍ!
　　 　 　 　 l. 　 !: ::{::!,X:|:i 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ・i!::|::::l::::|　　　　　　　「う………」
　　　 　 　 　 　 ﾍ:::|!:｀ﾍ| l　　　　　 　　　　　　　　 l::::|::i!:: |
　　　　　　　　　　ヾ||:::::|:::::ﾞ's､.,　　⊂ﾆニ⊃ 　 ,..ィﾞ:::::ﾚ' : :|
　　　　　　　　　　　 | ::::|: : : .|::::≧=‐----‐=≦::::|::: : :|:::::::|
　 　 　 　 　 　 　 　 |:::::::l: : : :i!´　 {~ 　 　 ~}　　｀|::: : :|:::::: |
　　 　 　 　 　 　 　 .|::::::::}: : : :|　.　ﾍー-一ﾉ　　. l: : : i!､::::::|
　　　　　 　 　 　 　 l:::::::ハ: : : lヽ　　',　　 /　 　 |: : : l /,:::: |
　　　 　 　 　 　 　 l ::::/　ﾍ: : ::l ､ヽ　ヽ　/ 　 .ノ|: : ://:ﾊ :: |
　　　　　　　 　 　 |:::::!　　 ヽ: ::l ヘヽ　V　 ／´l: : /' 　 ﾊ:: |



　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　 ＼　　丶　　　　 　 i.　　 |　　　　　 /　　 　 ./　　　　 　 ／
　　　　　　　　　＼　　ヽ　　　　　i. 　 .|　　　　　/　　　 /　　　　　 ／
　　　　　　　　　　 ＼　　ヽ　　　　i　,､.　　　　　　　　　　　　　　／
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,!　L.-ヾ　　　　　　　　　　　　　　　-‐
　　　　　　　ー　　　　　　　　　_,.-'´　 _, - '_
　　　　　　_＿　　　　　　　　　|_,.- '´|　L-'´_|　　　　　　　　　　　　　　--
　　　　　　　　　　二　　　　　　　,.-'´　 ,.-'"　　　　　　　　　　　＝　二
　　　　　　　￣　　　　　　　　　|,.- '´| |　　　　／>　　　　　　　　　　　　　￣
　　　　　　　　　-‐　　　　　　　 　 　 |,i　　 ／ r´　　__　　　　　　　　　‐-
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 く／Ll　 ／／
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ'!_l　　　 __
　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　／／　　　　 ＼
　　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丶ﾚ'!_l　　 ＼
　　　　　　　 ／　　　/　　　 /　　　　　　|　　　i,　　　 　 丶　　　　　＼
　　　　　　／　　　 /　　　　/　　　　　　 |　　　 i,　　　　　　丶　　　　　＼

二２１２．
――――――――――――――――――――――――――――
　　頑丈な鉄格子に閉ざされた狭く薄暗い牢屋。
　　一人、ぽつんと立つ彼女は無表情で表を眺めているが―――
――――――――――――――――――――――――――――



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　.....;::|　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,.､t''T叮了丁丁Ti￢-､　　　　　　《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,.<ヽ>‐ ´ ||￣||￣||｀＾''く,r｀>､　　　　《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 .,心>ｲ'__||＿||＿||＿||＿||__ヾk,. ﾍ　　　《》　《》
　.....:::|　　　;; : .　.　　　　,　;..　 　 　 ム,.//'￣||￣||￣||￣||￣||￣||;V‐''',　　 《》　《》
　.....;::|　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |ﾆ:!;{_||＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,lYﾆl　　 《》　.《》
　.....;::|　　　　　　　　;::. .　　　 　 　 ├'"!´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||｀|''r┤ 　 《》　 《》
　.....:::|　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |-ｰ||］|＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》.　 《》
　.....:::|　　　　　　　　　 　 　 　 〃￣｀.ｰ|´||￣||￣||￣||￣||￣||￣||｀|ｰ-|　　 《》　　《》
　.....:::|　　　　　　　　 　 　 　 ` !|　　 　 , ィ.＿||＿||＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》　　 《》┨
　.....:;:|.　` 　.　　.　　 　 　 　 ., ヾ､＿／:/--‐;ｧ ....||￣||￣||￣||￣||［|ｰ-|　　 《》　　《》
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　.....;/|　 　 `;　　　　　　　 .　/.::.::.::.::.::.::.::.::.::.::. ｀＼.￣||￣||￣||￣||｀|ｰ-|　　 《》　 《》
　.....:l i.　　　 　 .,　　;..　.　._,' : : .::.::.::.::.::.:: . : |.::.:}￣|＿||＿||＿||＿||_,|ｰ-|　　 《》　.《》
　.....;:ｌﾉ.　;　'　　＿,,..-ｰ.'"l_.!.::.::.;;.;:.::.::..: .::.::.::.!.:ｉ:.| ..||￣||￣||￣||￣||｀|ｰ-|　　 《》　《》
　　　　　　　　　　　　　　　 l.::,;;';;';;';;.;;.::.::.::j.:/)ﾍ::|
　　　　　　　　　　　　　　　　!;;';;';;';;';;';;';:.::.j.:/ﾞ!::|`}
　　　　　　　　　　　 .　 　 　 l;;';;';;';;';;';;';:./::.|ｲ::.!
　　　　　　　　　　　　　　　　λ;;';;';;';;';;';/.:: | |.:l
　　　　　　　　　　　　　　　　l:i:!';;';;';;';;';/:..:..:|ﾞヾ
　　　　　　　　　　　　　　　 j:|.::.i|;;';;';;/.::.::.::.|l!ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　 |::!;;.::|;;';;/:.::.::.::.::|l|｜
　　　　　　　　　　　　　　　 !::|';;.:l;;';'.::.::,'::.::.::!」｜

二２１３．
―――――――――――――――――――――――――
　　空の色は夕焼けではない、血の色で赤く染まっている。
―――――――――――――――――――――――――



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　　' ',　　　　　　 ;:;　 　 ;::;　　　,' '　　　　　 , '　　　　　　　　　,
;:'..,　　'　　　　　　 ;　　 ,::;　　 , 　　　　　 , '　　　　　　　 ,....;' '
　' '.,　　　　　　　　;　　,:;　　　　　　　 , '　　　　　　　,...'::; '
　　　' ,　　　　　　　, 　 ;　　　　　　 , 　　　　　　 ,..':::::; '　　　　　　, ,......', '
　　　　 ' ,　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,':;::; '　　　　,....::'::::::::::::'::::::'::;:::' , '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,....':::::::::::::::::;::::;　'　'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..':::;　'　'　'　'　,':::;':::;':::;'::,_,

二２１４．
――――――――――――――――――――――――――――
　　今は緊急事態だし、仕方が無いと割り切れるぐらいの余裕が
　　出来はじめていた事を、彼女はまだ自覚していない。
――――――――――――――――――――――――――――



　　 　 _＞yえ}ﾄｖ^ー　　　 　　　　 　 　　 　 　　　｀丶へv七たﾍﾞ
　　 　 》ゞそヅ/　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　　　＼乂v匕人
　 　　＾｝乂=ｧ'　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 Y^＞=ﾍ V
　 _＿_ﾉ/7 /.′ 　　　　 　|　l|　l　　 |! i　　 |　!| 　 　 　 　{　　 　 ) ）
((´~7￣/ /　　 　　 |　ｌ |　|　l|　l　 　|! |　|　|　!| 　ｌ　　　　| 　 　 ( (＿_
_)} ./　/　′　 　 　 |　| |　|　l|　|((⌒|! |　|　|　!| 　|　　　　l　　　 ｝｀￣)）
.　/　/　 |　　ｌ 　 　 |　| |　|　l|　| ｀)l |! |　|　|　!| 　l/　 　　}　　　ﾊ　　´
　l!　｛ 　 ! 　 |　 _　 |　| |　|　l|　レ'/ |! |　|　|　!|　/! 　 　　ｌ　　/　|　　　　　　「良かった、命に別状はなさそう………」
　｝　 Ｖ　|　　|ﾍ｀}!　|　|_l_⊥斗 ﾍくi　|! ト┼- ､!| / !　　　　|　 /　 |
　 ＼　ヽ.| 　 | ∧ゞ==く rｯ7そト〉{　 　 ｨfﾗ冬圷　/ ./ ″　!　{. 　 |　　　　　 （血色の空が覗く………牢屋？
　　　）　∧　 ＼∧　　 》ゞト=ン^〈　　 　弋 ぅﾂ´′/ / 　 八　＼人　　　　　 何だろう、この風景―――）
　　 /　/ ∧　　 Ｖ） ＿ﾉ!ーv__ゾ´　　　　　　　/ /.|　l!　 / ∧　　＼＼
.　 /　/　　 }　 　 ﾚ'ﾉ´~ 丶　　　　_'._　 　 　 イj |　|　l!　｛　　ﾊ　 　 ヽ ）
　/　/　　 /　 　 ﾉ＾　/　　 ＞　　 ´｀　　＜=ﾍﾞ} |　|　l! 　 ＼　ｌ　　　 |(
ノ　/　　 /　　 （ 　 ./　 r=くｘﾍ ト=ー=ヘ人 　 | l　|　l! 　 　 ヽｌ 　 　 | ＼
　 /　　 ∧　　　｀ヽ′ ノ　 ｨ^ー～v-～ yへｖﾉ j　|　|!　 　 　 ｌ 　 　 |　　）



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　もちろんコナタが抱え込んでいるものが何なのか、どれ程の事なのかは分からなかったし、
　　正直この凄まじい絵面に嫌悪感や恐怖だって覚えた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２１５．
――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　それでも、他人がどのような心を持っていても、自分にはやらない夫が居る。
　　そう思える事が、確かな心の支えになっている。

　　だから今はとにかく、やらない夫に戻ってきて欲しかった。
　　一刻も早く彼の顔が見たかった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　,─-、,. ─-､r'f__
　　 　 　 /　 y　　　　　:.　 ハ
　　　　　 } 　.:　 　 　 　 i　　 /
　　　　　 |　.:i　　　　　　|:　 .′　　　　　　「疲れた………。
　　　　　/　,;: 、　 　 　 :ｉ:.　i　　　　　　　　いきなり過ぎて、何が何だか………」
　　　　./　 .;ｉ　ヾ　　 /, .:ｌ:　|
　　　　l 　 .:;|　｀　　/ " .:l: ∧
　　　　| 　 .::!　.　　　　　:|:.　 iヽ　　　　　 （やらない夫、はやく―――）
　　　　7　　:|　 i:　 　 　 :|::　 |　〉
　　　　ゞ:.　 |:.　 　 　 　 ﾑ　 { ヽ
　　　　 ∧　》:.　　 　 　 i::　 ﾉ;.∧
　　 　 /.::| /.::.　 　 　 　 }:, ( i :　ヽ
　 　 ./.:::/'.::.:. 　 　 　 　 ゞ:..)| i、_＞
　　　l::.　)!::..　　　　　　　 )ﾉ::|.ﾊ　　　　ﾍﾟﾀﾝ
　　　 !:::.、　　 :　　　　/.:ﾉ,　.′
　　　 ::::::..ゞ..,,　　 ,.;: ´ 人　:i
　　　 i::.:.. . 　 ¨　 　 ; ﾉ::::∨
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　　　　 ｀ヾ.// イ::::::::::::::
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　　領主の容態も確認し、気を失っているだけで外傷は殆どない事を確認した雪華綺晶は
　　そこで緊張の糸が切れてしまい、ぺたんと床に座り込んでしまう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２１６．
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　　じんじんと痛む手で膝を抱えて、ため息を吐いた。
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f´￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ ｀ヽ
|　　はやく、戻ってきて………　 　.|
乂＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ ノ

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　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 　　 =========､
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　　　　 　　　 　 i　 　　 i　　 　 　　i 　 　 　i　 　　　 　 　 　| |;|,|,|,|,|,|,| |ll|
　　　　 　　　 　ムi　 　ムi　 　 　 ムi　 　 ムi　　　　　　　　i????ill|
　　　　　　 　　 Ｉ.Ｉﾑ,＿_,Ｉ.Ｉﾑ 　 　　Ｉ.Ｉﾑ,＿_.I.I ﾑ 　 　　 　 　 | |'i'i'i'i'i'i'i'| |ll|
　 　 　　　　　　|l,|I/ i＾i |l,|I|　 　　 |l,|I/ i^i |l,|Ｉ;|　　　　 　 　 | |;|,|,|,|,|,|,| |ll|
　 　 　　　　　　|_,!__i山i.!_|l.| _ _ ＿|_,!__i山i.!_|l;|　 　 ﾑ　　 　i????ill|
i　　 .i　 　 i　　 | i"ﾞ∩ﾞ" i |/;;||;;||;;;| i"ﾞ∩ﾞ"i |ll|.l l.i;;:_l_l_!______| |'i'i'i'i'i'i'i'| |ll|
|ｰ―||ｰ―||ｰ―|| i__:;ｌ」;:_,!.|凸凸凸| i__;ｌ」;:_,! |;;,|)))))|;||;;;;;;;;;;;;| |;|,|,|,|,|,|,| |ll|
|=ﾍ=||=ﾍ=||=ﾍ=|I?:冊:_?|???I?:冊:_?|-]]]]]];||=∧=.ロⅢⅢⅢロ|i
| ∩ || ∩ || ∩ ||　 ｉⅢi　: | iii iii iii..|　 ｉⅢi　: | .|:|:|:|:|;||'~|;;|　| |　| |　| :| |ll|
|,.ｌ｣,,;||,.ｌ｣,,;||,.ｌ｣,,;||＿|Ⅲ|__:_| lll lll lll..|＿|Ⅲ|__:_| .|:|:|:|:|;||l_.ｌ｣;__|_|　| |　|_;| |ll|
Ｉ.[iii].,ＩＩ.[iii],ＩＩ[iii]_I?._冊_.?|???.I?:冊:_?IIIllliiiiiii||iニニ[.二二二二]:|;.
| Ⅱ || ∩ || Ⅱ ||　 ｉⅢi　: | iii iii iii..|　 ｉⅢi　: | |:|:ｌ:l:i_.!＿iii_ .| |　| |　| :| |
|_Ⅱ_||_Ⅱ_||_Ⅱ_||＿|Ⅲ|__:_| lll lll lll..|＿|Ⅲ|__:_|_|,|,ｌ,l,i_,l|　　 l￣i__| |　|
|_門_ｌ|_門_ｌ|_門_ｌ|__!_而___!_|ΠΠΠ|__!_而___!_|__,;:--ｰ---------
￣￣￣i,i￣￣￣￣;;;￣￣￣:;￣￣￣:;￣￣:´|;;'i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　しかし待ち望む気持ちとは裏腹に、
　　十二時半を告げる鐘が届いてきても彼はまだ、戻ってこない―――
―――――――――――――――――――――――――――――――

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━━━━━━━━━━━……

本日の投下は以上になります。
合いの手、閲覧ありがとうございました！

次回は第二章第四話になります。

395 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:32:10 ID:uLsQy1/I 乙でした。 やらない夫は少し歯車がズレてしまっているのかな。 キル夫も、まだ後一歩のところで抵抗しているようで一安心。 次回も楽しみにしています。 397 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:32:26 ID:578I8/Rc 乙でした！ すさまじい、としか言いようがない・・・ 398 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:32:37 ID:L7V/pQUY 乙でした コナタとＬの過去が気になる 399 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:33:51 ID:/fmXvGpE 乙でした！！！ やらない夫早く来てくれーーーーー！！！ 400 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:34:09 ID:OfkIBnqQ まだ、洗脳という言い訳、もとい、救い。キル夫は完全に堕ちきってはいないと信じてます 乙です 401 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:36:36 ID:Ovh1x60w 乙でした！ これからどうなるにしろ、キル夫は根性出してがんばってほしいな… 396 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:32:26 ID:U2wO60/U 乙です！ あー、これ剣を買いに行ってなかったら、と思ってしまうなぁ 404 ショボン玉 ◆Shobon.2x. 2011/01/21(金) 22:38:55 ID:CFY91ASI >>395-403 乙と閲覧をありがとうございます！ >>396 小さな選択が大きな分かれ道に繋がってしまう事もある って事でしょうかね。 はたしてその場合はどうなったのでしょうか。 406 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:43:50 ID:LEqeh2oA 乙！キル夫は堕ちたんじゃなくて洗脳されてたのか。がんばれ、キル夫。 407 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/01/21(金) 22:52:59 ID:T6xZAHbQ あぁ堕ちたじゃなかった堕とされただったねゴメン きらきーは身体的にもそうだけど精神的ダメージが高そうだなぁ やらない夫と合流して送れた理由が剣ってなったらまた一悶着ありそうだけどｗ しかし追って行ったLはどうなることやら・・・・

二２１７．
━━━━━━━━━━━……
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　　一方―――
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＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―￣￣―‐――　＿＿＿￣￣―――　　＿＿＿――￣￣＿＿＿￣―＝＝
――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――　　　　＝＝　￣――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―　　　――――　　　　＝＝　￣￣￣ 　――＿――￣＿＿＿￣―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::厶=-‐-.､＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::/.:::::::::::::::::|　ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/.:::::::::::::::::::jこ jﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::/.:::::::::::::::::ィﾖ 　{{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::..＜´　|主 　}ﾄ､　　　　　　　　　　（どこだ！
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼.:.:.:.:.:::::::::::::::::／ 　 ＼'｢ ｀ヽﾉﾘ.::',　　　　　　　　　　一体どこに！？）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ` ー一'´￣　　　　　 ヽｰ彡'.::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ.:.::::::::::::丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨.:::::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨/.:::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V.::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〈.:::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 Y.::::::::::::::入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ー=≦∨〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }主}｀ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｊ主ｊ_ ,ﾉ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /ー‐ヘ.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ー‐彡'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7　　　　　　/　￣￣￣ / .__　　　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　匚　 ./i／i／　　　　　　/＿/￣/　 /／/ 7　　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　./　　　　　　　　　　　　　匚　 ./i／i／　　　　　　　　　 匚　 ./i／i／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　./　　　　　　　　　　　　　　/　./　　　　　　　　　　　　　　/　./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　./　　　　　　　　　　　　　　/　./
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　　館を飛び出したエルは、何事かと庭園を覗き込んでいた町民に赤い外套の男の行く手を尋ね、
　　町の出口へ続く街路を全力で駆けていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２１８．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　抜き身の剣を構えた男が必死の形相で駆け抜けていく様子はもちろん、
　　街路を行き交う人々の注目を集めないわけがなかった。
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　　　　　　 |＼　　　　　　　　　/ヽ
　　　　　　 |　 ＼　 　　　　　/ 　 |
　　　　　　 i 　　 ＼＿＿＿/　 　 |
　　　　　　 ヽ,.　　　　　　　　　　　|　　　　「うわっ、なんだなんだ？
　　　　　　 / 　 ＿ヽ,,　　ノ＿　　 |　　　　 剣持ったのが、どえらい勢いで走っていったぞ」
　　　　　　 i　　　　　　　　 　 　 　|
　　　 　 　 ヽ　　　　ﾉ￣| 　 　 　/
　　　　　　　 > 　　´ ￣ ｀　　　 <



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | ＿＼　_　　　　＿／ ＿.|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | | 　＞　￣￣￣　＜　　||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | レ´　　　　　　　 　 ＼ ｣|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨●　　　 　 ―‐ 　 　∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 　 ト―┐　　　　u　}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「なんかあったのかねぇ………」　　　　　　　､　　 ヽ_ノ　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞-　　　　　 ―'''‐- 、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠_　　　　　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 <⌒＞''￣⌒7　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣　＿ ―''⌒　 　/|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　―￣　￣''''―‐一'　|



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　町中においては基本的に、緊急時以外の抜刀は重罪となる。

　　しかし、ここ最近領主の館に忍び込もうとしていた連中の噂が出回っていた事もあり、
　　彼らも何かが起こった事を予感して顔を見合わせるだけで
　　衛兵への通報などは考えていないようだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２１９．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　無論エルとて、抜き身を構えたまま真っ昼間の往来を駆け抜けることが
　　どれ程注目を浴びるかぐらいは知っている。

　　奇異の目を向けられやすく、迫害を受けやすいハーフ・エルフである事も関係して
　　注目を浴びる事を嫌う彼のはずなのに、　　　　　　　・ ・ ・
　　今だけは気にしない様子で両目を極限まで見開き、ある者の姿を必死に捜していた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　|:: ﾊ　　`　　　　　　u　　　　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　　「ハアッ！ハアッ！ハアッ！」　　　　 　 　 　 　　　|/l:ハ　　 ､　＿＿　　　u　 　　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |ハ　u 　 　 　 　 　 ,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　　　（くそっ！　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　u　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　　 いつも後手に回ってしまう！）　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　　　　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　　　　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!　　　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　雪華綺晶に言った言葉は嘘だった。
　　追うために館を飛び出したのも、今捜しているのもキル夫ではない。
―――――――――――――――――――――――――――――――

二２２０．
――――――――――――――
　　エルにしか分からない予感。

　　否―――
――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,' i l::::::入:::::::､:::::::ヽ::::::::ヾ ::',:::ミﾆ-､_::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 /,i! l:::ン　ヽﾐ::::iヽﾐ::::､:::::::::ヽ::',:',::::`ｰ-`:.､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 iｿl|.／ 　 　 　`ﾞ'､｀ ヾ::::ヽ:::::::'::',!',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　l!. l!ヽ､_　ー　　　 ヽ　＼':,ヾ:::::::'!i'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,-
　　　　（私の父や母を殺しただけでなく　　　　　　　　 　 　 　 !　'i!; l|!ﾞi　　　　　　　　　ﾞ'ｬ,＼､:::::::::::::i::::::ｬ::ヾ､:::::: ／／
　　　　 コナタの村を滅ぼし、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　li､ l!:i　　　　　　　　　　 ヽ `ﾞYi:::::::ili:::::i',ヾi;,'／／
　　　　 他にも数え切れない大勢を弄び、虐げ、　　 　　 　 　 　　ﾞ!ヽ::`ｬ-⊆＝ｯ-　　　　　　　i:!;:::::i! ',:::l ' ,Y ／
　　　　 それでもお前は！　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　ヾ､,ﾍ ｧ'｀ 　 　　　　　　　 l!';::::i　 ｿ! /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、　　　　　　　　　 ﾝ'i:ﾘ　 ﾘ'/!i
　　　　 まだ飽き足らないと言うのか！）　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　　　_,.-'"'　ｿ 　 '/ｉｌ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　　 ｌ　　　　　 _,_'"::::　　　ﾞ ,r ' ￣　　` ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　ヽ､＿_､ｼ'ﾞ'"ﾏTﾐヽ　／　　　　　　　　 `ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　　　　　　　　　　　ヽ ヽｿ



