／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　 （ ●）（●）
　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　（ホント、いつからだろうなあ・・・・・・。
　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　 　 　 　 　 　 　 　 いつのまにかさ。意識したことなかったな）
　　　　　.ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }
　　　　　.ヽ 　 L　　　　 　 }
　　　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　　　／ 　 /　　　　　＼
　　　 ／　　 /　　　　　　 　＼
　　. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
　　人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))

　　　／￣￣＼
　 ／ _ノ　 ヽ､_ ＼
.　|　（ ●）（● ）　|
.　|　　（__人__） 　│ 　　　　　　　　　　　　「もう知ってるだろうけど、
　 | 　　｀⌒ ´　 　|　　　　　　　　　　　　　　如月やらない夫というのが俺の名前だ」
.　 | 　 　 　 　 　 |
.　 ヽ　　 　　　　/
　　 ヽ　 　　　 /
　　　>　 　　 <
　　　|　　 　　 |
　 　 |　　　 　 |



　　 ／￣￣＼
　／　　 　 _ノ ＼
　|　　　 　 （ ●））　　　　　　　　　　「ん？　地の文の説明の時と会話の時とかで一人称が違うって？」
.　|　　　　 　 （__ﾉ_）
　 |　　　　　 　｀⌒ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



　　 ／￣￣＼
　／　　ノ　ヽ､＼
. |　　 （●）（●）|　　 　 　 　 　 　 　 　 　 「まあこまけえこたぁって感じだ。
. |　　　（＿人_）│　　 　 　 　 　 　 　 　 　 作文とか書くときと同じだよ。　
　| 　 　 ｀ ⌒´　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 他所様向きなの。１の言い訳的に」
　 | 　 　 　 　 　 |
.　 ヽ　　　　　　/
　　 ヽ　 　　　/
　　　.> 　　　<
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |

　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）
.　|　　　　（__人__）　　　　　　　　　　　　　　　「昔、俺はピアニストだった」
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）. ｒｍ､　　　　　　　　　　　　　「でも、ピアニストにとって
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉｒ川 ||　　　　　　　　　 　 　 　 失っちゃいけないものを失ったんだ」　　
.　 |　　　　　　 　 },.!　 ノ'
.　 ヽ　　　　　 　 ｒ / .|
　　 ヽ　　　　　ノノ　ﾉ
　　　/　　 　 ／ .／
　　　|　　　 　 ／
　 　 |　　　　i´




　　　　　　　　＿＿＿＿_
　　　　　 　／　　　　.r┐ヽ「|
　　　　　／　　r-､　　| .|　./ l　lﾞl
　　 .　／　.__,ノヽ ﾞ､_,ﾉ　'-'　.|,,/ |
　　　｜ 　　（●）ヽ　　　　　ﾉ ´/　　　　　　　　　　　　　「命よりも大事なもの・・・
　　 　|　　　　　　　〉　　　　　 〈_,,.-､　　　　　　　 　 　 　 それが指なのさ」
　　 　.|　　 　（__人{　　　　 　 　 .r''´
　　　 .| 　　 　´ ⌒|　　　　_,.-i'´
　　 .　.{　　　 　　　l-‐'''''''ｰl　}
　　　　｛　　 .　　　|´￣￣｀`l }
　　　　 {　　　　 　.|　　　　　|.}

　　 ／￣￣＼
　 /　ヽ､_　　　＼
. （　（● ）　　　　|
. （人__）　　　　　 |　　　　　　　　　　　　　　　「音楽好きなのが俺のことをまだ憶えてて、
　 |⌒´　　　 　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　ときたま声をかけてくる・・・・・・」
.　 |　　　 　　　　|
.　 ヽ　　　　　　/
　　 ヽ　　　　 /
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／ 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 __,ィi.ri､
　　´￣￣￣´　　　　　　　￣ﾞ¨'''''==ｪ､,,　　　　　 　 　 　ｉ　　r､i ij i,}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾄ, 　} ﾘ ﾄ /〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ﾄ ヽ{　 　 ∧｀ｰ- 、　　　　　　　　　　「まあ、なんつーかさ・・・」
　　　　　　　　　　 _,, ::r'' ´,r''¨´　　　　　　　　　 　 ／ : : : ヽr==-〈ハ: .ヾ : i
　　　　　　　__r'' ´＿／´　　 　 　 　 　 　 　 　 .／ : : : : : : :| : : : : |rN. : : >{
　　　　　　　￣￣　　　 　 　 　 　 　 　 　 　　γ. : .｀.ヽ.､. : :| : : : : lH:､ﾄ､:.ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{､ : : : : : ヽ. : | : : : : |:::'i　｀,.: : ;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＼: : : : : : ヾ |: : : : :|::::|　 | : ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼Z_ : : : >i.: : : : |::::!　 }:./
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ﾄ､ : : : : : : : : }:::ﾉ　i/|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 V＼ : : : : : :/:./　 {::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　}／.｀.ｰ- イ:ｲ　　'ト,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / : : : : : : : |´ ヽ__ }::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rー＜ : : : : : : : :.厂〔:i〕ﾆ{､:::{
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　> : : : : : : : : : : /::::::::::::::::::iへ}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈 : : : : : : : : :／::::::::::::::::::::::|　 j
　 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ : : : : : :/:::::::::::::::::::r::::::::|_r´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 V : : : :/::::::::::::::::::::::i:::::::::|

　　　　　　_,,.. -　､
　　 　 ,.-'　　　 　 ｀' ､.
　　　,r'　　　 　　 ,rfn､ ＼
　 　 ,'　 ,rffn.　　 '"　 　　 ヽ
　　 .i　 '"　　　　　,riiﾆヽ. 　 ',.
　　 {　　,riiﾆヽ　　　 　 _.　 　 ', 　　　　　　　　　　　　　　「俺みたいなの、ぶっちゃけ早く忘れてくださいって
　 　!　　　,..　 _,,..　-‐'　_,..r'　 i　　　　　　　　　 　 　 　 　 いいたいわけよ。わかるかな～　アハハ」　
　 　',　　 '､., __ ,.. -‐''"ﾞ　 }　　|
　 　 `､　　ヽ　　　　　　　 ! 　 }
　 　　 '､　　ヽ　　　　 　./　　 !
　　　　　＼　　｀ヽ==＝'ﾞ　 　 ,'
　　　　　　 ' ､　　　　　　　　/ .
　　　　　　　　`''‐　　　.　r'　＼
　　　　　　　　　/　　　 く　　　 ＼　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　|　　　　 ＼ 　 　　＼ 　 　　　　　　＼
　　　　　　　 　 |　　　　|ヽ、二⌒)　 ＼　 　 　　　　　 ＼

　　　　　／￣￣＼
.　　　.／　　　_ノ　 ヽ
　　　 | 　　　（ ●) (●)　　　　　　　　　　　　　　「指の欠けたピアニストなんざ、　
　　　 | 　 　 　（__人__） 　∫　　　　　　　　　　　　耳の聞こえなくなってしまった　
　　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ　∬　　　　　　　　　　　　　作曲家ほどにも救われようがないってもんだ」
.　　　ヽ　　 　 　 　　} |￣|
　　　　　ヽ　　　　 ノ　|＿|）
＿＿__／　　　　　 ｲー┘ |
| |　　/　　/　　　 　_＿＿/
| |　 /　　/　 　 　　|
| |　（　　　￣￣￣⌒ヽ
￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,. '　｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 , イ´　　 　 :}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／. .ｲ　　　　 ;::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,ｲ,. : : {　 　 　 ,::;:l､
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,ｲ　.:',: :::|　　　　 ::;:l::'.,
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 , イ'　. : ::ヽ､{　　　　.::;:l::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　／ｲ_,.メ.ﾍ: : : :::|　　 　 .:::,':::::　 ,｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　, イ'"´ .ヽ,:〉:､: :ヽ: :.:.|　　　 .:::,'::::::　 {!　 ﾄ､
　　　　　　　　　　 , イ´　　　. : .::::l::ヽ: ::ﾐ､_::.}　 　 .::::l:::::　　 i}　 }:::｀ヽ
　　　　　　　　 ,ィ´　　　　. : :.:::.::::'::､::,: : ::ﾊ: ' 　 　 ::::}:l:::　　 　ｲ;ｲ　::::ﾄ､
.　　　　 　 　 /　　 .::. ::. : :: :､:::::::: : :｀ヽ､ノ｀:}　..:::::::::,' :l;:ﾍ-く 　|:::　 ::::|:ﾍ
　　　　　 　 /　　　　::ヽ::}:ヽ::ヽｲ: : : : :レﾍ ,' .::::::::::::;':､:l::::ハ　　!:::　 :::|::::::ヽ
.　　　　　　/ィ　　　 .::::ﾉ: ::ィ: イ､ :: ィ´｀ヽ:,' .:::::::::::/:.::｀l::´:｀ヽ .:|:::　 :::l:::::::: :ﾊ
.　 　 　 ／´　..:::::::::::::./'"´｀''‐---'‐―''"´{::::::::::::/､ﾍ:く}::::　 　 :l:::　 :::l:::::: : : ﾍ
　 　 ／...::::::::::::::::::::::ノ　　　　　　　　　　　l::;,,;;,;,/､::::｀:/:::::.........,::}:: ...::::}ヽ::: : :　',
　　/:::::::::::::::::::::, ィ´　　　 　 　 　 　 　 　 ｌ/　´}　 ｀‐/:::::: : : ::::/::: ::／ 　';::::..... ﾊ
　　`ー---‐''´　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｌ. 　 /　　 /::: : : : : :/::::／　　　 ';::::::: : ',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ_ノ　　 /:::: : : :::::/::::/　　　　　 ';:: : ＿',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /::::: : : :::/:／　　 　 　 　 ヽ:::ヽ　ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌────────────────────┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│そしてこの指を呪わずにいられないのだ。　　　...│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└────────────────────┘

　　　　　　　　　　　┌────────────────────────────────┐
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　│　 　 　 ┌────────────────────────┐ 　 　 　│
　　　　　　　　　　　│　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │　 　 　 │
　　　　　　　　　　　└───┼────────────────────────┼───┘
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │　 　 　 ┌────────────────┐　 　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 └───┼────────────────┼───┘
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 │　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 │
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 └────────────────┘

┌────────────────────────────────────┐
│――八年前、僕は留学先のオーストリアで左手薬指の第一関節から先を失った。　　.....│
└────────────────────────────────────┘
　　　　　　　　　 , --────-- ､
　　　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼
　　　 .／　　　　　　　　 ─── 　　　 ──＼
　　　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＼
　　｜　　　　　　　　　／／:::::::::丶＼　　:／／::::丶丶
　　.｜　　　　　　　　｜ {:::::::::::::::::|　 |　 ｜ {:::::::::::::|　|
　　　|　　　　　　　　　 ＼ヽ:::::::／ ／　　 ＼ヽ:::::::ﾉ／
　　　.|　　　　　　　　　　　　　,／　　　　|　 　 　 ＼　　　　 　
　　　 |　　　　　　　　　　　　｜　　　　 ｜　　　　 ｜　　 　 　
　　　 |　　　　　　　　　　　　｜　　　　 ｜　　　　　|　　　　 　
　　　 .|　　　　　　　　　　　　 ＼＿＿／＼＿＿／
　　　　|.　　　　　　　　　　　　　ヽ　　, ─ 、　ノ　'
　　　　.|　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /
　　　　 |　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ）
　 　 　 丶　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 l
　　　　　 ＼　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 )
　　　　　　 .＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　/
　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　 く
　　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
┌────────────────────────────────┐
│その時奪われたものは、かけらのような骨と肉だけでは済まなかった。　　　　│
└────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　r＝..､、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　rー-ﾍ::.::.r':.:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　r‐､_)ヽ::.:.:.:.:.::.:ｰ^j_rヽ
　　　　　　　　┌─────────────────────┐
　　　　　　　　│僕がピアノを始めたのは母親の意向だった。　　　 │
　　　　　　　　└─────────────────────┘
　　　　　　　　　　　　{_:.:.:.＿:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞ ―､― -　{｀::.:.:.:.＼-..､
　　　　　　　　　 　 　 _ }.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／　　 /　 l　　 ＼ｰ ､:.:.:.:l:ヽ:くr..､ 　 _
　　　　　　　　　　　　{:.｀:.:.:.:.:.:.:／　　 　 l　　 　 　 　 Y｀:.:.:.:.|:..:l/.:.:.:}／_:.ヽ
　　　　　　　　　　　　 ⌒}:.:.:.:/　　　　　 |　　　 l　　　 ト､:.:.:.:.l..:.l.:.:.ｲ∠⊥ﾉ、
　　　　　　　　　　　 　 {_:rｭ/　/　　/　 !ﾊ　　 l l　l　 .::l _}:..ヽ|..:.|:._:小￣ ヽ:ヽ
　　　　　　　　　　　／　 .V　 .l　　.:|:　 |　l　　ﾘ:|　l　.::ハ_:.:.:.ﾘ:...l´.:ィﾄ＼__ﾉ:.:}
　　　　　　　　　　/　 ...::/:{　.::|　i ..:{::.　!　　 /.::j ./ ﾉｲ:::r‐':./:../:.:_レj:.ト- ﾍ´
　　　　　　　　　/　 ...: ｲ .:ﾊ　 ﾄ -┬ヽ､ﾄ:.. / .:ｲ/jナ7:.不::.{__/:.:‐ｧv' |::l:.　l |
　　　　　　　　/　／:// :/　ﾄトヽト-ｧﾃ=ﾐヽﾄ/ノ ィﾃｵく/ｲV .┌────────────────────────┐
　　　　　　, イ ´..::://／　 　 }ヽ ﾊﾍ 赴ｿ 　 　 ^ 赴ｿｲi :ﾄ{　│彼女自身、声楽の世界では名の通った人間である。　　.....│
　　　　 ／イ　..::j/／　　　 ノイ /ヽ､　　　′ 　　　　,ﾘ /_:/ └────────────────────────┘
　　　／´ /　..::／_　--_.ﾆイ/／, -ｧ >､ 　 ﾏﾌ　＿ ／}/´　　　　　　 j:..:/　 l }〉
　 ／'　 /　:: /／／￣　　 /' ＜_:.ノ..:　:｀:._ァｧ{、.::／/:＼　 　 　 　 /:/　 /ノ'
. // 　 ,′ / ＞‐｀ｰ-　∠/　　 {　:..:.:,　=-Vｫ}ｿ／ :/:.:.:.:.:ヽ＿　　 /:/_. =イ
//　　 l　/ ｀ヽr‐ __.:二　＿＞.:´ヽ／´:.　.::.＞_´三 ￣￣＿＿ ＞´‐ ´　/
!{　　 / /　　　￣ ｀ヽ:＼／_.:.:.:.:.: { :.:.:.:.:. :.ー､ァ..´:￣￣_＞ ´／/　／／
┌────────────────────────────────────────┐
│自分のたどった道を子供にも引き継がせたいという思いは、親としてありふれたことだろう。　　.....│
└────────────────────────────────────────┘
/　{　　:.|　 ヽ:.{ﾆブ__}:.:.:.:ｰ:-ヽ:..:／:..　　　.:／,..:＜く／　／ヽ::.::.:..ヽ
　.:ﾊ:.　　l　　 ｀｀ヽ､ヽ:__ﾉ}:..／ノ..:∠、　／ イ{　.:.:./　／::.::.:..:.＼::.::.:.＼
.:/　 ヽ.　:l　　　　　ト--.'／::.:⌒ヽヽ::.ソ／:.:{:. ｀フ ／::.::.::.::..:..:.r‐ヽ::.::.::.:｀ヽ、

.　　 　 　 /　 　 / 　 .'　　　 / /　　　　　　　　|
　　 　 　 ｉ　ｌ 　 ｌ　　l 　 　 /　′　 　 　 　 　 .′|
　　 　 　 |　| 　 |　　|　‐､/|　!　　　　　　　　/ 　 l
　　 　 　 |　| 　 ﾄ .　|　　|｀ﾄ､| .?　　　 　 〃　 /　/
　　 　 　 ヽ.|＼ l　ヽﾄ .xィ士.j ﾄ.|　/　 　 //　 /　/,′
　 　 　 　 / ／ ヽ/ ﾊ.|ヽﾄ辻}小∨j／／./_／__,//_／__　　　　　　　　 　 「やっちゃんには私のすべてを
　　　　　// 　 // /ヽi|　 ^冖^　　　　　 ‐ﾃ士＜／-‐ ´　　　　　　　　　　 受け継がせるわ」　
.　　 　 〃 　 // /|!　 |　　　　　,　　 　 　 ﾄ辻}小>‐ ／ 　　　　　　
　　　 /′　// /　|l　ハ　　　　′　　　 　 ^冖＾　／ ／
.　　 /　　 // / 　_!ヽ 　 ＼　　r__,　　　　　 　 ／ ／|
　　 '　 　/ | i　 /'｜　',　 | i＼　　　　　　　　/　厶イ|
　　ｌ l 　 |,-l |‐厶-ﾍ　 }　 Ｖ　 ＞‐z――…/　/'　　 !
　　| ｌ　 /　N´　,. -‐ヽﾊ　 |-く^Y´ 　 　 　 '　/＼　　|!
　　| ｌ＜⌒　‐-'---‐'_丿 小丕}|　　 　 　｜/　　 ＼.|l
-‐┴'´　 ＼_￣　￣　_／,小辻ﾘ　　 　 　 l ! -――/.'
　　　　　　 ｜￣￣／　/ ヽ{__ソ＼　　 ／!l,.　-―//

　　　　　 　 　 　 　 　 　 , ノ　 ､　、
.　　　　　　　　　 　 　 　 l（● ●）|　　　　　　　　　　　　　「お外で遊びたい」
.　　　　　　　　　 　 　 　 | (_人_)　|
.　　　　　　　　　　　　　(^ヽ　　 ./^)
　　　　　　　　　　　　　／/　 　 ＼ヽ
　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣




