|　　　　　　　|　　　　　　　　　　　　　　　｜ 　 　 　　 ,′
　 　 ヽ　　　　　　｜ 　 　 　 　 　 　 　 　　　　| 　 　 　 　/
　　　　＼ 　 　　 　ヽ　 　 　　 　 　　　 　 　／　　　　　, ′
　　　　　 ＼　＿　-､_ニ、　　　　　　_　-　'　　　　　_／
　　　　　r ￣,　　　´　_ノ　　　　　　　　　　　　,.. ='-ｧ
　　　　 /　 /　　, 弋う‐ k‐r,-､ニニニ-r T ￣　 | /
.　　　 /　ノ 　 /　 入　 L `7´こ卞、ト､」 |! 　 　 l'＼　　　　　　　いや、暑くなってきましたが、
　　　〈　　　　' 　 / 　〉 | ／´ 　　ﾄ、｀`　! |　　　 |　 ヽ　　　　　　みなさんいかがお過ごしでしょうか？
　 　 　i　　　　　´　 /　l 　 　　 　| 〉　　 l {! 　 　 |　　ヽ
　　 　_」 |! 　 　 　 ｲj　k　　　　　_ ′　　| l 　 　　ﾄ､ 　ヽ　　　　作者も一年かかるとは思っていなかったようです。
　　／　ｌ ||　 | 　 　 f　ﾄヽ 　`ｰ=＝-‐'　　ｲ、 　 　l　＼　L＿
　/　／ V|　 |　 　　|　　} ＼､_ 〉￣く_, ≠ 　}　　　 ＼　ﾄ､　　｀i
　≠｀ ＜　　　　　　|　 人　 ＼ 　 　／　／7　　 　 　ヽ|　＼　 |
　　　　　＼ 　 　　 j　/ 　 ＼　ヽ　/　／／ 　 　　 　 　ヽ 　 ＼|
　　　　　　 ＼　 ／ く　　　 　 ヽ V∠　/　　　　　　　 ／　　　　＼
　　　　　　 　 ∨　 　 ＼　　　 /匸!ﾍ　 ＼　　　　＜´/ 　 　 　 　　＼



　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　／　─　　─＼
　　　　　　　　　　| 　　（●）（●）|
　　　　 ＿＿＿_. .|　　 （__人__）　|
　　　／　　 　 　＼　　　｀ ⌒´ 　ﾉ　　　　　　ある意味本人（GONZO版）だろ。
　 ／　　─　 　 ─＼　　　　　 　.}
／ 　　 （●） 　（●） ＼　　　　　}　　　　　　　　　　たしかに悪人っぽい外見だお……
|　 　　 　 （__人__）　 　 |　　　 ノ.ヽ
/　　　　 ∩ノ ⊃　　／∩ノ ⊃|　 |
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |／ ＿ノ　|　 |
.＼　“　　／＿＿|　 |　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／／＿＿＿ ／

　　|　  　 |　{　　 　　　　　ヾ ＼　Ｔ７　７´{､ヽイ´　　 }
　 ！　 |　　 ヽ ヽ　　 　 　　　_j}　 〉 l小､_'‐≦´／ 　 　〈
　　ｌ　　|　　　　ﾄ､＼　　　=‐'ア ‐-､　ヽ＼　￣　 　　　　}　ト､
　　ヽ　 !　　 　j　|＼ Y´　 ∠二、　}　　＼＼　　　 　 　 ヽ ヽ `ｰ　　　　　　　ではみなさま、
　　　 ､ ヽ　　 ＼ ｌ ｜|　 /fr㍉ 勹/ 　 　　＼ ヽ　　　　　　＼＼_　　　　　　　　もうしばらくの間だけお付き合い願います！
　　　　ヽ｜　 　 ヾ　ｉ |　{　,>´／/ 　 　 　 　 ｀,ﾆヽ　　　 　 イY´￣
　　　　　} i　 　 　　い{ ノ¨　　　　　　　　　 r　 　 　 _,　 ´　 ﾄﾍ
　　r_─┴!　　　　　､込_　　　　　　　　　　　　　　／　 ィ＾ヽj　l!
　　　｀ マｺ＼　　 　　　　｀卞、　　　　　　　　,　´　／　　　　 _ﾊ
　　 　 　ヽ|　 `ー- ､　　 　 |　i}　 　　　　 ／ 　／ 　 　　　 く V
　　　 　 　|　 　 　 　 ＼　　|　||　 　　 r'　、 r‐' 　 　　 　／　/
　 　 　 　 |　　 　 　　 　）　 !　||　 　 　 ＜＼!　 　 _,. - ´　／
　　　　　　ヽ ＿　　　　{　　 ＼|{ 　 　 　　　＜T^ヽ _, - ' ´ 　 ／
　　　　　　　 　　＼　　j 　 　 　ヾ､　 　 　　　　 ￣　 　_,. 　´




　　　　 ／￣￣＼
　　　／　　ー　　‐＼
　　　|　　 （ ●） （ ●）＿＿＿
　　　|　　　　 （__人__）´ ー 　ー＼
　　　|　　　 　 ｀i 　i´ﾉ（ ●）　（ ●）
　　　|　　　.　　 `⌒ }　　　（__人__） ヽ
　　　ヽ　　　　　　　.}　　　　｀i 　i´　　|　　　　　どうしてわざわざ怖いAA使うの……
　　　　ヽ　　　　　ノ、＿　 　 `⌒＿／
　　　　/⌒￣￣￣￣￣￣￣　⌒ ｀i
　　　 /　 　　r―――――――‐‐'
　 　　l 　　　　　（￣ﾚﾜ　　　／　　|
　 　　|　 　　　　　＼　＼／　／ 　|
　 　　|　　　　　　　|　＼＿／ 　　｜

3010．

第５５話『お金がたくさんあっても幸福とは限らないようです』





＜前回のあらすじ＞

　ヴァランティーヌが毒殺された！
　嘆き悲しむマクシミリヤンは、ノワルティエ氏やダヴリニー医師と共に
　ヴィルフォールに真犯人を裁くことを要求する。
　ノワルティエから教えられた犯人の正体に戦慄しつつも、ヴィルフォールは
　犯人を裁くことを約束するのだった。

　ヴァランティーヌの葬儀の後、帰宅するマクシミリヤンを伯爵が追った。
　マクシミリヤンは自殺しようとしていた。伯爵は自殺を止めるため、ついに
　自分がエドモン・ダンテスであることを明かす。
　伯爵は、マクシミリヤンに死ぬのを一ヶ月待つように求める。伯爵が言う『希望』とは何か……？

3011．

【前回、伯爵が葬式に向かう前】


　　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　 　 　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　 　 　 | 　　　（ ⌒）（⌒）
　　 　 　 　 　 l　　　　　（__人__）
　　　　　 　 　 l　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　 　 　 　 　 　 | 　 　 　 　 　 |　　　　　どうも。
　　　　　　　 　 ヽ　　　　　　 l
　　　 　 　 　 　 _,ゝ､　　　_,ノ
　　　 　 　 ,､-='l　＼_,ﾝ g<＼
　　　　 / ＼　└〆＼ i=i|＼'＼
　　　 丿 　　ﾞi 　 ＼　＼=il　/　i!
　　 　 l　　　　l 　　　＼＼| /＝|l
　　 　 |　　　　|　　　　　＼i/ 　 ||




　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜　　　　　　　　おや、これはこれは伯爵。
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜　　　　　　　わたしにお悔やみ※を述べにお見えになったのですな。
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／
　　　【ダングラール】
パリの大銀行家。
エドモン・ダンテスを陥れた者の一人。


※べネデットの正体が露見して逮捕された件

3012.

　　　 ＿＿＿_
　　　 ＼　　　 ───＿＿＿
　　　 ＜　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣|
　　　　＞　＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 　 　 |
　　　　￣￣　|　/　　　　　　　＼　| 　　 |　　　　いや、とんだ災難でした……
　　　　　　　　| /⌒ヽ　　／⌒ヽ　 | 　　 |
　　　　　　　　| |　‘　|　 i ‘　　 |　 | 　　 |　　　　わたしは、ひょっとしたらあの気の毒なモルセール家に
　　　　　　　　| ヽ.__ノ　 ヽ.＿ ノ　 .ﾚ⌒ヽ　　　　不幸が起こるように願っていたのかもしれないと思っていました。
　　　　　　　ノ　　 o　　　　　　　　　 ６　|　　　　人を呪わば穴二つ、というわけで。
　　　　　 ／＿＿　　　＼　　　　　　＿ノ
　　　　　　　　　　＞　　　　　　　 ﾉ
　　　　　　　　 ＜、＿＿＿　　 イ
　　　　　　　　　　　　　|───┤
　　　　　　　　　　　／ |／ ＼ ／ ＼



.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　しかし、誓って申しますが、
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　　　わたしはそんなことは絶対考えていませんでした。
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　あの男は、わたしと同じように自分の力で成り上がった人間としては
　　　　　／　　○　　　　　　　　/　　　　いささか高慢なところがありましたが……
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂　　　　まあ、誰にでも欠点というのはありますからね。
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼

3013．

　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ノ|
　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＜ノ|
　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
　　|;;;;;;;;;;;/三────;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＞
　　|;;;;;;;;;;;|∠二二ゝ ヽ二二|
　　|;;;;;;;;;;;|三く（ (） 　 （ (）ﾉ|ヽ　　　　それにしても、今年はわたしたちの世代は不幸続きでして。
　　|/⌒ヽ|三　　　 　＼　 　ｿ
　 　|б三三　　　＿￣　　|　　　　　　　あの高潔なヴィルフォール氏も、家族に奇妙な死に方をされて、
　　 ヽ三/三　 ￣　‐￣　/　　　　　　　今度はお嬢さんを亡くされましたし……
　　　　/ヽ＼　　　　　　 /　　　　　　　モルセールは不名誉な恥をさらして死にましたし、
　　　　ゞ:: 　＼__＿＿_/　　　　　　　　わたしはべネデットのやつに恥をかかされ、その上……




　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　／　 ＼　 　 ＼
　　　　　　　　　　　 .（●）（● ） 　u.　|
　　　　　　　　　　　　（__人__） 　u　 　|
　　　　　　　　　　　　.(｀⌒ ´　　　　　|　　　　　おや、それ以外にも？
　　　　　　　　　　　　 { 　 　　　　　　|
　　　　　　　　　　　　　{ 　 　　　u.　/
.　　 　 　 　 　 　　＿＿＼　　　　 /ﾘ 厂`'‐- .._
　　　　　　　　　／ :　　: :介ｰz＜__｣// |: : : : : : :ヽ
　　　　　　　 　 | : : : : ::〈　｢｀乂/ 　/ 丿: : : : : : : |
　　　　　　　　　| : : : : : /: |　{::::}　/ `7: : : : : : : :│
.　　　　 　 　 　 | : : :　〈: :│ {::::l /. :/. : : : : : : : : |

3014．

　　　 ＿＿＿_
　　　 ＼　　　 ───＿＿＿
　　　 ＜　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣|
　　　　＞　＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 　 　 |　　　　実は……娘が家出をしてしまいまして。
　　　　￣￣　|　/　　　　　　　＼　| 　　 |　　　　無頼漢から受けた恥辱に耐えられなかったのでしょう。
　　　　　　　　| /⌒ヽ　　／⌒ヽ　 | 　　 |　　　　旅行に出たいと申しました。
　　　　　　　　| |　‘　|　 i ‘　　 |　 | 　　 |
　　　　　　　　| ヽ.__ノ　 ヽ.＿ ノ　 .ﾚ⌒ヽ
　　　　　　　ノ　　 o　　　　　　　　　 ６　|　　　　まあ、いなくなったのも同然です。
　　　　　 ／＿＿　　　＼　　　　　　＿ノ　　　　　あの子の性格なら二度とフランスには戻らないでしょう。
　　　　　　　　　　＞　　　　　　　 ﾉ
　　　　　　　　 ＜、＿＿＿　　 イ
　　　　　　　　　　　　　|───┤
　　　　　　　　　　　／ |／ ＼ ／ ＼




　　　　　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　 　 　　　　 ／　　ヽ_　　.＼
　　　　　　 　 　　 （ ●）（ ●）　　｜　　　　しかし、子供だけが財産の貧乏人ならともかく、
　　　　　　　　　　 （__人__）　 　 　 |　　　　あなたはお金持ち、財界の王者なのですから。
　　　　　　 　 　　　ｌ｀ ⌒´　　　　｜　　　　金で消されぬ憂いなし、ですよ。
　　　　　　　　　　　{　　 　 　 　 ｜
　　　　　　　　　　　{　　　　　　 /
　　　　　　　_. -: ´Λ　　　　 _.へ｀　、
　　　 　 r＜: : : : /:|: :、 ￣r'　 　 ＼ :＼_
　　　　/: : :ｌ : : : : : :＼`IエL>、　 　 >ﾍ::Λ
　　　　|: : : ﾄ､: : : : : : : : : : : : : `ｰ／ : : V　|
　 　 〈: : : :::: _ -￢-－―-､: : く:r ､: : : V ｝
　　　 /: : :_ン´: : : : ＼ ,___, ｨ ）: : :`く : : : ヘ|

3015．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　　ええ、財産が慰めになるようならいいのですが……
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼



　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜　　　　おっとすいません。
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜　　　　書きかけの手形があったので、署名してよろしいですか？
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／

3016．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｻﾗｻﾗ
　　　　　　 　 　 　 　 　 / 　/
　　　　　　　　　　　　　/ . /　-''''^ﾞ''''ｰ-.._
　　　　 　 　 　 　 , ‐'./　,iﾞ.、　 .．　　　　 ｀ﾞ'ｰ　,,,
　　　　　　　　 ,／　У ./ .|______l,,..-'゛　　　　　　 .｀'''ｰ　..,,,,、
　　　　　　　 /　 , ‐‐'~´
　 　 　 　 　 !　 （　　!
　 　 　 　 　 ｌ　./丶､_＿_._.ﾉ┬―-､.. ;;ﾝ'
　　　　　　　 .ﾞ/　./ 　ヽ .,,ﾞ_''く　　　|''ｰ .._
　　　　　　　 / .,/ゝ⊥_,l‐､.(　八.　 |　　　.￣^ﾞ''''''"゛
　 　 　 　 　 l.／　　　 `''､ l＿)ー'ーｰ-　..,,＿__,　　 ＿,,..
　　　　　　　’　　　　　　




　　　 ／￣￣＼
　　／　　 _ノ　　＼
　　|　　　 （ 一）（●）
　　|　　　　 （__人__）
　　 |　　　　　｀⌒´ﾉ
　　 |　　　,.<))／´二⊃　　　　スペイン手形ですか？
　 　ヽ　/ ／　 '‐､ﾆ⊃　　　　それともハイチ手形？ナポリ手形ですか？
　　　ヽ､ｌ　　　　´ヽ〉
''"::l:::::::/　　　 __人〉
:::::::::|_/ヽ. 　 /|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
:::::::/´∨/`ｰ'〉ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
:::ｙ′.: ',ゝ､_/ヽ.||||i|::::ヽ::::::|:::!
／: :／/: : : :|:::ヽ|||||:::::/::::::::i:

3017．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　　
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　 　
.　　　　　 | | 　 ・ | ・　　|　 V⌒ｉ　　
　　　＿　 |.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　　　いえ、持参人払いの手形です。
　　　＼￣　　○　　　　　　　　/　　　
.　　　　 ＼　　　　　　 　　　厂　　　　
　　　　　／　 ＿＿＿＿_／　　　　 　 　
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./o　　　　i.　＼



　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣　　ところで、わたしが財界の王者なら
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜　　　　　あなたは皇帝といったところでしょうか。
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜　　　　　　きっとこのような高額な手形も
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__　　　　ずいぶんごらんになったと思いますが？
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／

3018．

　　　　　　 　 　 /⌒ｿ/⌒ヽ、
　　　　　　　 .　/　 //　　　 ..＼　　　　　　._,
　　　　　　　　/ 　//　　　　　　.｀ヽ,.._,ィ''´　　｀'ｰ- 、　　　　　　/i
　　　　 　　　/ 　//　　　　　　　　　　　　　　　　　　＼,.　　 _..ノ .|
　　　　.　　 / 　//　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　⌒´　　 .|
　　　　　　/　 //　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜
　　　　　 /　 //　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　『フランス銀行理事殿。
　　　 .　/ 　//　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|　　　　　本手形持参人に対し、わたしの預金から
　　　　/ 　//　　.　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　　１００万フランをお支払いください。
　　 　/ 　//　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 .|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　男爵　ダングラール』
　 　./ 　//　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　.　|
　　/ 　//　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 |
　ッ芝ヾｼ⌒ヽ、　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　|
　.ヾﾆジ　　　　＼　　　　　　._,.イ⌒ヽ　　　　　　　　　　　　　 　|
　　　　　　　　　　｀ヽ,.._,ィ''´　　　　　 ｀'ｰ- 、　　　　　　　　.　　|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　.＼,.　　 _., ､　　.　.ﾘ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　　　　 ⌒´　　 ＼._,ノ




　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）　　　　１枚、２枚、３枚、４枚、５枚。
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　５００万フラン！
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|　　　　　まるでクレジュス※というわけですな。
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,　　　　しかしこれだけの額が現金で支払われるとは。
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;:::::::::::::::::::::`、;`l;;;;;8;;;;;::::`ヽ
;;;;;;;;;;;;/、;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::;`l;;;|;;;;;;;;;;;::::: `l|、
;;;;;/'　 `,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::|;;;::l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::l
;;;く　　　';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;/




※１００万フラン＝２０～５０億円？

※クレジュス：巨富で有名なリビアの王

3019．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　　　もちろんですよ。
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　　お疑いなら行員と一緒に銀行までお越し願いましょう。
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　実際にご覧になれますよ。
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼




　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 ヽ_　　＼
　　　　　　　|　　　 （⌒ ）（⌒）　　　　　いえいえ、せっかくです。
　　　　　　.　|　　　　 （__人__）　　　　　お宅からは６００万フランお借りできることになっていて、
　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　残り５１０万フランいただけることになっています。
　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }　　　　　　この手形をいただいて受取証を差し上げましょう。
　　　　　　　　 ヽ 　　　　　ノ　　　　　　今日、大金の必要ができましたので。
　　　　　　_,,,,ノ|､￣／/／/ ＼、
　　_,,..r''''"/　|　＼`'／　 /　 | ￣`''ｰ-､
　 / 　 　 /　 |　 ／＼　 / ／　　 　/　ヽ
　ﾉ　|　　＞　|／）::::/＼/　＼ 　　ノ　／}
　{ 　 |　{　　 | ,r":::ヽ　/ 　 /　　/　// ハ

3020．

　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ノ|
　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＜ノ|
　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
　　|;;;;;;;;;;;/三────;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＞
　　|;;;;;;;;;;;|∠二二ゝ ヽ二二|
　　|;;;;;;;;;;;|三く（ (） 　 （ (）ﾉ|ヽ　　　　━━┓┃┃
　　|/⌒ヽ|三　　　 　＼　 　ｿ　　　　　 　 ┃　　　━━━━━━━━
　 　|б三三　　　＿￣　　|　　　　　　　　┃　　　　　　　　　　　　　　　┃┃┃
　　 ヽ三/三　 ￣　‐￣≦　三　ﾟ｡　ﾟ　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ┛　　
　　　　ゞ:: 　-ｧ,　　　　　　　　≧=-　。
　　　　　　　 ｲﾚ,､　　　　　　　＞三　　｡ﾟ　･　ﾟ
　　　　　　　 ≦｀Vヾ　　　　　　　ヾ　≧
　　　　　　 ｡ﾟ　/｡･ｲﾊ ､､　　　　｀ミ　｡ ﾟ　｡ ･



