733 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:15:22 ID:xgIPWnaA0 [5/25]
_,,、....... --........,,,
,/゙,.. -―ー ,, `'''-、、
/ / 、,,, .`'-、 \
/ / .ll殺i_、 .ヽ. ..ヽ
/ . / " ,i"< .ヽ
/ . i',, ,, ;;ソー'''ッ', \
,' l;:;:,゙;;iii- 、 ,i.l二rミ';;./ i', `ー 騒ぐな馬鹿者!!
. ! ,!;|,'..,;{゙l_,/./ .`''T゙゙´ " .|
! .!゙"  ̄゛ ′ ,...! そもそも今回の俺は沢庵和尚ではない!!
.,! .! _,,,,,. /´;:;:| 地獄からの使者!ヨハネ・クラウザーII世だっ!!
.l゙ .l'ー、 .、 ゙‐'ニ>-, .l .|;:;:;:;:|
.l .|;:;:', !', /ニ',;;二ニコ;.l.,l} .!;:;:;:;:}
.! !;:;:.! .',゙ゞ゙'";:;:;:;:;:;:`゙;:;:;〈. :!;:;:;:;:l゙
| .l;:;: l l';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,,;:l''、.l !;:;:;:;|
| .!;:;:;',.|;:l',;:./''''''"゛ `| l;! .|;:;:;:;|
.| .l;:;: ! l}',′ │ ゙l .l;:;:,i|
.! . l;:;:;l │ヽ ._,,,./ ゛ .l./ .!
| .',-.l ′ `゙´ / !
l l \、 . ,/ !
.,! .l `''ー----‐'´ l
.! ! ゙
! ."
. ./ ̄ ̄\
_ノ ヽ、 \ あ、よく見たら額の字が「殺」になってる…。
(○)(○ ) | .___
(__人__) u . |/ー ー .\
.ヽ`⌒´ ./(○ )) (○ ))\ そんな細かいところに気づいてんじゃねーお。
{ / (__人__)) \ っていうか、「地獄からの使者」って、それ東映版蜘蛛男じゃ…。
ヽ | )r┬リ u. . |
ン \ .`⌒´ / 「おめーも人のこと言えねーだろJK」
i´ . ン \
| . / \
734 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:16:40 ID:xgIPWnaA0 [6/25]
,. '"´三二二三`ヽ
/,ィ彡'"´ ̄  ̄ ``ヾミヽ
/ / 殺 ', ヽ
/ /::( ノ:::) ヽ
/ /く´‘`ヽ ',从,' ∠‘``', ヽ
/ ハ´ ̄`フ.:;;;;;:: ヽ ̄`フ', ヽ
/ / ,, ,, ', \ \、_ハノ
/ /::、 / .;;;;;;' ヽ /::ト、 ヽ\).',..、
./ //:::::::; l /⌒ー一⌒ヽl ;:::::ト、V . /
/ // 1:::::; V.:ViiiiiiiiiiiiiViiV ;:::::ト、V ヽ,) 今回はマサシ…もとい、武蔵の補足篇なのだろうが!!
/ // ./.l:::::;. /l /´  ̄ ̄`ヽ ;_ ___ノ) )
/ // / l::::; l | .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:| ;::: ̄\ `ヽ その師匠である沢庵和尚を演った俺が
/ // / 1::; | |.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.| ;::! i i _) . ここに出るのに何の不都合がある!!
. / // / / l:::;. |WWWWWW! /1 | | .l,)
/ // / / .|ヾ、 L二二二ニノ / | | | /-、
. / // / / |(__ノ\ /xxxxxヽ/ /! ! ! .,ソ/ヘ '"
. // / / ノ ', l}}}}}}}}}}}}} /| | | | / //7/ヘ /l ト、 |\
// / / ハ:::::::::.\ V´ ̄`Vく/ l | | | / V | l ヽ|
. // / / l >.-、/ ヽ ヽ | | ! !
// / / |/ / \) l/ | |
.// / / V 〉 '"´ ``ヽ). | !
/ / 〈 '"´ ``ヽ) l/
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \
| (●)(●) | いやだってそれ、吉川英治版じゃねえか!
. | u.(__人__) .| 吉川先生本人だって、あれは創作だって言ってるし…。
r、 | . `⌒´ .|
,.く\\r、 ヽ ノ 【「随筆・宮本武蔵」より】
\\\ヽ} ヽ / 『武蔵と沢庵との交渉は、まったく僕の創作で、文献には見当たらない』
rヽ ` ヽ / ァ'´ヽ
└'`{ . \.| / i
ヽ、._ ヽ、_,r' .|
`ヽ、 /' |
`'ー'´
____
/ノ ヽ、_\ r ⌒j
/( ○)}liil{(○)\ / / ああもう、いいから、さっさと帰ってくださいお!
/ (__人__) \/ / / ) こないだの本編で沢庵和尚の話は済んだんだから、
| |i|||||||i| / / / / 回想以外はもうアンタの出番ないお!!
\ |ェェェェ| / '` ´ /
r´ (⌒'ー―- イ′ ´廴
/ > 、 ヽ _  ̄ ̄ ̄)
/ -、 } (  ̄¨´
/ ヽ._ __ \
` --‐'´ `゙' 、_.)
735 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:17:19 ID:xgIPWnaA0 [7/25]
_.. -ー'''''''―-..,,,
/゛ `゙''ー ..,,,,,,__、 \ \、_ハノ
,i'゙,,....,,,、 ,,,,.....,,..二T" ヽ\).',..、
i./ `''、 `'';;;;;;i、 /
,!l 殺> i'i|.゙l , `'- ヽ,) やかましい!!
l:|.`.゛ ./´゙7i}゙'、 ) ) . いいから、さっさと武蔵の話を始めろ!!
!l,,_ l / '´ ...} /`ヽ
.',_/ / ! /..l_) どうしてもやらないというなら、
l ._i、 ,、ヽ !;:;:;ヽ / .l,) この場で貴様らをSATSUGAIしてくれるわー!!
l. i-'" ゙',/ l;:;:;:;:;\ _,,,,.............../ ! /-、
リ',、 .l゙''、|;:;:;:;:;,ノ゙ / .,.‐', l .,ソ/ヘ '"
'!|.l. / .゛', ;;l" / ., / l, .', // //7/ヘ /l ト、 |\
_,.l,', ;;,'-'./ ゙./ _,,,/ ! ..l ,ゞ゛ ___,/ _____V__ | l ヽ|
,./ '" ゙''" / , ''"'''"| / .l l .l./
i'" ./ ./ / ., '~', .l ! / ;',
_..-'"゙゙フ'./ / ,/ ./', .', .l /;:;:;:;:;:|
/゛ イ゛,/./ ,/ ,,-', .l .', _ '";:;:;:;:;:;:;:;:;| .、 ,
, ',゛i!〃゛ / ., ''.l ', .l ,,ミ'゙;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:',゙''-、、 ゙',ゝ、,.l,
,..┴-iフ" ./ ._‐{ . ! ', ._ノ'l丶;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;| `''' !./ -',、`′
/ / .// l ', .,ゞ゛ !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: ! . ゙'- `'
/ . / .,,/゙l゙ .! .l ._ソ" .l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;: !
/ ., ''l'7 ! ヽ,,,,','"| ',;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:}
./ .,-{..,i,' | ′ .l_ !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;!
: '.l.,,i'゙.l |i./ .ヽ .',,'',、 .l;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:!
..ィ ! ', ',`'、. _,,,',. ゙リ..,,,_ !;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:l
', l l..,ノ'´ `'-、 .,,...../ ゙'イ;:;:;:;:; ゙゙̄''゙‐' ..、;:;:;:;:;:;:;:;!
.l .!/ `'-,, \,ノ゙;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:!
.,','----.... ......,,,,,_、 `'く、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;.!
. ゛―----........,,,,_、 .`゙''''ー-ミ;;ッ、,;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:.!
------ ....,,__ .`゙"'― ..,,、.゙/゙'''-、、;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;l゙
ー''''''''''''―-..,,_ ゙゙゙̄"'''ー ,,, ./゛ `''ー ..,,,_;:;: /
`゙'''‐ ~
__
/ \ …あー、ダメだこりゃ
/ ノ ヽ__ `
|(―) (― ) l /  ̄ ̄ \
l (_人_) u.| /ノ ヽ__ \ しょーがねーお。
l `⌒´ | /(―) (― ) \ SASTUGAIされるのもアレだし、
、 / |. (_人_) u | じゃあ、今回は3人でやろうかお?
> < \ `⌒ ´ ,/
/ l / ヽ
. / l ,/ / .! / l ,/ / i
(_) (__ ノ | (_) (__ ノ l
/ / __ノ / / ___ ,ノ
!、_!、____つ !、___!、_____つ
736 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:18:01 ID:xgIPWnaA0 [8/25]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | フン、わかればいいのだ。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | わかれば。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ `---´:;/ | |ヽ では、俺が聞き役に回るから、
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\ 貴様らが説明をしていくがいい。
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \
| (●)(●) | いきなり段取らないでくれよ、もう。
. | u.(__人__) .|
r、 | `⌒´ .| まあ、その形式の方がスムーズに行くから、
,.く\\r、 ヽ ノ それでいいけど。
\\\ヽ} ヽ /
rヽ ` ヽ / ァ'´ヽ
└'`{ . \.| / i
ヽ、._ ヽ、_,r' .|
`ヽ、 /' |
`'ー'´
____
/ \
/ ─ ─ \ (もしかして、単に暇だから来ただけなのかお?この人)
/ -=・=- -=・=- \
| (__人__) U |
\ `⌒´ /
737 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:18:21 ID:xgIPWnaA0 [9/25]
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、_ \
(●)(● ) | さて、それじゃあ今回、話をするのは、
(__人___) | 前にも書いた通り、
| u |
| .| ・
>>1から見た武蔵像
ヽ 、 ,イ ・ 宗矩と武蔵の兵法観比較
/ヽ,ー- ト、
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__ この二つになる。
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:....
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | ほう、沢庵の時と比べて、随分絞ってきたな。
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 何故だ?
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
738 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:19:04 ID:xgIPWnaA0 [10/25]
____
/ _ノ ヽ_\ メインキャラの一人だった和尚と、
. / .(ー) (ー)\ それなりに出番があったとはいえ、あくまでゲストの武蔵じゃ、
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \ 本編中の言及量が全然違うお。
ヽ L |r┬-| | 元々、武蔵と柳生一族の関わりは、かなり曖昧だし。
ゝ ノ `ー‐' /
/ / \ 大体、和尚並に詳細な話をしようと思ったら、
/ / \ それこそ「五輪書」の解説から始める必要があるし、
. / / -一'''''''ー-、. .流石にそこまではやってらんねーお。
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( 一)(●) 今の
>>1のペースでそんなものをやったら、
| u. (__人__) 冗談抜きでいつ終わるかわかったもんじゃないしな。
| `⌒´ノ
| ,.<))/´二⊃ とはいえ、何も書かないのも勿体ないから、
ヽ / / '‐、ニ⊃ ポイントになるところは紹介しよう、というところさ。
ヽ、l ´ヽ〉
,-/ __人〉
/ ./. / \
| / / i \
|" / | > )
ヽ/ とヽ /
| そ ノ
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 夢 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、_ゝ イ_ノ| | なるほどな。
//イ / /::::、 '´ ` '|| | まあ、いずれ誰かが「やる夫で学ぶ宮本武蔵」を
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| やってくれるのを期待する、というところか。
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\ 「そういうことだな。
/ / / ! \| | ./! ! | じゃあ、始めるぞ」
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
739 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:20:42 ID:xgIPWnaA0 [11/25]
╋━━━━━━━━━━╋
┃ .
>>1から見た武蔵像. ┃
╋━━━━━━━━━━╋
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ´ ⌒
. | ( ●) (●) まず、結論から先に言うと、
| (___人__)
.| ノ 「遅れて生まれてきた武芸者」
j |
..ノヽ、 , ノ _ というのが、
>>1の武蔵観だ。
,. ー、一一´:::::::::::::≧ーー"7 i' Y
. / .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.`-、 i l _
/ .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. >-、 | lフ ト、
.::::::::::::::::: !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ i/ ,.イ 丿
:::::::::::::::::: l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. v:: l / i'r ´,.ィ
:::::::::::::::::: l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l::: l j 丿r´,.ィ
:::::)::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |::: 八 `チ
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '.
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '. ほう。
| / ネ.π '. } l それは、江戸期の剣豪に対してよく言われる、
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ 「もし戦国時代に生まれていれば、
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \ もっと出世できただろうに」とかいう話か?
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ }
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ /
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
740 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:21:28 ID:xgIPWnaA0 [12/25]
/ ̄ ̄\
/ ヽ_ .\
( ●)( ●) | いや、これは出世云々はまた違う話だ。
(__人__) | そもそも、武蔵に出世欲があったかどうか怪しいしな。
l` ⌒´ |
{ |
{ /
_. -: ´Λ _.へ` 、
r<: : : : /:|: :、  ̄r' \ :\_
/: : :l : : : : : :\`IエL>、 >ヘ::Λ
|: : : ト、: : : : : : : : : : : : : `ー/ : : V |
〈: : : :::: _ -¬--―-、: : く:r 、: : : V }
/: : :_ン´: : : : \ ,___, ィ ): : :`く : : : ヘ|
-―─- 、
/ \ 創作でよくある
′ ⌒ ⌒ ,
i ( ―) (― ) i 「立身出世を目指すも、結局、挫折する武蔵」
| (__人__) |
、 ノ というのは、後世の産物だお。
⊂⌒ヽ > <_/⌒つ そういう風に武蔵を描いている逸話もあるけど、
\ 丶′ 7 本編で紹介した史料ベースの武蔵は、そういうキャラじゃなかった筈だお。
\ ノ ト、_/
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 確かに、本編での武蔵は、特に生活には困った様子はなかったし、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 今ひとつ名声欲も感じられんかったしな。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| |
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| まあ、それはいいとして、
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ 何故、「遅れて生まれてきた」となるのだ?
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
741 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:22:20 ID:xgIPWnaA0 [13/25]
/ ̄ ̄\
rヽ / ノ \ \ うん。
i ! | (●)(●) | つまりな、
r;r‐r/ | | (__人__) |
〈_L (`ヽ .} | `⌒´ ノ 「武蔵の志向は、
l` ( ``/ . | } .戦国時代の武芸者のそれに近い」
ヽ l . ヽ }
|,. l /⌒ ー‐ ィ ヽ ということなんだ。
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | ふむ、そりゃどういう意味だ?
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
742 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:23:01 ID:xgIPWnaA0 [14/25]
/ ̄ ̄\
_⌒ ⌒ \
(●)(● ) | 順を追って説明しよう。
(__人___) |
| | まず、武蔵が生きていた時代は、
| .| 戦国時代の末期から江戸時代の前期だ。
ヽ 、 ,イ 日本史で言えば、中世から近世への過渡期になる。
/ヽ,ー- ト、
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:....
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
____
/ \
/ ─ ─ \ 成人した頃には、
/ (●) (●) \ 既に戦国時代は終わりかけだった、というとこだお。
| (__人__) |
\ ` ⌒´ ,/ その意味では、武蔵は戦国時代の人物というより、
/⌒ヽ ー‐ ィヽ .江戸時代前期の人物とした方が妥当な訳だお。
/ ,⊆ニ_ヽ、 |
/ / r─--⊃、 |
| ヽ,.イ `二ニニうヽ. |
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', まあ、宗矩より10歳以上年下だからな。
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | そりゃそうだろう。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| |
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、|
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
743 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:25:24 ID:xgIPWnaA0 [15/25]
__
/ ヽ
/ __,.ノ 、 そして、近世に入り、世の中が落ち着いたことで、
| ( ●)( 兵法がその効果を発揮できる機会が減った。
| (__ノ`,
| ン′ その結果、兵法者は、
_ノ `、 7 芸(技術)を売りものにして歩く「芸道者」としてよりも、
,イ:. ヽ、<ヽ,、___ ノ .家に仕える「武士」としての生き方を選ぶものが増える。
,. -ーー -‐ ´:::::::::::::::::::::::::::::7
/..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: く'、 .正確に言えば、仕えた家の中で、
. { :::::::::::::::::::::.ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. 、_ その芸を活かして働くというものだから、
'| ::::::::::::::::::::::..`、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::..`ヽ .芸を捨てた訳ではなく、優先順位が入れ替わった、という話なんだが。
'| ::::::::::::::::::::::::::::i_::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ::ゝ
ト、:::/ / ̄`` ハ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!:::::::.ヽ
`,ヘ ´:::::::::::::::::. ハ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::_,rー'、
}:,∨ :::::::::::::::::: ト、:::::::::::::::::::::::::>< ̄\::..\
. }:::∨::::::::::::::::、-''゙~ ̄ ̄ ̄ ̄:::::::::...\ ム:::::ヽ
l::::∨ :::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::,.、/...:::::::::ヽ}
{::::::\,::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/" ̄:::::::::::::::::::::::::ノ
____
/ \ まあ、これは武芸者に限った話でも無いけど、
/ _ノ ヽへ\ 戦が続くことで「とにかく腕が立つものがほしい」という
/ ( ―) (―) ヽ 売り手市場の状態から、戦が無くなったことで、
.l .u ⌒(__人__)⌒ | 「今、家中にいる者で回していく」という買い手市場の状態になったから、
\ ` ⌒r'.二ヽ< 技術だけで仕官するのは難しくなった訳だお。
/ i^Y゙ r─ ゝ、
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、| 幾ら芸が凄くても、その芸が必要になる場がないんじゃ
{ { \`7ー┘! .大名家だって召抱えるのは躊躇するお。
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / u. 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、_ゝ イ_ノ| | 世間の景気が良く、仕事があるうちは、
//イ / /::::、 '´ ` '|| | 技術さえあれば転職もできるし、フリーでもやっていけるが、
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| .不況になれば、そう簡単にはいかん、ということだな。
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\ 世知辛いのう。
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
744 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:26:18 ID:xgIPWnaA0 [16/25]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ ヽ、_
| ( ●) (●) だが、そういう風潮の中、
| (___人__) 武蔵は仕官せず、敢えて芸道者として生きた。
.| ` ⌒´ノ
| | .本編での武蔵の話を追えば分かるが、
.|、 _r十、 仕官しようと思えば、おそらくできたであろう状況で、
[::.ヽ、 __rく_} _i .} それを選ばなかった訳だ。
_, 、-一 :::"\ :::::::::} _i _l _i .}
/ .:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::} _l i_ i. {ヽ
/ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::} _jノ`~゛ t::.j
.i :::::::::::::::::、.::::::::::::::::::::::::::::} ゙i -‐.i.,-‐、
i ::::::::::::::::::: i:::::::::::::::::::::::::::i ヽ ⌒,; ‐'′
l ::::::::::::j:::::: i:::::::::::::::::::::_ノソ } /:::i
l ::::::::/::::::::::::::::::::::::::/.:::゙i::\__ rl ´::::: i
l :::::/::::::::::::ソ:::::::,/::::::::::::::::::::ー,´:::::::: l
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '.
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '. 待遇が気に入らなかった、ということではないのか?
| / ネ.π '. } l 同時代史料にはないが、後代の史料では、
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ 自身が望む待遇が得られなかったので辞退した、
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \ という話がいくつかあるだろうが。
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ }
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ /
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
745 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:27:23 ID:xgIPWnaA0 [17/25]
___
(⊃ \ それは逆に言えば、
(⊃ _ノ ヽ、_ \
(⊃ (ー) (ー) u.\ 「一次史料に武蔵が仕官を望んだことを示す記録は無い」
/| (__人__) |
/ \____` ⌒´ / という話でもあるお。
( \ それに、その手の「仕官を辞退した」って話は、概ね身内の伝書が出典だから、
\_ | \ 「敢えて仕官を選ばなかった先師(武蔵)は凄い」という
ヽ| ト、 ヽ 賞賛のために書かれた話と考えた方が妥当だと思うお。
ヽ | > )
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 史料で言えば、『丹治峯均筆記』の
. | u. (__人__) 「将軍家からの召し出しを断った」話辺りが初出なんだろうが、
| ` ⌒´ノ 正直、シチュエーションに無理があるからなあ…。
. | } 書かれた時代も、享保十二年(1727)だから、武蔵の死後80年以上後だし。
. ヽ }
ヽ ノ それ以外だと、『尾張公徳川氏系譜』にある
i⌒\ ,__(‐- 徳川義直からの仕官の奨めを断った話があるが、
l \ 巛ー─;\ 理由として挙げられる「千石(あるいは三千石)を望んだので断られた」という話は
| `ヽ-‐ーく_) .系譜内には記述の無い後付の話だし…。
. | l
/\ ※【「丹治峯均筆記」より】
/. \ 『武州兵法、將軍家達上聞、可被召出御沙汰アリトイヘ共、
V. \ 柳生但馬守殿、御師範トシテ常住御前ニ侍席セラル。
i \、__ .武州、柳生ガ下ニ立ン事ヲ忌テ、
斗‐''"¨ ̄ ̄`ヽ{ //、_ 「若年ヨリ仕官ノ望ナク、髪剃ズ、爪トラズ、法外ノ有様也。
{、 ヽ /' ゝ> 御免ヲ奉蒙度」旨達テ御斷申上ラル。兵法御覧ノ御沙汰モ有之トイヘ共、
{ミヽ \ // // ヽ 「柳生ヲ御尊敬被成カラハ、我兵法備台覧トモ無益」トテ、
ヘ: ヽ \ ':/// ´_彡} 是モ御斷被申上。但州モ曽テ吹擧ナカリシトカヤ』
ヘ:. :', \ {,//, /'"´
ヘ :':, _ -=====ミヽ|./ /' ※【「尾張公徳川氏系譜」より】
ヘ :::':,、/´ _,. -====ミゞ斗} 『天下無双の達人宮本武蔵至る。卿これが武芸を見て曰く、
ヘ ::彡'/´ `¨¨¨´ 凡骨に非ず、妙紳に入る。これに仕を勧む。肯かず。客遇し、留る三年』
746 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:28:05 ID:xgIPWnaA0 [18/25]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', だとすれば、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 武蔵は何のために仕官を断ったのだ?
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| |
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、|
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
/ ̄ ̄\
_ノ ヽ、_ \
(●)(● ) | まあ、理由について書いた史料も無いから、
(__人___) | あくまで推測に過ぎないが、敢えて言えば、
| |
| .| 「兵法に集中したかったから」
ヽ 、 ,イ
/ヽ,ー- ト じゃないかな、と思うんだ。
_, 、 -─ '".:.ヽ:.:.\__ /ノ ト、__ 例えば、五輪書の冒頭の記述が挙げられると思う。
__ ,. ー 、...:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:....
\ r 、 _ \:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::'ー、
} }/ ) V::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\
/:ゝ/ ./ __ V ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:.:.:.\
}:::::ゝ ソ ,Y i::::::/::::::\:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:.:.:.:. \
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【『五輪書』-地の巻】
| |五| . |_| 『我、三十を越えて、跡をおもひみるに、
| |輪| . |_| 兵法至極してかつにはあらず。
| |書| .|_| おのづから道の器用有りて、天理をはなれざる故か。
|.  ̄ .|_| 又は他流の兵法不足なる所にや。
|. .|_| 其後なほもふかき道理を得んと、
|. .|_| 朝鍛夕錬して見れば、おのづから兵法の道にあふ事、
|________.|_| 我五十歳の比也』
└───────
747 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:29:17 ID:xgIPWnaA0 [19/25]
____
/ \ 武蔵30歳の頃と言えば、慶長十八年(1613)だお。
/ ─ ─\ そこから50歳になるまでの20年が過ぎれば、寛永十年(1633)だお。
/ (●) (●) \
| (__人__) | ________ その頃の武蔵は、故郷の播磨を拠点にし、
\ ` ⌒´ ,/ // ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ / .そこに転封してきた本多家や小笠原家に近づくものの、
___/ \ // / 仕官はせず、客分扱いで過ごしているお。
| | / , ヽ // /
| | / ./ // /
| | | ⌒ ーnnn . _____//_,_,______,_,_/
 ̄ \__、("二) .`――――-((」II.IIニニニニニニエ!
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) そして、本多家にせよ、小笠原家にせよ、それぞれ武蔵の養子を召抱えてるし、
.| (__人__)_ 小笠原家に入った伊織に至っては、20歳で家老にまでなってる訳だから、
| `⌒´. ̄ その養父である武蔵の評価が低かったとは思えないだろ。
.| ノ 常識的に考えて。
ヽ .,ノ )/´二⊃
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ 本編でも書いたけど、望めば相応の格で仕官できただろうな。
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', ふむ…。
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | では、その間、武蔵はどうやって生活していたのだ?