　　　　　　　　　__
　　　　　　 　 _（:::`ｰ'`-､＿
　　　　　　　（:::￣:::::::::::ヽ‐::ヽー―-､_
　　　　　　　 ﾉｰ:::::::ヽ::::,-`ｰ､:::::::::::::::::::`i､_　r‐､　 　　＿＿
　　　　　　 （:￣:::::::,ィ'´　　　l:::::__:::::::::::::∨|`´::ﾉ_,ｨ=ﾃ"￣ゞﾐi!
　　　　　　　`j::::::/ 　 　 　　 `´　`jｰ::::::::∨!::´:）ヽ＝≠＝彳
　　　　　　　 ゝ:/　　　 i　　　　　 ゝ-､_:::::|ﾐ|::::::`i　ヽゞ_》
　　　　　　 　 `l i　l　　l　　　　l　　　ﾉ:::::::|ﾐ|:::::::ﾉ 　 l.ゞ!
　　　　　　　　 l l! .l l　ll! l　　l l .l　 l `i:::::::||!:::::_)　　 l |ﾐ| 　 　 　 　 　 「外なんていつでも行けるの。
.　 　 　　　　　 l.ﾄ､ﾄ､!从 l　 /l /l　/ .(_:::://:::( l　　　l |ﾐ|　　　　　　　　 あなたには今しかできないことがあるのよ」　
　　　　 　 　 　 l! ヽｨｬｫ.ヽ／_'´_.l/l/　/ｨｭ､::ノ.l 　 　 l. ¨
　　　　　　　　　 　 l ゞｲ　　´弋::ソ//.弋ｿｲ　 l　　　 l
　　　　　　　　　　　ゝ 　 ___ 　 ｀´// ／　　　 l.　　　 l
　　　　　　　　　　　//ヽ,`ｰ',､-‐//:´ヽ　　　　|　l!　　l
　　　 　 　 　 　 　//ｰ､〉::◎::::/ .l:::::::::ヽ　　　l　l.l　　 l
　　　　　　　　　 / ＿,」l::／＼l　 l:::::::::::::ヽ 　 l　l l　　 l
　　　　　　　　　ゝ‐､ヽ/:::/:::|::ゝ､ ヽ:::::::::::::＼_l　l .l　　 ヽ､
　　　　　　　　　 ／__ﾉヽ/:::::l::_:::_〉 _〉::::::::::/彡　l　l　,ｨ 　 l
　　　　　　　　,.ィ`ｰ`jlﾐ､＿:::´:::{_二>:::::ｨｹ"　 l　l／´　　　l
　　　　　　 ｨ'´　　/ /l::￣`ゞ＝=//_ﾃ"¨ヽ　 / ´　　　　　 `i
.　　　　　　 ヽ＿ｰ'ゝ/ｨ-―-､/:::ゝﾉ:::::::::::::／　　　　_.,､-‐''´
　　　　　　　_,､ﾆ=- ∧￣￣ゝ_::::'´ﾉ:::::::::::ヽ／ _,ｨ'_´ｰ-- ､__
　　　　　　 ゝ-―'´::(二ｰ-‐ゝ-ｨ'´:::::::::::::::::::ゝ'　 _,､-=--‐　ヽ
　　　　,ィ':´:::::::::::::::::::::::::￣￣::::::::::::::::::::::::::::::_,ｨ'´　　　　　 　/
　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ _　_--――-､ﾉ
　　 ,'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼＼＼::::::ヽ
　ｨ'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::､::::::::__ﾉ￣￣￣´　 ￣/:::::::ヽ､__
　 ヽ__::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::l＼_:＼ ｰ､＿　 　＿/::::::::::::´:::/
　　　ゝ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ｰ､￣ヽ ﾉ:::::￣::::::::::::::::::::＿/
　　　 ＼＿::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::￣￣::::::::::::::::::::::::::::::: ﾉ
　　　　　　 ゝ_, -､:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＿::::/`ｰ'´
　　　　　　　　　　`ｰ-､__, -‐､::::::＿::::::, -､＿,ｨ'　 `´
　　　　　　　　　　　　　　　　 `'´　　`´

　　　　　 　 　 　 　 　 　 , ノ　 -　、
.　　　　　　　　　 　 　 　 |(ヘ　へ)|
.　　　　　　　　　 　 　 　 | (_人_)　|　　　　　　　　　　　　　　　「う、うん」
.　　　　　　　　　　　　　(^ヽ　　 ./^)
　　　　　　　　　　　　　／/　 　 ＼ヽ
　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣




　　　　　 　 　 　 　 　 　 , ノ　 ､　、
.　　　　　　　　　 　 　 　 l（● ●）|
.　　　　　　　　　 　 　 　 | (_人_)　|　　　　　　　　　（ホントは表に遊びにいきたい・・・）
.　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　　 ノ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　||　　　　||
.　　　　 　 　 　 　 　 　 （|　 　 　 |）
　　　　　　　　　　　　　　.し 　　 Ｊ

　 　 　 　　{:::.:::.:::＞.::´￣ヽ、　,. -一 ヽ＿
　　　　,. -┘.:::.:/:.:::.:::.:::.:::ﾉ::.Y:;＿__.:.:./.:.:.:.:.ヽ
　　　（.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:;:､;:;∠二:.ヽ｀ヽ.:.:.:.:.:.:.:∟、
　　　　）:.:::.:::.:::.:::.:::.;　'´　／／〈.:.:.:.:＼ ＼.:.:.:.:.:.:.::ヽ-へ
　　ｒ''".:::.:::.:::.:::.:::／　/ /　/ ハ `ｰ‐┐＼ ヽ:.:.:.:.:.:.:ﾉ=ﾆ):＼
　　{ ::.:::.:::.:::.:::.; ′　　/ 　 　 　|　　　{_:.:.:.ヽ ヽ:.:.:.(二｀V/＾):､
　　 ￣つ.:::.::/ 　 /　,′　　　　| 　 　| ￣ヽﾊ. i.:.:.:.:.｀i!ヽ.!_/:./
　　　（:.:::.:::.::!l!　 l 　i　　　　　 |l!　　 |　　ノ:.:.| |:.:.:.:.:.:||:.ﾄ､;:ノ
　　　　｀７:.::|l| 　|　ﾊ　　　　　 ;'|　　　　 し-､| |:.:..:_ノ.|.:| |
　　　　　 ヽ|H　 |　| l__,　　　 / |　　/　 /　ノ|/:.:ん. l |:.| |
　　　　　　 |ｌ!ヽ. 代「 ヽ.　 , / `ト､/!　,ｲ. く:.:/:.; -┘| L｣ !　　　　　　　　　　「さあ、やっちゃん。
　　　 　 　 |　 l Ｎ.--ミ ヽ/ｿ　_ﾚ'´ lメ /／ |／　 |　|　　 | 　 　 　 　 　 　 　 ピアノの前に座りましょうね」
　　　 　 　 |　 ! |l,ｨ^h.､　　　 ´￣ ヽ　1　　| 　 　 |　|　　 |
　　　　　　 | ！（ { { | |　' ＿,　"""　ﾉ!| 　 |　　　 |　|　　 |
　　　　　　！.| |_＼　 ヽ、 　　 _,. ＜._| !　 |ヽ.　　 |　|　　 |
　 　 　　 　 !/〈.:.:.Y_>､　}､￣´;:;:;:;:;:;://| 　|:.:.::',　　ｌ　l 　　|
　　　　　　 ム-レく.:.:.:_}ﾉ:@;:ニ、;:;:;//;:;! ､|:.:.:.:.:L_　!　!　　|
　　 　 _,.∠=ﾆ〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ﾆ　 V;〈〈_;/|　ヽ:.:.:.:.:.:L_l　!　　|
　　　 `ｰﾆ二_‐ﾍ.:.:.:.:.:.:.:.:(ﾞこ 　/'^ﾍ V:.:＼　＼:.:.:.:.:{! |　　 !
　　　　　＜:.:.:.￣} .:.:.:.:.:.:.:｀}　ノ:.:..:.ハ V:.:_＞- ヽ.:.:.:.} |　　 i
　　　　　　|_＞'７.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y.:.:.:.:.:.:.:.::.:>'"　　／:.:r‐'´〉、　　i






　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,　,.ノ　 、
　　　　　　　　　　　 　 　 l　（● ●　　　　　　　　　　　　　「はい」
　　　　　　　　　　　 　 　 |　 （__人）
　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　 　 ノ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 （ ー‐､r‐'）
　　　　　　　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣

　　　　　　　　　　　　　　 .ノ　､　n
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ● ●）か
　　　　　　　　　　　　 　 （人__） | .|　　　　　　　　　　　　「今日もピアノ」
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　 　.ｲ./
　　　　　　　　 　 　 　 /　　　　 /
　　　　　　 　 　 　 　 〈勿　 　 〈
　　　　　　　　　　　　 _/　/　＼ ＼
　　　　　　　　　　　 （__／　　　 ヽ_,）



　　　　　　　　　　　　　　 .ノ　､　、
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ● ●） l
　　　　　　　　　　　　 　 （人__）　|　　　　　　　　　　　　　「明日もピアノ」
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　 　 ノ .n
　　　　　 　 　 　 　 　 （ξ　　　一か
　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　〈￣
　　　　　　　　　　　 　 /　/　＼ ＼
　　 　 　 　 　 　 　 　 (__/　　 　ヽ_,）



　　　　　　　　　　　　　　 .ノ　､　、
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ● ●） l
　　　　　　　　　　　　 　 （人__）　|　　　　　　　　　　　　　「ピアノまんせー（笑）！」
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　 　 ノ
　　　　　　　　　　　　　 G　　　 ￣にア
　　　 　 　 　 　 　 　 　 /　　　〈￣
　　　　　　　　　　　 　 /　/　＼ ＼
　　 　 　 　 　 　 　 　 (__/　　 　ヽ_,）

　　　 　　 　 　 　 　 　 , -､/￣ヽ 　　__
　　　　　　　　　　　 __（　　しヘ 弋／　)＼
　 　 　 　 　　　　／ー'　 　　＼ 　　　└ヘ＼
　　　　　　　　　└ヵ　　　　　　　　　　　 　 |＼
　　　　　　　　/￣＼　　　　　　　　　　　　　〕　＼
　　　　　　　 └┐　　　　　　　　　_ 　 -―-＼　　ヽー､
　　　　　　　 ┌┘ 　 　 　 　,.　　 ／　 ヽ　＼ 了 　　ト ∠ム　／ ヽ
　　　　　　　　廴　　　　　／ 　　/　　　　　　 ヽ｀つ　 ∨Y　 ￣〕マ７_
　　　　　　　　 r┘　　　/ 　 　 　 　　 　 　 |　　|└┐　|　|　 rﾍ´ ＼ ｊ! 　 ＿
　　　　　　　　 ｀つ 　 ./ 　 　 　 　 　　 |　　|　　| | 〔.　｜｜＜_ﾑ__＞　￣__
　　　　　　　　　〔＿　.′ 　 　 　 　 　　|　 | ||　｜ｉ　｀)｜｜　〔 ﾍ＼ ＜
　　　　　　　　　　　ヽ| |　:　　|　 |　　　 |　 | ||　 ﾚﾊ 弋 |r= 、r┘ |　＼ ｀
　　　　　　　　　　　　| |　|　　|｜| 　　　|　 川ィﾁﾚ,_|　({ﾍ參〉） 　！ 　 ＼　　「ダメよダメ、全然ダメね。
　　　　　　　　　　　　| |　|　　|⊥从_| /ｊ／/ィi´うﾊ｢|　|广7_ハ 　　ヽ　　　　　 そんなことでは一流になれないのだわ！」
　　　　　　　　　　　　　＼＼ヽ７了7ヾ　　　　 ゞ- '｜ |∨/ 　 ＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 ＼| ヽ　ゞン　　　　　　　｜ | ∨ 　　　 ＼　　＼
　　　　　　　　　　 　 　　　　|　∧　　　 ｀ . - 　 　__|　ハﾍ 　　　　　＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　 　 　|　l|　＞＿　　　　／　j /￣ヽ.ﾏ＿　 　　　＼　　＼
　　　　　　　　　　　　 　 　 /∧|／　　 __ｱ=ﾐく入`マ"￣￣ ／　　 　 　 　＼
　　　　　　　　　　　　　　／/　ﾍ　　　/-ゞ參r' _≧　＼￣/___〉 　　 　　　　　＼
　　　　　　　　　　＿__／∠ ヽ＿＼イ　　 ｀T1く, ―‐ 　∨　　ヘ,__
　　　　　　　　　　＼ 　 ＿...ニニニ＞ 　 　｣ K_,／￣ヽ　〉￢　　　＼_
　┌─────────────────────────────────────────────┐
　│しかし彼女のやり方は、いささかエキセントリックだったのではないかと、子供としては時に思いもする。　　 　 │
　└─────────────────────────────────────────────┘
　　　　　　　　　　　 　 ／ --≧＞　/、　__　　ゝ┴イﾍ 　 　　　　　 /!　　ﾉ
　　　　　　　　 　 　 ／　 　 ヾ＼　 ん}｝丿 `ｰ'￣丿　 ﾄ ＿ 　　　　 / r‐'´
　　　　　　　　　　 く　　　　　　｀ ＝＝' （￣￣￣　　　ﾄ　　 ￣ ー‐' ノ
　　　　　　　　┌───────────────────────────────────────┐
　　　　　　　　│とにかく僕は、ひらがなより先に音符を見せられる、というような育てられ方をした訳だ。　　　　.│
　　　　　　　　└───────────────────────────────────────┘

┌───────────────────────┐
│子供の頃の記憶というのは、　　　　　　　　　　　　　　 　 │
│均一に配置された白と黒で一面に彩られている。　　　...│
└───────────────────────┘
　　　　　　＿＿＿_
　　　　 ／⌒　　⌒＼
　　　／ ●　　　● 　＼　　　 　　　　　　　「ただいま」
　　　|⊃　(_,､_,)　⊂⊃　|
　　　＞　　ヽ._）　　　 ィ’



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌──────────────────────┐
　 ｢｀ー'′／　 　 /　　 ヽ、 ＼ ＼　 ヽl}::.:)､ ＼　　　　 　 　 │帰宅すれば眠るまで、　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
　 l_,ｨ　　/　/　　 l　 　 　 l 、　 ｌ　｀､　{:|}く＼ヽ/　　　　　　　│食事以外の時間はピアノに向かわされていた。　　　..│
　　ノ　 ,′ !　 　 {　 　 　 | l| 　 | 　 l　):|} ﾉ|:｢´　　　 　 　 　 └──────────────────────┘
.　 ヽ∧| ,　| 　 |　l　 　 　 | ｌ|　　|　 l|　{:|!::）|:|
　　　|::l| |　|　　ｌ　 、　 　 | l | _,厶| j| ｛::|}::} |｣
　　　l:::| ｀、!| 　 ＼ ヽ、　| イｯ==ﾐ､.|　|{K!j　|　　　　　　　　 　　「おかえりなさい。
　　 〈:;小､ヽヽ、Ｔ,ｯ==ﾐヽj　　　　　.,|　|ァ１　|　　 　 　 　 　 　 　 さ、レッスンしましょうね」
　　　　|　 ＼ヽN {　　　　　 　 　 　 |　ﾄ |_|　 |
.　　　｜　 | 　 l　＼ 　 　 ｀ ァ　 .／!| |::..::.｀:┴-､
. 　 　 |　　|　　|　 | ＞ ､　_＿ ／::..::|| |::..::..::..::..::..:ﾄ､



　　　　　　＿＿＿
　　　　 ／ノ　　ヽ_＼
　　　／ ●　　　● 　＼　　　　　　　　　　　「遊びたいよー」
　　　|⊃　(_,､_,)　⊂⊃　|
　　　＞　　　　　　　　ィ’
┌─────────────────────────┐
│だから本当は、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│仲間たちと別れを惜しんで眺めた夕日の思い出など、　　 　 │
│片手で数えるくらいしかないのである。　　　　　　　　　　　　　.│
└─────────────────────────┘

　　　　　　∧∧
～′￣￣(,,ﾟДﾟ)　　　　　　　　　あそぼうにゃー
　　UU￣U U



　　　　∧ ∧＿__
　 　／(*ﾟーﾟ)　／＼
　／|￣∪∪￣|＼／　　　　　　　　　あそんでー
　 　|　 　 　 　 |／
　 　 ￣￣￣￣



　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 .ノ　､　、
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ﾍ） ﾍ） .l　　　　　　　　　「可愛いなー」
　　　　　　　　 　 　 　 　 （人__）　|
　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ　 　 ノ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 rｚ_几_ｎ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 f⌒Ｕ::.::.::.::.::.し'＾)
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 r┘::.::.::.::.::.::.::.::.::.::.乙ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣}::.:､-､､-､::.::.::.::.::.::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 亡=-､} } 川￢ ｧ､::.::Ｎ:}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠二二ミYｌ |l i/// }ヽ.ｿ:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　__彡三三,＞ ⌒ ﾙ'// ハ （::.:|
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 .　 , ´ -─＝,∠ ＿　 ＼ '// / } _ﾉ::ト､
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／, ／　　 　 ／´￣｀ﾞ卞;㍉ // ｲﾊ〔::.::/:::::ﾄ､　　　　　　「やっちゃん、何をしているの？
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　// 　 　 　 ｉ　ヘ、　　ゝ__Ｘ イ/　 }ﾉ:/::::::::|:::了　　 　 　 小汚い動物に触るんじゃありません！」　
　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　 { i 　 　 　 ｜ヽソ　 　 　 ___ソ　 ｲ〆:::::::::/::.:ﾉ
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 { i 　 弋￢ｰ‐-,-､|　　,　　´￣　　　／:':::::::::::／::〔__
　　　　　　　　　　　　 　 　＿_＞‥＝二.／:::::::X´　　 _,　 ‐≦彡::::::::_;:＜:广《__}｝
　　　　　　　　　　　　 　／ ∠　 --‐一く::::::::::〃　　／:::孑_=≦二匸ノ_.ィ〃! 》´
　　　　　　　　　　　　／ ／　 ,=､ ___＜::::::::::::ﾉ）　)｀ヽー､　 ⌒ヾ;一 ''´　 l {{ l {!
　 　 　 　 　 　　　　/　/ ,. =彳 〃 ニヽ:::::::: ー '　ノﾉ／　=≦-┴──┐ヽ 　 ヽ
　　{　　　 ｀ ｰ ､＿_」　 !〃　＿/　　/ﾐ三;^i^i＾l＾ﾄ、::.::.:＼-‐─ァ ‐=ﾆ二,__ }　　 l
　　ヽ　ｨ⌒丶、　　　}　l　 _上　＼ノ::.::.::.:{　　　　 }::.::.::.::.::ヽ 〃ー一 ´￣￣!　　！
　　　ヽ ヽ　 　 丶 _ノ　j,.ｲ/::.::＾个'::.::.::.::.::ヽ ＿,.イ了::.::.::.::.::ﾞ、 >　 　　 　 /　　　′
　 　 f＾ヽ ヽ　　 ＿_, ィ::.:/::.::.::.::.:}::.::.::.::.::.::く{__,ﾊ广::! .::.::.::.::､:ヽ.　＿__　　ｲ　　　/
.　r‐､ヽ　}　ヽ 〈::.ィﾍ::.／::.::.::.::.;ｲ::__.::.::.::.::.::.Y::.::.::.::.::ヽ::.::＼::＼＼￣ ／/　　　/

