280 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:03:09 ID:AqBReZrA
八３０５．
果たしてその理由は、ランサーの想像通りなのだろうか。



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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ミ:::}/　 /　　　　 ヽ;l　　 ﾍ　ヾ;: ;;ｰ､:j.　　　　　 /ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ::}　　ﾘ　　　　 　 ゝソ二|￣ ソ ,ﾍ }　　　　　/ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽi ｀ミ}≧ 　　ヾ~y| 弋少｀　　 （ ｧ,i　　　　/ミ　 /
　　「……………。　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 i ﾍ　匁ヽ　　ｰ─-　　　　　 丿ｿ　　 　 /ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ',　｀￣　il　　 　 　 　 　 　 ﾍoj　　 　 /ミ　 /
　　 立場上、逃がすわけには行かないから、　　　 　 　 ',　　 　i|　　　　　　　　　 j. |.|i　　　/ミ　 /
　　 捕らえるフリをしたって事か？」　　 　 　 　 　 　 　 　 i'i、 　ヾ　 　 　 　 　 　 ,'　|.|.i 　 /ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |.| ヽ　──一- 　 　 , '. 　i.jxゝ/ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |.j.　 |ヽ　　　　　　／　　　!::::::ヽミ　/
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |.　 |ﾍ|　|r- ､. |　　　　'''´￣￣￣￣
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281 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:04:09 ID:AqBReZrA
八３０６．
違和感は拭えないが、こうして自由になれたのなら当初の目的を果たすべきだ。
そう考えた彼は、やらない夫に感謝しながらも雑木林を東へと向かう。



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; , | .::| ::r : :| :i | .:;;::;;;. ,;:.　,.　　　　　　　 　 　 　 　 （｀　　彡三　ミ;:;:;:;:;:.　∠　　　　 　 ./;;/
;; /.::/ :::|i :.:| :l;ﾊ.＿,,. ,,::;;.:.　 　 　 ,;:.,,. ..　　　 　 　 ゞ　　　　彡ミ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/　　　 　　./;;/　 　　 ,.,,.
ノ,;ノ : ::八 :ゝ::ヽ＼＿,,.,. :,　　　　　　　　　　　　　　ヾ　,,ﾍ　彡ﾐ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:r´　　 　 　/;;/　　 　 　 ,.vVw,
;:´.:: :／.::::ヾ::＼::＼::ｰ､ ,;;::..　 　　　 ,,:;;;.. .　　　　　 ∧/　 ﾐ　f´ ﾐ;:;:;:;:;:;:;:;:|　　　　　./;;/,::　　　　　　　　　　　　　,;..,,..　..
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 | .）/ﾟ　　　 .λ;:;:;:;:;:,,ヘ、　　　./;;/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |__　　　　Ι∨二彡∨ヽ、 ./;;/　　　　　　　　　　　（なら―――
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　χ´　 イ_ 〆￣　　　ヽ;:∨;;/　　　　　　　　　　　　有り難く行かせて貰うぜ）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└´r´＿　. -┐,,,　,,,,,）;:;:トｰ-r ￣、ｰ-、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∠ﾞﾞﾞ＼ｰ─-∧　　　　　 },,,,　,,,,!;:;:;:!.}　 」 ヽ　!　ヽ｀!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ＼　＼　＼,,,,￣,,,,ｰ--┘,,　,,,!;:;:;:!└ ┤　|　!　 i　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　＼　＼　ｿ,,,,　,,,,,,,,,,,,,,,,,,　,,,,!;:;:;:!,,,,,,,,,ﾍ＿　!　 i　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　 |　　＞,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,,,,,　,,,,|rn|,,,,,,　,,,,,,,,￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　 |∠,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,|
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠／,,,,,,,| |,,,,,,,,,|,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,,,　,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,|
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282 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:05:09 ID:AqBReZrA
八３０７．
城壁や城の横では伏兵が現れた頃。
林と暗闇に紛れたまま無事、城門へとたどり着いていたのだが―――



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283 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:06:09 ID:AqBReZrA
八３０８．
そっと覗いてみれば第一騎士団の別働隊が張り込んでおり、
ネズミ一匹すら通れなさそうな雰囲気だ。



　　　　　　　＿
　　　, ‐''´~　　 ｀´￣`‐､
　ヽ‐'´　　　　　　　　　 　 `‐､
≦　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
≦　　　,　,ﾍ ､　　 　 　 　 　 i
　l　ｲ/l/|/ヽlﾍﾄ､　　　　　　│　　　　「堀伝いに裏門から回ってくる奴らは散発的だ！
　|/ |　! |　 | ヾ ヾﾍﾄ､　　　 l　　　　　 防御陣形を崩さず被害を最小限にせよ！」
　 ! ‐;-､ 　 ､__,._-─‐ヽ.　,.-'､
　 } ' (:)〉　　´(.:)｀i　 　 |//ﾆ !
　ﾞ! 　７　　　 ￣　　　　| ﾄy'/
　!　 `ヽ"　　　　 　 　 .;-‐i´
　ヽ　 `￣二)　　　 　 /ヽﾄ､
　　ヽ、　ー　　　　　　／ ゝ
　　　 ＼　　__, ‐'　 ／　／ ＼
　　　　　￣ i:::::　／　／



　　　　　　　　 |＼　　　　 /＼　　　　　/ |　　　／/　 /
　　　　　　　＿|　 ＼/＼/　　 ＼／＼/　|∧／　/／/
　　　　　　　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/
　　　　　　　∠　　　　　イエッサー！　　　　　　　 ＞
　　　　　　　／＿　　　　　　　　　　　　　　　　　＿ ＼
　　　　　　　￣　/　／∨|　/Ｗ＼　　/＼|＼　 .|　￣
　　　　　　　　　/／　　　|/　　 　 ＼/　　 　 ＼|
　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　／　　　　　　　　 ／　　　　 　 　 ／
..　　　　　　　　　　　／..　　 　 　　　 ／..　　　 　 　　　／　　 　　　　　／
　　／￣〈　　　　 ／／￣〈　　.　　／ ／￣〈　 　 　 ／／￣〈　　 　 ／
　　l/",ニヽ~'ヽ／　 l/",ニヽ~'ヽ／　　l/",ニヽ~'ヽ／　l/",ニヽ~'ヽ／
　 ﾉl_[,#ﾟ -) 0´|　　 ﾉl_[#ﾟ -) 0´|　 　ﾉl_[,#ﾟ -) 0´|　　ﾉl_[,#ﾟ -) 0´|
　　( _ii＿／_ノ　　　( _ii＿／_ノ　　　 ( _ii＿／_ノ　　　( _ii＿／_ノ
　 　|ヽ0´|　　　　　　|ヽ0´|　　　　　 　|ヽ0´|　　 　　　 |ヽ0´|
　　ﾉ／'i'i'iゝ　　　　 ﾉ／'i'i'iゝ　　　　 ﾉ／'i'i'iゝ　　　　 ﾉ／'i'i'iゝ
　／(/´"J　　　 　／(/´"J　　　　 ／(/´"J　　　　 ／(/´"J
284 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:07:09 ID:AqBReZrA
八３０９．



　　　　　　　　　　　　　ﾄ､＿　　＿
　　　　　　ヾー-＜￣¨ヾト､. ＼.ヽ ヽﾄ､
　　　　 _ト--'ド=､=三≧=ﾆﾄ､ﾄ､＼}iYi }i ,.ｨ
　　　　＞ =ニト-ドﾐi､｀ヾミli､＼ド､Vi:ﾚ/i/
　　 ≦=＝=＜￣¨ニ=- ､　｀ヾ ＼ Yｌ/ .lﾚｲ
　　 ＜-―＝ニ三≧=､ﾄ､ >}-iド!￢iﾍi斤Ｋ
　 ≦= '三 ニ＝,.ニ.Z 〃.〃　 {{i　 　 {　{iヾヽ
　 之_Ｚ二〃￣　__,.ｨ! {{　|{.　　|{ﾄ､　　ヽ ∨ }}
　　≦ｨ'∠,／￣,.イく.　ﾘ_,｣ﾋ==≠=ミ;､　 z久ﾉ　　　　　「………こいつを突破するのは一苦労、だな」
　　 ノｲ∠.ｲi,r＜ｿ'　　　　,ｨ''::ﾅ≧　　　 fﾃ
　　 ∠ｨ'〃,'{ ￢.、　　　　`￣ ´　　　 　 ｢i
　　　フイ小| '､:::}　　　　　　　　　　　　　＼
　　　￣}ﾉ,'八.ヽ-､　　　　　　　　　　　　_ ,ノ
　　　　　'＾^!个irr:ｪ　　　　　　　　　　 ___７
　　　　　　 ド.Ll {. } ヽ　　　　　　 ‐''",. -.〉
　　　 　 　 川｜|.｜　ﾄ､._　　　　　　　　{
　　　　　　ﾘ　 .| ∨　　　　｀ヽ、　　　　_ﾉ
　　　　　 厶=r:|_　　　　　　 　 ｀ T ￣
　　　　／　 く＿ ￣¨ ￢------┴､
　　　/　／　ﾉ 　 ￣¨ ￢-------イ
　　,/,∠...／　　　　　　　　　　　　　＼＿



ランサーとて元親衛騎士、逃げに徹すれば何とか突破する事は可能だろう。

だが彼は知っている。
エンジュの部下達の練度の高さと、連携を取ったときの恐ろしさを。
285 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:08:10 ID:AqBReZrA
八３１０．
無傷で抜けられる可能性は決して高くない。

後の事を考えるとここでは手傷すら負いたくない、と作戦を考えた彼がふと見れば、
王女がよく通る声で第二騎士団への語りかけを行っている。



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　　　　　　　　　 　 　 　　 　 　 |:|.　|:|　 　l∧l 　　|:|.　|:|
　　　 　 　　　　 　 　｡　　　　　|.:.|. |.:.| 　 ,.傘., 　 |.:.|. |.:.|　　　　 　｡
　　　 　 　 　 　 　 　| 　 　 　 .|∧||∧| ,傘傘傘, |∧||∧| 　 　 　　|
　　 　 ｡　 ｡ 　 　 　 ||.　 　　　（VVVV）.傘傘傘.（VVVV） 　 　 　 ||　　　 　 ｡　 ｡
　 　 　|. 　|　　 　 　|:| 　 　　　{∽}{∽}}}傘傘傘{{{∽}{∽}　　 　 　|:|　　 　 　|.　 |
　 　 . ||　 ||　　　 　|:.:| 　 　,傘|ｌ~~|ｌ~~|}}个个个{{|ｌ~~|ｌ~~|傘,　 　 |:.:| 　　　　||　 ||
　　　 |:|.　|:|　　　　lvvl .,.,傘傘|∩||∩|}::::/⌒ヽ :{|∩||∩|傘傘,.,. lvvl　　　　|:|.　|:|
　 　 .|.:.|. |.:.|. 　 　 |∩|傘傘傘||　l||　l|}:::|: 　　|:::{||　l||　l|傘傘傘|∩| 　 　 .|.:.|. |.:.|
　　　|∧||∧| ,.,.,傘||"||傘傘傘||　l||　l|}:::|: 　　|:::{||　l||　l|傘傘傘||"||傘,.,., |∧||∧|
　　 (vVVVV)傘傘{∽}个个个{∽}{∽}}:|三ﾆ三|:{{∽}{∽}个个个{∽}傘傘 (VVVVv)　　　　　 　　|
　　 山i!山i山傘傘|三|!|/⌒ヽ!|ｌ~~|ｌ~~|}:／个＼ {|ｌ~~|ｌ~~|!/⌒ヽ|!|三|傘傘山i!山i山　 　 　 　 　 ∧
　　　||^^||^^|个ｌ个{∽}!||:.　　||{∽}{∽}}:{ﾆi二iﾆ}:{{∽}{∽}||:.　　||!{∽}个ｌ个||^^||^^|　　　　　　　/;;;;;ヽ
　　　||　l||　l|::::::::::::|三|!|iﾆﾆﾆi||ｌ~~|ｌ~~|}::::／＼::::{|ｌ~~|ｌ~~||iﾆﾆﾆi|!|三|::::::::::::||　l||　l|　 　 　　　　| ∩ |
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　　　{})({i})({}iﾆﾆﾆi{({})}!!.!|,,, l|:!{})({|})({}}::|皿ｌ皿|::{{})({|})({}!:!|,,, l|:!!{({})}iﾆﾆﾆi{})({i})({}:::[]::|:|::[]::|:|::[]::|:|::[]::
　　　||　l||　l|鬥ｌ鬥||: ||!|鬥ｌ鬥|||　l||　l|}|鬥轟鬥|{||　l||　l||鬥ｌ鬥|!||: ||鬥ｌ鬥||　l||　l|:=:=:|:|=:=:|:|=:=:|:|=:=:
　　　||　l||　l|/⌒ヽ||: ||!|/⌒ヽ|||　l||　l|}|iiiiiiiiiiiiiiii|{||　l||　l||/⌒ヽ|!||: ||/⌒ヽ||　l||　l|:::[]::|:|::[]::|:|::[]::|:|::[]::
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286 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:09:09 ID:AqBReZrA
八３１１．
耳を澄ませてその堂々さに心底驚いた。

王女としての気品は漂わせていたものの
襲撃があって城から逃げるまではそれだけであったはずの真紅が、
いつの間にか王者の風格を備えているではないか。



　　　 　　 　 　 　 　 　 , -､/￣ヽ 　　__
　　　　　　　　　　　 __（　　しヘ 弋／　)＼
　 　 　 　 　　　　／ー'　 　　＼ 　　　└ヘ＼
　　　　　　　　　└ヵ　　　　　　　　　　　 　 |＼
　　　　　　　　/￣＼　　　　　　　　　　　　　〕　＼
　　　　　　　 └┐　　　　　　　　　_ 　 -―-＼　　ヽー､
　　　　　　　 ┌┘ 　 　 　 　,.　　 ／　 ヽ　＼ 了 　　ト ∠ム　／ ヽ
　　　　　　　　廴　　　　　／ 　　/　　　　　　 ヽ｀つ　 ∨Y　 ￣〕マ７_
　　　　　　　　 r┘　　　/ 　 　 　 　　 　 　 |　　|└┐　|　|　 rﾍ´ ＼ ｊ! 　 ＿
　　　　　　　　 ｀つ 　 ./ 　 　 　 　 　　 |　　|　　| | 〔.　｜｜＜_ﾑ__＞　￣__
　　　　　　　　　〔＿　.′ 　 　 　 　 　　|　 | ||　｜ｉ　｀)｜｜　〔 ﾍ＼ ＜
　　　　　　　　　　　ヽ| |　:　　|　 |　　　 |　 | ||　 ﾚﾊ 弋 |r= 、r┘ |　＼ ｀
　　　　　　　　　　　　| |　|　　|｜| 　　　|　 川ィﾁﾚ,_|　({ﾍ參〉） 　！ 　 ＼
　　　　　　　　　　　　| |　|　　|⊥从_| /ｊ／/ィi´うﾊ｢|　|广7_ハ 　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　＼＼ヽ７了7ヾ　　　　 ゞ- '｜ |∨/ 　 ＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 ＼| ヽ　ゞン　　　　　　　｜ | ∨ 　　　 ＼　　＼
　　　　　　　　　　 　 　　　　|　∧　　　 ｀ . - 　 　__|　ハﾍ 　　　　　＼　　＼
　　　　　　　　　　　　　 　 　|　l|　＞＿　　　　／　j /￣ヽ.ﾏ＿　 　　　＼　　＼
　　　　　　　　　　　　 　 　 /∧|／　　 __ｱ=ﾐく入`マ"￣￣ ／　　 　 　 　＼
　　　　　　　　　　　　　　／/　ﾍ　　　/-ゞ參r' _≧　＼￣/___〉 　　 　　　　　＼
　　　　　　　　　　＿__／∠ ヽ＿＼イ　　 ｀T1く, ―‐ 　∨　　ヘ,__
　　　　　　　　　　＼ 　 ＿...ニニニ＞ 　 　｣ K_,／￣ヽ　〉￢　　　＼_
　　　　　　　　　　　 ￣　 ＿／　__〔　　／　　| ゝィ厂ﾄ 　Ⅴ | |　 廴 厂 ヽ
　　　　　　　　　　　 ＜二、≦二.＿ヽｲ　　　 |　　｢ 广ヽ.ノ　|/ 　　＼ 　 /
　　　　　　　　　　　　　　冫￣_.ｱ／　/　　　　 /（　 ┬―＼　　　　　|　 ヽ
　　　　　　　　　　　 　 ／ --≧＞　/、　__　　ゝ┴イﾍ 　 　　　　　 /!　　ﾉ
　　　　　　　　 　 　 ／　 　 ヾ＼　 ん}｝丿 `ｰ'￣丿　 ﾄ ＿ 　　　　 / r‐'´
　　　　　　　　　　 く　　　　　　｀ ＝＝' （￣￣￣　　　ﾄ　　 ￣ ー‐' ノ
　　　　　　　　　　　 ＼＿＿,....., 　 　　 ﾉ 　 　 　　／,!　＼――＜__
　　　　　　　　　　　／　　　　　＞ｰ―'　　　　　／　/　　 /　　　　　ﾄ
　　　　　　　　　_／　　　　　／　| 　 　 　 　 ／ 　 /　　 /ﾍ　　　 ／ﾍ＼
　　　　　　　　/ ＿__ 　 　／|　　ヽ　　　ー '´　　 / 　　/　　ヽ＼＿〉　ヽ ＼
　　　　　＿＿L｛　　｀　ノ /∧　　 ＼　　_,.. 　 　/　　 /　　　　＼　　｀　、＼＼
　 　 　　|　　＿＿　￣__ノ/　 ヽ　 　 ￣　　　　/ 　　/ | 　　　　　＼
　　　　　し'⌒i 　 　　く　/　　　 ＼　　　　　　/　　 / ｜　　　| 　 　 ＼
　　　／　　　弋__r‐､　У　　　　　　　　　　 /　　 /　｜ 　 　 | 　 　　　＼
　 ／　イ丁j　/ 　　 ﾌ　　　　　　　　　　　 /　　 /　　|　　|　　|
　‘ 'レ/ノ　{_/　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　||　　|

287 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:10:10 ID:AqBReZrA
八３１２．
無意識のうちに引き込まれ、演説に見入っていると―――
王女の周りを固めている主要人物はマコト、キバヤシ、アリア、ロイの四人のみだと気づく。



　　　　　　　　　　　　　￣ヽ､
　　　　　　　　　　_　,-─ ､,〉ゝ－-::...　、
　　　　　　　 ,..::´:::::ヽ:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::`＼_
　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ
　　　　　, ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 NヽN｀　　　　　　　　　　　　　　｀ﾞ､
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　　　,/:::: /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ｌ　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヾミﾐ､　　　　　　 _,.ｨｲ八、　　　　 !
　 　 l::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　ー-=ﾆ ＿,..､_'"'ノ,."-'ニ'ヾ､.＿ l_
　 　 |/|:::::::::::::/::::::::::::::::: ﾊ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{F|! '､辷ﾞiニ{´'_辷,ﾞ ﾞ!r'-r,^､i
　　　　|::::::::::::::::::::::::_:::/　ｌ:::::::::::::::::::|＼:::::::::::::::::::::::::::ｌ:::::::::| 　　　　　　　　　 　 　 ／|　　　　　　　l;jﾞ､_ 　 ﾉ　ヽ)、　　ﾉ'　 ゝ:'/
　　　　|:::::::::::::::::::::::::/≧､ ｌ::::::::::::::::::| 　＼斗::::::::::::::::ｌ:::::::::ｌ.　　　　　　　　　 　 ／ 　|　　　　　　　｀!　￣ヽ '　　￣~´　 ,'.,ｨ'
　　　　|:::::::::|:::::::::/l::/ｲ⌒ﾞ`ﾒ::::::|＼::ｌィ千代`:::::|:::::::::ｌ:::::l〉ﾘ　　 　 　 　 　 　 ./　/ ./　　　　　　　　 i.　　 --一 、　　　,'　|
　　　　|::::::::/|:: /　ﾘ弋､ _ﾉｌ　ヽ|　 ヽﾚ; __ｿ ｌ j|人:::::::ｌ:::::|　　 　 　 　 　 　 　/　/ ./　　　　　　　　　　ヽ、 `二ﾆ´　　.／　 ﾄ、
.　　　　|::::/　|:::fzlｌ　＾ー‐'´　　　　　＾　‐-'´　jｌノ:::::l::l::て. 　　　　 　 　 　 /　/ ./　　　　　　　　　　,..-i;:ヽ、　　 ,. '´　　／ ヽ､_
　 　　　|/　　ヽ.:::|ﾍ　　　　　　　　　　　　　　/ィ<"j ﾒ_／　　　　　 　 　 ./　/ ./　　　　　　　　_,.イ´　 j　　￣￣　　 ／　　　,i､ﾞト-､
　　　　　　　　　ゝ;八　　　　　　;　　　　　　/ｲ　　　　　　　　　 　 　 　 /　/ ./
　　　　　　　　　　　x > ､　　　ｰ ｰ　　　　ｲゝ:::｀＞-､　　　 　 　 　 　 /　/ ./
　　　　　　　　　〆::::;//ﾊ`　、　　　　 <´/　 ｌ）:::}:::::::::::::::` ､　　　　　/　/ ./
　　　　　　　 ／/::::://　　＼ 　｀‘´　　 /　 /::::7::::::::::::::::::::ﾊ::l 　 　 /　/ ./
　　　　　　 ﾉ::::/::::::《〈 ヽ／ﾍヽ 　　　／　 /::::/::::::::::::::::::::::/::::l　　 /　/ ./　　　　　　　　 　, -‐'"´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀`'' ‐､_
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　　　　　　　| ! i彳tぅﾐ　ヽ!斗≦毛zﾐｌ: ! : ヾ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;;;;;;;;;＼ヽ ｿ　｀〉 /小ｰ､｀ 〉ﾉにｿ　｀ヽ_
　　　　　 　 l: ;ｲ}ゝ辷;j. 　 　´ ﾄｨ':::j"|: l: : : !　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ`ー' / ﾊ | /、'" 　 /　､ﾉ
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　 　 　 ノ　/: : : ｧ´ {{:::｛{ヾ－　　〃:::〃ヾ,l　 　　　　　　　　　　　　　ｒ‐z- ､,　イ　' {￣｀丶､: : : : 〕
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　 　 ／イ: : : { 　｛　　.::/　./　　.:!l/　 　./l　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｌ　|ヽfこ}　ｲ |ｨf ﾄﾑ　ﾉ　 jｌ|
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　 　　　{,ﾍ: : : ', 　 l￣　 　￣￣/　　 /: : :l　 　　　　　　　　　　　　 /　,!　 　ヽヽ| l! 　- ,　ﾉｌ|
　 　 　 i|　', : : |　　'r┐　┌--/　　 /: :l: :ｊ　　　　　　　　　　　　　　 l　/　　　 「r:ｌ |ヽ-ｒ ＜:l iヽ
.　　　　 ヽ ヾ＼!.　　'ｖ　　|:::::/　　 /ノ丿ｿ　　　　　　　　　　　　 　 / /　　　/ｒ‐- ､!ﾉ='｀　/:l !ﾑヽ
　　　　　　　　　ｌ　　｜ 　!:::/　　 / ＼　　　　　　 　 　 　 　 　 　 / /! ＿／　ｒゝ､ソ:个 ､j .厶 ィ′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / /|ｌ {_＿　　 ヽソ|:　ヽ＿ゝ {ソ￣}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 / / /　 / 〕　 r┐〉:ﾄ-- 'ヽ _ く'-､ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/'´　ｌ　 /　┴-'､_j/ヽ.ﾉ＿ｒ.｣ヽノ｀ヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　./　 ヽ.　　　〈 ' _ノ　､　　 ｀ｽ.　　＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／/　　　 l　　　 l＼_.厶ﾌ　 丶　ヽ/　ハ._ｫ'´ｰ､ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .／'／　　　 /　, -'´/´-'´　/　　　 ヽ　 / ヽ ＼､｣┘ヽ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _／_／＿　＿_/　ヽ.／'´　. : :/　　l　　　　　　　｀　､＼　__ ゝ_ ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｌ.. -―ｚ-､.＞ ､-‐:/　. : : : ／　l　　l　　　　＼　　　､｀¨ ー‥_T´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　, ‐'二 -- ､＿ノ ´. : : : ／　　/ 　|　ヽ　 ヽ　　ヽ: : .　｀　ｰｬ､: :｀ヽー-　、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　く‐'´ー-　､＿ |. : : _ -'´　　. :/:　　ｌ: .　ヽ　 ヽ: 　 ヽ: : : : ./: : }: : :/―--'´