　　　　＿
　　　：　＞ ￣ ―― ---‐ ＿＿
　　　 ;　＞　＿＿＿＿＿＿. 　 |　；
　 　 　； ￣　 | /_ 　　 _ ＼ |　　|　 ;　　　　　　　あ、いや、その……
　　　　 　； 　.|.l´,,ヽ .i'ﾞ,, ｀i　| 　 |　;　　　　それは養育院のためのものでして。
　　　　 　 , 　 jヽ__ﾉ ヽ___ﾉ　ﾚ‐､l 　；
　　　　　；　／　 ° ､　 　 　 6 } 　;
　　　　　 ;　　￣~＞　ヽ 　　ﾉﾞ´　；
　　　　　　；　 ＜＿＿＿_イ　 ；
　　　　　　　 ;　　／|/＼／＼ ;

3021．

　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）　　　　　それなら他の手形で結構です。
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }　　　　　いや、世間の人々に、ダングラールさんが５００万フランを
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|　　　　　文句も言わずに現金ですぐ支払ってくれたと吹聴したかったのですよ。
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l
;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;:::::::::::::::::::::`、;`l;;;;;8;;;;;::::`ヽ
;;;;;;;;;;;;/、;;;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::;`l;;;|;;;;;;;;;;;::::: `l|、
;;;;;/'　 `,;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::|;;;::l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::l
;;;く　　　';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::::::::::;;;;;;;l;;;;;;;;;;;;;;;;;;/




　　　 ＿＿＿_
　　　 ＼　　　 ───＿＿＿
　　　 ＜　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣|
　　　　＞　＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 　 　 |
　　　　￣￣　|　/　　　　　　　＼　| 　　 |
　　　　　　　　| /⌒ヽ　　／⌒ヽ　 | 　　 |
　　　　　　　　| |　‘　|　 i ‘　　 |　 | 　　 |　　　　　……
　　　　　　　　| ヽ.__ノ　 ヽ.＿ ノ　 .ﾚ⌒ヽ
　　　　　　　ノ　　 o　　　　　　　　　 ６　|
　　　　　 ／＿＿　　　＼　　　　　　＿ノ
　　　　　　　　　　＞　　　　　　　 ﾉ
　　　　　　　　 ＜、＿＿＿　　 イ
　　　　　　　　　　　　　|───┤
　　　　　　　　　　　／ |／ ＼ ／ ＼

3024．

　　　　　　　　 　　　　 |
　　　　　　　　 　＼　　__　　／
　　　　　　　　 　＿　（ｍ）　＿ﾋﾟｺｰﾝ
　　　　　　　　 　　　　|ミ|
　　　　　　　　 　 ／ 　｀´　 ＼
　　　 ＿＿＿_
　　　 ＼　　　 ───＿＿＿
　　　 ＜　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣|
　　　　＞　＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 　 　 |
　　　　￣￣　|　/　　　　　　　＼　| 　　 |　　　　　　……！
　　　　　　　　| /⌒ヽ　　／⌒ヽ　 | 　　 |
　　　　　　　　| |　‘　|　 i ‘　　 |　 | 　　 |
　　　　　　　　| ヽ.__ノ　 ヽ.＿ ノ　 .ﾚ⌒ヽ
　　　　　　　ノ　　 o　　　　　　　　　 ６　|
　　　　　 ／＿＿　　　＼　　　　　　＿ノ
　　　　　　　　　　＞　　　　　　　 ﾉ
　　　　　　　　 ＜、＿＿＿　　 イ
　　　　　　　　　　　　　|───┤
　　　　　　　　　　　／ |／ ＼ ／ ＼



　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜　　　　　いや、あなたの受取証なら
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜　　　　　まさに現金同様です。
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／

3025．

　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　／　　 ヽ_　　＼
　　　　　　　|　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　.　|　　　　 （__人__）
　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　では、これをいただいてよろしいですか？
　　　　　　.　 |　　　　　　 　 }
　　　　　　.　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　 ヽ 　　　　　ノ
　　　　　　_,,,,ノ|､￣／/／/ ＼、
　　_,,..r''''"/　|　＼`'／　 /　 | ￣`''ｰ-､
　 / 　 　 /　 |　 ／＼　 / ／　　 　/　ヽ
　ﾉ　|　　＞　|／）::::/＼/　＼ 　　ノ　／}
　{ 　 |　{　　 | ,r":::ヽ　/ 　 /　　/　// ハ




.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　　ええ。
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　　それが養育院向けのものなので、
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　　他の金とは値打ちの違うように思い込んでおりました。
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼

3026．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　　
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　 　
.　　　　　 | | 　 ・ | ・　　|　 V⌒ｉ
　　　＿　 |.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　　　ところで、１０万フラン残っておりますが。
　　　＼￣　　○　　　　　　　　/　　　
.　　　　 ＼　　　　　　 　　　厂　　　　
　　　　　／　 ＿＿＿＿_／　　　　 　 　
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./o　　　　i.　＼




　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　　　|　　　 （ ⌒）（⌒）
　　　　　　　　　　|　　　　 （__人__）　　　　　利子だけでもそれくらいにはなるでしょう。
　 　 　 　 　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　お納めください。
　 　 　 　 　 　　　 |　　　　　　 　 }　　　　　これで貸借関係はなしというわけです。
　 　 　 　 　　　 　 ヽ　　　　　 　 }
　　　　　　　　　　　 ヽ､.,＿＿ __ノ
　　　_, ､ -― ''"::l:::::::＼ｰ-..,ノ,､.ﾞ,i ､
　　/;;;;;;::ﾞ:':､::::::::::::|＿:::;､>､_　l|||||ﾞ!:ﾞ､-､_
　丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::／:::::::＼ﾞ'' ﾞ||i l＼>::::ﾞ'ｰ､
. i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::＼::::::::::＼ .||||i|::::ヽ::::::|:::!
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!:::::::::::::::::::＼:::::::::ヽ|||||:::::/::::::::i:::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;:::::::::::::::::::::::＼:::::ﾞ､|||:::/::::::::::|:::

3027．

　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　 u　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜　　　　　　　はあ。
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＞養育院の出納課長、ボヴィル様がお見えになりました。

　　　　　　　　　／￣￣＼
　　　　　　　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　 |　　　 （⌒ ）（⌒）
　　　　　　　 |　　　　 （__人__）
　 　　　 　 　 |　 　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　おっと、あやうく奪い合いになるところでしたな。
　　　　　　　　|　　　　　　 　 }　　　　　では、わたしはこれで。
　　　　　　　　ヽ　　　　　ﾍミ|
　　　　　　　　／,`　、` -`,--` ,
　　＿＿,---/;;;;;`　　`-,-/ニﾆ |
　/;;;;;::::、:::::::::|、_ ,＞、 /::l,_l･　,<、__
ノ;;;;;;;;;;;;:::|::::::::::＜:::::::ヽ``l::::|　　|`l,::::ヽ
|;;;;;;;;;;;;;;:::::|:::::::::::::ヽ:::::::＼|:::|`-‐'/::ヽ::::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;:::::::::::::::::::-、:::`;:ヽ;-';;;;;:::ヽ::l

3028．

【待合室】

　　 　 　 　 　 　 ／￣￣＼
　　　　　 　 　 ／　　 _ノ　　＼
　　　　　 　 　 | 　　　（ ⌒）（⌒）
　　 　 　 　 　 l　　　　　（__人__）
　　　　　 　 　 l　　　　　｀ ⌒´ﾉ
　 　 　 　 　 　 | 　 　 　 　 　 |　　　　　どうも。
　　　　　　　 　 ヽ　　　　　　 l
　　　 　 　 　 　 _,ゝ､　　　_,ノ
　　　 　 　 ,､-='l　＼_,ﾝ g<＼
　　　　 / ＼　└〆＼ i=i|＼'＼
　　　 丿 　　ﾞi 　 ＼　＼=il　/　i!
　　 　 l　　　　l 　　　＼＼| /＝|l
　　 　 |　　　　|　　　　　＼i/ 　 ||




　　　　　 ＿＿＿＿
　　　　／　　　　　　＼
　　　/ 　　/　　　＼ 　ヽ　
　　　|　　　　 /＼　　　 |　　　　みなさん、どうも。
　　　ヽ　　　/￣＼　　/　　　　　最初の名無しの時を入れれば、なにげに四度目登場のボヴィルです。
　,,.....イ.＼　　　　　　 /　　　　
　:　 　| 　';　＼_____ ノ.| ヽ ､　　　三番目の時までは司法関係だったんですが……どうしたんでしょうね？
　　 　 |　　＼/ﾞ（__)＼,| 　i |
　　 　 ＞　　 ヽ. ハ　 | 　 |｜
　　　　【ボヴィル氏】


一度目：シャトー・ディフ視察の時にダンテスに会った。
二度目：モレル氏の手形をウィルモア卿（伯爵）に買い取ってもらった（その時密告状を盗まれた）。
三度目：ヴィルフォールに命令されて伯爵の身辺調査を行った。

3029．

　　　　　　　　　　　　ｶﾁｬ
　 　 |┃
　　　|┃
　　　|┃　 ﾉ// ／￣￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　|┃三　 　|　　　/　　　＼　 　　　|
　　　|┃　　　　|　　　　 ／＼　　　　　|　　　　養育院を代表して参りました。
　　　|┃三　　 |　　　 /￣￣＼　　　　|　　　　　後家たち、孤児たちに代わって５００万フランをいただきに。
　　　|┃三　　 ＼　　　 　　　 　　　／
　　　|┃　　　 ／￣￣￣￣￣￣￣ ＼




　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜　　　　　　ああ……ボヴィルさん、すいませんが
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜　　　　　　その後家たち孤児たちに２４時間だけ待っていただけませんか？
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／

3030．

　　　　´￣￣￣￣￣￣＼
　　　 /　　 ／　　　＼ 　　丶
　　 │　　 　　／＼　　　　 .|
　　　|　 　　／￣￣＼　　　 |　　　　それはいったい……？
　　　 ＼　 　　 　　　　　　／
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　




.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　 　　　実はさっきお会いしたはずの
.　　　　　 | | 　 ・ | ・　　|　 V⌒ｉ　　 　モンテ・クリスト伯爵に５００万フランの手形を渡してしまいまして。
　　　＿　 |.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　
　　　＼￣　　○　　　　　　　　/　　　 　　　これがあの方の受取証です。ご覧になりますか？
.　　　　 ＼　　　　　　 　　　厂　　　　
　　　　　／　 ＿＿＿＿_／　　　　 　 　
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./o　　　　i.　＼

3031．

　 　＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　 （ ;;;;(
/ 　　　 　　　　　　　　) ;;;;)
|　　 　　　 ／ 　　＼ /;;／
|　 　　 　　　／ヽ　 l;;,´.|　　　　『ダングラール男爵より５１０万フランを確かに受け取った。
/　　　　 ∩ノ ⊃━・'／　　　　　右の金額は随時ローマのトムスン・アンド・フレンチ商会より受け取られたし』
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
.＼　“　　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／



　 　＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　 （ ;;;;(
/ 　　　／ 　　＼ 　　) ;;;;)
|　　 　 　　／ヽ　　 /;;／　　　　　なるほど、トムスン・アンド・フレンチ商会ですか……
|　 　　 　／￣丶　 l;;,´.|　　　　　私もかつて２０万フランほど取引をしたことがあります。
/　　　　 ∩ノ ⊃━・'／
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
.＼　“　　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／

3032．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　　　伯爵はよほどウチをお気に召したのか、
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　　両替料として１０万フランをくださいましてね。
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼




　　　　´￣￣￣￣￣￣＼
　　　 /　　 ／　　　＼ 　　丶
　　 │　　 　　／＼　　　　 .|　　　　それは気前がいいお方ですな。ウチも寄付をお願いしてみようかな。
　　　|　 　　／￣￣＼　　　 |
　　　 ＼　 　　 　　　　　　／　　　　そういえば、モルセール夫人と御子息がご主人の遺産を寄付なさいましたよ。
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ　　　　不浄の財は持ちたくないとのことで。
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|

3033．

　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜　　　　　　それはそれは、ご潔癖ですな！
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜　　　　　どれくらいですか？
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／




　 　＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　＼
/ 　　　／ 　　＼ 　　ヽ　　　　　そうたくさんでもありませんでした。
|　　 　 　　／ヽ　　　　|　　　　１２０～３０万フランといったところで。
|　 　　 　／￣丶　　　.|　　　　まあこちらの話に戻りましょう。
/　　　　 ∩ノ ⊃　　／
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
.＼　“　　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／

3034．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　　
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　 　
.　　　　　 | | 　 ・ | ・　　|　 V⌒ｉ　　 　　　ええ。
　　　＿　 |.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　　　　一日に１０００万フランも引き出すとなると
　　　＼￣　　○　　　　　　　　/　　　　　　　妙な誤解を受けそうなので、一日待っていただけませんか？
.　　　　 ＼　　　　　　 　　　厂　　　　
　　　　　／　 ＿＿＿＿_／　　　　 　
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./o　　　　i.　＼




　　　　´￣￣￣￣￣￣＼
　　　 /　　 ／　　　＼ 　　丶
　　 │　　 　　／＼　　　　 .|
　　　|　 　　／￣￣＼　　　 |　　　　　明日の二時が金庫検査なので、それまでには……
　　　 ＼　 　　 　　　　　　／
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|

3035．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　　では正午に使いをおよこしください。
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　　いや、代わりにこのモンテ・クリスト伯の受領証を
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　ロスチャイルドかラフィットのところにお持ちしませんか？
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼




　 　＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　＼
/ 　　　／ 　　＼ 　　ヽ
|　　 　 　　／ヽ　　　　|　　　　ローマ支払いのこれを、ですか？
|　 　　 　／￣丶　　　.|
/　　　　 ∩ノ ⊃　　／
(　 ＼　／ ＿ノ　|　 |
.＼　“　　／＿＿|　 |
　　＼ ／＿＿＿ ／

3036．

　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜　　　　　ええ。割引されてもせいぜい５，６０００フランでしょう。
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／




　　　　　　　　　　　　　　　／￣￣￣￣￣￣ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　|　　　／　　＼　　　|
　　　　　　　　　　　　　　　|　　　　／＼　　　　|　　　　いや、それなら明日までお待ちします。
.　 　 　　 　 　 r─一'´￣`＜ヽ／￣￣＼ 　／　　　　　　とんだ散財ということになりますので。
.　　　　 　　 　 `ー‐ｧ　　 ,　 　 )　　　 　, -'~⌒ヽ、
　　　　　　　　　　 ノ　　　{. 　 ,ﾍ　　　　,l.　ゝ、_ .'ヽ).
. 　 　 　 　 　　 ／, ､　_　　　/. |　　 　.　',　　.　..　 .ヽ、
　 　 　 　 　　 （／ / // / /　...|　 　 　 ...|＼..＼＼ ＼_)
　　　 　 　 　　 　 / // / /　　　　　　 　 . .　＼_＼_)､_）
　　　　　　 　　 　 ｰ' {_/ノ　　　　　　　　　 　 　　."´

3037．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　　　わかりました。
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　お待ちしております。
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　　　6 |
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼




　　　　　 ＿＿＿＿
　　　　／　　　　　　＼
　　　/ 　　/　　　＼ 　ヽ　　　　　ところで、あの気の毒な
　　　|　　　　 /＼　　　 |　　　　ヴィルフォール氏の御令嬢の葬儀には
　　　ヽ　　　/￣＼　　/　　　　　お出かけにならないのですか？
　,,.....イ.＼　　　　　　 /
　:　 　| 　';　＼_____ ノ.| ヽ ､
　　 　 |　　＼/ﾞ（__)＼,| 　i |
　　 　 ＞　　 ヽ. ハ　 | 　 |｜

3038．

　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　／　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　＜
｜　　　　　　／￣√￣￣Τ￣￣
｜　　　　　/　　　　/⌒＼｜
｜ |⌒＼/　　　　　|　　ヽ|｜　　　　　参りません。
｜ | ∂　　　　　　　＼＿｣｜　　　　　べネデットの事件以来、物笑いにされていますので。
｜　＼　　　　　　　　　　　 ∟__
｜　 /　　　　　　 ＿＿＿＿／
　＼/　　　 　　　　＼＿___
　　| 　　　 　＿＿＿＿／




　　　　´￣￣￣￣￣￣＼
　　　 /　　 ／　　　＼ 　　丶
　　 │　　 　　／＼　　　　 .|　　　　しかし、あなたに罪がおありというわけではないでしょう。
　　　|　 　　／￣￣＼　　　 |　　　　みなさん御同情なさっていますよ、特に娘さんに。
　　　 ＼　 　　 　　　　　　／
　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　　/ 　　　 　,⊆ニ_ヽ、　 |
　　　/　 　 ／　r─--⊃、 　|
　　　|　ヽ,.ｲ　　 ｀二ﾆﾆうヽ.　|

3039．

　　　 ＿＿＿_
　　　 ＼　　　 ───＿＿＿
　　　 ＜　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣|
　　　　＞　＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 　 　 |
　　　　￣￣　|　/　　　　　　　＼　| 　　 |
　　　　　　　　| /⌒ヽ　　／⌒ヽ　 | 　　 |　　　　　　かわいそうな娘でした。尼になると言いまして……
　　　　　　　　| |　‘　|　 i ‘　　 |　 | 　　 |　　　　　　お友達の娘さんと一緒に修道院を探しに出かけました。
　　　　　　　　| ヽ.__ノ　 ヽ.＿ ノ　 .ﾚ⌒ヽ
　　　　　　　ノ　　 o　　　　　　　　　 ６　|
　　　　　 ／＿＿　　　＼　　　　　　＿ノ
　　　　　　　　　　＞　　　　　　　 ﾉ
　　　　　　　　 ＜、＿＿＿　　 イ
　　　　　　　　　　　　　|───┤
　　　　　　　　　　　／ |／ ＼ ／ ＼




　　　　　　　　　´￣￣￣￣￣￣＼
　　　　　　　　 /　　 ／　　　＼ 　　丶
　　　　　　　 │　　 　　／＼　　　　 .|
　　　　　　　　|　 　　／￣￣＼　　　 |
　 　　　　　　 ＼　 　　 　　　　　　 ／　　　　　　それはお気の毒に。それでは……
　r､　　　 　r､／　　　　　　　　　　ヘ
　ヽヾ　三　|:l1　　　　　　　　 　　　　ヽ
　　＼>ヽ/ |｀ ｝　　　　　　　　　 　　|　|
　　　ﾍ　lノ `'ｿ 　　　　　　　 　　　　|　|
　　　　/´　 /　　　　　　　　　　　　 |.　|
　　　　＼. ｨ 　　　　　　 　 　 　 　　|　 |
　　　 　 　 |　　　　　　　 　 　 　 　 | 　|

3040．
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾊﾟﾀﾝ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |　○ 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　 　 ,.　　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　,;:'　ﾞ　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |　:.;'
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |.　　　　　　　　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |　　 :.
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |:　　　　　　　　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　　　　 　 　 　 　 | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　　　 　 　 　 　 　 .::' | 　 |　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |　　　　 　 　 　 　 　 |
　 　 　 　 　 　　　　　|＿_|＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿|＿＿＿＿＿＿＿_,;;'|




　　 _＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿_ノ|
　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＜ノ|
　　|;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/
　　|;;;;;;;;;;;/三────;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;＞
　　|;;;;;;;;;;;|∠二二ゝ ヽ二二|
　　|;;;;;;;;;;;|三く（ (） 　 （ (）ﾉ|ヽ
　　|/⌒ヽ|三　　　 　＼　 　ｿ　　　　　　　　　　……。
　 　|б三三　　　＿￣　　|　　
　　 ヽ三/三　 ￣　‐￣　/　
　　　　/ヽ＼　　　　　　 /　　
　　　　ゞ:: 　＼__＿＿_/