　　　　　　　　　　　　　 .ノ　､　、
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｡゜○ ○）)｡゜。
　　　　　　 　 　 　 　 0　（人__）　|　ο　　　　　　　　　　「はい、おかあさん」
　　　　　　　　　 　 　 　 /^)　　.ノ
　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 |　　 |　|
　　　　　　　　　　　　　　 ゝl　 lし'
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀(＿ﾉ
┌──────────────────────┐
│子どもに逆らうことなんて出来なかった。　　　　　　　 .│
│そもそも、そんな思考することもできなかった。　　　....│
│すでにピアノは僕の一部になっていた。　　　　　　　.....│
└──────────────────────┘

　 ｢｀ー'′／　 　 /　　 ヽ、 ＼ ＼　 ヽl}::.:)､ ＼
　 l_,ｨ　　/　/　　 l　 　 　 l 、　 ｌ　｀､　{:|}く＼ヽ/
　　ノ　 ,′ !　 　 {　 　 　 | l| 　 | 　 l　):|} ﾉ|:｢´
.　 ヽ∧| ,　| 　 |　l　 　 　 | ｌ|　　|　 l|　{:|!::）|:|
　　　|::l| |　|　　ｌ　 、　 　 | l | _,厶| j| ｛::|}::} |｣　　　　　　　 　「遊びたい？
　　　l:::| ｀、!| 　 ＼ ヽ、　|,.イ,斗予 |　|{K!j　|　　　　　　　　　 やっちゃん、そんなこと言っては、
　　 〈:;小､ヽヽ、Ｔ,Ｚﾆミヽj　 ^ヾrｼ　|　|ァ１　|　　　　　　 　 　 一流のピアニストにはなれないわ。
　　　　|　 ＼ヽN {ヾtｸ　　　　 　 　 |　ﾄ |_|　 | 　 　 　 　 　 　 大事なのはレッスンよ」　　
.　　　｜　 | 　 l　＼　　　 ｀-　　 ／!| |::..::.｀:┴-､
. 　 　 |　　|　　|　 | ＞ ､　_＿ ／::..::|| |::..::..::..::..::..:ﾄ､
　　　 |　　j　 /|　 l/::..::..::..::..rｸﾆﾐ::../| |::..::..::..::..::./::..｀ヽ、
.　　　l　　 ! //l　 l::..::..::..::/;ﾊﾐZシ//| |::..::..::..::..:/::..::.｀ｰ┴―-ｫ
　　　j　　 ﾚ'∧!　,'::..::..::.〃::..::..::.ﾚ'/::| |::..::..::..::r'::..::..::..::..::..::..::/::|
　　 /　　/ / /|　ﾊ::..::..::..::..::..::. /l ﾄ､| |::..::..::..::{ー-::.ﾊ::..::..:: /::..|
.　 /　　/ ｜{::.| ||::.＼::..::..::..::../::.| l::.| |::..::..::./::..::..::/::..＼::./:ヽ:j

　


　　　　　　＿＿＿
　　　　 ／ノ　　ヽ_＼
　　　／ ●　　　● 　＼　　　　　　　　　　　　　　　「うん・・・・・・」
　　　|⊃　(_,､_,)　⊂⊃　|
　　　＞　　　　　　　　ィ’
┌───────────────────┐
│母の望んだままに振るまい、　　　　　　　　　　.│
│ピアノに没頭する日々。　　　　　　　　　　　　　.│
│それは好きとか嫌いとは関係なかった。　　　..│
└───────────────────┘

┌──────────────────────┐
│目の前には常に鮮やかなモノトーンがあった。　　 　 .│
└──────────────────────┘


;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
.　:　.　 　:　.::::.　　:　.　 :　..::::.　:　.　 　:　.::::.　　:　.　 :　　..　.:::::　.::::::::::　.　.　　:　.　 :::::..　.　:　.::::::::::　.　.:::::::::　.　 :::::..
.　:　.　 　:　.　.　　:　.　 :　..　.　:　.　 　:　.　.　　:　.　 :　..　.　:　.　 　:　.　.　　:　.　 :　..　.　:　.　 　:　.　.　　:　.　 :　..


┌──────────────────────────────┐
│今となってはグレンチェックと同じ程度の意味しか持たないけれど、　　　.│
│八年前までの僕には、すべて、だった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
└──────────────────────────────┘

　 　 　 　　{:::.:::.:::＞.::´￣ヽ、　,. -一 ヽ＿　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ┌─────────────────┐
　　　　,. -┘.:::.:/:.:::.:::.:::.:::ﾉ::.Y:;＿__.:.:./.:.:.:.:.ヽ　　　　　　　　　　　　　 　 │そうした生活の甲斐あって、　　　　　　　...│
　　　（.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:::.:;:､;:;∠二:.ヽ｀ヽ.:.:.:.:.:.:.:∟、　　　　　　　　　 　 　 │僕の両手は母親が期待した以上の　　.....│
　　　　）:.:::.:::.:::.:::.:::.;　'´　／／〈.:.:.:.:＼ ＼.:.:.:.:.:.:.::ヽ-へ　　　　　　　　　 │結果を叩き出すことに成功した。　　　　　│
　　ｒ''".:::.:::.:::.:::.:::／　/ /　/ ハ `ｰ‐┐＼ ヽ:.:.:.:.:.:.:ﾉ=ﾆ):＼　　　　　　　 └─────────────────┘
　　{ ::.:::.:::.:::.:::.; ′　　/ 　 　 　|　　　{_:.:.:.ヽ ヽ:.:.:.(二｀V/＾):､
　　 ￣つ.:::.::/ 　 /　,′　　　　| 　 　| ￣ヽﾊ. i.:.:.:.:.｀i!ヽ.!_/:./
　　　（:.:::.:::.::!l!　 l 　i　　　　　 |l!　　 |　　ノ:.:.| |:.:.:.:.:.:||:.ﾄ､;:ノ
　　　　｀７:.::|l| 　|　ﾊ　　　　　 ;'|　　　　 し-､| |:.:..:_ノ.|.:| |
　　　　　 ヽ|H　 |　| l__,　　　 / |　　/　 /　ノ|/:.:ん. l |:.| |　　　　　　　　　　　「私の血を引くだけあって、
　　　　　　 |ｌ!ヽ. 代「 ヽ.　 , / `ト､/!　,ｲ. く:.:/:.; -┘| L｣ !　 　 　 　 　 　 　 　 やっぱり、やっちゃんは天才だわ」
　　　 　 　 |　 l Ｎ.--ミ ヽ/ｿ　_ﾚ'´ lメ /／ |／　 |　|　　 |
　　　 　 　 |　 ! |l,ｨ^h.､　　　 ´￣ ヽ　1　　| 　 　 |　|　　 |
　　　　　　 | ！（ { { | |　' ＿,　"""　ﾉ!| 　 |　　　 |　|　　 |
　　　　　　！.| |_＼　 ヽ、 　　 _,. ＜._| !　 |ヽ.　　 |　|　　 |
　 　 　　 　 !/〈.:.:.Y_>､　}､￣´;:;:;:;:;:;://| 　|:.:.::',　　ｌ　l 　　|
　　　　　　 ム-レく.:.:.:_}ﾉ:@;:ニ、;:;:;//;:;! ､|:.:.:.:.:L_　!　!　　|
　　 　 _,.∠=ﾆ〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/ﾆ　 V;〈〈_;/|　ヽ:.:.:.:.:.:L_l　!　　|
　　　 `ｰﾆ二_‐ﾍ.:.:.:.:.:.:.:.:(ﾞこ 　/'^ﾍ V:.:＼　＼:.:.:.:.:{! |　　 !
　　　　　＜:.:.:.￣} .:.:.:.:.:.:.:｀}　ノ:.:..:.ハ V:.:_＞- ヽ.:.:.:.} |　　 i
　　　　　　|_＞'７.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:Y.:.:.:.:.:.:.:.::.:>'"　　／:.:r‐'´〉、　　i

　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,　,.ノ　 、
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 l　（● ●　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┌────────────────────┐
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　 （__人）　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 │十の時に初めて全国規模のコンクールで　　 　 .│
　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　 　 ノ　 ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　│三位に入賞したのを皮切りに、　　　　　　　　　.....│
　　　　　　　　　　　　　　 /　　 く＼　 　＼　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │高い評価を得続けた。　　　　　　　　　　　　　　　 │
　　　　　　　　 　 　 　 　 |　　　　つ＼ 　　＼　　　　　　　　　　　　　　└────────────────────┘
　　　　　　　　　　　 　 　 ヽ ＿_　）　　＼ 　　＼
　　　　　　　　　　　　 　 丁丁Lノ　　　　 ＼ 　　＼


　 　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／
＜ 　　　コンクール優勝
　|　　 　 如月やらない夫くん！
　＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

　　　　　　　　　　　　　　 .ノ　､　、
　　　　　 　 　 　 　 　 　 ● ●） l
　　　　　　　　　　　　 　 （人__）　|　　　　　　　　　「賞？　貰えんならもらっとくよ」
　　　　　　　　　　　　 　 ヽ　 　 ノ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　┌──────────────┐
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /　 　.ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │三年を超す期間、　　　　　　　　　 │
　　　　　　　　　 　 　 　 （|　　 |　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 │一位以外の順位に甘んじた　　　..│
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ゝl 　し'　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 │経験がなかった時期もある。　　　│
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｀(＿ﾉ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 └──────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,､,,,_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿_,,,､イ´;;;;;｀＞＝-､,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /;;;γ;;;;;;;;┌;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/＿
┌─────────────────┐ 　 　 　 ノ;;;;;;;;i;;;;;/;;;;ﾉ;;;;;;/;;;／i;;;;;;;;;;;;;;７
│友達だと思ってたやつもいたけど、　　　 .│　　　　 {;;;;;;;;ノ;;;;ﾉ;;く;;一〈;;;;;!wﾉ／i;;;;;;;′
│成功と才能と引換に友達を失った。　　　.│　　　　 i;;;;ﾉ;;;;;;;ｲﾙｲ＞(;;;γ　　彡';;;八
└─────────────────┘　　　　ノ;;;/じソ 　`で;;)｀);ト　　（;;ノ;;;ｿ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　!;;ﾄj ( 　 　`ｰ＝ ｿ 　 ヘ;);;（´ｿ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　）;〉ｰ　　u 　 　 　　 ６ｿ）ﾉ)ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 （;/　 ; 　　　/ ⌒ ､　ゝ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　）　　＼　　ヽ - '　　 ′　　　　「クソ、何でお前が、お前なんかに！
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,.-ｰ-:.､_＿ 　 　┌‐┴￢､,,,, ＞　_　／　　　　 　 　 僕はお前を絶対に認めない」
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.￣´¨｀.:.:.:.:.:.:|;;|;;|:.:.￣i
　　　　　　　　　　　　　　 _＿ｒ:.:￢':.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. 「;i;;i':.:.:.:.:.:.:｀ｰ─‐--､,,,,_
　　　　　　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:;:;:;:;:;:;:;:;:i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|;;|;;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　　 _...,.,..:-:ｰ:':.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i;;i;;i':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.',
　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:_.,.,－､:.:.:.:.:.:.;:;:;:;:;:;:;:;:;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|;;|;;|:.:.:.:r───ｭ:.:.:.:i:.:.:;:;:;:;:;L
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　 　 　 　 {:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!;;;l |￣　　　　 ⊂ソ┐.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:..ヽ
　　 　　　 ',:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!;;;l:.| 　ー- 　 　⊂ニ〈:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　 ｀"ｰ､:,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!;;;l: Ｌ　　　　ー⊆二ｿ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.,';:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　｀￣ " ｰ - ､_.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.!;;;!:」:.:.＞､　　ー''つ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ハ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　￣￣￣´i￣:.:.:.:.:.:.:.:.:＞ｰ"´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　 ヽ;:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.Ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|;;|;;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　　 　＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｛:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|;;|;;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　　　 　　＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|;;|;;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾍ　　　 　　 　＼:.:.:.:.:.:.l:.:.:./:.:.:.:.:i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|;;|;;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/　　　 　　　　　＼:.:.:l.:.:/:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|;;|;;|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l　　　　 　　　　　　∨ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ┌──────────────────────┐
　　　　　　　　　　　　 　 　　　　　　　 　 　　　　　　　_. イ⌒ 　 .│それでも誰かに認められる、　　　　　　　　　　　　　......│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 　　 　 , ､_ノ⌒）´　　　　.│ということに喜びを見出していたせいもあって、　　　　│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.　- ─ｧ⌒　　　　　　　　　　 │レッスンはすでに苦痛ではなかった。　　　　　　　　　 .│
　　　　　　　　　　　　　　　　 　／　　 　/:::::::::::::::::::::::::::::.......　 　 └──────────────────────┘
　　　　　　　　　　　　　　　 .　'’ 　　　 /───　　- ＜::::::::::.　　　 　 　 　　(_
　　　　 　 、　　　　　　. ィ’　　　 　 　_)　　　 　 　 　 　 ｀　. :::::::.　 　 　　　　　 ｀ヽ
　　　　　/　＼　　　／:::::|　　 　 　( ´　 　 　 　　 　 　　 　　` .::::::::　　　　　　 　　ﾉ
　　　　　)　　　ヽイ : : :::::|/__ 　 　 ﾉ　　　　　 　　　　　　　 　　＼::::::::.　　　　　 (´
　　　　（　　ヽ. 　│.::::::::::|　　　（´　 '　 ,　 ′ i! 　 　 　 　 　 　 　＼::::::::::.　 　　 ｀7
　　　　　 )　 　＼.|.::::::::::::|　　　　7 /　/ /　　 i!　　 　 　　 　、　　 　ヽ::::::. 　 　　）
　　　　　' 　 　 　 |:::::::::::::|　 （⌒' /　 ' / 　 　 i!　　 　 　 　　 ＼ 　　 　V::::..　　 ﾉ
　　　　（ _　　　　 |:::::::::::│　　) / i 　i !　　 　 i!　!　　　　　　　　　､ 　　 i:::::::...ノ
　　　　 ｲ::｢ ) 　　 V.::　　|　 「 .'　 i 　i !/i 　 　ヾ | 　 　　 　 　　 　 !ヽ　 |::::::..ﾉ
　　／　 !::|(__　　　 ヽ::.. r‐v7/ 　∧　!l斗十 |│ ＼! 　 !　　 ! 　　 ′i　 |::::::::）
　.' 　 　 !::|ゝ==) 　　　 rfぅjV　 ハ)/7从 ､|　|│ /:||＼ i 　 ｲ　　/　 .′ !＿＼
　 　丶　!::| ＼　ゝ-.．　ゝ少ﾉ ,'　 |'　　 _　　　,乂::ﾉ / ､ヽ. / 　-― y'´／￣ﾍ
〈 　 　 ＼:|　　ヽ　ヽ ` ｰﾍ　 /　 ｜ｧ=＝ミ　　 ／ﾚ')／ゝ/)/´／￣｀'´r‐ ､/ム
　ヽ　　　ヾ: 、　 〉、 ＼　　V　　　|　　 　 　 　 　 　 r=ミ、,' /　　 　 　ゝ〈_厂}|
　　 ＼ 　　|:|＼ !:::|　　 ヾ　|　　 ハ ////　　　　　　　 　 l　!　　　　/ {_ノ{_ﾉ､j＿__
　　　　ヽ.　|:| 　 |:::|　r.. ―┤ 　| 　'.　　　 　 　 ′　///　!｜　　　/　/ 　|l -､￣｀ヽ〉
　　　 　 　 |:| 　 |:::ﾄ<:. 　　│ 　ト　i!　　 　 ` ー 　 　 ｲ　ヽ'、 　 /　/　/　＼}
　 　　 　　 |:| 　 |:::|　＼　 人 　 ＼:ﾄ､ 　 　 　 　. ＜__j!　＼.＼ //￣ヽ{.／　 }ヽ
　　 　 　　 |:| 　 |:::| 　　 Y'　 ＼　　＼ ＞ -＜´:::::::::::: i!ー-,　 jV ／⌒}.／￣}　　
　 　 　 　　ﾚ′Y::/ 　 　 | ヽ. 　＼　　＼tfうj} :::::::::::; / 　 /　 / ´　／ﾞ} ／￣}　　
　 　　 　 　　　│! 　　　ム-‐─‐-ゝ　　 ):少 :::::::::; / 　 /ヽ. ,{　　　, 勹ｰ冖ノ

┌────────────────────┐
│持てる時間のすべてをピアノに充てるのを　　　 .│
│当然と考えるようになっていた。　　　　　　　　　　│
└────────────────────┘
　　　　　　　　 　 　 　 ￣　　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　　　　＼
　　　　　／　　　　　　　　　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　 　 ＿ ヾ
　　　　'　　 　 　 　 　 　 　 　 ´ 　　`ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　/ .,.....､ヽ
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　{::::::}　l　　　　　　　　　　　「次もぶっちぎりで、いただきかな？」
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　｜　（
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ_/
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
┌───────────────┐
│これしかない、というよりは、　　　　 .│
│自分にはこれができるのだ、　　　.....│
│という自信が原動力だった。 　　　　.│
└───────────────┘

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　　　　　　 　／￣￣＼
　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　 　 　 「傲慢になってたことは否定しない。
　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　 ただ、自分にはこれしかないと思ってた。　
　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　 　 　 自分が自分であるためのピアノだった」　
　　　　　.ｌ^l^lｎ　　　　　 　 }
　　　　　.ヽ 　 L　　　　 　 }
　　　　　　 ゝ 　ﾉ　　　　ノ
　　　　　／ 　 /　　　　　＼
　　　 ／　　 /　　　　　　 　＼
　　. /　　 　/　　　　　　　　-一'''''''ー-､.
　　人＿＿ﾉ　　　　　　　(⌒＿(⌒)⌒)⌒))



　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　　　　　＼
　 　 　 　 　 |　 　　　　　　　|
　 　 　 　 　 |　　　　　　　　│　　　　　　　　　　　　「誰だってそういうものの一つやニつある。
　　　　 　 　 | 　　　　　　　　|　　　　　　　 　 　 　 　 お袋にとっても、俺がそういう存在だったんだろう」　
　　　　　　　｜　　　　　　　 |
　　　　　　　　ヽ　　 　　　　/
　　　　　　　 　 ヽ　 　　　 /
　　　　　　　　　　>　 　　 <
　　　　　　 ／,⌒ 　　　 　　⌒
　　　　　 ./　/|　 　　　 　 　　　＼
　　　　 ／／　|　　　　　　.　| ヽ、二⌒)
　　 (⌒／　　 |　　　　　　.　|



