211 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:03:09 ID:ecndC5w8
六９９．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　―――今の状況を利用したら、革命なんかも成立しやすいって事です。
　　　国王様の病死に合わせた動きもあるかもしれません。

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　 　 　 　,,-;―;;;-,,､
　　　 　／;''- ― - ､;ヽ
　　　 /／　ノ　　＼_ }l ヽ
　 　./〃 （●） 　（●）l |　　　　　「革命！？
　 . ｲ| /.∪ （__人__）　ﾙﾘ
　　 小|| 　　｀ ー'´　　l,/　　　　 嫌だお、とーちゃん達だって
　　 ﾊ小.　 .　　　　　／　　　　　今の国が大好きだって言ってるお！」
　,,.....イ.ヽヽ、___ ーーノﾞ-､.
　 　 　　　　　　　　　　　　i




革命。
共和制による人民主権の政治―――に、見せかけた主権の奪取。
ギャブレットの屋敷に居た時に何度も聞いた言葉が
恐ろしい意味だと今更ながらに知る彼女。


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｶﾗｰﾝｺﾛｰﾝ♪
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｶﾗﾝｺﾛｰｰﾝ♪


　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　/　　／　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　 /　　/ 　 / l/　 i　、　　　 i　　　ヽ、
　　　 　 　 　 　 　 　 i　　 l　　/　i !　 |　　　　　 |　　　　 i
　　　　　　　　　　 　 |　　 !　　i　川　i !＼ヽ、 　 !　 l|　　 |
　　　　　　　 　 　 　 i　　 |　　 V-‐Vﾚﾘ　丶ヽ　∧　/ 　 il!
　 　 　 　 　 　 　 　 |　V^i　　　iィj了Y　　 　 V　 VV　 /ﾘ　　　（もしかして、ギャブレットは―――）
　　　　　　　　 　 　 i 　 ヽj　　　|廴jン　　　　 f了ｿYﾚｲ
　　 　 　 　 　 　 　 |　　　|　l　　|　　 　 　 　 , ー′ハ/
　　　　　　　　　　　|　　　|　li　　|　　　　　　 ´ 　　///
　　　　　　　　　　　i　 　 |i　l 　　!ヽ 　 ｰ 一 　 ／iﾚ′
　　　　　　　 　 　 ﾉ　　 /i!　i　　 i　 丶 ＿　イ　　l|
　　　　　　　　　 /　　 /　l!　V　! |　　　/ l 　 |　　l|
　 　 　 　 　 　 /　＿/__ノ|i　　　l i＞、」ヽi　　!　　|
　　 　 　 ＿_／／ヽ、　　 |l　　　lﾘ　/￣i}ヽ、 l　　ヽ
　　　　/　　￣ヽ　＼＼ 　 i!　　 |　/　　 |!　 ＼_　　 ＼



自分が荷担していた事の重大さと、
そこから救い出してくれた彼への感謝の気持ちを思い返した所で
終了を告げる鐘の音が届いてきた。
212 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:04:09 ID:ecndC5w8
六１００．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　ハハハ、国王様が殺されたのならともかく。

　　　病死された際に釣り合いが取れていないってだけで、
　　　いきなり国の成り立ちが変わる訳じゃありませんよ。

┗──────────────────────────────────────────────┛


少年に笑った教師はしかし、内心では別の確信を持っていたものの、
カーディナルから七百キロ離れたこの町にはまだ
王都で何が起こっているかの情報は入ってきていない。




.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀､.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:'ヽ､
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀ゞ
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,!.::.:.:.:.:;:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾞi
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.:,':.:.:.:,;:.:.:.:.:.:.:.:i.:.:.:.:.:.:jk　　　　　（だが………
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l|.:.:.:.:j!.:.:,;:;:;.:.:.:.:.:i.:,j!.:i!.:.:.:jﾄ　　　　　 もし、もしも。
.:.:.:i.:.:.:.:;:;:j! i;.:.:,j!ﾞ.:/;:;:;:;:ﾉ.:,j从ｨ;j.:,ｲﾉ
i!.:.:i!.:,;:;:;:;:;!;;:j.;:;;ﾞ,ｲ;:;/^);:j/;:;:;:;:ﾞﾉ''´　　　　　　　国王様の死に何か不審な理由があるとしたならば、
;j.:,j;:::;:;:;:;;:;:i;:;:;:;:;:;,r'　/;:;ｲ''ﾞ´　　　　　　　　　　 文官の叛乱は確実に起こるだろうな。
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;,'´　 /;'´j
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:j　　 ﾘ　 ,!　　　　　　　　　　　　 五年？いや十年？
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ﾘ　　 　 /　　　　　　　　　　　　　ゆっくりとだが、確実に文武の天秤は傾けられていた。
;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/ 　 　 /
;:;:;:;:;:;:;:,､-‐'´　　　 ,!　　　　　　　　　　　　　　 王政の中で力を持ちすぎた官僚が国政を腐らせる例など、
ゞ;;ﾘ;:;:;j ､　　　　　/　　　　　　　　　　　　　　　長い総歴のなかでいくらでもあった事だ―――）
｀ﾞ｀ﾞゞﾘ' :｀`丶､　/
＝＝＝=ー--‐'ー一=rーー───‐‐──‐‐‐-ｭ
　　　　　　　　　　　　　｀ーﾟーーー───--､'"´ ｀ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　 ｀､
　　　　　　　　　　　 　 　　　　 　 　 　 　 /　　　　　　　｀,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　　　　　 ﾞi､
　　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 　 　/　　　 　　 　 　 　 ゝ､



あるいは十メートルと離れていないサクラの知識と
元は王都大学の超優秀な学者であった彼の英知を共有させていれば、
事前に何かを把握できたかも知れなかったが―――
213 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:05:09 ID:ecndC5w8
六１０１．
明日の朝、町に飛び込んでくる情報でそれを知る事になる。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,r ''.:.:　 ,ｨｲ彡'"´.:. ｀`ヽ .:.:.::::::::::::::.ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /"´　. : : : : ´¨｀`: : : : :::.:.:.:.:::::::::::::::::::::::ﾞ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〃　 . : : : : : : : : : : :, : :, : : : :: :;;;;;;:.:.:.:.:.:.:.:.:.',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〃　 . : : : : : jii l l ﾄ､ ', : '; .:.:.:.:.:.:;;;;;;;;;;:.:.:.:.:.:.:.:',
　　　「それでは、本日の授業はここまで。　　　　　　　　 　 　 l1　. : : : : : :jii l i ﾄﾄ､;;;;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;:;:;:;;;;;;;;;;;;;;;;;`､
　　　明日は古代魔法文明による言語統一と　　 　 　 　 　 　l1: : : : : : ｨｲﾘ 川 ヽﾄ､;;;ヽヽ;;;＼｀ヾ;:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞ,
　　　通貨統一について学びましょう」　　　　　　　　　　　　 　 /ｲ: : : : ;.ｨｲｿ　　 '､ヽｰ＝＝==-､ミﾐヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃,': :.j ｨｲ ￣二ﾆヽ 　 ';.:.:-ﾓﾃ=`ヽ )ﾊ;;;;;,r‐ ､;:;;;;;;;j!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　lﾊ｛ i j j;;', 　ｨてﾃﾝ.;,　　　｀`ﾞﾞ ￣` 　　!;;;;ﾚｲ　!;:;;;;;;;!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 `ヾ从;;;;;',　　"ﾞ ´ ,′:　　　　　　　　ﾉl/ﾘ )　,!;;;;;;;;!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 `ヾ从;;;',　　　　ﾉ　,::.　　　　　　　　′ﾉｿ/;;;;;;;;j!
┌───────────────┐　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀ﾞﾞj!　　　(　 ｀::.:.　　　　　　　　､_ノ;;;;;;;;;;j!
│　　エスメラルダ貴族学級教師　　　 │　　　　　　 　 　 　 　 　 　　ﾉﾊ　　　 `ﾞﾞ"´　　　　　　　　/, j;;;;;;;;;;;j!
│　　ウェンリー＝ヤン　　　　　　　　　 │　　　　　　　　　　　　　　　　 jﾊ　　　 ｰ==＝…'　　　　/ ,ﾞ ｛;;;;;;;;;j!
└───────────────┘　　　　　　　　　　　　　　　 　 　ﾞ､　　　､ ___ ,,　　　　 / .,′ ;,;,;ｯﾂ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　 　 　ﾞ､　　　　　　　　__ /_ /＿ ヾﾂ-‐…┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/´￣ ｀¨` ー-｀ﾄ､　　 　 　　/ 　　　　　　 .:. :.:.:.:.:::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 //.::::',　　　,．‐くｿ　` ー＝ﾆ,'.::::::.!　.:r‐ '''"´rｶ!.:.:: ::::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,ﾉ/.::::::::i　／　,r ‐-｀y ´￣｀`y.:.::;:;;′.:l rｶ `¨　　.:.:.:.:.:.:::L．-‐
　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　　　　, 　 =‐-'´.:.:::::::::::::ﾚ′ / /.: : /　　　　l/.::;;;;;;′.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　''"´ ￣　　 /.:.:.:.:::::::/　　　　. : :/　　　　 /.:::;;;;;′.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./　　 .: :
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / .:.:.:::::::::｛　　　　　　　 　 　／.:;:;;;;;/　　. :. :. :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. 　　 .: .:.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　,′. .: .: .:. :.`ｰ--------‐ '´　　　　　　　　　.: .: .:.:.:.:.:.:.:.　　. :.: .:.


216 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:06:09 ID:ecndC5w8
六１０２．



＿＿＿ ＿＿＿＿_ 　　　 ＿＿＿＿_ ＿＿＿＿_ 　　　 ＿＿＿＿_ ＿＿＿＿_
／　 　 ||／／　 　 ||　　　||／／　 　 ||／／　 　 ||　　　||／／　 　 ||／／　 　 ||
＿＿＿||＿＿＿＿||　　　||＿＿＿＿||＿＿＿＿||　　　||＿＿＿＿||＿＿＿＿||
￣￣￣||￣￣￣￣||　　　||￣￣￣￣||￣￣￣￣||　　　||￣￣￣￣||￣￣￣￣||
..　　／d|　　 　 ／ ||　　　||　　　　／d|　　 　 ／ ||　　　||　　　　／d|　　 　 ／ ||
　／／ ||　　 ／／ ||　　　||　　 ／／ ||　　 ／／ ||　　　||　　 ／／ ||　　 ／／ ||
＿＿＿||＿＿＿＿||　　　||＿＿＿＿||＿＿＿＿||　　　||＿＿＿＿||＿＿＿＿||
￣￣￣￣￣￣￣￣　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣　　　 ￣￣￣￣￣￣￣￣￣

／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l
.＿＿__／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／| ＿ _ _　_
＿＿_||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||
.￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l
／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|
／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||
　 . ／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l
　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|
　 _|||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||
￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l　　　.／ｌ／￣￣￣／l
.＿__／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|　　　ｌ／＿＿___／:／|
＿_||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||　 　 |||＿＿＿||／　!||
_　 ||. 　 　 　 　 l||　 　 　 ||. 　 　 　 　 l||　 　 　 ||



　　　　　　　 　 ／　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　/　/ 　 　 /　　　　 ヽ　　＼
.　　　　　 　 /　 ′　/ /| l i 　 　 　 ',　　　 .
　　　　　 　 ′ 　 ｉｌ | | ｌ |{　　　　｜ｉ　　｜
　　 　 　 　 |　 ,|　　 lj⊥Ｎ┼ヽヽ.　,小|　i | |　　　「ヤン先生、また明日！」
　　 　 　 　 |　l |　　 ｌィﾆ下　　 ｿ}厶jﾉ| ///
　　 　 　 　 |　Ｎ　　 ｌ 辷ｿ　　　　ﾄｉ| Ｖイ '
　　 　 　 　 l 　 |　　 l |　　 　 　 j ｀　{　|
　　　 　 　 .′　l　　 l |　　　ｰ-　 　 ﾉ /
　　　　　 /　　　| ｉ　 l |丶.　　　　／l /
.　　　　 /　　　/| ｌ　 ｌ | 　 ｀7T ´l　 ｉ{
　　　　/　　 _厶| ｌ　|‐-､_{-l　 ｌ　 ヽ
　_____厶＜　 　 | ｌ　|　厂`ﾊ　 l　 　 ＼
/　／　　　 ＼　ヽヽ｜|/　　{　丶Ｌ ＿_　 ヽ
　　　　　　　　ヽ　　}ﾉ/　　　＼　　｜　 ＼｜



もともと九歳までの、最低限の一般教養しか学んでいなかったサクラではあるが、
夢も希望もない、ただ虐げられるだけだった七年間の奴隷生活を
取り戻すかの様に夢中で勉学に励んでおり、
218 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:07:09 ID:ecndC5w8
六９７．
元々面倒見の良い性格とあって七歳から十二歳ぐらいの子供達とも仲良くやっているなど―――



　　　　 　　 　 　　　　. -－- .. ＿
　 　　　 　　　　　　／.::;;;〈{薔}〉;;;::.＼
　　　 　　　　　　／::/,　ヘ ,＿／ ヽヽヽ
　　　 　　　 　　/　 /／ ＾|イ .ｌ |´ ｀ll }ヽヽ　　　　　「サクラねーちゃんまた明日！」
　　　　 　　　　[:水〃 _ノ 'll | ヽ_　　 ヽ水］
　　 　　 　　　　 ｲ| ｌ / （≡） 　 （≡）,ﾙﾘ
　　 　　　　 　　 小| 　// （__人__）// l,/
　 　　　 　 　 　 ﾊ小　　 　|r┬-| 　／
　　　　　　　　 　,.-'".　　　｀ ー'´　.-＿＿
　　　　　　　 ,'''"　　　　 　　　　　　　　　　ヽ


　　　　　　　 　 　 　 　 _,　 -──‐- ､､
　　　　　 　 　 　 　 　 入 ｀ヽ￣｀ヽノ二ﾆy‐-､
　　　　　 　 　 　 　 ,r' /.::::>､.:.:.:::::::{,/⌒Y⌒ヽﾄ､
　　　　　　　　　　 /　/.::::/　 ＼.::::（　,〈男〉､ / j〉　　　「サクラさん、さようなら」
　　　　　　　　 　 ,′,ｲ／⌒　　　⌒:ゝ彡ﾆミノ;ｲ
　　　　　　　 　 　!ﾚｲ/　（●） 　（●）ヾ､ イ:::i:/
　　　　　　　　　 〈川j　 　　　__´___　　　ﾞ,;;;;;;;ﾘ
　　　　　　　　　　｀ゞj!　　　　`ー'´　　　　i;;;;/
　　　　　　　　　　　　＼　　　　　　　　　／



　　 　 　　　　　. '　.　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　/　 /　　/ 　 　 　 　 　　　 ヽ
.　 　 　　　　/ 　 i　　/　　iﾄ、　　　　 !　　　ヽ.
　　　　　　　i　　 ! 　 i.　l　ｌli ヽ、 　 　!　 !　 .　.
　　　　　　　l 　 _! 　 lｌ　l__ﾘﾊハヽ.　 ﾊ　 !. ｌ ｌ　}　　　「水銀夫君に金糸夫君、また明日ね」
　　　　　　　ｉ　/ |　　l|,ｨテ〒k　Vﾊノ ﾅメ　iハﾉ
　　　 　 　　l　ゝ.|　　ll {cr' ｌﾉ　　　 ｲr'ﾄﾘ　ﾘ}
　　　　 　 　l　　 ! 　 l| ´￣ 　 　 　└''ｌ|. //
　　　　　　 /　　 ! 　 l|　　　　､___. '　　ﾘｲ/
.　　　　　 /　　 /! 　 l|＼　　　　　 . イ .ﾘ'
　　　　　/　　 / l! 　 l| 　 `　　_ ＜l　l　|
.　　　　/　　 / /l! 　 l|___ 　　 //! .ｌ　l　|
　　　 /　　,. - '´l! 　 l| 　 ＞=く. l　l　l　|
　,. - '～'´＼　　l! 　 l|　〃 　　iト､j　ｌ　|
ノ　　　　　　 ヽ. i!　　l|　{l 　 　.ﾘ　 `ｰrrト、

220 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:08:09 ID:ecndC5w8
六９８．
まだここに来て三週間ほどであったが運良くまともな働き口も見つけられており、
目的のある人生を噛みしめての毎日はとても充実した物となっていた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _.. - ― -　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／ 　 　 　 　 　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.ｲ／,　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃/,' //　 　 / ,　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊ.i | {.　　 / /!　ｉ. }!　 　 　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 从l_ﾊ. ／７メ ノ 仆､_　　,.１
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　}i｣` 　 'x=､ﾉベ.}三ﾆィ叭}
　　「いけない、先生に質問していたら　　 　　　　　　　　　　　　_ ｨ′/ｒ　　　 }__ﾉ》　 jラ'´r介ｉ |
　　 遅くなっちゃった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,､ － ' "´ /　:∧ヽ .__　　　　 く／// l |_|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　'´　　　　　／　 /　ﾊ　　　　　　_,辷7// //!
　　 早く戻らないと………」　　　　　　　　　　　 /　　　　 　 ／　　 ,'　/ /`ｧ┬‐　 '　{　 〈/ 〈/ i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 '　　　　　／ ／　, '　/ /　ﾉ_r｝　　　 ／／ /!　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {　　　　 ,.'　 /　 ./　 / / 厂ｲ|ir┬‐／／{. / ,!　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　 /　 /　 :/ .〃　　{　/,ﾊ|　l / / ＿入/　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,'　 / 　 / //　　　∨//jﾊ ヽ/'´ ,. -- ﾕ　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 ｉ　/　　/ //　　　 /l// |/ ∨{. /　　　　ヽi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 | :;　　/ /.,'　　 ／ / |／　 　 /　　　　 ,　 〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 V　 / /　!　 ,ｲ{　/　｝　　　　∨　　　　}　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.{　{.　 i. / .{{V Oﾉ　　　　　}　 　 　 l　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ!　 〈　 l　　　　 　 |　 　 　 !｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ヽ.　　　 　 |　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ.} ｰ　イﾉ |　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !∨　 厶ｲ}　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　} ｌ　　∠ｲ| |　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 | !　 ＜.　| ヽ　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ﾉ } 　 r―ﾍ.　　　 ヽ〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　ﾘ 　 ￣￣|　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 〈__/:|　　　　　| 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/:::::|＿＿＿_,|.　　　　 |



彼女もまた、やらない夫と言う船に掬い上げられて
運命を良い方向へ誘導された一人であると言えるだろう。

221 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:09:08 ID:ecndC5w8
六９９．
いつもより少し遅れた帰宅。



.:i|.:i|.:i|.:i|　　　　　　　　　　　　;|
.:i|.:i|.:i|.:i|　　　　　　　　　　　　;|
.:i|.:i|.:i|.:i|二二二二二二二二二l
.:i|.:i|.:i|.:i|___　　_,,....,, _　 ...:::;;| ,;;
.:i|.:i|.:i|.:i| ,/|（( ..,, _ ,,. )）...:::;;| .;;
.:i|.:i|.:i|.:i|/ :| | ~"'' ''"~.]....:::;;| .;;
.:i|.:i|.:i|.:i| 　| |　l　l　l　|.....:::;;| .;;
.:i|.:i|.:i|.:i| 　|_|　l　l　l　|.....:::;;| ;;
.:i|.:i|.:i|.:i|;../ :l #i; ;l;;;;l;;;|￣￣＼_＿＿＿＿
,.i|,.i|,.i|,.i|,/　　~"'''''''"~
_,,..,.,,,._　＞┿､
ヽ　　/_　 /'ヽi|
　ゝｰ(　ヽ|　;;|i|
/　　　ヽ::ヽ　|i|
/;;;..:::i;;:..,） ;) :|{}
;;:::.....、。）_,,)"
￣￣￣;;;:"



十七時を過ぎて薄暗い路地を急いでいたサクラは、
十日ほど前から急に人気の無くなったスラムを横目で見ながら疑問を感じてしまう。



　　　　 /　　　　　　＼
　　　　;′;′,ｲ,ｨ　ヽ ､ヽ
　　　　l　_!　l{从ﾄ､ }ﾊ !ﾊ　　　　（この辺り、急に人が減ったわ。
　　　　!｛_|　l戉ｆ　ﾚぇlﾉﾘ　　　　 みんな何処へ行ったのかな？）
　　　 ,ﾘ ∥ |、　__' ,.ｲ ｣
　　　/　ﾉ|　| ｀ｰr１ｌ｛!/
　　_.ﾑ‐'¨|　|＞=く! ﾄヽ、
　 /　 ヾ　! ﾊ　几 ｀ｰrﾍ＼


222 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:10:11 ID:ecndC5w8
六１００．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　サクラがこの町に来た頃のスラム街―――