3041．

　　 ＼　　／:＼　 ／ヽ　　　　 ／|
　!,:::::::..＼|:::::::::..＼|:::::::..＼＿／::,!
　 !,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::　,!
　　!,:::::::_;;;;;;＿__;;;;＿＿＿;;;;;;:::::|
　　 !,:::｢　／.＿|乂Ｘ／　ヽ　|::::|
　　 ｣:::|　|　 | ・ i　f´./　　 | |::::j 、　　　　　けっ、ばかやろう！
　 r⌒i　 |　　￣|　| /　　 /. |f┐|
　 | f´'i　 ヽ＿__|,,⊥＿_ノ　j´`'／
　 ヽ／　　　　　`ー´　　　く／
　∠＿＿＿＿＿＿＿＿＿二}
　　　`　､_　　　　　　＿,,,一'′



　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　＞￣ ─＿
　　　　　　　　　　＞　　　　　 ￣ヽ
￣￣|┌┬──　￣ | ￣ | 　　 　 i
￣￣| |　| |￣￣￣ 　|　　|　　　　　!
￣￣| |　| |　　　　 ＜　　）　　　 　/　　　　正午までには、手の届かないところにずらかってやるからな！
￣￣| |　| |　　　　　　＞ 　ヽへ／
￣￣| |　| |＿＿＿＿￣ .l二二l.　　　　　……よし、旅行免状もあと２か月通用するぞ。
　 .o |└┴─┬── ／　　 　 ヽ
　 °|　　　　　/⌒|￣　__,　 　 　 i
￣￣￣￣￣￣￣￣￣　 | ＿ ＿|
￣￣￣￣￣￣￣￣￣／　　　 ノ
　　　　　　　　　　　　 |＿_／￣￣￣|
　　　　　　　　　　　＿|　　|￣|￣|￣
　　　　　　　　　　（＿＿＿)　|＿|

3042．

【翌日】

┌───────────────────────────┐
│サン・ジェルマン・デ・プレ町にあるホテルの二階のある一室は、　│
│素性の不明な人物によって借りられていた－　　　　 　　　　　　　　│
└───────────────────────────┘


　　　　　　　　　　　　　 　 　 !;;;;_;;l;/!　　　 ｀　l_ﾚ!/
　　　　　　　　　　　　　　　_r＜　　 ヽ　 　 - ／ '′
　　　　　　　　　　　　 　 /:::`ヽ､`ヽ､ i´` ､／
　　　　　　　　　　　　　f:¨::ヽ::::::::`..､ `7､
　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::`:､:::::::::〈:.:.:i
　　　　　　　　　　　　i:::;;::--::;;:::::`ｰ-､;ﾄ､:l
　　　　　　　　　　　 /;''::::::::::::::`､::::::::/:::::i.:l
　　　　　　　　　　　i:/::::::::::::::::::::::i::::/:::::::::!:l
　　　　　　　　　.　 i:i:::::::::::::::::::::::::l;;;:ヽ::::::::l.:!
　　　　　　　　　　 l:::!:::::::::::::::::::;;;;;;!:::::ヽ:::::::!l
　　　　　　　　　　 !;;;!::::::::::::::::::;;;r'i;:::::::ヽ:::::`!
　　　　　　　　　　 !;;;!::::::::::::::::::;;;!;;!::::::::::ヽ::::l
　　　　　　　　　　 !;;;!::::::::::::::::::;;;!';;:::::::::::::ヽ:l
　　　　　　　　　　 !;;;!:::::::::::::::;;;;;;!;;::::::::::::;;;;;;;!
　　　　　　　　　　 !;;;;!::::::::::::::;;;/;;:::::::::::::::;;r7
　　　　　　　　　　 !;;;;!:::::::::::ヽ;;!;;;::::::::::::::::::l′
　　　　　　　　　　 !;;;;!:::::::::::::::`!;;;::::::::::::::::::!


┌──────────────────────────────────┐
│彼は、冬は劇場の出口で主人を待つ御者のように顎をネクタイの中に突っ込み、　│
│夏場は門番にも顔を見られないように、門番部屋の前で鼻をかむことにしていた。 │
└──────────────────────────────────┘

3043．

　　　　　　　　　　∧＿∧
　　　∧＿∧　　（´<_｀ 　）　　　　　ま、どこかのお偉いさんなんだろう……
ε= （´く_`　） 　/　　 ⌒i
　　 ／　　　＼　 　　　|　|
　　/　　 　/￣￣￣￣/　|
＿_(__ﾆつ/　 FMV　 / .| .|＿＿＿＿
　　　 ＼/＿＿＿＿/　（u　⊃
　　　　　【門番コンビ】



┌──────────────────────────┐
│その男がやって来た２０分後に、　　　　　　　　　　　　　　　　 　　│
│ベールで顔を隠した正体不明の女が訪ねてくる。　　　　　　 　　│
│彼女は独特なやり方でドアを爪でひっかき、入れてもらうのだ。│
└──────────────────────────┘



　　　　　　　　　　∧＿∧
　　　 ∧＿∧ 　（´<_｀ 　）　　　　　　しかし俺たちが正体を知る必要はないよな。
　　　（　´_ゝ`）　/　　 ⌒i
　　 ／　　　＼　 　　　|　|　　　　　　　模範的な門番だよな俺ら。
　　/　　 　/￣￣￣￣/　|
＿_(__ﾆつ/　 FMV　 / .| .|＿＿＿＿
　　　 ＼/＿＿＿＿/　（u　⊃

3044．


　　 　 　 　 　 　 　 　 ｌ:::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ　　　　　/:::::::::::::::::::::. ／
　　　　　　　　 　 　 　 ｌ::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ　　　 　 ｉ:::::::::::::::::::.: /
　　　　　　　 　 　 　 　 ｌ::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ　　　 　 !::::::::::::::::::.:./
　　　　　　　　　　　　　 ｌ::::::::::::::.:.:.:.:.:.:.:.:.ｌ 　 　 　 !:::::::::::::::::. /
　　　　　　 　 　 　 　 　 ｌ::::::ｉ:::::::.:.:.:.:.:.:.: |.　 　 　 ｉ:::::::::::::::.:./
　　　　　　　　　　　　　　ｌ::::::ｌ:::::::.:./:.:.:.:.:|　　　　 !::::::::::::::.:/
　　　　　　　　 　 　 　 　 ｌ::::::ｌ:::::::/:.:.:.:.:.:|.　　　 /::::::::::::::./
　　　　　　　　　　　 　 　 ｌ:::: |::::/:.:.:.:.:.:.:.|　　　/:::::::::::::::.:ｌ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｌ:::::|:/:.:.:.:.:.:.:.:.:ｌ　　 ∧:::::::::::::::.:〉
　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |::: ｌ':.:.:.:.:.:.:.:.:. !　　 {ｉ　ー ⌒ｉ´
　　　　　　　 　 　 　 　 　 ｌ::/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ',　　ヾ､　　　 !
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 /::ヽ:―‐:.､:.:.:.:.:.:〉　　 ｌ!　　　ヽ
　　　　　　　　　　　　　 〈:::::,　―　､:::.:.:.:.:!　　　ｌ{　　 　 }
　　　　　　　　　　　　　　 V　　　　　￣ ヽ　　　ヾ ､＿ ﾉ
　　　　　　　　　　　　 　 ´　　　　　 　 　 |　　 　 ｀ ー ´
　　　　　 　 　 　 　 /　　　　　　　　　　‐'}
　　　　　　　　　　　{ ｀ ー―――‐　´　‐'
　　　　　　　　　　　 ー――――― ´




　　　　　　　　　　∧＿∧
　　　 ∧＿∧ 　（　´_ゝ`）
　　　（　´_ゝ`）　/　　 ⌒i　　　　（ん？今日は来るのが早いな……朝の十時だぞ）
　　 ／　　　＼　 　　　|　|
　　/　　 　/￣￣￣￣/　|
＿_(__ﾆつ/　 FMV　 / .| .|＿＿＿＿
　　　 ＼/＿＿＿＿/　（u　⊃

3045．

　　　　　 　　　 　　　 /　　 　　／　　 /
.　　　　　　　　　　　 /　　 　∠i__　　/
　　　　　　　　　　　 l　　￣　　 　 丶 _
　　　　　　 　　　　　 ＼　　　　　　　　　 丶 ､　 ＿＿__
　　　　 　　　　 　　　　　￣ 　 -　　　　_＿　　/|＼j::l:::::i
　　　　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　＼ 　 　 -､ ／､ゞ-
　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　　ヽ　　　　＼ ヽ＼
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　　i　　　　　 ＼|::::|
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　 i　　　　　　 ヽ:j
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　 i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 丶　i
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ﾄ-ｲi､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　/､__|i/､
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　　　 |　 /:::::::>
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　| /::::l￣
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　|/::::/
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　L／
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｶﾂｺﾂｶﾂ



　　　　　　　　　　∧＿∧
　　　 ∧＿∧ 　（　´_ゝ`）
　　　（　´_ゝ`）　/　　 ⌒i　　　　お……？
　　 ／　　　＼　 　　　|　|
　　/　　 　/￣￣￣￣/　|　　　　　　女の方もすぐ来たな。
＿_(__ﾆつ/　 FMV　 / .| .|＿＿＿＿
　　　 ＼/＿＿＿＿/　（u　⊃

3046．

ｶﾞﾁｬ

:.:.:.:.:.:.:.:.:.:!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:./ {:.:.:.:.!ヽ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ｌ:.:|:.:.:.:.:.|: .:.|
:.:.:.:.:.:.:.:.:.|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: |:.:.:.:.ｲ,.-t─.:!‐匕:.:.:.:.:.:.:.: .| :|:.:.:.:.:.|: .:.|
:.:.:.:.:.:.:.:. |:.:../:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|!.:.:.: |　　｀、:.! l　＼:.:.:i.:.:.:.ｌ:.:i!:.:.:.:.:| : .|
:.:.:.:.:.!: .: |:.:.!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: i !:.:.:.:|　 　 _YLL__　∨!:.:.:/:.:!|:.:.:.:.:!:.:.:|
:.:.:.:.:.!:.:.: |: .|,､:.:.:.:.:.:.l:.:.:.|.ﾍ : .|　 ,ｒｧ=＝=ミﾞ 、 !:.:/:.:/ !:.: ./!:.:/
:.:.:.:./:.:.:.:.!:.:ｌ　i:.:.:.:.:.:l:.:.:.|　ﾍ:.{ ⊂⊃　　 ''" ll./／､/　l:.:./ .!/
:.:.:/:.:.:.:.:./i:.:! ﾍ:.:.:.:.:.l!:.: l　　ヾ　　　　　　 イ ´　　＼,|:/
:./:.:.:.:.:.:.:i、ﾍ 　ヽ:.:.:.:!ヽヽ　　 　　　　　　!! 　　　　〃´　　　　　　　　　ドブレーさん！
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヘﾄ　　＼:ヽ ヽヽ、　　　　　 〃　＿__　/
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:;!｀ﾞーヵﾐヾ　　`ｰ-　　　 〃 ／　 ./ /
:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:! ｀　 　 　 　 　 　!! /　　 / /
:.:.:.:.:.:.:.:.: .:/: .:.:.:.:.:.,i　　　　　　　　　ハ｛＿__ﾉ/
＿＿_:.:／:.:.:.:.:.:.:./　　　 　 　 　 　 i! li　　　/
.　　　　｀ ｰ　､_,/　　　　　　 　 , -イ-=--‐'
　　　　　　　　 ｀ ｰ　　　　　　/




　　　　　　　　　　　　　　　　　　人　　　　　　　　　　　　人
　　　　　　　　　　　 　 ∧＿∧　　て　　　 　 　 ∧＿∧　　て
　　　　　　　　　　　　 （；´_ゝ`） 　そ　　　 　 　 （； ´_>｀）　そ
　　　　　　　　　　　　/⌒|＼||　　　　　　　　　 /ヾ┰/九
　　　　　　　　　　　 / 　　￣/|　　　　　　　　 / 　 ／ゝ　|　　　　　　　（ふうん、あの人はドブレーっていうのか……）
　　　　　　　　　　. / 　/　　￣|　　　　　　　　| |　:|／ :|　|
　　　　　　　　　　/ 　/|　　　　|　　　　　 　 　| |　:|°.::|　|
　　　　　　　　　　　~ヽ. 　 　 　|　　　 　 　 　 | |　:|°.::|　|




┌─────────────────────────────────────┐
│しかし彼らは模範的な門番だったので、そのことを女房にも言うまいと心に誓った。　　　　│
└─────────────────────────────────────┘

3047．

　　　　　　/: : : : : : ::::i: ::::ﾊ:: :::::::: : :::ﾄ:::::::: : i: : :::::::::::ヽ
　　 　 　 /: : /: /: ::::::|::::/　V::ﾄ::::::: :::| ＼::: :V: : :::::::::::|
　　 　 　 |: :/: /: :/:::::|∠─ V| ヾ:::::::|￣ V:::::i:::::::::::::::::}
　　　　　 ﾚ.|:.::::|:::i:::::/:/　　.､ﾊi　＼:::ﾚｨ--V::ﾄ::::::::::::::::ヽ
　　　 　 　 .|::::::|:::l::/|::ﾚｲ飛ゝ　　　ヾ| 'ｊ及ｧVﾊ::::::::::::::::ﾊ
　　 　 　 　 |::::::|:::K .V 辻 tｊ}　　　　　 弋 ｿ ' ﾊ::::::::::::ﾄ;;ゝ
　　　　　　　|::::∧:r-､　ゞ- '´　　　　　　 ￣　i .ﾋ V:ﾊ::::i::＞
　　　　　　　|::/　|:|ﾚヽ　　　　　　i 　　　　　　レｲ/'ﾘ::::::＞　　　　　入ってください。
　　　　　　　ヾ.　 | ヽ∧　　　　　＿　　　　　r‐ム::ﾊ／　　　　　　　どうしました？
　　　　　　　　　　V:::/ ヽ､　　　　　　　　 ／'´
　　　　　　　　　　 ヾi　 　}＞　　　　　, イ
　　　　　　　　　　　　　　　 　| ｀ - ´_ -┴┐
　　　　　　　　　　　　　　　r‐'V/￣　　　　/::＼
　　　　　　　　　　　　　　 / /:::::入 　 　 ./::::::::::|""＼
　　　　　　　　　　　　／:/ /:::::::::::∧　　/::::::::::::|::::::::::::" - ､
　　　　　　　　　　／/:::::|V∧::::::/　 ＼/::::::::::::::|::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　 ／:::/:::::::|　 /:=:::i　 　 /::::::::::::::::|::::::::::::::::::::::
　　　　　　　 /:::::::::|::::::::|　/::/::::|　　 /:::::::::::::::::/::::/:::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　　【ドブレー】
　　　　　　　　　　内務大臣秘書官。アルベールの友人。




　　　　　/:.:./:.:.:.:./:.:.ｨ:.:./:./:.:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:.:.:.',:.:.:.:.:.:ヽヽ:ﾊ
.　　　　/:.:/:.:.:.:.:/:.:./:.:./:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:l:.:.:;.:.:.:ｉ:.:.:.:.:.:.:.'､:',:.l
　　 　 l:.:/l:.:.:.:.:,':.:.:,':.:./.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.::ﾊ:.:.:l:.:.:.:.:i:.:.:.:',:.i:|
.　　　 |/..l:.:.:.:.:l:.:.:.l:_,,斗t'':.:.:.:.:,.:.:.:､_:.:./ .l:.:.l:.:.:.:.:.i:.:.:.:.i:.:|
.　　　　　|:./:.:.|:.:.:.|:./__.ii:.:.:.:.ｲ:／ /｀ﾒ.､,.l:.ｲ:.:.:.:.:.:l:.:.::.|:.|
　 　 　 　V:.:.:.l:.:.:.l.ｲf示ﾄ:.:.:ﾚ'´ .ノｲ,__　l:｀ﾄl:.:.:.::.:.ll:.:.:.l:.|
　　　　 　 V: l:ﾄv:l　lr'::::| ',::l 　 　 .f爪心､, l:.:.:.:./:l:.:/:.:|　　　　　　わたし、あなたを当てにしていいかしら？
.　　　 　 　 '､:V::::l　ﾋ_:ｿ　　　　　 lr'::::::ﾘ.''/:.:.:.:ﾉv:/l::N
　 　 　 　 　 lゝl:.:l　　　　 　 　 　 ゞ_:シ ./:.:／ゝl/:.:l: l
　　　　　 　 ,'/:.:.:.ﾍ　　 ´　　　　　　　　/イ r‐_ｲl:.:.::.:.:'､
　　　 　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:＼　 ´｀　　　　　　ｲ｀¨:.´:.:.:.:l:.:.:.:.:.:'､
.　　 　 　 /:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.,.>.､　　 ,.　 ＜:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:',:.:.:.::.:.'､
　　　　　 l:::l:.:.:.:.:.:.:.:／ .i　 ｀.´　 　.i ｀'､:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.::.:.:.',
　　 　 　 l...l:.:.:.:.:／　 　.i　 　 　 　 ﾍ　＼:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.:.:.:.:i
　　　　　　　　　　　　　【エルミーヌ】
　　　　　　　ダングラール夫人。ドブレーとは怪しい仲だった。

3048．

　　　　　／: : : :u: : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : :u: : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V　　　　　当然ですよ！
　　＜ : ｣_: : / 〈　（・）　|/:::::::ﾚ（・）　}|:./ヽ : |
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　:::::::::::､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　　　　しかし、何があったんです？
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　::::::::::::::::::::､::::::::::::::: {ﾊ/　V　　　　　　　　今朝いただいた手紙の取り乱した字といったら……
　　　　　 ＼_!　u 　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　 ｀t　u ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼u　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､
::::::::::::::/:::::::::∧　　　　/二＼　|::::::ヽ::::::::::::＼
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ　 /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!