　　 ／￣￣＼
　／　　 　 _ノ ＼
　|　　　 　 （ ●））　　　　　　　　　　　　　　　「恨むなんて気持ちはない。
.　|　　　　 　 （__ﾉ_）　　　　　　　　　　　　　　　子どもの頃はそんなこともあったかもな・・・」
　 |　　　　　 　｀⌒ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　 　 ,　-──────- ､
　　　　　　　　／　　　　　　　　,. -‐-.､　`‐､
　　　　　　　/./`::‐ ､.＿_,...‐'::´::::::::::::::::ヽ　 ヽ
.　 　 　 　 /./::::::､:::::::::::::::::::;:::‐'::::::::::::::::::::l. 　 !
　　　　　 //　　:::::`:ｰ-‐::'::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　ｉ
.　　　　　|'￣｀~`'‐､:::::::::::, ‐''"~´￣￣ :::::::! 　 |
　　 　 　 l.　 ─‐-　:::::::::::-──　　:::::::／　　 |　　　　　　 　 　 　 「さすが彼女の息子さんだ。
　　　 　 │＝==｡=,　:::::::==｡=＝＝　:::::| l⌒i　|　　　　　　　　　　　 なかなか教えがいがあるわい」
　　　　　│ ` ‐-‐/ jv :::ヽｰ--‐ '　　:::::|.|,ﾍ |. |
.　　 　 　 l.　ｰ-‐/　　u:::::ヽｰ--‐'　 u::::|ト､ l　|　　　　　　　
.　　　　　 |　,r‐'〈__,､＿,､＿〉　`ｰ-‐ ､::::|!_ノ　 !　　　　　　　
　 　 　 　 |/ ,,,;;;;;;;;;; 　 　 ;;;;;;;;;;;;;;,,,,,　 l::::|ヽ　　|＼
　　　　 　 l 匚匚匚匚匚匚匚匚匚lヽ::::|:: ヽ　|::::::＼　　　　　　 ┌──────────────────────┐
　　　　　　| `┴┴┴┴┴┴┴┴┴':::::!::　 ヽ|::┃::::i`‐ 　 　 　 │中学の後半から高校にかけて、　　　　　　　　　　　　 .│
.　　　　　　!、　　　 =====　　::::::::::::::／::　　 ゝ::┃:::::|:::::　 　 　 │僕は次々と国内の高名な指導者に師事した。　　　　 │
　　　　　 ,. ‐'`i'‐ ､　　　:::::::::::,　‐ ' ´::::　　 ／;|:::┃:::::|::::　　　　 │かの母の恩師に教わったのもこの時代である。　　.....│
　　 ,. ‐'´┃:::::|:::┃::`i ‐ ' "´:::::::::::::　 　 ／;;;;;;|::::┃:::::|::::　 　 　 └──────────────────────┘
　　:::::::::::┃:::::|:::┃::::::ﾄ､:::::::::::　 　 　 ／;;;;;;;;;;;|:::::┃::::::|:::




　　　　 ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　ヾミ || || || || || || || ,l,,l,,l 川〃彡|
　　　　　V~~''-山┴''''""~ 　　ヾニﾆ彡|　　　　　　　
　　　　 /　二ー―''二　　　　　 ヾﾆニ┤　　　　　　
　　　 <'-.,　　￣￣ 　 　 _,,,..-‐､　〉ニﾆ|　　　　　　　
　　　/"''-ﾆ,‐l 　　l`__ニ-‐'''""` /ニ二| 　 　 　 　 　　　　　　「くくく・・・やはり見込んだ通りの才能・・・」
　　　|　==＝､!　　`＝====､　　l =ｌべ=|　　　 　 　 　
.　　　| `ーﾟ‐'/　　 `ー‐ﾟ―' 　　l.=lへ|~| 　 　 　 　 　
　　　 |`ー‐/　　　　`ー――　　H<,〉|=| 　 　 　 　 　
　　　 |　　/　　　 ､　　 　　 　 　 l|__ノｰ|　　　　　　　
.　　　| ／`ー　~　′　　 ＼　　　.|ヾ.ニ|ヽ
　　　 |ｌ　下王l王l王l王lヲ｜　 　|　ヾ_,|　＼　　　　　
. 　 　 |　　　　≡　　　　　　　　　|　　 `l　　 ＼__　　　　 ┌────────────────────────────┐
　　　　!、　　　　　　　　　　 _,,..-'′ ／l　　 　 |　~'　　　.│彼の尽力で、幾度か海外の演奏家に見てもらうこともできた。　　　 .│
‐''"￣|　`iｰ-..,,,＿,,,,,....-‐'''"　 　 ／　 |　 　 　 |　　　 　 └────────────────────────────┘
　-―|　　|＼　　　　　　　　　 ／　 　 |　　　 　 |　　　
　 　 |　　 |　 ＼　　　　　　／　 　 　 |　　　　　 |

┌────────────────────────┐
│初めてCDレコードを出させてもらったのも同じ頃だ。　　　..│
└────────────────────────┘




　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　／　─　 ─ ＼
　　　　　　　　　　　|　 <●><●>　|　　　　　　　　「いきなりソナタとか、
　　　　　　　　　　　| u.　（__人__）　 |　　 　 　 　 　 僕って小市民ハートなんで」
.　　　　　　　　　　　|　　 ｀ ⌒´　　}
　　　　　　　　 ＿　_|　　　　　　　 l　＿
　　　　　　　 / l　　 ヽ　　　　 　 / 　 ｌ ヽ
　　　　 　 　 |　ｌ 　 　 ヽ　　　　ノ　　/　 |
　　　　 　 ,　-―-、　　　　ー　　　 ｌ　　|
　 　 　 ／　　　 　 ｌ 　　　　　　 /´￣｀＼
　　　 /　　　 /　, 、 ＼ 　 　 ＿/　　　　　＼
　　　 l l　|　/　/　＼＿）　 （＿_,ノ{　l　|　l　 l
　　　 〈l 〈　l　 |　 /l　　　　　　　l　∨　l　l　/l
　 　 　 ＼ヽ{_,ﾉ／/　　　　　　　 ＼{__,ﾉ 丿ﾉ/


│■│■││■│■│■││■│■││■│■│■│
│■│■││■│■│■││■│■││■│■│■│
││││││││││││││││││││││││
└┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┴┘

　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　「できれば少作品がいいかなと・・・」
.　|　u.　　 （__人__）
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　 　 i⌒＼ ,__(‐- ､
　 　 l ＼　巛ー─;＼
　　 　|　｀ヽ-‐ーく＿）
.　　　 |　　　　　　l


　　　　　＿　 ＿__
　　　　7ｨ =ﾐ´三｀ミヽ　　　　　
　　　 1 ｌｌ f"ﾞ''"1ヽﾐヾ`、　　　
　　　 ﾘ|ﾙﾘ　 r‐ヾﾐヽﾐ､|　　　　　　　　　　「仕方ありませんねえ」
　　　　ｌせ〉　せﾗ ||ヽｌｌ|　　　　　
.　　　　| く 、　 　 ﾘｿ lｌ|　　　　　
　　　　 ｌヾﾆニフ /ｌｌ|_l_|
-‐ '' "´ lヽ＝ ／|l |ｌ| ≡｀" '' ‐-　　　
≡≡≡ |ﾘ|`<.／|ル′≡≡≡≡　　　
┌────────────────────────────────┐
│会社の方は、できればソナタを、という意向が強かったのだが、　　　　　　　.....│
│最初は少作品みたいなものがいい、と無理を通したことを覚えている。　　 　 .│
└────────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　 　　　／　_ノ　 ⌒ ＼
　　　　　　　　　　　　　　 　　|　（ ●）　（●） |　 　 　 　 　 .┌────────────────────────┐
　　　　　　　　　　　　　　　 .　|　　 （__人__）　 |　　　　 　 　 │その頃の思い出、というのはひどく中途半端である。　　.....│
　　　　　　　　　　　　　 　　 　|　　　｀ ⌒´　　|　　　　　　　 └────────────────────────┘
　　　　　　　　　　　　　　　_入 |　　　　　　 　}人
　　　　　　　　　　　　 , イ　 /　ヽ　　　　　 　}　 l＼
　　　　　　　　　　　／　　　 |　 |ヽ　　　　　ノ! 　| 　ヽ.
　　　　　　　　　　　|　ヽ、　 | 　.V::::` ー ':::::.;.　 |　　∧
―――――――｢´　　｀i. /__,厂V::::::::::::::::.:/ｨﾍ」　 /　　ー―――――――
￣￣￣￣￣￣ /　　　　 | ´ 　 　 ﾍ、::::::::::/.　　 　,' ,ｨﾆ｀ﾍ￣￣￣￣￣￣￣
　　　　　　　　 /　____　　 |　 　 　 　 ＼_／　　　　r/　　　∧
.　　　　　　 　〈ィ´　　｀ヽ｣j　　　　　　 ｢　　 　 　 　{以イ´￣｀ヽ、
　　　　　　 　r'　　　　　　 ｀¨￢-､_ 　 |　　 r‐‐-ｨﾁ´　　　　　　 〉
　　　　　　　 ｀ゝｭ,,＿_ 　 　　　　　｀¨亠'"´￣￣ﾍ　　　__,ｨ=≦ヽ
　　　　　　　f´　i　. . .:｀寸=ー----ｭ､,_＿_ ,、　, ,　〉ｬ'´／.: : : i 　',
――――‐┤　:i　. . .: : :} ＼　　　/　 　 ,斗ｸ,々ｙ′ ,.′ : : : :i::. ∧ー―――
￣￣￣￣￣!　 :i　. .: : : ::V ｿゝﾍ/　　 T′｀^__ｿ.: : :/　　.: : : :i::. : : :,￣￣￣￣
　 　 　 　　〈.: i.: :i　. : : : : :} '.:: : /　　　 ﾄ､,ｆ壬ｲ.: : :,ハ 　.: : : ::i:. : ::/
　　　　　 　 .V .:: i　. : : : ::iｙ.: : :ﾊヽ　__ｨﾆ′.,'.: : : : : : j　.: : : : i:. : :{
　　　　　　 　 ’.:.::i　 . : : : l.: : : : :｀^´.: : : :,ｲ/.: : : : : : :l　.:,'.: : :i:. : :|
　　　　　　　　 |.:.:.i　 . : : ::|.: : : : : : : : : :.,'／. : : : : : : :i　/.: : : i:. : ;'
　 　 　　　　　 .i.:.:.i　 . : : ::|.: : : : : : : : .::′. : : : : : : : :l /.: : : : i:. :;'
＿＿＿＿＿＿|.:.:.i　 . : : ::!ゝ　＿____＿＿＿＿＿／l/.: : : : ::i.::,′＿＿＿＿＿
―――――一|.:.:.j　 . :ヽ├―――――――――┤.: : : : : !〈ー―――――‐
　　　　　　 　 ./.:.,'__, . :ｭ_.∧　　　　　　　　　　　　　,ﾉ.: : :,: :ｭ_:∧
　　　　　　　　{.:.:,≧--‐‐'ﾆ 〉　　　　　　　　　　　 .〈.: : ;ｲ-‐‐.: :.;}
　　　　　　　　 ＼r‐－' ｀ヽ,'　　　　　　　　　　　　　.}.: : :≧､.:イ
　　　　　　　　, ｲ-‐マ､__,ハ　　　　　　　　　　　 　 〈.斗ｧ´￣｀L
　　　　　　　仁二ニﾆヽヾY′　　　　　　　　　　　　 {__yｲ,仁二ﾆム
―――――ゝ=＝＝=ー┴―――――――――┘--≦二二ニー―――

┌──────────────────────────────────┐
│確かに学生時代というか、思春期と呼ぶべきものを送ったはずなのだけれど　　.....│
└──────────────────────────────────┘
　　　　　　　　　　　 |l　 |l |≠ﾐ､ｌ|　,/__,/ / /　/r=≠へ､::人_::.＼::.::.::.::.:ﾉ
　　　　　　　　　　　 |l　 |l |{ {_j＾ｌ| / _､__｀メ、/　}ｲ以ｆ}ﾊ}::.::.::.::.::.::｀ｰ‐Y
　　　　　　　　　　　 | ヽi|〉!　　　l'　´了㍉、 >､ﾊ戈ｨくソ::.::.::,小､::.::.:: ﾉ
　　　 　 　 　 　 　 ,-､／ ﾊ　 '　　 　 ゝｨ斗/ｲ／／又::.::.::イ〉| |ﾄ,￣´
　　　　　　　　　　〈／／/ハ丶 _　　　　　〃厶ｲ__｣_/７,ｰイ/i|｜､ヽ
､ 　 　 ＼､ ＿　／ イ:::// :;;ﾍ ___rー─／ /--‐ "´' //| l// ｌ|｜ l }
::.＼ 　 　 ＼:／／ｰﾉ:〃::::ｆ抔ﾊ〉|::::::::/ , ｲ､:＼ 　 //ハl//_///_ノ/
┌──────────────────────┐
│周囲にいたのが年長者の記憶ばかりが鮮明で　　　 .│
└──────────────────────┘
　　　 <'-.,　　￣￣ 　 　 _,,,..-‐､　〉ニﾆ|　
　　　/"''-ﾆ,‐l 　　l`__ニ-‐'''""` /ニ二|
　　　|　==＝､!　　`＝====､　　l =ｌべ=|　
.　　　| `ーﾟ‐'/　　 `ー‐ﾟ―' 　　l.=lへ|~|
　　　 |`ー‐/　　　　`ー――　　H<,〉|=|
　　　 |　　/　　　 ､　　 　　 　 　 l|__ノｰ|　　　　　　　
┌───────────────────────┐
│ピアノの次に多くの時間を過ごした友人たち――　　　....│
└───────────────────────┘

┌───────────────────────┐
│彼らが僕のことをそう思ってくれているかどうかは　　　...│
└───────────────────────┘
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―￣￣―‐――　＿＿＿￣
――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――

　　 　 |　　　　　 __´___　　　　　|
　　　　＼ 　　 　 `ー'´ 　　　／
　　 　　ノ　　　　　　　　　　　＼
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―￣￣―‐――　＿＿＿￣
――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――
┌─────────────────┐
│まあ確かめる術もないけれど――　　 　 .│
└─────────────────┘
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―￣￣―‐――　＿＿＿￣
――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――

　　　　　 |:.:.:.:.ヽ、ヽ:|　｀!:ヽ:|、|　　　　　　 ／ ﾚ′
　　　　　 |:.:.:.:.:.:.:.＼/　 ‘， ＼＼ 　 　― ´
　　　　　 |:.:.:.:.:.:.:.:. |　　　ﾍ:.:.:.ﾍ　　　　/
　　　　　 |:.:.:.:.:.:.:.≠__　　　ﾍ:.:.:ﾍ ―‐´
＿＿―＿＿＿＿＿￣￣￣￣‐―￣￣―‐――　＿＿＿￣
――￣￣＿＿＿￣―＝＝＝━＿＿＿￣―　　――――
┌────────────────────────────┐
│その人々の印象というのは、なんだか頼りなげなのである。　　　 　 │
└────────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　 ┌───────────────────────────────┐
　　　　　　　　　　　　 │　　　　　＿　 ＿__　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
　　　　　　　　　　　　 │　　　　7ｨ =ﾐ´三｀ミヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
　　　　　　　　　　　　 │　　　 1 ｌｌ f"ﾞ''"1ヽﾐヾ`、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
　　　　　　　　　　　　 │　　　 ﾘ|ﾙﾘ　 r‐ヾﾐヽﾐ､|　　　　　　　　　「ディレクターの一条といいます」　 　 .│
　　　　　　　　　　　　 │　　　　ｌせ〉　せﾗ ||ヽｌｌ|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
　　　　　　　　　　　　 │.　　　　| く 、　 　 ﾘｿ lｌ|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
　　　　　　　　　　　　 │　　　　 ｌヾﾆニフ /ｌｌ|_l_|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 │
　　　　　　　　　　　　 │-‐ '' "´ lヽ＝ ／|l |ｌ| ≡｀" '' ‐-　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
　　　　　　　　　　　　 │≡≡≡ |ﾘ|`<.／|ル′≡≡≡≡　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
　　　　　　　　　　　　 └───────────────────────────────┘

　　　　　 ┌──────────────────────────────────────────┐
　　　　　 │　　　　　　　　 ,r.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:､､　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
　　　　　 │　　　　　　　　{.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
　　　　　 │　 　 　 　 　 〈.:.:.:.:.:,r'⌒{i.:.:.:.:.:.:.:.::r‐-､.:.:.:.:.:.:.:.:.::{　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
　　　　　 │　　　　 　 　 ﾄ.:.:.:, ′ 　 i!.:.:.:.:.:.:.ﾉ　　　 ヾ.:.:.:.:.:.:{　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
　　　　　 │　　　　　　　 ﾄ.:.:.{　　　　 `''''''"´　　　　　}.:.:.:.:.:.}　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
　　　　　 │　　　　　　　 ﾊ.:.:〉　　　 ､　　　 ,,..　　　　 }.:.:.:.:.:!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
　　　　　 │　　　　　　__」Ｎ.:{　ｰr‐･ｧゝ　(´ ,,,,,,__　　 ,!.:.:.:.:.j!　　　　 　 　 「素晴らしい、ロシアでも君ほどの　　　　　　...│
　　　　　 │　ﾆﾆ7 "7/ /V.:.{　　~二ｼ　　};;;.ｰ‘ ‐'｀` ';.:.:.:./ﾊ　　　　　　 　 才能ある若者に出会ったことがない」　　　　│
　　　　　 │　´￣ V/ /ミﾐ.:.:!　 　　　,.} 　!.::)　　　　　!.:.:.ｲ ﾊ_　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .│
　　　　　 │　.:.:.:.:.:ﾘ　{ミﾐ.:.:.彡　　　r'彡ﾊミﾐヽ　　　ﾉ.:.:.:V　 ﾄ`ﾆﾆ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　....│
　　　　　 │　:::::::::::!　　`ヾｼｼ 　　r　‐‐-- ､､_,,　　ﾄ.:.:.:.:.彡　 !/´￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
　　　　　 │　:::::::::::!　　　　ﾄ､ 　 　 (　_ ＿,,,　　　 ミﾐヽ.:.:ﾉ　 ﾘ.:.:.::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
　　　　　 │　:::::::::::',　　　　ヽ!　　　　　　　　　　　　 ノ(⌒ヽV.:.::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
　　　　　 │　::::::::::::ヽ　　ﾄﾄ､ ＼　　　　　　　　,．'"´ ﾊﾄﾄ､　.:.:.:::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.│
　　　　　 │　:::::::::::::::::＼_|11! 　//>`ヽｰ---ィ´　　 ﾉﾉﾘ^ヽヽ __ノ.:.:　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
　　　　　 │　::::::::::::::::::::::::＼ V//　　　 ￣￣｀`ヽ　 ﾉﾉ　　　　!:::::::::::　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
　　　　　 └──────────────────────────────────────────┘
┌─────────────────────────────┐
│印象に残るのは、辛うじて音楽に関わっていた人達のみだった。　　.....│
└─────────────────────────────┘