ル｡:::|_:.＿＿::|＿_|＼ ＼|￣　㌧ : :.　|　　　:..
＿＿|＿|＿＿|＼ ＼|￣ 　 .::　 　　.. |　　　　　::..
＿|＿＿:;;;|＼ ＼|￣　　》１Hyahhou |　　:.
;;;,,,,＿;|＼ ＼|￣'' 目　　　　 　..　　;;. ｌ　:.　　　::.
' 　　　＼|￣　　;;./ ヽ_(´∀`)y-~ : .　|　　　∧∧
　　　　　 ￣￣'''' |～|ﾉ( ヽﾍ)￣￣￣''＼,~-∩‐,,)
　　　　　　　　　　|__,,|　　´　。　　゛　　　,＼(_ｿと)
./´二ヽ　　　　　　∧wﾉｌ::.　　　　　　　 　　.( ,(xﾉ ::.
（.,,｀ー）　　　　　　(Дｷ.,）　　　　;;::　..,_　　 ﾚﾉ_ゝ、
/,`ー'~つ　　　　 と'[](_,ﾉ　　　　　　　　　　　　　　＼
（´￣ヽ)`ヽ　　　　(＿__,,)~　　　.∧,∧　　:::;　∧＿∧ヽ
´"￣　´"｀　　.,､　　　　　　　　 (,‐Д‐)　　　（∀^メ,,）　＼　　　 ＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 (つ]]]｀)　　　とｌ33;;;;`)　　　ヽ　..|＼ヽ
　　;:"　　　　　　　　　　　　　　 (`つし'　　　（;;;;;`)(';;;;）;;:.´ ::;　ヽｌ　 .＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　［］[]]]　　　　　　　　　　　　　;|　　　ｌ´.ヽ
　　　　　　　　　　　::;　　　　　　　　[[[][]　　　　　　　　　　　　　|　　　|　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∧＿∧　　;;:.,　　　　　　　　　ヽ　　.ｌ　.ｌ
　;;:"　　　　　　　　　　　　　　　　（；　　　,）　　　　　::;;;;;　　..,"´　　＼_|＿|
　　　　　　　　　　　　　　　　∧＿∧　　　）　　　　　　　(⌒￣ヽ　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 （；ｘ∀･,）＿〔〕）　　　∧＿∧(A^*ﾘｌ　　　　　.＼
　　　　　　　　　　　　　　　 （｀つ]　'つ / ヽ　　　（∀｀,,　と　　ｌ　　　　　.,,:,　＼
　　　　　　　;;;'ﾞ　　　　　　　:::|　　ｌ　|　 ｌ～.|　　［と´　ｌ⌒ｌ)　　）～　　;;;;;,´　　...＼
　　　　　　　　　　　　　　　　L＿）_,,）　|＿,|　　　（￣（＿.）),,'Ｊ　　　　　":;　　　　ヾ


┗──────────────────────────────────────────────┛
223 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:11:09 ID:ecndC5w8
六１０１．
何か起きているのかも、と不安に駆られながら駆け足で通り抜けて
職場兼自宅である『髭オヤジ亭』に飛び込めば、



　　　　 　 　 　 　 ／　　　　　　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　 /　/　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ.
　　　　 　 　 　 /　,′　i/　 ,　/{　　　｀ヽ
　　 　 　 　 　 ,′ ｉ　　 |l　〃 | 丶　　　｜　 .　 、 .
　　　　　　　　　　∥ 　 |!　{{　l、　ヽヽ　 !　　}　 }　}　　　「ただ今戻りました！
　　　　 　 　 　 　 ｊ|　　 ﾄ､从_｣_ヽ　 ! } ,ﾊﾉﾉ/　/ 〃　　　すみません、すぐに準備します」
.　　　　 　 　 ｉ　 〈｜　　ｌ´{::;;｜｀　 ﾉﾉｲ:::}Y' ／／
.　 　 　 　 　 l　　 ｀!　　 ｌﾞ'ー┴　　 　 L::!/ ィ´
　　　　　　　 ｌ　　　l|　　 ｌ　　 　 　 　 ｊ 　 /l |
　　　　 　 　 !　　　ｊ|　 　l、　 　 ー-　　 ,　ｌ |
.　　　　　 　 '　 　 ﾉ|　 　|!＼ 　 　 　 ,. ｲ ∥|
　　　　　　 ,　 　 //|　　 |l 　｀ ーｧ i´ｌ　|　l| |
　 　 　 　 /　　 /,ｒ┤　　|ト､ 　 ∧ | |　i{ |
.　　　 　_厶-‐　´　 !　　 |ｌ　｀7^ヽ| ! l　|　　.!
.　／￣｀ヽ　＼　 　 ｉ　　 |l　〃　 }}｀ヽ､{　　 ヽ、
へ、　　　　ヽ　＼　 }ｌ 　 ｊｌ 〃 　 {{　　 ｀i￢┐ ＼



　　　　　　　　　_,,--''''''---,,,__
　　　　　　　／　　　　　　　　　＼
　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　/　　　　　　　　 ／⌒＼／|　　　「サクラちゃん、おかえり。
　　　　　|　／＼　　　 ／⌒＼　/|||||.　　 なに、夜になるまで客なんて来ねぇだろう。
　　　　　|　 /⌒＼||／　　　　|　||||/⌒|
　　　　　|　|　　θ___θ　　　/　└　9　|　スラムのゴロツキ共もどっかへ行っちまっているようだし………
　　　　.　| 　　 ／〇＼　　　　　　<___/　 なんかよくねぇ事でも起こりやしないかとヒヤヒヤもんさ」
　　　　／＼／　　　　　＼_ノ　　／--,,,
　　　　|　　/　　 /⌒＼　　＼_／　　　　＼
　　　　　　|,.,.,.,./'''---''''ヽ,.,.,.,.ヽ



宿屋兼酒場とは言う物の、実際には宿泊客など滅多に来ない店の主人も同感のようだ。
224 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:12:09 ID:ecndC5w8
六１０２．
それでも仕事なのだから、とすぐに着替えてきた彼女は
彼も違和感を感じていると知って学級での事を話し、




　　　　　　　　　　　　　　　　 r⌒Y⌒Y⌒Y⌒ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　f´｀ヽ　>――‐- 、／`Y
　　　　　　　　　　　　　　　k、 ／　　　　　　 ＼ 　￢vヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 /｀　　　　　　　　　　＼_ソ　 ',
　　　　　　　　　　　　　　　i　　i　　!　　　　 |　 i　 i　　　 i
　　　　　　　　　　　　　　　| i　| i　|　　　　 /　/　 ,'　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　ヽヽトヽヽ、　　// // //｀'　　o　　　「そう言えば、学級のヤン先生が言ってました。
　　　　　　　　　　　　　　　　7^i rtv、＼/ﾚレﾚレﾒ　/　 ハ　　　カーディナルの方がなんだかきな臭いって………」
　　　　　　　　　　　　　 　　 i　 i ｋ.j}　　　イj㍉、レｬ　Lﾊ 〉
　　　　　　　　　　　　　　　 i　　|　　 ,　　　`ｰ ´　ﾉk }　 YY、
　　　　　　　　　　　　　　　i 　 /ヽ、　 _　　　　,.イ-‐´ i　| | ヽ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i　 /／￣ヽ.＿ ,. 　´　 〉ﾄ、i ', L」k_〉
　　　　　　　　　　　　　　 |i /,'　　　i;:;:/ {ヽ 　 ／　/ヽr;、',　',
　　　　　　　　　　　　　　 ﾚ'　!　　　|;/　 'Y￣ ,.　´　/;:;:;7‐-v':,
　　　　　　　　　　　　　　 i!　 ヽ　　 i!　　 i 〈´　　　//´　　　ﾊヽ
　　　　　　　　　　　　　　 i!　　 〉　　|　　　! |,　　　i;|　　 　 　 } ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 ,'　　',i i , '　　 i!　　　　　/　',',
　　　　　　　　　　　　　 　 　 / 　　/　　 'i f　　　　|　　/,　　/ﾘi　リ
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　 /　　　 !!　　　　 !　　　　 /ノﾉﾘ´
　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　' .,　　 ii　　　　/　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ_ __￣ﾍ｀ヽ.＿ノ　　　　 /￣｀ヽ,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 fー-‐ｲ ヽ.:.::〈　　　　　 iﾄ、ヽ、　｀ヽ、
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　i　　〉ｰ:〉　　　　ノ　ヽヽ＼　／
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i　　　 |　/｀ｰﾄ、‐-ｧ´　　　 ヽ＼ ´ ＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　 i/{　 /　￣i´　/　　　　ヽ ＼　 ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i 　 　 | i　/　　　!　/　　　　　 } Y 丶　 ヽ、
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i　　　|￣,　　　 i、　　　　　　 }　i　　＼＿i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 | 　 　i　ｉ　　　 !::ヽ　　　 　 　}　 i　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/',　　 i　i　 　 /:::::::',　　　　 ノ　　|　　',　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |::::',　　|:::!　　,.':::::::::::iｧx=-‐'　　　 i| 　　,　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,|::::::', 　 !|　　,:::::::::::::::}　　　　　　　 」　,　',　　　〉
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 / i::::::::!　 ii　　i::::::::::::::::|_ _ ,. _ _,. -‐'　　 ',　 ' ,／
　　　　　　　　　　　　　　　　　ヾ、i::::::i 　i!　　 i::::::::::::::i　　　　　　　　　　 ', Y
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ki::/ 　 !　　 ヽ:::::::::/　　　　　　　　　　 .ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 Y 　 　|　　　 !:::::/_　　　　　　　　　／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ij」 　 i　　　 Y i　　｀ー .,＿,. -‐'´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　i ｀¨' ┴`' y7´i　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |　 　 　 　 /　|　　　　　　/

226 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:13:09 ID:ecndC5w8
六１０３．
さすが、長い間冒険者の相手をしているオヤジは
平時では有り得ない事だと分かっているのだろう、
何事もなければ良いがと胸中の不安を誤魔化すように立派な髭をしごいた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ　　　　　　「夕べ来た冒険者達も言っていたな。
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,′
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､　　　　　　もしかすると、ゴロツキ共が一斉に減ったのも
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl　　　　　　 何か関係が―――」
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



そこへ―――
実に数週間ぶりの宿屋の客が、扉を開いて現れる。



　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　　| :.　＼＼.| 　 |.＼＼　:l　　:|　　:| 　 :|　　:| 　 :| 　 :|
＿|────────────┘::.. 　 ＼＼　| |　＼＼　　:|　　:| 　〈二二二二二二
　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　 　 　 　 　 　 　/7 ＼　 　 　 ＼＼.| 　 |.＼＼ :|　　:| 　 ||　 　 　 ||
　|;;;;;;;;;;;;;;; 　 ｌ|　 三三　 ∠＞//|ｌ　　＼　 　 　 ＼＼　| |　＼＼　..:| 　 ||　 　 　 ||
　|;;;;;;;;;;;　　　||==============||::.. 　　＼　 　 　 ＼＼.| 　 |.＼＼:| 　 ||======||====
　|;;;;;;　 　 　 ||┌─┐　日巛□ ||::::::.. 　 　＼　 　 　 ＼＼　| |　＼＼　||　 　 　 ||
　|;;;;　　　 　 □============□::::::::::.. 　 　 ＼　 　 　 ＼＼.| 　 |.＼＼_､　　　 ||
　|;; 　　　　 　 　 　 　 　 :::::::::::::::::::::::　　 　 　...::::＼　 　 　 ＼＼　| |　＼:」二二二二二
　|　　　　　　　　　 　 .<二二二> <二二二> <二二＼　 　 　 ＼＼.| 　 | l　 :| 　 :| 　 :|
　|　　　　　　　　　...::::::| :l :l :l :l.:|　| :l :l :l :l.:|　| :l :l :ｌ :ｌﾞ＼　 　 　 ＼＼　| l　 :| 　 :| 　 :|
￣|＿＿＿＿＿＿_.::::〈￣￣￣_〉〈￣￣￣_〉〈￣￣￣_〉_:＼　 　 　 ＼＼.l＿:|＿_:|＿_:|_
＿|::..　「￣￣|　　　　　| :l :l :l :l.:|　| :l :l :l :l.:|　| :l :l :l :l.:|　￣.＼＿＿＿＼_」
　　　 ,.|＿＿:|＿＿＿.、　「￣| ´ ｀￣￣￣´ ｀￣￣￣´
　　 （＿＿＿　＿＿＿）　|　 i|　　　　　　（ ￣￣￣￣￣￣ ）
　　　　|l￣ "l|||　　　 　 ｒｰ─i|　　　　　　　｀￣￣｀||´￣￣´
　　　　　＿＿||＿＿　　|!￣｀l|　　　　　　　　 ＿＿||＿＿
　　 　 　 ｀￣￣￣´　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｀￣￣￣´

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｷﾞｷﾞｨ………



┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　三人、泊まれるか？

┗──────────────────────────────────────────────┛


227 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:14:08 ID:ecndC5w8
六１０４．
オヤジが見れば冒険者の三人組のようだ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´:::ﾄ､;;;;ヽ　　 　 　 　 　 　 ／勹
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;;／:::::::::::::::ﾍｌ ;;;〉 　 　 　 　 　 .／ヾ／
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;| 　 　 　 　 .／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　　　　 i;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;|　.,_　　　∠ヾ／
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;|　　llコ~○／
　　　　　　　　　　　　　　　　λ;;;;;;;ゞ＼ゝ:::::::::/У　／｀弋ll
　　　　　　　　　　　　　＿／/弋;;;;;;;ー;;;＝─ヤ彡ヽδ／ `弋l､
　　　　　　　　,r‐＜￣´､ヽ、 ｀ﾄ-＝==＝ﾊ| 　 ,` v-, ､__　　゜
　　　　　 　 /　　 　｀ ｰ-｀､ｰ_`､ ,!'｀`'┴┴ヘ,|／.-'_´.-' 　｀ヽ
　　　　　　 l　　　　　　　　 r-ｨヽ.}ヽ､__　　_,.-ﾍ´‐'r-ｨ　　　　 |
　　　　 　 ﾉ 、　　　　 　 　ヽ_ｿ≠====:三===キヲ_ノ　　　　 |
　　　　 　 〉､ 丶､ _　 　 __,. ゝシ｀`ー---ll--‐‐ﾍゞ‐′ 　　 ,. ヽ、
　　　　 　 !、 `丶--'丶､＿_,ノ....ξ＾＾ξ ||　　　　ヽ,--､ -‐',. イ´
.　　　　　 }､`_ー_'二フ７'､_}ヽｭ__,.. Ⅴ　´￣｀丶､_,ｯ}:::ゝ-二._,.ｲ
.　　 　 　 〉､_ 二 -ｨ′八ヽ ﾞ´Y　　　　　　　　　　}ﾘ::::::::{'ｰ--〈
　　　　　/ｰ--‐''´::::::/;;;;ヽヽ､_>､　　,. -─‐- ､ノﾚi:::::::::ゝ､ーｲ
.　　　　 l::::::::::::::::::::::/;;;;;;;;;; 〉｝　　Ｙ´　　　　 　 ｌ　|;;|::::::::::::::￣l
　　　 　 ゝ:::::::::::::::ノ;;;;;;;;;;; く ﾉ　　 }　　　　 　 　{　l,;|::::::::::::::::丿
　　　 　,〉:::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;/ ｀ヾ丶ゝ、　　　　　 ゝ'〈;;;ヽ､::::::::::`ヽ､
　　　　{:::::::::::::::::く;;;;;;;;;;;;;r'､　　　,.､`丶` =--=''´'´ ,..ヽ､|::::::::::::::::::|



フードで顔を隠した背の高い戦士の後ろには
魔法使いとおぼしきローブ姿と、
こういう店が珍しいのだろうか、



228 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:14:13 ID:ecndC5w8
神官衣に身を包んだいかにも良いとこ育ちのお嬢さんが
好奇に目を輝かせながらあちこちを眺めている。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 _ {　　　/-─-t一-. ､
　　　 　 　 　 　 　 ,．=三三三三: ＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　 ／Ｘ/｀ーｧ'Ｘ ,}!工エエエﾄ､
　　　　　　　　　／三三三三三三三 ヽ　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　 /'ﾞ＼/ー‐'／ ヽ.}! ┼┼:十: l_ヘ.
.　　　　　　 　 //三三三三三三三三:ヽ＼、　　　　　　　　　　　　　　　　/＼／＼／＼／ }!-┼┼┼ 十| ﾍ
　　　　　　　 //三三三三三三三三三:ヾ三ﾄ､　　　　　　　　　　　　　　〃／＼／＼／＼ }!-┼┼┼ ┼:|_| ﾊ
　　　　　　　ﾊ三三三三三三三三三三三三:ヾ:､　　　 　　　　　　　　　'iく＼／＼／＼／,j|＿|___|__|__ _|__|__l_1
　　　　　　 ﾊ三三三三三三三三三三三三三ﾂﾘ　　　　　　　　　　　　'ヽ／＼／＼／＼}!＿|___|__|__ _|__|__i__ |
　　　 　 　 i三三三三三三三三三三三三三/:/　　　　　　　　　　　　. ／＼／―／--／:j|土土⊥.｀ヽｘ×Ｘ×｀ヽ
　　　 　 　 |:三三三三三三三三三三三三:/:/　　　　　　　　　　　　　. ト- 'rf"下丁iー---个ドﾐ￣T冖ｔ-- ニﾆﾆﾆﾆﾕ,
　　　 　 　 !:三三三三三三三三三三三:／:/　　　　　　　　　　　 ヽイ　ｌj｣ 　 !:::::l 　ｒ ｿ, / ,ｨｆ羔ミ, ヾノ川!ﾘヽj　!
　　　　　　,!三三三三三三三三三三;:< :三{　　　　　　　　　 　 　 ./' |　 ｌ|_ 　 l::::::', ﾊ八ゝ〈{ 辷tﾀ　　　 ｆ市k| / l
　　　　　 /ｌ:三三三三三三三三:／ 　 / 三!　　　　　　　　 　 　 .,ｲ　,　 l|::!.j　 iｲﾊﾇｌ_）　|　 ｘｘｘ　 　 　 ヾツﾘ′ﾉ
　　　　　ﾊ三三三三三i三三三/　　 ｧ' :三:!　　　　　　　　　　　 l::| /　:/!:| ヽﾍゞこｿ:::i　i!　　　　　　 　 ′xx{ ,′
　　　　 ﾊ三三l!三三三l!三三ﾊ＞- ' :三:シ　　　　　　　　　　　　 ｌ::|'　 .:l |｣　 l::ﾄ､ー'ヾj　i:!　　　　　 r‐ ｫ　　 }iヾ:､
　　　 //:三://l:三三三:!l三三三ヾ/三／　　　　　　　　　　　　　 ヽ!　ｌ｜　 　l_j!　lｰ-/　Ⅳ:、　 　 　￣´ 　 ﾉ ! 〉:〉
　　　ﾊ三三/::i!:三三三:､ヾ三三三l三{　　　　　　　　　　　 　 　 /　 ,: l　　　　|　:l　ｉ　 /;:::::::＼　　　　　 イ　｜´
　　 .ﾊ三三'三!三三三ヾヽ:＼三三ﾄ､:i　　　　　　　　　 　　　　 ,:′ /　!　　　 :'　/ ,｣∧ヾ::::::::::::.＼　 /´＼|ヽ　 ヽ
　　 ﾊ:三:/:三三三三三:＼ヾﾐ､ 三三｀ヽ　　　　　　　　　　　 ,/,:　ｲ　 .!　 　 _｣ /　_,′} ,〉::::::::::::;;:|　/::;:::::.ヽ ＞ ﾉ
. 　 ﾊ三:/:三三三三三三:｀ヽヾﾄ､＼三/　　　　　　　　 　 　 //!　 | 　 l　　/　ノ　 {　 //{｀:::::::(ｏ＿＿ｏ):::::::/＼〈
　　ﾊ三/:三三三三三三三三三三:∨{:i　　　　　　　　 　　/,/ i　 .! 　 l,. rj　ゞミ二二ヾ::::＼:::::::::::::;;::::::::||;:ｲ:::::/} }
229 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:15:08 ID:ecndC5w8
六１０５．
声はまだ若いが彼らの装備はみな一級品以上。

おそらく金を持っているだろうに、銀貨で泊まれるような場末に来るとは
何か訳ありか、と慣れっこの主人が声を出し、



　　　　　　　　＿_ 　 ＿_
　　　　　 　 /　　 ｀￣　 ヽ
.　　　　 　 上二二二二`┤
　　 　 ⊂ニ,-r‐-､──-｀二⊃
.　　　　　{ｨ|| { 　 {jｰlj⌒)　|ｋ}　　　　　　　「らっしゃい。
.　　　　　ヽｌ　 ,. -(つ- ､　 ﾚ'　　　　　　　　三人部屋から一人部屋まで空いてるよ」
　　　 ,⊂⊃∨　　, -､　 ∨⊂⊃、
　　 /　i　 / ﾚvv/ー‐ﾚv､| ヽ　 i ヽ
　／　 |　 ＞L.二⊥⊥二.｣＜　 |　 ＼
（　　　| 　 ＼|　　＼／　　|／　│　　）
. ＼　 | 　 　 |　 　 ○‐　　|　　　|　／



サクラもそれに続いた時だった。



　　　　　　　 　 ／　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　/　/ 　 　 /　　　　 ヽ　　＼
.　　　　　 　 /　 ′　/ /| l i 　 　 　 ',　　　 .
　　　　　 　 ′ 　 ｉｌ | | ｌ |{　　　　｜ｉ　　｜
　　 　 　 　 |　 ,|　　 lj⊥Ｎ┼ヽヽ.　,小|　i | |　　　「いらっしゃいませ！」
　　 　 　 　 |　l |　　 ｌィﾆ下　　 ｿ}厶jﾉ| ///
　　 　 　 　 |　Ｎ　　 ｌ 辷ｿ　　　　ﾄｉ| Ｖイ '
　　 　 　 　 l 　 |　　 l |　　 　 　 j ｀　{　|
　　　 　 　 .′　l　　 l |　　　ｰ-　 　 ﾉ /
　　　　　 /　　　| ｉ　 l |丶.　　　　／l /
.　　　　 /　　　/| ｌ　 ｌ | 　 ｀7T ´l　 ｉ{
　　　　/　　 _厶| ｌ　|‐-､_{-l　 ｌ　 ヽ
　_____厶＜　 　 | ｌ　|　厂`ﾊ　 l　 　 ＼
/　／　　　 ＼　ヽヽ｜|/　　{　丶Ｌ ＿_　 ヽ
　　　　　　　　ヽ　　}ﾉ/　　　＼　　｜　 ＼｜