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | .兵法が役立つ機会は減った、とさっき言っていたではないか。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
748 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:31:07 ID:xgIPWnaA0 [20/25]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ .___ ああ。
| ( ー)(●) ( ⊂⊃ ) 確かに、兵法が直接的に役立つ機会は減ったが、
. | (__人__) ホワッ ̄ ̄ .同時に、武士はあくまで武士だから、
| ( ( ノ 戦があろうがなかろうが、常に戦えるように備えておく必要はある。
.l^l^ln ⌒ }
. ヽ L } ∩ ノ)━・ だから、「兵法を教授する方の需要」はそれなりにあったのさ。
ゝ ノ ノ / _ノ´ 実際、家中の兵法指南役が目立ち始めるのも江戸初期からだしな。
/ / \/ |
/ / ' |
. / / |ヽ__ノ
ヽ__ノ
____
/_ノ ヽ\ この時点で、武蔵は吉岡一門との戦いなどを経て、
/ ( ●) (●)、 兵法者としての名声を確立していたお。
/::::::::⌒(__人__)⌒\ だから、自身の兵法修行の傍ら、
| |r┬-| | .希望者に兵法教授をすることで、
\ `ー'´ / 日々の糧を得ていたのだろう、ということだお。
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ / ついでに言えば、仕官した養子たちも
\_,,ノ |、_ノ 養父である武蔵を援助しただろうし。
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、_ゝ イ_ノ| | 不況でも技術が確かなら、
//イ / /::::、 '´ ` '|| | 食っていける程度の仕事は取れる、ということか。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
749 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:32:44 ID:xgIPWnaA0 [21/25]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ `⌒
| (● )(●) ノ' そして、最初の話に戻るが、この武蔵の行動は、
| (___人__) rニi ,i' 武蔵より前の世代となる上泉伊勢守や塚原卜伝のそれと重なるんだ。
| ` ⌒´ノ .| レ..;::.
| |_,-‐、l// 「武士ではあるものの、芸道者としてのスタンスを重視した」
人、 厂丶,丶, v´j
_,/( ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ __ノ という生き方だな。
_, 、 -― ''"::::::::::::\:::::::::::::::::::::( <"ニ‐-、 二人とも、それぞれ主持ちの武将ではあったが、
/:::::::::::::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r /⌒ヽ;;:::::: ) 廻国での兵法教授の旅を繰り返すなど、
丿::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;V/..... ̄ ',;;:::| その軸足は芸道者の側にあった。
i ;;::::::::::::::::::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;〈 ;;;;:::::::::::... ',;;i
/ ;;;;:::::::::::::::::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::\::::;;;;;;;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
-―─- 、
/ \
′ ─ ─ , 伊勢守だと、主家の長野家が滅んだ後、武田信玄に仕官を望まれたけど、
i ( ●) (● ) i 兵法教授の旅に出たいから、ということで断った逸話があるお。
| (__人__) |
、 ノ まあ、これは『甲陽軍鑑』が出展だから若干微妙だけど、
⊂⌒ヽ > <_/⌒つ 実際、再仕官した様子もないし、家督を譲ってからは、
\ 丶′ 7 兵法修行と教授に専念していたのは間違いないと思うお。
\ ノ ト、_/
. ′ |
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '.
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '.
| / ネ.π '. } l 特定の家には仕えず、
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ 兵法を第一にして、それで糧を得る、という訳か。
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶 その意味では、確かに武蔵の生き方は
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ 武士というより芸道者の…その生き方が許された
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ } .戦国期の兵法者のものに近いか。
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ /
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´ 「そういうことだな」
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
750 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:33:50 ID:xgIPWnaA0 [22/25]
/ ̄ ̄ \ (
/ ⌒´ ⌒ ノノ 「諸国を廻って腕を磨き、名のある武芸者と立ち合って勝利し、
| ( ●)(●)(,ヽ、 (( 名を上げて、大名や武将の知己を得て、
.| (___人__) r__i____ ノ 自流派を立ち上げ、門弟に教授する」
| √丶丶丶┬─'"'
| | ) j この武蔵の生き方は、戦国期の兵法者の典型のひとつだ。
.人、 ヽ´ ,/
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r 江戸時代の兵法者だと、
_, 、 -一 ''"::::::::::::\::::::::ー-- r / ⌒ヽニ- 、. .これに「その名声を以って仕官する」が入るわけだが、
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ 武蔵にはそれが無かった。
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;| .というか、元々望んでいないというべきか。
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;i
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
_,,、....... --........,,,
,/゙,.. -―ー ,, `'''-、、
/ / 、,,, .`'-、 \
/ / .ll殺i_、 .ヽ. ..ヽ
/ . / " ,i"< .ヽ
/ . i',, ,, ;;ソー'''ッ', \
,' l;:;:,゙;;iii- 、 ,i.l二rミ';;./ i', `ー ふむ…ちなみに、仮に武蔵が
. ! ,!;|,'..,;{゙l_,/./ .`''T゙゙´ " .| 戦国時代に生まれていたとすれば、
! .!゙"  ̄゛ ′ ,...! 今以上に成功できたと思うか?
.,! .! _,,,,,. /´;:;:|
.l゙ .l'ー、 .、 ゙‐'ニ>-, .l .|;:;:;:;:|
.l .|;:;:', !', /ニ',;;二ニコ;.l.,l} .!;:;:;:;:}
.! !;:;:.! .',゙ゞ゙'";:;:;:;:;:;:`゙;:;:;〈. :!;:;:;:;:l゙
| .l;:;: l l';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,,;:l''、.l !;:;:;:;|
| .!;:;:;',.|;:l',;:./''''''"゛ `| l;! .|;:;:;:;|
.| .l;:;: ! l}',′ │ ゙l .l;:;:,i|
.! . l;:;:;l │ヽ ._,,,./ ゛ .l./ .!
| .',-.l ′ `゙´ / !
l l \、 . ,/ !
.,! .l `''ー----‐'´ l
.! ! ゙
! ."
.|
_____
/ ― \ それはなんとも言えないと思うお。
/ノ ( ●) \ 芸道者としての成功は、どんな相手に打ち勝ったか、というのが影響するし、
. | ( ●) ⌒) | .やはりその辺りは時代や状況次第としか言えないんじゃないかお?
. | (__ノ ̄ /
. | / .まあ、本人の志向を考えると、
\_ ⊂ヽ∩\ 武士/武将として立身出世する、というのはなさそうな気もするけど。
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
751 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/01/26(月) 02:35:48 ID:xgIPWnaA0 [23/25]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ ((
-、 .| (● ) (● ) | ノ' そうだな。
ヤ ', | (___人___) .| ,i' ただ、後世の評判や名声はともかく、
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::. 武蔵本人のあり方は、然程変わらないんじゃないかと思うぜ。
', j / / .| ____/./
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 師匠の存在も希薄だから、新免家に養子に入らなかったとしても、
l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` { 武蔵の兵法に大きな違いが出るかどうか微妙だし。
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
_..-''" ̄ ゙̄''---- ,,,,
/ `'‐、
/ `'、
/ ゙l,
/ !
| . ___、 |
l ., ‐'"゛ '''''''、 |
l . / l |
,' / . 、 ! !
/ / 、 l.殺´! .,! |
/ ./ l .f゙'‐.,i', ,! | つまり、(世間的に)成功しようが失敗しようが、
/ .l ゙l \ ! l゙ 武蔵は武蔵、ということか?
./ !.ゞ \ .ヽ l゙ !
./ | .`ッ', .,r‐/ ! 「そういうことだな」
./ .! ゛ ./;:;:;l |
./ .r .! ゙‐''''} l 「そういうことだお」
.-'´ . l l、 .、 i ..,,、 | l
/ .!', .!、 `―" ! 、 !
! }.l l-二― ......,,.. | | .|
.| .l l .l;:;:;:;:;:`゙゙''''/ ,! ! |
.l │.,、.ヽ .ゝ ....,,,__./ ! |
! !.〈,,, ゙'-..____,,..-'"l゙ /
! /.、 `''-,,. ,..l゙ ./
', .,' `'、 `''" ̄ ̄ .,! /
! .i', ゙'y. .._.. ! /
| ./ ヽ ゙',゙'---ッ'" ! /
| / ..l. ..l, / .l ./ ─────━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
l ,i', l .li′ .! ./ ...... ┃
// \ .! ! l ./ .. ┃ そういうことになった。
〃 ヽ. ! ! :! . / .. ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━─────
798 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:02:57 ID:yByWwD7s0 [3/24]
/ ̄ ̄\
/ ⌒ .⌒. \
| .(●)(●) | さて、話を再開するが、
. | (__人__) | これからの話をする前に、改めて武蔵の生涯をまとめてみると、
| `⌒´ | ) ;;;;)
. | | .) ;;;;) .・ 兵法者として功名を上げ、高い評価を得ていた。
. ヽ } /;;/ ・ 仕官することはなかったが、複数の大名家から客分として相応に遇された。
ヽ ノ .l;;,´ .・ 兵法以外にも、画や書、工芸などに手を出し、そちらでも評価を得ている。
. / ∩ ノ)━・' ・ 妻を持たず、実子もいないが、養子を複数取り、特に伊織は若くして家老にまで出世した。
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ | こんなところになるな。
\ /___/
____
/ \ で、遺言とも言える『独行道』の記述である、
/ _ノ ヽ、_.\
/ (●) (●) \ 「我事において後悔をせず」
| (__人__) | .「善悪に他をねたむ心なし」
/ ∩ノ ⊃ / 「自他共にうらみかこつ心なし」
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| | 辺りを、武蔵の本音として踏まえるとすれば、
\ /___ / 同時代史料から読み取れる「宮本武蔵」という人物は…
799 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:03:25 ID:yByWwD7s0 [4/24]
f⌒ミ`ニキ'"三三ミミヽヽ`il))メナ彡ナシノノフイく,ノ三ノr=ヽ' .γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
ー=、 ゙ゝ'彡≫三≡ミ゙i`i l l lノ,r'リノッシノ彡ノノシ/F三ノニト | 『自分が好きなことを、 .|
´~ゝ-ゝ<リ彡ノノ三ミミミfi l lゝi ノノノノニ彡三彡彡jノヨ'ノ巛ミ>'"二ヽ| .好きなようにやれる環境が若いうちにできたので、 |
^`ー三くj〃彡三≡ヾ.ゝt t )l ン"´ ゙ヽ、iミ彡ノシ人ミ三彡ニ=- | そのまま死ぬまで好きなように過ごした芸道の人』 .|
、,:r''7ヘ又彡シ,r/'"~`゙゙゙`'二ニ:;、_,,.,., `゙゙ヾミミ三彡ブ>∈ニ乂_____________________ノ
,'ニキ王彡彡彡;,fノ -=,=< l /,∠(_,.,.,、 ゙iミ彡彡三ノ∠ニ_
、_,r=''7ヽ≡彡三彡'" '''"~,r''') `' ゙i f‐-:,ニィ=、ヽ トミミミ三≫にニニ、ヽ
=〃ーヽヽfrミ三f'f ,,r;;ニ彡'´ `ヽ, ノ ノ.'・'´ ̄ i,ミ三ヽフ<7、,.r--=、 γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
`ー=''"~`ヾミ》彡/'イ (:ノZニr・ゞ i f `"_,,二ニヽ┤ミミY人ノリへ,,.=、 | …というところになるかな。 |
,,ノ-r'彡〃:┤ ,,..,.  ̄",:' ,r j t`ヽ,、_,ニニヽ`t三彡彡メ>ノ、_`''" 乂____________ノ
,r''>=‐ナ〃フノノ:゙i'',r'',.=‐,'".ノ(_rゝ_ノ'" ,.,..,.、_´~) l ) )ミミ彡==、、
`~ f 、__,>ヲr7ノF彡 i ( r=''" _,.,.,.,.,.,.,.:ィ",.,-、=、,フ イ ノミヘ三≡,.,、 ゙ヽ
ゞ、_彡ナ7ノシノfr(ゝ、tヽ /,r‐―一 '"_,.,.,、ノノ^iフ′ l`ヾミr十=、``ヽ、)
'"~フフr/ノミヽソ l' ゙i〈〈(ヽノ'ー''"^´ ~`ヲ^i ,ノ :,ヾ''ー--==:、
ニf‐ナ''チ,r=ゝノ、 ゙い''^',,.ィrー'='ーメ/ ,' ,/′':, i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`ヽ、
( ,r''サ;;;;;;;;;;;,ィ 、.゙ヽ、゙tヾ、ー=''"゙゙~´,ノ ,' / : ノ,ヾ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\,,_
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/人 ':, `ヽ、 `゙゙゙゙´~´ ̄ / ,:' / l;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`゙゙`'''ヽ、,,
,,ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;t ''"゙t ゙;, `ヽ. / ,:' /` /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
,.:ィ'''"~´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙ゝノ\ ゙ヽ ヽ、 _ノ ,' '^,,.ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
,:r'´;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽノヽ、、、 ヾ `''''''"´/ ,' ,.:ィ ''";;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
. /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、 ヽ / r''"/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
800 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:03:56 ID:yByWwD7s0 [5/24]
____
, ´ `ヽ、
/ ゙\
,/゙ ...::::l::l:::::.... u ゙i
,/' -==='::::::::::::::゙===- i …誰だお、こいつに「不遇の剣豪」とかいうイメージつけた奴。
i! γ ヽ U |
i i , ! J l どう見ても人生勝ち組です。
i! i`ー'`ー‐i´ ,i' 本当にありがとうございました。
゙i、  ̄二二 ̄ u ,/'
ヽ、 /゙
/ ヽ
/ \
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、. 。ゝ イ 。ノ| | まったくだ。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | なんでこんな好き勝手三昧に生きた奴が、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 「無念の人」みたいな扱いをされておるのだ。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
801 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:04:27 ID:yByWwD7s0 [6/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) そう、そこだ。
| (__人__)
| `⌒´ノ
| }
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ )
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ (
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,)
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
_____ ━┓
/ ─ \ ┏┛
/ (● ) \\ ・
| (⌒ (● ) |
|  ̄弋_) | そこ?
\ /
> ⊂ヽ∩ <
/" (,_ \. |
.| / \__ノ
802 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:04:58 ID:yByWwD7s0 [7/24]
__
/ ヽ
/ \ 実際、同時代の史料を追う限り、
i \ 武蔵の生涯にこれといった不満は伺えない。
l 、__,ィ、 \ 無論、何の不満もなかった、という訳でもなかろうが、
V ヘ _ノ-、 \ 当時の武芸者全体で見れば、
`ゝ 、___ノ } >、_ __ .相当恵まれた人生を送ったと見て間違いないだろう。
'、丿_ ,. /} // : :/. : 二ニ{ `マ:ヽ ,.- 、
`ヽ 、 /;:' ,.イ / : : :i : : : :.{¨V \:Y / そんな武蔵が、何故、”後の時代になる程”、
__ `-ュ<ィ</ ,ィ'"´ : : : : ∧ \ ∧ { 「不遇の人」「無念の人」扱いされることが
( `、 _/イr;;;;;/У: :`ヽ、 : : : :i { ' 、 ヽ `ト、 ..多くなっていったか…わかるか?
r-、 ヽ ∧、 { : :ノ/〉-{/ : :/ : : : : : :i :〉、 ヽ ',ハ
} r-、 〉、 ヽ `、| :i,';;;;/ : : :/ : : : : : : : ィ:( \ _ヽノ }:ハ
} } {_/ { {、 }λ:|;;;;/ : : /. : : : : : : : : : : ヘ . : : : : r)、:
} } {r-、 ,'⌒ ', /:'〈:'|;/ :./ : : : : : : : : : : :V: :.`ヽ : : : : ._// : :
ヽ}、 .i { r-、 人ュ、 /:λ',:r :./ : : : : : : : : : : : : : :'、: : : : 〉二ニ/ : : :
⌒}、└i 'ト ィ ノノ:.`ヽ、 /. :} : :i : ,' : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ : :{-´ : : : : : :
⌒--へ // : : : : \ r'´`.i : : Y : : : : : : : : : : : : : : : : : : :V : V : : : : : : :
',ヽニノ : : : : : : : :ヽ人ミヾ', : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : :V : } : : : : : : :
___
/ \
/ ─ ─ \ ぶっちゃけ司馬遼先生のせいじゃないのかお?
/ (●) (●) \ あと、直木三十五の「武蔵非名人説」も影響ありそう。
.| (__人__) | __
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ / 【真説宮本武蔵(司馬遼太郎)】
(⌒ / / /
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| \ y(つ__./,__⊆)
| ヽ_ノ |
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | まあ、影響力があったのは確かだろうが、それだけでもなかろう、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | その話にしても、完全な創作という訳ではなく、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| あくまで元になった逸話があってのものだからな。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ 『丹治峯均筆記』や『兵法先師伝記』、
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | 『武公伝』、『二天記』、『昔咄』辺りを見ても、
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、 武蔵が仕官に失敗する話は出てくるから、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、 論ずるとすればそこからだろう。
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
803 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:05:47 ID:yByWwD7s0 [8/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) いずれにせよ、それらは全て、
. | (__人__) 「武蔵の死後に書かれたもの」という点では共通している。
| ` ⌒´ノ 即ち、ある程度俯瞰した位置から武蔵を眺めている訳で、
. | . } .武蔵が「不遇」「無念」だというのは、「全体から見て」そう判断した、と言える。
. ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) つまり、「何か」と比較して、武蔵は「不遇」だという訳だな。
_/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ (
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,)
, -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
/ `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
____
/ \
. / \
. / /) ノ ' ヽ、 \ …あー、そういうことかお。
| / .イ '=・= =・= u|
/,'才.ミ) (__人__) /
. | ≧シ' ` ⌒´ \
/\ ヽ ヽ
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | …ああ、わかった、わかった。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | そういうことだな。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
804 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:06:32 ID:yByWwD7s0 [9/24]
.
γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| そう── .|
乂______ノ
,__ , _ 、 _, .._ 、
_....j|lllll_|lllll_|lョ__ _j|lll|l|llll|:ョ 、
__uョllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll亡uョllllllllllllllllllllllllョllllllllllllllllョョu_
_ullllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllF]lllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllョ_
,,,ョlllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll〔ョlllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllL_
 ̄ ̄ ̄’ ̄ ̄lll ̄ ̄”'lテ ̄"匸 二 ̄""'lllll_ ̄lllll"、lllll" ̄_]ll厂゙゙"ア''llllllll'、
゙゙ゞlll_ _____llll′"lllllL_ `゙lllllj リlr 'lllll!_ョll厂 __llll广
__;]lllllテllll′ ゙゙''lllllョj ]lllllョェ__,三ニ_jllll广′
ulll广 ゙lllll ´~~~~`lllll~~゙lllllニ
~~ ゙゙
γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| 柳生の存在だよ |
乂__________ノ
.
805 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:07:08 ID:yByWwD7s0 [10/24]
/ ̄ ̄\
/ ノ ヽ /\'ー、 ,, ..,、 実際、武蔵が仕官を目指したが、できなかった、
| ( ●)( / .\` 、 . // / あるいは、仕官の話があったが、沙汰止みになった、という逸話には、
. | (__人/ \ヽ、,.// ../ 結構な割合で柳生家が絡んでくる。
| ` / ``77 /
. ヽ / / / / 『二天記』での逸話は、元本である『武公伝』に出てこないし、
ヽ.. / fヽ、/ / , -,./ 『丹治峯均筆記』の記述は
>>745で既に挙げてるから端折るけど、
/./ r-、 ヽ ∨,ノ / .『兵法先師伝記』と『昔咄』だとこんな具合になるな。
|. \ 〈\.\,〉 `, f
| . \ (ヽ ヽ `.. |
| .\ \ ノ
..【兵法先師伝記】
/\ 「先師ノ兵法、天下ニ顯レ、公儀ヘモ上達シ、家光公ノ御師範タルベシトテ、
/. \ 江戸へ被召シ事アリシニ、柳生但馬守宗矩申上ラレケルハ、
V. \ ...... 武藏ト申者ハ、兵法ノ上手ニ候得共、異相ナル者ニテ、
i \、__ 将軍家ノ御師範タルベキ者ニアラズトノ事ナリシカバ、其沙汰止ミケル。
斗‐''"¨ ̄ ̄`ヽ{ //、_ (略)
{、 ヽ /' ゝ> . 兵法ノ御沙汰モナカリシカバ、御暇申上テ又諸國ヲ廻ラレケル」
{ミヽ \ // // ヽ
ヘ: ヽ \ ':/// ´_彡} 【昔咄】
ヘ:. :', \ {,//, /'"´ .「宮本武蔵御かゝへなかりしかば、帰りは木曽路を経て何方へやらん行きしが、
ヘ :':, _ -=====ミヽ|./ /' ... 岐岨の御領分を見て、同伴の人へ語りしは、今度なごやへ入ると仕合をせず、
ヘ :::':,、/´ _,. -====ミゞ斗} ..... あたまから柳生が弟子になりて尾張殿に仕へん事を、
ヘ ::彡'/´ `¨¨¨´ . 無分別にて大兵法を遣ひ、損しぬ。生涯の残念也といひし由。
.. 胸中にいかなる工夫か有りし、いぶかしゝとなん」
807 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:07:57 ID:yByWwD7s0 [11/24]
____
/ _ノ ヽ_\ ご丁寧に江戸と尾張両方かお…。
. / .(ー) (ー)\ その他だと、『丹治峯均筆記』にある黒田家での召抱えの話くらいだけど、
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \ あっちは言い出した本人(黒田忠之)が取り止めたから、
ヽ L |r┬-| | 実質、武蔵の仕官の邪魔をする役は柳生家ばかりになるのかお。
ゝ ノ `ー‐' /
/ / \
/ / \
. / / -一'''''''ー-、.
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 仕方あるまい。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | いずれの文献にせよ、「武蔵は細川家で相応に遇された」ことは
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 記述しておるのだから、「それ以上の待遇」となれば、
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ .それこそ上は柳生家くらいしかあるまいよ。
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
809 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:08:59 ID:yByWwD7s0 [12/24]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ _ノヽ_\ ) ;;;;) まあ、なんにせよ、
| (●)(●) /;;/ 「武蔵が不遇だ」という話は、
. | (__人__) l;;,´ 「柳生(=宗矩)と比較して」という言葉が前に付く訳だ。
| `∩_ノ)━・'
. | |_ノ つまり、「武蔵は天下一である」という前提があって、
/ヽ | |_ そこから発生する「じゃあ何故柳生より待遇が悪いのか」という問いが
| \_/ ノ ヽ .「武蔵不遇説」の発端というところになるな。
|\ /_| |
| \ / _/
____
/ノ ヽ、_\
(●) (● ) \ 無茶苦茶言ってるお。
/⌒(__人__)⌒ \ .そもそも大名の宗矩と牢人の武蔵を比較するのが変だお。
| ) ) u. | 企業の年商と芸術家の年収を比較するのがおかしいのと一緒だお。
\ `ー'´ /
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ ヽ /
\_,,ノ| 、_ノ
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | その比較が通るなら、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | そもそも宗矩に限らず、誰と比べても構わん訳だからな。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| 宗矩どころか、家光と比べて「不遇だ」と言い張るのもアリだ。
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ 馬鹿馬鹿しいにも程がある。
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
810 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:10:01 ID:yByWwD7s0 [13/24]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ そうだな。
| ( ●)(●) 本来、武蔵の待遇を評するに、
| (__人__) 宗矩を引き合いに出すのは筋が通らない。
| `⌒´ノ .そもそもの身分が違う訳だからな。
| }
ヽ } ( しかし、逸話を見ても分かる通り、
_ヽ ノ`ヽ、_ ) 武蔵の評価について、宗矩に代表される柳生家が
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( 引き合いに出されることは珍しくない。
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) .それこそ、その「身分の違い」が肌で理解できていたであろう
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 江戸時代の頃からな。
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ | 何故だと思う?
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 何故かって、お前、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | そりゃ決まってるだろ。
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、|
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
___
(⊃ \
(⊃ _ノ ヽ、_ \ 「柳生」の名が、「大名」である以上に、
(⊃ (ー) (ー) u.\ 「別の意味」を持ってるから…だお?
/| (__人__) |
/ \____` ⌒´ /
( \
\_ | \
ヽ| ト、 ヽ
ヽ | > )
811 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:10:40 ID:yByWwD7s0 [14/24]
/ ̄ ̄\
⌒´ ヽ、,_ \
(●)(●.) | そう。
(_人___) | 宗矩と武蔵、この二人は、大名や牢人といった身分以前に、
'、 │ 同じ時代を生きた「武芸者」だからだ。
} {
!、______ .ィ-ート、 それも、二人ともが日本の武道史全体で見ても、
V/_:_ュ:-:-: ヽ .トップクラスの名声と影響を残した、な。
{ャ< : : : : : : : : :.