┌────────────────────────────────┐
│級友たちの顔と名前は、アルバムを開いてもあまりきちんと一致しない。　　....│
└────────────────────────────────┘
　 　　 ／￣￣＼
　 　／　　 _ノ　　＼
　 　|　　　 （ ー）（ー）
.　 　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　「えっと、誰だっけこいつ？」
　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　 　.ｌ^l^lｎ　　　 　　}
.　　 ヽ 　 L　　　 　}
　 　　ゝ 　ﾉ　　　ノ
　 　／ 　/　　　 ＼
　 ／　 /　　 　 　　＼
. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　ヽ＿＿ﾉ




　 　　 ／￣￣＼
　 　／　　 _ノ　　＼
　 　|　　　 （ ●）（●）
.　 　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　（俺、何やってたんだ？
　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　 　 　 　 　 　 連絡取り合う友達一人もいないのな。
　 　.ｌ^l^lｎ　　　 　　}　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ハハ、ワロスワロス・・・・・・）
.　　 ヽ 　 L　　　 　}
　 　　ゝ 　ﾉ　　　ノ
　 　／ 　/　　　 ＼
　 ／　 /　　 　 　　＼
. /　　/　　　　　　|ヽ、二⌒)､
　ヽ＿＿ﾉ

　　 ／￣￣＼
　／　　 　　 　＼　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ┌─────────────────┐
　| 　　　 　　 　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │ピアノ、ピアノ、ピアノピアノピアノ。　　　　│
.　|　　　　　　　 　|　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 └─────────────────┘
　 | 　 　 　　　　　|
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽニニニﾆノ　､_
　 ／:::::::::::::::::::::￣`ｰ
　 ヽ:::::::::::::::::::::::ｰt-.._:
　　　ヽ::::::::::::::::::::::::i



　　 ／￣￣＼
　／　　 　_ノ　＼
　|　　　 　（ ●）　）
.　|　　　　 　（__ﾉ､_）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┌───────────────┐
　 |　　　　　 ｀ ⌒ﾉ　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 │それ以外のものはなかった。　　　　.│
.　 |　　　 　　　　 }　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 └───────────────┘
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |

　　　　　　　　 　 　 　 ￣　　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　　　　＼
　　　　　／　　　　　　　　　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　 　 　 　 ノヾ
　　　　'　　　　　　　　　　　　ー ´　　ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　/ .,.....､ヽ
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　{::::::}　l
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　┌──────────────────────────┐
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／　　　　 　 　 　 　 　 │初めから、最後まで、そして終わってしまってからもなお。　　　 │
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´　　　　　　　　　　　　　 └──────────────────────────┘
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./

┌─────────────────────────┐
│僕にピアノを教えてくれた母の恩師が　　　　　　　　　　　　　...│
│留学の話を持ってきたとき、僕はこれだと飛びついた。　　　 │
└─────────────────────────┘
　　　　 ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　ヾミ || || || || || || || ,l,,l,,l 川〃彡|
　　　　　V~~''-山┴''''""~ 　　ヾニﾆ彡|　　　　　　　
　　　　 /　二ー―''二　　　　　 ヾﾆニ┤　　　　　　
　　　 <'-.,　　￣￣ 　 　 _,,,..-‐､　〉ニﾆ|　　　　　　　
　　　/"''-ﾆ,‐l 　　l`__ニ-‐'''""` /ニ二| 　 　 　 　 　「やらない夫くん、オーストリアに留学してみないかね。
　　　|　==＝､!　　`＝====､　　l =ｌべ=|　　　　　　　　高校を卒業したら行ってみないかね。
.　　　| `ーﾟ‐'/　　 `ー‐ﾟ―' 　　l.=lへ|~|　　　　　　　　君を受け入れても構わないと先方も乗り気でね。
　　　 |`ー‐/　　　　`ー――　　H<,〉|=|　　　　　　　　悪い話ではないと思うんだが？」
　　　 |　　/　　　 ､　　 　　 　 　 l|__ノｰ|　　　　　　　
.　　　| ／`ー　~　′　　 ＼　　　.|ヾ.ニ|ヽ
　　　 |ｌ　下王l王l王l王lヲ｜　 　|　ヾ_,|　＼　　　　　
. 　 　 |　　　　≡　　　　　　　　　|　　 `l　　 ＼__　　
　　　　!、　　　　　　　　　　 _,,..-'′ ／l　　 　 |　~'　
‐''"￣|　`iｰ-..,,,＿,,,,,....-‐'''"　 　 ／　 |　 　 　 |　　　
　-―|　　|＼　　　　　　　　　 ／　 　 |　　　 　 |　　　
　 　 |　　 |　 ＼　　　　　　／　 　 　 |　　　　　 |




　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　「オーストリアですか」
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　　　　 ﾉ ＿　＼ヽ { i} ／Z _∠r√¨`ﾊ
　　 　 厂 _ｿ´｀` ヾﾊﾉ/-‐'´　　 ヾ＝弌
　　　　ﾝ_,イ!　　　 ｲ|{ヽ　　　　　r/二ﾆ〉
　　　　 ヾ、j　＿　__｣{ ﾉ ＿,,,,､､_! 〉孑/
　　　　　 {ヽ'"フｭｯｷ< ｀＾､''エi'ヽ-,ﾊr‐}　　　　　　　　「その気があるなら、私のところから
　 　 　 　 lrﾊ　　 '′{　　 ｀`　 　 j彳ｿ　　　　　　　　　現地の学校に通えばいい。
　　　　　　ヾﾊ､　　 r'}　 >　、　/ﾉﾐj/　　　　　 　 　 　 必要なら推薦しよう。
　　　　　　　 `ﾍ} /_ `ｰ' ＿_,ヽ /|`´　　　　　　　　　　 それと、うちの家内も何だか張り切っててね。
　　　　　　　　 _|ヾ　￣､、　 ﾞ／ | ､　　　 　 　 　 　 　 そんなわけで一人面倒を見るくらいわけない」
　　　　　　　 i（人ﾍ 　 　 　 /-‐'ノ |
　　　　　　　ﾉ　＼　'ｰ--‐ ', - '′　ヽ、
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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　 ／　　 _,.ノ　ヽ､__
　　　　　　　　　　　　　 |　　 　（● ）（●）
　　　　　　 　 　 　 　 　 |　　　　 （___人__）
　　　　　　　　　　　　　　| 　 　 　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　　　「願っても無い話だろ」
　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　　　　| 　,ｒｰ､=-､
　　　　　　 　 　 　 　 　 人､　　　　　 　| ,ｲに) |　 l
　　　　　　　　　　　_,／( ヽ､.,ヽ., ___ ,__ノi´ ｀ー' |　|ﾍ
　　　　_, ､ -― ''"::::::l:::::＼:::::::::::::::::ｒ'ﾞ´~~　　 ',　jｰ,i　〉
　　　/.:::::::ﾞ:':､::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ｰ-‐え__　　ﾞﾝ'ﾞ /｀i
　　丿;;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;((、ヽ （ﾊノ　/lヽ、
　　i ;;;;;;::::::::::::::::|;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;ﾊゞﾆΤﾍ_/;i　l:: l
　/ ;;;;;:::::::::::::::::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::＼::::::::::::::::;;;;;;;ﾊ　::;;;;;;;;::::::::. ',/




　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 l⌒＼　　＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !　　　〈 　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　/ 　__,.ノ｀ ⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　／⌒ト､/　　（＞ ）（●） 　 　 　 　 　 　 「日本じゃもう頭打ちだと思ってた。
　　　　　 　 　 　 　 　 　 r-='´　　　　　ヽ 　 　（___人__）　 　 　 　 　 　 　 だから先生の薦められるままに承諾した。
　　　　　　　　　　　　　　|　　　　＿∠ ノ |　　　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　 　 　 これはチャンスだと思った」　
　　　　　　　　　　　　　　}　⌒´　　　　 ｀V　　　　　　 |＞ー- 、
　　　　　　　　　　　　　　〉　　　　　　 -‐く　　　　 　　|:::::::::::::::::::ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　￣ 　 　　 /｀ヽ.,___ ,__ノ７::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　　　ﾊ　　　　　　／|/:ヾｰ--ｰ"　ゞ:::::::::::::::/::::ヽ
　　　　　 　 　 　 　 　 ７ |　　　　￣　, /ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::::::::i
　　　　　　　　　　 /::::ｌ|　、　　　　／ノ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::∧
　　　　　　　　　　 l:::::ｌト-ゝ==- '´丁::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::::∧／⌒ヽ
　　　　　　　　　　 ＼::::::::::::::::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|::::::::::::／￣　_ノ⌒ヽ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　　　　　　 ／|＿＿＿　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ┌─────────────────────┐
　　　　　　 r 、 ／ ./　　　／　　　　　　　　　　　　　　　│父こそ多少の逡巡を見せたけれど。　　　　　　　......│
　　　　　　 i　ヽi　 /　　/´￣￣￣`ヽ　　　　　　　　　　 │結局彼も母に押し切られる形で頷いた。　 　 　 　 ..│
　　　 　 ＿|　 ´　　　　　　　 　　　 ＜、　　　　　　　　　└─────────────────────┘
　　　 ／　　　 __　　　_　　 　 　　　 ＿＼
　　　/　, ／/´　.`　´　`ヽ　　　　　 ＼￣
　　　ﾚ´/ ./ 　/　/.i　　　|　、　　　　　 ヽ、
　　　　,イ.|　/|　∧ | ∧　ﾄ、`ヽ　ヽ 　　／
　　　　 .| .|/ i.| .i＼.|/　| .|´ ｀ヽi＼i　 r''
　 　 　 .ﾚ ﾚ' ri/￣`、r´|/｀ヽ V,ﾊ |　 ＼　　　　　　　　　　「しかし何年も向こうにいて
　　　　　 ／ i　　　.ﾄ|　　　 ├─ﾀ.ﾉr-‐'´　　　　　　　　　　やらない夫がコアラになっちゃうかもしれないしさ」
　　　　 /' 　 ヽ＿_〈 ヽ＿___ﾉ　/ |< ﾄ￣ヽ
　　　　,ﾞ　 ／ )ヽ　.r--- 、u　/ヾｌﾄﾊﾌ::::|｀ヽ
　　 　 |／_／　 ﾊ .i￣￣i u／:} 　V 　::::|　 ＼
　　　 /／ 二二二7,==='／u'　__ / 　 :::/　／ ヽ
　　　/'´r　-―一ｧ‐ ﾞＴ´　'"´／　　　　|　　　:::::::}
　　 / // 　 广¨´ / /'　 ／ 　　　　　/　　 　::::::ｲ
　　ﾉ ' /　 ノ＼ 　|　　／＼＿＿　　 |　　　　 ::::::|
_／｀丶　/　　 ＼| ／　　　.＼　 ＼ .|　　　　　:::::|




　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　　　　　　　　「コアラがいるのはオーストラリアだろ、常識的に
.　|　u.　　 （__人__）　　　　　　　　　　 　 俺が行くのはオーストリア、ヨーロッパだって」
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　 　 i⌒＼ ,__(‐- ､
　 　 l ＼　巛ー─;＼
　　 　|　｀ヽ-‐ーく＿）
.　　　 |　　　　　　l

　　　　　　　 　 　 　 　 、　　　　＿__
　　　　　　　　､＿二ﾆ=-ヽ｀¨Y´::::∠__
　 　 　 　 　 　 ＞:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＜
　　　　　　　∠ ィ´￣／´ﾌ;イ::ｌ:::::; ､::::::＼
　　　　　　　 /こヽ　　 , ─-､ハ/　 ＼::::rヽ
　　　　 　 　 ゝﾝ'￣￣{ / /　ﾄ/´￣ヽ| `′　　　　　　　　　　　　「じょ、冗談だよ」
　　 　 　 　 / ｀　　 　 ` ー‐' ヽ/ / ﾉl　　　　　
　　　　　　/　　　　　　　　 ‘　' ｀¨´
.　　 　 　 {　　　　　　　　　　 l　　　 ′
　　　　 ,.∧　　　　　　 　 　 ｜　　/（(_) (_)）
　 　 ／〈　 ､　　　　　,　-- ､｣ 　 /　　 | |
.　／　　 ＼ ＼　　　└‐-､　　　'　　, ァr‐､
.（　 　 　 　 ＼ `　　　　　′ ∠ ィ ( （, ﾆ ﾉ



　　 /　　　 　 ,　　　　　　　　　　　ﾍ　　 ヾ:.:.ﾍｉ:ｉ:i:iﾍ:.:.:.:.:(_
　　/　　　　　 {　 　 　 　 ',　',ﾊ　　　!　┌┘:.:.:|i:i:i:i:ｉ|:.:.:.:.:.:.〕
.　/　 　 ,'　,　 l|　　　　　 ,｝　! |　 　 |　 {:.:.:.:.:.:.:}i:i:i:i:i|:.:.:.:.:く
　j　　 ! {_ l|　 ﾊ　　　　　j |　l.ﾉ　　 人　L_:_:.:.:.:|ｉ:ｉ:i:i:|:.:.:.:.:.:.}
　|l!　 :|　ﾍl|　ﾍ ゝ､　　　{ﾉ /「≧ﾆ=‐-/ﾊ　_〕:./i:i:i:i:ｉ|:.r―ｲ
　',ﾍ　:| 　 l|ﾄ､_少イ＼　l|ﾚ'了 x=≠ﾃﾐ|ﾚｲ（:.:.:r=ﾐ､iﾉ:_:] .ｌ |　 　 　 「パパお願いよ。
　ﾊ ﾍ ﾄ､　l|ハ,ﾌテ≠ﾐﾍ｛　 〃iﾘつ:::）l// :　}:.{薔ﾘ ./　| |　 　 　 　 やっちゃんの将来がかかってるのよ」
　　ﾏ {＼メ＼K {ｱっ:}　　　　　ゞﾆィ'　/　ﾊ ∨ゞｲ./　 j ﾊ
　　 ヾゝ./　l| ﾊ ,ゞ=ｲ　　　　　 xxxx /　/:i:i|　|:i://　 /ｲ　'.
　　　 l /　 :l|　ﾊ　xxx ヽ　　 　 　 　 !　|:i:ｉ/　ｊ/ノ　 / /　　l
　　　 K　　:l|　 .入　　　 ‐-　　　　　|　|:ｉ/　,l|/ 　 / /
　　　 l　 　 l|　ｲ .才`;=x、　　,x≡三|　|/　/ |　　 {　{
　　　 |　　　| 　!∧三三三ﾐ/三三三l　!　/　j　　 .|　|



　　　　　　　 ／l
　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l
　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|　　　　　　　　 「わかったよ。
　　　 | ￣ c　￣　　　6 l　　　　　　　　　　好きにしなさい」
.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　|　|　　　　　 |　　|

　　　　　　　　 __
　＿　　　 rｪｪﾆi_iｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪｪ　　　　　　　　　　　　　　　 　∧　　　　 　　 　 　　lﾆl＿＿lﾆl
　;';';';'＼／X＼XXXXXXXXXXXXXX＼---lﾆｺ---lﾆｺ-､　　　　＿i:.:i＿　　 　　 ＿ ／.:.i[]:.:.:.:i[].:.:＼__
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　ﾆﾆﾆﾆﾆﾆｺXXX＼XXXXXXXXXXXXXX＼===========ｪ　 ＿　,---------／___ﾛ__ﾛ__ﾛ__l.／:::::::::
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　￣ ￣ ￣|========ｺ====================ｺH__H_|_H_|/／:::::::i^i::::::::::::::::: :: |iiii|-------| {i {i {i
　　i｀!|[]_[].| ｉ「! ｉ「! ｉ「! |_l]__l]__l]__l]__l]__l]__l]__l]__l]_|ｉH__H_|_H_|￣|I￣I　 I￣I￣I￣ |iiii|［i .［ｉ .［ｉ |-------
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　　 i⌒Ｙ⌒i|⌒ii⌒Ｙ⌒ii⌒Ｙ⌒ii⌒Ｙ⌒ii⌒Ｙ　┌─────────────────────────┐
　　 |::::::::::::::i|:::::||::::::|::::::||::::::|::::::||::::::|::::::||::::::|:　│日本とは違って街の様子が自然な感じがするな、　　　　　......│
　　lｌi三三i lｌi三三i　lｌi三三ilｌi三三i lｌi三三i|　│というのが訪れた異国の最初の印象であり、　　　　　　　　.....│
　　||----| ||----|　||----| ||----|||----|:::　│今も変わらず抱く唯一の否定的でないイメージである。　　　 │
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　└─────────────────────────┘

┌───────────────────────────────────┐
│それ以上のことを思い出すには、やはり拭いきれない苦痛があり続けるのだ。　　　...│
└───────────────────────────────────┘
鬱鬱鬱鬱鬱鬱參夛 ‐―――――‐ -冬鬱鬱鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱鬱㌢　　　　　　　　:;:;:;:;:;:;:;:;:;｀尊鬱鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱鬱㌢　　 　 　 　 　 　 　 .;:;:;:;:;:;:;:;:;:;尊鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱:Ⅳ　　　　　　 　 　 　 　 　 ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;尊鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱Ⅳ　　 　_＿＿,, 　 　 , ＿＿_:;:;:;:;:;:;:;::;Ⅷ鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱:|　 　 　 l {::::::::}　|ililili|　{::::::::} l　:;:;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱il　 　 　 ｀ ー '　'　　 ｀　ー ' '　;:;:;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ｉl　　　　　 /　　　 .!　　　 ヽ　　:;:;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ill　　 　 　 ヽ＿_／ ＼＿_/.　　:;:;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ｉll　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 :;:;:;:;:;:l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ｉｌl　　　　　　　　　　　　　　　　 :;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ﾓl　　　　　　　　　　　　　　　　:;:;:;:;:;:l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱叭　　　　　　　　　　　　　　　:;:;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱淤,　　　　　　 　 　 　 　 　 　:;:;:;:;:;:;l鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ｌ伐、　　　　　　　　　　　　　:;:;:;:;:;:;:;!鬱鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱ﾓ夥!　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,'＾尊鬱鬱鬱鬱
鬱鬱鬱鬱影{　|ヽ　　　　　　　　 　 　 　 　 /|　/ 導鬱鬱鬱
鬱鬱鬱影　 ∨|　ヽ　　　　　　　　　　　 ／　| /　　導鬱鬱鬱
鬱鬱影 ヽ　　＼　　｀ー―――――　´￣￣　 ／　 導鬱鬱鬱