.　　　　　　　 /　　　.,.＜:.:.:.:;:.:＜:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ:.＼
　　　　　　　　　　／:＞イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:ヽヽ:.ヽ
　　　　　　　　　,:':／,.:.´／ .:.:.:.:.:.:.: /:.:.:.:.::.:.:.:.:i:.:.:i:∧:.:ヽヽ∧
　　　　　 　 　 /'　/:.:.:;:':.:.:.:.:.:.:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:i:.:∧:.:.:∧:ﾊ
.　　　　　　　 /　./:.:./:.:.:.:/:.:.: /: /i:.:.i:.:.:.:.:.:.:.::/i.:.:Ⅳ:.:i:.:.:.:.:.i:.:i
.　　　 　 　 　 　 i:.:/i:.:.:.:.i:.:.:.:/i:.:i _i;:斗:.:.:.:.メ廴_/ .i:.:.i:.:.:.:.:.:i:.|
.　　　 　 　 　 　 |/ i:.:.:.:.:i .:.,.ｨ≦´ .V:.:.:.:／　/:/.≧トxV:.:.:.:i:.|
　　　　　　　　　　　{:.:.:.:.:i:.:.:.{ ,ｨﾁ示ヾ:./　／ 示ミぇ､ .i:.:.:.:i.:.|
　　　　　 　 　 　 　 V:.:.∧:. i/{r';;;::::}　ヽ　　　{r';;;::::}ヽi:.:.:./:.:|　　　　ダングラールがどこかへ出かけてしまいましたの！
　　　　　　　 　 　 　 ヾ:.{　Vﾍ.とz少　　　 　 弋zつ ./:.／!:.:.|
　　　　　　　　　　　　 i:.:.ゝハゞ.　　　 　 '　　　　　 ／_ イ:.:.:.|
　　　　　　 　 　 　 　 i:.:/:.:.:.:.ヽ.　 　 　 ― 　 　 　 ,.'´:.:.:i:.:.:.:.!
　 　 　 　 　 　 　 　 /:/:.:.:.:.:.:.:.:.ゝ 　 　 　 　 　 .イ:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.i
　　　　　　　　　　　/:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i　 ､ _,.　イ:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.i
　　　　　　 　 　 　 i:/!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..＞j　　　　　.i､,::.:i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.}

3049．

　　　　　 　 　 　 ／:.:.:;.:.':.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:|:.:ヽ:.:.:.:.ヽ
　　　　　 　 　 ,..:'／/:.:.:／:.:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.∧
　　　 　 　 　 /／ /:.:.:/:./:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.i:.:.:∧:.:.:ﾊ
.　　　　　　　 i/　/:.:.:/:.:.i:.:/ｉ:./i:.:.:.:.:.:.:.:i:.:i:.:.i:.:.:.:.:i:.:.:.:.:!
　　　　　　　　　 i:.:.:/!:.:.:i:/ _少:.:.:.:､:.／/.|:.:i:.:.:.:.:i:.:i:.:.:|
.　　　 　 　 　 　 |:./ .!:.:.ｉ≦ i　i:.:.;/ﾉ＞之!:/i:.:.:/Ⅳ:.:.:!
.　　　　　　 　 　 |:i　 V:.ｉ. 乍ﾊ.V 　 /ｫzx､＞:./:.i:.:.:.:.:|　　　　　置き手紙を残して……
.　　　　　　 　 　 ヽ!　 ヾ!　ﾋ:ﾂ　　 　 |r';沁 i:/};/:.:.:.:.:|　　　　　これを、お読みになって。
　　　　　　　　　　　　 /八　　 ,　　　 ゞ:シ / ./:.:.:.:.:.∧
　　　　 　 　 　 　 　 /:.i:.:.:＼.　 ､　 　 　 .ｨ:ｰ':.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　　　/:/.|:.:.:.:.:.:.:..､　_ ,. イ　L_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　 　 {:.i　|:.:.:.:/:.:.:.:こ!　　 　 ゝヽ:.:.:.:.:.:.:.:ｉ:.|
.　　　　　　 　 　 　 ヾ　V:.:.:i＞'' /　 ./ ／　　ヽ:.:.:.:..:.//
　　　　　　　　　　　 　 ,.ィ'´ 　 ./ヽ. ／　　　　　＼／
　　 　 　 　 　 　 　 ／:./　 　 /　／, - '　 　,..-―-ヽ
.　　　　 　 　 　 　 ∧::/rェzx,.i／zｭ.､　 　 /::::::::::::::::ﾊ
　　　　　　　 　 　 |　V7}以少弐以ﾘ廴__ /:::::::::::::::::::::|
　　　　 　 　 　 　 |. //.ゞ‐ﾂoゞ≠‐///./＞''´ ￣￣V!
　 　 　 　 　 　 　 | {//i　 {.o.{　 　 { i i i´　　　　　　 |'




::::::／::::::::::::/／::::::::::::::／／::::::／::::／:::::i:::::::::i::::::::::::::::l:::::::::::|
／::::::::::::::::/::::::::::::::::／´:::::::::／::／::::::::::::l:::::::::l:::::::::::::::::!::::::::::l
::::::::/´i::／::::::::::::／::::::,,,､,／:::::::＼,,∧:::::l::::::::,':::::::::::::::: ﾉ:::::::::;!
:::::/ ::::!/::／/:::::::::／ 　/::::::::::／´ ∨/::::i:::::/::::::::::::::::/i:::::::::/
:::::｀::::::／ ./::::::／ 　　/::::／,"￣ゞ"ﾒ:::::::!::/::::::::::::::::/　ｌ:::::/
:::／／ 　/::／ 　　　/／　　　 /;）/:::ﾍ::／::::::ﾊ::::::/ 　 ｌ:::/
/／'., ' , ∨　　　　 / 　 　 　､/ｿ/:::::／）ﾉ:::/ /::::/ 　　i:/
/ 　　ゝ 　　 　　　　 　 　 　 　 /::／i //:::/ /:／　　　/
　　　　 ﾍ　　　　　　　　 　 　／´ 　 ',/／／´
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 '､　　　　　　　わかりました……。
　　　　　　　　　　　　　　__　　　　　　_ゝ
、　　　　　　　　　　　　ヽ、_ゝ 　／ ´
;;',　　　／｀　､ 　　　　　　　　,　′
;;;;',　／ 　 　　｀`　､ 　 ,　"
;;;;;ヾi　　　　 　 　 　 `´
;;;;;＼＼
;;;;;;;;;;;＼＼
;;;;;;;;;;;;;;∧　＼

3050．

　　　　　　　　　　＿
　　　　　　　　　　＞￣ ─＿
　　　　　　　　　　＞　　　　　 ￣ヽ　　　『お前がこの手紙を手にする時、お前にはもう夫というものがいないのだ！
￣￣|┌┬──　￣ | ￣ | 　　 　 i　　　　おお！あまりびっくりしないでほしい。
￣￣| |　| |￣￣￣ 　|　　|　　　　　!
￣￣| |　| |　　　　 ＜　　）　　　 　/　　　お前に娘がいなくなったと同じように、夫もいなくなるのだ。
￣￣| |　| |　　　　　　＞ 　ヽへ／　　　　つまりわたしは、フランス国外へのどれか一つの道を走り続けているのだ』
￣￣| |　| |＿＿＿＿￣ .l二二l.
　 .o |└┴─┬── ／　　 　 ヽ
　 °|　　　　　/⌒|￣　__,　 　 　 i
￣￣￣￣￣￣￣￣￣　 | ＿ ＿|
￣￣￣￣￣￣￣￣￣／　　　 ノ
　　　　　　　　　　　　 |＿_／￣￣￣|
　　　　　　　　　　　＿|　　|￣|￣|￣
　　　　　　　　　　（＿＿＿)　|＿|



　　　 ＿＿＿_
　　　 ＼　　　 ───＿＿＿
　　　 ＜　　　　　　　　　　　　￣￣￣￣|
　　　　＞　＿＿＿＿＿＿＿＿＿ 　 　 |　　　『わけを説明しよう。
　　　　￣￣　|　/　　　　　　　＼　| 　　 |　　　　わたしは今朝５００万フランの支払いを求められた。ところがそのすぐあと、
　　　　　　　　| /⌒ヽ　　／⌒ヽ　 | 　　 |　　　　同じ額の支払いを求められ、わたしは明日まで待ってもらうことにした。
　　　　　　　　| |　‘　|　 i ‘　　 |　 | 　　 |　　　　わたしが今日家出をするのは、その明日から逃げるためなのだ』
　　　　　　　　| ヽ.__ノ　 ヽ.＿ ノ　 .ﾚ⌒ヽ
　　　　　　　ノ　　 o　　　　　　　　　 ６　|
　　　　　 ／＿＿　　　＼　　　　　　＿ノ
　　　　　　　　　　＞　　　　　　　 ﾉ
　　　　　　　　 ＜、＿＿＿　　 イ
　　　　　　　　　　　　　|───┤
　　　　　　　　　　　／ |／ ＼ ／ ＼

3051．

.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　　 |　　　　　『大事な妻よ、お前はわかってくれるだろうな？
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|　　 　　　というのもお前は、わたしの財産がどこにいってしまったのか、
.　　　　　 | | 　 ・ | ・　　|　 V⌒ｉ　　　　　わたしよりもわかっているはずなのだ。
　　　＿　 |.＼　 人＿_ノ　　　6 |　　　　　女には、たしかな本能があって、摩訶不思議なことまで
　　　＼￣　　○　　　　　　　　/　　　　　自分の考え出した代数で説明できる。
.　　　　 ＼　　　　　　 　　　厂　　　　　　ところが自分の数字しか知らなかった私は、
　　　　　／　 ＿＿＿＿_／　　　　 　 　　数字によってだまされる時まで何も知らなかったのだ』
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./o　　　　i.　＼



.　､＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　 ､＞　　　　　　　　　　　　　　.|
　　＞＿＿＿＿＿＿＿＿　　 .|　　　　　　『お前はわたしの没落が早すぎたのにびっくりしたかな？
　　￣ 　　.|./＿　　 ＿＼ |　u　 |　　　　　　　わたしの金塊が白熱となって溶けてしまったのにびっくりしたかな？
　　　　　　| /　 ヽ／　 ヽ　|　　|
.　　　　　 | |　／ | ＼　 |　 V⌒ｉ　　　　　　　正直、わたしには何が何だか分からなかった。
　　　　　　|.＼　 人＿_ノ　u　6 |　　　　　　せめてお前が、その灰の中からわずかな黄金でも見つけ出せたらいいのだが』
　　　　　／　　○　　　　　　　　/
.　　　 ε　　　　　 　　　 　　 厂
　　　　＼　　　 ＿＿＿＿_／
　　　　　￣￣, -/へ／＼/｀- ､
　　　　　　 ／./　 ./op　　　 i.　＼

3052．

　　 ＼　　／:＼　 ／ヽ　　　　 ／|
　!,:::::::..＼|:::::::::..＼|:::::::..＼＿／::,!
　 !,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::　,!　　　　　『お前を捨てることについては、心にとがめていない。
　　!,:::::::_;;;;;;＿__;;;;＿＿＿;;;;;;:::::|　　　　　　お前には友達がたくさんいるし、さっき言った灰もある。
　　 !,:::｢　／.＿|乂Ｘ／　ヽ　|::::|　　　　　お前にとってうれしいことに、わたしから自由を返してもらえるのだし。
　　 ｣:::|　|　 | ・ i　f´./　　 | |::::j 、
　 r⌒i　 |　　￣|　| /　　 /. |f┐|
　 | f´'i　 ヽ＿__|,,⊥＿_ノ　j´`'／　　　　　……お前が、我が家のため、娘のために働いてくれていると
　 ヽ／　　　　　`ー´　　　く／　　　　　　思っているうちはわたしも目をつぶっていた。
　∠＿＿＿＿＿＿＿＿＿二}　　　　　　だが、お前はわたしの家をめちゃくちゃにした。
　　　`　､_　　　　　　＿,,,一'′　　　　　　わたしはもう、他人の幸福の踏み台にされたくないのだ』
　　　　　　￣￣￣￣



　　　　　＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
　　　　　| 　　　　　　　　　　 　　＜
　　　　　| 　　＿＿＿＿＿＿＿ ＜　　　　　『思えば、結婚当時、金持ちであるもののかなり評判の悪いお前だった。
　　　　　|　　|　　　＼　　　／ | ￣
　　　　　|　　|　　/ ￣ヽ/￣ヽ|　　　　　　　　　わたしは二人の財産を増やしてきたが、不可解な大異変の
　　　　　|　ｖ 　　|　 ＼ | ／　||　　　　　　　　　おかげでひっくり返されてしまった。
　　　　　（ｄ　　　＼＿人＿ﾉ |＿　　　　　　　　それについてわたしに落ち度はなかった。
　　　　　　|　　　　　　　つ　　　／
　　　　　　＼　　　　　　　　　／　　　　　　　　　一方お前は自分の財産を増やすことに努めた。
　　　　　　 　＼＿＿＿＿＿＼　　　　　　　　　そしてそれは成功したと思う』
　　　　　　　　　/　∨L∨＼ ￣

3053．

　　　　　　　　 　 　 　 　 i''､
　　　　　　　 ,i ､　　　　　.!　ヽ
　 　 　 　 　 ',　｀'‐..、　 .|　　.ヽ
　　　　　　　　',　　　 ｀'-､',　　 .ヽ　　　　　　　　『だから、かつてお前を妻にした時そのままに、
　　　　　　　　 ｌ　　　　　　　　　　＼　　　　　　　金持ちではあるにしてもあまり評判の良くない
　　l'―-,,.　　　..ｌ　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　女としてのお前を残していこう。
　　 ﾞﾞ''-..、｀ﾞﾞ^^""　　　　　　　　　　　　　＼
　　　　　 ｀'ｰ ..,、　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　　　　　さようなら、今日からはわたしも自分のために
　　　 　 　 　 　 ,'''ｰ､、　　　　　　　　 　 　 　 　 ＼　　　　　働くつもりだ。いいお手本に感謝するよ。
　　　　　　　　　!　／'''''!',― ..,,,.. -ｰ-､ 　 　 　 　 　 ＼
　 　 　 　 　 　 | ,'　　　　.ﾞ､ ./　　　　　ｌ,,,、　 　 　 　 　 ＼
　　　　　　　　　!lﾞ　　 .　　 ｌ/　　.、　　 |　 |ヽ　　　　　　　/　　　　　　　,..r、
　　　　　　　　　llﾞ　　 .ｌ.　　,!　　/ 　　　!　 ｝ l　 ,,　- ､　./ 　　　　　　./ 　.!
　　　　　　　iへ.!',　　　.ｌ　.,i|　 / 　　　/ . / 　ｌ,,'　 ,　　ｌゞ　 ___　　　./ 　　!
　　　　　　　!　 .',.ヽ,　　 _/ .ヽ　　　.／　　　　.|　 /　　.|　.く　　ﾞ'､ ./　　 ｉ!'''i
　　　　　 ._,,,ﾞlii.. ゞ　｀ﾞﾞ'',,_,`　 .｀^^ﾞ゛　　 _／',　　 .""　/ 　 .｀､　 .ﾚﾞ　　/ 　 ｌ^^'i
　　　　　　ヽ　　　　　　 　 　 　 　 _,, ‐'´　　.!　 .-, -'　　　　　l　　 ､ ./ 　,/　 .,'､
　　　　　　　 ＼ 　　　　　　_,.. ｨ''´　　　　　/ 　　 ,!__　　　　　.!　　　.ｌ,,,,./ 　,／　!
　　　　　　　　　 ｀^'''''''''''"´　　.!　　　　 .／　　　/ 　ﾞl　　　　.{　　　."　.!t'"　 ,./
　　　　　　　　　　　　　　　　　/　　 . ／ 　._, -'゛.／￣''､　　 .ヽ　　　　　 ﾞ'l'''"
　　　　　　　　　　　　　　　　,i＿,,i;;;;,ﾞ.. -''ﾞ゛ ._,, ./ 　　　 ＼　.,ﾉ＼＿_ｯ--‐ﾞ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 / 　,, -'"　 .lﾞ　　　/ .,i' ｀"　　　　ｌ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　 i彡'ﾞ|　　　　　',　　 .lﾞ./ 　　　　　 ./



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お前の忠実な夫　ダングラール男爵』

3054．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　 _,,,...----..,_
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,r'´:::::::::::::::::::::::`.､,,r=-
　　　　　　　　　　　 　 　 　 /::::::::::::::::::;;::''::::::::::::::::¨ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　/:::::::::::::::;r";;r';;;;r':;;;i;;;::;i;:::::i
　　　　　　　　　　　　　 ＜:::;:::::;;;;;/;;;/;;;;;;;/;;;;/l;;;;;;;l;;:;;::!
　　　　　　　　　　　　　 Σ;;;;;;;;;;;/;r'i;;;;;;r'i;;;/_''ﾄ;;/;;!;;i;;;l
　　　　　　　　　　　　　 　 `､;;;;;;´V;;;/　 ﾚf/! ﾚi;;;;!;;!ﾚ′
　　　　　　　　　　　　　 　 　 !;;;;_;;l;/!　　　 ｀　l_ﾚ!/　　　　　　……。
　　　　　　　　　　　　　　　_r＜　　 ヽ　 　 - ／ '′
　　　　　　　　　　　　 　 /:::`ヽ､`ヽ､ i´` ､／
　　　　　　　　　　　　　f:¨::ヽ::::::::`..､ `7､
　　　　　　　　　　　　 /::::::::::::`:､:::::::::〈:.:.:i
　　　　　　　　　　　　i:::;;::--::;;:::::`ｰ-､;ﾄ､:l




　　　　 　 　 　 　 /::::::/ /::::::::/::::::::::::::::::/:::::::::::/:::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::ｌ:::::::ｌ:::::::::::::::::::::::',:::',:ｌ
　　　　　　　　　　,':::::/ /:::::::::,'::::::::::::::::::/:::::::／ｌ:::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::,'::::::::::::::::::::::::::::::',ｌ
　　　　　　　　　　ｌ:::/ .,｀:::::::::ｌ:::::::::::::::::ｲ:::::::/＿ｌ:::::::ｌ::::::::::::::::::::::::::::::::}:::::::/:::::::::::}:::::::::::::::::::::ｌｌ
　　　　　　　　　　ｌ/　,'::::::::::::ｌ:::::::::::::::斗‐¨/　 .ｌ￣T''':::::::::::/:::::::::::::/,':::::/ｌ:::::::::::ｌ::::::::::::::::::::::ｌｌ
　　　　　　　　　　　　ｌ::::::::::,rｌ:::::::::::::/ .ｌ::::ｌ,､zx､ｌ:::::ｌ:::::::::::::/::::::::::メ,/:::::/ ｌ:::::::::/:::::::::::::::::::::::ｌｌ
　　　　　　　　　　　　ｌ:::::::/:,､ｌ:::::::::::ｌ,､r,ィ示:ｪゞ::::::ｌ::::::::::/::::::::／::/｀メ､,.ｌ::::::::ｲ:::::::::::::ｌ:::::::::::,'　　　　わたし……
　　　　　　　　　　　　',:::::,':,'　ｌ:::::::::彳,'f.f｡::::::i.l　'､:',::::::::ｌ:::／　／く　　 ,'ヽ,/:::::ｌ:::::::::::::ｌ:::::::::,'　　　　これからどうしたらいいの？
　　　　　　 　 　 　 　 }::::ｌ:,' / ',::::::::ｌ　 l.ｌ::::::: i.i　　＼::::::ｌ　　／´,.:‐:`､,､'::／'､ ｌ:::::::::::/:ｌ::::::,'
　　　　 　 　 　 　 　 /〉:::ｌ',　 〈 '､:::ｌ 　.i.l::::::.リ　　　　'､::ｌ　　　//::::::o､ヽく　　,':::::::::/::::ｌ::::/ｌ
　　　　　　　　　　　/:::::ｌゝ:'､　 ｀ｌ'､ｌ　　ゝ--' 　 　 　 　`　　 //:::::::::// .ﾊ　,'::::::::/::::::ｌ::/:,'
　　　　 　 　 　 　 /:::::/:::::::::::'､　ｌ　　　　 　 　 　 　 　 　 　 {.i::::::::://　 ｀'./:::::::/ 'ヽ／ｌ::ｌ
　　 　 　 　 　 　 ,':::::::ｌ:::::::, r ' ゝ',　　　　　　　　　　　　　　 ｀ゝ- '´　　.／::,:r' {　r,'::::::ｌ:ｌ
　　　 　 　 　 　 ,'::::::::ｌ,､f´　　　 ∧ 　 　 　 　 　 '　　　　　　　　　　　'‐イｌ　.} 　/:::::::::l:ｌ
　　　　　　　　　,ｌr '´: : ｌ　 　 　 ｌ.　ﾄ　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｲ' ﾆr'　,ノ,::::ｌ:::::ｌ:ｌ
　　　　　　　,r'´: : : : : :ｌ　　　　.,'　 　 ＼　　　　´｀　　　　　　　　 ∠ ,､-‐ ' ´　　ヽ,::::ｌ::ｌ
　　　　　 ,r'´: : : : : : :::ｌ　　 　 .,' 　 　 　.', ､　　　　　 　 　 　 イ　　　　　.',: : : : : : ::ヽｌ::ｌ
　　　　／ ', : : : : : : : :ｌ　　　　,'　　　　　 ',　＞　.__　　 ＜　ｌ　　　　　　 　 ',: : : : : : : :',､ｌ