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　それは四十年もの間、片時も絶えることのなかった暗く激しい憎しみを心の奥底に宿し、
　　幾つもの国を彷徨って凶状の足跡を目の当たりにし、
　　多くの犠牲の悲しみや涙を知り、
　　狡猾にも決して存在や真名をおおっぴらにせず、偽名や変身の魔法などを駆使して
　　裏から支配するようなやり口を追い続けてきたからこそ気づける確信。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２２１．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　それなりに時間が掛かるであろう催眠や薬の類ではない、
　　即効性のある禁呪の洗脳は奴がこれまでにも何度か使った手だ。

　　そしてそれが出来る者は、この大陸全部でも決して多くないはずである。
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　　　　　　 　 　, 　 　　 /〃ﾊヾ　 / ∧∨〃､ヾ}　ｌ| :}ﾐ;l＼　　　　　　　∠　　　　―――ライト！　　　　　　 ＞
　　　　　　　　/〃//　/ 〃l　lヽ∨,〈ヽﾞ､ﾒ〈　}} ;l　ﾘ ハ ｌ｀!ヽ.　　　　　 ／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　 　 　 　 　 //' /,' 　,' 〃 ｌ　l川/,ﾍ丶＼;;ヽ/:'/〃∧ l ﾄ､:l　!　　　　　￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　 　 　　 　 〃,'/ ;　 ,l ,''　,l|　ﾚ'/Ａ､.`､＼;;ヽ∨〃/,仆|│l }. |､　　　　 　　/／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　 　 　 　 i' ,''　l|　,ｌ ' ｌ.　!|　l∠ﾆ_‐＼ヽ;＼,//,ｲ| ｌ | l　ﾄ/ λ!
. 　 　　　　 ｌ ;　 :|| ,'i:/ ｌ|　|:|: |｀`'^‐｀ヾ∨｀ﾞ/／|斗,l ! | ,ﾀ /l.| ｌ
　　　　 　　l ' l　|｣,' l'　lﾊ　|'Ν　　　￣´ ／｀　,|l_=ﾐ|! ly' ,〈 :|| |
　　　 　 　 |ｌ .l　H|i: l　|　ﾞ､| l　 　 　　　 _.::: ,!: l厂`刈/ /!} :ｌ|
　　　 　 　 |! :ｌ　|)!|　! |　　ヽ　　　　　 '´ ’/'_,.　　　ノｲ.〃/|!
　　　 　 　 l|ｌ |ｌ 「ﾞ|l　|`{　 　　　 　　 　 　　.. 　 _　　　|}/,ﾊ l
　　　　　　 |!ｌ |l､|　!l :|. 　 　 　‘ｰ-‐=＝ニ=:､__ｊ:）　　ｌ'|/|l ﾘ
ヽ￣ﾆ‐､__.｣乢!L!lヱL｣__ 　　 　 　　 　 ー､　`'''´ 　 从「 /
　＼　｀ヽ＼　　　　　 /l |　　　　　　　/￣´　　 　　//
.　　,、　 l　 ﾞ､　　　　/ ' |､　　　　　　{　 　 　 　　/l/
　　 '}　　ｌ　　ﾞ,　 　 / 　 |:::＼　 　 　　}　　　 　,.ｲ/
　　　ｌ　　l　　 l　 ,.ｲ　　 l:::::::::＼__　 　`'-‐::"// |′
　　　l　　 !　　 Ｋ　ヽ,、　＼「`''''''''"´:::::::;;:" //
.　 　 l　　 ｌ　　 ﾄ､＼(　_....　ヽ　　.:.::::::::;;″ /' 　　　 　　＿
＼ 　 |　　ｌ|　　八､ヽi´　　 　| .:.:::::::::::::i'　.:/'"´￣￣￣ ,.へ＼



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　だからキル夫の精神の精霊が、かつて見た母と同じ状況だと知った時、
　　エルはこの事件の裏に立つ者が、自分が追い続けている男だと確信を得たのだ―――
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二２２２．
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　　これまで何度か触れられた通り、エル＝ローライトはハーフ・エルフである。

　　人間の父は大陸南西にあるフォーヴル公国でも高名な幻獣学者で、
　　特に竜に関しては大陸随一と太鼓判を捺される程の人物だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　 , -─- ､　　, -‐- ､
　　　　　　　 ,, -'"　　　　　｀V　　　　 `‐､
　　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼
　　　　.／　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　 ./　 ／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　ヽ
　　/　 /　/　　／　./ /　　　　　　　　　 l 　 | .l　.ｌヽ
　　|　 l.　l　　/　 ／ / ./ .l　　　 |　　|　 l　 / /　 l l.〉
　　 l、 |　|　 l　 / ／ ./ ./ 　 |.　 l　　| ./ ./ ./　| |./
　 　 ｌ、|　|　l　// /／／|　　 l　 /　/ /／／/ / /
　　　 ｌ、l　|　/l//／＿/ l　 /　/／_|/_∠| /　| /　　　　　　「エル、知っているか！？
　　　 /⌒ヽ | ＼　`ｰ'　ゝl 　//　`ｰ'　／|/⌒v'　　　　　　　元々ドラゴンは雑食だが、平常時なら何も食べなくても
　　　 | ｌ⌒l l|　　 ￣￣"/／|〉￣￣￣　 .|/＾_l.l　 　 　 　 　 光や大気中のマナなどを取り込み
　　　 ヽゝ(ｰ|　／|　　　´ ＼|　　　　　　 ll ),l'ノ　 　 　 　 　 栄養に変換することで、生命活動を維持出来るんだぞ！
　　　 　lヽ_ ／　 |　　 ┌───7　　　/._／
　　　　 .l／　　　| 　 　 l￣￣￣/　 　 / /　　 ,ノ!　　　　　　凄いよな！格好良いよな！ドラゴン！美味しいらしいし！最高だよな！」
　　　　/ 　 　 　 |..　　　V´￣∨　　 ./ /,.-‐'"　.|
　 　 ./ 　 （;;） 　 |＼　　 `ｰ‐'´　　／ / 　 　 　 |　　　 　 　 ┌─────────────┐
　 　 |　　　　　＿|＿＼ 　 　 　 ／| ./　　　　　 |. 　 　 　 　 │　セト＝ローライト（人間）　　 　 │
　 　(| 　 ,.-‐'"　　　 |　＼＿_／　 .|/　　　　_,.-─;　　 　 　 │　魔導師兼学者　　　　　　　 　 .│
　　　|／　　　　.（;;） |─────┤ _,.-‐'":::::::::/.　　　　　 └─────────────┘
　 ￣　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::::|＾l::::::::::::::::::/

532 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:07:43 ID:ezdAuCpQ 父親若すぎるｗ 本当に人間か？

二２２３．
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　　エルからすれば四六時中幻獣の話を繰り返す父親は少し鬱陶しいが、
　　研究への熱心さは尊敬できると思っていたし―――
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　「何度目ですかその話。　　　　　　　　　　　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　 父さんは本当に　　　　　　　　　　　　　　　　　 '　'　.ｌ::::::::l　 　 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　 ドラゴン好きですねぇ………」　　　　　　　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　　　　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 　 　 ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
┌───────────────┐　　　　　　　　　" . ';ヽ　　　　　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
│エル　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│　　　　 　　　　　　　'|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
│当時　四十五歳　　　　　　　　　　　....│　.　　 　 　　　　　　　　　'i::: '　　　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
│（人間年齢換算で十一歳程度）　　....│　　　　　　　　　　　　　　　!'i　　　j　　 　 　 ~ヽ
└───────────────┘　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!

二２２４．



　 ／/;;;:: 　::;/.:::::::::.　　　　　　ヾ:::... 　＼
／::/;::,〟　/.:;:: .,;:.;;::.　　　　　　　;.､.丶.ヾ＼
__,,;:／⌒勹　／ｿ:i::::.;:.　.. 　　　:. :.､ ':..　:,, :::〉
..／　／二 'ﾞ　 ﾉ i　 i;:　 :.;:.. ､ 　 ::;､..::.. ..:::/
. |　 .|　 |　 匕　::i ／|　; :, ヾ::.､. .;ﾞ,,i,.:;::､:ｿ　　　　　,. へ
. i　. | ./　 i　ﾉ::广　ノ;. ';..ヾ.ﾞ:::.:,;..丶i;;;;:Λi　　　.／ ,...､ .＼
.:ﾉ　 ∨　.ﾉ/|:/　／:: :: ::. :.....,_.,.:::.,..:::i/ i .i丶.,∠ 　 ゞ'ｿ..　丶　　　　　「ハハハ、すまんすまん。
:.《　 /　 i:∧ﾉ ./i　:::i　::::i .::,､ｧ.,;'i../::i∠丿　 "丶､.　　　　　 i　　　　　父さん、これが仕事だからな」
:.∧ .i　 .|/ || 〈＼ヽ :i　::;匕`ﾆﾆ∠:;i .イ　　　　　　＞､　　　　i
〈　i　i　 ||　|. 入 丶ヾ.＼:i　　 ﾉ∠/i:|.l　　　　　　　 　／　　　:l
.∥　　 　.'　 ﾞ　 l. 　.l| ヽヽ　 ／./l: .l;.l　　　　 　 　／ 　　　 ..､l､l
. 八　　　　　　　 |　.:i　　　　 ／i.　|i:.: 　　　　 ..／　　　　 .(::ｿ.|
.┤丶　　　　 　斤.´￣｀　 ∠／/　i:│　　　　/　　　　　　 ｀´:i
.::i　 i　　　　　 i .A　　　／∠　i:　.:i人＼ 　 ./　　　　　　　　 :/
.::∥:|＼. 　 .＿,ﾙ' 冫- ´.:　　　i.　.:Y　＼　 ∨､..__　　　　 ,,.､./
　 li i:::;;,..￣ :;.　:l／;;;;;;:::::::....　..::::｀:.. ＼　｀"'ヾ＝-..､　　　ヾソ.
　,丶.:;;;:..　　;:. ..:|i..::.::::... ::;;:...::..::::...:::::...｀i　　　　,:;;''久／ .／
　　|::;;;;;:::.. .,;;::...::liヽ::.:::::.. :::::: :::. .:::::....::: .Y ,,彡´ 　　　..:i



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　　没頭する余り家庭を顧みない部分があったとしても、
　　ハーフ・エルフの自分をこれ以上なく愛し、気遣ってくれる人だと分かっていた。
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二２２５．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,ｲ∠.-７_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 i::::::::::::::::::::ミｰ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｒ'::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　ｎ l:::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｒ ┘! !i:::::::;:-‐'''''''ﾞ'´￣''ヽ
　「残念ながら私は学院に入れませんので　　　　 .　　　　 {__.　i　ﾚ/ 丶 　　　　 　　ヽ
　 後が継げません。　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　ヽ ヽ_.|　　ヽ 　j 　 　 　　ﾞ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〉'´ ﾞ!　　/ ノ 　 　 　　　冫――――――‐,
　 父さんも、母さんも、　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ 　 | 　 |ヽ､　　　　　　 // ･ ・ ・　　 ・ ・ ・/
　 弟子でも何でも取ったら良いんじゃないですか」　　 　 　 　 λ　ｉ､　.lﾞl,　 　 　 　　 // ･ ・ ・　　 ・ ・ ・/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　i　`　.ｉ　＼. 　 　 　// ･ ・ ・　　 ・ ・ ・/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ､ヽ=ィ 　　 l 、　　 // ･ ・ ・　　 ・ ・ ・/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼_.＼＿__|＿＿_// ･ ・ ・　　 ・ ・ ・/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'―r―┬‐┬―.l l ･ ・ ・　・　・ ・ ・l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　|　 .|｀`ｰ l.l 　　・　・　・　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　〉ﾆ|　 .|=-ｪ-l.l 　　・　・　・　　 |



――――――――――――――――――――
　　表向きは当然のように、
　　内心は拗ねた子供のように言う息子に、
――――――――――――――――――――

二２２６．
――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　エルフでありながら人間と結ばれ、王都の魔法学院では封印指定（※）の
　　管理と研究を任される程の大魔導師だった母は諭すように言ったが―――
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r―-､＿＿＿_r‐､＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,.．-= '"￣: ＼＼: : : : : :ヽヽ: : : : : :＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,∠二.＞､ : : : : : : : : : ＼ヽ: : : : : | |,．　'"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,．'": : : : : : ＼＼: : : : : : : : : :| !: : :,． '`′
　「………まだ気にしているの？　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,∠二`く : : : : : : : : : : : ＼＼: : : : : : : :| !／
　 両親が魔力持ちでも、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,．'": : : : : ＼＼ : : : : : : : : : : : ＼ヽ : : : : : |ﾉ
　 その子に魔力が受け継がれる事は　　　　　　　　　　　　　　　　　,．'" : : : : : : : : : : ＼＼ : : : : : : : : : : : |｜: :／
　 まず有り得ない。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,．'": : : : : : : : : : : : : : : : :＼＼ : : : : : : : : ｜|: /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｚ二二二二二二二二二二二、ヽ: :＼＼: : : : : : :｜ﾚ′
　 それこそ古代魔法文明の王家の血筋みたいに、＜＜: : : : /　　 ｜　　个|　 |　 | ＿＼＼ : ＼＼ : : : : /ﾉ
　 特殊な魔力を持った家系じゃないとね。　　　　　　　＼＼: / 　 ／ !　　 /n|　 ﾄ､千∨` //: : : / ﾊﾍ : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼｜　/ 　 |.　 Y止!、 | zr≠､ く二二/ /｜|: :/
　 だからあなたに魔力がない事は　　　　　　　　　　　 　　　｜/　 　 | 　｜r′∨　{ じか／　　　 Y二二二)
　 当たり前の事なのよ？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ| 　 　 |　　| ｀ 　 　 ￣¨∠i　　r‐､ ｲ |: : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 | 　 　 ヽ.　|ヽ`ｰ　　　　　人＿`フ´L二二二二)
　┌──────────────┐　　　　　　　　 　 　 　 |　|　 　 |ヽ|　ﾄ--―＜／ /｜ ﾊ　|　|＼　　　＼
　│　マナ＝ローライト（エルフ）　　　　│　　　　　　　　 　 　 　 |　| 　　 | 　　|/ 　 　 ､とう　ﾚ′V＼|　 ｀　､　　 ＼
　│　大魔導師　　　　　　　　　　　　　..│　　　　　　　　 　 　 　 |　ﾄ､　　ﾄ .　 |!　　　　 ヽ　, ―-‐　　　　　　 i 　 　 `　､＿＿＿＿_
　└──────────────┘　　　　　　　　　　　　　V　 ＼ ヽ ヽハ　　|　　　 　 　 　 　 /　　　　|＿＿＿＿＿＿＿／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ＼|　　 ﾍ　ﾉ 　 　 　 　 　 　 |　　　　 |)＼＿_,.ｨ７￣￣￣￣L
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　 　 　 ﾉ　　　　　',　 　 ／ : : : : : //￣￣￣　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　/ 　 　 　 　 ヽ　/＿: : : : : //＜￣￣￣￣￣|



※封印指定：禁呪など、通常は研究や使用が禁じられている理力魔法及び、
　　　　　　　　それに関連する知識や資料類は魔法学院で厳重に管理されている

二２２７．
―――――――――――――――――――――――――
　　魔力を持っていない事も、ハーフ・エルフである事でも
　　陰口を囁かれていると知っていたエルは
　　心配はかけたくない、と結局最後まで言わなかった。
―――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　/:/:::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::丶:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　 /::/:::i::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　 /:::/::::i:::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　 ./:::/:::::l:::/::::::::::::::::i::ヽ::::::::::::::::::::＼::::::::::＼::＼::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::
　　　　 |::::i::::::l:::l::i:::::::::::::::::l::人::::::::＼:::::::::::＼::::::::::＼:ヽ:::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::
　　　　 |::::ii:::::i:::::i:::::::::::::::::l:||__ヽ::::::::::ヽ:::::＼ヾ:r======ヾ::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::
　　　　 |::::i i::::l::::::i::::::::::::::::i「:::i　ヽ:::ヾ::::＼::ヽヾ|:;;;l|　　:/　＼:::::::::::::ヾ::::::::::::::
　　　　 |::::l i:::l::::::i:::::li:::::::::::i;::;:il　/i＼ヽ　　＼丶ﾐ=≡彡´　　＼:::::ヽ::::＼:::::::
　　　　 |:::i　l::i::::::i::::l:::::::::::::ｉﾐ彡´/　　ヽ＼　　ヽ　￣　　　　　　ヾ:::::ヽ:::::::ヽ::
　　　　 i::i　 l:li::::::l　 l;::::::::::i　 　/　　　　　　　　＼　　　　　　　　i::::i::i:::ヾ::::::::　
　　 　　 il　　l　i:::i　　i::::::::i　 く　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i::i　ｌ:l:::ヾ::::
　　　　　 i　　　i:::l　　l:::::::::ゝ　　ヽ　｀丶　　　　　　　　　　　　　　i::i　i:l::::::ヽ::　　「………そんなんじゃありません」
　　　　　　　 　 i::l　 　i::::::;丶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:i　i:l::::::l::::::
　　　　　　　　　 ll　　　l::::i::::丶.　　　.　____　　　　　　　　　　　　:::i::;:;l;;:::l::
　　　　　　　　　 l　　／　 i::::l:::iヽ.　 ﾞヽニニﾆ=｀__　　　　　　　:::::::l／l::::i
　　　　　　　　　／　　　　l:l　l:::丶　.::::..---‐‐　　　　　　　　::::／::::::::i:l
　　　　　　　／　　　　　　i:　　i::l ＼　　　　　　　　　　　:::::／:::::::::::::::::i
　　　　　／　　　　　　　　i　　i:i　 　ヽ　　　　　　　　:::::;／:::::::::::::::::::::::
　　　／　　　　　　　　　　　 　i　　　　ヽ.　　　　　.:::／::::::::::::::::::::::::::::
　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､＿__::／＼::::::::::::::::::::::::



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　身体は少年でも、心はもう十分大人になっていた彼は
　　魔法学院に入る事が出来なければ、幻獣研究すら受け継ぐことが許されない現実を思い知り、
　　理力魔法の代わりに精霊魔法の修得に躍起になった時期もあったが。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２２８．
――――――――――――――――――――――――――――
　　転機は強制的に訪れた。

　　弟子すら取ろうとしない二人の研究を
　　当代で止めたり絶やしたりするのは余りにももったいないと、
　　学院の導師達が半ば無理矢理に―――
――――――――――――――――――――――――――――



. /　　　　　　　　　　　　　　　　 '
/　　 .,､,
　 ,r',r ,.,i
　.l l ' .ﾉ
　 l.'-,'"~"lr,
'‐､'i '　　 ヽ.=':,
　　~''‐､　　 .'‐,'i　　　　　　　　　,
"i,　　 /　　 ‐='‐- ;-,_, ､,　　, ノ
-'　　/.　　ヽ、, ､.i~ ',="' " ｀　　　　　　　「今年学院に入った
　　 /､_ , ､ .r =,'_' "　　　　　　　　　　　　 ライト君だ。
､, ./'‐､　　　　　 ./
-､''‐‐ｯ　　　　 ./　　　　　 , ､　　　　　　　一応、父さん達の弟子と言う事になる」
　ﾂ /'‐i　　　 /　　　　　／.,r'-,
-'/'　 ﾉi'‐ ､ /"‐' "i,　,ィ' ／ ,ｨ'
./　　/ i　　｀','ゝ〇y'" ／ ,.r'
'　　./. i　 ,ィ'i　,ィ''　ノ ,.／
l　 ./　l　/　 ｙ'　,,,'　- '､,_
l.　/　l./"i ./　　''　 ;;- ､,,_'!､
l /　　l　,ィ'　　　　　 , ､､, '‐!
,@　　l,ィ　　　　　　ノ"　 i‐/
'・ｌ,.ィi　　　　　　 ,r'　　　 "'
r'"　 '-､__, , r ' "
　::::;;;;;;,r''



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _＿＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィ7刈:从乂爪ミ≧.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／:'::/彡//!::〃ｉl:ﾄ:ヽヽ､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 　 ／/,ィ/´::l〃::;ｲ/ｲ:!:ｉ:l::!:ｉ:ｉ:!:ｉ::|!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:,ｲ///: ／!／:〃:://::l::ｉ:l:l:l::l!:l:l
　　　　「ライトです！　　　　　　　　　　　　　　　　　　,':/〃:ｉ:ｉ::/〃!,:イ/:://,'!::l::l:l:l:l::lｉ:!:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｉ:.!:'ｉ:ｉ/l::!'/ｲ l!:〃:,ｲ l/ lｉ::!'::l:l:!:ｉl::ｉl
　　　　 ご高名なローライトご夫妻の　　　 　　　 　 |:ｉ:ｉ:l:l:.ﾊｿｲ !//,:ｲヾ//小ﾊ::ｌﾘ:/:l:ll
　　　　 弟子になれるなんて光栄です！　 　　　 　 |:l:.l:l:!,:代ト/／　 ィﾏﾗ７:/l〃,‐:!l:!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |!l:ｉ:! ｉ　￣'　　　 ￣ ´/ｲｿ!'/ 〉}:l'
　　　　 エル君、仲良くしてくださいね！」　　　　 　 lﾊ:ﾊ　　　ｉ　　 　 　 　 〃_才:ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ! ヾﾊ　　_｀ ´　　　 　 / .T:ｉ:ﾘ'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 　 　 ｀　 ､　 ､__￣　　 ｲ　 .Ⅵｰ,-､
　　　　　　┌───────────┐.　　　　　　 　 　 ヽ　　　 ／ 　 　 .　'　　 ＼
　　　　　　│ライト＝ヤガミ（人間）　　....│　　 　 　 　 　 　 ｉ: .ー　´ 　 ,.ィ ´　　 　 　 冫､_
　　　　　　│当時十七歳　　　　　　　　 .│　　　　　　　, -‐くl: : .　　　.:lｉ⌒ヽ　　　 　 /　　 ｀ｰ ､_
　　　　　　└───────────┘　　　　　 ／　 　 ヽ: : .　. :　ll.:.:.　ｉゝ.._　　/　, 　 ´ _＿_ﾐ:､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　　　 /ｉヽ: : : : 〃　／　　 ヽ/　/／／　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／.- ⌒ヽ　 ,': :! }: : ／' ／.　 /　/　　/´／　　__　　　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:...　...:.:}　l : : : : ,'　　!　　 /　 l　　/' ´　 ／　　　　　l!