289 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:11:09 ID:AqBReZrA
八３１３．
個人行動のやらない夫はともかく、ジュンが居ないのは不自然だ。



　　　　　　　　　　|レ　/,/　　　　|,,/　　　　　　　　　　 |,,,|::::::::::::::|;ヽ::::::::::::::::」.;.;.;
　　.;;;;;:::::::............　 !}　｀lヽ、　　　|ﾉ　　　　　　　　　　　.|,,,|::::::::::::::ゝ':::::::::::::／.;.;.;.;　　　　（本当にマゴットが加わってやがる。
　.;;;　　　　　　　 へ}　 |　 ＼　　|　　　　　　　 /　　　　|,,|:::::::::::::::|,,|:::::::＜.;.;.;.;.;.;.;　　　　 意外に神殿も腐敗していないのか？
;;;;　　　　　　　　 !iヽ}.　|　 　,＼ .|　　i.　　　　/　　　 ::::/ﾉ::::::::::::::::|,|::::::::::::＼.;.;.;.;　
.;　　　　　　　　..!.i　 }　=＝f=、.＼ 　 il　　　/.　　　　::::|/::::::::::::::::::|::::::::::::::::::ミ.;.;.;　　　　それにしても妙だ、
　　　　　　　.::.　 !i ｀t　　　i、・ ;,ミゝ'i li... . /;　　　　　::::|＿.;-──--:::::::::::::::ﾐ.;.;.;.　　　　ジュンの奴が居ない。
　　　　　　 :::　　 ! ゝi　　　...............::::::::::::::〈‘_.,;;;'.'_二￣.|＿:::::::::::::::::::::::::::::::::::,;;.;.;.;
　　　　　 .:::.　　　ト,. i　　　　::::::::::::　ヽミ彡::::≦:::::ィfキ”，゜テヾ、::::::::::::::::::,;/:::::::　　　　 裏門への別働隊？
　　　　　 ::::　　　　ヤi　　　　　　　　 ） ::::::::::::::::::ミ:::::::........＜__ノ´:::::::::::::::::::ﾉ::::::;::　　　　 いや、その分散は意味が無い。
　　　　　::::.　　　　 | |.i　　　　　　　　 .:::::::::::::::::::::. 　　　:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ
　　　　　::::.　　　　 | |ヽ　　　　　　 / :::::::::::::::::::::::::.. 　 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::∀::::　　　　　 ならば何処へ？）
　　　　　.:::.　　　　 | | ヽ.　　　　　/ ::::::::::::::::::::::::::::::::..::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::| |::::
　　　　　 .::: .　　　 | |　 ヽ.　　　 / :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／:::::::| |::::
　　　　　　:::　　　　~　　　ヽ.　　丶::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::| |::::



別働隊にしても、城攻め以上の重要拠点があるとは思えない、
一体何を企んでいる―――
そう思った瞬間、やらない夫の横顔が脳裏に思い浮かんだ。



　　　　　　　　 　 　 　 ￣　 　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　 　 　 ＼
　　　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　､＿　　ヽ
　　　　'　　　　　　　　　　　　　　 ｀　､ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　,‐-,.._ ゞ
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　弋心 l
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



戦術はあの少年が立てたに違いない。

ならばただ麻呂を斃すだけではない、
全てを掴み取るようなとんでもない作戦なのだろう。
290 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:12:09 ID:AqBReZrA
八３１４．
その確信から閃きを得れば、後は数珠つなぎに発想が繋がっていき、
急に視界が開けたかのように色々なものが見えるようになる。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 j､　|ｿ;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ノｿ;;;ｨ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 i:;ヽ|:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;/l/: 'ﾉ'ノ／,ノノ'´: : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 （V:;:;i:;:;:;:;:;ﾍ:;:;:;:;:;:;:;/: ／: : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾvゝ:;:;lヽ: ヽヾ:;:;:;:;j: : : : : : : : : : : : : : : : : : ｿ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ヾ: : : : : : : : : ヽ/: ;;;;;ｿ''''ヾ'、}: : : : : : : : : j
　　「………まさか！？」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヾ: ヾ｀/｀ヾ/'''´´　ﾍ、　ヾヽヾ;;: : : : : : :j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ミ:::}/　 /　　　　 ヽ;l　　 ﾍ　ヾ;: ;;ｰ､:j.　　　　　 /ミ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ::}　　ﾘ　　　　 　 ゝソ二|￣ ソ ,ﾍ }　　　　　/ミ
　　（ジュンはギャブレットの邸宅狙い！　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽi ｀ミ}≧ 　　ヾ~y| 弋少｀　　 （ ｧ,i　　　　/ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i ﾍ　匁ヽ　　ｰ─-　　　　　 丿ｿ　　 　 /ミ　 /
　　 ―――確かにサクラダ殿の汚名を濯ぐには良い案だ。　　　　　 　 　 ',　｀￣　il　　 　 　 　 　 　 ﾍoj　　 　 /ミ　 /
　　 どうせ叩けば埃の出る身のはず、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ',　　 　i|　　　　　　　　　 j. |.|i　　　/ミ　 /
　　 別件のネタでも手に余るほど出てくるだろう。　　　　　　　　　　　　　　　 i'i、 　ヾ　 　 　 　 　 　 ,'　|.|.i 　 /ミ　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |.| ヽ　──一- 　 　 , '. 　i.jxゝ/ミ　 /
　　 つまり―――）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |.j.　 |ヽ　　　　　　／　　　!::::::ヽミ　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　ヽ 　 __,,／|￣￣￣￣|: ヽ /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 「￣|ﾆﾆﾆ--ｰ┤　　　　　 |: : :ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |.　 |ﾍ|　|r- ､. |　　　　'''´￣￣￣￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｨ''ｳ＿|ヽl　l⌒ﾘ　｀￣￣＞､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / /　　　　　　　　　 ＞､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 / /

291 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:13:09 ID:AqBReZrA
八３１５．
ジュンの向かった先、その目的、そこから得られる恩恵、そして―――
やらない夫が何を言いたかったのかを。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　､
　　　　　　＿_ｰ-=＝＝‐ｰｰ''""`ヽ､___ iヽ、　､
　　　　　　＼;;;`ｰ--＞;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;i;;;;;ヽ　;｝
　　　＜二ニゝ;;;;;;;;;;;＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼;;;;;;;;;;;;;∨i　,
　　　　 ＼ヾ=＝＜￣`;;｀￣＞､;;;;;;;;;;;;;;ヾ;;;;;;;;;;;;;;i/i
　　　　　ヾﾍ;￣￣`::::ヾ:::::::::::::::::＼;＼;;;;;;｝;;;;;;;;;;;;;;;;ﾚ
　　　　　　!::::ﾍヘ::::::::/ `7;ヘ､::::::::::::::::ヽﾉ;ﾚノ／ノ;i
　　　　　　!;ヾ;;ヾ＼;/　 /;/　 `ゝ､::::::::::iｿ:::::::::::::ｿﾉ
　　　　　　 !;;ヘ＞"　　 !;!　　 //　＼;/ﾍ"ヾ:::::/′　　　　　　　　　　「バゼットはジュンが助け出す。
　　　　　　 :i ゞY　ｰ-､,_|!　 　 !;i　　　　i;:〉　!;;i′　　　　　　　　　　　 だから俺は―――」
　　　　　　人｛　　___.,,,,≧ｔｒｭ､_i;! 　 　_,i/,,､ﾉ!;!
　 　 _,､＝クﾄし、　｀ゼﾂﾞ¨` 　　≦ｆｾｭ7 i/
　　.三ソ'ｌ:.:.:.:!! :i 　 　 　 　 　 　 i 　 　 /__＿　_
　　.二.:.:.:i.:.:.:.||八　　　　　　 　 　i　　 /　 `ヽ:.:.:.｀＞....、
　　ヽ_∧.:.:!.:.:.:.:.､ﾍ　　　　　　　 ''′ ,ｲ:.:.:.:.:.:.:.ヽ.:.:.:.:.:.ヽ:.:.＞.、
　　,_:.:.:∧.:.:ヽ.:.:.:.:.:.ﾍ 　 ´　￣ ﾞ　／⌒i:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.!:.:.:.:.:.:i
　　 ｀'┤:i.:.:.:.:ヽ.:.:.:.:.:.:.ヽ　　´　／ｿ.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.!:.:.:.:.:.:.:!.:.:.:.:.:.:!
　　.:.:.:.:i :ﾄ;;;;;;;;;;;;;;ヽヘ二｀ｰ-..タ∧;;;;;;;;ﾉ:.:.:.:.:.:.:.ﾉ:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.:.i!
　　:'ｰ､_i ヽ;;;;;;;;;;;;／ﾞ＼i i／ヘ;;;;;;;;;;入。:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:ノ:.:.:.:.:.:.:.i!
　　:.:.:/:.:/ヾヽ;;;;;;!;;;;;;;;ヽ /;;;;;;ｿ,-'"_ノ;;;o`:´:.:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:/:.!
　　:.:/:.:/;;;;;;;`;ｰ-..､ ヽ;;! !/ ,--ｰ";;;;;;;;;;;〉､:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.!、
　 ／／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ､　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼ﾟ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／:.:.ゝ
　 ／!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∨;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼__＿＿＿_／;;;｀;;く
　 ヾ;;!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;∧;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾヽ;;;;;;;;;;;;;＼
　　;;i::i､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ ｀＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼＼;;;;;;;;;;;;＼
　　;;|::|;;i､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/　　 　＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヾ; ヽ､;;;;;;;;;;;ヽ
　　;;i::i;;;;;!;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,;';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ　 　 　　　＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ヽ｀ヾ;;;;;;;ﾍ,
　　;;|::|;;;;i;;;;;;;;;;;;;;;;／;;ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;／´　　　　　　　　 ＼;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i└ｰ‐-､;＼



後の事を考えろ。
自分の気持ちだけでなく、家族の事を、それからの事を考えろ。

そう、彼が言っているのが分かった。

292 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:14:09 ID:AqBReZrA
八３１６．
自分は騎士を裏切り、アレクサンドやアレックス、サツキを死なせ、
エンジュ処刑を見逃した極悪人だ。

あの場で斬り殺されたって文句は言えないはずなのに、
あろう事かやらない夫は、より良い道を選べと手を差し伸べてきたのだ。

だから大いに呆れたランサーが、
信じられないと苦笑を漏らしたのも当然だろう。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ノ 　 　__ ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::/,､ｰ'´／ｰ--ｰ／ __,,､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/i／::::::::::::::::::::／/::::::::::::￣／/_,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/i !i:::::::∧,_／´/:／::／ニニソ:::ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ､i::::::::/∨::/i::::/::://／:::::::::::二ニ彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ:ヾ∨/:::/彡ミヘ"彡::::::二二ニ彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨ヾｿ〃＼:＼　 }:｝"`ｰ-､彡彡彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:/i!　　　 ヾ:i 　」i,,､-　　彡／ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　! 　 　　斤7"ﾘ　　　　　　ソ ）
　「ククククッ………　　　　　　　　　　　　　 ﾘ　　ヽ　　 ﾌ ､､,,,､-′　　　つ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 }　　　　　　　　　　　ゝ〈ﾍ
　馬鹿じゃねぇのか、あいつ。　　　　　　　　 　 　 i　　　　　　　　　　 / i :iﾍﾍ
　なんで裏切り者の俺に　　　　　　　　 　 　 　 　 ' ｰ ､. ｰ - " ´　 　 　 ! j ヾ;ヽ.
　情けをかけるかねぇ？」　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　　／　　　　_,ァ:::'.,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ-､- 　 　 _,､ｰ′: :∨ﾍ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　ｲt､,,,､､i´: : : : : : : : :＞ｰ-､_ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／´: : : ／￣＞ｰ--､,,､ｰ'´:.| i丁厂ﾍ__;, : : : :／: : : : :!√ヽ:｀:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/',: : : : : i: : : : i: : : : /: : : :,､／Υｿγ⌒ヽﾍ／: : : : ／: : : : : :,ヘ :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/:.:.',: : : : :l : : : l: : : : i:,､ｰ';;;;（( ノソ´;;;;;;;;)）;;/: : : ／´: : : :.,､ｰ'′: :ヾヾヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 i:.:.:.:.',: : : : ! : : :.l: : : :|二ニヘノﾉヘ＝=≡∨: :／: : :,､ｰ':´: : : : : : : : : : :ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !;.:.:.:.:.'.,: : : ﾍ : : ∨:._:ﾟ/;:;:;:;:ヽ__／;:;:;:;:;:;:;iﾟ。∨: :,､ｰ': : : : : ; : :´: : :｀: :': : ; :'.,
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　'l:.:.:.:.:..:.:'.,: : : ＼厂ﾟ/´;:;:;:;;;;:;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!ト。_／: : : ; : :´: : : : : : : : : : : : : : .〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　';.:.:.:.:.:.:.:.:':.,: : : ﾟｿ´;:;:;:;:;;;;;:;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ﾍ: : : : ; : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:.,/;;:;:;:;:;:;:;;;;;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ﾍ: ; : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　 　 　／:.;,;,;,:､;ｰ/7丁´:;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;:;:;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　`フ;:;:;:;:;:;//;:;:i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/;:;:＼: : : : : : : : : : : : : : : :／
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /;:;:;:;:;:;//;:;:;:;ヾ;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;:;:;:;:;:;:;＼: : : : : : : : : : : ／


91 名前： ◆FrtuoSIf66 [sage] 投稿日： 10/11/13 08:41:17 ID:6DN+bQCv
八３１７．
そして今更ながら、身重の妻の方が先に危険だった事を思い出した。

だからこそ彼は麻呂の革命を成就させて、
バゼットを解放する手段を選んだのではなかったのか―――



┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　俺は何を勘違いしていたんだ。

　　　国王への反逆は、首謀者及び一族郎党断頭台行きだ。
　　　俺が騎士のままで有り続けたとしてもバゼットがやばかったんだろ？

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　／: : : : : : : : : :´: : : : : :＼
　　　　　　　　　 ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　 : : : :/: : : :_: : : : : : : : :､: : : : : : ',
　　　　　　　　/: : : :/: /:.//:ヽ: :／:|:',:ヽ:ヽ:ヽ: : : :
　　　　　　　 ,':.,: : : : :.′!:.!ヾ`v´^´ｌ:.!:!:.i: :ｌ: ﾊ: : : |
　　　　　　　 : i: : : ｌ:ｌ:.!: :|: !　　　　 i: |:ｌ: ｌ|:.!: : ｌ: : :ｌ
.　　　　　　　|:.ｌ:!: : |:|:|ｌ: ﾊ:|　　　　 ｌ:.ﾊ|:ﾊ!_!: : ｌ: : :}
　　　　　　　 !:|:|: : ｌｰ+!:i､ｌi　　　_　+'ｪ≦､}i: :.,'_: :/
　　　　　　　 ﾚぃ､: ｌﾔ下:ヾ　　´ ﾌ´い:リ' ｌ: /ｨ },'
　　　　　　　　　`{ヽ{　､ﾏｿ　　　　　─ '･///' /i
　　　　　　　　　　ヽ_`　　　 ,　　　　　　 '´ム':|:.{
　　　　　　　　　　　} {:.､　　　　　　　　　 /! !|:|ｌ:|
　　　　　　　　　　　| !|:|:＼　´ ￣｀　　／|:| |从ﾘ
　　　　　　　　　　　ＵＮ､!: :丶 ___　イ　　ｌ､ン
　　　　　　　　　　　　 , -／{|　　　 ,， '"´ ヽ.､
　　　　　　　　　　 イ´::/　　ヽ_ ／　　　　　 }::ヾ.､
　　　 ．-┬一':´:::/::::::,'!　　f´::::ヽ　　　　　/:::::::',:::｀ﾞ...ｰ-､＿.　 　 　 　 ┌──────────────────────┐
　　 /:::::::::|::::::::::::/::::::::ハ　/|::::::::::ﾊ　　　 /'::::::::::::!::::::::::::::::ｌ:::::::ヽ　 　 　 │　　ランサーの妻　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　...│
　　,':::::::::::{::::::／::::::::_:{　∨ t:_:_::/ ﾍ　 ／/::::::::::::::!:::::::::::::/::::::::::::',...　　　│　　バゼット＝Ｆ＝フーリン（旧姓マクレミッツ）　　　 　 │
　　!::::::::::::',:::}ｰ:､:／:::ｌ　　 /:::::::ヽ　　´ ／＼:::::::::::|:::ｌ:::::/:::::::::::::::::ｌ..　　　│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
.　 ｌ::::::::::::::∨:／::::::::::ヽ　/::::::::::::|　 ／::::::::::::＼￣:::::i::/::::::::::::::::::::|　　　 │　　父である武丸は麻呂の弟で　　　　 　 　 　 　 　 　 │
.　 !:::::::::::::::/､::::::::::::::::::::＼::::::::::::i／::::::::::::::::::::::::｀ヽ::::{::::::::::::::::::::::::|.....　　│　　マクレミッツ家に婿入りした。　　　　　　　　　　　......│
　 i::::::::::::::,':::::＼::::::::::::::::::::ヽ:::／::::::::::::::::::::::::::::::／:::::::ｌ:::::::::::::::::::::::ｌ...　　 │　　（総歴一九九二年現在、両親はすでに死去）　 　 .│
　 |:::::::::::::ｌ:::::::::::ヽ::::::::::::::::::::丶:::::::::::::::::::::::,＞..´::::::::::::|:::::::::::::::::::::::|...　 　└──────────────────────┘
294 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:16:10 ID:AqBReZrA
八３１８．
麻呂の姪であるバゼット。
騎士を裏切り、大逆人に荷担した自分。

現状、捕まれば二人とも断頭台行きは免れない。
それが分かっていたからこそランサーは、
今夜妻を助け出して国外へ逃亡するつもりでいたのだ。

しかし―――本当にそれは可能なのだろうか。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ノ 　 　__ ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／::/,､ｰ'´／ｰ--ｰ／ __,,､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/i／::::::::::::::::::::／/::::::::::::￣／/_,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/i !i:::::::∧,_／´/:／::／ニニソ:::ノ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ､i::::::::/∨::/i::::/::://／:::::::::::二ニ彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ:ヾ∨/:::/彡ミヘ"彡::::::二二ニ彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∨ヾｿ〃＼:＼　 }:｝"`ｰ-､彡彡彡
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /:/i!　　　 ヾ:i 　」i,,､-　　彡／ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |/　! 　 　　i::レ"ﾙ､,_ 　 　 　 ソ ）
　　　「冷静に考えれば、　　　　　　　　　 　　　　 ﾘ　　ヽ　　勹´ 弋ﾀﾞ｀ 　 　　つ/
　　　 身重のバゼットを連れて　　　　　　　　　　　　　　 }　　　　　　　　　　　ゝ〈ﾍ
　　　 国外へ抜けられる訳がねぇ………　　　　　 　 　 i　　　　　　　　　　 / i :iﾍﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ' ｰ ､. ｰ＝ニ ′ 　 　 ! j ヾ;ヽ.
　　　 逆に、逃げたり抵抗して捕まったら　　　　　　　　　　　＼　　　　／　　　　_,ァ:::'.,、
　　　 その場で処刑されるだろう。　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ-､- 　 　 _,､ｰ′: :∨ﾍ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿＿　　　　　　　　　　ｲt､,,,､､i´: : : : : : : : :＞ｰ-､_ ＿
　　　 だが―――」　　　　　 　 　 　 　 ／´: : : ／￣＞ｰ--､,,､ｰ'´:.| i丁厂ﾍ__;, : : : :／: : : : :!√ヽ:｀:＼
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /',: : : : : i: : : : i: : : : /: : : :,､／Υｿγ⌒ヽﾍ／: : : : ／: : : : : :,ヘ :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/:.:.',: : : : :l : : : l: : : : i:,､ｰ';;;;（( ノソ´;;;;;;;;)）;;/: : : ／´: : : :.,､ｰ'′: :ヾヾヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 i:.:.:.:.',: : : : ! : : :.l: : : :|二ニヘノﾉヘ＝=≡∨: :／: : :,､ｰ':´: : : : : : : : : : :ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !;.:.:.:.:.'.,: : : ﾍ : : ∨:._:ﾟ/;:;:;:;:ヽ__／;:;:;:;:;:;:;iﾟ。∨: :,､ｰ': : : : : ; : :´: : :｀: :': : ; :'.,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　'l:.:.:.:.:..:.:'.,: : : ＼厂ﾟ/´;:;:;:;;;;:;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!ト。_／: : : ; : :´: : : : : : : : : : : : : : .〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　';.:.:.:.:.:.:.:.:':.,: : : ﾟｿ´;:;:;:;:;;;;;:;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ﾍ: : : : ; : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:.,/;;:;:;:;:;:;:;;;;;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ﾍ: ; : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:.;,;,;,:､;ｰ/7丁´:;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;:;:;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`フ;:;:;:;:;:;//;:;:i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/;:;:＼: : : : : : : : : : : : : : : :／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /;:;:;:;:;:;//;:;:;:;ヾ;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;:;:;:;:;:;:;＼: : : : : : : : : : : ／