/ー-、: : : : : : : : : :'.,
「r'、 / : : : : :`、 : : : : : : : : :'.,
} r'、 ヘ、 / : : : : : : : : : : : : : : : : : : i
i/ ム、} .{ i : : : : : : : : : V : : : : : : : : |
{ い、{ Y : : : : : .\ : V: : : : : : : : |
\ ヽ {|V : : : : : : \V: : : : : : : :|
\ ノ|:.V: : : : : : : : :〉 : : : : : : :|
____
/ _ノ ヽ_\
. / .(ー) (●)\ だから、本来比較される筈のない二人が比較されて、
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \ その結果、「不遇の剣豪・宮本武蔵」というおかしな像が生まれた、という訳かお。
ヽ L |r┬-| |
ゝ ノ `ー‐' /
/ / \
/ / \
. / / -一'''''''ー-、.
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
812 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:11:23 ID:yByWwD7s0 [15/24]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ\ ) ;;;;)
| ( ─) (─)/;;/ .そういう訳だ。
. | (__人__) l;;, .実際、宗矩の待遇が語られる際、
| ∩ ノ)━・' 「剣豪の身で大名の列に並んだ」という形容がされるが、
. | / ノ´ } .これも、柳生家が元々大和柳生庄の領主であることや、
. ヽ / / } 若い頃からの旗本であること以前に、
ヽ/ / ノ .宗矩がまず「武芸者」として見られている、という証左だからな。
/ \
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '.
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '.
| / ネ.π '. } l .そして、「同じ武芸者だから」という一点で比較を始めれば、
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ これだけ対照的な二人はおらんからな。
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶 それが同じ時代に生きていて、
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ 二人して有名人とあれば、尚更だ。
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ } .
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ /
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
____
/ \
/ ─ ─\ 片や将軍家指南役の大名で、
/ (─) (─) \ .当時最大流派の宗家の男。
| u. (__人__) | ___________
\ ` ⌒´ ,/ | | | . 片や生涯誰にも仕えず、師も持たず、
___/ \ | | | 諸国を巡った末、独力で一流を立てた男。
| | / , | | |
| | / ./ | | | …こんな漫画みたいにキャラが立った組み合わせ、
| | | ⌒ ーnnn |_|___________| 比較するなっていう方が無理だお…。
 ̄ \__、("二) ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ _|_|__|_
813 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:12:25 ID:yByWwD7s0 [16/24]
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \ だから、本来比べて語るべきではない二人も、
| .(●)(●) | 一点だけ、比較が妥当な点がある。
. | (__人__) |
| `⌒´ | ) ;;;;) それは兵法だ。
. | | .) ;;;;)
. ヽ } /;;/ 武芸者(兵法者)であるという一点を以て
ヽ ノ .l;;,´ 二人が同じ存在だというのであれば、
. / ∩ ノ)━・' やはり、二人の兵法を比較するのが一番妥当だろう。
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ |
\ /___/
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 兵法比較だと?
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | まさかとは思うが、強さ比較なんぞするつもりじゃなかろうな。
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| さもなくば流派の比較でもするつもりか?
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
. / ̄ ̄ ̄\
. / ノ ' ヽ、 \ 一応、二人の強さ比較と言えば、『渡辺幸庵対話』の
/ '=・= =・= . ヽ 「但馬にくらへ候てハ、碁にて云バ井目も武藏強し」ってのがあるけど、
| (__人__) u. | まあ、あれは、ねえ…。
\ `⌒´ __,/
. / \
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Y ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
(,,) | (,,)
| | |
814 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:13:20 ID:yByWwD7s0 [17/24]
, -- 、
. / ヽ
| ─ ─ 今更、そんな無意味な比較をする訳ないだろ。
l -- --| 常識的に考えて…。
| u (__人__)
| i というか、よりにもよって幸庵対話とか、
rー} ヽ / あれは
>>1が宗矩贔屓というのを割り引いても、
ノ... \゙  ̄「ー.、 .そもそも幸庵の存在自体からしておかしいからな…。
,ィ´ \ ,イヽ 弋 ,ヘ 仮にも史料準拠で話すって言ってる場で、あんなもん使う訳ないだろjk。
,,イ V 〈:::::〉 Vー、 そこまで馬鹿になる気はねーぞ、俺は。
/ l::::! l
. / l::::l !
/ .!:::::l .|
_..-''" ̄ ゙̄''---- ,,,,
/ `'‐、
/ `'、
/ ゙l,
/ !
| . ___、 |
l ., ‐'"゛ '''''''、 |
l . / l |
,' / . 、 ! ! その割には、
/ / 、 l.殺´! .,! | 結構引用する人間は未だにいるがな。
/ ./ l .f゙'‐.,i', ,! |
/ .l ゙l \ ! l゙
./ !.ゞ \ .ヽ l゙ ! 「まあ、ネタとしては面白いからな。
./ | .`ッ', .,r‐/ ! .宗矩からすればいい迷惑だろうが」
./ .! ゛ ./;:;:;l |
./ .r .! ゙‐''''} l
.-'´ . l l、 .、 i ..,,、 | l
/ .!', .!、 `―" ! 、 !
! }.l l-二― ......,,.. | | .|
.| .l l .l;:;:;:;:;:`゙゙''''/ ,! ! |
.l │.,、.ヽ .ゝ ....,,,__./ ! |
! !.〈,,, ゙'-..____,,..-'"l゙ /
! /.、 `''-,,. ,..l゙ ./
', .,' `'、 `''" ̄ ̄ .,! /
816 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:17:05 ID:yByWwD7s0 [18/24]
/ ̄ ̄\
/ .⌒ ⌒.\ _,,
| (●) (●) .| l;l まあ、話を戻せば、これからやるのは、
. | (__人__) .| _,_,|,|_, 冒頭でも書いた通り、「二人の兵法観の比較」だ。
| `⌒´ |, ト-=y 丶
. | } ヽ `i, ̄‐^l 柳生宗矩と宮本武蔵…。
. ヽ } ヾ~ ` i, この二人の兵法思想の精髄である
ヽ ノ _ ヽ、 ;i, 『兵法家伝書』『五輪書』を見比べ、
,,_,i y,ソト,,__ ヽ、 ;i, 宗矩と武蔵の「兵法観」を比較しようという訳だ。
,/r-'"j / / ii, `ヽ、-x,,゜r ;i .こっちは何せ、本人の文章だから使うには申し分ないしな。
,,/'/__.L、 /ヾ、"i `ヽ `;i i,
,/ /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i `、'i iヽ、
_,) ヽ " ネメ、_ii"~ _Yri l, ヽ、
_,,,>t 、ヾ、 ゞ;;/ / ,¬ V⌒l
,y`;,,__ ,i /ii' / r-/| l l
_/^,,, ヘ l /iil / l"v' y } l
v=4⌒ヽ、 j --,,,if /iii| ,, 〈-ヘ_,、 <、 / i|
ヽ, ,, i、 _,,tv /iiiii ム、 / / ヽ、ヽ、_x--ー‐- 、
__,,,l ii Yi___,lk / }iiiiil ヘ __,,,,,,___/ `x'"^ ,,,,, \
^ ̄⌒ヽ ヘ、 ,ノiiiii|、__,,,y,,_,,,/ ヽ、 ,/ ,,,-‐‐ `',, ヘ,、
,,,_ \ ヽ `>- liiiiiiil ¬">-- ヽ ヽ i i/ _,, / } i
"- ,, } / /iiiiiiil / l l l lK ^~' / |
\ーヾ /iiiiiiiil / i i | |i`'ヽーミ_/ /
____
/ \
. / \
. / /) ノ ' ヽ、 \ …一応確認するけど、次から
| / .イ '=・= =・= u| 「やっぱ前提として五輪書の解説が要るから、
/,'才.ミ) (__人__) / 今の話は一旦止めて、五輪書解説篇をやるよ!」とか言い出さないおね?
. | ≧シ' ` ⌒´ \
/\ ヽ ヽ
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / u 殺 | ヽ
/ / イ^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ○ゝ イ○ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | やめろ(迫真)
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、|
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
817 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/02/15(日) 23:17:58 ID:yByWwD7s0 [19/24]
______
/ \-一ヽ、 __r‐- 、
/ __,ノ ヽ、_,7 7 } : : : :\__
| ( ─)(─)/` ‐ / /: : : : : : : : : :` '' ‐-、_ やんねーよ、そんなこわいこと。
| U (___人__)‐-─≦/.:.:.:.:.: : : : : : : : : : : : : :丶、 絶対(本編が)年内に終わらなくなるだろjk。
| ` ⌒´ノ └‐-、__:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : : : : : ヽ
| | `ヽ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : : : :} まあ、随時引用はするし、
ト、 | __,. -<`丶、.:.:.:.:.:.:.:.:.: : : : :/ 解説も入れるが、せいぜいその程度だ。
ハ、.,ヽ., ___ ,__ノ--─一⌒V : : : : : : : : : : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:r´ .それに、比較するのはあくまで
_ ,.-=〈:.:'、`ヽ、___ ヘヽ:.\: : : : : 、: : i:: : : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:/ 伝書から読み取れる「兵法観」で、
_< : : : : ∧ :ヽ /:::ヽ Vヽ:ハ : : : : :ヽ: : : : : : : : : :.:.:.:.:.:.:./ 家伝書と五輪書そのものの比較じゃないからな?
, -‐ '´: : : : : : : : : : :∧、 ∧::::::∧ l: : <:_: : : : :i: : : : : : .:.:.:.:.:.:.:.:_r'´
/: : : : : : : : : : : : : /: : l V !::::{ `!: : : : : : l: : : i:: : : .:.:.:_、-‐''゙´
f : : ヽ : : : : : : : / : : : : l l::::::i l: : : : : /. : : :!.:.:.:/
ゝ: : : i: : : : : : :〈: : : : : : : l {::::::i !: : : : /: : : : :l/
j : : : : i: : : : : : : ヽ: : : : : : ゙、 !:::::::i l: : : :./ : : : : :!
/)
///)
/,.=゙''"/
/ i f ,.r='"-‐'つ____
/ / _,.-‐'~/⌒ ⌒\ なら一安心だお!
/ ,i ,二ニ⊃( ●). (●)\ じゃあ、次から早速始めるとするお!
/ ノ il゙フ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
,イ「ト、 ,!,!| |r┬-|
/ iトヾヽ_/ィ"\ `ー'´ /
.rニYニヽ
//_殺_ j | (”今の時点で既に延びてるだろうが”とは
イ t` !_,` } | 言わぬが花なのであろうな…)
/j ト -. レj
,r'´ ̄`゙} |二二j l|rニ二ト、
〉─7-'´l|jト、`}-イl;|`--l一〈
852 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:02:49 ID:AxSQ8OvQ0 [3/20]
╋━━━━━━━━━━━━╋
┃ 宗矩と武蔵の兵法観比較...┃
╋━━━━━━━━━━━━╋
/ ̄ ̄\
/ ノ ヽ /\'ー、 ,, ..,、 という訳で、これから宗矩と武蔵の兵法観の比較を始める。
| ( ●)( / .\` 、 . // / 前述の通り、用いるのは、
. | (__人/ \ヽ、,.// ../
| ` / ``77 / 『兵法家伝書』
. ヽ / .兵法家伝書 / / / .『五輪書』
ヽ.. / fヽ、/ / , -,./
/./ r-、 ヽ ∨,ノ / .この二冊をベースとする。
|. \ 〈\.\,〉 `, f .あと、場合によっては『月之抄』など他の伝書から
| . \ (ヽ ヽ `.. | 引用することもあるかもしれんな。
| .\ \ ノ
___
/ \
/ ─ ─ \ 随分間が空いたけど、ようやくだお…。
/ (─) (─) \ じゃあ。早速始めるお。
.| u. (__人__) | __
\ `⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ /
(⌒ /五輪書./ /
i\ \ ,(つ / ⊂)
| \ y(つ__./,__⊆)
| ヽ_ノ |
853 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:03:15 ID:AxSQ8OvQ0 [4/20]
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ´ ⌒ まず最初に言うと、
. | ( ●) (●) .「技術」としての兵法に対する認識は、
| (___人__) 宗矩と武蔵に、そう大きな違いはなかったものと思われる。
.| ノ
j |
..ノヽ、 , ノ _
,. ー、一一´:::::::::::::≧ーー"7 i' Y
. / .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.`-、 i l _
/ .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. >-、 | lフ ト、
.::::::::::::::::: !::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ i/ ,.イ 丿
:::::::::::::::::: l::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. v:: l / i'r ´,.ィ
:::::::::::::::::: l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l::: l j 丿r´,.ィ
:::::)::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |::: 八 `チ
___
/ \ _
/ \ / \ // そうかお?
/ (●) (●) ヽ // 無刀を根本とした宗矩と、
| (__人__) |// .二刀を主張した武蔵とでは、
\ `⌒´ // 随分違うように見えるお?
/ ー‐ <ヽ/
|\ \__γ⌒)´、
| \____/゛| \π
| |\[Λ])
| | / /
| | / /
/ // /
/ へ____// /
| /L__) / /
\_ _| У
(____)
854 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:03:59 ID:AxSQ8OvQ0 [5/20]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ `⌒
| ( ●)(●) __ それは、これから話す兵法観に属する話だ。
.| (___人__) / .i それに、それぞれそう主張したことは事実でも、
| ` ⌒´ノ | レ/| 宗矩が無刀で戦うことを是とした訳でもないし、
| |_,-‐、l//. 武蔵にしても、重視したのは二刀で戦うことじゃない。
.人、 厂丶,丶, v´j
_,/( ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ __ノ ここで言うのは、
_, 、 -一 ''"::::::::::::\:::::::::::::::::::::( <"ニ‐-、 「剣を振るう際、心がけるべき事」という
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r /⌒ヽ;;;;;;; ) もっと直接的な話だ。
丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;V/..... ̄ ',;;;;|
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;〈 ;;;;::::::::::... ',;;i
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::\::::;;;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::::. ',
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | ああ、「戦う時のポイント」みたいなものか。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| |
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 「そういうこと」
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
855 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:05:15 ID:AxSQ8OvQ0 [6/20]
/ ̄ ̄\ 二人の話の共通点を具体的に挙げると、以下の点になる。
/ ノ ヽ、.\ 見ての通り、どれも基本となる部分ばかりだ。
| (●)(●) | まとめると、
| (__人__) |
___|__`⌒ ´ | 『常日頃の状態・心のまま戦えるのが最上で、
, --'、 / 丿 相手の心や拍子を読んで、その時々に応じた太刀を出せ』
/ ⌒ ).家伝書 / <
,′ ノ / /三三三三丑 というところだな。
l T´ ..___/ // r'´ ̄ヽ 「常在戦場」といえばそうだが、
ヽ ノ ./丶 // 五輪書(  ̄ l むしろ日常のまま戦えるようにあれ、という感じか。
`'ー'´ | //_____/ _.ノ
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
【兵法家伝書と五輪書における「剣を振るって戦う際の要点」(共通点)】
1:戦うに際し、特別に気を張ったり、力んだりするな。
常日頃の心で戦えるようになれ。
2:動きについても同じで、普段通りの動きを心がけろ。
3:構や太刀筋に捉われ過ぎるな。
基本をしっかり覚えて、そこから応用していけ。
4:相手の動きをよく見て、相手の心を読み、色々仕掛けろ。
5:拍子をよく読め。
敵を拍子に乗らせず、己も乗らないようにせよ。
6:こだわりは捨てろ。
その場その場で即座に判断して動け。
╋━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━╋
856 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:06:05 ID:AxSQ8OvQ0 [7/20]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、. 。ゝ イ 。ノ| | それぞれ引用するとの辺りだな。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| |
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 一応、補足しておくと、
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ ここで引用した箇所は、あくまで抜粋に過ぎん。
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ 詳細が気になるなら、本文を読むのを勧めるぞ。
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
1:戦うに際し、特別に気を張ったり、力んだりするな。
.常日頃の心で戦えるようになれ。
【兵法家伝書】
『何もなす事なき常の心にて、よろづをする時、よろづの事、難なくするするとゆく也』(殺人刀)
【五輪書】
『兵法の道において、心の持ちやうは、常の心に替る事なかれ』(水之巻)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2:動きについても同じで、普段通りの動きを心がけろ。
【兵法家伝書】
『歩みは、早きもあしく、遅きもあしゝ。常のごとくするすると何となき歩みよし』(活人剣)
【五輪書】
『惣而兵法の身において、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事肝要也』(水之巻)
『足づかひは、ことによりて大小・遅速はありとも、常にあゆむがごとし』(水之巻)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3:構や太刀筋に捉われ過ぎるな。
基本をしっかり覚えて、そこから応用していけ。
【兵法家伝書】
『三学九ヶなどと云ふは、大体を云ふ也。
此道をよく得てより、太刀の数を云ふべからず』(進履橋)
【五輪書】
『構はありて、構はなきといふ利也。
先ず太刀をとっては、いづれにしてなりとも、敵をきるといふ心也』(水之巻)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
857 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:07:24 ID:AxSQ8OvQ0 [8/20]
___
/ \ どちらかというと、
/ ─ ─ \ 家伝書は「自分自身の心の鍛錬」に、
/ (●) (●) \ 五輪書は「時々の状況への対処」に、
.| (__人__) | __ .それぞれ多めに文章を割いてるけど、
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ / .もう一方も蔑ろにしてる訳でもないお。
(⌒ / / /
i\ \ ,(つ / ⊂) …確かに、実際に剣を振るって戦う際の要点だけで言えば、
| \ y(つ__./,__⊆) 言ってる内容はかなり似通ってるお。
| ヽ_ノ |
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4:相手の動きをよく見て、相手の心を読み、色々仕掛けろ。
【兵法家伝書】
『わが心のうちに油断もなく、敵のうごき、はたらきを見て、
様々に表裏をしかけ、敵の機を見るを、策を帷幄の中に運らすと心得べし』(進履橋)
【五輪書】
『戦の場において、敵の心を計り、我が兵法の智力を以て、
敵の心をそここことなし、とのかうのと思はせ、おそしはやしと思はせ、
敵うろめく心になる拍子を得て、慥に勝つ所を弁ゆる事也』(火之巻)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5:拍子をよく読め。敵を拍子に乗らせず、己も乗らないようにせよ。
【兵法家伝書】
『敵の太刀のつかひにくき様に打つべし。
つくるもこすも、無拍子にうつべし。惣別のる拍子は悪しき也』(殺人刀)
【五輪書】
『敵の拍子に随ひ、いそぐ時、静かなる時の、身の位を得て、たらず、あまらず、
足のしどろになきやうにあるべき也。大分の兵法にしても、足をはこぶ事肝要也。
其故は、敵の心をしらず、むさとはやくかゝれば、拍子ちがひ、勝ちがたきもの也』(風之巻)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6:こだわりは捨てろ。その場その場で即座に判断して動け。
【兵法家伝書】
『心が一所にとどまりたらば、兵法にまくべき也。転ずる所に残りたらば、散々也』(活人剣)
【五輪書】
『惣而、太刀にても、手にても、ゐつくといふ事をきらふ。
ゐつくは、しぬる手也。ゐつかざるは、いきる手也』(火之巻)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
859 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:09:28 ID:AxSQ8OvQ0 [9/20]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 無論、完全に同じ訳でもないし、
| ( ●)(●) 「無刀之巻」のように家伝書にしかない記述もあれば、
.| (__人__)_ 「風之巻」の他流批判のように五輪書にしかない記述もある。
| `⌒´. ̄ だが、先ほど挙げた共通する部分を否定するものじゃない。
.| ノ
ヽ .,ノ )/´二⊃ ここから見て、兵法者としての宗矩と武蔵は、
> /"/ '‐、ニ⊃ キンッ 実際に剣を以って戦う際の要点については、
./⌒ヽ l ´ヽ〉〆ヽ かなり近い知見を持っていたと考えていいと思う。
( ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ
.\ / / { /
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', というより、一流に達した兵法者であれば、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 概ねこの知見で共通していたのではないか?
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| |
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| それを文章に書き起こし、後世に遺したことが、
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ .二人の特異な点であって、内容だけで言えば、
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ かなり普遍性の高い話ではあるしな。
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
860 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:11:27 ID:AxSQ8OvQ0 [10/20]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ .まあな。
| ( ―)(―) シュポ .ただ、情報の共有化が進み、統合・整理された近現代でなら、
.| (__人__) チリチリチリ…… 二人の認識が普遍性の高いものだと理解ができるが、
| .,ノ )/´二⊃ 当時は、そこまで情報が共有化されていた訳でもない分、
人 /"/ '‐、ニ⊃ .個人の知見が大きなウェイトを占めていただろうからな…。
./ ヽ l ´ヽ〉〆ヽ
( ⌒ヽ/ __人〉ヾ_ノ,ゞ それなりに名声を得ていた武芸者でも、
.\ / / { / 宗矩や武蔵と異なる知見を持った者も結構いたのかもしれん。
____
/_ノ ヽ\
/ ( ●) (●)、 五輪書の「風之巻」なんか、
/::::::::⌒(__人__)⌒\ そういう他流に対する批判の章だお?
| |r┬-| | それ以外でも、武蔵はかなり他流に対して批判的だし、
\ `ー'´ / そうだった可能性も結構あると思うお。
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ
861 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:12:15 ID:AxSQ8OvQ0 [11/20]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ .___
| ( ー)(●) ( ⊂⊃ ) かもしれんが、その辺りは推測にしかならないから、
. | (__人__) ホワッ ̄ ̄ ここで止めておいて、本題に戻ろう。
| ( ( ノ
.l^l^ln ⌒ } さて、ここまで二人の認識の共通点を挙げたが、
. ヽ L } ∩ ノ)━・ 実は一点、二人が全く逆の事を説いている箇所がある。
ゝ ノ ノ / _ノ´ それも、かなり根本の部分でだ。
/ / \/ |
/ / ' |
. / / |ヽ__ノ
ヽ__ノ
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | ほう。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | ここまで共通点を挙げておいて、ひっくり返すか。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| .そりゃ一体なんだ?
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
862 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:12:53 ID:AxSQ8OvQ0 [12/20]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ _,ノ `⌒ ) ;;;;) ここだよ。
| .( ●)(●) /;;/ 「構」の意義についてだ。
. | (___人__) l;;,´
| `-=━・ 【兵法家伝書】
.| | 『惣別かまへは敵にきられぬ用心なり。
人、 | 城郭をかまへ、堀をほり、敵をよせぬ心持也。
,イ:. ト、ヽ、 __ ,_ ノ .敵をきるにはあらず』(進履橋)
,. -ーー -‐ ´:::::::::::::::::::::::::::::7
/..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ト、 .【五輪書】
.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. \、_ 『構五つにわかるといへども、皆人をきらん為也』(水之巻)
::::::::::.\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... ヽ
:::::::::::::...ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...ヘ、 宗矩は構を「切られぬ為のものだ」としているのに対し、
:::::::::::::::::...ヽ::::::、-─────- 、_,. --──ー、 .武蔵は構を「人を切るためのものだ」と明言している。
::::::::::::::::::::::::::::// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー´ ̄ ̄ ̄ ̄/ 宗矩は、重ねて「敵をきるにはあらず」とまで言ってるんだから、
:::::::::::::::::::::::::// / / / この点については、二人の認識はまさしく正反対だと言える。
:::::::::::::::::_//__ ./ / /l _
:::::::::::::::{ _____ `ヽ / / /:::.l / /
::ー::::::{ _____}`'ー'´ ./ / // ~""''' ‐- ...,,__/ /
:::::::::/ _____} ./ / // // /
、::::/ ____} / / // // ,/´)
:::::/ ̄ ̄ ̄ヽ ./ / // // L,.-'´}
/ ヽ─-、./ /,.ー// // ,.-'´ ./
l ヽ:::::::::::::::::::// // / ̄ ̄ ̄ヽ
ヽ::::::::::::::// //,./ ヽ
ヽ::::::::// ,.</ l
ヽ ̄~""''' ‐- ...,,__< // /
863 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:13:58 ID:AxSQ8OvQ0 [13/20]
. / ̄ ̄ ̄\
. /─ ─ \ …確かに、見間違いようがないくらい正反対だお。
/ (●) (●) ヽ なんで、さっき紹介しなかったんだお?
| (__人__) u. |
\ `⌒ ´ __,/
. / \
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Y ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
(,,) | (,,)
| | |
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 理由としては二つある。
| (__人__) 一つは、構の「意義」については正反対だが、
| `⌒´ノ 具体的な構え方そのものには、それほど大きな違いがなさそうだということ。
| } そして、もう一つは、この違いが
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) 「二人の兵法観の違いに直結する箇所だから」だ。
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ (
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) つまり、二人の兵法観について話をするのに、
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 ちょうどいい導入になるからだよ。
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
864 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:14:39 ID:AxSQ8OvQ0 [14/20]
_..-''" ̄ ゙̄''---- ,,,,
/ `'‐、
/ `'、
/ ゙l,
/ !
| . ___、 |
l ., ‐'"゛ '''''''、 |
l . / l |
,' / . 、 ! ! なるほど…。
/ / 、 l.殺´! .,! | この「構」を「兵法」に置き換えたとすれば、
/ ./ l .f゙'‐.,i', ,! | 二人の主張の違いが、より明確に浮き上がってくるな。
/ .l ゙l \ ! l゙
./ !.ゞ \ .ヽ l゙ ! 「斬られぬ」ことを重視する宗矩、
./ | .`ッ', .,r‐/ ! 「斬る」ことを重視する武蔵、
./ .! ゛ ./;:;:;l |
./ .r .! ゙‐''''} l これは確かに兵法観の違いと言えるな。
.-'´ . l l、 .、 i ..,,、 | l
/ .!', .!、 `―" ! 、 ! …で、違うのはこれだけではあるまい。
! }.l l-二― ......,,.. | | .| そろそろ本題に入ってはどうだ?