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　　一人の、将来有望な見習いを弟子入りさせたのである。
――――――――――――――――――――――――――

539 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:13:47 ID:WlHr2lPM このころから演技だったのかねぇ？

二２２９．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　それを嫌がる権利も、邪魔する権利も半端者の自分にはないと思っていたエルは
　　胸中の無念さを大きくさせながらも、
　　呪縛のように取り巻いていた状況から少しは解放されると喜んだ部分が確かにあった。
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　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼ー-- ､,,_ー=ミ‐-..､
　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿ﾐ::::::::::::::::｀¨ミヽ､::::::ヽ.
　　　　　　　　　　＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 ヽ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､
　　　　 　 　 　 ー=ﾆ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j::ﾊ
　　　 　 　 --─=＝ﾆ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヾミ:::::::::::}
　　　　　　　 ,,ｨ彡:::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡ｲﾊ::く
　　　　　　／::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::l::::::::',
　　　　 ／---─ｧ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::／:::ﾘ:::::::}ﾊ
　 　 　 　 　 ／/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::イ:::ﾂ<彡'/:::;イ::::::::::l:::|
　　　　　　　　/::::ｨ::::::::::::::::::::::::::,ｨ/ 　¨''=ｲ _,ｲ:::ｲﾃ ::::::::::ハj
　　　　　　 _,,ｲ／/:::::::::::::::::::::ｲ/ |　　　　 　 ノ　|¨ .::::::ｲ/　　　　「こちらこそ、よろしくお願いします」
　　 　 　 　 　 ∠ イ:::::::::ｨ::/ .|　　　 　 　 　 ､ _｣ ｲ:／.j'
　　　　　　　　　　/ｲ:／ .|ｲ　 　＼　　　‐--- ／|:/
　　　 　 　 　 　 __ ｲ　　 j　　　　　＼　　ﾞﾞﾞ／ 　.ｿ　　　　　　　 （これで少しは、
　　　　　　　　 /＼　　　　　　　 　 ／ヽ- '　　　　　　　　　　　　 学院の目が逸れてくれると良いのですが）
　　　　　　　／　　 ヽ､　　　　　_ ｲ
　　　　　 ／　　　　　　ヽ､　　Y
　　　　 /　　　　　 　 　 　 ー┴､
.　　 　/　　　　　　　　　　　　 　 |
　　　/　 　 　 　 　 　 ＼　　　　 |､
　 　 i　　　／　　　 　 　 ＼ 　 　 ﾊ
　 　 |　　/　　　　　　　　　　ヽ　　 |
　 　 |　 ,'　　　　　　　　　　 　 }　　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●

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二２３０．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　また、町に出れば有名なハーフ・エルフとして嫌な視線を浴びる事が多く、
　　殆ど家から出ない生活で友人の居なかった彼にとっては―――
―――――――――――――――――――――――――――――――――



　 　 　 　　　　　_＿　__....､､
　　　　　　 ／´:::::´::::::::＜´
. 　 　　　 _i:::::::::::::::::::::､:::::::｀≧ー-
　　　　ｧ7::::::::::::::::::ヽ::::＼＼::::ｬ､
　 　 　/,':::::::::::::::::::::ヽ::＼::::ヽ:ヽ`ヽ
　　　/i:::::i:::::::::､::､::::､:::ヽ:::ヽ:::ヾヽ　　　　　　　　　　　　「ライト！
　　　ｿ::::l::::::::tj‐ﾘヾﾐヾ_ヾ::::::::::::::ﾞi　　　　　　　　　　　　 私のカステラ食べましたね！」
.　　 /::::::!::::::ﾄ＝ ﾞ　ヾﾋ'｀i!::::::::::::ﾊ!
　　　l:il::::::::ﾊ. 　 ． .　 "" l!::::::::::!
､､._　ﾘ i::::::l､　　r‐┐　 　/:::::iヾlﾞ
　　￣/ ﾘ::::lヽ.　=.-' 　,／:::::l !_ﾘ-- ､
　　　i　〃ｉ!l.　ヽ､... ィ::/kﾝ于ﾗ r'￣ヾY
　　　 i ヾ'､ 'ヾ　 ""ﾞ/　i!.lヾ!//ヽヽ　| l　 　 　　へ,､
.　　　 i　`､ヽヽ　　,　 ﾉ.i li //　　ｌlヽ i l　 　／／:.､>｀ｰ-.､
　　　　',　　ヾ､.ｰ-‐,ン´,i l l i　　〃l iヽヽ 　ヾ､:::::::r┴-=､｀i
　 ',　　 '　　　 ｀二――┴ﾘ_l―ｻ┴'‐‐!l--､､_ヾxし/‐--ヽ!
ii　　　 ,r‐''''''''ｰ|::::|　　　 |　　　　　　　 ~　 i　　 i　しｰ--　i
ii　 ／ 　 　 　　|::::|　　　 |　　　　　　　　　 i　　　iｰレﾞ　　l
!!／iｿ; 　 　 　　|::::! 　 　 |　　　 　 　　　　　'　　 | ii　　　ﾉ
./　ﾘ/　 　 　　 |::::　　　　!　　　　　　　　　　　　 | i `ｰ /



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::i::::､:::ヽ､:::::＼:ヽ:＼::::::ヽ:::､::ヽ::､:',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　/::i|::l::ﾄ､ヽ::､:::ヽ:､::::::＼::ヽ::::l::::ヽ::i:::i:::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:/:!:::!:|::ヽ:＼ヽ::::､:＼::::ヽ:::ヽ!::::::i::|:::!::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!ﾊ::|::::i::l:|心､:ヽ::＼:ヽ_＼､＼:::ヽ:::|!::|:|i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「ああ、ごめんごめん。　 　　　　i､:!:|:､N{､ﾋjヽゝ＼ヾｲ ﾋｊ　>､ヽi:､|!:|:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 夜食につい」　　　　　　　　　　　　ヽ:!::ﾄヽ￣　l! `　　｀￣´　|::l::|:|j:,!:!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､::! u　　　　　　　　　ｊ |::/lj:::!ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ、　 丶 -　　　　u　ﾘｲ:|ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘヽ　‐､ｰ- ､_　　 ／ｲ:::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 rｰ'"ﾄ:lﾞ､ 　￣ 　 .／　 , |::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ﾍ　ヾ　ヽ､ _,.　'　　 /　|:'

二２３１．
――――――――――――――――――――――――
　　数年も経つうちにライトは親友のような存在―――
――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ
.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!　　　　　　　　　　　　「『ごめん』で済んだら衛兵も騎士も
　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼　　　　　　　　　　　 首切り処刑人も要らないんです！
　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ
　　　　　!::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i　　　　　　　　　　　 私の血糖値がこれ以上低下する前に
　 　 　 　l:!:::l:::l !　　,r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i　　　　　　　　　　　 替わりを買ってきてください！
　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i 　 　　l:::::::::::::ハ:!　　　　　　　　　　　早く！今すぐ！大至急！」
　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　　 ｨ::/i:::::ﾊi　 !
　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_
　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　　　 ／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _＿＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィ7刈:从乂爪ミ≧.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／:'::/彡//!::〃ｉl:ﾄ:ヽヽ､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 　 ／/,ィ/´::l〃::;ｲ/ｲ:!:ｉ:l::!:ｉ:ｉ:!:ｉ::|!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:,ｲ///: ／!／:〃:://::l::ｉ:l:l:l::l!:l:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,':/〃:ｉ:ｉ::/〃!,:イ/:://,'!::l::l:l:l:l::lｉ:!:l
　　　　　「分かった分かった。　　　　　　　　 　　　 　 ｉ:.!:'ｉ:ｉ/l::!'/ｲ l!:〃:,ｲ l/ lｉ::!'::l:l:!:ｉl::ｉl
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |:ｉ:ｉ:l:l:.ﾊｿｲ !//,:ｲヾ//小ﾊ::ｌﾘ:/:l:ll
　　　　　 本当にエルは　　　　　　　　　　　　　　　 　 |:l:.l:l:!,:代ト/／　 ィﾏﾗ７:/l〃,‐:!l:!
　　　　　 甘味の事になると厳しいなぁ」　　　　　　 　 |!l:ｉ:! ｉ　￣'　　　 ￣ ´/ｲｿ!'/ 〉}:l'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 lﾊ:ﾊ　　　ｉ　　 　 　 　 〃_才:ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ! ヾﾊ　　_｀ ´　　　 　 / .T:ｉ:ﾘ'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 　 　 ｀　 ､　 ､__￣　　 ｲ　 .Ⅵｰ,-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　 　 　 ヽ　　　 ／ 　 　 .　'　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｉ: .ー　´ 　 ,.ィ ´　　 　 　 冫､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, -‐くl: : .　　　.:lｉ⌒ヽ　　　 　 /　　 ｀ｰ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　 　 ヽ: : .　. :　ll.:.:.　ｉゝ.._　　/　, 　 ´ _＿_ﾐ:､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／　　　　 /ｉヽ: : : : 〃　／　　 ヽ/　/／／　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／.- ⌒ヽ　 ,': :! }: : ／' ／.　 /　/　　/´／　　__　　　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:...　...:.:}　l : : : : ,'　　!　　 /　 l　　/' ´　 ／　　　　　l!

二２３２．
――――――――――――――――――――
　　彼が住み込みの弟子になってからは、
　　兄弟みたいな存在になっていたのである。
――――――――――――――――――――



　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　 '　'　.ｌ::::::::l　 　 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　　　　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',　　　　　「当然です！
.　 　 　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 　 　 ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､　　　　　甘味の恨みは親の仇より憎し！
　　　　　　　　" . ';ヽ　　　　　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　 　　　　　　　'|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!　　　　　　　　　　お茶淹れて待ってますから
.　　 　 　　　　　　　　　'i::: '　　　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､　　　　　　　　　三つの鐘までには戻ってくださいね」
　　　　　　　　　　　　　　!'i　　　j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!
　　　　　　　　　　　ｿ. 　　　/　　 ﾝ　　　　　 ､　',　l
　　　　　　　　　　 /　　　 /　　 / 　 　 　 　 　',　', 'i
　　　　　　　　　　/　　　 '　　 / 　 　 　 　 　　 i.　', ｌ



::::::/:::／:::::::／:::／:/:::::::/::::::ヽ::｀ヽ
:::/／::/::／:::／:::::/:::::::/::ヽ:::::::ﾍ:::::ヽ
//::／::/:/::/:::::／:::::::/::::ヽ::＼::::ﾍ:::::ﾍ
|／:::::/:/::/::／／:::::/:|ヽ::::|:/::|ヽl::ﾍ:::::l
::::/ﾘ/:/::/:/／::::::ｿ/ノ-､ヽ///|/::ﾘ',|::',:l
::ﾉ|　/::/:/:::/l::／/,-‐tﾁ-､l:冫ヽ|/',|ﾍ::',l
:::::::/,l/|/| /／ ./ﾉ 　 乂ﾉ |i ﾘ::l://ヽ|ヽ:',　　　　　　　　　「ちょ、ちょっと短すぎないか！？
::::/i'ﾊ弋ﾘ/,,　 /'ヾ｀ー‐' u/ﾉ|///|/::ﾘ',|::',　　　　　　　　　あと十五分も無いじゃないか！」
./l' ｀ー‐'';;l　　　　　　　/ 'ｿ|/ ﾊ|ﾉ::::ヽ|ﾍ
::ﾄﾍ　　 　 ､　 ,_ 　 　 　 　 /　ﾊ|/ヽ:::::ﾄ、
ﾍ|::ヾ　　 　 ヽ　　　　　　　u //|/ﾍ ヽﾄ
　ﾍ|: ヽ　　　 r――､　　　　/ノ　 |/ヾ|＼
　　　　 ＼　 ヾ====' 　 　ｲ　　／　　　　＼
　　　　 　 ＞ 　ﾞﾞﾞ　　 ／/　／　 　 　 _=-'｀＼
　　 　 　 　 　 ｀ー ',　. /／　　　　 ／ 　 　 　 ヽ
　　　　　　　　　　ﾍ|ヾ>'´　　 , -‐'´　 　 　 　 　 ﾊ
　　　　　　　　　　　,r' __=-‐',r´￣￣￣｀ヽ　　 　 ∧
　　　　 　 　 　 　 /ﾘ/ 　 ／　　　　　　　　＼　 　 ∧
　　　　　　　　　 / ソ　／　　 　 　 　 　 　 　 ＼　　∧

二２３３．



　　 　 　 　 　 　 ／:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::､::::::､::ヽ､::ヽ＼
　　　　　　　　　//N/l:l､:::::::::::､::ﾄ､:::::::::::|l:::トl＼〉 Ｗ＼ヽ
.　　　　　　　　///l | l:l└ヘl＼ｖ l`￢ｖ::|l:::V　 へ Vヽ､:l
.　 　 　 　 　 /ｲ/::ﾚl ハ l＼ﾄﾄ､l| ﾄl＼ V l::::∨l::_;ｒ1::::::::ヽ
　　　　 　 　 ﾟ ｛l|::::::l'::A`ｌ::::::::|ヽN::::::::ヽｖ:::::::::://, 1::::::::::::l
　　　　　　　　 ｌﾞ|::|::::l:|｛i::::::::N〃＼::::l::::ｌ|::::::::,' ' ' ｒﾍ::::::ﾄ｡l　　　　　　　　「え？
.　　　　　　　 　 l/l::::ﾄﾄ∧､:ｌ| i､ ｛;;)ヽ|::::'l::::::::| | | |　l::::::l ﾟi　　　　　　　　 お詫びに東方菓子を山盛り買ってきてくれる？
　　　　　　　 　 ﾟ　l::::lﾝ　 lﾍl| `三彡/!::::::::::::;ｊ｜| |　';:::::|　　　　　　　　　 いやぁ、ありがとうございます」
.　　　　　　　　　　ヽ:|ヽ、.　　　　　//ｨ::::::::/ | | ､ ､　Vﾄl＼
　　　　　　　　　　　l'l::ﾊ ｔ. ､＿_,　///::!::::::{ _ｊ ヽヽヽ　V｀ /＼
.　　　　　 　 　 　 　 |' lﾍ　ニ¨´　/ 从|::l::/　/ ､ 　 　　∨ ￣ ＼
　　　　　　　　　　　｜　 ﾄ　＿　.</｡ ﾉ/ｿ　∧　∨　　　 〉　　　 丶
　 　 　 　 　 　 　 　 l、　|　　　 |､ ヽ{／ .イ　ﾊ　 ＼ 　 /　　　　　∧
　　　　 　 　 　 　 　 | ＼|　 　 ∧ヽ {　　　　,　}　　 ｀ /　　_　 ――ﾍ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,. -─- .､,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,不:::く｀ヽ;::､:::｀丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ハ:l::;;ヾ:ヽﾆヽ:ヽ::､ヾヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,':::i:ﾄヾヽ::ヽ:ﾄヾ､ヽヽヾ`ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l::i::|l::卞ﾑヽ:;ヾY.ｪYl::ﾄ::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::l::ﾄ;:::Kさ'く:::f ,｀　 ﾘヽヾ',
　　　　　　「くっ………　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ';:';ヾﾄヽu　`r'- ､　　u|::ﾄ`､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾヽﾍu　　|';二::!　　入',
　　　　　　 全部じゃないぞ！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 `トｋ 　　ヽ､ｚｿ　./::| ヾ
　　　　　　 半分は僕が食べるからなっ！」　　　　　　　　　　　　　 ＿__._,r､　　 Y:j｀ ‐ ､　ｰ´／ ﾄｊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／｀ヽ_j'､_ノ￣l!'´ヾ- ､＿｀_¨ 　 ｣､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　∧　,ﾉ　 Yヽ　　l　　ヽ　　 　 7ヽ~ﾍヽ.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/-'´｢　ヽ　ヽｊ＿. l　　　ﾄ､ 　/〃ﾊ　 | ヽ ｀ヾ ､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r'´, イ ヽ､ ｀,__,ｨ､__)|　l　 ヾヽ∧'〃ﾉﾞヽl　 ヽ　 ヽj｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / '´　 ﾄ､　 Yrイ　 ∧l　',　　ヽ 　Tﾍ', 　 l _..ノ 　　l j　',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,′　 　.}､二ィ　}　/ 　 l　ヽ　 　',　|､､ﾍ.　| ＼　　／ }. ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 i 　　　　トz'_ノ,ｲ　　　　| 　 ',.　　', l､ヽﾍ　| 　 | 　　　 j/ l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　ノ ＼¨7/　　　　　l　　ﾄ､　 ヾ ､ヽ ',.l 　 lｰ- ／/　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ─'-- -r-`'　　　　　　ｌ　　',.ヽ　ヽ　ヽヽ!　 |￣　 /j 　 l



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二２３４．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　 ,,,-''"´　　　__,,,,,-―,'"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　, 　　,,=:::::!'ﾆ-'''"'"´,=-''"´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,i:| ／::::::::´::::::::::::::::::::::::::::‐-､,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /::i/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀=-、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　(::::::::::::::::-､ :::::'ー-､:::::::::::::::::::::::::::::::ヽﾞﾞ'-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,=''::"::::::::ヽ::::::::::::、＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼"'-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ ,-'::::::::!＼::::ヽ::::::::::､ :ヽ:::丶::::::::::::::::::::::::::::::::::＼ ｀
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／:::,:::::::/:::::、、:丶:＼:＼:ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 //:::: /:::::,:::::::::ヽ::＼ :＼::::::＼:::＼:::＼:::::::::::::::::::::::::::::i､::＼
　　　　　　　「………そう言えばライトは、　　　　　　,! i::: /::::::/=､::::!::::＼:＼ ..::::::::::::::::::＼ ::＼:::::::::::::::::::::::丶ヽ、､〈
　　　　　　　 どうしてうちの両親なんかに　　　 　　 ! .i: /::::::/' iﾞ:i＼:::::i,/ﾌ７:＼::＼:::::::::::::丶　::::::::::::::::::::::::::'i,　 ｀`
　　　　　　　 弟子入りしたんですか？」　　　　　 　 '　i::!i::::::iヽ-'' 　丶::!i、''-;ﾉヽ＼＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:! !::::i〈　　　　　｀ ｀"ﾞ´　 '!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'i,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!　'!:::i　` ｀　　　　　　　　 '!:::::::::::i::::!::::::::::::::::＼::::::::::::::＼ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　' 　 !:l l'ー----､　　　　 　 !::::::::::|:::i::::::!::ヽ:::::::::丶::::::::＼ ｀`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　':i .|７￣￣｀ヽ　　　　　 !::::::::/'!::l:::::|,:::::,、:::::::i,｀''''ｰ-＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,―''''j,,,-‐-‐'‐‐､ 　 　　 i　　　　　 !::::::/ iﾝヽ:::!!::::i ＼::::l　 　　　 ｀''ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｰ'´　 ／:::::::::::::::::::::::::ヽ　　 / 　 　　／'!:::/　!i　 !:i ,ｲ:i　　丶!　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,-（:::::::::::,=-‐iTTTl几_,,ｨ'　　,,.＜_.　 !/　/　　 ﾚﾞ !i　　,,　 　´￣￣ﾞ''-､　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿/-‐'"￣lﾆ)| .| | l,!/ｰ‐' _ ,-'゛　 l､ ｀''l! ､,,_　　　|　! 　/　　　　　　　　　＼ ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,,,,.. -‐'ﾞﾞﾌ /ﾞl'''"´　｀"゛´　　　 〈 !,　"　 'l,ﾞ＼　lﾞ 　　/ 　　 　　　　　　　　 ｀''ｰ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..-''"　.,ﾝ'ﾞ　i　 !　　　__,,,,､-‐-､,, ∧ヽ､、 　＼__/|　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ -'″　 /　/ﾞ　 ／:::::::::::::::::::::::ヽ､｀　 ヽ 、 ヽ 丿　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l<　　　,／　/ _,,./::_;;_::::::::_::::::_:::.-‐';‐'゛'ー､＼　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´ﾞ'l'ｰ''"｀ﾞ￣　　 ＼ヽ !TT l´Tン‐'´,ノ'ー､　 ｀＼ー､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　　　　｀ー――‐゛''''"´'　　 ）　　　 ＼

二２３５．



　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　_,､ｒ'´:::‐､｀ヾ‐､｀丶、
　　　　　　　　　　　　 ／:::::l､:{⌒ヾヽ::ﾄ､:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　　 //!:::i:ｌ:!::ヾ､::::::ヾ::!｀ヽ:ヽ:::::ヽ
　　　　　　　　　　 〃:!:l::::l!:ﾄ､::::liヽ､:::ﾘ:!::i:::ヽ:ヽ::::i
　　　　　　　　　　 i:!::!i::i::::i::!:i:ヾ!:i::::!:､:::!:::l:i:!:ヽヽ:l:!
　　　　　　　　　　 ｌ!::!:!:iﾄ:::!:i:j/代トﾄ､ｌ:ﾊ::升ﾄ!:l::!:!lj
　　　　　　　　　　 ｌi::l::N{:ヾVﾍ｢￣｀　lﾊ ｿｒ‐ﾃﾊ!:l/　　　　　　「おいおい、本気で言ってるのか？
　　　　　　　　　　　!:l!:ﾄ､ｌ::l{｀　　 　 　 　 !　 j川/　　　　　　　セト博士もマナ先生も
　　　　　　　　　　　ヾﾄ辷N!　　　　　　‐ノ　　!:l/　　　　　　　 その筋じゃ知らない人が居ないほど、高名じゃないか」
　　　　　　　　　 　 　 Yｌ:ﾄ､　 　 ヾ＝＝r　　ﾉ/
　　　　　　　　　　　　　iN　＼.　　｀ ニ′／}'
　　　　　　　　　　　 　 ?　　 丶、　　／
　　　　　　　　　　 ノ￣´"''‐ 、 　 ｀¨´?
　　　　　　　 ＿rく　　　　/癶V⌒!=|￣￣￣￣￣|
　　 ＿_,､=Ｔ下､｀`ヽ　　/‐''"_, -ヘ｜　　　　　　｜
　 /「￣´　 ヽヽ ＼　ヽ/ 　 ´　 _,,厶ﾍ　　　　 　 ∧=､､
　 |八 ＼　　 　 　＿_/　　　　　 ＿,）ヽ＿＿＿/ 　ヽ ``=､､
　∥　＼ !　Ｖ´￣:::::/　　　　　　_,ノk>､｀Ｔ!::::::":::＼＿　　 ∥