幸運に恵まれて上手く逃げおおせたとしても、
追われる者の恐怖と良心の呵責、あてもない暮らしが待っている。

戦う事しか出来ない自分と、貴族暮らしの長いバゼットの二人で
いったいどんな生活が出来ると言うのか。

冷静になればなるほど、自分達が追い詰められている事が分かる、
詰んでいるとしか言いようがない。
295 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:17:09 ID:AqBReZrA
八３１９．
だが―――



┏──────────────────────────────────────────────┓



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_　＿　_
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ´　　　　　 丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　 　 丶
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　 　　　　　　 _..,,ノ 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　　　　　　(● ) 　 ﾉ　　　　「どうして、最初に―――
ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　/　　　|ヽ　　　　 俺達に相談してくれなかった？」
:::::｀ヽ､ 　 　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 !　　　　　　　　　　　丶＿ / /
_,　‐､::::::￣ )　　　　　　　　　　 |￣￣ ‐ '─ !_　　　 　　　 　　 　 　　ノ ´
:::::::::::ﾚ' ￣　　　　　　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::::::｀‐　_　　　　　　　 ／
:::::::::::|　　　　　　　　　　　　　　|::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀‐､ _　　　／
:::::::::/　　　　　　　＿＿　_　-‐'￣｀‐-　､＿::::::::::::::::::::::::::::｀‐ <
:::::Ｖ　　　　　　　 |::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀‐-､ _:::::::::::::::::::::::::::>
::::::〈　　　　　　 __|::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ _:::::::::::::::／
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::::::´::::::::ヽ:::::::::::::::::::!::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀ ‐-､
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　　　　　　　　　　　|:::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::: {:::::::::::-‐‐‐:::::::::::::::::::::::::/
＿　　　　　　　　　　ｌ::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::／
::::::::｀‐-､_　　　　　__ ｷ:::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::::::::::::￣￣￣￣｀‐-､
:::::::::::::::::__ ＞-‐´::::::::ヽ:::::::::::::::::::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::}
:::::::::-‐´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/



┗──────────────────────────────────────────────┛



自分が罪を認めて自首をし、罰を受け入れれば、
バゼットも素直に正式な裁きの場に出れば、
そして、やらない夫が口利きをしてくれるのであれば―――

もしかしたら、バゼットが子を産む余裕があるかも知れない。

そしてそうなれば、事件の際にはこの世に生を受けていなかった子だけは、
裁きの対象にならない可能性が高い。
296 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:18:09 ID:AqBReZrA
八３２０．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／i､,,-ーフ,､__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 iヽ／i/::::／∠_::::::::::::::｀＞__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |::ヽ:/:／／/::::::／::＞::::::::::::ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |ヾ::V:::/:,彡ｿﾊﾍ;;;;;::::￣´＼:ト
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　γ升/`"ﾍL__,,､__ﾍ　/｀二ニ:::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !/≧　`"''i斤┬,ｒ､ く;;:::ニ＿＼::＞
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 'fj_)　　　ヾ┴ ′　　ミ::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/フ　　　　　　　 　 　 ﾐ>＝-::ﾍ一
　　「今、俺に出来る事は―――　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈 ヽ　　　　　　　　　　γ´ヾラﾍ
　　 ジュンを信じる事、そして………　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ',　 ､ｰ'""'､ 　 　　　ソノ/::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　', 　` ｰ　′ 　 　∧≦／
　　生まれてくる子だけでも　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i′　　　　　　　´　l:l::::|
　　救われるよう行動する事、か」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:lヽ __　　　　　　　l:l:l:::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　L!　　 i　　　　_.,､ｰl !」ゞ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿　　　　　　　　　　ｲt､,,,､､i´: : : : : : : : :＞ｰ-､_ ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／´: : : ／￣＞ｰ--､,,､ｰ'´:.| i丁厂ﾍ__;, : : : :／: : : : :!√ヽ:｀:＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/',: : : : : i: : : : i: : : : /: : : :,､／Υｿγ⌒ヽﾍ／: : : : ／: : : : : :,ヘ :＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　/:.:.',: : : : :l : : : l: : : : i:,､ｰ';;;;（( ノソ´;;;;;;;;)）;;/: : : ／´: : : :.,､ｰ'′: :ヾヾヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 i:.:.:.:.',: : : : ! : : :.l: : : :|二ニヘノﾉヘ＝=≡∨: :／: : :,､ｰ':´: : : : : : : : : : :ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !;.:.:.:.:.'.,: : : ﾍ : : ∨:._:ﾟ/;:;:;:;:ヽ__／;:;:;:;:;:;:;iﾟ。∨: :,､ｰ': : : : : ; : :´: : :｀: :': : ; :'.,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　'l:.:.:.:.:..:.:'.,: : : ＼厂ﾟ/´;:;:;:;;;;:;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!ト。_／: : : ; : :´: : : : : : : : : : : : : : .〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　';.:.:.:.:.:.:.:.:':.,: : : ﾟｿ´;:;:;:;:;;;;;:;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ﾍ: : : : ; : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀:.,/;;:;:;:;:;:;:;;;;;:;:;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:; ﾍ: ; : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　／:.;,;,;,:､;ｰ/7丁´:;:;:;:;:;:;:;;;;;;:;:;:;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ヽ : : : : : : : : : : : : : : : : : : : /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`フ;:;:;:;:;:;//;:;:i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/;:;:＼: : : : : : : : : : : : : : : :／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /;:;:;:;:;:;//;:;:;:;ヾ;;;;;;;;;;;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;:;:;:;:;:;:;＼: : : : : : : : : : : ／



零以下の結果に墜ちるのか、未来への可能性を残すのか。
それが分かってしまった今、ランサーに選択の余地など無い。
4 名前： ◆FrtuoSIf66 [sage] 投稿日： 10/11/12 21:20:10 ID:AqBReZrA
八３２１．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､,　　／i_,､-ゝ､＿__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヾ∨:::/:::::／:::／∠__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |:i::::/:::::/::::::/:::／::::::｀:＞-
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _|il:/:::::/::::::/／::::::::二ニﾆゝ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ゞ"''ﾍﾃ"ヽｰ-､､::::::::::::::＼:::::ヘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃 /　 　|:i　　|i　ﾉ_＿__::::::::::ヾ＜::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i __ }ヾ==ﾒｰ､_il　　ﾐ:::::::｀ヘ_＿:::::＼::ゝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,､-'´　/　　ゝｔrｯ　　　　ミ_:::::::::::::::::::::／::／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　rn､′　　／　　"　 "′ 　　　ミ::___ニ＝"´;;:／
　　　　　　　　　　　　　　　　　 rn;;;´;;;i　ｌ　､　　 ゝ　　　　　　　　　　　　こ｝::::::／/_
　　　　　　　　　　　　　 　_,､-''ﾞﾍヽ;;;;;;!　!　冫 　ヽ､＿　　　 ι　　　　ルﾉ彡"／´　　　　　「ったく。
　　　　　　　　　　　 _,､-''ﾞ::::::::::::::ﾍヽ;;;;;ヾヽ_　　　ヽ　　｀`ヽ　　　　　こソミ〈'"′　　　　　　 とんだ甘ちゃん野郎だぜ。
　　　　　　　　_,､-''ﾞ:::::::::::::::::::::::__:::::ﾍヽ／`′ ｰ-ﾉ　 　　　　　　　/ i i￣:l　ﾍ
　　　 　_,､-''ﾞ´::::::::::::::::::::::,､-''ﾞ::＜ﾆ〃'ﾞ　 　 　 　 `　､_　- "´ .／___| |:-∧　ﾍ　　　　　　　　―――けど、誰かが言ってたっけ」
　　　／:::::::::::::::::::::::::,､-''ﾞ::::::_,､-'ﾞ´　　　　　　　　　　　/￣>-l￣´　 ｀' 　　〉,久
　　/::::::::::::::::::::::;､-''ﾞ::::::::,､-'ﾞ　　　　　　　 　 　 　　 ／　ﾍ〕∃､___,,,､､､､=＝!:::::'.,
　 ｛:::::::::::::::::::::://´:::::::／::::Y Y"￣｀｀"''ｰ--､､＜ﾆ〈::::::／〔￣∟_ヘ､.　￣ 〉l::::::::',
　　ヾ＿＿＿//:::::::／:::::::::::ﾍﾍ::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼>/;;;;;;;￣｀＼ ＼ ＼／:::';::::::::::'.,
　　　`"'ｰ=＝＞:､__,,,､--ー ソ ＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::ｿ:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＼.:.:.＼::::::';:::::::::::',
　　　　　　　｀"''ｰ-､;;´￣￣::´｀"''"'ｰ-､_::::::::::::::::::::/:.:.:;:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀＼入:::::';:::::::::::',.
　　　　　　　　　　　　｀"'ｰ-､_:::::::::::::::::::::｀"'ｰ-､_;;;;il:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ト､:::';:::::::::::',.
　　　　　　　　　　　　　　　　｀"'ｰ-､_::::::::::::::::::::::::`li:.:.:.:.:.;.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.人 ヘ:';:::::::::::',
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∧:.:.:.:.:.:.:;:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;.:.:.∧:::::::::::|:|::';::::::::;
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨::;;;;;＼:;:;:;;;;;;;:;:;.:.:.:/:::::::::::|:::::::::i:l:::::;:::::::;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　　 ）::::::::::::!＼:.:.:.:.:／::::::::::::::i:::::::ﾉﾉ:::::;:::::::;
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /:::::::::::::::ﾍ::::`"´i |::::::::::::::::ソ／:::::::;::::::;
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ∨;;／二ﾆl::::::::::::i l:::::::::::::::∨:::::::::∧:::;'
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 (ソ／::::::::::ヾ:::::::::l i:::::::::::::::::∨::::/　ヾ!



普通有り得ない事だと分かっていた。

犯罪者をかばったりすれば、その者にも良くない影響を与える事は確かだし、
そもそもここまで絶望的な二人を救う事など、誰も考えてくれやしないのが現実だ。
5 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:21:09 ID:AqBReZrA
八３２２．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　その背に負うものが多い程に男は輝き―――
　　　あらゆる道を選ぶ事を許される、だったか。

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　..／　　　　　　＼
　　　 　　　　　　　　　| 　　　　　:　:::::::|
.　　　　 　　　　　　 　 |　　　　　:::::::::::::|
.　　　　　 　　　　　　　|　　　 　 :::::::::::::|
　　　　　 　　　　　　　 { 　 　　 :::::::::::::::|
　　　 　　 　　　　　　　{ 　 　__＿＿／
　　　　　　　　　　　　　(, .／_.,r'ﾆﾆ'r
　　　　　　　　 　　　　ﾝ:`三ｰ`_:ニﾆ:'r
　　　　　　　　　　＜:::::::::::､ニ,´::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　,.-''´::;:､::-;::::::::::::::::::::::::ｒｌｯ
.　　　　　　　　　ｒ{:::⊂-='"::::::::::::::::::::::::::::ｆｧ
　　　　　　　　　 ｒ!:::::ｒ:::{ﾛ}::っ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　 　 　　ｌ::::::::::::::;:::::::::::::::::::::::::::ｌ
　　　　　　　　　 /::::::::::::/::::::::::::::::::::::::;::ｌ
　　　　　　　　　/:::::::::::/::::::::::::::::::::::::;::::ｌ
　　　　 　　　　/:::::::::::/:::::::::::::::::::::::::;:::::!
　　　　　　　　/:::::::::::/::::::::::::::::::::::::::ｊ:::::!
　　　　　　　 ｆ::::::::::::/_,. -――''"Ｔ::::::;'
　　　　　 　 /:::::::::::/＿_,,,..､-ｒ‐''´';:::::;'
　　　　　　/::::::::::::/::::::::::::::::::::ｌ:::::::::';::;'　.
.　　　　　/::::::::::::/ゝ:::::::::::::::::::ｌ::::::::::Ｙ.



アレクサンドやアレックスの遺族からは疎まれるだろう。
実際に被害を受けた言葉にだって理解してもらえないに違いない。

この事件で傷ついた者五十人、司法に詳しい者五十人に尋ねたら、
合わせて九十八人ぐらいは処刑やむなしと判断するであろう裏切り者の自分と、
見た事もないその妻をもやらない夫は受け止めようとしている。

彼自身、心の中に葛藤を抱えているはずだと言うのに―――
6 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:22:09 ID:AqBReZrA
八３２３．
それでもやらない夫は、手を差し伸べた。

その気持ちに気づいてなお、
黙って城を出て行ける程ランサーは落ちぶれてはいなかった。

騎士は捨てた。
己の命だってもはや重みを感じない。

それでも、彼は男だった。



　　　　　　　　　　　ﾄ､
　　　　　　　Z弋ミヾﾍヾヽ,,
　 　 　 辷彡 彡ﾈ〉ヾヾ〉ﾊ爪
.　　　 / -=ﾆ 彡'ﾅヽ､/｀ヾ《ﾊ
　　　人ﾆ三彡　 込ﾂ ヽ　 Yヽ
　　　Y ,ﾐYヽ　　　　　　:::..ｲﾂ |　　　　　　　　「―――馬鹿だな、やらない夫。
　　　 廴ﾐゝ､　　　 ､＿__　ｨ
　　　　ヾミZ:::..　　　　　　/　　　　　　　　　　 けど、けどよ………」
　　　　　j'' 　::::::::::......... 　j
　　_____/　 　 |:::::::::::r-／
　ｲ　　ヽ　 　 |　　 Yミヽ､＿＿,,,--一-､
　　　　　＼ .小　　ﾊヾミ三三ミﾐ､
　　　　　　 〉､ー-　>-ゝ＞ ミ二ミミﾐ､
　　 　 　 　 ﾍ:::::::...........:::Y　　　 ﾊヽヾ〉
　　　　　　　 ﾍ:::::::::::|:::::::|　　　　 |丿
　　　　　　　　 ﾍ::::::::::::::::|　 　 　 |
　　　　　　　　　 ＼::::::::::|　　 　 /
　　　　　　　　　 　 ＼::::j 　 　 /
　　　　　　　　　　　　 Y　　　丿
　　　　　　　　　　　　 j　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　ｿ
　　　　　　　　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　 「
7 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:23:09 ID:AqBReZrA
八３２４．
これ以上ないぐらいに、男だったのだ―――



　　　　　　　　　,r";;ﾚ ';;;;;;;;;;;/:!;;r'´::::;;;;;;:::::;;;;;;;;;;r'::;:::'::;;;;_;;;-;;;''':::::::::::;;;';｀ヾ､;;;;;;ｰ;;;_;;;;;;.:.:.:.`.､
　　　　 　 　 /l/;;;;;;;;;;i;;;;;;;/::::'´;;;;;:::;;;;;::::;;;;;;;;;;r';:::'::::;r";;;:::''::::::::::::::;;;;;;;;;;;;r''';;;''';;::''´:::::¨;;;-;,;,_: ` ､
　　　 __,,,...-¨;;;;;;;;;;;;;;/!;; /:::::;;;;;;;;;;::;;;;;::::;;;;;;;::':;::':::;;; /;;::'':::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;r";;;;::::::::::::::::::;;;;;;;;;.:.:.:.:.:.:¨:.''`ヽ､ _,,
　　 _＞一;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::ﾚ;;:::::;;;;;;;;;::;;;;;:::::;;;;;;;;;::':_∠ -､:::::::::::::::;;;;;;;:::;;;r";;::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.:.:.:.:.:.:.:.:._: ノ/′
　＜;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;::::;;;;;;:::;;;;;;;;::::;;;;;::::::_;;:::-" 　　ヾ:::::::::;;;:::;;;;r";;;;:::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;_;;;:.-:.:¨:.:.∠
　　 ヾ;;;-;;;;_;;;;;;;;;;!;;;;;:::;;;;;;:::;;;;;;;:::;;_,i:;r'´　｀ヾ､ヽ、 　 l:::::;;:::::;／;;::::_;;-:";;;;;;;-;;;-;;‐;;‐;;'';¨;;;;;.:.:.:.:.:.:.;∠′
　　　 ` ､;;;;;;｀;;､;;;!;;;;;::;;;;;;;:::;;_;;／ '´　　　　　`ヽヽ、　 !:::／;;:_;;-:";;;;r'´;;;;_;;;;;-;;''';´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.:.:.;.';;.:./
　　　　ヾヾ､;;;;;;`;､i;;;;:;;;;;;;;:;/ ｀､`,.､　　　　　　　`､ヽ ﾚ､;;";;__;;;;-''::'''¨;;;;;;;;:::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.:.:.／;;.:.:.:/
　　　　　` ､::;;;::::;::ヽ;;;;;/ﾚ′　 `､;;ヽ　　　　 _,,,,,...ヽヽ‐‐-　 ＜;;;;;;;:::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.:;;;;;;/;;;;;.:.:.:./
　　　　　 　 >r;;i;;ト､rv' ; 　 　 　 ヽ;ヽ ,,.-'';r'´　 　 ヾ､　　　 　 ､>::::;;;;;;r''¨¨ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;/:::;;;.:,':.:/　　　「誰がなんと言おうとお前は英雄だ！
　　　　　 ,f;/ ヽl;;ヽ　　;　　　 　 　 >;;l;;r'"-‐ __　　　`､　　　 ＜;;;;;;;;/　,r ''　 `､;;;;;;／:::;;;;:.:,:.:.i　　　　 俺と、バゼットの―――！」
　　　　　i;;;i　　`!､:`､　;　　　　 ,r'´;;;ｲ:i r..''::`､ /, '　　　　　　　　<;/　/　　｀　　 i´;;::::;;;;;;:.:,:.:.:!
　　　　　!;;l　　 i　ヽ:`、　　　 /;;／,,r'ヾヽ:::::ソ '　　　　　　　　　　　 ヽ　　 /　 /;;:;;;;;;;;;;;.:.:i.:.:i
　　　　　l;;l　 　 !　 ` ､ヽ　　 '"　 '　',　l;!>'´　　　　　　　　　　　　　　 ヽ- '　 ; l;;;;;;;;;;;;;.:.:./;,:.:!
　　 　 　 !;l　　 i_,,-‐‐.､ヾ､ ', -‐　　 `"　　　　　　　　　　　　　　　　　 / ,, -'　,!;;;;;;;;;;:／;;.:./
　　 　 　 ヾ!　　`＜,r¨ >´ `ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i _,,,,ノ;;;;;;;／;;;;;;;.:/、
　　　　　　 `、　　　V<:;!　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 f　　 !;;;;;;;;';;;;;;;;'/　/`ヽ､
　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 iヽ､r`､ヾ､;;;;;;;';i　/　　　 `ヽ､
　　　　　　　 　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 !　 `、 `､　ヾ､トヽ､　　　　 　 `ヽ､_,,,_
　　　　　　　　　　　/　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　 ヽ　 `、 　 `ヽ､　　　　　 / /ｰ-------.....,,,__
　　　　　　　　　　 `､__　 ‐''''>　　　 _,,..-_,,フ"　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ヽ　 `､　 `､　　　　 ` ヽ､　/ /;;;;;;;;;;;;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,:.:.:.:.¨-,,
　　　　　　　　　　　　　¨‐┐　　,,-",,-'"　　　　　　　　　　　　　　　, '　 ;　　 　 ヽ 　 ヽ _,ヽ,,-‐- 、　 　 `<;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;___
　　　　　　　　　　　　　　　ヽ-､` ''´　　　　　　　　　　　　　　　　,r"　　; ;　　　　 入　`､　　　　　`、　　　 `､;;;､;;;;;;;;;;;;;;;;;_;;-‐''¨￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　　　 ; ;　 _,,-''´.:. `､　 !　　　　　`､　　　 　 ` ､;;¨;;r'''´
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ` 、　　　　　　　　　　　　　　 /　　　 　 ;,-".:.:.:.　:.:.:.　`-′　　　　　`､　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　_ ,／　　　 ,,-'".:.:.:.:.:.:.:.:.　:.:.:.:.　　: : .　　　　　`、　,,.-''¨`ー‐-- ,,_
[　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 `、　　　　　 　 ,, -"　　　　　,r"　:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　:.:.:.:　 : : : .　　　　_,,-''´　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 i　　　 　 ,,-'´_,,-、　　　　_,,i　　 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　　　　: : : :　 ,,-"　　　　　　　　 ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　` - ,,___,, -‐"　　ヽ　,,-''¨　`､　　:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.　　　　　 .......＞'´　　　　　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,r"　　,,.-'¨ヽ 　 :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. ....:.:.:.:.:　／　　　　　　　　 /
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9 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:24:11 ID:AqBReZrA
八３２５．
叫ぶなり、ランサーはその場から駆けだしていた。