230 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:16:09 ID:ecndC5w8
六１０６．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ､
　　　　　　　　　　　　　　　　 /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;;;;;;;;;;,イ´:::ﾄ､;;;;ヽ　　 　 　 　 　 　 ／勹
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;;／:::::::::::::::ﾍｌ ;;;〉 　 　 　 　 　 .／ヾ／
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;| 　 　 　 　 .／ヾ／　　　　　「………サクラ？」
　　　　　　　　　　　　　　　　 i;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;|　.,_　　　∠ヾ／
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 i;;;;;;;|　|:::::::::::::::::::::｝;|　　llコ~○／
　　　　　　　　　　　　　　　　λ;;;;;;;ゞ＼ゝ:::::::::/У　／｀弋ll
　　　　　　　　　　　　　＿／/弋;;;;;;;ー;;;＝─ヤ彡ヽδ／ `弋l､
　　　　　　　　,r‐＜￣´､ヽ、 ｀ﾄ-＝==＝ﾊ| 　 ,` v-, ､__　　゜
　　　　　 　 /　　 　｀ ｰ-｀､ｰ_`､ ,!'｀`'┴┴ヘ,|／.-'_´.-' 　｀ヽ
　　　　　　 l　　　　　　　　 r-ｨヽ.}ヽ､__　　_,.-ﾍ´‐'r-ｨ　　　　 |
　　　　 　 ﾉ 、　　　　 　 　ヽ_ｿ≠====:三===キヲ_ノ　　　　 |
　　　　 　 〉､ 丶､ _　 　 __,. ゝシ｀`ー---ll--‐‐ﾍゞ‐′ 　　 ,. ヽ、
　　　　 　 !、 `丶--'丶､＿_,ノ....ξ＾＾ξ ||　　　　ヽ,--､ -‐',. イ´
.　　　　　 }､`_ー_'二フ７'､_}ヽｭ__,.. Ⅴ　´￣｀丶､_,ｯ}:::ゝ-二._,.ｲ
.　　 　 　 〉､_ 二 -ｨ′八ヽ ﾞ´Y　　　　　　　　　　}ﾘ::::::::{'ｰ--〈
　　　　　/ｰ--‐''´::::::/;;;;ヽヽ､_>､　　,. -─‐- ､ノﾚi:::::::::ゝ､ーｲ
.　　　　 l::::::::::::::::::::::/;;;;;;;;;; 〉｝　　Ｙ´　　　　 　 ｌ　|;;|::::::::::::::￣l
　　　 　 ゝ:::::::::::::::ノ;;;;;;;;;;; く ﾉ　　 }　　　　 　 　{　l,;|::::::::::::::::丿
　　　 　,〉:::::::::::::::/;;;;;;;;;;;;/ ｀ヾ丶ゝ、　　　　　 ゝ'〈;;;ヽ､::::::::::`ヽ､
　　　　{:::::::::::::::::く;;;;;;;;;;;;;r'､　　　,.､`丶` =--=''´'´ ,..ヽ､|::::::::::::::::::|



やや低いがよく通る声、その背の高さ、そして背負うバスタード・ソードに
覚えのあった彼女はまさかと息を呑み、



　　　　　　　,r'": : : : : : : : : : : ヽ、
　　　　　　 f: : : : ; : : : : ; : : : : : ;ヽ,
.　　　　　 ,i: : : : ;': : : :,:'; : : : : :':, ; ;ヽ,
　　　　　 i: : : ; :i: : : :;! i: i: i: : : ;.i: '; ;'i
.　　　　　i : : ;':.i' : : :,!i;!i i; :i,: : : ;i :,i: ;!
　　　　　i : : /''i : : : i'7-i,i/'i :／i:./i/　　　「えっ？
.　　　　 i :,': 'i, i: : : : i'-　　 ''r''77　　　　　………その剣、もしかして………」
　　　　 ,!:,':,':,i`i ; ; ;i:i　　　 ､'-'/
　　　　 i:,':,':,i::i'i: ; ; i.i　 -　,／i:|
　　　　,!;';': ;i:,! ii: ; ;i:i7.-..i´:; : i.i
　　　　VL,-"　ii : ;.i.i::::::::i:: ;: : i:i
　　　,r'"`ヽ`ヽ,ii; : ;iii''''V'i:::; : i.i
　　/,-- 、　`ヽ`'i,: i`　 `';;_;: ;ii;!
.　 i　　　 ヽ、　 `ヽi-,____,,,'>,'､'
　 i　　'; .　 .ヽ　, ' ' `ヽ`ヽ,_ ), ヽ,
　 i　　 ;:　　.; y'　　　　 `ヽ,`''i　 i
　 i.　　 '; .　; i　　　　　　　: `i'i　.i
　 i　　　';:　 i , ', ' ;　　　. : : : ii　.i
　 i　　　 ';　i ' '　;'　　 .;: ; : : ;'.i　i
.　 i.　　　 '; i :　.;'　　.,.':;.' : :,'　ii .i
.　 i　　　　';:i: : ;'　　,.': : : ; '　 i'i.',i
.　 i　　　　 ';i: ;'　 .,:' :, : '　　　i i 'i
.　 i　　　　　'Y　 ,': '　　　　　.i .i .i,
　 i'　　　　　 ,!　,'　　　　　　 ,! .i　i

231 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:17:09 ID:ecndC5w8
六１０７．
フードを降ろした戦士がやはりやらない夫だったので、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　「ああ、俺だ。　　　　　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|　ﾊﾞｻｯ
　　　 奇遇だな、こんな所で」　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |



突然の再会に言葉が上手く出てこない。



　　　　　　　　 _,-―.:´￣￣.:ヽ、
　　　　　　　／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　　 ／/.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　／ ./.:.:/.:.:.:/∧.:.:ヽ.:.:ヽ、ヽ ミ[]二＼
　　　　　　|.:./|.:.:.:|_.|_|ヽ.:.:ヽヽ_ヽ_ヽ:.|ヽヽ＼＼
　 　 　 　 |.:/::.|.:.:|ｲ⌒、ヽヽｲ⌒ﾄヽ|.|.:.:i　!　|　|、　　　「や、や、やっぱりやらない夫さん！？
　　　　　/ヽi.::.:.|.:| b:::j 　　　 b:::j |」ﾉ.:.:.＼＼＼|　　　　どうして………その、エスメラルダに？」
　　　　 /.:.:.:.:/iヽ!　｀´　　'　　｀´//.:.:.:.:.:ヽ＼|
　　　 ./.:.:.:.:/.//.:.:＼.　（￣） .／.:.i|.:.:.:ヽ.:ヽヽ
　　　/.:.:.:.:/.://.:.:/|.:,‐'、二,ｲ_、.:.:!|.:.:.:.:ヽ.:ヽヽ
　　 /.:.:.:/.:.:/.:.:.:.:,―' i　 !　!　i ―,ヽ.:.:.:ヽ.:ヽヽヽ
　　.!.:.:.:/ |/.:.:/~:::|　　／ 0 ＼ 　.|::~ヽ,.:.:ヽ.:ヽヽヽ、
.　　|.:.:/　i.:i,_i＼::::ヽ/.／∧＼.ヽ/::::／i_.:.:|.:.:|ヽ.:|ヽ!
.　　i.:.:!　 i.:iヽ、 ∨.／／│.＼＼.∨　/..:.:!.:.:| |.:|
　　ヽヽ　i.:i.:.:|　 |:::i／￣┬￣.＼i::|　 |.:.:/i.:.:| i/
　 　 ヽ!　i:∧i　 ヽ::::::::::::::|:::::::::::::::/　 i.::/　|/
ﾞ　 　 　 　　　|　　ヽ、:::::o|:::::::::::,/　　|/
.　　　 　 　　　|　 　 |:::::::::|:::::::::|　 　 |
　　　　　　　　 |　　　|:::::o|:::::::.|　　　|
.　　　　 　 　 　|　　　|:::::::|:::::::|　　　|

232 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:18:09 ID:ecndC5w8
六１０８．
雇って一月も経たない間柄ではあるが、真面目に働いてくれているし、
可憐な見た目も役だって看板娘になりつつあるサクラの知り合いならば、と
オヤジは愛想の良い笑顔で歓迎するが、



　　　　　　　　　_,,--''''''---,,,__
　　　　　　　／　　　　　　　　　＼
　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　/　　　　　　　　 ／⌒＼／|　　　「なんじゃ、サクラちゃんの知り合いか？
　　　　　|　／＼　　　 ／⌒＼　/|||||.　　 そんなら安くしとくぞ、是非泊まっていってくれ」
　　　　　|　 /⌒＼||／　　　　|　||||/⌒|
　　　　　|　|　　θ___θ　　　/　└　9　|
　　　　.　| 　　 ／〇＼　　　　　　<___/
　　　　／＼／　　　　　＼_ノ　　／--,,,
　　　　|　　/　　 /⌒＼　　＼_／　　　　＼
　　　　　　|,.,.,.,./'''---''''ヽ,.,.,.,.ヽ



　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　「あ、いや。
.　|　　　　 （__人__）　　　　 ちょっと事情があって
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　 知り合いがいる場所には………」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣



潜伏するには完全に無関係の宿を、と思っていたやらない夫は
断るように手を挙げた。
233 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:19:09 ID:ecndC5w8
六１０９．
そこへ、サクラの事は聞いていなかったジュンが囁いてきたので



　　　 　 　 　 　 　 ,．=三三三三: ＼
　　　　　　　　　／三三三三三三三 ヽ
.　　　　　　 　 //三三三三三三三三:ヽ＼、
　　　　　　　 //三三三三三三三三三:ヾ三ﾄ､
　　　　　　　ﾊ三三三三三三三三三三三三:ヾ:､
　　　　　　 ﾊ三三三三三三三三三三三三三ﾂﾘ
　　　 　 　 i三三三三三三三三三三三三三/:/　　　（やらない夫、知り合い？）
　　　 　 　 |:三三三三三三三三三三三三:/:/
　　　 　 　 !:三三三三三三三三三三三:／:/
　　　　　　,!三三三三三三三三三三;:< :三{
　　　　　 /ｌ:三三三三三三三三:／ 　 / 三!
　　　　　ﾊ三三三三三i三三三/　　 ｧ' :三:!
　　　　 ﾊ三三l!三三三l!三三ﾊ＞- ' :三:シ
　　　 //:三://l:三三三:!l三三三ヾ/三／
　　　ﾊ三三/::i!:三三三:､ヾ三三三l三{
　　 .ﾊ三三'三!三三三ヾヽ:＼三三ﾄ､:i
　　 ﾊ:三:/:三三三三三:＼ヾﾐ､ 三三｀ヽ
. 　 ﾊ三:/:三三三三三三:｀ヽヾﾄ､＼三/
　　ﾊ三/:三三三三三三三三三三:∨{:i



軽くどこ関連かのみを説明し―――



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　／　_ノ　 ヽ､.＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 | 　（●）（●）　.|
　　（今はもう大丈夫なんだが、　　　　　　　　 　　　　　　 　!　　（__人__）　 |
　　 以前、ギャブレット関係だった子なんだ） 　 　 　 　 　 , っ　 ｀⌒´　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　ミ）　　 　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　./　ノゝ　　　　　/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　i　ﾚ'´　　　 　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　|　|／|　　　　 |　|



　　　　　　　　　 　 _ {　　　/--t一-. ､
　　　　　.　　　 ／Ｘ/｀ーｧ'Ｘ Ｘ,}!工エエﾄ､
　　　　　.　　 /'ﾞ＼/ー‐'／ ヽX}! ┼┼:十:ヘ.
　　　　　　　/＼／＼／＼／ヽ}!-┼┼┼ 十ﾍ
　　　　　　〃／＼／＼／＼／}!-┼┼┼ ┼:|ﾊ
　　　　　　'iく＼／＼／＼／ヽ,j|＿|___|__|__ _|__|_1　　　　　　　（悪い人じゃなさそうよ？
　　　　　　'ヽ／＼／＼／＼／}!＿|___|__|__ _|__|__i　　　　　　　 でも確かに、巻き込みたくはないわね）
　　　　　. ／＼／―／--／:ヽj|土土⊥⊥. _|__|　|
　　　　　. ト- 'rf"下丁iー---个ドﾐ￣T冖ｔ-- ニ ﾕ,
.　　 　 　 ﾞ√ﾐf⌒! l/, f´Ｙﾐ-ｧ｀ｌヾ''ドﾐt,ﾐ Ｘ Ｘ ＸＸXﾍ.
　　　 　 /ヽヽﾍ　 〃l ﾍ ゝ-'　　　　 'r'::ﾒ｀ ドﾐ X Ｘ Ｘﾍ.
　　　　 l! |-l＼'ﾍ::ｿ　 ﾊ!　　　　　　　t_ｸ/　|/,_｀ドﾐ ＸXﾍ
　　.__　||､　|:!　'rゞ:|!　|　ヾ　　　　　 ,　 /if |　 f　ﾙﾍ｀￣´
　　＼｀|| ヽ|:! ,f三::|!　ﾄ___i|　　－､　 ／ﾍ｀ヽ　| /∧ ＼
　　　 | ﾚ　 ´`!､三.|!　'＼.|!　　　, r ´=ｰ､ｊ-,. ヽ// f'|｀ｰ,i
　　　 ヽ　 l　　Vゝﾐ＼　　＼-ｒ ',＝＝　／　ヾ'∧　 |　 l |
　　　　l　 l　　 |八,ｊ- .＼ _ヽ＼く三=　（　　ｖ'/　ヽ_ﾉ　 l j
　　　　l　　　　l　<´＿　　　￣ ＼三　　＼ ﾚヽ＼　＼ `
　　/⌒l　　　　|` 三三⌒'ー - 、　＼　　　へｌ　｜,r--ｫ



聞きつけた真紅もそれに混じった時だった。
234 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:20:13 ID:ecndC5w8
六１１０．
なにやら事情がある様子の三人をまじまじと見つめた主人が、
神官に扮してはいるが数年前に城の復活祭で
見た事があるお姿と知って驚いた声を出し、



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ　　　「そこのお方………もしや真紅様？」
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,′
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



王女の名前は知っていたが、実際に拝見した事の無いサクラも
自分よりもすこしだけ小柄な少女を振り返る。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_＿
　　　 　 _..　-‐……‐-　　.. _,　'´　　　 ｀ 　　‐-　.._
　　　　´　　　　　　　　 　_／　　　　,　　 ,　　　　　 ｀ヽ
　　　　　_..二ニ=-‐…ﾆ´　　　　 ／ 　／／ , ／ ／
　　　　´　　　　 _..　-‐≠　 　 ／　 ／ /＼〃 ／
　／　　　　 　 ´　　　 　 　 ／′／／ {斗-ｘ/ 　 ィ|　l　　　　　「えっ！？
〃 　　　／　　　　　　 　 　 /／〃　　ヽ｛::/ { ／ノﾉ ﾉ　　　　　王女、様？」
′　 　 ′ 　 ／　 　 ／/ 〃　/ {　u 　 　 　 ′{::ｊ イ|
　 　 / 　　／　 　 ／　/ 〃　/｀∧　　　, '⌒ヽ　 /　!|
　 　 　 ／　　　／　　,′″ ,'　,′　　　{＿ ノ　,　　 ﾘ
　　　 /　 　 ／/　　 , 　,　 /　ﾉ…‐-＼＿ 　イ ＿ノ
　 　 ｛　　 /〃{　　,ｲ　/　/_ｒ┘、　　　　ﾌ⌒／
　　 　 　 　 　 　 /　∨￢{　　　　 ー ／ ／￣｀ヽ
　　　　　　　　　/　　　 ｊ_ 二ニァ＝={　 ｛>､　　　 ` ＜
　　　　　　　　_」　 ,≠´　　　く,小_} 　＼ ＼＼-‐=ﾆ二
　 　 　 　 　 _{　／　　　　　／l｣｣　　　　ヽ　＼＼
　　　　　　 /　,′　　　 　 ,′　 　 　 　 　 }､　 ＼＼￣
　 　 　 　 /　 {　　　　　　｛　 　 　 　 　 　 l、＼　}＼＼
. 　 　 　 /　　 ＼　　　　　　 　 　 　 　 　 ハ　 ∨　 ＼
　　　　 /　　　／{｀　ｰ-　⌒ヽ、　　＿ ／　 } ／

235 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:21:09 ID:ecndC5w8
六１１１．
国王の死去直後に、唯一の王位継承者が王都を離れてこのような所に居るはずがない。

冒険者然としているやらない夫の様子に事件を感じたオヤジは
事情を話してくれるよう願ったが、



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ　　　　　　「なるほど、何か訳があるようだな。
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,′　　　　　 話だけでも聞かせてくれんか？
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl　　　　　　 こう見えても冒険者相手にしている店だ、
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ　　　　　　 悪いようにはせん」
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



喩え誰であろうとも、危険に巻き込む事は理念が許さない彼は首を振って
ありがたい申し出だけど、と断ってしまう。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　「済まない。
.　|　　　　 （__人__）　　　　　大事なんだ、俺達の素性を知っていたら
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　巻き込まれる可能性がある。
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }　　　　　　他を当たってみるよ、
　　 ヽ　　　　　ノ　　　　　　 俺達が来た事は忘れてくれ」
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |
236 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:22:09 ID:ecndC5w8
六１１２．
それで宿屋から出て行こうと、戸口を向いた背中を制止したのはサクラだった。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _ .. -:.:.―:.:.- .. _
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ、:.:.:.:.:.:.:.:::::::::｀ヽ.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:ﾍ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::ﾍ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: l:.:. i:.:.:|i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ;:!:.:|:.:.:.:.:.:.:.: /:.:.:.l:.:.:i:!｀:.二ニ=r＝､::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |i!:.i|:|:.:.:.:.://:/:.:/:. /ヾ三三彡ハｲ.ﾍ::l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 i Ⅵ:i!:.:///:/:乂//ノ ミ三彡:/: :|i.: : l:l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヾ∨//厶､、i/ｰ　　彡イ/: : :|i.: : :l:!
　　　　　　「待って！」　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ｝　　 !;j　｀ゝ　 　 iγヽ:_:_:jiー‐':l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ノ　　　"´　　　　　 |}ノ ｲ::|!: :|: :|::::!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＼　　　　　　　　／ｰイ::::|!: :|: :|::::',
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |:ヽ｀　　　　　　　:　 |:::::|!__jｰ:':::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |: :ﾊ、_ ...イ　　　 :　,|:::::::::::::::::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 八:.:.:.:.:_j ヽ. ｒ‐ー＜ !::i::::::::::::::::::::::ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /￣/ :.:.:.:.:/　 l:|V::|:ｌ　　ヽⅥ､:::::::::＞''"´￣｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　 /// :.:/!　 ..l:|　 |:l_　　　＼//ノノ　　　　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /　　 { {:.:.:.{!:|／::《::::《 ::::｀ヽ.　 //: :./　　 　 　 　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　 　 ∨:.:／:::::／ハ:ﾍ＼:::: ＼/: :./ 　 　 　 　 　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 /　　　 　, .く:::::／／ 　l!:::＼＼:::: ＼′　　　　　　　 l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨ 　 　 /: : :У::/｀／: :l!::::i!::＼.>／}　　　　　　　　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 〈　　　 /: : : /:::/:/O: : :.l!::::i!: : : : :.〈　　 　 　 　 　 /
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ﾉ　　　{: : : :.i::::i :l: : : : : :l!::::i!: : : : :/　　　　　　　 ｲ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｛. 　 　 ∨: : l:†:l: l.: : : : : l!:†:i!: : : /　　　　　　／ /
237 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:23:08 ID:ecndC5w8
六１１３．
立ち止まったやらない夫に、今日意味を覚えたばかりの言葉を言うと、



　　　　　　　,r'": : : : : : : : : : : ヽ、
　　　　　　 f: : : : ; : : : : ; : : : : : ;ヽ,
.　　　　　 ,i: : : : ;': : : :,:'; : : : : :':, ; ;ヽ,
　　　　　 i: : : ; :i: : : :;! i: i: i: : : ;.i: '; ;'i
.　　　　　i : : ;':.i' : : :,!i;!i i; :i,: : : ;i :,i: ;!　　　　「もしかして―――
　　　　　i : : /''i : : : i'7-i,i/'i :／i:./i/　　　　 大臣の革命が始まったの？」
.　　　　 i :,': 'i, i: : : : i'-　　 ''r''77
　　　　 ,!:,':,':,i`i ; ; ;i:i　　　 ､'-'/
　　　　 i:,':,':,i::i'i: ; ; i.i　 -　,／i:|
　　　　,!;';': ;i:,! ii: ; ;i:i7.-..i´:; : i.i
　　　　VL,-"　ii : ;.i.i::::::::i:: ;: : i:i
　　　,r'"`ヽ`ヽ,ii; : ;iii''''V'i:::; : i.i
　　/,-- 、　`ヽ`'i,: i`　 `';;_;: ;ii;!
.　 i　　　 ヽ、　 `ヽi-,____,,,'>,'､'
　 i　　'; .　 .ヽ　, ' ' `ヽ`ヽ,_ ), ヽ,
　 i　　 ;:　　.; y'　　　　 `ヽ,`''i　 i
　 i.　　 '; .　; i　　　　　　　: `i'i　.i



振り返った彼は苦い顔でそれを肯定する。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　「………そうだ」　　 .　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |

238 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:24:08 ID:ecndC5w8
六１１４．



