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採用難や離職増加を要因とする「人手不足倒産」の増加が続いています。人材の流出を防ぐために、多くの企業が賃上げに踏み切っています。

賃上げをテーマとしたメディア向けのラウンドテーブルで「今年は、例年にないほど、中小企業の賃上げに関する課題が大きくなっています」と語るのは、日本人事経営研究室株式会社の代表取締役、山元浩二さんです。
■経営の悪循環を防ぐための糸口は人事施策にある
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山元さんは、大企業と小規模事業者の間には、顕著な「賃上げ格差」が生じていると指摘します。大企業の賃上げスピードに、中小企業が追いつかない状況にあるようです。

「賃上げ格差」は、経営や人事の領域とも地続きの課題です。従業員の流出、人手不足による労働環境の悪化、従業員のモチベーション低下、労働生産性の悪化……といった負の連鎖が生じないためには、どこかでストップをかける必要があります。

中小企業の人事施策に精通した山元さんが着目しているのが、人事評価制度です。

日本人事経営研究室が中小企業200社に対して行った調査では、人事評価制度を運用している企業の92%が「賃上げを実施した」と回答した一方、運用していない企業では賃上げ実施率が44.0%にとどまっています。

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企業の業績が堅調・好調でなければ、賃上げの実施は困難です。上記の結果を参照すると、賃上げを実施した企業では、人事施策が何らかの形で業績に寄与しているケースもあるのではないかと推測されます。

■中小企業の多くが人事評価制度を運用していない現状
一般的に、社員の数が一定数を超えた企業では、従業員の成果を評価し、賃金に反映させる「人事評価制度」が運用されています。

しかし、小規模規模企業の多くは、人事評価制度を設けていません。帝国データバンクが実施した「2024年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」によれば、30名以下の企業の4社に3社が「人事評価制度を設けていない」と回答していました。30名以上50名以下の企業でも、およそ半数が人事評価制度を設けていませんでした。

人事評価制度がない企業では、経営者と少数の経営幹部が社員の賃金の額を決定します。しかし、従業員の数が10名以上になると、経営者だけで社員を適正に評価することが困難になると山元さんは指摘します。
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組織の拡大とともに、経営者が個々の従業員を直接評価する形から、リーダー的ポジションの人たちにマネジメントや育成を任せる形にシフトし、経営者は本来取り組むべき、本質的な課題に対峙する必要があります。

その過程で必要になるのが人事評価制度です。

山元さんによれば、中小企業が人事評価制度を導入する際に大切なことは、会社の経営計画と人事評価をうまく組み合わせて、会社の方向性と従業員の役割をすりあわせていくこと。適切な人事評価制度によって、従業員のモチベーションがアップし、ひいては企業の業績の向上につながっていくと山元さんは語ります。

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社員1人1人が、自分に課せられた役割や必要なスキルを理解し、成果を出したら適正に評価され、賃金に反映されるという実感を持つことは、企業の成長のために必要なポイントであるようです。

【参考】令和6年度中小企業実態調査事業 – 帝国データバンク (95ページ参照)