雑木林を突っ切り、跳ね橋の制御室へ続く階段へ飛び込むと
衛兵が未だ昏倒している制御室の、向こう側の階段を駆け上がる。



┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　そして！

　　　お前らがバゼットを助けてくれるってんなら―――！
　　　俺はお前等を助けなきゃなんねぇ！

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　　^＼_人＿人∧从＿人_∧_人_从_/／
　　　　　　　　　　　　　　)　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＞
　　　　　　　　　　　　　＜　　うおおおおおおおお！！　＞
　　　　　　　　　　　　　　<　　　　　　　　　　　　　　　　　(
　　　　　　　　　　　　　　／＾Y￣∨￣∨^Y^⌒Y^YY^^Y
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::::/ /:::::::/.／!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l::::ｉ /:::::::://:::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l:::::!ヽ一'　l／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.l:::::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;:::::└‐:::ｧ
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　　　　　　 ＼　　丶　　　　.　|.　..,,-〒.-､ _.|...:::::::::;;;;;;;;;;./　　　　 　 ／　　　　　　Ｕ
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　　　　　_＿　　　　　　 .　 ＿l___|_.:::ﾞ|:::::::|:::｣:::::::::::;;;;;;;;　　　　　　　　　　--　　　　　/:::;へ::::＼
　　　　　　　　　二　　　　/=======:::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;,,,　＝　二　　　　　　　　∨　　丶;::::>
　　　　　　￣　.　　　　　/f────‐:::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,　　　　　￣　　　　　　　 　 　 　 __,,..、
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　　　　　　　　／　　　/. | 　:　: : : :.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,:'::::::::／::::::〉
　　　　　　　　 .　　　/[￣￣￣￣￣￣￣:::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;,,,　　　　　 ＼　　　　　　 　 　 /:::::／/:::::::/,.ﾍ.
　　　　　　　 . 　 　 /　|　.　.　:　:　: : : :.:.:.:.:.:::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,,　＼　　　　　　　　 　 　 ./:::::<　 ー-'<::／
　　　　　　 ／　　 /|￣￣￣￣￣￣￣￣￣:::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,,　＼　　　　　　　　　,'::::;ヘ::丶、
　　　　　／　　　./　　.　.　...　..::　::: ::: ::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,,　＼　　　　　　　　レ'　　 ｀¨



数段飛ばしに階段を上がる度に心が昂ぶり、
無意識のうちに雄叫びが漏れた。
10 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:25:09 ID:AqBReZrA
八３２６．
そのままの勢いで、城壁の上へ続く扉を蹴り開け―――



　　　 　/: .: .: .: .: . : ./　　　 _,,.-‐''" 　　 /　/　　　　　 　 　/￣||　　　　　　 　 　 |: .: .: .: .
　　　　/: .: .: .: .: .: . _,,.-‐'':　:　:　:　:　 三 二 ﾆ ―　　　　 /　 ||　　 |￣|| | || | ||　|: .: .: .: .
　　　 /: .: .: .: .: .: .//::　:　:　:　:　:　:　: /　/　　　　 三 二/　 || ―　|　 || |_|| |_||　|: .: .: .: .
　　　/: .: .: .: .: .: .//:　:　:　:　:　:　:　: /　/　　　　　　 　 /　 ||　　 　|　 ||　　.|　　 |: .: .: .: .: .
　　 /: .: .: .: .: .: .//:　:　:　:　ヽヾ｀;;:} 三 二 ﾆ ―　　 　/＿_||　　 　.|　 ||　　.|　　 |: .: .: .: .: .
　　/: .: .: .: .: .: .//:　:　:　:　Ｚ::::Ｚ,,, /　/　　　　　　　　=￣　　　　　.|＿||　三 二 ﾆ ―: .: .: .
　 /: .: .: .: .: .: .// :　:　:　:　<:::::::ヽ:::＞'　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＿ l　　 ||￣|| .: .: .:
　/: .: .: 三 二 ﾆ ―　:　:　＜:::::/￣,　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |＿|| 　　/　// .: .: .
_/: .: .: .: .: .: .//:　:　:　:　:　Ｚ:::::{　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｌ　　/　// .: .: .
/ : .: .: . : .: .:,'/:　:　　_,,.-‐＞::::::ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ＿＿/　//.: .: .: .: .
: .: .: .: . : .: //_,,.-‐''":　 Ｚ:::::}ヽ､::::{､　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |＿＿＿// .: .: .: .: .
: .: .: .: . : .://:　:　:　:　　ﾉ／　/ｰ/ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |　　 |: .: .: .: .: .
: .: .: .: . : //　:　:　:　:　:　:　 /　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 |: .: .: .: .: .
: .: .: .: .: ,'/ :　:　:　:　:　:　: ./　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　 |: .: .: .: .: .
: .: .: . : .:l |　:　:　―二:　: ./　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 |: .: .: .: .: .: .
: .: .: . : .{ l:　:　:　:　:　:　:　{　 {　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |　　 |: .: .: .: .: .: .: .
: .: .: . : .| |:　:　:　:　:　:　:　|　 |　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　 |: .: .: .: .: .: .
: .: .: . :..| |:　三 三 二 ﾆ ―　|　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　 |: .: .: .: .: .: .
: .: . : . :| |:　:　:　:　:　:　:　|　 |　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　　 |: .: .: .: .: .: .
: .: .: .: .| |:　:　:　:　:　:　:　:|　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　 |: .: .: .: .: .:

11 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:26:09 ID:AqBReZrA
八３２７．
外に出るなり全身を濡らす雨。
しかし、この程度で内に燃える炎は消せやしない、と彼は雨空に向かって吼え続け、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　______　　　　　　　　　　 k.､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヾ､:￣￣￣￣￣￣'''''ヽ.ヾヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,r''´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`’:.:.`ヽ、　k.､
　　　　　　　　　　　　　　　_,,r''''´:.:.:.:.:.:.:.:_.:.:.:.:ヾヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`ヽ､ヾ;､
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　　　　　　　　　　　　　,r'´:.:.:._,;r--;,ヾ'''''''ヾ､:.:.:.:.:.:.`ヾ､:.:.:.ヾ!:.`:.､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`､/:,!
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　　　　　　 　 　 　 　 !:ヾ.:.:.:`ｰ--:.:.:.:,r‐'''´___　　/ /　　　,r'´;/　`ヾk_,;',;,;,;,;,rz,;.:/
　　　　　　　　　　　　 !.:.`､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.;7　　　 ￣'l'7-､　　 !:.:,/　',　　　 ,'　`､　`x;!
　　　　　 　 　 　 　 　 l:､:.:`:､,;_:.:.:.:.,/　ｰ- ､-' _,ﾚ--.,`､　l:.:,!　　',　　 ;　　 iヽ/ヾ'i
　　　　　　　　　　　　　!:`､/ r､ `､;! '''''''''''ヽ `､　　,r‐,､ヽl.:.l　 　 ;　 ,'　　　!:.lヾ!l:.!
　　　　　　　　　　　　　l,:.:,! ,r'´`､　　　　　　ヽヽ　ヽ.'_ﾉ　l;/ヽ　　;　;　　,,r'l:/-ﾚﾚ
　　　　　　　　　　 　 　 !.:! i `ｰ-/　　　　　　　　`ｰ‐‐''　　　-､　 ;　,r',;--ﾚ､,r'　　　　　「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお！！！」
　　　　　　　　　　　　　 !:.! l　　 i　_,,,r'''''''''‐‐--　　　　　　　 `　``'!'7_,,ﾉ　/
　　　　　　　　　　　 　 ,rl;ヽヽ　　!　　　　　　　　　　　　　　　　　i l`｀ｰ-´ !
　　　　　　　____,,,,,.-‐'" l. Vヽ`ｰ''　　　　　　/｀　　　　　　　　　　! !　､　　i
_,,r‐'''''''￣￣:.:.:.i i　　　　y'　 l''''7´i　 ,r‐'　　　ト､　　　　 　 　 　 ! !　 i_ ./
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽヽ　　_,/　　l-l’;　!,/　　　　 ﾄ､,,,`'''‐‐-..,,___^ _,r''´　 ／
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:._ゞ'''´/　　 l　 ! ,　` ､/　　　 ヽ _￣''‐-- ,,_ /　　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:_,;r‐'''''''´ /';''/　　　!　 l　,　　 `､　　　　 ￣''‐-- ,,_/　,ri'´
_,;r‐''￣　　　　 ,/　　`.､　　l　　!　,　　　 ` 、　　　　 ｀　　　,ri'　l
　　　　　　　 ,/′　　　 `ヽ､!　 !　;　　　　　` 、　　　　　,r'’ l　 l
　　　 　 __,／　　　　　 　 　 !　,!,,__　　　　　　 ｀ｰ;‐-- '′　 l　 l
_,,,,,,..-‐"　' ,　　　　　　　　　`''′ ￣! 　 　 　 ,'_,,!ヽ　　　　　l　 !
　　　　　　　' ,　　　　　　　 　 　 　 /`ｰ‐‐--‐l 　 ,!　　　　　l　,!
　　　　　 　 　 '　,　　　　　　　　　/`ー┐,r--l　　l_　　　　　 `’
　　　　　　　　　　 '　,　　　　　　 /:.:.:.:.:.:! l:.:.:.:.!　 | ｀ヽ、
　　　　　　　　 　 　 　 '　,　　　 /:.:.:.:.:.:.:! l.:.:.:.:!　 l　　　ヽ､
　　　　　　　　　　　　 ,r‐''7>--'ｰ-､:.:.:.;! !_,r-l　 /　　　　　`ｰ＜'''''‐--.,_
　　　　　　 　 　 _,r'''´:.:.:.:.ﾚ:.:.:.:.:.:.:.:.:.`､l ﾚ:.:.:.:.`''ト､　　　　　　　　`ヽ、　 `ヽ、
12 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:27:09 ID:AqBReZrA
八３２８．
突如現れた自分に、戸惑う雑兵共に狙いを付ける。



　|￣￣￣￣￣|￣|─‐､
　|　i⌒i　:i⌒i　|　 |￣＼＼
　|,_,|_[_|_:_|_]_|__|＿|　　　＼＼
　＿＿＿＿＿＿＿＿__／／|
　─────┐＿＿__／　 |
　　 , -‐- ､.　　｀´｀´｀´:|:　　 |
　γ　.l⌒l　ヽ .　 ＿ 　 |:　　 |＼
　 |＿_|＿|＿,| ;　i_|_l　.:;|:　　 ||　|
　 | γ⌒ヽ､. |　; i_|_l.;,　|:　　 |＼＼
　 i.［|￣|￣|］.!　　;　　　|:　　 |　 ＼＼
　 |X|─|─|X| ,　 ;　 　 |:　　 |　　　＼＼
　 |__|＿|＿|__|　. 　 , 　 |　 ／＼　　　 ＼＼ .
.／ニニ ニニ＼_＿＿__|／　　　＼. 　 　 ＼ﾞ────────‐,. 、
　　　　　　　　　　　　,_／　　　　　 ＼　　　 |￣￣￣￣￣￣￣￣|＼＼
　　　　　　　ヽY〃"'<l^|　　　 　＿/＼／＼/＼／|＿[囗　 [囗　 .|.　 ＼＼
　　　　　　　《ﾞ´〉)"彡,/　　 　 ＼　　 　　　　　　　／＿＿＿＿＿| 　 　 ＼＼.
　　　　　　／､- ﾟ P<ヌ　　　　 ＜うおおおお！！＞　 　 　 　 　 ＼. 　 　 ＼＼
　　　　　.⊂ﾆ^⌒夊〈'ヽ　　　　／　 　　　　　　　　＼　　　　　　 　 　 ＼. 　 　 ＼＼
　　　 ／　 　 　 7ｦﾉ~)　　　　　￣|／＼/＼/＼/￣ 　 　 　 　 　 　 　 ＼. 　 　 ＼
　　〆 　　 　 . /ｯ'　;_|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＼


　　　　∧∧
　　 < ；｀∀´>／ヽ　　　　　　　　「て、敵！？」
　　　 (　つ≫──l>
　 ～（,,　　< 　＼/
　　　 (,/´ヽ,)　　　　　　　　　∧∧
　　　　　　　　　　　　　　　< ；｀∀´>／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　(　つ≫──l>　　　　「なんでこんな所から！？」
　　　　　　　　　　　　　　～（,,　　< 　＼/
　　　　　　　　　　　　　　　　(,/´ヽ,)
　 　 ∧∧
　 < ；｀∀´>／ヽ
　　 (　つ≫──l>　　　　「う、撃て撃てぇ！」
..～（,,　　< 　＼/
　　 (,/´ヽ,)

13 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:28:10 ID:AqBReZrA
八３２９．
槍技は他の近接武器の戦技に比べて直進力、貫通力、指向性に優れている物が多く、
狭い城壁に並んでいる連中を相手するには最適と言えた。

迷い無く突き出された槍から閃光が放たれ、次々に南の敵兵達を薙ぎ払い―――


＝xii＿,_　　　　　　　　　　 ｀ﾞ''ｰ､,,,　　｀'ｰ､、　 ﾞ'-､　　　　　.＼　　　　　　　 !.|：　　/ / /　.〃　 ,rﾞ／
　　　 ｀ﾞ"'｀-=t;;ii ..,,_　　　　　　　　｀ﾞ''ｰ　.　 "　　　 ＼ 　　　　.＼ 　 　 　 　 !./ 　.;"/./ . / 　 / ."　 . ／
_、　　　　　　　　 ｀ﾞ''''´ﾞ''ｉｉ,,;;．,,,、　　　　　 .丶　 　 　　｀'=i、　　　＼　　　　　!./ . ".，　./ 　 :'　　 ,／゛
｀ﾞ''“'┴-　..,,,,,_　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｀ヽ　　　｀'．　　　 － 　: 　 .゛　　　　'"　　 ._..．
,,,,＿__　　　　　.￣ﾞﾞﾞ''''''―-　....,,,_、　　　 　 　　　　　　　 　　　 　　　 　　　　 丶　　 　 　 　　　 .,..-'"゛
'''￢ｰ｀-｀-ﾆﾆﾆ';;';;ｰ-.-　､...,,., 、 　.￣"'''―- ..,,,,_　　　　　　　　　　人人人人人人人　　　　　 　 　 　 :
　　　　　　　　　　　 　´`.""'　　 　 　 　 　 　 　 　 ￣''''―-....,,.、＜　　　　　　　　　　 ＞
＿,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,, 　 　 _　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜　　　彗・星・衝！ 　＞
--ー‐ー‐ ―‐￢'' '''''''　'''" 　`　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 __、＜　　　　　　　　　　 ＞　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,ｨ
　　　　 　 　 　 　 　 __,,.... .;;;;,,ｯ-一゛''　　　　　　　　　_,,,,iiiiiillll!!!!″　Ｙ`Ｙ`Ｙ`Ｙ`Ｙ``Ｙ`　　 　 　 　 　 　 ,,. 　　 ,.　　　　.／::i
　　 . _,,,,..　-;;ﾆﾆ｀-ｰ'''"ﾞ´　　　 　 　　　　　　 _,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ″　　,,iilllli　　　　　/ | 　 /|　／|　　　　 _,,.ｒ':/　 ／::|　　 ／::::::/
二｀-‐'''"ﾞ´　　　　　　 　 　 　　　　　　_,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ″　　　　.,,iiilll!!ﾞ゛　　　　 /:::::i　 /::i　|:::::i　 ./'''"´:::::/ .／:::::::|　 ./::::::::::/
　　　　　　 . _.....‐ 　　　　　　　 _,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ´　 　 　 　 　 ,,iillll!!ﾞ゛　　　　　 /::::::::i　 |::::! .i::::::i　/::::::::::,,./／:::::::／　 /::::::::::/
　_._..ぃｰ''"´　　　　　　 ._,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ´　　　　　　　　　 ,,iiilll!!ﾞ゛　 　 　 　 　 i::::::::::i　 i::::i　i:::::::i/:::;.r''" ／:::::::／　　/::::::::／
ﾞ~　　　　　　　　 _,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ´　　　　 　 　 　 　 　 ,,,iilll!!ﾞ’ 　　　 　　 : 　　 i:::::::::i.　i::::i,/i:::::/'"´　.／:::::::／　　 ./::::::／
　　　　　._,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ″　　　　　　　 　 　 　 　 _,iiilll!!ﾞ゛ 　　　 　'　　 　　　　i:::::::::i. i:::/::::i:::/　　／:::::::／　　　 /::::::/
　._,,,,iiiiiillll!!!!ﾞﾞﾞ´　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,,,iilll!!ﾞ’　.,　　　, ／ 　 　　　　　i:::::::::i i/:::::::i/:| ／::::::::／　 　　　/::::::/
illll!!!!ﾞﾞﾞ″　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,iiilll!!ﾞ゛　　/ 　　././ 　 　　　　　　i:::::::::"::::::::::／ |:::::::／　　　　　 /::::::/
゛　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,iilll!!ﾞ´　　 ,r′　 ./ ﾞ　　 　 　 　 　 　 i:::::::::::::::／　　i::／　　　　　　./::::::/
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,iilll!!ﾞ’　　 . / 　　 ,i'ﾞ　　 　 　 　 　 　 　 i:::::::::／ 　 　 i/　　　　 　　 /:::／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　,,iiilll!!ﾞ゛　　　 ,r′　　/ 　　　 　　　 　　　　　,.i::::::::i　　　　　　　　　　　　/／
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,,iillll!!ﾞ゛　　　 . / 　　 : ″　　 　 　 　 　 　 　 　 | i:::::::i　　　　　　　　　　　　^
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,,iilll!!ﾞ´　　　　　/ 　　 　:　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　i:::::::i　　　 　 　 　 　 　 　／i
　　　　　　　　　　　　 _,iiilll!!ﾞ゛　　　　　 / 　　　 : 　　　　 　　　 　　　　　　　 !　.i:::::::i　　　　　　　　　　／::::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.i::::/　　　　　　　　　　i::::::／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i/　　　　　　　　　　　i／
14 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:29:09 ID:AqBReZrA
八３３０．
大勢の弓兵と、二人の魔符持ちを貫いた槍技はただの一撃で
十名以上の相手を打ち倒してしまう。



　　　|　||　　　|　　　 　　　　　　　　　　　　　　　　_______口_______　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　　　||　|　 　 |堀
　　　|　||　　　|　　　 田田　　田田　　田田　　　|＿＿.リ＿＿.|　　　田田　　田田　　田田　　　 |　　　||　|　 　 |堀
　　　|　||　　　|.＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__.|　　　||　|　 　 |堀
　　　|　||　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 門門門　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ||　|　 　 |堀
　　　|　||　　┌───────────┐.. . |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　　投投投投投　 ||　|　 　 |堀
　　　|　||　　│　　第一騎士団待機所　.....│.. . |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　　投投投投投　 ||　|　 　 |堀
　　　|　||　　└───────────┘.. . |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　　投投投投投　 ||　|　 　 |堀
弓弓|. └＝＝＝＝＝＝|...|＝＝＝＝＝＝＝＝.|　 　 　 　 　 |=＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝┘ |弓弓|堀
弓弓|　　　　　　　　　　　投投投　　　　　　　　　|　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |弓弓|堀
弓弓|　　　　　　 　 投投投投投投投投 　 　 　 |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　　　　　~ll''"v.　　　　　　　　|弓弓|堀
弓弓|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 |　 　 　 　 　 |　　　 　 　 　 　 　 " ~ヽ!l／''" '`"" .　　 　 |弓弓|堀
弓弓|　　　卒　林　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　　',　　;　"||.....　　　　 　 　 　 |死　 |堀
　 死|　林　卒　木　　卒　　卒.　　　　　 　 　 ①|①①①①①|①　 　 　 　 　 　 　 ~'.....　::" '`'　:　　 　 　 |弓弓|堀
弓弓|　林　　　　林　 　 　 林 　 　 　 　 　 　 ①|①①マキ①.|①　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|弓弓|堀
弓弓|　卒　　卒　　卒　傘.　　　　　　　　　 　 　 |①①①①①|①.　　　　　　 .,,.,.,,　　　　　　　　　　　　　　|弓弓|堀
弓弓|卒　林　　　木　　傘.　　　　　　　　　 　 ①|①ア真ロ①.|①.　　　　 　 ::..........::': :,::..,,."　: :,::　　　　　　|弓弓|堀
弓弓|　傘　　木　　　木　　　木.　　　　　　 　 ①|①①①①①|① 　 　 　 `:　:'::r'"￣..　_-　= -　-_　ｰ､_、.|弓弓|堀
弓弓|　卒　　　卒　林　　卒.　　　　　　　　 　 ①|①①①①①|①　　　　 　 "',i´　　　　　　　　　　　　 ,i、 .|弓弓|堀
弓弓|　　傘　　　林　　　卒　　林　　傘.　　　 ①|①①①①①|①　 　 ....　 ;:;./　=　　　池　　　　　 　 iﾙ　.|弓弓|堀
弓弓|林　　　卒　　木　　　卒　傘.　　　　　　 ①|①①①①①|① 　 　 　 ' ;:,!　^　　 　 　 　 　 　 　 :,'~　　|弓弓|堀
　　　|　　傘　　　卒　　卒　傘. 　 や 傘..　　　　 |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　i ^_　　.　　_= -　　^ 　 /.　　 |　 　 |堀
　　　|　木　林　　　卒　　　卒　　傘;　　 　 　 　 |　 　 　 　 　 |　　　　　　　::::ヽ、-_=_　_-_=_　= -_　,i′　. |　 　 |堀
　　　|　.卒 　 　 卒　　卒　傘　 木　　　　　　　　|　 　 　 　 　 | 　 　 　 ,.　,.､. , ヽ､、　 ^___,,,≡=　.,,ノ′　　|　 　 |堀
　　　|↓制御室　林　林　卒　　林 　 　 　 　 　 |　 　 　 　 　 |　　　　　　　　 　 　 ''"~"　　""'ﾞ ﾞ'/''　　　　|　 　 |堀
　　　￣￣￣￣￣￣ ラ→負負負負負負負負負負負負負負負負負負負弓弓弓弓弓￣￣￣￣￣￣￣ 　　　|堀
..凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹凹|堀
; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ; ;|堀
...＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿門＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|堀