　　　　　　　　＿_ 　 ＿_
　　　　　 　 /　　 ｀￣　 ヽ
.　　　　 　 上二二二二`┤　　　　　　「おいサクラちゃん！
　　 　 ⊂ニ,-r‐-､──-｀二⊃　　　　 そいつはどういうこった！？」
.　　　　　{ｨ|| { 　 {jｰlj⌒)　|ｋ}
.　　　　　ヽｌ　 ,. -(つ- ､　 ﾚ'
　　　 ,⊂⊃∨　　, -､　 ∨⊂⊃、
　　 /　i　 / ﾚvv/ー‐ﾚv､| ヽ　 i ヽ
　／　 |　 ＞L.二⊥⊥二.｣＜　 |　 ＼
（　　　| 　 ＼|　　＼／　　|／　│　　）
. ＼　 | 　 　 |　 　 ○‐　　|　　　|　／



当然驚いた宿屋のオヤジに、申し訳なさそうな彼女は自分の素性を再度確認してから
事情に関係しているんですと頭を下げ―――



　　.　　　　　　 　 　 /.:.::'.:.:.:/.:,:.:.:,:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　 　 　 ':.:.::':.:.:.:i::.:!:ｉ:.!:.;.:i:.:.::.:.:.l:.:､:.:.丶
　　　　　　　　　 　 |::.::.|::.:.:.:l::L{!斗ヽ! ヽ:ﾊ::.i::l:.:.ﾊ:!
　　　　　　 　 　 　 |::.:r'!:.:.:.:|:.ｌィ_jTト ′}:ム7ﾘ/ﾚ′　　　「ごめんなさいオヤジさん。
　　　 　 　 　 　 　 l::.:ヽ!:.:.:.:l:.:!辷リ 　　 {ヒ! ﾚ';ｲ　　　　　私、ここに来る前は、
　　.　　　　　 　 　 ｉ::.::.:i|::.:.:.:!:.| 　　　　､ ｀゛ {:川　　　　　第二騎士団長の家に居たって話しましたよね。
　　.　　　　　　　　,;.:.::.;:|::.:.:.::l:.ﾄ､ 　.－　 ／::ﾉ:ﾉ
　　　　　　　　 　 ,;.:::./.:|::.:.::.l:.l　丶__ .イ:.:.:.:l:.｢　　　　　　そこと大臣は繋がっていて、
　　　　　　　　　 .,;::::::::::ﾍﾊ::.::|＼ 　 〈 :ｉ::.:.:.:l::|　　　　　　 良くない話を色々耳にしてたんです。
　　　　　　　　　 ,;:::／｀ヽ、　 　 ヽ、 ＼::.:.::l::|
　　　　　　　　　,;:/　　　 　　 　 ､⌒ヽ　 .ト､　　　　　　　 先生がきな臭いって言うし、
　　　　　 　 　 　 l 　　　ヽ　　　　>"H;::l　!　ヽ　　　　　　もしかしてと思っていたんだけど………」
　　　　　 　 　 　 |　　　　ヽ　　 /::::;;! !;::!! !　 ｜
　　　　　　 　 　　|　 　　/　　　`ﾄ､/! L:::;r∨　!
　　　　　　　　　　l　　　 ∨　　　 !::::! l::::l' l　!　{
　　　　　　　＿＿l　　　＿＼　　 `ｰ'└', / /　 ヽ、
239 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:25:09 ID:ecndC5w8
六１１５．
ギャブレットの深い関与を知ったやらない夫は、
万が一の事があれば彼女らにも危険が及ぶ可能性を思ってこめかみに手をやった。



　　　　　　　　　　　　　　　 ――　､
　　　　 　 　 　 　 ／ 〉 ´　　　　　　＼
　 　 　 　 　 　 ／ ／'　 __ ノ 　 ゝ.__　ヽ
　　　　　　 　 /　/／〉　 ( ー)　(ー )　 ｌ　　　　　　　　　　　　「………もし、追っ手がここに来たら
　　　 　 　 　 ｌ　 ´ イｌ　　 (___人___)　　ｌ　　　　　　　　　　　　 サクラも危ないな………」
.　　　　　　　 ｌ　 　 ｉYｌ　 　 ｀ ⌒ ´　　 ｌ
.　　　　　　　/　　 ﾊ !.!　　　　　　　 　 !
.　　　 　 　 /　　/　 ' ヽ 　 　 　 　 　 /
　　　　　　 ｌ　　　／/ ､ゝ　　　　　　 ／ ヽ_
　　　 　 ´｀ ー‐ '｀./　　｀ー､　　,－´　　/ 　 ＼
.　　　　 ｉ　　　 　 ｉｉ　　 / ｀:.ｉ 　 ｉ´ヽ.　 /　　 　 ｀　 ､
. 　 　 , 'ｌ　　　　　ｌ.!　 /　　 ｌ 　 !　ﾊ　/　　　　　　　 ＼
　 　 / ,:|　　　　　| ヽ/　　　!＿'　　 V　　 　 　 ,　 ,　 　 ヽ
.　　/ / ｌ　　　　　|　　　　 /:.:.:.:ヽ　　　　　　　/　/　 ／　 ｉ
.　　!/　 !　　　 　 ｌ＼.　　 ｉ:.:.:.:.:.:.ｉ　　　　　 ／　/　 /　　　ｌ
　　/　　　　　　　 !　 ヽ.　 !:.:.:.:.:. !　 　 　 ´　　 !　 /　　 　 !



　／::::::::::::::::::::::::::::/::::＼:::::|::::::ヽ:::::::::::::::::＼::::::::-──
_,,- -ィ::::::::::::::::::::/::::::::::i:::V::::::::::::>:::::::::::::::::: ＼:::::＼
　／::::::::::::::::::::／::::::: : :|:::::V/￣　V:::::::::::::::::::::::＼::::ヽ
/::::::ィ:::::::::::::::{:::::::::::::::i: |￣　　　　 V::ﾄ:::::::::::ﾊヽ;;::ゞ:::ﾍ
:::／:::::::::::::::::::|::::::::::::::ﾊ:|　　 　 　　 |::i　＼:::::::}:::::ﾄ-;;::::ﾊ
/:::::::::::::::::::::::: |:::::::::::::| ﾘ───''　 i:ﾘ　ﾆ彡:::iト､;ヽ ＼::i　　　「なら話は簡単だよ、やらない夫。
:::::::::::::::::::::::::::::|::::::: :: |＿,,,-＝＝=ヽ/　_||=__ﾒ:|　||　　　ヾ　　　僕らと一緒に居た方が彼女も安全だ。
::::::::::::::::::::::::::::ハ:::::-::|＞''￣=.ィ-　 ||＝||{t..:jｱ　||
::::::::::::::::::::::::::::i＞＼:: |||ﾏﾊ廴ｿ　　..川　ﾊ￣　iノﾉ　　　　　　　なんてったって、君が居るんだからね」
:::::::::::::::::::::::r-､}''´　＼||　￣　　　 //　 ﾉ ｀￣ |´
::::/i:::::::::::::::| /ヽ　　　　ヾ＝=─''´´　　　　　 /
:/　|::;;::::::::::ヽ　　＞　　　　　　　 ｀ー -　　／
　　ﾚハ:::::/i::::::≧::-:､　　　　　　　　　　／
　　　　 ﾚ'　￣￣￣Yi　　　　　　_＿__./ ＿
　　　　　_...-:::'´￣￣｀:-..､　　　 |ー-　∧　}､＿
　　　 i: : : : : : : : : : : : : : : : ｀::-.┴..､: /: :}: :}: : : ヽ
　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :: : ヽ　/::/: : : : ∧



今となってはジュンの判断が一番正しいようにも思える。

ただ、サクラはともかくオヤジはどうかと彼に視線をやれば、
240 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:26:10 ID:ecndC5w8
六１１６．
海千山千の宿屋の主人らしい視点と知恵、
エスメラルダに住む者として異常を感じていた様子に
考える余地はありそうだとやらない夫は判断する。



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ　　　　　　「もう一度言う。
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,′　　　　　 話だけでも聞かせてくれんか？
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl　　　　　　もしかしたらこの町のゴロツキ共が
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ　　　　　　こぞって居なくなったのも、
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |　　　　　　　何かしらの関係があるかも知れんのだ」
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



と、そこへ大切な情報が一つ混じっていた。

何処とも関連性が無かった情報と、
今新しく入ってきた情報とが結びついた事で一つの推論が成り立ち、



　 　　　　 |
　 　＼　　__　　／
　 　＿　（ｍ）　＿
　 　　　　|ミ|
　 　／ 　.｀´　 ＼
　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ ●）（●）　　　「なるほど、急に膨れあがった大臣側の戦力は、
　　|　　　　 （__人__）　　　　エスメラルダのスラムから捻出した、か？」
　　|　　　　　　　　　ﾉ
　　|　　 　 ∩ノ ⊃ }
　 /ヽ　　 ／ ＿ノ }
　(　ヽ　 /　　/　ノ
　　ヽ　“　　/＿|　 |
　　　＼＿_/＿＿ /
241 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:27:09 ID:ecndC5w8
六１１７．



　　　　　　　　／.::／　　　　 　 ｀`ヽ＼
　　　　　　 ／.::／　　　　　　　　　　＼＼
　　　　　／.::::/　　 ,．-──‐‐- ､.　　 〉::ヽ
　 　 　 〈.:.:.::::.ヽ ／　　　　　　　　 ＼ /.:.::::〉
　　　　　＼.:;:ィ7, ィ´.::￣￣￣｀`ゝ-</^V/
　　　　　 ,.ｲ:! i. .:.十ム､ﾄﾄ､　_ﾉ_ﾉj_j!:　 N
　　　 　 //|:|ﾄﾄ:::ヽ!r=ｭ ヾ:.ノ´,r=ﾐ､ﾘ:.:./ ﾄ､　　　　　　「どういう事？」
　　 　 .〃 l|:|｀7^Y´辷ｿ　 　　辷ｼ,ｨｲ〈　l　ヽ
　　　 　 　|1| | l 人　　 　_'_　　　 /1　.i | 　 !
　　　　　　i　 1lﾉﾉ> ─-､　 ,. -‐<　| 1:| |　i |
　　　　　　|　 ||l 1.:.:.:.:.:.:.:.:V.:.:.:.:.:.:.ヽ! |::| |　| |
　　　　　　|　 || _>.-‐::「o´こ｀ol;i:.:.:.:l |::| |　| |
　　　　　　|　/二ﾆ7.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l;|.:.:丿ﾆ二7! 1
　　　　　　|/<孑＜.:.:.:o.:.:.:.:.:.:o|;|.:.:孑-､.:.＼ゝ
　　　　　 /.:.:.:孑.:.:.:.:.:.o.:.:.:.:.:.:ol;;l.:.:.孑´:::.:.:.:.`ヽ、
　　　　 ,/.:.:.:.:.:.:.::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.//.:.:.:.:）::::::::.::.:.:.:.:.:.＼
　　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.//.:.:.:.:.::::::::::::::::::.:.;:ィ⌒ハ
　 　 ,/.:.:.:.:.::::::::::::::::::::.:.:.:.::::/人_.:.:_.:.:.:.:.:.:.:., ィ7:.::::::::::.:.〉
　　 〈r─y──-､::_＿.:.／　　　￣`T´￣_ノ.:.:.::::::::.:./
　　　 ＼/｀`7.:::i　　　　　.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.L _/.:.:.:::::::::::::::/
　　　　/　.:::::.::/　　　 .:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::i　｀ヽ:::.:.:.:.:./
　　　,/ .:.:.::::::/.:.:.:::::.:.:.:.:.　 .:.:.:.:.:.::::.:::::人＿ﾉ.:.::::::〈



　　　　　　／￣￣＼
　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼　 　,.:┐
　　　 .（ ●）（ ●）　　..|　／　｜
　　　 （__人__） 　　　　.|./　　 /　　　「国内で時間をかけて人員を集めていたら嫌でも目立つし、
　　　　 i⌒ ´ .r－､　　|/　 ／　　　　国外から大量に流入させるなんて以ての外だ。
　　　　 { 　 　 ヽ,　',. .,/　:/',
　　　　 .ヽ　　　.|　 l_/_, -‐､',　　　　 秘密裏に行うのなら、無職で食うに困った連中を
　　　　　 .ヽ　.　| 　 / , -－'i|　　　　 金に物を言わせてかき集めるのが一番手っ取り早い。
　　　　　　/　　 {　　V , -－ﾍ
　　　　　　|　　　ヽ　 Ｌ|　r=　|　　　　練度や統制などは二の次、単純な人海戦術だがな」



今のところ第二騎士団以外に大臣よりの騎士団があるとの情報が無い為、
その推論が一番正しく思えた。
242 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:28:09 ID:ecndC5w8
六１１８．
また、城を脱出する際にロイの話を聞いていたり、
カーディナルの外から現れていた、
装備が統一されていない第二騎士団とおぼしき連中を見たジュンも
そう言う事か、と何度か頷いて同意する。



　　　　　　　　　 ＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　 　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　 　 　 　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|　　「けど、もともと一大勢力である第二騎士団と合併すれば、
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|　　それこそカーディナルを攻めるには事足りる、って事？」
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|
　 ｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　 ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　 フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　 ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　　　　　 　 　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ ー='´　 ＼



　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／ ヽ､.　_ノ　＼
　　　　　　　|　 （●）（●）　|
　　　　　　　|　　（__人__）　｜　　　　　「そう言う事だ。
　 　 　 　 　 |　　 ｀ ⌒´　　|　　　　　　だが民兵と言うにも危険な策だ、
　　　　　　　 |　　　　　　 　}　　　　　　 モラルの低い連中が勝ち組になった場合、統制が取れずに
　　　　　　　 ヽ　　　　　 　}　　　　　　 略奪や暴行など、治安が悪化するのは目に見えている」
　　　　　　　　人＿__＿_ノ"⌒ヽ
　　　　　　／　　　　　　　　　　　＼
　　　　　/ 　　　　　　　　　　 へ　　＼
　　　　 （　　ヽγ⌒)　　　　　| 　＼ 　 ＼



それは、革命を起こす際にもっとも気をつけねばならない事の一つのはずだ。
正当な君主を蔑ろにした勢力が町の治安を悪化させれば民衆だって支持するはずがない。

圧政を敷くのであれば王位継承者の抹殺は必須。
でなければ、王女の復権を皆が願うのは目に見えているだろう。
243 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:29:08 ID:ecndC5w8
六１１９．
まず一つ、大臣の綻びを見つけ出したやらない夫はつけいる隙があるかもしれない、と
その事を記憶に焼き付けていたのだが、



　　　　　　　　＿_ 　 ＿_
　　　　　 　 /　　 ｀￣　 ヽ
.　　　　 　 上二二二二`┤
　　 　 ⊂ニ,-r‐-､──-｀二⊃　　　　「どうやら本当に大事のようだな。
.　　　　　{ｨ|| { 　 {jｰlj⌒)　|ｋ}　　　　　………サクラちゃん、表に臨時休業の札をかけて
.　　　　　ヽｌ　 ,. -(つ- ､　 ﾚ'　　　　　 雨戸を全部閉めてくれ」
　　　 ,⊂⊃∨　　, -､　 ∨⊂⊃、
　　 /　i　 / ﾚvv/ー‐ﾚv､| ヽ　 i ヽ
　／　 |　 ＞L.二⊥⊥二.｣＜　 |　 ＼
（　　　| 　 ＼|　　＼／　　|／　│　　）
. ＼　 | 　 　 |　 　 ○‐　　|　　　|　／



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.　-――‐ 　 ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／,.　　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 〃〃 //〃,　 　 ヽ　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ii i i i { i i !､ヽ　 i i i 　 !
　　　　　　　　　　　　　.　　　　　　　 　 lｌ i｜ ｌ {ﾑ斗i‐ｌ }　ﾉ ｝i i i !
　　　　「はいっ！」　　.　　　　 　 　 　 |l r１　｀iｲ汀ﾐ Nイ‐くﾉﾉﾉii
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|ｌ ト|i　i i`‐°　　ﾋﾘ/ｲ/丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 jj j i|i　i i　　 ､__ '　 ,ﾊ!
　　　　　　　　　　　　　.　　　 　 　 　 〃/ j|i　i i＼　　　,.イi !!
　　　　　　　　　　　　　.　 　 　 　 　 / /　ﾉ!! !i ﾄ､ ｀Τ´!! i !jj
　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 __ /＿／´|ｌ ｌj i　＞<｝ !! i,ﾊi
　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　'´　ヽヽ　ｌＮj j〃　 }}｀ヽj_ハ



二人がすでに協力するつもりになっているので、慌てないでくれと再び手で制した。



　 　／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）
.　|　　　　 （__人__）　　　　　「あ、いや。
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　まだどうするかは決めていない」
.　 |　　　　　　 　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ　　ｍm
　　　/　　　￣￣￣　つﾉ
　　　|　　　　|￣￣￣

244 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:30:12 ID:ecndC5w8
六１２０．
だが、彼らは彼らなりの想いや考えに従って協力を再度申し入れ、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _.. - ― -　､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／ 　 　 　 　 　 ｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.ｲ／,　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　〃/,' //　 　 / ,　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊ.i | {.　　 / /!　ｉ. }!　 　 　 }
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 从l_ﾊ. ／７メ ノ 仆､_　　,.１
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 /　}i｣` 　 'x=､ﾉベ.}三ﾆィ叭}
　　「お願いです、　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　　　　　　_ ｨ′/ｒ　　　 }__ﾉ》　 jラ'´r介ｉ |
　　 手伝わせてください。　　　　　　　　　　　　　　_,､ － ' "´ /　:∧ヽ .__　　　　 く／// l |_|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,　'´　　　　　／　 /　ﾊ　　　　　　_,辷7// //!
　　 私は無関係では無いですし、　　　　　 /　　　　 　 ／　　 ,'　/ /`ｧ┬‐　 '　{　 〈/ 〈/ i
　　 貴方の役に立ちたいんです」　　　. 　 '　　　　　／ ／　, '　/ /　ﾉ_r｝　　　 ／／ /!　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {　　　　 ,.'　 /　 ./　 / / 厂ｲ|ir┬‐／／{. / ,!　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ　　 /　 /　 :/ .〃　　{　/,ﾊ|　l / / ＿入/　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ,'　 / 　 / //　　　∨//jﾊ ヽ/'´ ,. -- ﾕ　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 ｉ　/　　/ //　　　 /l// |/ ∨{. /　　　　ヽi
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 | :;　　/ /.,'　　 ／ / |／　 　 /　　　　 ,　 〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 V　 / /　!　 ,ｲ{　/　｝　　　　∨　　　　}　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ.{　{.　 i. / .{{V Oﾉ　　　　　}　 　 　 l　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ!　 〈　 l　　　　 　 |　 　 　 !｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼ヽ.　　　 　 |　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ.} ｰ　イﾉ |　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 !∨　 厶ｲ}　 　 　 |



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,--''''''---,,,__
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　 ／⌒＼／|
　「うちは代々この国の一員だからな。　　　　　　　　　|　／＼　　　 ／⌒＼　/|||||.
　 王女様の危機になにもせんとあっては、　　　　　　 |　 /⌒＼||／　　　　|　||||/⌒|
　 ご先祖に顔向けできんわい」　　　 　　　　　　　　　　|　|　　θ___θ　　　/　└　9　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　| 　　 ／〇＼　　　　　　<___/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／＼／　　　　　＼_ノ　　／--,,,
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　/　　 /⌒＼　　＼_／　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|,.,.,.,./'''---''''ヽ,.,.,.,.ヽ
245 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:31:09 ID:ecndC5w8
六１２１．
しばし考えた彼は、今度は頷いて二人の気持ちを受け入れる。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　　「………分かった。
.　|　　　　 （__人__）　　　　 二人の力、貸してもらう」
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



やらない夫は気づき始めていたのかも知れない。

自身の理念、思想に則った行為―――誰かを助け、護る事―――が、
後で良き力となって返ってきてくれる事を。

行く先々で繰り返される出会いと別れ、その度に紡がれるきらきらと輝くような絆が
誰かを護り、自分を高める力の基礎になっていく事を。



　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , ------ 、　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ／ ヽ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ／　　　　　　＼　　　　　　　　　 　 　 ／ヾ ／
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 i 　 　 　 　 　 　 i　　　　　　　　　　 ／ヾ／
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |　 ＼ 　 　／　 │　　　　　　 　 .／ヾ／
　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ｜ （ ●） （● ） ｜ ､-- ､　　　／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i　　（__人__）　　i　　弋||ニi／ヾ／
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 , -!　　 ｀⌒ ´　　 !-､ 　　／○||´　　　　　　　　　「ジュン、入り口の警戒を頼む。
　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 |､ヽヽ　　　　　　 / / |...／ト､／弋｀||　　　　　　　　サクラ、真紅に冷たい水を一杯あげてくれないか。
　　　　 　 　 　 　 　 , 　―;;;;;;;―´　| |､｀ ――― ´.,| | 　｀-;;;;;--　 ､｀弋 |
　　　　 　 　 　 　 ／ ヽ 　 ▽ 　ヽ　 ヽ ￣￣￣￣/　／　　▽／ ＼　 ´　　　　　　　………まずは俺から王都の状況を話そう」
　　　　　 　 　 　 .i　 　　｀　-　　r―‐/＼　　 　／ヽ― ､　 - ´　 　　 i
　　　　　　　　 ／　　 　 　 　 　 |　／－ ―┬― －＼　|　　　　 　 　 ＼
　　　　　　　　　>､ ｀ ー--　　　,／ 　 　 　 ｜　　 　 　 ＼　　--―　´ ,<
　　 　 　 　 　 .>､　 ｰ――‐,‐ ´ ξ＾＾ξ　　|　　 　 　 　 ｀ｰ､－――‐ ,<
　　　　 　 　 　 >､　 ｰ‐,―､´　　 　 V 　 　.｜　　　　　　　　 ,｀ｰ､‐―‐ <
　　　　　　 　 / 　　　／::::::i＼.　　,.　-－―┴―－-　､ 　 ／!::::::::＼ 　　ヽ
　 　 　 　 　 /＿　／:::::::::八　 Ｙ　　　　　　　 　 　 　 　 Y　　八::::::::::＼ ＿ヽ
　　　　　　　　i::::::::::::: ／:i;;;;;ヽ. ヽ　　　　　　　　　 　 　 /　 ,/;;;;;;ト:::::::::::::::::<
　　　 　 　 　 i::::::::::::::::::::/;;;;;;;;|ヽ´ ＼, -――――- ､／ ヽ´|;;;;;;;;i::::::::::::::::::::i
　 　 　 　 , - !::::::::::::::::::::|;;;;;;;/　　　　|　　　　　　　　 |　　　ヽ;;;;;;;.!::::::::::::::::::::!- ､