.| .l l .l;:;:;:;:;:`゙゙''''/ ,! ! |
.l │.,、.ヽ .ゝ ....,,,__./ ! |
! !.〈,,, ゙'-..____,,..-'"l゙ /
! /.、 `''-,,. ,..l゙ ./
', .,' `'、 `''" ̄ ̄ .,! /
! .i', ゙'y. .._.. ! /
| ./ ヽ ゙',゙'---ッ'" ! /
| / ..l. ..l, / .l ./
l ,i', l .li′ .! ./
// \ .! ! l ./
〃 ヽ. ! ! :! . /
l′ ヽ| .l | ./
.゛ ! ! /
l′
865 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:15:33 ID:AxSQ8OvQ0 [15/20]
, -───-= 、
{:.:.. ヽ / \
ヽ..:.⌒ヽ、、 ノ / \
`ー⌒ヾ( / ヽ おう。
_.,..::::..ノ.:)i ', .前置きが少し長くなったが、ここからが本番だ。
.:.:::"´....:.:.:.:..:′l 、 l 伝書から読み取れる「兵法観」…即ち、
.i;;;;;:"´ l _ノ'′ `、 |
\\ ,. -‐'fフ i .(● ) "ー-- / 「兵法とは何か」
\\r‐´r‐、 l (● ) / 「何のために兵法を用いるのか」
ノ \\」 .l; j /
i _ _ .) ,'‐' ヽ-‐'"ヽ. ) / という、兵法の意義や目的について、
! `{ ノ:.:. j ` ー-`ー-一'′ /、 宗矩と武蔵の、それぞれの認識と、
| ー ― 、}:.:.:.:.:. ヘヾ \,r'⌒ヽ /ノ.:.\ そこに至った経緯について、話していくとしよう。
l ,.-r /.:.:.:.:.:.:. iヘ (´ `) /.:.:.:.:.:.:.\
/i! 〕〈.:.:.:.:.:.:.: /`i -=- ゝ,__,ノ´/.:.:.:.:.:.:.:.:.:..\
866 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:16:57 ID:AxSQ8OvQ0 [16/20]
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒.\ _,, まず、「兵法家伝書」「五輪書」では、
| (●) (●) .| l;l
. | (__人__) .| _,_,|,|_, 「兵法とは何か」
| `⌒´ |, ト-=y 丶 「何のために兵法を用いるのか」
. | } ヽ `i, ̄‐^l
. ヽ } ヾ~ ` i, この二点について、それぞれ以下のように述べられている。
ヽ ノ _ ヽ、 ;i,
,,_,i y,ソト,,__ ヽ、 ;i, 【兵法とは何か】
,/r-'"j / / ii, `ヽ、-x,,゜r ;i .兵法家伝書 : 本来使われない方が良いもの(=不祥の器)だが、
,,/'/__.L、 /ヾ、"i `ヽ `;i i, 悪を殺し、人を活かすために必要になるもの
,/ /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i `、'i iヽ、 五輪書 : 武士が修めるべきもの
_,) ヽ " ネメ、_ii"~ _Yri l, ヽ、
_,,,>t 、ヾ、 ゞ;;/ / ,¬ V⌒l 【何のために兵法を用いるのか】
,y`;,,__ ,i /ii' / r-/| l l 兵法家伝書 : 治国平天下のため
_/^,,, ヘ l /iil / l"v' y } l 五輪書 : 戦いに勝ち、名を上げ、身を立てるため
v=4⌒ヽ、 j --,,,if /iii| ,, 〈-ヘ_,、 <、 / i|
ヽ, ,, i、 _,,tv /iiiii ム、 / / ヽ、ヽ、_x--ー‐- 、
__,,,l ii Yi___,lk / }iiiiil ヘ __,,,,,,___/ `x'"^ ,,,,, \
^ ̄⌒ヽ ヘ、 ,ノiiiii|、__,,,y,,_,,,/ ヽ、 ,/ ,,,-‐‐ `',, ヘ,、
,,,_ \ ヽ `>- liiiiiiil ¬">-- ヽ ヽ i i/ _,, / } i
"- ,, } / /iiiiiiil / l l l lK ^~' / |
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【兵法家伝書】
| |兵| . |_| 『弓矢・太刀・長刀、是を兵を云ひ、是を不吉不祥の器也といへり。
| |法| . |_| 其故は、天道は物をいかす道なるに、却而ころす事をとるは、実に不祥の器也』(殺人刀)
| |家| .|_| 『兵法は人をきるとばかりおもふは、ひがごと也。人をきるにはあらず、悪をころす也。
| |伝| .|_| 一人の悪をころして、万人をいかすはかりごと也』(殺人刀)
| |書| .|_| 『乱れたる世には、故なき者多く死する也。乱れたる世を治めむ為に、
|.  ̄ .|_| 殺人刀を用ゐて、已に治まる時は、殺人刀即ち活人剣ならずや』(活人剣)
|________.|_|
└───────
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【五輪書】
| |五| . |_| 『夫兵法といふ事、武家の法なり。将たるものは、とりわき此法をおこなひ、
| |輪| . |_| 卒たるものも、此道を知るべき事也』(地之巻)
| |書| .|_| 『武士の兵法をおこなふ道は、何事においても人にすぐるゝ所を本とし、
|.  ̄ .|_| 或は一身の切合にかち、或は数人の戦に勝ち、
|. .|_| 主君の為、我が身の為、名をあげ身をたてんと思ふ。是、兵法の徳をもつてなり』(地之巻)
|. .|_|
|________.|_|
└───────
867 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:19:21 ID:AxSQ8OvQ0 [17/20]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | こうして比較すると、全然違うな。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 技法的な面では結構共通する部分があったが、
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| .兵法を用いる際の思想では、ここまで違いが出るか。
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
____
/ \
/ .ノ ' ヽ、\ (兵法を)使わずに済むならその方がいい、という宗矩と、
/ (●) (●) \ 武士ならば勝つために兵法を修めるべきだ、とする武蔵、
| (__人__) | .なんだってここまで違うんだお?
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
868 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/03/15(日) 23:20:51 ID:AxSQ8OvQ0 [18/20]
> ・''"´ ̄ ̄ ̄`゙'''<
.,。イ´ `メ、
, イ ゙メ、
,イ ':,
.,イ ―――''" ゙''――――‐ ':, この違いの理由となった事項は色々ある。
,イ ':, それはこれから説明するさ。
. | / ヽ ./ ヽ |
. | .l______l l________l .| …だが、その前に念を押して言うが、今回の話は、
. | .', 夊三ソ / ', 夊三三ソ l ..| 二人の兵法観のどちらが正しいとか、間違っているとか、
. | .ゝ イ ゝ、 / .| そういう話をするつもりは毛頭ない。
. | |
. | ,' ヽ | 創作などで描かれがちな、
. | .l l .l |
. | .ゝ、__人___ノ | ”「活人剣」「政治の剣」の宗矩VS「殺人剣」「実戦の剣」の武蔵”
. | /../ |
. | ./../ | という対立イメージを一旦離れ、
. | /../ | .実際の二人が、どのような兵法観を持ち、
', /../ .ィ彡 ̄ミヽ 彡三ミミヽ .,:' .また、何故その兵法観を持つに至ったかを推論するのが、今回の話だ。
\ ./../ ,ィ彡'⌒ヾ ヾ、 _ ,.イ
.ヽ .ミ三彡' `ー ' ./ その結果、読み手が感じる是非は、個々人が判断する事だから、
>、____________/ この話で、どちらが正しいとか優れているとかいう結論を出すことはない。
/ ,' ', \ そこは了承しておいてくれ。
/ .,' .______、
/ ,' .| .ShortHope | ':,
/ .,' r┴―、________|_',
.,' .: / __∠_ ( ヽ
,' .l 。イ .__) ( ̄
901 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:16:15 ID:.aPoVO2w0 [2/21]
/ ̄ ̄\
/ ⌒ ⌒ \
| .(●)(●) | さて、兵法の技法的な面では大きな違いはないように見えた二人が、
. | (__人__) | 何故、兵法の運用に際しては、真逆と言っていい考え方になっているのか。
| .`⌒´. | ) ;;;;)
. | | .) ;;;;) 理由として挙げられる要素は2つあると思う。
. ヽ } /;;/
ヽ ノ .l;;,´ ・ 伝書が書かれた際の「状況」
. / ∩ ノ)━・' ・ 宗矩と武蔵、二人の「経歴」
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ |
\ /___/
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 「状況」と「経歴」か。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 確かに、二人を取り巻く状況や経歴は
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 随分違うが、ここまで極端な差が付く程なのか?
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
902 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:20:50 ID:.aPoVO2w0 [3/21]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ (( ああ、これだけ違いが出るのも無理はない程度にな。
. -、 .| (● ) (● ) | ノ' まず、「状況」の方から説明をしていこうか。
ヤ ', .| (___人___) .| ,i'
i. l .,.-、 .| ` ⌒ ´ .| .::. 【それぞれの伝書が書かれた際の状況】
.', j / / .| ____/./
ノ_..ヽ-、′,' .', (____././ニ`、 ・兵法家伝書
.l .___ ヽノ. __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` { ⇒ 主君(家光)の求めに応じて執筆。
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _ .記述に際し、沢庵和尚の助言を求めた。
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ ・五輪書
./ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l .⇒ 己の兵法を後世に遺さんとして執筆。
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l .特定の誰か宛てではなく、基本独力。
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '. 主君に求められて書いた宗矩と、
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '. 自分が書きたかったから書いた武蔵、というところか。
| / ネ.π '. } l
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ 一応、「地之巻」では、
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶 『今世の中に、兵法の道慥(たしか)にわきまへたるといふ武士なし』
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ } . という記述があるが、老人が
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ / 「わしの若い頃に比べて最近の若い奴は…」と言い出すのは
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´ いつの時代も、どこの地域でもあることだからな。
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧ それも執筆を後押しする一因だったかもしれんが、
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ .根本的には、「自分の兵法を後に遺したい」という欲求が
/// `ー-‐ 7´ムイ: `ヽ ! |ヽ`ハ///`// |/////'> 五輪書執筆の動機だったのだろうな。
____
/ \ あと、五輪書執筆時の武蔵は、あくまで客分だから、
/ ⌒ ⌒ あまり「武士たるものはこうあるべき」みたいな「べき論」は
/ ( ●) (●)' ∫ 表に出しづらい部分もあったんじゃないかお?
| (__人__) | ∬ 丁重に扱われてるとは言え、結局は細川家にとって部外者なんだし。
\ ` ⌒´ .| ̄|
____/ ー‐ '-|_|) その辺で言うと、形見分けの時、五輪書の草稿を、
| | / / __/ 藩の世話役の寺尾求馬助じゃなくて、寺尾孫之允に渡したのも、
| | / / | .孫之允が牢人だったから、という見方ができるかもしれないお。
| | (  ̄ ̄ ̄⌒ヽ
903 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:22:19 ID:.aPoVO2w0 [4/21]
__
/ ヽ
/ __,.ノ 、
| ( ●)( 宗矩にしても、
| (__ノ`, 自身の兵法思想を後世に遺したい、という欲求があったのは、
| ン′ 家伝書の記述(※1)を見ても間違いないんだが、
_ノ `、 7 この時期に書いた理由としては、
,イ:. ヽ、<ヽ,、___ ノ やはり、「主君に求められたから」というのが大きいわな。
,. -ーー -‐ ´:::::::::::::::::::::::::::::7
/..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: く'、 まあ、将軍家の兵法指南役なんだから、当たり前だが。
. { :::::::::::::::::::::.ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. 、_
'| ::::::::::::::::::::::..`、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::..`ヽ
'| ::::::::::::::::::::::::::::i_::::::::::::::::::::::::::::::::::::.ヽ::ゝ ※1:「殺人刀」
ト、:::/ / ̄`` ハ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!:::::::.ヽ 『今此三巻にしるすは、家を出でざる書也。
`,ヘ ´:::::::::::::::::. ハ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::_,rー'、 しかあれど、道は秘するにあらず。
}:,∨ :::::::::::::::::: ト、:::::::::::::::::::::::::>< ̄\::..\ 秘するは、しらせむが為也。
. }:::∨::::::::::::::::、-''゙~ ̄ ̄ ̄ ̄:::::::::...\ ム:::::ヽ .しらせざれば、書なきに同じ。子孫よく之を思へ』
_,,..-―‐-..,,_
,,-''" `ヽ、
/ l| \
/ U .ヽ あの時の家光の催促の手紙(※2)は、
,' l ヽ ほとんど脅迫に近い内容だったし、
l ____l ヽ-―‐tイ''"´ ',‐-、 .あそこで家伝書にある兵法を説かなかったら、
,-''"| `′ `′ .〃 .lヽ .'., 柳生家がどうなるか分かったもんじゃないから、しょうがないお…。
| l'´.', ≡≡/ ヽ≡≡彡 ,' ヽヽ_
/ | .'., ( .,、 ) / ./ ヽ、 実際、青山忠俊みたいに、家光の勘気を蒙って
/ \ ヽ、 ` ̄ ´ `  ̄´ / / _,,..-' 改易食らった人間もいるんだし。
{ `''-‐"ヽ-..,,__ __./ ̄ ̄´ .,,..イ ∨
/.T ‐-..__ _.ヽ ̄ ̄ ̄/,..-――‐'" / ∨
※2:寛永六年~九年頃のものと見られる家光からの書状(以下、抜粋)
『此うへにても、へいほう申しあけぬについてはたしましんしうのとほり、やうにもたつましきと思ひ候。
是程兵法しうしんの所を但馬よくしり、其上にてもなりしだいとおもはば、
いままでのねんごろも水になるとおもふべし。此一ツ書之通をゑとくし、ためを思ひ、
しんしつにへいほう、ねんを入申あくるにおいては、たじま儀はゆふにおよばづ、
左門其ほかの子供まて但馬はてたるのちにも、しょさいすべからず』
(訳)『これを読んだ上で、まだ兵法をちゃんと教えないのなら、お前は役立たずである。
これほど熱心に稽古している余のことを知った上で、なお今まで通りにするなら、
今まで大切にしてやったことは全てなかったことになると思え。
しかし、この書にある余の思いを知り、真実に心を込めて兵法を教えてくれるなら、
お前は言うに及ばず、左門や他の子供も、お前が死んだ後も大切にしてやるぞ』
※この家光の手紙は長いので全文は以下参照
【やる夫で学ぶ柳生一族 その27(解説)】
http://tagenmatome.blogspot.jp/2009/10/27_11.html904 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:23:39 ID:.aPoVO2w0 [5/21]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | さっきの話、別の言い方をすれば、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 伝書を書く際の「状況」について、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、|
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ ・ 人間関係や家の事などを気にする必要があった宗矩
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\. ・ そういうものをほぼ気にする必要が無かった武蔵
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、 こういう分け方もできる訳だな。
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \ そうだな。
(●).(● ) |. そして、だからこそ家伝書には、内容とは別に、
(__人___) .| 「それを書くことによって起こる影響」という要素もあるんだ。
'、 |
| | これは、「後世への影響」などの類ではなく、
,. -ーー| /レ、 .より直接的な「宗矩が家伝書を書いた目的」というものだな。
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._ .具体的に挙げると、この辺りになる。
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ 【宗矩が兵法家伝書を書いた目的】
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ 1 : 柳生家/江戸柳生系新陰流の安泰・発展
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j 2 : 沢庵和尚の推挙
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: / .3 : 家光の教化
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: /
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: / 無論、 前提として、「自分の兵法を後世に遺す」という目的もある訳だが、
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / わざわざ伝書としてこの時期に書く目的となると、こうなるな。
____
/ \
/ ─ ─\ その辺りは、正式な意味で主家を持たず、
/ (●) (●) \ 「客分」「隠居」といった立ち位置で組織に接した武蔵にはない要素だおね。
| (__人__) |
./ ∩ノ ⊃ / ぶっちゃけ、仮に五輪書が完成しなかったとしても、
( \ / _ノ | | .それで誰かが困るような事はなかっただろうし。
.\ “ /__| |
\ /___ /
905 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:24:50 ID:.aPoVO2w0 [6/21]
/ ̄ ̄ \ (
/ _,.ノ `⌒ ノノ まあな。
| ( =)(=)(,ヽ、 (( で、今挙げた3つの項目のうち、
.| U (___人__) ,r__i____ ノ 「1:柳生家/江戸柳生系新陰流の安泰・発展」については、そのままだな。
| √丶丶丶┬─'"
| | ) j 家光は自分の兵法の腕が上がらないことにかなり焦れていたし、
.人、 ヽ´ / この頃だと、十兵衛の謹慎もまだ続いていた。
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r .そこに、あんな手紙が出されたとあっては、そりゃ対処はいるだろう。
_, 、 -― ''"::::::::::::\::::::ー-- く / ⌒ヽニ-、 宗矩はここで家光を説き伏せ、納得させる必要があった。
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;| …まあ、結果を見れば大成功だった訳だが、
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;i 書いてた当時の宗矩からすれば、冷や冷やものだっただろうな。
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | もし家光の納得が得られず、勘気を蒙ることがあれば、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 下手すれば家は改易、流派も大打撃を受ける可能性があっただろうからな。
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| そりゃそうだろう。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ 栄光と破滅、どちらに転ぶかの瀬戸際だった訳だ。
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
906 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:25:47 ID:.aPoVO2w0 [7/21]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ まったくだ。
| ( ●)(●) そして、次の目的である「2:沢庵和尚の推挙」については、
. | .(__人__) 若干、
>>1の推測が混じる話ではあるが、
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ
.l^l^ln } `‐= ) 『家伝書に沢庵の教えを引用したのは、
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;) .家光に沢庵の存在をアピールする為』
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/ という面があったんじゃないかと思うんだ。
/ / \ .l;;,´
. / / |ヽ、二⌒)━・'
ヽ__ノ
_____
/ ― \ アピール、かお?
/ノ ( ●) \ 徳川実紀にも宗矩が兵法上達にかこつけて、
. | ( ●) ⌒) | .家光に沢庵和尚の赦免を訴えた話(※)があるけど、
. | (__ノ ̄ / .あれとはまた別なのかお?
. | /
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
※ 「徳川実紀」正保3年5月28日
『宗矩いまは聞えべき法はみなつきぬ。この上は御心にてをのづからその妙をば得させ給ふべし。
ただし宗矩若かりしとき禅僧にちなみ、悟道の要旨を聞いて頓に道にすすみたりと覚えし事の候ひしと申しければ、
さらば其の僧めせとて仰せられしに、済家の一派宗峰の遠孫沢庵宗彭を薦挙したり』
907 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:26:44 ID:.aPoVO2w0 [8/21]
/ ̄ ̄\
/ _ノ ヽ_
| (●)(●) その逸話と今回の話の根っ子は一緒だよ。
. | (__人__) 宗矩は、家光の相談役として、沢庵和尚の推挙を考えていたと思われる訳だが、
| `⌒´ノ ) ;;;;) そのためには、まず家光に、和尚への興味を持ってもらう必要があった。
. | } .) ;;;;)
. ヽ } /;;/ だから、兵法にかこつけて、
ヽ ノ .l;;,´ 家光に和尚の存在をアピールした訳で、
. / ∩ ノ)━・' それが逸話という形で出たのが、実紀の記述であり、
( \ /|_ノ ヽ .伝書として出ているのが、家伝書での記述ということだな。
. \ "" /_ノ |
\ /___/
r‐ 、
iゝ::j __
Y⌒ヽ \ ., ≦´ :ミ¨¨ミ::.、
八 __ .>--‐==ミ ;.
i⌒V::::〉 .ィ--‐‐ ' ,x: __;j≦: : 、 :.
.八. `Y-‐=< / // `ヽ:ハ 家伝書での記述だと、この辺りか。
( __`¨´乙::ノ イ ;イ ;/ 、 殺 i |
ト`^ ´て^リ 彡' ' /ヾ≧.、 L.k.| | 『法の師の示しをうけて爰に記す者也』(殺人刀)
|::::ー-==イ|-‐ー=彡′ ; ,ハ、  ̄.´ f ̄ 从| 『さる智識の示されける、兵法におもひあて、爰に記し置く者也』(活人剣)
|:::::::::::::::::八__三_ ;彡'//∧ .、_ノ , j′ |
l:::::::::::::::::::::::⌒ヽ ` ≪///∧ .ニニ ./ : :.リ 確かに、『不動智神妙録』とも共通する箇所について、
∧:::::::::::::::::::::::::::::::\ \しヘヽ、.......ィ′.: ′ 自身の独創ではなく、師僧による教示があったことを明示しているな。
';:::::::::::::::::::::::::::::::::::\ ヽ. てt`¨: : :/ 、--‐‐===‐<
゙ 、:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ i:\ 彡イ///,ハ ⌒ヽ、 ヽ だが、個人名を避ける記述をしているのは何故だ?
\:::::::::::::::::::::::::::::::: >r'':::::::::.. `ヽ/ソ''"¨´ .\ ..',
/ ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::| 弋:::::::. ';::.. `ヽ ',\ ',
/ ∧:::::::::::::::::::::::::ノ `ヾj 弋:::. ', '、:::\}
, ´ / ∧:::::::::::::::::,. く 、 `ヽ: i ∨:::'
.///,∧‐--‐ ' .\ ';\ `::. | .i'.
908 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:27:40 ID:.aPoVO2w0 [9/21]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ ((
-、 .| (● ) (● ) | ノ' そいつは、当時、和尚が赦免された直後だったことへの配慮と、
ヤ ', | (___人___) .| ,i' 家光にアピールする上でのテクニックが半々ってところだと思う。
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::.
', j / / .| ____/./ 赦免されたとはいえ、まだそれほど日も経ってないから、
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 直接名を挙げると、「幕府に歯向かった者を推挙するとは何事!」と
. l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` { .崇伝辺りから批判される危険もあり得ただろうし、
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _ 同時に、個人名をわざとぼかす事で、家光の興味を引く、という
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\ テクニックとしても使った、というところだな。
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
___
/ \ ああ、個人名をわざとぼかすことで、
/ ─ ─ \
/ (●)(●) \ 「但馬。この”法の師”とは何者だ?」
| (__人__) |
>  ̄` < と家光の方から尋ねさせて、
/ ー‐ \ 直接和尚の事を言上できるようにした訳かお。
/ 、 ,.-―、 |
| | / 、 ヽ | | これなら、そのまま名前を挙げるより家光の意識に残りやすいし、
,ヽ. / 人 !i l |..、-―´⌒. | 批判に対しても、「上様からのお尋ねであった故…」と
_____|_\ /_|::rYロ::| ___/___ .言い訳も立つって訳だおね。
`ー´ .|::`^゙´:|
 ̄ ̄ …この辺りのやり方は流石だお。
⊂ニ⊃
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | ある意味、会話における兵法の応用だな。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 誘いをかけて、家光に太刀(問い)を出させ、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| そこを越して、打つ(自分の言いたいことを話す)訳だ。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ 結果、宗矩の目論見通り、沢庵が家光の師僧となったことまで踏まえると、
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | .家伝書で説いた内容の実践とも言えるな。
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
909 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:28:13 ID:.aPoVO2w0 [10/21]
/ ̄ ̄\
/ ノ ヽ /\'ー、 ,, ..,、 そして、「3 : 家光の教化」だが…こいつはちとややこしい。
| ( ●)( / .\` 、 . // /
. | (__人/ \ヽ、,.// ../ 家伝書(の兵法)を家光に示す事で、
| ` / ``77 /
. ヽ / / / / ”「大将(に相応しい兵法)とはこういうものだ」と家光に教示する”
ヽ.. / fヽ、/ / , -,./
/./ r-、 ヽ ∨,ノ / というのが家伝書を書いた目的のひとつだった、という話で、
|. \ 〈\.\,〉 `, f .これ自体は、そもそも家伝書が家光に向けたものであることを踏まえれば、
| . \ (ヽ ヽ `.. | 当然の話なんだが、「では、どの程度影響があったか?」となると、
| .\ \ ノ .幅が広がり過ぎるから、なんとも言いづらいんだな。
_____ ━┓
/ ― \ ┏┛
/ノ ( ●) \ ・ どういうことだお?