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 ／,.. .:-ﾆ''"_＿　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃ﾝ::::::::::::::三ニ=::::::.:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 （l!i´::二ﾆ＝-:;;;;:::..-.:::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,-'从ミへ:::::ヾ::::::.,ヽ::::::::::::::､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　 /::'!::::::､､::::､::ヾ:::ヽヽ:::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::.!l/::::::ヾ::::::､:::::ヽヾ.:＼:::::ヽ::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　　　　 　 ,'i!:::::.:i.!:lｬ,:::::::..ヽ､＼::::::::＼:::ヽ:::
　　　　　「私にはただの　　　　　　　　　　 　　　　　 　　,' l!i:l::!!:ヾ.i-ｬ.::::､::::::::._ヽ､:::::::ヽ:::::
　　　　　物好きに見えますがね」　 　　　 　　　　　　_,ヘ!_l. !y::|::l!ｌrt:ｯﾐ＼:ヾ rt:ｯﾃ､::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,-=ニ-ﾐﾍﾊ:::::::ｌ `''''"_`_｀ヽ`'''"　ｌ:::ヽ::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　ン ﾆ 二｀ヽ;=､!ﾊl!y''~´　　 ~`ヽ　　!:::::/i!､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 _..ｨf´　､　`'''‐ﾆ'ヽ..ッ'ｩ､　　　　　　 ｌ ／ﾘl::ﾚｌヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _.-ﾆ／　　`'ﾌ´~｀ヽ..X´｀`''''ｦ, r'''~''ｯ ..〆 / ,liｿ |　,.ｧi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　‐ﾆ‐'八-､_...:::::n⌒`!~ ヾ' ､.　 ヾ､`'''ｬ''''~´　/ // ,ン´　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´ .ｌ /　ヽ >::::!ｿ/ ＼＼ |ヽ'i 　　ヽヽ､_゛_,,...-zﾝ. - '''´~｀`''ｰ-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　、 ＼__ﾝ￣~`'''''- ..,　ｌ　　　 ゛ ｰ-ｰ'´ /,'　,:-‐''　 ､'‐- .,.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞._/ 　 　 　 　 ;　ﾔ ! 　 　 　 ',　　/､ /　　　 !　ヽ　　｀く::　ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,.::;;;;/　　　　　　　|　 'i::i　 　 　　',　〈', ｌ i　 ,'　 ,'　　ﾄ　　　 ヽ,　ﾔ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　‐-‐''　~ ｱ　ヽ　 　 　　　ｌ.､　ヾ　　　　　,　 i_jy'　,'　./ 　　ｌ ', 　 　', iノ !`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈 i　 ＼　　　　　 !ヽ　＼ 　 　 ｌ ,　 / |　i　./ 　 　ｌ　', 　 　',|､ ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ!　　 ' ,　　　li 　'i＼ .liヽ　　ｌ　'. /　| ,' /　　　　ｌ　 ,　　　|　>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　　 　 |:',　　　＼　　',i　 ', ヽ |､ヽ　l.　 ヽｌ | ﾚ　　　　　ｌ　/',　　 'ｌﾒ､

二２３６．



　　　　　　　　　　_＿__　 _,.-=＝－- ､
　　　　　...-‐＝三ﾆ≧弐ﾆミ´三ﾆ=-､
　　　／:,::::‐:'´／::::::,ｲ::::::∧:｀:､｀:､=:ﾐ､｀::.､
　 .::'::／::,:イ,ｲ:/::::::/ｉ|::::::':::: ヽ:::ヽ:::ヽ:::ヽ::::＼
. /:::/::::::'::::///:ｉ:ｉ:::': !|ｉ:::ｉ:::ｉ:ｉ::ｉ::＼:｀::､::＼:＼::::::､
/:::/::::/::::/,ｲ':::ｉ:l:::::::/!|:::|::ｌ ｌ::|:::､:::＼::＼:::ヽ::ヽ: 丶
:::/::::/ｉ::://::l::::l:!:::::/::ハ:|::!:|::ﾄ､:::＼:::',::､:丶::丶::､: ヽ
/::: /::l:::'/:ｉ::|:::l::::::;':::ｉ:::::l:|::::|::|小ﾄ､::ヾﾄ､:ヽ: ',:::ｉ､::ｉ::::ｉ
:::::/::::l::ｉ::::;斗､!::::,ｉ:::l::::::; |::::|:l/:::|､ ｀ ､!:::ｉ:: ｉ:ﾊ l::ｉ |ヽ!
::::'::::::l::l::::' r ､!: /:|::l::::/:l:|::::!!: /|!=≧､ヾl::::ｌ':::!|:::!:|:::|
:::::::::::|:|:ｉ::ｉ {　!:/:/l:l: /: ﾊ!:: Ⅵ:八　　ヾ!::/ｉ::: |:::: !: !
:::::::: ｉ|:|:|::l　y/:/:/l| ' / ｉ∧::l {′ ヾ=-ﾒ}ﾊ. |::::|: /}:/
　::::::!|:!:|::|V/l/ '.　|::/ /'　ヾ!.　　 　 　 '　 ､::::!/::::'
　 ::::::!:::|::ｌ::ｉ: '　 　 !'　　　　　 　 　 　 　 　 V,'／　　　「特に、僕はマナ先生が羨ましい。
　　 :::::::l:ｉｌ:l:' ｉ　　　　　　　 　 　 　 　 ,　　 ノ´
　　　:::::|| |!.　､　　　　　　　 　 　 　 　 r ´　　　　　　　エルフは長命だ。
　　 　 ::ll {.　　＼　 　 　 　 　 - ― ､‐'　　　　　　　　 その分研究に没頭できるし―――」
　　　　 :!.　　　　 ヽ　　　　　 　 　 _ﾉ
　　　　　　　　　　　　､　 　 　 　 /
　 　 　 　 　 ､.　　 , -‐丶　　 _　′
　　　　　　 　 ＼イ ＼　　 ￣
　　　　　　　　　 ＼.　 ヽ



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　弟子入りしてもう五年経つし、とのふとした呟き。
　　それが唯一、漏れ出た本心だったとエルが気づくのは何十年も先の話になる。

　　事実、人間との圧倒的な人数差が有りながらも
　　高名な学者、研究者の中にエルフは少なくないのだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２３７．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　　 　 　　　／　　,／/ _､-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　　 , '/ ／‐'::::,､ﾝ'／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ./:::ﾚ:::::::::::::´::::::ー--...､.._
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　　　　_iV::::::::::::::::_::_::_::::::::::::::::::::::::::::::::::=-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r::'::::::::::::｀ヽ三ニー-::::ニ:::::::::-=ﾆ´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::／三:::＼＼ヽ:::::::::ミ､::::::::::::::_:::＝≧ー
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::/:::::ンヘ＼＼ ヽ:::::::::::｀ヽ:::::::::::::ﾆ三三ｪ-
　　　　「……………。　　　　　　　　　　　　　　　 //i:/:／/:::,'i::::ヽ＼＼',､::::ヽ:::::::::::::::::::::＜'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　 !' /::;:':::/:::,'::i　i:::ヽ:::::::ヽ:ミﾐ:::::ヽ､:::::::::::k-ﾆヽ､
　　　　 その分、色々苦労が　　　　　　　　　　　　 /::i::::l:i:::i､::',. ',::::::ヽ::::::::ヽ::::::::::::`::::::::::ミヽ､
　　　　 あるみたいですけどね」　　　　　　　　　　/:::ii:::l::i:::L::::':,::i:::::::＼､_:::ヽ::::::::::､::::::::::ヾ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::/i:ｉ::l::i::i f:::j､:;::::',ヾ:::,rt:::j､＼:::::::::::::::::i､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　_,rｰｧ'/'´ i:ﾊ:l::lﾘ`＝‐ヾ'､::､ﾞヾ､ﾆノヽ::::::::::::::ヾヽ､.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,r''"　　　　 i.ﾘ/ﾘ::',ﾞ　　　　　ﾞヽ　 　　 .,!::;:::::iヾ::',ヽ､ ｀`ｰ-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　',　 -､ 　　 i//::l:ｌﾞ､ 　 　 ､ ..　　　　..:':l::i!ヾl:::ｌ lヽｉ ',　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧　 ', 　 i i　　 i i:　ﾘ　ヽ.　‐-- ､ 　 ／ /ﾘ　/ !/./　'　'　 ﾞヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,' ヽ　 ',　i 〈　　 ,i i::.､　＼＼　　　..::'::: /　! 　 , ', ' .i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ､　ヽ　　ｉ 　 　　'ヽゞﾐヽ、ゞ: `ﾆ:´:::::''　_,. -／／　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 ヽ、ヽヽ　 i　　　 ',ヽ､`ヽﾐヽ､ 　 　,.:-'´,. '´／　　 ﾉ　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 iヽ ＼i　.i!ヽ　　　　 `　､`'-､､､､､- ',ン'' 　 　 　 　　　　/〃
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　 ヽ.＼ !　　　　　　　　｀ ｰ-ー '´　　　　　　　　　　, ' //
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　i　　 ヽ､ヾ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 , ' ／ '
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ',、　　　ﾞﾞ'i＼ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　, ir'　ヽ=
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　iヽ　　　　i!　ヽ ヽ　　　　　　　　　　　　　　 ,　'／i! 　　/



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　その時はただ、目に見えて老いていく父と今だ若く美しい母、
　　そして家から一歩出れば、合いの子として蔑まれる自分の葛藤だけがエルの胸中にあった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　●

二２３８．
―――――――――――――――――――――
　　やがて、ライトが弟子入りして五年が過ぎる。
―――――――――――――――――――――



　　　　　　　　, -―-、,-―- 、
　　　　　　 ／　　 /　i　　　 　＼
　　　　　／　　/ //　|l　 i　ヽ、　＼
　　　　//　 i　i //　　|l　 |　　ヽ、ヽヽ、　　　「いやぁライト君は本当に熱心だな！
　　　///　 l　 l{ｌ　　 |ﾄ、ヽ、　　i　 i　ヽ
　　/// /　| /__ヾ、　 ﾘヾ＿ヾ、! |　| | 〉　　　いつか私と一緒に、この大陸のどこかにあるらしい竜の谷や、
　 ヽ{i|　|　||/ r‐ｭヾ、_ヽｒ‐ｭヽ //-、l /　　　 聖域と呼ばれる墓場を探しに行かないかね！」
　　　ヾ ｒ-ﾊ!￣￣ く r　￣￣　ｲi〉i//
　　　　ヽヽ i　　 ｒ＝＝=┐　　 |_/i/
　　　　　＼ゞ　　|, -‐‐-,,|　　 ,ｲ|l |
　　　　　　 ',ilヽ、ヽ、__／　　/ | i |
　　　　　　　 | l ト、 ー　　／　|| |
　　　　　　　　ヾ|- ゝ┬イ-‐‐‐|/
　　　　　　　 ＿|::::::::::||::::::::::::::::|＿



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　!:/!:::::!::::::!::ヽ:ヽ{:::＼:::ヽ::::＼:::＼::ヽ:::::ヽ!::::}!::::l::li|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　j/:::ｌ:::::!:､:::!::ﾄ､:､:ヽ:::::｀ヽ{､::::::＼::::＼{､:::::::::i::!::l:l !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 l:i:ｌ::::i::i:､:l::lﾃ=-､:ヽ､_､::＼_,≧ｪｭ､_､＼:::::::::i::li::!::ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!ﾊﾄ:{:!:ｉ:ﾄN{､ﾋ_ﾗﾍ､{　＞､{ 'ｲ ﾋ_ﾗ　》＼::l::!:ﾄ!!:l::l!
　　　「いいですね。　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 ヽ i､ヽ:ﾄ{､ヾ￣"´ l!＼　　　｀"￣"´　 |::!:l::! j:ll:!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　 !::､::::i　　　 　 ｌ　　　　　　　 　 　 |:::/lj/l:!ﾘ
　　　 そうすれば竜の持つ力の秘密も　　　　　　　　 　　 　 　 　 ヾﾄ､:!　　　　　　　　　　　　　　　ｊ!/ j|:::ﾘ
　　　 少しは分かるかも知れません」　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ! 　　　ヽ　 ‐　 　 　 　 　 /ｲ´ｌﾊ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 }ﾄ.、 　 ｒ ＝＝=ｧ　 　 　 /'　!:://
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ﾘl::l゛､　 ､ ＿ ,ノ　　　 ／　　|/:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｒｰ''"´ﾄ!::i{＼　　　　 　 ／　　/　!:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ^ヽ　　ヾ!　 ヽ ＿,,、'´　 　 /　 ｊ/

二２３９．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　研究者としても、魔法使いとしても類い希なる才能を発揮した青年は
　　若干二十二歳にして魔導師となり―――
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∧
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ヽ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ≠=、　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　　　　__／　　　∨
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿　　 ／＼＼￣￣ ＼　　　 》
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／^＼＼//　　 ＼＼　　 　＼　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_／　 　　 ＼＼ﾆニムﾏﾑ　　　　|| /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　<｀ヽ　　　 　　　￣ 　　　ヾ ﾏﾑ __　　||
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ ＞=＝=ﾃ＝==ﾁヾ　　 彡ﾊヽ　 r
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 >″ 　 /　　　≠-＞_　(　(、)=＝)　　　　 ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 /／ 　/ ＼　　irﾁﾃ＜ﾉ--ゞ ソ、_ ム_＿ ／/
　「昇格試験の合格おめでとう！　　 　 |/i　　/　 i〈＼ ii 弋_ｿ/ 　　 {　 ﾍヾ＝　　　/
　 今日からライト君も魔導師ね！」　　 { |　　|　 ⊂⊃ヽ　_⊂つ　　　i　　 ヽ、_　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　/|　 i 人 丶´ }/／/　　∧　　　　 ｀ー -―フ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　| / |　 i ∧个　 _　ｨ/　ｲ /　ヽｖ-ーr┐_＿ ≦
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　|　i/　 f´ ヽ 〉／ﾑﾚ _＿_ ムv´　}、　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 }/　 < ヽ　、 ∪r ´　　　　 ＞、/ ヽ｀ー┘┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　> _ヽ／ヽ,_}　 _＿ イ＼}}_/ ＜ﾑ　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　/　　_ ＿(☆} ｨ´　　i　　　 ヽ、≦ヽ　　　|,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{__ ｨ=ﾍ ゝ_¨"iﾑ　　 i、丿　　　￣ ∧　　 |



　　　　　 　　　, ‐ ´. .::::::::::::::::::::::::｀ ‐ 、
.　　　 　　　／/ . : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.、
　　　　　／. :/::::::::::::::::::::::::::::::::: i::::::::: : ＼::＼
.　　 　 //. :/::::::::::::ｉ :::::::::::::::::://:::::::::::::＼:＼::＼
　　　 //::::::ｌ:::::::/:/{ :::::/:::::::://:/::::!::::ｌ:::::::ﾄ:::::ヽ::::.
.　　　ｌ:l::::::/|:::::ﾊ/∧:V:::/:::/::::/::::/:::/::::::/::ﾍ::::l::::ﾊ
.　 　 |:l:::::::::|:::::|::!::::∧:V:::/::::/::::/:::/::::::/|::::::|::::|::|.!|
.　 　 |:ｌ:: |: :|:::::l::|::/:::ﾍ::V::／／/:/ ::／:::|:: /!:: | l ||
　　　 ｌ::::l:::::ﾊ:::|∠:ィ７:::Y:／::イ::z≦ィ:::/::/::ﾊ/:ﾘ |!
.　　　 ｌ::|:::::小:Π:/l/-=彡１ /艾ｧﾃ｀ｼ_:ｨｆﾁ::/:/
　　　　V::ｌ: :!::l:|い小/|:ハl:|/　　｀´　 　 ｛ }ノ´
　　　　 Ⅵ: ｌ:::::｀爪|　　　　　　　　　　　　〈　　　　　「ありがとうございます。
　　　 　 }:!: |::|:::l::|　＼　 　 　 　 　 　 ‐ _ノ　　　　　 では、約束通り、
　　　 　 ぃ::|::|:::l::|　　 丶　　　　__,　，／　　　　　　 禁呪研究の許可を頂けますか？」
　　　　　 |:∧l＼:{　　　　＼ 　 　 　 /
　　　　　 ｌ′丶　ヽ　　　　　ト､＿,ノ
　　 　 ／　　　　　　　　 　 ,′　　　　　　　　　　　　　┌────────┐
.　 ／＼.＿＿＿＿　　 　 人_　　　　　　　　　　　　　 │ライト　　　　　　　.....│
／　　｀－――‐‐- ､｀ ‐ 、　 ＞､ｘ‐ ､　 　 　 　 　 　 │当時二十二歳　 　 │
　　　 　 　 　 ＼ 　 　 ｀ヽ ヽ、　 | | 　 ＼　　　　　　　└────────┘
　　　　　　　　　 ＼　　　　＼ ` ┘!　 ＼ ＼



――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　唯一これまで触れる事を許されなかった、
　　母親の封印指定関連の研究についても、手を出したいと希望したのである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２４０．
―――――――――――――――――――――――――――――
　　もちろんセトもマナも、敢えて日陰者の研究をする必要はないと
　　説得を繰り返していた。
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　　　　　 ＼　ヽ　　 |　|　│　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 　 　 　 　 /　　　　　　　､　　　　ヽ　ヽ.　 |　|　│　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　 /　　　＼ 　 ＼.　　　 ヽ　､　,!-:!、 |　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　 /　　　　　 ＼ 　 ＼　　　ヽ ∨ ,r､ ＼!　|│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　 　 /　 〈　　､　　ｰ- ﾆ≧≠!^ヽ、　 '、V }　ヽ. ヽ ! |
　「お薦めはしないぞ？　　　　　　　　　　　　　｀　､. ＼　＼＼　 ､__／│ 　 ＼　'､}_ﾉ　　　/│|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｀　､＼　＼≧ｨ'}　 /　　　　 '、 |　_／ /|　| |
　 研究結果は公表できないどころか、　　　　 　 　 　 ｀　､ｰ‐ヘjﾉ '´　　　　　　Ⅵ´　 ,人 l.│|
　 全て学院の監視、　　　　　　　　　　 　　　　　 　 　 　 　 ｀ｧ-､_＼.　　　　　 　 ﾘ｀￣ ＼.ヽ | |
　 管理下に置かれる事になるしな」　　　　　　　　　　 　 　 /　　 ｀丶.　　　　 　 　 j＿＿ ＼ヽ.!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ノ　　　　　　　　　　　　　|　　　 ￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀丶､ 　 __　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 `〈　　　　 　 　 　 ,.'|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼.　 　 　 　 /|│　　　　rｆ⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |￣＼　 　 ／ｰ! |　 　 　 {
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |　　　`ー'´　r┴l.　　　　 ﾞ'ｰ=
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |　　　　　　　|::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 | 　 ＿＿＿_,|::::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＿＿＿___ﾉ　　＼　　　 _￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　　　￣￣￣＼　 |│/7




ﾍ　',:::ﾍ|:::::::::l:::ﾍ::ﾊ:::::＼|:::::::::::＼:::::::＼:::::::::::::::::::::/:|:::::::::/:::::::
　',　＼:ﾍ::::::|ヽ:::ﾍﾊヽ:::::｀ヽ_::::::::::＼:::::::＼::::::::::::/::::|::::::/:ﾍ:::::
　 ',　　ヽ',ヽ| ﾍ＼::::ﾍ ＼:::ﾍl｀ヽ:::::::l＼::::: l::::::: /｀ヽ|:::/::::::::ﾍ:
＿_ヽ　./ﾍ .ﾊﾍ:l　＼:ﾍ.　＼ﾍ　 ｀ヽl::::::＼::＼::l＼::::|/:::ﾍ＼:::
｀ヽ￣./　ハ:::',ﾍ..　　｀ヽ.　　＼　 　｀ｰ-l:::＼::＼:::＼　　 ',|ヽl
　 　 /.　 　 ＼ ﾊ　　　　　　 　 　 　 　 l:::::::..
. 　 /　　　 　　 ｀ヽ　　　　　 　 　 　 　 l:::::::::::...　　　　　　　　　　「………ええ、分かっています。
　 /　　　　　　　　 ﾍ　　　　　　　｀ヽ　　_／:::::::::..　 ,　
. /　　　 　 　 　 ／'';;＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　しかし、マナ先生がそうであるように僕も、
　｀''ｰ-=,,,_ 　 ／　　 ';;;;;＼ 　　　 ＿＿_ ＿＿_　　　　　　　　　　 使わずとも知っておくことで、
　　　　　　'／　　　　 ';;;|　.＼　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　 いざと言うときの対処や別の魔法への応用が
　　　, r ' ´　 　 　 　 　 |.　　 ＼　　｀￣￣´ 　 　 　 ｲ;;;　　　　　 出来るようになりたいのです」
　　K　　　 　 　 　 　 　 | . 　 　 ＼　　　　 　 　 ／;;;;;;;;
　 　 ∨　　　　　　　　　 |　　 　 　 ＼　 　 　 ,イ''''''''
. 　 　 ∨　　　　　　　 　 |　　　　,r‐='｀ー― '｀ヽ
　 　 　 ∨　　　　　 　 　 |　　　/;;'ﾍ . /　/　/　/＼
　　　　　∨　　　　　　 　 |　　/　　 ∨ ./　/　/　　 ＼



―――――――――――――――――
　　しかし、ライトの意志は固く―――
―――――――――――――――――

二２４１．
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　結局、根負けした両親が折れた。
　　それまでのライトは品行方正で、二人にとって信頼に値する良き弟子でしかなかったのだ。