　　　ー‐‐‐‐　 ￣　　 ￣　｀ー　ヽ__＿, 　｀`'ｰ-､ ﾞ'ｰ,|: : : : : : : : : : : .....::.:....:.::..::...:::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ｀`'ｰ　-､_: : : : : : .....::..:...:..::..::....::::::::::::
　‐‐─ヽ　　　　　　 ￣ヽ　　 ￣　｀ー　　　ヽ＿__　　　　 `'ｰ-､_: : ......::..:...:.::....::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 `'ｰ-､_::.....:..::...::::::::::::::
　　　　　　　　ヽ‐‐ー─‐‐ヽ　　　　ヽー‐　ｰ‐‐､＿＿　　　　　　　　　　`'ｰ-､_::::::::::::::
ヽーー─ヽ　　　　　　　　　　　ヽ＿＿＿　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'ｰ-､_
┌─────┐
│石畳。　　.....│
└─────┘

　　　　　　　　　　　　　,.-､＿＿_＿　,　--―‐ﾆ二/　　ヽ
　　　　　　 　 　 　 　 　 .ﾚ'´-〃、:::`￣￣￣::::::::::::::!　　　|
　 　 　 　 　 　 　 　 　 /,.￣/({_/￣>─────-〕　　く
　　　　　　 　 　 　 　 _」i:::::::|:::.ｲ-:〈─────‐r',. ＝､、!
　 　 　 　 　 　 　 　 〈ﾊ::::::::::!:ヽ!:::::::!::::::::::::::::::::::::::::| ､､__,.ﾘ !
　　　　　　　　　　　　frヽヽ:::::＼_ヽ:::ヽ＿__二二二ヽﾆニ〃
　　　　　　　　　 　 -く:.:ﾘ:!:::宀￢:::::::/r― 厂
　　　 　 　 　 　 ／-'￣｀ヽ＿＿::::::::::|r' r'/
　　　 　 　 　 ／/　　　　　　　 /　`ｰ77　L!＿
　　　　ー--/|　　　_ヽ＿＿　　{　　　　ﾘ　| ＿i
　　　　 　 /::ﾚ'　　ﾚ'　 } /ﾉ ￣､＝ニ_.乂_ｰ-' |
　　　　　/:r'　 　 ,|　　 ＼　　　 ￣￣｀ヽ ー‐ヽ
　　　　/::::|　　　|＼　　　 `ｰ-､〃　　 　 　 　|
　　 　 |::::::|　　　ヽ　＼ 〃　　　`ー-- ､_　　 !
┌─────┐
│銃声。　　.....│
└─────┘

　　　　　　　　　　　　:,:　　　　　　　　　　 :(::)
　　　　　　　　　　　　/⌒''⌒) :,,゜　　　　　 '　　　　　　　　 ,,,,,,,
　　　　　　　　　　　(:::::::::::::::!'　　　　　　　　　　　　　　　　 (::::::)
　　　　　　　　　　　ヽ::::::::';'''　　　　　　　　　　　　　　　　　''``　　 。
　　　　　　　　　　 τ'::/ .;:
　　　　　　　　　　　 )/
　　　　　　　　　。　　　　　　　　　　　　'　　、　　　　　　　;:　。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'''`~''・　　　　' `
　　　　　f''`⌒(　　　　　,,,,　　　　　　　　　　　　　　　!:(',,,,、　　　　　　　　　　　　　　::,,,,,、...
　　　　　,!,,,、(　　　　　/::τ　　　　　　　　　　　　　ノ:::::::::::::::::)　　　　　　　　 　。 　!::::::::::`!　、
　:.、　　　　　　　　　　!:::(　　　　　ﾉ::`!　 　o　　　(::::::::::::::::::τ　　　　　　　　　　　　(:::,,;,;,、; 。
　　　　　　 ゜　　　　　(/　　　　　　⌒・　.　　 ・、;::::::::::::;;.;`` ''
　　　　　,,、..　　　／/　　　ノ'　　　　　　　　 　/／'''`'`'` `　　　　　　 ..,,.. _,,,.、 ・　　　　　　　　　,, ...:・..
　　π /;::::::::(,.,.(;;;::::(　　 ,,.,　　・っ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;,;;( ):::::;.　　　　c::── '`'''::::::::::;''
　　　):::::::::::::::::::::::::::/　　'''''`　　　`　　　　　　　　'`　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　⌒　` !.:::τ''　``
　τ　!::::::::::::::::::::::::::::)／,,,,,　γ　　　　　　　　　　　　　　 :'`'``:!
　　　(::::::::::::::::::::::::::::冫 `'`'　　　　、,:'::::::`:::,,,,　　　　　　　 !:::::ノ　　　　　　　　　・
　::：':'::::::::::::::::::::::::::::;(,,,,,,,、:::::::-ｰ''''`'`''''''''"
┌─────────────┐
│指先から吹き出した血。　　　　.│
└─────────────┘

　　　〈:.:.:.:.,　' |／　|　　　/　　＼　　　　　ゝ　　ヽ::::／：　　　　　　
　　//　へ　 /　　.:l:..∧｀　　　　ヽ丶　　　　　　　j:::）ヽ　：　　　　　　　
　,//　/　　 /　　　|〈　∨::::　　　　　　　　＼　　　ヽ:::..`：.　：　　　　　
!／　/　　　|　　　　ﾊﾍ　丶:::　　ヽ　　ｲゝ　　丶　　　:::::::::...：
| 　 .:!　　　 !/l:.:.:.:.:|　丶　　ヽ:::　　|　　　1::::::.:.:.:.:.:.:.::.:.}::::::::........　：
|:.:.:.:.|　..:.:.:.:.:|　＼:.:!　　 ヽ　　ヽ::　}:|..:.:.:.::|ヽ:.:.:.:.:.:.:./l::j.＼::::::.:.:.......：
| !:.:.:.|::.:.:.:.|:.:|,_　 |_,ｌ::::::::::::::::::::::::',:: l::|_:..-:::|,;::|　　ﾊ　l:.:.＼: ＼:＼ｲ　：
/|:.:.:.:.l:.:.:.:.|´| ￣λ|`ヽ::::::u::::::::::!/L;|＿　j/ :|　/|Ｖl:.:.l 　:）:::/／：
!:ヾ:.:.:.l:.:.:.:|:.:||:{´'{:::o::|｀'::::::::::u:::::|/´{::o::'ﾘ~ }　!/h|　ﾚ:.:.|　(:.ノ7　　：
!:./丶:.:|＼|ヽ!ヽ とつ::::::::::::::::::::::::::::とつ　' 〈;/::|.|　|,/ 　 !:.八：
l/　　ヽ:.:.:.:.:.lﾍ　 ｀¨´　　　　　　　　￣ 　./ノ|::|:::;:::::〈　　/　　：
|l　　　ｌ:.:.:.:.:.:iﾒ,　U　　 　　,　　　　　u　, '::::|:|;∧|::::::::<：
7　　　|:.:.:l:.:.|:::::|>､　　　（　　　　）　 ∠､:::::!:|:.:.:.ﾍ::::::::.:.く　　：
　　　 |l:::ｲ::::|::人Ｖ:｀:..:.､　　￣　　 ' :l::::.|.:.:ヽｌ:.:.:.:.:.',::::ヽ::.:ヽ：
　　　 |l:::/::::l,'::::∧::::::::V:`　-‐ ´　 /l:::/｀ヽ､.:..:..:..:∧:::::Ｖ:::::　　：
　　　 |:/:::::::l:::::::::,:ﾐ:ﾏ:::|　　　　　　｛l/7　　　` 　、;;;:ﾐ:::::::l:::::::＼：
　　　 /::::::::::,::＜´ ', Y::!　　　　　　 ,'　　　　　　　　 `ｲ‐　　：
　 ＿/　ﾘ-´　　　　ヽ　ヾ　　　　　/　　　　　　　　ｨ　　}：
　んノ＼　　　　　　　i　　ヽ　 　 /　　　　　 /　／}}　 八　：
　/　　＼＼　　　　　 ヽ＜¨｀＞/　　　　　　　　　,ﾉ:::.:....：
┌─────────────────┐
│そして傍らで泣き叫んでいた少女。　　......│
└─────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　／:::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::::|
　　　　　　　　　　　　|　　　 　　（__人）
　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
　　　 　 　 　 　 　 　 ヽ:::::::::::::::::::::ノ
　　　　　　　　　　　　 /.:.:::::::::::::::/
　　　　　　　　　　 _,r'ﾞ.:.:::::::::::::.:.:.＼
　　　　　　 ,．-‐'´.:.::::::::::::::::::::::::::::.:..`ヽ､
　　　　　 /.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.＼
_ ＿＿ __l.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.:.:.ヽ _ __＿＿ ＿＿_ __＿＿ ＿
┌────────────────────┐
│あの一夜、いや、あの一瞬さえなければ。　　 　 │
│そう思わずにいられない。　　　　　　　　　　　　.....│
└────────────────────┘

┌──────────────────────────────┐
│――事件は現地で三年目の新年を迎えようという季節に起きた。 　　 　 │
└──────────────────────────────┘
　　 　 厂 _ｿ´｀` ヾﾊﾉ/-‐'´　　 ヾ＝弌
　　　　ﾝ_,イ!　　　 ｲ|{ヽ　　　　　r/二ﾆ〉
　　　　 ヾ、j　＿　__｣{ ﾉ ＿,,,,､､_! 〉孑/
　　　　　 {ヽ'"フｭｯｷ< ｀＾､''エi'ヽ-,ﾊr‐}　　　　　　　　「さあイブを楽しもうじゃないか」
　 　 　 　 lrﾊ　　 '′{　　 ｀`　 　 j彳ｿ
　　　　　　ヾﾊ､　　 r'}　 >　、　/ﾉﾐj/
　　　　　　　 `ﾍ} /_ `ｰ' ＿_,ヽ /|`´
　　　　　　　　 _|ヾ　￣､、　 ﾞ／ | ､
　　　　　　　 i（人ﾍ 　 　 　 /-‐'ノ |
　　　　　　　ﾉ　＼　'ｰ--‐ ', - '′　ヽ、



　　　　　　　　　　＿　＿
　 　 　 　 　 _, - '´　　｀¨ ⌒￣ ヽ、
　　　　　／´_, ‐'　　　　　　　　　　＼
　　　　/　／　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ
　　　 / ./　　　　　 y　 /|ｌ　|、 　 　 　 ヽ
　　　,!　l　　　　　,ｲ!　,ｨ/ ｌ　l',ヽ　ヾ;､ 　 ヽ
　　　|　l　　　 ,／ l　/ |'　 ヾ! ヽ＼ 'i　　i |!
　 　 |　! |　　/_,,､_|/､、　　,ｨ'_二,_7i k　 | l
　　　|　! l　　|t'ﾔj:ｌ`'　　　　^!jﾘ ｿ' } |i　 ﾒ!　　　　　　　　　　　　　「ふふ、楽しみねえ」
　　　ﾍ,l　l、 iﾄ、`'゛　　　　　　　　 / l ! /
　　　　ヽ、＼ ト､ 　 　 　 |!　　　,ｲ／ﾑ|
　　　　　 ヾ、＼ヘ 　　 ､､,，　 〃 r'′
　　　　　　　ゝ i `i ､ 　 　 　 ／　 |
　　　　 　 　 |　|　|　｀丶､,／!､_| i｜
　　　　　　　ﾉ,.√ﾘ　　　　　 |､ ヾ!ド

　　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　 　 　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　 　 　 | 　　　（ ⌒）（⌒）　　　　　　　　　「お誘いいただきありがとうございます」
　　 　 　 　 　 l　　　　　（__人__）
　　　　　 　 　 l　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　 　 　 　 　 　 | 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　 　 ヽ　　　　　　 l
　　　 　 　 　 　 _,ゝ､　　　_,ノ
　　　 　 　 ,､-='l　＼_,ﾝ g<＼
　　　　 / ＼　└〆＼ i=i|＼'＼
┌──────────────────────┐
│その夜僕は先生夫婦と街へ食事に出ていた。　　　　.│
└──────────────────────┘

　　　。　o　　　　　゜　　　　　　.　　。　　　　ﾟ　　　　　　　　o　　　　。
　○　　　　　ﾟ　　。　　゜　　　　　o　　　　　　　　　　　　　　o　　　　　　　o
　　　　　　　　　 　 o 　 　 　　　　　○　 　 　　。　　　.　　　　゜　　　　　　ﾟ
　o　　　ﾟ　　　。　　 　 　 　　　　　　　　　　　　　　　　o　　　。　　　　　　　。
　　　　　　　　　　　　　o　　 　　o　　　　　.　　　゜　　　　゜　　　　　　　○
　　。　　　　　　　　　　　　　ﾟ　　　　　o　　　　　　○　　　　　o　　ﾟ 　　o
　　　　゜　　　　o　　　゜　　　　　　　　　　　　｡　　　　　　　　　　　　　　　　○
゜　　　　○　　　　　　　　　　　　　o　　　　　　o　　　　　　o　　　゜　　　　。
　o　゜　　　　　　.　　　○　　　　゜　　　　　　　　　　゜　　　　　　　　　　　　　o
_＼ 　_　　　゜　　　　　　　　　｡　　　　｡　　　゜　　　　　　o　　　 _　　○￣￣
　　○ ＼ 　　　o　　　　゜　　　　　　　 　 　 　 　｡ 　　　　　　／　／
￣￣|＿_ ＼＼ 、　　　　　｡　　 　 ゜　　　　 ﾟ　　　　 ○／／｡＿_|￣￣￣￣
∃　 |　 　|　　|　ｌ l　゜　　　　　　　　　　　゜　　　　｡ ｌ ｌ　|　　|　　 |○田　田
　 　 |田　|　。|　| ｌ　　 　　 ゜　 　　 ゜　 　 ｡　 ゜　 　ｌ |　|　　|　田|　　　　o
∃○|　 　|　　|　|｡ 　゜　. .. ... .. ... . ... ...゜ . .. .. .. 　　 ｌ |。|　　| 　 ｜　田　田
　 　 |田　|　　|　ｌ‐　　　　.....　　　....　　 　 .....　　 　 -|　|　　|　田|
∃　 |　 　|○―　....　　　　o　　　　　　....　　　○　.....　― 　| 　 ｜　田　田
　　　o.... 一　　　　　　....　　　　　○　　　 ...　　o　　　....　　ー-　|　。
―　￣　　　o　　　⌒ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ￣　―　-
　　....　　　　　　　　　　　　　　　....　　　　　　　　⌒　　　o　　....　　　　　　....
┌──────────────────────────────────────────┐
│クリスマスを目前にして、おそらくはモーツァルトの時代からさほど変わらないであろう街並みは、　　　.│
│とりどりのネオンと雪とで飾られ、幻想的でさえあった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 .│
└──────────────────────────────────────────┘

:::::::::::::::::　＊　::::::::::::::::::::::::::::::::::::::　☆．。::::::::::::::::::::::::::::::．：＊・゜☆　　　:::::: 　　::::::::
::::::::::::::::::　:::::::::::::::．：＊・゜☆　　　:::::::::::::::::::::::::．　：*・゜☆．::::
　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::　:::::::::::::::::::::::::::::::　　!ヽ　　 :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　:::::::::::::::::::::::::::::::　　　　　!ヽ、　　　 ,!　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　,!　　　-‐‐‐''　　 ヽ　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　:::::::::::::::::::::::::::::　　　/　´｀)'´　 　 _　　　 　 !、
　　　　　　　　　　　 lヽ　/　 　ノ　　　　,　｀　　　　 `!　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　 lヽ、　　/　 Y　 　 ,!　ヽ-‐‐/　 　 　 　 　 l　　　　　　「メリークリスマス！」
.　　　　　　l　＞‐'´｀ 　 l　　 ﾉ 　　ヽ_/　　　 　 　 　 ﾉ　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　 ,ﾉ　　　 　o 　 ヽ　　l　　　　　　　　　　　 _,ｲ　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　i'.o　 r┐ 　 ＊　　 ヽ、 ヽ､_　　　　　,..-=ﾆ_
　　　　　l　　　 ﾉ　　　 　　 ﾉヽ､,　　!..□　/　　　　 ヽ
　　　　　ヽ　　　　　　　　.ｨ'. 　,!　　　 ハ/　　 　､ 　　`!、
　　　　　　`ｰ-､_　　　　く´　　l　　　　　/　　　　 ヽ 　 　l
　　　　　　　　　,!　　　　　`!　 l　　　 　 　 　 　 　 ヽ､__ﾉ
　　　　　　　　 l　　 　　`!　`!　!　　　　　　　 　 　 　 l
　　　　 　　 　 l　　.　　l　 ,　l　ヽ、 ､_　,ｨ　　　　　 ノ
　　　　　　　　 l､_,!　　 し'　　 l　　l　　 `l　　　　　　l