. | ( ●) ⌒) | 実際、家光は家伝書で示された兵法で
. | (__ノ ̄ / .納得した訳だから、それでいいんじゃないかお?
. | /
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
910 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:29:28 ID:.aPoVO2w0 [11/21]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ _ノ ヽ\ ) ;;;;) まあ、そりゃそうだが、
| ( ─) (─)/;;/ それだと「1」だけ挙げれば事足りるからな。
. | (__人__) l;;,
| ∩ ノ)━・' ここでわざわざ分けたのは、
. | / ノ´ } 「柳生家と自流派を守るだけではなく、将軍としての家光を教え導く」
. ヽ / / } という目的があったんじゃないか、という話なんだよ。
ヽ/ / ノ
/ ヽ
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | ふむ…その論拠はなんだ?
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 理由も無しに思いついた訳ではあるまい。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
911 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:30:26 ID:.aPoVO2w0 [12/21]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ `⌒ ああ。
| (● )(●) ノ' 家伝書は、その前提となる序盤に、
| (___人__) rニi ,i'
| ` ⌒´ノ .| レ..;::. ・こういうことは誤りであるからいけない
| |_,-‐、l// ・こういうことにならぬよう気をつけるべきである
人、 厂丶,丶, v´j
_,/( ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ __ノ という「否定」の文言から入る話が目立つ。
_, 、 -― ''"::::::::::::\:::::::::::::::::::::( <"ニ‐-、 そもそも最初から「兵は不祥の器なり」と入るくらいだしな。
/:::::::::::::、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r /⌒ヽ;;:::::: )
丿::::::::::::::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;V/..... ̄ ',;;:::| …で、これなんだが、家伝書の文中で否定している事項は、
i ;;::::::::::::::::::|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;〈 ;;;;:::::::::::... ',;;i 「宗矩から見た”家光が”改めるべき点/注意するべき点」
/ ;;;;:::::::::::::::::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::\::::;;;;;;;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ', だったのではないか、と思うんだ。
. / ̄ ̄ ̄\ 言われてみると、該当する話は、
. /─ ─ \ 家光個人に限定される話が多いような…。
/ (●) (●) ヽ
| (__人__) u. | 『刀二つにてつかふ兵法は、負くるも一人、勝つも一人のみ也。
\ `⌒ ´ __,/ 是はいとちいさき兵法也』(殺人刀)
. / \
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Y ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| あたりは有名だけど、その後での文章の方が、
(,,) | (,,) より家光個人に宛てた内容(※)だお。
| | |
※【「殺人刀」より】
『受領・国司・代官・地頭の、私ありて、下のなやみとなる事、尤も亡国の端也。
此機をよく見て、彼受領・国司・代官・地頭の私に、国を滅ぼされぬ謀、
是立相の兵法に手字種利剣の有無を見るがごとし』
『君の左右に佞人ありて、上にむかふ時は道ある風情をなし、下をみる時は目をいからかす。
此人に手をつかねざれば、よき事をあしきに申しなし、罪なき者はくるしみ、罪ある者は却而ほこる。
此機を見る事、手字種利剣よりも大切也』
『ちかく左右につかふまつる者も、君の臣也、とをくつかふる者も、同じく君の臣也。
親疎くばくぞや。君の御為には、手のごとく足のごとし。足とをしとて手にことならんや。
(略) とおきもめぐみの外ならぬ様にあらまほし。是よく機を見るにあれば、即ち兵法也』
912 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:31:43 ID:.aPoVO2w0 [13/21]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 思い出して欲しいが、
| (__人__) この家伝書が書かれた寛永九年という年は、大御所・秀忠が亡くなり、
| `⌒´ノ 将軍家光による専制が始まる時期だった。
| }
ヽ } ( そして、当時の家光の在り方と、今後の統治に対し、
_ヽ ノ`ヽ、_ ) 宗矩なりに危惧した結果、伝書という形で、
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( 家光に諫言したのではないか、という訳だな。
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) だからこそ、この時期に伝書を出した理由(目的)の一つに
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 .挙げられるのではないか、という話に繋がるんだ。
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
___
∠三 / 三`ヽ
/三三 | 三三 ヘ ふむ…。
/ ,''"´ ̄ ̄`ヽ`l ヘ .言われてみれば、直接的ではないにせよ、
/ ,' ! ヘ 家光への諫言と読める部分もあるか。
,′l∨_ 殺 _ ∨i !ヘ
∧ |ヾ ・ゝ ハ∠・丿|| | ヘ しかし、これを諫言と見ることができるにせよ、
_,.-‐─‐-气 / |ィ  ̄ | ィ|| ! ヾ\ それを家光がどう受け止めたか、という問題もあろう。
/::::::::::::::::::::::::::::::弋l| ∧ | //| |ヾヾ\ .それについては、どうだ?
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |/| | .ト──イ |//| |ヾハ-‐二ニニニ弋
\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| l | ヽ  ̄ ./l/ | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
``-圦::::::::::::::::::::::::| | | / >―< | .! |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ
/ 介ー==∠| |√≡≡≡≡≡≡ ll | \二二二二二二二>
/ / l |!  ̄‐‐- 乂 -‐‐ l |l ヽヾ |
| .| | | \ \ | l | | !
913 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:32:24 ID:.aPoVO2w0 [14/21]
_ ______
l i / \ そうだな。
l l_./ _,ノ ヽ、,_\ .これを諫言としてみた場合、
l/ ニヽ( ●) ( ●) .| 家光がどのような返答を返したか、それについては不明だし、
l / y 「'i___人___) | 家光の以後の行動に具体的にどう影響したかは、
l <、.l | あまりに他の要因が多過ぎるので明確には言えないが…
', ',/ |
j ノ ,/'|、 『吾天下統御の道は宗矩に学びたり』
_∠⌒ヽ j 'i, __ , __ ィ/::L___
/ ...::::::::::ヽVヽ::::::::::::::::::::::::::/:::..´''' 、、、 _ という実紀の一文を見るに、
/ ...:::::::::::::::::::: 〉::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... i::..\ 宗矩の言が、統治者としての家光の思想に、
/ .:::::::::::::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: l::::::: l .影響を与えていた事自体は確かと見ていいだろうさ。
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', つまり、宗矩が家伝書を書いた目的と考えられる
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 1 : 柳生家/江戸柳生系新陰流の安泰・発展
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 2 : 沢庵和尚の推挙
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ 3 : 家光の教化
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | これらは全て達成できた、という訳か。
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、 「後世に自分の兵法を遺す」については、言わずもがなだしな。
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、 大したものだ。
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
____
/ \
/ ─ ─\ …大した話なのはいいけど、
/ ‐=・=‐ ‐=・= \ 話が伸び過ぎて、もう家伝書解説篇の追記みたいになってきたお。
| u. (__人__) | そろそろ、話を戻さねーかお?
\ `⌒´ ,/
.ノ \
914 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:34:04 ID:.aPoVO2w0 [15/21]
/ ̄ ̄\
, __ノ ヽ、,_ \. あー…確かに、ちょっと話が脇に逸れちまったかもな。
/(⌒)(⌒ ) .| でも、一応、ここから繋がるんだぜ?
/ (__人___) .u |
. /`ヽ、 _|` ⌒´ | 今、話した通り、宗矩の『兵法家伝書』は
/:::::::::::\r´| | 基本、「将軍・徳川家光」に対して宛てられた伝書だ。
/::::::::::::::::::::> ヽ イ 必然的に、そこで説かれる兵法は「大将(統治者)が修めるべき兵法」になる。
/::::::::::::::::/-__「ヽー'ーー"/7一 -..、
./::::::::::::::::/::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.、::ヽ これに対し、武蔵が『五輪書』で語りかけている相手は、
/:::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ヽ:::::、 「不特定多数の武士」…もう少し絞って言えば「実際に戦場で戦う武士」だ。
./:::::::::::::::::::iヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::| だから、そこで説かれる兵法は「戦場働きをする武士の兵法」となる。
':::::::::::::::::::::l:::::::、::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i:::::|
\::::::::::::::/::::_,,-ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::!::: | 二人の兵法の運用についての違いは、ここに起因する訳だ。
.ヽ∠-''" ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::|
`:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: |:::::!
!:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::|:::::!
____
/_ノ ヽ\ 並べると、こういうことかお。
/ ( ●) (●)、
/::::::::⌒(__人__)⌒\ 【それぞれの伝書(兵法)が想定した相手】
| |r┬-| | ・ 兵法家伝書 : 大将(徳川家光)
\ `ー'´ / ・ 五輪書 .: 不特定多数の武士
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ / …家伝書がニッチなんてレベルじゃねー有様で草生やすしかねーおw
\_,,ノ |、_ノ
___
∠三 / 三`ヽ
/三三 | 三三 ヘ
/ ,''"´ ̄ ̄`ヽ`l ヘ
/ ,' ! ヘ …むしろ、内容が合致する方がおかしいだろう。
,′l∨_ 殺 _ ∨i !ヘ これは。
∧ |ヾ -ゝ ハ∠-丿|| | ヘ
_,.-‐─‐-气 / |ィ  ̄ | ィ|| ! ヾ\
/::::::::::::::::::::::::::::::弋l| ∧ | //| |ヾヾ\
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |/| | .ト──イ |//| |ヾハ-‐二ニニニ弋
\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| l | ヽ  ̄ /l/ | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
``-圦::::::::::::::::::::::::| | | / >―< | .! |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ
/ 介ー==∠| |√≡≡≡≡≡≡ ll | \二二二二二二二>
/ / l |!  ̄‐‐- 乂 -‐‐ l |l ヽヾ |
| .| | | \ \ | l | | !
915 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:34:57 ID:.aPoVO2w0 [16/21]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ ((
-、 .| (● ) (● ) | ノ' この時点で全然違う内容になるのも無理はない訳だが、
ヤ ', | (___人___) .| ,i' 実はもう一つ、大きな違いがある。
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::.
', j / / .| ____/./ それは、「太平の世」と「戦乱の世」、
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 どちらを兵法を説く上で基準としているか、ということだ。
. l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` {
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
___
/ \ その辺りは、読めば一目瞭然だお。
/ ─ ─ \ 家伝書は「太平の世」を、五輪書は「戦乱の世」を基準にしてるお。
/ (●) (●) \ .
.| (__人__) | __ 【それぞれの伝書が基準とする世界】
\ ` ⌒/ ̄ ̄⌒/⌒ / ・ 兵法家伝書 : 太平の世
(⌒ / / / .・ 五輪書 : 戦乱の世
i\ \ ,(つ / ⊂)
| \ y(つ__./,__⊆)
| ヽ_ノ |
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 家伝書が、『兵は不祥の器也』と説くのも、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 「兵を用いずとも治まっている天下」があるのが前提だからな。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | .だからこそ、『天下を乱す”悪”を殺すことで「殺人刀」が「活人剣」となる』という
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| .理屈が成り立つ訳だ。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ それに対し、五輪書は
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | 『一身の切合にかち、或は数人の戦に勝ち、
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、 主君の為、我が身の為、名をあげ身をたてん』と説く通り、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、 戦いが発生し、そこで活用することを前提にしているな。
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
916 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:36:23 ID:.aPoVO2w0 [17/21]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) そうだな。
| (__人__) ただ、軸をどちらに置いているにせよ、どちらも
| `⌒´ノ もう片方の(家伝書なら戦乱の、五輪書なら太平の)世の中を
| } 無視している訳じゃないことは覚えておいてくれ。
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) 実際、五輪書は、
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( 『今世の中に、兵法の道慥にわきまへたるといふ武士なし』と
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) 今が戦のない時代であることを踏まえて書いている訳だしな。
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | ふむ…この違いは、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | やはり、宗矩と武蔵の立場の違いに起因するのか?
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
917 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:37:11 ID:.aPoVO2w0 [18/21]
/ ̄ ̄ \ (
/ ⌒´ ⌒ ノノ そりゃそうだ。
| ( ●)(●)(,ヽ、 (( 片や、その太平の世を統治する幕府の一員である宗矩、
.| (___人__) r__i____ ノ 片や、一兵法者という立場を維持し続けた武蔵、
| √丶丶丶┬─'"' 同じ視点で物を書け、という方が無理な話だ。
| | ) j
.人、 ヽ´ ,/ 「立場の違い」
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r
_, 、 -一 ''"::::::::::::\::::::::ー-- r / ⌒ヽニ- 、. .これも宗矩と武蔵、二人が伝書を書いた際の「状況」の違いだな。
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ …だが、同時にこれは、二人の「経歴」の違い故とも言える。
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;|
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;i
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '.
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '.
| / ネ.π '. } l …ほう。
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ } .
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ /
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
____
/ \
/ ─ ─\ 経歴というと、二人の出身とか、
/ (●) (●) \ どこに仕えたとか、そういう話かお?
| (__人__) |
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
918 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/04/20(月) 01:37:52 ID:.aPoVO2w0 [19/21]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| (● )(ー) それもあるが、それだけじゃないな。
. | (__人__) 言ってみれば、二人の「人生」の違いってやつだ。
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ
.l^l^ln } `‐= ) 「状況」が、伝書を書いた時点での話だとすれば、
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;) 「経歴」は、そこに至るまでの人生の話になる。
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/ これを全部語ろうとすると洒落にならないから、
/ / \ .l;;,´ 要点をまとめて挙げていくぞ。
. / / |ヽ、二⌒)━・'
ヽ__ノ
____
/ \
/ ─ ─ \ .当たり前だお。
/ -=・=- -=・=- \ フルでやったら、いつ終わるか分かったもんじゃねーお。
| (__人__) U |
\ .`⌒´ /
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 夢 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、-ゝ イ-ノ| | そもそも本編で十分書いてるだろうが。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | ほれ、さっさとその要点を挙げるがいい。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ 「おう」
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
949 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:24:34 ID:TsshLyZc0 [4/45]
γ【やらない夫】 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| さて、二人の「経歴」を、 .|
| 簡単にまとめるとこうなる。 |
乂____________.ノ
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
| ( ●)(●) 【柳生宗矩の経歴】
| (__人__) . ・大和国の土豪・柳生宗厳(石舟斎)の五男として誕生。
| ` ⌒´ノ .. ・24歳で徳川家に仕官して以来、一貫して幕臣として働き、最終的に大名となる。
| }. . ・31歳で将軍家兵法指南役となり、最期まで勤め続ける。
ヽ } . ・流派は新陰流(柳生新陰流)。師は父である石舟斎。
ヽ、.,__ __ノ . ・自流派(江戸柳生)を御流儀として確立。宗家として多数の門弟を育てる。.
_, 、 -― ''"::l:::::::\ー-..,ノ,、.゙,i 、 . ・一兵法者として立ち合いの勝負を行った記録はなし。
/;;;;;;::゙:':、::::::::::::|_:::;、>、_ l|||||゙!:゙、-、_ ・76歳で死去。子は四男二女。跡継は嫡男の十兵衛(家督・流派共に)
丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::/:::::::\゙'' ゙||i l\>::::゙'ー、
. i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|::::::::::::::\::::::::::\ .||||i|::::ヽ::::::|:::!
/;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;!:::::::::::::::::::\:::::::::ヽ|||||:::::/::::::::i:::|
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;|;;;;:::::::::::::::::::::::\:::::゙、|||:::/::::::::::|:::
_、,,、,,_
、ィ=彡ミミヽ、
〈,巛ハヾヘミr、 【宮本武蔵の経歴】
_丿ソ/リlヘヾヽy〉 .・本人曰く播磨国出身。父親は不明。義父は新免無二とされる。
フノりノノll.iノソノ》, .・生涯仕官はしなかった。ただし一時雇い/客分となった家は複数あり。
__彡リ)));ノノハ//リ'ヽ__ ...・特定の家で指南役に就いたという記録はない。
/´;;;;;;;;::::..《" 〉巛l 《lリノハ::::::;;;;;;;:::\ ・流派は自らが開いた二天一流。師は無しと称する
/;;;;;;;;;;;;;;;,,,:::::::` ':::::ヾソノヽ:::::::::;;;::;;;;;;;;;;;;ヽ. ......・各地で兵法を教授して廻る。門弟多し。
l;;r-=レ;;;;;;;;::::::::::::::::::::::'::::::::::::::::::;;;;;;;;;:;;;_:::l ・13歳の時以来、29歳までに60余回立ち合い勝負をし、不敗と称する。
i__,_/;;;;;;;;;;;:::::::::::::/;;:ヽ:::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;l___`i .・62歳で死去。実子は無し。家督は養子の伊織が継ぎ、流派は弟子達が各々継いだ。
/ / l;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::::::: ::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;/` , \
.//〉 l、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;イ:: 〉 l
| _ノヽ,ミ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノヽ j /
( _ノ,イ 〈;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ゝ- ヽノ)
ヽ-" │(;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;j /´ j` /
ヽ │ `);;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ l / ノ
γ【クラウザー】 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
| …今更ながら、ほぼ正反対だな。 |
乂_______________ノ
950 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:25:02 ID:TsshLyZc0 [5/45]
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \
| .(●)(●) | まあな。
. | (__人__) | で、ここで注目したいのは、二人の経歴のうち、
| `⌒´ | ) ;;;;)
. | | .) ;;;;) .【宗矩】:一兵法者として立ち合いの勝負を行った記録はなし。
. ヽ } /;;/ 【武蔵】:13歳の時以来、29歳までに60余回立ち合い勝負をし、不敗と称する。
ヽ ノ .l;;,´
. / ∩ ノ)━・' この点についてだ。
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ |
\ /___/
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ 武蔵の立ち合いについては
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 自筆である五輪書の記述が出典であるから、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 全て事実とまでは確言できんが、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | . 少なくとも、数多くの立ち合いを行い、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| . 勝って生き延びてきたことは間違いないであろうな。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ それだけの実績がなければ、牢人の武蔵が、
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | .複数の大名家で、相応に遇される筈もなかろうし。
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
____
/ \
/ ─ ─\ 宗矩も、仕合の逸話はいくつかあるけど、
/ (●) (●) \ 「生死を掛けた立ち合い勝負」と言うのは、
| (__人__) | 少なくとも今のところ、記録にはないお。
./ ∩ノ ⊃ /
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
\ /___ /
951 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:25:36 ID:TsshLyZc0 [6/45]
/ ̄ ̄ \ (
/ ⌒´ ⌒ ノノ まあ、そういうことだ。
| ( ●)(●)(,ヽ、 (( で、武蔵の兵法観については、
.| (___人__) r__i____ ノ この点が大きな影響を与えていると考えられる。
| √丶丶丶┬─'"'
| | ) j さっき、武蔵の立ち合いの経歴について、
.人、 ヽ´ ,/ 「全て事実かどうかは確言できない」とクラウザーは言ったが、
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r むしろ俺は、
_, 、 -一 ''"::::::::::::\::::::::ー-- r / ⌒ヽニ- 、.
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ 「武蔵は、その生涯において敗北した事はなかった」
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;|
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;i からこそ、五輪書はあの内容になったと思うんだ。
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ',
_____ ━┓
/ ― \ ┏┛
/ノ ( ●) \ ・ どういうことだお?
. | ( ●) ⌒) |
. | (__ノ ̄ /
. | /
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
952 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:26:02 ID:TsshLyZc0 [7/45]
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \
(●).(● ) |. うん。
(__人___) .| 武蔵は、経歴にある通り、
'、 | その生涯において主取りをしたことがない。
| | .即ち、「主家に仕える」ことではなく、
,. -ーー| /レ、 「己の腕前で対価を得る」ことで生きてきた訳だ。
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ そして、「地之巻」で述懐している通り(※)、
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ 武蔵が拠り所としたのは、常に「兵法」だった。
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j ※【五輪書】
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: / 「兵法の利にまかせて、諸芸・諸能の道となせば、
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: / 万事において、我に師匠なし」(地之巻)
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: /
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 別の言い方をすれば、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 『人生に降りかかった問題を、
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| 全て兵法、及びそこで得た感覚・経験で解決した』
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\ というところか。
/ / / ! \| | ./! ! |
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
953 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:27:02 ID:TsshLyZc0 [8/45]
/ ̄ ̄\
/ _,.ノ `⌒
| ( ●)(●) __ ノ' 少なくとも、武蔵は自分の身の回りで起きた事について、
.| (___人__) / .i .i´' .「兵法を使って解決できなかったことはなかった」んだろう。
| ` ⌒´ノ | レ/;;: .そしてそれが、兵法に対する強い自信・信頼に繋がったと思われる。
| |_,-‐、l//.
.人、 厂丶,丶, v´j 五輪書全篇に跨る兵法への肯定感は、
_,/( ヽ、.,ヽ., ___,く_ソ __ノ この武蔵自身の「兵法に対する強い自信・信頼」が元になっていると
_, 、 -一 ''"::::::::::::\:::::::::::::::::::::( <"ニ‐-、 考えていいと思う。
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::r /⌒ヽ;;;;;;; )
丿;;;;;;;;;;;:::::i::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;V/..... ̄ ',;;;;|
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;;:|;;;::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;;〈 ;;;;::::::::::... ',;;i
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;:::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::\::::;;;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::::. ',
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', これが通俗的な
, ' / / //ヽ、-ゝ イ- ノ| | 「仕官を望んだが果たせなかった武蔵」が書いたなら、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 「幾ら兵法の腕が立ってもどうにもならない」という空気が
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| ..どこかしら五輪書内に伺えそうなものだが、
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ 史実の武蔵は、そもそも仕官を望んだ様子がないからな…。
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\
/ / / ! \| | ./! ! | むしろ、「兵法で対応できないことには興味がない」という風情すらあるな。
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
____
/ \ 無論、「人生で一切失敗した事がない」訳ではなかっただろうけど、
. / \
. / /) ノ ' ヽ、 \ 「生涯に於いて、肝心な場面では大体どうにかできた」
| / .イ '=・= =・= u| .「その際、役に立ったのはいつも兵法だった」
/,'才.ミ) (__人__) /
. | ≧シ' ` ⌒´ \ というところかお。
/\ ヽ ヽ
954 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:28:05 ID:TsshLyZc0 [9/45]
/ ̄ ̄\ そうだな。
/ _ノ \ 「地之巻」の記述(※)にある通り、
| ( ●)(●) 自分の心のままに書いた結果、あの内容になったのだから、
| (__人__)
| `⌒´ノ 「まず武士にとって肝心なのは勝つことで、
| } .それは兵法を修めていれば、大体どうにかなる」
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ ) というのが、武蔵の認識だったと考えていいだろう。
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ (
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,) ※【五輪書】
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 .『今此書を作るといへども、仏法儒道の古語をもからず、
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉| 軍記軍法の古きことをももちひず、此一流の見たて、実の心を顕はす事、
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ | 天道と観世音を鏡として、十月十日の夜、寅の一てんに、
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i ! .筆をとつて書初むるもの也』(地之巻冒頭)
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '. …なるほど。
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '. この考え方が適応される武士といえば、
| / ネ.π '. } l 確かに
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \ 「兵法を用いて勝ちを得る事で、功名を挙げられる武士」
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶 ⇒戦場働きをする武士
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ } . になるな。
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ / 武蔵自身の経歴を踏まえれば、まず頭に浮かぶとすれば、
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´ やはり彼らであっただろうしな。
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
∩_
〈〈〈 ヽ
____ 〈⊃ } 自分自身、兵法でどうにかなったし、
/⌒ ⌒\ | | 今まで見てきた武士たちを振り返っても、
/( ●) (●)\ ! ! 兵法さえ出来ていれば、あいつらも勝てただろうに、という気持ちが
/ :::::⌒(__人__)⌒:::::\| l 武蔵の兵法観の下地になった…という訳かお。
| |r┬-| | /
\ ` ー'´ // 「そういうことだな」
/ __ /
(___) /
955 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:29:13 ID:TsshLyZc0 [10/45]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ _ノヽ_\ ) ;;;;) 武蔵が想定していた武士の中には、
| (─)(─) /;;/ おそらく、浪人も含まれていただろうし、
. | (__人__) l;;,´ そういう人間は、戦の際に戦って勝たなければ、
| `∩_ノ)━・' そもそも生きていくことすら危うかっただろうな。
. | |_ノ
/ヽ | |_ 武蔵の、まず勝つことを最優先とする言は、
| \_/ ノ ヽ そういう人間の実感を踏まえた言葉と言えると思うぜ。
\ /_| |
| \ / _/
⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_
r―――――――‐、
>、!!! _,,〃-‐ '''l≡≡| 勝ちもせず生きようとすることが
. / ヾミ-== l ≡ | そもそも論外なのだ…!