　　また彼が学院の誰よりも強力な、常人とは全く異なる魔力を持っていたため、
　　研究者として興味をそそられたのも一因なのだろう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : : : : : : : :､: : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : :＼: : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/: : : : : : : : : : : : : : : : ::::| : : :､ : : : : 〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : ,: : : : :::}: : : : ＼ : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /: : : : : : :i: : : : : : :/: : : : }/: : :! : : : ∨
　「それだけの才能を持ちながら、　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,: : : : : : : : !: : : : : /: : :' : / : : : }､: : :}: 〉
　 敢えて過去の暗部に目を向けるか。　　　　　　　 　　　　　/: : :/: : : : : |: : : : /: : :/ :/: : : : /∧:/!/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈 : : {: : : : : : {: : : /: : :/: /: : : : /:,_,,, ! }
　 良かろう。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　 ＼: ＼ _:_ : :＼/: ://／ヽ: : :/:/　　|/
　 これまでどおりの勤勉かつ真面目な態度で臨み、　　　　　　　＼: |r-､: : :r―'/＿_,,/／}∧　　,
　 決してその力に呑まれぬよう精進してくれよ？」　　　　　　　　　 } !＼.＼:{　　　　　　　'　/　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ ー--ヽ　　　　　　-ｯ　/￣￣￣￣￣ >
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〈￣￣￣￣￣￣￣￣＞'　　 　 　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 〉､　　　　　　　　　/ー{　　　　　 ,＜ ＿＿＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／//＼　　　　　　／　　i　　　　／//////////7>､


ﾍ　',:::ﾍ|:::::::::l:::ﾍ::ﾊ:::::＼|:::::::::::＼:::::::＼:::::::::::::::::::::/:|:::::::::/:::::::
　',　＼:ﾍ::::::|ヽ:::ﾍﾊヽ:::::｀ヽ_::::::::::＼:::::::＼::::::::::::/::::|::::::/:ﾍ:::::
　 ',　　ヽ',ヽ| ﾍ＼::::ﾍ ＼:::ﾍl｀ヽ:::::::l＼::::: l::::::: /｀ヽ|:::/::::::::ﾍ:
＿_ヽ　./ﾍ .ﾊﾍ:l　＼:ﾍ.　＼ﾍ　 ｀ヽl::::::＼::＼::l＼::::|/:::ﾍ＼:::
｀ヽ￣./　ハ:::',ﾍ..　　｀ヽ.　　＼　 　｀ｰ-l:::＼::＼:::＼　　 ',|ヽl
　 　 /.　 　 ＼ ﾊ　　　　　　 　 　 　 　 l:::::::..
. 　 /　　　 　　 ｀ヽ　　　　　 　 　 　 　 l:::::::::::...
　 /　　　　　　　　 ﾍ　　　 __　　 ｀ヽ　　_／:::::::::..　 ,
. /　　　 　 　 　 ／'';;＼　　＼＿＿＿＿＿＿__,／/　　　　　　　「………もちろんですとも。
　｀''ｰ-=,,,_ 　 ／　　 ';;;;;＼ 　 ｀｀'ー-　-――‐ ´ノ　　　　　　　　私利私欲のために己の力を使わぬ事、
　　　　　　'／　　　　 ';;;|　.＼　　｀￣￣￣￣￣´ 　　 /　　　　　 約束します」
　　　, r ' ´　 　 　 　 　 |.　　 ＼　　ー―― 　 　 　 ｲ;;;
　　K　　　 　 　 　 　 　 | . 　 　 ＼　　　　 　 　 ／;;;;;;;;
　 　 ∨　　　　　　　　　 |　　 　 　 ＼　 　 　 ,イ''''''''
. 　 　 ∨　　　　　　　 　 |　　　　,r‐='｀ー― '｀ヽ
　 　 　 ∨　　　　　 　 　 |　　　/;;'ﾍ . /　/　/　/＼



―――――――――――――――――――――――――――――――
　　―――ニィッと歪んだ口元の笑みは何に対してのものだったのか。
　　その、約束という言葉の何と軽薄だった事か―――
―――――――――――――――――――――――――――――――

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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━……

二２４２．
――――――――――――――――――――――――――――
　　それから三年の間、ライトはそれまで以上に研究に没頭し、
　　母の研究や先人達の知識を吸収して力を蓄えていった。
――――――――――――――――――――――――――――



　　ヽ、　ヽ:.､､,
､、　 ヾ､:､.ヾ::::ミｰ:.､､,,
､::::`=:..､_ヾミ::`:::::::ヽ､:::::`:ｰ.､.ヽ、　､
.｀ヽ､:::::::::三"ﾆー-::...ﾆ=-:､::､::ヽヽ .i:!
-ｰ '''''ーﾆ三ニ‐:::-ニ三ﾆ::::::::ヽ::::iﾉ::i
:::::::::::￣::::::::::::::ン:三＝ー-:::::::::::::::::::ﾘ
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ｯ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,:::,::::::ンノｿ
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=ｨ::::〃:::::::::::::::,:::'ﾝ-'''／/::::／ ﾔ::::/ i:!
./ﾊ:::::::〃:::::::/ '"　　 ／" 　..　,ｿiﾘ　!
ヾ. l::::/' ',::il::/ヽ 　 　 　　 _... ﾝ　i　　　　　（父さんも、母さんも、私も。
.ヾ､ﾘi　　ﾘ ｿ　 :::ヽ、　￣‐'／　　　　　　　 学院の導師達も皆、騙されていた―――）
　 ','ｿ ヾ､_,... ｯｨ'ﾉ´. `　..／ /
　　i ヽ､__ ,ノ ／　　,　/ ／
　　 i '' ‐-‐ '　　 ／/,　'　, '
　　i:: '　　　　 ／ .ｨ , ',　'　,r
　ｨ:　　　　,..::'　,.:':::i
　 ヽ　 　' ::　 /　 Y



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　　思い出す度に後悔が止めどなくあふれ出す。
　　何故あの男に潜む邪悪に気づくことが出来なかったのか。

　　その中にあったのは理力魔法を人の役に立てると言う使命ではなく、
　　手段を一切問わず、ただ貪欲に力のみを求める欲望でしかなかったのに。
――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２４３．
━━━━━━━━━━━……
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　　結局今でも元からあった狂気なのか、
　　禁忌の力に触れた故に狂っていったのかは分からない。

　　ただ言えるのは、突如として本性を現したライトが、
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　` ‐ ､!　 　 　 　 l.　 l、　　　　　　　　 　 /
　　　　　　　　　　 l　　l、　　　　　　　　 /
. ヽ、　　　　　　　　ｌ. 　 l　　　　　　　 ∠ _
.＼ ｀ヽ.　 .　　|`ヽ､.!.　　ｌ.　　 ,､,ﾍ　　 ＿_ ~｀` ‐ ､_
　　＼ ,へ|＼.l　 　 ヽ. 　 l ／　|　|''"´　 _,二ﾆ=-　 ＞
　　　/　 ,l　 .l 　 |ミﾐ`ゝ､/／!　!　ｌ,, ‐'"´　　 , ‐'"´
＿__/　 .,l　 ,l　　l　　　ﾞ〃 ::::l.　|_. Ｌ＿　,, ‐'´
_　　.＿/　/　,／　　 }:::{　 ::::ｌ＿_ ｀`‐､､ヽ＞
/⌒ヽ./ ./ .∠､ _＼ 　 　 ::::∠-‐｀` ‐､!､`＼
l./ﾞヽ.,|　|　|､　!､_ノ `ｉ､　 ::/!_ﾉ //.／　`＼　＼　　　　「………エ……エル君、
ヽゝ( ,|　|　|ヽｰ─-　　　 ､ｰ'''"l`/　　　　　　　　　　　 たい……へん、だ………」
　`ヽ､|　|　|　　　　 　 　 ／　 :!/
＼　　|　l　|.　＃　　∈ﾆ'　 # :i　　　　　　　　　　┌───────────────┐
.　 ＼ !. l|. |`‐､　}:::{ 　　　 ／ 　 　 　 　 　 　 　 │ムトー導師　　　　　　　　　　　　　 　 .│
　　　`| ｌ ! |｀‐､.`‐.､.　　／　　　 　 　 　 　 　 　 │セトやマナの旧知の大魔導師　　　...│
　　　_,l ! ｌ |　//｀` 7`''´‐-､_　　　　　　 　 　 　 .│魔法学院長　　　　　　　　　　　　　　..│
,,. ‐'´　!|. ｌ.|`‐-ﾆ=〈ヽ　　　 i `ヽ　　　　 　 　 　 .└───────────────┘



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿＿_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__「:::::::::::::::::::::::::￣フ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／:::|::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞
　　　　　　　　　「ムトー導師！？　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　∠:::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　そのお怪我は一体！」　　　　　　　 　　　　　　　　　/:::::彡ﾚ|:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　＿_,/:::/'i c |:|:|:::|:;lヾ:::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣7 /::::/　ﾞ＝':|::|:/ｲ c｀i:､:::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　/　　/|::::|　　 ,　 　|　ﾞ＝'':::〉:::::::::::::::::＼
┌───────────────┐　　　　　　　 |　 / 　　| |:::;| 　 _　^　　　　 :::/::::::::::::::::::ド､!
│エル　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│　　　　　　　 |　　　　　 ﾚ:::!　‘､_j　 　 　　/:::::::::::::::::;ﾍ| ＼
│当時　五十三歳　　　　　　　　　　　....│　　　　　　　/`　| 　　　|::::::!.､`　　　　_／/:::::::::::::W　　 　 ＼
│（人間年齢換算で十四歳程度）　　....│　　　　　　/ 　　| 　　　 ＼:::::i ￣￣￣_／ ﾚ;:::::ﾙ'　　 　 >　　＼
└───────────────┘　　　　　/　　　 | 　　　　　＼＿＿＿＿＿／ﾚ´　　　／/　　　 ﾍ

二２４４．
―――――――――――――――――――――――
　　突如その牙を剥いて多くの命を奪った事―――
―――――――――――――――――――――――



┏───────────────────────────────┓

　　　突然、マナ導師がセト博士を襲って………
　　　そこに現れたライト君が、止めようとしていた学院中の者達を………

┗───────────────────────────────┛



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――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――　　　　＝＝　￣――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―　　　――――　　　　＝＝　￣￣￣ 　――＿――￣＿＿＿￣―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::厶=-‐-.､＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::/.:::::::::::::::::|　ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/.:::::::::::::::::::jこ jﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::/.:::::::::::::::::ィﾖ 　{{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::..＜´　|主 　}ﾄ､　　　　　　　　　　（父さん！！
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼.:.:.:.:.:::::::::::::::::／ 　 ＼'｢ ｀ヽﾉﾘ.::',　　　　　　　　　　母さん！！）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ` ー一'´￣　　　　　 ヽｰ彡'.::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ.:.::::::::::::丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨.:::::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨/.:::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V.::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〈.:::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 Y.::::::::::::::入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ー=≦∨〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }主}｀ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｊ主ｊ_ ,ﾉ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /ー‐ヘ.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ー‐彡'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7　　　　　　/　￣￣￣ / .__　　　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　匚　 ./i／i／　　　　　　/＿/￣/　 /／/ 7　　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　./　　　　　　　　　　　　　匚　 ./i／i／　　　　　　　　　 匚　 ./i／i／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　./　　　　　　　　　　　　　　/　./　　　　　　　　　　　　　　/　./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　./　　　　　　　　　　　　　　/　./
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二２４５．
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　　保管されていた貴重な資料や魔法の道具などを全て奪って、
　　学院を焼き払った事――――
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　|　|　 -、, -､ |ヽ. n |　　　　　　　　　　　　　　| n ,..:'|　 -、, -､ |　|
　|　| |王| |王| |: :| u |　　　　　　　　　　　　　　| u |: :| |王| |王| |　|
　|　| |土| |土| |: :| n |　三三三三三三三三}　| n |: :| |土| |土| |　|
　|　| |　 | |　 | |: :| u┌ｰ─ｰ─ｰ─ｰ─ｰ─ｰ┐u |: :| |　 | |　 | |　|
　|　| |王| |王| |: :| n｜　, - 、　,. - ､　 , - ､　｜n |: :| |王| |王| |　|
　|　| |土| |土| |: :| u｜ ﾑ二ﾊ. ﾑ二ﾊ. ﾑ二ﾊ. ｜u |: :| |土| |土| |　|
　|　| |　 | |　 | |: :| n｜ |土土| |土土| |土土| ｜n |: :| |　 | |　 | |　|
　|　| |王| |王| |: :| u｜ |　 　 | |　 　 | |　 　 | ｜u |: :| |王| |王| |　|
　|　| |土| |土| |: :| n｜ |王王| |王王| |王王| ｜n |: :| |土| |土| |　|
　|　| r=r=r=rﾐ.|: :| u｜ |土土| |土土| |土土| ｜u | : >=r=r=r=}.|　|
　|　に二二二ﾘ: に二に二二二二) ､　　　 )ヽ　　　　　　（二二ﾘ　|
　|　| |冂| |冂| |: :|＞| |＼_rｰ!＿＿＿) （　（　　）ヽ　；　・　 ）　;　'　|
　|　| |ｌ ｣| |ｌ ｣| |: :(　　　　　　 )　` 　 （ (　）　） （ （　　　）ヽ ( ､　　）ヽ　　；
爻ｰ| ;　:　,　)　　　)　　)ヽ（ ( :（ 　　 ）　　　ヽ､）　）　（　（　） ）; （　（　（､　:
ﾐ爻；　・　）ヽ　 (丶　　)ヽ　 （　（ ） 　　（　;;　　;､:　　;　;）__）　）　（____）　）　））　；
爻ﾐ)`､　（　 （　 .）　）ノ　 |　:　)　＿,,,-､__　　;;　.､　　　　　（／（＿）ヽ　）ヽ ;;
ﾒ (　（__ノ　　`-'　　　　　 `-'　:~～--～~--、_;; ::　　､.､.　 ） (　（　　）ヽ
ヽ_,)　　　　　＿,,;::- ‐' ～~ ~ 　__,_　　　　　　　　`‐-､__　　（_（_）　） （　（
　　　;; ; ;,／~　　　　　 _,,...-　　　　　　　　　　　　　　　 ~～、_　; ;　ヽ_）　）


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　─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘　　 ─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘

二２４６．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　全身を血に染めて、正気を失った様子の母が最後に残っていた事―――
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 r―-､＿＿＿_r‐､＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,.．-= '"￣: ＼＼: : : : : :ヽヽ: : : : : :＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,∠二.＞､ : : : : : : : : : ＼ヽ: : : : : | |,．　'"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,．};;;;;;{: : : : ＼＼: : : : : };;;;;;{: :| !: : :,． '`′
　　　　　　　　　　　　　　,∠二`く : :};;;;;;{ : : : : : : ＼＼: : :};;;;;;{ : | !／
　　　　　　　　　　　 ,．'": : : : : ＼＼};;;;;;{ : : : : : : : : ＼ヽ : : : : : |ﾉ
　　　　　　　　　,．'" : : : : : : : : : : ＼＼ : : : : : : : : : : : |｜: :／
　　　　　　_,．'": : : : : : : : : : : : : : : : :＼＼ : : : : : : : : ｜|: /
　　_ｚ二二二二二二二二二二二、ヽ: :＼＼: : : : : : :｜ﾚ′
＜＜: : : : /　　 ｜　　个|　 |　 | ＿＼＼ : ＼＼ : : : : /ﾉ
　 ＼＼: / 　 ／ !　　 /n|　 ﾄ､千∨` //: : : / ﾊﾍ : : /　　　　　　「ギギギギ………」
　　　＼｜　/ 　 |.　 Y::::;!、 | ::::::::::､ く二二/ /｜|: :/
　 　　　｜/　 　 | 　｜::::::::::::::::::::::::／　　　 Y二二二)
　　　　　ﾚ| 　 　 |　　| ｀ 　 　:::::::::::i　　r‐､ ｲ |: : : : : ＼
　 　 　 　 | 　 　 ヽ.　|ヽ`ｰ　};;;;;;{　人＿`フ´L二二二二)
　 　 　 　 |　|　 　 |ヽ|　ﾄ--};;;;;;{＜／ /｜ ﾊ　|　|＼　　　＼
　 　 　 　 |　| 　　 | 　　|/ 　 　 ､とう　ﾚ′V＼|　 ｀　､};;;;;;{＼
　 　 　 　 |　ﾄ､　　ﾄ .　 |!　　　　 ヽ　, ―-‐　　　　　　 i};;;;;;{ `　､＿＿＿＿_
　　　　　　V　 ＼ ヽ ヽハ　　|　　　 　 　 　 　 /　＃　 |＿＿＿＿＿＿＿／
　　　　　 　 　 　 ＼|　　 ﾍ　ﾉ };;;;;;{ 　 　 　 　 |　　　　 |)＼＿_,.ｨ７￣￣￣￣L
　　　　　　　　　　　 　 　 ／　};;;;;;{　ﾉ　　＃　 ',　 　 ／ : : : : : //￣￣￣　　　|
　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　};;;;;;{　/ 　 　 　 　 ヽ　/＿: : : : : //＜￣￣￣￣￣|



　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　　 '　'　.ｌ::::::::l　 　 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',　　　　　「母さん！」
　　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　　　　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　.　 　 　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 　 　 ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
　　　　　　　　　" . ';ヽ　　　　　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　　 　　　　　　　'|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
　.　　 　 　　　　　　　　　'i::: '　　　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
　　　　　　　　　　　　　　　!'i　　　j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!

二２４７．



　　　　　　 　 　, 　 　　 /〃ﾊヾ　 / ∧∨〃､ヾ}　ｌ| :}ﾐ;l＼
　　　　　　　　/〃//　/ 〃l　lヽ∨,〈ヽﾞ､ﾒ〈　}} ;l　ﾘ ハ ｌ｀!ヽ.
　 　 　 　 　 //' /,' 　,' 〃 ｌ　l川/,ﾍ丶＼;;ヽ/:'/〃∧ l ﾄ､:l　!
　 　 　　 　 〃,'/ ;　 ,l ,''　,l|　ﾚ'/Ａ､.`､＼;;ヽ∨〃/,仆|│l }. |､
　　 　 　 　 i' ,''　l|　,ｌ ' ｌ.　!|　l∠ﾆ_‐＼ヽ;＼,//,ｲ| ｌ | l　ﾄ/ λ!
. 　 　　　　 ｌ ;　 :|| ,'i:/ ｌ|　|:|: |｀`'^‐｀ヾ∨｀ﾞ/／|斗,l ! | ,ﾀ /l.| ｌ
　　　　 　　l ' l　|｣,' l'　lﾊ　|'Ν　　　￣´ ／｀　,|l_=ﾐ|! ly' ,〈 :|| |
　　　 　 　 |ｌ .l　H|i: l　|　ﾞ､| l　 　 　　　 _.::: ,!: l厂`刈/ /!} :ｌ|　　　　　「ハハハハ、
　　　 　 　 |! :ｌ　|)!|　! |　　ヽ　　　　　 '´ ’/'_,.　　　ノｲ.〃/|!　　　　　 随分遅かったな。
　　　 　 　 l|ｌ |ｌ 「ﾞ|l　|`{　 　　　 　　 　 　　.. 　 _　　　|}/,ﾊ l
　　　　　　 |!ｌ |l､|　!l :|. 　 　 　‘ｰ-‐=＝ニ=:､__ｊ:）　　ｌ'|/|l ﾘ　　　　　　だが、もう終わる所だよ」
ヽ￣ﾆ‐､__.｣乢!L!lヱL｣__ 　　 　 　　 　 ー､　`'''´ 　 从「 /
　＼　｀ヽ＼　　　　　 /l |　　　　　　　/￣´　　 　　//
.　　,、　 l　 ﾞ､　　　　/ ' |､　　　　　　{　 　 　 　　/l/
　　 '}　　ｌ　　ﾞ,　 　 / 　 |:::＼　 　 　　}　　　 　,.ｲ/
　　　ｌ　　l　　 l　 ,.ｲ　　 l:::::::::＼__　 　`'-‐::"// |′
　　　l　　 !　　 Ｋ　ヽ,、　＼「`''''''''"´:::::::;;:" //
.　 　 l　　 ｌ　　 ﾄ､＼(　_....　ヽ　　.:.::::::::;;″ /' 　　　 　　＿
＼ 　 |　　ｌ|　　八､ヽi´　　 　| .:.:::::::::::::i'　.:/'"´￣￣￣ ,.へ＼



――――――――――――――――――――――
　　善人の仮面を脱ぎ捨てたライトも居て―――
――――――――――――――――――――――



　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　 　 　　 　 　|:: ﾊ　　`　　　　　　　　　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　 　 　 　 　　　|/l:ハ　　 ､　＿＿　　　　　　　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　　　　　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　 　 　 |ハ　　　　　　　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!　　　　　「やめるんです、ライト！
　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|　　　　　　　　 気でも狂ったんですか！」
　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　　　　　　　　/ /　|､:! ヽ、
,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　　　　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!　　　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､

二２４８．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「僕は元から正気さ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ………ずっとお前のツラにはむかついてたんだ。
　　　　　　　　　　　　　　　　,...:::‐‐‐‐‐::..　　　　　　　最後ぐらい、絶望に歪んだ表情を見せてくれよ？
　　　　　　　　　　　　　　／::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾍ　　　　―――インサイド・コロード」
　　　　 　 　 　 　 　 〃:::::::::::::::::::/:::::::::7::::::::::::ﾍ
　 　 　 　 　 　 　 　 7:::::::::::/i:::::/:::/:::/i:::::::::::::::::',
　 　 　 　 　 　 　 　 i:::::::::::/::|::/|::/|:≠:i:::::::::i:::::::|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　y-_　　 __
　　　　 　 　 　 　 　 ',:::::::i' ｨｭ/ i//´¨｀ i:::/::i',:::::i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/７ i .i .|　 7 i
　　　　　　　　　　　　i:::::::i 　 ､ , 　　　 〃i:/ .i::::i　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 / .j 7 i　i　 .i .|
　　　　　　　　　　　　ヾ:::ﾍ　　＿ _,　　　　 ﾉ:'::::i　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　i/　7 .i　 ﾉ ﾉ
　　　　　　　　　　　　　ﾘヽ:',　　　　　　 ／::i/::i:|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /,,　,　　　i‐'´〃
　　　　　　　　　　　　　　　ヾ:､　　　 イ::::::, --,ﾘ　 ＿＿　　　　　　　　　　　　　　r'i　　　　　　_,y'
　　　　　　　　　　　　　　　　　 丁　, -'／　 ／￣　 /￣｀'-､　　　　　　　　 　 ／i',　　　 ,-'"
　　　　　　　　　　　　　　　　／-,　　 /　 _ノ 　 　 ./　 　 　 ヽ　　　　　　　 ／　 ﾍﾍ---'≠
　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::オ, ≠／　/　 　 ./　　　　-=､ﾍ_　 　 　 ／　　　　ヽ-'" ／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 //:::/　　7　 ＞,.i　 　 ./　　　　 ／ 　　￣７√　　　　　　　 ／
　　　　 　 　 　 　 　 　 〃 j::i　　 7　　 .7 .',　　 ',　　　,　i 　 i:　 　:i /　　　　　　　 ／
　　　　　　　 　 　 　 ／.7/:::i　　 i　 　./ i　.',　　 ',　　i::　;:　 i:　　　 ',　　　　　　／
　　　　　　　　　　　 ﾌ .7/:::::|　　i　　 /　i 　 ',　　 ',　 i:::ﾍ　　i::.....　　:.　　　　／
　　　　　　　　　　 ／ .7:::::::::i　　i　　7　 i　　　､ 　 ',　::::::::::::::...:::::::::,-､::::::...／
　　　　　　　　　　i　 .7i::::::::::i　　i　 .7　 .ﾍ,　　　',　　=-　y‐‐-､＿, , -‐'"