246 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:32:09 ID:ecndC5w8
六１２２．
何年もの後。
彼を謳う詩人は天上の星々に喩えて言った。



:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::+:::::::::::::::::::::::::＊::::::::::::::::::::::::::::::::::::+::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*:::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::人:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＜　 ＞::::::ｷﾗｯ…!::::::::::::::::::::::::::+::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::+:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::Ｖ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::*:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*:::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*:::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*::::::*:::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*::::::::::::::::::::::::::::::
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'*::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::+::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::*::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::＋::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
247 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:32:38 ID:ecndC5w8
六１２３．



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　_ .... _　/｀ヽ､、
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 r=≧≠´: : : : :｀｀ヾ､ﾍ:｀:,
　　　　　　　　　　　　　　　　　j: /: : : :.ﾍ: : :ヽ: : : :.Ⅵ: : :,
　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,: ,': /: ﾊ: :.ﾍ: : :ヽ: : : :li| : : :,　　　　　　　　「古来より、英雄星は孤独な星なのです。
　　　　　　　　　　　　　　　　,: ;' : i: :|-､ヽ∧Ｘ: :∨: :il| : : : :,　　　　　　　 至高より大地を見下ろし、
　　　　　　　　　　　　 　 　 ,: :{: : :i: :|ィﾃﾐ＼V心ｖⅦ!| : : : : :,　　　　　　 必要な時は他の星を従える。
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /: : !ﾊ: !从弋ｿ 　 ｀"´ﾒⅥ|: : : : : : :,
　　　　　　　　　　　　 　 /: : ; : :.ヽﾍ!ヽ.　　__,　 //　 '; : : : : : : :,　　　　　力を失えば星々は去り、また独りへと―――」
　　　　 　 　 　 　 　 　 /: : ; : : : : :＼ﾍ〉＞　＜ｲ 　　 ';: : : : : : : : ,
　　　　　　　　　　　　 /: : ; : : : : : ; -―＞〉/ヽ／ ⌒Y ';: : : : : : : : : ,
　　　　 　 　 　 　 　 /: : ; : : : : : /　 ,:':.:.:/l:l:.:.:.:.:.} 01 }　'; : : : : : : : : : ,
　　　　　　　　　　　/: : ; : : : : : / 　,':.:.:./l:l:lrｰｘ/　　 ' 　 ';: : : : : : : : : :ヽ
.　　　　　 　 　 　 ,.': : ; : : : : :.:/_＿{:.:.:/l:l:l:l:.:.:.:rｧｧｧｲ　 　 '; : : : : : : : : : : ヽ
.　　　　 　 　 　 ,.': : ; : : : : : /////:.:.:;'i:l:l:l:l:.:.:.:l////l 　 　 ∨ : : : : : : : : : : :ヽ
　　　　　　　　.ｲ: : ; : : : : : /////:.:.:.;i:l:l:l:l:l.:.:.:.l////,ｌ　　　　∨ : : : : : : : : : : :.:＼
.　 　 　 　 ／: : : ; : : : : : /才ｰ〈､、.;'l:l:l:l:l:l.:.:.:l/////l.　　　　 ∨ : : : : : : : : : : : : :＼
.　　　 　 /: : : : ; : : : : : ://///77777才二ﾐＹ/////,i.　　　　　∨ : : : : : : : : : : : : : : ' ,

248 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:33:09 ID:ecndC5w8
六１２４．



　　　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　 r ､　　 ／,ィ1　　　　　　　　　　　　　＿
　　　　　　 　 , -| ﾄ ＞'´￣￣｀ヽ￣￣ ｀ヽ,､　　　　／／}
　　　　　　／ : : ／ : : : : : : : : : : , -‐: : : 〈 ､＼　 / // /
　 　 　 ／: /: :, ': : : : : : : : : : :／, -‐: : : : :ヽヾ､Y__// /
　　　 /: :.:/: :/: : :.// : : : : : /:／: : : l: |: : :l: :', V/ : : ｀ヽ、
　　　,': : /: :/: : :./ ! : : : : : //l : : : : l ハ: : l: :! /: : : : : : : ＼　　　　　　　「―――ですが、今世は違いました。
.　　 i : : !: :i: : : /: :|: : :./:7メ、!: : : :/l:|　 ',: :!:.l/|:l: : : : : : : : :.＼
　　 |: : :.|: :|: : /: :/|: : ,' ｲ rｭ､ﾄ､: :/-ﾘ―-ヽ|: :∧',: : : : : : : : : : ヽ　　　　　未だかつて無い輝きを放ちながら、
　　 |: : :.|: :|: / : ,' .|: : i :|:! {ｨﾊ　ヽ{ zﾃ云 ､ |:./::∧ヽ : : : : : : : : : ﾍ　　　　 集まってきた星々を護り、護られているのです。
　　 |: : :.|: :|/: : :i.　!: /|〃l弋ｸ 　 　　{ｖｲ} 〉! :::::::∧ ヽ: : : : : : : : : :ﾍ
.　　 !: : :',: : : : : |　∨ {{Ⅵ　　 '　　　 `ｰ´ /:/:::::/　ヽ: :＼ : : : : : : : :ﾍ　　 それは決して従えているのではなく、
　 　 V: : ヽ、: : :| 　　 ヾ､/＼　` ‐ 　　 ／:/`ｰ′　　＼: :＼: : : : : : :ﾊ　　まるで惹きつけているかのように―――」
　　　 V: : : :ヽ: : !　 /　 /:.:.:.:.:` ｧ-‐_ Zｲ／ 　 　　 　 　 ＼: :ヽ: : : : : : i
　　　　V: : : : :ヽ:|　ｉ ,ｨ/:.,:.:.ィ‐くr '':.／:.:.}､　　　　　　　　　 ＼: : : : : : : !
.　 　 　 V : : : : : ＼' /´_.. -{__ノ!:.:´:.:.:.:./: :ヽ、　　　　　　　　 ヽ : : : : : |
　　 　 　 ',: : :.', : : : :＼´ ／ /:.:.|:.:.:.: ／:.:.: ／ヽ、　　　　　　　　ヽ: : : l |
　　 　 　　', : : ', : : : : : ＼ ./:.:.:.:|:.:. /:.:.:.／ 　 　 ヽ　　　　　　　　 ',: : | |
　　　　　 　 , : : ＼: : : : : :.＼:.:.:.|／:.:. / 　 　 　　 | 　 　　　　 　 　',: :!ﾘ
　　　　　　　 ,: : : : ＼: : : : : : ＼:.:.:.:.:/　v′　01　| 　 　　　　　　　 } /

249 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:33:38 ID:ecndC5w8
六１２５．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　見てください、晩秋の明け方に東の空を。

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　＋　　　　　ﾟ　　.　＋　　　　　　　　　　　　.　.　．ﾟ .ﾟ。ﾟ　。　,ﾟ．。ﾟ.　ﾟ．。　.。
　　　．　.　　　ﾟ　　.　o　　　　ﾟ　　。　　.　　,　.　.o 。　*　.ﾟ　+　。☆　ﾟ。。．　　.
　　　　　　　　　　　　　　　。　　　　　 　｡　　*。,　+　。.　o　ﾟ,　。*,　o　。.
　　ﾟ　　o　　　.　　。　　　.　　.　　　,　　.　,　ｏ　。ﾟ.　,ﾟ　。　＋　。　。,ﾟ.。
　ﾟ　,　　　,　。　.　　　＋　　ﾟ　　　。　　。ﾟ　.　ﾟ。,　☆　*　。ﾟ.　o.ﾟ　　。　.　。
。　.　　．。　　　　o　　　．.　。　ﾟ　 ﾟ　,　。.　o　。*　。　.　o．　。　．　.
　　　　　　　　。　　　.　　　。　　．　.ﾟo　。　*．人。　．.　☆　.　＋.　.　　.
　。　.　　．　.　　　.　　　．　　。　ﾟ。,　☆　ﾟ.＜ 　 ＞　ﾟ　,。　.　。　　,　.。
　　　　ﾟ　　。　　　ﾟ　　.　　+。　ﾟ　*　。.　,　。ﾟ .Ｖ　。*。　ﾟ.　　　.　.　．　　.
　。　　.　　　.　。　。ﾟ.　。*　。,　´。.　　☆。。.　ﾟ。+　。　.。　　.　　｡　　　.
　　.　　　。　　ﾟ　ﾟ。　。,　.。o　☆　+　,ﾟ。　*。.　。　。　.　　　　。　　　　.
　ﾟ　.ﾟ　ﾟ　　。ﾟ　+　。.　+。　*　。ﾟ。ﾟ.,　,+　。ﾟ.　。　.　.　　　,　　　　,　　　.
ﾟ。ﾟ+ﾟ`,　o。。.ﾟ*。ﾟ　。.ﾟ　。　☆＋。。ﾟ.　°　。　.　　　,　　　　　　ﾟ　　　　ﾟ
　。,　.ﾟ。　+　☆。,ﾟ.　o。 。+　。ﾟ.,　　.　ﾟ　　　,　　　。　　　　　。　　　.　　　.
　ﾟ.　ｏ　*　。ﾟ。ﾟ.。ﾟ。+ﾟ　。　。　ﾟ。 ﾟ　。　　ﾟ
ﾟ`　.ﾟ　.ﾟ.　ﾟ.　.　ﾟ　　.　　ﾟ　　.　　　,　　.　　　　　.　　.　　　。　　　　　　ﾟ　.
　.　　.　　　　　.　,　　　　　。　　　　　　　.　　　　　　　　　　　.　　,　　　　.
　　　　　　。　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾟ　　　.　　　　　　　　　　　。


250 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:34:09 ID:ecndC5w8
六１２６．



　　　　　　　　　　ﾚ'／: : ; ｲ : ∧ : : : : ｀ヽVﾍ:.:.: : : : : : : : .:.:',
　　　　　　　　　/:〃: : :/ヽ|: .;' .,_'; : : : :. : l:V;|:.:.: : : : : : : : :.:.:',
　　　　　　　　 ,'/:;' :.: /,.ｭ, l: ;'　　｀'､: : :.:. .l:.ﾔl:. :. : : : : : : : :.:.:.',
　　　　　　　,.:'l/ .:! :.';{.'.牝 '; l　 ,-z.､ヽ: : :.:l,. ､'; :.: : : : : : : :. : :.ﾍ
　　　　　 ／: : : :.ﾊ: :.:ﾄ ゞ'　ヾ　' 什::ﾊ'ﾄ､: lΞﾊ: : :. : : :. : : : :. :.:,ヽ
　　　　／: : : : .:. : ﾊ :{ 　 '　　 　 ゞ‐' ,': :∨カ:,:ﾍ: : : : : :. : :. : :.:.:',ヾ;､　　　　　　「天の全てを懐に抱いた英雄星の周りは、
　 　 ,.': : : : : .: : : .:.ﾉ:人　ト_､　 　 　 ,': .:ｨ';_ノ、　'; : : : : : :.:.:.:. : :.:.', ヾ;､　　　　　 まるで金色の大銀河のよう―――」
　　,.': : : : : : : : : .:.:.'ﾊ.,.∧ ゞ-' 　　 ,.':／｀l__ヽ） 　'; : : : : : : :. :.:. : :.',　 ヾヽ
　,.': : : : : : : : : :.:.:ﾊ.| '; l ',.'､ __ ,._._:' '-‐ ' ´　}ﾉ　　 '; : : : : : : : : : : :.:.ヽ 　｀
,.': : : : : : : : : .:.:.:.:l. ';l　';! .}　 ,λ´__　　　　,ノ::ヽ　　 ':, : : : : : : : : : :ヽ:.:.ヽ、
: : : : : : : : : .:.:.:.{.'l';_,'.l-'lr lﾞγ)｀´　 ﾊ　／:::::::::::::ヽ 　 ':, : : : : : : : : : : :ヾ ､ヽ
: : : : :.: : :.:.:.:.::/ﾊ_〉　´＿_'λl / 　　//:::::::::::::::,.ｨ='.ﾍ　 ' ,: : : : : : :. : : : : ヽヾ
: : : .:.:. .:.:.:.:.:/　,}´l ﾔ´_＿j ' l/　　 ｲ':::::::::::::／:;:．--_ヽ　',: : : : : : : :. : : :. :ヽ
: : .:.:. .:.:.:.:.:/　 ;{　ﾍ ´ ___,.....,j_ 　 l ∧::::::〃:／:::::::::::::｀} 　 ;. : : : : : : : :.:. :.:.:
: .:.:.:.:.:.:.:.:/　 r'ﾄゝ_',>'´,.. -‐‐'-;　l　∧:〃:/:::::::,.:=､::::::;'　　l:.:. : : : : : : : :.:.:.:
.:.:.:.:.:.:.:.:/　　ｿ ｀ｰ'ｿ ´:::::::::::::::::「r｀ﾃ'´:r')':::::::::/ , ,.ﾘ::r'　　 l:.:.:. : : : : : : : :.:.:
:.:.:.:.:.:.:.;'　 ,/::::::::::::ﾍ:::::::::::::::::::::::l::ヽ:::ゝ{:::::::::::::{ ゝ/:r '　　　l:. :.:.: : : : : : : : :.
:.:.:.:.:.:.;'. ／::::::::::::::::,ｨ∨::::::::::::::::ﾍ'::´:;| l.',::::::::::::ゞ'::/　　　　 ; : :.:.:. : : : : : : :
:.:.:.;.:.:.l ,'::::::::::::::::::::;':ヽ∨::::::::::::::::ヾ<ﾍ ',: ',:::::::::::,ｨ'　　　 　 ,' : ;l:.:.:. : : : : : : :
:.:.:.l;.:.:l.{::::::::::::::::::::;l::o:｀∨:::::::::::::::::::::ヽ', ', ヽ:::,ｨﾄﾍ　　　　/: :/ !:.:.:. : : : : : :
:.:.:.l.',:.', ';:::::::::::::::/ |::::::::::∨:::::::::::::::::::::::ﾞ:', ',:>ヽl 'v }.　　 /: :/　|:.:.:. : :. :. : : :.
:.:.:.', ',:.:',ヽ_;: ‐'´　 l::o:::::::ヽ:::::::::::::::::::::::::::>､'､｀ ドノ　　,.' :;.'　　;.: :. :.:.:.:.:.:.:.:.:.
:.:.:.:.', ヾヽ. 　 　　　}::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::／::::ﾄ,ヽﾆｿ. 　, ':／　　 ,':. :.:.:l:.:.:.:.:.:.:.:.
:.:.:.:.:.',　ヾヽ.　　　 ﾉο::::::::ο:丶:::::; ':::::::::::::ヾ、　／ '　　　　/: :.:.:;ｲ:.:.:.:.:.:.:.:
:.:.:.:.:.:.'.,　 ヾヽ、　j:∧::::::::::::::::::ス:´::::::::::::::::::::::,｀'<´　　　　 / : .; ' /:.:.:.:.:.:.:.:.


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━……

251 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:35:09 ID:ecndC5w8
六１２７．
━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

やらない夫の話はそれなりに長い時間を必要とした。

一度、オヤジの作ってくれた夕食を挟んだ後、



　|| 　|| 　||　　 ;;　|| 　|| 　||　;;К　|| 　|| 　||　　　　|| 　|| 　|| ;;　 　 || 　 　 　 　 　 || ;;
　||--||--||　　　　||--||--||　　　　||--||--||　　　　||--||--||　　∠ || 　 　 　 　 　 ||
　|| 　|| 　||　;;　√|| 　|| 　||　　　　|| 　|| 　||　　;'　 || 　|| 　||　　 　 ||´二＼ ／二｀||
　|| 　|| 　||　　　　|| 　|| 　|| 　 ;;';　|| 　|| 　||　　　　|| 　|| 　||　 ;; 　 ||三三 l l 三三||;;
　}三三三{　　　　}三三三{　　　　}三三三{　　　#;}三三三{　　 　 || ≡≡l l≡≡ ||
　,. ＿＿＿＿ 、 ￣￣ｉｉ￣￣￣ｉｉ￣￣￣,. ＿＿＿＿..、　￣￣ｉｉ￣||三三_l l_三三||￣
　　　　　　　　　）＿＿||＿＿＿||＿＿_（　　　　　　　　 ）＿＿_||＿||_._._._._._._._._._._||＿
　￣￣||￣￣´　 ＿＿||　 　 　 ||＿＿　 ｀￣￣|l￣￣´　 ＿＿||
　　 ＿||＿　　　 |l　　 ||　 　 　 |l　　 ||　　　 ＿|l＿　　　 |l　　 ||
　　 .￣￣　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ￣￣


　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＼
　二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二二ｉ＼.　　 　 ＼
　二二i　 *=<二二i　 *=<二二i　 *=<二二i　 *=<二二i　 *=<二二i　　]＼＼
　三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三三ll＼＼＼
　￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣ﾞ'＼＼＼＼__



国王が毒殺された可能性のある事など、
まだ伏せて起きたい項目は避けた彼は最後に
この町に新しい情報が入ってくるのは明日だろうなと締めくくる。



　　　 　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　　|　　　 （ ●）（●
.　　　　　　　　　|　　　 　 （__人__）
　　　　　 　 　　 |,　 　　 　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　　　　　　「と、言うわけだ。
　　　　　　 　　 │ 　　　　 　　 ｝　　　　　　　　　　　　多分明日の朝には
　　　　　 　　　　 ヽ､　　　 　　ｿ　　　　　　　　　　　　何らかの情報が入ってくると思う」
　　　　　　　 　 ｲ斗┴r┐｀ .;
　　　　／￣`ーゞ､　 /　|__ 〈ー─r､
　　　/　　　　　＼ ∨＼ 　|,ベ._ /　|
　　 ｛　　　 . : : : . ヽ＞ｰ＼[￣{ 〉＼|､_
　　　| 　 　 　　 ｀丶}＼　 __＼_]~∨'＼｀ヽ
　　　:|　　　._　　　　＼_}/r‐-}＼　ﾞ,`''く l　ﾞ,
　　　 ﾄ､: :./ ／￣｀` ぐ└f'二）::{　 ',　 | !,ゞ┐
　　　 `､∨ ´　,.､-''"~￣}_｛‐''く:::{_　 ', _|_|_,rｰ'､_
　　　　 }｛　／　_､-'''"~￣{_＼;;;;;ｊ;＞＜;:::::＼:::ﾍ}＼
　　 　 　}∨: ／　　_､-''ﾞ~￣￣　　　　　＼::::},之_　ヽ
　　 　 　 〉∨ 　 ／　　 　 　　　　　　,.､イ;;ノ_ 　 ｀ヽ}
　　　　　{:　＼,/＼　　-‐　'"　　　／｀￣　　　 　　:.:｝
252 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:36:09 ID:ecndC5w8
六１２８．



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ　　　　「国王様が病死なされた途端、
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,′　　　 大臣が武装蜂起するとはな。
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl　　　　しかしこの分なら、
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ　　　　二人も何らかの罪を着せられるのでは？」
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



王女の無事は喜ばしい事だが、情報の発信地であるカーディナルを出てしまっては
国内に知らしめられる話は彼らにとって不利なものになるだろう。

懸念するオヤジに、その辺りはもちろん予想の範囲内であったやらない夫は余裕のある様子で頷いた。

避けたかったのはエスメラルダ入りを難しくする情報への遅れであり、
こうして無事町の中に入り込んで信用出来る拠点を手に入れた今、
どのような悪評や濡れ衣が着せられようとも彼に取っては大した事では無い。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　（ ●）（●）　　　　「王女誘拐犯とかだろうな。
.　|　　　　（__人__）　　　　 まあ、手配書から読み取れる情報だってある、
　 |　　　　 ｀ ⌒´ﾉ　　　　 楽しみに待つとしよう」
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |
253 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:37:09 ID:ecndC5w8
六１２９．
それで、二人の協力者を含め、これからどうするかを考えていたやらない夫は
一人ずつ指示を与え始めた。




　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　／　　_ノ　,ヽ＼
　　　　　　|　　　（ ●）（●）
.　＼　 　　|　　　　 （__人__）　　　　「これからの事だが。
　　 .＼　　.|　　　　　｀ ⌒ﾉ　　　　　面の割れやすい真紅は宿屋で待っていてくれ。
　　　.　＼　ヽ　　　　　 　}　　　　　 ジュンは護衛を頼む」
　　　　　 .＼_,ゝ　　　 　ノ
　　　　 　／, r､　　　　く
　　　　 ./　〈　 ＼　　 　i
　　　 .　ヽ､ .ヽ 　 ＼ i..｜
　　　　　 　.て_）　 　＼ﾉ
　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　 ＼
　　　　　　　　　　　　 　　 　＼