〈ヾ.、 r==- /_ ≡| (略)
た。〉 "=。ラ .|F|≡| 今、武士(オマエラ)が成すべきことは
|` 7 ‐-‐ |F| ミト ただ勝つこと…。勝つことだ…!
| l ,, 、 リノ ミ.| \_
.-―! l`====ヽ .|\ ミ| |  ̄
/\ ≡ _ ! \| |
. / `ァ-‐ '' "´ /| |
壇上で兵法を語る武蔵(イメージ図))
⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_ノ⌒丶、_
о
____ 。
/ \
. / \
. / /) ノ ' ヽ、 \ なんかそこを強調されると、
| / .イ '=・= =・= u| どっかのカジノ船で説教かました
/,'才.ミ) (__人__) / .オッサンみたいな絵面が浮かんでくるお…。
. | ≧シ' ` ⌒´ \
/\ ヽ ヽ
956 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:30:09 ID:TsshLyZc0 [11/45]
(ヽ三/) ))
__ ( i)))
/⌒ ⌒\ \
/( ●) (●)\ ) じゃあ、宗矩の場合はどうなのかお?
./:::::: ⌒(__人__)⌒::::\
| (⌒)|r┬-| |
,┌、-、!.~〈`ー´/ _/
| | | | __ヽ、 /
レレ'、ノ‐´  ̄〉 |
`ー---‐一' ̄
/ ̄ ̄\ 宗矩に関しては、
/ _,.ノ ヽ、_ 立ち合いの勝ち負け以前に、武蔵と大きく違う点がある。
| ( ●) (●) .それは、
| (___人__)
.| ` ⌒´ノ 「世の中、兵法ではどうにもならない問題があることを
| | 実感として理解していた」
.|、 _r十、
[::.ヽ、 __rく_} _i .} あるいは、
_, 、-一 :::"\ :::::::::} _i _l _i .}
/ .:.:.:.:::::::::::::::::::::::::::::::::} _l i_ i. {:.. ヽ__ 「兵法の限界を知っていた」
/ ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::} _jノ`~゛ t:::::/:::::..\ __
.i :::::::::::::::::、.::::::::::::::::::::::::::::} ゙i -‐.i.,-‐、::::::::::::::.. \_ ということだ。
i ::::::::::::::::::: i:::::::::::::::::::::::::::i ヽ ⌒,; ‐'::::::::::::::::::::::::.. `::...、
l ::::::::::::j:::::: i:::::::::::::::::::::_ノソ } /:::i:::::/::/::::::::::::::::::::::.. `ヽ
l ::::::::/::::::::::::::::::::::::::/.:::゙i::\__ rl ´::::: i::´::::::::::::::::::::::::::/::::::::: l
l :::::/::::::::::::ソ:::::::,/::::::::::::::::::::ー,´:::::::: l>ーーー-、r-‐:'::::´::::::: l
957 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:30:57 ID:TsshLyZc0 [12/45]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ (( 本編でも散々書いている通り、宗矩の身の回りには、
-、 .| (● ) (● ) | ノ' 「いくら兵法の腕が立っても、どうにもならない事」が
ヤ ', | (___人___) .| ,i' 身近に存在していた。
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::.
', j / / .| ____/./ そもそも親である石舟斎からして所領をなくしてるし、
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 倅である十兵衛にしても、その実例のようなものだからな。
. l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` {
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _ それに、身内な例以外にも、
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\ 戦では活躍できても、戦がなくなった世では、
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ 冷や飯を食わされる形になった武功派の武士たちを
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l .数多く見ていただろう。
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
_-─―─- 、._
,-"´ \ 単なる武士ならともかく、石舟斎も十兵衛も、
/ ヽ 達人と呼んで差し支えない腕前の持ち主だったのが、
/ _/::::::\_ヽ フォローの余地のないところだお。
| :::::::::::::: ヽ
l u ( ●)::::::::::( ●) 実際、石舟斎も、兵法の無力と、
` 、 (__人_) / それでもそれに頼る己を自嘲する歌(※)を残している訳だし。
`ー,、_ /
/ `''ー─‐─''"´\ ※【石舟斎兵法百首】
「世をわたる わざのなきゆへ 兵法を かくれがとのみ たのむ身ぞうき」
___
∠三 / 三`ヽ
/三三 | 三三 ヘ 大将が兵法を修めるのは護身のため、という面もあるが、
/ ,''"´ ̄ ̄`ヽ`l ヘ 度が過ぎれば対応しきれなくなるからな。
/ ,' ! ヘ
,′l∨_ 殺 _ ∨i !ヘ 現に足利義輝、北畠具教は
∧ |ヾ -ゝ ハ∠-丿|| | ヘ 卜伝直門として名を挙げられる程度には兵法を修めていたが、
_,.-‐─‐-气 / |ィ  ̄ | ィ|| ! ヾ\ 二人とも多勢に無勢で殺されている。
/::::::::::::::::::::::::::::::弋l| ∧ | //| |ヾヾ\
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |/| | .ト──イ |//| |ヾハ-‐二ニニニ弋 「無意味ではないが、それで大丈夫な訳でもない」
\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| l | ヽ  ̄ /l/ | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
``-圦::::::::::::::::::::::::| | | / >―< | .! |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ まあ、認識としてはこんなところか。
/ 介ー==∠| |√≡≡≡≡≡≡ ll | \二二二二二二二>
/ / l |!  ̄‐‐- 乂 -‐‐ l |l ヽヾ |
| .| | | \ \ | l | | !
958 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:31:39 ID:TsshLyZc0 [13/45]
.―――― ,
/ \ そういう実例を多数知っているが故に、
| | 宗矩は嫌でも兵法の限界を痛感せざるを得なかった訳だ。
| | そんな状況で、立ち合いの勝負に価値を見出せる筈もない。
| ゝ,_,ノ ゝ,.__ノ| 宗矩に立ち合いの記録がないのは、早めに仕官が出来たのに加え、
| (● ) (● )| その辺りの達観が大きいだろうな。
} ( 人 )
_ノ ゝ `ー ´ `ー´ そして何より、
ノ.:`.:,' ヽ ´ ` / 自身が天下を治める幕府の一員であるが故に、
.<\.:.:.:.:` _ ゝ ,___, 'ヽ、 .武蔵の言う「兵法で勝ちを得て、名を上げる」状況…、
,_<.:.:.:.:.:.:.:.:\.:.:.:.:/{( ノ ハ.:.:`ー、 .即ち、戦が起きること自体が「統治の失敗」となる以上、
/.:.:.:.:.:.:.:メ.:.:.:.:.:.:.:.\/ ゝ >.:.:──── 、__,_, .直接的な兵法を振るう事に否定的にならざるを得ない。
/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:>,.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:{ /ヽ _______ \ヽ,、
|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ; ` 、.:.:.:.:.:/ヽ.:.:.:.:ヽ´ __\ ヘ | '.'. 自分が身を置く「太平の世の大将(統治者)」の世界に於いて
|.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\.:/.:.:.:.:.:.:ヽ.:.:.:.:> `ヽ ノ `{ i ii 兵法…特に立ち合いの兵法の価値が低いことと
ゝ.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:j ̄.:.:.:.:.:.:.:ヾ ヽ / ./ .{.! .常に向き合うことになっていた訳だ。
ヽ_.:_:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:゙ヽ ヘ イゝ_ij.|
ゝ.:,_ノ.::.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:` ´
\::.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:´j
\f.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:ノ
r‐ 、
iゝ::j __
Y⌒ヽ \ ., ≦´ :ミ¨¨ミ::.、
八 __ .>--‐==ミ ;.
i⌒V::::〉 .ィ--‐‐ ' ,x: __;j≦: : 、 :.
.八. `Y-‐=< / // `ヽ:ハ ふむ…宗矩の経歴が、武蔵のそれとこれだけ異なれば、
( __`¨´乙::ノ イ ;イ ;/ 、 殺 i | 兵法観の違いを生むのも、無理はないか。
ト`^ ´て^リ 彡' ' /ヾ≧.、 L.k.| |
|::::ー-==イ|-‐ー=彡′ ; ,ハ、  ̄.´ f ̄ 从| 尤も、武蔵に限らず、宗矩と同じ立ち位置で
|:::::::::::::::::八__三_ ;彡'//∧ .、_ノ , j′ | 物を見ることが出来た兵法者など、同時代にはおらん訳だが。
l:::::::::::::::::::::::⌒ヽ ` ≪///∧ .ニニ ./ : :.リ
∧:::::::::::::::::::::::::::::::\ \しヘヽ、.......ィ′.: ′
';:::::::::::::::::::::::::::::::::::\ ヽ. てt`¨: : :/ 、--‐‐===‐<
゙ 、:::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ i:\ 彡イ///,ハ ⌒ヽ、 ヽ
\:::::::::::::::::::::::::::::::: >r'':::::::::.. `ヽ/ソ''"¨´ .\ ..',
/ ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::| 弋:::::::. ';::.. `ヽ ',\ ',
/ ∧:::::::::::::::::::::::::ノ `ヾj 弋:::. ', '、:::\}
, ´ / ∧:::::::::::::::::,. く 、 `ヽ: i ∨:::'
.///,∧‐--‐ ' .\ ';\ `::. | .i'.
959 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:32:22 ID:TsshLyZc0 [14/45]
/ ̄ ̄\
/ .\, 、/\ _,, これが、単なる大身旗本の身であれば、
.| (●) (●) .| l;l 「兵法など大して役に立たぬ」と切り捨てることもできたんだろうが、
. | (__人__) .| _,_,|,|_, 宗矩は「将軍家兵法指南役」という立場があった。
| `⌒´ |, ト-=y 丶 .その立場で、「兵法は役に立たない」と言う事は、自己否定に等しい。
. | } ヽ `i, ̄‐^l
. ヽ } ヾ~ ` i, 正直、宗矩自身もかなりの葛藤があったと思うが、
ヽ ノ _ ヽ、 ;i, そんな中、家光からの例の要求が来る。
,,_,i y,ソト,,__ ヽ、 ;i, そこで発生した、
,/r-'"j / / ii, `ヽ、-x,,゜r ;i
,,/'/__.L、 /ヾ、"i `ヽ `;i i, ・ 主君(家光)は兵法の上達を望んでいる
,/ /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i `、'i iヽ、 ・ しかし、大将にとって兵法は然程必要ではないし、
_,) ヽ " ネメ、_ii"~ _Yri l, ヽ、 .今のまま教えても、よくない結果にしかならない。
_,,,>t 、ヾ、 ゞ;;/ / ,¬ V⌒l
,y`;,,__ ,i /ii' / r-/| l l という一種矛盾した状況において、止揚が発生し、
_/^,,, ヘ l /iil / l"v' y } l 「太平の世に於ける大将のための兵法」…
v=4⌒ヽ、 j --,,,if /iii| ,, 〈-ヘ_,、 <、 / i| 即ち、「治国平天下の剣」が生まれた訳だ。
ヽ, ,, i、 _,,tv /iiiii ム、 / / ヽ、ヽ、_x--ー‐- 、
__,,,l ii Yi___,lk / }iiiiil ヘ __,,,,,,___/ `x'"^ ,,,,, \
^ ̄⌒ヽ ヘ、 ,ノiiiii|、__,,,y,,_,,,/ ヽ、 ,/ ,,,-‐‐ `',, ヘ,、
,,,_ \ ヽ `>- liiiiiiil ¬">-- ヽ ヽ i i/ _,, / } i
"- ,, } / /iiiiiiil / l l l lK ^~' / |
\ーヾ /iiiiiiiil / i i | |i`'ヽーミ_/ /
____ 家伝書の冒頭で、
/ \
/ ⌒ ⌒ \ 『兵は不祥の器なり。天道此を悪む。
/ (●) (●) \ .止むことを獲ずして此を用ゐる。是れ天道也』
.| :::⌒(__人__)⌒::: | __
\ `ー' / ̄ ̄⌒/⌒ / という老子の言葉を引用して、
(⌒\ / 兵法 / / まず兵法の否定から始めるけど、
i\ \ ,(つ家伝書/ ⊂) そこから、兵法の新しい在り様を説くことで、
.| \ y(つ /,__⊆) 最終的に兵法の肯定に至るのは、それを反映してのことだおね。
960 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:34:15 ID:TsshLyZc0 [15/45]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ .___
| ( ー)(●) ( ⊂⊃ ) あと、宗矩が勝ちに拘らず…というか、
. | (__人__) ホワッ ̄ ̄ 勝負自体に否定的であることと、
| ( ( ノ .武蔵が勝ちに拘ることについて、もうひとつの見方がある。
.l^l^ln ⌒ }
. ヽ L } ∩ ノ)━・ なあ、やる夫。
ゝ ノ ノ / _ノ´ そもそも論になるが、武士は何のために「勝つ」んだ?
/ / \/ |
/ / ' |
. / / |ヽ__ノ
ヽ__ノ
_____
/ ― \
/ノ ( ●) \ そりゃ立ち合いや戦で生き残ったり、手柄を上げて、身を立てるためだお。
. | ( ●) ⌒) | 武蔵が言ってる通りだお。
. | (__ノ ̄ /
. | /
\_ ⊂ヽ∩\
/´ (,_ \.\
. | / \_ノ
961 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:34:44 ID:TsshLyZc0 [16/45]
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \
| .(●)(●) |
. | (__人__) | そうだな。
| `⌒´ | ) ;;;;)
. | | .) ;;;;) で、その上での話になるんだが…
. ヽ } /;;/ 家光の場合、それはどうなると思う?
ヽ ノ .l;;,´
. / ∩ ノ)━・'
( \ /|_ノ ヽ
. \ "" /_ノ |
\ /___/
____
/ \
/三_',!`zx二 \ 家光の、場合…?
/ ´ー¨‐` ´ー¨‐'' \ ええと……。
| u (__人__) |
\ ´ニニ` ,/
/⌒ヽ ー‐ ィヽ
962 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:35:28 ID:TsshLyZc0 [17/45]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ ああ、なるほど。
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 武蔵の言う「兵法の目的」である、
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 『一身の切合にかち、或は数人の戦に勝ち、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 主君の為、我身の為、名をあげ身をたてん』
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ というのは、あくまで一般の武士の話であって、
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | 現に「天下の主」である家光は例外になるのか。
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \
(●).(● ) |. そういうことだ。
(__人___) .| 宗矩が、立ち合いの勝敗を小さいものとし、
'、 | そのような兵法を振るうことの否定から話を始めたのは、
| | 「現に治まっている天下の主」である家光に説いた兵法だからだ。
,. -ーー| /レ、
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._ 『一人勝ちて天下かち、一人負けて天下まく。
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ 是大なる兵法也』
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ という家伝書の記述は、一般の武士からすれば、
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j 「そんなこと言われても…」となるだろうが、
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: / 相手が家光である以上、むしろこれが正しいんだ。
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: /
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: /
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
963 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:36:01 ID:TsshLyZc0 [18/45]
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ ._ノ ヽ、\) ;;;;) 一般の武士にとって、戦は「起こるもの」であって、
| (●)(●)/;;/ だからこそ武蔵も、「何時にても、役にたつやうに稽古し」と書いている訳だが、
| (__人__)l;;,´| 家光(或いはもう少し範囲を広げて将軍・大名)の場合、戦は「起こすもの」でもあるんだな。
| ./´ニト━・' .l つまり、戦を起こすかどうかの意思決定の主体な訳だ。
| .l _ニソ }
/ヽ、_ノ / だからこそ、家伝書冒頭の「兵は不祥の器也」という言葉に意味が出てくる。
__/ / ノ__ .前提として、家光は今現在、天下を支配しているのだから、
/ / / `ヽ. .勝ち負けで言えば、最初から勝っているも同然なんだ。
/´ ./ ,. ヽ. そんな人間が自ら戦での功を求めるのは、望ましいとは言えんわな。
ト、_,/. |、 ヽ
| |/ /
____
/ \
/ ─ ─\ 望まず起きてしまった戦の場合…、
/ (●) (●) \ .幕府が想定していたのは大名の反乱というところだろうけど、
| (__人__) | その場合、戦いは対等の戦いではなく、「討伐」「鎮圧」「成敗」になるし、
./ ∩ノ ⊃ / そうやって「乱れたる世を治める」ことは、それこそ「活人剣」の理屈になる訳かお。
( \ / _ノ | | .そもそも、格下の存在を討つ訳だから、自ら手を下す訳でもないし。
.\ “ /__| |
\ /___ /
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '. 現実に起きたのは、キリシタン一揆である島原の乱だったがな。
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '.
| / ネ.π '. } l あと、何気に見落とせんのは、
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ 正保二年にあった明からの日本乞師か。
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \ 結果的に断ったが、もし、あれを「功名を上げんがため」に受けていたら、
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶 朝鮮出兵の二の舞どころじゃない結果になっていたかもしれん。
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ 下手をすれば、隆盛期の清と正面から戦う羽目になる訳だからな。
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ }
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ / 戦って勝ちを得ようとすることは、大将に関して言えば、
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´ 必ずしもいい結果に繋がるとは限らん訳か。
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧ ましてや、既に天下が既に治まっているのなら、尚更だ。
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
964 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:37:09 ID:TsshLyZc0 [19/45]
/ ̄ ̄\ ) ;;;;)
/ _ノヽ_\ ) ;;;;) さっきも言ったが、
| (●)(●) /;;/ 一般の武士の視点では、戦は「起こってしまうもの」なのだから、
. | (__人__) l;;,´ 起きたら後は存分に働くだけのことになるし、そこに疑問を抱くこともない。
| `∩_ノ)━・' そもそも意思決定の主体じゃないんだからな。
. | |_ノ あるとすれば、参陣するか否か程度だ。
/ヽ | |_
| \_/ ノ ヽ そういう、実際に戦場に立つ武士であれば、
|\ /_| | 勝ちを目指し、手柄を得る事に否などある筈がない。
| \ / _/
____
/_ノ ヽ\
/ ( ●) (●)、 だから、一般の武士の視点が基準である武蔵は、
/::::::::⌒(__人__)⌒\ 「勝つ」ことを第一にしている訳かお。
| |r┬-| |
\ `ー'´ /
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ
___
∠三 / 三`ヽ
/三三 | 三三 ヘ まあ、勝たんと話が進まんからな。
/ ,''"´ ̄ ̄`ヽ`l ヘ
/ ,' ! ヘ 『武者は犬ともいへ、畜生ともいへ、
,′l∨_ 殺 _ ∨i !ヘ .勝つことが本にて候』(朝倉宗滴話記)
∧ |ヾ -ゝ ハ∠-丿|| | ヘ
_,.-‐─‐-气 / |ィ  ̄ | ィ|| ! ヾ\ と述べている先人もおるのだし。
/::::::::::::::::::::::::::::::弋l| ∧ | //| |ヾヾ\
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |/| | .ト──イ |//| |ヾハ-‐二ニニニ弋 「武蔵の志向は戦国期の武芸者に近い」
\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| l | ヽ  ̄ /l/ | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ という話があったが、.これはその裏付けの一つと
``-圦::::::::::::::::::::::::| | | / >―< | .! |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ 言えるかもな。
/ 介ー==∠| |√≡≡≡≡≡≡ ll | \二二二二二二二>
/ / l |!  ̄‐‐- 乂 -‐‐ l |l ヽヾ |
| .| | | \ \ | l | | !
965 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:37:36 ID:TsshLyZc0 [20/45]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ ((
>>866の話と重なるが、
-、 .| (● ) (● ) | ノ' 「この太平の世で、兵法はどうあるべきか」という問いに対し、
ヤ ', | (___人___) .| ,i' 二人の考えを並べると、こうなる。
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::.
', j / / .| ____/./ 【太平の世に於いて、兵法はどうあるべきか?】
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 宗矩 : 太平の世を守るために用いるべし。
. l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` { .武蔵 : いざという時、存分に働くために修めるべし。
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\ 「有事に備えるべき」という心がけは同じでも、
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ その方向性が異なるのがわかるな。
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ 宗矩のそれは、太平を維持する事に主眼があるな。
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', つまり、状況に対して能動的だ。
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 逆に、武蔵のそれは、戦や立ち合いがいつ起きても対応できるように、というものだ。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、| 状況に対しては受動的と言える。
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\ この違いは、説かれた相手の立場の違いによるものだな。
/ / / ! \| | ./! ! | 天下の安定に対し、権限と責任を持つ「天下の主」である家光と
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、 そうではない一般の武士、どちらに向けて説かれたかによる違いだ。
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
966 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:38:17 ID:TsshLyZc0 [21/45]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ 兵法を用いる主体が誰であるかによって、
| ( ●)(●) 「大なる兵法」と「小さき兵法」とに分けて考えるべきことは
| (__人__) 二人とも伝書の中で述べている通りだが、
| `⌒´ノ 少なくとも、宗矩の「大なる兵法」は相応にリアリティがあると言えるな。
| }
ヽ } ( そもそも、家光に出されたものであるし、
_ヽ ノ`ヽ、_ ) そこで納得が得られないようなら、
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ ( ここまで評価されることもなかっただろうしな。
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,)
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁 それに規模は小さいとはいえ、宗矩自身、領主なんだし、
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉| これは宗矩自身の実感も伴ってのものだろうさ。
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 武蔵はその点、一貫して「客分」だったからな…。
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 待遇は相応だったが、支配者の立場になったことはないし、
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| だからこそ、一般の武士を基準にした話になったのだろうが。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
967 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:39:22 ID:TsshLyZc0 [22/45]
/ ̄ ̄\
/ _,ノ `⌒ 個人的にポイントになると思うのは、
| .( ●)(●) 二人が「大なる兵法」…特に統治について語る際、
. | (___人__) 宗矩は、家光の立場を踏まえ、かなり具体的に述べているのに対し、
| ノ .武蔵は、大工などの例え話で済ませているところだな。
.| |
人、 | これは、直接の政治の現場、それも現に天下を支配している
,イ:. ト、ヽ、 __ ,_ ノ 幕府中枢に近い立場にいた宗矩と、
,. -ーー -‐ ´:::::::::::::::::::::::::::::7 .あくまで客分であった武蔵とでは、
/..:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ト、 .政治に対する実感がまるで違ったのが理由と言えるだろう。
.::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. \、_
::::::::::.\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::..... ヽ その意味では、武蔵が「大なる兵法」に言及したのは、
:::::::::::::...ヽ:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::...ヘ、 .あくまで自身の兵法の普遍性を強調することが
:::::::::::::::::...ヽ::::::、-─────- 、_,. --──ー、 メインだったのかもしれんな。
::::::::::::::::::::::::::::// ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`ー´ ̄ ̄ ̄ ̄/
:::::::::::::::::::::::::// / / /
:::::::::::::::::_//__ ./ / /l _
:::::::::::::::{ _____ `ヽ / / /:::.l / /
::ー::::::{ _____}`'ー'´ ./ / // ~""''' ‐- ...,,__/ /
:::::::::/ _____} ./ / // // /
、::::/ ____} / / // // ,/´)
:::::/ ̄ ̄ ̄ヽ ./ / // // L,.-'´}
/ ヽ─-、./ /,.ー// // ,.-'´ ./
l ヽ:::::::::::::::::::// // / ̄ ̄ ̄ヽ
ヽ::::::::::::::// //,./ ヽ
ヽ::::::::// ,.</ l
ヽ ̄~""''' ‐- ...,,__< // /
____ それを言うと、
/ \ 「武蔵は家伝書の内容を忠利から聞かされていて、
/ _ノ ヽへ\ そこで自分も大なる兵法とか言い出して云々」
/ ( ―) (―) ヽ とかいう話になりそうなので、ちょっと微妙だお。
.l .u ⌒(__人__)⌒ |
\ ` ⌒r'.二ヽ< つか、家伝書の方が成立年代が先な上に、
/ i^Y゙ r─ ゝ、 内容的にも共通するところがある分、
/ , ヽ._H゙ f゙ニ、| 何かと五輪書の解説で家伝書が引用される事が多いけど、
{ { \`7ー┘! .微妙な引用のされ方が多いのは勘弁して欲しいお…。
968 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:39:56 ID:TsshLyZc0 [23/45]
/ ̄ ̄ \ (
/ ⌒´ ⌒ ノノ 少し話を戻すと、
>>862で述べた構の役割の違いについて、
| ( ●)(●)(,ヽ、 (( 宗矩は「切られないため」とし、武蔵は「切るため」と正反対だったが、
.| (___人__) r__i____ ノ これも、「誰に説いたか」を踏まえて考えれば、一目瞭然の話になる。
| √丶丶丶┬─'"'
| | ) j 戦に於いて、大将が切られたら、いくら戦に勝っても意味がないし、
.人、 ヽ´ ,/ 兵である武士たちが、戦場で敵を切らなければ、戦で勝ちが得られない。
_,/::ヽ、.,ヽ., __ ( r
_, 、 -一 ''"::::::::::::\::::::::ー-- r / ⌒ヽニ- 、. 平時に於いては、人を切るのは良くない事だが、
/;;;;;;::゙:':、:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::V/....., ̄ v,;,ヽ 襲われたなら、切られぬために身を守る必要はあるし、
丿;;;;;;;;;;;:::::i:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;( ;;;;:::::::::::... ',;;;;| 主命などで止むを得ない場合は、やはり切らなければならない。
i ;;;;;;;;;;;;;;;;;:::|;;;:::::::::::::::::::::::::::::::::::;;;;;;ハ :;;;;;;:::::::::.. ',;;
/ ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::::!;;;;;;;;;;:::::::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;ハ ::;;;;;;;;::::::::. ', まあ、そういう話だな。
-―─- 、 【構の目的が違う理由】
/ \ ・宗矩が「切られない事」を構の目的としたのは?