――――――――――――――――――――――――――――――――
　　ただ自分を苦しませる為だけに、
　　魔界の蟲を対象の体内に召喚して内側から食い破らせる邪悪な禁呪を
　　母に使った事は、覚えている。
――――――――――――――――――――――――――――――――

二２４９．



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,,,,;;;;;;'''''''　　　　　　　;'　　　　　　　　　,,,,;;; ／_:. .. :.:.ヾ_, -''´　　　　　　　　　,,,,;;;''''　　'';;,,　　　''';;;;;;;,,,,,,,;;;'''''
　　　　　　　　　　　 '　　　　　　 ,,,;;;''''''　,:':.:.:. ｀ヽ:.／　　 ﾟ　　 　 　 　 　 '';;'　　＿_　_＿_　　　.＿
　　　　　''';;;,,,,,　　　　　　　　,,;;;;'''　　　/_:.:.: .:.:.:.:, '　　　　　　　　　＿　--‐‐￣i　　| |　　| . 　 !　 |
　　　　　　　　''';;, ,,,,,,,,,,;;;;;;;''''''''　　 　 /:.:.｀丶､:, '　　　 　 　 　 　 |　　　　,.　　 ﾊ＿| Ｌ.-┘＿,,|　└ヵ . 　 ＿
'';;;;;;;'''';;;;;,,,,,,,,;;;;;;''''''''''''　　　　　　　　/:.:.:.:.:. .:.:/　　　　　　　　　　 レ-‐''"/ 　 <　　　　i-‐¨　,.　　┌┘┌┘└‐┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!-=＝=､i　　　　　　　　　　　　　　 /　∧　 ゝ. 　 └'二ﾌ /l.　 | 　　 ﾌﾉ|. |￣
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　　　　　　　　　　　　_,,,........._　　 ヽ､r'Y´:,､-==ﾆ!'´/´￣｀ﾞ'''7''ー-- ､,,,,ﾆ''ｰ､'　　｀ﾞ ヽ:.:':.:.:.:.!
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　　　　　　　　　''´｀ヽ:.:.:_,,'_:.,ｨ.:.ﾉ/::/ /:/､:.:.:,r=＝ヽ- ....__:!__:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.:.:.｀ﾞi､-'"
　　　　　　　　　::::}　ﾉ'´　　//､'/::/:/:/　 ヽ:.:.:.:.:.:. :.:＼　　　｀ﾞ'''ｰｧ-'-,､,,,＿:.:./:.:.:.:.:.:.:!:)
　　　　　　　　　='‐'´　_,..-':::'"´{:/://'､　　 ヽ:.:.:.:.:.,.---ヽ 　 ''"´,. ‐'"　 ､　 ｀ﾞ''ｰr--'-'

二２５０．



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,.．-= '"￣: ＼＼: : : : : :ヽヽ: : : : : :＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,∠二.＞､ : : : : : : : : : ＼ヽ: : : : : | |,．　'"
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,．'": : : : : : ＼＼: : : : : : : : : :| !: : :,． '`′
　　　　　　　　　　　　　　,∠二`く : : : : : : : : : : : ＼＼: : : : : : : :| !／
　　　　　　　　　　　 ,．'": : : : : ＼＼ : : : : : : : : : : : ＼ヽ : : : : : |ﾉ
　　　　　　　　　,．'" : : : : : : : : : : ＼＼ : : : : : : : : : : : |｜: :／
　　　　　　_,．'": : : : : : : : : : : : : : : : :＼＼ : : : : : : : : ｜|: /
　　_ｚ二二二二二二二二二二二、ヽ: :＼＼: : : : : : :｜ﾚ′
＜＜: : : : /　　 ｜　　个|　 |　 | ＿＼＼ : ＼＼ : : : : /ﾉ
　 ＼＼: / 　 ／ !　　 /n|　 ﾄ､千∨` //: : : / ﾊﾍ : : /　　　　　　「ギ………？」
　　　＼｜　/ 　 |.　 Y::::;!、 | ::::::::::､ く二二/ /｜|: :/
　 　　　｜/　 　 | 　｜::::::::::::::::::::::::／　　　 Y二二二)
　　　　　ﾚ| 　 　 |　　| ｀ 　 　:::::::::::i　　r‐､ ｲ |: : : : : ＼
　 　 　 　 | 　 　 ヽ.　|ヽ`ｰ　　　　　人＿`フ´L二二二二)
　 　 　 　 |　|　 　 |ヽ|　ﾄ--―＜／ /｜ ﾊ　|　|＼　　　＼
　 　 　 　 |　| 　　 | 　　|/ 　 　 ､とう　ﾚ′V＼|　 ｀　､　　 ＼
　 　 　 　 |　ﾄ､　　ﾄ .　 |!　　　　 ヽ　, ―-‐　　　　　　 i 　 　 `　､＿＿＿＿_
　　　　　　V　 ＼ ヽ ヽハ　　|　　　 　 　 　 　 /　　　　|＿＿＿＿＿＿＿／
　　　　　 　 　 　 ＼|　　 ﾍ　ﾉ 　 　 　 　 　 　 |　　　　 |)＼＿_,.ｨ７￣￣￣￣L
　　　　　　　　　　　 　 　 ／　 　 　 ﾉ　　　　　',　 　 ／ : : : : : //￣￣￣　　　|
　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　　　/ 　 　 　 　 ヽ　/＿: : : : : //＜￣￣￣￣￣|



――――――――――――――――――――――――――――――
　　そこからの記憶は、余りの凄惨さ故か途切れ途切れになっていた。
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　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ
.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!
　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼　　　　　　　　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ　　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　　　!::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　 　 　 　l:!:::l:::l !　　,r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i　　　　　　　∠　　　母さん！しっかり―――　　　＞
　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i 　 　　l:::::::::::::ハ:!　　　　　　　／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　　 ｨ::/i:::::ﾊi　 !　　　　　　 ￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_　　　　　　　　 /／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　　　 ／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i

二２５１．



ー .._,;ゝ..,,、　｀'-､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.ｌ- i､、ﾞゝ､,､ヽ、　　 .i〉;;;;;;;;;;;;;;;;;;/゛　　'" 　.,..-/!彡'".りシ',ﾞ_　　　　　　_..-
　　　 ﾞ'''-､｀'-､　 ｀'-_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ｀'ﾐ〟　｀'''.ｌｼ､　 .ｌ.;;;;;,i∴;;.″　,-　, ;;ｿ｣彡"　 .,ﾉ".｀--│　　_..-'";;;;;;;
　　　　　　 ｀'''''≒　 .｀'-､;;;;;;;i..､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ　ﾞ〈ヽ、　　.ﾞ'､"x. l;;;;;|. ..!./ 　/ .,rｼ",il'"　　　　亠　　　 ._iir㍉;;;;;;;;;;;;;;;
...,,、　　　　　　　　　　　 ｀''-_ヽ｀'-､;;;;;;;;;.;_;;;;;ヽ,　 ﾞ'ﾍ　　　. ｌ;;;丶;;;;｝ ｀　　.,;;ｿ゛　　　　 　 　 　 　 　 ´　 /ﾞ;;;;;;;; ／
ー 二ﾞﾞヽ ,,、　　　　　　　　　｀'!‐　｀'-,;;;{. ｀'-､;ﾞ!、　　　 .l-'､.ｌ.;;;;;;;;;.!　　.,il″　　　　 　 　 　 　 　 _,,　-'";;;;;;;;;;;｀￢
..,,..........ﾌ;;;;;;;;｀''‐ ,,、　　　　 　 　 　 　 ,ﾞli/､　 ｀'､.ｌ,　　　 .｀'/'./ ;;;;;lﾞﾞ　./　　 　 　 　 　 　 　 , r二-''''"￣￣´ﾞ''y;;;;;
^ﾞﾞﾞﾞﾞﾞ'''''".'''''.'''ヽ-..;,ﾞﾆ＿　　　　　　　　｀ﾞﾞ''''＞x, ﾞ ll、　　　 .!､/.ｌ;;;,!　i'　　　　 　 　 　 　 　 ''"　 　 　 　 　 ｀-￢'''
　　　　　　　　　　　　 ｀'''｀-ヽ,,　　　　　　　|､｀''ﾆi几　　　　 ″|;;'!
..,......xi，　　　　　　　　　　　 ｀'''ﾐ;;ｘ、　　　　´　　 .｀ l､　　　　　l､;.ｌz'ｱ　　　.,i;;|lrl!!!!¨'″　　 ,,,
　￣　 ..,,u．.-..、　　　　　　　　　 ｀''ｽｯ、　 y ..、　　 !li　　　　 `l/ l/　　 ..il′　　　　　　 ,,iｌ'"´
:ﾆﾆ;;;;ｭiｘ..,,,,,_.　.｀'s､　　　　　　　　　　 ﾞ''く、 |;,_｝　　　.ゝ　　　 .″,l′.,，　　　　　　　　 .,.″ .＝　　.r!″　'.ｌy
　　　　　 . ｀''-ﾞ二;;;;｀ﾞ''''､　　 　 　 　 　 　 ﾞ" ″　　　　　　　　　 iﾘ.,〃　 　 　 　 　 , .｀ j,i′　　　　　　　　 l!
＿__,＿_＿_＿_＿_i;;;;;;;;;;;;"―　..,_　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 l;;ﾘ"　 i､　　　　.,ij"　_,/.ｌ_、　,,irｰ　　　　 .∧　._.
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.xｯ----｀-=- ..　　　　　　 　 　 　 　 i|'" -｀--ﾐヽ､..,,ノ;フ'"ﾞ'-ぃ〈￣.ｺ;;-､___,.. -";;;;;~ﾞｨ
.,ﾝ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,..一'''''''ｰ､,;;;;;;;;｀'ｰ- ..,,、　　　　　　　　 　 　 　 　 ゛　　　　　 ｀'.ｌﾐ,ﾞ゛　　　　　　＼;;ヽ ＼ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;./ 　　　　　　｀くv-￢'''"ﾞﾞ´　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!.i''~ｌｭi,,、　　　　 ヽ,,,,ﾞ' ＼ ;;;;;;;;;;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i‐′　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 !;ヽ　　 ｀'Ｌ　　　　 ﾞ".! !　`ぃix,;;;;;;;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　　　　　　 : _,i〟　　　　　　 　　　　　　　　 _..〟　 　 　 　 　 　 　 |;;;;;;;ﾞ''-､、.ﾘi　　　　!＞　　　ﾞ'ｉ ｌヽ.;;
;;;;;;;;;;;;./　　　　　 ,..r/「″ 　 　 　 　 ,,rj″　　　　 Y''フ'´　　.▽　　　　　　　,i";;;;;;;;;;;;;;.ｌ'!ﾐiv ､　　　,.ｌ|x,　　　 ﾍ.ｌ.ヽ
;;;;;.／　　　　 .,r彡'" 　 　 　 　 　 '!レ'"　　　　　 .//　　 .,r､　　 　 　 　 　 f'"｀''./ ;;;;;;;;＼.ﾞ'-､''-..,,,｝;;;;;ヽ　　　 ｌ"l,.
／　　　　　　 ´　　　　　　　　　　　 、　　　　　,ノ;/　　　 ¨゛　　　　　.,,〟　　　　.ヽ;;;;;;;;.ｌﾞ'!)i、｀＼;;;/'''''-＼,　　∨
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,,、　　　,,〃　　　.,..;;ﾆi /　　　 　 　 　 　 　 ´　　　　　　 ヽ;;;;;;;ﾞ;;､ `　　 ﾞ'ﾐ､　　 ﾞﾞ'ﾆ;;､
　　　　　　　　　　　　　,i彡　　　/│　　　 ″.,〃　　 .,i;;　　　 .,-、　　　.i;;;;;i　　　　　.ｌ.;;;;;|..ﾞ'|l、　　　ﾞ'li、　　　 ﾞ'ﾐ
　　　　 　 　 　 　 　 ,iｸ゛　　　　l";!I　., ―--ｸﾞ　　.n /゛ 　　　l/　　　　 .ﾞ‐'"　　　　　.ｌ;;;;;.ｌ　.ﾞ'ｆ、　　　ﾞ.ｌx　　　　ﾞ'
　　　　　.,l　　　　.,ﾝｸﾞ　 ,．　　/ ;;;;ﾞ‐',,､;;;;.;i′　　 :!┤　.lL　 .`　　　　　　　　 　　　 　 ｌ;;;;;.ｌ　　ﾞ|''､　　 . ｌヽ



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　　残っている映像は赤と灰色を交互に繰り返し、
――――――――――――――――――――――

二２５２．



　　　　　　　 　 　 　 　 /:i　 /:/　/:!
　　　　　　　　　　　　 /:/　/::/ ./::/
　　　　　　　 -=ﾆ二´:::::二,:::r''7::/
　　　　　　　　 　 ＿/:/,,,...!:/..//
　　　　　　　 ‐=ﾆ.._::::r--―''7/　　　　　　　 　 ﾟ
　　　 　 　 　 　 　 !::|　　　_,. -､　　　　　　　 ｏ
　　　 　 　 　 　 　 |::!　　 ニ７:ﾉ＿
　　　　　　　　　 　 ﾞ´ 　 ﾞ''''''''''''''''"　　 　 __,,,.....,,,,＿
　　　　　　　　 , ------―--､ ,r'''''､、'"´:.:.:.ヽ:.:.:.:.:.:.',｀ﾞ''''ヾ´''＝
　　　　　　　　 ￣￣￣￣/::／{:{__ノﾉ ヽ:.:.:.:.:. |!:.:.:.:.:.:ﾉ:.:..:.:./:.:.:.:ﾉﾞヽ
　　　　　　　　　　　　 ／／／ ﾞー'":.:.:.:!l:.:_,,.ノ-―‐'-r ､ノ__r-'､　ﾉ
　　　　　　　　　 　 ／／／_:. .. :.:.ヾ_, -''´
　　　　　　　　　 ／'"　,:':.:.:. ｀ヽ:.／　　 ﾟ



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ人_从人__从_从人__从人_人_从人__从
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　う、うわああああっ！！？　　　　　　　＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　か、母さん！かあさぁぁぁん！！！！ ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y⌒YW⌒Y⌒WW⌒⌒YW⌒Y⌒WY⌒Y



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　　ただ、自分が幾度となく悲鳴を上げた事ぐらいしか覚えていない。
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563 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:34:33 ID:ezdAuCpQ 美少女に何てことを・・・私は人妻でも一向に構わんのに！ 吐き気を催す邪悪とは！

二２５３．



　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　　　　　　,:'.　　/／／ // // iｌ　　 ｌ::::ｌ::::::::
　 　 　 　 　　　　　 　　　　　　　　　　　,:'　　 ／／　/l|| ///i l 　 ,'::::i.i:::::::::
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,'　　 /　/　 ,ｿi |. i i ! l i　/:ｌlンｉ:::::::::
　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　,'　　　　　　; .l ｌ　ｌ !iｌl　!i　 i:/ ﾒ､ｌ::::::::
　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　 ,'　　 ,: 　 　/| ｉ ｌ　ｌ. iｌｌ.　i　 !　,i　l:::::::::
　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　　　,'　　 / 　 　/ l　　 ｌ. il|ｉ　ｌ　　∧ﾒ !::::::::
　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　 ,'　　 ,' 　 .　,'ｉ lﾊ ',　i. iｌｌ　　　 X ',､::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,'f　,' ,'　　i　i i! ! ｉ l　 i ｉl　i 　 i l.l! iヽ::::::::
　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　li'}　 ﾊ:　,'i i､! ', ' ヾi　 i i 　ｉ ｌ　l l ! i:::::::r^
　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　i!.i　ｿ il　ir !ﾐ、､ i　 !､ ', !　',l　 ｉ ', ',',::::i
　 　 　 　 　 　 　　　　　　　　　　l i　,' ﾊ i !! 廴ﾂ､ヾ　 ':､　i　i　 i !ヽゝ::::l
　 　 　 　 　　　 　 　　　　　　　　!.li!.l|!| リ　` ｪ､..ヾ ヾ､ ヽ:､ i ! ﾊ､!ｌ ヾ､::l　　　　　「ああ―――実に良い反応だ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ! !从 　 　 　"""ヽﾞ:､ヽﾞ: ､弌itｰマ､:ヽi
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　′ i　　 　 　　　　　 .::　ヽ　ｰ`=.公､`:i　　　　　 その声が聞きたかった。
､､＿　　　　 　 　 　 　　　 　　　　 _,r:::i　　　　　rｰ-‐　'''' ー　‐ --:: ､:ヽ::i　　　　　その顔が見たかった」
　　　`''''"'''ｰ- ､､、､､､､､､ -‐ー''''''' /:::'.　　　　　｀`¨':':‐:::::::-::::::::､_　　ヽ:;::l
　　　 　 　　　　　　　　 '" 　 　 　 ./"　ﾞ:,　 ﾞ､ 　 ヽ､,..:::::::::::::::／ ,　` ､　　`
　　　　　　　　　　　　　　　　__, 　 　　　',::､ 　 ﾞヽ ､:_:::::::::::r ;´ '　ヽ､　　` -､
　　　　　　　　 `;;=--‐‐''''"" 　 　 　 　　',:::､　 `'':::::::::::::;: ' 　 i　 　　ヽ､,
　　　　　　　　i´　　　　　　　　 　, 　 　　 ',::ヽ 　　 ::::;::i　 _ -t^ヽ､_　　　ﾞ`
　 　 　 　 　 　l　　　　　　　　　 i 　 　 　　ヽ::`:ー ':::::i　.ﾉ:i　ﾉ:::::::: 〉
　　　　　　　　 ' 　 　　　　　　　il　　　　　　,.ゞ＝ｰ'"ﾒ /::::ﾚ:::::::::::/
　 　 　　 　　　 i　 　 　 　 　 　il　　 _ ,ｨﾆ´ ﾆヽ 　　 ｰヽ:::::::::::::::/
　　　　　　　　　i 　 　 　 　 　 ill　,イ:::::iニニニｿ､ 　 　 ヽ::::::::::/
　 　 　 　 　　　 i　　　　　　　illl ´ 　 　lﾆニﾆ/　ヽ. 　　　',::::::::i
　 　 　 　 　 　　 i 　 　 　　　illl 　 　／ﾆヽﾝ 　 　 ヽ 　　/::::::::!
　　　　　　　　　　i.　　　　　 illll　 , ' ＼＼ i 　 　　　ヽ , ':::::::::::i

二２５４．
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　　そしてライトは悠々と姿を消した。
　　その場の全てを、茫然自失のエルに押しつけて。
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　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 _＿
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,:＜::::::::::＞､
　　　　　　　　　　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::＼
.　　　　　　　　　　　　　　 7:::::::::::､ー,:::::::, ---- ､
.　　　　　　　　　　　　　　 |:::::::::::::ヽ、 ./:::::::::::::＼:＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 i::::::ヽﾊ` 　 i:::::::::::::::::::ﾍ::::ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　',:::ヽ:::､ , |ヽ:::::::::::::::::::::::',:::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ:::::::ﾘ￣',::::::::::::::::::::::::i::::::',
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　i:',:::::::::::::::::::i::i::::::::',　　　　　　　　　「―――後始末は任せたよ。
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i∧::::::::::::::::|:::',::::::::',　　　　　　　　　では、さようなら」
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　7:::i::::::::::::::::!::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 i:::::!::::::::::::::::|::::::::::::::::i:::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i:::::i:::::::::::::::::|::::::::::::::::|:::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 7:::/::::::::::::::::/:::::::::::::::::|:::;;;;',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 7:::7:::::::::::::::/::::::::::::::::::::|:::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::/::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::i::::::::::i
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ﾌ:/::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::i:::::::::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /:/::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::|
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ∠/::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::!:::::::::j
.　　　　　　　　　　　 　 　 　 /::/::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　 7::::',;;;::::::::::7::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　 ..7:::／ ｀¨´i~::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i::::::::::i
　　　　　　　 　 　 　 　 ／i::i'　 　 　 .',:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i---i"
.　　　　　　　　 　 　 ／::::::::i /', ,　 　 .',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　',
　　　　　　　　　　／::::::::::::::iﾉ | .i~i i iﾍ.i::::::::::::::::::::::::::::::/ r'- ､　',
　　　　　　　　 ／:::::::::::::::::::::::::| .i::| i |::i.i:::::::::::::::::::::::::::::iﾉ 　 ', -, i
　　　　　　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::',_i::', /:::~:::::::::::::::::::::::::::|　 　 .ﾍ ﾉ7
.　　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／:::::::::::::::::::::::::::::::::::|
　 　 　 　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::／.　 ',:::::::::::::::::::::::::::::::::!
　　　　　/::::::::::::::::::::::::::::::::::／　　 　 ',:::::::::::::::::::::::::::::::|
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　　〈::::::::::::::::::::::::::::<　　　　　　　　　 　 　 ＼::::::::::::::::::::::::::::＼
　　 ﾍ::::::::::::::::::::::::::::',　　　　　　　　　　　　　 ＼::::::::::::::::::::::::::::＼