真：真紅
ロ：ロイ
ア：アリア
マ：マコト
キ：キバヤシ
①：第一騎士団

や：やらない夫
ラ：ランサー

リ：リフ
プ：プレーター（魔符持ち）
チ：チャイ（魔符持ち）
弓：弓兵（第二騎士団）

投：投降した騎士
負：負傷者
死：死者
15 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:30:09 ID:AqBReZrA
八３３１．
その無双っぷりはまさに親衛騎士だった時の如く。
一歩たりとも立ち止まらずに突き進みながら、南と東は受け持ったと王女達に叫ぶと、



　　　　　　　　　　　ﾄ､
　　　　　　　Z弋ミヾﾍヾヽ,,
　 　 　 辷彡 彡ﾈ〉ヾヾ〉ﾊ爪
.　　　 / -=ﾆ 彡'ﾅヽ､/｀ヾ《ﾊ
　　　人ﾆ三彡　 込ﾂ ヽ　 Yヽ　　　　　　　　　　　　「こっちの相手は任せろォォォ！」
　　　Y ,ﾐYヽ　　　　　　:::..ｲﾂ |
　　　 廴ﾐゝ､　　　 ､＿__　ｨ
　　　　ヾミZ:::..　　　　　　/
　　　　　j'' 　::::::::::......... 　j
　　_____/　 　 |:::::::::::r-／
　ｲ　　ヽ　 　 |　　 Yミヽ､＿＿,,,--一-､
　　　　　＼ .小　　ﾊヾミ三三ミﾐ､
　　　　　　 〉､ー-　>-ゝ＞ ミ二ミミﾐ､
　　 　 　 　 ﾍ:::::::...........:::Y　　　 ﾊヽヾ〉
　　　　　　　 ﾍ:::::::::::|:::::::|　　　　 |丿
　　　　　　　　 ﾍ::::::::::::::::|　 　 　 |
　　　　　　　　　 ＼::::::::::|　　 　 /
　　　　　　　　　 　 ＼::::j 　 　 /
　　　　　　　　　　　　 Y　　　丿
　　　　　　　　　　　　 j　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　ｿ
　　　　　　　　　　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　 「



魔符持ちを全員倒されてしまったリフが、
これまた身勝手な事を叫び返した。



　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／　　:::::::ヽ＼
　　　　「おのれランサー！　　　　　　　 　 　 │　　　　:::::::::::│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ,,-‐　 ‐-､.:::│
　　　　 私の愛人候補を逃がした上に　 　　　､_(o)_,:_(o)_,:::∂＼　 .
　　　　 再び寝返るとは！」　　　　　　　　　　｜　　<丶 　√│　|　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｜/( [三] )ヽ ::│ │/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　:::::／ ／/⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　ゝ──／ノ　/ |冫
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （　＼＿＿　／　 ./　|`

16 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:31:09 ID:AqBReZrA
八３３２．








┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　―――誰が、愛人候補ですって？

┗──────────────────────────────────────────────┛








しかし、聞き捨てならない者が居た。
18 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:32:13 ID:AqBReZrA
八３３３．
氷点下の声に驚き、リフが振り返ったそこには、
いつの間にか瞳に霜を落とした被害者が般若のような表情で立っていて―――



　　　　　 / : : : : : : : : : : :/: : :| : : : : : : :/.:: 　 | :|　|: :|:: 　 　 　 　 |: : : : : : : : : : : :l
.　　　　 / : : : : : : : : : : :/: : : :| : : l : : :/.::　　│:|　|: :|::　　　 　 　 |: : :| : : : : : : : : l
　　　　/: : :/ : : : : : : : /: : : : :| : : i : :/.:: 　 　 ! :|　|: :|::　　　　　　 |: : :| : : : : : : : : l
.　 　 /: : ,ｲ : : : : : : : / : : :/: :| :._⊥/-─‐ 　 ! :l　.|: :| ──- .. 　 |:|: :l!: : :l : : : : : |
　　 /: :/ │: : : : ｌ : : !: : : :|:,.イ´.: l/.::::::::::　　/:/　 |: :|:::::::::::::...　｀メ |: :|!: : :l : : : : : |　　　　「くだらない妄想を抱いたまま、
　　,' : ,′ | : : : : ｌ : : |: : :.イ:/|: : :/-─＜ 　/:/　　|: :| ＞─‐--､｀下y'| : : l: : : : : :|　　　　 今すぐ奈落に落ちなさい？」
　 │: |　　| : : : : | : : |: : : :|:.:_,.ｨ≠≦三ﾐ ／'"　　 |: :l　 彡三≧ｪx |/ ヽ: : :l : : : : :|!
　 │: |　　| : : : : | : :│: : :l,ｲィ'::l|li|l|li|!:|　　　　　　| /　　 |::l|il||i|li:ヾ;､　| : : :| : : : : i:!
　 │: ｌ　　ｌ: :/: : :| : : l : : 〃 {:::::l|l|l|l|l|::| 　 　 　　 j,′ 　 |::l|l|l|l|l|::::}ヽゝ : : :l : : : :,ハ
　　|: :,′　∨: : : :l : : l : : : l: .∨:!!|l|ll!!::|　　 　 　 　 　 　 |:::!l!|l|l!!::/　/} : : /: : : :/ : :l
　　|: ′　 ∧ : : : |∨ l: : : :|: :',∨:::::::::::j_　　　　　　 　 　 {::::::::::::::/　// : :/| : : :/ :| : l
　　i,′　 /　ヽ : : | ∨ : : : |!.:ハ＞=≦三三　　　　 　 三≧==＜. //: : /: | : :/ : :| : |
　　　　／　 　| ＼| : ∨ : : ﾊ : :{三三三三　　　 三:.　　三三三三ムイ: : :| :/ : : :| : |
　　　　　　 　 | : |: : : :|＼: {＼乂三三三　　　　i!三三三三三三三/ :| : : :|/ : : : :| : |
　　　　　　 　 | : |: : : :| : :ヽ＼ ￣　　　 　　　　＿Ξ三三三三三,/| : |: : : : | : : : :| : |
　　　 　 　 　 | : | : : : |: : : :|｀ |lヽ、　 　 　 　 ´￣｀ 三三三三:,イ: :| : |: : : : | : : : :| : |
　　　 　 　 　 | : | : : : |: : : :| : |l |: |li:..、　　　 　 三三三三才il| :l : :| : |: : : : | : : : :| : |



ただ端的に、死刑執行を告げる。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　:::::::ヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│　　　　:::::::::::│
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾍ,,-‐　 ‐-､.:::│
　　　「な、何故ここに！？」　　　　､_(o)_,:_(o)_,:::∂＼　 .
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜　　<丶 　√│　|　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜/( [三] )ヽ ::│ │/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼　　　　:::::／ ／/⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　ゝ──／ノ　/ |冫
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 （　＼＿＿　／　 ./　|`

19 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:33:09 ID:AqBReZrA
八３３４．
慌てた高司教が待て、と手を挙げかけたが、もはや彼女に語る舌はない。



　　　　　　　　　　　　　,,／｀ _,-‐'"ﾞ＾　　　　　　　　　　　　 ｀'''-,、
　　　　 　 　 　 　 　 ／　 ,／　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　/゛　 /′　.,,,､　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　 /　.,,-'│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　 ._,､,-へﾐ"ﾞ｝ ,/｀ /　 、　　　　　　　　,-､、　　　　　　　　｀'i､
　　　　　,,／",,,＿,、　｀lﾞ.,i´　 |　.,ト　.,,i´./　 .,‐ .,'"''ﾍl|、　　　　　　　　 ｀'-､,,_、
　　 ._,／｀ ,,,i{!ﾞ‐'''''ﾟ'i､　.}" ﾞヽ,,| .,!|　,/lﾞ.,l｝　,!|｀,i´　　　│　　　　　　　　　 ｀'-,,"ﾞ''―-,,,,_　　　　＿/＼／＼/＼／|＿
: ,,／｀　　 |"　 __、　ﾞ,!　　　　 | lﾞ,i´|,.ﾞ,!i,,! ./.|│　　　　 ﾞl,　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ'ｰ-,,、　"　　 　＼　　 　　　　　　　／
'"　　　　 （ ／　/:::.::|ﾗ　 　　 ﾞl!|| lﾞﾞl.|.lﾞ`i､ .|lﾞ　　　　　　ﾞl、　　　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ''-,、　　　＜　　牙突！！　 ＞
　　　　　／　　./:.::.::.|　 　 ﾍ｀ｰ .|ﾞl.| .ﾘ､ﾞ''┘.|!　ﾞﾞ”|ﾞﾞﾞﾞﾞI'ﾍ ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 　　　　　　　　＼
　　　 ／;　 　 /::.::.:.::.|　　 　　　.| ﾞl!　ﾞl、　、`　　 ｀ﾞ'''′ .,ｲ　　　 .|-､、　　　　　　　　　　　　 　 ￣|／＼/＼/＼/￣
　　 /::::::':;.. 　!::.::.::.:.::.:|　　 　 　 |　｀　 ﾞlヽ、 ,,,,_、　　/⌒ヽ.　　　　レ''＼、
　　/'::;:::::::::::'::,l! ::.::.::.::.| 　 　 　 ,!　　　 .ﾞl.｀'-,￣._,,,-‐|　　　 ＼ _--..,_　　`'i､
..／;!　 '::;::::::::::::l:.:.:..::.::...| 　 ヽ¨ﾞ゛'' ―- ...､､　 _______,⊥ -ー"´´ 　　　 ｀'‐ゝ＼
'"　l.　　　''::;;／＼:.::.:..:.:.i! 　!､ 　　　　　　￣　　　　　　　　　　　≡三　　⌒＼
　 _|:.:..　　／　　　＼:::.:.:.:!　　＼　 　　　　　　　　　　　　....._≡三三,r'　　　ﾐミ＼.
,／:!::::.／　　　　 　. ＼::.::ﾞ:、. 　 ゛'''‐-　...＿＿＿....　-ー ＼ : : : : :／　　　　三三ﾝ―- 、
　　 ﾞく　　　　　　　　　 ＼:.:.ﾞ:　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　 ﾞl、} : : :／　　　　.三､ r`　　　　!､
　.　 　`　、　　　　　 　 　 ＼::ﾞ:.、　　　　　　　　　　　　　　l: :／　　　　　／　　ﾞ,　　　　　゛''‐-、
　　　　　　｀ﾞ　‐-　 .,,__　　　_,,.＞　　　　　　 ___＿＿＿､,,r'／ 　 　　　／: : : : : :|　　　　:ll 　 　 ﾞｉ
　　　　　　　　　　　　　　￣　　　 　　　ヽ￣　　: : : : : : :／ 　　　　／ : : : : : : :! 　 　　 l|ｌ　 　　ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゛゛ｰ-----／ 　　　　／:: : : : : : : : :| 　　　,r'', 　　　|　|

20 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:34:10 ID:AqBReZrA
八３３５．
体当たりするような勢いで間合いを詰めれば、
白刃が易々と胸元へと吸い込まれて、吹き出した鮮血が篝火に照らされ、



　　　　　　　　　　　　　　 ヾ>
　　　　　　　　　＿＿＿＿＿ ヾ_>　　　　　　　　　　　　　:,:　　　　　　　　　　 :(::)
　　　　　　　　 /＿＿＿　　 ./　　　　　　　　　　　　　　　/⌒''⌒) :,,゜　　　　　 '　　　　　　　　 ,,,,,,,
　　　　　　　　　　　　 /　 /　　　　　　　　　　　　　　　　(:::::::::::::::!'　　　　　　　　　　　　　　　　 (::::::)
　　　　　　　　　　　　/　 　 ＼　　　　　　　　　　　　　　ヽ::::::::';'''　　　　　　　　　　　　　　　　　''``　　 。
　　　　　　　　　　　/ 　/＼/^　　　　　　　　　　　　　 τ'::/ .;:
　　　　　　　　　　,/ 　/　　　　　　　　　　　　　　　　　　 )/
　　　　　　　　　 / 　/　　　　　　　　　　　　　　　　　。　　　　　　　　　　　　'　　、　　　　　　　;:　。
　　　　　　　　　,^--' ＿　ヾ>　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　`'''`~''・　　　　' `
　　　　　　　　　　　/　 /　 ヾ_>　　　　　　　f''`⌒(　　　　　,,,,　　　　　　　　　　　　　　　!:(',,,,、　　　　　　　　　　　　　　::,,,,,、...
　　　　　　　　　　/　 /　　　　　　　　　　　　,!,,,、(　　　　　/::τ　　　　　　　　　　　　　ノ:::::::::::::::::)　　　　　　　　 　。 　!::::::::::`!　、
　　　　　　　　　 /　 　 ＼　　　　　　　:.、　　　　　　　　　　!:::(　　　　　ﾉ::`!　 　o　　　(::::::::::::::::::τ　　　　　　　　　　　　(:::,,;,;,、; 。
　　　　　　　　 ./ 　/＼ 　＼　　　　　　　　　　 ゜　　　　　(/　　　　　　⌒・　.　　 ・、;::::::::::::;;.;`` ''
　　　　　　　　./ 　/　 ´＼/^　　　　　　　　　,,、..　　　／/　　　ノ'　　　　　　　　 　/／'''`'`'` `　　　　　　 ..,,.. _,,,.、 ・　　　　　　　　　,, ...:・..
　　　　　　　 / 　/　　　　　　　　　　　　π /;::::::::(,.,.(;;;::::(　　 ,,.,　　・っ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　;,;;( ):::::;.　　　　c::── '`'''::::::::::;''
　　　　　　　^--'　　　　　　 ＿　　　　　):::::::::::::::::::::::::::/　　'''''`　　　`　　　　　　　　'`　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　⌒　` !.:::τ''　``
　　　　　　　　 ＿＿＿　 　/ 　/　　　τ　!::::::::::::::::::::::::::::)／,,,,,　γ　　　　　　　　　　　　　　 :'`'``:!
　　　　　　　./＿＿＿/　,/ 　/　　　　　(::::::::::::::::::::::::::::冫 `'`'　　　　、,:'::::::`:::,,,,　　　　　　　 !:::::ノ　　　　　　　　　・
　　　　　　　　　　　　　　/ 　/　　　　::：':'::::::::::::::::::::::::::::;(,,,,,,,、:::::::-ｰ''''`'`''''''''"
　　　　　　　　　＿＿＿/ 　/
　　　　　　　　./＿＿＿＿/

21 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:35:09 ID:AqBReZrA
八３３６．
そのまま左手で力を失った老人を突き飛ばすと
よたよたと数歩下がったリフは、
血の吹き出す胸を押さえながら魔法の集中に入るが―――



　　　＿＿＿
　 ／ 　 　 ヽ＼
　｜　 　 　 　 ｜
　 へ-　―ヾ　｜　　　　　　　「ぐふっ！
　　―　―　 ∂＼　　　　　　 ………おのれ、おのれ………
　｜ し 丶 √｜|｜
　｜ ﾄ-＝ヽ　｜|｜　　　　　 私はただ………
　 ＼　　　／　|｜　　　　　　 もっと、女神に、お近づきになりたかった……
　／ ゝ―-" ／ノ丿　　　　　 だけ、なの………」
（　＼＿＿／　 /｜



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ､::ヽ:::::::::::＼::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::/::::::::::::::::: /::: ∧:!　ヾ:::＼:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::＼
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　　　「それなら、　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::|:::::::::::::: ':::::::::::| j_| .. -─十::|:｀ ､ :| ::: ::::::::::::::|:::::::::::::::::::i::::::::::::
　　　 もっと別のやり方があったでしょう」　　　　|:∧::::| ::::::|:::::::::√i::l _ __　　|::::|::::::| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::i:::::::::::
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 く 　 　 　 　　 　/;;;;;|　::/ :::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::i::::
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23 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:36:09 ID:AqBReZrA
八３３７．
祈りは天に届かない。

死ぬ間際まで女神への渇望を失わなかった彼の道は、
一体何処で歪んでしまったのだろうか。



　　　　　　　　　　　　　　　　　..　/⌒i
　　　　　　　　　　　　　　　_,,..､　.|　 / ,..-､
　　　　　　　　　　　　　　　l 　 l　| /´ l,､_ノ ,
　　　　　　　　　　　　　　　|　 i'　'´_,,、　　　　　..　/⌒i
　　　　　　　　　　　　　　　.|　 し''´　」　　　_,,..､　.|　 / ,..-､
　　　　　　　　　　　　　　　.|　 ,,.-''´　　. 　 l 　 l　| /´ l,､_ノ ,
　　　　　　　┌ ､　　　　　　|　.|　　　　　　　|　 i'　'´_,,、
　　　　　 く＼.＼＼（＼ 　 ..l､_ﾉ　　　　　　 .|　 し''´　」　　　　　「に―――」
　　　　く＼＼＼,}　Ｙ　|　　　　　　　　　　　.|　 ,,.-''´　　.
　　　　　＼ヽ' 　 　 　/_　　　　　　　　　　　　|　.|　　　　　　,､ r‐'ｌ　.r､、
　　　　く`一'　　　　 /∨＼　　　　　　　　　 ..l､_ﾉ　　　　　　 ﾞl.|　ﾞl /　lﾞ
　　　　　｀￣¨丶､＿,／　　//`ー⊥∠⌒＼　ヽ 　＿＿ 　│ ﾞl |　|/　lﾞ
　　　　　　　　　　／　　 ___,ノ厶ﾆヽ.　　　　　　　｜ 　　　: ﾞl,,ﾉ '"│ /
　　　　　＜　　　＿|＼_／r─＜９ク ｎ＼　　　 　 　| 　　　 ´　　.lﾞ　lﾞ
　　　　　　 )　　　　二｀T￢=ﾆニ二辷|_} ｝　　　　 /_＿＿　　　 ＼,lﾞ
　　　　-　＜　　　　　　 　 　 　　　　　｀〈￣￣￣´
　　　　　　　)　　　　　　　　　　　　　 `
　　　　　　／^⌒`Y´^＼　　 '´⌒`Y´⌒`



そして、それを正してくれる人は居なかったのか。

自分はやらない夫と言う存在に腕を引かれてここに立つ言葉は
出逢いも一つの運命なのだ、と改めて彼の存在に感謝し、
その、温かい絆の輪に加われなかった男を哀れんだ。

もし麻呂が行動を起こさなかったら、
もし、リフもやらない夫ともっと深く接していたら―――
こう言う最後にはならなかったのではないか。
24 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:37:09 ID:AqBReZrA
八３３８．
しかし、時と命は戻らない。
流れ出した運命も遡る事は出来ない。

だから彼女は、一言だけを亡骸に投げかけて刀を鞘に収めた。

┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　あなたには、道を正してくれる人は居なかったのね。
　　　お気の毒に。

┗──────────────────────────────────────────────┛


　　　 　/　　　　　｀ﾞ''ｰ ..,,、;;;;;;;L　　　　　　　　　　　 　　 　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;(　　　　　（;;;;;;;ﾘ 　 　　 　 　　 　 　　　　 　 |
　　　　'　　　　　　　 /;;;;;;;;;;｀ﾞ''ｰ　,,、　　　　　　　　　　　 　　f⌒ゝ.;;;;;;;;;)　　　　_ _ _　 　 　 　 　　　　　 　 　　　 　|
''ｰ　,,、　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ'''ｰ ..,,、　　　　　　 　　　＼/　`ー── ．:;;;;;;;;;l 　 　 　 　　 　 　　　 　　　　 |
:;:;:;::::　｀ﾞ''ｰ　,,_　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀'''ｰ　,,_　　 　　 　/　　　　　　 　　`　、j 　　　　　　　　　　　　　　　　|
:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::::::::　｀'''ｰ　,,_　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｀ﾞ''ｰ ..,,_..'　　／/⌒ヽ　　　　　` … ──── r…─- ..._ 　 |
,_:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:::::　｀'''ｰ ..,,、　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ﾞ'''!７'''|'ﾞ´ﾞ' !　　(;;;;)　　　 　　 　　 　_|＿＿＿＿ ＞'
_｀ﾞ'''ｰ ..,,,;:;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:....:｀'''ｰ ..,,、　　　　 　 　 　 　 　 　 !:::iﾞ:::::;:;: |　 　 ;;! 　　 　　f;;;j 　, ´;;;!:　　|:::::::::::
: : : : : (ー:｀ﾞ''ｰ　,,_;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:....｀ﾞ''ｰ　,,、　　　　　　　　ｌ:;:,!:::::::::: |　　 　;:　　　　　　　ｲ;;;;;;;;l　 　 |:::::::::::
: : : : :/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;｀ﾞ''ｰ　 ,,_;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:...｀ﾞ''ｰ　,,、　　 /;:;lﾞ::::;:::::..:|　　　 ｲ 　　 　| ／;;;! ;;;;;;;|_r─ヽ:::::::::
: : : :/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ :｀ﾞ''ｰ　,,_;:;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:...｀'''' !;:;/:::::;:;:::::::..| 　.／;;|;;　　　イ;;;;;;;;;! ;;;;;;;|:｀ﾞ'''ｰ- _
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i: | : :|: : : ｀ﾞ''ｰ ..,,_;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:,";/.:::::::::;:;:;.:.|／;;;;;;;;;!: 　　 (;;;! ;;;;;;;;! ;;;;;;;|:::::::;:;:;.::::::｀ﾞ'''ｰ
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i: |: : |: : : : : : : : : : ｀'''ｰ ..,,,;;;;;;;;;:;: / ;/丶:::::::;:;:; :|;;;;;;;;;;;;;;| _ _ _ノ;|;;;;;;;;;;!;;;;;;;;;!::::::::;:;:;.::::::::;:;
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,'ヾ;;;;;;;;ﾉ..:|: : |: : :;;;;;; : : : : : : : : : :;| ｀''''ｯく. / ;:;:;:;:;:::::::::: :|;;;;;;;;;;;;;;|;;;;;;;;;;;;;;;l;;;;;;;;/;;;;;;;/:::::::;:;:;.::::::::;:;:;.:
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; : : : : : :.: :|: : | :f;::,:,:,ヽ _: : : : : : : ::|: : : ::" ゝ..,,_;;;;;;;....;;;;;/;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;;;;ノ;;;;;;/;;;;／ :::::::;:;:;.::::::::;:;:;.:
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i: : : : : : : |: : | :i;;;;;;;;;;;;;;;;;;i : : : : f;;;;|: : : : : : : : : ｀ﾞ'''ｰ-/;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;／;;;;;／／ :::::::;:;:;.::::::::;:;:;.:
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i;,,:..: : : : :|: : |: :ヾ;;;;;;;;;;;;;;i: : : : : : :.|.: : : : : : : : : : : : :/;;;;;;;;;;; /;;;;;;／;;;;;／イ::::::::;:;:;.::::::::;:;:;.::::::::;:;:;.:
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾉ: : : : : :. |: : |: : : : : : : : : : f;;;;v :.:.| : : : : : : : : : : : /;;;;;;;;;;;;;/;;;／ ー:'’ ｀ﾞ'''ｰ- _::::::::;:;:;.::::::::;:;:;.:
` ー─r──-r-＜_: : : : : :..:|:._:j＿: : : : : : : : :i:;;;;;!: : |.: : : : : : : : : : :/;;;;;;;;;;／ イ:..:.: : : : : :.: |ー‐‐ ｀ﾞ'''ｰ- _ :::::::;:;:;.:
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　 　　 |;;;:i　　 |;;;､　　　　　　　/;;'　　f;;;;;;;;;　　く;;;;;;;;;;;;;;;;;;;／　　　　ゝ‐'　￣￣ 　　 　　 　　 　　 　　 　　 　|:::::::::
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25 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:38:09 ID:AqBReZrA
八３３９．
一方。
強く降る雨の中、バルコニーに居るはずのリフの姿を見失っていたマコトは
増援でも呼んでいるんじゃないか、と不安に思ったが、