′ ⌒ ⌒ , ⇒大将が切られたら、戦に負けるから。
i ( ―) (― ) i
| (__人__) | ・武蔵が「切る事」を構の目的としたのは?
、 ノ ⇒戦場で兵が敵を切らなければ、戦に勝てないから。
⊂⌒ヽ > <_/⌒つ
\ 丶′ 7 事情を踏まえてみれば、簡単な話だお。
\ ノ ト、_/ 「誰が使うかが違うから、目的も違う」ってだけだお。
/ / / ´ {ミ丶 ヽ
,' / / / }ミ、 ヽ '.
|, 〃 , ´ ̄ `ヽ '. そもそも、宗矩を召抱えた家康自身、
| / ネ.π '. } l
, - ―<! { 木又 } i! {⌒ヽ .「家臣が周囲にいる貴人には、
/___ | ≧ェ.、 rィェ彡 i! '. \ .最初の一撃から身を守る剣法は必要だが、
/´. -‐- 、`ヽ.| | ト ! i! .l 丶 .相手を切る剣術は不要である」
' , ´ ヽ | |〈__ ー|‐`, } i! .|、 }ヽ
, -/ / } rくWWW/ ハ i! .|ヾ:、 ノ } と言っておる訳だからな。
{ ' ' ノ .i! 、ト、` ̄ ' イ/リ |ヽ、`¨´ / 家光に教授するなら、まず守りを主眼とするのは当然だろうよ。
| { { / ハ ト、 T77´,//ハ !'//`Y´
| i! '. / イ '. |ヽ }/ i !// // |///∧
|人 `ー一 イヽノ l .K ///リ/,イ// !////ハ
969 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:40:49 ID:TsshLyZc0 [24/45]
___
,,.-''"´ ` .、 あと、冒頭(
>>853)で話に挙がった
/ ヽ 宗矩が「無刀」を説き、武蔵が「二刀」を説いたのも、
./ ', 目的の違いを考えれば、どうして違うかわかるだろ?
l l
/ l 【兵法家伝書】
〈`ヽ、 | 『無刀とて、必ずしも人の刀をとらずしてかなはぬと云ふ儀にあらず。
|ミ=-  ̄ ̄`ヽ / 又刀を取りて見せて、是を名誉にせんにてもなし。
l ミ=-‐ .′ わが刀なき時、人に斬られじとの無刀也』(活人剣・無刀之巻)
l/ ヽ ,'
( __ 人 ) { 【五輪書】
/ // )ニ=''´ ./ .| 『一命を捨つる時は、道具を残さず役にたてたきもの也。
ツ二二二/ ./__ ./ | 道具を役にたてず、こしに納めて死する事、本意に有るべからず。
/ / /''"__,ノ ′ .| (中略)
/ / / /,.-''")_ _,,-''´ / ヽ__ .此一流において、長きにても勝ち、短きにても勝つ。
,' /'´,,..-''´| / _ \/`ヽ、 .故によって太刀の寸をさだめず、
_ ´l / ./ | ´ / / \ .何れにても勝つ事を得る心、一流の道也』(地之巻)
,,..-''" | .l ./ / イ / / \
____
/ \
/ \ , , / \ 「切られない事」を重視するなら、
/ (●) (●) \ .刀がない時、不意を打たれた時にでも
| (__人__) | .身を守るための「無刀」が説かれるのも当然だし、
\ ` ⌒ ´ / 「切る事(勝つ事)」を重視するなら、
| | 手持ちの武器を存分に使うための「二刀」を説くのも
|| / | また当然、ということかお。
|| ト||
<三三三三三三| |(_) …確かに、これは技術というより、兵法観の違いの話だお。
ヽ |/ レ
>__ノ;:::......
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ そもそも、単に二刀というだけなら、
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 宗矩も二刀を用いる場合の教えを説いておるしな。
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 【月之抄】
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| 『老父云、二つハひとつ也。二つ一度に打事なし。
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ 一ツハタテニ用、一つを遣心持也。
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ .うち物と手利剣ヲ思ふへし。身ノかゝり、二寸五分ノ心得専也。
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | かけめの心持ニテまつ一方打ふサキ、仕をふさぐ心持専也。
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、 脇差・小刀・サヤ・ハナ紙・道具ニ取テハ、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、 リウシケン・サンクワウ・車ヒシ・野ロマエなとゝ云ものも、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ ナゲ出し、敵の気ヲちらして可勝、ハかり事也。
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉 所作に気ヲトラレヌヤウ専也』(二刀仕掛之心持之事)
970 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:41:32 ID:TsshLyZc0 [25/45]
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ まあ、この件については、こんなところか。
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', .随分長く掛かったが、二人の兵法観の違いが、
, ' / / //ヽ、_ゝ イ_ノ| | 立場や経歴に大きく左右されていたことはわかった。
//イ / /::::、 '´ ` '|| | .しかし、これだけ違いが出るとはな…。
/ /イ / |::::::| / _┗' イ 、|
/ / |::::::| │ r---ヽ:;/ | |ヽ γY⌒ヽ 特に宗矩の家伝書に於ける兵法観構築の経緯は
/ / ,イ ,' | ハ:::::| / ;|/ | |\ 乂 ) 面倒なものだな。
/ / / ! \| | ./! ! | ゝ、_ノ
, / / / |┐ \ `─彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
/ ̄ ̄\ ( ;;;;(
/ ._ノ ヽ、\) ;;;;)
| (●)(●)/;;/ まあ、面倒なのは仕方ないだろ。
| (__人__)l;;,´| いつの時代も、偉いさんの相手は面倒になるもんだ。
| ./´ニト━・' .l
| .l _ニソ } むしろ、開き直って「役に立たなくてもいいんだよ!」とか言って、
/ヽ、_ノ / .既存の兵法を押し付けるよりは、ずっと誠実だと思うぜ。
__/ / ノ__ .単に立ち合うための兵法で済ませば、新しく考える必要もないから、楽なのに。
/ / / `ヽ.
/´ ./ ,. ヽ. . まあ、その場合、柳生家改易待ったなしだっただろうけど。
ト、_,/. |、 ヽ
| |/ /
____
/_ノ ヽ\ しかし、
/ ( ●) (●)、 いざ、兵法を語るについて、
/::::::::⌒(__人__)⌒\ .片や兵法に対して無条件に近い肯定感を持ち、
| |r┬-| | 片や一度否定を経てからの肯定という形を取るってのは
\ `ー'´ / 確立の経緯からして正反対なのも合わせて、面白いもんだお。
⊂⌒ヽ 〉 <´/⌒つ
\ ヽ / ヽ /
\_,,ノ |、_ノ
971 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:42:01 ID:TsshLyZc0 [26/45]
,ノ ,, -‐
/ _ -‐
,/ , '´
/ ,/
/ / , -───-= 、
/ /. __ / \
l ノ. / .ヽ / \
/ / l. ', / ヽ
./ / .,-‐、 l _ _ } i 丶
; / ∠,,,,,.」 -‐、 ! l 、 l
!;_,, -‐''"", .-‐'⌒ヽT l l _ノ'′ `、 | そうだな。
ゞ-‐''"/ __ノ l ! i .(● ) "ー-- / でも、二人の思想面において
γ / ! ', l (● ) / 相違点ばかり挙げたが、共通点もあるんだぜ?
ヽ ´L_⊥ -―---' - 、 ; j /
l i ,) _,.、 -‐' ヽ-‐'"ヽ. ) /
ゝ , -― ' ´ ̄ ̄  ̄ ヽ:.:.:.:..:.:. j ` ー-`ー-一'′ /、
ノl _ _, イ.:.:.:.:.:.:.:.:. ヘヾ /ノ.:.\
/.:.:.!l、 _ -‐' ´ ! /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. iヘ ,//.:.:.:.:.:.:.\
/.:.:.:.l l \.´ ! j/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:. /`i -= - /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
___
/ \
iニーヽ /─ ─ \ えっ?
iニ_  ̄ ̄/(●) (●) \ 技法的なところではともかく、
⊂ノ ̄ ̄| (__人__) u | 思想的には正反対と言っていいくらいだったのに?
⊂ ヽ∩ `ー´ _/
'、_ \ ) …何が同じなんだお?
\ \ / /|
|\ ヽ / |
972 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:42:23 ID:TsshLyZc0 [27/45]
/ ̄ ̄\
/ ノ \ \ 「兵法上達のための心得」だよ。
| .(●)(●) | 要は、
. | (__人__) |
| `⌒´ | ) ;;;;) 「強くなるためにどうすればいいか?」
. | | .) ;;;;)
. ヽ } /;;/ という話だ。
ヽ ノ .l;;,´
. / ∩ ノ)━・' なお、宗矩の言については、今回は家伝書よりも、
( \ /|_ノ ヽ 「葉隠」と「柳生家家憲」の方が分かりやすいのでそちらを引用した。
. \ "" /_ノ | .前にも書いた通り、家憲自体は石舟斎の著だが、葉隠の記述を見るに、
\ /___/ ..宗矩は兵法修行の心得として、石舟斎同様の言を用いたと考えていいと思う。
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_| 【葉隠】
| |葉| | ._ .|_| 『柳生殿の、「人に勝つ道は知らず、我に勝つ道を知りたり」と申しされ候由。
| |隠| | |柳| .|_| 昨日よりは上手になり、今日よりは上手になりして、一生日々仕上ぐる事なり。
|.  ̄ | |生| .|_| これも果はなきといふ事なり」と』(聞書第一)
| . | |家| .|_|
| . | |家| .|_| 【柳生家の家憲(天正十七年)】(※石舟斎著)
| .| |憲| .|_| 『一文は無文の師、他流勝つ可きに非ず。きのふの我に、今日は勝つ可しと分別し、
|___ | . ̄ .|_| 上手奇妙は、稽古鍛錬工夫上成ると』
└── |________|_|
.└───────┘
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_| 【五輪書】
| ._ .|_| 『此一書の内を一ケ条一ケ条と稽古して敵とたたかひ、次第々々に道の利を得て、
| |五| . |_| .不断たえず心に懸け、いそぐ心なくして、折々手にふれては徳を覚え、
| |輪| . |_| いづれの人とも打合ひ、其心をしつて、千里の道もひと足宛ずつはこぶなり。
| |書| .|_| 緩々と思ひ、此法をおこなふ事、武士のやくなりと心得て、
|.  ̄ .|_| けふはきのふの我にかち、あすは下手にかち、後は上手に勝つとおもひ、
|. .|_| 此書物のごとくにして、少しもわきの道へ心のゆかざるやうに思うべし。
|. .|_| (中略)
|________.|_| 千日の稽古を鍛とし万日の稽古を錬とす。能々吟味有るべきもの也』(水之巻)
└───────
973 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:42:49 ID:TsshLyZc0 [28/45]
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \
(●).(● ) |. 少し長めの引用になったが、
(__人___) .| 特に似通っている箇所をいうと、
'、 |
| | 『昨日よりは上手になり、今日よりは上手になりして、
,. -ーー| /レ、 .一生日々仕上ぐる事なり』(葉隠)
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ 『けふはきのふの我にかち、あすは下手にかち、後は上手に勝つとおもひ、
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ (中略)千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす』(五輪書)
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j この辺りになるな。
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: /
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: /
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: /
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: /
____
/ _ノ ヽ_\ 「昨日よりも今日、今日より明日、
. / (●) (●)\ 強くなるために毎日稽古しろ。
l^l^ln ⌒(__人__)⌒ \ これに果てなんかないぞ」
ヽ L |r┬-| |
ゝ ノ `ー‐' / ってことかお。
/ / \ …なんか当たり前過ぎて、共通点っていわれても、
/ / \ ピンと来ない感じだお。
. / / -一'''''''ー-、.
人__ノ (⌒_(⌒)⌒)⌒))
974 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:43:22 ID:TsshLyZc0 [29/45]
/ ̄ ̄ \ )ノ だから、だよ。
/_,ノ ヽ、,__\ (( 兵法の意義や目的について、あれだけ対極の主張をし、
-、 .| (● ) (● ) | ノ' そこに至る経歴も、それを語った状況も全く違う二人が、
ヤ ', | (___人___) .| ,i'
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::. 「じゃあどうやれば(兵法は)上達するんだ?」
', j / / .| ____/./
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 という問いについては、
. l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` {
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _ 「毎日稽古しろ」
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ という同じ回答を返してるんだ。
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l つまり、将軍だろうが、一般の武士だろうが、
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l 上達したければ、毎日稽古するしかない、という話だな。
_____
/ ― \ でも、宗矩は、心法をやれば上達するって
/ノ ( ●) \ 家光に言ってなかったかお?(※)
. | ( ●) ⌒) |
. | (__ノ ̄ / ※【徳川実紀】
. | / 『宗矩いまは聞えべき法はみなつきぬ。
\_ ⊂ヽ∩\ この上は御心にてをのづからその妙をば得させ給ふべし。
/´ (,_ \.\ ただし宗矩若かりしとき禅僧にちなみ、悟道の要旨を聞て
. | / \_ノ .頓に道にすすみたりと覚えし事の候』(正保三年五月二八日)
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ 家伝書を読む限り、
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ', 心法は、更に上達するための手段に過ぎん。
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| |
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 『病をさるに初重・後重の心持あること』
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、|
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ という家伝書の記述を見れば分かる通り、
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\ 心法を修めるにも、また日々の修行が必要で、
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! | .聞いて悟って即上達、というような話ではない。
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、 .それに、あれは沢庵和尚と家光を引き合わせるための
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ .方便的な面があったからな…。
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
975 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:43:51 ID:TsshLyZc0 [30/45]
.___
/ ヽ また、二人とも「奥義」や「秘剣」の類を
./ ヽ ほぼ否定している点も共通しているな。
ハ、_ 丶
ヽ( ●) .\ .┌────────、 極意の類があること自体は否定していないが、
ヘ ヽ, \へ........... | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ..「それを出せば勝てる技」の類としては扱っていないし、
': '、_/ ./::::ノ:::::::::::::::::::: | | ,.-、 .| むしろ特別なものではないという扱いだな。
:. //\ /::::/::::::::::::::::::::::ノ| | / /'} .|
''" \__/\/::::/:::::::::::::::::::::::/ .| |/ / ,ハ |
〈::::::::::::::::::::::::::::::::::::ノ、/ / / .ノ |
___/:::::::::::::::/:::::::::::::/ / イ .|
./...:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::/ / ノ .|
/ .::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::} / |
_,,、....... --........,,,
,/゙,.. -―ー ,, `'''-、、
/ / 、,,, .`'-、 \
/ / .ll殺i_、 .ヽ. ..ヽ
/ . / " ,i"< .ヽ 家伝書における「平常心」や「無刀」はその典型だな。
/ . i',, ,, ;;ソー'''ッ', \
,' l;:;:,゙;;iii- 、 ,i.l二rミ';;./ i', `ー .【兵法家伝書】
. ! ,!;|,'..,;{゙l_,/./ .`''T゙゙´ " .| .『ならひをわすれ、心をすてきつて、
! .!゙"  ̄゛ ′ ,...! 一向に我もしらずしてかなふ所が、道の至極也。
.,! .! _,,,,,. /´;:;:| 此一段は、習より入りてならひなきにいたる者也』(殺人刀)
.l゙ .l'ー、 .、 ゙‐'ニ>-, .l .|;:;:;:;:|
.l .|;:;:', !', /ニ',;;二ニコ;.l.,l} .!;:;:;:;:} 『無刀は、当流に、是を専一の秘事とする也。
.! !;:;:.! .',゙ゞ゙'";:;:;:;:;:;:`゙;:;:;〈. :!;:;:;:;:l゙ 身構、太刀構、場の位。遠近、うごき、はたらき、つけ、かけ、表裏、
| .l;:;: l l';:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;_,,;:l''、.l !;:;:;:;| 悉皆無刀のつもりより出る故に、是簡要の眼也』(活人剣・無刀之巻)
| .!;:;:;',.|;:l',;:./''''''"゛ `| l;! .|;:;:;:;|
.| .l;:;: ! l}',′ │ ゙l .l;:;:,i| どちらも、「至極」「秘事」と称されてはいるが、
.! . l;:;:;l │ヽ ._,,,./ ゛ .l./ .! .前者は修行の上での理想の境地のことであるし、
| .',-.l ′ `゙´ / ! 後者はむしろ土台となるべき心得だからな。
l l \、 . ,/ !
.,! .l `''ー----‐'´ l
.! ! ゙
! ."
976 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:44:35 ID:TsshLyZc0 [31/45]
__
//
//
//
// そういえば、「進履橋」でも
___ // 『右の数々を能々習ひ得て、此中より、
/⌒ ⌒\ // 千手万手をつかひ出すべし』とも書いてたお。
/( ●) (●)//
/:::::⌒(__人__) // ヽ 【”秘剣発動” 効果:相手は死ぬ】じゃなくて、
.| |r┬-|.// | 逆に、その時々に応じて習い覚えた技を使いこなせ、
\ `ー"// ノ ということだお。
( i__ .i⌒L_丿
`ヽ、 ⌒)
 ̄ ̄`"''"
_,,、- -
._-ー ̄:;:;:;:;:;:/ \
_ y‐':;:'゙;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:/ /
, __ _ _∠;:;:_;:;:;:;;::;;:ィ‐'Ⅳ / 武蔵の場合はもっと率直に、
,/ `ヽ , ' \ ̄ ∠ / .極意や秘伝の類はあるにせよ、
.∠ \_∠/三Y三ヽ \ ._|\/ それを特別視する必要性などないと、はっきり言ってるな。
l / ∠ ̄ ヽ ヽヘ__」  ̄
∟_ ___ | ,′ 殺 ヘl||_____________,_,,-l^! !^l_ハ
ゝ |二|二厂|二|l||ゞ> <・ゝ||l|二|二二|二二|二二|二二|二二|二二。≡゜=。|
.l |二|二厂|二|l||ヘ ヽ ハ||l|二|二二|二二|二二|二二| r-、 |ニニ゜≡。=゜ |
.| ∠二二二二 ハ|l | トエイ | |l|二二二 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| l从仆厂介介√
.| ,/'////////// lゝ _ ∠l|ヘ //////`ヽ l! ハ l
∠′ ヽ---―--Ⅵ|l|「ニニニニ」|!l||Ⅵ---―-ィ ゞ;;;;;;;;;;ィ
.\ / /;;;;;;;;;;;;Ⅵ! l|l ト`丁 ' | | |Ⅳヽ;;;;;;;;;;;;;;;;\ /;;;;;;;;;;;;/ 【五輪書】
∠∧ ./;;;;;;;;;;;;∧ `ヽ ヽヽl l | ∧;;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ /;;;;;;;;;;;;/ 『兵法の事において、
∠三三/;;;;;;;;;;;;/,' ヽ ! ト 仆 |. \;;;;;;;;;;;;;;;;;;\ ./;;;;;;;;;;;;/ .いづれを表といひ、何れを奥といはん。
∠ 三三 /;;;;;;;;;;;;/ l |\ | \| l√ \;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ /;;;;;;;;;;;;;/ 芸により、ことにふれて、
∠三三三/;;;;;;;;;;;;/ | l \ \ | |ヘ ∧ 丶;;;;;;;;;;;;;;;;个;;;;;;;;;;;;/ 極意・秘伝などいひて、奥口あれども、
.∠ 三 三三/;;;;;;;;;;;;/ 三| \ ヽ ┤ l三三|゛ ヽ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/ 敵と打合ふ時の利においては、
∠三三三三/;;;;;;;;;;;;/三三.ヽ \| | /三三ヘ \;;;;;;;;;;;;;;/ 表にてたゝかひ、奥をもってきると
. .∠三三三三 !;;;;;;;;;;;;;;|三三 ゝ‐‐‐‐‐人‐‐‐‐‐‐∠三三三ヘ -ー′ いふ事にあらず』(風之巻)
977 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:45:49 ID:TsshLyZc0 [32/45]
, -───-= 、
{:.:.. ヽ / \
ヽ..:.⌒ヽ、、 ノ / \
`ー⌒ヾ( / ヽ
_.,..::::..ノ.:)i ',
.:.:::"´....:.:.:.:..:′l 、 l まあ、新陰流にせよ、二天一流にせよ、
.i;;;;;:"´ l _ノ'′ `、 | .○○剣とか××斬というような、
\\ ,. -‐'fフ i .(● ) "ー-- / 必殺技的なものはないからな。
\\r‐´r‐、 l (● ) /
ノ \\」 .l; j / アクション的には実に見栄えのしない話だし、
i _ _ .) ,'‐' ヽ-‐'"ヽ. ) / .創作では扱いづらかろうがね。
! `{ ノ:.:. j ` ー-`ー-一'′ /、
| ー ― 、}:.:.:.:.:. ヘヾ \,r'⌒ヽ /ノ.:.\
l ,.-r /.:.:.:.:.:.:. iヘ (´ `) /.:.:.:.:.:.:.\
/i! 〕〈.:.:.:.:.:.:.: /`i -=- ゝ,__,ノ´/.:.:.:.:.:.:.:.:.:..\
____
/ \ ハハッワロス。
/ ─ ─\ 別に創作で使われるために技がある訳じゃないから、
/ ⌒ ⌒ \ そんなもん気にする必要ないお。
| ,ノ(、_, )ヽ |
\ トェェェイ / いざとなればビームでも出しゃいいんだお。
/ _ ヽニソ, く
978 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:46:33 ID:TsshLyZc0 [33/45]
__
/厂`
( {_}三≧、
.\ /\| , '´ ̄`<二ニニァ
..\\ // \三/_____
. \\/) // , }\三三彡く
X/yヘ、 // /} } \\ ノ| \二二ミ辷ー‐'
└{ヽ'´_'_'`y'イli Х | i i| l ヽ ∨ 、\  ̄`ヽ えー。
`Y´:// / レ笊ミ、| i\ i| | }/ 、 \\ ビーム撃つ剣技とか嫌ですよ。
. }:(:: / l l/んリ l l ̄▽∀=‐- | i \ i⌒ヽ
. |: /レ1 | } `´ノ ∨ イ7ぅ=ァ\./ i| i i \厂: ̄: ̄: ̄: ̄>ァ
. ∨:::::|│∧ _ ヽゞイ i| | | i\}: : : : : : : : : //
\И/}.∧ `廴ァ // // ∧l| | | }: : : : : : : : : //
∨ Иrへ -‐<// // / 从人{∨: : : : :: : :/ /
∨::::// : :∧ /イノiル'´ ̄:{ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /
}: //: : // }/: : : : : : : : : |________/
V/: : / {/: : : : : : : : : -‐、: :\
//: : :{/ : : : : : : /:; : : : : \: :.\
// : /: : : : : : :./ : /: : : : : : : \: : ',
トヽ、 ,ィ'⌒`ヽ. ./;;;;;;;;;:/
,、 __......_ ヘ◇>'ィ::`!i::: ∧. /;;;;;;;;;:/
| `ヽ、_,ィニ´.....::::::::::::::`ヾ∨<.__j !:::: ∧. /;;;;;;;;;:/
.ト---.、i!ト、 . :::::::‐=三三メ∧ヾ、´::::::: ∧/;;;;;;;;;:/
.∨、.:::::i||ili!. 、 . :|:::::彡".:::::;彡"ノ:ハ:、\:::::: ∧;;;;;;;:/ まったくだ。
∨、::::i|!ili!. .ヽ ::i!::;':::::;彡':::::彡':;i:i:i:::ヽ':::::::: ∧/ ああいうものは雅さに欠ける。
. ∨ヽ|!'"´ヘ ,.:. :::|::::::‐=彡'.::::彡;i:i::|:、:::::::::::::: ∧
! :::゙i ∨_;::. ::∨:;ゝ、彡'::::;:':/;:::!;;∨:::::::::::: ∧
∨::| ,ィ='´、 :::.:::::∨´';ヽ::/::/::/:'ノ;;;: ∨::::::::::: ∧
∨`y'ィ'_,,メ.::::::::::ヘ、 /.:':::/::::::// ∨::::::::::: ∧
. !::ノ ヽ:::::::::::トヘ、:::::::::::/. ∨::::::::::: ∧
. |/ ヽ::::::::::l ゛゙ヾソ;、 ∨::::::::::: ∧
!`ヽ、,._, |!:::::::::l ヘ、___ ∨::::::::::: ∧
| . ::::`、 |!::::::::::| _,,..=='‐―‐| ∨::::::::::: ∧
| : :::: ハ__,.'´!:::::::::::l´: : : : : : : : :,;,;|_ ∨::::::::::: ∧
| : :::: |;;;;;:/,;i!:::::::::::!: : : : : : :,;,;ィ、:::::ヽ._ ∨::::::::::: ∧
;: ::: |/ |i:.|!:::::::::ノ: : : : : : : : ヘ∨::::::.\. ∨::::::::::: ∧
|
| ̄ ̄\
| _ノ \\ 唐突に出てきたなオイ。
|(●)(●)i 誰だアンタら。
|.(__人__) i
| .` ⌒´ |. ̄ ̄\
| . . ノ_ノ ヽ、.\ ぶっちゃけ
|. . / (●) (●)ヽ アンタらの秘剣もビームと大して変わらないから
| ヽ (__人__)' i お帰りはあちらで、どうぞ(迫真)
| | `⌒´ /
979 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:47:14 ID:TsshLyZc0 [34/45]
<ちぇっ、つまんないですね…。
<うむ。
___
/ \
iニーヽ /─ ─ \ …変な横入りがあったけど、
iニ_  ̄ ̄/(●) (●) \ こうして見ると、立場や経歴を離れた「一兵法者」としては、
⊂ノ ̄ ̄| (__人__) u | .二人とも、あまり考えに差がないような気がしてきたお。
⊂ ヽ∩ `ー´ _/
'、_ \ ) 他にも共通点ってあったりするかお?