まず真紅。
彼女が待機なのは町へ来る前から決まっていた事だった。



　　　　　　　　　 　 _ {　　　/--t一-. ､
　　　　　.　　　 ／Ｘ/｀ーｧ'Ｘ Ｘ,}!工エエﾄ､
　　　　　.　　 /'ﾞ＼/ー‐'／ ヽX}! ┼┼:十:ヘ.
　　　　　　　/＼／＼／＼／ヽ}!-┼┼┼ 十ﾍ
　　　　　　〃／＼／＼／＼／}!-┼┼┼ ┼:|ﾊ
　　　　　　'iく＼／＼／＼／ヽ,j|＿|___|__|__ _|__|_1
　　　　　　'ヽ／＼／＼／＼／}!＿|___|__|__ _|__|__i　　　　　　「分かったわ。
　　　　　. ／＼／―／--／:ヽj|土土⊥⊥. _|__|　|　　　　　　 私に出来る事があったら何でもするから
　　　　　. ト- 'rf"下丁iー---个ドﾐ￣T冖ｔ-- ニ ﾕ,　　　　　 遠慮無く言ってね？」
.　　 　 　 ﾞ√ﾐf⌒! l/, f´Ｙﾐ-ｧ｀ｌヾ''ドﾐt,ﾐ Ｘ Ｘ ＸＸXﾍ.
　　　 　 /ヽヽﾍ　 〃l ﾍ ゝ-'　　　　 'r'::ﾒ｀ ドﾐ X Ｘ Ｘﾍ.
　　　　 l! |-l＼'ﾍ::ｿ　 ﾊ!　　　　　　　t_ｸ/　|/,_｀ドﾐ ＸXﾍ
　　.__　||､　|:!　'rゞ:|!　|　ヾ　　　　　 ,　 /if |　 f　ﾙﾍ｀￣´
　　＼｀|| ヽ|:! ,f三::|!　ﾄ___i|　　－､　 ／ﾍ｀ヽ　| /∧ ＼
　　　 | ﾚ　 ´`!､三.|!　'＼.|!　　　, r ´=ｰ､ｊ-,. ヽ// f'|｀ｰ,i
　　　 ヽ　 l　　Vゝﾐ＼　　＼-ｒ ',＝＝　／　ヾ'∧　 |　 l |
　　　　l　 l　　 |八,ｊ- .＼ _ヽ＼く三=　（　　ｖ'/　ヽ_ﾉ　 l j
　　　　l　　　　l　<´＿　　　￣ ＼三　　＼ ﾚヽ＼　＼ `
　　/⌒l　　　　|` 三三⌒'ー - 、　＼　　　へｌ　｜,r--ｫ



素直に頷いた彼女はいざと言うときは手駒にされても構わない覚悟を告げ、
そんな事は自分が居る限りさせたりしない、と気合い十分のジュンが続く。



　　　　　　　　　 ＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　 　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　 　 　 　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|　　　「了解」
　 ｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　 ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　 フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　 ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　　　　　 　 　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ ー='´　 ＼
254 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:38:09 ID:ecndC5w8
六１３０．
次に、幸運にも得られた協力者達。
彼らの安全、生活を脅かす事は絶対に許さないやらない夫は
日常の延長線で可能な作戦を授けると



　　　　　　／￣￣＼
　 　 　 _ノ　　ヽ、　　＼　 　,.:┐
　　　 .（ ●）（ ●）　　..|　／　｜　　　「オヤジさんは店を開けてくれ。
　　　 （__人__） 　　　　.|./　　 /　　　　どんな小さな情報でも良い、かき集めたいんだ。
　　　　 i⌒ ´ .r－､　　|/　 ／　　　　 人を呼ぶために割り引き期間って事にして、
　　　　 { 　 　 ヽ,　',. .,/　:/',　　　　　 サクラは町でその宣伝をしながら南の街道付近の監視。
　　　　 .ヽ　　　.|　 l_/_, -‐､',
　　　　　 .ヽ　.　| 　 / , -－'i|　　　　　その分の金は俺が払うから
　　　　　　/　　 {　　V , -－ﾍ　　　　 半額引きぐらいでどーんとやってくれ。
　　　　　　|　　　ヽ　 Ｌ|　r=　|　　　　 高い酒、良い食材、何でも好きに用意してくれて構わない」



ホールディング・バッグからその為の軍資金を取り出した。



　　　 　 　 　 　 　 r―-､＿_r―-､
　　　　　　　　　 　|―‐z＿＿,r:､__）
　　　 　 　 　 　 　 |　　|　　　/　 /＿__r-､
　　　　　　　　　　　>―-､＿＿ノr―‐┴'′
　　　　　　　,. -‐'''"￣￣`―〇ﾆニニヽ
.　　　 　 ／　　　　　　　　　　 ＼ 　　 `〇
　　　　　| 　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　|　　ｼﾞｬﾗｯ
　　　　　ヽ　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　＼＿＿＿＿＿＿_／



　　　　　　　 ／l
　　　 　Λ／　〈 へ、
　　　ヘ|　　 　　　　 ,＞
　∠　　/　　　〉ヽ　 ￣＼　　　　　　　　　　　　　ｽｰﾊﾟｰ・ﾌﾞﾙｼﾞｮﾜ・ｵﾍﾟﾚｰｼｮﾝ
　/　ノ〈 |＾＾| /＼ﾄ､　　ﾄ､l　　　（出ました、やらない夫の超金満作戦）
　|／| .ﾊ|__ |/＿__　ヽ　 ヽ
　　　l/　　|‐|　　 |―ヽ＿|
　　　 | ￣ c　￣　　　6 l
.　　　ヽ (＿＿＿_　　,-′
　　　　 ヽ ＿＿＿ ／ヽ
　　　　　／ ＼∨／　l ＾ヽ
　　　　　|　|　　　　　 |　　|



それに慣れ始めている自分に苦笑したジュンには
無限にも思える彼の予算の出所は分からない。

だが安全の、戦力の、時間の、情報の、そして命の対価が金で済むのなら安いと思っているのだろう。
金を出す事をまったく迷わないやらない夫の裕福さも、
あるいは剣術、体術に続く一枚の切り札と言っても過言では無いのかも知れなかった。
255 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:39:09 ID:ecndC5w8
六１３１．
情報集めは自分の得意とするところだと胸を叩いたオヤジと



　　　　　　　　＿_ 　 ＿_
　　　　　 　 /　　 ｀￣　 ヽ
.　　　　 　 上二二二二`┤
　　 　 ⊂ニ,-r‐-､──-｀二⊃　　　　「分かった、任せておけい」
.　　　　　{ｨ|| { 　 {jｰlj⌒)　|ｋ}
.　　　　　ヽｌ　 ,. -(つ- ､　 ﾚ'
　　　 ,⊂⊃∨　　, -､　 ∨⊂⊃、
　　 /　i　 / ﾚvv/ー‐ﾚv､| ヽ　 i ヽ
　／　 |　 ＞L.二⊥⊥二.｣＜　 |　 ＼
（　　　| 　 ＼|　　＼／　　|／　│　　）
. ＼　 | 　 　 |　 　 ○‐　　|　　　|　／



恩人の役に立てる事が心から嬉しいサクラは、どうか自分達に任せて欲しいと
早速明日からの割引に向けたメニューや広告の作戦を練り始め、



　　　　　　　 　 ／　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　/　/ 　 　 /　　　　 ヽ　　＼
.　　　　　 　 /　 ′　/ /| l i 　 　 　 ',　　　 .
　　　　　 　 ′ 　 ｉｌ | | ｌ |{　　　　｜ｉ　　｜
　　 　 　 　 |　 ,|　　 lj⊥Ｎ┼ヽヽ.　,小|　i | |
　　 　 　 　 |　l |　　 ｌィﾆ下　　 ｿ}厶jﾉ| ///　　　「任せてください！」
　　 　 　 　 |　Ｎ　　 ｌ 辷ｿ　　　　ﾄｉ| Ｖイ '
　　 　 　 　 l 　 |　　 l |　　 　 　 j ｀　{　|
　　　 　 　 .′　l　　 l |　　　ｰ-　 　 ﾉ /
　　　　　 /　　　| ｉ　 l |丶.　　　　／l /
.　　　　 /　　　/| ｌ　 ｌ | 　 ｀7T ´l　 ｉ{
　　　　/　　 _厶| ｌ　|‐-､_{-l　 ｌ　 ヽ
　_____厶＜　 　 | ｌ　|　厂`ﾊ　 l　 　 ＼
/　／　　　 ＼　ヽヽ｜|/　　{　丶Ｌ ＿_　 ヽ
　　　　　　　　ヽ　　}ﾉ/　　　＼　　｜　 ＼｜

256 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:40:09 ID:ecndC5w8
六１３２．
頼もしい味方を得る事が出来た、と出会いに感謝したやらない夫は
あらゆる状況に対応できるように考えを巡らせる。



　　　　　　　　 　 　 　 ￣　 　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　 　 　 ＼
　　　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　､＿　　ヽ
　　　　'　　　　　　　　　　　　　　 ｀　､ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　　,‐-,.._ ゞ　　　　「出回るであろう手配書の出来次第では
.　　　l　　　　　　　　　　　　　　l　弋心 l　　　　俺も他の酒場を回ってくる。
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.ー　く
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　ﾉ!　　　今は慌てず、情報収集に集中しよう。
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 ｀ー‐ f ｒ'　　　 何か大きな動きが無い限りは
　　　l　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾉ'　　　　 動きようがない」
　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /
　　 ,'　　　　　　　　　　　　 　 　 　 /　　　　　　（あるいは―――もうこのクーデター、
￣　｀ー -　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　　　成っているのかも知れない）
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　　/
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　..:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
　　　　　　..:.:.:.:.:.:.:.｀:.:､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./



現状、最悪の可能性も多分にあり得る。
その時の判断の全てを委ねられている彼の、内心の思いを知ってか知らずか



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 _〕　　　　　／/ 　 　＼　　　 　 ヽ　　　　　　＿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　 {.　　 　 　/　/　 　 　 〔　　 　 　 　 ＼ー‐rｲ 　　 く ―┐
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　　 つ　　　/ 　,　 　.| 　 . ＼＿　 　 　 　 l:::::::l　　 　　|二二1
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 　 　 └‐t　 / 　 |　　　| l　　| 　　].　　 　 　.l:::::::l　 　 ｲ〔V　 | |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　 Ｌ. | l　l l　| 　.ｌ |　Ｎ　　 廴 ィ　　　 l:::::::|　 　 　 | ∨/
　　　「任せます、あなたに」　　.　　　　　 　 　 　 　 | l 　 {fﾊN　ﾅ斗=弍㍉!　　 　,ィヱﾍ　　 匸　| l
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　　ｌヽ| .ﾍ .V:j|ハノ　　Vﾟ/ﾊ　|＿　 〈ﾍ{そﾘ　 　　|　l |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　| 　|.} ゞ'　 　　　 r込ｿ　八.Ｌ　 ト-r' 　 r イ　 !|ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ヽｊ |／／／／／／／　| ｲ　|/::::/ ＿ﾉ　|　l !ヽ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　八　` _　　　　　　 　 .ｌ |l　 !::://／. 　 |　! |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ＼‘ '　　　　　　　 l l | 　!/／　　　　! l　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 //|ヽ､__　,　 r'´　//￣|　lﾌ　　 　 　.l l　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /／| l　／￣, ｨ､ .//::::::::l　|ｰｔ.　 　 　 l｜　!
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 //r'´￣:::::::::::{rｹｿ//::::::::/ /}::::::＼　　　l |　｜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ／´　l:::::::::::::／:ﾄこｿ{ {:::::::/　}::|:::::::::::::ヽ 　l/ 　 !
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 ヽ| ／＼:::::::::::::/:::::::＞'´￣／::j:::::::::::::::::::l　|　　 |


真紅はその横顔をただ頼もしく見つめるだけだった。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━……
257 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:41:09 ID:ecndC5w8
六１３３．
━━━━━━━━━━……
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

翌朝。
カーディナルからの強行軍が堪えたのだろう、まだ眠っている真紅と
目を覚ましてはいるが、布団から出てこられない様子のジュンを残して部屋を出た。



　　 ／￣￣＼
　／　　 _ノ　　＼
　|　　　 （ ●）（●）　　　「おはようオヤジさん。
.　|　　　　 （__人__）　　　 さっき、誰かが来たみたいだけど」
　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ
.　 |　　　 　　　　 }
.　 ヽ　　　　　 　 }
　　 ヽ　　　　　ノ
　　　.>　　　 <
　　　|　　　　 |
　 　 |　　　　 |



　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 　　| :.　＼＼.| 　 |.＼＼　:l　　:|　　:| 　 :|　　:| 　 :| 　 :|
＿|────────────┘::.. 　 ＼＼　| |　＼＼　　:|　　:| 　〈二二二二二二
　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;　　 　 　 　 　 　 　/7 ＼　 　 　 ＼＼.| 　 |.＼＼ :|　　:| 　 ||　 　 　 ||
　|;;;;;;;;;;;;;;; 　 ｌ|　 三三　 ∠＞//|ｌ　　＼　 　 　 ＼＼　| |　＼＼　..:| 　 ||　 　 　 ||
　|;;;;;;;;;;;　　　||==============||::.. 　　＼　 　 　 ＼＼.| 　 |.＼＼:| 　 ||======||====
　|;;;;;;　 　 　 ||┌─┐　日巛□ ||::::::.. 　 　＼　 　 　 ＼＼　| |　＼＼　||　 　 　 ||
　|;;;;　　　 　 □============□::::::::::.. 　 　 ＼　 　 　 ＼＼.| 　 |.＼＼_､　　　 ||
　|;; 　　　　 　 　 　 　 　 :::::::::::::::::::::::　　 　 　...::::＼　 　 　 ＼＼　| |　＼:」二二二二二
　|　　　　　　　　　 　 .<二二二> <二二二> <二二＼　 　 　 ＼＼.| 　 | l　 :| 　 :| 　 :|
　|　　　　　　　　　...::::::| :l :l :l :l.:|　| :l :l :l :l.:|　| :l :l :ｌ :ｌﾞ＼　 　 　 ＼＼　| l　 :| 　 :| 　 :|
￣|＿＿＿＿＿＿_.::::〈￣￣￣_〉〈￣￣￣_〉〈￣￣￣_〉_:＼　 　 　 ＼＼.l＿:|＿_:|＿_:|_
＿|::..　「￣￣|　　　　　| :l :l :l :l.:|　| :l :l :l :l.:|　| :l :l :l :l.:|　￣.＼＿＿＿＼_」
　　　 ,.|＿＿:|＿＿＿.、　「￣| ´ ｀￣￣￣´ ｀￣￣￣´
　　 （＿＿＿　＿＿＿）　|　 i|　　　　　　（ ￣￣￣￣￣￣ ）
　　　　|l￣ "l|||　　　 　 ｒｰ─i|　　　　　　　｀￣￣｀||´￣￣´
　　　　　＿＿||＿＿　　|!￣｀l|　　　　　　　　 ＿＿||＿＿
258 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:42:09 ID:ecndC5w8
六１３４．



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ　　　　「やらない夫！
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ　　　　 今呼ぼうと思っていた所だ、
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,　　　　　これを見てくれ！」
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　／　 ヽ､_　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（●）（● ）　　　|
　　　　　　「来たか」　　　　　　　　（__人__）　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 （｀⌒ ´　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　　 { 　 　 　 　 　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　{　　　　　 　 ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　 　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ　 　　 ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /　　　　　 |



厳しい声と手招きでやらない夫を呼んだオヤジは
ついさっき渡されたばかりの手配書をカウンターに投げ出し、
259 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:43:09 ID:ecndC5w8
六１３４．
案の定、似顔絵の程度は大した事がないな、と眉を動かしたやらない夫は次に
文章を確認して―――



┌───────────────────────────────────────────┐
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　真紅王女誘拐犯　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.....│
│　　　　　　　ローゼン国王毒殺犯、エンジュ＝サクラダとも繋がり有り　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 │
│　　　　　　　以下の首を挙げた者には一人につき金貨二十万枚を与える　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　また、さらわれた真紅王女を救出してカーディナルへ連れ帰った者には　　　　　　　　　　　　 .│
│　　　　　　　別途金貨二十万枚を与える　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　......│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ローゼン王国　臨時国家元首　麻呂＝イチジョウ　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　、　　　　＿__　　　　　　 　 .│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　､＿二ﾆ=-ヽ｀¨Y´::::∠__　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞:::::::::::::::::::::::::::::::::::::＜　　　　　　..│
│　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　∠ ィ´￣／´ﾌ;イ::ｌ:::::; ､::::::＼　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/こヽ　　 , ─-､ハ/　 ＼::::rヽ　　　　 │
│　　　　　　　　　　　　／　＿　＿　＼　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ゝﾝ'￣￣{ / /　ﾄ/´￣ヽ| `′　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　|　　 ･　　・　　 |　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/ ｀　　 　 ` ー‐' ヽ/ / ﾉl　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　|＠ （__人_）◎ ｌ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　 ‘　' ｀¨´　　　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　|　　 ｀ ⌒´　　 |　　　　　　　　　　　　　.　　 　 　 {　　　　　　　　　　 l　　　 ′　　　　　 　 │
│　　　　　　　　　　　　|　　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　　　　　,.∧　　　　　　 　 　 ｜　　/　　　　　　　.....│
│　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　 　 }　　　　　　　　　　　　　　　　　／〈　 ､　　　　　,　-- ､｣ 　 /　　　　　　　　...│
│　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　　　ノ　　　　　　　　　　　　　　.　／　　 ＼ ＼　　　└‐-､　　　'　　　　　　　　　....│
│　　　　　　　　　　　　　　/　　　 く　　　　　　　　　　　　　　　.（　 　 　 　 ＼ `　　　　　′ ∠　　　　　　　　　　...│
│　　　　　┌──────────────┐　　　　　　┌───────────┐　　　　　　　　.....│
│　　　　　│　　　やらない夫＝Ｄ＝ビップ　　　│　　　　　　│　　ジュン＝サクラダ　　......│　　　　　　　　.....│
│　　　　　└──────────────┘　　　　　　└───────────┘　　　　　　　　.....│
└───────────────────────────────────────────┘

260 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:44:08 ID:ecndC5w8
六１３５．
恐れていた、犠牲を示す文言を見つけ出し息を呑んだ。



　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 ,,　　、　　　　　　　ｌ
　　　　　　　　 ゝ_　　　 _/　 .. ＞..、　　　　　l　　　　　 　 　 r⌒ヽ
　　　　　　　　　　`''''''‐" 　_ __ ﾆ:＿丶　　 　 1　　　　　 　 /　　ﾉ
　　　　　　　/　、　　　　　　＾''''ー ､__　ゝ　　 │　　　　　 /　／
　　　 / . ｌ 丿　　l'"! 、 、　'''-ｰ-､ ´　^ｰ-..､　.　　　 　 , ｧ"~
　　　 |　」　|　　|　|| ! 　! ｌ　│　'　　 ,ｒ _..,,　ｆ.　　　　（＿ﾗ
　　　 `、　 '、　ゝ　ﾉ　/ l　..′ ,´　　|　l│l .ｉ
　　　　　　　｀- － ﾞ‐'′　 --"　　,ﾍ ∪ ﾉ l.
　　　 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　´ /
　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 ｀）
　　　Ｕ　　　　　　 f　　　　　　　 丿　　 ヽ/
　　　　　　　　　　入 ＿＿＿ -'　　　　　,′
　　　　　　　　　（　V ｖ 　　　 　"‐＿ -'′
　　　　　　　　　　''-二ﾆ -=　　`'`ソ　/
　　　　　　　　　　　 ´　‐‐;ｭ ｀' ､ノ　 /...
　　　　　　　　　　　　 　ニ　　　′　丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　 丶.._ 　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　｀ﾞ　‐--- ＿＿＿＿-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
261 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:45:08 ID:ecndC5w8
六１３６．



　　　　　　　　＿_ 　 ＿_
　　　　　 　 /　　 ｀￣　 ヽ
.　　　　 　 上二二二二`┤
　　 　 ⊂ニ,-r‐-､──-｀二⊃　　　　　「………気づいたか。
.　　　　　{ｨ|| { 　 {jｰlj⌒)　|ｋ}
.　　　　　ヽｌ　 ,. -(つ- ､　 ﾚ'　　　　　　　そこにあるとおり、
　　　 ,⊂⊃∨　　, -､　 ∨⊂⊃、　　　　第一騎士団長エンジュ＝サクラダは
　　 /　i　 / ﾚvv/ー‐ﾚv､| ヽ　 i ヽ　　　 国王毒殺犯と発表され………
　／　 |　 ＞L.二⊥⊥二.｣＜　 |　 ＼
（　　　| 　 ＼|　　＼／　　|／　│　　）　三人がカーディナルを出たその晩に、
. ＼　 | 　 　 |　 　 ○‐　　|　　　|　／　　処刑されたそうだ………」



それが間違いでない事をオヤジが補足して、
エンジュの死を確定させられた彼に、言葉があろうはずがない。



　　　 　 　 _,. -┬ ｆﾆト､
　 　 　 r'´　､r　|　| ,.L |
　 　 　 |　　 （_ノ　j {.　'､＼
　 　 　 |　　　 }‐イ-上　〉. ＼　　　　　「………っ………！」
　 　 　 |　 　 ﾉ´　　 　 /)ﾟo　|
　　　 　i　　　 　 ｒ‐‐人__）　.|
　　　　　ヽ　　 .ノ　｀ ⌒´ .　|
　　　　　　i　　!,　　　　 　　ﾉ
　　　　　　.',　　ヽ、　.　 　/
　　　　　 　 ＼　 . 　　　　ヽ、
　　　　　　　　 ＼ 　　　　　|.i
　　　　　　　　 　 |　 　 . 　 | |
262 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:46:09 ID:ecndC5w8
六１３６．
だが現実は非情だ。
人の命なんて吹けば飛ぶほど軽い事を知っているオヤジは淡々と、