3055．

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＿＿_
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ..::´::::::::::::::::〃⌒ヽ､
　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 _　／::::::::::::::::::::::::/::::::::::::::::＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ｊ/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
.　　　　　　　　　　　　_　　　　　　　/::::::::::::: /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　　　　　　　| |.　　　 　 　 i::::::/::::::i::::::::!:::::::::::::､::::::::::::::::::::::::::',
　　　　　　　　　　　　| |　　　　　　 |:::/::::::::ｉ::::::∧:::::::::::::ﾄ､::::::::::::::::::i､::l
　　　　　　　　　　　　| |.　 　 　 ､__Ⅳ::::/:::i:::::/__!::::::::::::匕ヽ:::::::::::::ハ:|
　　　　　　　　,-〈｀ヽＪ |　　 　 　 ﾌ::l::ｒ'l:::/!::/ｾﾐl::::::ﾊ:::尨_ハ::::::i:::ﾄ､`!
.　 　　　　 /´⊂´￣ヽ　|　　　　´￣]八!/i」:瓜ﾘ !／ Ⅳ　　　小ハl　　　　そうですね……
.　　　　　 ヽ_弋 入　｀　}　　　　　　 　 ｊ､八i　　´　　ｊ〉　　 爪i　　　　　　　旅行なさるといいでしょう。
　　　　　　 /　/　　　 /　　　　　　　　　 　 ｊヽ､　 ｔ＿ｱ　.ｨ
　　　　　　 |　{　　　 /　　　　　　　　　 _＿／/| ヽ　__／/ |＼　　　　　　　　　その前に二週間ほど、みんなに、お友達に
　　　　　　 ヽ　　　 _丶　 　 　 ,--－゛:::::／::::| 〈　　　 ／　.|::::＼ﾞ''ｰ-::､_　　　　ご主人に捨てられたことについて話すんです。
　　　　　　　|_,.．-´ /::}　　　　/::::i:::::::::/:::::::::/∧。V￣＼　 |:::::::::＼:::::::::::::｀ヽ,　　　　そしてお友達がそれを社交界に吹聴する。
　　　　　　,zi_,.．-´:::::::|　　　 |::::/::::∠:::::／::|/＼丱／/ ヽ/|:::::::::::::::ゝ::::::::::::::::|::}
　　　　　　|。|::::::::::::::::::|　　／:::::|:::::::／:::::::::|　　 |＿/　　　.|―ー＜::::::::::::::::::::|::::i
　　　　　　|::::|::::::::::::::::::.|／:::::::::::::|:::::|:::::::::::.|　 　 |;;|　　　　|::::::::::::::::/::::::::::::::::::|::::|
.　　　　　　|。|::::::::::::::::::::|::::::::::::::::|:::::|::::::::::::|　　 |;:;;|　　　　|:::::::::::::/::::::::::::::::::/:::::.i
　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::}:::::::::::::::|:::::|::::::::::|　　.|;;:::|　　　　|:::::::::::::/::::::::::::::::::/:::::::::}
.　　　　　　 |::::::::::::::::::::::::::}:::::::::::::::|::::.|::::::::i　　 |;:;;;|　 　 　.|:::::::::::/｀`゜￣|::/:::::::::::::.}



　　 　 /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V　　　　そして屋敷や宝石、財産を放棄なされば、
　　＜ : _: : : / 〈　{} 　 |/　 .ﾚ　{} 　} |:./ヽ: : |　　　　　みんなあなたの無欲をほめそやし、
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　　　あなたが無一文になったと思うでしょう。
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !　　　　　　　　　　なにしろ、あなたの財産について知っているのは
　　　　　　　 ヽ　　　Tﾆｰ‐‐‐,‐''　 ／　　　　　　　　　　共同事業者のわたしだけですからね。
　　　　　　___,ｒ| ＼　 ｀二二´　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､

3056．


/:.:.:.:.: 　 :i:.::　:.:.:.:.:/i:　:.:.i:.:.:.　:.:i.　　　i:.:　::i:.:　 i:.:　 ｀;::.　 ｀,
i.::.:i:.:.:.　:.:i:.:.:. :.:.::./ .i:.:. :.:.i:.:.:.:. :.:i:.　　 :.i:.:. :i:.:.::.　i.:.:　 i:.:.:.: .｀,
i:.:.i:.:.:.: .:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i　 i:.:.:.:.:i i:.:.:.:.:.:i:.:. :　:.:i:.: :i:.:.:.::　i:.:.:　 ﾍ:.::. ｀,
:.:.i:.:.:.:. :.:.:i.:.:.:.:.:.:i　　 i.:.:.::i ヽ:　　:i:.:.::: :.:.i:.:.:ﾊ:.:.::　:i:.:.:.　|. i:.:.　|
:.:.i.:.:.:.:.:.:::ﾊ.:.:.:.::|　　___i;;_,:ｒ-‐<´.:.:i::..:. :.:.i､_i__|:.:.:　:i:.:.:　|.　i:.: .i
.:.:i.:.:.:.:.:.:.i　レ‐:ヒ二-‐弋;‐i-､＼:.i　:__,/;;/~^|:.:. :.:i:.:.:.. i.　 |:../
i:.:〉;: i.:.:::|　 i;;;;ｒ|==テ孑ﾍヾ'､.　　＼;;〉=ﾆテVi:.:. :.i.i:.:.: i　　|:/
:i:.iﾍ:.:i:.:.::i. ´~V;|ﾄｿ::ｒ~ｿ　　 ｀''､.　　|:.{/:::i:ｿ i i:.:.:/ i:.:../
:.:}i. {ヽ:i:.:.:i　　ｒ:iﾄ辷-'ﾟﾞ　　　　　　/';ｒ辷;;´: /／ ./:./　　　　わたし……ほんとうに捨てられたんだわ。
:.:ハヾヽ:i:.:.i　 ;;.｀ヽ　　　　　　　　　;　　 .; .'/　 /／　　　　　そしてあなたのおっしゃるとおり、
:/:.:.｀:.:｀^:ト､ヽ､　　　　　　　　　　　 :>　／｀,　　　　　　　　　みんなにも捨てられたことがわかるんだわ……！
;.:.:.:.:.:.:.::.:.:|　＼　　　　　　　-‐'　　　 ／　i:　i
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|　　 ｀　､_　　　　　　 ,　イ.:.::i　 .i　:i
.:.:.:.:.:.::,ｒ'´|　　　　 　｀ ' .､_,, ｒ'´:::i:.:.::i:.:.:.:i　 ii　:|
.:.:.::.:/　　＼　　　　　　 .ハ.＼:.:.:.i:.:.:.:i:.:.:.i　 | i　i
:.／.　　　　 ＼　　　　　＼_i.　 ＼_i:.:i:.:.:.:.i　.| |　|




　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　　　　　　　　　　　 　 /: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : /!/ 　　 | :/　|:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V
　　　　　　　　　　　　 　 ＜ : ｣_: : / 　_　 　_|/ 　 ﾚ. ＼ ＼　＼ : |
　　　　　　　　　　　　 　 ＜:: |. 小{　　 ｀ﾞ'''''' 　 　 　 ‐-＼ ＼　＼_　　　　　でもまあ、あなたはお金持ちですからね。
　　　　　　　　　　　　　 　 厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　 ､ r--‐-､ >､　　　 ｀ヽ　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼_!　 　 　 　 　 '　` ‐-､ ｀`　　　　　 `､
　　　　　　　　　　　　　 _, r´:/ : :| ヽ　　　'ー―--　　 ／＼ 　 　 　 　 `､
　　　　　　　　　　_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::|　| ＼　　 　 　 　 ／ヽ :｀ヽ 　 　 　 　 ヽ
　　　　　　　_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:|　 ＼　ヽ _　,　ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､　 　 　 　 `､
　　　　_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　 >-､ー_'/ 　　!::.:.:.:.:ヽ: : ` 、　__ ＿__i__

3057．

　　　　　　　　　　 /::::::::::::/::::::::::::/:::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::',:::',
　　　　　　　　　 /:::::::::::/:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::!::::i
　 　 　 　 　 　 ,'::::::::::::/::::::::::::: /::::::::::／::::::::::::|:::::::::::::i:::::::::i::::l
　　　　　　　　 l:::::::::::/:::i::::::::: /＿::／|::::::::|::::::::|:::::::::::::l:::::::::l::::l
　　　　　 　 　 i:::::::::/:::/::::::丁:::／￣i::::::::l:::ｰ∧一:::::::|!:::::::|'ﾘ
　　　　　 　 _ノ::::┌i:::/::::::/斤心ヘ i:::::::::i::::ﾒ≧i::::::::::::i:!::::::!
　　　 　 　　＞:::::｛ ﾚ' |:::::7ﾚ升::｝　/:::／|:/辻:｝l::::::::::ハ:::::!
　　　　　　_,＞::::::::i ヘ|:::/　ゞ‐"　/／　 ′ゞ‐' l:::l:::/　 ∨
　　　 　 　 ￣｀￣｀＼:|:/ 　 　 　 ′　　　､ 　　∧!/　　　　　ええと……六か月前からの
　　　　　　　　　　　　 ＼|＼ 　 　 　　＿　 　 /　 ′　　　　　共同事業の結果の総額が２５０万フランとなります……
　　　　　　　　　　　　　_{i　　　　 　 ´　　　／
　　　　　　　　　　　　//　｀＼　 ＞　_　イ
　　　　　　　　 _,､-;'´;;;i　　　　 `ｰ ､, _ﾉ iヽ、
　　　　 _,､-;;"´;;;;;;;;/;;;;;l　　　　　　／ﾍ　l;;;;;ﾍｰ,,､
_,､-;ｰ'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;ヽ　　　 ／::::::::∨;;;;;;;;ﾍ;;;;;｀';;;;;;;､_




　　　　　　　　　　　　　　_,,,..-.ｰ.─.-.-....､._
　　　　　　　　　二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:..､
　　　　　　　／::::::::｀`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::ヽ
　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::＼:::::::::',
　　　　　/:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,､ _:::::＼::::＼:::::',
　　　　　i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ＼＼＼:::::::::＼:::＼::',
　　　　　l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l　 >≧r､＼::::::ヾ＼_::＞　　　　ところが奥さん、何か予感でもしたのか
　　　　　ｌ::::::i!:::i::::l;/i ._,,＼::::!､::::::l 　 辻ヾ〉　＼:::ヾ）::::＞　　　　一昨日、あなたの取り分を念のため
　　　　　i:::::ﾊ::::|::::l:::i〈｀（ﾍ＼! ＼:', 　 ゞ-′　　ラ∨/"´　　　　すべて動かせるようにしておいたんですよ。
　　 　 　 l:::i　l:::|::::lヾ､ 弋i;） ヽ　 ＼ 　 　　　┌::ソﾉ
　　　　 　∨　l::::l::::l:::＼　" 　　　　　　　　　　ﾍ::::/　　　　　　　半分を紙幣、半分を無記名債券に。
　　　　　　　 　＼|＼!＼　　′　　　　　　 　 　∨　　　　　　　　というのも、あなたは夫婦共有財産以外に
　　　　　　　　　　ヾ ヾ　､　　　　‐-　　　　,　　　ゝ､　　　　　　　財産を持つ権利がなく、公証人も口がかたいと
　　　　　　　　　　　　　　｀　 ､　　　　　 , ′　 ／ 　＼＿　　　　いうわけにもいきませんので。
　　　　　　　　　　　　　　 　　　｀ ｰ　＜　 ／´ 　　　／:::::￣｀ｰ-
　　　　　　　　　　　　　　　　 　 _ノ´∧_∧　　　　／::::::::::::::::::::::
　　　　　　　　　　　　　　:::::´￣／ /〈::ヾ∧ 　　 /:::::::::::::::::::::

3058．

　　　　　　　　　　　　　 　 ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　　　　　　　　　 　 /: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|　　　　かといって我が家も完全に
　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : /!/ 　　 | :/　|:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V　　　　安心はできなかったので……
　　　　　　　　　　 　 ＜ : ｣_: : / 　_　 　_|/ 　 ﾚ. ＼ ＼　＼ : |
　　　　　　　　　　 　 ＜:: |. 小{　 ｀ﾞ'''''' 　 　 　 　‐-＼ ＼　＼_　　　　　ここのタンスのうしろに自分で作った
　　　　　　　　　　　 　 厶ﾍ　ﾊ　U　　　　　 ､ r--‐-､ >､　　　 ｀ヽ　　　　　　金庫を封じ込んでおいたんです。
　　　　　　　　　　　　　　　 ＼_!　 　 　 　 　 '　` ‐-､ ｀`　　　　　 `､
　　　　　　　　　　　 _, r´:/ : :| ヽ　　　 r‐--っ　　　／＼ 　 　 　 　 `､
　　　　　　　　_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::|　| ＼　　 ￣　　　／ヽ :｀ヽ 　 　 　 　 ヽ
　　　　　_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:|　 ＼　ヽ _　,　ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､　 　 　 　 `､
　　_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　 >-､ー_'/ 　　!::.:.:.:.:ヽ: : ` 、　__ ＿__i__
　/ﾞ: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.／i!　　/ﾍ　i. / 入　　|＼.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,,..---┴‐,
l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼／:.:.:.:!'! /ヽ､ヽrk'´:_,r､　ｲ:.:.:＼／ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l




　　　　　　　　 . ＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿__
　　　 　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／l
　　　　　／　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ／　..|　　　　紙幣が1000フラン札で800枚。
　　　 ／　　　　　　　　　　　　 　　　　　　／　..／|　　　　それと2万フランの利札が1枚。
　　　│￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣|　.／.／　　　　残金25000フランはダングラールさんではなく、
　　　├─────[　i　]─────-||／.／　　　　　わたしの取引銀行宛ての一覧払い小切手にしてあります。
　　　│　　　　 　[[二二二]]　　　　　　　 |／
　　　└─────────────′

3059．

　　　　　 　 　 　 ／:.:.:;.:.':.:.:.:.:.:／:.:.:.:.:.:.:|:.:ヽ:.:.:.:.ヽ
　　　　　 　 　 ,..:'／/:.:.:／:.:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.∧
　　　 　 　 　 /／ /:.:.:/:./:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.i:.:.:∧:.:.:ﾊ
.　　　　　　　 i/　/:.:.:/:.:.i:.:/ｉ:./i:.:.:.:.:.:.:.:i:.:i:.:.i:.:.:.:.:i:.:.:.:.:!
　　　　　　　　　 i:.:.:/!:.:.:i:/ _少:.:.:.:､:.／/.|:.:i:.:.:.:.:i:.:i:.:.:|
.　　　 　 　 　 　 |:./ .!:.:.ｉ≦ i　i:.:.;/ﾉ＞之!:/i:.:.:/Ⅳ:.:.:!
.　　　　　　 　 　 |:i　 V:.ｉ. 乍ﾊ.V 　 /ｫzx､＞:./:.i:.:.:.:.:|
.　　　　　　 　 　 ヽ!　 ヾ!　ﾋ:ﾂ　　 　 |r';沁 i:/};/:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　 /八　　 ,　　　 ゞ:シ / ./:.:.:.:.:.∧　　　　　　……。
　　　　 　 　 　 　 　 /:.i:.:.:＼.　 ､　 　 　 .ｨ:ｰ':.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　　　/:/.|:.:.:.:.:.:.:..､　_ ,. イ　L_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　 　 {:.i　|:.:.:.:/:.:.:.:こ!　　 　 ゝヽ:.:.:.:.:.:.:.:ｉ:.|
.　　　　　　 　 　 　 ヾ　V:.:.:i＞'' /　 ./ ／　　ヽ:.:.:.:..:.//
　　　　　　　　　　　 　 ,.ィ'´ 　 ./ヽ. ／　　　　　＼／
　　 　 　 　 　 　 　 ／:./　 　 /　／, - '　 　,..-―-ヽ
.　　　　 　 　 　 　 ∧::/rェzx,.i／zｭ.､　 　 /::::::::::::::::ﾊ
　　　　　　　 　 　 |　V7}以少弐以ﾘ廴__ /:::::::::::::::::::::|
　　　　 　 　 　 　 |. //.ゞ‐ﾂoゞ≠‐///./＞''´ ￣￣V!
　 　 　 　 　 　 　 | {//i　 {.o.{　 　 { i i i´　　　　　　 |'




　　 　 /: : /:: : : / : : :.!:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V　　　　　　　　さて奥さん。
　　＜ : _: : : / 〈　 ノ　|/　　ﾚ　ヽ　}|:./ヽ: : :|　　　　　　　　　　年６万フランの収入ならどんな気まぐれでも
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　　　　　　　　おやりになれるでしょう。
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　 　 {ﾊ,;'　（(
　　　　　 ＼_!　　　　　　　 　'　 　　 ! (　( ヽ)　ﾎﾜ～ｯ　　　　　もし足りない場合は、わたしの取り分、
　　　　　　　 ヽ　 　 'ー―--　 　 ／　ヽノζ　　 　 　 ＿　　　　１０６万フランまではお貸ししますよ。
　　　　　　___,ｒ| ＼　　 　 　 　 ／　|￣￣￣￣￣|ゝ'ﾞ＿__ `i
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ _　,　ィ´ 　　| 　 　 　 　　 |Y＿＿　　!
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､. ',　　　　 　　/ｺ＿＿　　ﾄ、
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 ! ,ｒ-'' ヽ、＿＿／　 !､＿__ 　 l i ヾ

3060．

　　　　　　　 /　　　.,.＜:.:.:.:;:.:＜:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽヽ:.＼
　　　　　　　　　　／:＞イ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:.:ヽヽ:.ヽ
　　　　　　　　　,:':／,.:.´／ .:.:.:.:.:.:.: /:.:.:.:.::.:.:.:.:i:.:.:i:∧:.:ヽヽ∧
　　　　　 　 　 /'　/:.:.:;:':.:.:.:.:.:.:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:i:.:∧:.:.:∧:ﾊ
.　　　　　　　 /　./:.:./:.:.:.:/:.:.: /: /i:.:.i:.:.:.:.:.:.:.::/i.:.:Ⅳ:.:i:.:.:.:.:.i:.:i
.　　　 　 　 　 　 i:.:/i:.:.:.:.i:.:.:.:/i:.:i _i;:斗:.:.:.:.メ廴_/ .i:.:.i:.:.:.:.:.:i:.|
.　　　 　 　 　 　 |/ i:.:.:.:.:i .:.,.ｨ≦´ .V:.:.:.:／　/:/.≧トxV:.:.:.:i:.|　　　　（え……それだけ、なの？
　　　　　　　　　　　{:.:.:.:.:i:.:.:.{ ,ｨﾁ示ヾ:./　／ 示ミぇ､ .i:.:.:.:i.:.|　　　　　　慰めてくれるんじゃないの？）
　　　　　 　 　 　 　 V:.:.∧:. i/{r';;;::::}　ヽ　　　{r';;;::::}ヽi:.:.:./:.:|
　　　　　　　 　 　 　 ヾ:.{　Vﾍ.とz少　　　 　 弋zつ ./:.／!:.:.|
　　　　　　　　　　　　 i:.:.ゝハゞ.　　　 　 '　　　　　 ／_ イ:.:.:.|
　　　　　　 　 　 　 　 i:.:/:.:.:.:.ヽ.　 　 　 ― 　 　 　 ,.'´:.:.:i:.:.:.:.!
　 　 　 　 　 　 　 　 /:/:.:.:.:.:.:.:.:.ゝ 　 　 　 　 　 .イ:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.i
　　　　　　　　　　　/:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i　 ､ _,.　イ:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.i
　　　　　　 　 　 　 i:/!:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..＞j　　　　　.i､,::.:i:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.}




i:.:.i:.:.:.: .:.:.i:.:.:.:.:.:.:.i　 i:.:.:.:.:i i:.:.:.:.:.:i:.:. :　:.:i:.: :i:.:.:.::　i:.:.:　 ﾍ:.::. ｀,
:.:.i:.:.:.:. :.:.:i.:.:.:.:.:.:i　　 i.:.:.::i ヽ:　　:i:.:.::: :.:.i:.:.:ﾊ:.:.::　:i:.:.:.　|. i:.:.　|
:.:.i.:.:.:.:.:.:::ﾊ.:.:.:.::|　　___i;;_,:ｒ-‐<´.:.:i::..:. :.:.i､_i__|:.:.:　:i:.:.:　|.　i:.: .i
.:.:i.:.:.:.:.:.:.i　レ‐:ヒ二-‐弋;‐i-､＼:.i　:__,/;;/~^|:.:. :.:i:.:.:.. i.　 |:../
i:.:〉;: i.:.:::|　 i;;;;ｒ|==テ孑ﾍヾ'､.　　＼;;〉=ﾆテVi:.:. :.i.i:.:.: i　　|:/　　　　御親切はうれしいのですが、
:i:.iﾍ:.:i:.:.::i. ´~V;|ﾄｿ::ｒ~ｿ　　 ｀''､.　　|:.{/:::i:ｿ i i:.:.:/ i:.:../
:.:}i. {ヽ:i:.:.:i　　ｒ:iﾄ辷-'ﾟﾞ　　　　　　/';ｒ辷;;´: /／ ./:./　　　　　　　　少なくともしばらくの間は
:.:ハヾヽ:i:.:.i　 ;;.｀ヽ　　　　　　　　　;　　 .; .'/　 /／　　　　　　　　　世間に顔出ししない女にとっては、
:/:.:.｀:.:｀^:ト､ヽ､　　　　　　　　　　　 :>　／｀,　　　　　　　　　　　　　十分すぎるほどですわ。
;.:.:.:.:.:.:.::.:.:|　＼　　　　　　　-‐'　　　 ／　i:　i
.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|　　 ｀　､_　　　　　　 ,　イ.:.::i　 .i　:i
.:.:.:.:.:.::,ｒ'´|　　　　 　｀ ' .､_,, ｒ'´:::i:.:.::i:.:.:.:i　 ii　:|
.:.:.::.:/　　＼　　　　　　 .ハ.＼:.:.:.i:.:.:.:i:.:.:.i　 | i　i
:.／.　　　　 ＼　　　　　＼_i.　 ＼_i:.:i:.:.:.:.i　.| |　|