　　ゞ:;ヾｿゞ＿＿＿＿|　　　　　　　ヾヽ::ヾｿ;;;:;ヾ ゞゞ:;::;;;;ゞゞ:;ゞ ;;;;;ヾヾヾゞ:;
　＿;;;ヾゞ/　　　　;;;;;;;;|　|[][]|　　|[][ゞ:;ヾｿ　　　ゞ:;　:;ヾ ゞゞ:; ゞゞ:; ::: ;;;;;
　|　ヾ;ヾ/　　　　　　 ;|　|[][]|　　|[][]|ゞ:;ヾ 　ゞゞ:;ヾ　ｿゞ　　　:::ゞ:;ヾ ゞ
　|__:::ヾ;''＝＝＝＝＝|＿＿＿＿＿＿ヾゞ:;ヾ　:::ｿゞ　:ゞゞ:;;:;ヾ ゞ ゞ:;ヾ ゞゞ:;
ｴｴｴｴヾゞ;. ＿,＿_.___.| |＼　　＿ ＿ ＿ 　ゞヾヽ :;ヾ ゞゞ: ;:::ゞ:;ヾ ゞ ゞ:;
　　　); ,(;;| |≡|　　|≡| |iiiii|￣|iiiii||iiiii|iiiii|　|ヾ;;;　;;ゞゞ:;ヾｿ　　ゞゞ :;ヾ ｿ/ゞゞ:;
　 ＿＿ヾ| |≡|,,_.._|≡| |iiiii|　 |iiiii||iiiii|iiiii|　||≡|　　|≡||:;ヾ ゞゞ:;　 |li/ ゞゞ:;
　|≡≡|;;;| |≡|γ,,|≡| |iiiii|　 |iiiii||iiiii|iiiii|　||≡|　　|≡||　ゞゞ:;ヾｿ:;ヾ ゞゞ:;ゞゞ:;
　|≡≡|;;;ll,|≡|iﾆi;;|≡| |iiiii|＿|iiiii||iiiii|iiiii|　||≡|　　|≡||＿＿|__ :;;;ゞゝ:::ヾヽ
iiiiIIIiiiiIIIiiiil '￣￣￣￣| |／　　￣ ￣ ￣　!| ￣ ￣ ￣'||／;;;;;ヽ　　ヾ;li/:::ゞ:;ヾ ゞ
＿＿_____.|　　　　　　 |＿＿＿＿＿＿＿_,|__, Cafe..__||_　　　 ＼　'li|ヾ:li|
____________|　　　　　　 |　VINS desutoroi ,| ＝ ＝ ＝ |＼ 　　 ／　|li|　li|
;naname |　, ' ⌒ ヽ　| ￣ /￣￣￣￣￣ヽ　　　　　　|　 ＼／　　 ヽli// 　　　　　　ジングルベール♪
￣ |／＼l|　|　　　::l | |　　 ~|"~"~"||~"~~''|"'|:|口口|　| ／ || 　　　　| ;il|　　　　　　　　　　ジングルベール♪
￣ |￣￣l|　|　　　::l | |　　ヾ;;ｿゞ　 ||　ヾ;ゞ;;ﾐ|:|口口|　||　　||;;＼ 　　| ;il|　　　 　 　 ∧∧　　 　 　∧___∧　　　　 ∧＿∧
// |　// l|　|　　　::l | |　　　;;;ヾ　　||　 ヾﾉ;;; |:|口口|　||　　|| ; ';,＼　| ;il|　　　　　　(,,ﾟДﾟ)　　　　（ ´∀｀ ）　　　 （・∀・ ,,）
// |　// l|　|;;:: ..／ :| |　　　 i| / / ||　　 liｲ .|:|口口|　||　 ／; ';";; 'ヽ::;ilヽ　　　　 　 (i　　i)　　 　 （　　 　 ）　　　 （　　　　）
＿_|＿＿l|_,,|;;／　　:|_|二二liiiil＿__||_＿liil_i!y||ｌｌｌｌｌｌｌｌ|_,,||／; ';";; ';";; ';）　　　　 　 . ～|　　|　　　　 i　 　 　i　　　　 |　｜ ｜
;" ' ";" ' ";" ';" '" ' ";" ' ";" ;" ';" ' "; ' ";|ロl_|;" ' ";" ' ";" ';" ' ";, ,/　　　　　　　　 し`Ｊ　　　　（,__,ﾊ,__,）　　　 （＿（_＿）
;" ' ";" ' ";" ';" ' ";;" ' ";" ' ";" ';" ' ";;" ' ";" ' ";" ';" ' ";;" ' ";" ／
＝＝==＝＝＝===＝＝=＝＝=＝＝＝==＝＝＝＝=＝＝＝''"
　　　　　　　　　　　　　
┌─────────────────────────────┐
│酔客たちの陽気な笑い声や黄色い嬌声があちこちから上がり、　　 　 │
│店頭のスピーカーから、『聖しこの夜』やほかの賛美歌、　　　　　　　　 │
│あるいはクリスマスソングの類と相まって、　　　　　　　　　　　　　　　......│
│とんでもない不協和音と化して耳に飛び込んでいた。　　　　　　　　　　 │
└─────────────────────────────┘

　　　　　 (ヽ三/)　））
　　　　　　 ( i)))
　　 ／￣￣＼　＼
　／　　 _ノ　　＼　）
　|　　　 （ ＞）（＜）
.　|　　///（__人__）
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
⊂ヽ γ　　　 く　　　　　　　　　　 ┌────────────────────────┐
i !ｌ ノ　ﾉ　　　　|　 　 　 　 　 　 　 │それでも、神経に障るような不快さは軽微で、　　　　　　　 │
⊂ｃノ´| 　 　　｜　　　　　　　　　 │どちらかといえば浮かれた気分に伝染しそうだった。　　　.│
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 └────────────────────────┘


　　　　　　　　 ,..-―'"::''::::'''::｀`''ヽ､,_
　　　　　　　／ﾚ;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､
　　　　　 ／/　∠､;;::::::::::_;‐'"~~￣￣'､:::::＼
　　　　　/::::''￣└w,';::::／∠;::::::::::::::::::::＼／`ヽ,
　　　　 ,'::::::::::::::::::::/:::/ 从,w７:::::::;:::::::::::::ヾヽ::::::|
　　　　 |::::::::::::::::::/ //::::::::::_;:;;;;:::'':::／::ﾉ:::;;i|i､:::〈
　　　　 ヽ::::::::|::::〃'i':::::::／;／_,.-/ ,::ｲ .,ｨ|::|::|: |i|
　　　　　|i::::::::|::（'.( |::::,::-:'::|'"~フ‐＜ﾉノ/'' !゛ !| !
　　 　 　 〉|:::::ヽ::＼'|:::::::::::::|　ヾ7ﾂ‐　／　　　　　　　　　　　「やらない夫も楽しんでるわね」
　　　　　 |:!:::/i|::/'::`|:i:.:::::::::|　　｀ 　.i´
　　　　　/|::::ﾉ:ﾊ:|:::::::|:|::::::::::|　　　　 ',
　　　/,￣/／!'　l|＼:l|､;::::::|:|. ' ､..,.―‐
　　/::::ヽﾉ'゛　　　　 　>､ﾄ､;il'.／~
　/~i;::::::i,　　　　　　/､ 　　｀
‐'ヽ ｀;::::::i,　　　　　 i､ヽ､

　　　　 ﾉ ＿　＼ヽ { i} ／Z _∠r√¨`ﾊ
　　 　 厂 _ｿ´｀` ヾﾊﾉ/-‐'´　　 ヾ＝弌
　　　　ﾝ_,イ!　　　 ｲ|{ヽ　　　　　r/二ﾆ〉
　　　　 ヾ、j　＿　__｣{ ﾉ ＿,,,,､､_! 〉孑/　　　　　　　　　　「やらない夫は日本が恋しくないのか？」
　　　　　 {ヽ'"フｭｯｷ< ｀＾､''エi'ヽ-,ﾊr‐}
　 　 　 　 lrﾊ　　 '′{　　 ｀`　 　 j彳ｿ
　　　　　　ヾﾊ､　　 r'}　 >　、　/ﾉﾐj/
　　　　　　　 `ﾍ} /_ `ｰ' ＿_,ヽ /|`´
　　　　　　　　 _|ヾ　￣､、　 ﾞ／ | ､
　　　　　　　 i（人ﾍ 　 　 　 /-‐'ノ |
　　　　　　　ﾉ　＼　'ｰ--‐ ', - '′　ヽ、




　　 　　 ／￣￣＼
　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　 |　　　 （ ●）（●）
　　　 |　　　　 （__人__）　　　　　　　　　　　　　　　　　「さほどでもないです。
　　 　|　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 こっちはどこにいても新鮮ですから」
　　　 |　　　　　　 　 }
　　　 ヽ　　　　　 　/
＿__ｲ.ヽヽ、___ ＿ノﾞ-､.

　　 　 厂 _ｿ´｀` ヾﾊﾉ/-‐'´　　 ヾ＝弌
　　　　ﾝ_,イ!　　　 ｲ|{ヽ　　　　　r/二ﾆ〉　　　 　 　 　 .「だったら時間を作って
　　　　 ヾ、j　＿　__｣{ ﾉ ＿,,,,､､_! 〉孑/　　　　　 　　　　一度ヨーロッパを回るといい。
　　　　　 {ヽ'"フｭｯｷ< ｀＾､''エi'ヽ-,ﾊr‐}　　 　 　 　 　 　.昔の貴族の子弟は、
　 　 　 　 lrﾊ　　 '′{　　 ｀`　 　 j彳ｿ 　　　　　 　　　　成人する前に必ず各国を訪ねたものだ」
　　　　　　ヾﾊ､　　 r'}　 >　、　/ﾉﾐj/
　　　　　　　 `ﾍ} /_ `ｰ' ＿_,ヽ /|`´
　　　　　　　　 _|ヾ　￣､、　 ﾞ／ | ､
　　　　　　　 i（人ﾍ 　 　 　 /-‐'ノ |
　　　　　　　ﾉ　＼　'ｰ--‐ ', - '′　ヽ、




　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）　　　　　　　　　　　　　　　「それは羨ましい限りですね。
　　|　　　　 （__人__）　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 機会があれば」
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ
　　 |　　　,.<))／´二⊃
　 　ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃
　　　ヽ､ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l:::::::/　　　 __人〉
:::::::::|_/ヽ. 　 /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_

　　　　　　　　 ,..-―'"::''::::'''::｀`''ヽ､,_
　　　　　　　／ﾚ;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ヽ､
　　　　　 ／/　∠､;;::::::::::_;‐'"~~￣￣'､:::::＼
　　　　　/::::''￣└w,';::::／∠;::::::::::::::::::::＼／`ヽ,
　　　　 ,'::::::::::::::::::::/:::/ 从,w７:::::::;:::::::::::::ヾヽ::::::|
　　　　 |::::::::::::::::::/ //::::::::::_;:;;;;:::'':::／::ﾉ:::;;i|i､:::〈
　　　　 ヽ::::::::|::::〃'i':::::::／;／_,.-/ ,::ｲ .,ｨ|::|::|: |i|
　　　　　|i::::::::|::（'.( |::::,::-:'::|'"~フ‐＜ﾉノ/'' !゛ !| !
　　 　 　 〉|:::::ヽ::＼'|:::::::::::::|　ヾ7ﾂ‐　／　　　　　　　　　　　「やらない夫、イブの晩に
　　　　　 |:!:::/i|::/'::`|:i:.:::::::::|　　｀ 　.i´　　　 　 　　　　　　　　食べたいもの考えておいてね」
　　　　　/|::::ﾉ:ﾊ:|:::::::|:|::::::::::|　　　　 ',
　　　/,￣/／!'　l|＼:l|､;::::::|:|. ' ､..,.―‐
　　/::::ヽﾉ'゛　　　　 　>､ﾄ､;il'.／~
　/~i;::::::i,　　　　　　/､ 　　｀
‐'ヽ ｀;::::::i,　　　　　 i､ヽ､
┌──────────────────────────────┐
│ほろ酔い気分の僕に奥さんが、そう言ってくれたように覚えている。　　.....│
└──────────────────────────────┘

┌─────────┐
│その時だった。　　 　 │
└─────────┘
ｰ:::|:: |:::::　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Vﾊフ:::丁ノ "´ヽヽ'
ｰ...|:: |:::::: 　　　　　　　,　 -‐ r‐- ､　 　 　ノレ<|:::　|　　　　＼＼
ゝ_j::: ! :::::::　　　　　／￣`ヽ:::::.`丶＼_　´　､_jノ::::　!　　　　　 ＼＼ 　　　　　　　　　　「やめてください！」
＿:|:: |_:::::::::: 　　 　l　　　　　',:::::::::::／　　　　ｲ::|:::　|　　　　　 　 ＼＼
ヽ::|:: ﾄ､＼ :::::::.. 　 |　 　 　　 ',::::::/　　　　／ |/|:::　|　　　　　 　 　 ＼＼
:::: |:: | ＼ー⌒＼_ :ﾄ､　　　　　l::/　　　イ　　 / |:::　! 　 　 　 　 　 　　ヽ ＼
:::: |:: |＼ ＼ 　　 ＼ー-.､ ‐─ｧ′／::::::! 　 /　 !: 　!　　 　 　 　 　 　 　 ヽ ＼
:::: |:: |＼＼ 　,--､　 ＼　ヽｰ─く :::::::::::!　 / 　 .!:　 !　　　　　　　　　　 　 /　ﾉ
:::: |:: |　 ＼￣::::::V　　　＼|　 ／　＼::: 　/ 　　 |:　 |　　　　　 　 　 　 　 /　/
┌─────────────────┐
│不意に背後で大きな声が聞こえた。　　....│
│女の声、悲鳴だった。　　　　　　　　　　　..│
└─────────────────┘

　　　　 ﾉ ＿　＼ヽ { i} ／Z _∠r√¨`ﾊ
　　 　 厂 _ｿ´｀` ヾﾊﾉ/-‐'´　　 ヾ＝弌
　　　　ﾝ_,イ!　　　 ｲ|{ヽ　　　　　r/二ﾆ〉
　　　　 ヾ、j　＿　__｣{ ﾉ ＿,,,,､､_! 〉孑/　　　　　　　　　　　　　　　　「何の騒ぎだ？」
　　　　　 {ヽ'"フｭｯｷ< ｀＾､''エi'ヽ-,ﾊr‐}
　 　 　 　 lrﾊ　　 '′{　　 ｀`　 　 j彳ｿ
　　　　　　ヾﾊ､　　 r'}　 >　、　/ﾉﾐj/
　　　　　　　 `ﾍ} /_ `ｰ' ＿_,ヽ /|`´
　　　　　　　　 _|ヾ　￣､、　 ﾞ／ | ､
　　　　　　　 i（人ﾍ 　 　 　 /-‐'ノ |
　　　　　　　ﾉ　＼　'ｰ--‐ ', - '′　ヽ、




　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　 　 　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼
　　　 　　 　（○）（○ ）　　　|　　　　　　　　　　　　　　「日本語！？」
.　　　　　　 （__人__）　 　u　 .|
.　　　　　　　 ヽ｀⌒ ´　　　　|
　　　　　　　　｛　　　　　　　/
　　　　　　　　lヽ、　　,ｨ'.) ./
　　　　　　　　j　.}ﾝ／／　ヽ
　　　　 　　　ﾉ　'"´ ￣〉　　|
.　　　　　 　 {　　　　 勹..　｜
　　 　 　　　 ヽ　､＿_,,ﾉ　.　|

　　　　　　　　 / ＼ヽ＼ヽﾍ i ｿ/／ ／　_八_
　　　　　　　　ﾉ＼　ミﾐヾ､ヽN /　／イ´　三{
　　　　　　 　 ゝヘ.r'　　　 ｲﾘﾊ´　　　｀ヾ≦ｲ
　　　　　　 　 ﾄｭ､lｿ _,､　 '　　　　　,､ﾑ 仁{
　　　　　　　　ゝ { { ｀≧､__｣__/_,ｨ≦__｀/}ｨ,ｊ　　　　　　　　　　　　　「やらない夫！？」
　　　　　　　　　>､ ﾐ{｀￣´ｲj ,iヾ'"￣｀ }_入
　　　　　　 , ィ'´　`ヽ.　　　,'| 　　　　,'/: : : ＼
　　　,､, ィ´　　　　　.ｌi.　,　<`_〉 ､ 　/: : : : : : : ｀': . .
　　/.:L: : : : : : : : : :.ｌ.ハ.' ー ―-ﾉ ィ: : : : : : : : : : : ｀丶、
　 ,′|: : : : : : : : : : .|　 ﾍ　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : :＼
　 l: : {: : : : : : :　　　'., 　 {ゝ---′_,/　: : : : : : : : : : : : : : : /｀､
　 |: : ;　　　　　　　　 ヽ_.l ﾉ　__,ィ´　　　　　　　　: : : : : : /.: : :|




　　　　　 ――　[] ]　　　 ／￣三＼　　　　　 　 　 　 　 　 ┌─────────────────┐
　　　　　| ｌ￣ | | 　　　／　　 ＼三/＼　　　　　　　　　　　 │それは咄嗟の動きだった。　　　　　　　　 │
　　　　　|_| 匚. | 　　三　　 （ ○） （ ○）　　　　　　　　　　 │何故だったのか今でもわからない。　　.....│
　　　　　　　　| | 　　三　u 　　 （__人__）　　　 　 　 　 　 　 └─────────────────┘
　　　　 　　　 |_|　　　≡　　　　 ｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　 　　　　　　二 　　　　　　　}
　　　[] []　,-　　　　r⌒ヽ　　ｒヽ，　　}
　　　　 ／／　　　三　　　　i／　|　ノヽ
　　　匚／　　　 　三　 　三　　 /　　　 )≡
　　　　　　　　　　 三 　三　　／　　 ／≡
　　　　　　　　　ﾆ三　　　.／　　　／
　　　　　　　　二≡､__.／　　　 ／､⌒)
　　　　　 　 三 　　　　　　　　 ＼　￣
　　　　　　三　　　　　/＼　　　　＼
　　　　　 三　　　　 /ﾆ ヽ 三　　　三
　　　　　三　　　 /　　ﾆ_二＿＿／
　　　　 三　　.／　.
　　　≡　　／　　|
　　 ≡　／
　 三_ノ