.　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V　　　　「おい、リフはどうした？
　　＜ : ｣_: : / 〈　　{}　|/　　ﾚ　 {}　}|:./ヽ: : |　　　　　 雨で良く見えないぞ！」
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　 ｀t　　 ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､
::::::::::::::/:::::::::∧　　　　/二＼　|::::::ヽ::::::::::::＼
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ　 /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::



手すりの淵から、ぶんぶんと振られる雨に濡れた白い手が覗く。


　　　　　　　　 ｌ⌒ｌ　　　　 /⌒!
　　　　　　　　 |　 |　　 　 /　 /　/⌒l
　　　　　　　　 |　 |　　　/　 /　 /　 /
　　　　　　　　 |　 |　　/ 　 /　 /　 /
　　　　　　　　 |　 |　 / 　 /　 /　./　　 .／ ）
　　　　　　　　 j 　 ∨　　l 　/　 / 　 ／ ／
　（￣｀ヽ　　　/　　　‐- .._ﾚ′　 | ／ ／
　　＼ 　 ＼_/　　　　　　　｀ヽ､　　／
　　　ヽ　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 /
　　　　｀､　　　　　ヽ 　 　 　 　 /
　　　　　 ヽ　　　　　|　　　　　/
　　　　　　 ヽ､__　　　　　　　/　 ﾌﾞﾝﾌﾞﾝ
　　　　　　/　　￣　　　 　 /
　　　　　 /　　 　　　 ┬‐'"
　　　　 ./ 　 　 　 　 /
　　　　/　　　　　　/



.:.:.:.:.:.:.:.:.／／:.:.:.;ﾉ　　　　　　　　　　 　 　 ＼
.:.:.:.:.:.:. / /:.:.:.／　 /　　 ,　　 　 ｀､　 　 　 　 ヽ
.:.:.:.:.:.:/ /:.:.:.く /　 |　 　 | l　　　　 ヽ　　　　 ､　ヽ、
:.:.:.:.ノ /:.:.:.:.:.∥　 |ｌ　ｌ　 | ｌ　　　　｀､｀ヽ　　　 l　ヽﾄ､
:.:.:.:{　 !:.:.:.::.:;ハ　 |l　|l　 ! |　 ＼　　 ヽ、＼　 l|　 ｌ| |
::.:.: l　 |:::.:.:.::)　ﾄ、|ﾄ､|l　 } ﾄ､ヽ　ヽ、　| l|ヽ ヽ |ヽ l|ﾉ
::..::.:ｌ　 |:.:.:爪,斗七|廾ﾄ-|‐1ヽ }｀ヽﾑ-l￢ ∧ﾉ/　}ﾘ　　　　　「………あれは！」
ヽ.:.:ヽ. ヽ::.}| ｌ ﾊ/,ｨ´うﾊVl/| 　 ﾘ ん:::ﾊ. l |
　 ）:.:rへ_}|/ l|　{ｌ い:::j.　　　　　 い:::ﾉ　ﾊ
　 ヽ､!{ﾚ' ///　　 ゞ-'′　　　　　 ｀ ´ ∧ |
　　 ／／/人　　　ﾞﾞﾞﾞﾞ　　　　　' 　ﾞﾞﾞﾞ 八l |
　／／ ／_＞ト､_r个､.　　 rァ　 ＿／|　ヽ＼
/／ ／　/: ／::..::..::{::..:ヽ.　 ´ .／::..l｀'┴:-:ﾍ　＼
´ ／ 　 _工l::..::..::..::..ヾ::..::ﾄｧ=く::..::..:l::..::..::..::..::}ヽ、＼
ノ 　 ／ : : {::..::..::..::..::..:∨{ﾘ廻ｌト､::.ｌ::..::..::..::./　　ヽ、ヾｰr- ､
　 ／: : : : : ｀ヽ､::..:;:-'´丁ヾﾆｼ::..｀T:ｰ::-:r'′ 　 　 ｀ｌ　/　 ∧
. /: : : : : : : : : : /´::..::..::.l!::..:| |::..::../::..::..::.＼ 　 　 　 ﾚ' |　/ /

26 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:39:09 ID:AqBReZrA
八３４０．
続いてひょっこり出てきた顔が、襲撃の日に逮捕された言葉だったので―――



　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:ｉ:.:|Ｗｗﾊ.:.:.:.ヽ.:.:ヽ
　　　　　　/.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:/.:.:/ｉ:.:|　　　 !.:.:!:.:.:.:.:.:.:',
.　　　　　/.:.:/.:.:/.:.:.:.:.:/.:.:.:.:/.//　!.:,'　　　 ｉ:.:.!:.:.:.:.:.:.:.:!
　　　　　ｉ.:.:/:.:/.:.:/.:.:/:.:,.斗 //　 ｉ/ --､　 ｉ.:/:.:.:.:.:.:.:!:ｉ
　　　　　|./!.:.:!:.:.:!.:.:/イ　　//　　/　　　 ｀ﾒ､ |..:!.:.:.:.:!:|
　　　　　|　|.:.:ｉ:.:.:ｉ.:.:|　|斗≠　　/　　 ≠=､　 |:.:!.:.:.:.:!:|　　　　　「王女様！
　　　　　|　|.:.:ｉ、.:ｉ:.:|./ﾄ:::::::ｉ}　　　　　 ﾄ::::心、!:/.:.:.:.:!:|　　　　　 みんな！
　　　　　ヽ |.:.:ｉヽ:ヽﾄ　ｖ':::::}|　　　　　 ｒ':::::ﾘ　|/:.:.:.:/!.:|
　　　　　　 |ｲヽ..＼ﾄ.　V少　　　　　　ｖﾆｿ　厶 イ:.:.!.:|　　　　　 リフは斃しました！」
　　　　　　/ |:.:.:.:.:.:.:ﾊ　 :::::　　　､　　　:::::　 /ﾉ:.:.:.:.:.:!.:|
　　　　　 /　|.:.:.:.:.::!:.!ﾍ、　　　ｒ　 ｧ　　　　/:.|.:.:.:.:.:.:.!.:|
　　　　　/　 |:.:.:.:.:.:!.:|.:.:.＞､　　　　　　 ィ´:.:.:|.:.:.:.:.:.:.!.:|
　　　　 /　　|ｒ―‐-､!:.:.:.:.:.:ｉ`　 ､.　 '´|.:.!.:.:.:.:.!.:.:.:.:.:.:.!.:|
　　　　/　　 |　　　　|!_, ィﾘ　　　　　　!＼.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:!.:|
.　　　/　　 /|　　　　|ｉ　 /　　　　　　　!　 ヽ!:.:.:.:.:.:.:.:!.:ｉ
.　　 /　　 /_|／￣ヽ||　 |　　　　　　　 |　　 |:.:.:.:.:.:.:.:!ハ
　　/　 .／::::|　　　　|ﾍ　!ー-､　　, -‐/　　/:.:.:.:.:.:.:/::::::＼
　 /　 ∧:::::::|　　　　|:∧ ＼　　　　 ./　　/:.:.:.:.:.:.:/::::::::::::∧



立場も状況も忘れたマコトは、よくぞ無事で居てくれたと大粒の涙を流すほかなかった。



　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|　　　　「こ、こ、こ、言葉ぁぁぁぁーーーーー！！！」
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
　　＜ : ｣_: : / 〈　　{}　|/　　ﾚ　 {}　}|:./ヽ: : |　　　　　（やらない夫ぉぉぉ！ありがとう、本当にありがとう！）
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　（ (　　　 ､　　) ）　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　) ）　＿　'　（ (　　 !
　　　　　　　 ヽ　 （ ( ／　　 ｀t ) ） ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､
::::::::::::::/:::::::::∧　　　　/二＼　|::::::ヽ::::::::::::＼
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ　 /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!
27 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:40:11 ID:AqBReZrA
八３４１．



　　　　　　　　　 r'ﾆﾆニ二二二ニﾆﾆヽ
　　　　　　　　　 | | 　 　 　＠　 　　　| |
　　　　　　　　ｒ ┤|　　　　　　　 　　 |├､
　　　 　 　 　 |　 | | 　 　　Π　 　 　 | |　.|
　　　　　　　　l　 l l　 　 lﾆ　 コ　 　 | |　.|
　　　　 　　 　 |　 l l　 　 　|_|　　 　 | |　.|　　　　　「言葉！
　　　　 　 　 　 l＿l_l＿＿＿＿＿__|_|＿|　　　　　 無事だったのですね！」
　　　 　　　 　 /　ｨ ,ｲ /　　 }　!､ ヽ　　 ヽ
.　 　 　 　 　 / ./| / l/ｘ'　　 l.ハ`x ヽ　!　}　　　　（やらない夫さんは本当に凄いです！
　　　　　 　　{ /| N ﾚ;行ミ　　 ≠ミﾄ､!､ト､!　　　　 言葉の事も中庭の事も、
　　　　　 　　V |/ .!ｲ {r､::}　 　 ﾄｨ,.:} 〉! l |　　　　　全部作戦通りじゃないですか！）
.　 　 　 　 　 　 l | .| ゞー' 　 　弋ツ ﾊ ! |
　　　　　　　　　| !　ﾄ､'''''　{￣j ''''' ｨ'|l .| .l
　　　　　　　 　 j l　!_|_l ` r - ｬ＜_j_| ハ.|
　　　　　　　　r'ﾆﾆＹヽ　ゞ､＿,〃　/yﾆﾆヽ
　　　　　　　　}､ ﾆﾆ! ヾ　　,ニ,　　//ﾆﾆﾝ



落ち着いて状況を見返してみればリフが斃れ、言葉が戻り、人質など出てこない。

王女が王女たる威厳を見せ、奇跡を起こした結果、
死者は殆どなく正規兵は全員投降、スラム兵も抵抗する気を失っている。

これを完全勝利と言わずして何を勝利と言うのだ、と
アリアとロイは裏方に徹したやらない夫の事を思い―――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／"　 ／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;:::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／,,ﾗ::::::::::::::::::::;:::::::::::::／ |:::::;::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/／／::::::::::::::::::ｲ:／!::／　 l::::/|:::::､:::::::::::::::::::::
　「どうやら、　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　-"　./::::;ｲ:::::::／>:/ /／　　 !:::i .l::::|ヾ::::::::::::::::::::::::::::::
　 中庭は無事抑えられたようですな。 　　　　　　　　　/:/　l:::::／／'^X"　　　 l:::/　|:::| ヾ::::::;:::::::::::lヾ::::::::
　 王女様―――」　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　/::ｲ　 ＿ ヽ丶　 　 l::i　　|:::|　i::::::::|ヽ::::::i,、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾚ|/　"⌒ヾ,,　　　　 |:l　一|::|ｰ-i::::::| ヽ::::::::::ヽ>::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＿,,,,__　　　　　　 /　　　　　~　　　　 i/ =--l:|　 ヾ:::l^`ヾ::::::::::::::::::::
　（残すはイチジョウとギャブレット、 　''".　.'' .＜三` =-.,,_/　　　　　 　 　 　 　|　_,,-┿=､ ヾ:|　 ヽ::::::::::::::::::::
　 そして別働隊のサクラダ殿か。　　 ヽ..　.　.　.＼￣ﾞﾞ'''=i　　　　 ,　　　　　　　　　　　　 ヾヾl 　 !:::::::::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾞ.　.　.　.　.＼ .　.{　　 　 r"　　　　　　　　　　　　　　 |　　i:::ﾍ::::::::::::::::::::::
　 ………もはやビップ殿を　　　　　　　　.　.　.　.　.　.）.　. ',　　　､_　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |;/ ヾ|）::::::::::
　 止められる者など居まい。　　　　　　　 　.　.　.　./,-"　 .',　　　 ﾞ''-,,_　　　　　　　　　　　　　　　ノ　 〉ﾉ::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .　.　.　／"　／.　.'、　　　　　ﾞﾞ'' ｰ- ,,＿　　　　　　 　 ,/_/／:::::／
　 彼は大河だ。　　　　　　　　　　　　　 　　.　. ／　／.　.　.//:'.、　　　　　　　　　　　　　　　　,=-- <:::::k"
　 姑息なイチジョウの小川など　　　　 　　 ／　／.　.　.　//:: : ' ､　　　　　　　＿,,,,,,, --─'''''""￣￣
　 一気に押し流してしまうだろう）　　　　　　 ／.　.　.　／/／ :.| l.ﾝ- ,,＿/⌒）.　.　.　.　.　.　.　.　.　.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／:　.　.　. ( ノ .　. :.:i::t.K |　/./::7 /.　. :／'''"""￣⌒
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:　.　.　.　.　.　.　 .　:.:.l:) ） `// // /.　.／.　.　.　.　.　.　.　.

28 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:41:09 ID:AqBReZrA
八３４２．
真紅もランサーの登場と青い宝石、
聞かされていなかったその二点について考えを巡らせながら
この場の確保の指示を出す。



　 ｢｀ー'′／　 　 /　　 ヽ、 ＼ ＼　 ヽl}::.:)､ ＼
　 l_,ｨ　　/　/　　 l　 　 　 l 、　 ｌ　｀､　{:|}く＼ヽ/
　　ノ　 ,′ !　 　 {　 　 　 | l| 　 | 　 l　):|} ﾉ|:｢´
.　 ヽ∧| ,　| 　 |　l　 　 　 | ｌ|　　|　 l|　{:|!::）|:|
　　　|::l| |　|　　ｌ　 、　 　 | l | _,厶| j| ｛::|}::} |｣　　　　　　　　　　「ええ。
　　　l:::| ｀、!| 　 ＼ ヽ、　|,.イ,斗予 |　|{K!j　|　　　　　　　　　　 キバヤシ、城壁の制圧と
　　 〈:;小､ヽヽ、Ｔ,Ｚﾆミヽj　 ^ヾrｼ　|　|ァ１　|　　　　　　　　　　 騎士団の配備を。
　　　　|　 ＼ヽN {ヾtｸ　　　　 　 　 |　ﾄ |_|　 |
.　　　｜　 | 　 l　＼　　　 ｀-　　 ／!| |::..::.｀:┴-､　　　　　　　　 マコト、ランサーをここへ呼びなさい」
. 　 　 |　　|　　|　 | ＞ ､　_＿ ／::..::|| |::..::..::..::..::..:ﾄ､
　　　 |　　j　 /|　 l/::..::..::..::..rｸﾆﾐ::../| |::..::..::..::..::./::..｀ヽ　　　　　　（ランサーが戻ったのは
.　　　l　　 ! //l　 l::..::..::..::/;ﾊﾐZシ//| |::..::..::..::..:/::..::.｀ｰ┴―-ｫ　　やらない夫、あなたの―――？）
　　　j　　 ﾚ'∧!　,'::..::..::.〃::..::..::.ﾚ'/::| |::..::..::..::r'::..::..::..::..::..::..::/::|
　　 /　　/ / /|　ﾊ::..::..::..::..::..::. /l ﾄ､| |::..::..::..::{ー-::.ﾊ::..::..:: /::..|
.　 /　　/ ｜{::.| ||::.＼::..::..::..::../::.| l::.| |::..::..::./::..::..::/::..＼::./:ヽ:j



　　　　　　 ,. ─- ､,,.＿__
　 　 　 ,ｲ〃　 　 　 　 　 ｀ヽ,__
.　　　N. {'　　　　　　　　　　 　 ＼
.　　N. {　　　　　　　　　　　　　　 ヽ
.　 N.ヽ｀　　　　　　　　　　　　　　　〉
　 N.ヽ｀　 　 　 　 ,.ｨｲ从　　 　 　 /
.　 ヾミ.＿__-‐=彡'ノﾉﾉ__,ゞミ=-_rく
　　　　lrf´ゞ“ﾓ=ヾｰf =ﾓﾁ＜}rv^i !　　　　　「ハッ！」
　　　　ヾﾄ、｀￣,り「弋! ￣´ノ　ソ
　　 　 　 !　￣　 ii{_,.　 ￣　　/r'´
　　 　 　 ,ゝ、　 ｉｰ-ー､　　, '　|＼
　　-‐''7´　ドヽ. ｀ニﾆ´ .／;;　 |　 ヾ''ｰ-
　　　 /　　 ﾄ､　` ｰ-- ´　,;'　,ｲ　　:|
.　　 /　　　:ト､` ｰ-､ r--‐_'´/　　　|
　　/　_,..､-‐＼ ￣! ﾚ' 厂　/へ、　 :|
　　T´　ヽ＼l.0| 　 V / 　 / /　 ＼　|



もちろんキバヤシは素早く騎士達に指示を下して
城壁の確保、正門前の味方への伝令、
投降した第二騎士団を今は待機所に待たせる事を指示したのだが。
29 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:42:09 ID:AqBReZrA
八３４３．



　　　　　　　　　　　　　⌒ヽ､
　　　　　　　　　　_　,-─ ､,〉ゝ－-::...　、
　　　　　　　 ,..::´:::::ヽ:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::`＼_
　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ
　　　　　, ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　 /::::／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　,/:::. /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ
　 　 l:::./.:.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ　　　「……………」
　 　 |/|:::::::::::::::::::::::::::::::: ﾊ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ
　　　　|:::::::::::::::::::::::::::::/　ｌ:::::::::::::::::::|＼::::::::::::::::::::::::::::::::::::|　　　（やらない夫の読み違いで、
　　　　|::::::::::::::::::::::ゝ/L　 ｌ:::::::::::::::::| 　 ＼斗‐:::::::::::::::::::::|　　　 実はあいつは裏切ってなかった？
　　　　|:::::::::::::::::::/l /　　`ﾒ::::::|＼::::ｌィ´　　＼:::::::::::::l:::|
　　　　|::::::::/|::::/　ﾘ　　,__､ ヽｌ　 ＼ｌ;,__　　　|ｌ |人::::::::|∨　　　いや、違う。
.　　　　|::::/　|:::fzlｌ　＾`=＝'´　　　　 ＾===‐'´ｌjｌノ::::::::/　　　　 何かあって、戻ってきたんだ）
　 　　　|/　　ヽ::::|ﾍ　　　　　　　　　　　　　　/ィ<"l/
　　　　　　　　　ゝ;八　　　　　　;　　　　　　 /ｲ
　　　　　　　　　　　x > ､　　　 ─　 　　　ｲゝ:::｀＞-､
　　　　　　　　　〆::::;//ﾊ`　、　　　　 <´/　 ｌ）:::}:::::::::::::::` ､
　　　　　　　 ／/::::://　　＼ 　｀‘´　　 /　 /::::7::::::::::::::::::::ﾊ::ｌ
　　　　　　 ﾉ::::/::::::《〈 ヽ／ﾍヽ 　 　 ／　 /::::/::::::::::::::::::::::/::::l