3061．

　　　　　　　　　　　　　 　 ／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　　　　　 　 　 　 　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
　　　　　　　　　　　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　　　　　　　　　 　 /: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|: : r ､ : : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　　　　　　　　　 　 |: : |: : : : /!/ 　　 | :/　|:.:(ヽ､｀＼:|.: : : | V
　　　　　　　　　　 　 ＜ : ｣_: : / 　_　 　_|/ 　 ﾚ. ＼ ＼　＼ : |
　　　　　　　　　　 　 ＜:: |. 小{　 ｀ﾞ'''''' 　 　 　 　‐-＼ ＼　＼_　　　　　（あ、そうなの？まあお好きなように）
　　　　　　　　　　　 　 厶ﾍ　ﾊ　U　　　　　 ､ r--‐-､ >､　　　 ｀ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　 ＼_!　 　 　 　 　 '　` ‐-､ ｀`　　　　　 `､
　　　　　　　　　　　 _, r´:/ : :| ヽ　　　 r‐--っ　　　／＼ 　 　 　 　 `､
　　　　　　　　_, r ´:.:.:.:./:.:.:.:.::|　| ＼　　 ￣　　　／ヽ :｀ヽ 　 　 　 　 ヽ
　　　　　_, r'´:.:.:.:.:.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:|　 ＼　ヽ _　,　ィ ´ |::.:.:ヽ: : `､　 　 　 　 `､
　　_, r ´:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　 >-､ー_'/ 　　!::.:.:.:.:ヽ: : ` 、　__ ＿__i__
　/ﾞ: : : : : : : : : : : : ヽ:.:.:.:.:.:.／i!　　/ﾍ　i. / 入　　|＼.:.:.:.:.ヽ;,r'`‐´_,,..---┴‐,
l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.＼／:.:.:.:!'! /ヽ､ヽrk'´:_,r､　ｲ:.:.:＼／ _>-‐'´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l




　　　 　 　 　 /／ /:.:.:/:./:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.i:.:.:∧:.:.:ﾊ
.　　　　　　　 i/　/:.:.:/:.:.i:.:/ｉ:./i:.:.:.:.:.:.:.:i:.:i:.:.i:.:.:.:.:i:.:.:.:.:!
　　　　　　　　　 i:.:.:/!:.:.:i:/ _少:.:.:.:､:.／/.|:.:i:.:.:.:.:i:.:i:.:.:|
.　　　 　 　 　 　 |:./ .!:.:.ｉ≦ i　i:.:.;/ﾉ＞之!:/i:.:.:/Ⅳ:.:.:!
.　　　　　　 　 　 |:i　 V:.ｉ. 乍ﾊ.V 　 /ｫzx､＞:./:.i:.:.:.:.:|
.　　　　　　 　 　 ヽ!　 ヾ!　ﾋ:ﾂ　　 　 |r';沁 i:/};/:.:.:.:.:|　　　　　（……）
　　　　　　　　　　　　 /八　　 ,　　　 ゞ:シ / ./:.:.:.:.:.∧
　　　　 　 　 　 　 　 /:.i:.:.:＼.　 ､　 　 　 .ｨ:ｰ':.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　　　/:/.|:.:.:.:.:.:.:..､　_ ,. イ　L_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧
　　　　　　　　　 　 {:.i　|:.:.:.:/:.:.:.:こ!　　 　 ゝヽ:.:.:.:.:.:.:.:ｉ:.|
.　　　　　　 　 　 　 ヾ　V:.:.:i＞'' /　 ./ ／　　ヽ:.:.:.:..:.//
　　　　　　　　　　　 　 ,.ィ'´ 　 ./ヽ. ／　　　　　＼／
　　 　 　 　 　 　 　 ／:./　 　 /　／, - '　 　,..-―-ヽ

3062．

┌──────────────────────────┐
│夫人はまだ、別の何かを期待しているようだったが……。　　　　│
└──────────────────────────┘

　　　　　　　　　　　　　　　 　 ／／:::::::::::::::::::: ヽ,: : ,: :--::ヽ.._
　　　　　　　　　　　　　　　　/ ,.'::::::::::::::::,. :-ｧ.ｲ:.iへ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ
　　　　　　　 　 　 　 　 　 ＿/::::::::::::;／.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ＼:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ,
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ア_::::::::::: / ／: :/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: ヽ :.:.:.:.:.:.:.:.:. ﾊ
　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 ／ｉ::::::::/ /: : :/:.:.:.:.:.: ｉ:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.i
　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 |:::::::|/i!:: :/:.:.:.:- ､/! ｉ:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ :.:.:.:.:.:.:.:.:. |
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |:::::::::::ｉ: /: :ｉ: :／,､ヽ:!: :i: :i: :ｉ:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
　　　　　　　　　　 　 　 　 　 |;;;ノク|/ i /i:.:l　fﾊ　i: /ｉ: i: :iﾆ/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　　,r-‐く.　　　　　'　i ﾉ　{ﾂ　i/ .i:/ :/: :}:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|
　　　　 　 　 　 　 　 ,/::::::::::::::＞ ､.　 　 く　　　　　　' i /ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: i
.　 　 　 　 　 　 　 ,ノ‐‐‐-､::＞-::':´::￣,＞..､　　　 　 / .|:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:. i
　　　　　　 　 　 ,:'::::::::::::::::::::::::::::::::／::::::::::::::::::ヽ_ , イ　 /:.:.:.:.:.:.:.:. i:.:.:.:.:.: |
.　　　　　　 　 ,.:'::::::::::::::::::::::::::::::::/ :::::::::::::::::::::::::::ﾍ 　　/, -‐- ､__: :i:.:.:.:.:.ﾘ
　　　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::/ :::::::::::::::::::::::::::::::::ﾊ／ ァゝこj､　 ヽ_; :ノ
.　　　 　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::/:::::::::::,　-　‐ ' ´:::::::::ﾊ'´　　　　|　 .| ヽ
　　　　 　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::/ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＞ ､　 ／　ノ　 }
　　　　　 i::::::::::::::::::::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀≧く,_　　〉
　　　　　ｉ::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ'ﾉ





.　　 / :.:.:.:.:/:.::.:.:.:.::::.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:._,､-/ l:.:.:.:.l　　 ､:.:.:.:.:.:.l:.:.::.:.:.:.::.:
. 　 /:.:.:.:.:.:/:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.i:.:.:.:.:./　 l:.:.:./ 　 　 ',:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:.:
　　l:.:.:.:.:.:.l:.:.:.l:.:.:.::.:.:.:.:.:.:l_,､r‐''´:.:.:.:.:.:.l:.:.:.:/　　i:rxz＝＝=.､i:.:.:.:.:.l:.:.:.:.:.:.:.:
.　 l:.:.:.:.:./l:.:.:.l:.:.:.:.:.l:._,､r'.　 ',:.::.:',:.:.:.:.:.:i:.:./　　/:./fr':::::::::::ヽゞ,:.:.:.ﾊ:..:.:.:.:.:.:
.　 |:.:.:.:.:i..l:.:.:.l:.:.:.:.:.:l´:.:.:l .,r=＝=ｭ､:.:.:.::V　　/, '　 l:::::::::::::::ﾘ .l: :./ l:.:.:.:.:.l:.:
.　 |:.:.:.:.i .l:.:.:.:l:.:.:.:.:.::',:.:.:l〃.fr':::::::::l.':.､:.:ヽ、 '　　　匕:::::::ソ　.l:./　.l:.:.:.:.:/ヽ
. 　|:.:.:.:l　.l:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:'､ ',　 V::::::::ﾘ　 ｀'　ヽ　　　　｀￣￣´　/　　.l:.:.:./ }　　　　（……なんてことには）
　　',:.:.:l　 ',:.:.:i.',:.:.:.:.:.:.:.:i'､',. 弋:少'　　　　　　　　　　　　　　　　　i:.:./ ﾉ.r
　　 V:.i　　',:.:.',.'.､:.:.:.:.:.:.:i.　　"　　　　　　　　　　　　　　　 　 　 /ｲ　_ﾉ
　　　'､:i.　　'､:ﾍ　＼:.:.:.:.:i　　　　　　 く　　　　　 　 　 　 　 　 　 /ー‐:':´
.　　　 ｀　 　 .' ､'､　　 ト:.ﾍ　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:
　 　 　 　 　 　 ｀'｀､　.|/:.:.:ヽ 　 　 　 　 ´　｀　　　　　　　 　 ／|:.i:.:.:i:.:.:.:
　　　　　　　　　　　　/:.:.:.:.:.:.＞　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ＜　 |:.:i:.:.:i:.:.:.
　　　　　　　　　　　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:＞　　 　 　 　 　 　 ＜　　 　.|:.:.i:.:.:i:.:.:

3063．


　　　　　　　　　　　　　 _,,,..-.ｰ.─.-.-....､._
　　　　　 　 　 二ヽ,,..::"::::::::::::::::::::::::::::::::::::::｀:..､
　　　　　　 ／::::::::｀`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼::::::::::::ヽ
　　　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾ:::::::::::ヾ:::::＼:::::::::',
　　　　 /:::::::::::::::i:::::i!::::::::::::::::ヾ:::::,,∠,､_:::::＼::::＼:::::',
　 　 　 i::::::::::::::::!:::::i i:::::::::l::::::::イ＼＼＼:::::::::＼:::＼::',
　 　 　 l:::::::i::::::::!::::i,,ゞ;::::::::i:::::::::l　 >≧r､＼::::::ヾ＼_ r ､
　 　 　 ｌ::::::i!:::i::::l;/i ._,,＼::::!､::::::l 　 辻ヾ〉　＼:::ヾ） (ヽ､｀＼　　　　（さて、もう用は済んだでしょう？）
　　　　 i:::::ﾊ::::|::::l:::i〈｀（ﾍ＼! ＼:', 　 ゞ-′　　ラ∨/＼ ＼　＼
.　　　　 l:::i　l:::|::::lヾ､ 弋i;） ヽ　 ＼ 　 　　　┌::ソﾉ　　 ＼ ＼　＼_
　　　 　 ∨　l::::l::::l:::＼　" 　　　　　　　　　　ﾍ::::/ r--‐-､>､　　　 ｀ヽ
　　　　　　　 ＼|＼!＼　　′　　　　　　 　 　∨ 　 ` ‐-､ ｀`　　 　 　 `､
　　　　　　　　　ヾ ヾ　､　　　 ｰ　´　　　 , 　　ヽ､　　　 -＼　　 　 　 　 `､ 　 キラッ☆
　　　　　　　　　　_, r ´:｀　 ､　　　　　 , ′ 、 　 |　　!:.:ヽ : ヽ　　 　 　 　 ヽ



　　　　 　 /　　　　　　　,ィ:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:＼
　 　 　 　 i.　 　 　 　 ／:.:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.:.ヽ
　　　　 　 i 　 　 　 ,.':.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.､:.:.:.:.:.:.:.ヽ:.:.:.:':,
　　　　　　　　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.i:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:ﾊ
.　　　　 　 　 　 /:.:.:.:.:.:.:.:i:.:.:.:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.i:.:.:.:i､:.:.:.:.i:.:.:.:.ﾊ:.:.:i彡ｼ:.,
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　　　　　 　 　 i:.:.:.i:.:.:.i:.:.:i:.:.:.:.ﾊ:.:.i:.:.:.:.i___;;.斗:セチ´:i:.:.:.:.:.:iVi:.:.:.:';:. i
　　 　 　 　 　 ｉ:.:.:.i:.:.:.i:.:.:.i:.:.__,.斗:i:.:.:.:.i.:.:./,ｨ示テぇ､ i:.:.:.:ﾘ､i:.:.:.:.:.;:.:.i
　　　　　　　　 i:.:.:.i:.:.:.V:.:.V:. ｨf示､:.:.:.:.i:/　　Vr';;:::ﾘ　i: :/.ハ:.:.:.:.:.:;:ﾘ
　 　 　 　 　 　 V:.:i.V:.:.i､:.:.ヽ:. V;沁＼::i　　　乂;;:ﾂ　 ｉ／ノ/.:.:.:.:.:ﾊ　　　　　　……！
　　　 　 　 　 　 ＼ｉ ヽ:.ﾍ＼ﾊ　乂ﾂ 　 　 　 　 ￣　　 ,r-':.:.:.:.:.:.:.:.:ﾊ
　　　　　　　　　　　　　ヽ'､　ト 　 　 ,　 　 　 　 　 　 /:.:.';.';:.:.:.:.:';:.:.:.ﾊ
　　　　　　　　　　　　　　 　 |:.: ､ 　 　 - ‐　　　　 ／|:.:.:.:';:';:.:.:.:.:';:.:.:.ﾊ
　　　　　　　　　　　 　 　 　 |:.i:.i:＞.､　　　　　 , イ　 i:.:.:.:.:';:.';:.:.:.:.:';:.:.:.ﾊ
　　　　　　　　 　 　 　 　 　 |:.i:.i:.:.:.:.:.:.＞..,　＜　　　弋 ､:.:.';:.:';:.:.:.:.:';:.:.:.ﾊ
　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 |:.i:.i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|　　　　　　/　 ヽ.､:.';:.:.:.:.:.i:.:.:.:ﾊ
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 |:.i:.:i:.:.:.:.:.:／ノ　　　 　 ／　 　 　 ｀ '　､:.i:.:.:.i:.i
　　 　 　 　 　 　 　 　 　 　 Ⅵ:.:i:,　'´ /--,　 ,--／　　　　　　,ｨ:'´⌒ヽ:.i:ﾘ
　　　　　　　　　　　　　 　 　 ／　　 /　　　　／　　　　　　 ,.'´:::::::::::::::::::ヽ

┌─────────────────────┐
│彼女は最後のあいさつもせずに出て行った。　　　　│
└─────────────────────┘

3064．

　　　　/: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ -=o=-| :/　|:./　　Ｖ: |.: : : | V
　　＜ : _: : : / 　　　　　 |/　　ﾚ-=o=-|:./ヽ: : |
　　＜:: |. 小{　　　　 　　　　　　　　　 ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　ふん、おめでたいな！
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !　　　　　　もう取引所にも行けないことだし、
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　｀t　　 ／　　　　　　　せいぜい家にこもって本を読んだりトランプ遊びぐらいしか
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　 /　／　　　　　　　　できないだろうさ。
　　　　／:/::::| ＼　ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､



.　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
　　＜ : ｣_: : / 〈　　{}　|/　　ﾚ　 {}　}|:./ヽ: : |
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　それにしてもヴァランティーヌさんは残念だったなー。
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V　　　　あの人なら結婚してもよかったのに。
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　 ｀t　　 ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､
::::::::::::::/:::::::::∧　　　　/二＼　|::::::ヽ::::::::::::＼

3065．

┌───────────────────────────────────────┐
│ところで偶然にも、ドブレーが今いる部屋の真上には、我々となじみの深い人物が住んでいた。│
└───────────────────────────────────────┘



　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾍ
　　　　　　＿＿＿_　　　　　　/ /
　　　　 ／＼　　／＼　　　／ /
　　　／（ ⌒） 　（⌒）＼／　 /
　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼ /
　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 |　　　　母ちゃん、もうお金がねーおｗ
　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／
　　／　　　　　　　　　 ＼
　/　　　　　　　　　　　 　＼
/　　／＼　　　　　　　 　 　ヽ
　／　　　＼　　　　　 　　 　ﾉ
U　　　　　　ヽ　　　 　　 　ノ
　　　　　　【アルベール】
モルセール（フェルナン）とメルセデスの息子。



　　　, -‐ '´￣￣｀ヽ､
　　, '　　　　　／" ヽ＼
　, '　　　 //, '/　　ヽﾊ　ヽ
,､,|i 〃　　　{_{　ry7ﾄ､　ﾘ| ｌ、
　 ヽ|i　　|　|/7ﾉ././ﾉﾉ 从!」
⌒､ゝ|i　}从/　　 ／Ｗヽ」　　　　　　……
;　 ヽｉ从　/　　/ 　　ﾘ
＼　　 ヾＹ 　　/ﾊ',ﾘ　＼
　 ＼　 ﾉ 　　/ﾊﾉ -一-､ヽ
　　　＼ 　　仆{ (⌒)⌒))
　　　　【メルセデス】
エドモン・ダンテスのかつての恋人。元モルセール夫人。

3066．

┌───────────────────────────┐
│メルセデスはこれまで、本当の貧乏を味わったことがなかった。　│
│若いころは不自由な事はあっても、貧乏ではなかった。　　　　　　│
└───────────────────────────┘


　　　　　　　　／: : /: ,イ: ﾄ 、: : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : :',
.　　　　　　　/ :/: :,' :/　|: |　 ＼: : : : : : : :|: : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : : ',
　　　　　　　{: / : :ｌ /　　ｌ:|　　　｀ヽ､: : : :∥: : :ｌ: : : : : : : : : :ｌ: : : : : : : : : :.,
　　　　　　　',:.|: : :|/　　　ヽ￣￣　　＼: :ハ: : :|: : : : : : : : : :l: : : : : : : : : : ヽ
　　　　　　　 ｙ|: : :L　　　　　　　＿　　 ｿ　ヽ: :|: : : : : : : : : :ｌ: : : : : : : : : : : :＼　　（カタロニヤでは網があれば魚を捕れた。
.　　　　　　　 ｌ:ﾄ: :.ﾍヽ、　　 ／,=＝､ヽ､　　　V: : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : : : :＼　　　魚を売れば網を繕う糸も買えた）
　　　　　　　　|ヽ: :.ﾊﾆ、　　　ｊｆ 込イ　〉>　　/: : : : : : : : : : :|: : : : : : : : : : :ヽ´￣
　　　　　　　　　 ヽハﾄ」 　 　 弋_.ン　'´　　/.ｲ : : : : : : : ﾊ: |: : : : : : : : : : : : ',
　　　　　　　　　　 〉 弋}/　　　　"¨´　　 ／ /: : : : : : : : ハ |: : : : : : : : : : : : :}
.　　　　　　　　　　|: : }ﾝ　　　　　　　　　　/: : : : : : : : /: : ﾘ: : : : : : :ﾊ ハ: :/
　　　　　　　　　　 !ｌ:.ｆ 　 　　　　　　　　 　/: : : : : :イ ｨ': : : : : : : : : :/ /　 V
　　　　　　　　　　 ｌﾄ､ゝ　　/＾ヽi⌒l　　　/― '"´ ／'"ヽ :ﾊ、: :/￣￣￣￣￣＼
　　　　　　　　　　 　ヽ{ ｒ‐ | 　　!　 ヽ　　　　　　　　　 /V |―/
　　　　　　　　 f￣二 ヽｌ　 }　 　ヽ 　 ＼　　　　　　　　　 /　/
　　　　　　　　 ｌ　{　 ｲハ 　! 　　　＼ 　 ヽ　　 ,　　　 　 /　 ｌ
　　　　　　　　 |　|　 ｌ }　ｌ　　　　　　　　　 Y"´ 　 　 　 /　　|
　　　　　　　　 {　′ ﾍｌ　!　　　　　　　　 　 ',　　　　 　 ｌ　　 |




