東京新聞 2016年9月27日㈫
障害者は四つ葉のクローバー


20160927一面
骨の折れやすい障害がある伊是名夏子さん(34)写真右=が、7年前の結婚式のドレス選びをはじめ、ファッションについてつづります。




20160927花嫁、カートに乗る



「花嫁、カートに乗る」

身長一〇〇?、車椅子ユーザーの私が困ることはいろいろあるのですが、その中の一つが洋服選びです。フワフワのスカートも、車椅子に座るとラインが台無しで、ぺっちゃんこに見えてしまいます。体に合うサイズの服は子ども服で、クマさんやウサギさんがついたものも多く、好みではありません。街中で車椅子は人目をひくので、自分自身も車椅子に負けないくらいおしゃれになりたいのに、なかなかむずかしい。

 そんな私が一番悩んだのが、七年前の結婚式でした。まずはドレス選びです。一般のレンタルドレスは大きすぎて全然ダメ。それに座ったままなので、裾が尾びれのように広がる「マーメイド型」も厳しい。
 
 そこで晴れの舞台、思い切ってオーダーメード、さらに、私の生まれ育った沖縄の伝統工芸を取り入れたドレスを二着作ることにしました。伝統染色「紅型(びんがた)」の白地のドレスと、伝統的な織物の首里織の一種「道屯(ロートン)織」のピンクのドレスです。新郎も同じ紅型を施した正装「かりゆしウエア」と、道屯織のネクタイを作りました。

 私が新郎と一緒に入場する際の乗り物にも悩みました。いつもの車椅子だと、私が低すぎて新郎とのバランスが悪いからです。高さがあり、安定していて、列席者の間も通れるくらい小回りの利く乗り物は…と思いついたのが、スーパーマーケットのカート。事情を話して貸していただき、ドレス風のカバーをカートに施しました。着るものも大事ですが、どうしても目立つ乗り物への工夫も欠かせません。コーディネート、大切ですよね。
 
 さらには招待状にも悩むことに。市販のカードに描かれた新婦は、どれも立っているんですもの。車椅子の花嫁のイラストを自分で描き、オリジナルの招待状を作りました。アイデアを絞り、手間はかかりましたが、ユニークで、私なりの美しさを演出した最高の式になりました。

 私のように平均からずれてしまうと、ちょっとのことができなかったり、できても時間や手間、お金がかかったりします。それがおっくうで何もしたくない時もありますが、情報を集めて一工夫すると、オリジナルでチャーミングなやり方が必ず見つかるのです。自分のやりたいこと、なりたいものを、いつも頭の片隅に置き、あちらこちらからヒントを吸収し、形にしていく。そんな手間もかかるけどクリエーティブな毎日が、私の楽しみです。

 最近では、障害者のおしゃれも注目されはじめ、障害のある女性のためのフリーペーパー「Co−CoLife女子部」は、インターネットでも見ることができます。

 また十月十日は、障害者のためのバラエティー番組「バリバラ」(NHK Eテレ)が主催するバリアフリー・ファッションショー「バリコレ」が、東京・六本木ヒルズで開かれます。私もモデルの一人として参加しますので、ぜひ足をお運びくださいね(入場無料。詳細は番組HPで)。障害を魅力に変えたオシャレに、乞うご期待です!

写真:オーダーメイドした沖縄の道屯織のドレスとネクタイ、乗り物はスーパーのカートをアレンジ

 いぜな・なつこ 一九八二年、沖縄県生まれ。骨の折れやすい障害で電動車椅子使用。小学校講師などを経て神奈川県内で育児に奮闘中。「マイノリティー=珍しい四つ葉のクローバー」の視点で日々をつづる。=次回は十月二十五日掲載