　　　　　　　　　　　　　　　　　_,,,,-―――-､,,_
　　　　　 　 　 　 　 　 ,,,-ｯ=''"｀　　　　　　　　｀ －.,.、
　　　　　　　　　　 ,／ﾞ,／　　　　　　　　　　　　　　 ｀'.ヽ、
　　　　　　　　　 ,i´;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　　　　　　　　　　｀､＼
　 　 　 　 　 　 /: ;;;;;;;;;;:,!　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ.ヽ
　 　 　 　 　 　 |: ;;;;;;;::;;│　　　　　　　　　 　 　 　 　 ,―-　!:lﾞ
　　　　　　　　 ﾞl.: : ;;;;:丿 ,,､---､、　　　　 'i､,　　　 ,,/　ﾞ、 .|.,　　　　　　
　　 　 　 　 　 ｒ'"''-、/　　　.lﾞ　 ｀ '-､,,_　　,!（ .,,,／　　 .|　ﾘ`i､　　　　　「第一騎士団と第二騎士団が戦ったと言う話も
　　　　　　　 .,!－､.ヽlﾞ　　　.|　　　　　 〈`|"　 l、lﾞ　　　 ,i´ Ｌ ﾞl　　　　　合わせて聞いた。
　　　　　　　 .lﾞ　 ,i´‐!　　　 "　　　　　 ﾞ'"　 __｀"｀　　　′｀lﾞ.lﾞ　
　　　　　　　　ヽ　'．,　　　　　　　 ､.――ｯ″｀ｯｰ-､、　　　 |　　　　　　まだ第一報だ、午後か夜にはもっと入ってくるだろう」
　　　　　　　　　｀､､lﾞ　　　　　　,､'";;;;;;;;;;;;;;;｀''''";;;;;;;;;;｀'-、　　|-．
　　　　　　　 _,／ﾞ/.|　　　　　／;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＼　,|. ｀'-､,、
　　　 .,,,､.‐'"゛　 ,lﾞ .ヽ　　　 ./｀;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ｖ-''ﾞ,｝;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ 'i､　　 `ﾞ'‐､、
: _,.-''″　　　　 .lﾞ　 .ﾞ,i､　　.,i´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;lﾞ''"＾ ﾞl;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ ｀　　　　　 `-、
."　　　　　　　 ,lﾞ　　.lﾞ ',!､,_lﾞ;;;;;;;;;;;:;;;;;;;;;;;;:|　　　ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:ﾞl　　　　　　　　 ヽ
　　　　　　　　　　　│ ｀'、|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,!　　　 .'、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ﾞl　　　　　　　　 : `i､
　　　　　　　　　　　　|.丶 ｀lﾞ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:.|＿_,,,－|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|　　　　　　　　　　｀i､



戦いの結果については今は分かっていないと続け、
酒場の沈黙に歯を食いしばる音だけが響く。

264 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:47:09 ID:ecndC5w8
六１３７．
取り乱さないように努め、自分を押さえつけているやらない夫の
握りしめる拳のあまりの力に、爪が手のひらの肉を突き破って血が滴った。



　 　 　 　 　 　 　 　i|　　 　　　　　　　　　　　　　　　　〈:
　 　 　 　 　 　 　 　l|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:
　 　 　 　 　 　 　 　 〉 　　　　　　　　　 　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　 　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:
　 　 　 　 　 　 　 　 ヽ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿/:
　 　 　 　 　 　 　 　 　:| :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;|:
　　　　　　　　　　 　 　|　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |
　 　 　 　 　 　 　 　　 :| :;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:|i
　　　　　　　　　　 　　 |　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |
　 　 　 　 　 　 　 　　 /::;:;:;:;:;::;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;::;:;:;:;:;;:::;:;ゝ
　　 　 　 　 　 　 　 　 ￣/￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|￣
　　　　 　 　 　 　 　 　 :/:　　　　　　　 　 　 　 　 　 |:
　　　　　　　　　　　　//:　　　　　　　　　　　　　　　 |:
　　　　 　 　 　 　 　//:　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |:
　　　　　　　　　　　:/:　　　　　　　　　　　　　　　 　 |i
　　　　 　 　 　 　 ｉ,':　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 ||
　　　　 　 　 　 　 l|:　　　　　　　　　　　　　　　　　　|:
　　　　 　 　 　 　 :|:　　　　　 　 ,::..　　 　 　 　 　 　 |:
　　　　 　 　 　 　 :|:　　　　　 ／::.:.:. 　 　 　 　 　 　 |i
　　　　 　 　 　 　 i|:　　　　 /￣｀ヽ::.　 　 　 　 　 　 ||
　　　　 　 　 　 　 :|:　 　 　 | 　 .::ノ:::.　　　　　　　　 |:
　　　　 　 　 　 　 :|:　 　 　 | :／　＼　 　 /:　 /:　//:
　　　　 　 　 　 　 :ヽ＿＿_人.＿＿_＿_／:. ／_／´
　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 .
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 :|
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 o
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 .;
　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｏ
　　　　　　　　　　　　　　　　　 :
　　　　　　　　　　　　　　　　　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ;
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |:
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｡
　　　　　　　　　　　　　　　　　 |
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 !
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 :|
　　　　　　　　　　　　　　　　　 :
　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 :!
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 .;:　｡
　 　 　 　 　 　 　 　 　 ､　　.　 |　　 .｡
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ﾟ　,､人,､'　　　ﾎﾟﾀｯ　ﾎﾟﾀｯ……
265 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:48:09 ID:ecndC5w8
六１３８．
数分して。
手配書を握りつぶした彼は低い声でそれだけを言い残し、



　　　　＿＿
　　 ／　　.　＼
　／._ノ三ﾆヽ、＼
　|　 （●）（●） .｜
.　|　　（__人__）..　|「ｒｰ＿＿ヽヽ
　 |　　 ｀ ⌒　 　 |　 .＼　　＼┌ｰｚ＿_ ┐７　　　「………真紅達に言ってくる」
.　 ヽ　　　　　 , ィ==‐､/ /￣￣乙/　／
　　 ヽ　　　　ﾉ⌒) ∨/　　／￣￣／|
　　　/　　　(_￣__／￣`く.＿ __∠ -┘｣
　　　|　　　　　/〃 ＼ 　 '"　 ＼　　　 -┘　ｸﾞｼｬ
　 　 |　　　 ./¨＼ 　 　＼,_　｀`ヾ}
　　　　　.　人''"　＼　 ､__ ｀　､_/　ﾉﾉ
　　　　　 〈 " ＼　__.ヽ　ヾ､._,)'´
　　　　／,ﾊ.　　ヽ.　 ､__｀ン{ 〃
　　　く　/ ∧ !､_　 ｀'_,／



とぼとぼと階段を上がっていく背中を見送ったオヤジは、
自分の出来る事をしようと仕込みを続ける。



　　　　　　　　＿_ 　 ＿_
　　　　　 　 /　　 ｀￣　 ヽ
.　　　　 　 上二二二二`┤
　　 　 ⊂ニ,-r‐-､──-｀二⊃　　　　　「ワシは仕込みを続けるよ………」
.　　　　　{ｨ|| { 　 {jｰlj⌒)　|ｋ}
.　　　　　ヽｌ　 ,. -(つ- ､　 ﾚ'
　　　 ,⊂⊃∨　　, -､　 ∨⊂⊃、
　　 /　i　 / ﾚvv/ー‐ﾚv､| ヽ　 i ヽ
　／　 |　 ＞L.二⊥⊥二.｣＜　 |　 ＼
（　　　| 　 ＼|　　＼／　　|／　│　　）
. ＼　 | 　 　 |　 　 ○‐　　|　　　|　／

266 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:49:09 ID:ecndC5w8
六１３９．


　「二人とも起きてくれ」

　　　　　 　 　 　 　 ／￣￣＼　　　　　　　　　 |┃┃
　　 　 　 　 　 　 ／　　 _ノ　　＼　　　　　　　　|┃┃
　　 　 　 　 　 　 | 　 　 （ ●）（●）　　 　 　 　 |┃┃
　　　　　　　　　　|　　　　 （__人__）　　　　　　　|┃┃
　 　 　 　 　 　 　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　 三|┃┃　ﾋﾟｼｬｯ!
　　　　　　　　　　 |　　　　　　 　 }　　　　　　　 |┃┃て
　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　 　 } 　 　 　 　 三|┃┃ て
　　 　 　 　 　 　 　 ヽ　　　　　ノ　　 　 　 　 三|┃┃(
　　　　 　 　 　 　 　 /　　　 く　　　　　　 γ⌒)|┃┃
　　　　　　　　　　　 | 　 　 　 ＼＿＿＿_ノ ' ノ |┃┃
　　　　　　　　 　 　 |　 　　　ヽ　 ＿＿＿,,、 　 |┃┃



さっき出て行ったばかりのやらない夫がもう戻ってきて乱暴にドアを閉めたので、
毛布から顔を覗かせたジュンは何かあったのかとベッドから立ち上がり、



　　　　　　　　　 ＞ -:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ /:.:.:|
　　　　　　　　　 >:.-:.－:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:｀´:.:./
　　　　 　　 r‐ ':.´:.:.:.:.:.:.:.:.::./:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:|:::ヾ:.:.／::|:.:.:.:.:.:.:／
　　　　　　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..|:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:|￣｀''- ､;i:.:.:.:.:.:.:.:.￣ヽ
　 　 　 　/:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:ﾊ:.:.:.|　　　　　 |∧:.:.:.:.:|:.:.:.:.:}
　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::V:.:.:./ -V:|_　　　　//:::.:.:.:.:.:K:.:.:.:|
　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∠V:./={´rvミ､=､_,, ,/　|:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.:.|　　「やらない夫？
　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/´＼-;/￣ V￣ | |ｲ≧ミ=､/ 　 |:.:.:/:.:.:<´ヾ|　　 どうしたんだ、怖い顔して」
　 ｀ '' 'ー -ァ:.:.:/:::r::j::./:::::::.　　　 | | 辷り｀ |}_　r-Vｿ:.:∧}
　　　　　 ／:.:.:.:ヽ::::::::::i:::::::::::　　　 ヽ廴_　 <ﾃ=/rァヾ:∧:.|
　　　　　 フ/:.:.:.:.:.＼::::::::::::::::　　　　　￣ヾ=ﾉ　 <-ﾝ /:| .V
　　　　　　´''- ､:.:.:.:./::::::::::::::::　　　　　　　　　　/=テヾ|
　　　　　　　　　 ヾ/:::::::＼::::::..　　　　　ー -　 　 /
　　　　　　　 　 　/:::::::::::::::::::::::::...　　　　 -　　.／
　　　　　　／＼./::::::::::::::::::::::＼:::::::::...　　 　／
　　　　 ／　　　∧:::::::::::::::　　 /｀ 'ー - ' ´
　　　ノ |　　　　　 }ヽ::::　　 　/_
￣￣　 .|　　　　　　 ＼　　　{　ヽ
　　　　 .|　　　　　　/　｀ ー='´　 ＼
267 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:50:10 ID:ecndC5w8
六１４０．
今まで聞いた事のないほど低い声に飛び起きた真紅も
ただ事ではないと感じ取って隣の部屋に着替えに向かった。



　　　 ／ ￣￣＼
　　／　　　 　 ノ ヽ
　　|:::::: 　 　　（● ）
.　　|:::::::::::　　　（__人）　　　　「真紅、ジュン。
　　 |::::::::::::::　　　⌒ﾉ　　　　　聞いて欲しい話がある―――」
.　　 |::::::::::::::　　　　}
.　　 ヽ:::::::::::::: 　　 }
　　　 ヽ::::::::::　　ノ
　　　　/:::::::::::: く
　　　　|:::::::::::::: 　|
　　 　 |:::::::::::::::|　|



　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｢｀ー'′／　 　 /　　 ヽ、 ＼ ＼　 ヽl}::.:)､ ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l_,ｨ　　/　/　　 l　 　 　 l 、　 ｌ　｀､　{:|}く＼ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ノ　 ,′ !　 　 {　 　 　 | l| 　 | 　 l　):|} ﾉ|:｢´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 ヽ∧| ,　| 　 |　l　 　 　 | ｌ|　　|　 l|　{:|!::）|:|
　　　「どうしたの？　　　　　　　　　　|::l| |　|　　ｌ　 、　 　 | l | _,厶| j| ｛::|}::} |｣
　　　 急に、改まって………」 　　　l:::| ｀、!| 　 ＼ ヽ、　|,.イ,斗予 |　|{K!j　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 〈:;小､ヽヽ、Ｔ,Ｚﾆミヽj　 ^ヾrｼ　|　|ァ１　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　 ＼ヽN {ヾtｸ　　　　 　 　 |　ﾄ |_|　 |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　｜　 | 　 l　＼　　　 ｀-　　 ／!| |::..::.｀:┴-､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　. 　 　 |　　|　　|　 | ＞ ､　_＿ ／::..::|| |::..::..::..::..::..:ﾄ､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 |　　j　 /|　 l/::..::..::..::..rｸﾆﾐ::../| |::..::..::..::..::./::..｀ヽ、
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　　　l　　 ! //l　 l::..::..::..::/;ﾊﾐZシ//| |::..::..::..::..:/::..::.｀ｰ┴―-ｫ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　j　　 ﾚ'∧!　,'::..::..::.〃::..::..::.ﾚ'/::| |::..::..::..::r'::..::..::..::..::..::..::/::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　/ / /|　ﾊ::..::..::..::..::..::. /l ﾄ､| |::..::..::..::{ー-::.ﾊ::..::..:: /::..|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　 /　　/ ｜{::.| ||::.＼::..::..::..::../::.| l::.| |::..::..::./::..::..::/::..＼::./:ヽ:j

268 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:51:09 ID:ecndC5w8
六１４１．
真紅が戻ってきてからの、消え入りそうな告白。



　　　　 　＿＿
　　　 .,／,-､　 ＼
　　／ ﾉ:/　ﾉfヽ.. ＼
　　|　/:/　/...|　|　　|　　　　　　　　　　「―――――。
　　l　ﾚ　./..ノ .,''´}　i　　　　　　　　　　　――――――、―――――――」
　　l　　　' ´ .〃 /　|
　　ヽ.　 　 　.　〈　.ﾉ
　　　 ＼.,_　　._ﾉ /
　　　 　/　　/　 ヽ
　　　 ./　　/　　　|
　　 　i　.／　　.　 |



国王がおそらく大臣派に毒殺された事、
エンジュがその濡れ衣を着せられ処刑された事、
自分達が王女誘拐犯にされている事を告げられて、



　　　　　　 ｒ'´　　 　　　,イ´ｆ´　　 　／　　　　　　　　　 ｀ヽ　　　　　　　　　　ノ
　　,ｒー--{　　　　　 　/ /　|　　 　 /　　　　 　 　 　 　|　 　 ヽ　　　　　 　　ﾉ
　 /　／￣!　　　　 　/ 〈　 ﾉ／　 /　 　 　　　　　　 　∥　　　ヽ　　　　 　（_!
　 |　レ´￣_＞　　　/　! 'Y /　 　 !　 /　　 　 　 　 　　∥　　|　 ' ,　　　　　　｀!
　 ,ヘ｀二彳´　 　　|　|　 ｆ/　/　｜　| /　　　　 | 　 　 ∥　　 |　　',　　　　　　｀!
／ 　　　　|　　　　 | .ﾉ-ｲ !　!　　|　 ﾉ'　|　ｊ 　　| 　 　 /}　　　|　　 |　　 　 　 　 |
　　 　 　　| 　　　　!ｆ　　 }|　{　|　|,ｲ|,ｆ/| .∥ 　.ｊ　　　/ }　|　　| 　　|　　　 　 　 ｜　　　「やっぱり、お父様は………」
　　　　　　レ‐イ　　| ）　.{|　,ﾍバ十-|-‐'ム　.ｲ/　, / /, ,ｲ　 /! |　/　　　　　　ノ
　　　　 ／　　　|　 ｒｭ,⌒)ﾙ'ﾑｨﾃ'i'ﾃ〒ミ｀ﾉノ/ /ﾚ'｀ナﾒｲｧ　// / /　　　　＜(´
　　　／ 　　　　｀ー<@〉},'　 ハ辷'_..八｀ " ノ.ｒ'　,ｒﾃ!ﾑz'/／ｲ /ﾚ　　　　　　ノ
　 ／　　　　　　　　　｀ﾏ 　,'　´"'''"゛　　　　　　{､_.'ﾉ 'ｚｨ' 　 ﾚ'＿　 ＿,...-‐´
／　 　　　　　　 　　　,'　| |', 　　　　　　　　j,　 ｀'''''゛//　　 　 ）　｀´
　　　　　　　　　　　　,'　 !! ヽ、　　　　　　"　 　 　 /├‐-‐ '´
　 　 　 　 　 　 　 　 ,'　∥｀ヽゝ＾ヽ　 　 ~'　 　_.. イ　|
　 　 , ‐ ´￣｀ｰ､._　 | 　 |＞´　　　ヽ.._..　-≦　 / 　{
　　/　 　 　 　 　 ｀┤　∥ 　　　　　 ヽ ｒ-―-､_!　　|



二人も言葉を失ってしまう。



　　　　　　　 ／:.:.:.:.:.:.:.:|ヾ:.:.:.:/:::::|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　 　 ／:.:..:.:..:.:.:.:.:.:|:::::>/-''｀.|:.:.:. /:.::.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:＼
　　　　 ／ -''´:.:.:.:.:.::.:.:.|／　　 　 |:.:/:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.::.:ヾ:.:.:.:.:.::.､:.:.:::＼
　　　　 ￣/:.:.:.:.:.:.:.:.V:.:.|　　 　 　 |:/:.:.:.:.:,､:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.::.:V:.:.:.:.:.:ヽ ￣
.　　 　 　/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾄ:.:ヽ　＿＿/ﾊ:.:.:.:.: /__V:|≧､:.:.:.:.:.:.V:.:.:.:.:.∧
　　　　 /:.:.:.:.:.:.::V:.:.├弋￣＿＿/ .V:.:/＿ _V=- ､V:.:.:.:.:V:.:.:.:.:.∧　　　　「と、父さん………が？」
　 　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:V:.:ﾚ-=≦￣￣||　i:./i | ゞﾃ=､-､ ||ヾ:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.∧
.　　　/,;,;:.::.-' /:.:.:.:.Vゞr'て・) }　 ||=イ=|.|　{ ・ .) / || V:.:./ヾ:.:.:.:.:.:.::ゝ
　　　 ￣　 　/:.:／/∧　｀== ´　/　　　廴=三三=/　r─､:./￣￣ ´
.　　　　　　 /／　{　ヾー＝＝''´　 {　　　￣￣￣　　 r　 }´
　　　　　　　　　　 ヽ .|　　　　　　 ＿＿　　　　　　 /／/
　　　　　　　　　 　　 ∧　　　　　 {=---ｧ}　　　　 /__／
　　　　　　　　　　　　　ヽ､　　　　 ─= ‐　　　　ノ
　　　　　　　　　　　　　　　｀　､　　　　　　　, イ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　|> ､ _ , ィ´　 .|
　　　　　　　　　　　　　　　　r─|　　 　 　 　 ├‐ ､
　　　　　　　　　　　 　 　　 / ..| .}　　　　　　　 V 　 }
　　　　　　　　　　　　　 ／　 　V､　　　　 　／/　　 |＼

269 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:52:09 ID:ecndC5w8
六１４２．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　麻呂オオオオォォォォォッ！！！

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　 /.:.:.:.:.::::::::::::::::::厶=-‐-.､＿
　　　　 　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.::::::::::::::::/.:::::::::::::::::|　ハ　　　　　　　　　　　　　　、'ぐ'-,　　　　　　　　　　　　　　　　　r‐ｰ',!
　　　　　　　　　　　/.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::: /.:::::::::::::::::::jこ jﾘ　　　 　　 　 .'l￢､　'!ｯ､`ｉ｀'/''′　　　　　　　　　　　 r‐ｰ1　 lﾞ　 .lﾞ
　　　　 　 　 　 　 /.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::/.:::::::::::::::::ィﾖ 　{{　　　　 　 　 　 |　 ./ 　ヽヽ"゛　 　　　 ,,、　 r‐┐　　 ,lﾞ　 ,i´　lﾞ　 lﾞ
　　　　　　　　　　l.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::..＜´　|主 　}ﾄ､　　　　　 　 　 !　./ 　　 .ｌ　ヽ　　._,,-,'l″,!,/　/ 　　 │　,"　 lﾞ　│
　 　 　 　 　 　 　 ＼.:.:.:.:.:::::::::::::::::／ 　 ＼'｢ ｀ヽﾉﾘ.::',　　　　　　 ./ ./ 　　　　.!　 .ｌ　ﾞl、.ﾞlﾞl-'ﾅ　/　　　　 |　 ,lﾞ　 .|,,,,,ﾉ
　　　　　　　　　　 　 ` ー一'´￣　　　　　 ヽｰ彡'.::::::＼　 　　 . ,i／　　　　　　|,　 l　　.ﾞ‐'｀丿 丿　　　 .Ｌ,,,ﾉ　 .,ｒ'"ﾞﾞl
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ヽ.:.::::::::::::丶　　.｀　　　　　　　　 ´　 　 　 ｀冖'"　　　　　ｒ'"＾ﾞl　　ヽ-'゜
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ∨.::::::::::: 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 ヽ-'゜ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ∨/.:::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 V.::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 〈.:::::::::::::::::::}
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 Y.::::::::::::::入
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀ ー=≦∨〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 }主}｀ヽ/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 ｊ主ｊ_ ,ﾉ|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 /ー‐ヘ.ﾉ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 {ー‐彡'