　　　, -‐ '´￣￣｀ヽ､
　　, '　　　　　／" ヽ＼
　, '　　　 //, '/　　ヽﾊ　ヽ
,､,|i 〃　　　{_{　ry7ﾄ､　ﾘ| ｌ、
　 ヽ|i　　|　|/7ﾉ././ﾉﾉ 从!」
⌒､ゝ|i　}从/　　 ／Ｗヽ」　　　　　　（それに、あのころは自分のこと、愛しい人のことだけを考えればよかった。
;　 ヽｉ从　/　　/ 　　ﾘ　　　　　　　　　　でも、今はこの子を守らないと……）
＼　　 ヾＹ 　　/ﾊ',ﾘ　＼
　 ＼　 ﾉ 　　/ﾊﾉ -一-､ヽ
　　　＼ 　　仆{ (⌒)⌒))

3067．

　　　　　　　　　　　　 　　　　 ＿＿ ＿
　　　_,rｰく´＼　 , --､　　　／⌒　　⌒ ＼
　,-く ヽ.＼ ヽ Y´　／ 　 ／（●）　 （●）　＼　　　　母ちゃん、例の３０００フランをマルセイユにもらいに行くお。
　{　-!　l _｣_ﾉ‐′/ 　 ／ 　 　（__人__）　　　 ＼　　　２００フランでマルセイユに行けるお！
　ヽ　ﾞｰ'´ ヽ　　/　 　|　 　 　. `Y⌒y'´　　　 　|
　　ゝ、　　ﾉ_ イ　　　 ＼ 　 　 ゛ー ′　　　,／
　　　 ヽ　　 　 |　　　 　/　　　　ー‐ 　 　 ヽ



　　　　　　 　 　 /.::〃 .::/..::.:.:/　! :::/　 '::::.:.|　＼:.:.::.:.:.:.:.:.. :.::.:.:.:.:.:. .:.:.:.:.:.:.:.i
.　　　　　 　 　 /'´/.:::::: { ::.:.:/ 　j／　　 ヽ::.|　　 ヽ:.:.::::.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:...:.:.:.:.:.:.:.i
　　　　　　 　 /　,.:::::::::::.:,:.:./─-､　　　　　＼ ＿__ヽ:.:.:::│:.:.:.:.:.:.:.: i.:.:.:.:.:.:.:.i
　　　　　　 　 　 '::::::::::::::.∨　,.__ ､ヽ　　 　 ´　　　　`':.:.:/| :.:.:.:.:.:.:..:.|.:.:.:.:.:. {:|
.　　　　 　 　 　 l::::: ｌ::::::.: | ,／ﾌ心　　　　　 　´-ぅミ._∨ | :.:.:.:.:.:.:.:.:|.:.:.:.:.:.:.ぃ
　　　　　　　　　|::::: {::::.:.: |ヾ　ﾄ::::ﾟ! 　 　 　 　 　 '::::::(_,ﾄ､｣ :.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.:.:.:.:.:.`ﾄ､
　　　　　　　 　 |:::: ∧::.:.: ! 　弋::ﾉ 　 　 　 　 　 {:::ryり丿.:.:.:.:.:.:.:.:.:.|.:.:.:.:.:.:.:. }
　　　　 　 　 　 {:::: {:::.ヽ::.ﾍ 　　　　　　　　　　ﾞｰ-'′/.:.:.:.:.:.:.:.:.:ﾘ.:.:.:.:.:.:.: ﾘ
.　　　　 　 　 　 ＼ﾊ:::.:. ＼　 　 　 ,′　　　　　 　　　/.:.:.:.:.:.:.:.:.从.:.:.:.:.:/.:,′
　　　　　　　　　　　ヽ、::八　　 　 丶　 　 　 　　　.ノｲ.:.:.:.:.:.::ｲ:::::::.:.:.:/.:/　　　　２００フラン？
　　　　　　　　　　　　 ＼　ヽ　　　 　 　　 　 　 　 　 /.:.:.:／.::ﾉ::::::.:.;ノ:ノ　　　　でも、もうわたしたち
　　　　　　　　　　　　　　 　 ＼　　 ‐＝-　 　 　 　ノ　イ:::::;;::::::::::.／´　　　　　一文無しなんでしょう？
　　　　　　　　　　　　　　　　　 ＼　 　　　　　 　　　 .　'ﾞ　| 从／
.　　　　　　　 r‐- ､　　　 　 　　　.＼. 　.　_,.　　 　´　　　 |/
.　　　　 　 　 { ヽ　 ｀¨フ　 　 　 　 r::┤ 　 　 　 　 　 　 |‐-､
　 　 　 　 　 _}__,｣｀二　 /⌒,　　／.:::::|　　　　　 　 　 　 |:::::::.＼
　　 　 　 　 ｛　 ＿／＼{　 ｛ ／ .::::／| 　 　 　 　 　 　 /.::::::::::::..＼


２００フラン＝４０万～１００万円

3068．

　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　　　　　　　　／⌒　　⌒＼
　　　　　　　　　⊂。（ﾟ＞）　（＜ﾟ）。つ　　　　　　時計が４００フランで売れたんですお！
　　　　　　⊂ ／::::::⌒（__人__）⌒::::: ＼　つ　　　本体が１００フラン、飾りが３００フランだったんですお。
　　　　　⊂　 |　　　　/| | | | |　　　　　|　　つ　　　飾りの方が高いところが笑えますおｗ
　　　　　　　　＼　 (、`ー―'´,　　 　／
　　　　　　　　 （　ヽ　 __＿＿_　.／.／
　　　　　　　　　＼ ＼|　 .,　　ﾚ゛／
　　　　　　　　 　　.＼旨EX ξﾝ┐



　　　　　　　　　　　　 (ヽ三/)　））
　　　　　　　　　＿＿　 ( i)))　　　　　　　　　母ちゃんの旅費はこんな感じですお。
　　　　 　　　／⌒　　⌒＼　＼　　
　　　　　　／（ ●） 　（●）＼ ）　　　　　　　馬車：３５フラン
　　　　.／:::::: ⌒（__人__）⌒::::＼　　　　　　　シャロン～リオン（汽船）：６フラン
　　　　| 　 　(⌒)|r┬-|　　　　　|　　　　　　 リオン～アヴィニョン（汽船）：１６フラン
　　　 ,┌､-､!.~〈`ー´/　　　 ＿/　　　　　　　アヴィニョン～マルセイユ：７フラン
　　　 | |　|　|　 __ヽ、　　 　/　　　　　　　　　道中の諸費：５０フラン
　　　 ﾚレ'､ﾉ‐´　　￣〉　　|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＝合計１１４フラン

3069．

　　　　　　　　　　　　 ／）
　　　　　　　　　　　／／／）
　　　　　　　　　 ／,.=ﾞ''"／　　　　　　　　　　　　　
　　　／　　　　 i f　,.r='"-‐'つ＿＿＿_　　　　　
　　/　　　　　 /　　　_,.-‐'~／⌒　　⌒＼　　　　　　　　アルベールは予算を８０フランにしてますお。
　　　　／　 　,i　　　,二ﾆ⊃（ ●）.　（●）＼　　　　　　若いから大丈夫ですお！
　　　/　 　　ﾉ　　　 ilﾞフ::::::⌒（__人__）⌒:::::
　　　　　　,ｲ｢ﾄ､　　,!,!|　　　　　|r┬-|　　　　　|
　　　　　/　iﾄヾヽ_/ｨ"＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／



　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　／ ⌒　　⌒＼
　　　　　 ／　（⌒）　 （⌒）＼
　　　　／ 　 ///（__人__）///＼　　　　　それに、これもあるんですお！
　　 　 |　　 u. 　 `Y⌒y'´　　　 |
　 　 　 ＼ 　 　 　 ﾞー ′　　,／
　　 　 ／　　　　＿＿_＿|_
　　 　| 　　ｌ..　　l　　　　　 l
　　 　ヽ 　丶-.,|__　　　　_|
　　　　/`ー､＿ﾉ　￣￣￣

3070．

　　 　 　 /.:.:.:.:.:.: /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.ﾊ:.:.:.:{:.:.:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::::::::::,
.　　　 　/.:.:.:/.:.:/.:.:.:.:.:.／.:.::/　'.:.:.::ト､:.:.:.:.:.:..＼:::::::::::::::::::::'
　　　　/.::/│:: {.:.:.:.／ /.:.:/　　 '.:.::',　 ＼:.:.:.:.:.:.::::::::::::::::::::}
　　　 /.::/:: |.:.: {:.::/＼/／　　　　ヽ::、 ／＼:.:.::.ﾍ::::::::::::::::{
..　　　l::/.:.::.|.:.:.ﾊ/ _,厶＼､　　　　　メﾆ ..,_　V}::八:::::::::::::ﾄﾐ、
.　　　|/i:.: 八:.:{ _ｼﾞ{:::::::ﾟi `　　 　 '゛ {ﾟ:::::ﾊヾ> ﾘ.:.:.:.:.::::::::::}　｀
.　 　 |　!:.:.:.: ＼`　弋:.::ﾉ　　　　　　 ゞ::.:.ﾉ ″/.:.::.:.::::::::::::}　　　　……千フラン札！？
. 　　│ ｉ:.:.:.:.:.:..ﾊ、｀ ¨´　　　　　　　 ｀¨ ´　 /.:.:.:.:::::::::::::ﾘ　　　　どうして？
.　 　 　 八:.:.:.:.:从　　　　　 :. 　 　 　　　_ノ.:.:/.::::::::::::/
.　　　　 　ﾊ::.:ﾄ､::::、　　　 　...　　､ 　 　 　 /.:.:/.::::::::::::人
. 　 　 　 　 {い: ＼ﾄ､　　　（'"´　　）　　　 　.:::ｲ.::/:::／ : : ＼
. 　 　 　 　 | ｉ: : : : : :|丶、　　 = 　 　 , イ／ |ノ〕(: : : : : : : :｀丶、
　　　　　　！ｉ: : : : : :|　　}`　 .__, 　 'ﾞ　　 　 ／: : : : : : : : , =≠ミ
　　　　　　八.!: : : : :│＼　　　　 　 　 　 ／ : : : : : : : :／／
.　　　　　　 ﾊ.!: : : : : ﾄ､　　　　　 　 　 ／ : : : : : : : :／／



　 　　　　　＿＿＿_
　　　　　／⌒　　⌒＼
　　　 ／（ ●） 　（●）＼　　　　　　ある人の身代りになってアルジェリア騎兵隊に志願したんですお！
　　／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼　　　　一年後にあと１０００フランもらえますお。
　　|　　　　　|r┬-|　　　　 |
　　＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／

3071．

　　　　　　　　／: : /: ,イ: ﾄ 、: : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : :',
.　　　　　　　/ :/: :,' :/　|: |　 ＼: : : : : : : :|: : : : : : : : : : : : : |: : : : : : : : : ',
　　　　　　　{: / : :ｌ /　　ｌ:|　　　｀ヽ､: : : :∥: : :ｌ: : : : : : : : : :ｌ: : : : : : : : : :.,
　　　　　　　',:.|: : :|/　　　ヽ￣￣　　＼: :ハ: : :|: : : : : : : : : :l: : : : : : : : : : ヽ
　　　　　　　 ｙ|: : :L　　　　　　　＿　　 ｿ　ヽ: :|: : : : : : : : : :ｌ: : : : : : : : : : : :＼
.　　　　　　　 ｌ:ﾄ: :.ﾍヽ、　　 ／,=＝､ヽ､　　　V: : : : : : : : : : |: : : : : : : : : : : : : :＼
　　　　　　　　|ヽ: :.ﾊﾆ、　　　ｊｆ 込イ　〉>　　/: : : : : : : : : : :|: : : : : : : : : : :ヽ´￣
　　　　　　　　　 ヽハﾄ」 　 　 弋_.ン　'´　　/.ｲ : : : : : : : ﾊ: |: : : : : : : : : : : : ',　　　　そんな……！
　　　　　　　　　　 〉 弋}/　　　　"¨´　　 ／ /: : : : : : : : ハ |: : : : : : : : : : : : :}
.　　　　　　　　　　|: : }ﾝ　　　　　　　　　　/: : : : : : : : /: : ﾘ: : : : : : :ﾊ ハ: :/
　　　　　　　　　　 !ｌ:.ｆ 　 　　　　　　　　 　/: : : : : :イ ｨ': : : : : : : : : :/ /　 V
　　　　　　　　　　 ｌﾄ､ゝ　　/＾ヽi⌒l　　　/― '"´ ／'"ヽ :ﾊ、: :/￣￣￣￣￣＼
　　　　　　　　　　 　ヽ{ ｒ‐ | 　　!　 ヽ　　　　　　　　　 /V |―/
　　　　　　　　 f￣二 ヽｌ　 }　 　ヽ 　 ＼　　　　　　　　　 /　/
　　　　　　　　 ｌ　{　 ｲハ 　! 　　　＼ 　 ヽ　　 ,　　　 　 /　 ｌ
　　　　　　　　 |　|　 ｌ }　ｌ　　　　　　　　　 Y"´ 　 　 　 /　　|
　　　　　　　　 {　′ ﾍｌ　!　　　　　　　　 　 ',　　　　 　 ｌ　　 |




　　　　　　　　　　　　　　 ＿＿＿_
　　　　, ヘｰ‐- ､　　　 ／ヽ　 ／　＼
　 -‐ノ .ヘー‐-ｨ　　／（●.） 　（● ）ヽ　　　　　　大丈夫、アルベールは絶対に死なないつもりですお！
　''"/／ヽｰ､ 　ﾉ .／:::⌒（__人__）⌒::::::ヽ　　　　　今ほど生きたいと思ったことはないからですお。
　 /／＾＼ 　ヾ-､.|　　　　|r┬-|　　　　 |
,ノ 　 ヽ,_　ヽノヽ_)＼　　　`ー'´　　　 ／
/　 　 <＾_,.ｲ `r‐'ﾞ ::::ヽー‐-..､　　,..-‐|、
＼＿＿_,／|　 !　　::::::l、:.:.:.:.:.ヽ /:.:.:.:.| ＼

3072．


　　　　　　　　　　　　　　　　　 ,ﾍ
　　　　　　＿＿＿_　　　　　　/ /
　　　　 ／＼　　／＼　　　／ /
　　　／（ ⌒） 　（⌒）＼／　 /　　　　　それに、『南仏のネー（ナポレオンの勇将）』といわれた
　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼ /　　　　　ラモリシェール（アルジェリアで活躍したフランスの将軍）も、
　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 |　　　　　　シャルガルニエ（同じく活躍したフランスの将軍）も、
　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／　　　　　　ブドー（アフリカで活躍したフランスの将軍）も殺されましたお？
　　／　　　　　　　　　 ＼
　/　　　　　　　　　　　 　＼　　　　　　　アルベールたちの知り合いのマクシミリヤンも殺されましたお？
/　　／＼　　　　　　　 　 　ヽ　　　　　　あっちにいったら、戦死しない限りきっと出世して帰ってきますお！
　／　　　＼　　　　　 　　 　ﾉ
U　　　　　　ヽ　　　 　　 　ノ



　　　　　　＿＿＿_
　　　　 ／＼　　／＼
　　　／（ ●） 　（●）＼　　　　　　だから、母ちゃんには生きていてほしいんですお！
　 ／ :::::⌒（__人__）⌒:::::＼
　 |　　　　　|r┬-| 　 　 　 |
　 ＼ 　 　　｀ ー'´ 　 　 ／

アルベールが楽天家だから、死亡フラグなのかどうか判断に困るな
これが真面目キャラなら１００％死亡フラグなんだけどｗｗ

3077．

　　　　 　 　 /　　 ./　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 　 ,　　 　 ｉ　　 　 　 '.
　　　　　　　'　　　:'　　 　 .i. 　 　 ｉ　　 .i　　　　　　　　.　 　 / 　./　 　.,　.!　 　 　 　 !
　　　　　　 .　　　.:l　　　　 l: 　 　 |　　 .i、　　 　 　 　 .i　　 'i　 /'ｉ　　./　:' 　 　 !　　 !
　　　　　　 i　　　:.|　 　 　 iヽ.　__,j＼.__.い_,　 　 ;　　 _j ._,/_j ./__j__ ./　./, 　 　 i　 　i
　　　　　　 l　　　:.l　　　　 |___＼_;j__,_＼i∧　　　i 　 ./}.:/___j厶__j／}.／/　 . 　 ;　.　:l
　　　　　　 |　 . ; :.l　　　　 { ｀{¨¨'勹＾卞ｈ'＾ヽ. .:.:|. .:/７'勹勹＾卞{¨¨}´ /　 .: 　 .′i: .:|
　　　　　　 l .{ : i :.i 　 　.　 ',　＼{い.__'ツ　　　＼l∨　 　 {い.__'ツ_,ノ , 　 ./　 ,　/.'|. :′
　　　 　 　 jハ.:.| :.'.　　　:、　､　｀! '^¨′　　　　　　 　 　 ｀¨¨＾'（′ /　 ./　.:/. '.:/'!/
　　　　　　 　 }八、.:.、 　 :ヽ. :＼,!ｉ 　　　　　　 { 　 　 　 　　　　/ . .:/. .:././.:/　′　　　ええ、生きますとも！
　　　　　　　　　 ,)＼:.ヽ　　:.:＼:.'ぐ　　　　　　　 j）　　　　　　　j. / .:／. .:./:/＾(_　　　　でもあなたも生きなければ。
　　　　　　　　　 }　　＼{＼　.:.:.{｀'(_。　　　　　　　　 　 　 　 　 '/.／} .:.／./　 'く　　　　そして幸福にならなければいけないのよ。
　　　 　 　 　 _,ノ),　　　　　＼:弋'^て, __　 　 に二¨)　 　 　 ,／く　/／}／　　. :{_,
　　　　　　　/(　い 　 　 　 　 ＼{: : : :'厶__, 　 　 　 　 _。 イﾟ)′ )'´　 ′　. . : :乂_
　 　 　 　／:| |　乂_ 　 　 　 　 　 　 : : :'⌒'＞‐--‐＜　__,)^′　′　　　 . : : :,ﾉ : : ＼



　 　　　　　＿＿＿_
　　　　　／⌒　　⌒＼
　　　 ／（ ●） 　（●）＼　　　　　もちろんですお！
　　／::::::⌒（__人__）⌒:::::＼　　さあ、そろそろでかけますお！
　　|　　　　　|r┬-|　　　　 |
　　＼ 　　 　 `ー'´ 　 　 ／

3078．

┌──────────────────────────────┐
│二人が宿の支払いをして階段を下りていくと、前に誰かがいるのが見えた│
└──────────────────────────────┘



　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　 ／　.u　　　＼
　　　　　　／(（○）) (（○）)＼
/⌒)⌒)⌒).::::　 （__人__）　l_j :::＼　　 　 /⌒)⌒)⌒)　　　　　お？ドブレー！
|　/　/　/　　　　 |r┬-|　　　　　|　(⌒)/　/ / /／
|　:::::::::::(⌒)　U　.|　|　 |　　　 ／ 　 ゝ　　:::::::::::/
|　　　　　ノ　　 　|　|　 |　　 　＼　　/　　）　　/
ヽ　　　　/　　　 └ー.┘　　　　ヽ /　　　　／