　　　　　 ／￣＼
.　　　 　 |　＾o＾　|　＜ カネヲヨコセッテバヨウ
　　　　　 ＼＿／
　　　　　 ＿|　|＿ 　 ┏━
　　　　　|　　　　　二○



　　　　　　　　 ／￣＼
　　 　 　 　 　 |　　　　|　＜ カバンヨコセ！
　　　　　　　　 ＼＿／
　　　　　 　 　 ＿|　|＿
　　　　　　 　 |　　　　　|

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
　　　　　　 　7　　　　　　.１　i;;;;;;;;;;;:;;;l　　　　　　ヽ、;;;ｿ;;;;;;;;;;;;;;i!
　　　　　　　ゞ　　　　　　　｝. i!;;;;;;;;;;;;;;i　　　　　　　ヽ;;;i;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　　　　　　｀ヾ‐------‐'i　 |:::::::::::::（ 　　　　　　　ｿ｛i!‐-＿__〕
.　　　　　　　　 ゝ;;;;;;;;;;;;;;;;;;|　 ヽ_;;;;;;;;;;ﾉ. 　　　　　　ﾉ::::｛..:::::::::::く
.　　　　　　　　　)::::::::::::::::::i　　　￣~~ 　　　　　　　｀--｀ヽ:::::::::::ヽ
.　　　　　　　　 /::::::::::::::::::::）　　　　　　　　　　　　　　　　｀‐----'
　　　　　　　　/:::::::::::::::::.//
.　　　　　　　｛―--―-',/
　　　　　　　　`--――'
　　　　　　　i !　　　　　　　　　_　　　i !　　　　　　　　　_　　　i !
　　　　　 二　二~i　　　｛｝｛｝//　 二　二~i　　　｛｝｛｝//　 二　二~i　　｛｝｛｝//
.　　　 　　　|_|　|_|.　　　　　// 　　　|_|　|_| 　　　　　// 　　　|_|　|_| 　　　　//
┌───────────────────────────┐
│二人組の強盗犯は、目をつけていた日本人の親子連れに、　 　 .│
│人並みが途切れたタイミングを見計らって襲撃を敢行した。　　　 │
└───────────────────────────┘
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

　　　　　 　 　 　 　 　 r-､＿_
　　　　　　 　 　 　 　 / / ,' ヽヽ
　 　 　 　 　 　 　 　 / /ヽヽ_ﾉ/
　　　　　　　　　　　/ /〃/　/
　　　　　　　 　 　 / /〃/　/
　　 　 　 　 　 　 / /〃/　/
　　　　　　　　　/ /〃/　/
　　　　　　　　 /＼〃/‐-!
　　　　　　　　ﾑ/ /ヽ}　 }l　　　　　　ｶﾁｬ
　　　　 　 /7ｧLゝL/〈ﾍ/ﾉ
　　　　　./// /ﾌ７7,.ﾍ==〉
　 　 　 /ヽ' / ////こ!}　} ）
　　　 [ゝ／ ￣￣　./j .j｀ヽ､
　　　 ／　 　 　 ＿// /＿＿）
　　／ 　 ＿∠｢ﾌ/ /￣/
　,/　　￣　　　　　＼ノ、
｜　、　 -───‐ ､ヽ
｜　 　 　 ,.　-‐─- ､ヽ〉
｜　 i　　　　　　　　 ＼>

　　　　　　　 ／￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　　　　　／ ;':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'; ＼
　　　　 ／　;'::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::';　 ＼
　　　／ 　 ;:::::＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::;　　 ＼
　　│　　 ;::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::::;　　　|
　　│　/＝≡＝=､､＼::::::::::::::,,／ ,,=＝≡＝ヽ、 l
　　│ //　　　　　　ヾ､ :;:;:;:;:; ﾂ 〃　　　　　　 ヾ,|　　　　　　　　「やめろーっ！」
　　│　　　　　　　　 　　:;:;:;:　　　　　　　　　　　│
　　│　``―＝＝''" ":;:;:;:;:;:;:;:;゛ ゛ー＝===＝彳│
　　│　　;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;　　　│
　　│　　;:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;　　　│
　　│　　;:::::::::::（＿＿＿人＿＿＿）::::::::::;　U　　|
　　│　　;::::::::::::::::::::|　　　　　　　|:::::::::::::::;　　　　l
　　│　　.;:::::::::::::::::::|　　　　　　　|:::::::::::::::;　　 　 |　　　　　　　　　 　 ┌──────────┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │無我夢中だった。　　　...│
　　　　　　　__ .,-u--、.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 └──────────┘
　　　　　　 / |｀ー／ ヽゝ　　　　　　ﾊﾟﾝ
　　　　　／ _¨｀ヽヾ ／ヽ、
　　　　　! .´　ヾll | | |　　ｌ
　　　 　 |.ゝ　ノ /|/ .L／|｀ヽ_
　　　　　ヽ ー ´/ ｆ　l ゞfi-, = ､　　　　　　
　　　　 ＿|　 　|　! |」__　/　　 ﾄ
　　 　/　 .ゝ___ﾉ_ﾉ/__　| ゝ___ ,ｨ
　　 ./　 /　　|　　||､ｌ_｜　!ﾞ¨~/
　　/　 /ヽ.　 ! 　 |!　ヽ! 　|ゝ 〉
　｜ 　l　　＼|　　|!__ノ, - 、 /
　｜　/}ヽ..　 L＿|_／　 　ﾉ'
　/　/ ｛　 ＼　　　 　　／ i.
　|　 ヽ |　　　ヽ-ー ￣　 ﾉ
┌──────────────────────────┐
│どうにか被害者の腕から鞄をひきちぎった男は、　　　　　　　　 │
│足にすがりつこうとする相手に向けて躊躇なく発砲した。　　　....│
└──────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┌────────┐
　　　　　　　　　　　　:,:　　　　　　　　　　 :(::)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │鮮血が迸る。　　　..│
　　　　　　　　　　　　/⌒''⌒) :,,゜　　　　　 '　　　　　　　　 ,,,,,,,　　 　 　 　 　 　 └────────┘
　　　　　　　　　　　(:::::::::::::::!'　　　　　　　　　　　　　　　　 (::::::)
　　　　　　　　　　　ヽ::::::::';'''　　　　　　　　　　　　　　　　　''``　　 。
　　　　　　　　　　 τ'::/ .;:
　　　　　　　　　　　 )/
　　　　　　　　　。　　　　　　　　　　　　'　　、　　　　　　　;:　。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'''`~''・　　　　' `
　　　　　f''`⌒(　　　　　,,,,　　　　　　　　　　　　　　　!:(',,,,、　　　　　　　　　　　　　　::,,,,,、...
　　　　　,!,,,、(　　　　　/::τ　　　　　　　　　　　　　ノ:::::::::::::::::)　　　　　　　　 　。 　!::::::::::`!　、
　:.、　　　　　　　　　　!:::(　　　　　ﾉ::`!　 　o　　　(::::::::::::::::::τ　　　　　　　　　　　　(:::,,;,;,、; 。
　　　　　　 ゜　　　　　(/　　　　　　⌒・　.　　 ・、;::::::::::::;;.;`` ''
　　　　　,,、..　　　／/　　　ノ'　　　　　　　　 　/／'''`'`'` `　　　　　　 ..,,.. _,,,.、 ・　　　　　　　　　,, ...:・..
　　π /;::::::::(,.,.(;;;::::(　　 ,,.,　　・っ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;,;;( ):::::;.　　　　c::── '`'''::::::::::;''
　　　):::::::::::::::::::::::::::/　　'''''`　　　`　　　　　　　　'`　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　⌒　` !.:::τ''　``
　τ　!::::::::::::::::::::::::::::)／,,,,,　γ　　　　　　　　　　　　　　 :'`'``:!
　　　(::::::::::::::::::::::::::::冫 `'`'　　　　、,:'::::::`:::,,,,　　　　　　　 !:::::ノ　　　　　　　　　・
　::：':'::::::::::::::::::::::::::::;(,,,,,,,、:::::::-ｰ''''`'`''''''''"

　　　　　　　　　　　　　　　 |:::::::::::!　　 　/:::::::::／　　　　　　　　　　　　　┌────────────────────┐
　　　　　　　　　　　　　　　 |::::::;;;:}　　_ /::::::／　　　　 　 　 　 　 　 　 　 │母親の悲鳴。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
　　　　　　　　　　　　 　 　 |:::::::::|　/f l::::／　　　　　　　　　　 　 　 　 　 │銃声に驚いた娘が逃れようと駈け出した。　　　 .│
　　　　　　　　 　 　　 　 　 |:::::::::|　|　ヽ二ﾉ　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 │その方向から、僕は走っていた。　　　　　　　 　 .│
　　　　 　　 　 　 　　 　 　 |:::::::::|　i、　　l　　　　　　　　　　　　　　 　 　 └────────────────────┘
　 　 　 　　　 　 　 　 　 　 |:::::::::|　　ー''
　　　　　　　　　　　　　　 ｲ:::::::::ﾄ、
　　　　　　　　　　　　　 fi i、:::::ﾉ |　　　 ／　　_＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　 |ト.二_,.イ　　／(
　　　　　　　　　　　　　 ||　 　-''ヽ　　　　―　　　―--　．＿
　　　　 　 　 　 / 　　　 ヾ､＿ ＿」　　＜　　　　　　　　　　　　￣｀ﾞ ''' ―--　．＿
　　　　　　　　/ 　　　　　　￣￣　　＼　｀　　　　　‐- ．_
.　　　　　　　/　　　　　　|　　　⌒i´￣ 　　＼　　　　　　　｀ﾞ ''‐-．_
　　　　　　 / 　 　　　 　 !　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　｀ﾞ ''‐-．_
.　　　　　 /　　 　　 　　 |　　 　 　 |　　　　　　　＼
　　　　　/　　　　　　　　|.　　 　 　 |　　　　　　　　 ＼
　 　 　 　 　 　 　　 　　 | 　　　　　 |　　　　　　　　 　 ＼

　 　 ﾐﾌ>､、
　　　　｀ヽ丶.
　　　　　/　 l
　　　　 /　　l
　　 ,r-(二二ヽ、＿＿
　　 ﾐy'く-､、｀L,＿＿ ヽ　　　　　　　　　　　グァアァァ
　 　,.:<｀ヾｰミﾆヽ、 l,｀ヽ}
　　:,　,},t､ ｀ヽ.,＞='^ヽ、
　　 ﾞ ﾞ ^ヽ>､　ヽ'"　　 丶､
　　　　　 ,}　 　 l　　 ﾄ、　 ｀丶､
　　　　　/ /`ｰ-l　　 l~｀丶 ､　 ｀丶
　　　　 / /　　　ヽ　 ヽ　　　｀`7　 l
　　　 ,ﾉy'′　　　ヽ　 ヽ　　　　l　 l　　　　　　　　　 　 　 　 　 ┌──────────────────┐
　　　《^ﾘ　　　　　 'i　　l　　　　l　 l　　　　　　　　　　　　　　　 │断末魔の呻きを上げ、夫が転げ回る。　 　 │
　　　　　　　　　　　l　　l　　　 l　 ｌ　　　　　　　　 　 　 　 　 　 └──────────────────┘
　　　　　　　　　　　l　　l　　　 l　 l




　 　 　 　 |　 /　,　　　　　ﾊﾟﾝ
　　 ＼__ノし/／ ､
..＿＿)/⌒ヽ(＿ ',
　　￣)ヽ__ノ（￣￣￣　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ┌───────────────────────┐
　　／⌒|「⌒＼　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 │傍らにひざまずいた妻を、同じ銃が撃ち抜いた。　　　　.│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 └───────────────────────┘

ｰ:::|:: |:::::　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Vﾊフ:::丁ノ "´ヽヽ'
ｰ...|:: |:::::: 　　　　　　　,　 -‐ r‐- ､　 　 　ノレ<|:::　|　　　　＼＼
ゝ_j::: ! :::::::　　　　　／￣`ヽ:::::.`丶＼_　´　､_jノ::::　!　　　　　 ＼＼　　　　　　　　「イヤアアア！」
＿:|:: |_:::::::::: 　　 　l　　　　　',:::::::::::／　　　　ｲ::|:::　|　　　　　 　 ＼＼
ヽ::|:: ﾄ､＼ :::::::.. 　 |　 　 　　 ',::::::/　　　　／ |/|:::　|　　　　　 　 　 ＼＼
:::: |:: | ＼ー⌒＼_ :ﾄ､　　　　　l::/　　　イ　　 / |:::　! 　 　 　 　 　 　　ヽ ＼
:::: |:: |＼ ＼ 　　 ＼ー-.､ ‐─ｧ′／::::::! 　 /　 !: 　!　　 　 　 　 　 　 　 ヽ ＼
:::: |:: |＼＼ 　,--､　 ＼　ヽｰ─く :::::::::::!　 / 　 .!:　 !　　　　　　　　　　 　 /　ﾉ
:::: |:: |　 ＼￣::::::V　　　＼|　 ／　＼::: 　/ 　　 |:　 |　　　　　 　 　 　 　 /　/




　　　　　 ／￣＼
.　　　 　 |　＾o＾　|　＜ ハッハッハ、ガキモシネ
　　　　　 ＼＿／　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ┌───────────┐
　　　　　 ＿|　|＿ 　 ┏━ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│銃口が少女に向く。　　　....│
　　　　　|　　　　　二○　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 └───────────┘

　　　　,、__ , ヘ, ,ﾍ __,.　-- 　. 　ｒﾍ　 　　 ,、
　 　 ノ : ://,ｨ':´: : : : ｀´￣: ｀丶:｀ヽメ､／ :"ヽ、
　　/; : ﾝ': : : : : :/: :､; : ヽ、: : ＼: : ヾ,ﾍ: : : ',ｼへ,
　 ,' : /: /: : /: :/ :./　l : : : :＼ : : ヽ、:ﾊﾘ! : : : : :ゝ
　l: :/: /: : /: : ﾉ: / 　i: ト ､: : : ヽ: : : ヽ: ﾚ1; : : : : i
　 l: l: :ｲ: : : ﾒｰ'ヽi 　 i/'ｰ-＼_:_: ヽ: : :l;iｌ .|: : : : : :l　　　　　　　　　　　「きゃっ」
　 |: |ﾉイ: :ﾊｧ'7;i' 　　'´!ﾊ｀ヽヾ: : : : : ; l'　i : : : : /
.　 ﾚﾊ,; |:/ 〈　!ｿ 　 　 .じ'　ﾉ　'i : : : :i;"　| : : : : i
　　 l : :ﾚ' 7"xx, _'＿_　　,ｘｘｘ,. !ヽ : ,' 　 l; : : : : i　　　　 　 　 　 　 　 　 ┌────────────────────┐
　　l: : : :!: :ﾍ.　 |/´　｀ヽ　u 　:ﾊ:/::ｿ:ヽ,　i : : : :;ゝ、　　　　　　　　　　　 │彼女が僕の足にぶつかってくる。　　　　　　　 　 .│
　 ,': : : :l: : lﾒi＼ ､　　_.ﾉ　　 ｲ::/::/ヾ;;:;ヽl: : :ハ゛:ヽ　 　 　 　 　 　 　 　 │それだけが唯一の救いであるかのように、　　　 │
　;ハ: : l: : :!　 i::｀>‐-r 　 /ヽﾚ'ｧ ン´::::::::ヽｿ　　ヾ;i　　　　 　 　 　 　 　 │全身の重さを預けて寄越す。　　　　　　　　　　　..│
　　　｀ヽi : !　 ,ｿr‐'7,ﾊ,／ ,ﾚ'__/::::::::::::::::::;ハ,　　　）　　　　　 　 　 　 　 └────────────────────┘




　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣｀ヽへ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ　 _／ゝ.._ /　 , ゝへ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（＿／　　| . / _ / /　 ,. ｀へ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿＿＿＿ ノ /　 / /　 / / . /ヽ
　　　　　　 ＿＿＿　　　　　　　　　　　 　 （　　　　〉　　 /　 / /　 / /　/ /
...　　　　／　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　｀──´⌒｀/　_/ /　_/ （__/ /
　　　　/ 　　　　 　　　＼　　　　　　　　　 　 　 　 　 　〈__ノ 〈＿/.　_　 /
　　　 │　 　　　　丿　　 ＼　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /ヽ＿＿＿￣/
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　　　 　　 　 　 ／////////////77＞;:(.:.:!jﾍ,:.:.:.:､:.ﾊ.:.:ｿi!.:.:.:..:.:.:.;|
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　　　　　　　 /////////////////／//∧//∧ﾙ'｀i::i,:,.ﾉi､_､:.:.r-,__;.:.､
　　　　　 　 /////////////////f//////l///,l､　,ﾘ!i i |ｰ ､:｀ﾞl⌒ｰi:ヾ.:..､
　　　　　 　/////////////////,l//∧//∧//,lﾍ´ 　.ﾘ ! ｒ-､イ　　　`i.:...::,
　　　　　　/////////////////,∧//∧//∧/,|∧ ／./　ヽ､________　 >､:.:i 　 　 　 .┌────────────────────┐
　　　　　 ///////////////////∧//∧///i/|/∧ﾍ/　 ｒ7777Zﾍ Y´.::|..:l!　　　　 .│衝突の際に体勢が崩れた。　　　　　　　　　　　　.│
　　　　　///////////////////ZZメ//∧/∧,|∧ﾍへ__,///////∧i〃}:.:i.　　　　 .│男が彼女を狙っているのはわかっていた。　　　 │
　　　 　/////////////////ー.／///ヽ/∧/i/|/i///∧,/////////.:.Y.:.i!i　　　　 .│瞬時に足元の小さな存在を守ろうと蹲り、　　　....│
.　 　　//////////////////／////(: : :.＼/j/∧,V//,∧V//////.::::､{i):;.: 　 　 　 │石畳に左手をついた。　　　　　　　　　　　　　　　..│
　　　/////////////////／///////>::/. ::＼//∧////l/////,/i:::::::;ｿ.:ﾉi!　　　　 └────────────────────┘

　＿＿＿
　　　　 　 ￣ ｀ヽ、＿_
　　　　　　　　　　　｀ヾ--､＿＿__
　　　　　　　　　　　　　｀ヽ、＿＿)
―――弋ﾍ　　　　　　　　ヽ、　｀ヽ―-、
　　　　　　｀ヽ　　　　　　　　　｀ヽ、＿__)
　　　　　　　 .ヽ　　　　　　　　　　　　｀ヽ､_
　　　　　　　　　ヽ、　　　 |ー――-- ､＿_
　　　　　　　　　　 ｀ヽ、　 ヽ　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ┌──────────────┐
　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ　　',　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│そして三度目の銃声がした。　　　│
　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　l　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 └──────────────┘
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ_ﾉ

以上で投下完了です。
見てくれてありがとう。

――登場人物（登場順）――
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如月やらない夫　（原作　如月 敬輔） 　一話目から
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楠やらない子　（原作　楠 千織）　一話目から　
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柚原春夏　（事務員）　一話目から（一話のみ登場）　
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利根川先生　（恩師）　ニ話目から　
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如月真紅　（母親）　ニ話目から　
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如月ジュン　（父親）　四話目から
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先生夫婦　四話目から
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楠夫婦　（故人）　四話目から
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82 小さな名無しさん＠この板は300レスまで 2011/08/03(水) 18:35:31 ID:K690tioc 乙ん！！！ 有無を言わせない真紅が怖い…… 83 小さな名無しさん＠この板は300レスまで 2011/08/03(水) 18:50:50 ID:IsUhAzVM 乙でした～ 色んな意味で、やらない夫が悲しい 85 小さな名無しさん＠この板は300レスまで 2011/08/03(水) 21:50:22 ID:Fvy6bxrU 乙 原作では指が無くなったことになってるんだよね 映画では指はくっついていたけど動かない設定だったな やっぱり無くなってしまった方が絶望感を強く感じる やらない子がいい感じに役にはまってると思う