複雑そうに考え込んでいたマコトが、
真紅の指示に返事をするまでしばらくかかった。



　　　　　　　　　　　　　￣ヽ､
　　　　　　　　　　_　,-─ ､,〉ゝ－-::...　、
　　　　　　　 ,..::´:::::ヽ:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::::::::`＼_
　　　　　　／:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ヽ
　　　　　, ':::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　 /:::.／::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　,/:::: /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ｌ　　　　「………分かりました、王女様」
　 　 l::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ
　 　 |/|:::::::::::::/::::::::::::::::: ﾊ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ
　　　　|::::::::::::::::::::::::_:::/　ｌ:::::::::::::::::::|＼:::::::::::::::::::::::::::ｌ:::::::::|　　　　（まあいい。
　　　　|:::::::::::::::::::::::::/≧､ ｌ::::::::::::::::::| 　＼斗::::::::::::::::ｌ:::::::::ｌ　　　　少しでも妙な素振りを見せてみろ、
　　　　|:::::::::|:::::::::/l::/ｲ⌒ﾞ`ﾒ::::::|＼::ｌィ千代`:::::|:::::::::ｌ:::::l〉ﾘ　　　　独断と言われようが―――斬る！）
　　　　|::::::::/|:: /　ﾘ弋､ _ﾉｌ　ヽ|　 ヽﾚ; __ｿ ｌ j|人:::::::ｌ:::::|
.　　　　|::::/　|:::fzlｌ　＾ー‐'´　　　　　＾　‐-'´　jｌノ:::::l::l::て
　 　　　|/　　ヽ.:::|ﾍ　　　　　　　　　　　　　　/ィ<"j ﾒ_／
　　　　　　　　　ゝ;八　　　　　　;　　　　　　/ｲ
　　　　　　　　　　　x > ､　　　ｰ ｰ　　　　ｲゝ:::｀＞-､
　　　　　　　　　〆::::;//ﾊ`　、　　　　 <´/　 ｌ）:::}:::::::::::::::` ､
　　　　　　　 ／/::::://　　＼ 　｀‘´　　 /　 /::::7::::::::::::::::::::ﾊ::l
　　　　　　 ﾉ::::/::::::《〈 ヽ／ﾍヽ 　　　／　 /::::/::::::::::::::::::::::/::::l
30 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:43:09 ID:AqBReZrA
八３４４．



　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＿＿_
　　　　　　　　　 　 　 ..::´::::::::::::::::〃⌒ヽ､
　　　　　　　　　 _　／::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::＼
　　 　 　 　 　 　 ｊ/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　 /:::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　 i::::::/::::::i::::::::!:::::::::::::､::::::::::::::::::::::::::',
　　　 　 　 　 　 |:::/::::::::ｉ::::::∧:::::::::::::ﾄ､::::::::::::::::::i､::l
　　　　 　 　 ､__Ⅳ::::/:::i:::::/__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:|　　　　　　　　「ランサー！
.　　　　　　 　 ﾌ::l::ｒ'l:::/!::/ｾﾐl::::::ﾊ:::尨_ハ::::::i:::ﾄ､`!　　　　　　　　 武器をその場に残して降りてこい！
　 　 　 　 　 ´￣]八!/i」:瓜ﾘ !／ Ⅳ　　　小ハl
　　 　 　 　 　 　 　 ｊ､八i　　´　　ｊ〉　　 爪i　　　　　　　　　　　　 言葉もこっちへ来てくれ！」
　　　　　　　　　　　　 　 ｊヽ､　 ｔ＿ｱ　.ｨ
　　　　　　　　　　　 _＿／/| ヽ　__／/ |＼
　　　　　,...-',,⌒ゞﾐ､::／::::| 〈　　　 ／　.|::::＼ﾞ''ｰ-::､_
　　　　/::／.:::::::::::::..ヽ :::::/∧。V￣＼　 |:::::::::＼:::::::::::::｀ヽ,
　　　 /:::::::::::::::::::..`ｰ-､::::|/＼丱／/ ヽ/|:::::::::::::::ゝ::::::::::::::::|::}
.　　　|::::::::::::::::::::::::::::::;;_ヾ|　　|＿/　　　 .|―ー＜::::::::::::::::::::|::::i
　　　 |:::::::::::::::::::::::::::::::..｀''ヽ､　|;;|　　　　|::::::::_ノ⌒ ｰ - ,,,＿＿　　＿
. 　 　 l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..ﾞヽ.､　　,r‐'ﾞ　　　　　　　　 　 ／/ 　 ヽ
　　 　 |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;ヽf　　　　 ヽ　　　 　 　 l /　　　 l
.　　 　 l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,,-''',ﾆ,-'"　　　　　　＼___　　　　　　 　/
　　　　 ヽ;::i:::::::::::::::::::::::::::::::::/ .／　l　　　　　　　　　 ＼X=-､,,＿_／
　　　　　 ヽl;:::::::::::::::::::::::::::::::|　|　　ﾉ　　　　 ` ､ 　　　　 ヽ ,ﾍ./::::::I
　　　　　　　ヽ､:::::::::::::::::::::::::|　l　i´　　　　　　　` ､　　　 ﾉ ヾ|::::::::丿
　　　　　　　 .|｀ヽ;::::::::::::::::::::|　|　|　　　　､　　　　　`'rイ　 ,ノ:::::::::＼
　　　　　　　 |:::::::::＼∩:::::::::|　l＼ 　　　　 `=､.._＿,ノ　 厂:::::::::::::::::/
　 　 　 　 　 |::::::::::::::::＼∩:/　 |　ヽ､＿　　　　ﾉ:::::::|　/:::::::::::::::::::::/
　　　　　　　|:::::::::::::::::::| ＼:!`ｰ､ 　,,='' | ｀､'‐-'ﾞ:::::::::| /:::::::::::::::::::::/
　　 　 　 　 |:::::::::::::::::::::|　　ヽ_;;ｧ'~　　 |:::::::::::::::::::::::::|/:::::::::::::::::::::/


31 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:44:09 ID:AqBReZrA
八３４５．
もちろんランサーとて、彼の複雑さは手に取るように理解できた。
だから大切な魔槍を城壁の上に残し、言われずとも鎧を脱ぎ捨ててから階段へ向かう。

我が子の未来を掴む為に、泥を啜り、如何なる屈辱にも耐える意思を堅めながら。



　　　　　　　　　　　　　 ｲ　　　　 __＿ ,.イ
　　　　　　　　　　,.イ／/／￣￣.:.:.:.:.:.:ノｰ ､
　　　　　　　 ヽ /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:___ノ.:.:__ノ.:.:.:.:ニ＝ｰ
　　　　　　　　|/.:.:.:.:,.イ.:.:.:/／.:／.:.:.:.:.:￣￣￣.:.:＞/
　　　　　　 ＼ヽ/／.:.:.:.:.:ﾉノ／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＞.:.:.:／/ ｲ
　　　 　 　 　 ∨.:.:/ノイ!　　　彡──　´.:.:.:.／／:.:/
　　　　　 　 　 i／ﾍ 　 }｝　　　ミ二ニ.:.:.:.:／／.:.:.:,ｲ　　　　　「分かった。
　　 　 　 　 　 /　|/／厂｀　　ヾ:.:.:.r－く.:.:.:.:.:.:／.:.:.j　　　　　 ………抵抗するつもりはない、
.　　　　 　 　 /　／　　　　　 　 ∨/⌒ ヽ.:.:／/.:.: /　　　　　 やらない夫に誓ってな」
　　　　　　　　ヽ　　,,ノ　　　　　　ヽ丿 丿´.:./.:.:.:/
.　　　　　　 　 /　　　　　　　　　　　__ノ.:.:.:./.:.:.:./
　　　　　　　 /　　　　　　　　　　　　Xヽ.:./.:.:.:,.ｲ　　　　　　　（お前が気づかせてくれたチャンス―――
　　　　　　　 ｀ヽ　　　 　 　 　 　 　 | |　 ヽく::::::ヽ　　　　　　　決して無駄にはしない）
　　　　 　 　 　 ｀<　￣　 　 　 　 　 | |　 　 l ヽ:::::::ゝ、
　　　　 　 　 　 　 ',　 　 　 　 イ 　/ ¨　 　 l　 ｀く:.:.:.:.ヽ
　　　 　 　 　 　 　 ',　　.. 、´　___./───－ｭ　 ＼:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　 　￣　 」￢|::::::::::::::::::::::::::::::∧　　 ＼.:.:.:.:＼
　　　　　　　　　　　　 　 | |￣|:::::::::::::／ ￣￣￣ ＞ｰ-::、:.:.:.:.:ヽ.
　　　 　 　 　 　 　 　 　 ,| |⌒トｰ､／／ 　.:／ ´　　　 　 ｀ヽ、:.:.:.ヽ.
　　　　　　　　 　 　 ／ｲ / 　 ）／／　.:.／　　　　　　　_＿　 ヽ:.:.:.:.:'.,
　　 　 　 　 　 　 ／∠ムへ､,/　/　.:／　　 . ・ ´ ￣　　　　｀ヽ ∨:.:.:.i
.　　　　 　 　 　 /ムγ´:￣::/　/.:／　　／　　　　　　　　　　　 ∨:.:.:.:l
　　　　　　　　 ハ.::::::::::::::::::/　/ ′　／　　　　　　　　　 　 　 　 ∨:.:.:l

32 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:45:09 ID:AqBReZrA
八３４６．
バルコニーの言葉も当然、ランサーに対して複雑な感情を抱いたままだ。

目が冷めた牢屋の中で一番最初に裏切りに気づいたのが彼女であり、
その後は一度も顔を合わせていなかったが、
この状況以前に鉢合わせていたのなら、全力で斃しに掛かっていただろう。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／::::::::::::::::::::::::::::::: ﾄ､::ヽ:::::::::::＼::::::::::::::::::＼::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /::/::::::::::::::::: /::: ∧:!　ヾ:::＼:::::::::::ヽ:::::::::::::::::::ヾ::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:::i:::::::::::::::: / ::::::| |::!　　 ＼::＼::::::::: !::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　「分かったわ！」　　　 　 　 　 　 　 　 　 |:::|:::::::::::::: ':::::::::::| j_| .. -─十::|:｀ ､ :| ::: ::::::::::::::|:::::::::::::::::::i::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:∧::::| ::::::|:::::::::√i::l _ __　　|::::|::::::| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::i:::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:|　|:::| ::::::|:::::::ハ j/ｨ≡tiミ |::,ｲ!:::i| :::::::::::::::::::::::|:::::::::::::::::::::i::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:|　|:人 ::::|::::: |:::::/　 l 　 |　i/ |:::::i| :::::::::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::i:::::::::
　　（ランサー、どう言うつもり？　　　 　 　 .|:|　i::::| ＼l:::::::|:::::i　 　､ ﾉ /　 |:::从 :::::::| ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::i::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヾ.､ ヾ:＼　＼乂:, 　 　´,,,,　　 |/;;/:! : :::|:: ::::::::::|::::::::::::::::::::::::i:::::::
　　 改心したように見せかけて―――　　 　 .＼　ーゝ　ゞ:/＼　´ 　 　 　 ;/ ;|::::::::|:: ::::::::::|:::::::::::::::::::::::::i:::::
　　って言うのなら不可能よ。　　　　　　　　　　　　　　　　く 　 　 　 　　 　/;;;;;|　::/ :::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::i::::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　__　 　 　 ;;;;;|:::/ :: ::::::::::::|:::::::::::::::::::::::::::i::::
　　私とマコト君が居る今、　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　 　　,;;; j/　:::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::::::::i:::
　　あなたの好きにはさせないわ）　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ＞,. ─…；イ　 ::::::::::::::::::|::::::::::::::::l::::::::::::i::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　／√　　　　　　|　 :::::::::::::::::∧::::::::::::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 ／　/　　　　　 　 ｲ　 :::::::::::::::::|　 ゝ:::::::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／:::::::/　　　　〆 　　| :::::::::::::::::::::| ::::::::＼::::l::::::::::::i:::
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　::::ノ　　　／　 ィ:::::: | :::::::::::::::::::::| ::::::::::::::＼::::::::::::i

33 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:45:12 ID:AqBReZrA
気持ちはマコトと同様に、少しでも不審な素振りを見せたら斬るつもりである。

とにかく急ごう、と出口を目指して駆けだしたのだが―――



　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i　　　　　;　 　 　 　 /
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 l 　 　 　 ;　　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ｌ　　　　 ,'　　　 　 /　　　　 ,.．､、
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｜　　 　,' 　 　 　 /ー- ､. -=― .､ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l.　　　 ,′ 　 　 /　　　　　　　,:　ﾞｉ｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i　　　 ｉ　　　　/ヾ:　　　　 ,,.:'　　｜l
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,!　,　　!、　　　' ﾉ,' ＿_　 '"_,_;_,..-',ｲ
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,'　　　｜`ｰ--‐"'''´　　 ￣i｀－ '"　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 　 |　　　　 　 　 　 　 l　　　　 ,!
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 r'´￣`ヽ､!　　　　　　　　　　 ﾞ､　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,' 　 　 　｜　　　　　　　　　　　 `''''"
　　　　　　　　　　　　　　　　 ,'　　　　　,:'
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　/ 　 　 ,,.:' /
　　　　　　　　　　　　　 ､-ﾞ'' 　 '''"　/
　　　　　　　 ,:''⌒｀`'''＜ﾞヽ､、 　 　'{　　　　ﾀﾀﾀｯ
　 　 　 　 　 !,. -　､　 　 ＼ヽ､`　､.,!
　　　　　　　 ﾞヽ、　 ｀ ‐ ､...ヽ､_｀`'く
　　　　　　　　　 ｀`''‐- ､_　｀` ｀`r'′
　　　　　　　　　　　　　　 `丶､ノ
34 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:46:09 ID:AqBReZrA
八３４７．
階段を下りている最中に、ふと足が止まった。



　 　 　 　 　 　 　 　 !　　　　　　　i
　　　　　　　　　　　 ,Ｌ. __　　　　/'
　　　　　　　　　　　 Y´￣二　／〉
　　　　　　　　　　 　 |　　 　 　 /!
　　　　　　　　　　　　|　　　 .／ ｣!
　　　 　 　 　 　 　 　 ｌ　　　　 　 !ｌ
　　　　　　 　 　 　 　 |　 　 　 　 |ﾑ
　　　　　　　　　　 　 │　　　　　| ∧
　　 　 　 　 　 　 　 　 !　　　　　 |'/∧
　　 　 　 　 　 　 　 　 |　 　 　 　 !　/L_
　　　　　 　 　 　 　 　 |　 　 　 　 ｌ　/￣〉
　　　　　　　　 　 　 　 |　　　　 　 |　　/∧
　　　　　　　　　　　 　 |　　　　 ／｀i　′,∧
　　　　　　　　　　　　　|Ｌ... _ 　 　 │　/'/∧.
　 　 　 　 　 　 　 　 　 「￣　`　 　/　 ′/ ∧.
　　　　　　　　　　 　 　 |.._＿ ,　／〕､　　　＿」.
　　　　　　　　　　　　　/￣　｀　　￣|　　 ￣　,〉　　ﾋﾟﾀｯ
　 　 　 　 　 　 　 　 ∠.. _　　　　 ／!-‐=ﾆ ／>..
　　　　　　　　　　∠￣　 ￣二ﾆ､　厶-､ , '／　〉
　　　　　　 r‐=≦￣ `　　　　　　∨　　 //｀ｰ'´
　　　　　　 iＬ.. ＿＿＿＿r‐=ｉﾆﾆ｣二ﾆ´/'
　　　　　　 ｀ ￣￣￣￣ ´　　｀￣ ￣￣´



ランサーが神や別の―――それこそ、王女の名にかけて言ったとしても信用しなかった。
しかし、彼はやらない夫の名を出したのだ。



　　　　　　　　　　　　　　_,,..　-‐……‐- ､
　　　　　　　　　　　,r''"´:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼
　　　　　　 　 　 ／::::::::::::::::::::::::|ヽ/|:::ｉ:::::::::::::::::ヽ
　　　　　　 　 ／::::::::::::::::::::/ｌ:::::lヾｰ|:::!i::::::::::::::::::::',
　　　　　　　/::::::::::::::::::/:::/ ｌ:::ｉ:ｌ　　|::ｉ !:::::ｉ:::::::::::::::ｌ
　　　　　　 /:::::::::/::::::/:::/　l:::ｌ:l ..,_｜! ｌ:::::l!::::::i::::::::l
　　　 　 　 {:ｉ::::::/::::::ｲ:::/ﾞ~ ｌ::iｌ:! 　 ﾞ!ｌ' +::::ｌｌ::::::ｌ::::::::ｌ　　　　（でも、やらない夫君の名を出した。
　　　　　　 ｉ|ｌ::::::::::::::{i:/　　ｌ:/ｌ!　 ,,ｨ灯沁､!::::::l:::::::::ｌ　　　　別れた後、どこかで遇って………
　　　　　　 ﾘ !::ｉ:::::::::::! ,ｨﾁ圷　　 　 c;;;;r} ﾞ!:::/::::::::::i!　　 　それで改心したのかな？）
　　　 　 　 　 ｌ:ﾊ:::::::::ｌ″c;;rｉ　　　　之ツ/／:::::::::i:::ｌ!
　　　 　 　 　 ﾘ　ヽ、::ヽ,ゝ‐' 　､　　　　／ｌ:::/:::::::ｌ::::ｌi
　　　　　　　　　　　i}::ﾊ. ｀　　　　　　　　,ｲ:/::::::::ｌ:::::ｌ i
　　　　　　 　 　 　 ｉｌ:::::ヘ ., 　 ´ ｀　　／ ｌ/::::::::::!:::::ｌ　i
　　　　　　　 　 　 /ｌ:::i:::::::::::＞　.. ．'´　　/:::::::::::!::::::ｌ 　i
　　　　　 　 　 　 / ｌ:::ｌ::::::::::i:::::, -,}　　　 /::::::::::::ｌ::::::::ｌ.　 i
　　　 　 　 　 　 /　l:::ｌ::::::::::l‐'´ y'　　　,/:::::::::::::ｌ｀ｰ ､ｌ　　i
　 　 　 　 　 　 /　 !::ｌ::::::::::ｌ　 /　, -／/:::::::::::::/　／::ヽ.　 i
　　　　　　　　/　　ｌ::ｌ::::::::::ｌ　/ 　／　/:::::::::::::/／::::::::::::} 　 i
　　　　　　　 /　　 ｌ:ｌ:::::::::::ｌ / ／　　/:::::::::::::/´:::::::::::::::::i　　 i
　　 　 　 　 /　 　 l:ｌ::::::::::::l ｌ/　 　 /:::::::::::::/::::::::::::::::::::::l　　　i



それなら信じる気持ちも少しは残しておかなければならない、と
少しだけ心に余裕を持たせてから再び走り出す。

あの日から離されていた、仲間達の元へ。
35 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:47:22 ID:AqBReZrA
八３４８．
そして、出番を終えて肩の荷が下りた真紅は、
冬の雨に全身が濡れている事も苦にならない様子で
一心にやらない夫とジュンの無事を祈っていた。

彼女は首飾りの石が完全に光を失い、
沈黙してしまっているのが気がかりになっているのだ。



　　　　　　　　　　　　　　│_/l′
　　　　　　　　　　　　　　　!l'
　　　　　　　　　　　　 　　├
　　　　　　　　　　　 　,ｒ'´lllllll｀ヽ
　　　　　　　　　　　 /lllllllllllllllllllllヽ,
　　　　　　　　　　　!lllllllllllllllllllllllllll|
　　　　　　　　　　　|lllllllllllllllllllllllllll|
　　　　　　　　　　　illlllllllllllllllllllllllﾉ
　　　　　　　　　　　 ヽ､||||||||||／



本来は自分の身を守る為にこれを持っていたはずの、
やらない夫の防御は万全だろうか。

体力回復の霊薬を一本持たされただけで、
魔術師の援護がないジュン達は、果たして大丈夫だろうか。



　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／::::r‐､:ﾉ:::::::::::::::::::::::::::::::ﾉ
　　　　　 　_　 　 　 　 　 ,.ｨ'´:::::／!_‐- ､:::::::::::::::::::::::::（,､
　　　　　 /:::｀ヽ＿_,.ィ三/::::::::::::r‐､ﾉ　　 ｀ヽ､:::::::::::::::::ノ
　　　　r‐'､::::::::::::::/圭ﾐ/:::::::::r､:_） l　 l　　　 ヽヽ:::::::::ゝ,
　　　　l:::::::｀:::::::::/圭/´::::::::::ゝ´　 l　 l　　　　 ヽ ヽ:r‐'´
　　　 ノ::::＿::::::/圭/:::::::::::r‐､ﾉl　 l l　l　　　　 l l　 l!
　,ｨﾀ'l:::::::::::::::｀:l圭ﾐ!::::::／:ゝ､ l l　 l l　',　　　 l l l　 l
. lﾐ! /ヽ;::::::::::::::l圭ﾐ!::::::::::r‐‐'_ﾑ斗孑十弋､　 l l!　/　　　　（やらない夫、ジュン―――
　ゞ="〔＿:::::::::::l圭ﾐ!::::::::::｀)lヽl　 ィ示ｮ` 　 ｀ｭ! l／　　　　　どうか無事に戻ってきて）
　// 　 l __）::::::::ヾr‐'ｰ､:（´ l　　　`辷:ﾘ　　　ｶ
.//! 　 ﾄ､ゝ-､:::::::lﾉyヽ 〉:ﾉ. l　　　　￣　　　 ヽ
./ l　　 l. ヽ　 ゝ'､:ゞｰ.'´::） l.l　　　　　　　　 _´!
　 l　　 l　　＼　ゝ‐ヾ､圭.l l.l 　 　 　 　 　 ´, '
.　l　　 l　　　 ｀十-､__≧/ l ﾄ､　　　　　　／
　l　　 l　　　　　l　r‐‐'´.l　l圭ミ＝==,ｨ＝x､
. l　　 l　　　　　l　 〉:::::::/ /圭圭圭ﾐ/ヽ圭圭ゝ､
. !　　 !　　　　 l ／:::::::/ /圭圭圭ﾐ〈 ゞ〉圭圭/
.l　 　 l　　 　 ／:::::::／ /:《圭圭圭圭!´圭＝彳
l　 　 l 　 　 /:::::::::〈　｀ー‐-､圭圭圭l圭圭》
l　 　 l　　 /::::::::::::::::￣￣｀ー-､二`>圭/
　　　l.　／::::::::::::::::::::::::::ヽー´＜二圭圭ミﾄ､
　　　l /::::::::::::::::::::::::::::::::::::￣＞ ／圭圭圭ミﾄ､
. , -‐'´::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝﾉ圭圭圭圭圭ﾐ!