二２５５．
――――――――――――――――――――――――――――――――
　　学院の魔導師が妖術師に堕ち、あろう事か導師達を皆殺しにした後、
　　資料類を全て奪って逃げた大事件はもちろん国主の耳にも入り―――
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　 　,
　　　　　　 　 　　,r/　,;-ー_
　　　　　　　　　/:::レ:::::三:::::｀ミ::=-､
　　　　　　　　 ,i::::::::::::::::､:::::::､::::ヾ::ヽﾐｰ-､
　 　 　 　 　,r'::::::::::::::::::ヽ::::::::＼.:::::::::::::＼
　　　　　　//:::::/:::;:::i:::::ヽ:::::::::::::＼::::::::::::::ヽ　　　　　　　　　　　ヽ人_从人__从_从人__从人_人_从
.　 　 　 　/::/:::::::/_ヽ:!:::::ヽ:::i`_､:::::ヽ ::ヽ:::::::!　　　　　　　　　　＜　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　 　 　　 i::/::::::::/'oヾ､:::|ヽ::Y o＼:::::i!::::ヽ::::＼　　　　　　　　＜　　　待て！ライト、待てぇぇぇ！ 　 ＞
　　　　　l:::i:::::::::lゝ- '　ヾ、ﾞ ! ｰ '､ヽ:::::!:::::ヽ::i ヽ　　　　　　　＜　　　 父さんと母さんを返せ！ 　 　 ＞
　　　　　!::!:::i:::::!　　　` ｀ ヽ　　　　 i:::::!::::::::::::i　　　　　　　　　＜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　 　 　 　l:!:::l:::l !　　,r_ー‐-､ 　 　　l::::!::::::::::;::i　　　　　　　　　　 Y⌒YW⌒Y⌒WW⌒⌒YW⌒Y⌒
　　　　　　!|:.!::', 　　i'/￣￣ i 　 　　l:::::::::::::ハ:!
　　　　.　　 l::::::ヽ.　 ｉ　　　　i　　　 ｨ::/i:::::ﾊi　 !
　　　 　　　　i::li:::＼ `ｰ--‐' 　　／ ﾘ　|:::ﾘfﾊ､_
　　 　 　 　 _..!:ﾊ::::l;ヽ､　　　 ／　　"　l::/i　ヽ. ｀`''ｰ- ､._
　　　,r‐'''"´　 !　ﾘ!i ヽ `＝'"　　 ,　 　ﾘ /　　ﾝ 　　　 　 /ヽ、
　　 /ヽ　　　　　　 ヽ ヽ ヽ　　　/　　 ／　　　　　　　　/ 　 ヽ
　　l 　 ＼　　　　　　＼　 '　　　　　／／　 　 　 　 　 /　　　 i

二２５６．
―――――――――――――――――――――――――
　　セト、マナの両名は妖術師を育てた罪として財産没収、
　　学院からは除名扱いとなる。
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠　　返せええええええっ！！！　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|

　 __r───‐､　「￣|＿＿＿＿＿＿＿＿_＿_｢￣|　, ───ｰi__
　|　|　 -、, -､ |ヽ. n |　　　　　　　　　　　　　　| n ,..:'|　 -、, -､ |　|
　|　| |王| |王| |: :| u |　　　　　　　　　　　　　　| u |: :| |王| |王| |　|
　|　| |土| |土| |: :| n |　三三三三三三三三}　| n |: :| |土| |土| |　|
　|　| |　 | |　 | |: :| u┌ｰ─ｰ─ｰ─ｰ─ｰ─ｰ┐u |: :| |　 | |　 | |　|
　|　| |王| |王| |: :| n｜　, - 、　,. - ､　 , - ､　｜n |: :| |王| |王| |　|
　|　| |土| |土| |: :| u｜ ﾑ二ﾊ. ﾑ二ﾊ. ﾑ二ﾊ. ｜u |: :| |土| |土| |　|
　|　| |　 | |　 | |: :| n｜ |土土| |土土| |土土| ｜n |: :| |　 | |　 | |　|
　|　| |王| |王| |: :| u｜ |　 　 | |　 　 | |　 　 | ｜u |: :| |王| |王| |　|
　|　| |土| |土| |: :| n｜ |王王| |王王| |王王| ｜n |: :| |土| |土| |　|
　|　| r=r=r=rﾐ.|: :| u｜ |土土| |土土| |土土| ｜u | : >=r=r=r=}.|　|
　|　に二二二ﾘ: に二に二二二二) ､　　　 )ヽ　　　　　　（二二ﾘ　|
　|　| |冂| |冂| |: :|＞| |＼_rｰ!＿＿＿) （　（　　）ヽ　；　・　 ）　;　'　|
　|　| |ｌ ｣| |ｌ ｣| |: :(　　　　　　 )　` 　 （ (　）　） （ （　　　）ヽ ( ､　　）ヽ　　；
爻ｰ| ;　:　,　)　　　)　　)ヽ（ ( :（ 　　 ）　　　ヽ､）　）　（　（　） ）; （　（　（､　:
ﾐ爻；　・　）ヽ　 (丶　　)ヽ　 （　（ ） 　　（　;;　　;､:　　;　;）__）　）　（____）　）　））　；
爻ﾐ)`､　（　 （　 .）　）ノ　 |　:　)　＿,,,-､__　　;;　.､　　　　　（／（＿）ヽ　）ヽ ;;
ﾒ (　（__ノ　　`-'　　　　　 `-'　:~～--～~--、_;; ::　　､.､.　 ） (　（　　）ヽ
ヽ_,)　　　　　＿,,;::- ‐' ～~ ~ 　__,_　　　　　　　　`‐-､__　　（_（_）　） （　（
　　　;; ; ;,／~　　　　　 _,,...-　　　　　　　　　　　　　　　 ~～、_　; ;　ヽ_）　）


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　─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘　　 ─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘　 ─┘



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　　残されたエルは国外追放とされ、着の身着のままで町を追い出される事となった。
　　あまり認めたくはないが、やはりハーフ・エルフである事も悪い方向に働いたのだろうと思う。
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━━━━━━━━━━━……

二２５７．
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　　それからは復讐鬼の旅路だった。
　　ただ毎日をライトへの憎しみに満たし、
　　見つけたらどのように殺すかだけを考える日々が何十年も続いた。

　　もちろん、ハーフ・エルフ故の要らぬ迫害を受けた事も多く、
　　なるべく目立たないように、なるべく人と関わらないようにするのが彼のやり方になった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ハ :::: :::: :::::::::::.::::::::::::::::ヽ::::::::､::::::::::::ヽ ::::::..ヽ::::::`､ :. ::::::ヽ :::::.:.::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|／| ::: :::リ､:::rＮヽ＼::::ヽ､::::ヽ､::::::丶＼　::.＼:::::ヽ .:. :::::｀ヽ‐- ､_:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　 ﾊ ::.:.::!　V　/　 ＼ヽ::i ヽ:::| ｀ヽ::､::｀ヽ丶､:::丶､::､ :::::...､::::＼　｀`ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 { ヽ.: ::l 　　/　　　　 ヾ　ヽ:i　　i| ヽ::::ヽ＼｀`'' ‐---::::ヽ:::＼rヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ';:: :! 　〈　　__　　　　　ヽ　　|　 ',::::::: :＼:.::､｀ヽ:＼::::::ト ､::丶、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　|:: ﾊ　　`　　　　　　　　　 　 　 }:::::::. ::::ヽ::ヽ::.:＼:ヽ､ヽ　｀` ｰ-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　　|/l:ハ　　 ､　＿＿　　　　　　　ﾊ:::::.::| :i:.:ヽ.:i::: :､:ヽ}　｀`
　　　「ライト＝ヤガミ―――」　　　　　　　　　 　 ノ ﾉ'　l心　　`ー‐一`　　　　　 ,. '|:::::::| :| :.::.N :;､!`､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |ハ　　　　　　　　　,　'´　i!::::::| ::|　:.ハ | ＼ヽ!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ヽ　　　　　 ,.　'´　　 ,/!/ |: :::､　!　 i|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__　 __,.ノ/ 　 ヽ __,,.　'´　　　　　 ノ　l,ｲ:: ﾊ:{ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,..､,.ィ"r''"´　 .:::　　　　r　　　　　　　　　/ /　|､:! ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,.. -‐''"´　{　　 ヽ　　 r　　 i　ヽ＼　　　　　　 ／　　　: ヾ丶､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　 |　　ヽ ＼　　　　ｌ　　＼!　　　　　/　　　　　　 ヽ　｀ヽｰ-､_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 ヽ　 ＼　　 ヽ　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 ﾉ /　 ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､　 |　|　　　　　　　､ 　 ＼　　　　　　　　　　ノ　　　　　　　　／ / r　　　｀`丶､



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　何年か、十何年かに一度は足跡を見つける事が出来たが、
　　全て事後で犠牲者達の悲しみと、無慈悲なやり口に憎しみを募らせるばかり。
　　奴の本性に気づけず、野に放ってしまった責任や罪悪感に胸が痛むばかり。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

570 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:39:21 ID:4P4L4veY エルの両親に罪はあるのか？

二２５８．
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　　その罪悪感からか、犠牲者の一人で保護者を失ったコナタを引き取ったのが十年前。
　　実際には一人往く復讐の旅路に心が疲れ果て、同じ傷を背負った仲間が欲しかっただけかも知れない。

　　しかし、心を壊して人らしい反応を殆ど見せない彼女の存在は少しずつではあるが、
　　エルの中の父性みたいなものを目覚めさせたのも確かで―――
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ィ
　　　 　 　 　 　　 　　 　 　　　／　　,／/ _､-
　　　　　　 　 　　　　　　　 , '/ ／‐'::::,､ﾝ'／
　　　　　　　　　　　　　 , ./:::ﾚ:::::::::::::´::::::ー--...､.._
　　　 　 　 　 　　　　　_iV::::::::::::::::_::_::_::::::::::::::::::::::::::::::::::=-
　　　　　　　　　　　r::'::::::::::::｀ヽ三ニー-::::ニ:::::::::-=ﾆ´
　　　　　　　　　 ／::／三:::＼＼ヽ:::::::::ミ､::::::::::::::_:::＝≧ー
　　　　　　　　　/:::::/:::::ンヘ＼＼ ヽ:::::::::::｀ヽ:::::::::::::ﾆ三三ｪ-
　　　　　　　　 //i:/:／/:::,'i::::ヽ＼＼',､::::ヽ:::::::::::::::::::::＜'´
　　　 　 　　　 !' /::;:':::/:::,'::i　i:::ヽ:::::::ヽ:ミﾐ:::::ヽ､:::::::::::k-ﾆヽ､
　　　　　　　　　 /::i::::l:i:::i､::',. ',::::::ヽ::::::::ヽ::::::::::::`::::::::::ミヽ､
　　　　　　　　　/:::ii:::l::i:::L::::':,::i:::::::＼､_:::ヽ::::::::::､::::::::::ヾ､
　　　　　　　　 /::/i:ｉ::l::i::i f:::j､:;::::',ヾ:::,rt:::j､＼:::::::::::::::::i､＼　　　　　「今日からあなたの
　 　 　　_,rｰｧ'/'´ i:ﾊ:l::lﾘ`＝‐ヾ'､::､ﾞヾ､ﾆノヽ::::::::::::::ヾヽ､.　　　　　 保護者代わりになりましたエルです。
　　　,r''"　　　　 i.ﾘ/ﾘ::',ﾞ　　　　　ﾞヽ　 　　 .,!::;:::::iヾ::',ヽ､ ｀`ｰ-
　　/　',　 -､ 　　 i//::l:ｌﾞ､ 　 　 ､ ..　　　　..:':l::i!ヾl:::ｌ lヽｉ ',　｀ヽ　　　よろしく」
　 ∧　 ', 　 i i　　 i i:　ﾘ　ヽ.　‐-- ､ 　 ／ /ﾘ　/ !/./　'　'　 ﾞヽ
　 ,' ヽ　 ',　i 〈　　 ,i i::.､　＼＼　　　..::'::: /　! 　 , ', ' .i
　 ､　ヽ　　ｉ 　 　　'ヽゞﾐヽ、ゞ: `ﾆ:´:::::''　_,. -／／　 i
.　 ヽ、ヽヽ　 i　　　 ',ヽ､`ヽﾐヽ､ 　 　,.:-'´,. '´／　　 ﾉ　　　　 /
.　　 iヽ ＼i　.i!ヽ　　　　 `　､`'-､､､､､- ',ン'' 　 　 　 　　　　/〃
　　　i　 ヽ.＼ !　　　　　　　　｀ ｰ-ー '´　　　　　　　　　　, ' //
.　　　i　　 ヽ､ヾ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　 , ' ／ '
　　　 ',、　　　ﾞﾞ'i＼ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　, ir'　ヽ=
　　　　iヽ　　　　i!　ヽ ヽ　　　　　　　　　　　　　　 ,　'／i! 　　/

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　 　 　 i. . . . . . . : : : : : : : : : : : :./: : : ::!:: :.i !:::::::::ﾞ:.
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―――――――――――――――――――――――――――――
　　それ以降、ライトの足取りは全く掴めそうになかったし、
　　そもそも人間である奴はもう六十歳を越える老人になるはず。
―――――――――――――――――――――――――――――

二２５９．
―――――――――――――――――――――――――――
　　放っておいても老衰で死ぬだろうし、
　　あるいはすでに死んでいるのかも知れない。

　　ふとした切っ掛けで人間性を得つつあるコナタを見て、
　　先日までは別の生き方もあるのかも知れないなどと思った。
―――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼ー-- ､,,_ー=ミ‐-..､
　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿ﾐ::::::::::::::::｀¨ミヽ､::::::ヽ.
　　　　　　　　　　＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 ヽ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､
　　　　 　 　 　 ー=ﾆ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j::ﾊ
　　　 　 　 --─=＝ﾆ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヾミ:::::::::::}
　　　　　　　 ,,ｨ彡:::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::彡ｲﾊ::く
　　　　　　／::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::l::::::::',
　　　　 ／---─ｧ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::／:::ﾘ:::::::}ﾊ
　 　 　 　 　 ／/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::イ:::ﾂ<彡'/:::;イ::::::::::l:::|
　　　　　　　　/::::ｨ::::::::::::::::::::::::::,ｨ/ 　¨''=ｲ _,ｲ:::ｲﾃ ::::::::::ハj
　　　　　　 _,,ｲ／/:::::::::::::::::::::ｲ/ |　　　　 　 ノ　|¨ .::::::ｲ/
　　 　 　 　 　 ∠ イ:::::::::ｨ::/ .|　　　 　 　 　 ､ _｣ ｲ:／.j' 　　　　「絶対に許さない。
　　　　　　　　　　/ｲ:／ .|ｲ　 　＼　　　‐--- ／|:/　　　　　　　 許せる訳がない―――」
　　　 　 　 　 　 __ ｲ　　 j　　　　　＼　　ﾞﾞﾞ／ 　.ｿ
　　　　　　　　 /＼　　　　　　　 　 ／ヽ- '
　　　　　　　／　　 ヽ､　　　　　_ ｲ
　　　　　 ／　　　　　　ヽ､　　Y
　　　　 /　　　　　 　 　 　 ー┴､
.　　 　/　　　　　　　　　　　　 　 |
　　　/　 　 　 　 　 　 ＼　　　　 |､
　 　 i　　　／　　　 　 　 ＼ 　 　 ﾊ
　 　 |　　/　　　　　　　　　　ヽ　　 |
　 　 |　 ,'　　　　　　　　　　 　 }　　|



――――――――――――――――――――
　　だが。
　　こうして奴の気配を感じ取ってしまった今、
　　その考えは完全に消え去っている。
――――――――――――――――――――

二２６０．
―――――――――――――――――――――――――――
　　たとえ奴が寿命で死んでいたとしても、
　　確実に死んでいる事を確認するまで心は決して安まらない。
　　その墓を暴いて死体を切り刻んでやらねば気が済まない。
―――――――――――――――――――――――――――



＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―￣￣―‐――　＿＿＿￣￣―――　　＿＿＿――￣￣＿＿＿￣―＝＝
――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――　　　　＝＝　￣――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―　　　――――　　　　＝＝　￣￣￣ 　――＿――￣＿＿＿￣―
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::厶=-‐-.､＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::/.:::::::::::::::::|　ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::/.:::::::::::::::::::jこ jﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::/.:::::::::::::::::ィﾖ 　{{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::..＜´　|主 　}ﾄ､　　　　　　　　　　（地の果てまでも追いかけて、
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼.:.:.:.:.:::::::::::::::::／ 　 ＼'｢ ｀ヽﾉﾘ.::',　　　　　　　　　 必ず報いを受けさせてやる！）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ` ー一'´￣　　　　　 ヽｰ彡'.::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ.:.::::::::::::丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨.:::::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨/.:::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V.::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〈.:::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 Y.::::::::::::::入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ー=≦∨〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }主}｀ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｊ主ｊ_ ,ﾉ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /ー‐ヘ.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ー‐彡'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7　　　　　　/　￣￣￣ / .__　　　　　　　　/　￣￣￣ / .__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　匚　 ./i／i／　　　　　　/＿/￣/　 /／/ 7　　　　　　 /＿/￣/　 /／/ 7
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―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　―――完全に手が届かないならば忘れる事が出来たかも知れない憎しみは
　　なまじっか足取りが辿れたばかりに、
　　長い間彼の心を蝕み続ける事になったのだろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２６１．
―――――――――――――――――――――――――
　　そしてエルは、赤い外套の背中を見つけ出していた。
―――――――――――――――――――――――――



┏─────────┓

　　　居た！
　　　赤い外套！！！

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　　　　　　　　 ＼　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　＼　　 ＼　　丶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　　　　　　　 ／
　　　　　 　　　　 　 ＼　　 ＼　　丶　　　　　　　　 i　　　|　　　　　　　./　　　 / 　 　 　 　 　 ／
　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　 ＼　　丶　　　　　　　i　　　|　　　　　　 /　　　 /　　 　 　 　 ／ 　 　 　 ／
　　　　　　　　 ヽ　　　 　 ＼　　 ＼　　丶　　　　 　 i.　　 |　　　　　 ./　　 　/　 　 　 　 ／ 　 　 　 ／
　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　 ＼　　ヽ　　　　　i. 　 .|　　　　　/ 　 　 /　　　　　／　　　　　／
　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　 ＼　　 ＼　　ヽ　　　　i ＿＿　　　　 /　　　/　　　　 ／　　　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　＼　　　　　　　　／´;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　　　　　　　　　　　 　 　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 　 　 　 　 　 　 ---‐‐‐
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;〉　　　「～♪」　 　 -----‐‐‐‐‐
　　　　ー――――――――　　　　　　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
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　　　　　　　　　　　　 ---‐‐‐‐‐　 　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　　　‐‐‐‐---
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;∧;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾊ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼
　　　　　　　　　　　　　　　／　 ／　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;/　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|　 ＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼
　　　　　　　　　　　　　 ／　 ／　　　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;/ 　 |;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|　　　＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼
　　　　　　　　　　　　／　 ／ 　／　　/;;;;;;;;;;;;;;;;;/　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ　　　　〈Ｘ,,;;""ヽ　 ＼
　　　　　　　　　　　　　 ／　 ／　　　/;;;;rｰ'ゝ;;;/　/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　　　ﾍ,, 〈_,;;ノ　　＼
　　　　　　　　　　　　／　 ／　　 　 ￣ﾉヾ;;;;,> ／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　　　　　＼　　　＼
　　　　　　　　　　 ／　 ／　　　 　 /　　　　 /　　　　　 　 |　　　　i,　　　　　　　丶　　　　　＼　　　＼
　　　　　　　　　　 　 ／　　　　 　 /　　　　 /　　　　　　　 |　　　　 i,　　　　　　　　丶　　　　　＼　　　＼
　　　　　　　　　　 ／　　 　 　 　 /　　　　 /　　　　　　　　|　　　　　i,　　　　　　　　　丶　　　　　＼



――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　すでに、その手に錫杖は握られていない。
　　目的を果たして解放されたのか、ゆっくりと歩く相手の後方から駆け寄ると、
――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２６２．
―――――――――――――――――――――――――――――――――
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｽﾈｱ
　　石畳の街路の脇、街路樹の根元に居るノームに転倒の命令を飛ばした。
―――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,' i l::::::入:::::::､:::::::ヽ::::::::ヾ ::',:::ミﾆ-､_::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 /,i! l:::ン　ヽﾐ::::iヽﾐ::::､:::::::::ヽ::',:',::::`ｰ-`:.､::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 iｿl|.／ 　 　 　`ﾞ'､｀ ヾ::::ヽ:::::::'::',!',::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 　l!. l!ヽ､_　ー　　　 ヽ　＼':,ヾ:::::::'!i'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　!　'i!; l|!ﾞi　　　　　　　　　ﾞ'ｬ,＼､:::::::::::::i::::::ｬ::ヾ､:::::: ／／
　　　　　　　　　　　　<土の精霊よ！　　　　　　　　　　　li､ l!:i　　　　　　　　　　 ヽ `ﾞYi:::::::ili:::::i',ヾi;,'／／
　　　　　　　　　　　　 奴の足を絡み取れ！>　 　 　 　　ﾞ!ヽ::`ｬ-⊆＝ｯ-　　　　　　　i:!;:::::i! ',:::l ' ,Y ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ､,ﾍ ｧ'｀ 　 　　　　　　　 l!';::::i　 ｿ! /!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ、　　　　　　　　　 ﾝ'i:ﾘ　 ﾘ'/!i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　　　_,.-'"'　ｿ 　 '/ｉｌ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　 　　 ｌ　　　　　 _,_'"::::　　　ﾞ ,r ' ￣　　` ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　ヽ､＿_､ｼ'ﾞ'"ﾏTﾐヽ　／　　　　　　　　 `ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 　　　　　　　　　　　ヽ ヽｿ