　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
　　＜ : ｣_: : / 〈　　{}　|/　　ﾚ　 {}　}|:./ヽ: : |
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　アルベール！
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　 ｀t　　 ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､
::::::::::::::/:::::::::∧　　　　/二＼　|::::::ヽ::::::::::::＼

3079．

　　　　　　　　　　　　 　　　　 ＿＿ ＿
　　　_,rｰく´＼　 , --､　　　／⌒　　⌒ ＼
　,-く ヽ.＼ ヽ Y´　／ 　 ／（●）　 （●）　＼　　　　母ちゃん、内務大臣秘書官、
　{　-!　l _｣_ﾉ‐′/ 　 ／ 　 　（__人__）　　　 ＼　　　アルベールの昔の友達のドブレーですお！
　ヽ　ﾞｰ'´ ヽ　　/　 　|　 　 　. `Y⌒y'´　　　 　|
　　ゝ、　　ﾉ_ イ　　　 ＼ 　 　 ゛ー ′　　　,／
　　　 ヽ　　 　 |　　　 　/　　　　ー‐ 　 　 ヽ




.　　　　　／: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : : : : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
　　＜ : ｣_: : / 〈　　ﾟ　|/　　ﾚ　 ﾟ　..}|:./ヽ: : |　　　　　昔の？それはどういうわけだ？
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　　　　､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　　　　　　 ､　　　　 {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　　　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　 ｀t　　 ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼　　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､

3080．

　　　　　　 　　＿＿＿_
　　 　 　　　／　　 　 　＼
　　　　 　／　 ⌒　　⌒ 　＼
　　　　／ 　 （⌒）　（⌒） 　 ＼l⌒l　　　　　アルベールにはもう友達はないんだお。
　 　 　|　 　 　 （__人__）　　 　　|`''|　　　　でも、忘れずにいてくれてうれしいお。
　　　　＼ 　 　　｀ ⌒´　　 　_／ /
　　　　　 　　 　　　　　 　　　　/




　　　　　　　　　　 /::::::::::::/::::::::::::/:::::::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::',:::',
　　　　　　　　　 /:::::::::::/:::::::::::::/::::::::::::::::::::::::i:::::::::::::::::::::::!::::i
　 　 　 　 　 　 ,'::::::::::::/::::::::::::: /::::::::::／::::::::::::|:::::::::::::i:::::::::i::::l
　　　　　　　　 l:::::::::::/:::i::::::::: /＿::／|::::::::|::::::::|:::::::::::::l:::::::::l::::l
　　　　　 　 　 i:::::::::/:::/::::::丁:::／￣i::::::::l:::ｰ∧一:::::::|!:::::::|'ﾘ
　　　　　 　 _ノ::::┌i:::/::::::/斤心ヘ i:::::::::i::::ﾒ≦i::::::::::::i:!::::::!
　　　 　 　　＞:::::｛ ﾚ' |:::::7ﾚ升::｝　/:::／|:/辻:｝l::::::::::ハ:::::!
　　　　　　_,＞::::::::i ヘ|:::/　ゞ‐"　/／　 ′ゞ‐' l:::l:::/　 ∨　　　　　アルベール……
　　　 　 　 ￣｀￣｀＼:|:/ 　 　 　 ′　　　､ 　　∧!/　　　　　　　俺は君の不幸に同情してるんだ。
　　　　　　　　　　　　 ＼|＼　　　　　 　 　 　 /　 ′　　　　　　　どんなことにも力になるぜ。
　　　　　　　　　　　　　_{i　　　　 　｀ ￣´　／
　　　　　　　　　　　　//　｀＼　 ＞　_　イ
　　　　　　　　 _,､-;'´;;;i　　　　 `ｰ ､, _ﾉ iヽ、
　　　　 _,､-;;"´;;;;;;;;/;;;;;l　　　　　　／ﾍ　l;;;;;ﾍｰ,,､
_,､-;ｰ'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/;;;;;;;;;ヽ　　　 ／::::::::∨;;;;;;;;ﾍ;;;;;｀';;;;;;;､_

3081．


　　　　　　　　　＿＿＿
　　　　　　　／ ⌒　　⌒＼
　　　　　 ／　（⌒）　 （⌒）＼
　　　　／ 　 ///（__人__）///＼　　　　　ありがとう。
　　 　 |　　 u. 　 `Y⌒y'´　　　 |　　　　でも、パリを離れようと思ってるんだお。
　 　 　 ＼ 　 　 　 ﾞー ′　　,／　　　　それに、旅費を払っても５０００フランあるんだお！
　　　 　 /⌒ヽ　 　ー‐ 　 　ｨヽ
　 　 　 / rｰ'ゝ　　　　　　　〆ヽ
　　　　/,ﾉヾ　,>　　　　　　ヾ_ノ,|
　　　　|　ヽ〆　　　　　　　　|´　|




.　　　　　／: : : :u: : : : : : : : : : : : : : : : : : ＼
　　　　 /: : : : : : : : : : : : : : : : :.、: : : : :u: : : ヽ
.　　　 /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
　　　/: : /: : : 斗--､ :|: : : : :|: : | ,ィＴ: ',: : :ヽ : !
　　　|: : |: : : : : |: /　 ＼: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ﾄ､:|
　　　|: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/　|:./⌒ヽＶ: |.: : : | V
　　＜ : ｣_: : / 〈　（・）　|/:::::::ﾚ（・）　}|:./ヽ : |
　　＜:: |. 小{　　 _,,.. -　:::::::::::､-.,_　 ﾚ{: :.|ヽ:|　　　　……（←紙入れの中に１００万フラン持ってる）
　　　厶ﾍ　ﾊ　　　::::::::::::::::::::､::::::::::::::: {ﾊ/　V
　　　　　 ＼_!　u 　　　　＿　'　　　　 !
　　　　　　　 ヽ　　　 ／　　 ｀t　u ／
　　　　　　___,ｒ| ＼　 {　　　　/　／
　　　　／:/::::| ＼　 ヽ ｀_⌒ ィ ´
　　／::::::/::::::|　　＼u　　´ ∧＞､
／:::::::::::/::::::::|　　　　＼　 /　 !＼::`ｰ- ､
::::::::::::::/:::::::::∧　　　　/二＼　|::::::ヽ::::::::::::＼
::::::::::::/::::::::::::::∧ヽ　 /: : : : :}ヽ!::::::::::〉:::::::::::::::!

3082．


┌──────────────────────────────────────────────┐
│このホテルに、ついさっきまで二人の女がいた。│
└──────────────────────────────────────────────┘


　　　　　 　 　 ,..:'／/:.:.:／:.:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ヽ:.:.:.∧
　　　 　 　 　 /／ /:.:.:/:./:.:/:.:/:.:.:.:.:.:.:.:.:.l:.:.i:.:.:∧:.:.:ﾊ
.　　　　　　　 i/　/:.:.:/:.:.i:.:/ｉ:./i:.:.:.:.:.:.:.:i:.:i:.:.i:.:.:.:.:i:.:.:.:.:!
　　　　　　　　　 i:.:.:/!:.:.:i:/ _少:.:.:.:､:.／/.|:.:i:.:.:.:.:i:.:i:.:.:|
.　　　 　 　 　 　 |:./ .!:.:.ｉ≦ i　i:.:.;/ﾉ＞之!:/i:.:.:/Ⅳ:.:.:!
.　　　　　　 　 　 |:i　 V:.ｉ. 乍ﾊ.V 　 /ｫzx､＞:./:.i:.:.:.:.:|
.　　　　　　 　 　 ヽ!　 ヾ!　ﾋ:ﾂ　　 　 |r';沁 i:/};/:.:.:.:.:|
　　　　　　　　　　　　 /八　　 ,　　　 ゞ:シ / ./:.:.:.:.:.∧　　　　　（片方の女は１５０万フランを持ちながら
　　　　 　 　 　 　 　 /:.i:.:.:＼.　 ､　 　 　 .ｨ:ｰ':.:.:.:.:.:.:.:∧　　　　　　不名誉にさらされ、みじめな気持ちで
　　　　　　　　　　　/:/.|:.:.:.:.:.:.:..､　_ ,. イ　L_:.:.:.:.:.:.:.:.:.:∧　　　　　　暮らしていかないといけない……）
　　　　　　　　　 　 {:.i　|:.:.:.:/:.:.:.:こ!　　 　 ゝヽ:.:.:.:.:.:.:.:ｉ:.|
.　　　　　　 　 　 　 ヾ　V:.:.:i＞'' /　 ./ ／　　ヽ:.:.:.:..:.//
　　　　　　　　　　　 　 ,.ィ'´ 　 ./ヽ. ／　　　　　＼／
　　 　 　 　 　 　 　 ／:./　 　 /　／, - '　 　,..-―-ヽ
.　　　　 　 　 　 　 ∧::/rェzx,.i／zｭ.､　 　 /::::::::::::::::ﾊ
　　　　　　　 　 　 |　V7}以少弐以ﾘ廴__ /:::::::::::::::::::::|



　　　　　　　　　　　 /　　　　 /　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ',　　 .::、
　　　　　　　　　 　 /　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,　　 .:.',
　　　　　　　　　　 ,′ 　 　 :|　　.:.　　　.:.　　　　　　:.　 :}　.::.　 .:|　　　.::,
　 　 　 　 　 　 　 , 　 　 　 .:|　 ..:{ :. 　 .:{:　　:|　 　 :}:.　,'　..:}　.:.:|　.: 　 .::,
　　　　　　　　　　′ 　 　.:. :| :{::⊥いＬ._l;. 　.:|'.　 ..:ﾊ_,厶..:/|　:ﾘ|　.: 　 ..:.!
　　　　　　　　　 , 　　.:. : { :. |八_｣⊥lﾊ｣_`::.:..:| ' ..:/´_厶∠.｣_ノ.:'　.:　.:.:.:.:i　　　（だけど、もう一人は不当な非難にさらされながらも気高く、
　　　　　　　　　,′　..:{ :. ', .:.:小i´ {しｈﾊ` ＼|　}/　'ﾞ {しｈ::j｀ﾌ/　.:　..:.:.:ｉ:i　　　　わずかな金で裕福な気分になれる……）
　　　　　　　　 /,ﾊ:..:..:..'. :. ', :.:..,ﾍ. 弋::ﾟノ　　　　　　　 ゞﾟ::ノ.ノ/.:.:/ .:..:..:.:ｉ:i
　　　　　　 　 / 　 ',.:.|:...'. :. :、:..:、｀　　　　　　　i: 　　 　 　 ´/..:/　..:ﾘ .::ﾊi
　　　　　　　　　 　 l;..|:.:..ヽ:.. ＼:.　　　　　 　 :'　　　　　　 ′..:/|.::/　}
　　　　　 　 　 　 　 l∧:.:.:..ヽ:.:.ﾍ＼　　　　　.__, ､__, 　 　／　ﾉ ..:.:/ ..:/
　　　　　　　　　 　 ｼ　 ＼　 ＼:..＼　　　　｀V ⌒7´　 　 ／/.:／　:/
　　　　　　　　 　 ∫ 　 　 　 　 ＼　丶、　　 ` ‐'′　 .　´　 ／ﾊ:、
.　　　　 　 　 　 　 ∫　　　　 　　 　 └┐ﾐ'‐ 　 .__,　イ　　 　 　 ∫ ＼
　　　　　　　　　 人　　　　　　　　　　　⌒ヽﾐ、　 {ﾄ｣ノ　　　　 ∫ : : .',


※わずかな金といっても社交界基準ですが……

3083．

　　　　　　　　　ヽ丶ｨ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`丶
　　　　　　.　-－- γ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ
　　　　／::::::::::::::::::::::`::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ、
　　　 /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ゝ
.　　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::＼:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
　 /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|＼ｨ:::: ﾒ::::::::::::::::::::::＼ィ
.　ｌ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ｌ:::::::::::::::＼::::::: 〆 ＼::::|＼::::::::::::::::::::::_＞
　ｌ::::::/:::::::::::::::::::::::::::::ｌ　＼:::::::::::::|.＼　 ,,,;;ｨ=≦≠＼》::::ｌミヽ::::＼___
　ｌ::::/|:::::::::::::::::::::‐‐-ｌ─X´＼:::::::|　　≧'´　　　　　　|＼}　 } <／
　ｌ/　|::::::::::::::::::::::ﾊ::::|　,,,ｨ≦　＼.|　　　　　　　　。　 j∧　 ﾉ　 ＼
　|　　|::::::::::::::::::/　 {ｌｨゞ"　　　　　　　　　　　　　u　 }ゝィ／　￣￣　　　　（な、なんだかなぁ……）
　　　　ｌ::::ﾊ│::::|　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ﾉ´'
　　　　ヽｌ　ｌｌゝ::|ヽ　u　　　　　　　ｌ~｀丶 　　 　　 /
　　　　　　　ｌV_ 人　　　　　　　　　＾　　　　　　ｲ
　　　　　　　　　　　丶､　　　　　　　　　　　,♂
　　　　　　　　　　　　　　´　ゝｰ一　七ゞ´　ｌ＼＼
　　　　　　　　　　　　　　　　/´|/　　＿　 　ﾍ/　/ヽ
　　　　　　　　　　　　　　　八　|＼〔三　〕/ ./　/:::::::＼


┌──────────────────────────────────────────────┐
│彼は思い悩みつつ、アルベールと別れた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　│
│その日一日悩んでいた彼だが、その日の夕方、家賃が５万フラン取れそうな素晴らしい屋敷を購入した。　　　　│
└──────────────────────────────────────────────┘

3084．

【翌日】


　　　　　　　　　　　　 (ヽ三/)　））
　　　　　　　　　＿＿　 ( i)))
　　　　 　　　／⌒　　⌒＼　＼
　　　　　　／（ ●） 　（●）＼ ）
　　　　.／:::::: ⌒（__人__）⌒::::＼　　　　ここでいったんお別れですお。
　　　　| 　 　(⌒)|r┬-|　　　　　|
　　　 ,┌､-､!.~〈`ー´/　　　 ＿/
　　　 | |　|　|　 __ヽ、　　 　/
　　　 ﾚレ'､ﾉ‐´　　￣〉　　|
　　　　｀ｰ---‐一'￣



　　　　　　　　　　　 /　　　　 /　　　　　　　 　 　 　 　 　 　 　 ',　　 .::、
　　　　　　　　　 　 /　 　 　 /　　　　　　　　　　　　　　 　 　 　 ,　　 .:.',
　　　　　　　　　　 ,′ 　 　 :|　　.:.　　　.:.　　　　　　:.　 :}　.::.　 .:|　　　.::,
　 　 　 　 　 　 　 , 　 　 　 .:|　 ..:{ :. 　 .:{:　　:|　 　 :}:.　,'　..:}　.:.:|　.: 　 .::,
　　　　　　　　　　′ 　 　.:. :| :{::⊥いＬ._l;. 　.:|'.　 ..:ﾊ_,厶..:/|　:ﾘ|　.: 　 ..:.!
　　　　　　　　　 , 　　.:. : { :. |八_｣⊥lﾊ｣_`::.:..:| ' ..:/´_厶∠.｣_ノ.:'　.:　.:.:.:.:i
　　　　　　　　　,′　..:{ :. ', .:.:小i´ {しｈﾊ` ＼|　}/　'ﾞ {しｈ::j｀ﾌ/　.:　..:.:.:ｉ:i
　　　　　　　　 /,ﾊ:..:..:..'. :. ', :.:..,ﾍ. 弋::ﾟノ　　　　　　　 ゞﾟ::ノ.ノ/.:.:/ .:..:..:.:ｉ:i
　　　　　　 　 / 　 ',.:.|:...'. :. :、:..:、｀　　　　　　　i: 　　 　 　 ´/..:/　..:ﾘ .::ﾊi
　　　　　　　　　　　l;..|:.:..ヽ:.. ＼:.　　　　　 　　　:'　　　　　　/.ィ′..:/|.::/　}　　　　ええ、気をつけて。
　　　　　 　 　 　 　 l∧:.:.:..ヽ:.:.ﾍ＼　　　　　　　 　 　 　 ／　ﾉ ..:.:/ ..:/
　　　　　　　　　 　 ｼ　 ＼　 ＼:..＼　　　　､＿.､＿,　　　 ／/.:／　:/
　　　　　　　　 　 ∫ 　 　 　 　 ＼　丶、　　　　 　 　 .　´　 ／ﾊ:、
.　　　　 　 　 　 　 ∫　　　　 　　 　 └┐ﾐ'‐ 　 .__,　イ　　 　 　 ∫ ＼
　　　　　　　　　 人　　　　　　　　　　　⌒ヽﾐ、　 {ﾄ｣ノ　　　　 ∫ : : .',
　　　　　　　　 /:::::::(_　　　　　　　　　 　 　 　 ｀ヽr┘　　　　　ﾘ　: : :│

3085．

┌──────────────────────────────────────────────┐
│ラフィット駅馬車事務所の中から、二人を見守る影があった。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　│
└──────────────────────────────────────────────┘


　　　　　　　　　　　　　　 ／￣￣＼
　　　　　　　　　　　　　／　　 _ノ　　＼
　　　　　　　　　　　　　|　　 　（ ●）（●）
.　　　　　　　　　　　　　|　　　　　（__人__）　　　　　ああ、どうしたらあの罪のない二人に、
　　　　　　　　　　　　　 |　　　　　｀ ⌒´ﾉ　　　　　　この手で奪い去った幸福を返してやることができるだろう？
.　　　　　　　　　　　　　 |　　　 .　　　　}
.　　　　　　　　　　　　　 ヽ　　　　　 　 }　　　　　　(　　　　だが、神さまがきっとお助けくださるに違いないのだ。
　　　　　　　　　　　 　 　_ヽ　　　　　ノ｀ヽ､_　　　　 ）
　 　 　 　 　 　 　 　 _/｜＼ `　､,__ ､小　L　￣ ヽ （
　　　　　 　 　 　 _, ハ　 ＼　｀ ァ､　/ﾍ,レ―‐‐､__i__,）
　 　 　 　 ,　-‐ ´　　 ,ゝ 　 ＼/ _ 又／　 　 ,ヽ＼丁
　　　　　/　　 ヾ. 　 　＼ 　 　, ｲ{｀<　　 ＿ ,ィ 〉〉〉|
　 　 　 /　　｀ﾞヾ＼　　　 ヽ／　ヽ＼｀く´　/ ｀ｰ(/　|
　 　 　 !　　 ´⌒｀ ヽ　　／　　 　 ｀ーヲ｀〈　 　 i 　 !

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（第５５話『お金がたくさんあっても幸福とは限らないようです』了）

乙です！
貴族のボンボン→転落なのにこれだけ前向きで明るいアルベールは応援したくなるよな

乙でした。
さりげなく転落？しているボヴィルさんが気になるｗｗ

>>895
＞アルベールたちの知り合いのマクシミリヤンも殺されましたお？

前回自殺回避したのに死んだの？

殺されましたか？　のやる夫語だなｗｗ
戦争に行ったけど殺されてないでしょ？　と言ってる

やる夫語的には、殺されましたかお？
の方がいいのだろうか

ああー！ みんな死んだから出世のチャンスだぜって言ってるのかと思ったわｗｗ
時系列が無茶苦茶だが、何度読んでもわからんかったわｗｗｗｗ

>>914、>>916
すいません、>>915さんのおっしゃるとおり『殺されましたかお？（いや、殺されてないですお）』という意味です＾＾；；
岩波本訳文では『殺されましたか？』『殺されたりしたでしょうか？』となっています。

まあ、それにしても過去の英雄やマクシミリヤンと自分を同列にするんかい！と思いますがｗ

乙です！
もうまもなく完走ですね
楽しみなような、残念なような不思議な気持ち