この流れはもはや止められない。
だが、残り二つの戦いを制してこその復権だと思っている彼女は、
南の空と、城とを見比べてただひたすらに願った。
36 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:48:09 ID:AqBReZrA
八３４９．
ちょうどその頃、言葉と入れ替わるように城の横手から一階に入り込んでいたやらない夫も、
おそらく何らかの戦いはあるであろう友の身を案じている。

だが、親衛騎士になってからのジュンの成長は目覚ましかった。
自分との修行期間と同じか、それ以上に―――



　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , ------ 、　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／ ヽ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　＼　　　　　　　　　 　 　 ／ヾ ／
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i 　 　 　 　 　 　 i　　　　　　　　　　 ／ヾ／
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　 ＼ 　 　／　 │　　　　　　 　 .／ヾ／
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｜ （ ●） （● ） ｜ ､-- ､　　　／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　（__人__）　　i　　弋||ニi／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , -!　　 ｀⌒ ´　　 !-､ 　　／○||´
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |､ヽヽ　　　　　　 / / |...／ト､／弋｀||　　　　　　（あとは俺達、か。
　　　　 　 　 　 　 　 , 　―;;;;;;;―´　| |､｀ ――― ´.,| | 　｀-;;;;;--　 ､｀弋 |
　　　　 　 　 　 　 ／ ヽ 　 ▽ 　ヽ　 ヽ ￣￣￣￣/　／　　▽／ ＼　 ´　　　　　―――ジュン、冷静にな。
　　　　　 　 　 　 .i　 　　｀　-　　r―‐/＼　　 　／ヽ― ､　 - ´　 　　 i　　　　　　お前はもう、一人前の親衛騎士なんだ）
　　　　　　　　 ／　　 　 　 　 　 |　／－ ―┬― －＼　|　　　　 　 　 ＼
　　　　　　　　　>､ ｀ ー--　　　,／ 　 　 　 ｜　　 　 　 ＼　　--―　´ ,<
　　 　 　 　 　 .>､　 ｰ――‐,‐ ´ 　<＾ ＾>　　|　　 　 　 　 ｀ｰ､－――‐ ,<
　　　　 　 　 　 >､　 ｰ‐,―､´....　　　Ⅴ 　　｜　　　　　　　　 ,｀ｰ､‐―‐ <
　　　　　　 　 / 　　　／::::::i＼.　　,.　-－―┴―－-　､ 　 ／!::::::::＼ 　　ヽ
　 　 　 　 　 /＿　／:::::::::八　 Ｙ　　　　　　　 　 　 　 　 Y　　八::::::::::＼ ＿ヽ
　　　　　　　　i::::::::::::: ／:i;;;;;ヽ. ヽ　　　　　　　　　 　 　 /　 ,/;;;;;;ト:::::::::::::::::<
　　　 　 　 　 i::::::::::::::::::::/;;;;;;;;|ヽ´ ＼, -――――- ､／ ヽ´|;;;;;;;;i::::::::::::::::::::i
　 　 　 　 , - !::::::::::::::::::::|;;;;;;;/　　　　|　　　　　　　　 |　　　ヽ;;;;;;;.!::::::::::::::::::::!- ､
　　　　　 i｀ ｰ――――i;;;;/＼ 　 　 !　　　　　　　　 !　 　／ヽ;;;;i――――‐ ´i
　　 　 　 .|------i　　　.|/　　 ｀ー―――――――― ´　　　.｜ 　　.ｒ‐‐‐‐‐|　　ｶﾂﾝ…
　　　　　 .|　　　　.|　 　 .|　　　　　　 　 / :::::::::::::∧　　　 　 　 　 |　　　.|　　　 .|　　　ｶﾂﾝ…
　 　 　 　 |----- .!　　　.!＼　　　　　../:::::::::::::::::::∧　　　　　..／.|　　　.|-----|
　　　　 　 |　　 　 .i　　　.|　 .＼ 　 　 /::::::::::::::::::::::::∧　 　 .／ . . |　　　.|　　　 |

　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　o　
　　　　　 　　　　　　　　　　　　Ｏ
─────────────────
37 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:49:10 ID:AqBReZrA
八３５０．
┏──────────────────────────────────────────────┓

それは、偽りの平和の裏側の物語。

暇さえあればやらない夫だけでなく、他の親衛騎士にも教えを請うていた彼は
様々な武器の特性や基本戦術を知り、
そしてそれに縛られない者こそが親衛騎士に相応しいと知った。



　　　　　　　　　　 　 ＞'´　／　　 ∧　 　 ｜　　　　i|　ヽ.　 　 　 ＼
　　　　　　 　　　　／ 　 ／ 　 　 /::::ヽ　_,斗:.:.:.: : 　 |　　 !　　:...　　 ＼
　　　　　　 　　 　 〉 　 　　　　::ー‐^´¨　|:.: : !:.:..　ﾄ､　 |　　 :.:.:...　: :..｀ー-､
　 　 　 　 　 　 　 |　　　| 　ｉｌ　　::|　　 　 　 ! ::∧:. :. 　,=‐ｉ　　　:.:.:.:.:...:.:.:..:.:.／
　　 　 　 　 　 　 /　.:.:.:.:|　 i| 　 ::| 　 　　　 | / ,ｨ|,.イ´__ ∧　 ..:.:.:.:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　　　　/ :::／イl|　 ｌ|　 ::|=､＞ｰ=､ ｉ′|:rレ弍¨ヽ ﾄ :.:.:.:.:.:.:.:.:.／　　　　　「なるほど。
　　　　　　　　./::／　 /　　　|　　|´戈¨Ｔ |ﾄ==､||　弋__ソ‐|/.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼　　　　　 剣にも槍にも体術にもカタナにも、
　　　　　　　　ﾚ'゜ 　 /　／　 iヾヽ! 辷_ソ｣|　　 ヽ=＝＝=='　ﾏヽ.:.:r-‐'´　　　　　 二刀流にも理屈があるんですね。
　ｒr‐、 　 　 　 　 　 レ'　ﾚ'〉　! ヾﾆ==＝ ′〈　　　　 　 　 　 'ノ::;;;>
　ﾄ'　| 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣ヾﾇ、　　　　　 ｀　　　　　　　,/‐'´　　　　　　　　　 それに縛られているかどうかが、
　| 　|　　　　　　　　　　　 　 　 ￣ヽ　　 　 　 ー‐　　　 　 /　　　　　　　　　　　　一つの目安になるわけだ」
..ﾉ 　l'⌒!　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 　 　 　 　 _, ィ´
´　ノ^ヽ '､　　　　　　　　　　　 　 　 　 ｀¨ﾆt-　　-‐'　ﾄ-┐
　　／｀ヽ.ヽ、　　　　　　　　　　＿　 　/´iイ　　　　　 |/　ヽ―-- ､__
　　 ‐'´｀ヽ. ｉ､　　　　　 　 　 ／i　 ゞ7″ | ′　　 　／　 　 |　　　 　｀ヽ、
＼ 　　イ-' 　ヽ　　　　 　 ／　 i　　/　,ﾍ |＿___,_／ |―､　 |　　　　/　　ヽ.
　 ヽ.　 ″　 　 ｌ　　 　 ／-‐'´ | .//／　ヽﾄ-―/ニ,ﾉ　　＼| 　 　 /　　 ＼'､
　　　＼　 　 　 l.　,.-‐' 　 　 :　ﾚ' ′　　く !　 //　　　　　　　 　 / 　 　 　 ヾ、
　 　 　 |　　　　.ﾄ''　　　　　　! .|　r―┐　 | ,//　　　　　　:. ｌ　 /　　　　　　　｀ヽ、
　　　　 l　 　 　 l､__　　 　 　 ﾚ' 　|　　|　　i/o’　 　 　 　 :.:. !　|　　　　　　　　 　 ヽ、
　 　 　 |　　　　 |／＼　　 　 |　 　￣´　 / /　　 　 　 　 :.:.:.ヽ⊥_　　　　　　 　,.-＜}
　　 　 ﾉ　　　　｜　　 ヽ.　 　l　　　　　　{i∧　　 　 　 　　:.:.:.:.:.:.:.|＼　 　 　 ／　 　 ＼



剣を基本と喩えれば、槍は突進力や貫通力など直線的な性質を持ち、
刀であれば速度と切断力に優れる。

言葉はそれを認めた上で、その枠を超越した戦士が居る事を示唆し―――



:::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ｌ:::::::::::::::::::::ヽ
/::::::::::::::::::::/:::::::::::::::::::ｌ:::::ｌ:::::::::::::ヽ:ﾞ:,
:::::::::::::::::::::/::::::::::::/|::::ｌヽ::ｌ::::::::ｉ::::::::',::}
::::::::::::/:::::ｌ::::::::::::/ .ｌ::::ｌ_ }::ｌ:::::::::ｌ::::::::ｌ:|
:::::::::::ｌ:::::::ｌ:::::::::/ _,.ｌ:::/ ｀!::!:::::::::|ｌ::::::ｌ:ｌ
::::::::::ｌ::::::::ｌ:::::::/'´ .ｌ::/_　ｌ::ｌ::::::::::l ｌ::::l|ｌ　　　　「そうね。
::::::::::ｌ:::::::::ｌ:::/ 　 //气, ｌ:ｌ:::::::::::ｌ ｌ::/l!　　　　 たとえばやらない夫君の持つ両手剣なんかは、
:::::::::::ｌ::::::::l|::{ ,;彳/;rｌ　 l∧:::/|:! ｌ/　!　　　　 切断すると言うよりは叩き付けるって言った方が一般的よ。
i:::::::::::ｌ:::::::ｌｌ::i　／0j ｌ 　!　ヽ、ﾘ
:l:::::::::::l::::::l ｌ:i　　｀‐-　　　　 冫　　　　　　　 でも、彼はそうじゃないでしょう？」
:::ヽ::::::::ｌ::::ｌ ヾ　　　　　　 　 /
:::::::::ヽ::::ｌ::::ｌ　｀　　　__　,.　ﾉ
::::::::::::::ヾヽ:ゝ　 　 　 　 ／
ｉ:::::::::::::::::::｀:ｌ ､ _　　　 /
.ｌ::::::::::::::::::::::::ｌ/　￣￣
　!:::::::::::::::::::::ヽ
‐-ヽ:::::::::::::::::::::＼
　　 ＼::::::::::::::::::::::＼
38 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:50:12 ID:AqBReZrA
八３５１．
先日、やらない夫がこんなのただの芸だけどな、と言って見せた神技が
瞬発力と切断力に優れたカタナや細剣ではなく、
彼が持っているバスタード・ソードで行われた事を思い出したジュンは、肩をすくめて同意する。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　　　「はい。　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l
　　　 放り投げた金貨を、　　　　　　　　　　　　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　 落ちてくる間に五枚に下ろした時は　　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　 ぶったまげましたよ」　　　　　　　　　　　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　|　　　　　 |　　|



./::::i.:..:i.:..:.:i.:.:.:/ /.::///:/　　 .|.:i.:.:i.:.:.:.:i.:.:.
|:.:.:i.:.:.:i.:.:..:i.:.:/ //// 'メ__　　 .|:.ﾄ, i.:.:.:.:i:.:.
|:.:.i.:.:.:i.:.:::i:.:{i:.ﾝ´/´ /　　`'''ｰ.f;| |.:i.:.:.:i.:i:.:
|:.:ﾊ::i.:.:i.:..:レiｆ´/.／　　　　　 .|i'.`|.:i.::.:i.:i::.　　　　「私も、調子の良いときに
.ヾiヾi.:.:i.:.:i{| i　　　　　 　ｧ--=ｪ､ |ﾘ.:.:i.:ﾘ:.　　　　 三枚なら出来るんですけどね。
　ヽ､{:.:ﾄ;:::ト､ｒ;ﾆﾐ　　　　 "￣＾`ｿ/;:ｲ.:i.:.:
　　　.|ﾄ;ヾ'ﾐ､":::::　 　　　　::::::::　/'.|.:i./.:.:　　　　　『飛燕剣』の訓練には良いですから、
　　　 |i.:｀ﾍヽ. 　　｀ .__　　　u　　/i.i:/:.:.::　　　　　 ジュン君もやってみるといいですよ」
　　　 |.:i.:.:.:i.:i｀;;.､. 　　　　 　　 .ｲi/i/.:.::.:
　　　 .|:.i.:.:.::i:i.:i.:.:i｀;;...､._　,　'´ 　|i.:i.:/.:.:.:
　　　　|.:.:i.:.:.:i.::i.:i.::i.:.::.:;:i 　　　　.|:.i/.:.:.:.::



斬撃の軌道を途中で鋭角に変えて
Vの字型の攻撃を刹那に繰り出す剣技の事を言った彼女は、
もちろん五枚は極端な例ですけどね、と困り顔で前置きした上で、
39 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:51:10 ID:AqBReZrA
八３５２．
ジュンの持つ類い希な素質と、それを活かした戦術を磨くように言った。



　 |/.:.:.:/.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:／.:.:.:.::／.:.:.:.:.: /<ヽ.:.:i.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　.|i.:.:.:/.:.:.:.:/.::.:.:.:.:.:/.:.:.:.:／.:.:.:／;;//iﾍvwｖ| :|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　|.:.://.:.::.::/.::.:.:.:.:/.:.:.:／:.:.:／;;／///　　　 .|.:|.:.:.:i.:.:.:.:i.:.:.:|
　|:.:| |.:.:.::.:i.:.:.:.:.:::i.:.:.://.:::..／;;;／.//　　　　 |:.:|i.:..:i.:.:.:.:i.:.:.:|
　|:.| .|.:.:.::.:i.:.:.:.:.:i.:.:/ｰ;;／ソ／　// -＝=､_.|:.| |.:.::i.:.:.::i.:.:::|　　　　 「それはともかく。
　.|:| .|.:.:.:.::i.:.:.::.:i.:.:ﾑ;ｒ-y,ﾈ'　　//　-_､,,,,__ .|:;ﾍ|.:..:i.:.:.:i.::..:|
　 ii　|i :i.:.::i.:.:.:.:|ﾔｹiﾃうﾄ`　 ,/'´ 　'´,ｹﾈﾃﾞﾇ;., |.:.:i.:.:/|.::.::|i　　　　 ジュン君はとても良い眼―――つまり『分析力』を持っているわ。
　 .` |iﾄ,.:i..:i.:i.:..:|{_|;:::::`}:|　／　　　　　|{::::::f;;ｲｿ:.i.:.ｲ./.:.:.::|i　　　　 私達と並ぶか、それ以上の。
　　 |i|i.:.::ﾄ,.:iヾ;;:| ｬ:::::,ソ　　　　　　　 .ｾ_:::::ソ/.:.:/.|/.:.:.:.:|.i
　　.|i|i.:.:.:;iヾ;ヽトヽ￣　　　　　, 　　　　.~￣ /イi.:.:|i.:.::.:.:.| .ｉ　　　　その眼を活用し、
　 .|i |:i.:.:.:.:i..:`,ﾐ:ト､　　　　　＿＿　　　　　 ' /V::./.:.:.:.:.:||　i　　　　戦いを有利に組み立てる事が出来れば一段………
　 |i .|.:i.:.:.:.:i.:.:.:.:トト`: .､.　　ヽ __丿　　　 , ｒ'´.:::|.:.:/.:.:..:.::||　i　　　　………いいえ、二段上の相手にも互角に戦えるでしょうね」
　|i　|:.:i.:.:.::.:.:i.:.:.::i.:|;:;:;:;::`i 　､ __　, .　ｒ'´;:;:i:;:;;:/:/.:.:.:.::.:.:|.:|　ii
. |i　|;:;:;i:;;:;:;:;:;:i;:;:;:i:;|_,／ i　　　　　　 :ト､;;;;i;;;//;:;:;:;:;:;:;:|;:;::|　.ii
.|i　.|;:;:;:ﾄ;:;:;:;:;:;:;:i;:;::i:|　　　　　　　　　　　＼/';: /;:;:;:;:;:;:i;:;:::|　 .ii
|i　.|;:;:;:小;:;:;:;:;:;:;::i;:;::|＿,,...,,_　　　._,,,＿＿:/;::/;:;:;:;:;: /:|;:;:;::|　 .ii
　 ﾉ'´　|:ﾊ;:;:;:;:;:;:;:;:i :|`ヽ,　　　　　　 , ｒ'´/;:/;:;:;:;:;;:/;:/＼;::|　　ii
. /　　 |:| .ヽ,;:;:;:;:;:;:;i:|= =`=､　　 ,ｒ'´　_./;:/;:;:;:;:;;:/;::/　　 ＼　 .ii
/　　　|:|　　ヾ;:;:;:i:;:;::|-＝ﾃ＝Yd ＜´/;:/;:;:;:;:;::/;:;:/ー-　　 ヽ　ii
　　　 |:|　　　ヾ;;;;i;;;;;;| ｒ彡ﾊ:/　ハア//|;:;:;:;:;:/;:;:/　　　　　　 |　ii



それはやらない夫も思っていた事で、
自分の方向性を見出したジュンは
それからもめきめきと実力を高めていく事になる。



　　　　　　 　 ,
　　　　　, - " |
. 　 , - "::::::::::::|＿＿
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　　|:::::::::::::::::::::|;;●）|　　　（……………）
　　|:::::::::::::::::::::|ﾉ､__)|
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. 　 　 　 ｀ - ､|


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│　　出る機会を失って　　　　　　　　　│
│　　立ち聞きになってしまった人　 　 │
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42 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:52:09 ID:AqBReZrA
八３５３．
今のジュンなら、並大抵の戦士では相手にならないだろう。



　　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　..／　　　　　　＼
　　　 　　　　　　　　　| 　　　　　:　:::::::|
.　　　　 　　　　　　 　 |　　　　　:::::::::::::|
.　　　　　 　　　　　　　|　　　 　 :::::::::::::|　　　　（もう少しだ。
　　　　　 　　　　　　　 { 　 　　 :::::::::::::::|　　　　 もう少しで俺は、
　　　 　　 　　　　　　　{ 　 　__＿＿／　　　　　一つの約束を守る事が出来る―――）
　　　　　　　　　　　　　(, .／_.,r'ﾆﾆ'r
　　　　　　　　 　　　　ﾝ:`三ｰ`_:ニﾆ:'r
　　　　　　　　　　＜:::::::::::､ニ,´::::::::::::::::＼
　　　　　　　　　　,.-''´::;:､::-;::::::::::::::::::::::::ｒｌｯ
.　　　　　　　　　ｒ{:::⊂-='"::::::::::::::::::::::::::::ｆｧ
　　　　　　　　　 ｒ!:::::ｒ:::{ﾛ}::っ:::::::::::::::::::::/
　　　　　　 　 　　ｌ::::::::::::::;:::::::::::::::::::::::::::ｌ
　　　　　　　　　 /::::::::::::/::::::::::::::::::::::::;::ｌ
　　　　　　　　　/:::::::::::/::::::::::::::::::::::::;::::ｌ
　　　　 　　　　/:::::::::::/:::::::::::::::::::::::::;:::::!
　　　　　　　　/:::::::::::/::::::::::::::::::::::::::ｊ:::::!
　　　　　　　 ｆ::::::::::::/_,. -――''"Ｔ::::::;'
　　　　　 　 /:::::::::::/＿_,,,..､-ｒ‐''´';:::::;'
　　　　　　/::::::::::::/::::::::::::::::::::ｌ:::::::::';::;'　.
.　　　　　/::::::::::::/ゝ:::::::::::::::::::ｌ::::::::::Ｙ.



ならば後は自分が上手にやるだけだ、と気合いを入れたやらない夫は
43 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:53:09 ID:AqBReZrA
八３５４．
降りしきる雨を一度だけ見やり―――



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　　そして―――

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へへへへへへへへへへへへへへﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍﾍ　　 |
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赦されざる者が待つ、最後の舞台へと向かう。
44 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/11/12 21:54:09 ID:AqBReZrA
八３５５．
彼らを正式な裁きの場に出す必要は残っていない。
もはや、動機も理由も聞く必要は無い。

ただ二人に望まれる事、それは一刻も早く表舞台から姿を消す事のみ、だ。



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　　　　　　　　　　　　　.　　　　l __ノ' i!i!i!i!i!"ｰ--　　　　　　　　;:;:;:;:.|
　　　　　　　　.　 　 　　　　　　L!０　）li!i!i!i!i!|（０　）l　　　　　　;:;:;:;:;:|　　　　　「イチジョウ、ギャブレット。
　　　　　　　　　　　　　　　　　j`ー’i!i!i!i!i!i!i!`ー "　　　　　　　;:;::;;:;:|
　　　　　　　　　　　　　　　　 /;:;:;:　　ｊ 　　;:;:;:;:　ヽ、 　　 　 　..;:;:;:;:;:|　　　　　この世の全てに、お別れの挨拶は済ませたか？」
　　　　　　　　　　　　　　 　 丶､_＿_ﾉ"ヽ、＿_＿__ﾉ,ノ'!}　　　;:;:;:;:;:;:|
　　　　　　　　 　 　 　 　　　　　ヽﾊ＜/Vヽ jv-,_,.ｨﾉv'ﾘ　　　;:;:;:;:;:;:;:|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ゝ-､} ,.´-‐ｧ￢‐,,'/　　　;:;:;:;:;:;:;:./
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　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j∨　　 ,}ヽj／　　 　　;:;:;:;:;:;:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊｆvﾍﾊﾉゝ'_,.　　 _＿＿＿_ノ |＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽr ´　　　 　 厂..:..:..:..:..:..:..:.::.::.::.::￣
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　　　　　　　　　　　　　　 /..:..:.:!|::.Ｌ_　　　 |ﾘ.:/..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.::.::.::.::.::.::.::.:



国王が逝去してから実に半月。
その間、十分過ぎるほど国主と大騎士団長の座を味わった二人に、
裁きの刃が振り下ろされるのはもう間もなくの事。

たとえ彼らが最後の抵抗を見せようとも、結果が覆る事はないだろう。
未来はすでに、選ばれてしまったのだ。

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45 名前： ◆FrtuoSIf66 [sage] 投稿日： 10/11/12 21:54:52 ID:AqBReZrA
本日の投下は以上になります。
閲覧、合いの手ありがとうございました！

次回は第八章その６になります。



第八章　嵐の中で　その６へ

1. 2010/11/12(金) 22:00:22|
2. やらない夫は約束を守るようです
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