\ \ / /|
|\ ヽ / |
/ ̄ ̄ \
_,.ノ `⌒ \ そうだな…他に共通点としては、宗矩も武蔵も、自身の兵法に、
(●).(● ) |. 確たる自信を得たのは五十歳を過ぎてから、と言ってるんだな。
(__人___) .| .無論、それまでも兵法を修めてはいたが、
'、 | 自分が納得できる境地に達したのはその頃だという訳だ。
| |
,. -ーー| /レ、 【兵法家伝書】
/:::::::::::::::: ヽ__、____,. "/::::)- 、._ 『予人と成り、手に刀柄を握つて父の業を継ぐと雖も、未だ嘗て自由ならず。
l:::::::r/::::::::::::::「二二二 :::::::/::::::::ノ:::::..ヽ 漸く知命(50歳)の年を過ぎ、此の道の滋味を得たり』(家伝書後書)
|::::::::_,,. -‐、.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧
::ニニニニ/,. -‐ \::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.∧ 【五輪書】
// ノ -‐ V:::::::::::::::::::::::::::::,′::::::::::::::::: j 『我、三十を越えて跡をおもひみるに、兵法至極してかつにはあらず。
`-iノI_ノく__ヽ `7ヽ::::::::::::::::::::l::::::::::::::::::::: / おのづから道の器用有りて、天理をはなれざる故か。
|:::::l::::::::::::::へ___/:::::/:::::ヽ、::/:::::::::::::::::::: / .又は他流の兵法、不足なる所にや。
/::::::::l::::::::::::::::::ヽー::::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::: / .其後、なほもふかき道理を得んと、朝鍛夕錬して見れば、
/:::::::::::l:::::::::::::::::::::ヽ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: / おのづから兵法の道にあふ事、我五十歳の比也』(地之巻)
_,.-'"´ 三ミ、ー-、
/ / ィ /⌒`⌒ヽ\
/ / / / 殺 | ヽ
/ / イ´^ー、 ,.. 、)、 ',
, ' / / //ヽ、 ゚ゝ イ ゚ノ| | 宗矩が「父の業を継ぐ」と言えるタイミングとしては、
//イ / /::::、 '´ ` ̄'|| | 柳生家の家督を継ぎ、秀忠の指南役となった慶長六年…
/ /イ / |::::::| / _┗' ,イ 、| つまり31歳の頃という見方もできるから、
/ / |::::::| ┃r=━┫;:/ | |ヽ その意味でも、似てると言えるかもしれんな。
/ / ,イ ,' | ハ:::::| /!ー-、K ;:/ | |\
/ / / ! \| | |::::::::::|! /! ! |
, / / / |┐ \ `━彡' | !ヾー-、
/ /イ | ハ! |==、  ̄乙/{,川ハ! `ヽ、
, ' / イ 川ハ、o | `='"oネ、リヾ、 ヽ
/ 人 リヾ `ー、_,彡'"|,リ' ヽ _,. ' 〉
980 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:48:01 ID:TsshLyZc0 [35/45]
/ ̄ ̄\
/ .\, 、/\ _,, さて、ここまで宗矩と武蔵の兵法観について、
| (●) (●) .| l;l 同じだったり、違っていたりと、色々な事項を挙げたが、
. | (__人__) .| _,_,|,|_, 最後に、根本的なところで二人が共有している価値観を話そう。
| `⌒´ |, ト-=y 丶 むしろ、そこが共通するからこそ、比較が成り立つ。
. | } ヽ `i, ̄‐^l
. ヽ } ヾ~ ` i, 宗矩と武蔵、ふたりの根底で共通するのは…
ヽ ノ _ ヽ、 ;i,
,,_,i y,ソト,,__ ヽ、 ;i,
,/r-'"j / / ii, `ヽ、-x,,゜r ;i
,,/'/__.L、 /ヾ、"i `ヽ `;i i,
,/ /_iーヘ,ヽ、 , /i" ヽ、 i `、'i iヽ、
_,) ヽ " ネメ、_ii"~ _Yri l, ヽ、
_,,,>t 、ヾ、 ゞ;;/ / ,¬ V⌒l
,y`;,,__ ,i /ii' / r-/| l l
_/^,,, ヘ l /iil / l"v' y } l
v=4⌒ヽ、 j --,,,if /iii| ,, 〈-ヘ_,、 <、 / i|
ヽ, ,, i、 _,,tv /iiiii ム、 / / ヽ、ヽ、_x--ー‐- 、
__,,,l ii Yi___,lk / }iiiiil ヘ __,,,,,,___/ `x'"^ ,,,,, \
^ ̄⌒ヽ ヘ、 ,ノiiiii|、__,,,y,,_,,,/ ヽ、 ,/ ,,,-‐‐ `',, ヘ,、
,,,_ \ ヽ `>- liiiiiiil ¬">-- ヽ ヽ i i/ _,, / } i
"- ,, } / /iiiiiiil / l l l lK ^~' / |
\ーヾ /iiiiiiiil / i i | |i`'ヽーミ_/ /
981 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:48:31 ID:TsshLyZc0 [36/45]
, |
,,..イ |
γ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ l _,,,...イ´ | |
| 「自身が兵法者であるという自覚」と | .ヽ、ヽ __,,..-t''"´:::::::::::| l |
乂_______________ノ .| ヽ:::::::::::::ノ / .|
ヽ、  ̄ / |
` |
|
|
ヽ |
| |
.人 / |
ミミミミミミミミi ヽ ヾミツ''' ヘ彡ヽ リ/
ミミミ/ ̄ヾツ ヽ ヽ ) |三キ´((ミ、_ノ
ミミ/:::::::::: \ i | |、 ヾヽ
ミ/::::::: ,ァェ三ミミミャ、 ヽ .i l / ri》ミニミャ、、 γ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
゙:::::::: ' ヾミッ、,, 丿i::i i ./,ッ彡ノ‐-─、ヽヽ、 | 「己の兵法に対する強い矜持」だ |
:::::::::::: ‐-、__、ヽヾミミ彡ノノ彡'_ノミミミヽ-彡ヾ、 乂_______________ノ
ヽ:::::::::. ` `‐-',‐`ゝ、゙' /-‐'´)ミミミ=-`´ヽ ヽ
:::::i-、:::::  ̄ノ ..:ヽ !ヽ | ヾミミヽ
::: |:::::ヽ ::: /´/ ..:::::::_i i ::/ミ==-
:::..ヽ::::__ノ 、 ( ` )/ミヾ))
:ヽ、>´: ! i ⌒ ''´/ミ<ハ
:::::::ヽ:::: ヽ ,/,二ニ'フ/!i|川 リ
::::::::::ヽ:::: ) , =ニ、_'ー-' .i'-‐┴‐-=、_
:::::::::.. ヽ、_ヽ `ー‐,';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;`ヽ、
`'ヽ‐::::: ゙ヽ、:: /ヽ、, /;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ヽ、
;;;;;;;;\ ヽ、;::.... ノ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;i
982 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:49:02 ID:TsshLyZc0 [37/45]
/ ̄ ̄ \ )ノ
/_,ノ ヽ、,__\ ((
-、 .| (● ) (● ) | ノ' 自分の兵法が、単なる小手先の技術に留まらぬ、
ヤ ', | (___人___) .| ,i' 武士が修めるに足る「法」であり「道」だとする強い誇りだ。
i. l ,.-、 | ` ⌒ ´ | .::.
', j / / .| ____/./ どの時期に、どんな立場で、誰に向けて、何を重視して…、
ノ_..ヽ-、′,' ', (____././ニ`、 と、兵法を語るに際しての状況の違いはあったにせよ、
. l .___ ヽノ __ jハ. __ 、__ノ__,. -、 ` { その根底にあるのは、間違いなく、
Y )ハ.‐ ' ´ ..::ヽ:::::::::::::: ノ,. - トー- 、 _ 「自分の兵法に対する自信と矜持」であったろうよ。
ト.  ̄ ̄ 〕y:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::i ャ '!,:::::::::::..\
ハヽ 一ニイ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::'ヽ_〉 i,::::::::::::::::..ヽ そうでなければ、こんな記述はないさ。
/ .::::::::::::::::: 〉:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::八 /`x--、:::::::: l
/ .:::::::::::::::: /::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::〉::::/:::::::::::::::\:::: l
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【兵法家伝書】
| |兵| . |_| 『此の一巻を進履橋と云ふ事は、
| |法| . |_| 張良、かつて石公に履をすすめて、
| |家| .|_| 兵道を伝へて後、張良がはかりごとにより、
| |伝| .|_| 高祖天下を治め、漢家四百年を保ちし也。
| |書| .|_| 是によりて、其心を取りて進履橋と名付けたるなり。
|.  ̄ .|_| 此の一巻を橋となして兵法の道をわたるべしと也』(進履橋)
|________.|_|
└───────
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~|_|
| ._ .|_| 【五輪書】
| |五| . |_| 『夫兵法といふ事、武家の法なり。
| |輪| . |_| 将たるものは、とりわき此法をおこなひ、
| |書| .|_| 卒たるものも、此道を知べき事なり。
|.  ̄ .|_| (中略)
|. .|_| 武士の兵法をおこなふ道は、何事においても、人にすぐるゝ所を本とし、
|. .|_| 或は一身の切合にかち、或は数人の戦に勝ち、主君の為、我身の為、
|________.|_| 名をあげ身をたてんと思ふ。是、兵法の徳をもつてなり』(地之巻)
└───────
983 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:49:53 ID:TsshLyZc0 [38/45]
, -───-= 、
/ \
、 / \
, / ヽ
_ ノ i ',
( ( l 、 l 大仰な前置きだけなら他の伝書でも珍しくもないが、
) l _ノ'′ `、 | 伝書本文が、書いた人間の心が観えてくる程のものだからこそ、
,、,、 .i .(● ) "ー-- / この前置きを置いた、二人の自信と矜持が浮かび上がってくる訳だ。
\\ l (● ) /
\\ /) j / 宗矩と武蔵──。
,.、 -‐>、丶/)-、 ) / 立場も経歴も違い、おそらく直に会ったことすらなかったにせよ、
/.:.:.:./,.=゙''"/'⌒`ー-一'′ /、 .同じ時代を生きた兵法者として、
/.:.:.:.:.:.i f ,.r='"-‐'つ /ノ.:.\ .相通ずるものがあったのだろうと、俺は思うよ。
/.:.:.:.:.:./ _,.-‐'~ ,//.:.:.:.:.:.:.\
./.:.:.:.:.:.:,i ,二ニ⊃ -= - /.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\
,, -‐‐‐‐‐‐‐-- 、
/ \
/ -─‐ ー‐-.\ 沢庵和尚が、宗門の違いを説いた話で、
/ ( ● ) (●) ';
/' / \ '; 『分けのぼる 麓の道はかわれども、同じ雲居の月を見るかな』
/ ( 人 ) i
| `'''''゙´ `'゙´ ! と歌ったけど、それに近い感じだお。
'、 / …そういえば、二人の伝書は「近世武道書の二大巨峰」と並び称されてるおね。
\ <
/ ゙゙̄'''‐‐‐----- \
___
∠三 / 三`ヽ
/三三 | 三三 ヘ
/ ,''"´ ̄ ̄`ヽ`l ヘ 「兵法」という山を、違う道から登った二人が、
/ ,' ! ヘ それぞれが着いた頂から、同じ高みを眺めて、
,′l∨_ 殺 _ ∨i !ヘ その思いを伝書として後世に残したという訳か。
∧ |ヾ -ゝ ハ∠-丿|| | ヘ
_,.-‐─‐-气 / |ィ  ̄ | ィ|| ! ヾ\ …随分と詩的なものだな。
/::::::::::::::::::::::::::::::弋l| ∧ | //| |ヾヾ\
/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| |/| | .ト──イ |//| |ヾハ-‐二ニニニ弋
\::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::| l | ヽ  ̄ /l/ | |::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヽ
``-圦::::::::::::::::::::::::| | | / >―< | .! |:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヘ
/ 介ー==∠| |√≡≡≡≡≡≡ ll | \二二二二二二二>
/ / l |!  ̄‐‐- 乂 -‐‐ l |l ヽヾ |
| .| | | \ \ | l | | !
984 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:50:17 ID:TsshLyZc0 [39/45]
╋━━━━━╋
┃ .最後に. ┃
╋━━━━━╋
さて、それじゃあ、 ■
>>1から見た宮本武蔵 ■
まとめと行こうか。 「生まれる時代が遅かった兵法者。
.ただし、早く生まれても、結局兵法だけやって過ごしてただろうし、
| .そもそも遅く生まれたからといって、別に不遇だった訳でもない。
| .割とイイ感じに人生満喫してたよね、この人(´・ω・`)」
/ ̄ ̄\
/ _ノ \. ■ 宗矩と武蔵の兵法観比較 ■
| ( ●)(●)
. | ⌒(__人__) ・技法的な面では共通点多し(修行観も似ている)
| `⌒´ノ
. | }. 。 ・運用面での思想はほぼ対極
. ヽ } / ⇒状況と経歴の違いが主な理由。
ヽ ノ ./ また、想定している対象が違う(「統治者」と「一般の武士」の差)
/ lヽ介/lヽ、 ,rE)
. | | ~ヾ/~ |. ソ◇' ・根本の共通項
| | ゚| |\/ ⇒自分が兵法者であることの自覚と矜持。
_ | | ゚| |______E[]ヨ____________________________
|\  ̄ヽ⌒ヽ⌒ヽ \
|\\ ⌒ ⌒ 甘 \
| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|
985 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:51:12 ID:TsshLyZc0 [40/45]
____
/ \ なんかいい感じに〆たと思ったのに、
/ ─ ─ \ 武蔵像の紹介、ちょっとぶっちゃけすぎじゃないかお?
/ -=・=- -=・=- \ .つか、.顔文字とかねーお。
| (__人__) U |
\ ` ⌒´ /
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ こんな好き放題生きたおっさん、どう言えってんだよ。
| ( ●)(●) もうちょい頭悪かったら、このおっさんのAA宛てちゃうぞ。
. | (__人__) (既に善鬼役で使ってるけど)
| ` ⌒´ノ ,r'゛ヾ
.l^l^ln } `‐= ) …まあ、ここまで頭悪かったら途中で死んでただろうけどな。
. ヽ L } ゝ-´ );;;;;;)
ゝ ノ ノ .) ;;;;)
/ / \ ./;;/
/ / \ .l;;,´
. / / |ヽ、二⌒)━・'
ヽ__ノ
=【もうちょい頭悪い版の武蔵の図】====================
,ィli,,ィ:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;ミ、
/l:;:;:;:;:レl/"'`ヘ/lVマヘ:ヘ |\ /\ / | // /
メ:;:;:;:;メ,沙ミキi"';ヽ-,,,,,ヾハ _| \/\/ \/\/ |∧/ ///
`彡:;:;:/ィ、ミニラ'/,,,;;;;;、kヽl'lハ \ /
ゞ彡:;:;l/:;:;:;/_ニヾ;;;;;ィ_ヘ´:ハ:;ミ、 ∠ エンジョイ&エキサイティング! >
、彡':;:;:;:;:;:;l//〈<ィ T T Ti、ヘ:;:;l:;ミ /_ _ \
、_マ彡:;:;:;:;:;:;ヘ:.:.:.、ヽ二二二二ラ/i:;:;ミ,,  ̄ / /∨| /W\ /\|\ .|  ̄
≧彡:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;:;メ:;:;:;:;:;:;:.:.:.:.:.:.:.:/:.:.i:;:;:;彡 // |/ \/ \|
>≧/彡コ  ̄ ̄` ヽ:;:;:;:;ヽ‐-:.:.:._///l:;:;:;彡
/:.:. ̄ ヽ ノ'):;:;:;:;ゝミヽ>ミ、:;:;:;:;彡
:.:.:. :.:.l _ -‐彡 ィ、:;:;:;:;:;:;:;ヾ、`ヽ、ミl:;:;:;:;彡,,,
:;:;:;:.:.;:;;lィ''´‐'''"_,,, >',ィ:;:;:;:;:;:;:;:;:;ト,,ヽ 、 ヾ:;:;:;:;:ベ
===================================
986 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:51:48 ID:TsshLyZc0 [41/45]
/ ̄ ̄\
/ _ノ \ まあ、それはともかく
| ( ●)(●) 随分掛かったが、武蔵のついての話はここまでだ。、
| (__人__) そして、この補足編も終わりになる。
| `⌒´ノ
| } …いよいよ、「次の話」だ。
ヽ } (
_ヽ ノ`ヽ、_ )
. _/|\ ` 、,__ 、小 L  ̄ ヽ (
_, ハ \ ` ァ、 /ヘ,レ―‐‐、__i__,)
. , -‐ ´ ,ゝ \/ _ 又/ ,ヽ\丁
/ ヾ. \ , イ{`< _ ,ィ 〉〉〉|
. / `゙ヾ\ ヽ/ ヽ\`く´ / `ー(/ |
. ! ´⌒` ヽ / `ーヲ`〈 i !
_..-''" ̄ ゙̄''---- ,,,,
/ `'‐、
/ `'、
/ ゙l,
/ !
| . ___、 |
l ., ‐'"゛ '''''''、 |
l . / l |
,' / . 、 ! !
/ / 、 l.殺´! .,! | 虎は死して皮を残す。
/ ./ l .f゙'‐.,i', ,! |
/ .l ゙l \ ! l゙ 和尚は死んだが、教えを残した。
./ !.ゞ \ .ヽ l゙ !
./ | .`ッ', .,r‐/ ! .武蔵も死んだが、兵法を残した。
./ .! ゛ ./;:;:;l |
./ .r .! ゙‐''''} l
.-'´ . l l、 .、 i ..,,、 | l ──そして、宗矩にも”その時”が来る訳か。
/ .!', .!、 `―" ! 、 !
! }.l l-二― ......,,.. | | .|
.| .l l .l;:;:;:;:;:`゙゙''''/ ,! ! |
.l │.,、.ヽ .ゝ ....,,,__./ ! |
! !.〈,,, ゙'-..____,,..-'"l゙ /
! /.、 `''-,,. ,..l゙ ./
', .,' `'、 `''" ̄ ̄ .,! /
! .i', ゙'y. .._.. ! /
| ./ ヽ ゙',゙'---ッ'" ! /
| / ..l. ..l, / .l ./
l ,i', l .li′ .! ./
// \ .! ! l ./
〃 ヽ. ! ! :! . /
l′ ヽ| .l | ./
.゛ ! ! /
l′
987 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:52:11 ID:TsshLyZc0 [42/45]
,,.: ''''""~""'''‐..
/ \
/ ─‐ ── \
/ ( ● ) (●) `、
./ / \ ', ──とうとう来るのかお。
i ( 人 ) ',
! `゙'´ `゙'''''´ |
\ ,.'
> /
/ -----‐‐‐'''"~ \
/ ̄ ̄\
/ _ノ \
|:::::: (● ) ) そうだな。
. |::::::::::: (__人) とうとう来るんだ。
|:::::::::::::: `⌒´ノ ....,:::´, .
. |:::::::::::::: } ....:::,, ..
. ヽ:::::::::::::: } ,):::::::ノ .
ヽ:::::::::: ノ (:::::ソ: .
/:::::::::::: く ,ふ´..
|:::::::::::::::: \ ノ::ノ
|:::::::::::::::|ヽ、二⌒)━~~'´
988 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:52:49 ID:TsshLyZc0 [43/45]
.
,__ , _ 、 _, .._ 、
_....j|lllll_|lllll_|lョ__ _j|lll|l|llll|:ョ 、
__uョllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllllll亡uョllllllllllllllllllllllllョllllllllllllllllョョu_
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~~ ゙゙
── 柳生宗矩の、死が ──
【やる夫で学ぶ柳生一族(その67補足2):「宮本武蔵という人物&宗矩と武蔵、その兵法観」】 完
989 名前:
やる夫で学ぶ柳生一族(その67・補足編2)[saga] 投稿日:2015/05/10(日) 21:55:30 ID:TsshLyZc0 [44/45]
てなところで、終了でアリマス。
えらく長く掛かってしまいましたが、どうにかこうにか終わってやれやれと。
今回もお付き合いくださり、ありがとうございました&お疲れ様でした>>ALL
前からやりたかった宗矩と武蔵の兵法観比較の話が、
ようやく出来たのは良かったものの、いざやってみると、
全然違う経歴を歩んできた二人の著作を見比べながら書いていくのは、
予想よりも随分骨が折れたなーと。
結論だけ書くなら、割と楽なのですけど、
「どうしてそうなのったのか」という説明を入れていくと、途端に手間が増えて、おおうと。
結果、随分掛かってしまい、申し訳ない限りです、ハイ。
とはいえ、兵法家伝書と五輪書の比較自体は割とあるものの、
五輪書解説の際に、家伝書(&不動智)を引用する程度のものが多くて、
二つを同程度に並べた比較というのは存外に少ないのが、
前からちと不満だったので、自分でやってみたのですが、
ともかく仕上がって満足でアリマス。
あと、宮本武蔵という御仁について、
今回の補足含め、本文中ではかなり軽い感じに書いてますけど、
世間における武蔵のイメージが、どうも必要以上にドギツいのが多いので、
その反動の部分が割とあったかなーと。
何の悩みもなかったとか、苦労一つしてないとか、そういうことは決してなかったでしょうけど、
いちいち世間に鬱屈を溜めてたり、求道だけの人生だったり、はたまた戦闘狂だったりというのは、
どうも違うなというのがあったので、もうちょい現実的なラインで見た方がよかろうなーと。
さて、次回はとうとう「その68」であり、いよいよ第二部最終回となる「柳生宗矩の死」です。
ここまで来るのに随分掛かってしまいましたが、ようやく辿り着いたので、もう一頑張りしまする。
(まあ、第三部もあるんですが)
なお、次回解説役は、
>>505である通り、
ジャンヌと赤王様の、セイバー顔コンビになる予定です。
それではではー。