二２６３．
―――――――――――――――――――――――――――――――
　　ぼんやりと空を眺めていた土の精霊は突然の命令に飛び跳ねると、
　　むき出しの地面から土の触手を延ばし―――
―――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　i⌒ｊ､ィ⌒ｊ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　,. ‐-ゝ,J'ｰ'｀ｌi'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　」､_）´ ||,r´￣lj⌒j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　r'´､_ノヾ ｌｊ 　 　人　,)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 { ､jヽ､‐-u-─ｲ 　ｌnj
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　ｌｊ 　　{,nｌ　　rJ 　 ~
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ',ﾆ ＿_7 lj　{ｊ ,l L＝=､丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（ （　( 　'ｰ'-‐'＾ｰｰ‐｀　)　） ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ､ヽﾆ二二＿二二ﾆ‐'　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,,,、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r‐ｰ',!
　　　　　　　　　　　　.ｔ'''''|　 ＿__. | .| 冂　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 r‐ｰ1　 lﾞ　 .lﾞ
　　　　　　　　　　　　 |　‘,,,＿　,! .| .|.| .|　 　　　　　　　_,,,,---,　 　 　 　 　 　　　　,lﾞ　 ,i´　lﾞ　 lﾞ
　　　　　　　　　　　　.}　|＾　 .|　|　"'""'"　　　　 .,,,-‐''″._、　〕　　　 ,,、 .r‐┐　 │　,"　 lﾞ　│
　　　　　　　　　　　 .ﾉ,,ノ　　 |　|　　　　　 ...,,,-‐'ﾞ｀ _,,―''ﾞ,i´　/ ._,,-,'l″,!,/　/　　 |　 ,lﾞ　 .|,,,,,ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　.|　,!　　　　　 〔 ._,,-‐,ﾆ-ｯ 丿　./ ｀ﾞl、.ﾞlﾞl-'ﾅ　/　　　.Ｌ,,,ﾉ　 .,ｒ'"ﾞﾞl
　　　　　　　　　　　　　　　 ,/ 丿　　　　　 ."″　/　 ,i´‘''''''"　　.ﾞ‐'｀ 丿 丿　　　ｒ'"＾ﾞl　　ヽ-'゜
　　　　　　　　　　　　　　.,,/ .,/ 　 　 　 　　　　 │　.lﾞ　　　　　　　　 ｀冖'"　　　 ヽ-'゜
　　　　　　　　　　　　　　.ﾞl／　　　　　　　 　　丿　.lﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .,＿_,,i´



――――――――――――――――――――――――――――――――
　　狙い通り右足を捕まれた外套の男が、もんどり打って地面に倒れ込む。
――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿/＼／＼/＼／|＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　 　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　うわっ！？　 ＞
　　　　　　　　　, -─‐──‐-､　　　　　　　　　　 　／　 　　　　　　　　＼
　 　 　 　 　 ／　 　 　 　 ﾟ　 　 ＼　　　　　　　　　　 ￣|／＼/＼/＼/￣
　　　　 　 ／ ;　　゜　　　　　 °　 ＼
　　　　　 l　　U　　　 　 ;　;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; l⌒ '"⌒ ヽ、
　 　 　 　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;　 　 u. 　 　;　　　|ｰ　　 　 　 ＼
.　　　　　 !　u.　_ノ′ヽ､__　　 ∪ 　 　 　 　 　 ,; 　　＼　,rｰ､
　　　 　 　 ゝ｡(（-‐）　 ;;;;;;;;;;;)::｡　i'′⌒￣￣`￣￣￣ヾ｀ヽ　ヽ
　 　 　 　（ 　ヽ'"　　'　　　"'__ ,ノ ヽ､_＿＿＿"_＿＿,､___ｿﾉ__ﾉ
　　´ ´ `ﾟ~゜´＾" ´~`ﾟ゜｀⌒ ´"´´ﾟ＾ﾟ＾ ~゜ﾟ`´＾ﾞ＾ ＾´'゜´＾ﾟ´ 'ﾟ＾´ﾞ ＾ ﾟ゜

　　　　ドサッ！

二２６４．
―――――――――――――――――――――――――――――
　　そのまま走り寄り、レイピアの切っ先を喉もとに突きつける。

　　もちろんキル夫との近接戦力差は承知の上で、
　　少しでも抵抗する素振りを見せるのなら即座に貫くつもりだった。
　　―――たとえキル夫が、妖術師の犠牲者だとしてもだ。
―――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , '::::::::〃:::::::::::.i::::::::ヽヽ:ヽ ::::::､::::::::::::::::':::､､,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ｨ:::::::::〃::::::::::::l!::!:::::::::::＼ヽヽ:::::ヽ:::::::::::::::::::t=ｰ-.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _ｨｼ='7:::〃::::ｨ''|!i:::!i::,::::::､::::::ヽ::::::':,',､;,:::::::::::::::::::::ﾝｯy､,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　´"　　/::::::/:::/,.-ｬj:::l 'i!';::::i＼::::ヽ:::::::',',',i!::::::::::::::f"''''＝=-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　,.ｼｨ::::::::ｿ !. (::)ﾘ!　ﾍ',:::l,,､ﾇ;:::ヽ::::::',',',':::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃 ｼi::::::::ｌ 　｀""゛　　` 'ﾘ (:::)ﾔ､:ヽ:::!:','::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '　'　.ｌ::::::::l　 　 　 　 　　ヾ'''''" Y:::::::::::::!::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i::/ｌ::::!　　　ヽ　、 　 　　　 ｌ:::::::::::::::'::::::::ｯ::::::',
　　　　　　「あいつは何処だ！」　　　　　　 　 　 　 l/　!:::'､ 　 ｧ､.　　　　　　　 !:::::::::::::::::ｫ:::::!';::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 　 　　 ,!. 　|/ ';､. ヾﾐ.`j 　 　 　 ,イ::ｧ:::::::::::::::i '､::',ﾔ::::､
　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　" . ';ヽ　　　　　,､y'´ /ｼ ｌ::::::ヽ:::::ｌ　ヾ;　゛丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　'|!`=tｰ:::'"／　 /'　 ﾊ::;::::il!';::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　　　　　　　　　'i::: '　　　　　　　ﾘ ｿ ヽ'ﾘ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　!'i　　　j　　 　 　 ~ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾘ ､　／　 ―ー '''"""f,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / _冫'''~ 　 　 　 　 　　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ´　　 ,､　　　　￣~ ヽ　 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l!~　　　　/　　　　　 　　　ヽ.　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｿ. 　　　/　　 ﾝ　　　　　 ､　',　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 /　　 / 　 　 　 　 　',　', 'i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　 '　　 / 　 　 　 　 　　 i.　', ｌ



――――――――――――――――――――――――――――――
　　しかし。
　　落ちたフードの中から現れたのはまだ幼さの残る少年の顔で、
　　二度目の悲鳴も、キル夫のしゃがれ声とはお世辞にも似つかない。
――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　,r‐┐／)
　　　 / /／／／>
　　／ イ └'´／
　./　　.＼_.ンニﾆス_（＼(ヽ　　　　　　　　「ヒィ！？」
../　　._＿...二つヽ､_(._'弋 ＼＼
（　　 / oﾟ( ＞ ) ( ＜）＼`┘ ヽ＼
.ヽ　 .ヽ、　.　 __´,_┌─‐'　／　　 .ヽ、
　　＼　ヽ　　ﾉ　 （｀¨乙二..＿_／　ﾉ
　　.　|　　 　｀ ⌒´　　　　｀ー‐- ィ'

二２６５．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　目を疑うように剣を突きつけたまま顔を覗き込んで、たっぷり十秒は確認した。
　　その後、毒気の抜けた声が漏れて、
―――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /|:::::::::::::::::::::ヽ.:.:.:.:､:.:.:.:､:.:.:.､.:.､.:.:.:.:.:.::｀゛＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /{::|:＼:::::::＼.:.:.:＼.:.:.ヽ::.::.ヽ:.:.ヽ::::::::::.:.｀゛ｰ- ..,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／:|::',:ﾄ､::::::ヽ､:.＼:.:.:.＼:.:.ヽ:.:.:＼.:.:.:.:.:::.:.:.:.:::.::::_;:-'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 //:/:::|::',|::'､:::::::::＼:.:＼.:.:.ヽ:.:.:＼:.:..＼::::::::::::＼､::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /!::|::l::::/|:::l:ヽ:＼::ヽ:.:＼:.:＼.:::ヽ:.:.:ヽ:.:.:.:＼::::::::::::＼￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |/l::|::|::|:ﾄ､:::::::::､､:ヽ､:.:.:.:::::::::::::::ヽ::::.:ヽ:.:.:.:.＼:.:.:.ヽ:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |::|::/l::|::|r‐ヽ:::::ヽ(ヽー,―＼::::::､::::::::::ヽ::.:.::::::.:::::::ヾ.￣
　　　　　　　　　　　　　　「別、人………？」　　　　　 　 }//l::|:::|{（:::）ヾ､:::ヽ ＼!（:::） ヽ,:::ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |/l::|::|:::|ヽ==''" ＼:ヽ、ヽ=＝'" |:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ､::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　',|::|:::|　　　/　　 ｀゛　　 　 　 |!::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､::ﾄ､_｀ ゛`
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .l::!::::ﾄ、 　'､　_　　　　　　 　 ||::::::::::::::::::::::::ﾄ:ヽヾ|　|￣￣￣｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 r'"´||',::::',　　　　 　 　 　 　 　 　 |:::::/l:::::|＼:::ﾄ､ヾ |　| 　 　 ／　/ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 / 　　ll　',::', 、 ｰこﾆ=-　　　　 　 /!::/ ヽ:::|　 ヾ､ 　ﾉ ﾉ　　／ 　,ｲ　　　ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,'　　　 | 　'､:, ＼　--　　 　 　 ,. '´　|;'　 l ヾ､. 　 ／／　　　　　/ |　　　　l: l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　|!　　ヽ; 　ヽ 　 　 　 ／.:　 　 i! 　/ 　 ゛／／　|l　 　 　 /　|　 　 　 | |



　 　　 　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　／ ノ　　＼＼
　　　　　 ／　（●） 　(●）＼
　　　　／　u　　　___'__　 　　＼
　　　　|　　 　　　 `ー'´ 　　　 |　　　　　　　　　「あ、あの？
　　　　 ＼　/⌒)⌒)⌒)　　 ／/⌒)⌒)⌒)
　　　　ノ　　|　/　/　/　　　(⌒) /　/ / /　　　 わ、私は何もしてない、と思いますが………」
　　　/　　　 |　:::::::::::(⌒)　　ゝ　　:::::::::::/　
　　　|　　ｌ　 |　　　　　ノ　　/　　）　　/
　　　ヽ　 ヽ_ヽ　　　 /' 　　/　　　 ／
　　　　ヽ ＿＿　 ／　　 /　　 ／



――――――――――――――――――――
　　両手を挙げた少年は冷や汗を流しながら
　　何かの間違いですと繰り返し訴える。
――――――――――――――――――――

578 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:45:23 ID:cQ1rsEk2 ここで絡むのか 580 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:46:45 ID:cxXK0Ayc できる夫キタコレ お前なら・・・お前ならなんとかしてくれる！

二２６６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:/:::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::丶:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::/:::i::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:::/::::i:::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ./:::/:::::l:::/::::::::::::::::i::ヽ::::::::::::::::::::＼::::::::::＼::＼::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::i::::::l:::l::i:::::::::::::::::l::人::::::::＼:::::::::::＼::::::::::＼:ヽ:::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |::::ii:::::i:::::i:::::::::::::::::l:||__ヽ::::::::::ヽ:::::＼ヾ:r======ヾ::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::
　　　「すみません。　　　　　　　　　 　　　　 |::::i i::::l::::::i::::::::::::::::i「:::i　ヽ:::ヾ::::＼::ヽヾ|:;;;l|　　:/　＼:::::::::::::ヾ::::::::::::::
　　　 人違いでした」　　　　　　　　　　　　　 |::::l i:::l::::::i:::::li:::::::::::i;::;:il　/i＼ヽ　　＼丶ﾐ=≡彡´　　＼:::::ヽ::::＼:::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::i　l::i::::::i::::l:::::::::::::ｉﾐ彡´/　　ヽ＼　　ヽ　￣　　　　　　ヾ:::::ヽ:::::::ヽ::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i::i　 l:li::::::l　 l;::::::::::i　 　/　　　　　　　　＼　　　　　　　　i::::i::i:::ヾ::::::::
　　　（何と愚か。　　　　　　　　　　　　　 　　 il　　l　i:::i　　i::::::::i　 く　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i::i　ｌ:l:::ヾ::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　　i:::l　　l:::::::::ゝ　　ヽ　｀丶　　　　　　　　　　　　　　i::i　i:l::::::ヽ::
　　　 完全に我を見失って　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i::l　 　i::::::;丶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i:i　i:l::::::l::::::
　　　 暴走していた―――）　　　　　 　 　 　 　 　 　 ll　　　l::::i::::丶.　　　.　____　　　　　　　　　　　　:::i::;:;l;;:::l::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l　　／　 i::::l:::iヽ.　 ﾞヽニニﾆ=｀__　　　　　　　:::::::l／l::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　l:l　l:::丶　.::::..---‐‐　　　　　　　　::::／::::::::i:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　i:　　i::l ＼　　　　　　　　　　　:::::／:::::::::::::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／　　　　　　　　i　　i:i　 　ヽ　　　　　　　　:::::;／:::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　　　　　　 　i　　　　ヽ.　　　　　.:::／::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾄ､＿__::／＼::::::::::::::::::::::::



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　見れば背格好もかなり違うし、新品と一目で分かる外套の色も似ているだけ。

　　それすらも気づけないほど怒りと憎しみで目を曇らせていた事に気づいて、
　　エルはただ己の暴走を恥じ入るばかり。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――

二２６７．
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
　　そしてこの人違いは、ある意味幸運な人違いだった。

　　彼は冷静さを取り戻す事が出来たし、相手がこの人の良い少年でなかったら、
　　町中での抜刀、魔法に寄る他人への傷害で容赦なく詰め所にしょっ引かれて
　　それなりに重い刑罰を食らっていた事だろう。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――



　　　 　　 ＿＿＿_
..　 　　 ／　　 　 　＼
　 　 ／　　─　 　 ─＼
　 ／ 　　 （●） 　（●） ＼　　　　「いえ、分かってくれたのなら良いのです。
　 |　　　　　　　 ' 　　　　　|　　　　………何かあったのですか？」
　 ＼　　　　　　⌒　　　／
. 　/⌒ヽ　 　　　 　 　ｨヽ
　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
./　 　 ／　r─--⊃、 　|
|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　/:::〃i::::',::::ヽヾヽ::ヽ＼:､＼:'.,',`ヽ::::::::::ミｪ､､､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/::::/::!::'::::::':,:'.,::::ヽヽ､::::::::::＼＼',:::::::::::::::ヽ￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /::::::i:::::::i:::､::::::::ヽ:::､､:::ヽ::::､::::::＼ヽ､:::::::::ヽ:ミｰ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　,'::;::::i:::::::ｌ!::!ｧ､:::::::::ヾ:､rﾞ=､::::ヽ::::::::::ヽ::::::::::::`、ヾ､
　　　「本当に申し訳ありません。　　　　　　　　　　　　　 　　 　 　　　 /ｼi::::i::i::::!:ｉi （::ﾒヾ､::'.,ﾒ （::ｿ,ﾞi::::ヽ:::::::::ヽ::::::::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/'　i:::i::!::::::i '=ﾃ'　｀ ヾ::ﾐ＝"　ﾘ::::ヽ::::､:::::::::::::::::::::ヽ、
　　　 少々事件があり、赤錆色の外套を纏った　　　　　　 　 　 　 　 　　i:::!:::i:::::!. ヾ　.、　　`　　　 l!i:::::::::::::'::::::::::::::ﾐ｀ヽ
　　　 中肉中背の二十五歳ぐらいの男を追っていました。　　　　　　　　 'i::::l !i:::'､　｀　　　　　　　　! i:::::ｌ::::::::::::::::::::ヽ`ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　'i::l　i;lヾ､. ＝=-　　　　　, ｲﾘ,:::iﾞﾃ､::::::::::::ミヾ､
　　　 あなたの外套が遠目から被ってみえたので　　　　　 　 　 　 　 　 　　';i　il 'i:ヽ 'ー　　　　,...:':　: i! ';:i'ｼ' ｀` ｰ-=:､ヽ
　　　 良く確認もせずに足止めをしてしまい………」　　　　　　　 　　　　　　!　!　'i:::'、　　 ,...:'::::::　　: ! // , ', -‐'''''ｰ ､＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　　ﾘ　`ｰ ヽ､::::::　　 ; ,'/／〃　　　　　｀　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀`ヽ､ //　 〃　　　　　　　　　ヽ

二２６８．
――――――――――――――――――――――――――
　　ただ突然の狼藉を申し訳なく思い、謝罪しながらも
　　視線は目的の相手を捜して街路を睨め回しており―――
――――――――――――――――――――――――――



　　 　 　 　　　＿＿＿
　　 　 　　　／　　　　 ＼
　　 　　　／　ノ　　　 ヽ　＼　　　　　「ああ、それで。
　　　　／ 　 （●） 　（●） 　＼　　　　大丈夫ですか、顔色が悪いですよ？」
　　 　 |　　　　　 　´　　　　　　|
　　　　＼ 　　 　　⌒ 　　　　／
　　 　　ノ　　　　　　　　　　　＼



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／!/ヽ::::＼::ヽ＼ヽ､::::::＼ヽ:::::::::::ミ./
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　iｿ:::::::::!:i{:)ヾヾヽ::i {:ｿヽ､::::::::ヽ＼::＼::::::i
　　　　　　　　　　　　　　「いえ、もとからこんなものです。　　　　　　　　　ﾘ i!:::i:::::!ﾞ＝ﾂ` ｀ヾ!＝"　 i::::::::｀::ヽ:::::::ヾ',
　　　　　　　　　　　　　　 ハーフ・エルフなもので」　　　　　　　　　　　　　!　i:::!i::::ｉ　ヽ　､　　　　　　i::::::::::::::::`:::､::ヽゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 リ i!'i:',　 ｀　　　　　　　i::::::::::::::::::::::::＼ﾐ､
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584 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:49:23 ID:4P4L4veY こいつはあのできる夫かしら？ 585 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:49:59 ID:19PPwOKs 赤い外套だから、あのできる夫の可能性高し

二２６９．
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　　余程の事なのだろう、と察した少年は
　　お気を付けて、と忠告をしただけで彼を送り出してくれた。
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　 　　　 　　　／　　　　　＼
　　 　　　　／　　　　　　　　＼　　　　
　　 　　 ／　　＼　　　　／　　＼　　　　「………誰かを追っているのでしたね？
　　　　 | 　 　（●） 　　（●） 　　|
　　　　 ＼ 　　　　　´　　　　　／　　　　 怪我もありませんでしたし、
　 　　　／　　 　　￣￣　　　　＼　　　　 私の事は気にせず行ってください」



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　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿ﾐ::::::::::::::::｀¨ミヽ､::::::ヽ.
　　　　　　　　　　＜:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ::::::ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 ヽ､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ﾄ､
　　　　 　 　 　 ー=ﾆ､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::j::ﾊ
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　　　　 ／---─ｧ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::／:::ﾘ:::::::}ﾊ
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　　　　　　　　/::::ｨ::::::::::::::::::::::::::,ｨ/ 　¨''=ｲ _,ｲ:::ｲﾃ ::::::::::ハj
　　　　　　 _,,ｲ／/:::::::::::::::::::::ｲ/ |　　　　 　 ノ　|¨ .::::::ｲ/
　　 　 　 　 　 ∠ イ:::::::::ｨ::/ .|　　　 　 　 　 ､ _｣ ｲ:／.j'　　　　「………済みません。
　　　　　　　　　　/ｲ:／ .|ｲ　 　＼　　　‐--- ／|:/　　　　　　　恩に着ます」
　　　 　 　 　 　 __ ｲ　　 j　　　　　＼　　ﾞﾞﾞ／ 　.ｿ
　　　　　　　　 /＼　　　　　　　 　 ／ヽ- '
　　　　　　　／　　 ヽ､　　　　　_ ｲ
　　　　　 ／　　　　　　ヽ､　　Y
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　 　 i　　　／　　　 　 　 ＼ 　 　 ﾊ
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　　頭を下げたエルも分かっていますと心遣いに感謝し、
　　レイピアを鞘に収めてから町の出口へと急ぐ。
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二２７０．



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　　しかし、町の出口までに手がかりは得られず、
　　そのまま夕暮れ時まで闇雲に町の中を走り回った彼は結局、
　　キル夫も、仇も見つけ出すことは出来なかったのである―――
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588 ショボン玉 ◆Shobon.2x. 2011/02/03(木) 21:52:03 ID:TWaaKKqo 本日の投下は以上になります。 閲覧と合いの手をありがとうございました！ 次回は第二章第五話になります。 埋めネタから間を開けずに投下をするつもりでしたが、 遅れに遅れてしまい済みませんでした。 589 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:52:58 ID:4P4L4veY 乙。 結局逃げられたか。けど、仮に追いついてもケチョンケチョンに やられるから、これで良かったかも。 590 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:54:08 ID:aUtb0dt. 乙でした。 できる夫ｋｔｋｒ！！！！ 「苦悩する勇者のようです」的に考えて、 やらない夫と絡むことは無いのだろうけどこのニアピンが嬉しい！ 591 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:58:19 ID:ezdAuCpQ 乙 ライトか どれぐらい禁呪をしてるんだろうか 592 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 21:59:01 ID:WlHr2lPM 乙したー、まさかできる夫が出てくるとは… 593 ショボン玉 ◆Shobon.2x. 2011/02/03(木) 22:01:25 ID:TWaaKKqo >>589-592 乙と閲覧をありがとうございました！ いちおうできる夫さんは外伝側のご本人となります。 596 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 22:04:15 ID:JZVEC3Tg 乙ー。ライトか……人間だとしても安心できねぇなぁｗ 597 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 22:07:04 ID:yaEGY//o 乙 ってかできる夫がここにいるってことは錫杖護衛の仕事逃してるのかｗｗ 一日金貨二百枚の仕事をｗ 598 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 22:08:52 ID:19PPwOKs 乙でした ところで、主人公どこいったｗｗｗ 599 ショボン玉 ◆Shobon.2x. 2011/02/03(木) 22:10:37 ID:TWaaKKqo >>594-598 乙と閲覧をありがとうございました！ >>597 できる夫さんはまだ産まれた村を飛び出した一少年なので 護衛の仕事に雇って貰えそうにありませんね。。。ｗ >>598 次回から場面がそっちに戻るはずです(ﾟДﾟ) 601 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/03(木) 22:36:01 ID:olG0aNfM さむさむ＞＜乙です 武具屋の看板での引きが意味深・・・？ ええい、主人公はいいきらきーをだせっ！！！ 603 ショボン玉 ◆Shobon.2x. 2011/02/03(木) 23:17:21 ID:TWaaKKqo >>600-601 乙と閲覧をありがとうございました！ >>601 いえ、単に夕方的なｗ 612 名前なんて無いだろ常識的に考えて 2011/02/04(金) 11:04:40 ID:bVJEzL12 弟子の暴虐に連座制が適用されるのは仕方ないとしても、 ハーフエルフ故の迫害は切ないなぁ。 あとはコナタの過去か・・・ 怖い！けど見たい！