突如沈黙を突き破り、弾けるように敵の名を叫んだジュンは剣を掴むと
鎧も着けないまま扉に手を掛けた。



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , -‐ー― - ﾆ 、_　　,.‐'´
　　　　　',　　　　 lllllllllli　　　　,.-‐''´ 　　　　　　　　　 ｀ﾞ´
　　　　　 ',　 　 　 illllllllli　_ ,.／　　､　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 _,.-
　　　　 　 i,.　　 　 illllllll（_　　_ ,.／. ｀ヾ,　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 _ ,.‐ ''´
.　　　　　　i,　　　　illllllllli／￣　　　　 　メ　　　　　 　 　 　　 　,. - ''´
. 　 　 　 　 i,　　　　illlllllr'‐'''""~~"''‐,,.　　 ｀ ゝ_　_ 　 _ ,.- ''´
　　　　　 　 i,　　　　illll!'　　　　 (| i　 ｀ 、　 　ｼ｀　 　／'.,
　 　 　 　 　 i,　　　　illｌ　　　　　 ""　　　、 ./　 　／;;;;;;;;',
.　　　　 　 　 i,　　　　illi､　　　　　　　　 　i,.' 　 ／;;;;;;;;;;;;;;;;i
　　　　　　 　 i,　　　　illllllli､　 　 　 　 　 / .-''´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!
.　　　　　　 　 i,　　　　illllllll| ~"'=‐--‐''´''´ヽ､;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;,'
　　　　　　　　 i,　　　　illllllll|　　 　 　 　 　 　 ｀::::;;;;;;;;;;;;;.'
　 　 　 　 　 　 i,　　　　illllllll|
270 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:53:11 ID:ecndC5w8
六１４３．
だが、一人ではどうにもならない事を知っていたやらない夫が大声を出して
憤怒の彼を押しとどめ、



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　 ,,　　、　　　　　　　ｌ
　　　　　　　　 ゝ_　　　 _/　 .. ＞..、　　　　　l
　　　　　　　　　　`''''''‐" 　_ __ ﾆ:＿丶　　 　 1
　　　　　　　/　、　　　　　　＾''''ー ､__　ゝ　　 │　　　　「待て！
　　　 / . ｌ 丿　　l'"! 、 、　'''-ｰ-､ ´　^ｰ-..､　.　　　　　 お前一人が行って何が出来る！」
　　　 |　」　|　　|　|| ! 　! ｌ　│　'　　 ,ｒ _..,,　ｆ.
　　　 `、　 '、　ゝ　ﾉ　/ l　..′ ,´　　|　l│l .ｉ
　　　　　　　｀- － ﾞ‐'′　 --"　　,ﾍ ∪ ﾉ l.
　　　 　　 　　　　　　　　　　　　　　　　　´ /
　　　　　　　　　　　/　　　　　　　　　　　 ｀）
　　　　　　　　　　 f　　　　　　　 丿　　 ヽ/
　　　　　　　　　　入 ＿＿＿ -'　　　　　,′
　　　　　　　　　（　V ｖ 　　　 　"‐＿ -'′
　　　　　　　　　　''-二ﾆ -=　　`'`ソ　/
　　　　　　　　　　　 ´　‐‐;ｭ ｀' ､ノ　 /...
　　　　　　　　　　　　 　ニ　　　′　丿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 !.
　　　　 丶.._ 　　　　　　　　　　　　 /
　　　　　　　｀ﾞ　‐--- ＿＿＿＿-''
　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼



::::::::::::::::::::::::::ﾊ::::::::::::::/i/／ i:::::::::::::::::::::::::|::::::|:::::::::::::::::ヽ:::::::::::::::＼
::::::::::::::::::::::::::::ﾊ;;;;;;;;;/-'´ 　 .|::::::::::::::::::::::::ﾄ::::: ﾄ::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::ヽ
::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ￣　　 　 　 |::::::ﾊ::::::::::::::|　＼i ＼::::::::::::|:::::::::::::::::::::ﾊ
::::::::::::::::::::::::::::;:::ﾊ　　　 　 　 |:::/　V::::::::::ﾘ　　　　ｨ=ﾊ:::: |::::::::::::::::::::::::＼
:::::::::::::::::::::::::::::iヽ:ﾍ　　　　　 |:/　　 V::::::/　　　/ｲ＝ﾌi｝ヾ─────'｀　　　　　　「じゃあどうすればいいっ！？
ヽ:::::::::::::::::::::::::|　＼ヽ　　 　 |i!　　　 ｝::/　　　r''´ゞハi l:ヽ　 　　　　　　　　　　　　　 ただこうして待つだけなのか！？
::::＼::::::::::::::::::::|　　 ＼　　　＿＿ニ三ｲ　　　||r j｝i|　.i lヾ｝
::::::::::＼::::::::::::: |　　　／::::＿,,,ィ彡=''´i/il_,=＝|.しｿﾊ ﾉﾉ-､　　　　　　　　　　　　　　　ヒナや姉さんがどうなったかも分からないのに！」
:::::::::::/ ＼::::::::::ヾ ／:- ''´＞''´ -=ｲ｀　 ||r'´｀ ﾊ彡　ｙ/: : : :＼ニニミ-､
::::::::/　　　｀ー- xゝ rィ彡''´イッ:::ﾘ　　/i　　　ミー=´i: : : : : : :｀:-:､: : :｝ｿヽ
:::::/::ﾊ＿＿＿＿＿/ /　 /　ﾋ:::..ソﾉ　｛.ﾘ　　　　｝.　 l-､: : : : : : : : i: ://: :ﾊ
￣ヽ──────､ﾊ　ヾ　　ゞ''´　 ノﾉ　　　 ./　 ./: :ﾉ: : : : : : : : l: i l: : : ﾊ
i ヽ　｀ -ゝ　　　　　　ヽヽ　ミ=''´　／／　　　　 　 /: : i: : : : : : : : : l: i l: : : : :ヽ､
｛　　ﾊ　　　　　　　　　＼＼＿_／／　　　　, ィ　/: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : ＼
　｀　　 廴　　　　　し　　　ー─''´　　　 ir'_´'´ ./: : :/: : : : : : : : : : /: : : : : : : : : : /
>､＿　　　ー　　　　　　　　　　　 　 　 　　 　 /: : :/: : : : : : : : ::／: : : : : : : : : : :/
: : : : : ＞-､＿ハ､　　　　　　　　　　　　　　　ハ／: : : : : : : :／: : : : : : : : : : : :/ハ



ノブを握ったままのジュンも感情のままに叫び返した。
理屈では分かっているのだが、身体が言う事を聞かないのだろう。
271 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:54:09 ID:ecndC5w8
六１４４．
逆転の目は来る、と拳を握ったやらない夫は王都に残る味方を信じている。
王女を、ジュンを頼むと頭を下げたエンジュの機転を信じている。



　　　　　　　　　 　 ,. ‐―――――‐ - ､
　　　　　　 　 　 ／　　　　　　　　　　　　＼
　　　 　 　 　 ／　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　/　　　 ＼　　 　 　 　 ﾉ　　　　　 .',
　　　 　 　 /　　　　 ,　 ゞ.._,,　ー "　　 ､　　　　',
　　　 　 　 l　　　　 l {::::::::}　l　 l　{::::::::} l　　　　 l　　　　　　　「エンジュ様は予見していた、
　　　　　 . l　　　　 ｀ ー '　'　　｀　ー ' '　　　 　 l　　　　　　　おそらくサクラダ家の人達はすでに脱出しているだろう。
　　　 　 　 l　　　　　 /　　　 .!　　　 ヽ　　 　 　 l
　　　 　 　 l　　　　　 ヽ＿_／ ＼＿_/.　　 　 　 l　　　　　　　 待つんだジュン、機会を待て！
　 　 　 　 . l　　　　　 〈　　　　　　　 〉　　 　 　 l　　　　　　　 必ずチャンスはやってくる！
　　　　　　 .l　 　 　 　 ｀ｰ―――　' 　 　 　 　 l
　　　　　 　 l　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　　　　　　　　王都にはアンデルセン様が居るんだ！
　　　　　　 . l　　　　　　　　　　　　　　　　　　 l　　　　　　　　 残って戦う事を選んだ、マコトやマスタング殿も！」
　　 　 　 　 . l　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 l
　　　　　　　　!　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 !
　　　　　 　 ／!　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 ,'＾ヽ
　　 　 　 ／{　|ヽ　　　　　　　　 　 　 　 　 /|　/ ＼
　　 　 ／　 ∨|　ヽ　　　　　　　　　　　 ／　| /
　　 ／ ヽ　　＼　　｀ー―――――　´￣￣　 ／
　／＼ 　 ＼　　＼　　　　　　　　／　 　＿　／
"ヽ　 . ＼　　ヽ　　｀ ー──一'　　 ／
　　＼　　＼　　＼　　　　　　　　／/
　 ,　 ‐┬─‐'ﾌ⌒ヽ｀ ー──　´　/
／　　　￣￣ 　 　 } 　＼　　 　　/
　　／ ￣｀ヽ／￣ ヽ　　 ＼
　/　　　　　/　　 　 |￣｀ヽ￣￣/
./　　　　 . /　 　 　 |　　　 |￣ヽ
　　　　　 /　　　　　|　　　｜ 　　}
272 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:55:09 ID:ecndC5w8
六１４５．
だから自暴自棄になったり諦めてはならないんだ、と鼓舞する声に全身を震わされて、
真紅は自分に言い聞かせるかのようにジュンを諫め、



　　　　　　　　　　　　└ヽ:::::::／::::::::::::／　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ 　＼__::::: |　 | :::::::::ﾉヽ
　　　　　　　　　　　　　　_j:::::::::::::::::: / 　 　 　 　　,　 　 　 　 　 　 　　 ﾞ'､　 ヾ:ﾄ､:| 　|::::／､　　ヽ
　　　　　　　　　　　　 　r::::::::::::::::::::/　　　　　　　/　　　 ,　 　　　　　　　 i　_ノ::::::|　 K_::::: | 　 　|
　　　　　　　　　　　　　　＼:::::::::: / 　　 　/　　, 　 　 　 i　　　　　　　　　 l |_::::_:: |　 |:::::::ノ; 　 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　):::: .'　 　 　 ,'　 　l 　 　　　l 　 　　　 　i　 　 |　ｿ:::::::|　 l:::::L 　　 　|　　「ジュン。
　　　　　　　　 　 　 　 　 　( .:::::i ,　　 　 l 　 　| 　 　 　 |　 　 　 　　l!　　 i/´:::::::/　/:::::丿 　 　 |　　 やらない夫の………
　　　.　 　 　 　 　 　 　 　 　 ￣| i! 　　　| 　　 ﾄ､!　　 　|　　　　 ｨ 　　　　ﾍ:::::::/　/::::∧　 　 　 |　　 言うとおりに、しましょう………？」
　　　　　　　 　 　　　 　 　　　　| | 　 　 ,j＿＿l_ |　　 　|! 　 　_/_j_ /　　/　j:::/　/::::/　|　　　 　|
　　　　　　　　　　　 　　 　　　　ﾚヾ　　　!ﾄ､￣|｀ヾ|! i　 l! 　´/￣j/￣lメヽ(_::ﾉ_ /::::/.　 |　　　 　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　| 　＼i､! ヽ, ｒ---ﾄ、＼|ヽ／ ィ----　ﾚ' Y !7_ヽ:ノ　　 .|　　　　 |
　　　　　 　 　 　 　 　　 　　　　| 　| 　〉ゝj!　ヽ____,,!:::::::::::::::::::::ゝ____ﾉ　|　i ;lﾋ ノ　　　 　|　　　 　|
　　　　 　　 　 　　 　 　 　　　　'　 |　,'　 ∧　::::::::::::´::::::::::::::::::｀::::::::::::: ｨ .| Y´ 　 　　 　.|　　　 　|
　　　 　 　　 　 　　 　 　 　 　 i 　│ !　 i. | ＼ 　 　 　　 !　　 　 　　./ |　| |　　　　　 　|　　　 　|
　　 　 　　 　　 　 　 　 　 　 　| 　 |　|　 |i |‐ ´､iヽ.. 　 　 　 　 ..　ｨj´ヽ.!　| |　　　　　 　| 　 　 　|
　　　　　　　　　　　　 　　　　/i 　 |　|　 || | 　 ヾ 　　＞_-.,< 　 　j　　/　　ﾄ､_. 　　 　　| 　 　 　|



血が垂れるほど唇を噛みしめた彼は
苦しそうに一言だけ答えると、ぺたんと床に座り込んでしまう。



　　　　　　　　　　　　／:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ|:.:.＼
　　　　　　　　_ - ' ´:.:.::.:.:.:.:.:.:.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヾ:.:.::＼　　 ,
　　　　　　　ヾ､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::､:.:.:.:/ ／/
　　　　　　　　　＞:.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.／:.:./:.:.:.:.:.:.:.:ﾚ:.:.:/
　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:./:.:.:.:._;,;,-‐''''´:.:.:.:.:./:.:.:./:.:.:.:.-='´　　　　「分かり………ました………！」
　　　　　　　　｀ -､:.:.:/:.／/ ゞ:.x ､-ー ''´|:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.＼
　　　　　　　　　　ﾚ､:ﾚ´∧ /　｀　 ＼　.ヾ|:.:/|:.:.:.:.:.|:.:.:r､_::ゝ
　　　　　　　　　　　 ミ,;,;:.::|　　　　 　 ｀＞ミ_.|:.:.∧|:.:.:.:}
　　　　 ,＿＿ r‐─ v'´　 ヽ　　　　　／ヾ∠.|:/|:./:.:.:.:.|
　 　 /.: : : : : : ＼: : : :＼ 　 ､　　　_　ヽ '´ |'' ´ ﾚハ:.:./
　　/／＼: : : : : : ＼: : :: :>v ＼　 ヾ_ , -―
　.//: : : : :＼: : : : : : V/: : K: : : ミ'´
../: : : : : : : : :＼: : |: : V: ∨: V: 入
/: : : : : : : :: ::: : :V: : : : : : ＼//: :/ヽ
273 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:56:09 ID:ecndC5w8
六１４６．
┏─────────────────────┓

　　　くそっ！
　　　くそっ！
　　　父さん………父さ………ん………

　　　ううっ、うううっ…………

┗─────────────────────┛
　　　　　　　///　//　///　　　///
　　　　　　//// // ////　　　///
　　　　　//// // ////　　　///
　　　　　／￣￣´｀ヽ _　 // // //
　　　　 (　　ゝ/￣ ,　　￣￣￣￣
　　　　 (｀ー‐|　 /!
　　　　 (｀ー‐し'ゝL _
　　　　　(--‐‐'´}　　　 ;ー------
　　　　　 ｀ヾ-‐' ーｒ‐'"
　　　　　)　　　　　て
　　　　／^⌒`Y´^＼
　　　　　　ﾚY^Ｖ^ヽ

　　　ﾀﾞﾝｯ　ﾀﾞﾝｯ



隠そうともしない嗚咽と、床を力任せに殴り続ける拳。
ベッドの上で壁を向いてしまった真紅も惚けたように黙り込んでおり、



　　　　　　　　　,　-/￣ヽく
　　　　　　　r ノ　＿_　　´ﾞヽ
　　　　　　_ ｣_, '--- ､ ｀丶、}＼
　　　 _　/　'´　　　　　 ｀丶 ヽ7 |
　　　∟ YーＬ. --冖,＿」-､＼!.}
　　 〈＿少　　　　　　　　 ､└ｲ┴ｉ　　　（戦いが起こり、きっと大勢の命が失われている。
　 ／/ / l　|　　　　　　　 ´ |　卜ﾉ　　　 私に、そんな価値があると言うの？
　　/　,'　ゝ ヽ　l　　　　 　 /　｜
　 , 　 |　｜＼ヽ ヽ　　　　/　l　|　　　　　私は―――彼らの命に、どうすれば報いる事が出来るの？）
　 l　　|　 l 　　ト､,､,､,､,／l　/　 |
　 |　　l　 l　_, -‐'ー一'¨/　,　　:l
　｜　 ｌ　 !´　　　　　　/　/　　人
　 :l　　l　/　　　　　　/　/　　/ 　 ＼
　　!　　 j　　　　　　/　/　　/　　　　|

274 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:57:09 ID:ecndC5w8
六１４７．
どっかりと椅子に座ったやらない夫は、テーブルに肘を突くと両手で顔を覆った。



　　　　　　　　 　 　 　 ￣　 　 ､
　 　 　 　 　 　 ´　　　　　 　 　 ＼
　　　　　／　　　　　 　 　 　 　 　 ヽ
　 　 　 /　　　　　　　　　　　､＿　　ヽ
　　　　'　　　　　　　　　　　　:::::::::｀ゝ"ヽ
　　　 l　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::,､__　　　　　　　　　　　（分かっています、分かっていますエンジュ様。
.　　　l　　　　　　　　　　　　　::::::::::::::::|　', ',｀,
.　 　 l　　　　　　　　　　　　　　冫.:::::｜　', ', ',　　　　　　　　　あなたは騎士だ。
　　　l　　　　　　　　　　　　　　 l　　::::l 　 ', ', ',　　　　　　　　　騎士として一番と信じる道を選んだだけなのですよね。
　　　l　　　　　　　　　　　{｀ヽ 　u 　 ::::｝　 ヽヽヽ
　　　l　　　　　　　　　　　　',´ ヽ J 　 /　　　　　｝　　　　　　　でも、でも―――）
　　　!　　　　　　　　 　 　 　',　　ヽ､_/　　　　　./
　　 ,'　　　　　　　　　　　　　ヽ　　　 　 　 　 　./
￣　｀ー -　　　　　　　　　 　 `, 　 　 　 　 　　,'
　　　　　　　 ｀　 ､　　　　　　　ゝ 　　 　 　 　,'
:.:.:.:.:.:...　　　　　　　　､　 　 　 ／ヽ　 　　 　〈
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..　　　　　　.:.:ヽ _　´　　 ｜　　　　 .i
ー-　:.:.:.:.:.:.:.:..　　　..:.:.:.:.:.:ヽ　　　　｜　　　　 ｜
　　　 ｀　､:.:.:.:.:.:.:...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ　　　｜　　　　 ｜
　　　　　　　､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼　　｜　　　　 ｜

275 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:58:09 ID:ecndC5w8
六１４８．
┏──────────────────────────────────────────────┓

　　　俺は、あなたも護りたかった―――！

┗──────────────────────────────────────────────┛



　　　　　　　　　　　　　　　／　/　/　'　　 　 　 　 l 　 　 l 　 　 　 ヽ＼　　 丶　　＼！
　　　　　　　　　　　　　　/　／/ /　　　　　　 ! 　 |　　　 |　　　　 　 ＼丶　　 ＼　　｜
　　　　　　　　　　　　 ‐十'′/ /　　　　　　　l　　ﾄ、　　 |　　　　 ＼　 ＼　　 　 ヽ、 L
　　　　　　　　　　　　　　|ｌ　 {　ｌ　 ,′　　 l　 ﾊ　｜｀､　　ﾄ､ 　 　 ヽ　<⌒ヽ、_　　　∨厂｀丶、
　　　　　　　　　　　　　　ヽ、ヽ|　 l 　 ｌ 　 |　{　l　| 　 ヽ　 、丶、 ヽ ＼＼ l　}　￣二7′　　　l
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｌ　 |　　| 　 |　ﾚ七ﾆ二￣＼丶　 }ﾍ |＼ ｀ / 厶　　　ハ　!　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　l　ﾄ､＼　ヽ＼=ｷｔぞﾗ　　}ﾉ／　j/　　了/￣　　 /　 }∧ 　 l |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼ヽ｀ヽ、　＼__￣　　　　　　／　 　 -ﾍ／ﾚﾍ /＿,　　l 　 | ﾄ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ}　　｀7ｰ一′　　　　　　　　　 ,′　　 　 {´￣｀ヽ､い |
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 /　　　　 　 　 　 　 　 　 /　 　 　 　 Ｖ了＼ 　 り
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　└-- ､　　　　 ,　　　　　　　　l 　 　 　 ∨ 　 〉
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ｀ｰこ￣　　　　 ,　　　　|　　 　 ／　　ハ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ヽ 　 　 ,　く　　　　 l　　 ／　　　/　ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｀一'´／ ∧　　　/　／　　　　/　　　＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 , ィ　 /／! 　 ' ／　　　 　 /　　 　 　 ＼



あるいは、もっと自分が強かったら全てを任せて貰えたのだろうか。
城を出ない案、町のどこかに潜伏する案だったら未来は変わったのだろうか。
真っ当な裁きを待たずに、殺戮者と罵られようともあの時点で敵対者を倒すべきだったのだろうか。

自責の念が止まない手のひらから、こぼれた滴がテーブルに垂れる。




大臣達は必ずや思い知る事になるだろう。
彼の涙は、決して安くない―――

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━……
276 名前： ◆FrtuoSIf66 投稿日： 10/10/02 21:59:49 ID:ecndC5w8
なんか枚数が変だったけどまぁいいや　orz


本日の投下は以上じゃありません。
22：10より第六章その４（41枚）を投下します。　<(･ω･)ﾉ　ﾋｬｯﾎｳ


第六章　剣の騎士と盾の騎士　その４へ

1. 2010/10/02(土) 22:06:09|
2. やらない夫は約束を守るようです
3. | トラックバック:0
4. | コメント:0